2002/10/21

オレが「北の工作員」ってか!?(笑) 10月17日「よど号」関連で全国30カ所一斉家宅捜索。鹿砦社社長自宅を誤認捜 索!
一冊の本を出したからといって家宅捜索とは、
これでわが国に「出版の自由」 があると言えるのか!?
ミニコミ誌『くおーたりーSUITA』、松岡の連載に対し、理不尽な没処分!



 このところの巷の話題は、北朝鮮拉致被害者5人の帰国のことである。ワイド ショーでも連日トップで採り上げられ、芸能や「タマちゃん」の話題など霞んでし まっている。
 さて、拉致の一端を担ったとされる「よど号グループ」に関連して、去る10月17 日、警視庁公安部は、その「支援者の自宅」など全国30カ所を一斉に家宅捜索した。 横田めぐみさんと共に拉致問題の象徴とされる有本恵子さん拉致事件で、「よど号グ ループ」の一員、魚本(旧姓・安部)公博の「結婚誘拐」容疑ということである。
 ところが、である。あろうことか、私、松岡利康の自宅までもが家宅捜索されたの である。早朝7時、警視庁公安第一課5人が、捜査令状を持って、出社しようとした 私の自宅を訪れ、約2時間半に渡って家の隅々まで調べた。挙げ句の果て、知人に借 りていた裏ビデオまで映し出されるというオチ(大恥!)までついた家宅捜索だっ た。当たり前だが、何も押収するものはなかった。
 次いで、事務所に場所を移し約1時間、こちらは捜査令状がなく、“談笑”に終始 した。このかん郵送されてきていた「よど号グループ」のニュースレター『かりはゆ く』3号分を持ち帰った。
 刑事の話を総合すると、私あてへの家宅捜索の理由として、─ 1「よど号グループ」の元リーダー故田宮高麿夫人、森順子(よりこ)の手記『いつ までも田宮高麿とともに』を6月に出版したこと、 2その話を当社に持ち込んでき た、かつての仲間Kとの関係、そして 3学生時代(30年も昔のことでっせ!!)、赤軍 派の流れを汲む学生運動をやって逮捕された経験があること、等々である。これらか ら想像して「よど号グループ」と何かツルんで支援活動をやっているのではないか、 ということらしい。
 確かに当社は6月末、森順子(よりこ)の手記『いつまでも田宮高麿とともに』を 出版したが、これとてキチンと書籍コードを付け、取次会社を通して全国書店で堂々 と発売しているもので、あれこれ後ろ指を指されるいわれはない。もし、社会的に問 題になっている人間の本を出したということが家宅捜索の理由になるのであれば、わ が国には「出版の自由」などないということになる。
 ちなみに、本を出して“疑惑”をかけられた経験が過去にもあった。それは新右翼 といわれる(た?)鈴木邦男率いる一水会の機関紙『レコンキスタ』の創刊号から百 号までの縮刷版を出したことで、その後に、当社と同じ西宮で起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件に関連して「赤報隊」の“疑惑”をかけられたことがあった。
「よど号グループ」は左翼、鈴木邦男は右翼ということからわかるように、われわれ 鹿砦社は、左右問わず、世に出す価値があると思うものは出版するのであって、だか らといって、あれこれ詮索してほしくないね! 鹿砦社が単なる芸能本出版社や「暴 露本出版社」でないことは、こうしたことにあるんだぜ!
2の友人Kが企画を持ち込んだことだが、それがどうした!? 出版の話は、年中少 なからず持ち込まれるが、そうした中から採用するものもあれば没にするものもあ る。今回は、時機にもかなっており、Kとはここ数年義絶していたが、それなりの信 頼関係もあり採用したということにすぎない。
  3学生時代に学生運動に関わっていたってこと、いまだに、時に悪意をもって喧伝 されることがある。数年前ならいざ知らず、30年余りも前の話でっせ! われわれが 学生時代を過ごした、60年代から70年代初めにかけて、キャンパスでは、学生運動を やっていない者は人間ではない、とさえいわれた時代でもあった。
 その他に考えられることとして、「よど号グループ」から寝返った八尾恵が、この 界隈の出身であり、また有本恵子さんが(同じ兵庫県の)神戸出身であること、さら には「よど号グループ」や赤軍派の発祥の地が関西であること、なども関係あるのか な〜。
 オレは、北朝鮮を「アジア的専制国家」(ウィットフォーゲル)であり、スターリ ニズム的独裁国家、カッコ付き「労働者国家」、「労働者なき労働者国家」「プロレ タリアートなきプロレタリア独裁国家」等々と規定しており、そのオレが「北の工作 員」であるはずがないだろうがっ!?(怒)
 私は、日本の警察はバカではないと信じていたが、それに疑問符を抱いた一件で あった。家宅捜索という、時にプライバシー侵害、名誉毀損に触れないとも限らない ことに対しては、もっと慎重に行うべきだろう。いやしくも私は出版社の代表であ り、家宅捜索という行為が、表現行為、出版行為に対して威嚇的効果、萎縮的効果を もたらしたとすれば、それは「表現の自由」に対する侵害行為にあたらないとも言え ない。
 蛇足ながら、翌日、当社が加盟する中小出版社の集まり「出版流通対策協議会」 (略称「流対協」)の会長を務め、みずからが社長を努める現代書館では同じ「よど 号グループ」の田中義三の著書を出版している菊地泰博氏に、家宅捜索の一件を報告 する共に、会としても声明を出してくれるようにお願いしたところ、一笑に付され  たことを記しておこう。当社は過去に、4度の出版差し止め訴訟の際、昨年半年間に 3度も続いた大手取次による新刊委託配本拒否の際にも全面支援を訴えたが、ことご とく見放され、われわれは孤立無援の闘いを強いられ、その都度、深い失望感を味 わった。  最近では、『バターはどこへ溶けた?』でお馴染みの、加盟の道出版の親会社が3 人逮捕されるという事態にあっても、何らのアクションを起こさない。
 これでは、中小出版社が困ったときに助け合うという「流対協」の主旨が骨抜きに なっていると言っても過言ではないだろう。
「流対協」は元々、新左翼系の流れを汲む出版社が多いが、よって業界の鬼っ子的存 在であった。“闘う出版社の集まり”というのが業界関係者の一致した見方であった (かつては)。「仏の顔も三度まで」という諺があるが、闘わない「流対協」には愛 想が尽きた。そろそろ退会をマジに考える時機かもしれない。

 拉致問題といえば、家宅捜索の前日、ちょっとした“事件”があった。私が連載し て来た『くおーたりーSUITA』というミニコミ誌がある。「企画・編集」は「吹 田市労働組合連合会」というところだが、連載の申し込みがあった際、私は「公務員 亡国論」を持論としており、官公労の労働運動を全く評価していないので、時に公務 員や労組批判になるかもしれないし、それでも、書きたいことを書かせてくれるので あれば、という条件で引き受けてたという経緯がある。毎回私の“暴論”はそれなり に好評であったらしく、かの青木雄二サンにも過分の評価を賜っている。
 組合自体は、どちらかといえば日本共産党系であるそうだが、編集部はリベラル で、落合恵子さんとか小田実さんとか、非(反)日共系とみなされている方々も登場 されている。
 ところがどっこい、今回、日共の日共らしい体質が現れ、校了直前に「掲載を見合 わせていただきたい」旨の通告があった。組合委員長命令ということだ。まさに“ス タ官”(スターリン主義官僚の略称)的体質だ! 所詮、「白い犬に赤いペンキを 塗っても犬に変わりはない」ということか。「ミンセー(民青。これは今では死語か ?)」はやはり「ミンセー」だったね。いつまでもこんなことやってるから、労働組 合もみんなから相手にされなくなるんだ!
 以下は、『くおーたりーSUITA』17号(2002年秋号)掲載予定だった拙稿の全 文だ。小見出しは編集部が付けたものである。ご一読あれ!


北 朝 鮮 問 題 で 蠢 く 人 々 
〜「拉致」と「強制連行」はどう違うのか?

 関係筋は本当のことを語っていない
 連日、北朝鮮による「拉致」問題の報道が加熱化している。芸能人化したマスコミ 文化人をはじめ、拉致被害者の家族、元工作員、「朝鮮問題専門家」などまで巻き込 んだセンセーショナルな報道合戦が、これでもか、これでもかと繰り広げられてい る。
 ところが、意外にも世論は、そうしたマスコミ報道の加熱化にはいささか冷めた見 方もあって、日朝国交回復を支持するという街の声もある(事実、小泉政権の支持率 はアップしている)。
 私自身も、日々興味深くそれらの報道をつぶさに見てはいるが、実は冷めた見方 をしている一人であって、拉致被害者の家族は別として、みんな本当のことを語って はいないのではないかと感じてさえいる。北朝鮮当局も、日本政府も、元工作員も、 「朝鮮問題専門家」も、マスコミ文化人らも……。確かに一部は事実だろうが、全て ではないようだ。
 また、拉致の一端を担ったと報じられている、いわゆる「よど号グループ」につい ても、本日(10月6日)、赤軍派元議長・塩見孝也氏の“「よど号グル ープ」加 担”証言が報じられている(雑誌『創』掲載)し、その前には、 親「よど号グルー プ」として、事実上のスポークスマンを努めていた高沢皓司氏の離反(『宿命』新潮 社刊参照)、「よど号グループ」員の元妻・八尾恵さんの証言(裁判やマスコミでの 度重なる証言、その集大成ともいうべき『謝罪します』文藝春秋刊)など、第三者から見れば仲間割れとも思われる醜悪な田舎芝居を演じている。さほど深い付き合いではないが、塩見氏や高沢氏らとも面識がある私としても、あまり後味のよくない暴露合戦だ。

「よど号グループ」発祥の地=関西
 誤解のないように言っておくが、私は北朝鮮の体制や思想、拉致だけでなくやって 来たことを支持しているわけでは決してない。北朝鮮の体制は、まさに「アジア的専 制国家」(ウィットフォーゲル)だと思うし、スターリニズム独裁国家であること は、もはや論をまたない。少なくとも近代民主主義体制ではない。
 いささか古い話で恐縮だが、私はかつて赤軍派の発祥の地・同志社大学の出身であ る。赤軍派発祥の拠点というためか、「よど号グループ」に一人同志社出身がいる。 かつての学生運動は、なにか大きな闘争があれば、拠点校の人間が競って中心メン バーに入ることになっていたようで、「よど号グループ」を見てみれば、同志社の他 に、大阪市大、京大、関西大、東大、明大など、当時の拠点校から選りすぐっている ことからもわかる。私自身は赤軍派はもちろん、どこかの党派に入ったということは ないが(どういうわけか、私がどこぞの党派の大幹部だったというウワサが流れてい るが、これは事実ではない)、親赤軍系の学生運動に関わっていたことは事実であ る。同志社出身の「よど号グループ」若林盛亮など、元応援団から長髪のバンド青年 を経て学生運動に転じた人で、伝説的な人物であった(若林だけでなく、当時はそう した者が多かった)。
 こうしたこともあって、個人的にも「よど号グループ」の消息には関心がなかった といえば嘘になるし、関係の報道や記事にはできる限り接してきたつもりである。関 西にはそうした人は多いものと思われる。ちなみに、関西には学生運動出身の企業 トップも多く、Tブネ、G寿司、Nコンタクトレンズなど、そうした人たちは、今ど う思っているのだろうか。また、「よど号グループ」の内関西の大学出身も多く、元 妻の八尾恵さんは、私の会社のある西宮の高校を出たという。これもなにかの因縁 か。

 悲しき因果応報──強制連行と拉致
 ところで、拉致問題について個人的意見を書く。いささか不謹慎な発言になるかも しれないが、私に言わせれば、これば因果応報である。拉致された方々、そのご家族 にはヒンシュクを買うかもしれないが、そうとしか言いようがない。
 かつて日本軍は、朝鮮人を強制連行し、炭坑で過酷な労働を強いたり、従軍慰安婦 にしたりした。その数、一万人前後といわれている。
 そのしっべ返しが拉致に連なっているというのは、果して極論だろうか? 「拉 致」と「強制連行」はどう違うのか? どちらも無理やりに連れ去るのだから同じだ ろう。
 拉致被害が最も集中している一九七〇年代から八〇年代にかけて、南北朝鮮は戦時 状態にあった。双方が拉致合戦をやっていたことも事実だろう。一方、日本は虚飾の 平和を貪っていたわけだが、当時、在日も含め朝鮮の人たちと、私たち日本人とは、 そうした認識がまるで違っていたわけである。南北朝鮮とも、戦争をやっていたわけ で、それに不幸にも日本人が巻き込まれたのである。このとき、強制連行の経験か ら、拉致を実行した朝鮮側の日本人に対する認識は、かつての日本軍の朝鮮人に対す る認識と同じだった、というのは言い過ぎだろうか?
 拉致問題をスリ替えるなという反論もあろう。スリ替えてはいない。しかし、歴史 は必ずといっていいほど、因果応報といった展開がなされることを、私たちは痛苦の 教訓として知っている。そこでは、望むと望まぬにかかわらず、人の運命を巻き込 み、そして変える。ひょっとしたら、私も、ボタンの掛け違えで、のちの赤軍派の帰 結点=連合赤軍事件に巻き込まれて「総括」されていたかもしれないし、アラブに飛 んで行っていたかもしれない。また、くだんの拉致被害者になっていたことだって あったかもしれない。

 故田宮高麿の妻・森順子の手記
「よど号グループ」の中に岡本武という人がいた。その後、不慮の死を遂げた人だ。 というより、テルアビブ空港を銃撃した岡本公三の兄といったほうがわかりやすいだ ろう。私と同郷で年も近く、当時住んでいた私の家が、彼が通っていた高校のすぐ近 所だったということで、長年想うところが多い。薬物投与や拷問で発狂しているとも 聞く。兄・武の娘が去る九月帰国した。今はただの飲んだくれのオッサンになった、 私の学生時代からの友人Kが、どういうわけか、娘らの面倒を見ており、先日家宅捜 索までされている。これも運命なのだろうか。
 そのKがある日、出版の話を持ってやって来た。出版社に出版の話を持って来るこ と自体はどうということもない。ところが、内容はといえば、「よど号グループ」の リーダー・故田宮高麿の妻・森順子(よりこ)の手記だという。Kでなかったら、お そらく断っていたであろう。これは『いつまでも田宮高麿とともに』というタイトル で、八尾恵著『謝罪します』の一週間ぐらい後に出版された。八尾証言ほどの仰々し いインパクトはなく、陰に隠れた恰好だったが、ここに来て徐々に売れ出してきた。 そこでは八尾証言や拉致疑惑に対して反論がなされている。詳しく紹介する紙幅がな いので、くだんの書を参照していただきたいが、この北朝鮮バッシングの喧騒の中 で、森らの意見が正当に聞かれることはない。報道では、森が、有本恵子さんと後に 結婚したとされる石岡亨さん拉致の実行犯と“断定”されているが、森の手記や意見 が引き合いに出されることはなかった。
 もう、みんないい加減に本当のことを言ったらどうだ!?

 呪縛から解放されない宿命
 さて、そろそろ紙幅も尽きようとしている。過日、帰国した「よど号の子」らと食 事をする機会を持った。若林、故岡本、小西、安部らの子供らだ。故岡本を除いて親 らはみな指名手配されており、小西の妻は娘と一緒に帰国しながら、直後逮捕されて いる。これから、「よど号の子」という十字架を背負って、この生き馬の目を抜く日 本の社会で生きていかねばならないのに、意外にも当人らはいたって呑気なようだ。 九州の片田舎から都会に出てきたのとわけが違うんだぜ。
 私は、冒頭に記したように、決して北朝鮮を支持するわけでもないし、拉致問題の 真相解明を望んでいる者の一人である。ただ、万が一「よど号グループ」が拉致の一 端を担っていたとしても、子どもには罪はない。そして、“あの時代”に在った者と して、「よど号グループ」が決行した、六〇年代から七〇年代にかけた急進的学生運 動の帰結としての「ハイジャック闘争」の意味を解明していくのも、私にとっての “宿命”なのかもしれない。三十年余り経ち、五十歳を過ぎた、この期に及んでま で、そうした呪縛から解放されないとは思ってもいなかった。
 この夏、赤軍派や私たちが拠点としていた同志社大学学生会館の取り壊しが報じら れた。以上の記述と併せ、感慨深い。
 ところで、今年の初め、南北朝鮮の統一を願った“幻の名曲”、フォーククルセ ダーズの『イムジン河』が実に三十四年振りに発売なった。この名曲も、昨今の北朝 鮮バッシングの喧騒の狭間で、また“幻の名曲”となるのだろうか。


(松岡利康)



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