冤罪事件を取材していると、家族の愛情が安易に過大評価されているように感じる判決に出会うことがたまにある。
たとえば、2年ほど前に関西地方の北部にある某市であった殺人事件の裁判員裁判。男性被告人の妻A子さんが証人出廷し、無罪を訴える夫にちょっと有利な証言をしたところ、判決では、「A子は、被告人の無実を信じていること、今後も被告人との婚姻関係を維持していくつもりであることを明言しており(略)被告人の無実が証明されることを期待しているA子の供述の信用性には慎重な検討を要する」と言われた上、確たる根拠もなく証言の信用性をあっさり否定されていた。要するに裁判官や裁判員は、A子さんが夫を無罪にするために法廷で嘘をついていると考えたのだ。これなどは、まさに家族の愛情が安易に過大評価された判決の典型例だった。

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