さんざん報道されているので、ここでは殺害された川崎の中1、上村遼太さん(13)について「事件の概要」については省く。私が注目したいのは、この事件は、中心者や仲間、そして「仲間に引き入れる手法」、やたら弁護士をあてにする主犯、とにかく登場するキャラや筋書きが、関東連合を彷彿とさせることばかりだという点だ。

◆10代「半グレ」カラスの仕事が山のようにある多摩川沿い

つまり、これは「半グレ」が起こす典型的な事件だということ。事件が起きた川崎大師線沿いの半グレは、とにかく凶暴のようだ。

取材にあたった事件記者の藤堂香貴が言う。

「事件の起きた現場はかなり治安の悪い場所で、暴走族や不良がらみの事件が珍しくありません。最近では関東連合など暴力団と一線を画す連中が、準暴力団として動いていますが、逆にいえば組織の拡大で、目的は金稼ぎにシフト、小中学生をいじめるような意味のない悪さをするチンピラは減る傾向にありますが、ここらでは地元の暴力団関係者と顔見知りになって、我が物顔で繁華街に繰り出す、昔ながらの不良も見かけます。川沿いの工場で働く低所得者の家庭で育った不良少年が多く、そういった連中が歩いていても違和感のない日常があり、大人も関心を示していないです。避けています」とのこと。

オレオレ詐欺の出し子、クレジットカードのスキミング詐欺、違法オンラインカジノの運営、闇金の取立てなどなど、10代の半グレの仕事は山のようにある。

「とくに川崎あたりの不良が伝統的に評価されるのは『短期間で金を稼ぎ、人に奢る』奴がビッグになるってこと。ケンカが強いのは、そうだな、二の次だな」(川崎の元愚連隊)

この中1殺害事件と平行して、多摩川沿いでは、少年によるレイプ事件が続発しており、防犯パトロールを有志が毎日のようにしていたとされる。

「ナイフを突き付けられて、レイプされそうになった未遂事件が昨年の末から5件くらい連続で起きました。まあ、表にはあまり出ていない情報ですけどね。なんでも黒いジャージの集団で、地元では『カラス』と呼ばれている不良軍団のようです。高校生が中心のようですね」(川崎市住民)

◆「町田派」VS「川崎派」の抗争──いじめが文化のように育っていった

川崎の半グレ、不良たちは、実は、町田の不良たちとケンカばかりしている。川崎の連中は「町田をとってやる」と息巻き、町田の連中は「あいつら、多摩川に沈めてやる」と息巻く。川崎も町田も、昔から不良の巣窟としてつとに有名だ。

今回の殺人において、あまり報道されていないが、町田と川崎の意地の張り合いが影響していないとも限らない。リーダー格で主犯の男を、川村君に紹介した男が「町田派」と言われているからだ。

「そもそも、町田の治安が悪くなって、町田の不良たちが居場所を求めて川崎に進出して抗争を繰り返したことが、『これはなんとかして返り討ちしないと』とかえって川崎の不良たちの数を多くした感があります。そうした抗争の中で、『いじめが文化のように育っていった』と見るのが正しい分析の仕方だと思いますよ」(暴力団員)

もっとも、川崎や町田が荒れてくれたほうがヤクザにとってはラッキーだ。警察の目がそちらに行くし、イキのいい若者は、手下にして集団を仕切らせて風俗でも詐欺集団でもなんでもいいから金を作らせれば儲かるのだ。

そして、今回、関東連合を彷彿とさせるのが、やたら犯人が弁護士を頼る点だ。これもヤクザの入れ知恵か。捜査段階なのに、主犯の男には父親が手配し、早々に弁護士がついて、マスコミ対応していた。こうしたことを誘導するのは、その筋しかいない。そう、背後にヤクザがいると見たほうが妥当だろう。

「今回の件は、弁護士から接触した面もあります。また、そうした不良のしがらみの中で独特の活動をする弁護士もいるのは確かで、不良のトラブルがあると不良少年側として、お約束で得意げに出てくるおなじみの弁護士もいます。そういう弁護士は着手金は高いのですが、平気でウソの口裏合わせをしてくれる不良少年を証人として担ぎ出すこともあると聞きます」(前出・藤堂香貴)

◆まったく機能していなかった「学警連」

新聞などによれば、事件で、地域の公立校、市教育委員会、神奈川県警が集まる会合の中で1月と2月に、上村さんが通う中学校が「最近、登校できなくなった子がいる」と上村さんについて報告していたようだ。市教委などによると、上村さんが暴力を受けているとの情報を把握していなかったため、不登校の報告にとどまり、特別な対応は取らなかった。(2015年2月26日朝日新聞

上村さんは冬休み明けの1月8日から学校を欠席していた。市教委によると、市内では8地域に、公立小中高の指導担当教諭や、市教委の指導主事、警察署の少年事件担当者らでつくる「学校警察連絡協議会(学警連)」があり、定期的に情報交換して非行防止などに取り組んでいたが、まったく機能していなかったということだ。(2015年3月11日神奈川新聞

◆朱に交われば赤くなる──悲しみは、川のせせらぎの中に

不登校は、実は1日が2日に、2日が1週間に、1週間が1ヶ月に、1ヶ月が1年と、あっという間に時間がすぎていく。そして「暇をつぶすために」悪い仲間がつぎからつぎへと誘いに来る者だ。筆者も実は高校を数えながら休んだ。進級できるぎりぎりの日数を登校していた。僕にとって幸運だったのは「そんな狡をしてはいけない」と怒ってくれる友人がいたことだ。もし怒られなければ、僕は高校をおそらく辞めていた。

「朱に交われば赤くなる」ではないが、やはり仲間を選ぶ、ということは中学生とて重要なことだ。そして、そうした「友を選ぶ」慧眼が身に付く前に不良たちと交わり、抗争の中心にいつしかいる。それは、関東連合や巷の暴走族やギャングのメンバーにも言えることだ。

今でも殺害現場には、花がつぎつぎと供えられている。上村さんの悲鳴は川のせせらぎの中に消えて、友達の悲しみも川が吸い込んでいくようだ。これを機に、少しでも川崎、とりわけ多摩地区の治安がよくなることを願う。

(ハイセーヤスダ)

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