戦争法案の審議と国会会期延長、更には辺野古での基地建設、TPP推進などの市民を虫けらとも思わない安倍政権に対して全国各地で様々な抗議活動が行われている。6月24日(木)には国会前に3万人が集まり「戦争反対」、「安倍政権倒せ」の声を上げた。またここへ来て若者の街頭活動も見られるようになってきた。


◎[参考動画]「とめよう!戦争法案 集まろう!国会へ6・24国会包囲行動」

◆反対する契機は「純粋な怒り」

同意できない政策を推し進めようとする、政府や行政への抗議行動は時代により形や規模が異なりながらも綿々と続いてきた歴史がある。2011年3月11日、福島第一原発の事故で初めて街頭行動に足を運んだ人の中には、「原発爆発」という脅威により初めて「目が覚め」て「居てもたってもいられず」行動を起こした方々が少なくなかっただろう。

そういった「普通」の人はそれまで「市民運動」に関わっていたわけではなく、ましてや政府に対する抗議行動などとは無縁の方々で、「どうしてくれるんだ!」、「政府・東電は責任を取れ!」という純粋な怒りと恐怖が街頭行動の動機となっていた。少なくとも私が直接知る複数の人々はそうだ。

原発に限らず、戦争反対の前段階である自衛隊の海外派兵や、教育基本法改悪への反対、国家国旗法制定への反対行動は3・11以降「目が覚めた」人々がまだ、あまり興味を抱かない頃から、一般市民には異端視されながらも行われていた。

3・11以前、街頭での抗議行動が低調であった頃には「デモに行く」と言えば、極端に危険な行為に加担するような偏見で見られることは当たり前だったし、あらゆるテーマを掲げて集会を行っても、組織動員がなければ東京でも万の単位の集会開催はほぼ皆無に等しかった。


◎[参考動画]爆笑!偽安倍晋三──2006年12月6日ヒューマンチェーン第3波に偽の安倍さんが現れた!

◆「冬の時代」から声を挙げ続けてきた人々

でも、忘れてはならないのはそういう「抵抗冬の時代」から怯むことなく声を挙げ、時に権力に不当弾圧されながら、一般市民から「変わり者」と蔑視されようと、この島国の権力者たちが推し進めようとする悪意に満ちた政策と正面から闘っていた人々の存在だ。


◎[参考動画]なぜ警告を続けるのか~京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち

抵抗や闘争のテーマは数限りなくある。「改憲」はいよいよここにきてその危険性が広く認識されることになったけれども、1955年、保守合同により発足した自由民主党の党是が当初より「自主憲法制定」=「改憲」であることを知っていた人々は早期から各地に「九条の会」を立ち上げ地道な活動を行って来た。

千葉県に位置する空港は、そこに住む農民の意見を聞くこと一切なく建設が決定され、その反対運動は熾烈を極めた。自分の生活の糧である農地や家が一方的「国策」により奪われる、と聞かされた農民は実力闘争に踏み切らざるを得ず、学生や労働者も空港建設反対の運動を支援した。多くの死者も出した。

そこではあからさまな「暴力」が数々繰り広げられた。「強制収容」という名で農民の家が重機により取り壊された。それに抵抗する農民達は家や立木に自分の身体を括りつけ機動隊の暴力に抵抗した。

◆不合理な国策への抵抗は自然

ここで読者の皆さんに問いである。世界のあらゆる場所、あらゆる地帯で「無用」な暴力は排除されるべきだと私は考える。

だが、ご自身の住居が合理性のかけらもない「国策」により取り壊されたら、何も言わず、何もせずに沈黙していられるだろうか。「住居取り壊しをやめろ!」と叫びそれに身を持って抵抗するのは不自然だろうか。

千葉県にある空港は「国際化に伴い羽田では敷地が手狭になるから」と言う題目で建設が強行されたが、一時国際線を控えていた羽田空港(正式名称は「東京国際空港」)はその後拡張工事を行い、現在乗り入れている国際便を運航する航空会社の数は30社に上っている。国際線専用ターミナルも人であふれている。一時「新東京国際空港」が正式名称であった千葉県の空港は国際線の発着を羽田から引き継ぎ、専門に担うはずだったが現在国際線乗り入れ航空会社数は43社止まりであり、名称も2004年に「成田空港」と変更され、実質的に首都エリアで「国際空港」の名は通称「羽田」の「東京国際空港」だけである。

この現実を見て土地を奪われた農民や、反対運動で傷つきあるは亡くなった反対派、推進派の方々はどうお感じになるだろうか。国が引き起こした無茶非道理を尽くした「空港政策」の犠牲になった方々の多数はもうお亡くなりになっているけれども、現在も農地を国に奪われることを阻んで闘っている農家の方が存在する事実を前にどう申し開きするのか。

「極端な例を出して」とソッポを向かれる読者もいるかもしれない。でもこの構造は何変わることなく今日に引き継がれているじゃないか。

先に霞が関で抗議行動最中に不当逮捕された被害者の方から直接お話を聞くことが出来た。その方は勾留されている間にネット上や批判的な人々から「逮捕される方が悪い」、「警察が逮捕したのは当たり前」などの言葉が交わされているのを接見した弁護士から知らされ、「とても残念に感じた」という。「逮捕を肯定する人は『権力』の本質がわかっているのでしょうか」とも語っていた。

◆抗議行動には様々な形態があっていい

本質的な対立が生じれば国家権力は当然反対者を弾圧(逮捕)する。いくら「非暴力直接行動」などと言っていても、そんなことに一切配慮はされない。「反国家」、「非暴力」は市民が定義するものではなく、国家がその時の都合で一方的に決めつける。そのことは70余年前の戦争時代に何が起きたかを振り返れば明らかだ。

6月27日渋谷ハチ公前SEALDs街頭アピール行動に参加した山本太郎さん(山本さんのfacebookより)

抗議行動には様々な形態があっていいと思う。その方が画一的な運動より健康だろう。だが、最終的に国民の「抗議・抵抗」に対して国家は「非和解」であること私は考える。

私は戦争に反対する。だから抗議する。
私は原発に反対する。だから抗議する。
私は差別に反対する。だから抗議する。
私の目的は「抗議」ではない。
受け入れない政策や行動の阻止だ。

「抗議を続ける」ことは長期戦では重要だ。でもそれ自体が目的になっている人がいるとすればもう一度考えてほしい。本当に獲得すべきものは何なのかと。


◎[参考動画]BO GUMBOS「目が覚めた」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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