キックボクシングの「BLADE.2」は8月1日、大田区総合体育館で15時から行われたが、実は開場は13時30分。正午には、もはや37度を超えている猛暑の中、大田区総合体育館の入り口には、ケバブ、カレー、パン、ホットドックの売店が並んでいた。

◆食事処「不毛地帯」の大田区総合体育館が会場なのだからフード店充実を願う!

このあたりの地域は格闘技ライターなら知っているが「地図から食事処が、ほぼ消えたエリア」だ。たとえば大田区総合体育館のすぐ横にはラーメン屋があるが、このほかに歩いていける食事処を探すのは至難の技だ。第一京浜を歩き、ローソンで右折、JR蒲田駅方向に歩くとレストランや食堂の選択肢が広がるが、遠すぎる。ローソンで買うにも、もはや早く来た客が弁当を買って売りきれるケースも多い。

「実は、正午から体育館入り口でフードを買えるといったって、開場は13時30分だから、食べる場所は13時30分までないんだよ。だから、みんな食べてから来るか、体育館の中で、あらかじめコンビニで買ってきた弁当なんかを食べるのでしょう。ここの体育館入り口付近のフードはいつも売れないよ」(格闘技雑誌ライター)

なるほど、正午から13時30分まで見ていたが、4つの店でフードを買ったのは、わずかに25人だった。ただし、パン屋で販売していたかき氷は、つぎからつぎへと客が「レモンください」などと押し寄せていた。

正午ごろ、カレーショップに「この時間に買っても食べる場所はありませんよね」と聞いてみたが、「開場したら、中で食べられると思います」とのこと。そもそも、この猛暑の中をケバブも、カレーも、焼きたてとはいえパンも、ホットドッグも食べる気にはならないのがたいていの大衆の嗜好ではないのか。

「駅前で冷やしうどんを食べました。そうですね。冷やし中華とか、冷やしそばとか、冷えたサンドイッチとかが体育館入り口にあったら買ったかもしれませんがまずないですからね」(40代の男性)

僕は、体育館横のラーメン屋に入り、つけ麺をオーダーした。なかなか独特のコクがある鰹節風味だ。

確か5月に別の格闘技のイベントで来たときも、正午近くで食事に困った記憶がある。会場が開くまで食べる場所がないのに、なぜ売店でフードを売るのだろう。このあたりの「かゆいところに手が届かない」運営のいたらなさが、キックボクシングのファンがいまひとつ集まらない原因のような気がする。

◆『BLADE FC JAPAN CUP』は「無敗の16歳」那須川天心が予想通り優勝!

キックボクシングの「BLADE.2」の今回の目玉は、「-55kg」の王者をトーナメント形式で8人が争う『BLADE FC JAPAN CUP』で、デビュー以来6戦全勝で第6代RISEバンタム級王者となった「神童」こと16歳の那須川天心を誰が止めるかに大会の話題は集中していた。おおかたが予想した通り、那須川天心が現役高校生とは思えぬふてぶてしい勝負度胸と常識離れしたスピードで圧倒、いとも簡単に賞金の300万円を手にし「いや、さすがに3戦連続は疲れました」と笑顔を見せた。その賞金の一部でぜひキックの大会の改革をお願いしたいものだ。

ただし、フードはまったくNGで残念でも、「BLADE」のスタッフの動きは機敏で、「席がわからない」と客がいえばすぐにスタッフが連れて行き、客が選手について質問すれば「戦績がこうで、得意な技はこうで」と気さくに解説してくれるし、選手と客が撮影するときも自らカメラマンをかって出る気配りを見せてくれた。このような気配りのある真摯な運営姿勢と、那須川天心のようなスターの創出、この両輪がキックボクシングを、きっと明るくするだろう。

◆「神童」那須川に負けじと黄色い声援を集めた格闘家の武蔵

この日、女子の人気を集めるという点では、アルメン・ペトロシアンと真っ向勝負して惜しくも判定で敗れたひょうきんな男、城戸康裕もいたし、ワイルドな顔つきで女子の人気沸騰中の谷山俊樹も、ジャニーズにいそうなさわやかイケメン、小笠原裕典もいたのだが、「神童」那須川に負けじと黄色い声援を集めたのは、なんと解説でやってきた格闘家の武蔵だ。
「いまだに、太い胸板と、ごついマスクで渋い男らしさを感じる。引退して5年もたつのに締まった体つきは素敵のひとことです。あのスラッとした立ち姿にしびれます」(25歳・フリーター)
「あれだけK-1を引っ張った貢献者なのに、偉ぶらないところが好きです」(28歳・OL)

武蔵は、スカイAの番組解説でやってきたが、同世代の天田ヒロミが42歳でいまだに現役で頑張っている姿に触れた。天田も一度ノックアウトされたが、最後まで踏ん張り、判定に持ち込んで30~40代の女性の「黄色い声援」を受けた。これを見て、武蔵は「熟年格闘技家として、私のかわりにガンバっていただきたい」とエール。

東側のスタンド前にカメラが映り、休憩の間に、解説陣を集めて行われた、勝者予測のコーナーでは、われもわれもとファンが撮影ポイントに押しかけて、映像の照明マンがライトを踏ん張って、照明がもてなくなり、ぶれる始末。映像カメラマンが「まったく(照明が)あたってない。しっかりあててください」と怒鳴り声が響いた。

うだるような試合会場は那須川が出てくると別な会場みたくテンションが上がる。まるで「那須川の、那須川による、那須川のための」大会となったが、ところがどっこい「まだまだ渋いおじさま格闘家」の武蔵にも女子の熱い視線が送られているのが意外だった。

記者はたった9人で、ややさみしいものがあるが、「神童」人気と、熟年パワーで「BLADE」は今後も盛り上がっていくだろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎《格闘技“裏”通信04》BLADE.2 JC-55kg──優勝候補は16歳の那須川天心!
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