「お盆休戦」とも言われる凪(なぎ)状態の「戦争推進法案」審議が間もなく再開するだろう。それを見越して8月14日「安倍談話」が発表された。

内容は「空疎」の一言に尽きる。「反省」や「侵略」を言葉として盛り込んではいるが主語がない。「戦争推進法案」への反対が高まる中、これ以上の反対世論盛り上がりを何より警戒したのだろう。安倍は敢えて本音は封印した。だが、こんなちゃちな「言葉遊び」に騙されてはならない。15日には私費とはいえ玉串料を靖国参拝に納めた姑息な行動、そして「お盆休戦」後に国会審議で語られる言葉こそが安倍の本音だ。

反対運動の盛り上がりも勢いを増している。これまで街頭行動で姿が少なかった若者もついに街へ足を運びだした。その中で学生による注目すべき「抗議行動」が予定されている情報を得た。以下やや長いが、その「声明文」全文を引用する。

安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会

声明文

私たち「安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会」は、安全保障関連法案の審議即時停止と安倍政権退陣を求めて、8月27日より無期限ハンガーストライキを開始することをここに宣言します。
安全保障関連法案(以下、安保法案)は多数の批判と抗議を押し切って7月16日に衆議院を通過し、現在参議院で審議中です。憲法上のいわゆる「60日ルール」を含めても今国会での法案の成立は確実と言われています。

安保法案で法制化される集団的自衛権はアメリカなどの同盟国が主導する軍事行動に日本が直接参加することを許すもので、「戦争法案」としての本質は明らかです。戦後日本はアメリカと日米安保という実質的な軍事同盟を結び、東アジアにおける軍事的緊張関係の一端を担ってきましたが、安保法案の制定がかかる緊張をエスカレートさせる危険は目に見えており、先の大戦への反省を無視した愚かな行為です。またこの法案は国内の多くの憲法学者が指摘するように明白な違憲立法であり、法学上のクーデターというべきものです。まさしく安保法案は世界の民衆を分断し戦争を準備する、本来的に民衆に敵対する法律です。一切の正当性もなく、拒絶する以外にはありません。

では法案成立を阻止し、戦争を止めるために私たちは何をするべきなのでしょうか。
私たちは自らの生活に代えてでも安倍政権の戦争準備を拒否し、世界中のあらゆる戦争に加担することを拒否するという姿勢を直接行動によって示していくべきだと考えます。現在の沖縄・辺野古での反基地運動が、自らの平和を希求すると共に、基地を通じて世界の民衆が殺害されていくことを実力で拒否しているのと同様に。
私たちによるハンガーストライキは、戦争によって犠牲になりうるあらゆる人々と協力し、戦争への動員・協力を共に拒否するよう呼びかける直接行動の一過程です。そのために私たちは生命をかける覚悟でたたかいます。安保法案審議停止・安倍政権退陣に向けて共に行動しましょう!

【呼びかけ人】(ハンスト実行者は井田、元木、嶋根、木本の4名)

井田敬(上智大学2年) 元木大介(専修大学4年) 嶋根健二(専修大学4年)
木本将太郎(早稲田大学1年) 安井遼太郎(慶應大学3年) 土田元哉(慶應大学2年)
梶原康生(専修大学3年) 手塚(東京福祉大学) 坂田圭太(立正大学3年)
徳山陽一(都立産技高専5年) 匿名希望(高校2年)

本名を明かし、堂々と「無期限ハンスト」を行うというこの学生達に私は最大級の賞賛と連帯の意を表明する。彼らはいかなる「運動体」にも属さない個人の集まりだ。原発事故以降、多人数を集めるようになった運動の主催者の中には、参加者にあれこれ細かい「規制」を設けて、彼らの言う「一般人」以外を排除する団体がいくつか見られる。

◆「決起」の方法は幾らでもある

集会やデモ参加者の数がいくら増そうとも、その「質」が高まらなければ敵にとって脅威とはなりえない。この場合の「質」とは抗議対象への冷徹かつ非妥協な「怒り」の高まりであり、それに相応しい「行動」を意味する。したがって運動の継続性は勿論重要ではあるけれども、それと同時に参加者の意識の高まりと、多彩な参加者を受け入れることがまず前提として必要だ。まかり間違っても特定の団体や個人を名指しして「排除」するような運動方針が採用されてはならない。「排除の論理」は敵=国家権力にのみ向けられるべきであって、参加者への「排除」意思表明は運動体自体が硬直化、党派化してゆくことだと主催者は気が付かねばならない。「排除の論理」が破綻と敗北しか招かないことは、過去の歴史が余すところなく証明している。

そのような問題も散見される中、この猛暑の中、学生達がハンストに決起する。この行動は新鮮な問題提起と、政府に対しても無視のできない激烈な行動になることは間違いない。

1000人の指揮された統一行動よりも、一人の「個の意思」に立脚した決意が状況を切り開くことを私は経験として知っている。「安保関連法案制定を阻止し、安倍政権を打倒するための学生ハンスト実行委員会」を私は直接知らないし取材もしていない。この「声明文」を読むだけで彼らの「腹の括り方」が伝わって来る。

街頭行動へ既に参加されている皆さんが彼らを応援し、またそれぞれの方法で「行動」を展開されることを切に希望する。「決起」の方法は幾らでもある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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