飛び蹴り、後ろ蹴り、躊躇うことなく繰り出す那須川天心の天才的な技

テレビ解説の元ムエタイチャンピオン.石井宏樹の言葉だったかと思いますが、「ついにこの日がやってきた」とは、正にそんな日でした。こんなキャッチフレーズは過去に何度も使われましたが、日本で大手企業がバックアップし、やがて地上波で放送予定にあるイベントとしてはキックボクシング満50周年に新たな歴史の一歩を踏み出したと言える日かもしれません。

6試合中、メインイベント以外はすべてKO、大月晴明(43歳)と那須川天心(18歳)は常識を超えた天才か。それぞれの歳でこんな難敵を豪快に倒すとは驚きの現実を見せ付けてくれました。

見事、顎に命中、どこまで突き進むか那須川の偉業

立てないワンチャローン、悶絶KO

大月は開始早々からボディブローを引き金に顔面への爆腕パンチラッシュで一気に倒し、那須川天心は初のヒジ打ち有効ルールも恐れず攻め、ムエタイ現役チャンピオンに左後ろ蹴りを顎に炸裂させて悶絶KOする動体視力と当て勘の良さ。
T-98は長島のヒジ打ち貰って顔面切られる不覚も、10月のラジャダムナンスタジアムでの初防衛戦で見せた打ち負けない圧力で重いローキックと右ストレートで倒す貫禄。

森井洋介はヒジで切られつつ、右縦ヒジカウンターで打ち倒し、9月のKNOCK OUT発表会見試合で高橋一眞を1R・KOした試合を含め2連勝。勝ち数では一歩先行く立場。
小笠原瑛作は以前より勢い増したしなやかさとスピードで宮元から一歩も引かない攻撃力でバックヒジ打ち、左ヒジカウンター、左ハイキックで3度ダウン奪って快勝。

梅野源治は本来の技術で優る展開を見せ、元ラジャダムナン・フェザー級、スーパーフェザー級2階級制覇チャンピオンに大差に近い判定勝利。終盤、シリモンコンが諦めの表情を見せるような梅野の実力が光りました。今年の梅野は激闘で怪我が多かった中でも、ラジャダムナン・ライト級王座を奪取しこの日を迎え、体調万全ではないことも試合に表さない強さを見せました。

◎KNOCK OUT Vol.0 / 12月5日(月) TDCホール19:00~21:25
主催:(株)キックスロード / 放送:FIGHTING TVサムライ、スポナビライブ

◆メインイベント 第6試合 61.5kg 5回戦

ラジャダムナン系ライト級チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/61.3kg)
         VS
シリモンコン・PKセンチャイジム(元・ラジャダムナン・SB級、Fe級C/タイ/61.1kg)
勝者:梅野源治 / 判定3-0
主審 大成敦 / 副審 大村50-46. 北尻49-46. 小川49-47

しなりある梅野のハイキックに近い右ミドルキック、徐々に梅野ペースへ引き込まれる

左ミドルキックで攻める梅野。シリモンコンに活路は無かった

ムエタイチャンピオンの貫禄が増したT-98は長島を圧倒するも、ヒジ打ちで右頬を切られる不覚

森井もパンチから最後はヒジで決める難度の技でKO

◆第5試合 55.0kg契約 5回戦

那須川天心(TARGET/55.0kg)
         VS
ルンピニー系スーパーフライ級チャンピオン
ワンチャローン・PKセンチャイジム(タイ/54.9kg)
勝者:那須川天心 / TKO 1R 2:23
カウント中のレフェリーストップ / 主審 岡林章

◆第4試合 70.0kg契約 5回戦

ラジャダムナン系Sウェルター級チャンピオン.T-98(=タクヤ/クロスポイント吉祥寺/69.95kg)
        VS
長島自演乙雄一郎(魁塾/70.0kg)
勝者:T-98
TKO 2R 2:50 / カウント中のレフェリーストップ゚ / 主審 大村勝巳

◆第3試合 60.5kg契約 5回戦

森井洋介(GOLDEN GLOBE/60.5kg)
VS
ヨードワンディー・ソー・チャナティップ(BBTVライト級10位/タイ/60.5kg)
勝者:森井洋介
TKO 3R 1:56 / カウント中のレフェリーストップ゚ / 主審 北尻俊介

最後は相打ちカウンターの右縦ヒジで顎を打ち抜き、ヨードワンディーは起きれず

小笠原の先手打つ攻めは宮元のスピードを上回った

◆第2試合 55.4kg契約 5回戦

WPMF世界スーパーバンタム級チャンピオン.宮元啓介(橋本/55.3kg)
          VS
小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺/55.4kg)
勝者:小笠原瑛作
KO 3R 2:53 / 3ノックダウン / 主審 小川実

◆第1試合 61.5kg契約3回戦

大月晴明(元・全日本ライト級C/マスクマンズ/61.5kg)
VS
スターボーイ・クワイトーンジム(元・WPMF世界Fe級、SFe級C/タイ/60.8kg)
勝者:大月晴明
KO 1R 0:45 / テンカウント / 主審 北尻俊介

大月晴明(右)の爆腕ラッシュはいつも以上に威力があった

◆取材戦記

日本人全選手、興行名に恥じない展開を目指した、そんな勢いを感じました。KNOCK OUT初回本興行としては大成功と言える内容でしょう。しかし「ノックアウトに重点を置く興行」とタイ選手に伝えても、そう簡単にムエタイリズムを変えられるものではなかったかもしれません。そういう意味では今後のタイ側の名誉挽回に本気モードがやってくるでしょう。それは次なる展開に繋がり、より話題が盛り上がります。

今回の出場チャンピオンたちの契約ウェイトの幅の狭さにちょっと驚きました。梅野の場合、ゆとりを持って62.0kg契約でもよかったのではと思います。「ラジャダムナンスタジアムは寛大な対応をしつつ、突然厳格なことを言ってくる場合もあるので気をつけた方がいい」とは現地マスコミの意見。両者ライト級61.23kgを超えていないとチャンピオンの“負ければ剥奪”の義務が生じるということです。

東京ドームシティーホールは2008年春に開業しました。私個人としてはこれまで縁無く、初めて入場しましたが、どの階からも近く見易い印象がありました。コンサート・ライブに向いた会場と思いますが、リングを使う格闘技興行としては以前と変わらず、使用設備の問題で後楽園ホールが主流なのも分かります。いずれにしても格闘技興行は見易さ重視で、広くても大田区総合体育館まででいいという一般的意見でもあります。

来年のスケジュールは2月12日から4回の予定が決定しています。それ以降は調整中。出場を予定される選手、希望する選手、ファンが望むカードなどありますが、どこまで実現出来るかが今後への期待となるでしょう。他団体でも「KNOCK OUT」を意識した発言が聞かれます。

KNOCK OUT の第2回興行となる「KNOCK OUT vol.1」は、2月12日、梅野源治、那須川天心の連続出場の他、個性豊かなチャンピオンたち、町田光、前口太尊、引藤伸哉が初出場します。

2月12日(日) 大田区総合体育館
4月 1日 (土) 大田区総合体育館
6月17日(土) TOKYO DOME CITY
8月20日(日) 大田区総合体育館

恒例となる全試合を終えて集合写真。負傷選手は上がっていませんが、この場に残るのも価値ある瞬間

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

基地・原発・震災・闘いの現場『NO NUKES voice』10号

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』