チャンピオンたちがそれぞれ先を目指した中での意地の勝利。村田裕俊(八王子FSG)はタイ修行成果でライバル・高橋一眞(真門)を破って王座戴冠した自信と次なるメジャーリングへの野望。勝次(藤本)は歴代先輩チャンピオン記録に迫り、追い抜く目標と共にラジャダムナン王座を目指す。

村田裕俊vs優介。村田の得意の組んでのヒザ蹴りが主導権を奪った(2016年12月10日)

村田裕俊vs優介。ヒジで切られた優介だが、反撃及ばず村田に屈す(2016年12月10日)

◎武士シリーズ vol.5
12月10日(土)後楽園ホール17:30~
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆NKBフェザー級タイトルマッチ 5回戦(過去3戦して1勝1敗1分)

チャンピオン.村田裕俊(八王子FSG/56.9kg)vs 同級2位.優介(真門/56.9kg)

勝者:村田裕俊 / KO 5R 2:36 / カウント中のタオル投入
主審:前田仁

村田は長身を利したヒザ蹴りで優位に立ち、優介が懸命に攻めてもその踏ん張りを許さず、村田は以前より自分の距離に持っていくのが上手く、ヒジで切ってパンチでダウンを奪い、優介陣営の棄権を誘い込むTKO勝利。

安田一平vsSEIITSU。SEIITSUも8年前に王座挑戦の経験を持つベテラン。安田も気を抜けなかった中、パンチで何とか勝る(2016年12月10日)

◆67.0kg契約5回戦

NKBウェルター級チャンピオン.安田一平(SQUARE-UP/67.0kg)vs 同級6位.SEIITSU(八王子FSG/66.55 kg)

勝者:安田一平 / 判定3-0 / 主審 川上伸
(副審 佐藤友章48-47. 亀川48-46. 前田48-46)

強いパンチを持つ安田が積極的に攻め、3ラウンドには左フックとパンチ連打での2度のダウンを奪い、試合ストップかと思わせるほどだったが、4ラウンドにはSEIITSUの左ハイキックを貰ってしまい、5ラウンドへ引きずって更にハイキックを貰ってダウンする安田。勿体無い逆転を許すも前半の稼ぎで何とか判定勝利。

◆ウェルター級 3回戦

NKBウェルター級2位.岡田拳(大塚/66.2kg) vs 3位.塚野真一(拳心館/69.35kg)
勝者:岡田拳 / KO 3R 2:10 / 3ノックダウン
主審:鈴木義和

次期挑戦権を持つ約7年前のチャンピオンの岡田が序盤はやや苦戦も3ラウンドにパンチとローキックで3度のダウンを奪う圧勝で前哨戦を飾る。

◆ウェルター級 3回戦

NKBウェルター級8位.野口大輔(テツ/66.0kg) vs 9位.上温湯航(渡辺/66.2 kg)
勝者:上温湯航 / 判定1-2 / 主審:佐藤友章
(副審:川上29-29. 佐藤彰彦29-30. 前田29-30)

◆ライト級3回戦

NKBウェルター級5位.マサ・オオヤ(八王子FSG/62.5kg) vs NKBライト級8位.洋介(渡辺/62.3kg)
勝者:洋介 / TKO 1R 2:02 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

他、7試合を割愛しています。

岡田拳vs塚野真一。岡田、7年前のチャンピオンのパンチ復活!(2016年12月10日)

江幡睦vsクルンシン。すべてがキレる技、ハイキックも打倒ムエタイへ自信あり(2016年12月11日)

◎SOUL IN THE RING14
12月11日(日)後楽園ホール17:00~
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

◆54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/53.75kg) vs クルンシン・ペップームムエタイ(タイ/52.3kg)
勝者:江幡睦 / KO 2R 2:43 / カウント中のタオル投入
主審:仲俊光

いよいよ煮詰まってきた最高峰へ再構想を描く江幡ツインズ。この日の睦も圧勝で昨年3月のラジャダムナン王座挑戦失敗から6連勝。以前からアピールするとおり、来年の最高峰再挑戦の計画が進んでいるところでしょう。パンチとローキックの冴えは抜群の技。少々の被弾もまともには喰わない。隙を見つけ、ボディブローによる2度のダウンで勝利を掴む。

江幡睦vsクルンシン。先手必勝、パンチも当て勘抜群(2016年12月11日)

勝次vsジョニー・オリベイラ。沢村忠のような形相でハイキックを繰り出す勝次、似ている!(2016年12月11日)

◆日本ライト級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.勝次(藤本/61.23kg) vs 日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.8kg)
勝者:勝次 / KO 2R 1:54 / テンカウント
主審:椎名利一

メインイベントは江幡睦でも、注目となったのは勝次の防衛戦。勝次は半年に一度のペースで防衛を重ねるキック本来の道を進む老舗の拘り。過去4戦3勝1分の相手だが、諦めない積極ファイトを展開するジョニー・オリベイラに、勝次が更に積極性で上回った。

第1ラウンドにパンチからヒザ蹴り、更に飛びヒザ蹴りでダウンを奪い、2ラウンド目には威嚇して顔面ガード空いたところに右ヒジ打ちでテンカウントを聞かせる圧倒勝利。防衛ごとに踏み込む勢いが増してきた勝次。目黒ジムを継承する藤本ジムでは過去、ライト級で石井宏樹が8度、ミドル級で松本哉朗が6度防衛した記録が新日本キックには残ります。

このまま防衛記録を伸ばすにしてもラジャダムナン王座に挑むにしても、注目を集める存在の勝次。ラジャダムナン・ライト級チャンピオンは梅野源治(PHOENIX)が居て、日本人的には好カード。しかし、タイ現地でやるべきタイトルであり、挑戦権争いでも狭き門の殿堂王座であります。

勝次vsジョニー・オリベイラ。初回早々から飛ばした勝次の前蹴り命中(2016年12月11日)

緑川創vsイッキュウサン。蹴られても攻める意欲は緑川の力(2016年12月11日)

緑川創vsイッキュウサン。我慢比べで優った緑川の攻勢(2016年12月11日)

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(元・日本W級C/藤本/70.0kg) vs イッキュウサン・ペップームムエタイ(タイ/69.15kg)
勝者:緑川創 / TKO 5R 2:10 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

初回から様子見のパンチとローキックで攻める緑川だが、重たくしぶといタイ選手の手数も減らず、3ラウンドにはヒジ打ちを貰って額を切られる瞬間もあるも、緑川はやや攻勢が増し、4ラウンドに更に勢いづいた緑川が第5ラウンドに左ボディブローから左ヒザ蹴りでようやく沈める。

◆68.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城68.0kg) vs レック・エイワジム(エイワスポーツ/68.0kg)
引分け / 0-1 (29-29. 29-30. 29-29)

◆73.0kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.0kg) vs コーンリーチ・エスジム(カンボジア/72.7kg)
引分け / 0-1 (29-29. 29-29. 29-30)

他、6試合を割愛しています。

◆取材戦記

12月5日のKNOCK OUT興行が終ってのふたつの興行でした。特に日本キック連盟興行では「KNOCK OUT」を意識した、マイクによる発言で目指す先が見えてきて、「そこに出るんだ」といった意識を感じます。新日本キック協会ではその類いの発言は無いものの、最高峰への意欲は以前より増しています。

緑川創と対戦した“イッキュウサン”は同名のタイ選手が存在するそうで、最近、ややこしいタイ選手名が増えています。第2試合に出場し、皆川裕哉(藤本)に判定で敗れたラジャサクレック(タイ)も同名のラジャサクレック・ソー・ワラピン(タイ)が居て、うっかりすると扱いに困ります。外国人選手名は通常使われるリングネームが当然としても、すべてパスポートから分かる本名も付随して欲しいものです。

私(堀田)は最近でも在日タイ人元選手で、レフェリーを務めるソンマーイ・ケーウセーン氏をチャンデー・ソー・パランタレー氏と顔が似ていて間違えていたことがありましたが、最近のタイ選手名には戦歴経歴にも気をつけなければならないマスコミ陣であり、直接選手に聞く事が確実で、キック取材に於いては英語とタイ語は学んでおいた方が良さそうなこの頃であります。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『NO NUKES voice』第10号[特集]原発・基地・震災・闘いの現場

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2017年1月号!

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』