田村聖vs西村清吾。ヒザで切られた西村(右)の流血後も互いの最後のラッシュをかける

田村聖(右)vs西村清吾。梅野源治も西村の応援に現れアドバイスを送る

西村から逆転のダウンを奪った田村

田村聖(右)vs 西村清吾。西村の応援団が100人を超える大声援の中、王座は田村が制す

主要3試合がすべて熱い展開を見せました。今活発な活動を始めた「KNOCK OUT」イベントの影響を受けている活気と、フリージムとの交流戦が増えたことから、NKBには少ないムエタイテクニシャンタイプの選手との対戦は新たな成長を促す影響を受けています。

高橋三兄弟の飛躍が期待されるNKBは、日本人主要クラス対決を避けず進む展開には好感が持てる団体として、今後も試練に立ち向かいながらNKBを背負って行かねばなりませんが、その過程を見守るファンは多いでしょう。

◎神風シリーズ vol.1 / 2月5日(日)後楽園ホール17:30~21:30
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第6代NKBミドル級王座決定戦 5回戦

1位. 田村聖(拳心館/71.9kg)vs 2位.西村清吾(TEAM-KOK/72.4kg)
勝者:田村聖 / 判定2-0
主審:前田仁 / 川上49-47. 馳49-47. 亀川47-47

高橋兄弟に負けない盛り上がりを見せた、昨年10月の凡戦を払拭する西村の先手を打つパンチと蹴りと田村の踏ん張り。「一発で倒す練習をしてきました」という田村はラストラウンド終盤にロープ際での連打から組んでのヒザ蹴りを西村の顔面に当て形勢逆転のダウンを奪う。立ち上がったところを更にヒザで攻め2度目のダウンを奪ったところで試合終了。

4ラウンドまで西村優勢で進んだ採点としては難しい接戦の終了だったが、2者が田村を支持して新チャンピオン誕生。西村は初黒星。

◆56.0kg契約5回戦

NKBバンタム級チャンピオン.高橋亮(真門/55.6kg)
vs
知花デビッド(元・WBCムエタイ日本バンタム級C/エイワ/55.8kg)
勝者:知花デビッド / 判定0-3
主審:鈴木義和 / 亀川47-49. 馳48-49. 前田48-49

高橋亮vs知花デビッド。ムエタイ技の距離は知花のヒジがヒット、瞬間技

高橋亮vs知花デビッド。打ち合えば高橋亮もチャンスあり

アウェイのリングで勝利を収めた知花デビッドとエイワスポーツジム陣営

三兄弟で一番先に王座に就いている次男・亮は交流戦でも一歩先行く存在で勝敗は3勝3敗ながら、昨年10月にWPMF日本スーパーフライ級チャンピオン.佐々木雄汰(尚武会)に判定勝利する存在感を見せました。

キックボクサーとしての高橋亮はパンチとローキック主体に鋭く攻めるが、ムエタイトレーニング豊富な知花は接近戦でのあらゆる攻撃パターンを持っており、ヒジを含むその当て勘が高橋亮を上回りました。

エイワスポーツジム所属選手相手に2敗(渡辺優太戦、竹内将生戦)していた高橋亮はリベンジすべき同ジム相手が3人となりましたが、負けて課題は残るも今後に期待が掛かる存在です。

◆ライト級5回戦

NKBフェザー級1位.高橋一眞(真門/61.23kg) vs NKBライト級7位.洋介(渡辺/61.23kg)
勝者:高橋一眞 / TKO 5R 2:51 / カウント中のレフェリーストップ
主審:川上伸

昨年の王座決定戦から交流戦にかけての主要試合で、3連敗の壁に当たった感の高橋三兄弟・長男、高橋一眞が「チャンピオンに成れないなら辞めようかと思った」というが、ライト級に上げて再起を決意。ハイキックが速く鋭く洋介を攻める。

元々強い蹴りの攻撃力を持っているが、久々に強い蹴りが活かされた展開となる。5ラウンドをフルに活用し戦い方を磨きながらの再起戦は、最後にKOを意識した中で右ハイキックで仕留める劇的KO勝利を収めました。

KOを狙った高橋一眞のハイキックが洋介にヒット

高橋一眞vs洋介。倒せた、勝った、その瞬間

長いスランプから脱出した高橋一眞。喜びが表情に表れる

◆バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.前島マルコス(テツ/53.52kg)
vs
海老原竜二(神武館/52.35kg)
勝者:海老原竜二 / 判定0-3
主審:馳大輔 / 前田25-30. 川上25-30. 鈴木25-30

他、7試合は割愛。

◆取材戦記

NKBとは何ぞや!? という解説から入ってはクドイ話になるので簡潔に言いますと、日本キックボクシング連盟とK-U(キックユニオン)が共同で認定するタイトルで、2000年頃、ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)とアジア太平洋キック連盟(APKF)を含む4団体で合体。トーナメントを経て2002年からタイトル化しました。

その後、NJKFとAPKFが離脱しています。その為、弱体化が進みましたが、2014年からの小野瀬邦英体制と高橋三兄弟の出現で活気が出てきたことで再浮上、今後の進化が期待できるところです。

更に古い時代(昭和40年代)の全日本キックからの腐れ縁も含む歴史的話題多き団体でもあるので、この成り行きを、弱体化しようが観客が少なかろうが消滅しようが発展しようが成り行きを見続ける必要性はあるのではと思う観戦記に繋がっています。当然、ここから這い上がる高橋三兄弟がNKBに神風吹かせる団体飛躍に導いて欲しいと思うところであります。

控室で高橋亮にインタビューしていたのが竹村哲氏。話の進め方の上手いこと。明るく話しかけ、痛みが分かる選手経験者でもある為、的確な突っ込みもあり、インタビューされる選手も話し易いことでしょう。ちょっと盗み聴きながら参考になる素人の私でした。

2月12日の「KNOCK OUT vol.1」に、NKBから高橋一眞に次ぐ二人目の出場となる村田裕俊(八王子FSG)は、昨年9月のKNOCK OUT記者会見初戦で高橋一眞を1ラウンドKOした森井洋介(ゴールデングローブ)と対戦します。村田裕俊は昨年4月にその高橋一眞に雪辱してNKBフェザー級王座に就いた選手で、高橋一眞を下した者同士の対戦が話題作りの因縁めいたカードのひとつとなっています。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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