世界中で、私と同じような「危惧」を密かに想起している人が数知れずいるに違いない。ちょっと近・現代史を知っていて、政治に興味があり、政治の裏面は血塗られていることを承知している人であれば、簡単に導かれる仮想だ。

私の「危惧」は表裏合わせ鏡のようなものだ。その対象は米国大統領ドナルド・トランプ──。誤解なきように断っておくが、私はトランプの支持者ではないし、正直に告白すればトランプの政策や人物像にはほとんど興味がない。しかし、就任後数日で9本の大統領令に署名したこの男について、穏当ならざる予感がある。私の予感は2つあり、おそらくその2つともが外れることはないであろう。

もし、トランプが4年間の大統領任期をまっとうすることになれば、いま、予想もできない理由と、構図による大規模な戦争が起きるだろう。米国対中国といった構図ではおそらくあるまい。そしてその戦争に日本は否応なく巻き込まれるだろう。また米国内での内戦が起こる可能性だって排除はできない。

その延長戦上に、不謹慎ではあろうが、私は「トランプ暗殺」の可能性を消し去れない。どう見ても一時的な人気に便乗してはいるトランプではあるが、ウォール街や国際金融資本との利害相反は強まる一方であり、米国では、日本以上に嫌われる「朝令暮改」が外国人の入国制限などで目に余る。米国のテクノクラートやシンクタンク、さらには政権周辺や、中枢には「目障りな」人間がトップに座したとき、それを取り除く「誰が言い出すでもない、いつもの力学」が働く。これは映画『JFK』の中でも指摘されている通りだ。

ニクソンがウォーターゲート事件で辞任を余儀なくされたのも、J・F・ケネディが暗殺されたのも、理由こそ違え米国権力中枢や大資本(エスタブリッシュメント)との利益相反を引き起こしたからに他ならない。トランプは大金持ちの経営者だからそんなことは起こらないだろうと主張する方もいる。私だって「トランプ暗殺」を望んでいやしない。でも過去の米国権力史を紐解けば、これほど「誰が言い出すでもなく、いつもの力学」が動き出すのに条件が整いすぎている人物は、見たことがない。

ケネディは共産主義者、ハーヴェーイ・オズワルドに暗殺された、と一応正史の教科書には書かれてはいるけれども、そんなものを信じ込んでいるのは歴史や政治がテレビの画面や、新聞紙上で伝えられるように、実態から100キロ以上離れた、虚構の意味付けがなされていることに気が付かない、善男全女の皆さんだけだ。横から眺めなければ事実には肉薄できないと知っている人々の間では誰も信じられてはいない。ケネディ暗殺については、その立案者の見立てが浅すぎたという面も指摘せねばならないだろう。

ソ連にシンパシーを持つオズワルドの犯行というストーリーは、分かりやすくはあるが、単純にすぎるのであって、それゆえ逆にリアリティーを欠くのだ。あたかも米国に追放されていたベニグノ・アキノがフィリッピンに帰国したとたん、空港で射殺されたように(この時も犯人は「共産主義ゲリラ」とマルコス政権は発表したが、フィリピンをはじめ国際社会はそれを信用せず、結局マルコス政権は崩壊、マルコスはハワイへ亡命することになる)。

しかしながら米国の伝統ともいえる、「誰が言い出すでもない、いつもの力学」は既にスケジュールを定めて稼働を始めている可能性がある。私の手元にはわずかではあるが、その兆候を示す証拠もある。繰り返し不吉な物言いで恐縮ではあるが、「4年以内の戦争か、トランプの暗殺か」。どちらが選ばれるかを私は言い当てられない。しかしそのいずれかが現実のものにあろうことは、かなりの確信をもってお伝えできる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』