選挙速報である。北海道と長野の補選、広島再選挙、名古屋市長選で自民党の敗北が確定した。0勝4敗だが、そのうち北海道2区は自民党員の個人的な立候補である。おもな候補者名と23時現在の当落をお知らせする。

【衆院北海道2区補選】
〇当確 松木謙公(62) 立民(国民・共産・社民推薦)
    山崎 泉(47) 維新
    斉藤忠行(29) N教党(旧N国党)
    長友隆典氏(52)自民党員

※衆院北海道2区の補選は、自民党が候補者の擁立を見送ったことで、野党候補松木謙公の圧勝に終わった。開票5分後には当選確実が決まる。


◎[参考動画]衆院・北海道2区補選 立憲・松木謙公氏が当選

【参院長野補選】
〇当確 羽田次郎(51) 立民(国民・共産・社民推薦) 
●    小松 裕(59) 自民(公明推薦) 
    神谷幸太郎(44)N教党

※参院長野選挙区は羽田雄一郎元国交相の死去にともなう補選で、弟の羽田次郎が当選。弔い選挙でもあり、当初から野党の圧勝が予想されていた。北海道と同じく、開票5分後に当選確実となった。


◎[参考動画]参院・長野選挙区補選、立民・羽田次郎氏が当選確実

【参院広島再選挙】
〇当確 宮口治子(45) 諸派(立民・国民・社民推薦) 
●    西田英範(39) 自民(公明推薦) 
    山本貴平(46) N教党

※河井案里の当選取り消しをうけて、再選挙となった広島参院選挙区は、与野党の一騎打ちとなったが、野党候補宮口治子の勝利に終わった。県連会長の岸田文雄政調会長にとって、厳しい結果となり、ポスト菅の一番手から大きく後退した。


◎[参考動画]宮口はるこからのメッセージ(4.25 広島 参議院再選挙候補)

【名古屋市長選挙】
〇当確 河村たかし(72) 減税日本 
●    横井利明 (59) 無所属(自民・公明・立民・国民・連合愛知推薦) 

※河村たかしと横井利明の事実上の一騎打ちとなった名古屋市長選挙は、選挙につよい河村の勝利となった。大村秀章愛知県知事リコール運動における、署名の大量偽造に加担した説明責任もないままの当選となった。大阪における維新の基盤の強さとともに、地方政権の独自性は、それとして尊重されるべきだろうが、偽造署名はあまりにもみっともない。


◎[参考動画]名古屋市長選が投開票 現職の河村たかし氏事務所の様子(2021年4月25日)

総選挙の前哨戦、政権交代も展望される選挙の年は、第2ラウンドで自民党が敗北する結果となったのである。すでに山形県知事選挙、千葉県知事選挙、北九州市議選で大敗し、政権交代への流れが出来つつある。新聞各紙、テレビ局の支持率では40%を維持している自民党が、なぜか選挙では勝てない。

第3ラウンドである東京都議会選挙を前に、自民凋落の理由を分析しておく必要があるだろう。

55年体制(自民党成立)以降、これまでに政権交代は2度あった。一度目は1993年、日本新党(連立政権)の細川護熙政権。二度目は2009年、民主党の鳩山由紀夫政権である。

細川政権の場合は自民党の内部分裂、および新党ブーム(日本新党・新生党・新党さきがけ)があり、それ以前に社会党のマドンナブームによる躍進など、政治の流動化による大規模な政界再編がもたらしたものだった。

いっぽう2009年の民主党政権は、第一次安倍政権下2007年の消えた年金問題に端を発した自民党長期政権への批判だった。安倍政権の「お友だち内閣」閣僚のドミノ倒し的な不祥事、失言による交代、そしてそれを批判する民主党への期待が、07年の参院選挙における自民党の敗北へ。2008年の都議選における大敗、そして2009年の総選挙における歴史的大敗(民主党308議席・自民党119議席)へと結果したのだった。安倍の病因辞職から、選挙をへないまま福田康夫、麻生太郎と、短期政権がたらいまわしされることに、自民党支持層もふくめたNO!が突き付けられたものだ。

こうしてみいると、政権交代には理由があることがわかる。

◆安倍晋三復活への道すじ

ひるがえって、現状はどうだろう。コロナ禍に苦悶する菅政権は、オリンピック開催問題でゆきさきの見えない政治的危機を内包している。ちなみにオリンピックはIOCの存続(放映権収入)という前提から、無観客でも開催されるのは必至であろう。

政権不支持の要素としては、安倍政権時代の「森友・加計・桜を見る会」政治資金疑惑、アベノミクスが株主を潤おしても、庶民の生活に好況感がもたらされなかったことが挙げられる。まさに安倍晋三はコロナ禍とともに、みずからの旧悪が批判されることで、火だるまになるのを怖れて病因退陣したと指摘しておく必要があるだろう。

したがって、菅政権が一敗地にまみれたとき、そしてコロナ禍が免疫獲得で克服されたとき、「日本を再建する」というスローガンで再登板する可能性がある。菅では戦えない選挙も、安倍の復帰なら可能性があるといおうものだ。

ここから先は、政治家の容姿も問題になる局面だ。見るからに「貧相」で「辛気臭い」「華がない」菅では困る。現状の自民党の敗北は、じつはこのあたりが理由なのかもしれない。まことに残酷なことだが、政治家は容貌も政治なのである。
たとえば1989年の宇野宗佑政権で、宰相にふさわしくない容貌と女性問題が、漫画風刺されたのを思い起こせば、その後の宇野政権の参院選における敗北、二カ月での退陣も説明がつくであろう。

加えて、再三指摘してきた演説力のなさ。プロンプターがなければ、満足に正面を見ていられない会見、そして秘書官頼みのトホホな答弁。


◎[参考動画]国民投票法改正案、安倍前総理“早期成立を”

◆第3ラウンドを予測する

前述したとおり、第3ラウンドは都議選挙である。2009年の政権交代の前哨となったのが08年の都議選であり、いったん動きはじめた政権交代への流れは止め度を知らなかったものだ。

前回の都議選では、公明党の協力を得られなかった自民党が巻き返しに出るか、都民ファーストの会が前回の小池旋風からどこまで地域政党として地盤を築いたかが勝敗を左右するところだ。国政での政権交代をめざす立憲民主、国民民主、共産党、れいわ新選組は、地力が問われることになる。現在の立候補予定数、および( )内は現有勢力である。

自民党        59人(25)
都民ファーストの会  44人(46)
公明党        23人(23)
共産党        29人(18)
立憲民主党      27人(7)
東京みらい       3人(3)
国民民主党       3人(0)
日本維新の会      6人(1)
れいわ新選組      3人(0)
NHK受信料を支払わない方法を教える党 3人(0)
生活者ネットワーク   3人(1)
新風(自民)      1人(1)
自由を守る会      1人(1)

7月4日投開票の都議会選挙は、7月21日から競技が始まるオリンピックとかさなる。遅くとも告示日の6月25日には、オリンピック開催の概要が決まっているだろう。

すでにコロナの第三次緊急宣言によって、プロ野球と大相撲(5月場所)に無観客試合の要請があった。東京六大学野球は5000人限定だったところ、25日の開催から無観客となった。

このまま行けば、おそらくオリンピックは国民の大半が反対、にもかかわらず無観客で開催されるであろう。オリンピックが民意によるものではなく、IOCおよび各種競技団体、協賛スポンサー団体、何よりもアメリカ三大ネットワークをはじめとする放送局・広告業界のビジネスであるからだ。

民意を無視した利益優先の競技大会が、それでもスポーツの感動を生むのか、誰も中止を言い出せなかった無責任な茶番劇となるのか。そこはまさにJOCおよび東京都の運営の手際によるのかもしれない。参加する選手たちには奮闘して欲しいものだが、政治が利用してきたオリンピックに、ほかならぬ政治が翻弄される可能性が出てきたと指摘しておこう。(記事中敬称略)


◎[参考動画]自民党・二階幹事長 “東京五輪中止も選択肢” コロナ感染状況で(2021年4月15日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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