一つ一つの試合にテーマがあり、次へ繋げる目標持った選手の頑張りが見られた幾つもの試合。

応援してくれたステージ側の仲間へ感謝を述べた永澤サムエル聖光

永澤サムエル聖光が終始圧力を掛けWMOインターナショナル・ライト級王座獲得。

モトヤスックは僅差ながら小原俊之に判定勝利。持ち味出した両者の攻防。

藤原乃愛がヒジ打ち有効ルールで女子ムエタイ戦士を迎え撃っての圧勝。

瀧澤博人は11月の興行に向け自己アピール目指すも、判定勝利でマイクは控えめ。

光成は6月12日に市原臨海体育館でチャンピオンの今野顕彰に挑戦予定だったが、今野の怪我による引退の為、ボーイとの査定試合にKO勝利でこの協会ミドル級王座に昇格認定。

◎KICK Insist.13 / 7月17日(日)新宿フェース
主催:(株)VICTORY SPIRITS
認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)、World Muaythai Organization(WMO)

第1部(14:00~16:15)

◆第6試合 57.5kg契約5回戦

瀧澤博人(ビクトリー/57.5kg)
      VS
ガイヤシット・ヒカリマチジム(タイ/56.7kg)
勝者:瀧澤博人/判定3-0
主審:椎名利一
副審:仲50-47.宮沢49-48.桜井50-47.

(瀧澤博人は現・WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン)
(ガイヤシットは元・ラジャダムナン系バンタム級チャンピオン)

初回から瀧澤博人が左ジャブと右ローキックでけん制しながら距離を図り、ラウンド毎に的確差増していく。様子見が長い感じではあったが、5回戦の長丁場と成れば戦略的に後半勝負でもいいだろう。ローキックは結構ヒットし、倒せるかという流れを作ったが、倒し切れないもどかしさは残った。

「次に繋げる結果を残せてまずは良かった。」試合前に宣言していた11月興行でやりたい試合をアピール。世界と冠が付くタイトルに挑戦したいこと。「今の自分なら出来ます」と宣言。

次第に距離を詰め、ヒジ打ちヒットさせた瀧澤博人

◆第5試合 ミドル級5回戦

JKAミドル級1位.光成(ROCKON/72.1kg)
       VS
ボーイ・オズジム(タイ・クラビー県出身/30歳/73.0→72.57kg)
勝者:光成/TKO3R1:43/カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

ボーイは在日タイボクサーで昨年11月21日には、同・協会ミドル級チャンピオンの今野顕彰に3ラウンド判定勝利している。

身体は丸くなった体型だが、ベテランの体幹は侮れない。倒す気満々のボーイは光成に強打を振るい、重い蹴りをヒットさせた。光成も、今野に勝っているボーイを倒して勝ちたい気合い満々で、次第にスタミナ切れが伺えるボーイにボディーブローをヒットさせるとボーイは堪らずノックダウン。立ち上がる姿勢を見せるも諦めたか、カウント9でファイティングポーズとれず、レフェリーストップの裁定を受けた。

ボーイのスタミナを削る攻勢からボディーブローで仕留めた光成

◆51.5kg契約3回戦 試合中止 

響貴PKセンチャイムエタイジム(53.4kg)vs西原茉生(治政館/51.35kg)

前日計量で響貴が1.9kgオーバー。グローブハンデや減点の対応策も議論されていたが、協議成立成らず、試合そのものが中止となった。

◆第4試合 54.5kg契約3回戦

JKAバンタム級3位.阿部泰彦(JMN/54.0kg)
       VS
NJKFバンタム級3位.誓(=飯村誓/ZERO/54.5kg)
勝者:誓/判定0-3
主審:仲俊光
副審:椎名27-30.宮沢27-30.桜井27-30

誓のスピードで先手を打つ攻め。パンチとローキック、ボディブロー、接近戦ではヒザ蹴りと多彩に攻めた誓。耐える阿部泰彦だが蹴り返し、決定的ダメージを負わないのがベテランの技。若い勢いの誓がフルマークの判定勝利。

21歳の誓が44歳の阿部泰彦を圧倒した展開

◆第3試合 57.0kg契約3回戦

JKAフェザー級2位.皆川裕哉(KICKBOX/56.8kg)
      VS
JKAバンタム級2位.義由亜JSK(治政館/56.9kg)
引分け0-0
主審:桜井一秀
副審:仲俊光29-29.宮沢29-29.椎名29-29

義由亜の長身からくる手足の伸び有る蹴りが目立つが、皆川のアグレッシブなパンチと蹴りが噛み合う展開。やや義由亜が優勢な終盤、皆川が終盤に義由亜をロープに詰めてパンチ連打する展開を見せて、引分けに持ち込んだ流れとなった。

皆川裕哉と義由亜JSKのスピーディーな攻防は勝利を導くに至らなかった両者

◆第2試合 62.0kg契約3回戦

岡田明宏(ラジャサクレック/61.6kg)vs河崎鎧輝(真樹オキナワ/62.0kg)
勝者:河崎鎧輝/判定0-3(27-30.27-29.27-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

小野拳大(KICKBOX/53.0kg)vs甲斐喜羅(ビクトリー/52.1kg)
勝者:甲斐喜羅/判定0-3(27-30.27-30.28-30)

第2部(18:00~20:47)

◆第7試合 WMOインターナショナル・ライト級王座決定戦5回戦

WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン.永澤サムエル聖光(ビクトリー/61.0kg)
      VS
コンデート・ポー・パジャンシー(タイ・ペッチャブーン県出身/60.65kg)
勝者:永澤サムエル聖光/判定3-0
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:椎名利一49-48.シンカーオ49-47.アラビアン長谷川49-48
(コンデートはタイ国ジーパラワットスタジアムで60kg級トーナメント制覇経験有)

永澤サムエル聖光が初回からローキックで圧力掛けていく。下がるコンデートを追う形が続いたが、第1ラウンド終盤には永澤をヒジ打ちで迎え撃ち左眉をカットする侮れない技。下がって左へ回り続けるコンデートは首相撲もヒザ蹴りも見せないが、時折見せるミドルキックでやや反撃に出る。倒しに行く姿勢でコンデートを追い続けた永澤が主導権支配し内容的には大差と見える展開で終了。インターナショナル王座獲得となった。

ヒジ打ち貰う不覚も流血しながら終始コンデートを追い続けた永澤サムエル聖光

◆第6試合 69.0kg契約3回戦

JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(=岡本基康/治政館/69.0kg)
       VS
小原俊之(キングムエ/69.0kg)
勝者:モトヤスック/判定2-0
主審:宮沢誠
副審:仲30-29.桜井29-28.椎名29-29.

小原俊之が蹴りの圧力で出るが、モトヤスックも的確な蹴りとパンチで応戦。下がらない展開は見応えある攻防となったが、どちらが主導権奪ったか難しい見極めもモトヤスックが僅差の判定勝利。

モトヤスックが小原俊之に右ハイキック、両者の力強いヒットが目立った

◆第5試合 女子45.5kg契約3回戦

女子(ミネルヴァ)ピン級チャンピオン.藤原乃愛(ROCKON/45.15kg)
      VS
ペッテァー・ソー・ソピット(タイ/43.55kg)
勝者:藤原乃愛/TKO3R0:21/レフェリーストップ
主審:椎名利一

初のタイ選手、初のヒジ打ち有効試合となった藤原乃愛。これが希望だったと言うとおり、しっかりヒジ打ちも見せ、前蹴りとミドルキックでペッテァーを吹っ飛ばす勢いの藤原。第2ラウンドにはミドルキックでノックダウンを奪い、第3ラウンドには圧倒的流れが続く中、藤原のミドルキックで崩れたペッテァーにレフェリーが試合をストップし、藤原の圧勝TKOとなった。藤原乃愛はこれで7戦6勝(1KO)1分。

シャープな蹴りは毎度の藤原乃愛。ヒジ打ちヒザ蹴り使いこなし圧倒した

頑丈なガン・エスジムに圧倒された睦雅

◆第4試合 ライト級3回戦

JKAライト級1位.睦雅(ビクトリー/61.1kg)
       VS
ガン・エスジム(元・ラジャダムナン系フェザー級7位/タイ/61.0kg)
勝者:ガン・エスジム/判定0-3
主審:桜井一秀
副審:宮沢29-30.仲29-30.椎名28-29.

ローキックで様子見の序盤。ガン・エスジムは頑丈な体格と重い蹴りで前進。睦雅は蹴っても下がらないガンに攻め倦むが、圧された展開でも落ち着いた表情でパンチと蹴りで攻めた睦雅。僅差ではあったが、ガン・エスジムの牙城を崩せない展開で終わった。

◆第3試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級1位.櫓木淳平(ビクトリー/56.8kg)
      VS
TAKAYUKI(=金子貴幸/REV/57.0kg)
勝者:TAKAYUKI/TKO3R2:56/ヒジ打ちによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光

初回にTAKAYUKIの右ストレートで櫓木があっけなくノックダウンも第2ラウンドには櫓木のヒジ打ちか、TAKAYUKIが右眉上辺りをカット。勢い付いていたTAKAYUKIは怯まず攻勢を続け、第3ラウンドには右ハイキックを見せ、これが櫓木の額を切ったか、流血が激しくなり、ドクターチェックの末、レフェリーが試合をストップした。

櫓木淳平からノックダウンを奪い、勢い有る攻勢を続けた金子貴幸

◆第2試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級2位.ダイチ(誠真/66.3kg)vs鈴木凱斗(KICKBOX/66.5kg)
勝者:ダイチ/TKO2R1:48/カウント中のレフェリーストップ

◆第1試合 58.0kg契約3回戦

勇成E.D.O(E.D.O/57.7kg)vs熊谷大輔(GT/57.75kg)
勝者:勇成E.D.O/判定3-0(30-28.30-26.30-28)第2Rに熊谷に減点1

《取材戦記》

瀧澤博人が挑みたいのは、世界という冠が付くタイトル。更にはラジャダムナンスタジアム等の殿堂王座挑戦だろう。

「今日の内容では認めて貰えないと思いますが、でも目標は高く持ってチャンピオンベルトの懸かったタイのトップとやりたいです。今日の結果は何とも言えないので、また11月のビクトリージム興行で強い相手に挑みたいです。」と応えた滝沢博人。

世界の冠が付いたタイトルは幾つも存在し、WMOでも、許されるなら国内でも度々行われるWBCやIBFムエタイというタイトルもあるが、団体の壁が障害にならなければ、勢いに乗っているうちに出来ることから挑戦させてやりたいものである。

永澤サムエル聖光が前回3月の前哨戦に於いて5回戦を戦い抜く勝利と研究を持って今回の挑戦で王座獲得。11月興行ではタイトルが懸かるか未定だが、瀧澤博人と共にタイの名の有る強豪が予定されている模様。

モトヤスックは6月19日の「THE MATCH」に、知人に連れて行って貰って勉強になったことは多いと言うが、そこでの複雑な気持ちがマイクアピールで言うように、「俺が大きなイベントに出場してビッグカードを戦うこと。そこに皆を連れて行かねばならない。」と語ったことにも、まずビッグイベントに呼ばれる存在とならねばならないという次なる目標があるだろう。

5月21日に女子のミネルヴァ・ピン級王座奪取した藤原乃愛も高校生のうちに世界タイトルを獲りたいとアピールした。現在高校3年生でまだ時間はあるが、来春までに挑戦権を得られるか。

次回ジャパンキックボクシング協会興行は9月18日(日)に於いて、おそらく武田幸三さんのChallenger.6が開催。11月20日(日)にはKICKInsist.14が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」