原点回帰の一年、令和の全日本キックボクシング協会の躍進! 堀田春樹

令和全日本キック初のチャンピオン、瀬川琉がベテランのオーシャン・ウジハラに辛くも勝利。

全日本キックの将来を背負うであろう勇生はアグレッシブにヒジ打ちで圧勝。

期待の広翔も試合運びが上手く攻勢を維持して圧倒の勝利。

◎原点回帰 四ノ陣 / 12月28日(土)後楽園ホール17:30~21:24
主催:全日本キックボクシング協会 /

前日計量は27日14時より稲城ジムにて行われ、ヘビー級と女子は別格で未確認ですが、他は全員パスしています。戦績はパンフレットを参照し、この日の結果を加えています。

◆第13試合 60.0kg契約3回戦

全日本スーパーフェザー級チャンピオン.瀬川琉(稲城/1998.6.6東京都出身/59.8kg)
21戦14勝(4KO)6敗1分
         VS
オーシャン・ウジハラ(=氏原文男/無所属/1986.10.12高知県出身/59.8kg)
27戦13勝(8KO)14敗
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竜矢29-28. 和田30-28. 勝本剛司30-28

オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にWBCムエタイ日本フェザー級初代チャンピオンとなった心・センチャジム選手です。

初回、蹴り中心の様子見からハイキックも見せる瀬川琉。首相撲に移ると氏原文男のムエタイテクニックの圧力が優るが、離れると瀬川のサウスポーからの左ストレートヒットでリズムを掴んでいく。主導権を奪うには至らない両者のもどかしい互角の蹴り合いが続く中、瀬川が僅差判定勝利を掴んだ。

瀬川琉がいきなりのサウスポーからの左ストレートヒット
瀬川琉がいきなりのサウスポーからの左ストレートヒット
氏原文男はムエタイテクニックで攻め、瀬川琉が迎え撃った
氏原文男はムエタイテクニックで攻め、瀬川琉が迎え撃った
瀬川琉のカウンター左ストレートヒット、リズム掴んで僅差ながら勝利を導く
瀬川琉のカウンター左ストレートヒット、リズム掴んで僅差ながら勝利を導く

◆第12試合 スーパーライト級3回戦

勇生(ウルブズスクワッド/2005.石川県出身/63.3kg)5戦4勝(1KO)1分
      VS
ユン・ジソン(韓国/ 61.9kg)4戦3勝1敗
勝者:勇生 / TKO 2ラウンド 3分0秒 / ヒジ打ちによる左眉カット
主審:椎名利一

勇生は前回6月13日に滝口遥輝にKO勝利。両者、性格的にもアグレッシブに攻める中、我武者羅に出るユン・ジソンに対し、勇生の距離に応じて上下の蹴りパンチ、ユン・ジソンの蹴り終わりを攻めたりとテクニックが優っていく展開。第2ラウンド終盤に首相撲に移った中で、勇生の右ヒジ打ちがユン・ジソンの左眉上をカットした様子。レフェリーがタイムストップを掛けたのはラウンド終了ゴングと同時だったが、ドクターチェックに入り、傷が深くストップ勧告を受入れ、レフェリーストップとなった。

勇生が優勢に進めた中の右ストレートヒット
勇生が優勢に進めた中の右ストレートヒット
勇生がヒジ打ちで斬った後の左ハイキック、この後すぐレフェリーがタイムストップ
勇生がヒジ打ちで斬った後の左ハイキック、この後すぐレフェリーがタイムストップ

◆第11試合 バンタム級3回戦

広翔(稲城/ 53.4kg)4戦3勝(1KO)1敗
    VS
ハリィ永田(Astra Workout/ 53.5kg)32戦13勝17敗2分
勝者:広翔 / TKO 3ラウンド 50秒
主審:和田良覚

広翔は前回、9月6日に風間祐哉に判定勝利。

初回、蹴りの攻防から広翔の蹴りパンチヒザ蹴りで攻勢を強める。長身を活かしたハリィ永田が蹴りで攻めるも、広翔も距離を掴んで蹴り返し主導権を奪うと、首相撲から転ばせる技も使って優勢を目立たせた。

アグレッシブな両者、広翔は左ストレートを活かした攻勢
アグレッシブな両者、広翔は左ストレートを活かした攻勢

第2ラウンドも広翔のリズムで進み、終盤はローキックからパンチ連打で永田を劣勢に追い込んで終了。第3ラウンド、広翔は左フックで永田をグラつかせ、ヒザ蹴りからパンチ連打でノックダウンを奪い、更に猛攻でパンチ連打で圧倒し、崩れ行くところをレフェリーストップとなった。広翔のスピーディーさ、攻めの圧力はデビューから1年足らずで成長。来年はこの団体のタイトル争いに浮上するだろう。

広翔が圧倒していく中のヒザ蹴り、更にパンチ連打で仕留める
広翔が圧倒していく中のヒザ蹴り、更にパンチ連打で仕留める

◆第10試合 58.0kg契約3回戦

杉浦昴志(キックスターズジャパン/ 57.85kg)3戦2勝1分
      VS
中村健甚(稲城/ 57.8kg)3戦1敗2分
引分け 0-1
主審:勝本剛司
副審:椎名29-29. 少白竜29-30. 和田29-29

打撃はアグレッシブに多彩に出るまだ3戦目の両者。パンチと蹴りのコンビネーションが揃わず、勝ちに行く姿勢はあるが、これで倒そうという技が無い印象のまま引分けに終わった。

◆第9試合 52.0kg契約3回戦

吉田鋭輝(team彩/ 51.85kg)3戦2勝1敗
       VS
HIROKI(AKIRA ~budo school~/ 51.7kg)4戦3勝1敗
勝者:HIROKI / 判定0-3
主審:竜矢
副審:勝本29-30. 椎名29-30. 和田28-30

アグレッシブにパンチと蹴り、首相撲で組み合う攻防も見られる中、僅差ながらHIROKIの勝利。

◆第8試合 スーパーフライ級3回戦

横尾空(稲城/ 51.9kg)3戦2勝1分
     VS
風間祐哉(WSR三ノ輪/ 51.7kg)4戦1勝2敗1分
引分け 0-0
主審:少白竜
副審:勝本28-28. 椎名28-28. 竜矢28-28

横尾空は前回、9月6日に内山朋紀に僅差ながら判定勝利。風間祐哉は同日、広翔に判定負け。

初回、横尾空が飛びヒザ蹴りを出した後、パンチの攻防から風間裕哉も飛びヒザ蹴りを出し、これが効いたか、その後パンチが当たったか、横尾がノックダウン。呼吸を整える横尾にはまだ余裕ある表情。

第2ラウンドから横尾が冷静に試合を組み立て、風間を上回るパンチと蹴りで巻き返していくと、パンチを喰らった風間は鼻血が激しくなる苦しい展開。第3ラウンドにドクターチェックを受ける風間だったが、鼻は折れてはいない様子。完全に主導権奪った横尾が巻き返すもポイント的に引分けに終わった。

◆第7試合 68.0kg契約3回戦

義人(kickboxing Fplus/ 67.3kg)3戦2勝(1KO)1敗
       VS
石塚健太(武士魂 二代目闘心塾/ 66.0kg)1戦1敗
勝者:義人 / TKO 2ラウンド 1分44秒 /
主審:和田良覚

初回、パンチ中心の攻防から第2ラウンドも義人が打って出て組んでのヒジ打ちも打って攻勢を強め、更に組んでのヒザ蹴り、パンチ連打から右フックで石塚健太を倒すとレフェリーはほぼノーカウントでストップ。石塚は担架で運ばれた。

この日KO勝利から。義人は連打から左フックで仕留めていく
この日KO勝利から。義人は連打から左フックで仕留めていく

◆第6試合 女子48.0kg契約3回戦

牛山華子(HIDE’S KICK)1戦1敗
     VS
あー子(無所属)2戦2勝
勝者:あー子 / 判定1-2 (29-28. 29-30. 28-30)

この令和の全日本キックボクシング協会に於いては初の女子試合。そして3回戦ではあるが、男子と同じ3分制で行なわれた。

蹴りはパンチへの繋ぎ技でパンチ中心に攻めた両者。採点も分かれる差の付き難い展開はジャッジ三者が揃うラウンド無くあー子がスプリット僅差判定勝利。

◆第5試合 スーパーライト級3回戦

滝口遥輝(中島道場 / 62.6kg)3戦2敗1分
      VS
NAOKI(WSR西川口/ 63.35kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:NAOKI / KO 2ラウンド 2分4秒 /

パンチと蹴りの攻防はNAOKIが圧していく展開。NAOKIの組みに行ってのヒザ蹴りで滝口遥輝が身体をくの字に、うつむいてしまうのは危なくて守りにならない。

第2ラウンドもNAOKIのパンチからヒザ蹴りの攻勢で滝口からノックダウンを奪い、踏ん張る滝口はパンチで出るが再びNAOKIのヒザ蹴りに捕まり、計3度となるノックダウンによるNAOKIのKO勝利。

この日KO勝利から。NAOKIはヒザ蹴りで3度のノックダウンを奪って圧勝
この日KO勝利から。NAOKIはヒザ蹴りで3度のノックダウンを奪って圧勝

◆第4試合 ヘビー級3回戦

オマル・ファーレス(稲城)1戦1敗
     VS
ピクシー犬飼(府中ムエタイクラブ)3戦1勝1敗1NC
勝者:ピクシー犬飼 / 判定0-3 (26-29. 26-29. 27-30)

◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦

二宮渉(アウルスポーツ/ 54.85kg)2戦1勝1敗
       VS
馬上一樹(G-1 TEAM TAKAGI/ 55.3kg)4戦4敗
勝者:二宮渉 / 判定3-0 (28-26. 28-26. 29-26)

◆第2試合 スーパーライト級3回戦

野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 63.2kg)2戦2勝
      VS
小玉倭夢(無所属/ 63.15kg)1戦1敗
勝者:野竹生太郎 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)
主審:勝本剛司

野竹生太郎は勇生の実弟。パンチでリズム掴むと蹴りも優っていき大差判定勝利。

◆第1試合 スーパーフライ級3回戦

鬼久保海斗流(健成会/ 52.05kg)1戦1敗
      VS
井上蓮治(パラングムエタイ/ 51.95kg)1戦1勝(1KO)
勝者:井上蓮治 / TKO 2ラウンド 59秒 / カウント中のレフェリーストップ

スピーディーな両者の攻防。一つ一つの蹴りに場内両陣営の応援団の大声援に湧く。デビュー戦からこの盛り上がりはなかなか見られない光景。第2ラウンドには井上蓮治の左ストレートでノックダウンを奪うと井上が更に鬼久保海斗流をコーナーに追い詰め、連打から左ストレートで仕留めた。

《取材戦記》

「ウジハラは歳じゃん! 瀬川が圧倒しないと駄目でしょ!」というリングサイドで聞かれた試合前。

オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にアトム山田に判定勝利し、WBCムエタイ日本フェザー級初代王座獲得した心・センチャイジムで、翌年には眼の負傷もあってキックボクシングを離れ、長期治療の後、JBCの認可を受けプロテストを受け、フラッシュ赤羽ジムよりプロボクシングデビューを果たしました。諸々の経緯あって2019年にキックボクシング復帰に至っています。

ウジハラは「今回(瀬川琉に)負けたら引退と思っていましたが、ちょっと冷静に考えます。」とまだ戦う意欲有りの中、今後のことは考え直す様子が窺えました。
元々、センチャイジムではデビュー戦から5回戦だったという。

「キックボクシングは5回戦が基本だからね。」というセンチャイ会長の言葉だった。今回の試合も「5回戦で観たかった」という応援者の声があったという。

その試合は主導権支配には至らなかったが、組み立て方は衰えておらず、ここでの引退は勿体無いところである。もう暫く王座復帰を目指す、チャンピオンを苦しめる、若手の壁になるといった存在であって欲しい。

瀬川琉は「超ダメでした。試合早々に足痛めて蹴れなくなって課題だらけの試合でした。負けたとは思わなかったけど、もっとしっかり勝って、いろいろ言いたかったところは抑えて、出直しだなと思う感じです」と多くは語れない立場という振舞いで、来年に向けては前回リング上で語ったとおり、「全日本のベルトの価値を高めていくこと。他団体のトップどころと戦うリングに立てるように上を目指して行きます」というエース格の自覚がありました。

セミファイナルの勇生は「楽しかったです。今回、リラックスして倒すこと考えてやったら上手くいった感じですね」

「タイトル挑戦があるとしたら?」の問いに「来年中にはタイトル獲りたいですね」という回答でした。

対するユン・ジソンは勇生から受けたヒジ打ちによる傷が深くて骨まで達していた様子で、医務室で傷を縫う治療を受けていました。

セレモニーでは、9月17日に脳梗塞の影響で逝去されました、平成の元・全日本ライト級チャンピオン、須藤信充氏の追悼テンカウントゴングが行われました。御子息の須藤健太氏がジーニアスジムを受け継ぎ、運営していく模様。御挨拶ではマイクが要らないぐらい力強い大きな声で感謝の言葉を述べ、“須藤~信充~!”とコールしてリングを下りました。父親の活発さを受け継ぐ健太氏がまた各所でちょっとユニークな存在で盛り上げてくれることでしょう。

2024年9月、脳梗塞で亡くなられた須藤信充氏の御子息、村松健太氏が活気ある感謝の御挨拶
2024年9月、脳梗塞で亡くなられた須藤信充氏の御子息、村松健太氏が活気ある感謝の御挨拶

栗芝貴代表の今年の総評は、
「今年(2024)一年、全日本キック立ち上げて大成功だったと思います。他(団体)がどうと言うよりは我々がどういう姿勢で向き合って来たかというところ。来年に向けて、将来に向けて、子供たちに夢や希望を持てるキックボクシング競技にする為に考えてみて、一歩ずつそこに向かっていると間違いなく実感しています。それで賛同してくれる人が本当に今、どんどん増えているので、僕の熱量をどう伝えていくかというところです。来年(2025)は更にチャンピオンを、何とか勇生を中心に仕上げていきたいですけど、そこに追随するウチの協会の選手を来年もデビュー戦からどんどん追っかける選手を作らなきゃいけないですね」と語り、
正に一から始まった全日本キックボクシング協会が、他団体と比べられながらも成長は感じるところでしょう。まず興行の一年目終了。二年目に更なる進化があるかが注目です。

今回、国内加盟ジムが5件増え、A-BLAZE KICK、武士魂二代目闘心塾、百足道場、中島道場、ONE BOXING FITNESSと更に韓国のサムサンムジムが合流。加盟ジムが20件を超えるのはかつての新日本キック並みという勢いです。

令和の全日本キックボクシング協会、2025年の興行日程は3月28日(金)、6月20日(金)、10月5日(日)、12月28日(日)、いずれも後楽園ホール夜興行で開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年2月号

キックボクシング 2024年を振り返る 堀田春樹

2024年もキックボクシング界の話題は豊富でした。選手の活躍も各々ありましたが、各団体単位でも時代の流れと共に諸々の動きがありました。世間一般には注目されない小さな出来事でも、振り返っておきたい2024年の話題を纏めました。

◆全日本キックボクシング協会の初陣興行

2023年春に新日本キックボクシング協会から離脱した稲城ジム栗芝貴代表が同年8月1日、全日本キックボクシング協会を設立。原点回帰を掲げ、今年(2024年)3月16日に初陣興行を行ないました。12月28日までに計4回の興行では大半が新人戦で、正に一から始まった新団体でした。

1月20日の設立記者会見で栗芝貴代表は、「三年で全日本キックボクシング協会の名前を全国に轟かせる。三年でスター選手作る。後楽園ホールを満員にして、この三年で作り上げていくのが僕の責任と思っています。」と語りました。

デビュー戦からメインイベンターを目指す自覚を持たせ、試合をアグレッシブな展開に導いて新人にも大きい成長も見られました。

9月6日には初のタイトルマッチ、全日本スーパーフェザー級王座決定戦を行ない、瀬川琉(稲城)が仁琉丸(ウルブズスクワッド)を倒して最初のチャンピオン誕生となりました。二人はすでに新日本キックボクシング協会での戦歴ある選手でしたが、今後は各階級で全日本キックボクシング協会からデビューした選手らが王座を争っていくことでしょう。

2025年は設立から3年目。初陣興行から2年目。まだ全国どころか格闘技界にも存在感は薄い現在。2025年はどこまで浮上することが出来るか、まだまだ険しい道程が続きます。

令和の全日本キックボクシング協会初陣興行出場選手と栗芝貴代表(2024.1.20)

◆新日本キックボクシング協会の変化と江幡塁引退

新日本キックボクシング協会の一時代を担った江幡ツインズの塁が、前年2月に患った脳腫瘍の影響からドクターストップによる引退に踏み切りました。

選手として引退も、「新日本キックボクシング協会から世界を獲れるような強さ、そして自覚を持った選手を輩出していけるように力を尽くしていきます!」と昨年10月のリング上で語ったとおり、後進の指導には今後も続けて行く模様。

その一年前の時点では、「選手を諦めていない」という語りから、復帰して現役続行かと期待しましたが今後、願わくばプロモーターとして興行を担っていけば、また新日本キックボクシング協会の再浮上もあるかもしれない僅かな可能性も期待したいものです。

その新日本キックボクシング協会は選手層の薄さが表れる中、外国人選手によるメインイベンター起用や、Mixed Martial Arts(MMA)の試合もテスト的に開催されました。

今後、どのように進展していくかは未定ながら動向が注目されます。

江幡塁、清々しい引退式にて、愛娘と一緒に(2024.10.6)

◆武田幸三の一年

2023年10月にニュージャパンキックボクシング連盟に加盟し、主力プロモーターとして団体を率いる存在となった武田幸三氏。「NJKFをトップ団体に引き上げる」と宣言し、以前から掲げていた“CHALLENGER”というコンセプトの下、ここまで計6度の興行を前日計量と記者会見から盛り上げ、それまでのNJKF色をすっかり変えてしまい、以前のNJKFに無いインパクトある興行が続きました。

「本気でトップ狙って本気でトップの団体にしようと思っています。」と語った武田幸三氏。一年を経過した今後、更に世間にどれだけ選手の存在感、NJKFの存在感が訴えらるかが期待されるところでしょう。

武田幸三、NJKFでの所信表明演説(2023.11.12)

◆長江国政さん永眠

昭和の全日本キックボクシング協会隆盛期で、一時代を築いた長江国政さんが6月11日に肺癌の為、永眠されました。すでに述べた部分ではありますが、2018年頃から神経性の難病との戦いが続いていましたが、難病の悪化とは直接の関係は無い模様で、煙草を吸う姿を何度も見たことありますが、こんな影響もあったのかもしれません。

キックボクシングの主力関係者の訃報が聞かれること多くなった近年、それまではキックボクシング生誕から関わって来た選手、興行関係者が若かったことに尽きるでしょう。競技そのものが新興格闘技だった為、二十代で活躍した名選手らも今や七十代以降に突入している時代です。でもその七十代でジム復興や立ち上げも計画している若々しいレジェンドも居て、今後もどう展開するか注目したいところです。

長江国政メモリー、会場での展示にて(2024.7.28)

◆2025年に何を期待するか

各団体の興行の少なさ。ランキングの層の薄さが見られる各団体。過去には統一に向けた動きや、団体統一は目指さなくても、一定の団体が集まる統一チャンピオン制定がありました。

現在のNKBも初期は4団体が集まったものでした。WBCムエタイ日本統一ランキングも立ち上げから活発だった時期もありました。いずれも現在も継続されていますが、キックボクシング界を先頭切って率いるほどの注目度はありません。

近年の選手が目指すものはONE Championnship、KNOCK OUT、RIZINといったリングで勝負することへ方向転換されている現在です。本来の活性化した日本タイトルには至らないのか。そこに既存の団体の纏まりに希望を持ちたいところで、武田幸三氏や全日本キックボクシング協会の飛躍に期待が掛かります。

私が関わる独断による団体編の纏まりの無い語りとなり、他にも日本キックボクシング連盟やジャパンキックボクシング協会の活動もありますが、次回は選手編で2024年に勝ち負け関係無く、各団体の目立った選手の動向を拾ってみようと思います。

令和の全日本キックボクシング協会最初のチャンピオンは瀬川琉(2024.9.6)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

冠鷲シリーズ最終戦、勇志が王座戴冠となって今年を締め括る! 堀田春樹

テツジムから6人目のチャンピオン誕生。勇志が鎌田政興を圧倒して王座決定戦を制す。

次なるテツジム期待の雄希はランカーの佐藤勇士を倒す急成長。

蘭賀大介は苦戦の始まりから持ち直しの判定勝利。

◎冠鷲シリーズFINAL(vol.7) / 12月14日(土)後楽園ホール17:30~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第10試合 第17代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

2位.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.05kg)15戦11勝(5KO)2敗2分
          vs
4位.鎌田政興(ケーアクティブ/1990.5.6香川県出身/ 56.8kg)22戦10勝(3KO)10敗2分
勝者:勇志 / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木50-45. 高谷50-45. 笹谷50-44

両者は2020年12月に3回戦で対戦し、勇志が初回にノックダウン奪って判定勝利しています。前回10月19日の一人欠場による三名抽選準決勝戦を経て、この日迎えた王座決定戦。

手の内を知る中、初回早々から勇志の突進が凄かった。上下の蹴り、後ろ蹴り、右ストレート、間を置いて飛びヒザ蹴りやバックハンドブローと鎌田政興を倒さんばかりの圧力を掛けた。鎌田は反撃しても巻き返すような勢いは足りない。

勇志が多彩に攻めた中の飛びヒザ蹴りが鎌田政興にヒット

第2ラウンドには勇志が不意を突いた左ハイキックでノックダウンを奪った。攻めの勢いは衰えぬもタフな鎌田に攻め倦む流れに移り、勇志の攻勢は変わらずも後半に入ると疲れも見えて来てノックアウトには至らないだろうという空気が漂う。それでも大差で危なげなく進んだ。鎌田はパンチで逆転狙うが、クリーンヒットせず勇志に躱された。勇志は王座初戴冠。

ノックダウンを奪った勇志の左ハイキック、この後、鎌田政興は後方に倒れた
勇志が多彩に攻める中のローキックで鎌田政興を追い詰める

勇志は試合後、「鎌田はタフでしたね」

後ろ蹴りは何発かボディーヒットもあったが、アゴを狙ったか?の問いに、
「後ろ蹴りは適当です。ちょっと技見せようかなと思ってやったらあんな風になりました。まだまだ出してない技もあります」

圧倒に至った展開について、「スタミナはあったけど後半はちょっとしんどかったです。ノックダウンはあと2回ぐらいあったと思うんですけど、レフェリーがとってくれへんかったですね」

後輩を売り込み、「次、雄希がベルト狙って行きます」と、この日のアンダーカードでランカーの佐藤勇士に圧勝したバンタム級の雄希を称えた。

テツジム大阪のチームワークの勝利でもある

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

NKBライト級2位.乱牙(=蘭賀大介/ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 62.0kg)
10戦7勝(3KO)2敗1分
        vs      
スックワンキントーン・スーパーフェザー級5位.須藤誇太郎
(フジマキックムエタイ/2001.8.12神奈川県出身/ 61.85kg)10戦5勝(1KO)4敗1分
勝者:乱牙 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:加賀見29-28. 高谷29-28. 前田29-28

開始15秒程に須藤誇太郎の投げ落としに近い崩しで乱牙は後頭部を打ったか、脚が覚束ない動きになって劣勢に陥った。須藤誇太郎はチャンスでありながら乱牙を仕留めるに至らず、乱牙はダメージを引き摺りながらも徐々に巻き返しに掛かった。

抱え上げられ落とされた流れの乱牙は後頭部を打った


第2ラウンド終盤には須藤をコーナーに追い詰めパンチ連打で主導権支配する攻勢。第3ラウンドも圧力掛けて出た乱牙がパンチで須藤を追い詰め、倒すに至らずも形勢逆転の判定勝利となった。

盛り返す中の乱牙の連打

乱牙は来年2月22日、棚橋賢二郎とNKBライト級王座決定戦が予定されています。

◆第8試合 ライト級3回戦

NKBライト級3位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.0kg)
20戦7勝(4KO)9敗4分
         vs
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/ 61.1kg)7戦6勝(2KO)1敗
勝者:利根川仁 / TKO 3ラウンド 1分57秒 /
主審:鈴木義和

初回、パンチを軸にローキックを加えた交錯が続くと、利根川仁の右ストレートヒットし、山本太一がノックダウン。再開後直ぐ、利根川仁が飛びヒザ蹴り、ハイキック、パンチ連打で再びノックダウンを喫する山本太一。

利根川仁が優ったパンチの交錯、山本太一は距離感が狂ったか

第1ラウンドは凌いだが、第2ラウンド早々にも利根川仁の前進からパンチ連打でノックダウンを喫する山本太一。ところがここから山本太一が左ストレートで逆転ノックダウンを奪い反撃に転じた。経験値の差かと思われたが、追い込んでいく中、またも利根川仁の右ストレートがヒットするとゆっくりしたモーションで倒れ込む山本太一。立ち上がるが第2ラウンドは終了。

第3ラウンドも利根川仁が連打でノックダウンを奪い、打ち合いに出る山本太一と一進一退の攻防を続けながらカウンターパンチでこのラウンド2度目のノックダウンを奪うとレフェリーがカウント中の試合をストップし、利根川仁がTKO勝利となった。

劣勢の山本太一が逆転ノックダウンを奪った左ストレートヒット、会場を盛り上げた

竹村哲マッチメイカーは山本太一に対し、「ダメージ貰った中であそこからダウン取り返したことは凄く良かった。“太一やるじゃん”と、あれで会場がワーッと盛り上がった。試合としては凄く良かったよ!」と絶賛。

山本太一は「勝ち上がるには今後もこのスタイルで行くしかない。ステップ使って無難に勝っても、あんまり観衆の印象に残らずダメな試合になっちゃうし、今日は倒しに行こうかなと思ったけど、結果負けちゃったし。気持ちは弱かったです」

竹村氏に戦略的アドバイスを受け、今後も倒しに掛かる試合を見せればタイトル戦やビッグマッチ起用へも可能となって来る山本太一である(興行終了後、たまたま見つけた山本太一にインタビュー)。

◆第7試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/ 53.1kg)
22戦6勝(2KO)13敗3分
        vs
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/ 53.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:雄希 / KO 2ラウンド 2分30秒 /
主審:高谷秀幸

初回は両者、ローキックで距離感を探る様子見の中、雄希の蹴りの勢いで佐藤勇士にプレッシャーを与える。左ストレートでスリップダウンを奪うが、更に蹴りで誘ってパンチでノックダウンを奪い、攻勢を維持して効果あるヒットを繰り出した。
第2ラウンドも雄希の勢い止まらず、パンチ連打で2度ノックダウンを奪った後、勢い乗ったまま最後はヒザ蹴りをアゴ辺りにヒットさせ、3ノックダウンとなって圧倒のKO勝利。

雄希のヒザ蹴りが佐藤勇士にヒットしノックアウト勝利、ランカー破りの飛躍となった

◆第6試合 バンタム級3回戦

香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 52.5kg)4戦4勝(1KO)
        vs
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/ 53.2kg) 4戦3勝(1KO)1敗
勝者:香村一吹 / 判定3-0
主審:加賀見淳
副審:前田30-29. 鈴木30-28. 高谷30-28

初回早々は涌井大嵩が先手を打って組んでのヒザ蹴りを入れるが、香村一吹は慌てることなく離れて蹴りとサウスポーからの左ストレートで攻勢に転じる。

第2ラウンド、蹴りとパンチの攻防も香村のパンチと蹴りのコンビネーションが冴え、やや優った流れも相手を見てしまう間合いもあり、終了間際にはヒジかパンチかバッティングか、右頭部を斬る負傷をしてしまったが続行可能とされ、第3ラウンドも差は付き難い中、サウスポーからの左ストレートとすぐ蹴りに繋ぐ攻撃力優った香村が圧し切り判定勝利。

流血しながら攻勢を維持した香村一吹、渡邉ジム久々の新星である

◆第5試合 バンタム級3回戦

兵庫志門(テツ/1996.4.14兵庫県出身/ 53.52kg)15戦6勝(1KO)7敗2分
        vs
ベンツ飯田(TEAM Aimhigh/1997.4.17群馬県出身/ 53.25kg)17戦3勝(1KO)11敗3分
勝者:兵庫志門 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:前田30-27. 鈴木30-27. 加賀見30-27

兵庫志門がやや優る攻勢の中、最終第3ラウンドに兵庫志門ハイキックでノックダウンを奪ったが、引退試合のベンツ飯田は踏ん張って終了ゴングまで耐え切った。

◆第4試合 62.5kg契約3回戦

ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 62.25kg)
41戦7勝(3KO)30敗4分
        vs
辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/1984.3.13東京都出身/ 62.45kg)6戦2勝(1KO)1敗3分
引分け 三者三様
主審:高谷秀幸
副審:前田30-29. 加賀見29-30. 笹谷30-30

蹴りとパンチの決め手の無い攻防は差が付き難い展開で修了。第2ラウンドが三者三様になった以外は互角の採点だった。

◆第3試合 ウェルター級3回戦

石原尚斗(テツ/1997.9.10岡山県出身/ 66.4kg)2戦1勝(1KO)1分
        vs
マナチャイ・エイムハイ(TEAM Aimhigh/1995.9.14群馬県出身/66.55kg)10戦2勝7敗1分
引分け 0-0 (28-28. 28-28. 28-28)

初回、パンチ連打でノックダウンを奪った石原尚斗だったが、巻き返していくマナチャイ。結果的にポイント追い付いて引分けとなった。

◆第2試合 51.5kg契約3回戦

緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/ 51.4kg)3戦3勝
        vs
真虎(kick life/2002.6.28埼玉県出身/ 51.15kg)16戦1勝13敗2分
勝者:緒方愁次 / 判定3-0 (30-26. 30-27. 29-28)

初回、飛びヒザ蹴りでノックダウン奪った緒方愁次。真虎は劣勢から立ち直り、そこから互角に渡り合うも巻き返すには至らず、緒方愁次の判定勝利。

◆プロ第1試合 ライト級3回戦

龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/ 60.95kg)10戦9敗1分
        vs
リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.25kg)2戦1勝(1KO)1分
勝者:リョウヤ・ハリケーン / TKO 1ラウンド 35秒

初回早々のパンチのクリーンヒットでノックダウンを奪ったリョウヤが更に連打で龍一を倒すとレフェリーがノーカウントで試合ストップした。

◆3.アマチュア(オヤジキック提供) 81.0kg契約2回戦(90秒制)

天狗ちゃん(テツジム東京/ 80.05kg)
        vs
ナオマサ・ルトタナモンコンスック(D-BLAZE/77.55kg)
勝者:天狗ちゃん / 判定3-0 (20-17. 20-28. 20-17)

◆2.アマチュア(オヤジキック提供) 66.0kg契約2回戦(90秒制)

菅野裕宜(無所属/ 65.1kg)vs 昂介(D-BLAZE/65.8kg)
勝者:昂介 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

◆1.アマチュア(オヤジキック提供) 61.0kg契約2回戦(90秒制)

まさる(Labore spes/ 60.35kg)vs 長友亮二(KING/ 60.2kg)
勝者:まさる / TKO(RSC)2ラウンド 35秒

《取材戦記》


ベストファイトは勇志 vs 鎌田政興と山本太一 vs 利根川仁でしょうか。タイトルマッチの重みで勇志 vs 鎌田政興。一進一退の攻防で盛り上げたのは山本太一 vs 利根川仁でしょう。

勇志のパワフルな攻撃力は見事でしたが、後半バテる様子も窺えました。やはり3回戦制の戦い方で5回戦を戦っているのかもしれません。スタミナが足りない訳ではなく、前半飛ばし過ぎなのでしょう。

山本太一 vs 利根川仁戦の第2ラウンドはノックダウンの応酬となり、山本太一が二度、利根川仁が一度となりました。このラウンドの採点は10-8が一者と10-9が二者で利根川仁を支持でした。この二度対一度のノックダウンの在り方で採点はどう付けられるか。これはプロボクシングに於ける解釈として参考まで。ノックダウンの順は関係無く、両者一度分のノックダウンは相殺され、残る一つのノックダウンが採点されることになり、10-8となるのが基準。キックボクシングに於いても採点基準はプロボクシングに倣うことは重要でしょう。

蘭賀大介は今回からリングネームを“乱牙”と改名。本名で充分カッコいいと思いますが、その変更理由は聞くには至りませんでした。平成以降は姓と名が揃っていないリングネームが多い時代です。

人名はその名字の由来やその人柄を表すものとして、少ない文字で多くの情報が詰められている俳句のようにと言っては語弊があるかもしれませんが、あらゆるスポーツ選手も本名が多く(大相撲は別格)、日本人が使う漢字名はカッコいいものです。

2025年の日本キックボクシング連盟シリーズ名は「爆発シリーズ」です。爆発って過激な響きがあります。これも漢字の力。今年は冠鷲シリーズでした。あまり冠鷲とは関係無かったような気はしますが、毎年のシリーズ名も漢字のインパクトは大きいものです。

興行日程は2月22日(土)、4月26日(土)、6月21日(土)、8月3日(日)大阪175BOX、8月9日(土)新潟・大かま、10月18日(土)、12月13日(土)、8月以外は全て後楽園ホール夜興行です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DPPQF4ML/

DUELから駆け上がるチャンピオンへの道! 堀田春樹

計量は前日の昼12時よりVALLELYジムにて、カード変更はありましたが、出場者は体調万全で全員が計量をクリアーしました。

メインイベントと位置付けられた赤平大治vs大岩竜世戦は大岩が辛うじて勝利。
悠vs明夢も期待される中の勝利を導けない厚い壁。

女子としてのメイン位置、齋藤千種が祥子JSKを破り王座獲得。

◎DUEL.32 / 12月8日(日)GENスポーツパレス18:00~20:50
主催:VALLELYジム / 認定:NJKF

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第11試合 56.5kg契約3回戦

NJKFフェザー級7位.赤平大治(VERTEX/ 56.3kg)8戦5勝(3KO)2敗1分
        VS
大岩竜世(KANALOA/ 56.4kg)6戦4勝2敗
勝者:大岩竜世 / 判定1-2
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)
副審:松田29-30. 中山30-29. 多賀谷29-30

初回、両者のローキックとパンチ中心の牽制で様子見。赤平大治がパンチをややヒットすると、大岩竜世も返していく。第2ラウンドも両者、パンチと蹴りで激しくなるが怯まぬ前進で、どちらも主導権支配には至らない展開。第3ラウンドには首相撲も加わった攻防。多彩にアグレッシブな展開は続くが差は付き難く、ジャッジ三者揃ったラウンドは無い僅差だった。

リング上のコメントでは「僅差だったんですけど、勝つことが出来て良かったです。来年もっと勝ち進んで行って王者に近付けるよう頑張る年にします。」とマイクで語った。

リングを下りてから「本当僅差で勝ったとは思わんかったですけど、結果勝ちで次に繋がって良かったです。赤平選手はパンチで来ると思って警戒していたんですけど、やっぱり貰っちゃいました。蹴りで返した感じで、結果は勝てたんですけど反省しています。」と語り、リング上で語ったとおり、来年も勝ち進んで王座に迫ることを宣言した。

攻勢を導きたい両者、大岩竜世がローキックで攻める

パンチの見映え良かったのは赤平大治だが攻勢を維持出来ず

◆第10試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級7位.悠(=吉仲悠/VALLELY/ 50.8kg)11戦4勝(2KO)5敗2分
        VS
NJKFフライ級10位.明夢(新興ムエタイ/ 50.45kg)13戦4勝(1KO)6敗3分
引分け 三者三様
主審:椎名利一
副審:松田29-29. マット30-29. 多賀谷29-30

パンチと蹴り、やや前進は悠。明夢も蹴り返し、一進一退の差が付かない攻防。第2ラウンドもパンチ、ローキックとアグレッシブな展開。明夢が悠をコーナーに追い詰め、ヒザ蹴りが効果的で、第3ラウンドも首相撲は明夢が攻勢も悠のパンチで前進も効果的。初回はジャッジ三者とも互角。第2ラウンドは2-1に分かれる採点、第3ラウンドには悠に付けるジャッジは一人。採点では難しい見極めだった様子。

明夢陣営坂上顕二会長は「作戦どおりだったんですけど、勝ったかなという印象もドローも仕方ないところですね。」という声。

悠陣営米田貴志会長は「前回勝ってる相手だったんですけど、悠の悪いところが出て、ちょっと躊躇したり、ブチ切れて行く気迫が足りなかったかな。相手を飲み込むような力強さがあれば勝てたでしょう。」と精神的な部分を語られました。

明夢のミドルキックが悠にヒットも怯まぬ攻防戦が続いた

明夢のミドルキックにパンチを合わせる悠

◆第9試合 女子ミネルヴァ・ピン級(100LBS)王座決定戦3回戦 (撫子王座返上による)

1位.斎藤千種(白山道場/1985.10.25新潟県出身/ 45.4→45.35kg)10戦6勝4敗
        VS
2位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/ 44.9 kg)28戦8勝19敗1分
勝者:斎藤千種(新チャンピオン) / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:松田30-28. マット30-29. 椎名30-28

蹴りとパンチの様子見からサウスポーの斎藤千種の左ストレートがヒット。斎藤千種が自分の距離を掴んだ流れで、祥子は蹴りたくても蹴れない、蹴ってもクリーンヒットし難い距離感があった。斎藤はこの自分の距離感で左ストレートを多発。しっかりダメージを与えるには至らずも、攻勢を維持して判定勝利。王座獲得となった。

敗れた祥子は「ちょっと距離感が遠かったですね。もっとガンガン来られると思っていたので、相手がパンチで来るところに蹴りを合わせる練習をして来たので、こっちが出るのを待ってる感じで警戒してたので、ちょっと駆引きし過ぎちゃったかなと思います」

距離の掴み方は斎藤千種の方が上手かった流れについて、「その辺が敗因という中でも手数で行かなきゃいけないのに、それが出来なかったという反省はありますね」と語られました。

全試合後のインタビューで、齋藤千種選手は見付けられずでした。

祥子が蹴れば齋藤千種のパンチが襲って来る

祥子の蹴りに合わせて齋藤千種の距離感掴んだ左ストレートヒット

ピン級王座獲得した齋藤千種、感動の言葉とファンへ感謝を述べる

◆第8試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級8位.大久保貴宏(京都野口/ 50.8kg)6戦4勝2敗
        VS
渡部蕾(クロスポイント大泉/ 50.5kg)2戦2勝
勝者:渡部蕾 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:中山28-30. マット28-29. 椎名28-30

◆第7試合 スーパーバンタム級3回戦

古山和樹(エス/ 54.7kg)4戦2勝2敗
     VS
ミツル(AX/ 54.8kg)1戦1敗
勝者:古山和樹 / 判定2-0
主審:松田利彦
副審:中山29-28. 多賀谷29-29. 椎名29-28

◆第6試合 フェザー級3回戦

伊達(GRABS/ 56.35kg)2戦2勝(1KO)
      VS
山本龍平(拳粋会宮越道場/ 56.75kg)2戦2敗
勝者:伊達(赤コーナー) / TKO 3ラウンド 2分56秒
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)

アグレッシブな攻防も伊達が圧し気味に主導権を支配。第3ラウンドには更にパンチとローキック中心に攻勢を強めてカウンターの左フックでノックダウンを奪うとレフェリーがノーカウントで試合をヅトップ。伊達がTKO勝利。

伊達がパンチでKOのタイミングを掴んで行く(KOシーンはレフェリーが被り)

◆第5試合 フライ級3回戦

植田琥斗(E.S.G/ 49.75kg)2戦1勝1敗
      VS
煌(KANALOA/ 50.65kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:煌(青コーナー) / TKO 2ラウンド 2分16秒
主審:椎名利一

初回に煌の右ローキックで植田琥斗が軽いノックダウン。まだ動ける左脚ではあったが、すでに弱点を晒したか、徐々に攻められ第2ラウンドにも煌の右ローキックでノックダウンを喫した植田琥斗。明らかにダメージある左脚を狙われ、ローキックでノックダウンするとレフェリーがノーカウントで試合をストップした。

煌が初回からローキックで植田琥斗にダメージを与えて行きTKOに繋げた

◆第4試合 女子ミネルヴァ 45.0kg契約3回戦(2分制)

金子杏奈(ウエストスポーツ/ 44.5kg/代打) 友菜(Team ImmortaL)怪我により欠場
VS
港町なぎさ(ワイルドシーサー前橋元総社/ 43.15kg)1戦1勝
勝者:港町なぎさ / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:マット27-30. 椎名28-29. 松田29-30

◆第3試合 女子ミネルヴァ47.5kg契約3回戦(2分制)

KANA(Bombo Freely/ 46.65kg)2戦2勝
        VS
DJナックルハンマーyokko(team Almerrick/ 47.3kg)5戦5敗
勝者:KANA / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:マット30-26. 椎名30-26. 松田30-26

◆第2試合 女子ミネルヴァ56.0kg契約3回戦(2分制)

MIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 55.7kg)5戦5敗
        VS
妃芽奈(ワイルドシーサー高崎/ 54.9kg)1戦1勝
勝者:妃芽奈 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:マット27-30. 椎名26-30. 中山27-30

◆第1試合 49.0kg契約3回戦

赤土剛琉(D-BLAZE/ 48.75kg)2戦2敗
       VS
庄司翔依斗(拳之会/ 47.0kg)1戦1勝
勝者:庄司翔依斗 / 判定0-3
主審:松田利彦
副審:多賀谷28-29. 椎名28-29. 中山28-29

赤土剛琉はややスロースターターか、攻めの勢いは庄司翔依斗。初回は庄司がリード。第2ラウンドは赤土が蹴りと組み合ってもやや優勢気味でリード。第3ラウンドには庄司もパンチと蹴りで巻き返して僅差で判定勝利。各ラウンド、ジャッジ三者とも揃っていた。

赤土剛琉と庄司翔依斗の攻防、圧して出た庄司がわずかに優った

《取材戦記》

元・全日本フライ級、バンタム級チャンピオン、赤土公彦さんの御子息、次男の剛琉くんがプロ2戦目を行ないました。デビュー戦は9月に別興行で行われている模様です。この日は手数で圧され判定負けでしたが、父親そっくりの風貌と攻めのスタイルも似たところがありました。タイで試合も重ねて経験を積んでおり、10月5日にはタイ国ラジャダムナンスタジアムで1ラウンドKO勝利し、現地戦績は3戦2勝(1KO)1敗。

この日相手の庄司翔依斗はアマチュア経験を経てのデビュー戦のようでしたが、剛琉にとってタイでの経験は自信を持ち過ぎると、帰国後の試合でのリズムが噛み合わなくなるパターンも多く、過去の名チャンピオンも陥るスランプだったりします。今後、壁を打ち破る浮上が期待されます。

赤土氏の御子息、長男は公亮。2023年3月26日プロデビューで国内3戦2勝1分。タイ現地試合は2戦1勝1敗。兄弟ともデビュー当時の目付き鋭い公彦父さんソックリである。過去、親子二代チャンピオンは何組か誕生しているが、向山鉄也前キングジム会長に続いて赤土公彦氏も狙っている快挙は実現に至るか。

庄司翔依斗はNJKFスーパーバンタム級6位、庄司理玖斗の弟で、こちらも兄弟でチャンピオンを目指す関西期待の星。キックボクシングに限らず、兄弟選手が多い時代です。

第1試合の話だけになってしまいましたが、メインイベント、セミファイナルの僅差の結果ながら、赤平大治、大岩竜世、悠、明夢らも2025年にどこまで駆け上がるか期待されます。

NJKFの2025年関東エリア本興行は現在、

2月2日(日)後楽園ホール、4月27日(日)後楽園ホール、5月11日(日)PITジム興行、

6月8日(日)後楽園ホール、9月28日(日)後楽園ホール、11月30日(日)後楽園ホールが予定されています。他、2月9日(日)DUEL興行、3月16日(日)女子ミネルヴァ興行

関西で3月16日(日)誠至会興行、4月20日(日)拳之会興行、7月20日(日)誠至会興行の興行予定が入っています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

KICK Insist 21 メインイベンターは今が旬の瀬戸睦雅! 堀田春樹

ルンピニースタジアムのONE FRIDAY FIGHTS(ONE Championship)で2連勝の睦雅は堂々たるメインイベンターとして力強いTKO勝利。

瀧澤博人は再起戦を飾れず、元・ムエタイ2大殿堂上位ランカーに屈す。

皆川裕哉、期待の初防衛は成らず。19歳の新星、勇成が王座奪い獲る。

細田昇吾、先を見据えた大舞台に向けて前進の大差判定勝利。

KICK Insist 21 / 11月17日(日)後楽園ホール17:15~20:49
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第12試合 63.0kg契約 5回戦

JKAライト級チャンピオン.睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー/ 1996.6.26東京都出身/63.0kg)
25戦19勝(12KO)4敗2分
vs
ユッタカーン・コー・プラサートジム(チェンマイStadiumライト級Champ/タイ/ 62.9kg)
76戦55勝19敗2分(推定)
勝者:睦雅 / TKO 2ラウンド 2分50秒
主審:西村洋

初回、睦雅はローキックで牽制とパンチを打ち込む距離を探る展開で、ヒジ打ちを狙っていそうな相手の出方を覗いつつ、前進気味にローキックでプレッシャーを与えていく。首相撲になっても組み負けないバランスを保つ。

第2ラウンドも睦雅が距離を詰め、ユッタカーンをロープ際に追い詰めローキックを蹴り込む展開が続くと効いてきた様子が窺え、パンチやヒジ打ち、ローキックでダメージを与え、空いたボディーへヒザ蹴りでノックダウンを奪って圧勝ムード。

ユッタカーンに圧力掛けて後退させる睦雅

最初のノックダウンを奪った睦雅の左ヒザ蹴り

再開後にボディブローを決め、カウント中のレフェリーストップに追い込んだ。睦雅は今年KICK Insistに於いて3勝(2KO)とONE FRIDAY FIGHTSで2勝(2KO)と5連勝を築いた。

フィニッシュブローは空いたボディーへ左フック炸裂させた睦雅

睦雅は「今日はコンデション的には、勝ったから言えるとことですけど、あんまり良くなくて、ずっとここ3週間ぐらい体調不良で、あまり追い込めなかったところもあったのですが、“5ラウンドまで長期戦でいく”、そういう崩し方も出来るというのを見せたくて、相手のリズムで敢えて戦ってみようかなと、自分のギアではなくて相手のリズムで1ラウンド終わって、“ヒジもパンチも見えるな”と思ってまあ大丈夫だなと、このまま相手のリズムで倒してやろうという流れで、結果、倒せました。」

ボディーブローについては、「下(脚)を凄く意識されていたので、ローキック対策されているのかという感はありましたが、その分、腹が残るので狙えるとなと。」と語り、会長からの対策もあって試しながらの結果がKOに繋がった様子でした。

ONEが行われるルンピニースタジアムの雰囲気について=「ONEは満員に近いぐらい入っているので、昔のムエタイと違う雰囲気でもあり、独特な選手が立つ場という感じがして僕は好きです。皆が目指す舞台になっていくと思います。」と語られました。

 
ノックダウンの後に、似た形のヒジ打ちを喰らった瀧澤博人

◆第11試合 58.0kg契約3回戦

WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.8kg)
42戦26勝(14KO)12敗4分
vs
ファーモンコン・タエンバーンサエ(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/タイ/ 58.0kg)
151戦103勝46敗2分(推定)
勝者:ファーモンコン / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:椎名28-29. 西村28-29. 中山28-29

瀧澤博人は7月28日のWMO世界フェザー級王座決定戦でペットタイランドに僅差の判定負けで目指していた王座を手にすることは成らず。9月にはラジャダムナンスタジアムでも判定負けの模様。

初回の蹴りの応酬の様子見は瀧澤博人もハイキックを加えた蹴りで前進。

第2ラウンドはファーモンコンが距離を詰めて来てパンチを打ち込むファーモンコン。更に相打ち気味に右縦ヒジ打ちを顔面に打ち込み、瀧澤博人はノックダウンを喫した。

鼻血を流しながら立ち上がる瀧澤博人。ヒジ打ちで倒しに掛かるファーモンコン。組み付くとヒザ蹴りで攻め込む。

第3ラウンドには瀧澤のパンチか、ファーモンコンも鼻血を流し、蹴りの距離に戻った流れで瀧澤が追うが、ファーモンコンも逃げ切って終了。瀧澤は再起戦を飾れず。

ファーモンコンの右ヒジ打ちを喰らってノックダウンを喫した瀧澤博人

◆第10試合 ジャパンキック協会フェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン初防衛戦.皆川裕哉(KICKBOX/1997.4.11東京都出身/ 57.0kg)
27戦14勝(2KO)11敗2分
vs
挑戦者1位.勇成(Formed/2005.8.17福岡県出身/ 57.15kg)9戦8勝(5KO)1敗
勝者:勇成(新チャンピオン) / KO 3ラウンド 2分42秒
主審:少白竜

初回は蹴りとパンチの探り合いの様子見から勇成が右ストレートでノックダウンを奪う。しかしこのラウンドは無理に出ず冷戦な皆川裕哉。何が当てられるか試しながら後半に持ち込む5回戦の戦い方を理解している流れだったが、第2ラウンドも静かな戦いとなってパンチの交錯は見られたが、ジャッジは揃って勇成を付け、ここまで3ポイント差が付く流れ。

第3ラウンドには勇成がパンチで攻めて来た。皆川裕哉も応戦しながら蹴りで攻める。勇成は前蹴りからパンチで攻め、右ストレートでノックダウンを奪うと、皆川は足下フラ付く状態でテンカウントを聞いた。

勇成と皆川裕哉の一触即発のヒジ打ちと右ストレートの交錯

◆エキシビジョンマッチ2回戦

ラジャダムナン系スーパーフライ級Champion.名高・エイワスポーツジム(吉成名高/エイワスポーツ)
EX
キヨソンセン・ビクトリージム(元・WMCインターコンチネンタル・スーパーフェザー級Champ/タイ)

12月1日にムエタイ王座防衛戦を控える吉成名高がエキシビジョンマッチを行ない、身軽なフットワーク見事な蹴り合いのコンビネーションで調整具合を披露した。

吉成名高が終了間際に最高の仕上がりを見せた飛び前蹴り

◆第9試合 スーパーフライ級3回戦

JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ 51.9kg)
22戦14勝(3KO)6敗2分
vs
ローマペット・プロムロブ(ジットムアンノンStadiumライトフライ級5位/タイ/ 51.7kg)
59戦40勝17敗2分
勝者:細田昇吾 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 西村30-28. 勝本30-27

様子見の蹴り中心のせめぎ合いもリズム掴んでローキックからパンチ当てるのが上手い細田昇吾。早々に主導権奪った展開で終盤まで勢い付いていく。ローマは蹴り技持っているが細田にペース奪われて出し切れない困惑気味の表情。相手の持ち味を殺して主導権支配した細田昇吾が内容的にも大差判定勝利。

細田昇吾が圧倒してローマペットのリズムを完全に崩していく

細田昇吾は「1ラウンドから行けるかなと力んでしまって、ちょっと倒しに行こう、倒そうとし過ぎたなという印象でした。100の力で打っちゃったんで、そこの緩急の付けがちょっと甘かったなという反省です。」

当てるのが上手かったなと言う声については、「まだまだです。先輩方に比べたら全然なので。」

来年王座挑戦は?
「やりたいですね。交渉事もあるので時期は分かりませんが。」

目標とするものは?
「睦雅さんがONEに出ているので、そういう背中追って行きたいなと思っています。ああいう勢い有る団体は世界の強い奴が集まっている団体で本当に世界一と言えると思うので、まずは一歩ずつ獲っていく思いです。」と語られました。

◆第8試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級2位.樹(治政館/2004.10.12埼玉県出身/ 57.0kg)
15戦7勝(4KO)7敗1分
vs
同級6位.石川智崇(KICKBOX/ 57.0kg)7戦3勝3敗1分
勝者:樹 / TKO 1ラウンド 2分27秒
主審:少白竜

蹴りの様子見の両者、石川智崇がやや前進気味も樹は冷静に捌き、一瞬の左フックでノックダウンを奪うと石川は立ち上がるがしっかり立てずカウント中のレフェリーストップ。

樹 vs 石川智崇は、蹴りから繋ぐパンチへ流れを掴んで行く樹

◆第7試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級2位.細見直生(KICKBOX/ 66.1kg)4戦4勝(1KO)
vs
同級5位.我謝真人(E.D.O/ 66.6kg)15戦3勝(1KO)10敗2分
勝者:細見直生 / 判定2-0
主審:西村洋
副審:椎名30-29. 中山30-29. 少白竜29-29

初回、細見直生は重い蹴りとパンチでやや優勢も、後半は接近戦での蹴りを交えた打ち合いは我慢比べの互角の展開が続き、細見直生が序盤の勢いを維持してポイントを譲らず判定勝利。

◆第6試合 ライト級3回戦

JKAライト級2位.貴雅(治政館/ 60.9kg)33戦19勝(3KO)14敗
vs
同級5位.菊地拓人(市原/ 61.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:菊地拓人 / KO 2ラウンド 31秒
主審:勝本剛司

貴雅は蹴りで前進の中、菊地拓人の正面に立った辺りで右ストレートを受け、ノックダウンし立ち上がれずテンカウントを聞いた。

◆第5試合 バンタム級3回戦

JKAバンタム級3位.紫希士(Formed/ 53.2kg)4戦3勝1分
vs
花澤一成(市原/ 53.45kg)9戦1勝(1KO)5敗3分
引分け 三者三様
主審:椎名利一
副審:西村29-30. 勝本29-29. 少白竜29-28

ハイキックやミドルキック、前蹴りは花澤一成の蹴りのリズム。第2ラウンドから紫希士が首相撲で強く出て来て接近戦のペースを掴む。パンチは貰いたくない花澤一成との攻防は一進一退で終了した。

◆第4試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級3位.YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/52.4→52.4→52.1kg)
13戦5勝5敗3分
vs
同級7位.響子JSK(治政館/ 51.6kg)11戦3勝5敗3分
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:椎名30-29. 勝本29-29. 西村29-30

◆第3試合 アマチュア61kg以下2回戦(90秒制)

竹森万耀(JKAアマチュア・フェザー級初代覇者/治政館) vs 篤志(team JSA)
勝者:竹森万耀 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

◆第2試合 アマチュア55kg以下2回戦(90秒制)

草野大翔(ビクトリー) vs 古川在冴都(ONE LINK)
勝者:草野大翔 / 判定2-0 (20-18. 19-19. 20-19)

◆第1試合 アマチュア65kg以下2回戦(90秒制)

木村大夢(KIX) vs 隈澤匠永(BURNING)
勝者:木村大夢 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

 
昨年の新人賞受賞の勇成が新チャンピオンとなった

《取材戦記》

ビクトリージム3羽烏の瀧澤博人、睦雅、細田昇吾はそれぞれの明暗は分かれるも、持ち味を発揮した試合でした。瀧澤博人は相手をどう攻略するかが期待される中の、相打ち気味の1瞬先を打たれた流れの悔しい敗戦だが、睦雅は今話題のONE FRIDAY FIGHTに出場して2連勝という勢いが存在感を示しました。

細田昇吾は先輩方に負けない練習量で、相手を圧倒する展開での判定勝利。皆川裕哉は目黒の教訓、“防衛してこそ真のチャンピオン”を成し遂げようと以前から宣言していたが、あっさり倒されてしまう大失態。改めて防衛の難しさが表れる一戦でした。

新チャンピオンの勇成は今年3月24日興行で、このジャパンキックボクシング協会の2023年の新人賞を受賞。7月28日に挑戦者決定戦で樹(治政館)に判定勝利して挑戦権獲得。

樹は5月に市原で皆川裕哉とノンタイトル戦で対戦。そこでは皆川裕哉が余裕の判定勝利しています。

今年3月24日に王座決定戦で櫓木淳平(ビクトリー)を倒して新チャンピオンとなった皆川裕哉。同日、ジャパン・ウェルター級王座初防衛戦で政斗(治政館)に倒され、防衛成らなかった大地フォージャー(誠真)がいました。今年はジャパンキックボクシング協会に於いては2人のチャンピオンが初防衛成らず。倒されて陥落という結果が残りました。

王座が入れ替わる瞬間とは物悲しくもあり、新たなチャンピオンが誕生する新鮮さがあり、昔は日本の頂点におけるタイトルマッチで、こんな衝撃の王座交代劇が幾つもあったものである。最近は防衛しないで返上が多く、こんな記憶に強く残る交代劇が少なくなった時代です。

この日はエキシビジョンマッチながら吉成名高の存在も大きいものでした。一昨年、昨年とKICK Insist、11月興行には2年連続で出場していた吉成名高は、今年は2週間後の12月1日、横浜大さん橋ホールで、ペットヌン・ペットムエタイジム(フランス)と王座3度目の防衛戦を控える中でのエキシビジョンマッチ出場で、身軽なフットワーク、技の切れ味を披露しました。

来年のジャパンキックボクシング協会は、3月23日(日)会場未定、7月13日(日)後楽園ホール、9月15日(月・祝)新宿フェース、11月23日(日・祝)後楽園ホールが予定されています。他、日時未定ながら市原ジム主催興行も予定されています。

睦雅がどこまで躍進するかが2025年の見所でしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

NJKF祭JAPAN CUP 55kg級トーナメント、壱世が嵐を破る! 堀田春樹

NKJF祭として行われたKICK BOXING JAPAN CUP 1st ROUND 55kg級トーナメント、8名参加の初戦(準々決勝)4試合は与那覇壱世、森岡悠樹、古村光、前田大尊が準決勝へ進出。

◎NJKF CHALLENGER 5th / 11月10日(日)後楽園ホール17:20~21:43
主催:NJKF、(株)オフィス超合筋 / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

戦績はパンフレット参照にこの日の結果を加えていますが、一部省略しています。

◆第10試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

KNOCK OUT-REDスーパーバンタム級チャンピオン.壱センチャイジム
(=与那覇壱世/センチャイ/ 54.85kg)39戦29勝(10KO)9敗1分
VS
NJKFバンタム級チャンピオン.嵐(KING/ 55.0kg)17戦12勝(6KO)3敗2分
勝者:壱センチャイジム / 判定3-0      
主審:中山宏美
副審:和田30-28. 多賀谷30-29. 秋谷29-28

開始早々は蹴り中心の牽制、嵐はローキックで前進する中、股間ローブローを受けて中断が認められて回復を待つと、壱世陣営のセンチャイ会長が激怒し「やれよ!」と抗議するシーンもあった。

壱世は様子見の間は下がり気味ではあったが再開後、前蹴りで嵐のアゴ狙って繰り出し前進を止め、嵐の出方を見極めると次第に蹴りで前進を強め、嵐がロープ際に詰められるシーンが増えていく。

主導権を奪った壱世の左ミドルキックが嵐に炸裂、巻き返しは難しかった劣勢の嵐

第2ラウンド後半には壱世が主導権支配した流れで、蹴りもパンチも組み合っても壱世が優り、焦る嵐を上回った。試合終了すると嵐は負けを確信して蹲り、壱世は勝利を確信してロープに駆け上がって歓声に応えた。

次第にロープ際に詰められる嵐、壱世のパンチが襲う

◆第9試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

NJKFスーパーバンタム級チャンピオン.真琴(誠輪/55.65→55.65kg/計量失格、減点2)
15戦10勝(1KO)3敗2分 
      VS
スックワンキントーン・スーパーバンタム級チャンピオン.森岡悠樹(北流会君津/ 54.9kg) 
26戦15勝(8KO)9敗2分
引分け 0-1 / (森岡悠樹が準決勝進出)
主審:和田良覚
副審:多賀谷27-28. 中山28-28. 秋谷28-28 (真琴に計量失格減点2含む)

初回、ローキックとパンチが中心の牽制の様子見。真琴が右ストレートヒットで主導権を奪った流れに移る。

第2ラウンドにはパンチで出て来る森岡悠樹に右ストレートヒットでノックダウンを奪った。調子付いて攻めの前進した真琴だったが、森岡悠樹の右ヒジ打ちが真琴の側頭部にヒットし、マットに膝を着いたがロープにも救われスリップ扱い。

不利な展開ながら森岡悠樹の蹴りも勢いがあった

森岡が更にヒジ打ちも含めた攻勢で巻き返したいところだったが、一進一退の攻防が続いて終了。

最終第3ラウンドについては三者三様だった。結果は引分けとなったが、真琴は計量失格の為、森岡悠樹が準決勝進出となった。

コーナーに追い詰めつつある中、真琴のこの右ストレートヒットでノックダウンを喫してしまった森岡悠樹

◆第8試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

古村光(FURUMURA/ 54.75kg)14戦9勝(7KO)4敗1分 
      VS
WMC日本スーパーバンタム級チャンピオン.佐野祐馬(創心會/ 54.35kg)
17戦9勝(3KO)8敗 
勝者:古村光 / TKO 2ラウンド 1分47秒
主審:秋谷益朗

初回、ローキックで牽制の両者は古村光が徐々に優ると脚にダメージを負う佐野祐馬。首相撲とパンチで追う古村光は組んでからのヒザ蹴りでノックダウンを奪った。

第2ラウンドも古村光の攻勢は続き、ローキックでノックダウンを奪い、更にヒジ打ちで佐野祐馬の右瞼を斬り、コーナーに詰め、パンチからヒザ蹴りで攻めたところでレフェリーストップとなった。

古村光が攻勢を維持し、佐野祐馬をコーナーに追い詰めてミドルキックをヒット

古村光のヒジ打ちで右瞼を斬られた佐野祐馬はより苦しい展開に陥る

◆第7試合 JAPAN CUP 55kg級トーナメント準々決勝3回戦

NJKFスーパーバンタム級1位.大田一航(新興ムエタイ/ 54.9kg)  
      VS
WBCムエタイ日本フェザー級4位.前田大尊(マイウェイ/ 54.85kg)
引分け 三者三様 (前田大尊に優勢支持、準決勝進出)
主審:多賀谷敏朗
副審:和田29-29(9-10). 宮沢29-30(9-10). 秋谷29-28(10-9) / 延長戦は1-2

両者は昨年7月23日に対戦し、前田大尊がノックダウンを奪って判定勝ちしている。今回も互角に進む展開で、軽いローキック中心の牽制から徐々に激しさが増して行く。

第1ラウンドはジャッジ三者とも前田大尊が取り、第2~3ラウンドは三者は揃わないながらもやや大田一航が優った。延長戦も1-2と分かれるほど差が出ない展開。どちらの戦略が優って勝利を導くか微妙な攻防の中、前田大尊の成長を見せた踏ん張りが印象的だった。

一進一退の攻防の中、前田大尊の右ローキックヒット

前田大尊の左ミドルキックが大田一航の脇腹にヒット、気力で戦う両者

◆第6試合 64.0kg契約 3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/ 63.75kg)
27戦12勝(3KO)10敗5分 
       VS
サムランチャイ・エスジム(元・ルンピニー系スーパーバンタム級2位/タイ/ 63.5kg) 
引分け 三者三様
主審:中山宏美
副審:児島29-29. 宮沢29-30. 少白竜30-29

吉田凛汰朗は相手の出方に合わせてローキックからパンチ、パワーと手数で前進し、サムランチャイをロープ際に下がらせる時間は増えていく。サムランチャイは徐々にスタミナ切れの様子で吉田のパンチでの攻勢が続くが、サムランチャイは返す技は上手く、第3ラウンドにはヒジ打ちで吉田の左眉尻辺りを斬った。アグレッシブな吉田の攻勢は目立ったが、ベテラン、サムランチャイを倒すには至らず、ヒジ打ちを喰らってしまうのは勿体無い展開だった。

◆第5試合 ウェルター級3回戦(PRO-KARATEDO達人ルール) 

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.青木洋輔(大和/ 67.7kg)
       VS
掠橋SAVAGE秀太(PRO-KARATEDO連盟達人日本ウェルター級1位/理心塾/ 67.8kg) 
無判定引分け
主審:ながいひろあき(正式名不明)

この試合はPRO-KARATEDO達人ルールでオープンフィンガーグローブ使用。投げ技、グラウンド状態での10秒間の打撃も有効。

初回、両者ともパンチからローキックの様子見から組み合うと投げ技で寝技に入る体勢。手数は出ているが、あまり激しい攻防とはならない。

第2ラウンドは組み合ってから崩しや投げからグラウンドが多くなるが、青木洋輔が蹴りとパンチヒザ蹴りと攻勢を強めていくと掠橋はスタミナも切れて劣勢に陥った。立ち技でもグラウンドでも青木が優っていく展開で終了。採点は付けない為、規定どおりの引分け。

グラウンドの展開で顔面蹴りも見せた青木洋輔、総合系の在り方は賛否両論である

◆第4試合 スーパーバンタム級3回戦

NJKFスーパーバンタム級3位繁那(R.S/ 55.3kg) 14戦11勝(6KO)1敗2分
      VS
藤井昴(KING/ 54.95kg)4戦2勝(1KO)2分
引分け 三者三様
主審:児島真人
副審:多賀谷29-30. 少白竜30-29. 中山29-29

◆第3試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級8位.愁斗(Bombo Freely/ 50.65kg)10戦5勝(3KO)3敗2分
        VS
NJKFフライ級9位.永井雷智(VALLELY/ 52.35→52.2kg/計量失格、減点2)
6戦5勝(4KO)1分
勝者:永井雷智 / TKO 2ラウンド 2分37秒
主審:宮沢誠

◆第2試合 59.0kg契約3回戦

NJKFフェザー級10位.和斗(大和/ 58.75kg)8戦5勝(2KO)3敗
        VS
Ryu(クローバー/ 58.9kg)6戦3勝(2KO)2敗1分 
勝者:和斗 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:多賀谷30-26. 児島30-27. 宮沢30-28

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)53.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーバンタム級1位.SHIORIN(GRATINESS/ 53.0kg)6戦4勝2分
       VS
スックワンキントーン・スーパーフライ級チャンピオン.Mickey (Y’s Promotion/ 52.9kg)
10戦8勝(3KO)1敗1分
引分け 1-0 (29-29. 30-29. 29-29)

※アマチュアU15 EXPLOSIONルール2試合は割愛します。
予定カードにあったNJKFスーパーフェザー級王座決定戦は中止となりました。

《取材戦記》

試合翌日の「KNOCK OUTプロモーション」記者会見では12月30日、横浜武道館での「K.O CLIMAX 2024」に於いてのKICKBOXING JAPAN CUP 55kg級トーナメント準決勝の組み合わせが発表。壱・センチャイジムvs前田大尊、古村光vs森岡悠樹が決定しています。

正式イベント名は「KICK BOXING JAPAN CUP 1st ROUNDヒジあり、55kg最強決定トーナメント」です。

今回のNJKFは各試合インパクトを残しながらもプロ10試合中、6試合が引分け。大田一航vs前田大尊戦はNJKF坂上顕二代表に二度確認しましたが、公式記録は引分け、延長戦は上位進出を決めるもので、優勢ポイントを得た前田大尊が準決勝進出です。

ただ、リングアナウンサーによって「勝者、前田大尊」とコールされているので、前田大尊が勝利したと解釈しているファン、関係者は多いでしょう。そうアナウンスされているので仕方ないことです。これは事前に確認して運営関係者には徹底しておくべき項目だったでしょう。

この大田一航vs前田大尊戦の試合結果はNJKFホームページにおいても規定の3ラウンドまでの公式戦は引分けとなっています(11月21日現在)。

壱世はリング上でコメントし、放送インタビュー等もあったかと思いますが、何度も同じ振り返りさせては申し訳ないところ、「試合開始後は出鼻を挫かれたという感じですね。嵐くんがパンチコンビネーションで来ると見て、それに合わせてヒジ打ちとかパンチを準備していたんですけど、嵐くんが意外と小技で勝負して来たので、その作戦は出来なかったなあという印象です。」と語った。

それでも嵐の出方に合わせて上回る戦略を練って出たのは経験値から来るものだろう。

今回の興行について、坂上顕二代表は「他団体との交流戦のトーナメントで盛り上がったとは思います。反省点はいろいろありますけど、嵐くんの煽りの件もそうですし、総合系もルールを曖昧にやってしまったことも反省点ですね。」と語った。

リングに敷かれたキャンパスマットの下にはシュートボクシングから借りて来たというジョイントマットが敷かれていました。ジムでも使われること多いジョイントマットなので、「ジムと同じ感覚だ!」と言うウォーミングアップ中の選手もいました。後楽園ホールのリングとしてはいつもより軟らかいキャンパスで、青木洋輔vs掠橋SAVAGE秀太戦に合わせた対策でしたが、過激なルールながら激しさはあまり無かった試合でした。今後も取り入れられる訳ではない模様で。NJKF祭として開催される興行での試みではありました。

嵐はマッチメイクが決まる8月8日から壱センチャイジムを挑発していましたが(YouTubeの記者会見)、2月11日の甲斐元太郎戦でも同じように、挑発しながら試合は荒れることなくクリーンファイトを展開します。

年齢的にも気性が激しい血気盛んな年頃ですが、煽ったのは彼一人の仕業ではない。そして嵐ファンが、勝った壱センチャイジムに罵声を浴びせたり、前日のMuayThaiOpen興行では穏やかな対応をしていたセンチャイ会長が、嵐がローブローを受けてインターバルを取る試合中に感情的になり、観衆の前で怒鳴るのもやめておいた方が良かっただろう。

昭和50年代からキックボクシング界に関わる年配者が19歳の挑発に乗ってはいけない。そんな各陣営からファンを巻き込む悪循環が増して行きました。話題を振り撒いて煽って盛り上げても一時的なもので、競技を確立させるならスポーツマンシップに則った運営が必要でしょう。

NJKF年内興行、関西ではは12月1日(日)大阪市平野区の平野区民ホールで、13時より「NJKF 2024 west6th Young Fight 」が開催されます。

関東では12月8日(日)GENスポーツパレスに於いて18時より新人の登竜門「DUEL.32」が開催予定です。

2025年は2月にNJKF2025 1stが予定されています。おそらくCHALLENGERシリーズでしょう。

準決勝へ駒を進めた4名と武田幸三プロモーターと山口元気プロモーター

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

ムエタイ登竜門、遥かなる頂きへ! 堀田春樹

 
蒔音が右縦ヒジ打ちでポンチャイを倒した

コロナ禍から脱して復活したムエタイオープン興行2戦目。今回もベテラン、中堅、新人が揃ったマッチメイク。目立ったイベントではないが、来年に繋がる進化も見られました。

蒔センチャイジムはヒジ打ちによる唯一のノックアウト(TKO)勝利。
馬上樹里は勝にいく勢い足らず僅差の判定負け。

◎Muay Thai Open 49 / 11月9日(土)ひがしんアリーナ(墨田区体育館)17:00~21:08
主催:センチャイムエタイジム /

◆第14試合 70.0kg契約3回戦

馬木樹里(元・LBSJバンタム級Champ/岡山/1998.7.6岡山県出身/ 69.5kg)
13戦7勝(1KO)6敗
        VS
ファーワンマイ・センチャイムエタイジム(2001.1.25チェンライ出身/ 69.85kg)
勝者:ファーワンマイ / 判定1-2
主審:谷本弘行
副審:大澤30-29. リカ28-29. ピリカ28-29

初回、主導権を奪いに行く蹴りと接近戦での首相撲の攻防。互角の展開からファーワンマイがポイントに繋がる当て勘の上手さでやや優っていき、ラストラウンド終盤は馬木樹里が追って蹴りとパンチが増して行くが、テクニックで躱すファーワンマイを仕留めるには至らず、スプリットデジションによる僅差判定負け。

馬木樹里の重い蹴りがファーワンマイにヒットも崩れなかった

試合運びの上手さで勝利を導いたファーワンマイ

◆第13試合 62.0kg契約3回戦

浅川大立(マイウェイスピリッツ/1981.10.15山梨県出身/ 61.85kg)
        VS
弘・センチャイジム(=大森弘太/センチャイ/2001.11.14東京都出身/ 61.9kg)
勝者:弘・センチャイジム / 判定0-3
主審:神谷友和
副審:河原28-30. 谷本29-30. ピリカ28-29

42歳と22歳の攻防はアグレッシブな攻めは互角に進むが、弘太はラストラウンドには左縦ヒジ打ちで浅川大立の左瞼をカットするも、逆転狙って勢い増す浅川大立は、弘太にダメージを与えるには至らず、弘太も蹴りとパンチで凌いで終了。

弘太の蹴り足を掴んで前進、ベテランの意地で攻め続けた浅川大立

浅川大立の前進を凌ぎ、弘太はテクニックと若さで優った

◆第12試合 65.0kg契約3回戦

ピーラポン・ノーナクシン(1998.4.25タイ国出身/ 64.85kg)
        VS
ホンダ・イゴール(HIDE/1994.10.26ブラジル出身/ 64.9kg)
勝者:ピーラポン・ノーナクシン / 判定3-0
主審:大澤武史
副審:神谷29-28. 谷本30-28. リカ29-28

互いの重い蹴りが交錯する展開からピーラポンがヒザ蹴りを加えて主導権を奪った流れの中、第3ラウンドにはピーラポンが首相撲からヒジ打ちでホンダイゴールの額を斬ることに成功。ホンダイゴールは巻き返し狙って来るが前進もピーラポンがいなして判定勝利。

ピーラポンのヒザ蹴りがホンダ・イゴールにヒット、両者のテクニック攻防戦が続いた

◆第11試合 55.0kg契約3回戦

ポンチャイ・モーコーチョーチェンマイ(1998.10.11チェンマイ出身/ 54.2kg)
          VS  
蒔・センチャイジム(佐藤蒔音/センチャイ/2003.7.8東京都出身/ 54.75kg)
6戦4勝(2KO)2敗
勝者:蒔・センチャイジム / TKO 2ラウンド2分40秒辺り(調査不足)
主審:河原聡一

蒔音“まくと”は今年8月24日に石川直樹と対戦し。ベテランのテクニックに翻弄され判定負けはしているが、いつかはリベンジを宣言していた。そんな勢いを持って挑んだポンチャイ戦。
初回早々は互角の蹴りとパンチながら蒔音が前進と圧力を掛けて出る。第2ラウンドも攻勢を強め、組み合ってヒザ蹴りからコーナーに追い込み右縦ヒジ打ちをヒットさせてノックダウン奪った。そのままカウント中にレフェリーストップとなった。

ノックアウト勝利は蒔音だけだった。石川直樹戦からより成長が感じられた攻めだった

◆第10試合 53.0kg契約3回戦

矢島直弥(TSK Japan/1990.8.18神奈川県出身/ 53.0kg)
        VS
馬上一樹(G-1 TEAM TAKAGI/1986.5.4神奈川県出身/ 52.85kg)
勝者:矢島直弥 / 判定3-0
主審:谷本弘行
副審:大澤29-27. 河原29-27. ピリカ29-27

初回は蹴りとパンチの攻防。長身の馬上一樹の組みに行ってのヒザ蹴りが目立ち、第2ラウンドにはパンチの距離の写った矢島直弥が左右フックでノックダウン奪って更にパンチで攻勢を強めた。馬上も巻き返しに打ち合いと蹴り返すも、矢島は主導権を譲らず攻勢を維持して判定勝利。

矢島直弥がパンチの距離に持ち込んで圧倒していく

◆第9試合 60.0kg契約3回戦

津田宗弥(クロスポイント吉祥寺/19801.8神奈川県出身/ 59.65kg)
      VS
光・センチャイジム(高橋光希/センチャイ/2003.10.12東京都出身/ 59.7kg)
勝者:津田宗弥 / 判定2-0
主審:神谷友和
副審:大澤29-28. 谷本29-29. ピリカ30-28

◆第8試合 女子43.0kg契約3回戦(2分制)

Uver∞miyU(T-KIX/1999.12.7静岡県出身/ 42.95kg)
      VS
ロウ・イツブン(NEXT LEVEL渋谷/1995.5.26中国出身/ 42.9kg)
勝者:ロウ・イツブン / 判定0-2
主審:ピリカ
副審:リカ29-30. 谷本29-29 神谷28-29

僅差の攻防ながら、蹴りの的確差で優ったロウ・イツブンが勝利を掴む

キレイな素早い蹴りが目立ったロウ・イツブンも連続出場だった。来年も出場あるか

◆第7試合 バンタム級3回戦

土屋天聖(菅原道場/2005.6.7千葉県出身/ 53.4kg)
        VS
杉山海瑠(HEAT/2009.6.5静岡県出身/ 53.3kg)
勝者:杉山海瑠 / 判定0-3
主審:大澤武史
副審:河原28-30. 谷本28-30. 神谷27-30

NKBフライ級チャンピオン、杉山空の弟、海瑠がパンチと蹴りから接近して首相撲に持ち込むとヒザ蹴りで優位に立った。離れての攻防は土屋も互角に攻めて来るが、攻め勝つには至らず、杉山海瑠が判定勝利。

◆第6試合 女子48.0kg契約3回戦(2分制)

戸田史(バンゲリングベイ/1977.11.4東京都出身/ 47.9kg)
       VS
リース知沙(FIGHTBASE alpha/1991.10.23東京都出身/ 47.85kg)
勝者:戸田史 / 判定3-0 (29-28. 30-28. 30-28)

◆第5試合よりプロ フェザー級3回戦(2分制)

菅野真央(TSK Japan/1999.2.17神奈川県出身/ 57.15kg)
        VS
笹山靖史(クラミツムエタイ/1991.12.2東京都出身/ 56.9kg)
勝者:笹山靖史 / 判定1-2 (29-30. 30-29. 29-30)

◆第4試合 アマチュア31.0kg契約3回戦(2分制)

阿部凌(橋本道場/2013.9.17東京都出身)
        VS
武内太陽(D-BLAZE/2013.1.18東京都出身)
勝者:阿部凌 / 判定3-0 (29-28. 29-28. 30-28)

◆第3試合  アマチュア47.0kg契約3回戦(2分制)

洸冴(拳伸/2011.3.29千葉県出身)
        VS
鈴木秀馬(エムトーン/2010.10.26神奈川県出身)
勝者:鈴木秀馬 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

◆第2試合 アマチュア44.0kg契約3回戦(2分制)

大久保海成(橋本道場/2010.8.10東京都出身)
        VS
孫田歩我(ZERO/2009.8.24栃木県出身)
勝者:孫田歩我 / 判定0-2 (29-30. 28-29. 29-29)

◆第1試合 アマチュア42.5kg契約3回戦(2分制)

浜田優雅(LEGEND/2009.11.18滋賀県出身)
       VS
ハルク・チャロンチャイ(TEAM KUNTAP/2010.8.12千葉県出身)
引分け 三者三様 (30-29. 29-29. 28-29)

《取材戦記》

センチャイ・トーングライセーン会長は、
「興行的には皆、頑張ってくれてその努力が試合に表れていて良かったです。」

「馬木選手はちょっとスタミナ足りなかった感じがありましたけど、ミドルキックを思いっ切り蹴っていて、それが良かったですね。」

「ファーワンマイは調子は良かったけど3年ぐらいのブランクがあったのが影響出ましたね。」と簡潔ながら語ってくれました。

 
試合が出来たことへの感謝と今後をアピールする矢島直弥、ONEに近付けるか

蒔センチャイジム(蒔音)は勝った感想を「気持ちいい~!」という率直な感想。

更には「倒すキャラになろうかな!……KOキャラになります!」と宣言。

更にこの先については「タイトルには絡んでいきたいです。目指すはKNOCK OUTのチャンピオンになりま~す!」といずれも誘導尋問的ながら明るく宣言してくれました。

34歳、矢島直弥は勝利後のリング上で、
「15年前にムエタイオープンのアマチュアで経験積ませて頂きました。10年ぶりにムエタイオープンに復帰して来ました。35歳になるまでにONEに出場したくてここにやって来ました。今日はKO出来なかったですけど、良ければ来年3月にタイトルマッチお願いします。そして来年はONEに挑戦していきたいと思います。」

とマイクで語った。ONEに出場する為にも一つ肩書きを付けて、経験値を上乗せして挑んでいきたいところでしょう。

センチャイ氏の下で行なええるタイトルマッチはMuayThaiOpenタイトルとなるかと思いますが、ルンピニージャパンタイトルは任期があるので、現在こちらはどう進むか微妙でしょう。

蒔音はKNOCK OUT、矢島直弥は格闘技人生の集大成としてONE ChampionnShipと注目される舞台へ目指す頂点も変化して来た近年です。

更なる最高峰はプロボクシング転向でしょうか。今後も増えていく可能性があるでしょう。当然最も難しい関門が幾つも待ち構えていることになりますね。

次回ムエタイオープン興行は2025年3月22日(土)に開催予定です。会場未定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

過去を振り返るキックボクシングのビッグイベント、1000万円争奪オープントーナメント! 堀田春樹

◆三団体首脳が集結!

500万円争奪オープントーナメントから3年程の間隔を空けた第2回開催は、業界の総力を結集したと言われる1000万円争奪オープントーナメントが52kg級、56kg級、62kg級の三階級に渡って開催されました。56kg級だけ13名でしたが、三階級総勢で48名が参加。辞退者、欠場者は幾らか居たものの、当時の業界団体の大部分が参加して開催されました。

このオープントーナメントが開催された1982年(昭和57年)は、春に更なる団体分裂が起こったり、完全にテレビ放映も無くなった時期。そこで集まったのが盛んに交流戦を行なっていた日本キックボクシング協会野口プロモーション、日本ナックモエ連盟、新格闘術連盟の三団体によりオープントーナメント開催を計画され、実行委員会を立ち上げられました。

[左]1000万円争奪オープントーナメントのプログラム初戦の表紙/[右]3回戦新人トーナメントも計画されました

◆オープントーナメント概要

開催は1982年11月19日から、12月18日、翌83年1月7日、2月5日、決勝戦は3月19日。賞金総額は1000万円を提示。一階級300万円。三階級で計900万円で、残り100万円は新人戦オープントーナメントに各階級30万円ずつ充てられました。「残り10万円は?」となりますが、総参加者の中からベストファイト賞的な枠が設けられていたかと思います。

階級リミットはちょっと変則的で、52kg級は±0.3kg、56kg級は±0.5kg、62kg級は±1.0kg枠が設けられていました。

試合は当然5回戦。決勝戦は7回戦となり、引分けの場合、ジャッジ三者の総数が規定となりました。50-50、50-50、50-49だった場合、150対149で、総数上回る側の勝者扱いとなります。総数が同数の場合は1ラウンド延長戦が行われ、優勢支持を受けた側の勝者扱い。そこでしっかりアナウンスされたことは「公式記録は引分け」ということです。延長戦の場合、公式戦は5ラウンドまでということです(決勝は7回戦)。

元々の企画は野口プロモーションだけにリングアナウンサーやタイムキーパーは主に日本キックボクシング協会スタッフが務め、ゴング(鐘)は以前に紹介した、アローンジム寄贈で沢村忠さんの引退テンカウントゴングにも使われた伝統のゴング。これらに拘る者は恐らく居らず、しっかり日本系カラーを植え付けた感のある野口プロモーションの戦略だったかもしれません。審判団については何かと不満が出るもので、公平に共催三団体から選出されました。

孤立状態だった日本プロキックボクシング連盟は肩書きを捨てての選手参加でした。唯一、不参加だったのは全日本マーシャルアーツ連盟。高橋宏、越川豊、長江国政といった有力選手が参加出来なかったのは残念な部分でした。

[左]準決勝戦を迎えた1983年2月5日のトーナメント進行表/[右]1983年3月19日のチケット。ポスターも同様の絵柄でした

タイガー大久保は丹代進に第4ラウンドKOに下して優勝(1983年3月19日)

度々御登場となる松本聖はローキックで酒寄晃を苦しめKO勝利(1983年3月19日)

 
52kg級優勝のタイガー大久保、もしかしたら私の最初のファイティングポーズ撮りかもしれません(1983年3月19日)

◆優勝と藤原敏男突然の引退の衝撃

決勝戦までの大雑把ながらの流れは、52kg級が混沌とした粒揃いの中、優勝候補は武藤英男(大拳)、高樫辰征(みなみ)、丹代進(早川)、松田利彦(士道館)、タイガー大久保(大久保貴司/北東京キング)、白鳥俊(ワールド流気掌)、ミッキー鈴木(目黒)などの絡みが見物でした。

決勝戦進出したタイガー大久保は初戦1回戦で伊吹剛(早川)辞退により勝者扱い。二回戦は沢入貴(市原)に圧倒のKO勝利。準々決勝で武藤英男に引分け勝者扱い。準決勝で白鳥俊に余裕の大差判定勝利。もう一方決勝進出者の丹代進は、負傷辞退の高樫辰征に初戦1回戦で勝者扱い。準々決勝で五島伊佐夫(大拳)にKO勝利。準決勝で松田利彦に僅差ながら判定勝利。決勝戦はタイガー大久保が右ストレートで丹代進を倒してしまった。まだ21歳で頂点を極めた形のタイガー大久保だった。
56kg級は優勝候補の松本聖(目黒)と酒寄晃(渡邉)に玉城荒次郎(横須賀中央)、小池忍(渡邉)、佐藤正広(早川)がどう絡んで来るかが見物でした。

決勝戦は下馬評どおりの松本聖vs酒寄晃。松本聖は準々決勝から出場。玉城荒次郎に苦戦しながら狙った右ストレートでKO勝利。準決勝は小池忍に逆転許すノックダウン喫するも余裕の判定勝利。一方の酒寄晃も準々決勝から出場で黒沢久男(東海北心)にKO勝利。準決勝で長年のライバル佐藤正広に判定勝利。決勝は第1ラウンドに松本聖が先に右フックでノックダウンを奪うも酒寄晃が得意のパンチで逆転のノックダウンを3度奪う圧倒を見せるも、第2ラウンドから松本聖が態勢を立て直し、ローキックでジワジワ攻め、第5ラウンドに大逆転ノックアウトで優勝を果たしました。

トーナメント初戦1回戦で負傷し敗者扱いに陥っていた元馬サトル(四元伸一郎/市原)は、この試合を観る為、仕事を終えてから後楽園ホールに駆け込んだ。20時を完全に過ぎていたという。入り口係員はもう居らず、事務所でチケットが有るか尋ねると「あと一試合だけですよ!」と言われたが、「その一試合が観たいんですよ!」と訴え、メインイベント決勝戦を観る為のチケット買って入り口を通らせて貰い観戦。そんなこの好カード一試合の為にこの日会場にやって来たファンも居ただろう。これで松本聖が堂々たる日本のエース格となった日だった。

56kg級優勝は頬を腫らしての松本聖、藤原敏男離脱の穴を埋めた(1983年3月19日)

62kg級は断トツで藤原敏男(黒崎)。続いて元・日本ライト級チャンピオンの千葉昌要(目黒)と前回準優勝の須田康徳(市原)、混沌と絡んで来るのが長浜勇(市原)、足立秀夫(西川)、ヤンガー舟木(仙台青葉)、弾正勝(習志野)らが居て、誰が藤原敏男と対峙することになるか、誰が藤原敏男と決勝を争うことになるかが注目されました。

藤原敏男は準々決勝で弾正勝を倒し切れぬも圧倒のレフェリーストップ勝ち。準決勝で足立秀夫を3ラウンドKOで下したが、藤原敏男はマイクを持って引退宣言してしまいました。黒崎健時会長の計画では、ラストファイトはムエタイ現役バリバリのチャンピオンと戦い、藤原敏男に相応しい引退試合が予定されていましたが、それを待たずに独自の判断で引退宣言でした。

引退宣言から1箇月あまり、落ち着いた表情で御挨拶する藤原敏男(1983年3月19日)

もう一方の準決勝戦では、優勝候補の須田康徳が初戦1回戦でヤンガー舟木に判定勝利。準々決勝で渋いベテラン対決、千葉昌要に逆転KO勝利。準決勝で長浜勇との同門対決は長浜勇が3ラウンド終了TKOで須田康徳を下す番狂わせ。

「須田康徳が勝ち上がっていたら藤原敏男は決勝戦を戦っていたのではないか。」と言う声も多かった。この時代を代表する好カードを前にして敵前逃亡するような引退は考え難い。しかし長浜勇が勝ち上がったことで藤原敏男当人が語る、身体がボロボロという理由も加えて、「ここで区切りの世代交代として優勝の座を譲ったのではないか。」という声が大きい。それが一番分かり易い流れである。

終わってみれば各階級優勝者は松本聖の他、長浜勇とタイガー大久保という特別参加の日本プロキック連盟勢が二階級を攫って行きました。

62kg級決勝となるはずだった藤原敏男と長浜勇の御対面(1983年3月19日)

◆第3回オープントーナメントは行なわれるか?

3回戦新人トーナメントは最終戦までに終わらず、4月以降の各団体興行に持ち越しとなりましたが、このまま立ち消えとなってしまったようでした。

そのオープントーナメント実行委員会は暫く継続され、6月半ば、簡易的に日本統一ランキングが制定されました。ここから真の日本統一王座制定へ進むかと思われたところが、何の音沙汰もなくなったところを見ると、それぞれの団体の思惑が纏まらなかったことが窺えます。

あれから41年経過した現在まで、この業界が一丸となる大掛かりなオープントーナメントに匹敵するイベントは行なわれておらず、知名度は低くマイナー域は脱していませんが、ネット配信も充実し今が一番盛り上がっている感のあるキックボクシング界かもしれません。

一部イベントでは短期間で終える為の少人数制トーナメントだったり、ワンデートーナメントなるものは存在しますが、団体や選手個人の目指す方向性が日本国内だけではなく、ONEやRWS等もある現在は、かつてのスケールのオープントーナメント開催は難しいでしょう。

次回は1000万円争奪戦優勝者のその後をテーマとして書き綴れたらと思います。

1000万円争奪オープントーナメントに関しては過去に幾度か触れていますので重複する部分もありますが御容赦ください。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

茨城を拠点とするキックボクシング大会DEAD HEATが東京初見参、存在感を魅せた! 堀田春樹

全103試合(3試合中止)の長丁場。1試合の時間は1分から2分制の2回戦と少なく、試合と試合の間も短いので進行は速かった。

次代を担うジュニア選手は最軽量級が19kg以下、王座は23kg以下級より上位へ、一般男子では82kg級、無差別級まである模様。この日は78kg級まででした。あくまでこのDEAD HEATの制定によるもので、他団体ではまた違った制定があるでしょう。

この日のDEAD HEAT王座挑戦者決定戦は7試合、王座決定戦は8試合、王座防衛戦が2試合ありました。

新日本キックボクシング協会興行前座枠に何度か出場経験ある武田竜之介が、やや劣勢から巻き返せず接戦の敗戦。

一般男子では40歳超えと50歳超えの試合もあり、今年1月28日に全日本キックボクシング協会アマチュア大会に出場した、かつての日本ライト級チャンピオン、飛鳥信也さんがこの日も出場。1分制2ラウンドで、対戦相手の染谷勝がアグレッシブにスピードと手数圧倒、飛鳥信也はコーナーに追い込まれ、第1ラウンドにスタンディングダウン。第2ラウンドもスタンディングダウンを奪われ連打されたところでレフェリーストップとなった。

◎DEAD HEAT AMATEUR COMPETITION 20 /
10月27日(日)大森ゴールドジム10:00~17:10
後援:全日本キックボクシング協会

 
55kg級王座奪取した颯花と実行委員会代表の遠藤裕之氏

チャンピオン&挑戦者決定1dayトーナメント 主要17試合(+1試合)

◆ジュニア男子27kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

鈴木翔太(CYCLONE)vs 島川琉空(KAGAYAKI)
勝者:鈴木翔太 / 判定3-0

◆ジュニア男子29kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

石川竜之介(健成会)vs 姉帯礼恩(CYCLONE)
勝者:姉帯礼恩 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

小貝春喜(拳伸)vs 晴空(Master’s pit)
勝者:晴空 / 判定0-3

◆ジュニア男子40kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

中里晃聖(AKIRA budo school)vs 島川湊翔(KAGAYAKI)
勝者:中里晃聖 / 判定3-0

◆ジュニア女子29kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

鈴木彩心(KAGAYAKI)vs YUNON(KING)
勝者:YUNON / 判定0-3

◆ジュニア女子31kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

SARA(Team SRK)vs YU-NA(KING)
勝者:YU-NA / 判定1-2

◆ジュニア男子52kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

塚原陸翔(PAL)vs 渡邉麟生(JTクラブ)
勝者:塚原陸翔 / 判定2-1

◆ジュニア男子46kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

姉帯心(CYCLONE)vs 京太郎(TEAM KAMIKAZE)
勝者:姉帯心 / 判定3-0

◆ジュニア女子34kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野本かれん(WIVERN)vs 原ななみ(Team SRK)
勝者:野本かれん / 判定3-0

◆ジュニア女子43kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野中あいら(HIDE)vs 渡邉名那佳(拳伸)
勝者:渡邉名那佳 / 判定0-3

◆ジュニア男子37kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

大井鼓哲太(チームドラゴン)vs 日野原晴海(HIDE)
勝者:日野原晴海 / 判定0-2

◆ジュニア男子49kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

阿部一心(KDK)vs 英義(稲城)
勝者:英義 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.武田竜之介(伊原越谷)vs 挑戦者.岡月音(SUCCEED)
勝者:岡月音 / 判定0-3

武田竜之介(左/伊原越谷)、今回は勝てずも落ち込む様子無く先を見据えていた

◆ジュニア男子52kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.八十島陸翔(昌平校柏道場)vs 挑戦者.横山琉希(SUCCEED)
勝者:八十島陸翔 / 判定3-0

八十島陸翔、初回は連打でノックダウンを奪った

◆一般女子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

颯花(TRIM)vs MAHO(北眞館)
勝者:颯花 / 判定3-0

一般女子、颯花は果敢に攻めて判定勝利

◆一般男子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

篠原翔夢(Team SRK)vs 鬼久保海斗流(健成会)
勝者:鬼久保海斗流 / 判定0-3

◆一般男子62kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

遅刻100%(team YU-TO)vs 郁哉TORNADO(TORNADO)
勝者:郁哉TORNADO / 判定0-3

一般男子、郁哉トルネードの飛びヒザ蹴り、楽しんでいるかのような表情

郁哉トルネードが62kg級王座奪取

◆第66試合 一般男子(OVER50)62kg以下級Dクラス2回戦(1分制)

飛鳥信也(目黒)vs 染谷勝(GRIT)
勝者:染谷勝 / TKO 2ラウンド / レフェリーストップ

《取材戦記》

アマチュア大会も取り上げること増えたこの頃、今回はDEAD HEATを取り上げてみました。

アマチュアキックボクシング(ムエタイ)は多くの主催者、団体が存在する中、DEAD HEAT主催者の遠藤裕之氏は茨城県水戸市の平戸ジムでキックボクシングを始めた人。1993年6月19日、当時の日本キックボクシング連盟フェザー級チャンピオン、遠藤周作(伊原)との遠藤対決では逆転KO勝利。後の10月9日、再戦での王座挑戦は敗れるも1勝1敗の星を残しました。平戸ジムに於いては小野瀬邦英の先輩となる遠藤裕之氏である。

[左]現役時代の遠藤裕之氏、精悍な顔つきである/[右]現在の遠藤裕之代表。渋い風貌、存在感である

 
出番前の飛鳥信也さん。ベテランの落ち着きぶりは語り口調が変わらなかった

2018年には地元の水戸市でアマチュアキックボクシングDEAD HEAT興し、20回目となる今回初めて東京進出となりました。

遠藤裕之氏は今回の大会終了後、「初めての東京大会で、地方のアマチュア大会が東京に来てどれだけ通用するかなと思いましたが、遠い所は富山から来てくれたり、近県の方から来てくれたりと皆さん頑張ってくれましたので、良い大会になったと思います。」と来場関係者との対面で忙しかった中、語ってくれました。

一般男子50歳超えに出場した飛鳥信也氏は試合後、「相手(染谷勝)は強かったですよ。開始からアグレッシブに勢いよく出て来られたら、効いてはいなかったけど打たれると印象悪いですね。ああいう相手とは戦略的には5ラウンドがあればいいですね。躱していなして疲れるの待って崩していく。けどまあ私も筋力落ちてるし、スタミナもたないからダメですけど、私とかつて戦った越川豊タイプならガンガン打ち合いに出て、今日の相手とは噛み合うでしょうね。今回は62kg以下級というのも無理があって、もう少し落としていきたいですね。元々現役時代にライト級でも軽い方だったので。」と語る。

かつて東京ドームでベニー・ユキーデと対戦した飛鳥信也さんが、今ではアマチュア、一般枠に戻ってまで、敢えて出場料払って試合しているのも生涯青春を貫きたい拘りがあるからだろう。打たれると周囲からすれば心配になりますが、戦って来た試合勘はしっかりしていて、怯まずカウンターパンチ入れる上手さも垣間見れるのも実力者の証でしょう。今年は10戦こなしており、年内あと2試合予定しているという。プロの厳しさは無い一般枠での戦いは楽しそうで“生涯青春”をまだ暫くは続けられそうである。

飛鳥信也さんは染谷勝の勢いに勝てずとも、返しのパンチ蹴りが上手かった

アマチュア大会の取材で、ジュニアなど若年層から対象がテーマズレした感のレポートとなり、主催者の遠藤裕之氏と試合を続ける飛鳥信也氏が主役となりました。「継続力は力なり」を実践するお二人。また東京大会が開催される場合は他興行と被らなければ追っていきたいと思います。

次回のDEAD HEAT 21は来年2月9日(日)に水戸市民会館で開催が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

NKBフェザー級王座決定4人トーナメントは意外な展開へ! 堀田春樹

鎌田政興が決勝戦進出。その経過は!?
勇志が決勝戦進出。その結果は!?
貴方ならどうする三つの選択肢!

◎冠鷲シリーズ vol.6 / 10月19日(土)後楽園ホール17:30~20:29
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第11試合 第17代NKBフェザー級王座決定4人トーナメント準決勝 5回戦

2位.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.05kg)14戦10勝(3KO)2敗2分                 
3位.矢吹翔太(team BRAVE FIST/1986.8.2沖縄県出身/ 56.5kg)17戦10勝4敗3分
4位.鎌田政興(Kアクティブ/1990.5.6香川県出身/56.75kg)前戦迄20戦9勝(3KO)9敗2分         
5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身)前戦迄31戦11勝(4KO)15敗5分

対戦相手は当日の第3試合後のリング上で、4名の出場選手から抽選で1名に準決勝戦の対戦相手指名権を与え、残り2名によるもう一方の準決勝戦となる……という予定だったが、半澤信也が脱水症状による体調不良で欠場。

他3名による抽選と成り、中が見えない袋の中の番号が書かれたボールを取り、更に竹村哲氏が持つ封筒に入った番号の紙と一致する選手に指名権が与えられるシステムで行なわれ、鎌田政興が指名権を得た。

対戦者は勇志か矢吹翔太か、不戦勝かを選択。その結果、鎌田は不戦勝を選択し決勝戦進出。これによって勇志vs矢吹翔太による準決勝戦が決定。

勝者:勇志 / TKO 4ラウンド 16秒 /
敗者:矢吹翔太
主審:前田仁

初回から組み合って来る矢吹翔太と離れて戦いたい勇志はバッティングも起こり、勇志のドクターチェックが入ったが続行。矢吹はヒザ蹴りや崩して上になって倒れ込む優位に立ちたい戦法。勇志はローキックやパンチ、ミドルキックで攻めるが矢吹に距離を詰められやり難い展開。

勇志の軽く飛んだヒザ蹴り。蹴り技では勇志が攻勢を保つ

第2ラウンド以降も同じ展開も、勇志はローキックを繰り出し、距離感を掴んで行き、第3ラウンドも同様ながらパンチを打ち込むタイミングも掴んできた勇志。
第4ラウンドには組み合う間もなくパンチの距離で進んだ勇志が連打から右ストレートをクリーンヒットさせると矢吹は仰向けにノックダウン。そのままカウント中にレフェリーストップとなった。

ノックアウト(TKO)となった勇志の相打ち気味の右ストレートヒット

ノックダウン奪った勇志と失神状態の矢吹翔太、このままレフェリーストップとなった

勇志は「内容的には全然ダメでした」と一言。作戦は無く、パンチや蹴りでのヒットした感覚は無く、流れを引き寄せるにはやはり難しかった様子。

鎌田の不戦勝選択については「予想外でしたね。バンテージ(鎌田が)巻いとったんでやるかなと思ってました」と語った。

リング上で勇志と対峙した鎌田政興は「一度、勇志選手には負けているので、今回やれて本当に嬉しいです。決勝戦はバチバチやりましょう」

対する勇志は「今日は勝てて良かったです。タイトルマッチには勇志軍団連れて乗り込みます!」と意気込みを語った。

◆第10試合 ライト級 3回戦

利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/ 61.05kg)6戦5勝(1KO)1敗
        VS
中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/ 60.95kg)4戦4勝
勝者:中山航輔 / 判定0-3
主審:鈴木義和
副審:前田29-30. 笹谷29-30. 高谷29-30

初回、蹴りの距離。中山航輔が利根川仁をロープに追い詰めたところで右ストレートヒット。更に中山の右ハイキックからパンチ連打で利根川仁をロープに追い詰める。利根川仁のバックハンドブローに合わせて中山の右フックもヒット。

第2ラウンドも中山が前進は多いが、利根川仁も蹴りパンチで出て互角には渡り合う。

第3ラウンドも蹴りの距離で激しく主導権争いに徹した攻防が続くも、ジャッジ三者が揃ったラウンドは無い中の中山航輔が僅差判定勝利。

差は付き難い展開ながら中山航輔がやや攻め優った

勝者は中山航輔、珍しい横並び。後ろ姿はガルーダ・テツ会長、右は片島聡志氏

◆第9試合 当初予定 61.3kg契約 3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/ 60.95kg)vsKEIGO(BIG MOOSE)

KEIGOが練習中の眼窩帝骨折の為、欠場により中止(主催者発表は棚橋の不戦勝)。

◆代行エキシビジョンマッチ2回戦(2分制)

棚橋賢二郎(拳心館)EX蒔田亮(Tokyo Kick Works)

顔面ヒザ蹴り禁止。ヒジ打ちは有効という条件で公式戦のような激しさを見せた両者。
蒔田亮のパンチから蹴りの積極性が目立った。棚橋賢二郎も打ち返し蹴り返していく互角の展開で終了。

エキシビジョンマッチながら激しく打ち合った蒔田亮と棚橋賢二郎

◆第8試合 ライト級 3回戦

NKBライト級5位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.05kg)
19戦7勝(4KO)8敗4分
        VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/ 60.75kg)10戦6勝(4KO)4敗1分
勝者:山本太一
主審:加賀見淳     
副審:高谷30-28. 前田30-29. 鈴木30-29

山本太一が先手を打ってパンチ蹴りで出ていく。スピード優る山本。鈴木ゲンは遅れがちだが攻め返す技量を見せる。第2ラウンド以降も山本が追って鈴木をコーナーに追い詰めるも倒すには至らないまま試合終了し、山本太一が判定勝利。

鈴木ゲンは1995年2月デビューで7戦6勝(4KO)1分まで進んで引退したという中、「やり残したことがある」と昨年復帰。そこから3連敗したが、勘が戻って来ているというトレーナーの話ではあったが、今日も勝利には届かなかった。

山本太一の左ストレートが現役完全燃焼目指す51歳の鈴木ゲンにヒット

◆第7試合 65.2kg契約 3回戦

大月慎也(TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/ 64.95kg)24戦10勝(5KO)10敗4分
        VS
魔娑屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/ 65.15kg)6戦2勝(2KO)4敗
勝者:大月慎也 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:鈴木28-26. 前田28-26. 加賀見28-26

初回、蹴りの様子見から魔娑屋の首相撲からのヒザ蹴り、パンチの交錯から左ストレートで大月慎也からノックダウンを奪い、更に打って出ると大月はグロッギー状態。

大月慎也が逆転のスタンディングダウンを奪った右ストレートヒット

第2ラウンドも魔裟屋が蹴りで攻勢を掛けるが、大月もスピードは無いが蹴り返し、徐々にダメージから回復。更に魔裟屋を追い始め逆にグロッギー状態に陥った魔裟屋。

第3ラウンド、大月が完全に息を吹き返し、大月が左ハイキックヒットで魔裟屋はグラつき形勢逆転し大月の猛攻が始まった。大月の左ストレートヒットから連打でスタンディングダウンを奪った。

更に打ち合いになるも大月が優る気力で打ち勝つと再びスタンディングダウンを奪い、フラついて倒れそうになる魔裟屋はカウント中に試合終了ゴングが鳴り、カウントは続くのかゴングに救われるのか曖昧な間があったが第3ラウンド終了として判定に委ねられ、大月の逆転判定勝利となった。

魔裟屋は第1ラウンドの一気に打って出れば倒せたかもしれないところから、大月に巻き返されてしまった。

大月慎也の圧倒、逆転KOは必死も時間切れ

◆第6試合 57.5kg契約 3回戦

堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 57.25kg)6戦3勝2敗1分
        VS
安河内秀哉(RIKIX/2003.10.7東京都出身/ 57.35kg10戦7勝(2KO)3敗
勝者:安河内秀哉 / 判定0-3
主審:高谷秀幸
副審:前田28-29. 加賀見28-30. 笹谷27-30

初回は蹴り中心の様子見からパンチの距離へ移っていく。差の無い攻防から徐々に安河内秀哉の的確差が優って行った。最終ラウンド終盤には安河内がパンチ中心のラッシュをかけて堀井を追い詰めるも決定打は無く倒すに至らず。

◆第5試合 バンタム級 3回戦

荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 53.3kg)6戦2勝2敗2分
        VS
山本藍斗(GET OVER/2005.5.27愛知県出身/ 52.95kg) 6戦2勝2敗2分
引分け 1-0 (30-28. 29-29. 30-30)

初回、蹴り合いから首相撲に移ってヒザ蹴りの攻防も続くが、第2ラウンドには山本藍斗がローキックのしつこさで攻め、荒谷壮太は組んでのヒザ蹴りで対抗する。再び離れての蹴り合いも続き、差が出難い展開となった。

◆第4試合 58.0kg契約 3回戦

樋口雄生(ケーアクティブ/1995.4.14東京都出身/ 57.3kg)3戦1勝2敗
        VS
西湧輝(市原/1997.6.4福岡県出身/ 57.9kg)2戦2敗
勝者:樋口雄生(赤コーナー) / KO 2ラウンド2分18秒 / 3ノックダウン     

◆第3試合 52.0kg契約 3回戦

真虎(Kick Life/2002.6.28埼玉県出身/ 51.8kg)14戦1勝11敗2分
        VS
齋藤龍鬼(ワンサイド/2004.7.23長野県出身/ 51.7kg)2戦2勝(1KO)
勝者:齋藤龍鬼(青コーナー) / 判定1-2 (29-28. 29-30. 28-29)

激しく蹴り合う両者。飛びヒザ蹴りも多発した両者。

◆第2試合 58.0kg契約 3回戦

橋本悠正(KATANA/1997.4.21福島県出身/ 57.75kg)5戦1勝(1KO)3敗1分
        VS
ジャッカル鈴木(BIG MOOSE/1989.2.15千葉県出身/ 57.6kg)3戦2勝1敗
勝者:ジャッカル鈴木(青コーナー) / 判定0-3 (29-30. 28-30. 29-30)

◆第1試合 ライト級 3回戦

リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.1kg)1戦1分
        VS
大塲浩史(Blaze/1986.7.8山口県出身/ 60.9kg) 1戦1分
引分け 1-0 (30-29. 29-29. 29-29)

 
12月14日に王座決定戦で対戦する鎌田政興と勇志が健闘を誓う

《取材戦記》

今回の王座決定トーナメントは本来、競技的には2位.勇志vs3位.矢吹翔太で王座決定戦を行ない、4位.鎌田政興 vs 5位.半澤信也で次期挑戦者決定戦を行なうか、4名によるトーナメントカードは契約時点で決定しておくべきと思いますが、話題性で盛り上げたい演出は、試合当日の抽選という流れとなりました。

ただ、タイトルマッチに準ずる試合というところではリミット超えの契約ウェイトとかではなく、正規リミット内で正規5回戦で行ない、ワンデートーナメントではない、次回興行での王座決定戦は公正な競技として正しいやり方と思います。

王座決定トーナメントの対戦相手指名権を得た選手の三つの選択肢は、この日試合を行なうことによって試合勘、リズムを維持して王座決定戦に挑む考え方と、戦わずに無傷で王座決定戦に進む考え方も、その分の実戦から遠ざかる勘や緊張感の鈍りも考えられるが、ここで負ければ元も子もない訳で、無傷でこのままコンデションを更に上げて行く選択が妥当でしょう。

会場に残っていたあるジムの会長に、「仮に御自身が指名権を得たら」という質問には「俺だったら不戦勝なんて怖くて言えないですよ。どちらか対戦相手選ばないとマズイかなと試合するかもね!」という回答もありました。興行には選手のチケット捌きが絡むので、応援に来るファンの存在を無視出来ません。もし地方から大型バスで100名以上の応援団が観戦に来るとしたら不戦勝を選べるか。試合を観せられない選択も難しいところでしょう。

当初4名のトーナメント出場者にどれだけ応援団が居たかは分かりませんが、勇志はKO勝利で応援者の居る北側にガッツポーズしており、各選手の思惑や配慮も何かとあったかもしれません。

ツイキャスによる放送の解説者の一人、木村充利氏に興行のベストバウトを尋ねると、「ベストバウトは大月慎也vs魔裟屋で、初回から魔裟屋が先手で打って出たパンチでノックダウンを奪っても、そこで倒し切れなかったのが勝敗の行方を分けたところでしたね。そのまま最終第3ラウンドまで引き摺って、大月がベテランの底力を見せました。魔裟屋は経験不足でしたね」

「もう一つは勇志 vs 矢吹翔太で、矢吹が首相撲に導き、勇志はペースを乱されましたが、第3ラウンドには首相撲から離れてパンチが出始めてリズムに乗って、第4ラウンドに右ストレート打ったのが勝因でしたね」と語ってくれました。

「2試合が流れる形になるのは試合の面白さが半減しますね」といった意見も聞かれた会場内。そこを盛り上げてくれた勇志vs矢吹翔太戦と大月慎也vs魔裟屋戦はベストバウトと言う意見は多いことでしょう。

日本キックボクシング連盟冠鷲シリーズvol.7は12月14日(土)に後楽園ホールに於いて開催されます。準決勝に勝利し決勝戦進出した勇志と鎌田政興のフェザー級王座決定戦が行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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