日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である

山田正彦(紙の爆弾2026年9月号掲載)

ここ数年で「食料安全保障」という言葉が広まったように、「農と食」への注目度は、確実に高まっている。しかし肝心の農政において、先の国会で種苗法が再び改悪。国民的関心も高いとは言いがたい。それでも、「希望はある」と語る人がいる。民主党政権で農水大臣を務め、映画『タネは誰のもの』(2020年)や『食の安全を守る人々』(2022年)をプロデュース、数々の著作を持つ山田正彦氏に話を聞いた。(本誌編集部)

◆証明された残留農薬デトックス

―― 2024年~2025年の「令和の米騒動」は、食の量的確保がクローズアップされた一方で、「食の安全」という質的問題が抜けていたように感じます。

山田 最近、衝撃的な話を耳にしました。全国的に少子化が進んでいるにもかかわらず、一部の小学校で教室が足りなくなっているというのです。原因は発達障害が認められる子どもの増加で、別室で授業する通級指導が必要な児童が増えているという。問題は、そのような子どもの増加が、ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)やグリホサート系農薬(除草剤)の全国出荷量と相関していることです。それらは1990年代に登場し、特にここ20年で使用量が増加しました。

―― 2024年の「食料・農業・農村基本法」改正の議論で政府の食料自給率向上への関心の低さが批判されたように、食の供給に不安がつきまとう中で、農薬や化学物質の摂取はある程度仕方ない、という諦めの声も聞かれます。

山田 人体への農薬の影響は、決して軽視できません。世界的な研究で、食べた本人だけでなく、女性の卵巣疾患やホルモン異常、男性の精子数の減少、出生異常も報告されています。

しかし、知っておいてほしいのは、有害物質を摂取しても、排出(デトックス)は可能だということです。2019年、NPO法人「福島県有機農業ネットワーク」の調査で、被験者がまず一般の食材(慣行食材)を食べて尿中のネオニコチノイド農薬等の残留量を測定し、その後、オーガニック(有機)食材だけを摂る生活をしたところ、最初の測定で5ppbだった残留量が5日間で2.3ppbに半減、4週間で0.3ppbと90%以上も低下しました。

―― 「有害物質を摂るのをやめる」ことが重要だということですね。一時期または一部の食事を有機にするだけでも意味がありそうです。

山田 食品の残留農薬の問題は、『食の安全~』でも詳細に取り上げています。私は国会議員になる前から、弁護士業のかたわら農業に携わってきました。有機栽培にも50年前から関わり、地元・長崎でお母さん方とともに、弁護士事務所を拠点として「土と文化の会」を設立してもいます。農家を回って有機野菜を集め、当時始まったばかりの「赤帽」で配送する仕組みを作りました。同会は現在も続いています。

◆「学校給食」の重要性

―― 持続的な有機農業を考えた時、確かに流通の問題は重要です。

山田 そこでポイントとなるのが「学校給食」です。千葉県いすみ市では、2015年から給食に有機米の導入を始め、2017年には全小中学校で100%有機米を達成しました。また、東京都武蔵野市も早くから、母親たちの活動をきっかけに「安全給食」に取り組んでいます。「オーガニック給食」が今、急速に広がりをみせ、2020年には123、2024年には328の市区町村で、何らかの形で導入されています。

今年4月から全国の公立小学校で給食費無償化が始まりましたが、予算面でも負担は大きくありません。2023年には宮崎県綾町でオーガニック学校給食の推進を「町の責務」「学校の責務」と定める日本初の「オーガニック給食条例」が制定されました。

―― 親たちが以前から食への不安を抱えていたことがわかります。

山田 学校側も、子どもたちに表れる変化に、対応の必要性を感じた事情もあるのではないでしょうか。

―― 『食の安全~』ではアメリカの事例が紹介されていました。

山田 映画では、市民団体マムズ・アクロス・アメリカを立ち上げたカリフォルニア州在住の主婦ゼン・ハニーカットさんにインタビューしました。彼女は3人の子どもが特定の食べ物にアレルギーをもっていたことをきっかけに、家庭で食べていたものを調査。するとアメリカで流通する加工食品の85%に遺伝子組み換え食品が含まれていたことが判明しました。

それらを食卓から取り除くと、子どものアレルギー症状が短期間で改善したのです。その事実を他の母親と共有するために、彼女は市民団体を設立。彼女のような活動を契機に、今ではアメリカの多くのスーパーにオーガニック食品が置かれ、日常化しています。

また、韓国では、すでにほとんどの小・中・高校の学校給食が無償かつ有機食材使用です。有機農業が広がり、学校給食に供給されている。ここが重要で、学校給食が子どもたちの健康を支えるとともに、学校給食としての確実な需要が有機農業を支えるという構図があります。

◆「国産」「有機」は需要がある

―― ゼンさんのエピソードは、山田さんの『歪められる食の安全』(角川新書)でも紹介されています。同書は食品表示の問題に焦点を当てた本です。

山田 2013年に成立した食品表示法は、私が農水大臣を務めた頃に議論を始めたもので、国内で製造・加工されたすべての加工食品に原料原産地の表示を義務付けました。ところが2017年に表示基準が改悪され、原材料の産地がどこであろうと、国内で作られた食品は「国内製造」と表示可能となりました。消費者は「国産」と誤解します。

内閣府が実施したアンケート調査によると、「国産」の表示があれば、89%が国産を選ぶと答えました。できれば国産の食べ物を選びたい、というのが当たり前の市民の要求です。すると消費者庁が、国会での議論なしに「国内製造」という表示をつくってしまったのです。大手食品企業の意向を汲んだのでしょう。

―― 有機食材の流通が確保されれば、市場拡大が期待されます。

山田 イオングループに、オーガニック商品の取り扱いを勧めたこともありました。それでも、ネックはやはり有機食品の流通網が確立していないことで、農家が宅配便等で出荷せざるをえず、余計なコストがかかってしまう、といった問題があります。JAは、他方で農薬を扱っていることもあり、非有機の慣行農業に配慮せざるをえません。現場でも、慣行農業で散布される農薬が有機の田畑に飛散したら意味がないし、有機栽培で発生した虫を、慣行農業側は嫌がります。

しかし、状況は変化しています。後述するように、たとえばJA島根は有機栽培の流通を進めるとともに、有機栽培農家と慣行農家が共存できるルールづくりを始めました。

―― 有機栽培農家には、組織体のようなものはあるのでしょうか。

山田 ほとんどが個人経営ですが、自ら通信販売するなどの経営努力が成功を収めるケースが増えています。

◆世界で急速に進むオーガニック

―― 「国産」の需要があるということは、裏返せば、「食の安全」には確実に需要があるということです。

山田 それは世界が証明しています。有機栽培の農地面積が1位のオーストラリアは2021~2022年の1年間で49%も増加。2022年のデータで、インド・アルゼンチン・中国・フランスが続いています。同時期の日本は0.1%増(農地面積全体の1%弱)でした。世界的にオーガニック市場の急拡大が注目を集めています。

アメリカも年10%の割合で伸長。一方で遺伝子組み換え農作物は2016年から頭打ちです。ロシアは2014年から本格的に有機栽培に取り組み、2016年に制定された法律で、遺伝子組み換え作物の栽培と輸入を禁止しました。中国も2017年に同様の法律をつくり、米中貿易摩擦の過程で試料用の輸入を解禁したものの、有機栽培の作付面積はアメリカを追い抜きました。

―― 日本だけが遅れているように見えます。

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月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾 ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

シコルスキ氏の「欧州軍団」構想は、ポーランドがウクライナに「平和維持部隊」を派遣するための手段なのか

アンドリュー・コリブコ

アジア版NATO構想と並行して、欧州では「欧州軍団」構想がある。これは、NATOに代わる新たな軍事同盟をつくるものではなく、欧州が自らの防衛をより多く担うことで、NATOの「欧州の柱」を強化しようとする動きと位置づけられる。執筆者のコリブコは、この枠組みが将来的にポーランド軍のウクライナ派遣に利用される可能性を指摘する。

ポーランドのラデク・シコルスキ外相

※   ※   ※   ※

保守派のカロル・ナヴロツキ大統領は、ポーランド軍の最高司令官であり、軍をめぐる大きな権限を持つ。ところが、与党のリベラル連立政権が「欧州軍団」の枠組みを使って一部のポーランド軍の部隊をEUの指揮下に移した場合、話は別だ。そうなれば、その部隊のウクライナ派遣をナヴロツキ大統領が阻止できるのかどうかは、はっきりしない。

ポーランドのラデク・シコルスキ外相は最近、ギリシャのメディアとのインタビューで「欧州軍団(European Legion)」の創設を提唱した。シコルスキ氏は次のように述べている。

「私は『欧州軍団』の創設を強く支持している。これは常設の専門部隊であり、より広い欧州の枠組みから経験豊富な職業軍人を募ることができる。戦争終結後には、実戦経験を積んだウクライナの退役軍人もその対象になり得る。要するに、欧州は自らの安全保障に自ら責任を持たなければならないということだ」

さらに、こう付け加えた。

「われわれの裏庭で火事が起きるたびに、ワシントンに電話をかけるわけにはいかない。それが通常の軍事的脅威であれ、モスクワがアフリカや中東からの移民流入をEUに対する武器として利用する事態であれ、同じことだ。ただし、ここは明確にしておきたい。これはNATOに代わる別の組織をつくったり、既存の仕組みを二重化したりする話ではない。必要なのは、より強力なNATOの中に、より強力な『欧州の柱』を築くことだ。われわれの利益は互いに補完し合うものであって、相反するものではない」

この発言に驚いた向きもあった。というのも、シコルスキ氏は1年半前、ゼレンスキー大統領が提唱した「欧州軍(Army of Europe)」構想を退けていたからだ。当時、ポーランド外交のトップである同氏はこう述べていた。

「この言葉の使い方には慎重であるべきだと思う。人によって意味するところが違うからだ。もしそれが各国軍を一つに統合するという意味なら、そのようなことは起こらない」

ここに両構想の最大の違いがある。「欧州軍」は各国軍を統合する構想であり、現実味に乏しい。一方、「欧州軍団」は志願制の部隊として想定されている。

後者についてもう少し詳しく見てみると、シコルスキ氏が念頭に置いているのは、EU加盟国とウクライナの兵士から構成される即応部隊で、何らかのEU機関の指揮下に置かれるものとみられる。その目的は、危機が発生した際に迅速に対応することにある。そして、紛争地域に各国の兵士が実際に配置されることで、NATO全体、あるいはEU内の「有志連合」をその紛争に関与させる「トリップワイヤー(引き金)」として機能することになると考えられる。

シコルスキ氏がこの構想を打ち出したのは、英国、フランス、ドイツの3カ国――いわゆる「E3」であり、先行きが不透明とも報じられている「有志連合」の中心国――が、停戦成立後にウクライナへ部隊を派遣する計画を確認してから2カ月後のことだ。

一方、シコルスキ氏が属するリベラル連立政権と激しく対立している保守派のカロル・ナヴロツキ大統領は、2025年5月、大統領選挙の決選投票を前に、ポーランド軍のウクライナ派遣は認めないと書面で誓約している。

ナヴロツキ氏は軍の最高司令官ではある。しかし、リベラル派の国防相が「欧州軍団」を通じて一部のポーランド軍部隊をEUの指揮下に置いた場合、「有志連合」の計画の一環としてそれらの部隊がウクライナへ派遣されるのを、ナヴロツキ氏が阻止できるのかどうかは不透明だ。

ここ数カ月、ポーランド国内ではウクライナに対する世論が悪化している。ゼレンスキー大統領が、ヴォルィーニ虐殺に関与したOUN-UPA(ウクライナ民族主義者組織・ウクライナ蜂起軍)の関係者を称揚したことがその背景にある。そのため、与党リベラル派がこのような措置に踏み切れば、2027年秋に予定される次回の下院(セイム)選挙を前に、再選への望みを損なう可能性がある。

【黒薮注】ヴォルィーニ虐殺(Volhynia massacres):第二次世界大戦中の1943~1944年ごろ、現在のウクライナ西部を中心に、ポーランド系住民が大規模に殺害された事件を指す。中心的な実行主体とされるのが、ウクライナ民族主義者組織(OUN)の一派と、その武装組織であるウクライナ蜂起軍(UPA)。彼らは、将来の独立ウクライナ国家の領域からポーランド系住民を排除することなどを目的として、ヴォルィーニ(ヴォルヒニア)地方や東ガリツィアでポーランド人の村々を襲撃した。数万人規模のポーランド人民間人が殺害された。

それでも、「最近締結されたポーランド・ドイツ防衛協定は、ワルシャワの利益よりもベルリンの利益を優先していることに疑いの余地はない」とされている。また、ドナルド・トゥスク首相はドイツと非常に緊密な関係にあり、保守派野党の「影の実力者」からかつて「ドイツの工作員」と非難されたことさえある。

したがって、もしドイツが「欧州軍団」を通じたポーランド軍のウクライナ派遣を要求した場合、トゥスク首相が来年、政権維持を危うくするリスクを冒してでもそれに応じる可能性は排除できない。

ただし、そのような軍事派遣をロシアが容認するかどうかは、また別の問題である。

アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年8月26日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source:https://korybko.substack.com/p/is-sikorskis-european-legion-proposal?utm_campaign=post&utm_medium=web

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

『紙の爆弾』10月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

アメリカによるイラン攻撃が再開される中、キューバで経済封鎖により深刻なエネルギー危機が続いていることは、あまり報じられません。長時間の停電は家庭の明かりを奪うだけでなく、給水や交通・食料・医療など市民生活のあらゆる面に影響を及ぼしています。そんなキューバの現状と、危機の中で抵抗する人々について、同国ジャーナリストのセサル・ゴメス・チャコン氏が本誌に寄稿しています。

“当事者”を除き、あらゆる方面から疑問の声が挙がった「国民会議」というネーミング。そして、結局何が話し合われたのか、何のための会議だったのかも、まったく不明。「国民による会議」ではないのはすぐにわかることでも、では誰による何のための会議だったのか?という問いに答えたのが、今月号の植草一秀氏の論考です。その空虚さゆえに、常に“背後”が垣間見えるのが高市政権の特徴といえます。ならば、表面的な事象を批判して終わっては、背後勢力の術中にはまるだけです。

「高市早苗政権はこんなにも大局観を欠いた国家運営しかできないのか」「首相が(飲食料品の消費税率)1%案を断行しようとするのに対して、野党が『結論ありきだ』と批判するのも当然だ」。前者は7月30日付日経新聞社説、後者は31日付読売新聞社説です。本誌巻頭で指摘したとおり、さんざん逆進性が指摘されてきた消費税が、いまや税収合計の3分の1を占める現状をどう捉えるべきか。ちなみに6年連続の最高税収を記録した2025年度、所得税収・法人税収がそれぞれ大きく上がっても、消費税の総収に占める割合は31%です。

世界のコロナ対策をリードしてきた元アメリカ大統領首席医療顧問、アンソニー・ファウチ博士への追及がアメリカで始まっています。着目すべきはKダブシャイン氏指摘のとおり、日誌に表れたファウチ博士のキャラクターで、いかにも利用されやすそうなのは高市首相と共通するところ。芸能人へのリアクションも似ている気がします。コロナ騒動の本質はもとより、それまで“主流”とされていた見解が逆転するのかに、もっとも注目しています。

8月号から前・中・後編でお送りした植草一秀氏“3つの冤罪事件”の真実。それぞれの事件の状況はもちろん、不可解な経緯と、当時の社会状況についても詳しく説明しています。そこから見えてくるのは、「今の日本」です。なぜ日本だけが「失われた35年」にはまり込み、抜け出せないのか。「失われたもの」とはいったい何か。それらが事件の背景から浮かび上がってきます。

ほか10月号では、首相官邸SNSの“高市PR動画”が炎上した「首相の無意味な熊本視察」と2024年地方自治法改正の関係を解説。これは副首都法や緊急事態法制とも関係します。2026年熊本地震をめぐっては、各地で加速する“AI防災”のリスクについてもレポート。ほか25年目となった「9.11」の真相、「SNS年齢規制」の国内議論の的外れぶりや、ひきこもり支援事業における「労働」についてなど、今月号も独自の切り口で真実を追求します。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
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2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
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文化放送「香害」番組削除をめぐり波紋 市民団体が抗議、横浜副流煙事件の被告家族は文化放送を擁護

黒薮哲哉

「香害」や化学物質過敏症の危険性を訴え、「被害者」への配慮を社会に求めている市民団体「カナリア・ネットワーク全国」(共同代表・青山和子、深谷桂子)が、文化放送が8月5日に放送したYouTubeラジオ番組に抗議し、その後、番組が削除された問題で、新たな事実が判明した。

カナリア・ネットワーク全国は、BPO(放送倫理・番組向上機構)に対しても申立書を送付した。さらに、同団体だけではなく、日本消費者連盟なども8月10日に文化放送に抗議していたことが分かった。

文化放送が8月5日に放送した「香害」に関するラジオ番組は、YouTubeでも視聴できるようになっていたが、現在はアクセスできなくなっている。カナリア・ネットワーク全国は、番組で「香害」について話した村中璃子医師の見解に誤りがあり、海外における「香害」の実態などが過小評価され、事実に反する内容が放送されたと主張している。

結果として、市民団体からの抗議の後に、一つのラジオ番組が削除されたことになる。

こうした動きを受け、横浜副流煙事件の被告の家族である藤井敦子さんが、文化放送に申し入れを行った。

申入書全文1頁
申入書全文2頁
申入書全文3頁(全3頁)

■申入書全文(PDF)

申入書では、「香害」をめぐる主張には疑似科学的な側面があるとの見解を示し、その根拠として、藤井さんの夫が副流煙の発生源であるとして提訴された事件(請求額4518万円、藤井さん側が勝訴)で明らかになった具体的な事実を紹介している。

例えば、被告である夫が不在だったときにも、同じマンションに住む原告家族3人が煙の臭いを訴えていたという事実である。これは原告側の日誌から、時系列的にも確認されている。

また、この裁判では、日本禁煙学会の作田学医師が、「受動喫煙症」を訴えていた原告について、本人を診察することなく「受動喫煙症」とする診断書を交付していたことも明らかになった。さらに、原告の一人には長い喫煙歴があったことも判明している。

こうした診断基準について、横浜地裁は次のように認定している。

「その基準(日本禁煙学会の『受動喫煙の分類と診断基準』)が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる。(認定事実(4)ア)」

こうした複数の事実に基づき、藤井さんは、「香害」をめぐる主張には疑似科学的な側面があると主張している。

◆「香害」をめぐるアンケートの非科学的側面

なお、この問題に関して、やはり「香害」を訴えている日本消費者連盟のウェブサイトには、次のような記述がある。

私共は、「香害」問題に取り組んでいる市民団体です。2017年夏に、市民から香害被害の声を募る「香害110番」を行って以来、香害の解決を求めて、省庁との交渉を続けております。2020年には、9000人以上からの回答を得た香害アンケート結果を発表。香害被害者の約20%が、通学や通勤・就労に支障を来たしているという深刻な現状を明らかにしました。2022年には、香りを長持ちさせるマイクロカプセル等の徐放技術を日用品に使用しないことをメーカー等に求める署名活動を行うなど、香害をなくすために様々な活動を行ってまいりました。( 出典 https://nishoren.net/cuj-25274

このアンケートの具体的な調査方法が不明なため断言はできないが、「香害」の被害を把握するために実施されたアンケートの中には、調査方法の妥当性について検討を要するものもかなりある。

例えば、ある市民団体が実施したアンケートでは、「香害」に取り組むネットワークにも調査票を送り、その活動の参加者も回答する形式になっていた。その結果、極めて高い「有症率」が示された。

吐き気や頭痛などの症状や不快感は、「香害」以外のさまざまな要因によっても日常的に生じ得る。そのため、自己申告によるアンケート結果から、「香害」と症状との因果関係までを判断する際には慎重さが求められる。

[参考記事]禁煙ファシズムに審判、横浜・副流煙裁判で被告の藤井さんが完全勝訴、日本禁煙学会理事長・作田学医師の医師法20条違反(無診察で診断書を作成する行為の禁止)を認定

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年9月1日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
https://www.kokusyo.jp/%e5%8c%96%e5%ad%a6%e7%89%a9%e8%b3%aa%e9%81%8e%e6%95%8f%e7%97%87/19898/

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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「松竹裁判」の危険な兆候、司法権力による政党への介入

黒薮哲哉

松竹伸幸氏が日本共産党に対し、除名処分は不当だとして提訴している裁判が注目を集めている。先日、東京地裁で行われた尋問には多数の傍聴希望者が詰めかけ、抽選が行われたそうだ。

わたしは双方を取材していないので、原告・被告のどちらの主張に理があるのかを評価する立場にはない。しかし、それ以前の問題として指摘しておきたいことがひとつある。それは、政党をめぐる問題に裁判所が介入することが、今後どのような影響を及ぼすのかという点である。

改めて言うまでもなく、政党は任意団体である。共産党の場合は、科学的社会主義の思想のもと、社会主義をめざそうという人々の集まりである。一般企業や教育機関など、一定の公共性を有する組織とは、その性質が異なる。共産党以外の政党についても、それぞれの理念に基づいて政治活動を展開している。

松竹氏をめぐる裁判では、共産党の方針や、それに基づく党員への処分の当否について、裁判所という国家機関が司法判断を下すことになる。ここには慎重に考えるべき問題がある。司法が政党内部の意思決定にどこまで関与できるのか。その範囲が際限なく広がれば、国家権力が政党の自律性を脅かすことにもなりかねない。

わたしは、この裁判が、政党の自律と司法の関係をめぐる極めて重要かつ慎重に扱うべき問題を含んでいると考えている。判決内容によっては、日本を専制国家に暴走させる危険性を孕んでいる。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年8月29日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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7.28熊本地震をめぐる『紙の爆弾』10月号の注目記事 イオンモールで亡くなった女性従業員2名の親会社とそのエリート経営者を容赦なく弾劾した片岡亮さんのレポートは必読です!

鹿砦社代表 松岡利康

少し早いかもしれませんが、月刊『紙の爆弾』10月号(9月7日発売)の記事の一部を紹介させてください。

去る7月28日に起きた二度目の熊本地震については、私のふるさとでのことで、二度目ということや、イオンモールでの従業員の方々が阿鼻叫喚の地獄絵が同時的に報じられる中で亡くなられたことなどで、殊更胸が締め付けられる想いがしました。こうしたことで、広く募金を集めることにも積極的に協力することにしました。先に皆様方にも明らかにした通りです。

また、近く発売される『紙の爆弾』10月号でも2つの記事を掲載しています。特に片岡亮さんの記事は衝撃的なので、早めながら紹介する衝動に駆られました。この記事だけでも、今号の値打ちがあります。

くだんのイオンモールでは、幸いにお客さんは全員逃げ助かりましたが、一部店舗の従業員に犠牲者が出ました。いったんはモール外に逃げ、誰かの指示でモール内の店舗に戻り帰らぬ人となりました。明らかに人災です。

片岡さんの記事では、この責任を厳しく追及しています。ある店舗の親会社は、熊本では誰もが知る老舗企業グループです。現在の社長は東大を出てエリートコースまっしぐらの人物です。片岡さんはこれを容赦なく弾劾しています。当然です。人ひとりの命以上に勝るものはありません。沖縄・辺野古での事故もそうです(このことで勘違いの発言をして顰蹙を買った大馬鹿者がいますが)。

事故後すぐに社長自らが被害者家族の元に駆け付け、なによりも被害者側に真摯に寄り添うことが大事だということは言うまでもありません。片岡さんの記事の内容は、おそらく地元紙の熊本日日新聞、あるいは大手紙や通信社の熊本支局の記者らは知っているでしょうが、どのように配信したのでしょうか? 地元の有力企業(の関連会社)だからといって忖度してはいないか? だとしたら、メディア本来の使命を忘れているといえるでしょう。熊本には、おだやかなイメージの広告で有名な化粧品会社などタブーが幾つかありますが、同様です。

片岡さんの記事の一部を公開しますので、定期購読などされていない方は今すぐAmazonや鹿砦社通販部にご注文ください。『紙の爆弾』10月号は9月7日書店発売、定価800円です(安い!)。定期購読、会員の方々には去る2日に発送が済みました。取次会社にも搬入済みです。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾?ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

熊本地震に圧倒的な義援金をお寄せください!

鹿砦社代表 松岡利康

拝啓 今夏は猛暑より格段上の酷暑といわれますが、この暑さのさなか、私たちのふるさと熊本を再び大地震が襲いました。先の地震(2016年。第一次)からちょうど10年、ようやく復旧が一段落し次の段階へと進まんとする矢先、今回の大地震(第二次)が起きました。

私たちは、熊本市内に在る熊本学園大学(旧・熊本商科大学)付属高校同窓会=紫紺(しこん)会関西支部です。紫紺会関西支部は、熊本の本部公認支部で、また関西熊本県人会連絡協議会の一員でもあります。同連絡協議会は、関西在住の熊本県出身の主に高校などの同窓会46団体と個人で組織されており連携しています。今回のような災害への支援、あるいは、例えば先の甲子園の高校野球で全国に感動を与えた有明高校の活躍などを後押しするスポーツ大会応援といった、熊本出身者の親睦を図ると共に多彩な活動を行っています。

直近に起きた第二次熊本地震について、関西熊本県人会協議会・明珍(めいちん)会長からの義援金要請に私たち紫紺会関西支部も応じ、できうる限り義援金を募りたく、ここに皆様方に平にお願い申し上げる次第です。

二度も大地震に襲われた私たちのふるさと熊本、前回も義援金要請がありましたが、個人の裁量に委ね‟お茶を濁す”程度でしたが、イオンモールのように目の前で血の通った人たちが阿鼻叫喚の苦しみの中で亡くなられ、その苦しみをみずからの苦しみと捉え、最大限義援金を募ることにいたしました。

二度も大地震に襲われた私たちのふるさと熊本に、この炎天下のさなか片付けや復旧作業に追われるふるさとのみなさん、全国から駆け付けているボランティアのみなさんらの活動に少しでも連携し、義援金を募ります。お一人おひとりの浄財をお寄せください。集まった義援金は県人会本部に振り込み、本部で集約し熊本県に届けられます(総計金額は追って公表)。

振込先:肥後銀行 大阪支店 普通口座 1130757
口座名=紫紺会関西支部
締め切り:2026年10月9日(金)
連絡先:宮﨑(事務局長/義援金管理担当者)
toshirou_m212@yahoo.co.jp
松岡(支部長) 
matsuoka@rokusaisha.com TEL 0798-49-5302

紫紺会(熊本学園大学付属高校同窓会)関西支部
支部長 松岡利康  事務局長 宮﨑敏郎

敬具

写真は宮﨑撮影

熱く、暑く、和まされ、励まされ、反原発の思いをさらに強固にした「福島支援ライブ」へのお礼

尾﨑美代子

8月29日、集い処はなでの「福島支援ライブ」、たくさんの方にお集まり頂きました。ありがとうございました。

ライブの投げ銭は、9月2日判決が言い渡される原発賠償関西訴訟原告団にカンパさせて頂きました。カンパ合計は46,000円、出演者のヒデヨヴィッチ上杉さんが自身の物販(Tシャツ、CD)の売上の3割3,000円をカンパに入れて下さいまして、計49,000円、エイッもう一押しとはなままが1000円足して50,000円を関係者の方にお渡ししてきました。

それにしても熱く、暑く、和まされ、励まされ、怒りの声と拳を共にあげ、笑いも涙もゴチャまぜにし(顔クシャクシャの方、多め)、反原発の思いを更に強固にしたひとときでした。私はライブ中もバタバタ動き、写真はほとんど撮れませんでしたが、1枚だけ撮ったのはアカリトバリの曲に一曲目から涙する今野さん、ちなみにその2人後ろでもグズグズ泣く菅野みずえさんが。

カオリンズ、アカリトバリ、ヒデヨヴィッチ上杉さん、HANAMAMA(私)が歌い、そのあと福島から来阪された今野寿美雄さんのトークショーを予定していました。さて、どんな感じにしようか考えてましたが、

朝店で200円料理の準備をしながら、「そうだ!今野さんのトークは菅野さんとの掛け合いでやって貰おう」とひらめき、ムチャ振りしたもの。大成功でしたかね。

最後に今野さんと皆さんで「大空と大地の中で」(松山千春)を合唱しました。この曲は2021年今野さんの浪江町の家が解体された際に撮られた動画「9年目の津波」で歌われた曲です。松山千春さんから使用許可は取得しています。曲のエンディングコーラスを全世界から募集し、多くの方々と歌われた思い出の曲です。

3・11から10年目、カンパが減り財政的に厳しくなったとの理由で反原発活動を休止しますといったある大きな反原発団体がありましたね。凄いですね。金(カンパ)が減ったら活動出来ないのですか。カンパ(資金)は何かをして作るものですよ。釜ヶ崎や山谷で昔から言われたスローガンがあります。「金のある人は金を!知恵のある人は知恵を!そして力のある人は力を!」。歌える人は歌を、料理作れる人は料理を、運べる人は運び、暑い表に立ち続け売ってくれる人、歌に手拍子いれたり、踊ってくれる人、「ここ座って」と席を譲ってくれる人……いろんな人がいて、最終的にカンパが集まり、それが誰かさんたちの活動を助けることに繋がればとやっています。それが大事。まだまだ反原発運動は負けてないで!もっともっと活動しないといけないで!

また集いましょう!!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

《9月のことば》行き当たりばっちり

鹿砦社代表 松岡利康

《9月のことば》行き当たりばっちり(鹿砦社カレンダー2026より。龍一郎揮毫)

9月になりました。昔、『9月になれば』という映画がありましたが、9月になると、なぜかこの映画を思い出します。映画の内容とは異なりますが、暑い夏が過ぎ、9月になれば、少しは涼しくなり凌ぎやすくなって、仕事も捗り恋の展望も見えてくる ── 9月とはそんな季節のようです。

しかし、今夏、9月を前にして、熊本地震(第二次)、千葉豪雨、さらには福井豪雨など大きな自然災害が起き、厳しい暑さも続き、その後片付けや復旧作業で、夢も希望も展望なんて……。突然の自然の猛威に絶望感、脱力感に襲われます。ここでも、こんな自然災害の多い日本で、原発、特に老朽原発は大丈夫か!? 大丈夫なわけがありません。

今年も早3分の2が過ぎ、あと3分の1となりました。なんとか今年も四苦八苦しながら、月刊『紙の爆弾』も季刊『季節』も発行を継続でき、以前からは点数は減っていますが、書籍(紙爆増刊号)も刊行できてきています。苦しい中でも出版活動を継続できているのは、ひとえに読者や支持者、支援者の皆様方のサポートによります。

思い返せば、私(たち)の出版活動は行きあたりばったりだったな。時に行きあたりばっちりヒットすることはありましたが、長い出版活動のうち、どれほどだったでしょうか。浮き沈みが激しい出版人生でした。

私事ながら、今月75歳を迎え、いわゆる後期高齢者となります。人生最後の大きな曲がり角です。もっと違う形で迎えたかったですが、人生最終コーナーになって、新型コロナ襲来によって躓いてしまいました。

でも、皆様のサポートで、まだ生かされています。勝負はまだ終わっていません。必ず勝機を掴み人生3度目の大逆転を狙っています。老骨に鞭打ち、しぶとく“がまだし”(熊本の方言で「頑張る」の意味)ていこう、と思う昨今です。

◎このたびの熊本地震について、さすがに二度ともなると、私たち熊本出身者としては県人会(関西熊本県人会連絡協議会)本部からの呼びかけに応じ、関係の強い高校の同窓会を通して義援金を募ることになりました。近々公表いたしますので、ぜひご協力お願いいたします。

日々報じられる、現地で“がまだし”ておられる方々、ボランティアの方々に励まされ、私たちも頑張っていこう!

駐ロシア中国大使、日本に不穏な警告を発する

アンドリュー・コリブコ

中国とロシアが、日本の急速な軍事大国化への警戒を強めている。駐ロシア中国大使は、日本の「再軍備」が地域の平和を脅かしていると主張し、ロシア側も同様の懸念を示している。筆者は、日米同盟を背景に日本と中露の対立が軍事衝突へ発展すれば、北東アジアが第三次世界大戦の発火点になりかねないと警告する。

※   ※   ※   ※

もし「日本問題」(ほかに適切な呼び方がないので、こう呼ぶことにする)が近いうちに平和的に解決されなければ、北東アジアで第三次世界大戦が勃発する危険性は急激に高まるだろう。

駐ロシア中国大使の張漢暉(ジャン・ハンフイ)は、東京裁判(極東国際軍事裁判)から80年を迎えるのに合わせ、ロシア国営通信社TASSに時宜を得た論考を寄稿した。東京裁判は、いわば日本版のニュルンベルク裁判だが、西側諸国ではそのことを知らない人も多い。

張大使はまず、日本がカイロ宣言、ポツダム宣言、そして日本の降伏文書に反する形で再軍備を進めているとして、いくつかの事実を挙げた。その例として、各種ミサイルや海軍力の強化、武器輸出、そして日本の「2026年版防衛白書」を取り上げている。

これに関連して張大使は、次のように書いている。

「東京はまた、NATOの関連する軍事的枠組みへの参加を積極的に模索し、北大西洋同盟への統合を加速させている」

【黒薮注】北大西洋同盟:NATOの別称で、同じ意味。

さらに、

「日本は自国による植民地支配・征服を正当化し、台湾が中国に返還されたことの正当性を否定している」

とも指摘した。

中国にとっておそらく最も懸念されるのは、歴史的な宿敵であり、筆者の見方で、3500万人の中国人に対する「ジェノサイド」の責任がある日本が、核兵器保有の可能性をちらつかせていることだろう。そして、ひとたび政治的な決断が下されれば、日本には核兵器を大量生産する能力がある、というのである。

日本の急速な再軍備と核兵器をめぐる議論によって、地域的な脅威が再び高まっているとして、張大使は最後に次のように述べた。

「中国とロシアは、歴史的正義と国際法秩序を守ることに尽力する他の国々とともに、第二次世界大戦の歴史に対する正しい認識を断固として守り、日本軍国主義を復活させようとするいかなる試みも断固として抑え、苦難の末に勝ち取った平和を守り、より公正で合理的な国際秩序の形成を促進する用意がある」

この不吉ともいえる警告は、真剣に受け止めるべきだろう。なぜなら、これはロシア側の日本に対する評価とも一致しているからだ。

プーチン大統領の側近であるニコライ・パトルシェフは約1年前、ロシア国内メディアのインタビューで、要するに「日本はアジアにおけるアメリカの戦略を推進するうえで、これまで以上に大きな役割を担うようになる」と主張した。

その後、年末近くには、新首相の高市早苗が台湾有事における日本の軍事的関与について物議を醸す発言をしたことを受け、「日本は予想より早く中国に挑戦するかもしれない」との見方も示された。

先月末には、「ロシアの高官級外交官が、日本がロシアに及ぼす脅威の増大について言及した」。そして8月半ば、プーチン大統領がロシア極東を訪問した際には、「悪化する日露関係についてプーチンが嘆いた」とされている。

プーチン大統領とロシア太平洋艦隊司令官は、「AUKUS+」という言葉そのものは使わなかったものの、実質的には、日本がその中心的な役割を担おうとしていると指摘した。「AUKUS+」とはここでは、中国を封じ込めるためにアメリカが構築しつつある、NATOに似た軍事ネットワークを指している。

黒薮注】AUKUS+:米・英・豪の3か国が、潜水艦や最先端軍事技術を共同で開発・運用し、軍事的な連携を深める枠組み。

したがって、日本の急速な再軍備と核兵器をめぐる議論は、ロシアにとっても深刻な脅威だということになる。

筆者によれば、この脅威を事前に取り除く方法は二つある。一つは、アメリカが「AUKUS+」を抜本的に再編し、その中で日本が中心的な役割を担わないようにすることだ。もう一つは、ロシアと中国が軍事力によって先制的に日本の脅威を無力化することである。

筆者はさらに、日本が国連憲章上の「敵国」とされていることを根拠として、ロシアと中国にはそのような行動を取る国際法上の権利があると主張する。しかし、その場合、日米の相互防衛体制を理由にアメリカが報復をちらつかせる可能性があり、結果として第三次世界大戦につながる危険が生じる。

かつて北東アジアで地域的な危機を引き起こす主な原因とみなされていたのは、北朝鮮の核兵器開発と核実験だった。しかし現在では、日本が再軍備と核兵器保有をめぐる議論によって、その役割に取って代わった、と筆者は考えている。

かつては北朝鮮の核開発が北東アジアの主要な火種だったが、いまや日本の軍備増強のほうが、中国とロシアという二つの核大国を同時に刺激する点で、より危険な火種になっている。そして、その中国とロシアに共通するライバルであるアメリカは、日本と相互防衛関係にある。

したがって、もし「日本問題」(ほかに適切な呼び方がないので、こう呼ぶ)が近いうちに平和的に解決されなければ、北東アジアで第三次世界大戦が勃発する危険性は急激に高まるだろう。

アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年8月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source:https://korybko.substack.com/p/the-chinese-ambassador-to-russia