堀田春樹
2024年7月28日の世界挑戦で2-1判定負けした瀧澤博人は今回、明確に倒して戴冠。
睦雅はベテランの曲者、ペッダムにペースを狂わされ判定負け。
軽量級の二人のライバルチャンピオン、西原茉生はテクニックで圧倒の判定勝利。
細田昇吾は初回早々の圧倒のKO勝利。
治政館の新星、BANKIと西山天晴は揃って勝利。
◎KICK Insist.25 / 11月23日(日・祝)後楽園ホール17:15~21:20
主催:VICTORY SPIRITS、ビクトリージム
認定:World Muaythai Organization、ジャパンキックボクシング協会(JKA)
世界戦スーパーバイザー:ウラチャー・ウォンティエン(タイ)
前日計量は22日14時より水道橋内海ビルにて行われ、全員が一回でパスしています。戦績はプログラムを参照に、この日の結果を加えています。
◆第11試合 WMO世界スーパーライト級王座決定戦 5回戦
3位.睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー/1996.6.26東京都出身/63.5kg)31戦23勝(14KO)6敗2分
VS
ペッダム・ペッティンディーアカデミー(1998.5.25タイ国出身/63.5kg)
258戦199勝52敗7分
勝者:ペッダム・ペッティンディーアカデミー / 判定0-3
主審:ノッパデーソン・チューワタナ(タイ)
副審:椎名利一(日本)48-50.
アラビアン長谷川(タイ)47-49.
ナルンチョン・ギャットニワット(タイ)47-49
(睦雅はWMOインターナショナル・スーパーライト級チャンピオン/ペッダムは元・WBC・ムエタイ世界フェザー級、元・ルンピニー系バンタム級、元・タイ国《PAT》バンタム級チャンピオン)
睦雅はローキックで様子見。ペッダムは高めの蹴りを返しながら圧力を掛けて出る。パンチの交錯は互角ながら、ペッダムの勢いが強い。
第2ラウンド以降もペッダムの左ミドルキックが時折強く繰り出して来る。更にペッダムの左ハイキックが睦雅の顔面を掠めるようなヒット。睦雅はローキックからパンチ、ハイキックも織り交ぜ突破口を開こうと出ていくが、ペッダムはリズムを崩さない。

その流れが続き、睦雅がパンチ攻勢を強めてもペッダムは凌いで強い左の蹴りで返して来る。第3ラウンド終了時の公開採点が30-29、30-28が二者でいずれもペッダム優勢。これはもう倒しに行かなければ勝利は難しい流れとなった。
しかし、睦雅は攻めても流れを変える勢いは無く、ペッダムの左ミドルキックでの優勢の流れは変えられない。第4ラウンドも取られて各ジャッジとも2~3ポイント開いた差となってしまった。ほぼ勝ち目は無いが倒しに掛かるしかない最終ラウンド、作戦は如何に進めるか。セコンドの声に頷く睦雅。ペッダムは手数は減ったが、出て来る睦雅に対抗して蹴って出た。睦雅は正に無我夢中の攻めも敵わず、頑丈なペッダムに蹴られ続けてしまった流れで巻き返せず、王座奪取は成らなかった。

睦雅は試合後「戦い難さはちょっとはあったんですけど、僕自身がダメだったので、ここまで整えるまでが未熟だったかなとやってみて思いましたね。ペッダムはそこまで強いとか崩せないというのは無かったので、僕が足りない部分があったというところですね。」と語った。
ペッダムには防衛戦について尋ねると「防衛戦もやりたいですが、これからも実力をアップさせて名声を高めていきたいです。」と、大凡はこのように応えました。タイ語が難しくて捉え難かったですが、キレイに纏めてくれた印象があった回答でした。

◆第10試合 WMO世界フェザー級王座決定戦 5回戦
15位.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.1kg)45戦29勝(16KO)12敗4分
VS
10位.チャイトーン・ウォー・ウラチャー(タイ/ 57.0kg)77戦54勝20敗3分
勝者:瀧澤博人 / TKO 3ラウンド 1分25秒
主審:ナルンチョン・ギャットニワット(タイ)
副審:椎名利一(日本) アラビアン長谷川(タイ) ノッパデーソン・チューワタナ(タイ)
(瀧澤博人はWMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン/チャイトーンはラジャダムナン系スーパーバンタム級5位)
離れた距離での蹴りでの牽制の両者。瀧澤博人は距離を詰め難さが感じられた。ペース掴めず圧され気味の中、第2ラウンドには距離が詰まるとチャイトーンの左ヒジ打ちで瀧澤は右目尻を切られてしまうが、瀧澤も右ヒジ打ちでチャイトーンをグラつかせた。

蹴りの勢いとタイミングではチャイトーンが優勢の中、第3ラウンド、チャイトーンが瀧澤をロープ際に詰めたところで、瀧澤がカウンターの左ヒジ打ちをチャイトーンの顔面に打ち込むとゆっくりとロープにもたれ掛かって崩れ落ち、カウント中にレフェリーがストップし、瀧澤のTKO勝利となった。

歓喜に湧く瀧澤陣営。瀧澤も喜びと号泣と、そして最後は元気にマイクで感謝と先の目標を語った。

◆第9試合 52.5kg契約3回戦
JKAフライ級チャンピオン.西原茉生(治政館/2003.6.27埼玉県出身/治政館/ 52.4kg)
17戦11勝(5KO)5敗1分
VS
ローマ・ルークスワン(IMSAスーパーフライ級Champ/タイ/ 52.45kg)68戦41勝26敗1分
勝者:西原茉生 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:勝本30-27. 西村30-27. 少白竜30-27
ジャブとローキックでペース掴み、先手を打ってローマのリズムを崩した西原茉生の上手さが目立ち、倒すに至らなくても終始圧倒。蹴りもパンチも多彩に攻め優り、ジャッジ三者ともフルマークを示した。

◆第8試合 52.5kg契約3回戦
JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ビクトリー/ 52.4kg)
26戦17勝(6KO)7敗2分
VS
ソッサイ・ウォー・ウラチャー(タイ/ 52.4kg)50戦29勝19敗2分
勝者:細田昇吾 / KO 1ラウンド 48秒
主審:勝本剛司
ローキックで調子を上げていく細田昇吾。ソッサイも応じて多彩に蹴るも、細田の勢いが優り距離感を掴んでパンチ連打で追い込み、左ボディブロー二度ヒットさせるとソッサイは苦しそうに崩れ落ち、テンカウントを数えられた。
細田昇吾は9月20日にタイでジットムアンノンスタジアム・スーパーフライ級王座決定戦で4ラウンドKO勝利し王座獲得。そのチャンピオンベルトを掲げて登場。勝利後も王座戴冠の報告と今後の飛躍を誓った。

◆第7試合 66.7kg契約3回戦
ペップンミー・ビクトリージム(元・タイ国イサーン地方フライ級2位/タイ/ 66.0kg)
68戦53勝(16KO)15敗
VS
NKBウェルター級チャンピオン.カズ・ジャンジラ(Team JANJIRA/1987.9.2東京都出身/ 66.65kg)45戦21勝(4KO)17敗7分
勝者:ペップンミー・ビクトリージム / 判定3-0
主審:西村洋
副審:椎名30-28. 勝本30-28. 少白竜30-28
ローキックで様子見。徐々に距離を詰めていく両者だが、前に出るカズ・ジャンジラと、下がりながらも的確に攻めるペップンミーはヒジ打ちを含め多彩な技を持った上手さで余裕の判定勝利。NKBから参加したカズ・ジャンジラは引退まで残り2戦となった。この日の一戦で得た技で防衛戦と引退試合を勝ち上がりところである。

◆第6試合 ライト級3回戦
ジャパンキック協会ライト級5位.林瑞紀(治政館/ 61.2kg)19戦11勝(4KO)7敗1分
VS
乱牙(=蘭賀大介/前・NKBライト級Champ/無所属/1995.2.9岩手県出身/ 61.23kg)
14戦7勝(3KO)5敗2分
勝者:林瑞紀 / 判定2-0
主審:少白竜
副審:椎名29-29. 勝本29-28. 西村30-29
蹴りとパンチの互角の攻防。やや乱牙の勢いある蹴りも林瑞紀のパンチヒットで巻き返す。第3ラウンドにはヒザ蹴りに行こうとした乱牙に左ストレートヒットさせた林瑞紀。グラついた乱牙に連打で仕留めに掛るが、乱牙は凌いで蹴りとパンチの乱打戦。ラストラウンドを取った林が辛うじて判定勝利した。乱牙はNKBから離脱し、フリーとなっての参加。前・チャンピオンの意地を見せたかっただろう。
◆第5試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級3位.石川智崇(KICKBOX/神奈川県出身33歳/KICK BOX/ 56.8kg)
10戦5勝4敗1分
VS
同級5位.海士(ビクトリー/ 56.95kg)7戦5勝2敗
勝者:海士 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本28-30. 少白竜29-30. 西村29-30
◆第4試合 スーパーフェザー級3回戦
青木大好き(OZ/ 58.5kg)15戦7勝8敗
VS
松岡優太(チームタイガーホーク/ 58.7kg)5戦4勝1分
勝者:松岡優太 / 判定0-2
主審:勝本剛司
副審:椎名28-30. 少白竜28-30. 西村29-29
◆第3試合 フェザー級3回戦
BANKI(=竹森万輝/治政館/2008.2.15埼玉県出身/ 57.0kg)3戦3勝(1KO)
VS
エイジ(RANGER/ 56.9kg)5戦3勝2敗
勝者:BANKI / 判定3-0 (30-28. 29-28. 30-29)
蹴りが中心の攻防もBANKIは得意の右ハイキックは時折繰り出すが、エイジもハイキックを返し、両者ともハイキックのインパクトを残した。やや圧して出るBANKIが第3ラウンドも攻勢を維持し判定勝利。

◆第2試合 53.0kg契約3回戦
西澤将太(ラジャサクレックムエタイ/ 52.85kg)2戦2勝(1KO)
VS
トム・ルーククロンタン(Team S.R.K/ 52.7kg)3戦1勝2敗
勝者:西澤将太 / 判定3-0 (28-27. 30-27. 30-27)
◆プロ第1試合 フェザー級3回戦
西山天晴(治政館/2007.4.25埼玉県出身/ 57.1kg)2戦1勝(1KO)1敗
VS
石井隆浩(尚武会/ 56.7kg)5戦5敗
勝者:西山天晴 / TKO 1ラウンド 1分8秒
蹴りからパンチへ繋いだ西山天晴の左フックヒットし、石井隆浩がバランス崩した後、右ストレートでノックダウンを奪った。その後もパンチでコーナーに追い込み、連打したところでレフェリーストップが掛かり、西山のTKO勝利となった。
◆オープニングファイト アマチュア -85kg2回戦(90秒制)
石田岳士(SOGA KICKBOXING)vs長曽我部優空(ROCK ON)
勝者:石田岳士 / 判定3-0 (20-18. 20-19. 20-18)
※JKAフェザー級チャンピオン.勇成(Formed)は練習中の怪我により欠場。試合は中止。
《取材戦記》
WMO世界戦2試合は、7月3日に行われたWMO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、オーウェン・ギリス(イギリス)vs馬渡亮太戦でのジャッジ一者の採点不備を踏まえ、オープンスコアリングシステムを採用。各ラウンド毎に集計し公開アナウンスとなりました。
前回はジャッジ一者毎に一枚のジャッジペーパーで、最終ラウンドまで採点し集計してレフェリーに渡すローカルシステムでしたが、ジャッジ一者が集計ミス。これで大きなトラブルに発展した。未だ解決しないこの試合結果。WMOサイトではこの試合の結果は載っておらず、オーウェン・ギリスはチャンピオンのままです。
馬渡亮太に尋ねたところ、一応ジャパンキックボクシング協会には、“そのチャンピオンと認められてはいる”いう曖昧な立ち位置。でも近々決着戦が予定されているという。それが日本かイギリスかは未定で、「出来ればタイで行なうのが中立ですね。」と語られた。いずれにしても“倒して勝つ”と宣言した馬渡亮太。前回のモヤモヤした保留結果は払拭して貰いたいところである。
今回のWMO世界戦2試合は、前回の不祥事ジャッジ(タイ)は外された様子。
瀧澤博人はラジャダムナンスタジアム・ランカーのチャイトーンを倒し、WMOの世界王座は戴冠しても、これを切符にラジャダムナンスタジアムランキング入りと王座挑戦も近づいたという、世界王座の上に殿堂ラジャダムナンスタジアム王座があるという縦構造を示した形。まだ最高峰には達していないという発言にもなった。
試合は距離感掴めない、やや圧された展開からヒジ打ち狙った両者の攻防の中、アグレッシブにぶっ倒してしまう圧倒的勝利は見事だった。“瀧澤やるじゃん”である。
睦雅は1月のONEでの敗戦後4連勝の絶好調の中、何が調子を狂わせたか、ペッダムは左ミドルキックは強かったが、攻略出来ない相手ではないと考えられたが、睦雅は言葉少ないながらも、再挑戦へ向けて立ち上がると窺える表情だった。
2026年のジャパンキックボクシング協会興行は、3月15日(日)後楽園ホール、5月24日(日)市原臨海体育館、7月5日(日)後楽園ホール、9月20日(日)新宿フェース、11月22日(日)後楽園ホールが予定されています。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」





































