欧州左翼〝復活〞の時代に 日本の左派が見失った「果たすべき役割」

広岡裕児(紙の爆弾2026年1月号掲載)

月刊「紙の爆弾」1月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

◆欧州における左翼の健闘

2025年7月の参議院選挙で参政党が14議席、日本保守党も2議席を獲得。自民党で高市早苗総裁が誕生し、首相になった。対して、共産党は4議席減らして3議席に、社民党はかろうじて1議席の確保に終わった。アメリカではトランプが我が世の春である。

こういう情勢だからか、欧州についても極右の台頭ばかりが報道される。

しかし、英国では、ロシアの策謀と推測されるものもあって極右が躍進したが、2024年7月の総選挙で政権を獲ったのは労働党だ。トランプのお友達のブレア元首相以来、左翼とはいえないかもしれないが、右派でないことは間違いない。

半年後のドイツ連邦議会選挙では、極右のドイツのための選択肢(AfD)が152議席を獲って第2党になったが、一方で、左翼党(Die Linke)は、前回2021年の39議席から64議席に躍進した。議員定数は前回735だったのが今回は630であるから、議席の占める割合でいえば、5%から10%に倍増したことになる。

ドイツは小選挙区と比例区の併用で、左翼党の比例区得票率は8.77%である。日本であれば参院選の日本維新の会(7.39%)を上回り、公明党(8.8%)と並ぶ。

左翼党は、ロシア・プーチン政権の侵略に対して明確にウクライナを支持したが、それに賛同できずさらにワクチンや移民政策でも意見が相違した10名の議員が分派している。今回、その分派は、比例区で4.97%を獲得した。5%の最低ラインに達しなかったので議席はないが、これと合わせると、得票率は13.74%である。

日本ならば2024年衆院選での国民民主党を上回る第3位、2025年参院選では国民民主党・参政党・立憲民主党を上回る第2位だ。

フランスにおいては、2024年の国民議会総選挙でメランション党首の左翼政党(注1)フランス不服従(LFI)は577議席中74議席、共産党は8議席を獲得。このほか、右派がマクロン大統領誕生のとき与党に鞍替えした社会党は59議席を獲っている。

欧州議会(705議席)でも同年の選挙で、極右と欧州懐疑派は2020年よりも54議席多い191議席を獲得したが、社会主義・ユーロコミュニズムの欧州統一左派・北方緑左派同盟(GUE・NGL)は、6議席伸ばして46議席を獲っている。このほか無所属の中にも共産党や新左翼がいる。

◆「右」と「左」の争いではない

極右の躍進と左翼の健闘の原因は同じである。格差の拡大。いまや世の中は「右」と「左」ではなく、「上」と「下」の争いの時代なのである。

キーワードは「ソシアル」だ。

日本とフランスで、「リベラル」という言葉はまったく反対の意味を持っている。日本では左派的なニュアンスで使われるが、フランスでは「新自由主義者」のことで右派ど真ん中。サッチャー、レーガン、トランプやテクノ・リバタリアンのような連中のことで、格差の元凶で庶民の敵である。これに対抗するのが「ソシアル」である。

フランスでは、極右のルペンは東西冷戦時代のジャン=マリーのときはフランスで言う「リベラル」の先峰だったが、娘のマリーヌの代になって「ソシアル」を前面に出している。極右の躍進の理由はけっして移民問題だけではない。もっと大きいのは、極右の「ソシアル」化である。

欧州ではもともと、左翼、とくに共産党が労働者の党として「下」の受け皿になっていた。ところが、ソビエト連邦・共産圏の崩壊に加えて、移民や治安問題などについて有効な回答がみいだせないまま右翼が代替となってしまった。だが、ソ連東欧の崩壊から30年余り、左翼が復活しつつあるといえる。

ところが、日本ではまったくそうなっていない。

考えてみれば、日本の右翼にはもともと「ソシアル」のイメージがある。戦前のバリバリの右翼・革新派は、東北の貧農を憂い、大資本家を撃った。対して左翼は、弾圧が厳しかったこともあるが、コミンテルンの日本支部が象徴するように土着できないエリートでしかなかった。

歴史修正主義者によって戦前見直しの空気が醸成されたところに、〝外人〞を不満の捌け口とし、おかしな優越感をくすぐる排外主義日本主義がハマった。

さらに、極めて強いアメリカの影響下にある。

よく「欧米」というが、欧(とくに大陸)と米では全く違う。「資本主義」からして、欧州の資本主義は「ライン資本主義」といわれてアメリカ(および英国)のものとは区別される。ドイツで政権を握っている保守のキリスト教民主同盟(CDU)の創設者アデナウアーは「社会的市場経済」を唱えた。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/na5440c83507a

『紙の爆弾』2月号に寄せて

中川志大 『紙の爆弾』編集長

あけましておめでとうございます。

今月号では昨年12月号に続き、元外交官の東郷和彦氏が、高市早苗首相の「台湾有事発言」と、12月に発表されたアメリカの新国家安全保障戦略をもとに、変動する米中日関係を解説しました。まず、「台湾有事発言」より前に、中国側が高市首相に対し“念押し”をしていた事実に注目。この発言に前段があったことがわかります。一方、アメリカは新戦略文書でバイデン政権時代の「価値観外交」からの転換を表明すると同時に、安全保障の中心を“西半球”に据えると明言しました。詳細は本誌記事をご参照いただくとして、日本にとって問題は、高市氏の外交が今の世界をどう捉えているのかが不明であることです。本誌記事がわかりやすく、事態を読み解きます。

1991年のバブル崩壊を起点とすれば、2026年は「失われた35年」を数えます。経済学者の中尾茂夫氏が前号で指摘したよう、1968年から約40年間、GDP世界2位を保った日本は、2010年に中国に抜かれ3位に、2023年にはドイツに抜かれ世界4位に転落。IMFの予測では、2025年にインド、2030年にイギリスにも抜かれて6位への後退が見込まれています。かつての「中流」が「下流」に押し流される形で、貧困というより格差が拡大。日本全体の国民総生産も転落を辿っていることは、この国の進むべき方向が誤っていることの証左といえます。そのような中で、「日米同盟が日本外交の基軸」「原発は必要で排除すべきは二酸化炭素」「日本人は戦争被害者」「健康は病院と薬がつくる」といった多種多様な“神話”がはびこり、論理的・科学的・歴史的・経験的な事実をやすやすと駆逐し続けてきたのが日本の近現代史です。真実に立ち返り、これら神話をひとつひとつ打破していくことは、本誌の役割といえます。

第2次安倍政権の大スキャンダル「森友事件」の現場である大阪府豊中市の旧森友学園用地は、すでに学園から返却され、国交省=国の所有地となっていますが、国交省はなぜか3度目の調査を行ない、昨年10月3日に「5000トンの埋設ごみが見つかり、撤去費は6億3000万円」と発表。マスメディアがこれを「約2万トンとされた従来の推計量の4分の1に減った」と報道しました。しかし、事件の経緯を追えば、森友学園への「8億円値引き」の根拠とされた埋設ごみが「存在しない」のはすでに明らかであり、ならば今回の「5000トン」は、地中から湧き出るように現れたことになります。これを放置すれば、次の売却においても「不当値引き」が行なわれかねません。森友事件の核心である「埋設ごみ」はどのように偽装されてきたのか。「数字」を追いつつ、真実に迫ります。

ほか2月号では、山上徹也裁判で飛び出した安倍晋三元首相の「潰瘍性大腸炎」詐病証言の真相、アメリカの巨大メディア再編がもたらす日本への影響、「親の虐待」にばかり注目が集まる裏で根深い児童相談所の闇、「文化を守れ」では太刀打ちできない国際金融の表現規制など、2026年も本誌だけの情報と問題提起を発信していきます。

『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年2月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2026年1月7日発売

高市政権と米国新国家安全保障戦略 米中日の新局面 東郷和彦
高市首相の大いなる勘違い 台湾有事は存立危機事態ではない 足立昌勝
デマゴーグが闊歩する風土(下)「ニチベイ」と脱亜 中尾茂夫
安倍晋三「詐病」証言から考える 山上徹也の理性と社会の狂気 野田正彰
「旧森友学園用地」で国交省「新埋設ごみ5000トン」発表 国有地から湧き出るごみは背任の証 青木泰
米メディア買収・再編 日本の報道・エンタメはアメリカ企業に乗っ取られる 片岡亮
最高裁が仕組んだ原発八百長裁判の全貌 偽装された社会の本質を見抜こう
“文化論”では闘えない 国際金融が変えた「表現規制」の地形図 昼間たかし
日本の“行政拘束”を考える 児童相談所「子どもの一時保護」の闇 たかさん
「再エネ」と「移民」世界を荒らす怪獣はどこから来たのか 広瀬隆
対米追従一辺倒に戦略はあるのか 多極化する世界に高市外交を問う 木村三浩
LGBT問題の現在「性別変更」をめぐる日本のいま 井上恵子
高市早苗が蘇らせた連合国「日本包囲網」藤原肇
米国マスコミが自主検閲で隠してきた2025年の重大ニュースTop12 佐藤雅彦

連載

例の現場
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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《緊急報告》深刻なベネズエラ

ロベルト・トラバホ・エルナンデス(AL PRESS代表)

地域を揺るがす予想外の展開として、今週土曜日未明、アメリカ合衆国はベネズエラで一連の空爆を実施し、最終的にニコラス・マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレスを拘束した。米国のドナルド・トランプ大統領は、自国の特殊部隊が作戦を成功裏に遂行したと発表し、「安全な移行」を保証するまで、ワシントンが南米の同国を一時的に管理すると述べた。この行動は国際社会で大きな反響を呼び、介入支持と主権侵害としての非難に分かれている。

攻撃はカラカスの要所、すなわち軍事施設フエルテ・ティウナやラ・カルロタ空港、さらにイゲロテ周辺に集中した。目撃者によれば、現地時間午前1時50分ごろに爆発音があり、航空機の飛行と複数地域での停電が確認された。米国当局によると、作戦は米陸軍デルタフォースが主導し、米側に死傷者はなく、数時間で終了したという。マドゥロとフローレスは就寝中に自宅で拘束され、ヘリコプターで米海軍艦艇USSイオー・ジマに移送され、その後ニューヨークへ向かった。両名は麻薬テロ、コカイン輸入の共謀、武器所持などの罪で起訴される見通しで、これらの容疑は、マドゥロがベネズエラ政府と結びついたとされる麻薬密売ネットワーク「太陽のカルテル」の首領と指摘された2020年の告発にさかのぼる。

トランプはフォックス・ニュースやニューヨーク・タイムズなどのメディアに対し、この行動を「独裁者であり麻薬王でもある人物に対する見事な作戦」と表現した。米国はベネズエラを一時的に「管理」し、石油インフラの修復と、過去の収用により「史上最大の財産略奪」とみなしている原油産業への米企業の参画に重点を置くと述べた。介入の承認について議会と協議したかどうかは明言せず、マリア・コリナ・マチャドなど亡命中のベネズエラ野党との対話も否定した。

ベネズエラ国内では、政府が国家非常事態を宣言し、死傷者数や被害規模はなお確認中とされている。副大統領デルシー・ロドリゲスは国営テレビに出演し、トランプの主張を否定し、マドゥロ夫妻の「生存証明」を要求するとともに、今回の行動を「誘拐」であり「前例のない軍事的侵略」だと非難した。国民に対し、外国軍のいかなる存在にも抵抗し、主権防衛のために団結するよう呼びかけた。国防相のウラジーミル・パドリーノ・ロペスも攻撃を「侵攻」と断じ、抵抗を約束した。現時点でカラカスは比較的平静を保っており、軍の展開はあるものの、大規模な混乱の報告はない。

この緊張激化の背景には、積み重なった対立がある。2024年7月のマドゥロの再選をめぐり、野党や複数の国際社会が不正とみなしたこと以降、ベネズエラは抗議活動、弾圧、そしてハイパーインフレや物資不足、700万人を超える大量移住を伴う経済危機に直面してきた。米国は制裁を課し、マドゥロへの懸賞金を2020年の1,500万ドルから2025年には5,000万ドルへと引き上げた。これまでにも、ベネズエラ船舶への攻撃や、制裁対象の石油タンカーに対する封鎖が行われている。

国際的な反応は深刻な分断を示している。アルゼンチン、エクアドル、パナマ、ボリビアなどは、民主主義回復への一歩として介入を支持し、野党のエドムンド・ゴンサレス・ウルティアを正当な当選大統領として支持した。イスラエルとウクライナも「専制との闘い」を理由に支持を表明した。

一方で、コロンビア、ブラジル、メキシコ、キューバ、チリといった中南米諸国は、国際法および主権の侵害として強く非難し、コロンビアは国境に部隊を動員、ブラジルは「許容できない一線」と位置づけた。アジアと欧州では、中国、ロシア、イラン、フランスが「侵略」「覇権主義」と批判し、欧州連合と英国は自制と国際法尊重を求め、情勢を注視している。国連は月曜日に安全保障理事会の緊急会合を招集し、アントニオ・グテーレス事務総長は「危険な前例」を作ると警告した。

影響は不透明で、チャベス派政権の崩壊、野党主導の移行への道、あるいは地域紛争への拡大を招く可能性がある。専門家は、世界最大とされるベネズエラの膨大な石油埋蔵量への関心が重要な要因だと指摘する。一方、マチャドらベネズエラ野党は、今回の拘束を「法の執行」と受け止めつつ、自由な選挙を求めている。国際社会は、世界的な不安定さが増す中、深い懸念をもって成り行きを見守っている。

▼執筆者紹介: ロベルト・トラバホ・エルナンデス
AL PRESS代表(CEO)、世界ジャーナリスト会議(WJC)ラテンアメリカ・カリブ地域ディレクター。
出典: GRAVE VENEZUELA
https://www.actualidadglobalinternacional.com/post/grave-venezuela

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年1月4日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

《表紙》『原子力明るい未来のエネルギー』 紆余曲折を経て 今は文字盤だけが倉庫に眠る(絵=鈴木邦弘)

《1月のことば》夢に生きろ 愛に燃えろ

鹿砦社代表 松岡利康

《1月のことば》夢に生きろ 愛に燃えろ(鹿砦社カレンダー2026より。龍一郎揮毫)

新しい年2026年になりました。

まだ苦境に在り心の底から「あけましておめでとう」とは言えませんが、皆様方のご支持・ご支援により何とか年を越し2026年につなげることができたことを共に喜びたいと思います。

昨年は苦境のさなか、『紙の爆弾』創刊20周年、前年に創刊10周年を達成した『季節』と併せ、単に長く発行してきたことを祝うのではなく、低迷を脱しV字回復を目指して「反転攻勢の集い」を東京と関西にて開催することができ、多くの皆様方にご参集いただき、あたたかい叱咤激励も賜りました。また、ご参加できない方々からは支援金やご祝儀をお寄せいただきました。

しかしながら、意図に反し、なかなか業績が回復せず、歴史的ともいえる猛暑に耐え、年末危機も青色吐息で乗り越え年を越し今に至っています。

これまで私たちは幾多の困難を皆様方のご支援にて乗り越えてまいりました。『紙の爆弾』創刊直後には「名誉毀損」に名を借りて松岡逮捕→長期勾留→有罪判決で会社は壊滅的打撃を被ったこともありました。それでも復活することができました。これに比すれば、まだイケると信じています。

このかん多くの読者の皆様方に物心両面にわたり多大なご支援を賜り、なんとか生き長らえていますが、これもここらで打ち止めにし、まさに反転攻勢に打って出て恩返しをしなければなりません。このままでは終われない。

個人的には、私は今年齢75となり、いわゆる後期高齢者となります。本来なら後継者に道を禅譲すべき歳ですが、何としても現況を脱しない限り、これはできません。私を信じて手を差し伸べてくださった方々の想いを裏切るからです。

私のすぐ上の世代、あるいは私と同世代の方々の訃報が続いています。鹿砦社の裁判闘争を支えてくださった中道武美(くだんの「名誉毀損」事件の刑事案件担当)、内藤隆(同民事案件担当)両弁護士、つい最近では出版界の先輩、社会評論社・松田健二さんらです。みなさん方、名実共にそれ相当の業績を成し亡くなられましたが、私には後世に遺す業績といったものはありません。何としても、ここ数年で将来に遺す本を一冊でも二冊でも出したいと願っています。

ともあれ、新しい年2026年になりました。40年余り前に抱いた「夢に生き」、社是でもある、〈日々決戦、一日一生〉の精神で奮闘することを誓います!

《表紙》『原子力明るい未来のエネルギー』 紆余曲折を経て 今は文字盤だけが倉庫に眠る(絵=鈴木邦弘)

https://www.rokusaisha.com

年の瀬に想う ──

鹿砦社代表 松岡利康

今年もあと一日となった。本当に一年経つのは速い。このかん倉庫や書庫を整理していく過程で、私たちが本格的に出版の世界に踏み入れる際に、ちょうど縁あって歴史家の小山弘健先生と出会い、「われわれの出版の目的は一、二年で忘れ去られることのない本を作ることである」という、『戦争論』で有名なクラウゼヴィッツの言葉を教えていただいたことを思い出しました。果たして私たちは「一、二年で忘れさられることのない本」をどれほど作って来たであろうか ── 汗顔の極みです。思わぬ“発見”でした。

『紙の爆弾』の定期購読者や会員向けのセット直販のために、これまで出版した本を列挙してみました。その一部が別掲のような本ですが、一冊一冊に想い出があります。自分で言うのも僭越ですが、なかなかいい本もあります。くだんの小山先生の最期の遺作『戦前日本マルクス主義と軍事科学』をあらためて紐解き、今になってこの本の真価を感じました。

いやしくも私たちは本(書籍や雑誌)を出す出版社ですから、本を買ってご支援いただくことが基本です。最近のお薦めは、『3・11の彼方から』、わが国を代表する精神科医・野田正彰先生の2冊の著書『流行精神病の時代』『過ぎし日の映え』(野田先生によれば、先生の「精神医学の総括、辞世の書」ということです)、われわれの世代の絶対的カリスマ・山本義隆さんが寄稿された長大な講演録を収録した『季節2025夏・秋合併号』です。

ともあれ青色吐息ながら2025年を送り新たな2026年を迎えることができることを喜びたい。

鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/

メガソーラー計画は本当に止まったのか? 田久保眞紀前伊東市長総たたきの真意

高橋清隆(紙の爆弾2026年1月号掲載)

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。

「東洋大学卒業」の学歴詐称疑惑が連日マスメディアでやり玉に挙げられ、わずか5カ月で静岡県伊東市長の座を追われた田久保眞紀氏。人口6万3000人の小さな市の首長がなぜ、これだけのことで全国規模のネガティブキャンペーンを受けるのか? 田久保氏がストップを掲げた各事業をつぶさに見ると、地元の建設・不動産・観光など土着利権のみならず、グローバル資本の壮大な思惑が見え隠れする。

◆新図書館建設に影落とす巨大詐欺事件

読者諸賢は、メディアによる伊東市長たたきに学歴以外の理由があることはご察しではないか。「学歴詐称」というなら、東京都の某知事の方が悪質だ。真っ先にメディアが葬っていなければおかしい。

当の田久保氏は、マスコミによる集中砲火の原因をどう捉えているのか?失職から1週間ほど後に面会した筆者が単刀直入に質問をぶつけると、「既得権益を脅かしたからでしょうね」と微笑を浮かべながら、半ば達観したように答えた。

筆者が把握する大きな権益は3つある。一番目は、新市立図書館の建設だ。5月、市長選に立候補した際、選挙広報には4つの公約が掲げられていた。その筆頭が「『新』図書館建設は中止します!!」だった。「将来計画に合わせた公共設備投資を」「市民の声を十分に反映した計画へ見直しを」とつづり、総工費42億5500万円の無駄を糾弾している。

現在、市の臨時駐車場となっているこの用地には、かつて「伊東マンダリン岡本ホテル」が建っていた。被害総額258億円、被害者7800人に及ぶ巨大詐欺事件「岡本倶楽部(クラブ)事件」の舞台である。「会員権を買えば全国の系列ホテルに格安で泊まれる」との触れ込みで200億円以上を集めたが、2011年にオーナーの山口組系組員が組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕。懲役18年の実刑判決が出て、現在も服役中だ。

件後に閉館した同ホテルは14年に競売に掛けられると、地元建設会社「東和開発」が約5000万円で落札。この約4000平方メートルの土地と建物を伊東市が翌年、約2億500万円で買い上げた。主導したのは、当時の佃弘巳(つくだひろみ)市長。業者から仲介役を通し1000万円以上の現金を受け取ったとして18年に収賄罪で逮捕。懲役2年・追徴金1300万円の有罪判決が確定し、服役した。この事件については、本誌19年11月号に詳述されている。

新図書館建設は佃元市長が議会対策のため後付けで考えたとの証言が明るみに出ている。次の小野達也前々市長は佃氏を特別顧問に迎え、同事業を引き継ぐように推進していた。これに異を唱えたのが田久保前市長で、2025年5月の市長選で小野氏を破り当選する。

市長就任翌日、建設事業の入札を停止し工事を止めた。しかし、地元紙が図書館計画の正式な廃止を報じたのは、失職後の11月14日だった。筆者は田久保氏に、新図書館建設に反対した率直な理由を尋ねた。すると、意外な答えが返ってきた。

「そもそも今、本を借りて読むのに、これほど莫大なお金をかけるべきなんでしょうか。建設費だけでなく、維持費で年間約2億7000万円も支出し続ければ市の財政を圧迫する」

伊東市も他の多くの自治体と同じく、運営を民間委託している。シェアナンバーワンの業者に喰い物にされるのが必定だが、関係職員はそこへの天下りを待望することから、これを推進する立場にあるという。

◆メガソーラー建設計画は本当に止まったのか?

もともと田久保氏が市政の世界に入ったきっかけは、2016年に同市南部の8や幡わた野の地区で大規模太陽光発電施設(メガソーラー)建設計画が明らかになったこと。

およそ100万平方メートルに1万枚のパネルを敷く計画を、当時の佃市長が承認していた。田久保氏は市民らによる反対運動の先頭に立ち、事業を止める条例制定に奔走し、19年に市議に初当選した。

ここ数年、メガソーラー建設問題は伊東市議会でも地元メディアでも大きな話題に上っていない。2018年に「伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例」(太陽光条例)が制定・公布されたからだ。

翌年、同条例に基づき、工事実施のための河川(八幡野川)占用申請に対し、市が不許可処分を出している。そのせいか、田久保氏らがXにメガソーラー問題に関する投稿をすると、次のようなコミュニティノート(他人が追加する注意書き)が付いてくる。

〈伊豆メガソーラーは田久保氏が市議になる前に前市長と伊東市議会が全会一致で反対して、2019年以降、計画が止まっているのが事実です。〉

しかし、田久保氏は23年9月の市議選の選挙公報でも「メガソーラー建設の完全白紙撤回を」と、新図書館事業中止とともに2大公約の1つに掲げている。実は、市が作成した「太陽光条例」案はメガソーラー建設の抑制を目指してはいるが、許可制でないため、事業を中止する強制力は持っていない。

事業者の「伊豆メガソーラーパーク合同会社」(以下、伊豆メガ)が同条例の効力の確認を求めた裁判では、同条例は勧告に従わない時には事業者の氏名・住所・勧告内容を公表することができるだけで、強制や罰則などの規定はないとされた(判決自体は伊豆メガ側の請求を「却下」)。

「太陽光条例」案提出時、住民の直接請求を受けて作成された別の条例案があった。こちらはメガソーラーを規制できる内容だったが否決されている。

伊豆メガは河川占用不許可処分の取り消しを求め2019年に同市(小野市長)を静岡地裁に提訴し、市側が敗訴。2021年、東京高裁で市側に裁量権の逸脱・乱用などがなかったことが認められるも、敗訴が確定した。

このことから読者は、「佃市長はこっそり業者の土地利用を承認したけど、次の小野市長は市民と一緒に裁判を闘ったではないか」と言うかもしれない。しかし、2021年に市民の情報公開請求により「確約書」の存在が明らかになる。伊豆メガと小野市長の間で同年2月に交わされたもので、「控訴棄却判決が出た場合、所定の手続きの後、速やかに伊豆メガソーラーパーク合同会社の河川占用許可申請を許可する」との項目が含まれる。

会見で同文書の存在を認めた小野氏は、市の弁護士や庁内での協議を経ず、独断で行なったことを認めた。河川占用許可をめぐり係争中の業者との間で結んだ密約とのそしりを免れない。

控訴審判決で裁量権の逸脱・乱用がなかったのが認められたことを受け、伊東市は再度、伊豆メガに河川占用の不許可処分を通知するが、同社はこの処分取り消しを求め再び提訴。現在も裁判が続く。

この間、伊豆メガの代表社員は韓国系のハンファエナジージャパン株式会社から北9州市に本社を置く株式会社「常」に変わっている。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nd2d4231445b9

映画「生きし」のアフタートークで中村明監督とお話をさせて頂いた

尾﨑美代子

12月15日月曜日、十三シアターセブンで映画「生きし」のアフタートークで中村明監督とお話をさせて頂いた。数日前、埼玉の障害者団体「虹の会」の佐藤さんから「中村監督はスーパー猛毒ちんどん(佐藤さんら虹の会のスタッフと障害者の人たちで作るバンド、私たちは彼らを10年ほど前釜ヶ崎にお呼びした)の映画も撮ってくれましたよ」と連絡頂き、「あらま」と身近に感じていたところ、なんと前日はなライブに来て下さり、なお身近に感じていたところだった。

「生きし」は93年埼玉で起きた愛犬家連続殺人事件をモチーフにしている。主犯の関根(獄中で病死)と共に殺人、死体損壊などで逮捕され、死刑判決を受けた風間博子さんは現在3度目の再審請求中。その風間さんと娘、母親との関係、支援者との関係などを描いている。

上映後のアフタートークではわたしの方から監督に「なぜこの映画を撮ろうと考えたのか」とそのきっけかなどをお聞きした。監督はテレビ局勤務時、長野智子さんがキャクターを務めた報道番組では、東住吉事件の青木恵子さんの冤罪事件などにも関わってきた。映画「生きし」も冤罪・埼玉愛犬家連続殺人事件の冤罪犠牲者・風間博子さんと面会する中で、構想を練り、今回は外にいる娘さんを焦点に取り上げたという。私は映画の前半に出てくる、ちょっと怪しげな男性(風間さんと獄中結婚し、その後、覚せい剤使用で逮捕され、離婚した男性)についてお聞きした。その男性は実在した方だという。

その後、会場からの質問と続きました。この事件で風間さんは殺害は否定しているが、関根の死体損壊を足をもつなどして手伝った。それは関根に風間さんや連れ子の男の子が酷いDVを受けており、その恐怖から断りきれなかったからだ。

一番前の女性が、「長女さんらがDVを見たと証言したらいかがでしょうか」と聞いてきました。私からは、当時の長女は9歳、前日登壇した和歌山カレー事件林眞須美さんの長男は当時10歳だが、彼が言うことは信用されなかったと答えた。言いわすれたがそれどころか、2審で夫の健治さんが「保険金事件を主導したのは自分だ」と主張したが、それすら信用されなかった。

その後、知り合いの岡田有生さんが、グッドタイミングで再審法の質問をして下さった。私は監督の顔をチラリと見て「ガンガンしゃべってもいいですか?」と言ったつもりで、喋りだした。短い時間だったが、何故再審法が必要か、自民党稲田朋美がめっちゃ説得力あるしゃべりをしていたことなどに触れた。稲田の故郷福井県で39年前に起きた福井女子中学生殺害事件で服役した前川さんに再審無罪判決が下された。その前川さん自身が「立法事実」なのだと稲田はきっぱり訴えた。立法事実、この言葉を私は半年前、はんげんぱつ新聞編集長の末田さんにお聞きした。このことのためにこの法律を作る、あるいは改正しなくてはならないという事実だ。

あと、この数年再審無罪判決がだされ、再審法改正が盛り上がって超党派の議員連盟が作られ、法案を提出してきた。そこに「このままだとヤバイ」とチャチャ入れてきたのが、法務省が進める法制審だ。「それじゃダメ」。稲田もきっぱりそう言ってた。井戸謙一弁護士は「検察、裁判所が冤罪を作ってきた。それを統括する法務省が再審法改正を主導するのはおかしい」と非難していたと話した。それに私は「泥棒が戸締まりに気をつけて」というようなものと、付け加えた。

更に埼玉愛犬殺人事件の再審請求では、事件を主導したのが風間さんではなく、亡くなった関根の方だとそれを証明するある人の調書を出させることが大事だとも、多分早口で喋った。全ての証拠を出させるべきだ。冤罪について話だしたら、止まらなくなる。監督すみません。

中村監督は大阪滞在中、2回もはなに来て下さった。一人で釜ヶ崎のあちこちを散策され、釜ヶ崎にも関心を持ってくださった。またひとつ、つながりができそうだ。

◎「生きし」HP https://ikisi-movie.com/

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

キックボクシング、2025年を振り返る

堀田春樹

今年も選手各々にとって目標達成した者。届かなかった者。陥落した者。目立った活躍出来なかった者。引退した者。それぞれの明暗でもそれぞれの成長がありました。ごく一部の選抜ですが、活躍と苦戦の振り返りです。

◆各々の運命

大田拓真は2025年2月2日、金子貴幸にノックアウト勝利しNJKFフェザー級王座初防衛。6月8日、WBCムエタイ世界フェザー級タイトルマッチでチャンピオン、アントニオ・オルデンにKO勝利で世界王座奪取とNJKFのエース格を証明。

大田拓真はWBCムエタイ世界王座を奪取。今後もトップは安泰か(2025年6月8日)

吉田凜汰朗も2月2日に、健太に僅差2-0判定勝利でNJKFスーパーライト級王座初防衛。この後、健太とオープンフィンガーグローブで決着戦。無判定による引分けも流血の激闘を戦い、11月30日には切詰大貴に判定2-1勝利ながらIBFムエタイ日本スーパーライト級王座も獲得。IBF版の先陣を切り、より知名度が高まりました。

健太vs吉田凜汰朗の新旧対決は壮絶だった。吉田凜汰朗にとってはいい経験となった(2025年6月8日)

小林亜維二は体格も成長し減量苦の苦戦も、2025年9月28日に宗方888に第1ラウンド完封TKO勝利し、王座防衛による“認定”から“正規”チャンピオンと言える存在感に成長。吉田凜汰朗と並ぶ若きエース格は健在。しかし11月30日にも計量ギリギリパスながらウェイトが苦しい事態を曝け出し、肩脱臼によるTKO負けは残念な結果となったが、次なる上位王座への期待感を見せました。

壱・センチャイジム(=与那覇壱世)は2025年10月12日にKNOCK OUTイベントにてWBCムエタイ日本スーパーバンタム級王座獲得。MuayThaiOpen興行がホームリングながら、他の団体、イベントでも参加し、トップクラスを維持し続ける実績を残しています。

睦雅の2025年は4勝2敗、その内ONE Championshipで2勝1敗。WMO世界王座奪取成らなかったが、ジャパンキックボクシング協会でのメインイベンター格は不動でした。

瀧澤博人は2024年に2-1惜敗で世界王座奪取成らなかったが、2025年11月30日には再挑戦でヒジ打ちによる完封勝利で念願のWMO世界王座感動の奪取。諦めず努力を続ければ夢は叶うことを実践。

瀧澤博人は念願のWMO世界王座奪取で号泣。夢は叶ったが更なる上を目指す(2025年11月23日)

令和の全日本キックボクシング協会では瀬川琉が健在。まだ大手ビッグイベント出場には至っていませんが、2026年はアジアエリアでの主導権を握る存在感が期待されます。

坂本嵐は2025年6月8日にWBCムエタイ日本バンタム級王座は獲得成らず、11月30日にはNJKFバンタム級王座も初防衛成らず陥落。いずれもボディーを攻められた敗戦。厳しい試練から復活成るか。そこに注目が集まる存在感があります。

健太(山田健太)がついに引退。全126戦は平成以降では最多の偉業でした。
各団体のチャンピオン、政斗(黒澤政斗/治政館)、匡志YAMATO(福田匡志/大和)、剱田昌弘(テツ)もリングを去りました。

木下竜輔が2025年3月2日にジョニー・オリベイラを倒し、日本スーパーフェザー級王座奪取。前年の王座決定戦で敗れた雪辱を果たしました。新日本キックボクシング協会の団体エース格となったが下半期の出場は無し。勿体無い隆盛期の時間であったが、2026年3月には復帰予定である。

新日本キックボクシング協会のトップ争い、ジョニー・オリベイラvs木下竜輔戦は再度戦うか(2025年3月2日)

◆団体の方向性

各団体にとっても諸々の動きがありましたが、計画性が明確な団体と、低迷から脱せないところもあります。タイトル乱立も増し、その曖昧さも存在します。

全日本キックボクシング協会は2024年の初陣興行から満2年となります。今後も続くのは韓国勢との対抗戦。中国との交渉は一時難航した様子でしたが現在進展中。香港とは栗芝貴代表の現役時代以来の交流も復活する予定です。

今後、アジアトーナメントを計画しているという中、10月25日にはタイ・バンコクに於いてWPMTA日本代表に栗芝氏が就任。突然現れたようなWorld Pro MuayThai Associationは以前から存在するものの、これまで大きな活動は無かった模様。今後の活動によってはかつてのタイ発祥の代表的世界機構WPMFなどや、現在の主流にあるWBCムエタイに迫るか、今後の活動に注目です。

全日本キックボクシング協会栗芝貴代表が語るプランは2026年どこまで進むか(2024年12月28日)

ジャパンキックボクシング協会では7月以降、WMO世界戦が3試合行われましたが、馬渡亮太のWMO世界スーパーフェザー級王座挑戦は勝ちか引分けか、王座はどうなのか。結果の保留状態が続きました。それがメディアから問題視されるほどの話題に取り上げられないのもキックボクシングのマイナー感。それでも問題点を見直し改善へ進み、11月23日には睦雅と瀧澤博人がWMO世界王座挑戦を実現。睦雅は獲得成らなかったが、二つのタイトルマッチは滞りなく終了しました。

疑惑の判定となったオーウェン・ギリスvs馬渡亮太。再戦はどこでやるか(2025年7月12日)

新日本キックボクシング協会から最初の分裂が起こったのが2019年春。2023年春にも離脱があり、この協会型三派という流れの三団体は、もう一度集まれば大きな団体となるのに惜しいことではあります。

ニュージャパンキックボクシング連盟は2023年11月より武田幸三氏が率いるようになって11度の興行を開催されました。2025年8月24日、WBCムエタイ日本タイトルの活性化が発表された後、IBFムエタイ日本タイトルも活動開始を発表。

「えっ、マジ?」といったNJKF含めて「タイトル多過ぎ!」という声は多い中、他団体でもタイトルマッチは行なわれるにしても全て活発にタイトルマッチ開催出来るのか疑問は残ります。

毎度過激な檄を飛ばす武田幸三プロモーター。NJKFを日本一の団体にするのは何時か(2025年11月30日)

◆NKB傘下の日本キックボクシング連盟

連盟エース格、NKBフェザー級チャンピオンの勇志の出番少な過ぎだった。他の階級のチャンピオンでも引退や脱退が相次ぐ。スターが居ない中、他団体を抜く勢いの浮上は難しい存在でも今後、新世代の運営が強化されれば虎視眈々と狙う飛躍も考えられます。

◆2026年はどんな変化が起こるか

ある大手企業の支配人がキックボクシング好きで、各団体を纏めようと考えている動きもあるという噂も聞くことがあります。そんな噂や信憑性高い情報もいつの間にか立ち消えるパターンは多いものです。個人の力より群衆の力とならないと改革は難しいでしょう。

地上波テレビなどの大手メディアに扱われなければ全国区への知名度は上がらないのは過去から変わりません。ここまで毎度取り上げる範疇の各団体や選手だけでしたが、これらの名前や活動がどこまで世間に浸透するかの各団体の挑戦は続きます。イベントの盛り上げより競技としての確立を目指して追って行きたいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

「台湾有事発言」は序章にすぎない 日本を襲う高市リスク

孫崎享(文責・本誌編集部/紙の爆弾2026年1月号掲載)

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。

◆安倍「台湾有事は日本有事」発言との違い

2025年11月7日、衆院予算委員会での、日本が集団的自衛権を行使可能な「存立危機事態」に関する高市早苗首相の国会答弁が、中国の大きな反発を招いています。主要部分をまとめれば、

「中国政府が台湾に対する海上封鎖を戦艦で行なった場合には、封鎖を解くために米軍が来援する、それを防ぐために他の武力行使が行なわれる事態が想定される」
「台湾を中国北京政府の支配下に置くために戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」

これは、いわゆる台湾有事における自衛隊の対応について、従来の政府見解(あいまいに留める方針)を踏み越え、「中国による海上封鎖」という具体例を挙げて、日本の自衛隊が「参戦」する可能性を示唆したものです。質問した立憲民主党の岡田克也衆院議員も指摘している通り、2024年9月の自民党総裁選出馬時にも高市候補は同様の内容を述べています。彼女が師と仰ぐ安倍晋三元首相も、2021年12月1日に台湾で行なわれたシンポジウムにオンラインで出席し、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と発言しました。

しかし、これは首相退任後のことで、在任中はむしろ、台湾との接触を控えてきました。内容も異なります。安倍氏は「台湾有事」とは言っても、自衛隊には触れていません。ただ「日本にとっても有事である」との認識を述べたものです(それでも十分に問題ですが)。

高市首相が自衛隊の対応にまで踏み込んだために、これまで中国の外交部門を中心に反論などの対応を行なってきたのが、今回は軍事部門が前面に出てきました。薛剣(シュエチエン)駐大阪総領事のX投稿「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく切り落とす」が話題になったものの、より注目すべき中国側の反応は、11月13日の人民解放軍広報部門による「日本が台湾海峡情勢に武力介入すれば中国は必ず正面から痛撃を加える」や、国防省の「日本が台湾情勢に武力介入すれば、中国軍の鉄の壁の前で必ず血を流すことになる」との警告です。

中華人民共和国の成立過程を見れば明らかなように、中国政府においては軍事部門が外交部門よりも圧倒的に上位です。政府トップである習近平氏の第一の役職は中央軍事委員会主席であり、国家主席は国際的な舞台における肩書にすぎません。つまり、外交部門の発言よりも、軍事部門の発言・行動の方が、中国政府の中心から発せられたメッセージと見るのが正しく、普段はそれほど表立って発言しない軍関係者が今回、先頭に立って反応を示したことが、まさに〝一線を超えた?事態の深刻さを示しています。

これを一過性の「騒動」のように語る政府・メディア・世論を含めた日本側の認識は甘すぎると言わざるをえないのです。実はこのことこそ、「台湾発言」にとどまらない、高市政権がもたらす日本にとってのリスクなのですが、この点については後に詳しく述べます。

◆〝中国の脅威〞の真相 

台湾をめぐる情勢の緊迫度は確かに高まっています。日本では、まるで習近平主席が暴走を始めたように伝えられてきましたが、いくら中国が急激に力をつけたといっても、それだけで緊迫化することはありえません。近年において、実際に事態を大きく動かしたのは、2022年8月2?3日、米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)による台湾訪問です。

米国ナンバー2といえる人物による訪台は、当然ながら中国から見れば、外部勢力による介入の度合いが急激に高まったと判断されます。同月4日正午に人民解放軍が台湾を取り囲む形で「重要軍事演習」を開始。11発の弾道ミサイルが発射され、うち5発が初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下しました。

すなわち、〝中国の脅威〞は中国が圧力を強めたというよりも、米国が介入の動きを意図的に示したことをきっかけに高まったのです。ここで米中関係について振り返ると、日中共同声明の前年である1971年に、ニクソン政権のキッシンジャー大統領補佐官が周恩来総理と計39時間に及ぶ機密会談を行ない、キッシンジャー補佐官は「いずれ台湾は統一されるであろう」と述べました。このように当時の米国の認識は、「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする中国の立場をあえて脅かすものではありません。
 しかし、中国が経済的な発展を遂げ、米国を追い抜く可能性が生まれるにつれ、それを阻止する動きが米国内に生まれます。その戦略の一つとして、米国は台湾問題を利用し始めたというのが現在の情勢に対する中国の認識です。米国の台湾への関与のレベルが上がったことが、中国が軍事演習などの行動に出ている理由なのです。

実際、2015年にGDPの購買力平価ベースで中国がアメリカを追い抜き、アメリカにとってナンバーワンの敵になりました。ウクライナ戦争が継続中でも、国民を含め、ロシアではなく中国こそ一番の敵だということが米国内のコンセンサスとなっています。かつての一時期に存在したウィンウィンを目指す考え方を捨て、いかに中国の影響力拡大を抑えるかが、米国の中心政策となりました。

そこで、米国の軍事シンクタンク「ランド研究所」が2015年から16年にかけて、米軍の委託を受けてまとめた報告書では、かつては中国に対して絶対的優位にあった米軍が、空中戦、サイバー戦など9つの作戦行動のうち、現在において明らかな優位性を保つのはわずか3項目だったと述べ、衝撃を与えました。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n1fba48476652