前回、『戦争は女の顔をしていない』の書評の第1回目から日が経ち、申し訳ない。続きを書く前に、上映しているうちに早めにアップしておきたい『REVOLUTION+1』完成版の映画評を先にお届けしたい。

 

足立正生監督(左)

◆瑞々しい「足立節」を堪能せよ!

これは足立正生監督の6年ぶりの新作で、2022年8月末に密かにクランクインし、8日間の撮影から制作されたという。ピンク映画の手法の経験なしでは、このスピード感で誕生しえなかった作品だ。クランクインから1月後、強行された安倍晋三国葬当日にダイジェスト版の緊急上映をおこなった。今回の上映は、完成版となる。

安倍晋三元首相を撃った山上徹也氏を主人公に、「民主主義への挑戦」ともいわれた彼の行動の背景を、それでも足立監督ならではという表現によって描写した。監督は83歳になるそうだが、瑞々しい感性は変わらない。わたしは実は、足立・若松ファン歴がおそらく30年ほどとなるが、どの作品を鑑賞したことがあるかの記憶は曖昧だ。

『REVOLUTION+1』も、もちろん足立節が炸裂。山上氏は、わたしの周囲では直後から「テロリストの鑑」といわれていたし、育った家庭がややこしさを抱えながらロスジェネと呼ばれて搾取され続ける世代としても、理解できるような気がする部分があった。報道を眺めても、その後の影響は膨大と考えざるを得ず、SNSでは「山神様」などという表現も目にする。

足立監督が山上氏を撮ると耳にした際、「やはり」と感じた。なぜなら、1972年5月30日の「リッダ闘争」3戦士の1人である岡本公三氏を支援する「オリオンの会」でも、「テロとは何か」「現在の革命にどのような形がありうるか」というような話題が常にのぼっていたからだ。まさに、その先にあって、なおかつ誰も予想できなかったかもしれないのが、山上氏の登場だった。彼自身の語りとは無関係かもしれないが。

◆社会や世界を変革する「星」たれ!

3月11日、東京上映初日のユーロスペースでの舞台挨拶兼トークには、足立正生監督、主演のタモト清嵐氏、イザベル矢野氏、増田俊樹氏、飛び入りのカメラマン・髙間賢治氏が登場。司会進行は太秦の代表・小林三四郎氏で、増田氏が足立監督の「映画表現者は、現代社会で起こる見過ごせない問題に、必ず対時する」という言葉を紹介していた。

監督は作品を観た人には「これまでの作品とは異なり、わかりやすいといわれる」と語っており、実際わたしも本や絵はそのような方向性が意識されていたようには思う。足立監督といえばシュルレアリスム(【Interview】「僕らの根っこはシュルレアリスムとアヴァンギャルド」~『断食芸人』足立正生(監督)&山崎裕(撮影))。シュルレアリスムとは、「思考の動きの表現」であり、「奇抜で幻想的な芸術」だ。

ただし、本作から何を読み取るのかは、観る側に委ねられているはずだ。主人公・川上達也の苦悩の本質、彼が抱く「星になる」という希望、暗殺の実行によって彼が得たものなどには想像の余地がある。

個人的には、安倍どころか中曽根以降、否、戦後、否、明治以降に、彼の苦しみは翻ると改めて考えさせられた。1人が銃弾によって、そこに風穴をあける。「星になる」こととは、復讐を果たすことであるいっぽうで、社会や世界を変革する1人になることでもあるだろう。そして彼は、「生きるということ自体」を取り戻したのではないか。いっぽうで、わたしが復讐を果たすべき相手は誰なのか(比喩的にでも)。

主演のタモト氏は、若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』にも出演していた方。初日のトークでも、森達也さんの『福田村事件』に主要キャストなどを連れ去られた話がすぐに出るが(笑)、井浦新氏ファン歴がさらに長いわたしでも、『REVOLUTION+1』の主演はタモト氏でよかったと思う。観る者に雑念を混入させない、シンプルに没頭させてくれる演技が魅力的だ。

とにかく足立監督は、「やはり、こういうのが好きなのだよな」と、なんというか自由でクリエイティブで少々デタラメな気分を共有させてもらえること請け合いだ。楽しそうに出演する監督やスタッフさんたちも、ウォーリーのように見つけよう。ぜひ、ご覧いただき、何に対して自分は立ち上がるのかを考えたりしてもらえれば幸いだ。

3月11日、東京上映初日のユーロスペースでの舞台挨拶兼トークの様子


◎[参考動画]映画『REVOLUTION+1』 予告篇

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。労働・女性運動を経て現在、農的暮らしを実現すべく、田畑の作業、森林の再生・保全活動なども手がける。月刊『紙の爆弾』4月号に「全国有志医師の会」藤沢明徳医師インタビュー「新型コロナウイルスとワクチン薬害の真実」寄稿。映画評、監督インタビューの寄稿や映画パンフレットの執筆も手がける。

『紙の爆弾』2023年4月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXCMXQK3/

岸田文雄首相は同性婚について、「全国民にとって、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と否定。日本会議や旧統一教会との価値観の共有を明らかにしたのち、差別発言の秘書官を即日更迭した2日後には、“極右の女神”こと櫻井よしこ氏と3時間の会食。そのうえで「LGBT理解増進法」に向けて具体的な動きを始めました。

 

3月7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

こうしたわかりやすさの中でも、マスコミの援護射撃もあるのでしょう。4月の統一地方選は、自民党と旧統一教会の癒着をはじめとした「政治と宗教」がメインテーマであるはずが、はぐらかされ続けているように見えます。周知の通り、“統一教会応援議員”が最も多いのは自民党・安倍派で、そのほとんどが安保3文書や原発回帰に賛成。そうした議員を落とすことが、反差別・反軍拡・反原発を実現していく一手につながります。

4月号では、「全国有志医師の会」代表の藤沢明徳医師にインタビューしました。「全国有志医師の会」は、新型コロナウイルス感染症への対策の見直し、ワクチン接種事業の中止を求め、昨年2月に立ち上げられた医師・医療従事者の団体です。藤沢医師は「新型コロナワクチンは、ワクチンではない」と指摘。その“正体”と、ワクチン後遺症の医療的な対応についても、臨床医の立場から語っていただきました。「全国有志医師の会」ホームページ(https://vmed.jp/)では、ワクチン後遺症に対応する病院のほか、受診の流れや相談窓口などについても紹介されています。ご覧になることをおすすめします。

そのコロナワクチン接種拡大を牽引、現在はデジタル大臣としてマイナンバーカードの普及にいそしむ河野太郎氏について採り上げた3月号は、おかげさまで大きな反響をいただきました。“デマ太郎”“ブロック太郎”と呼ばれる河野氏は、現在さらに「コオロギ太郎」という新たなキャッチフレーズを与えられ、Twitterでトレンド入りしているようです。突如としてブームのように扱われている「昆虫食」。その背景としての「食料危機」を含め、本誌でもレポートの準備を進めています。

警察庁が公表した2022年の犯罪情勢まとめ(暫定値)によると、刑法犯の認知件数は前年比5.9%増。20年ぶりに前年を上回りました。報道では外出自粛の緩和が影響したというものの、「ルフィ」のような闇バイトも要因と推測しています。集められるのは若者に限らないようですが、背景にあるのは貧困よりも将来への絶望。自分の将来をイメージできないことが、リスクに見合わない犯罪に手を染めることにつながるのではと思われます。その代わりに政府が投資・運用を勧めるのは、また「自助」で、政治の責任を投げ出したということなのでしょう。

さらに4月号では、三浦瑠麗氏や竹中平蔵氏、デービッド・アトキンソン氏らの主張と手法を読み解きつつ、「レントシーカー」とはいかなる存在かを分析。また統一地方選に向け、地方議会における公明党の“疑惑”に迫りました。ほか、4月号も盛りだくさんの内容をお届けします。『紙の爆弾』は全国書店で発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

3月7日発売! 月刊『紙の爆弾』2023年4月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXCMXQK3/

◆SDGsに無批判なマスメディア

田所 国連が提唱するSDGsという「持続可能な成長」。耳障りは良いです。しかし本音は「持続可能」ではなく「成長」=「経済成長」です。成長を実現するために紛争をなくす、貧困をなくす、二酸化炭素を減らすといろいろ言いますがそのための市場や商品が国連により推奨され、あたかも人類や地球環境や生態系に良い効果をもたらすと札付きを与えている。たとえば電気自動車や二酸化炭素を出さないもののが、良いものだとされる。けれども二酸化炭素がなければ新しい空気ができません。この基本的な議論がSDGsからは見事に抜け落ちている。

 

黒薮哲哉さん

黒薮 環境をよくすることは大事だけども、それをビジネスに変えるのはおかしいでしょう。環境問題を企業に委ねれば、目的が達成できると考えるのは誤りです。

田所 綺麗な言葉で国連が新自由主義を擁護している。国連が発するのですからもう学校教育の場でも子どもたちに刷り込みが既に始まっている。

黒薮 「企業コンプライアンス」という言葉が重視されていますが、新自由主義の下で格差が広がり、様々矛盾が噴出してきたから、それをなんとなく誤魔化すための言葉だと思います。資本主義の枠内で、欠点を多少「手直し」して、基本的には同じ路線を突き進むための世論誘導です。現在の体制を巧みに維持するための戦略です。

田所 これは政策ではなくイメージです。そこがたちが悪い。イメージだから直接的に誰かが傷ついたり即座に誰かが困ったりはしない。けども分析すれば「貧困をなくす」のは企業がではないです。利益を追求しないと成立しえない集合体が企業であり利益を最大化したいのがもとからの企業の存在意義です。

黒薮 だからイメージをコントロールして世論を誘導する戦略が、非常に重視されるわけです。こうした財界の戦略に協力しているのがマスメディアです。

田所 マスメディアはSDGsにまったく無批判です。イメージでは我々よりも意識が進んでいるだろうと思いがちな欧州の国々でも、この問題に異議を唱える人が多くはなさそうで、右から左までがSDGsを認証することにより、新自由主義=格差拡大を地球規模で拡大させることにより事態がさらに悪化してゆくことは目に見えている。

◆「誰にでも起業のチャンスがある」というのは幻想

黒薮 今の資本主義は高度成長時代の資本主義と違い、国境がなくなっていますから資本主義の陣営が同じ方向性の戦略を取り、必要とあればどこかの国を共同で攻撃する。こうした戦略がどんどん鮮明になっています。

田所 資本に国境はないです。GAFAといっても米国だけが儲かっているわけで、製造業は工場を世界各国に置きます。利益は国境を越えて多国籍企業が儲かる仕組みです。彼らは大きくなりすぎているので新規参入の中小企業が入る余地はない。

黒薮 それが実態なのですが、メディアにより「誰にでも起業のチャンスがある」かのような幻想が広がっています。

田所 大嘘です。ビジネスチャンスとか、ドリームとか、頑張ればなんとかなるとか。はっきり言って頑張ったってどうにもなりませんよ。この寡占の現実は。原則が間違っていると認識し、違う方向を見出さない限り無理です。今お金を持っていて支配している人が作り出すからくりを綺麗に言いつのる現実を気持ち悪いと感じます。

◆政策を決定しているのは、グローバル化した資本主義

黒薮 防衛費の倍増や沖縄の基地化。これらの政策に反対している人々の多くは、自民党の政治が終われば問題は解決すると考えていますが、そんな単純なものではありません。政策を決定しているのは、グローバル化した資本主義です。

国際的な協力の枠組みの中で、日本も「役割分担」をさせられているわけです。ですから安倍政権が終わっても、グローバリゼーションを背景に、政策の大枠はまったく変わっていません。改憲と軍国化の方向で走り続けています。グローバル化した資本主義に合わせた政策をやっているわけです。

 

田所敏夫さん

田所 その側面があることに同意しますが、覇権を維持しよう、利益を維持しようとする層がいます。実は安倍元首相の場合は、彼の祖父の時代からその時々で、主張することは違いますが、岸信介は若い時代中国大陸で満州国を作り商工大臣をしていました。戦後戦犯として逮捕されたもののどういう訳か不起訴で出てきました。戦犯追放を潜り抜け総理大臣になり、昨年話題になった「勝共連合」の設立に尽力しました。それは米国の軍産共同体との利害が一致していたからでしょう。米国はベトナム戦争の際、韓国に参戦させることにより、韓国に特需を与えた訳です。今韓国にある財閥はベトナム戦争時に出来上がり、米国の財閥との結び付きを得た。次の世代が安倍晋太郎ですがこの人は中継ぎです。中曽根がレーガン、サッチャーとともに、重武装への転換点を作り小泉がイラク派兵を行った。その完成形の役割を安倍は長い期間にわたって担い続けた。黒薮さんが指摘されるように、必ずしも個人の思いつきではない部分も多いが、安倍晋三は小泉政権の副官房長官時代に早稲田大学で「敵地攻撃は違憲ではない」「核兵器保持は違憲ではない」と明確に話しています。だから一定程度そのような考えの持ち主であることは確かです。そのような人物で血統もそうだから総理大臣にさせてもらっていた側面もあると思う。

黒薮 どういう人物が首相になるかを決めているのが、時代の流れでしょう。

田所 単に投票行動だけではなく、投票行動を誘う諸政策、小選挙区制の導入や労組の無力化、政党助成金の導入などにより選択肢がない。こう言うと熱心に政治に関心を持っている方々に悪いかもしれないけども。

黒薮 政治家が劣化しています。どうやって次の選挙で当選しようか、そのことばかりを考えて、世論に迎合し、大胆なことはしない。バッシングされると困るので控えておこうという傾向が非常に強くなりました。1996年に小選挙区制導入されてからどんどん新自由主義が顕在化し、それにあわせて軍国化が進んでいます。ビジネスのグローバル化に伴い、多国籍企業を「国際協力」により防衛するための体制が拡大され続けています。

◆「リベラル保守」の罪

田所 それを可能にするには、世論の支えが必要です。一連の構造改革の中で派遣法の改正が行われました。改正以前、派遣労働は特別な業種に限定されていたが、ほぼすべての職種で派遣労働が可能になり、同じ仕事をしていても給与が半額の人が多数生まれる現象が起きました。

貧困で労働組合にも入れない。その人たちが自分たちの窮状を訴え、権利を求める方向に目が行かないように当時一番売れていたのは小林よしのりです。『ゴーマニズム宣言』です。評価は分かれますが宮台真司、宮崎哲弥、浅田彰も入れます。廃刊した『朝日ジャーナル』の負の部分が一役になっていたと思います。今30代、40代のひとがかつての革新陣営や社会主義に対して持っている嫌悪感や、日本や日本民族に対する論拠無き過剰なプライド。砂上の楼閣のような感情が見事に形成されたのを政府は確認して、投票年齢の18歳に引き下げたのでしょう。

黒薮 そうですね。これらの層は根本から日本の社会を変えようとはしないで、一部を手直しして基本的な枠組みにはメスを入れません。その典型が、「リベラル保守」と呼ばれる人々ですね。

田所 そう人たちの罪がとても大きいと思います。

黒薮 朝日新聞などもこうした路線だと思います。資本主義の枠は維持して、その中で「手直し」を提唱する程度です。ガス抜きはするが、本当に社会を変革しようというメディアではないと思います。こうした勢力は、日本を支配している人たちにとっては、むしろ必要なメディアなんです。世論誘導とはそういうものです。(つづく)

◎遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫
〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後 
〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか? 
〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGs”の欺瞞
〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的

▼黒薮哲哉(くろやぶ てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学 消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY007)

月刊『紙の爆弾』2023年3月号

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BTHJ72PM/

◆戦後77年 ── 過剰な変革と拡散(多様化)の時代を経て

今年は戦後77年でした。編集部の求めもあり、戦後史をふり返る記事を書いていました。やはり「激流の時代」と呼ばれた「昭和」の社会の激変がすさまじく、文化の変容も激しいものだったと、あらためて回想されます。

このあたりを強調しすぎると、戦後世代特有の大げさな言説。あるいは老人の回顧と批判されそうですが、現在の停滞を生み出した過剰な変革と拡散(多様化)は、40年代後半から80年代にかたちづくられたことを再確認しておく必要があると思うのです。

そしてそれは、歴史考察がつねに底辺に哲学として持っているべき、今現在が最高の状態ではなく、過去により良いものを発見するものとして考えられるべきでしょう。

そのキーワードは戦後革命であり、世界的な68年革命、80年代のポストモダニズムです。このうちポストモダニズムは建築と現代思想の中で行なわれた、いわばコップの中の嵐のように思われがちですが、89年からの東欧・ソ連社会主義の崩壊、および80年からの中国の資本主義経済導入という歴史的な流れを、生産力批判として具現化するのです。

「《戦後77年》日本が歩んだ政治経済と社会〈1〉1945~50年代 戦後革命の時代」(2022年8月16日)

「《戦後77年》日本が歩んだ政治経済と社会〈2〉1960~1970年代 価値観の転換」(2022年8月23日)

「《戦後77年》日本が歩んだ政治経済と社会〈3〉1980年代 ポストモダンと新自由主義」(2022年8月30日)

◆資本主義の限界と再分配構造の転換

その後、バブル経済の崩壊が資本主義の限界を露呈させました。とくに日本においては労働編成の再編、すなわち終身雇用制の崩壊によって、非正規という労働市場の自由化が行なわれます。つまり労働者のパート・アルバイト化によって、低賃金労働が常態化するのです。

資本と労働組合に表象されてきた階級社会が消滅し、高所得者層と非正規の低所得層への階層分岐が顕在化していきます。この構造はデフレスパイラルの中で、資本蓄積の内部留保によって固定化され、勤労者の可処分所得の減少によって、ますます経済を失速させるという事態を生みました。時の総理大臣が、資本家階級に対して「賃上げをお願いする」という、伝統的な階級社会では考えられない事態をも生み出したのです。

この階層分化の社会構造は、現代的な構造改革である経済民主主義、政府の側も再分配構造への転換を期待せざるを得ない「新しい資本主義」つまり、社会主義的な分配へと踏み出さざるを得ないところまで来ていると言えます。

「《戦後77年》日本が歩んだ政治経済と社会〈4〉 ── 1990年代 失われた世代」(2022年9月17日)

◆自公政権そのものが、政教一致の政体である

安倍晋三元総理銃撃事件は、日本社会に二つの命題を突き付けたと言えましょう。その一つは、政治と宗教の問題である。自民党の選挙における強さ、とりわけ選挙に強いがゆえに独裁的に党内を支配してきた安倍政権が、じつは統一教会信者の力に支えられていたこと。そして自公政権そのものが、政教一致の政体であることを、あらためて認識させたことです。

国民の15%弱とされる自民党の政治基盤は、国民の10%とされる公明党(創価学会)の得票力に支えられ、なおかつ数万人とはいえ抜群の献身力で選挙を戦う、統一教会に支えられていた。すなわち、憲法に明記された信仰の自由・政教分離の原則を、そもそも逸脱していることを意味するのです。

政治の場においても、論壇においてもタブー視されてきた政治と宗教の闇に、厳しいメスが入れられる時代が来たのだといえましょう。

それは同時に、人間にとって宗教とは何なのか、政治とは何なのかを問い直すことになるでしょう。デジタル鹿砦社通信はこれからも、タブーなき論壇ステージの一端を担うことをお約束したいと思います。

「政教分離とはどのような意味なのか? ── 安倍晋三襲撃事件にみる国家と宗教」(2022年8月5日)

「《書評》『紙の爆弾』11月号 圧巻の中村敦夫インタビューと特集記事 「原罪」をデッチ上げ、「先祖解怨」という脅迫的物語を使う統一教会の実態」(2022年10月8日)

「《書評》『紙の爆弾』2023年1月号 旧統一教会特集および危険特集」(2022年12月14日)

国防費がGDPの2%越え、金利政策の変更と物価高で国民生活はいっそう厳しい時代を迎えそうです。またいっぽうで原発の稼働延長が画策されています。来る2023年の厳しい世相を睨みつつ、闊達な批判と批評で読者の期待に応える所存です。よいお年を。

横山茂彦「2022年回顧」
【政治編】戦争と暗殺の時代
【経済・社会編】戦後77年と資本主義の限界

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年冬号(NO NUKES voice改題 通巻34号)

毎年恒例の1年の総集編ですが、わたし自身があまり記事を書かなかったこともあって、扱ったテーマが絞られます。というよりも、政局の動きや経済の分析をドラスティックに覆す事件によって、焦点がおのずと絞られてしまったと言えるのではないでしょうか。事件があまりにも強烈すぎました。

ロシアのウクライナ侵攻、および安倍晋三元総理銃殺事件です。

◆18世紀型の戦争に驚嘆する

すでに昨年末から、オリンピック明けにロシアがウクライナに侵攻する観測はあった。マイダン革命からクリミア併合、ドンバス紛争と8年にわたって繰り広げられてきた内戦に、ロシアが公然と介入する。かつてのベトナム戦争、アフガン戦争を想起させたものだ。

だが、ふたを開けてみると北部からキーウへ、黒海から南部諸州へ、そして紛争地である東部にも20万をこえるロシア軍が殺到したのだった。もはや地域紛争ではなく、全面的な総力戦といえる。のちに明らかになったことだが、この緒戦の3方面からの侵攻がロシア軍の戦力を分散し、各個撃破される原因となったのだ。驚愕の全面戦争は、ロシアの戦力と国力を越えていた。

当初われわれは、アメリカNATOによるロシア圧迫が、もっぱら産軍複合体の要請による、いわば数年に一度は戦争をしなければならない事情によるものと考えた。このアメリカによる戦争論は、現在も謀略論として流布されている。

「風雲急を告げる、ウクライナ戦争の本質 ── 戦争をもとめる国家・産業システム」(2022年2月23日)

ところが、プーチンという人物を詳しく知る中で、現代のヒトラーというべき独裁者だと判ってきた。クリミア併合でG8から排除されて以降、ロシア帝国の復活を夢見てきたことも。

考えてみれば、プーチンが政権に就いた時期の、謎の爆破事件は、1933年のドイツ国会議事堂炎上事件(共産主義者の犯行とされた自作自演)に匹敵する謀略だった。まさに「たいていの人間(大衆)は小さなウソよりも大きなウソにだまされやすい」(ヒトラー『我が闘争』)を21世紀に実行してみせているのがプーチンなのだ。

「核兵器使用を明言した妄執の独裁者、ウラジーミル・プーチンとは何者なのか? ── 個人が世界史を変える可能性」(2022年2月26日)

「第三次世界大戦の危機 プーチンは大丈夫か?」(2022年3月14日)

ウクライナ戦争の実態は、剥き出しの古典的帝国主義戦争である。20世紀的な帝国主義戦争どころではない、プーチンは18世紀のピョートル大帝やエカチェリーナ女帝の拡張主義を賛美し、実践しようとしていることが判明したのだった。

したがって破壊はもとより、虐殺や略奪、性犯罪など、あらゆる戦争の悪が露呈している。18世紀的な戦争犯罪は、21世紀の国際法において裁かれるべきであろう。
そのいっぽうで、第三次世界大戦の危機は左派勢力のなかにも混乱をもたらした。とりわけ反戦主義にどっぷりと浸かった新左翼系の反戦市民運動において、アメリカ主導の戦争と規定することで、プーチンの開戦責任を免罪する傾向が顕著となったのだ。

そのバリエーションは、ユダヤ財閥を基点とするディープ・ステートによる謀略、レーニン1914年テーゼ「自国帝国主義打倒」、米ロの代理戦争論、社会主義の祖国ソ連を懐かしむ反米帝論などさまざまだ。

「ウクライナ戦争への態度 ── 左派陣営の百家争鳴」(2022年4月26日)

◎「ウクライナ戦争をどう理解するべきなのか
〈1〉左派が混乱している理論的背景(2022年5月5日)
〈2〉帝国主義戦争と救国戦争の違い(2022年5月13日)
〈3〉反帝民族解放闘争と社会主義革命戦争(2022年5月19日)
〈4〉民族独立と救国戦争(2022年6月8日)

個人的には理路整然と、何とか問題を整理しようとした末に、対外的な論争(党派を名指し)にも挑みました。一般社会とは隔絶された「新左翼」の論争です。興味のある方は、左翼の伝統文化顕彰としてお読みいただければ幸甚です。

「『情況』第5期終刊と鹿砦社への謝辞 ── 第6期創刊にご期待ください〈後編〉」(2022年10月26日)

だが前述したとおり、21世紀の今日、無法な戦争の発動者を人類と平和の名において裁かない理由はない。かつて第二次大戦のドイツ占領下のワルシャワで、国内軍とレジスタンスが蜂起したとき、双方で処刑の応酬になった。

このワルシャワ蜂起に対して、呼応するはずのソ連軍がなぜか待機し(カチンの虐殺いらい、ソ連はポーランドを完全に属国化する計画だったとされる)、レジスタンスはナチスのSS軍団に抑え込まれる。さらなる処刑(虐殺)が行なわれんとするときに、イギリス放送が「無法な処刑は戦争犯罪になる」と警告宣伝したのだった。いらい、ナチスの虐殺は一時的にせよ止んだ。

その意味では、国際的な法的キャンペーン(戦争犯罪の警告)が虐殺を止める効果を持っているといえよう。

Резня – военное преступление, не убивайте ! (虐殺は戦争犯罪だ 殺すな!)

これをSNSに発信するだけで、戦争における虐殺は抑えられる可能性がある。

「戦争の長期化は必至 ── 犯罪人プーチンとロシア軍が裁かれる日」(2022年6月18日)

ところで、日本ではウクライナ戦争が台湾有事とリンクして語られている。ひとつの中国を国際社会が認めているとはいえ、武力による現状変更はゆるさない。香港において、ウイグルにおいて、民主主義を圧殺している中国共産党の独裁的な支配に反対し、台湾の自治を擁護する立場。

あるいは沖縄をはじめとする、日本を舞台に中米が軍事対決するのに反対する。戦争一般に反対する立場もふくめて、日本人の政治的な立場が問われるであろう。
そのような中で、ロシアが日本侵略の計画を検討していたことが明らかになっている。これまで、一部のロシア議員が発言してきたのとは違う、驚愕するべき事実の一端が明らかになっている。

ロシア連邦保安庁(FSB)の関係者がリークした電子メールによって、プーチン政権はウクライナ侵攻を開始する数ヵ月前、日本に攻撃を仕掛ける計画を立てていたらしいことが判明したというのだ。

奉じたのはスペインの流行系のサイトだが、純粋に軍事的な検討が行なわれるのは、ある意味で当然と言えるのかもしれない。ロシアは「国防のために」ウクライナに侵攻したのだから。

◆安倍元総理射殺事件の愕き

ウクライナ戦争と原材料不足による物価高が憂慮されるなかで、参院選挙が行なわれた。結果は維新の会や参政党など「ゆ党」の躍進だった。既成野党(立民・共産・社民)の後退と「ゆ党」の躍進は、政治および政治家に賞味期限があることを改めて知らしめたといえよう。

そのような中で、歴史的な事件は起きた。安倍晋三元総理が銃撃され、死亡したのである。あらためて、哀悼の意を表したい。本通信も、不肖わたくしをはじめ論者たちが安倍批判をくり返してきた。だが、安倍なんか死んでもいいとは、けっして書いてこなかったように、言論による闘い以外に、われわれが手にする武器はない。あらためて、演説中の政治家を銃撃する暴挙を、語をつよめて批判するものです。

「追悼 安倍晋三元総理大臣」(2022年7月11日)

さて、同時期に世界史的な人物が逝去した。エリザベスⅡ世が亡くなったのだった。女王が君臨した時代は、大英帝国の植民地支配が終焉する時期であった。それゆえに、過酷な植民地支配への癒しが治世の要件となった。

いまもなお、ポストコロニアルの世界にあって、英連邦からの離脱をもとめる動きはつづいている。ウクライナ戦争に見られるように、21世紀は民族の自決と自治へと、旧世紀を克服するムーブメントが世界史的なテーマなのかもしれない。

イギリスと日本の国葬において、際立って違っていたのは伝統文化の厚みだった。明治以降、欧米化する流れの中で伝統文化を見失ったわが国は、警備陣が剥き出しの威力を見せつけることで、国葬を刺々しいものにしてしまった。国論を二分したことよりも、そもそも警備の威力で実現される葬儀とは何なのだろうか。レポートにおいても、この点を強調したかった。

「エリザベス女王追悼と安倍国葬 元総理の業績と予算への疑義」(2022年9月11日)

「《9.27 TOKYO REPORT》安倍晋三国葬儀 ── 英エリザベス女王国葬との痛々しいほどの落差で際立った伝統文化の貧困と過剰警備のグロテスク」(2022年9月28日)

ところで、安倍元総理射殺事件は旧統一教会問題、すなわち政治と宗教の問題を俎上にあげた。このテーマについては「2022年をふり返る(社会編)」で顧みたい。政教分離という、わかっているようでわかっていない議論である。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年冬号(NO NUKES voice改題 通巻34号)

日本の崩壊がいよいよ可視的なレベルにまで高まってきました。「国民総中流」、「Japan as NO.1」との形容があったことすら知らない世代が既に成人を迎えています。安倍、菅のあと就任した岸田首相は、所信表明演説で「改憲の迅速化」と「原発の再稼働」を明言しました。ほかにも些末なことに言及していましたが、ほとんどすべての政策が2022年年末に「破綻」していることは、自民党支持者を含め多くの国民が同意するところです。

広島出身の岸田総理には主としてマスメディアから、的外れな期待もありました。また来年開かれるサミットを広島で開くことに、積極的な意味を見出す言説です。しかし考えてみてください。2000年の「沖縄サミット」は沖縄に少しでも平和の助け舟を出したでしょうか。幾度も選挙で辺野古基地建設反対の意思を表明しても、結局政府は「沖縄無視」を決め込んでいます。広島サミットが実施されてもその果実はほとんど皆無でしょう。

「二酸化炭素」を最大の悪者とする世界において原発は国連が発するSDGsとのお題目から、生き残る護符を得ました。広島で各国首脳が原爆被害者に哀悼の意を表面上表したところで、現在最も深刻な問題である「核兵器」、「原発」の削減や廃止についての議論にまで話題が及ぶことは「絶対」といってよいほどありません。

わずか一世紀前弱の記憶はおろか、十年ほど前の記憶すら、権力者や金持ちにとって不都合であれば「なかったものにしよう」、「被害を最小化に閉じ込めよう」と蠢いて恥じないのがこの国の心象です。どこまで矜持と良心を放棄すれば気が済むのか、と当該人物顔の前十センチ前で尋ねてみたいと思うのは、気が短いせいでしょうか。

ことしは大きな戦争が起きました。おそらくは専門家でも予想できなかった規模と戦法によってウクライナがロシアに侵略されました。冷戦終結前は同じ国であり言語も似通った近隣国による不幸な戦争です。この戦争に軽薄な日本の政権を含む右派は「現在の日本国憲法では国が守れない」、「米国と核兵器を共有すべきだ」と無知丸出しの恥ずべき感情を吐露しました。その失当さは本文で「原発を止めた裁判官」、樋口英明さんが看破していただいています。

この国も、世界もどうやらこれまでよりも格段に速度の速い文明の転換点に確実に入ったようです。きのうまで当たり前であったことが明日認められる保証がどこにもない時代です。今一度「なにが起こるかわからない」時代への心の準備を再確認し、まずは原発の全廃に向けて進もうではありませんか。

2022年12月
季節編集委員会

12月11日発売 『季節』2022年冬号(NO NUKES voice改題 通巻34号)

季節 2022年冬号
NO NUKES voice改題 通巻34号 紙の爆弾 2023年1月増刊

[グラビア]福島の記憶 2011-2022(写真=飛田晋秀

鈴木エイト(ジャーナリスト)
《インタビュー》大震災の被災地で統一協会は何をしていたか

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
人は忘れっぽい、でも忘れるべきでないこともある

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
マボロシが蘇ってきたような革新炉・次世代炉計画

菅 直人(元内閣総理大臣/衆議院議員)
時代に逆行する岸田政権の原発回帰政策

樋口英明(元裁判官)
《インタビュー》「原発をとめた裁判長」樋口さんが語る「私が原発をとめた理由」
《緊急寄稿》40年ルールの撤廃について

飛田晋秀(福島在住写真家)
《インタビュー》復興・帰還・汚染水 ── 福島の現実を伝える

広瀬 隆(作家)
《講演》二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈後編〉

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
《検証・福島県知事選》民主主義が全く機能していない内堀県政が続く理由

森松明希子
(原発賠償関西訴訟原告団代表/東日本大震災避難者の会Thanks&Dream[サンドリ]代表)

最高裁判決に対する抗議声明
司法の役割と主権者である私たちが目指す社会とは

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「原発事故避難」とは何なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
経産省「電力ひっ迫」で原発推進のからくり

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
原発政策の転換という反動的動きを見て

漆原牧久(「脱被ばく実現ネット」ボランティア)
自分の将来、すべてが変わってしまった
311子ども甲状腺がん裁判第二回口頭弁論期日に参加して

板坂 剛(作家/舞踏家)
何故、今さら猪木追悼なのか?

松岡利康(鹿砦社代表/本誌発行人)
いまこそ、反戦歌を!

細谷修平(メディア研究者)
シュウくんの反核・反戦映画日誌〈3〉
映画的実験としての反戦 『海辺の映画館―キネマの玉手箱』を観る

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
「辞世怠(じせだい)」原子炉ブームの懲りない台頭

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈18〉
文明世紀末から展望する~新たなユートビアは構築可能か~

再稼働阻止全国ネットワーク
「原発の最大限の活用と再稼働の全力推進」に奔走する岸田政権に反撃する!
《北海道》佐藤英行(後志・原発とエネルギーを考える会 事務局長)
《東海第二》横田朔子(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《新潟》小木曾茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発廃炉を求める「命のネットワーク」有志)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)

反原発川柳(乱鬼龍選)

本誌でも問題提起を続けていますが、コロナワクチンの危険性への注目が、このところ高まりつつあるようです。全国的な接種がスタートしたのは2021年春。そこから時間がたつほど、深刻な後遺症に見舞われたり、亡くなる人が増加しています。10月には遺族会も結成されました。このこと自体がワクチン接種の危険性を示しているといえます。人口動態統計における2022年の超過死亡数(予測以上に亡くなった人の数)は激増、2月の「1万9000人」は、東日本大震災による死者数(震災関連死を除く)を越えました。さすがに見逃せない事態であり、この問題を採り上げるメディアは増えつつあります。

「紙の爆弾」では2022年8月号で、ワクチン接種による“感染防止効果データ”を厚生労働省が改ざんしていた問題を、11月号で日本製ワクチンの開発が阻害され、日本の国富が海外製薬企業に流出する結果をもたらした事実を指摘、12月号では日本国内の接種拡大の経緯と、超過死亡との因果関係を分析しました。今月号ではさらに踏み込み、コロナワクチン接種がもたらす3つの健康リスクを解説しています。とくに、接種による免疫機能の低下については、打てば打つほどリスクが高まる、という指摘があります。その点でも、すでに数回の接種をすませてしまった人にこそ、読んでいただきたい内容です。

11月23日には「全国有志医師の会」が「STOP!乳幼児・子どもコロナワクチン緊急記者会見」を開催しました。その模様は同会のホームページにアップされており、子どもに限らず、さらにマスクや新薬とされる「ゾコーバ」についても解説しています。ワクチンは必要だと考える人を含めて、できるだけ多くの方に観てほしい内容です。またホームページには、コロナワクチン後遺症・コロナ後遺症に対応している医療施設も紹介されています。地域によってその数に差があることが気になりますが、少なくない医師がワクチンに対し危機感を持っていることがわかります。

旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題には、依然世間の関心は高いものの、即時性を求めざるをえないマスコミでは、報道が落ち着きつつあるようにも見えます。被害救済の必要はありつつも、政治と宗教の癒着こそこの問題の本質であり、自公の解散につなげなければなりません。もっと言えば、宗教に限らず、日本の政治をコントロールしているのが、国民の主権以外の何かであったことこそ、もっとも注目すべき事実です。

自民党と統一教会の関係が注目されるきっかけとなった、安倍晋三元首相の銃撃事件。2022年9月27日には「国葬儀」が大多数の国民の反対のなかで強行されました。いわゆる“戦争法”をはじめ、「強行」は自公政権において何度も繰り返されてきたことですが、安倍国葬についてはいまだ異論が減少していません。マスコミ報道されることは少ないものの、日本各地で反撃の違憲裁判が続けられています。今月号でその模様をレポートしています。  ほか、人気タレントの脱退に揺れるジャニーズ事務所の内情など、今月号も、本誌ならではのレポートをお届けいたします。全国書店で発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

7日発売!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号

月刊『紙の爆弾』2023年1月号 目次

紙爆の最新号を紹介します。今回も興味を惹かれた記事を深読み、です。取り上げなかった記事のほかに、テレ朝の玉川徹処分の背景(片岡亮)、ヒラリー復活計画(権力者たちのバトルロワイヤル、西本頑児)が出色。読まずにはいられない情報満載の最新号でした。

◆安倍晋三の旧悪を追及することこそ、真の弔いになる

 

最新刊 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

国会における野田佳彦元総理の安部晋三追悼演説が好評だった。とりわけ、安倍晋三の「光」とその先にある「影」を検証することこそ、民主主義政治の課題だというくだりが、議員たちの政治家魂を喚起させたことだろう。

だがその検証は、安倍晋三の旧悪をあばき出し、現在もなお続いている安倍トモ政治を批判することにほかならない。それを徹底することにこそ、安倍晋三という政治家の歴史的評価が議論され、真の意味での弔いになるのだ。

その第一弾ともいうべきレポートが「旧統一教会と安倍王国・山口」(横田一)である。

安倍晋三が地元下関の市長選に並々ならぬ力を入れてきたのは、市長前職の江島潔の時代に「ケチって火炎瓶」(自宅と事務所への火炎瓶事件)、すなわち暴力団(工藤會)との癒着までも明らかになっていた。ちなみに、江島元市長は現在参院議員であり、統一教会のイベントに参加したことが明らかになっている。

◎[参考記事]【急報‼】安倍晋三の暴力団スキャンダル事件を追っていたジャーナリストが、不思議な事故に遭遇し、九死に一生を得た! 誰かが謀殺をねらったのか?(2018年8月18日)

安倍晋三の元秘書である現職の前田晋太郎市長もまた、旧統一教会の会合に参加していたことを定例会見で明らかにした。子飼いの政治家たちが、ことごとく元統一教会とズブズブの関係だったところに、「安倍晋三の影」(野田佳彦)は明白である。票のためなら相手が反日カルトであろうと斟酌しない、安倍晋三の選挙の強さは、ここにあったのである。

さて横田一の記事は、前田市長のあと押しで下関市立大学に採用され、今年4月に学長になった韓昌完(ハンチャンワン)が統一教会と深い関係にあるのではないかという疑惑である。

その疑惑を市議会で共産党市議に追及された韓学長は、事実無根として「虚偽告訴罪」での刑事告発を検討していると返答したのだ。

だが、韓学長が所属していたウソン(又松)大学を、安倍晋三と下村博文(安倍の子飼いで、元文部科学大臣)が訪問していた事実に、接点があったのではないかと横田は指摘する。

というのも、単科大学(経済学部)だった下関市立大学が、突如として「特別支援教育特別専攻科」なるものを新設し、教授会の9割以上の反対を押し切って韓教授を採用したからだ。

この事件がおきた2019年以降、下関市立大学では3分の1の教員が中途退職・転出しているという。学園の私物化が告発されてもいる。具体的には新設学部の赤字、市役所OBの天下りなどである。これはしかし、氷山の一角にすぎないのではないだろうか。

◆鈴木エイト×浅野健一 ── 旧統一教会問題

9月号につづいて、鈴木エイトの記事である。講演会をともにした浅野健一が鈴木の講演録を、わかりやすく紹介するスタイルだ。ちなみに、講演会の司会は「紙の爆弾」中川志大編集長が務めた。

まず第一に読むものを原点に立ち返らせるのは、カルト問題が政治と宗教の問題以前に、人権問題であるという鈴木の一貫した視点である。

そして第二に、信者たちを利用して「ポイ捨て」する政治家たちの「カルトよりもひどい」実態である。

全体にカルト統一教会の触れられなかった10年間を顧みて、ジャーナリズムが執着を持つことが必要だったのではないか。持続的、継続的な取材こそ、組織の闇を解明できるとの印象を持った。

この運動に関連する事件にも、少々触れておこう。

記事では触れられていないが、この連続講座の一か月後に開かれた「10.24国葬検証集会」において、浅野健一も参加した鈴木エイトの講演があった(記事中に記述あり)。このとき、機器の不具合で発言時間をオーバーした浅野にたいして、佐高信がクレームを付けたという。詳細は下記URLの浅野健一ブログを照覧してもらいたいが、声帯をうしなった障がい者(浅野)に、発言時間のオーバーを批判したのは明白な事実のようだ。

おそらく佐高において、初対面の障がい者ならばこのようなクレームはつけなかったであろう。かりに政治的慮りでクレームが左右されるようなら、明らかに障がい者差別である。浅野によれば佐高は過去にセクハラ事件(同志社でのイベント後の飲み会)を起こしているという。運動内部の批判は遠慮するべきではない。日ごろから批判的な論評をもっぱらとする者ほど、自分が批判されたときに謙虚になれないものだ。佐高は浅野の抗議に何も反応していないという。

◎[参考記事]10・24国葬検証集会エイトさん講演 佐高氏が浅野非難 : 浅野健一のメディア批評 (livedoor.jp) 


◎[参考動画]2022.10.24 安倍「国葬」を検証する ―講演:「自民党と統一教会の闇をさぐる」鈴木エイト氏(ジャーナリスト)、浅野健一氏(無声ジャーナリスト)、スピーチ:佐高信氏(評論家)

◆氷川きよし「活動休止」と「移籍説」の裏側

喉のポリープの手術後で、長期休養に入るとされていた氷川きよしの、事務所事情である(「紙爆」芸能取材班)。

2019年の芸能生活20周年を機に、自分らしく生きたいと(ジェンダーレス)表明したkiinaこと氷川きよし。舞台での女装や松村雄基との恋愛関係、プロ並みの料理など、スキャンダラスで華やかな魅力がファンを魅了してきた。


◎[参考動画]氷川きよし「革命前夜」in 明治座【公式】

肥った男性の女装は勘弁してほしいと思うことがあっても、kiinaの場合は別だという方は多いのではないか。LGBTQとは無縁なつもりでも、誰でもアニマ(内的女性性)・アニウス(内的男性性)があると言われている(ユング心理学)。

たとえば艦隊これくしょんや美少女ゲームに興じる男性には女体化願望があり、その願望がゲームの中の少女に同化するのだ。女性の場合はもっと露骨で、ボーイズラブ志向として、やおい小説・やおい漫画に熱中することになる。

このようなアニマを体現するリアル系が、氷川きよしの女装化だと言えるのだ。Kiinaの場合は、おそらく誰もが受け容れる美貌のゆえに、イケメン演歌歌手からロック女装、舞台での女装が歓迎されてきたのであろう。

しかるに長期休養の裏側に、事務所(神林義弘社長)の暴力的な体質があるというのだ。氷川きよしの自宅の抵当権(3億4500円)も長良プロが設定しているという。

問題は休養後に、長良プロからスムースに移籍できるか、であろう。記事のなかで氷川きよしの名付け親を、ビートたけしとしている(大手プロ役員)が、じっさいは長良プロの神林義忠会長(故人)である。ということは、芸能人がプロダクションを移籍するときに起こりがちな、芸名の商標登録をめぐるトラブルの可能性である。来年からのKiinaの休養が、つぎの活躍へのステップになるのを期待してやまない。記事ではほかにGACKTのスキャンダルもあり、美形歌手たちの危機が気になるところだ。 


◎[参考動画]氷川きよし / 限界突破×サバイバー ~DVD「氷川きよしスペシャル・コンサート2018 きよしこの夜Vol.18」より【公式】

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BLGY4C6S/
鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

コロナワクチンの生後6カ月~4歳を対象にした無料接種が10月から始まっています。子どもの重症化例はきわめて少ないことが報告されているなか、接種の理由はない、というよりも、感染症防護とは別の目的があることは自明と言っていいでしょう。厚労省は保護者に接種を検討する「努力義務」を課しています。副作用が出ても、自ら被害を訴えられない子どもへの強制接種(自分で接種するかを選べない)の残酷さはもちろん、そもそもワクチンの「主作用」とは何なのかについても、あらためて考えなければなりません。

厚労省はワクチンについて、「感染予防」「発症予防」「重症化予防」という「効果」の説明をあいまいにしてきました。そして、ワクチン接種が人々の間で進んだ時期と、陽性者の増減のタイミングに関連性はみられない一方、接種が進んだ時期に死亡数が増加するという現象が起きています。今年でいえば2~3月、接種の増加にあわせて死亡者数も増加、4月に接種数が低下すると死亡者数も減少。7~8月にも、接種拡大に合わせて死亡者数が増加しています。そんななか、世界に目を向ければ、ワクチン、そしてコロナ禍そのものへの人々の見方に、少しずつ変化が生じているようにも見えます。10月22日にはカナダ・アルバータ州のダニエル・スミス州首相が、ワクチン未接種の労働者に対する差別を「不適切」と認め謝罪しました。

今月号でも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題を特集、自民党政治家との関係に注目するとともに、なぜメディアにおいて「空白の30年」が生まれたのか、9月号で執筆の鈴木エイト氏の講演内容を収録しました。連日のマスコミ報道のなかで、ジャーナリストや弁護士らが活躍を続けていますが、鈴木氏が一貫しているのは徹底して被害者に寄り添うこと。その視点に立つからこそ、メディアがこの問題を放置し、政治家がそれを見越して旧統一教会と協力関係を結んできたことが、信者らへの被害を拡大させ、被害者による安倍晋三元首相の銃撃事件につながったという一連の経緯が理解できます。それを具体的に説明した今月号記事は、日々報じられるニュースを受け取るうえでの基礎として、ぜひ多くの方にお読みいただきたい内容です。

さて、旧統一教会問題では精力ぶりが評価されるマスコミでも、ことワクチン問題、そして今月号で重点的に採り上げたマイナンバーカード“義務化”に関する報道を見れば、(報道しないことを含めて)完全に政府広報に徹していることが見て取れます。「デジタル社会」の名のもとで、国民監視・管理体制が着々と構築されています。また11月号で、日本ですでに進んでいる「戦争準備」について特集しましたが、「国民監視」がそのキーワードであることを、あらためて指摘しておきたいと思います。

その他、多様な視点を盛り込み、『紙の爆弾』は全国書店にて発売中です。今月号も、ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号

まずは巻頭の中村敦夫のインタビュー(書き起こし)が圧巻だ。『紙の爆弾』11月号、この巻頭記事だけのために買ってもお得である。

部分的には知っていたが、中村氏は70年代から統一教会(歴史的記述なので、統一教会名で統一する)に関心を払い、テレビのワイド番組で警鐘を鳴らしてきた一人だ。ために、協会側から刑事告訴もされている(不起訴)。

中村氏は70年代の黒板講話に触れている。正確には70年代後半(78年ごろ)からだが、原理研が街頭に小さな黒板を持ち出して、共産主義の「原理」「悪魔性」を解説・批判するというものだ。もちろん漫画的な共産主義論だった。

筆者も通っていた大学のある駅前で、この黒板講話に議論を挑んだことがある。サンシモンやフーリエの社会主義思想はもとより、バブーフやマルクス、エンゲルスの一語も読んだことのない彼ら(彼女ら)は、わたしの質問に何も答えられなかったものだ。共産主義のイロハを知らない人たちが、得意そうに「解説・批判」していたわけだ。

◆宗教は基本的に「無料」である

「原罪」をデッチ上げ、先祖解怨という脅迫的物語を使う統一教会の手法を、中村氏はこう断じる。そして「信教の自由」についても説き起こす。

「現在の報道でも、『信教の自由』に絡めて話す人が多いが、私に言わせれば、これは宗教ではない。そこに信教の自由を持ち込むことは、問題に正面から取り組むのを避けるために、あえてハードルを高めているように見える」(本文より)

つまり、宗教を騙る脅迫的な商売に、信教の自由を持ち込む愚を批判しているのだ。そもそも宗教の大半は、現実社会から生じる心の不安をやわらげる役割を持っているにすぎない。

現世の不幸を嘆き、来世の幸福を祈念するのもいいだろう。ただしそれは、庶民が満足に文字を読めなかった時代とはちがい、本やビデオなどを媒介に得られるようになった現代において、ほぼ無料でなければおかしい。

高僧や導師、牧師の説教を聴くのも、大半は無料である(寺院の講話会や教会のミサ)。寺院運営のための駐車場経営や幼稚園経営、簡易な寄付やバザーなど以外に、宗教が金儲けをするのは、ほとんどすべてが詐欺なのである。※この文脈は、中村氏のものではありません(筆者)。

◆中村氏の原理的批判

さすがに中村氏は勉強家で、統一教会の教義の批判に踏み込んでいる。旧約聖書を曲解した「原理講論」がそれである。その内容が、韓国語版・英語版・日本語版で異なっている点がミソであるという。

圧倒的にキリスト教の影響がつよい韓国においては、その教義は限定的で反日的である。原罪国家とされる日本においてこそ、反共思想とむすびついて爆発的に布教が拡大したとする。その役割を果たしたのが、安倍晋三の祖父、岸信介だったのだ。

そして冷戦が終わって反共が商売にならなくなると、こんどは北朝鮮とむすびついて共和国におけるビジネス(ホテル事業)を展開する。中村氏の指摘するとおり、統一教会は思想的一貫性のある政治団体でもなく、その正体は宗教団体を装ったビジネス団体なのだ。それも会員の無償労働をもとにした、搾取と収奪、霊感詐欺商法である。ここを明確にしないと、信教の自由という隘路に迷込むことになる。
「そんな教団になびいた日本の保守政治家も、思想や政策が一致するかどうかは関係なかった」(本文より)。

ネトウヨや政治に一知半解な人々が、自民党が反日団体と手をむすぶのはおかしい。あるいは思想と政治が一致していない、などと悩んでいるのは、自民党政治を知らないからである。

剥き出しの政治の原理は「奴は敵だ。敵は殺せ」(『幻視の中の政治』埴谷雄隆)であるとともに、「敵の敵は味方」である。思想と政治が一致するなどと思っているのは、自民党右派に期待するお花畑なネトウヨレベルと指摘しておこう。

たとい思想的に正反対にある党派でも、当面の敵の前には味方というのが、自民党政治の本質なのである。そして選挙に敗れて「ただの人」にならないためには、誰とでも(暴力団や反社とでも)手をむすぶ。統一教会を積極的に取り込む。まさにこれが「選挙で圧倒的につよい」安倍政治の本質だったのだから。

最後に中村氏の推測として、安倍晋三が拉致問題の「解決」に統一教会を利用した可能性を挙げておこう。近い将来に、自民党に「切られた」統一教会側から、愕くべき真相が飛び出してくる可能性を指摘しておこう。

◆政治と宗教を議論しよう

広岡裕児の「いまこそ考える政教分離の本質」は、政治と宗教を正面から議論する必要を提起している。このテーマこそ、いま日本において煮詰めていく政治論である。

広岡氏は公明党の山口那津男代表が今回の事件を「政治と宗教一般のことに広げるべきではない」(8月1日)という言葉を冒頭にあげ、石井幹事長の記者会見(8月19日)の矛盾点を指摘する。

すなわち「国家が特定の宗教を擁護したり、国民に強制したりすることを禁じている」ことが、公明党(創価学会)において、矛盾しないのか。という論点である。

じっさいに公明党は政府(国家)に参加し、さまざまな政策を実行しているのだ。創価学会が選挙を「法戦」(宗教行為)と位置づけて戦い、その意をうけた政権与党(公明党)が支持者(創価学会=宗教団体)に有利な政策を行なうことは、まさに上記の政教分離に違反する。※広岡氏はこの部分で疑問を提起するにとどめている(筆者)。

広岡氏によれば、宗教政党には二つに分類できるという。

ドイツやフランスのキリスト教民主主義政党においては、多元主義(政治的な人権・博愛主義)を基礎に、キリスト教会が伝えようとしている価値観を推進する。社会の法が優先し、キリスト教精神はその思想的基礎にすぎないというものであろう。アメリカ大統領が聖書に手を置いて宣誓するのも、この典型である。

いっぽう、イランイスラム共和国ではイスラム教政党が政権をにぎり、アフガニスタンではタリバンが、宗教的価値観によって全体主義国家を形づくっている。だがこれは「キリスト教とイスラム教の違いではない。この二種類はどんな宗教にもある」(本文から)という。

ところで公明党においては、いまだに池田大作の「池田精神」が「社会の法」に優先すると広岡氏は指摘する。そこから「(宗教)政党が権力を掌握するにあたっては、大小新旧教義を問わず、すべての宗教を認めたうえで宗教とは距離を置かなければならない。これが政教分離の本質ではないか」と提起する。

対立宗派である日顕派を認めない創価学会(公明党)に宛てた提起だと、筆者は深読みした。まさしく、政治と宗教を本気で論じなければならない時代なのだ。

さて、その公明党の代表が大方の予想をくつがえす、山口那津男の続投(8期連続)となった。その裏側には何があったのか。大友友樹のレポートが興味ぶかい。熊野議員のセクハラ問題の隠ぺい、創価学会内の山口人気への池田会長の判断など、こちらも火種は少なくないようだ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

『紙の爆弾』2022年 11月号
目次
中村敦夫が語る50年 旧統一教会「口封じ」の手法
旧統一教会問題が選挙に与えた衝撃 沖縄県知事選で白旗を上げた自公政権
メディアに“逆ギレ”する議員たち 旧統一教会信者たちが語った自民党議員への怒り
特集●すでに進んだ日本の「戦時体制」
「防衛費」を積み上げてつくる「基地の島」
法律からみた安倍・菅・岸田の戦争準備
米国覇権を超克する「真の安全保障」
東京五輪汚職捜査はどこまで進展 自壊する岸田文雄政権
政党交付金の要件を満たしているのか 統一協会より「自民党の解散」こそ急務
巨大製薬企業に国家予算流出 政府に阻害された「日本製ワクチン」
「政治と宗教」問題の防波堤 公明党・山口那津男代表続投の裏側
「政治と宗教」そして民主主義 いまこそ考える「政教分離」の本質
スウェーデンの新聞が報じた米国の「ドイツ・EU弱体化のためのウクライナ戦争」謀略
「女性蔑視」でトヨタにも古傷が 香川照之“性加害”騒動の波紋
シリーズ 日本の冤罪31 飯塚事件
連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
元公安・現イスラム教徒 西道弘はこう考える
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGXK3QNM/

前の記事を読む »