『紙の爆弾』4月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

前号の3月号は、総選挙投開票日直前でしたが、「大義なき解散」を論じるよりも問題提起が重要だと考え、旧統一教会の日本政界工作と第一テーマとしました。むしろ選挙後、これが「問われなかったこと」に問題意識を持つ方々から、大きな反響をいただいています。「大義なき解散」は、基本的に「7条解散」に大義があるケースの方が珍しいため、言葉として使い古されている感がありますが、今回の解散総選挙ほど正当性のないものはない、というのは今月号執筆の植草一秀氏の指摘でもあり、究極の自己都合解散といえる理由をまず、憲法の観点も含めて解説しています。

一方、高市自民の対抗軸であった中道改革連合について、選挙前は旧公明党票をいかにこぼさないかが予測の中心になっていました。選挙のたびに鮮やかな票割りをみせる公明党なので、むしろ注意すべきは旧立憲民主党の支持層の動向だと考えていたのですが、結果は今月号レポートのとおり。旧立民票については鳩山友紀夫元首相もユーチューブ「UIチャンネル」の対談で懸念をこぼしていたものでした。結果として旧公明は議席を増やしただけでなく、中道の実権を握って改憲勢力に加わりました。さらに、中道を核とした「第二自民党化」の可能性が見え隠れしています。第一自民と第二自民の二大政党化は本誌でもかねてから植草氏が警戒すべき事態として指摘してきたもの。多党乱立も、俯瞰的にみれば、この最悪のシナリオの一部にあるように思えてきます。

チームみらいの伸長に、不正選挙の可能性を含めた疑念の目が向けられています。その前に「チームみらいとは何か」を見極める必要があり、昼間たかし氏の分析は示唆に富んでいます。AIあんのが原発、PFAS、移民、日米地位協定などあらゆる政策テーマを「NGワード」にしていたことが暴露されましたが、昼間氏の指摘の正しさを証明するかのようです。この中身のなさが、社会にフィットしたために票を集めた可能性があり、そうだとすれば社会のゆ党化と表現できるかもしれません。

前号で野田正彰氏が高校教科書の「精神疾患」記述問題とともに触れた「子どもの自殺数が過去最高を更新し続けている」という事実。未来が描けない日本のあり様を、これほど如実に示す数字はありません。メディアや統計資料は主な動機として「学校問題」「家庭問題」などを挙げていますが、問題は死を選ぶことそのものであって、その原因が大人がつくる社会にあることは言うまでもありません。今回の総選挙についても、子どもたちの目にどのように映っているかを想像すべき。こども家庭庁が1.8億円を計上し自殺対策協議会を設置しても、“薬漬け医療”の入口になる可能性が高く、原因を子どもに求めるのではなく、大人の社会の歪みこそ正さなければなりません。

中川淳一郎氏の連載「格差を読む」。今月号もエプスタイン事件と“はしか”を絡めて「メディアと日本人」を論じています。3月25日には同連載をまとめた新刊『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』を発売予定です。

ほか4月号では、西谷文和氏がイスラエル現地レポートとともに、ガザ虐殺がネタニヤフによるハマスとの裏取引であった「カタール疑惑」を解説。児童相談所(児相)の“保護”の人権侵害を告発する子どもたちの声、メガソーラー問題など、今月号も本誌独自の視点からのレポートを多数掲載しています。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年4月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2026年3月7日発売

自民と旧公明「改憲勢力」大幅伸長 つくられた高市自民圧勝 植草一秀
創価学会・公明党の目的とは「公明票」にみる中道改革連合の敗因 大山友樹
行き着く未来はデジタル植民地化 チームみらいの空虚な正体 昼間たかし
国会総右翼化に対抗する「大原則」日本国憲法の精神に立ち返れ 足立昌勝
市場の動きが問う日本「円弱」という現実 中尾茂夫
イスラエル現地取材ネタニヤフがハマスと裏取引 「カタール疑惑」とは何か 西谷文和
“来日ツアー”の関係者も証言 エプスタイン事件の全貌を追う 片岡亮
子どもたちが語った「児童相談所」の人権侵害 たかさん
生徒に軍事力必要と教え込む 都教委と自衛隊の共犯性 永野厚男
「血を流す」べきは誰か? 再び高市首相の「保守」を問う 木村三浩
「エネルギー問題」の本質を示すメガソーラー公害の深層 早見慶子
LGBT問題の現在(3)左派から女性が離れた理由 西園寺あかり
みんな一緒に、さ!ナチズム! 佐藤雅彦
原発を止め農漁村を再生する「石炭火力」の可能性 平宮康広
日本の冤罪 積水ハウス地面師事件 片岡健

〈連載〉
例の現場
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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《シリーズ日本の冤罪64》平野母子殺人事件 「1本の吸い殻」で下された死刑判決

尾﨑美代子(紙の爆弾2026年3月号掲載)

2002年4月14日午後9時過ぎ、大阪市平野区内のマンション3階で火災が発生。現場からこの部屋に住む主婦・加奈(当時28歳)と長男・優(当時1歳)の遺体が発見された。2人の死因は、それぞれ窒息死と溺死だった。

半年後、殺人と現住建造物放火の罪で逮捕されたのは、加奈の夫の母親・由美子の再婚相手である林義之(当時45歳)だった。林には、1審で無期懲役(死刑求刑)、2審で死刑判決が下されたが、上告審で最高裁第三小法廷は「審理が尽くされたとは言い難い。事実誤認がある」として1審に差し戻し、無罪判決。検察官控訴も棄却され、無罪が確定した。死刑から無罪判決へ……何があったのか?
(本文中、後藤貞人弁護士以外すべて仮名)

◆刑務官は、なぜ犯人とされたのか?

林は事件当時、大阪刑務所の刑務官だった。1981年に由美子と結婚(再婚)し、由美子の長男・浩次と養子縁組する。

浩次は若い頃から万引き、家出などを繰り返していたが、素行の悪さは家庭を持っても収まらず、結婚後、複数の交際女性から金品を受けるなどしていたことが発覚。林は浩次を厳しく叱責したが様子は変わらず、林夫婦は一時期、加奈と長男を自宅マンションに同居させるなどしていた。

一審判決は、この時期、林が加奈に好意を寄せて、抱きついたり、キスを迫ったりするなどの行為を行なったとしたが、林は否定した。加奈はその後、林に黙ってマンションを退居、浩次と再び同居を始めた。

当時、浩次は借金が嵩み、取り立てから逃れるため、家族でホテルを転々とすることもあった。連帯保証人である林にも取り立てが及ぶと、林は浩次に代わって返済を続けた。それでも浩次は林を疎ましく思い避け続け、2001年2月28日に転居先を告げず、現場となったマンションに引っ越した。

事件が起こった4月14日、非番だった林は、浩次夫婦の転居先を探そうと、車(白色のホンダストリーム)で平野方面へ向かった。転居先が平野区A地区のスーパー近くであるとの情報を得ていたこと、飼い犬がいるため「ペット可」のマンションであることなどから、条件に見合う物件を見て回った。

まさにその日、マンション306号室で加奈と長男が殺害され、放火される事件が発生した。火災発生は21時40分頃、殺害は16時から18時頃と推定された。

捜査が進むなか、林が疑われたのは、事件発生時に林の車と同種同色の車が、マンションから100メートル離れた商店街に駐車されていたとの目撃情報があったこと、また林が当日、妻の勤務先に迎えに行く約束を、特段の理由もなく直前に断わったり、携帯電話の電源を切ったりするなど不可解・不自然ともとれる行動をとっていたことからだった。

しかし、それらは林を犯人と決定づけるものではなかった。

◆犯人と決めつけた1本の吸い殻

事件から2日後、林は大阪府警から参考人として事情聴取を受けており、事件当日、浩次らのマンションを探すため平野方面へ車で行ったことを素直に述べていた。もちろんマンションの所在地は知らないし、立ち寄ってもいないと事件への関与は否定した。

一方、大阪府警は事件翌日、マンション西側の1階から2階へ上がる踊り場の灰皿(以下、本件灰皿)から、72本の吸い殻を採取、その中に林が吸っていた煙草の銘柄「ラークスーパーライト」1本を発見していた。

7月23日、その吸い殻に付着した唾液のDNA型が林のものと一致したとの結果が出た。8月17日、大阪府警はこのDNA鑑定の結果を有力な証拠として林を任意同行し、朝から14時間もの取り調べを行なった。

林は一貫して容疑を否認するも、捜査員は「君がやったと俺は確信している。今日はどうして2人を殺したのか、つまり動機を聞く日だ」などと最初から林を犯人と決めつけた。そして取り調べ終盤、ついに林は「午後5時前頃に浩次夫婦の姿がないか探すためにマンションに入っていると思います。このマンションは4階建てで、道路からマンション敷地内に入り、すぐのところにある入口を入って階段を上っています」との調書が作成されてしまう。

頑なに容疑を否認していたのに、なぜこのような調書が作成されてしまったのか、林は公判でこう供述した。「3人の警察官から、10時間以上にわたり殴る蹴るの暴行をうけたうえ、椅子に座ったまま自分の足首を握るという二つ折の体勢をとらされたり、ナイロン袋を頭から被せて呼吸ができないようにされ、また、両手を柔道の帯で後ろ手に縛られた。調書は十分くらいで作成され、読み聞きもはっきりとされず、内容はよくわからなかったが、解放されたい一心で署名した」。

実際、取り調べ中の暴行により、林は翌日から入院を余儀なくされていた。刑務官に就く前、警察官を経験していた林にとって、いわば「同僚」といえる大阪府警から加えられた壮絶な暴行体験は、林にどれだけ恐怖心を植えつけたことだろうか。

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『紙の爆弾』最新号は明日発売です!

『紙の爆弾』2026年4月号
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2026年3月7日発売

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創価学会・公明党の目的とは「公明票」にみる中道改革連合の敗因 大山友樹
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国会総右翼化に対抗する「大原則」日本国憲法の精神に立ち返れ 足立昌勝
市場の動きが問う日本「円弱」という現実 中尾茂夫
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“来日ツアー”の関係者も証言 エプスタイン事件の全貌を追う 片岡亮
子どもたちが語った「児童相談所」の人権侵害 たかさん
生徒に軍事力必要と教え込む 都教委と自衛隊の共犯性 永野厚男
「血を流す」べきは誰か? 再び高市首相の「保守」を問う 木村三浩
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過去の「国旗法案」を振り返る 今なぜ国旗損壊罪の新設なのか

足立昌勝(紙の爆弾2026年3月号掲載)

◆国旗損壊罪新設への動き

 2025年10月20日、自民党と日本維新の会が署名した「連立政権合意書」の内容は多岐にわたるが、第3項「皇室・憲法改正・家族制度等」の一項に「令和8年通常国会において『日本国国章損壊罪』を制定し『外国国章損壊罪』のみ存在する矛盾を是正する」と書き込まれている。

11月4日の衆議院の代表質問で、維新・藤田文武共同代表の質問に対し、高市早苗首相は次のように答弁した。

「日本国旗損壊罪の制定についてお尋ねがありました。これは、過去、私自身が刑法92条改正案を起草し、自民党の党議決定や御党関係議員の御協力の下、法案を国会に提出したこともあります。御党との合意書の内容を踏まえ、今後、その実現に向けて、両党間で具体的な検討を進めていくとともに、政府としても与党と連携を図りつつ必要な取組を進めてまいります」。

日本の刑法では、外国の国旗を損壊する行為は罰せられるが、日本の国旗は対象とされていない。そこに矛盾があるとの主張は、これまで、どこからも聞こえてこなかった。

2025年11月3日に地元の大分放送で放送されたニュース番組で、岩屋毅前外相は、かつて高市氏が提案した「国旗損壊罪」に反対した理由について、次のように答えている。

「当時、反対しました。なぜなら、「『立法事実』がないからです。立法事実とは、実際にそうした事例が社会問題になっているかということです。日本で誰かが日章旗を焼いた?そんなニュースを見たことがない。立法事実がないのに法律を作ることは、国民を過度に規制することにつながるので、それは必要ないのではないかと言いました」。

「国旗・国歌法(1999年制定)には賛成しましたよ。でも日の丸が燃やされて大変なことになって、規制しなきゃいけないという事実がないでしょ。事実がないのにそうした法律を作ることは、国民の精神をどこかで圧迫するおそれがあります」。
2012年5月、自由民主党は、総務会で日の丸(日章旗)を傷つけることに対する罰則を定めた「国旗損壊罪」を新設する刑法改正案を了承したことを受け、高市早苗・長勢甚遠・平沢勝栄・柴山昌彦の各議員が議案提出者となり、議員立法で第180回国会に法案を提出したが、審査未了で廃案となった経緯がある。

高市氏は公式サイトの2011年3月8日付「コラム」で、国旗損壊罪新設の理由を、「私の意図は、この法改正によって、『日本国国旗を破いたり燃やしたりした日本人や在日外国人をどんどん逮捕する』などというものではありません。あくまでも日本人として、『日本の威信・尊厳を象徴する国旗』に対する愛情や誇りを、せめて外国国旗が刑法で保護されているのと同程度には、守りたい…という思いです」と述べていた。

今年の年頭所感や1月6日の新年記者会見で、国旗損壊罪の新設については何も触れられなかったのは、すでに決めたことであり、今さら言及する必要がないという、彼女の新設への意欲を示しているのだろう。

◆今なぜ国旗損壊罪なのか?

自維に先駆けて、参政党は、2025年10月27日、国旗損壊罪を新設する刑法改正案を参議院に提出した。その背景は、同年7月の参院選で次のような事実があったことに起因しているらしい。以下、12月9日付の毎日新聞「『日の丸にバツ印』掲げた大学生あいまいな国旗損壊罪に『怖い』」から引用する。

〈今年7月の参院選投開票前日。参政の神谷宗幣代表が街頭演説した東京都港区の芝公園は異様な熱気に包まれていた。陣営によると1万人を超える聴衆が集まり、「日本人ファーストは差別」などと書かれたプラカードを掲げて抗議する人たちもいた。
 ひときわ目を引いたのが、大きなバツ印を付けた日の丸だった。
 神谷氏は10月、「こんなことが許されるのかと思った」と記者団に述べ、バツ印を付けた日の丸を見た数日後に法案作成を指示したことを明らかにした。「国をおとしめることをされることで、多くの人の人権が傷つけられる。公共の福祉に照らせば『表現の自由』で認められるものではない」と主張し、他党に協力を求める考えも示した。〉

ここで挙げられた事例をもって国旗損壊罪を新設しようとするのは、まったく理由にならない。選挙活動への抗議行動を法で取り締まろうとしているのだ。まさに、これは表現の自由の問題である。

神谷氏が見た「バツ印を付けた日の丸」とは、どのようなものだったのか。個人的に作成したものなのか。国旗・国歌法で定められている国旗だったのか。国旗・国歌法によれば、「旗の形は縦が横の三分の二の長方形。日章の直径は縦の五分の三で中心は旗の中心。地色は白色、日章は紅色」とされている。上下・左右対称である。この規定に合致していなければ、正式には国旗ではない。参政党の主張では、何がなんでも日の丸を侮辱する行為を取り締まり、処罰することになってしまう。果たして、そのような取り締まりをしなければならない現実が、日本の社会にあるのか。立法事実もないのに新たな法を作成しようとすることは、個人的な恨み・つらみの範疇であり、法律で規制することではない。公私混同が激しい参政党の性質を示したにすぎない。

自民党の国旗損壊罪新設の背景も、自民党の体質ではなく、高市氏の個人的思想・国家観があるのだろう。それは前述のブログに表れている。公党の総裁となり、首相となった人物が個人的思想に依拠したことがらを、党の内部的手続きを経ずに法案化しようとするのは党の私物化であり、さらには、国家の私物化である。

このような彼女の発想・やり方は、彼女が師と仰ぐ安倍晋三元首相を踏襲しているのであろう。

2025年12月18日、政権で安全保障政策を担当する「官邸筋」が、「私は核を持つべきだと思っている」と発言したと報じられた。オフレコ前提の非公式取材で飛び出したとされるが、発言の主は首相の防衛政策を指南する「ブレーン」ともいえる首相補佐官だった。しかし高市氏は、今に至るも何のコメントを加えていない。

2026年1月3日にアメリカが行なったベネズエラの首都カラカス攻撃および、それに伴うマドゥーロ大統領の拉致は、他国への侵略的攻撃であり、国際法に違反するもので、どこにも正当性は存在しない。

この事実に対する所見を求められた高市氏は翌4日、従来の立場すなわち「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値や原則を尊重する」としたうえ、「ベネズエラにおける民主主義の回復および情勢の安定化に向けた外交努力」を進めるとだけ表明した。自己の思想や国家観に基づく政策を、党内手続きを無視してでも強行しようとする首相が、国際政治の場で「法の支配」を主張する資格があるのだろうか。「法の支配」を主張するのであれば、国内の、いかなる事態でもそれを貫徹すべきである。

一般論からいえば、この国旗損壊罪新設の問題は、現行刑法に外国国旗損壊罪を罰する規定が存在する一方で、自国国旗を対象とする規定がないことに起因しているとされる。この「不均衡」を是正し、国家の象徴としての尊厳を守るべきだというのが、新設を求める賛成論の主たる主張であろう。

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精神病予防学会の策謀 再び偏見を教育する保健体育教科書

野田正彰(紙の爆弾2026年3月号掲載)

2018年の学習指導要領により、高校の保健体育教科書で、40年ぶりに精神疾患に関する記述が復活した。2022年の「現代社会と健康」から新たに「精神疾患の予防と回復」の項目が加えられ、「児童生徒が心の健康について関心を持ち、正しく理解し、適切な対処や行動選択ができるようにすることが求められている」と呼び込みをしている。

「学習指導要領解説」は「精神疾患の特徴」と「精神疾患への対処」に分けて、うつ病・統合失調症・不安症・摂食障害の四疾患について指導し、「正しい知識やそれに基づく適切な対処や行動選択を理解させる」と続ける。

1972年を最後に高等学校の学習指導要領から「精神疾患」に関する記述は抹消された。復活にあたり、なぜ消されたのかに関する言及は皆無だが、消したのには理由がある。文部省と著者と教科書会社が邪悪な内容を書いて教え込んでいたことを暴露されたからだ。

その後も1980年代まで新聞をはじめマスコミは盛んに「狂人に刃物」といった煽動的解説を続け、精神疾患に関する誤った記述(偏見)が社会に浸透していった。

◆根拠なき「遺伝説」を「常識」にした戦後保健教育

私は精神科医になって間もない1973年、「偏見に加担する教科書と法」という論文を「朝日ジャーナル」2月16日号で発表した(鹿砦社刊『流行精神病の時代』に収録)。

戦後の保健体育の教科書は「精神衛生」の項で「精神病の遺伝」について解説し、「精神病は遺伝するので、結婚にあたって相手方の家系その他を調べることは重要である」「精神病者には優生保護法による優生手術が行なわれる」などと教育した。

戦前・戦中の軍国主義国家の時代、日本政府にとって精神病は、徴兵において重要な問題だった。明治期に徴兵制が施行されると、当時多かった梅毒の患者、とりわけスピロヘータの大脳感染者(進行性麻痺)を軍隊に入れないことが課題で、社会での精神病者の排除はそれほど重視されていない。

1940年、ナチス・ドイツの優性思想に倣い作られた国民優生法は、根拠なき「精神病遺伝説」に基づき精神病者の断種を規定したが、徴兵者を増やしながら精神病者を多く見つけて排除するという矛盾から、さほど実効性を持たなかった(それゆえ、強制不妊手術の実施は後述する戦後の旧優生保護法施行後がほとんどである)。

戦後の日本では結婚が急増し、海外の引揚者も増加して、第一次ベビーブームが起きた。人工妊娠中絶を容認する世論が広がるのに便乗して、精神病者を社会から排除する旧優生保護法が1948年に制定された。この法律に基づいた優生手術(強制不妊手術)が1960年代まで盛んに行なわれたことは、2024年に最高裁判決が出た国賠訴訟を通じて周知のことだろう。

ただし、その報道では優生手術の主たる対象が知的障害者ではなく精神病者であったこと、学校教育で「精神病遺伝説」が国民に「常識」として徹底されたことはまったく触れられなかった。

「精神病は遺伝する」との「常識」を創作した主犯は日本精神神経学会(1902年設立)の精神科医ら、とりわけ旧帝国大学を中心とした医学部精神科教室である。そして文部省の強制の下での教育とマスコミが偏見を日常的に強調することで、その「常識」を国民に刷り込んだ。

もともと日本社会に「精神病は遺伝する」という考えが定着していたわけではない。人々の精神病の概念は曖昧で、地域によっては「狐憑き」や「天狗にさらわれた」といった「憑きもの」と同一視する考えや、「その家の不幸によるもの」などの様々な解釈があった。

ナチスなき後、戦後日本の精神科医と教育・マスコミ関係者こそが精神病遺伝説、そして精神病者は社会から減らさなければならない「犯罪予備軍」との偏見を確立させたのだ。

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「知らぬ間に紐づけられている」「“3月まで”の嘘と罠」マイナ保険証メディア忖度報道と〝防衛策〞堤未果氏インタビュー

聞き手=青木泰(紙の爆弾2026年3月号掲載)

マイナンバーカードをめぐり、政府は「取得は個人の自由」と言いつつ、紙の健康保険証を廃止し、マイナ保険証への一体化を進めている。推進に巨額を注ぎながら、利用率が37.4%(昨年10月時点)に満たないは明らかな政策の失敗だが、それを隠して総括することなく、デジタル庁はさらに関連予算を増額する動きだ。現状と狙いを把握し、私たちは防衛策をとることが必要である。2023年10月号でインタビューした堤未果氏に再び聞いた。

◆旧保険証が廃止されても資格確認書で代替可能

── マイナンバーカードについて、番号法(注1)第16条の2では、本人の申請が条件で、健康保険証・免許証の登録を含めて強制してはならないと定められています。ところが、いわゆる旧保険証の2025年12月1日での廃止を発表後、期限を今年3月まで延期したものの、マスコミ報道は「廃止」を強調。そこには健康保険資格確認書(以下、資格確認書)のことが全く抜け落ちていました。ほとんどの報道は、3月までにマイナ保険証に切り替えなければ、医療機関の受診が出来なくなるかの内容で、政府の切り替え推進を後押ししています。

 マイナに切り替えたくない人の場合、各保険(国民健康保険・社会保険・後期高齢者医療制度)によって少しずつ違いがありますが、表1に示したように、旧保険証に代わり資格確認書が交付されます。国保の場合、自治体によっては有効期限が1?5年の違いがあります。後期高齢者はマイナ保険証の有無にかかわらず資格確認書を配布することになっています。

── いずれにせよ、マイナ保険証を持たなくても、旧保険証と同じ役割を持つ資格確認書が交付されるということですね。

 新聞やテレビは「わざわざマイナ保険証に切り替えなくとも資格確認書を提示すれば医療機関を受診できる」というもっとも重要な事実を伏せて報道しているので、国民の間に混乱と誤解が広がっているのです。

── 結局、旧保険証を残せばよかったのでは? なぜ廃止したのでしょうか。

 その通りです。資格確認書は今までの保険証と色が違う程度で、ほぼ同じ。無駄な時間と手間がかかり、医療機関では受付が混乱し、新しいカードを作る事務手数料が政府与党のお友だち企業に入るだけ。いつもの税金の無駄使いです。

そもそも政府は保険証にしても免許証にしても、従来使っていたものをそのまま使い、マイナを持つ、持たないは国民各自が決めていいと言ってきました。でも、政府の本命はカードを持つ、持たないではありません。マイナンバーカードに健康保険・運転免許や銀行口座などあらゆる個人情報を紐づけし、国民を一括管理する体制をつくる方向に進めているのです。

そこでまず、マイナカードを作る誘導策として、2020年から国民1人2万円、国家予算にして1兆8000億円(マイナンバーカード作成で5000円、健康保険証登録で7500円、給付金の受取口座を明かせば7500円)を餌にマイナポイントキャンペーンを仕掛けました。それでも作らない国民が多いので、誰もが使う保険証を入口にするやり方に切り替えたのです。

── ちなみに「紐づけ」とは?

 マイナカードだけなら、入っているのは本人の住民票に基づく氏名・住所・生年月日・性別、そして個人番号(マイナンバー)と顔写真です。「紐づけ」とは、その後、この個人番号と健康保険を一体化させたり、免許証として使えるようにしたり、年金や給付金の受取口座と連動させていくこと。マイナカード一枚に個人情報を集めていくのです。

── 紐づける情報が増えれば、一枚のカードでいくつもの役割を果たせるというのが売りですね。しかし……。

 一枚ですむ一方で、カードを紛失したり、盗まれたり、偽造されたりすると、入っている情報が多いほど大変な被害が生じます。また、4桁の暗証番号の管理の問題もあります。番号を覚えられない高齢の方や、認知症の方をどうするかについても、政府は答えを出していません。

たとえば、今までの保険証なら、子どもの修学旅行にはコピーを持たせれば、いざ怪我や急病の時に病院で使えたのに、なくすリスクを考えるとカードを持たせることはできません。

── マイナカードを持てば、住民票なども含めて利便性が高まるというのが、カード導入の一番の触れ込みでした。

 そうです。ところがふたを開けてみると、利便性が上がるどころか、今までは紙の保険証を病院の受付で渡せばすぐにカルテを取り出して診療に移れていたのが、マイナ保険証は、受付でカードを読み取る機械の不具合が多発しています。うまく読み取れないとか、顔写真の照合でエラーが出るなど、かえって時間がかかってしまう。そうしたトラブルが、医療機関の8割で起きているのです。

── 私も、これまで受付で並んだことのない病院で、昨年ごろから行列ができるようになったのを経験しました。

 受付は大変です。今年3月まで使える旧保険証、マイナ保険証、そしてマイナ保険証を作らない人が使う資格確認書、この3種が出されます。確認手続きの手間が三倍に増えたということ。カードリーダでうまく読み取れない場合は、「資格情報のお知らせ」や「被保険者資格証明書」など、本人確認のための別の書類を出してもらわなくてはなりません。マイナ保険証は本人申請が条件ですが、お年寄りや寝たきりの人、引きこもりの人などは申請に行けませんから、資格確認書を使わざるをえません。多くの医療機関はそのことをわかっていたので、最初からこの制度に反対していました。

── 資格確認書の有効期限は、現状で発行から一年という自治体が多いようですが、中には五年とした自治体もあるとのことですが。

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米国CIA・NEDの情報支配 アメリカによるベネズエラ侵略の真相

黒薮哲哉(紙の爆弾2026年3月号掲載)

現地時間の2026年1月3日午前1時50分ごろ、米国陸軍デルタフォースは、ベネズエラの首都カラカスの軍事施設などを空爆すると同時に大統領私邸を急襲し、ニコラス・マドゥーロ大統領を拉致した。

マドゥーロは妻のシリア・フローレスとともに米国へ移送され、ニューヨーク州北部の空軍基地に到着した際には、手錠をかけられていた。麻薬密売ネットワーク「太陽のカルテル」の首領であり、麻薬・武器の密売などに関与したというのが容疑である。

2020年3月の起訴から、およそ6年が経過していた。ベネズエラのテレスール紙(1月13日付)などによれば、警備に当たっていた兵士ら100人余りが死亡したという。この中には32人のキューバ兵が含まれていた。

キューバ兵の配置はベネズエラ側の要請によるものであり、キューバがCIA(米中央情報局)による600回を超えるとされるフィデル・カストロ暗殺計画を阻止してきた実績が評価された結果だという。

だが、そうした備えも功を奏さず、マドゥーロ夫妻は拘束され、米国へ連行された。米軍側に死傷者は出なかったとされる。

ベネズエラのホルヘ・アレアサ前外務大臣は、米国の独立系メディア「ザ・グレーゾーン」のインタビューに対し、「我々はあらゆる事態に備えていたが、レーザー機能を無力化するなど、最新鋭の軍事テクノロジーが使われ対応できなかった」と、完敗を認めた。

米軍は軍用ヘリコプターに加え、複数のドローンも展開したとされる。音響兵器を使ったという報道もある。これは音波を利用し、人体に強い負荷を与えたり、平衡感覚を狂わせたりする兵器である。

軍事侵攻から2日後の1月5日には、マドゥーロ大統領がニューヨークの連邦地裁に出廷した。一方ベネズエラでは、副大統領のデルシー・ロドリゲスが暫定大統領に就任。6日には、ベネズエラの新政権と米国が、ベネズエラが3000万~5000万バレルの石油を米国に引き渡すことに合意した。

トランプ大統領はSNSに次のように投稿した。

「石油は市場で売られ、その収入はベネズエラと米軍関係者のために使われるよう、米国大統領である私が管理する!」

◆西側メディアを支援してきたUSAIDとNED

「AERAデジタル」(1月13日付)で元経産官僚の古賀茂明氏は、この事件について「マドゥーロ大統領は、独裁者でベネズエラ国民の人権を侵害し、さらに国内経済を疲弊させ、800万人と言われる難民が国外へ逃がれるという事態を招いている」と記述した。

日本は西側諸国のメディアの影響を受けることが少なくない。たとえば国境なき記者団(RSF)は大きな影響力を持ち、同団体が毎年公表する「報道の自由度ランキング」は、多くの人に参照されている。ランキングを疑う日本人はほとんどいない。

しかし、西側メディアの報道内容が常に政治的な利害関係と切り離された形で提示されているとは限らない。たとえば、メディアの独立性にかかわる次の事実を読者はどう考えるだろうか?

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雪印の牛肉偽装を告発した西宮冷蔵の闘いの意味を思い出そう!

鹿砦社代表 松岡利康

もう四半世紀近くも前になりますが、私の会社と同じ兵庫県西宮市に在る西宮冷蔵という中小企業が、日本を代表する雪印ブランドの牛肉偽装を告発し日本中が大騒ぎになった事件がありました。

先に紹介した飯塚修三医師が資料を預ける場所に困っていたところ西宮冷蔵の水谷洋一社長が気安く預かってくれ、その水谷社長が『紙の爆弾』に連載(昨年終了)していた記事を偶然書店で見つけ私と知り合うきっかけになったことは、先にご紹介しました。

今度は私が偶然、YouTubeで西宮冷蔵のその事件が登場しているのを見つけました。うまくまとめていました。私も出ていました。照れますね(苦笑)。

https://youtu.be/XHvQ5KdDfLU?si=pG1ydCeeYDWy41j3

※動画視聴は上記URLをクリック

ぜひともご一覧いただきたいと思います。

水谷社長が不正を告発したのはまだ40代、今や70代になります。そして、自殺未遂した娘さんの介護に追われ苦境にあります。鹿砦社以上です。

能天気に「正義は勝つ!」などとほざく徒輩がいますが、世の中、そうはならないことのほうが多いです。この不条理、なんとかならないものでしょうか。

しかし、巨大企業や権力に立ち向かった西宮冷蔵・水谷洋一/甲太郎父子の闘いの意義は、敗れたとはいえ大きいと言わざるをえませんし、今や忘れられた感がありますが、このYou Tube記事をご覧になり真剣に考えていただきたいと思います。

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「TM特別報告書」が明かした統一教会の日本政界工作

鈴木エイト(紙の爆弾2026年3月号掲載)

日本を統一教会式の国家にする策動が記された統一教会(世界平和統一家庭連合)内部文書の存在が明らかとなった。日本の政権中枢の政治家を「教育」し、教団最高権力者である韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁へ「ひれ伏して拝する」ことを目論んだ仰天文書の内容から、反日教団の狙いと達成度合い、政界工作の内幕や協力した恥ずべき政治家たちを文書の信憑性とともに検証する。

2025年12月、韓国における前大統領夫人への請託禁止法違反容疑などの捜査の過程で「TM特別報告」なる文書が押収された。作成したのは元教団ナンバー2である尹英鎬(ユン・ヨンホ)前世界本部長。3212ページに及ぶ報告書に記されていたのは、世界中の「摂理機関」と呼ばれる教団系組織の幹部らが韓総裁へ送った政界工作などの成果だ。

「TM」とは「トゥルーマザー/真の母」と教団内で崇められている韓総裁のことを指している。

◆ビデオメッセージと萩生田光一

韓国では昨年末にハンギョレ新聞・聯合ニュース・京郷新聞が相次いで「TM特別報告」の内容を報じ、日本の複数のメディアも韓国での報道を引用する形で第一報を流した。年が明け、週刊文春1月15日号が巻頭特集で「『高市総裁が天の願い』統一教会マル秘報告書3200ページ全文入手!」と報じ、文春オンラインも発売前日の7日に「【独占入手】統一教会マル秘報告書3200ページがしめす自民党との蜜月『高市早苗氏が総裁になることが天の最大の願い』《長島昭久・前首相補佐官は合同結婚式を挙げていた》《萩生田光一が受け取ったエルメスのネクタイ》」とのタイトルで公開した。

私は記事を書いたフリーライターの石井謙一郎氏から、「TM特別報告」の中から日本における政界工作などが記された箇所の提供を受けた。内容を精査したところ、衝撃的な記述が多々あった。

主に日本の教団会長や関連団体トップが日本における政界工作の進捗状況や成果を報告しているのだが、その期間は、2018年2月から22年12月末まで。つまり、第二次安倍政権以後、教団と政界との関係が深化していた時期から安倍晋三元首相銃撃事件後の余波までが、リアルタイムで記されている。

韓国語で記された「TM特別報告」3212ページも全文入手した。そこには2017年11月の政界工作の内容も書かれていた。カバーしている期間は、17年11月~23年4月。内容は、これまで私が長年にわたる調査報道において得てきた情報を補完し、パズルのピースを埋めるものだった。ある種の「答え合わせ」が進んだといえる。疑惑を裏付けるものが多かった一方で、意外に関係の薄かった政治家などもわかった。

報告には教団が別団体と主張する各フロント団体が「摂理機関」として登場しており、教団の「別組織設定」を覆す証拠になるものだ。統一教会と政治家、両者の間のギブアンドテイクが記されているほか、安倍元首相銃撃事件のトリガーとなった、韓国で2021年9月12日に開催された教団の大規模オンライン集会での、安倍氏による韓総裁礼賛ビデオメッセージが実現した経緯も記されている。多くの人が疑問に思っている安倍氏と統一教会の本当の関係性。それが明らかとなる文書だ。

報告文書全体から明確に読み取れるのは、韓国至上主義である。

安倍氏をはじめ日本の政権中枢を担う政治家に対して統一教会の思想を教育し、日本を統一教会式の国にするという「国家復帰」への組織的な策領が改めて顕在化した格好だ。そんな教団と安倍氏との仲を取り持ってきた政治家として再三「TM特別報告」に登場するのが萩生田光一・自民党幹事長代行だ。何度も安倍氏と教団幹部との面会などを仲介した人物として韓総裁へ報告されているのだ。

本人は週刊文春からの問い合わせに教団との関係を完全否定している。また、ユーチューブ番組でもTM特別報告にあるような高級ネクタイを受け取ったことはなく、仲介したこともないと完全否定した。では、教団が一方的に事実でないことを報告しているのか、それとも、一定の事実を基にしているのか。萩生田氏は会見を開くなりして、疑惑に答えるべき局面であろう。

◆筆者を誹謗中傷した地方議員も信者

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『紙の爆弾』3月号の冤罪報告「平野母子殺害事件」 ぜひ一読を!

尾﨑美代子

◆『紙の爆弾』3月号に冤罪「平野母子殺害事件」を寄稿

『紙の爆弾』最新号を徳島刑務所などに服役中の方に送った。今回、ここの日本の冤罪シリーズに「平野母子殺害事件」について書いた。ずっと気になっていた冤罪事件。人間関係が複雑で、被害者は、犯人とされた林さん(仮名)の再婚相手の女性の息子が、のちに結婚した女性と子供。事件当初、被害女性の夫が疑われたが、夫には不倫女性と食事などしてたアリバイがあった。そののち疑われたのが義理の父親の林さん。めっちゃよくある話だが、犯行当日、被害女性のマンション近くに行っていた。しかも同マンション踊り場の灰皿に林さんの吸う煙草の吸殻が1本あり、そこから検出された唾液のDNA型が林さんのそれと一致した。

捜査機関は林がマンションを訪ねた→林が被害女性の部屋に入った→林が被害女性と子供を殺したにもっていった。任意の取り調べで、大阪府警が林に加えた拷問がえぐい。事件当時大阪拘置所の刑務官だった林は、その前に警官も経験していた。いわば「元同僚」からうけたえぐい拷問のせいで入院までした。それでも林は否認し続けた。

一審は無期懲役、二審は「反省してない」として求刑通り死刑判決。が、最高裁は「審理が尽くされていない」として差し戻し、1、2審で無罪判決がくだされた。林を無罪にしたのは、林を犯人にしたてた1本の煙草の吸殻だった。あとは本編を読んでね。

◆井戸謙一弁護士と樋口英明元裁判官の対談本

本を送った2人には、手紙とともに井戸謙一弁護士と樋口英明元裁判官の対談本『司法が原発を止める』の中のある個所をコピーしたものを一緒に送った。対談本でお二人が冤罪に触れている個所がある。樋口さんは、裁判官時代に「私は無実だ」という人はいなかった。「酔っていた」や「殺す気はなかった」という人はいたが、「犯人ではない」と言い切る人はいなかった。「私は犯人ではない」と法廷で言っていた人が、次から次に無罪になるということは、いかに冤罪率が高いかを示していると……。

これに対して井戸弁護士はこう言った。「日本人は結構正直。公判で『自分は本当に無実だ』という人は、かなりの確率で言っていることが本当に正しいとみるべき。しかし、現実の刑事裁判では、それがほとんど通らない。だから次々と冤罪がうまれていく」と。

樋口英明元裁判官との対談本『司法が原発を止める』の共著者、井戸謙一弁護士

そういえば、亡くなった桜井昌司さんが、何十年も無罪を訴え再審、国賠を闘ったが、ある裁判長は「何十年も無罪を主張して悪質だ」と言ったそうだ。無罪だから言い続けるんだよ。それこそ何十年も。

◆5通の手紙をくれた受刑者の事件

暮れから正月にかけて5通の手紙をくれた千葉刑務所の受刑者の事件の概要もまとめなくてはならない。ある弁護士さんがどんな事件か一応みてくれることになったためだ。じつは、そのあとにもう一人の無期懲役の受刑者から手紙が届いた。「日本の冤罪」を読み、両親に頼んで「はな」の住所を調べてもらったといい、手紙にはぜひ僕の事件の判決文などを読んで欲しいと書かれていた。まずは返事をくださいと封筒、切手が入っていた。少なくとも返事は書かねばならない。こういう人は、名前で検索すればどのような事件かわかる。ただ、そこまでで、確かに判決文など読みたいが、果たしてそれ以上のことはできるかどうか?

また、次に書きたいと考えてる「恵庭OL殺人事件」についての資料集めもはじめないと。弁護人だった伊東秀子さんの本は明日届く予定。昔一度読んだが手元にないので再度注文した。そう、この事件、かなり前から気になっていた。いろんな状況証拠から、真犯人(たち)は明らかに当時彼女と被害女性が勤務していた会社の関係者だ。つまり、冤罪が作られたせいで、真犯人(たち)は野放し状態。ほかの事件でも思うが、逮捕されない真犯人はどんな心境なのだろうか?

◆2月28日大東市で冤罪のお話をします!

昨日の選挙でこちら側は惨敗したので、再審法問題はどうなるのか心配だが、原発問題、日米安保問題、パレスチナ問題、スパイ防止法、大阪でいうたら三度目の都構想もカジノも……お先は真っ暗だ。ここまで真っ暗になったら、もうため息もでない。目の前のやることを1つ1つこなしていくだけだ。

2月28日、大東市で呼ばれた「冤罪はこうして作られる」の講演会のレジュメとパワーポイントも作らねば……。パワポ、京都の部落解放同盟の方に呼ばれた時のパワポは、初めて作ったのと、レジュメとパワポをどう使いこなすか、うまく出来てなくて、猛省してます。今回は、なるべくわかりやすく、そして変な言い方だが、面白く興味深い話にしたいと考えてます。終了後に近くの「バナナハウス」で食事会(700円)もあるそうです。一人でも多くの方に参加して欲しい。

尾﨑美代子(おざき みよこ
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

高市早苗首相の大いなる勘違い「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」とは何か

足立昌勝(紙の爆弾2026年2月号掲載)

◆「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」とは?

2025年10月24日、衆議院本会議場で行なわれた所信表明演説で、高市早苗首相は、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」という文言を2回繰り返した。これは、具体的に何を意味しているのであろうか。

首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相と作家・百田尚樹氏(日本保守党代表)との共著のタイトルは、『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』(2020年、ワック)であった。しかし、安倍氏の言葉は一つの理念を述べたもので、具体的に何をしたいのかは含まれていない。

また、安倍氏は2013年の参議院選挙の最中、「世界一を目指そうではありませんか。世界の真ん中で輝く日本をつくろうではありませんか」と演説した。これも、彼にとってのあるべき政治の姿を理念として述べたものである。

これに対し、高市首相の「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」というフレーズは、「取り戻す」という言葉に表れているように、これから行なうべき行動が示されている。つまり「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」という言葉に、彼女がこれから何をしようとしているのか、が含まれている。その言葉の意味を探り出すことは、非常に重要である。

高市首相は2025年10月21日の就任記者会見でも同じ言葉を語っていた。それ以前にも、同年7月8日に開催された安倍氏をしのぶ会で、「日本の外交力を強くするために、できる限りの力を尽くしたい」と述べ、「安倍さんが実現した、世界の真ん中で咲き誇る日本外交をもう一度よみがえらせる」と強調した。

しかし、ここに首相の大きな勘違いがある。安倍氏は「日本外交」とは述べていない。「日本外交」において「世界の真ん中で咲き誇る」や「取り戻す」と宣言したのは、高市首相である。この言葉には、一定の意味を込めているのだろう。

同11月7日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の岡田克也議員は質疑の冒頭で、次のように問うた。

「力強い日本外交を取り戻すということは、現状から変えるということを意味しておられると思うんですが、どういう意味でしょうか」。

岡田質問については、「女性に対してしつこすぎる」とか「誘導尋問」との指摘がネット上でなされているが、これは真逆の指摘である。首相に性は関係ない。首相という地位にいる人格に対する質問を、女性に対する質問ととらえることこそが問題だ。

高市首相の答えが以下である。

「2016年に安倍総理が、『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』を提唱されました。そして、その後、第一次トランプ政権でアメリカが抜けた後のTPP(環太平洋連携協定)、これをCPTPPとして日本が主導しました。さらには2018年、日EU経済連携協定、また日米合意の枠組みなどもできてきて、ちょうど2016年から18年、19年にかけて、この頃というのは、本当に世界で咲き誇る日本外交を目に見える形で私は経験できたというか、知った時代だったと思っております」。

これは岡田質問への回答になっていない。

いくつかの外交努力を挙げてはいても、その一つ一つがどのように世界の真ん中で咲き誇っているのかについての説明は皆無だ。また、取り戻すべき外交とは何なのか、どのようにして取り戻すのかについての説明もない。

自らの発した言葉が何を指しているのか、説明できなければならないのは、当然のことである。

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