仕組まれていた大阪関西万博未払い問題

西谷文和(紙の爆弾2026年11・12月号掲載)

昨年10月13日に大阪関西万博が閉幕して、まもなく1年が経過する。開催中「万博の華」といわれていたのが外国のパビリオンだ。しかしいまだにアンゴラ・アメリカ・中国・マルタ・ルーマニア・セルビア・ドイツ・ネパール・インド・ポーランド・ウズベキスタンの11カ国の工事を請け負った下請け業者が、総額10億円を超える工事費の未払いに苦しんでいる。

ちなみに「愛・地球博2005」は、未払いゼロ(当たり前だが)。電通と業者の間でワイロの授受があり、関係者が塀の内側に落ちてしまった「東京オリンピック2020」でも未払いはゼロ。なぜ「大阪・関西万博2025」だけに多くの未払い問題が生じたのか?

その答えは、無謀なタイムスケジュールと、夢洲という最悪の会場設定だった。

まずは日程問題から振り返ろう。前回の「ドバイ万博2020」がコロナ禍で1年延期され、そもそも準備期間が4年に短縮されていたことが、第1の原因だ。この4年のうちにウクライナ戦争が勃発し、資材が高騰。さらに人材不足と建設業界の働き方改革による残業規制など、そもそも遅れる原因が複雑に絡み合っていた。2022年秋には宮本洋一・日本建設業界会長(清水建設会長)が「このままでは間に合わない」と警鐘を鳴らしていた。

さらに1年が経過した2023年夏、大手ゼネコンがいっせいに工事から撤退を始めた。外国政府が独自に建てる〈パビリオンAタイプ〉はデザインが複雑で、その国の意向を取り入れながら建設していくため、追加工事や設計変更などで遅れが生じやすい。そうなれば追加資金が必要になるが、外国政府は支払わないだろうと予測したのだ。

大手ゼネコンは「資金が回収できない」とAタイプから逃げた。ゼネコン関係者は匿名で「このまま請け負えばやけどする」と語っている。当然、万博協会も国も大阪府もこの事実を知っている。

その結果、2023年8月の時点で、Aタイプで工事を開始した国はゼロ。このままでは間に合わないと焦った万博協会と吉村洋文大阪府知事は説明会を開催。関西の中小建設業者・設備業者を集めて、異例の協力要請を行なった。この時、吉村知事は「大手だけでできるものではない、中小業者のみなさんのご協力をお願いしたい」と頭を下げた。

今年6月、国会で日本共産党の大門みきし参院議員がこの説明会について質問した。なんと万博協会と大阪府知事は「大手ゼネコンは資本回収リスクがあるから撤退した」事実を隠した上で、協力だけを要請していたのだ。

そうこうするうちに2024年1月、能登半島地震が起きて多大な犠牲が出た。この時せめて「震災のため1年延期」と工事期間を延ばしておけば、未払い問題は回避できただろう。建設業者を急がせて2025年4月開催に突き進んだ吉村知事と万博協会の罪は大きい。

その結果、宮本会長が危惧した通り多額の未払いが発生、少なくとも38社の下請け企業が10億円を超える被害を受けた。38社の下には孫請け、ひ孫請け、1人親方たちがいて、おそらく1000人を超える人々が今も泣き寝入り状態で放置されている。

◆手のひらを返した吉村知事と万博協会

次に夢洲という会場の問題について振り返ろう。夢洲はゴミの処分場として大阪湾に埋め立てられた無人島で、工事期間中はまだアクセス用の地下鉄が開通しておらず、路線バスもなし。職人さんたちは重い工具を持って自家用車に相乗りし、駐車場からかなりの距離を歩いて現場に入っていた。

Aタイプは全て円形大屋根リングの内側に建つ。大屋根リングは日本の税金で作っていたので「資本回収リスク」はない。だから大手ゼネコンが予定通り作ってしまった。リングが先にできたので、工事用のトラックが入りにくくなった。笑い話のようなアホ状況の中、急ピッチで外国パビリオン工事を進めざるを得なかった。

さらに夢洲の地盤はN値5。これは「保育園の砂場レベル」のゆるさで、通常の2階建て家屋はN値20以上ないと建たない。マンションはN値50が必要だ。つまり、デザインに趣向を凝らした上で、高い建物を建てようとすれば、杭を打たねばならない。おそらく外国の担当者は夢洲がそんな地盤であることを知らずに、工事計画を練っていたのだろう。だから余計に設計変更・追加工事が多発し工事予算は膨らんでいく。

未払い被害者たちは「何度も設計変更があって、ほぼ眠らずに凍えながら現場に泊まり込んで作業した」と証言している。工事最終盤は2025年1月から3月、「労働者が逃げ出すのではないか」と考えたのか、現場に監視カメラが設置された中での突貫工事だった。

彼らは「万博を支えた影の英雄」である。吉村知事と万博協会は、工事前は頭を下げたものの、工事後は手のひら返し。「民・民の問題だ」と彼らを切り捨て、救済に動かない。

先の大門議員は「資金回収リスクがあることを事前に知らせなかったのは、国や協会の重要事項説明義務違反である」と追及している。万博協会・国・大阪府は道義的責任どころか、法的責任を問われる立場でもあるのだ。

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米国の目標は「日本の消費量の半分」病害虫と残留農薬を運ぶ米国産生ジャガイモ輸入

八田純人(農民連食品分析センター所長)

米国が日本に対して生鮮ジャガイモの輸入解禁を求めている。もしも輸入解禁されたならば、日本のジャガイモ生産にどんな影響が出て、病害虫や残留農薬など、私たちの食の安全にどんな問題が生じるのか。

生協・市民団体・流通分野等からの募金を基に活動し、独立した分析機関として知られる「一般社団法人 農民連食品分析センター」の八田純人所長が解説する。(文責・編集部)

◆ジャガイモ輸入解禁の経緯

私は「検査」が現場の人間です。そうした立場で仕事をしていると、様々な検査のデータを見たり、それに関わる新たな制度作りや基準値の変更といった局面に立ち会ったりします。そこでしみじみ感じるのは、経済合理性の中でかなりの無茶を進めているケースがままあること。しかも、昨今はそんな事例が増えてきたように思います。

そのひとつが、米国産ジャガイモの輸入解禁問題で、生食用ジャガイモ(一般流通用の生鮮ジャガイモ)の輸入を全面解禁しようという流れが農林水産省の中で進められており、調べれば調べるほど侮れない局面に来ていて、ハラハラ感を覚えています。

令和8年(2026年)8月28日、農水省が「米国産一般流通用生鮮ばれいしょ輸入検疫協議」という名で関連資料を公開しました。この資料によれば、米国産ジャガイモの輸入解禁をめぐっては「リスク管理措置に関する協議が必要な病害虫を特定して、害虫が何なのか特定までは終了しました」というステージ2(病害虫リスク評価)の段階にあると記されています。要は輸入に伴い日本に入ってくるかもしれない病害虫の特性と特徴を特定したという段階です。

このステージ2が終わると、実際に輸入することを前提とした場合、どんな管理が必要になるのかというステージ3(病害虫リスク管理)の段階に入ります。この流れの中で進んでいけば、米国産の生食用ジャガイモが日本のスーパーに並んで食卓に上る日が、かなりシリアスな状態で現実味を帯びてきたといえます。

そもそも日本は長らく米国産の生食用ジャガイモを輸入禁止してきました。一方で、ポテトフレークなどの冷凍製品で、加熱処理すればそのまま食べられるフライドポテトのような製品は各国からの輸入を認めています。こうした製品は、たとえ病害虫などがついていても調理加工によって確実に殺菌できる。だから輸入を認めていたのですが、生のジャガイモとなると話は違う。米国産の生のジャガイモには、「ジャガイモシロシストセンチュウ」など厄介な病害虫のリスクがあるからです。

ジャガイモシロシストセンチュウがどんな恐ろしい生き物なのかというと、根などに寄生してジャガイモの成長を阻害する、ジャガイモが収穫できなくなってしまう、収量がガタ落ちする上に、駆逐しようと思っても卵が15年以上も潜んで休眠することができるので、一度侵入を許して拡散すると、駆除も防護も極めて難しい。こんな病害虫が日本の圃場に入り込んでしまったら、どえらいことが起きるからです。

そうしたことが起こらぬよう日本の生産者や農協・防疫機関・行政機構・研究者などが連携して、徹底的にこうした外来の病害虫が日本に蔓延らないように取り組んできた歴史がありました。そんな流れの中で日本のジャガイモの生産は守られてきたのですが、そこに横槍を入れてきたのが米国産ジャガイモの輸入解禁問題です。

最初は2006年、米国側の要求に日本政府が一応折れるという形で、ポテトチップス用に限り、2月から6月までの間、輸入を認める緩和をしてしまいます。

ポテトチップス業者にとってみると、ちょうど2月から6月というのは、国産ジャガイモが足りなくなる時期です。そのタイミングで輸入ジャガイモを使えるようにするということで、ポテトチップスならば、油で揚げることで十分な処理ができるのではないかという条件のもと、輸入を認めてしまったわけです。

その後の2016年には北海道産ジャガイモが不作となり、大手のカルビーや湖池屋でポテトチップス販売休止事件が起きました。この流れを美味しく使うような形で、2020年2月には「2月から6月まで」としていた期間制限を取っ払って、通年輸入を認める規制緩和を、米国政府の要求を呑む形で日本政府は認めていきました。

◆米国の長期戦略とカルビーの対応

ポテトチップスの生産にはいくつかのパターンがあります。ジャガイモをスライスして揚げたタイプのポテトチップスは、生のジャガイモを使うのが一般的です。生ジャガイモの入手ができなければ作れません。

現在、米国産の生ジャガイモ輸入を受け入れる形で、ポテトチップスの製造が認められているのは、カルビー1社のみです。その際、同社は鹿児島港と広島港にある工場でのみ輸入ジャガイモを受け入れ、生産を行なっています。輸入した生鮮ジャガイモは港湾内で加熱処理され、生のイモの状態では港湾外に出さないようにしています。ジャガイモを洗った後の皮などはどうしているのか疑問も残りますが、そのあたりは私もよくわかりません。

こうした実態は日本の消費者にあまり知られていないようですが、米国政府、そして米国のジャガイモに関わる団体は、1コマ、1コマと着実にコマを進める形で日本の市場開放を戦略的に進めてきました。

たとえば、米国農務省(USDA)のホームページにはこんな情報が載っています。2011年付の「米国産農産物貿易の殿堂」というページでUSDAの海外農業局と米国大使館が、米国産農産物の日本市場での開拓活動に多大な貢献をした企業や団体を称え、殿堂入りした会社を紹介しています。カルビーについての文面はこんな感じです。

「カルビー社は米国産ジャガイモ輸入のパイオニアとしてポテトチップ生産用ジャガイモ輸入解禁のために、国内関係で協力しながら米国ポテト産業界、そして米国農務省とともに長年にわたりご尽力されてまいりました。自社の国産品ジャガイモ使用量を減らすことなく、米国農産物の利用に貢献されています」

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あらためて鹿砦社代表退任にあたって ──

株式会社 鹿砦社 現代表取締役(10月31日まで)
松岡利康

1988年以来長いか、年務めてまいりました鹿砦社代表ですが、いよいよあと10日ほどになりました。

以下は、これまで書き連ねてきたことと一部重複いたしますが、現在の私の想いを申し述べます。

これは、去る16日に会員さんらコアな支持・支援の方々に送ったものに加筆したものです。

鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/

ご報告と更なるご支援の要請

中川志大新代表を中心に若返りを図り、心機一転、心ある人たちに支えられた〈独立メディア〉として『紙の爆弾』を更に拡大、発展させよう! 半世紀余り幾多の困難を乗り越えてきた鹿砦社を、堅忍不抜の〈言論の砦〉に鍛えよう! 苦境を突破し勝機を掴み“第三の奇跡”を勝ち取ろう! 中川新体制に圧倒的なご祝儀を贈ってください! 心ある皆様のご支援で新生鹿砦社の新たな船出を祝おう!

株式会社 鹿砦社 現代表取締役(10月31日まで)
松岡利康

『紙の爆弾』を愛し鹿砦社の言論・出版活動を支持・支援される皆様! 

先の中川の爽やかな抱負は多くの皆様の共感を得たようですが、これに比して以下の私の文は、いささかどろどろしたリアルな話になることをあらかじめご承知おきください。

中川の文、これに先立ち『紙の爆弾』11・12月合併号において公表しましたように、私たちは重大な決意をもって11月1日付けで鹿砦社の代表交替を決定いたしました。

そして、新たな態勢の元、若返りを図り、苦境を突破し、現在ほぼ見なくなった〈独立メディア〉として貴重な存在になった『紙の爆弾』の拡大・発展を図りましょう! 更に、1969年の創業以来半世紀余り数多の困難を乗り越えてきた鹿砦社を、心ある皆様方のお力をお借りし、その力で支えられ、いかなる権威・権力に屈しない〈言論の砦〉に鍛え上げましょう!

私松岡は去る9月25日で75歳、いわゆる後期高齢者になったのを機に、決算が終わる10月31日付けで鹿砦社の代表取締役を辞し、21年前の「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧でも、ただ一人残り会社を守ってくれた中川志大(もとひろ)に代表を禅譲し、心機一転、若返りを図り、若い発想で必ずや新型コロナによってもたらされた苦境を突破してくれるものと信じています。

だからといって、私は逃げるのではなく、日々午前8時には出社し、抱えていたり残っている仕事もかなりありますので、これまでと変わらず実務を続けます。背後から中川を支え、彼を「前門の虎」とすれは、私は、いわば「後門の狼」として後押しします。平取締役兼大株主としては当面残り“老人力”を発揮し、中川を防衛します。

世代交代は、いつかはやらなければならない課題で、どこの会社も直面し後継者不足に悩んでいます。皆様に祝っていただいた創業50周年の2019年から念頭にありましたが、その後新型コロナが襲来し、この対策に追われ手付かずでした。しかし、75歳を一つの区切りとして行うことを決断しました。

鹿砦社、また『紙の爆弾』のような〈独立メディア〉にとっては、広告も入らず巨大なバックがいるわけでもなく、頼りは読者の皆様方のご支援、浄財です。読者の皆様こそ最大のスポンサーです。

クラウドファンディングで資金を集めたらいいではないか、という声もよくあります。あまり知られていませんが、クラウドファンディングは、手続きは面倒で、集まったお金から、相当の手数料を引かれます。1円でも皆様方のご支援を出版活動に使いたい私たちには向いていないようです。

代表取締役として私の最後の仕事は、皆様方にご支援を請い、浄財をお寄せいただくことをお願いし当面の運転資金を集め後任の中川が自由に活動できる基盤を用意することです。先月からご支援をお願いしていますが、本年残りの3カ月は年末にもかかり、かなり厳しい情況を迎えます。なんとしても、ここを乗り切らねばなりません。

私たちはこれまで、当地を襲った阪神大震災前後の混乱の中、逆にこれをバネとして年間売上10億円を達成した1994年から97年はじめの頃を“第一の奇跡”とすれば、本誌『紙の爆弾』創刊直後、「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧で壊滅的打撃を被ったにもかかわらず、皆様方のご支援で再起した2009年から2010年にかけての時期が“第二の奇跡”と見なしています。

これでもう大丈夫かなと思ったところ、神はみたび私たちに試練を与えました。新型コロナの襲来です。正直、これを舐めていました。再興を果たし、せっかくの蓄えもすべて溶かしてしまいました。一時は絶望的になりましたが、心ある皆様方の叱咤激励により、なんとしても会社を維持し、本誌『紙の爆弾』、また唯一の反原発情報誌『季節』の発行を継続させ、半世紀余り続く鹿砦社の言論・出版活動を継続することを決意しました。しかし、遺憾ながら、なかなか苦境を脱しえないまま現在に至っています。

後継者不在に悩む経営者は多いですが、当社には幸い、『紙の爆弾』創刊直後の弾圧で私が逮捕・勾留された後、不在中もただ一人会社を守ってきた本誌編集長・中川がおります。彼は新卒で入社し、本誌の編集長のみならず当社全体の編集長、また東京事務所の責任者として、さらに取締役として獅子奮迅に頑張ってきました。

まだ50歳にも達せず経営トップとしては未熟ですが(私が鹿砦社を引き継いだ時は30代。ずいぶん試行錯誤し失敗ばかりしました)、何卒皆様方に可愛がっていただき叱咤激励のほどよろしくお願い申し上げる次第です。私の代で“第三の奇跡”を成しえなかったことには忸怩たる想いがしますが、それを彼に託します。

私は鹿砦社の代表としての最後の仕事を、当面を乗り切り、よしんば余裕を持って中川が采配を振るえるように資金を集めることに決め、ここに皆様方にご支援、資金援助を切にお願い申し上げる次第です。

ご支援はお一人おひとりのお考えやご事情などから、無理のないところで行ってください。例えば、新態勢にご祝儀を贈る、普通にカンパ(寄付)する、『紙の爆弾』、あるいは唯一の反原発雑誌『季節』を定期購読する、すでに定期購読中の方は前倒しで更新する、会員になる、すでに会員の方は会員のランクアップをする、等々です。

事情ご賢察の上、何卒よろしくお願い申し上げます! 心ある皆様のご支援で新代表・中川体制による新たな船出を祝ってください!

※ご祝儀、会費、ご支援金は以下のどちらかにご入金お願いいたします。

① 郵便振替 01100-9-48334 株式会社鹿砦社
また、『紙の爆弾』『季節』に挟み込みの「払込取扱票」にてご送金くだされば、送金費用かからず簡便です。                

② 銀行振込 三井住友銀行 甲子園支店 カ)ロクサイシャ
 普通口座 4304399 ㈱鹿砦社 
 (お振り込みの後にお名前、ご住所をメールかファックスにてお知らせください。メールj-info@rokusaisha.com ファックス0798-49―5309.匿名寄付の方は結構です)

■上の文は『紙の爆弾』11月/12月合併号を、定期購読者・会員の皆様方らへ送る際に同封した文に加筆したものです。

■下の写真は、2020年1月18日、手弁当で全国の刑務所・少年院を回りプリズン・コンサートを続けている女性デュオ「Paix2(ぺぺ)」、その500回目(於・横浜刑務所)の後で記念品を渡しました。こののち、新型コロナ旋風が吹き荒れ、私たちを翻弄することになります。

Paix2は昨年4月、『紙の爆弾』創刊20周年の「反転攻勢の集い」(東京・日本プレスセンター)にて司会を務めてくれ、また私が逮捕されたメモリアルデー7・12の同集い・関西(西宮・カフェインティライミ)では魂を込めたミニライブを行ってくれました。Paix2はもっと社会的に認められてしかるべきだと思っています。

『紙の爆弾』最新号(11・12月合併号)に栃木の冤罪「今市事件」を寄稿しました

尾﨑美代子

鹿砦社『紙の爆弾』最新号(11・12月合併号)に久々に冤罪事件を寄稿いたしました。今回取り上げたのは栃木県の「今市事件」。事件の焦点を、無期懲役で服役中の勝又拓哉さんが「供述弱者」であった件に絞って書きました。

勝又さんは名前も顔も日本人に見えますが、実は台湾人で、日本人男性と結婚し来日していた実母を頼って、日本に来ました。しかし、義理の父親と折り合いが悪く母らとは別居し、一緒に台湾から来た姉と住んでいたこと、日本語がうまく話せないため学校で虐められ引きこもりになったことから、日本語で話したりコミュニケーションをとる機会が奪われてきました。そんな拓哉さんが、とつぜん女児殺害、遺体遺棄で逮捕され、警察、検察にどんな取り調べを受けたのか、気になっていました。今回の取材では、拓哉さんの義理の弟さん(実母と再婚相手の男性との間にできた弟)の高瀬さんに資料を頂いたり、お話を聞くことができました。

私がなぜこの事件が気になっていたか? 実は、今市事件にかかわる金子達也検事という検事がおります。彼は、宇都宮地検に赴任前、千葉県で拙著「日本の冤罪」に収録している「東金女児殺害事件」を担当していました。このときは被疑者でのちに起訴され、有罪判決を受けたKさん(逮捕時20歳)を取り調べています。Kさんには知的障害があり、裁判になった際、弁護側がモニターに「弁護士」「黙秘」「検察官」など映し出し、本人に意味を問う場面がありました。その際、Kさんはほとんど答えることができませんでした。そのKさんは、「やってないなら黙秘しなさいよ」と厳しくいう弁護人より、毎日長時間顔をあわせ「〇くん」と下の名前で親しげに呼ぶ金子検事に「かねこさん、かねこさん」と懐き、「かねこさん」のいう通りにやってもいない殺害を認める供述をしてしまいます。

金子検事はその後宇都宮地裁に異動になり、そこで今度は日本語に不慣れな勝又さんを殺人犯に仕立てたのです。

金子はその後、あちこちの検察を回り、最後は福岡高検の刑事部長になりました。が、親睦会で女性に不適切発言を行い、減給処分を受け、その後は自身で依願退職しています。

この金子だけではなく、今市事件には、なんとプレサンス事件で山岸元社長の部下を恫喝・脅迫し、嘘の供述を強い、結果、現在「特別公務員暴行凌辱罪」で訴えられている田渕大輔検事もいました。あともう一人、悪検事がいたと思いますが、忘れました。

なお、弁護側は控訴審から元裁判長の木谷明弁護士(故人)などが加わり、強力な弁護態勢ができ、さらに一審で有罪とされた証拠を悉く弾劾していったのですが、なんと、東京高裁は、「いつ、どこで殺害したか」という一番大事な訴因を変更させ、一審判決を破棄しました。それなら、一審に差し戻すか、無罪を言い渡すべきなのに、再度勝又さんに無期懲役を言い渡しました。

弁護団の落胆ぶりを考えると胸が苦しくなるくらいです。中でも控訴審から加わった弁護人の一人今村核弁護士、私は、多くの冤罪事件で無罪判決を勝ち取ったこの弁護士の書籍を何冊も読ませて頂き尊敬しておりました。いつか、どこかでお会いできるのではと思っておりました。しかし、今村弁護士は、ご病気で一昨年逝去されました。控訴審で有罪判決が出たことがよほどショックで会ったことは、その後開催されたシンポジウムのなかで、司会者に意見を求められ、「何もありません」とボソッと言ったことからも明らかです。シンポに出て「何もありません」とは……。

今市事件、みなさん、知ってください。今回の記事は、自分で言うのも何ですが、わかりやすい内容にまとまってると思います。ぜひ、購入して頂き、読んで下さい。

11日、映画「マミー」上映会のピースクラブでも販売させて頂きます。
宜しくお願い致します。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

『紙の爆弾』11・12月合併号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年10月7日発売

米国の目標は「日本の消費量の半分」病害虫と残留農薬を運ぶ米国産生ジャガイモ輸入 八田純人(農民連食品分析センター所長)
閉幕から一年、底の見えない闇 仕組まれていた万博未払い問題 西谷文和
駐日イラン大使講演 アメリカの戦略的敗北と日本国民の役割
中道分裂と沖縄県知事選で創価学会・公明党は何をしたのか 大山友樹
【対談】小坂浩彰(NGOレインボーブリッヂ)× 木村三浩(一水会代表)
低迷する日本が活路を見出す自主独立の極東地政学
クレジットカードを止めたのは誰か? ICC裁判所長“制裁”の「本当の問題」昼間たかし
国民の存在を無視した改憲「緊急事態条項イメージ案」の欺瞞 足立昌勝
特捜検事が捜査対象女性と交際 法務省が事実隠蔽する理由 小川敏夫
「人手が足りない」のに「仕事がない」理由 労働の貧困化と「人手不足社会」の実態 片岡亮
成年後見制度という宿痾7 突然、行方不明になった妻を返せ!鈴木愼哉
シリーズ 日本の冤罪 栃木・今市事件 尾崎美代子
LGBT問題の現在 性自認という「内心」なりすましという「故意」三浦俊彦
アメリカの戦略シンクタンクが提起した米軍アジア戦略の抜本的転換 佐藤雅彦
原発も太陽光パネルもいらない 東京23区の電力自給自足は可能である 平宮康広

〈連載〉
例の現場
NEWSレスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://kaminobakudan.com/

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0HLRL2LSK/

鹿砦社の代表交替と、新代表に就任するにあたって

株式会社鹿砦社 新代表取締役(11月1日より)
『紙の爆弾』編集長 中川志大

現在発売中の『紙の爆弾』11月/12月合併号の誌面にも記載のとおり、本年11月1日より株式会社鹿砦社の代表取締役社長に就任します。

現代表・松岡も述べていますとおり、出版業界、特に小規模出版社にとって苦境の中で舵取りを交代するわけで、必ずしも“目出度い”とは言い切れないのが正直な心情です。いままで出版実務面は多くを担ってきたものの、経営はまったく違うもので、現代表に教えを請いつつ、試行錯誤を新たに始めることになります。また、経営の立て直しから着手することになるため、実際には1年ほどは、移行期間のような形です。とはいえ、徐々にでも、私のカラーをにじませていければと思っていますので、本誌とともにぜひご注目ください。

私・中川というと、本誌では現代表から、2005年の鹿砦社出版弾圧事件で、ただ一人残った社員として紹介されますが、一度立場を決めたらそこで最大限の努力をするという精神(旗を立てたら動くな)は、当時から変わっていません。こと言論を扱う身としては、目先の利益を追いかけ立場を変えるのを「合理的」と呼ぶような社会にあっても、異論を投げかけ続けることが、この社会に違和感を持つ人にとっての励みになるのではないか。そこにこそ、鹿砦社や『紙の爆弾』の存在意義を持ちたいというのが、私の考えです。

それが具体化できつつあるのか、本誌は大手誌が休刊する中で、相対的に売上を伸ばしています。そして、ここ数年、「『紙の爆弾』が面白くなった」という声をたびたびいただきます。「本を出版する」ということが本当に難しくなっている中で、小出版社が生き残る道は、そういった声を大事にしていくことだと思います。なかなか展望が開けない社会にあっても、「まだ、鹿砦社がある」と思っていただけるような出版社を目指します。今後とも激励とご支援を、よろしくお願いいたします。

中川志大新代表取締役。画像は2015年の『紙の爆弾』創刊10周年のイベントでのショット。於・たんぽぽ舎。

※この挨拶文は、『紙の爆弾』11月/12月合併号を定期購読者/会員の皆様らへ送る際に同封した挨拶文を、表題を替えて転載したものです。

『紙の爆弾』11・12月合併号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

米国産生鮮じゃがいもの輸入解禁問題が大炎上中です。この件は病害虫の問題を中心として語られています。ただし本誌記事の農民連の分析にあるとおり、残留農薬は見逃せません。また、八百屋やスーパーに行けば、じゃがいもに輸入の必要性がないことは誰にでもわかります。「食料自給率100%を目指す」と言っていた高市政権が、日本の農業・農地と国民の健康よりもアメリカを優先している。そのことが、はっきりと可視化されたケースといえ、ゆえに右からも左からも批判の声が挙がっているのだと思います。

農薬問題については、9月号で山田正彦元農水相が、具体的な危険性と「有機農業でやっていける」ことを解説しました。少なくともポストハーベストからなくしていくことが、第一の手順だと考えています。生産と消費を近づけること、つまり食料自給率を上げていくことです。エネルギー問題もそうで、まず送電ロスを減らすのが、もっともシンプルで有効であり、今月号の平宮康広氏の提案は明快です。さらに本誌校了直前には、千葉県で太陽光発電設備のショートによる火災が発生。まさに記事の指摘が現実化しました。報道では「発火と自然鎮火を繰り返し、十回以上の爆発音」とあります。記事にある「東京大火災」の警告を直視しなければなりません。

沖縄県知事選は、沖縄が押し付けられた問題が、沖縄以外によって「沖縄の問題」に固定化されてきたことが根本的な敗因ではないかと思います。「SNSのせい」では何も変えられません。今月号で、アメリカのシンクタンクが新たに提案した在外米軍戦略について解説しました。在日米軍の撤退にまで言及した抜本的転換といえるものですが、読むほどに、現実に即した内容であることがわかります。仮にこの提案どおりになった場合、沖縄の沖縄以外に対する地位が逆転することになるでしょう。まさに“必読”の内容です。

大阪・関西万博の閉幕から1年。想定された以上の“闇”の深さを示しているのが11カ国のパビリオンで発生した「建設費未払い問題」です。万博協会と吉村洋文・大阪府知事は「民・民の問題」として被害企業の救済に動きませんが、本誌記事にあるとおり、大手ゼネコンがパビリオン建設から逃げたために、吉村知事が関西の中小建設業者・設備業者に協力要請をした経緯を考えれば、知事らに責任がないとは絶対にいえず、それどころか、彼らは問題が生じることを、ある程度認識していたのではないかと思われます。さらに経緯を見ていくと、この問題が「事前に仕組まれていた」可能性を指摘せざるをえません。

また、今月号では駐日イラン大使が行なった講演を収録。「アメリカがなぜ“戦争国家”なのか」を具体的に説明しています。一水会代表・木村三浩氏と、実業家として外交に携わるNGOレインボーブリッヂ・小坂浩彰氏の対談は、展望の見えない中でも時代を打開するアイディアの詰まった内容です。ほか、赤根智子ICC所長への“制裁”に関するマスコミが取り上げない事実、小川敏夫・元立憲民主党参院議員は検察・法務省の問題とともに、7月号で指摘した中道問題についても再び触れています。

なお、制作上の事情により、今月号は合併号とさせていただきました。次号は12月7日発売となります。盛りだくさんの内容を詰め込んだ11・12月号を、ぜひご一読ください。全国書店で発売中です。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』11・12月合併号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年10月7日発売

米国の目標は「日本の消費量の半分」病害虫と残留農薬を運ぶ米国産生ジャガイモ輸入 八田純人(農民連食品分析センター所長)
閉幕から一年、底の見えない闇 仕組まれていた万博未払い問題 西谷文和
駐日イラン大使講演 アメリカの戦略的敗北と日本国民の役割
中道分裂と沖縄県知事選で創価学会・公明党は何をしたのか 大山友樹
【対談】小坂浩彰(NGOレインボーブリッヂ)× 木村三浩(一水会代表)
低迷する日本が活路を見出す自主独立の極東地政学
クレジットカードを止めたのは誰か? ICC裁判所長“制裁”の「本当の問題」昼間たかし
国民の存在を無視した改憲「緊急事態条項イメージ案」の欺瞞 足立昌勝
特捜検事が捜査対象女性と交際 法務省が事実隠蔽する理由 小川敏夫
「人手が足りない」のに「仕事がない」理由 労働の貧困化と「人手不足社会」の実態 片岡亮
成年後見制度という宿痾7 突然、行方不明になった妻を返せ!鈴木愼哉
シリーズ 日本の冤罪 栃木・今市事件 尾崎美代子
LGBT問題の現在 性自認という「内心」なりすましという「故意」三浦俊彦
アメリカの戦略シンクタンクが提起した米軍アジア戦略の抜本的転換 佐藤雅彦
原発も太陽光パネルもいらない 東京23区の電力自給自足は可能である 平宮康広

〈連載〉
例の現場
NEWSレスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://kaminobakudan.com/

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《緊急ニュース!!》「成年後見制度」の犠牲者、またしても! 『悪法「成年後見制度」は法に非ず』の編著者・鈴木愼哉さんの奥様、何者かに施設を連れ出され行方不明! 本来管理すべき後見人弁護士も知らず!

鹿砦社代表 松岡利康

数多の犠牲者を出している「成年後見制度」ですが、これをみずからの体験から告発している鈴木愼哉さんの奥様が、突如施設を連れ出され行方不明という重大な事実が発覚いたしました。

9月17日、鈴木さんの長女さんが鈴木さんのご自宅を尋ねてきて、「久しぶりにお母さんの様子を施設に聞いてみようか」と施設(大和証券の子会社のグッドタイムリビング)に電話したところ10分ほど待たされ、「個人情報なので言えません」と電話を切られたそうです。ところがその後、長女さんの携帯に電話があり、「退所されました」と連絡があり、当然著所さんは「どこに行ったのですか?」と尋ねたところ、「わかりません」とグッドタイムリビング。

その後、後見人の堀井弘明弁護士(大阪弁護士会)に連絡を取ろうと、堀井弁護士が以前いた事務所に電話したところ、「鈴木さんに連絡するように伝えます」ということで、追って堀井弁護士から電話があり、「自分は知らない」ということだったとのことです。本来、後見人は、被後見人の面倒を見て報酬や経費を毎月受け取るわけですから、これだけでも違反していることになります。

その数日前、堀井弁護士が、以前いた事務所を辞め独立したという「事務所」を私たちの取材スタッフが尋ねたところ、そのマンションには表札も掛かっておらず不在、隣室の方に尋ねたところ「今まで夜に2,3度もの音がしたが全くいません」との答え。周囲の飲食店に尋ねても全く知らないということでした。

こういうことは、これまでも何度となく遭遇している私たちは、今後も執念深く追及していくことを、あらためて決意した次第です。われわれを舐めとったらアカンぞっ!

当初、私(たち)は、鈴木さんへの同情心からこの問題に入っていったのですが、実の夫、実の長女でさえ、その意思を無視され、後見人の勝手にされ、報酬と経費と称するお金だけは毎月吸い取られる悪法を決して許してはなりません。

まずは総力で鈴木さんの奥様の所在を突き止め、何としても奪還し、奥様が好きなハーゲンダッツを食べていただきましょう!

ことは、一法律の問題ではありません。人道上、許せない問題です。後見人の堀井弁護士に人間の心があるのか!?

私たちはグッドタイムリビングの親会社・大和証券の責任をも追及し、鈴木夫人がいた施設・グッドタイムリビングの無責任体質を決して許してはなりません。

皆様方のご理解、ご協力をお願いいたします!

※下の画像は、鈴木愼哉・編著『悪法「成年後見制度」は法に非ず』(紙の爆弾増刊。鹿砦社発行)。ぜひともご購読いただき、鈴木さんの事件の概要と成年後見制度の悪法たる所以を知ってください!

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米政府が保有する「首相のカルテ」高市経歴詐称問題とアメリカ追従

浜田和幸(紙の爆弾2026年9月号掲載)

高市早苗首相が1980年代後半に米国の首都・ワシントンに滞在していた当時の肩書「立法調査官」や「コングレッショナル・フェロー」が、「経歴詐称では?」と話題になっています。

この〝疑惑〞が単なる「スキャンダルのネタ」にとどまらないのは、「米情報機関の監視の目」が事態の行方に注目しているからです。そのことは、今日の日米関係の実態を知る上でも欠かせない要素となっています。

◆「段ボールを敷いて寝ていた」苦労話の真相

実は、就任後の高市首相を揺るがす「経歴詐称疑惑」と彼女が提唱する「和製CIA創設」とは、切っても切れない結びつきがあります。

若き日の高市氏が「スパイのような諜報活動」をしていたため監視されたという話ではありません。「米国での活動を日本国内でどう誇張したか」という政治的スキャンダルと、「最高権力者となった現在の高市氏を米国インテリジェンスがどうマークしているか」の2つの要素が混ざり合っているのです。

高市首相は松下政経塾(5期生)を卒業後の1987年から約9カ月間、米民主党のパトリシア・シュローダー下院議員の事務所に籍を置いていました。私もちょうど同年からワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で主任研究員を務めましたが、この時期の高市氏の経歴の表記が、現在、各方面から激しい追及を受けています。

彼女は長年、テレビ出演時や選挙広報で「米連邦議会 立法調査官」と名乗ってきました。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の報道にあるように、「実態は無給のインターンで、電話番やお茶くみ、コピー取り、有権者への手紙の下書きが主だった」ので、米議会の正式な職員ではありませんでした。

高市氏が、自身の保守的な思想とは真逆なリベラル・フェミニストのシュローダー議員を選んだ理由に思想的な背景はなく、「アメリカの権力中枢で堂々と渡り合う力強い女性政治家」としての姿に憧れを抱いたからです。

彼女がシュローダー氏を知ったのは渡米直前。民主党の米大統領選予備選への出馬を検討し、演説しているのを日本のテレビニュースで観たことでした。高市氏は自著で、「ファッションセンスが抜群で、非常にセクシーで見事な女性が、軍事問題を力強く演説している姿に目が釘付けになった」(『30歳のバースディ その朝、おんなの何かが変わる』大和出版)と書き残しています。

シュローダー氏はリベラル派でしたが、同時に女性として初めて下院軍事委員会の主要メンバーとなった人物。当時、防衛や安全保障への関心を高めていた高市氏にとって、リベラル派というイデオロギーの違いを超えて、「軍事を語れる強い女性」というキャラクターそのものが、理想のトップリーダー像として映ったのでしょう。

なお、ワシントン時代の高市氏が「ベッドも買えず、段ボールを敷いて寝ていた」というのは、前述の著書に記されている有名なエピソードですが、これも彼女の得意な誇大広告にほかなりません。なぜなら、当時、高市氏は松下政経塾の海外研修生という身分で、塾から毎月15万5000円の研究滞在費が支給されていたからです。

確かに、15万円強の資金は決して余裕があるものではなく、米議会でのインターンやフェローといっても活動は完全な無給。そのため、家賃を払うだけで生活費が消えてしまい、家具を買う余裕が一切なかったために、段ボールを敷いての「極貧生活」だったというのが彼女なりの「苦労話」です。

一方で当時、ワシントンに駐在していた日本メディアの特派員、日銀や大手銀行、商社の駐在員、官僚などのエリート層との交流を、高市氏は自慢しています。20代の女性が単身無給で議会に飛び込み、困窮している姿を見かねた日本人駐在員たちが「食事をご馳走する」「生活の相談に乗る」といった形で日常的に援助をしていたケースは多かったようです。〝封印〞されていますが、駐在員の家庭崩壊に繋がったスキャンダルもありました。

高市氏は当時から自己宣伝志向が強く、駐在員コミュニティに対しても「自分は米議会で重要な仕事に関わっている」と熱心に売り込んでいました。米軍関係者との繋がりも、彼女の政治的関心に基づいた人脈作りの一環でした。しかし、事あるごとに、米軍の関係者と親しげに出歩く姿は日本人社会でも憶測を呼んでいたものです。

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月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾?ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか

村岡啓一(紙の爆弾2026年9月号掲載)

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、否認を続けたために、持病悪化による命の危機を訴える中で226日にわたる勾留を受けた角川歴彦・KADOKAWA元会長。「人質司法」の典型として、角川氏は違憲訴訟を闘っている。7月15日、第8回口頭弁論後に弁護士会館で開催された勉強会で、「なぜ、『人質司法』があるのか」をテーマに行なわれた村岡啓一弁護士の講演を編集部でまとめた。

◆「無罪推定」のはずがなぜ「未決拘禁」されるのか

「人質司法」という言葉をご存知でしょうか。国際社会で「ホステージ・ジャスティス(Hostage Justice)」として問題視されてきたものです。

日本の刑事実務では、被疑者が逮捕されると、国家機関(検察官と裁判官)の権限により身体を拘束された状態で、捜査機関の取調べが行なわれます。「身柄を解放されたければ自白せよ」というように、身柄拘束と自白とが対価関係になっています。それゆえ「人質司法」と呼ばれています。

法務省は「日本に人質司法はない」と存在を否定していますが、様々な冤罪事件で知られるように、「人質司法」により被疑者が虚偽自白を迫られた事例には、枚挙の暇がありません。

大正時代の1918年に、京都府知事が府議会議員とともに贈収賄容疑で逮捕される事件(京都豚箱事件)が起きました。当時の訴訟記録によれば、最終的に知事が受けた判決は無罪でしたが、知事らは100日を超える長期の身柄拘束によって自白を迫られました。「人質司法」の実態は、100年以上も前から今に至るまで全く変わらず続いているのです。

さて、日本では、逮捕された被疑者は手錠・腰縄で拘束されます。まだ有罪と決まっていないので「未決拘禁」といいます。でも、どうして無罪が推定されている人間なのに、手錠・腰縄をされるのか? 何かおかしくないですか?

法務省はこの問いにこう答えます。「無罪推定は証拠法上の立証責任を示す原則である。被告人は無罪と推定されるから、国家の側が有罪を証明する責任を負うことを示しているにすぎない」。つまり、法務省は非常に限定した説明をしているのです。

国際的な理解は大きく違い、「国家刑罰権の対象とされた人は裁判所によって有罪とされない限り、刑事手続のどの段階でも制約のない市民的自由が保障されなければならない」です。

また日本では、検察官が取調室で被疑者に対し威圧的な尋問を行なっています。これもおかしくないですか? 被疑者はなぜ一方的に取調べを受忍しなければならないのでしょうか?

これは黙秘権と関係します。黙秘権は憲法38条1項にはっきりと書かれている憲法上の権利です。被疑者が「黙秘します」「これ以上話すことはありませんから、私は房に帰ります」と言って退去してよいはずなのです。ところが実際には、被疑者は取調室で延々と取調官の尋問に晒されます。

これを日本の捜査機関は、次のように合理化します。「捜査機関には被疑者を取り調べる権限があるから、逮捕・勾留された被疑者を取調室にとどめおいて取調べることは許される。被疑者に取調べを受忍する義務があるとしても、黙秘することはできるから、黙秘権を侵害していない」。

その結果、検察官が一方的に尋問し、被疑者は沈黙を続けるという奇妙な闘いが、どちらかが諦めるまで延々と続くのです。そして、時に「検察をなめるな!」と検察官が被疑者を恫喝する事態となるわけです。

カルロス・ゴーン元日産会長の弁護人だった高野隆弁護士の著書『人質司法』(角川新書)の帯文は「逃亡は必然だった」です。ゴーン氏の「日本の刑事司法は中世のままだ!」という叫びには、後述するように明確な理由があります。最近では、ほかにも大川原化工機冤罪事件など人質司法をめぐる国賠訴訟が起こされていますが、角川氏の訴訟は、まさに人質司法の違憲性を正面から問う憲法訴訟なのです。

◆日本国憲法と英文憲法

本題に入り、日本の「人質司法」はなぜ問題なのか、他の国ではこういった問題はないのか、という疑問に答えていきます。憲法・刑事訴訟法・国際人権規約といった法律の解釈について、国際社会の常識と、日本の検察官や裁判官の理解にはズレがあります。このズレについて説明します。

関係する法令は「人身の自由」を定めた憲法34条、身体拘束の要件である「罪証隠滅」を規定した刑事訴訟法60条、国際的な「未決拘禁」のあり方を述べた国際人権規約9条3項です。

まず、憲法から始めましょう。

皆さんは1946年11月3日、日本国憲法とともに「もうひとつの憲法」英文憲法(Constitution of Japan)が公布されたことをご存知でしょうか。国際的な場では、この英文憲法が「日本」の「憲法」として通用しています。英文憲法は日本国憲法を英訳したものではありません。

日本国憲法は形式上、明治憲法(大日本帝国憲法)を改正したものですが、実質的にはGHQが英語で草案をつくり、それに基づき日本で議論がなされました。今日、改憲論議が起きていますが、そこでよく言われる「日本国憲法はGHQに押し付けられた」という主張は、このことを指しています。

では、日本はGHQに押し付けられた憲法を嫌々認めたのかといえば、実態は全く異なります。帝国議会の衆議院と貴族院で、実に丁寧な、逐条的な審議を経て承認したものです。

しかも、草案にはなかった条文まで付け加えています。それが「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」という日本国憲法40条(刑事補償)です。この規定に基づき、不当な身体拘束を受けた冤罪被害者が刑事補償法によって国から金銭的な補償を受けられるようになりました。

GHQはそんなことを考えていませんでした。むしろ、日本の公務員のありようからいって、そんな規定を設ければ、国家の補償を避けるために、かえって被疑者への暴虐行為に走るだろうと考えて反対しました。しかし議員たちは、国家が冤罪を起こせば補償するのが国の当然の責任だと考えて憲法40条をつくったのです。この経過を見れば、日本国憲法は「押し付け憲法」とはいえません。

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