違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか

村岡啓一(紙の爆弾2026年9月号掲載)

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、否認を続けたために、持病悪化による命の危機を訴える中で226日にわたる勾留を受けた角川歴彦・KADOKAWA元会長。「人質司法」の典型として、角川氏は違憲訴訟を闘っている。7月15日、第8回口頭弁論後に弁護士会館で開催された勉強会で、「なぜ、『人質司法』があるのか」をテーマに行なわれた村岡啓一弁護士の講演を編集部でまとめた。

◆「無罪推定」のはずがなぜ「未決拘禁」されるのか

「人質司法」という言葉をご存知でしょうか。国際社会で「ホステージ・ジャスティス(Hostage Justice)」として問題視されてきたものです。

日本の刑事実務では、被疑者が逮捕されると、国家機関(検察官と裁判官)の権限により身体を拘束された状態で、捜査機関の取調べが行なわれます。「身柄を解放されたければ自白せよ」というように、身柄拘束と自白とが対価関係になっています。それゆえ「人質司法」と呼ばれています。

法務省は「日本に人質司法はない」と存在を否定していますが、様々な冤罪事件で知られるように、「人質司法」により被疑者が虚偽自白を迫られた事例には、枚挙の暇がありません。

大正時代の1918年に、京都府知事が府議会議員とともに贈収賄容疑で逮捕される事件(京都豚箱事件)が起きました。当時の訴訟記録によれば、最終的に知事が受けた判決は無罪でしたが、知事らは100日を超える長期の身柄拘束によって自白を迫られました。「人質司法」の実態は、100年以上も前から今に至るまで全く変わらず続いているのです。

さて、日本では、逮捕された被疑者は手錠・腰縄で拘束されます。まだ有罪と決まっていないので「未決拘禁」といいます。でも、どうして無罪が推定されている人間なのに、手錠・腰縄をされるのか? 何かおかしくないですか?

法務省はこの問いにこう答えます。「無罪推定は証拠法上の立証責任を示す原則である。被告人は無罪と推定されるから、国家の側が有罪を証明する責任を負うことを示しているにすぎない」。つまり、法務省は非常に限定した説明をしているのです。

国際的な理解は大きく違い、「国家刑罰権の対象とされた人は裁判所によって有罪とされない限り、刑事手続のどの段階でも制約のない市民的自由が保障されなければならない」です。

また日本では、検察官が取調室で被疑者に対し威圧的な尋問を行なっています。これもおかしくないですか? 被疑者はなぜ一方的に取調べを受忍しなければならないのでしょうか?

これは黙秘権と関係します。黙秘権は憲法38条1項にはっきりと書かれている憲法上の権利です。被疑者が「黙秘します」「これ以上話すことはありませんから、私は房に帰ります」と言って退去してよいはずなのです。ところが実際には、被疑者は取調室で延々と取調官の尋問に晒されます。

これを日本の捜査機関は、次のように合理化します。「捜査機関には被疑者を取り調べる権限があるから、逮捕・勾留された被疑者を取調室にとどめおいて取調べることは許される。被疑者に取調べを受忍する義務があるとしても、黙秘することはできるから、黙秘権を侵害していない」。

その結果、検察官が一方的に尋問し、被疑者は沈黙を続けるという奇妙な闘いが、どちらかが諦めるまで延々と続くのです。そして、時に「検察をなめるな!」と検察官が被疑者を恫喝する事態となるわけです。

カルロス・ゴーン元日産会長の弁護人だった高野隆弁護士の著書『人質司法』(角川新書)の帯文は「逃亡は必然だった」です。ゴーン氏の「日本の刑事司法は中世のままだ!」という叫びには、後述するように明確な理由があります。最近では、ほかにも大川原化工機冤罪事件など人質司法をめぐる国賠訴訟が起こされていますが、角川氏の訴訟は、まさに人質司法の違憲性を正面から問う憲法訴訟なのです。

◆日本国憲法と英文憲法

本題に入り、日本の「人質司法」はなぜ問題なのか、他の国ではこういった問題はないのか、という疑問に答えていきます。憲法・刑事訴訟法・国際人権規約といった法律の解釈について、国際社会の常識と、日本の検察官や裁判官の理解にはズレがあります。このズレについて説明します。

関係する法令は「人身の自由」を定めた憲法34条、身体拘束の要件である「罪証隠滅」を規定した刑事訴訟法60条、国際的な「未決拘禁」のあり方を述べた国際人権規約9条3項です。

まず、憲法から始めましょう。

皆さんは1946年11月3日、日本国憲法とともに「もうひとつの憲法」英文憲法(Constitution of Japan)が公布されたことをご存知でしょうか。国際的な場では、この英文憲法が「日本」の「憲法」として通用しています。英文憲法は日本国憲法を英訳したものではありません。

日本国憲法は形式上、明治憲法(大日本帝国憲法)を改正したものですが、実質的にはGHQが英語で草案をつくり、それに基づき日本で議論がなされました。今日、改憲論議が起きていますが、そこでよく言われる「日本国憲法はGHQに押し付けられた」という主張は、このことを指しています。

では、日本はGHQに押し付けられた憲法を嫌々認めたのかといえば、実態は全く異なります。帝国議会の衆議院と貴族院で、実に丁寧な、逐条的な審議を経て承認したものです。

しかも、草案にはなかった条文まで付け加えています。それが「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」という日本国憲法40条(刑事補償)です。この規定に基づき、不当な身体拘束を受けた冤罪被害者が刑事補償法によって国から金銭的な補償を受けられるようになりました。

GHQはそんなことを考えていませんでした。むしろ、日本の公務員のありようからいって、そんな規定を設ければ、国家の補償を避けるために、かえって被疑者への暴虐行為に走るだろうと考えて反対しました。しかし議員たちは、国家が冤罪を起こせば補償するのが国の当然の責任だと考えて憲法40条をつくったのです。この経過を見れば、日本国憲法は「押し付け憲法」とはいえません。

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日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である

山田正彦(紙の爆弾2026年9月号掲載)

ここ数年で「食料安全保障」という言葉が広まったように、「農と食」への注目度は、確実に高まっている。しかし肝心の農政において、先の国会で種苗法が再び改悪。国民的関心も高いとは言いがたい。それでも、「希望はある」と語る人がいる。民主党政権で農水大臣を務め、映画『タネは誰のもの』(2020年)や『食の安全を守る人々』(2022年)をプロデュース、数々の著作を持つ山田正彦氏に話を聞いた。(本誌編集部)

◆証明された残留農薬デトックス

―― 2024年~2025年の「令和の米騒動」は、食の量的確保がクローズアップされた一方で、「食の安全」という質的問題が抜けていたように感じます。

山田 最近、衝撃的な話を耳にしました。全国的に少子化が進んでいるにもかかわらず、一部の小学校で教室が足りなくなっているというのです。原因は発達障害が認められる子どもの増加で、別室で授業する通級指導が必要な児童が増えているという。問題は、そのような子どもの増加が、ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)やグリホサート系農薬(除草剤)の全国出荷量と相関していることです。それらは1990年代に登場し、特にここ20年で使用量が増加しました。

―― 2024年の「食料・農業・農村基本法」改正の議論で政府の食料自給率向上への関心の低さが批判されたように、食の供給に不安がつきまとう中で、農薬や化学物質の摂取はある程度仕方ない、という諦めの声も聞かれます。

山田 人体への農薬の影響は、決して軽視できません。世界的な研究で、食べた本人だけでなく、女性の卵巣疾患やホルモン異常、男性の精子数の減少、出生異常も報告されています。

しかし、知っておいてほしいのは、有害物質を摂取しても、排出(デトックス)は可能だということです。2019年、NPO法人「福島県有機農業ネットワーク」の調査で、被験者がまず一般の食材(慣行食材)を食べて尿中のネオニコチノイド農薬等の残留量を測定し、その後、オーガニック(有機)食材だけを摂る生活をしたところ、最初の測定で5ppbだった残留量が5日間で2.3ppbに半減、4週間で0.3ppbと90%以上も低下しました。

―― 「有害物質を摂るのをやめる」ことが重要だということですね。一時期または一部の食事を有機にするだけでも意味がありそうです。

山田 食品の残留農薬の問題は、『食の安全~』でも詳細に取り上げています。私は国会議員になる前から、弁護士業のかたわら農業に携わってきました。有機栽培にも50年前から関わり、地元・長崎でお母さん方とともに、弁護士事務所を拠点として「土と文化の会」を設立してもいます。農家を回って有機野菜を集め、当時始まったばかりの「赤帽」で配送する仕組みを作りました。同会は現在も続いています。

◆「学校給食」の重要性

―― 持続的な有機農業を考えた時、確かに流通の問題は重要です。

山田 そこでポイントとなるのが「学校給食」です。千葉県いすみ市では、2015年から給食に有機米の導入を始め、2017年には全小中学校で100%有機米を達成しました。また、東京都武蔵野市も早くから、母親たちの活動をきっかけに「安全給食」に取り組んでいます。「オーガニック給食」が今、急速に広がりをみせ、2020年には123、2024年には328の市区町村で、何らかの形で導入されています。

今年4月から全国の公立小学校で給食費無償化が始まりましたが、予算面でも負担は大きくありません。2023年には宮崎県綾町でオーガニック学校給食の推進を「町の責務」「学校の責務」と定める日本初の「オーガニック給食条例」が制定されました。

―― 親たちが以前から食への不安を抱えていたことがわかります。

山田 学校側も、子どもたちに表れる変化に、対応の必要性を感じた事情もあるのではないでしょうか。

―― 『食の安全~』ではアメリカの事例が紹介されていました。

山田 映画では、市民団体マムズ・アクロス・アメリカを立ち上げたカリフォルニア州在住の主婦ゼン・ハニーカットさんにインタビューしました。彼女は3人の子どもが特定の食べ物にアレルギーをもっていたことをきっかけに、家庭で食べていたものを調査。するとアメリカで流通する加工食品の85%に遺伝子組み換え食品が含まれていたことが判明しました。

それらを食卓から取り除くと、子どものアレルギー症状が短期間で改善したのです。その事実を他の母親と共有するために、彼女は市民団体を設立。彼女のような活動を契機に、今ではアメリカの多くのスーパーにオーガニック食品が置かれ、日常化しています。

また、韓国では、すでにほとんどの小・中・高校の学校給食が無償かつ有機食材使用です。有機農業が広がり、学校給食に供給されている。ここが重要で、学校給食が子どもたちの健康を支えるとともに、学校給食としての確実な需要が有機農業を支えるという構図があります。

◆「国産」「有機」は需要がある

―― ゼンさんのエピソードは、山田さんの『歪められる食の安全』(角川新書)でも紹介されています。同書は食品表示の問題に焦点を当てた本です。

山田 2013年に成立した食品表示法は、私が農水大臣を務めた頃に議論を始めたもので、国内で製造・加工されたすべての加工食品に原料原産地の表示を義務付けました。ところが2017年に表示基準が改悪され、原材料の産地がどこであろうと、国内で作られた食品は「国内製造」と表示可能となりました。消費者は「国産」と誤解します。

内閣府が実施したアンケート調査によると、「国産」の表示があれば、89%が国産を選ぶと答えました。できれば国産の食べ物を選びたい、というのが当たり前の市民の要求です。すると消費者庁が、国会での議論なしに「国内製造」という表示をつくってしまったのです。大手食品企業の意向を汲んだのでしょう。

―― 有機食材の流通が確保されれば、市場拡大が期待されます。

山田 イオングループに、オーガニック商品の取り扱いを勧めたこともありました。それでも、ネックはやはり有機食品の流通網が確立していないことで、農家が宅配便等で出荷せざるをえず、余計なコストがかかってしまう、といった問題があります。JAは、他方で農薬を扱っていることもあり、非有機の慣行農業に配慮せざるをえません。現場でも、慣行農業で散布される農薬が有機の田畑に飛散したら意味がないし、有機栽培で発生した虫を、慣行農業側は嫌がります。

しかし、状況は変化しています。後述するように、たとえばJA島根は有機栽培の流通を進めるとともに、有機栽培農家と慣行農家が共存できるルールづくりを始めました。

―― 有機栽培農家には、組織体のようなものはあるのでしょうか。

山田 ほとんどが個人経営ですが、自ら通信販売するなどの経営努力が成功を収めるケースが増えています。

◆世界で急速に進むオーガニック

―― 「国産」の需要があるということは、裏返せば、「食の安全」には確実に需要があるということです。

山田 それは世界が証明しています。有機栽培の農地面積が1位のオーストラリアは2021~2022年の1年間で49%も増加。2022年のデータで、インド・アルゼンチン・中国・フランスが続いています。同時期の日本は0.1%増(農地面積全体の1%弱)でした。世界的にオーガニック市場の急拡大が注目を集めています。

アメリカも年10%の割合で伸長。一方で遺伝子組み換え農作物は2016年から頭打ちです。ロシアは2014年から本格的に有機栽培に取り組み、2016年に制定された法律で、遺伝子組み換え作物の栽培と輸入を禁止しました。中国も2017年に同様の法律をつくり、米中貿易摩擦の過程で試料用の輸入を解禁したものの、有機栽培の作付面積はアメリカを追い抜きました。

―― 日本だけが遅れているように見えます。

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『紙の爆弾』10月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

アメリカによるイラン攻撃が再開される中、キューバで経済封鎖により深刻なエネルギー危機が続いていることは、あまり報じられません。長時間の停電は家庭の明かりを奪うだけでなく、給水や交通・食料・医療など市民生活のあらゆる面に影響を及ぼしています。そんなキューバの現状と、危機の中で抵抗する人々について、同国ジャーナリストのセサル・ゴメス・チャコン氏が本誌に寄稿しています。

“当事者”を除き、あらゆる方面から疑問の声が挙がった「国民会議」というネーミング。そして、結局何が話し合われたのか、何のための会議だったのかも、まったく不明。「国民による会議」ではないのはすぐにわかることでも、では誰による何のための会議だったのか?という問いに答えたのが、今月号の植草一秀氏の論考です。その空虚さゆえに、常に“背後”が垣間見えるのが高市政権の特徴といえます。ならば、表面的な事象を批判して終わっては、背後勢力の術中にはまるだけです。

「高市早苗政権はこんなにも大局観を欠いた国家運営しかできないのか」「首相が(飲食料品の消費税率)1%案を断行しようとするのに対して、野党が『結論ありきだ』と批判するのも当然だ」。前者は7月30日付日経新聞社説、後者は31日付読売新聞社説です。本誌巻頭で指摘したとおり、さんざん逆進性が指摘されてきた消費税が、いまや税収合計の3分の1を占める現状をどう捉えるべきか。ちなみに6年連続の最高税収を記録した2025年度、所得税収・法人税収がそれぞれ大きく上がっても、消費税の総収に占める割合は31%です。

世界のコロナ対策をリードしてきた元アメリカ大統領首席医療顧問、アンソニー・ファウチ博士への追及がアメリカで始まっています。着目すべきはKダブシャイン氏指摘のとおり、日誌に表れたファウチ博士のキャラクターで、いかにも利用されやすそうなのは高市首相と共通するところ。芸能人へのリアクションも似ている気がします。コロナ騒動の本質はもとより、それまで“主流”とされていた見解が逆転するのかに、もっとも注目しています。

8月号から前・中・後編でお送りした植草一秀氏“3つの冤罪事件”の真実。それぞれの事件の状況はもちろん、不可解な経緯と、当時の社会状況についても詳しく説明しています。そこから見えてくるのは、「今の日本」です。なぜ日本だけが「失われた35年」にはまり込み、抜け出せないのか。「失われたもの」とはいったい何か。それらが事件の背景から浮かび上がってきます。

ほか10月号では、首相官邸SNSの“高市PR動画”が炎上した「首相の無意味な熊本視察」と2024年地方自治法改正の関係を解説。これは副首都法や緊急事態法制とも関係します。2026年熊本地震をめぐっては、各地で加速する“AI防災”のリスクについてもレポート。ほか25年目となった「9.11」の真相、「SNS年齢規制」の国内議論の的外れぶりや、ひきこもり支援事業における「労働」についてなど、今月号も独自の切り口で真実を追求します。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

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7.28熊本地震をめぐる『紙の爆弾』10月号の注目記事 イオンモールで亡くなった女性従業員2名の親会社とそのエリート経営者を容赦なく弾劾した片岡亮さんのレポートは必読です!

鹿砦社代表 松岡利康

少し早いかもしれませんが、月刊『紙の爆弾』10月号(9月7日発売)の記事の一部を紹介させてください。

去る7月28日に起きた二度目の熊本地震については、私のふるさとでのことで、二度目ということや、イオンモールでの従業員の方々が阿鼻叫喚の地獄絵が同時的に報じられる中で亡くなられたことなどで、殊更胸が締め付けられる想いがしました。こうしたことで、広く募金を集めることにも積極的に協力することにしました。先に皆様方にも明らかにした通りです。

また、近く発売される『紙の爆弾』10月号でも2つの記事を掲載しています。特に片岡亮さんの記事は衝撃的なので、早めながら紹介する衝動に駆られました。この記事だけでも、今号の値打ちがあります。

くだんのイオンモールでは、幸いにお客さんは全員逃げ助かりましたが、一部店舗の従業員に犠牲者が出ました。いったんはモール外に逃げ、誰かの指示でモール内の店舗に戻り帰らぬ人となりました。明らかに人災です。

片岡さんの記事では、この責任を厳しく追及しています。ある店舗の親会社は、熊本では誰もが知る老舗企業グループです。現在の社長は東大を出てエリートコースまっしぐらの人物です。片岡さんはこれを容赦なく弾劾しています。当然です。人ひとりの命以上に勝るものはありません。沖縄・辺野古での事故もそうです(このことで勘違いの発言をして顰蹙を買った大馬鹿者がいますが)。

事故後すぐに社長自らが被害者家族の元に駆け付け、なによりも被害者側に真摯に寄り添うことが大事だということは言うまでもありません。片岡さんの記事の内容は、おそらく地元紙の熊本日日新聞、あるいは大手紙や通信社の熊本支局の記者らは知っているでしょうが、どのように配信したのでしょうか? 地元の有力企業(の関連会社)だからといって忖度してはいないか? だとしたら、メディア本来の使命を忘れているといえるでしょう。熊本には、おだやかなイメージの広告で有名な化粧品会社などタブーが幾つかありますが、同様です。

片岡さんの記事の一部を公開しますので、定期購読などされていない方は今すぐAmazonや鹿砦社通販部にご注文ください。『紙の爆弾』10月号は9月7日書店発売、定価800円です(安い!)。定期購読、会員の方々には去る2日に発送が済みました。取次会社にも搬入済みです。

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検察官が関与する政府案 再審法改正は「誰のため」か

足立昌勝(紙の爆弾2026年8月号掲載)

2026年は、袴田巖さんが犯人とされた静岡県旧清水市こがね味噌一家殺人放火事件の発生(1966年6月30日)から60年、前川彰司さんが犯人とされた福井市女子中学生殺人事件の発生(1986年3月29日)から40年の節目の年である。

そのような年にあって法務省は、冤罪被害者の立場を考慮せず、新たな再審法制の原案を自民党の部会に提示したが、一部議員から批判を受け、法務省は数回にわたる原案の修正を余儀なくされた。

これを詳述した『紙の爆弾』6月号の拙稿「『再審制度見直し』に表れた冤罪構造の深層」で筆者は、〈しかし、法務省は、そんなに単純に落ちる組織ではない。最小限の手直しですませようとするだろう〉と述べたが、残念ながら事態はそのとおりに進んでいる。

自民党の一部の反対を「部会長一任」で切り抜けた法務省は、再審開始決定に対する検察官抗告を認める修正案を確定し、国会に提出した。

提出された刑事訴訟法改正法案によれば、裁判所の行なった再審開始決定に対し、検察官による即時抗告を原則として禁止するとしながらも、例外的に許容する規定を残した。すなわち、「当該決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合」には、検察官は即時抗告ができる(445条の2)。

ここでの「十分な根拠」に該当するか否かは裁判所の判断に任されている。すなわち、形式上「十分な根拠」があるとみなされれば、再審開始決定が覆される可能性が強くなったとみることもできる。

◆法務省に対する冤罪被害者の思い

6月9日、衆議院法務委員会で審議されている再審法制に関する参考人の意見陳述が行なわれた。

再審で無罪が確定した袴田巖さんの姉・ひで子さんは、被疑者とされ、被告人とされ、死刑囚とされた巖さんを見守ってきた立場から、心からの叫びを委員らに伝えた。その中で、検察官の抗告と証拠開示について、彼女は次のように訴えた。

「それから検察の抗告についてね。そういうものがあるから、再審開始という、一審で再審開始になっても、それからあと10年経って再審開始になったんですが、そういうものがあるから長引いて58年もかかったんです。私は闘っているうちは、日数なんて考えなかった。それこそ、今日が何日で、何年で、何年かかっているということも、全然考えておりませんでした。おかげさまで、皆様の応援のおかげで、巖は無罪になりました。私と、今は暮らしております」

続けて、証拠開示について、このように述べている。

「証拠開示につきましては、弁護士さんは証拠開示があったおかげで、それまでは再審開始も戸惑っていたんですが、あの証拠開示があって、600点ぐらいのものが出てきました。そしたら弁護士さんがおっしゃるには、巖が無罪になる証拠ばっかりだということでした。それで勢いづきまして、今の結果になっております。(中略)警察は証拠を隠していた。いたというとおかしいけど、隠していたんじゃないかと思います。ですから、いい証拠も悪い証拠も、全部出して裁判をやっていただきたいと思っております」

再審は、裁判所の決定が出てすぐに始まるわけではない。それに対する検察官の不服申立て=抗告により、再審を開始するか否かの裁判が高等裁判所、さらには最高裁へと続けられ、最終判断が出されるまでに数十年かかることもまれではなかった。

また、検察官の証拠隠しにより、多くの事件で真相がわからず、泣き寝入りをしてきた被告人も数知れずいるだろう。

このようなひで子さんの切実な思いが、なぜ実現できないのであろうか。この声を聴いた法務委員会委員は、この思いに応える自覚を持ったのか。

刑事再審法制は、戦後改正されたことはない。不十分ながらも、その改正案が国会に提出され、議論されることになったのを好機ととらえ、冤罪被害者を救済し、二度と発生させないための努力を重ね、法改正の実現に努力すべきである。

このような思いは、冤罪被害者はもちろん、一定の問題意識があれば、誰もが共通して持っているものだろう。

法務省にとっても、自らの立場において、冤罪の元凶である検察官抗告を認める規定を削除することが、今まで被害者に与えてきた苦しみを反省する一助となるのではないのか。

◆自民党内での議論と政府案の決定

5月13日、再審制度の見直しについて、自民党は、法務部会と司法制度調査会の合同会議を開き、法務省が示した検察官による不服申立ての原則禁止を刑事訴訟法の本則に位置づける改正案を了承した。

改正案では、前述のとおり、刑事訴訟法の本則にある再審開始の決定に検察官が不服申立てできるとする部分を削除したうえで、十分な根拠がある場合に限って可能とする条文を新たに設けるとした。

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『紙の爆弾』9月号は8月7日発売です!

『紙の爆弾』2026年9月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年8月7日発売

米政府が保有する「首相のカルテ」高市経歴詐称問題とアメリカ追従 浜田和幸
違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか 村岡啓一
「令状なし盗聴」にまで手を出した 高市政権が掌握する「情報」という巨大権力 足立昌勝
山田正彦元農水相インタビュー 日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である
「国力研究会」の本当の目的「中傷動画」が招いた自民党“高市おろし” 片岡亮
絶望へ導く日本精神医学はいかにしてつくられたか 野田正彰
「デジタル主権戦争」敗戦の先にあるもの 昼間たかし
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」中編 小泉・竹中経済政策と三つの冤罪事件の闇
ウラジーミル・ジリノフスキー「不屈の愛国者」が訴えたもの 木村三浩
成年後見制度という宿痾?これが「改正」か? 質疑なき論戦の果てに 鈴木愼哉
相次ぐ神社仏閣の火災 その“背景”を考える 早見慶子
LGBT問題の現在⑧ LGBT思想と包括的性教育 益田早苗
高市早苗の「我が闘争」を中間総括する 佐藤雅彦
静岡県沼津市ごみ焼却炉訴訟の「画期的判決」 青木泰
高市売国傀儡茶番劇場暴走阻止イベント 真田信秋

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
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『紙の爆弾』9月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

9月号では、高市早苗首相のアメリカ時代の経歴詐称疑惑と、高市政権のアメリカ追従政治の関係を考察。執筆者の浜田和幸氏は、高市氏が松下政経塾を卒業後、米下院議員の事務所に籍を置いていた(9カ月間)のと同時期に渡米しワシントンで勤務しており、現地の高市氏をよく知る人物です。

その高市政権の元で、「円弱」がさらに極まりつつあります。彼女が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相は「円が300円になったらトヨタの車が3分の1で売れる。日本への旅行費も3分の1になる。あっという間に経済回復していくという考えはどうか」と述べましたが、「失われた35年」の果て、物価高による生活苦が人災であることを、この発言が証明しています。高市政権のウクライナ・中国・イラン等海外情勢への対応がそれに拍車をかけてトヨタも減産。7月号で元外交官の孫崎享氏が指摘したように、この外交姿勢は師匠である安倍元首相が中国やロシアと一定の安定的関係を維持したのとは真逆でした。前号で「戦後最悪の宰相」としたゆえんです。円安で「ホクホク」しているのは誰か?というのは、重要な現状分析といえます。

そんな中でも国会では、延長してまで皇室・国旗・改憲策動・自維一体と、今の国民生活に寄与しない法案ばかりが成立。高市首相は「睡眠時間ゼロで頑張っている」とアピールしておけば、適当にごまかせるという姿勢です。なお「寝ずに書類を読んでいる」は、まさに前述の孫崎氏のレポートが言及したところ。「外交官の経験からいえば、高市首相の政治スタイルの問題は、ペーパーを読むことばかりを重視している点」「政治の実態を踏まえず首相の肩書きだけで政府を運営しているように見えることが、国民にとって大きな問題につながる」と述べていました。

それでも、マスコミ報道とは違うところで社会を前に進める活動が進んでいます。山田正彦・元農水相は農薬・化学肥料に頼らない有機農業が世界で大きく広がっていることを指摘。日本はまだ遅れているものの、地域ごとの取り組みにより急速な進展を見せています。また山田氏は、体内の残留農薬はデトックスが可能であることも、データとともに示しました。残留農薬といえば、主に輸入農作物のポストハーベスト農薬(収穫後、品質維持等のための農薬)の危険性を最初に指摘すべきですが、その対処としては地産地消の促進が考えられます。山田氏の分析は、ここからさらに踏み込んだものといえます。今国会で再び改悪された種苗法・新育苗法についても、弁護士として種子法廃止違憲訴訟を闘う山田氏が、タネを守る地域の取り組みを紹介。「食料安全保障」と「食の安全」を考える全ての人に、ぜひお読みいただきたい内容です。

そして、長期身柄拘束によって自白を迫る「人質司法」の問題を、村岡啓一弁護士が解説。同記事は、日本の司法の特殊性を指摘するだけでなく、「なぜ推定無罪の原則に反して、未決の被疑者が手錠・腰縄で拘束されるのか?」「推定無罪の被疑者がなぜ強圧的な取調べを受忍しなければならないのか?」といった、根本的な問いから始まります。そして、日本国憲法のありようにも迫ります。

ほか9月号では、再審請求に向け活動を続ける植草一秀氏の、「3つの植草冤罪事件」の真実に前号に続き斬り込みました。静岡県沼津市の「ごみ焼却炉訴訟」で下された“行政利権”を崩壊させる画期的判決も必読記事のひとつです。精神科医・野田正彰氏は、精神病が死に至る病でないにもかかわらず、年間2万4000人が精神病院で亡くなる「日本の精神医療」と「精神科医」の“異常性”を解説。今月号も独自の切り口で真実を追求します。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年9月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年8月7日発売

米政府が保有する「首相のカルテ」高市経歴詐称問題とアメリカ追従 浜田和幸
違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか 村岡啓一
「令状なし盗聴」にまで手を出した 高市政権が掌握する「情報」という巨大権力 足立昌勝
山田正彦元農水相インタビュー 日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である
「国力研究会」の本当の目的「中傷動画」が招いた自民党“高市おろし” 片岡亮
絶望へ導く日本精神医学はいかにしてつくられたか 野田正彰
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植草一秀インタビュー「冤罪の真実」中編 小泉・竹中経済政策と三つの冤罪事件の闇
ウラジーミル・ジリノフスキー「不屈の愛国者」が訴えたもの 木村三浩
成年後見制度という宿痾?これが「改正」か? 質疑なき論戦の果てに 鈴木愼哉
相次ぐ神社仏閣の火災 その“背景”を考える 早見慶子
LGBT問題の現在⑧ LGBT思想と包括的性教育 益田早苗
高市早苗の「我が闘争」を中間総括する 佐藤雅彦
静岡県沼津市ごみ焼却炉訴訟の「画期的判決」 青木泰
高市売国傀儡茶番劇場暴走阻止イベント 真田信秋

〈連載〉
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日本の「防衛強化」は机上の空論 防衛費倍増で防衛産業は衰退する

清谷信一(紙の爆弾2026年8月号掲載)

高市早苗政権は年内の閣議決定を目指し、国家安全保障戦略などいわゆる安全保障(防衛)3文書の改定作業を進めている。だが現行の3文書は2022年12月に策定され、10年間を見通した内容となっていた。これを、わずか4年で見直すこと自体が異様だ。「直面する緊迫した国際情勢を踏まえての改定」というが、そのような変化は存在しない。高市首相の手柄づくりに利用されているのではないか。「軍事音痴」の高市首相の意向が強く反映された内容になれば、安全保障上の大きなリスクを抱えることになる。

高市首相に軍事・安全保障の素養はない。中国を相手に台湾有事問題で喧嘩を売り、その際に存在しない「中国の戦艦」に関する発言をして、これを批判されるとむきになって「存在する」と閣議決定。この件に関して筆者は6月2日の齋藤聡海上幕僚長の定例会見で質問したが、「(総理の発言の意図は)よくわかりませんのでこの件については発言を差し控えたいと思います。今、我々はその(戦艦の)定義をしておりません。(中略)今我々はそういったカテゴリーを持っておりませんので、言及することは控えたいと思います」と大変困った様子で回答した。

3月24日の報道官会見では安居院公仁報道官に、高市首相の「大変申し訳ないが、戦闘員には最後まで戦っていただく」との発言を質問した。

無論、戦闘員とはショッカーの戦闘員ではない。ハーグ条約やジュネーブ条約で定める「戦闘員」の資格を満たすのは、基本的に自衛官だけだ。首相の発言は自衛官に降伏を認めず、死ぬまで戦えという意図か。それは旧日本軍同様の人権侵害、国際条約無視ではないか、と尋ねたら、後日返答すると言いつついまだに返答がない。つまりは返答できない話だったのだろう。

これらのように高市氏は内閣総理大臣=自衛隊の最高指揮官にふさわしい軍事の常識や教養を、明らかに持ち合わせていない。その肝いりで防衛3文書を見直すということは、政治的・軍事的・外交的に極めてリスクが大きく、国を誤る可能性が極めて高い。

◆防衛費と円安

防衛費GDP比1%から大きく上げるきっかけを作ったのは安倍晋三である。現在の増大方針はその時からだ。安倍元首相は2022年に、GDP比2%に引き上げる、財源は国債を刷ればいくらでも手当できる、カネの使い道は増やしてから考えればいいと主張した。つまり、具体的な脅威の拡大も国際情勢の変化もなく、景気のいい話をぶち上げただけだ。

これに本来政治に中立であるべき、防衛省のシンクタンクである防衛研究所の幹部たちが「個人」の資格で礼賛する意見をテレビや新聞で表明した。世論誘導である。

当時、我が国周辺の安全保障環境の劇的変化はなかった。おそらくアベノミクスの失敗を悟っていたであろう安倍元首相は健康を理由に辞任して、菅義偉氏に後を譲った。だが再度首相に返り咲くための方便として「強い指導者」を演出するため危機感をあおったのではないか。

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「われわれの出版の目的は、一、二年で忘れ去られることのない本を作ることである」(クラウゼヴィッツ) われわれの出版の〈原点〉に立ち帰り、わが出版人生最終コーナーに差し掛かるにあたって

株式会社鹿砦社代表 松岡利康

鹿砦社の言論・出版活動を支持される皆様!

週明けに『紙の爆弾』最新号をお届けいたしますが、このかん少なからずの方々より、同誌がレベルアップしたとのお声をいただいております。これは創刊号以来編集長を任せた中川志大の経験と力によるものです。

実際、完成した同誌を見て、レベルアップしたとの過分な評価を喜びつつも、老婆心ながら、さらなる飛躍の余地はないか、昨年4月に創刊20周年を迎え東京と関西で皆様方に祝っていただき次の10年に向かって歩み始めましたが果たして創刊30周年は大丈夫か(その頃、おそらく私はいないか活動不能になっているでしょうから)、等々と日々思慮しているところです。

また、主に私が担当する分野の書籍についても、出版人生最終コーナー(9月で後期高齢者に。泣)に達した中で、のちのちに残るような本をどう作るか、考えあぐんでいます。

これまで何度か述べていますが、私が10年間のサラリーマン生活を辞め(直接的には会社整理のため)、みずからの資質、能力、経験などを一顧だにせず、まさに“清水の舞台”から飛び降りる覚悟で本格的に出版の世界に飛び込む際に、歴史家の小山弘健先生に教えていただいた、冒頭に挙げた、『戦争論』という畢生の書を著したクラウゼヴィッツの言葉をたびたび想起しています。「果たして私は、どれほど一、二年で忘れ去られることのない本を作ってきたのだろうか?」と。『戦争論』ほどの名著ではないにしても、のちのちに残る本を作りたい! と願いつつも、先が見えているので焦燥感に苛まれています。もっと早く小山先生に教えていただいたクラウゼヴィッツの言葉を真剣に、かつ真摯に考えて実行に移していればよかったな、と悔いが残ります。

今回、時々定期購読者や会員の皆様方にご提案している「特別セット直販」を新たにご提案させていただいています。このリストの本は、これまで私たちが出版してきた本の一部ですが、このほとんどは私が企画・編集したもので、果たして「一、二年で忘れ去られることのない本」があるのか、皆様、いかがでしょうか? 古い本も新しい本もあり、また左右硬軟雑多に渡りますが、お目に留まった本がございましたら、この機会にぜひ(何冊でも)ご購読お願いいたします。(詳しくは『紙の爆弾』8月号に同封している案内をご覧ください)

予想される猛暑を乗り越え、清々しい気分で秋を迎えましょう!

(7月2日記。別掲写真は小山弘健先生と遺稿『戦前日本マルクス主義と軍事科学』。『紙の爆弾』8月号に同封している文章から)

『紙の爆弾』2026年8月号
A5判 130頁 定価880円(税込み)
2026年7月7日発売

護憲のための理論武装「自衛隊明記」改憲で現実に起きること 伊藤真
選挙違反の政権が憲法を壊す 戦後最悪の宰相を生んだ日本政治の根本欠陥 門脇翔平
防衛費倍増で防衛産業は衰退する 日本の「防衛強化」は机上の空論 清谷信一
検察官が関与する政府案 再審法改正は「誰のため」か 足立昌勝
誰もが知っていて、語らない 米AI企業に主権を明け渡した日本 昼間たかし
巨人・阿部慎之助逮捕事件に見た児童相談所「虐待対応」の現実 たかさん
自民党議員が「中傷動画問題」に沈黙する理由 片岡亮
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」前編 警察はなぜ冤罪を創作できるのか
世界を牛耳る超富裕層を倒す11の方法 エマニュエル・パストリッチ
米国新植民地主義を超克する極東の安全保障を確立せよ 木村三浩
LGBT問題の現在 転向療法禁止政策が抱える「観点差別」三浦俊彦
米中で相次ぐ科学者の死亡・失踪事件 早見慶子
成年後見制度という宿痾 高齢者よ高貴たれ、後期高齢者よ不屈たれ! 鈴木愼哉
痛快伝奇説話 吏犯之太子(りぼんのたいし) 本折竿長

〈連載〉
例の現場
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
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『紙の爆弾』8月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

高市早苗首相の中傷動画と、一連の本丸とみられるサナエトークンという問題について、世論・国会で炎上が続いています。サナエトークンが本来「自民コイン」を目指してモデルがつくられたこと、それがなぜ「サナエトークン」として失敗したのか、さらに「中傷動画」とサナエトークンの関係について、自民党関係者の証言をもとに解説した本誌7月号の片岡亮氏記事は、SNSで数十万のインプレッションを稼ぐほど注目されました。

一方、今月号の本誌記事が指摘しているように、これを大衆のガス抜きにしてはならない、という警戒心を持ち続ける必要を感じます。中傷動画問題は、なにより選挙違反に関わる問題であり、選挙違反でつくられた政権に正統性はない、まして憲法改正を議論する資格などない、というのがまず一点。さらに、そんな政権がなぜ生まれたのかを考える必要があります。「高市首相を見れば、小泉進次郎防衛大臣がましに見える。防衛大臣に据えたこと自体、保守層へのイメージ戦略の一環ではないか」という推測は、あながち外れていないのではないでしょうか。

同時に、憲法を変えさせないために、私たち自身が情報と理論を得る必要があります。護憲のための「理論武装」の方法を、伊藤塾塾長・伊藤真弁護士が解説。また防衛予算を倍増させても、まったく日本の産業に寄与しないどころか、かえって弱体化させてしまうことを、軍事ジャーナリストの清谷信一氏が解説しています。いずれの記事も、多くの方に読んでいただき、共有してほしい内容です。

もはや高市政権は駄目だ、というのは自明の事実といえます。なぜ、そんな首相が誕生したのかというのは、7月号で孫崎享氏が詳細に解説しているところですが、私たちは、そもそもルールを権力側に握られていることを認識することから、スタートする必要があります。それが、辺野古基地建設が止まらず、原発がなくならない理由でもあります。さらに、戦争と戦争煽りで海外の軍事企業が、感染症騒ぎで製薬会社が、個人情報を掌握してテック企業が設ける仕組みがあります。その仕組みに加担しないことを提言しているのが、本誌執筆者の共通項です。

さらに「超富裕層を倒す」と言い切った今月号のパストリッチ氏の指摘に、学ぶところは多いです。それはとても大変な作業で、かつ不祥事追及のように、わかりやすいものではなくとも、門脇翔平氏は、選挙制度を通して変革のために実際に動いている。植草一秀氏は、あるべき社会を提案しています。パストリッチ氏とは、あらためて議論を深めたいと思っています。

ほか8月号では、アメリカのAI企業に「デジタル主権」を明け渡した日本の現状、再審法改正が冤罪防止につながらない原因、加えて植草氏が実体験をひきつつ「警察はなぜ冤罪をつくるのか」に迫ります。マスコミ報道では触れられない児童相談所の実態、成年後見制度の法改正がスルーする同制度の根本的問題、米中で相次ぐ科学者の死亡・失踪事件など今月号も独自の視点からのレポートをお届けします。

『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年8月号
A5判 130頁 定価880円(税込み)
2026年7月7日発売

護憲のための理論武装「自衛隊明記」改憲で現実に起きること 伊藤真
選挙違反の政権が憲法を壊す 戦後最悪の宰相を生んだ日本政治の根本欠陥 門脇翔平
防衛費倍増で防衛産業は衰退する 日本の「防衛強化」は机上の空論 清谷信一
検察官が関与する政府案 再審法改正は「誰のため」か 足立昌勝
誰もが知っていて、語らない 米AI企業に主権を明け渡した日本 昼間たかし
巨人・阿部慎之助逮捕事件に見た児童相談所「虐待対応」の現実 たかさん
自民党議員が「中傷動画問題」に沈黙する理由 片岡亮
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」前編 警察はなぜ冤罪を創作できるのか
世界を牛耳る超富裕層を倒す11の方法 エマニュエル・パストリッチ
米国新植民地主義を超克する極東の安全保障を確立せよ 木村三浩
LGBT問題の現在 転向療法禁止政策が抱える「観点差別」三浦俊彦
米中で相次ぐ科学者の死亡・失踪事件 早見慶子
成年後見制度という宿痾 高齢者よ高貴たれ、後期高齢者よ不屈たれ! 鈴木愼哉
痛快伝奇説話 吏犯之太子(りぼんのたいし) 本折竿長

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高市早苗首相の最大の嘘

孫崎享(紙の爆弾2026年7月号掲載)

「高市早苗首相は嘘つきである」ということが、にわかに大きな話題となっています。筆頭は、本人が語ってきた「米国連邦議会立法調査官」という経歴が事実ではなく、コングレッショナル・フェロー(研修生)どころかインターンにすぎなかったことでしょう。過去の雑誌のインタビューで、アメリカの下院議員の事務所に入る時に、「自分は軍事問題の権威だって嘘を書いたの」と自慢げに告白したことも明らかになっています。

政治家としても、総務相時代の放送法解釈変更問題をめぐる行政文書について「もし捏造でなければ大臣も議員も辞職する」と国会で発言しながら辞めなかったことや、旧統一教会との関係についても論理矛盾が指摘されています。

そのような中で、国民に対する「最大の嘘」といえるのが、「安倍晋三元首相の継承者である」という、彼女が掲げる根本的な政治理念です。

◆安倍外交と高市外交

高市首相は常々、安倍首相を「政治の師」と語り、仕事始めの1月5日に伊勢神宮を参拝した時には、遺影を胸に抱えた姿も話題になりました。ただ、その遺影が安っぽいクリアファイルに入れられていたことが物議をかもしています。

それでも、彼女は〝安倍後継〞を自身の軸としたことによって非常に明確な政治的立場を示し、自民党内で信頼を得て、国民からも支持を得る基盤となりました。
 しかし、実際に高市首相が行なってきた政治を見ると、疑問に思わざるをえません。

安倍元首相が2020年8月に辞任するまで、もっとも重視していた政治テーマの一つが外交です。中でも対ロシアに力を入れていたことは、首相として27回もプーチン大統領と直接会談を行なったことから明らかです。

辞任後の2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まりました。その時にまず安倍氏が何を言ったかということから、分析を始めてみたいと思います。

日本では、このウクライナ戦争は「ロシアが悪い」の一辺倒であるためにあまり注目されなかったのですが、開戦3日後の2月27日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に出演した安倍氏は、次のように述べています。

「プーチンの意図はNATO(北大西洋条約機構)の拡大、それがウクライナに拡大するということは絶対に許さない、東部2州の論理でいえば、かつてボスニア・ヘルツェゴビナやコソボが分離・独立した際には西側が擁護したではないか。その西側の論理をプーチンが使おうとしているではないか」

「米ロ関係を語る時に(プーチン大統領は)基本的に米国に不信感を持っている。NATOを拡大しないことになっているのにどんどん拡大している。ポーランドにTHAADミサイルまで配備した。プーチンとしては領土的野心ということではなくて、ロシアの防衛、安全の確保という観点から行動を起こしていることと思います」

もちろん、安倍元首相を再評価しようというのではありません。しかし、彼がどう思っていたかを正確に把握する必要があると思います。

さらに興味深いことに、英「エコノミスト」が同年5月に安倍氏のインタビュー記事を掲載し、7月8日の安倍氏暗殺直後にも再掲しました。その中で安倍氏はこう述べました。

「侵略前、彼ら(ロシア)がウクライナを包囲していたとき、戦争を回避することは可能だったかもしれません。ゼレンスキー(ウクライナ大統領)が、彼の国がNATOに加盟しないことを約束し、東部の2州に高度な自治権を与えることは可能でした」

つまり、安倍氏は一方的にロシアを糾弾するのではなく、ロシアの言い分も我々は理解すべきだというポジションをとったわけです。

一方、高市首相はどうだったか。当時、自民党の政調会長だった彼女は、安倍氏が2月27日にフジテレビで発言した翌日の自民党役員会で、次のように発言しています。

「ロシアによるウクライナ侵攻に関し、今回の暴挙が高い代償を伴うことを国際社会と結束して示すことが必要です。昨日、(岸田文雄)総理が発表した制裁措置は大きな一歩です。あわせて、ウクライナに対する支援も表明していただき感謝申し上げます」

さらに、関連会合でも「国際社会と連携して対露制裁をとことん強めるべき」と強調しました。

したがって、「私は安倍元首相の一番の継承者」と自称する高市首相が、安倍氏の主張を完全否定するような、真逆の立場をとったのです。

いったいなぜなのか。ことは安倍氏の存命中です。高市氏に対し、安倍氏以上に影響を与える者がいたのかという疑問がわきます。ところが当時を見渡すと、安倍氏以上に力を持っている政治家は日本にいません。では、安倍氏が言ったことを覆せる政治家が、どこかにいたのか。

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