京大「タテカン」撤去と朝鮮半島和平のコントラスト

 
2018年4月28日付毎日新聞

〈京都大は5月1日から、本部がある吉田キャンパス(京都市左京区)の周囲に学生が設置した立て看板の規制に乗り出す。京都市から昨年10月、屋外広告の条例に違反するとして文書で行政指導を受け、構内の指定場所以外は設置させない方針に転換した。「タテカン」は学生文化として許容されてきた側面もあり、「形式的」「自由の学風に反する」と反発の声も上がる。〉(2018年4月28日付毎日新聞

いよいよ、その時がやってきたようだ。京都大学が大学の周囲に向けて、学生が並べている「立て看板」(通称「タテカン」)を京都市の条例を根拠に、排除の動きに出るらしい。月に一度京大の様子は通りすがりに観察しているが、今月の初頭までさしたる変化はなかった。さて、5月1日以降はどうなるのであろうか。この問題は本コラム並びに鹿砦社LIBRARYの拙著『大暗黒時代の大学』のなかでも比較的詳しく取り上げている。興味おありの方はご覧いただければ幸いだ。

◆「タテカン」規制で消滅する学生の自由

どうして何十年も前から、常時そこにあった「立て看板」を京都市は「屋外広告の条例」を根拠に問題にしだしたのか? それは京大の当局が、すでに大幅に後退している「学生の自由」の完全消滅を目指し、管理体制の強化を図っているのが根底の原因である。京都大学には熊野寮、吉田寮といった「自治寮」があるが、京大当局は吉田寮に対して、一方的に「新たな寮生募集の禁止」と寮の一部改築を通達している。これも、学生自治の拠点である「自治寮」を潰したいとの本音の現れだ。

そして、要注意なのは京大当局が「学生自治」をテーマや問題にする立て看板だけではなく、あまねく学生が作成した「立て看板」を規制しようとしていることだ。毎日新聞の記事にある通り、京大周辺には様々な団体の立て看板が林立しているが、そのほとんどは演劇や、落語サークルだったり、体育系クラブの立て看板で、政治色を帯びたものは全体の1割にも満たない。しかし、それすらも京大当局にとっては「容認しがたい」のだろう。

「しかし市は、コンビニエンスストアなどの看板も場所によって落ち着いた色調に変えてもらうなど、古都の景観保護に力を入れており、『京大も例外ではない。市内の他の大学で違反はない』と説明する」と真顔で語っている。

京都市の役人にとっては、商業施設の広告と大学の学生による表現活動の違いが、まったく理解できないようだ。コンビニやマクドナルドは「商売」だろうが! だから世界中で京都市だけがマクドナルドは看板の色を変えたんじゃなかったのか。学生の表現活動と企業の広告との区別がつかない。もうこんな低レベルな行政が京都市ではまかり通るようになってしまったのだ。

 
朝鮮半島地図

◆「朝鮮半島の非核化」を喜ばない隣国の歪み

時あたかもお隣の朝鮮半島では、多くの人が予想だにしなかった「平和」に向けての流れが勢いを増している。「〈京大〉「立て看板」撤去へ 市「条例違反」で指定外ダメ」との毎日新聞記事が配信された前日には、南北の首脳会談が板門店で行われ、韓国のテレビは1日中その様子を生中継し、「平和」、「戦争を終わらせる」との言葉が伝えられるたびに市民は喜びに沸いた。朝鮮が独裁国家であろうと、過去にあれこれ問題を起こしていようと、「朝鮮半島の非核化」は慶賀に堪えないニュースであり、それが実現し、さらには南北首脳が統一を指向する同意に至ったことは、とてつもなく喜ばしい報せだ。

他方日本では、「自由な学風」といわれた(あえて過去形で書く)京大で、学生自治の最終破壊が画策されている。大学法人化して以降の国立大学や、公立大学では「学問」よりも、「経営(経済)」のが高い価値を占めるようになった。これからますますその傾向は強まるだろう。文科省は既に私立大学の破綻を見込んで、地方ごとに国立大学法人を中心とした大学のブロック化(大学の合併)を進める案を表明している。

そこには「学問」とはいかにあるべきか、「大学の果たすべき本質的な社会的な役割は何か」といった哲学は微塵もない。大学を「企業」同様に考えてその「経営」の効率化だけを目指そうとしている。それが文科省であり、多くの大学の今日の姿だ。

それにしても世の中には「金では買えない」価値があることを、京大当局や、京都市は気が付かないのだろうか。京都は国内外からの観光客でにぎわっているけれども、京都の歴史や遺産は「金」で創造できるだろうか。大学が狭い地盆地に集まる、京都独自の「学生文化」は経済活動に置き換えることができるだろうか。どれだけの頭脳を京都大学が輩出してきたか、それの背景にはどのような学風があったのか、を一顧だにしない京大執行部や京都市は、「経営者」としても失格であることが、近く証明されるだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)
『NO NUKES voice』15号〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

NKB VS MA日本キック 禁断の対決! 闘魂シリーズvol.2

蹴りにインパクトがあった井原浩之の右ミドルキックが西村清吾にヒット
西村清吾のパンチの距離での攻勢が目立った

NKB(日本キックボクシング連盟)とMA日本キック(マーシャルアーツ日本キックボクシング連盟)とのチャンピオン交流戦、西村清吾vs井原浩之戦がメインイベント。

初回の探り合いから蹴り中心に前に出る井原に対し、パンチ、ヒジを合わせる西村。互いの決定打には至らないが、井原は接近すればヒザ蹴りに持ち込みたい体勢。そこから自分のペースに引き込めない井原は攻め難そうながらミドルキックは勢いがいい。西村のパンチとヒジの距離感は隙を突くように打ち攻勢が目立つ。ラストラウンドは疲れが見える両者。それでも強いヒットを狙って打ち合う両者。判定は分かれたが僅差で西村が勝利。

西村清吾の顔面を押し付けるような右ストレート

◆棚橋賢二郎vs稲葉裕哉

長身を利した蹴りと、階級も上の稲葉には棚橋のいつもの豪腕パンチが決まり難い。第2ラウンドに接近戦での打ち合いから偶然のバッティングにより稲葉が右眉下をカット。第3ラウンドには棚橋の左フックで稲葉がダウン。第4ラウンドには負傷箇所の悪化で試合を止められ、最初の負傷原因である偶然のバッティングにより負傷判定となり、ノックアウトを逃した棚橋は不完全燃焼の勝利。

棚橋賢二郎のパンチ連打で稲葉裕哉を攻める

◆野村怜央vs外川夏樹

初回からの両者のパンチと多彩な蹴りの積極的な攻防から第3ラウンド目には外川がスタミナ切れか、やや戦力が弱まり、勢いづく野村の右フックかヒジがヒットし外川がダウン。立ち上がっても劣勢から巻き返せず野村のパンチの攻勢が続き、再び右ヒジ打ちで外川は2度目のダウン。陣営よりタオル投入による棄権により、野村のノックアウト勝利となる。

外川夏樹vs野村怜央。野村怜央の右ヒジ打ちがクリーンヒットした瞬間

◆パントリー杉並vsオッカム山際

両者のパンチ中心のアグレッシブな打ち合いが続く中、若さと勝利数のキャリアで優るパントリーが打ち勝つ展開に進み、山際はダメージとスタミナ切れから下がり気味。次のラウンドがあるならばパントリーがノックアウトに繋げたと思える圧倒気味に終了。

オッカム山際vsパントリー杉並。勢いが増すパントリー杉並のラッシュ
NKBの面子を保った西村清吾

◎闘魂シリーズvol.2
4月21日(土) 後楽園ホール17:30~20:27
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第10試合 ミドル級5回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM.KOK/72.5kg)
VS
MA日本ミドル級チャンピオン.井原浩之(Studio-K/72.05kg)
勝者:西村清吾 / 判定2-1 / 主審:前田仁
副審:川上49-48. 亀川48-50. 佐藤友章50-48

勝者 棚橋賢二郎

◆第9試合 64.5kg契約 5回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/64.05kg)
VS
NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/64.5kg)
勝者:棚橋賢二郎 / 負傷判定3-0 / TD 4R 1:16
主審:鈴木義和
副審:佐藤友章40-38. 亀川40-37. 前田40-37

勝者 野村怜央

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NKBライト級4位.野村怜央(TEAM.KOK/64.0kg)
VS
JKIライト級6位.外川夏樹(MWS/64.0kg)
勝者:野村怜央 / KO 3R 1:45 / 右ヒジ打ち、カウント中のタオル投入
主審:川上伸

勝者 パントリー杉並

◆第7試合 63.0kg契約3回戦

NKBライト5位.パントリー杉並(杉並/62.5kg)
VS
オッカム山際(MKH/62.35kg)
勝者:パントリー杉並 / 判定3-0 / 主審:亀川明史
副審:鈴木30-29. 佐藤友章30-28. 川上30-28

◆第6試合 ミドル級3回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館/72.45kg)
VS
同級4位.釼田昌弘(テツ/72.57kg)
勝者:田村聖 / 判定3-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:鈴木30-27. 川上30-26. 前田30-27

◆第5試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級4位.チャン・シー(SQUARE-UP/66.68kg)
VS
滝口幸成(WSR・F幕張/66.05kg)
引分け 0-1 / 主審:佐藤友章
副審:鈴木30-30. 佐藤彰彦28-30. 亀川30-30

◆第4試合 フェザー級3回戦

岩田行央(大塚/57.1kg)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/56.8kg)
勝者:海老原竜二 / KO 1R 2:24 / ハイキック、カウント中のタオル投入
主審:川上伸

◆第3試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM.KOK/60.95kg)vs誠太(アウルスポーツ/60.95kg)
勝者:小笠原裕史 / 判定3-0 / 主審:佐藤彰彦
副審:亀川30-27. 前田30-29. 川上30-29

◆第2試合 バンタム級3回戦

ノーマーシー・カズ(テツ/52.8kg)vs北田竜汰(光/52.0kg)
勝者:ノーマーシー・カズ / KO 1R 1:47 / テンカウント
主審:鈴木義和

◆第1試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ/56.95kg)vs孝則(総合格闘技TRIAL/57.15kg)
勝者:山本太一 / TKO 1R 2:38 / カウント中のレフェリーストップ
主審:亀川明史

《取材戦記》

「禁断の対決が実現!」という見出しが目立ったプログラムの文言。

90年代の、団体が細分化する前なら興味深い団体交流となるところ、現在も存在する両団体でも、33年前の分裂当時から存在する加盟ジムは非常に少ないでしょう。当時の加盟ジムは、その後、この両団体以外にまで分かれて行ったジムや辞めていった関係者が多いということです。戦った西村清吾と井原浩之にとってはチャンピオン対決として勝利を目指すも、33年前の事情など“何のことやら”でしょう。それでも他団体交流戦も増えてきた日本キック連盟は、今後も更に“禁断の対決”を実現して話題提供に力を注いで欲しいところ。時代の流れは進み、若い世代の力に期待が掛かっています。

MA日本同級チャンピオンを下した西村清吾はまた一歩前進。35歳デビューの現在39歳で、10戦7勝(1KO)2敗1分となりました。

大阪での次回興行は、4月29日(日)大阪市立旭区民センターで14:30よりNKジム主催「闘魂シリーズ ヤングファイトZ-1 Carnival」が開催されます。

6月16日(土)後楽園ホールでは17:15より「闘魂シリーズvol.3」が開催され、ここでの興味深いNKBフェザー級王座決定戦では昨年12月、高橋聖人の蹴りのペースが続く中、右フック一発で勝利した安田浩昭(SQUARE-UP)との再戦となります。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する

李信恵からM君リンチ事件本販売差し止め等を求める「反訴状」が鹿砦社に届く

ツイッター上で李信恵被告による、「鹿砦社はクソ」、「クソ鹿砦社」などと、多量な誹謗中傷が止まらず、本コラムで取材班ならびに松岡が数度にわたり「品のない言葉遣い」を止めるよう李信恵被告に注意を促したが、それでも罵詈雑言が止まらなかったため、鹿砦社は仕方なく李信恵被告を相手取り名誉毀損損害賠償請求を大阪地裁に起こした(2017年9月28日)ことは、本コラム並びに、『カウンターと暴力の病理』でもご紹介した。

 
『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(2016年7月刊)

同訴訟の前回期日(3月16日)に代理人の上瀧浩子弁護士から「反訴の意思」がある、旨の発言があった。どのような反訴が行われるのかを、多忙なかたわら待っていると、2018年4月17日付け(受付印は18日)の「反訴状」が過日(4月25日)鹿砦社に届けられた。「ないもの」をあたかも「あったように」印象操作する魔術師、李信恵被告がどのような「反訴」を打ってくるのか? 鹿砦社と取材班はその「反訴」内容を半ば「楽しみに」待っていた。

ただし、強調しておかなければならないのは、そもそもこの提訴は李信恵被告による、鹿砦社に対する誹謗中傷や、根拠なき言いがかりが発端となり、単なる名誉毀損だけではなく、鹿砦社の業務自体に悪影響が出る兆しが見えはじめ、放置することができなくなったことが背景にあることだ。

1つの事柄をめぐって、100人には100通りの解釈が成立しよう。それが思想や言論の自由というものだ。しかしながら「ない」ことを「ある」といってはならない。それは「ある」ことを「ない」というに等しく大きな誤謬であるにとどまらず、人や団体を深く傷つける行為につながる。歴史修正主義者の言説などがそうだ。「南京大虐殺はなかった」、「日本は合法的に朝鮮半島を併合した」などとの主張は、歴史の事実に逆らうもので、そこで生きた人びとの営為を無化しその精神を殺してしまうものである。

『反差別と暴力の正体 暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(2016年11月刊)

李信恵被告の発信にも同様に、あたかも鹿砦社が「李信恵被告の仕事の妨害をしている」、あるいは「健康を害する原因を作っている」かのごとき言いがかりも散見された。しかしながら事実に立脚していなくとも、このような「物言い」はそれ自体が独り歩きしてしまい、鹿砦社に対するマイナスの情報やイメージとして流布される。ことに「差別の被害者」としてマスコミに頻繁に取り上げられる、李信恵被告からの発信は、無名な市民の発信とは訴求力において比較にならぬ力を持つ。

そのため、致し方なく鹿砦社は業務への悪影響と、継続する誹謗中傷を止めるために提訴を起こす以外に選択肢がなかったのである。事実、提訴以降李信恵被告による鹿砦社に対する誹謗中傷、罵詈雑言はすっかり影を潜めた。その点において提訴は判決を待たずとも、一定の「抑止効果」をすでに発揮しているといえよう。

そこにもってきての李信被側からの「反訴」である。以下請求の趣旨を掲載するが請求では、まず、550万円を払えと求めている。そして鹿砦社がこれまでに発刊した『ヘイトと暴力の連鎖』、『反差別と暴力の正体』、『人権と暴力の深層』、『カウンターと暴力の病理』を「頒布販売してはならない」と実質上の販売差し止めをもとめている。また本コラムに掲載した過去の記事の削除も要求している。

概ね予想の範囲内ではあったが、『ヘイトと暴力の連鎖』、『反差別と暴力の正体』、『人権と暴力の深層』、『カウンターと暴力の病理』を「頒布販売してはならない」との請求には、正直失笑を禁じ得なかった。すでに発売されてから1年以上のものも含み4冊を「販売するな!」、「広めるな!」との主張は李信恵被告や、代理人、神原元弁護士らしい、乱暴な請求ではあるが、もし本気で「販売差し止め」を求めるのであれば、どうして「仮処分」の申立てを行わなかったのだ?

『人権と暴力の深層 カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い』(2017年5月刊)

少々解説すると、一般の裁判は判決が出るまでに相応の時間がかかる。鹿砦社が李信恵被告を訴えた裁判も判決が出るのは、まだかなり先になるだろう。これが民事訴訟の標準である。一方のっぴきならない緊急性があるときは「仮処分」を裁判所に申し立てて、それが認められれば、極めて短時間で司法により「禁止」や「差し止め」の命令が下されることがある。鹿砦社自身過去に不当と思われる「仮処分」による「出版差し止め」を食らった経験があるし、大手週刊誌などでも「出版差し止め」の仮処分が認められ、発刊が出来なかった事例は過去にある。

しかし、出版差し止め仮処分を申し立てるには、強度の緊急性と高度の違法性を要する理由がなければならない。仮処分が認められなければ、引き続き同じ内容を争う「本訴」では不利に作用することもある。

李信恵被告側は、鹿砦社が発刊した上記4冊に、名誉毀損や事実無根の記載があれば、堂々と出版差し止め仮処分を申し立てる選択肢もあったろうに、そうはしていない。そして、その根拠は丁寧にも「反訴状」に記載されている。いずれの4冊も李信恵に言及している部分のみを理由として、「頒布販売の禁止」を求めている。

法的な知識に取材班は詳しくないが、李信恵側が主張する「頒布販売の禁止」のを求める根拠は、いかにも希薄である。弁護士に相談するまでもなく、手元に反論材料は山積している。反論材料を多すぎて、整理するのに手間がかかるほどだ。

『カウンターと暴力の病理 反差別、人権、そして大学院生リンチ事件』[特別付録]リンチ音声記録CD(2017年12月刊)

そもそも『鶴橋安寧』を出版以降、李信恵被告による、まとまった文章による主張を目にしていない(どこかにあるのかもしれないが、鹿砦社ならびに取材班は見つけることができていない)。李信恵被告は元々ライターなのであるから、自身に疑義が向けられている「事件」についてもツイッターなどという、安易な方法ではなく、自身のまとまった見解を明らかにすればよいのではないか。売れっ子の李信恵被告が、原稿を発表したいと声をかければ、幾らでもそれに応じる出版社はあろう(取材班の多くがうらやむほど……)。

だが待て! 先日のM君が李信恵被告ら5名を訴えた裁判の判決では、M君が勝訴はしたものの、一般常識からすれば考えられない、「屁理屈」のような論が展開され、多くの主張が認められなかった。あろうことか同一個人名の誤表記が3度も判決文にはあった。「裁判は水物」だ。「え、嘘だ!」というような判決が、過去あまた積み重なっている事実を無視はできない。

可能性は低いが、万が一「反訴」が認められれば、『ヘイトと暴力の連鎖』、『反差別と暴力の正体』、『人権と暴力の深層』、『カウンターと暴力の病理』が発売禁止になり、これ以上読者のお手元に届かなくなる可能性もある。

万が一まだ上記4冊をお読みでない読者の方がおられたら、急いでお買い求めいただくことをお勧めする。まだ幸い在庫はある。が、「反訴」が認められ「頒布販売」が禁止になれば、これ以上お分けすることができなくなるかもしれない。鹿砦社の対李信恵裁判及び反訴にご注目を頂きたい。


◎[参考音声]M君リンチ事件の音声記録(『カウンターと暴力の病理』特別付録CDより)

いまだに「リンチはなかった」などと平然と語る連中がいる──。(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

(鹿砦社特別取材班)

覚えていますか? 痴漢やレイプ、少女ヌードにまで寛容だった少し前の日本

女性記者に対するセクハラ発言の疑惑を報道された財務省の事務次官が辞任した。事務次官本人は疑惑を否定しているが、今のご時世、セクハラ発言は官僚のトップの首が飛ぶような重罪だということだ。

そんな中、私はふと自分が20代、30代だった頃のことを思い出し、「少し前の日本は今では信じられないくらい様々なことに寛容だったなあ…」と感慨にふけってしまった。

というのも、「今やればアウトだが、少し前なら全然OKだった」ということは、歩きタバコや犬の放し飼いなど色々あるが、ワイセツ関係のことに目を向けても、痴漢やレイプ、少女のヌードに至るまで、かつての日本は様々なことに驚くほど寛容だったからである。

◆レイプを〈悪〉として描いていなかった日本映画

 
東映ビデオのVシネマ「痴漢日記」

たとえば、痴漢。今は卑劣な行為の代名詞のように思われているが、少し前まではそうではなかった。もちろん痴漢は昔から犯罪ではあったが、東映ビデオが製作していたVシネマの「痴漢日記」や「新痴漢日記」のシリーズには、全国放送のテレビドラマに出るような有名俳優が普通に出演していたものである。それはきっと痴漢を肯定的に描いた作品に出演しても、イメージが悪くなることはなかったからだろう。

レイプもそうだ。現在、15歳の時に輪姦された女性の実話が映画化された「私は絶対許さない」が公開中だが、今はレイプを映画の題材にする場合、このように絶対悪として描いた社会派作品ではないと許されないのではないかと思われる。

しかし、ひと昔前の日本映画では、田中裕子主演の「ザ・レイプ」という社会派の作品もあるにはあったが、むしろレイプを悪と認識していないような描き方をした作品のほうが圧倒的に多かった。たとえば、「極道の妻たち」シリーズや「鬼龍院花子の生涯」、「瀬戸内少年野球団」などのことを私は言っているのだが、「ああ、そういえば・・・」と思い出された方も少なくないはずだ。

◆宮沢りえの『サンタフェ』は氷山の一角

 
宮沢りえの写真集『サンタフェ(Santa Fe)』(1991年11月朝日出版社)。撮影は篠山紀信。発売当時、宮沢は18歳だった

さらに私が思い出すのは、つい少し前の日本では、街中で小さな女の子の裸を見かける機会も決して珍しくなかったことだ。私が中学生くらいの頃には、コンビニで小さな女の子が裸になっているようなビデオが当たり前のように棚に並んでいたものだ。また、テレビドラマや映画で子役の女の子が全裸で入浴しているシーンもちらほら見かけたものだ。

数年前に児童ポルノが単純所持も処罰対象になった際、宮沢りえが10代の頃に撮影されたヌード写真集『サンタフェ』を所持していた場合はどうなるか・・・・・・ということが話題になったが、あれは「氷山の一角」だ。昔はむしろ、18歳未満の女優やアイドルがヌード写真集を出したり、映画で脱いだりするのは当たり前だったからだ(ちなみに宮沢りえがサンタフェの撮影を行ったのは18歳の時だったそうだ)。

名前を出すことは自主規制しておくが、現在50代後半以上の有名女優たちの中には、高校生くらいの年齢の頃に映画で脱いでいる人は少なくない。今は逆に30代で水着のグラビアをやっている女性タレントが珍しくない時代だが、世の中は随分変わったものである。

くだんの財務省の事務次官は、女性記者に「胸触っていい?」とか「手縛っていい?」などというセクハラ発言をした疑惑を報じられ、辞任せざるをえなくなったが、この疑惑が事実だという前提に立てば、「やむをえない」と思うのが今の日本人の一般的な倫理感覚だろう。

しかし、80年代や90年代くらいの日本人がもしも今の日本にタイムスリップしてきたら、「なぜ、それくらいで?」と首をかしげるのではないだろうか。あるいは、逆に今の若者が80年代、90年代にタイムスリップすれば、街中で普通に少女のヌードをみかける様子を見て、日本人のモラルの低さに驚くのではないだろうか。

霞が関のセクハラ騒動を眺めつつ、ふとそんなことを考えた

▼片岡健(かたおか・けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

南北首脳会談と存在感ゼロの安倍外交 アメリカにお願いするだけなのか?

 
2018年4月16日付聯合ニュースより

明日27日に南北首脳会談が行なわれ、史上初の米朝首脳会談も日程にのぼる。首相案件のモリカケ疑惑、財務省次官のセクハラとその居直り辞任、そして防衛省の日報隠ぺい事件と、満身創痍のなか渡米して、トランプ大統領との親密さをアピールした安倍総理だが、かえって国際政治での存在感のなさを露呈してしまった感がある。北朝鮮拉致問題を米朝首脳会談で議題にしてほしいという以外に、何らの成果もみられないからである。日米間で懸案となっているのは、辺野古新基地建設問題とそれに付随するヘリコプターの相次ぐ墜落事故、あるいは日米地位協定の改善のはずだが、議論すらできなかったのである。

アメリカ大統領と仲が良い、いっしょにゴルフをする、別荘で夫婦ともども会食をした。したがって日米同盟は緊密なものとなった、米朝会談にさいしてのお願いもした。これがすべてであって、逆に日米間貿易では二か国協定を強いられる始末なのだ。これで国益を主張した成果と言えるのだろうか。さらにいえば、このかんの北朝鮮の対話路線による東アジアの外交環境の変化に、わが国は何ら積極的な提案ができないばかりか、まったくのアメリカ頼みなのである。そもそもわが国に、国際社会に対応する政権と呼べるものがあるのか、疑わしくなってくるというものだ。

それにしても、恐るべきは北朝鮮・金正恩委員長の外交攻勢である。この6年間の核開発・ミサイル実験のすべてが、雪崩を打つような対話路線・外交攻勢のためにあったのだとしたら、底知れない周到さを感じさせる。思いつきだとしたら、天才的な政治センスである。米中超大国を動かし、世界を驚嘆させているのだから――。

中央委員会総会の発言では、朝鮮戦争の終結・平和条約の締結まで視野に入れているのだ。たしかに過去の北朝鮮の瀬戸際外交をみれば、今回も偽装された対話路線なのかもしれないと、われわれに思わせる。にもかかわらず、韓国の文政権はもろ手を挙げ首脳会談を歓迎し、トランプ大統領も中間選挙を見すえた点数稼ぎの面があるにせよ、これまた大歓迎を表明している。

とりわけ、北朝鮮の核実験場の閉鎖およびミサイル実験の停止を、韓国とアメリカは大歓迎している。しかるに、わが安倍総理はといえば、トランプのツイッターの「大歓迎」「大きな前進だ」を受けて「北の方針を評価する」と、これまた追随としか思えない反応で受け容れたのである。それ以外は「制裁の継続」という、何もしない方針なのである。何か揺さぶりをかけるとか、対話を申し入れるとか、もっと策があってもよいはずではないか。

22日の拉致被害者家族会が都内でひらいた国民大集会に出席して「南北、そして米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するよう私が司令塔となって全力で取り組んでいく」と決意を述べたが、その内実がトランプへのお願いに過ぎなかったことも、安倍においては恥じるところがない。

安倍は「この問題を解決するために、ぜひとも協力をしてもらいたい。いかにご家族が苦しい思いをしているかということを申し上げました。トランプ大統領も身を乗り出して、私の目を見ながら真剣に聞いてくれました。そして、米朝首脳会談で、拉致問題を提起する。ベストを尽くすと力強く約束をしてくれました」と明言したが、結果が得られなかったときは、トランプに責任を問うのであろうか。

さらに「今後一層、日米で緊密に連携しながら、すべての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく考えであります。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とも先月16日に電話会談を行い、拉致問題の解決に向けて協力していくことで一致しております。また先般来日をした(中国の)王毅国務委員に対し、私自ら中朝間でのやり取りにおいて、拉致問題を取り上げるように働きかけを行ったところであります」とは言うものの、北朝鮮との対話をする気はないのである。安倍は以下のように言う。

「北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。拉致被害者の方々の帰国につながらなければなりません。そうした観点から、引き続き北朝鮮に対し、そして中国やロシアに対しても拉致問題の早期解決に向けて協力を要請し、すべての拉致被害者の一日も早い帰国の実現に向け、あらゆる施策を講じてまいります」と、要するに「あらゆる施策」のうちに、北との直接対話は含まれてないのだ。まことに不思議というほかはない。

極めつけはこうだ。「この日米首脳会談の共同記者会見においては、米国でもCNN等で全国にライブで放映されるわけであります。そしてそれは北朝鮮の人々も見ている。まさに世界に向かって米国の大統領がこの問題を解決をする、被害者を家族のもとに返すということを約束をしてくれたと思います」すべてはトランプ頼みなのだ。そして「CNNを北朝鮮の人々が見ている」などと、妄想まで飛び出す始末だ。政治は結果である。ここで結果を出せなかった場合、安倍はもはや後継にバトンを渡すべきであろう。

横山茂彦(よこやましげひこ)著述業・雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社ライブラリー/5月11日発売)。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する

《検証報告》冤罪疑義残る和歌山カレー事件とフジテレビの虚偽報道〈後編〉

昨年12月27日にフジテレビが放送した『報道スクープSP 激!世紀の大事件V』という番組では、和歌山カレー事件で死刑判決を受けた林眞須美死刑囚の長男に取材したうえで「林眞須美の長男が真相告白」と銘打った放送がなされた。

しかし、その放送内容は事実関係に間違いが多いばかりか、虚偽の事実を担造したとみなすほかない場面や、事実を歪める編集がなされたとみなすほかない場面も散見された。

前編では、この番組の和歌山カレー事件に関する放送の6つの問題場面のうち、4つについて検証結果を報告した。後編では、残り2つの問題場面とフジテレビ側の主張について報告する。

◆問題場面5 長男が林死刑囚を犯人視し、動機を知りたがっていると思わせる編集

5つ目の問題場面は、番組の放送が始まって38分を過ぎたあたりで現れる。それは次のような場面だ。

夜の公園でインタビューを受けている長男。「それにしても長男はなぜ私たちの取材を受けてくれたのか」というナレーションに続き、次のような長男の発言が流される。

「ま、裁判の経過を見た時、動機だったり、あのお、そういう部分がちょっとこお、ちゃんと解明されてなくて、真実として、真相っていうんですか、それが一番知りたいです」

そして次に、林死刑囚の裁判の一審の判決文が画面に映し出され、こんなナレーションが流される。

「死刑判決は林眞須美がカレーにヒ素を入れたその動機について、未解明としています。長男はどうしても動機を知りたいのです。なぜなら、あの日の母はいつもと少しも変わらなかったから」

このナレーションの途中から林死刑囚の若い頃の写真が画面に映し出され、「なぜ母はカレーに毒を?」という大きなテロップが画面に映し出される――。

【問題場面5】長男が林死刑囚を犯人視し、動機を知りたがっていると思わせる編集

私はこの場面を観た時も驚きを禁じ得なかった。これでは、あたかも長男が林死刑囚のことを和歌山カレー事件の犯人だと認識したうえで、林死刑囚がカレーにヒ素を入れた動機をどうしても知りたいと思っているかのようだからだ。実際には、前編で述べたように長男は林死刑囚を無実だと信じ、その雪冤のために活動し続けている。なぜ、こんな放送になったのか。

私は放送後、長男に事実関係を確認したが、この番組の取材を受ける中で「動機」云々の話をしたのは、「母がカレーにヒ素を入れた動機を知りたい」という趣旨からではなく、「母が和歌山カレー事件の犯人だという判決を出すならば、裁判所には動機をしっかり説明してほしい」という趣旨からだとのことだった。つまり、裁判で「動機が未解明」とされていることは、林死刑囚が犯人だと認定されていることにも疑いを抱かせる事実ではないかと長男は考えているわけだ。

この場面も事実を歪める編集が施されたものだとみなすほかない。

◆問題場面6 公開済み捜査資料を「未公開」と偽り、新事実がわかったかのような虚偽

問題場面6は、番組の放送が始まって41分30秒あたりで現れる。

ホースで水をまいている林死刑囚の映像。そこで「林眞須美はなぜ、カレー鍋にヒ素を入れたのか」というナレーションが流される。そして次に、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』というタイトルの捜査資料が「未公開」という大きなテロップと共に画面に映し出され、今度はこんなナレーションが流されるのだ。

「今回入手した、警察の未公開捜査資料には、犯行に至る経緯が記されています。未解明とされた動機に結びつく、警察がそう判断した出来事です」

その後、夏祭り会場の隣にある民家のガレージにおいて、女性たちが夏祭りで提供されたカレーを調理するなどしながら、その場にいない林死刑囚の陰口を言ったり、その場に現れた林死刑囚を阻害したりする再現ドラマが流される。

そして最後は、「こうした対応に疎外感を募らせた眞須美は激高し、犯行に及んだ。それが警察の見立ての1つです。その後、1人で見張り番に立った眞須美は、致死量の1000倍を超える、100グラム以上のヒ素を鍋に入れた」というナレーションが流され、林死刑囚役の女優がガレージに置かれたカレーの鍋の中にヒ素を入れて再現ドラマは終わっている――。

【問題場面6】公開済み捜査資料を「未公開」と偽り、新事実がわかったかのような虚偽

この場面には主に3つの虚偽があった。

第一に、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』という捜査資料が「未公開」のものだというのが虚偽だ。この捜査資料は2002年の時点で複数の週刊誌の誌上で公開されており、それ以後もコピーを入手した林死刑囚の弁護団によって市民集会で公開されるなどしており、まったく未公開のものではないからだ。

第二に、「林眞須美はカレーの調理をした女性たちの対応に疎外感を募らせて激高し、犯行に及んだ」という“警察の見立ての1つ”の紹介の仕方が問題だ。

実際には、この警察の見立ては林死刑囚の裁判で審理の俎上に載せられながら事実と認められておらず、それもあって裁判では、林死刑囚がカレーにヒ素を入れた動機は未解明とされている。しかし、この問題場面6では、そのことに一切言及せず、実際にはすでに公開されている捜査資料が未公開のものだという虚偽の事実を示したうえ、この捜査資料によりこの“警察の見立ての1つ”が今回初めてわかったかのように紹介している。

虚偽に虚偽を重ねた悪質な放送だとみなすほかない。

第三に、問題場面6の再現ドラマについて、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』に記された情報のみをもとに制作したかのように紹介しているのも虚偽だ。この再現ドラマで女優たちが述べているセリフには、判例雑誌や判例データベースに収録された林死刑囚の裁判の確定判決(=一審判決)をもとに制作されたことが明白なものが複数あるからだ。

それは、以下のように並べて比べてみれば、一目瞭然だろう。

(1)再現ドラマで「群馬さん」という仮名の女性が述べたセリフ
「朝の調理にこうへんかったし、来るかどうか分からへんわ」

〈1〉『判例タイムズ』第1122号に掲載された林死刑囚の確定判決で、「群馬」という仮名の人物が述べたとされている発言
「朝調理に来なかったから、来るかどうか分からへんわ。」

(2)再現ドラマで林死刑囚が「群馬さん」という仮名の女性に対し、述べたセリフ
「群馬さん、氷、どうなってんやろ」

〈2〉『判例タイムズ』第1122号に掲載された林死刑囚の確定判決で、林死刑囚が「群馬」という仮名の人物に対し、述べたとされている発言
「群馬さん、氷どおなってんのかな。」

(1)と〈1〉、(2)と〈2〉はいずれもセリフが酷似しているのみならず、実在する女性につけられた「群馬」という仮名まで一致している。こんな偶然はありえない。

つまり、林死刑囚の確定判決で事実と認められなかった“警察の見立ての1つ”について、この番組の制作スタッフは林死刑囚の確定判決も参考に再現ドラマ化しておきながら、「すでに公開されているのに、未公開のものだという虚偽の説明をした捜査資料」により初めてわかった事実であるかのように紹介しているわけである。

これは極めて悪質な虚偽だというほかない。

◆「公正な報道」と主張する「株式会社フジテレビジョン報道部」

さて、前後編の2回に渡り紹介したような様々な問題があったこの番組の放送内容について、フジテレビの制作スタッフたちはどのように考えているのだろうか。

私はまず、この番組の和歌山カレー事件の放送部分を担当したディレクター尾崎浩一氏に電話で取材を申し入れた。

しかし、尾崎氏は電話口で責任を免れようとする態度に終始し、結局、「番組の担当者から取材にはこたえないように言われた」とのことで取材に応じなかった。その「番組の担当者」とは誰のことかと尋ねても、尾崎氏はそれすらも答えようとしなかった。

このような尾崎氏とのやりとりのあと、私はどのように取材を進めるべきかを考えた末、フジテレビの代表取締役社長である宮内正喜氏に対し、手紙で取材を申し入れた。手紙では、前後編で報告した6つの問題場面の問題点を書面にまとめて指摘したうえ、これらの放送内容の問題について、どのように受け止め、今後、どのような対処をするつもりかを回答するように宮内氏に依頼した。

結果、配達証明郵便により「株式会社フジテレビジョン報道局」名義で回答があったが、その内容は以下の通り。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ご回答

貴殿から当社宮内正喜宛の平成30年2月19日付文書(「貴殿文書」)に対し,以下の通りご回答致します。

当社が昨年12月27日に放送した番組「報道スクープSP 激動!世紀の大事件V」のうち和歌山カレー事件に関する部分(「本件放送」)は,関係者に対するインタビューを含む適切かつ十分な取材に基づいた,公正な報道であり,貴殿文書に「問題場面」として記載された各ご指摘はいずれも本件放送に該当しないものと考えます。

上記の通りですので,当社側は,貴殿による取材には応じかねます。

以上

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

つまり、「株式会社フジテレビジョン報道局」は、前後編で紹介したような様々な問題があるこの番組の放送内容を「公正な報道」だと主張するわけだ。これでは、この番組に限らず、フジテレビの報道全般の公正さを疑われても仕方がない。

なお、この番組では、チーフプロデューサーを石田英史氏、総合演出を加藤健太郎氏がそれぞれ務めている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

鹿砦社社長・松岡利康が週刊現代グラビアに登場

週刊現代5月5日・12日合併号(4月23日発売)のモノクログラビア特集〈「芸能人本」の世界〉に、鹿砦社社長・松岡利康が登場している。週刊現代に掲載予定がある、と聞いていたので、さっそく朝、近所のコンビで手にしてみると、巻頭カラーグラビアは「研究者としての天皇家」。天皇ヨイショの訳の分からない企画。続いて「目が喜ぶ『日本の美食』」。合併号用に編集部があらかじめ用意していた、時事性はない企画が並ぶ。ついで、「これが日本の『10年後』」と、良くも悪くも週刊現代らしい特集に続き、生誕100年「田中角栄の『予言』」と、松岡登場の前に「天皇」、「田中角栄」という「大物」が露払いをつとめる形になっている。

週刊現代5月5日・12日合併号(4月23日発売)より

〈暴露本出版社 鹿砦社社長が振り返る「戦いの歴史」〉には、ご覧の通り松岡のインタビューと写真が数点掲載されている。笑ってしまうのは〈暴露本の真実か、真実の暴露本か〉との大見出しを中央に掲げる、「95年、毎日新聞に出稿するための作成した全面広告。「品位がない」との理由でボツにされた」広告がここで日の目を見ていることだ。

「地震がなんだ、サリンがどうした!?」のコピーは「品位がない」と言われても仕方のない側面はあるだろう(笑)。そうだ、90年代の半ばから後半にかけて、私自身が「鹿砦社って何ものなんだろう。松岡利康ってどんな人物なのか」と斜めから見ていたことは事実であるし、あちこちの月刊誌や広告で目にする出版物の大方は、「ちょっとこれどうかな……」と近づきがたい感触を持っていた。

鹿砦社の「暴露本」路線が絶頂期を迎えるのも90年代中盤から後半だが、その後2005年には名誉毀損に名を借りた「言論弾圧」で松岡が神戸地検に逮捕され、会社存続の危機に直面させられる。それまで周りにいた人間が、次々去っていく中、入社後1年で松岡の不在中の切り盛りを任された、中川志大(現在『紙の爆弾』編集長)は「みんな、いなくなちゃうから、なんとなくこのままいた方がいいかなと思ったら、結構大変なことになりました」と飄々と当時を振り返るが、駆け出しでいきなり大きな危機を経験した中川はいまや業界で、押しも押されぬ、若手敏腕編集長として名前が知られている。

同インタビューの最後で、松岡は「ネタさえあれば、まだいくらでも暴露本を出しますよ」と意気軒高なコメントで結んでいる。が、「まだ」どころではない。現在進行形でまたしても「爆弾本」(暴露本)の編集に明け暮れているのが、松岡の姿である。今年も松岡にゴールデンウィークはないであろう。

それにしても縁は奇なものである。当時は面識もなく、「ちょっとどうかな……」と思っていた「鹿砦社」のコラムに、自分が寄稿することになろうとは20数年前には、想像もしなかった。また「鹿砦社」の硬派でありながらアナーキーな魅力が脈々と継続していることも知りはしなかった。

あるとき松岡に「どうして芸能暴露本をはじめたのですか」と聞いたことがある。「たまたまやってみたら、面白くなってやめられなくなったんですよ」と本当に楽しそうに笑いながら答えてくれた。正直なところ松岡は経営戦略的に「芸能暴露本」をはじめたのではなく、私への回答どおり「たまたま」はじめたのだろうと思う。彼が会社に勤務していた頃から発刊をはじめた季刊誌『季節』を目にすれば、出版界に足を踏み入れた動機がどのあたりにあるかは、容易に想像がつくし、それは「暴露本」路線とは、かなり距離のあるものだったように感じられる。

ともあれ、現在も芸能人写真集では不動の地位に君臨する「鹿砦社」。みずから「書かせて」もらっていながら不遜ではあるが「なんとも不思議な出版社」であることに間違いはあるまい。それゆえ今後試練があろうとも「鹿砦社の進撃」は、止まることなく続くであろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号

朝鮮核放棄宣言 散々嘘をついてきた独裁者は、金正恩か? 安倍晋三なのか?

〈北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が4月20日、開かれ、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止し、北部の核実験場を廃棄することを決定した。
 また、朝鮮半島の平和と安定に向け、周辺国や国際社会と緊密に連携、対話していく方針を打ち出した。朝鮮中央通信が21日、伝えた。金正恩党委員長は、核開発と経済建設を同時に進める「並進」路線について、「国家核戦力の建設が完璧に達成され、貫徹された」と宣言。「今や、いかなる核実験も中・長距離、大陸間弾道ミサイルの試射も必要なくなり、核実験場もその使命を終えた」と強調し、社会主義経済建設に総力を集中する新たな戦略路線を表明した。
 これを受け、トランプ米大統領はツイッターで「大きな前進だ。(米朝)首脳会談が楽しみだ」と評価。安倍晋三首相は記者団に「前向きな動きと歓迎したい。核・ミサイル開発の完全、検証可能、不可逆的な廃棄につながるかどうか、しっかり注視したい」と語った。〉(時事通信2018年4月21日付)

「いままで散々嘘をついてきたから信用できない」
「ポーズですよ。ポーズ」
「はたして真意はどこにあるのんでしょうか?」

大マスコミから、市民まで朝鮮の「核」に関する態度の急変に驚きや、不信感を抱いておられる方は少なくないだろう。しかし、私はこのような選択肢もありうるであろうことを従前から予想していた。

その理由はこの島国での、報道だけ見れば朝鮮は、あいも変わらず話の通じない「無法な国」のような印象を受けるけれども、朝鮮国内には欧州から相当の投資がすでに行われており、中国やベトナムがたどってきた「解放・改革路線」と同様な変化が見て取れたこと(朝鮮国内でいちばん流通している外貨は「ユーロ」だ)。

そもそも「核兵器」を作ると豪語したところで、朝鮮が保有している(または作り出すことのできる)プルトニウムの量は、日本に比べてもごくわずかであり、核弾頭計算で数発分にしかならないこと。さらには、朴槿恵退陣直前に外交委員会を再開し、本格的な外交の準備を整えつつあったこと。そしてなにより、正確な金額は明確にされていないけれども、朝鮮の国家予算は「島根県」程度であるとの複数筋からの情報に基づけば、朝鮮が自滅覚悟の戦争を選択しない限り、外交に打って出るのは自明ですらあったからだ。

お仲間の去就が激しホワイトハウスに比べれば、独裁国家朝鮮の政治基盤は揺るぎない。外交委員会と金正恩が「路線転換」を宣言すれば、たちまち態度をかえるのは簡単なことだ。

なにより歓迎したいのは、実際は大した問題ではなかった「核・ミサイル」の放棄よりも、朝鮮が「平和」を明言し外交を展開しだしたことだ。古い話は忘れたい読者もおられようが、そもそも朝鮮半島が南北に分断された責任は日本にある。大韓民国には「不平等条約」ながらわずかな戦後賠償をしたけれども、日本は朝鮮に対して侵略・占領の賠償を1円も行っていない。

◆2002年小泉―金正日会談で交わされた「日朝共同宣言」

外交は「善意」で成立するものではないことを承知のうえで、私は日本から朝鮮に正式な国交樹立と賠償の支払いを提案すべきだと考える(昨今の論調にあっては「何を北朝鮮の肩を持って!」との批判が聞こえそうだが、2002年小泉―金正日会談で交わされた「日朝共同宣言」には明確にその方向が示されている)。ご存じない方が多いだろうからその全文をこの際、紹介しておこう。

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《日朝平壌宣言》

小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。

両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。

 双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。

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この文章には小泉純一郎と金正日が署名している。歴史経緯を考えれば至極当たり前、基礎的な合意に過ぎない。それが吹っ飛んで「制裁!制裁!」と朝鮮を極悪国のように意識づけたこの間の国際世論、とりわけ日本政府・マスコミは真摯に反省し、「平和」と南北統一に向けて少しは働いたらどうだろうか。朝鮮問題に限らず、常に米国追従の外交姿勢の破綻は、今回の「日本はずし」でだれもが認識しただろう。自らの意思を持てないもの(個人・国家)は、まともに他者から相手にはされない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号

私の内なるタイとムエタイ〈27〉タイで三日坊主 Part.19 バンコクは楽しい!

藤川さんとは比丘になって初のツーショット

◆外泊先の朝

バンコクでの用は簡単に済んだのに藤川さんのついでの用が多いこと。

初外泊先のワット・タートゥトーンで目覚めると、いつもの習慣のせいか、まだ5時ぐらい。その後あまり眠れない。

起きてから藤川さんに言われたのは、
「お前、鼾(いびき)凄いな、寝て5分程で鼾搔いてたぞ、お陰で眠れんかった!」と言われ、初めて鼾を指摘された、高校1年の入学早々の研修先での同級生の同じ苦情を思い出しました。親父も鼾が凄かったので、私も同じなのだろうと思い、他所の家には極力泊まらないようにしていたのです。

底が開くようになっている頭陀袋とバーツ(鉢)

「托鉢は行かなくていいよ」と昨日このクティに泊めてくれた偉いお坊さんに言われていたので、ゆっくり過ごし、藤川さんと部屋の掃除だけ二人でやりました。

その托鉢に行っていないので、朝食は呼ばれない覚悟もしたところ、8時頃、この寺の比丘数名から「オーイ、こっち来て!」と声が掛かりました。ここの寺の比丘はウチの寺の倍ぐらい多いが、食事は同じような雰囲気で、食材も多く「遠慮は要らないよ」と他所から来た者を差別することもなく、グループが幾つかに分かれ皆で輪を囲む食事でした。

食事後は出発準備して、このクティのデックワットに鍵を返して寺を出ました。昨日の偉いお坊さんには会うことなく、そこは藤川さんが「分かっとるから気にせんでいい」と言うまで。さすがにいつものお泊りパターンの様子。滞在時間は短かい中、新鮮な味わいがあった寺でした。

◆またも寄り道──ソー・ソー・トー(泰日経済技術振興協会)を訪ねる

バーツに頭陀袋を被せるとこんなショルダーバッグ風になります

また市内バスに乗るも、そのまま帰る訳でなく、藤川さんが目指すスクンビット通りソイ29で降り、ソー・ソー・トー(泰日経済技術振興協会)に寄り道しました。
「カンチャナ先生に会いに行くんや!」とは聞いていましたが、日本人会の主婦らしい女性が7名ほどに迎え入れてくれました。

話し合いは、日本人会として、タイに住む日本人各々が抱える社会問題を語り合うパーティーに、藤川さんの人生経験値と比丘としての意見を語って頂きたいというもので、「今後、度々あるパーティーに藤川さんを招く場合の配慮」について話していましたが、私は関係ないので、ただ側で聞いているだけ。

ニーモン(他所へ招いての寄進・喜捨)として招かれるなど、如何なる場合も戒律は守るのは当たり前で、午後は食事は摂れません。

「どう言うたらいいやろなあ!」と頭搔きながら悩む藤川さん。藤川さんは内心行きたがる。女性たちは“比丘を誘い難い”が藤川さんには来て欲しい。しかし食事を伴うので朝しか招待できない。でもパーティーは午後でなければ皆さんの都合が悪い。

「食事などの接待はしなくていいから」と言っても誘う方は気を使うものでしょう。

藤川さんの説法が、日本人会の皆さんの救いになるならば、比丘としての役目は果たします。しかし、こんなところがウチの寺の和尚さんからみれば、“遊びに行っている”と映るのかもしれません。

1時間程の結論出ない会話の後、皆さんそれぞれの主婦業等がある為、我々も御挨拶して此処を出ました。

◆またもタカリ!

時間はお昼前11時頃、外に出て「さて昼飯どうしようか、食わんとこうか、面倒臭いし!」と言う藤川さん。

私もガツガツ食い意地張りたくないので「そうしましょうかあ」と力無く言うと、それを読んだか、「そや、町田さんに飯食わせて貰おう!」と言ってソイ27の昨日の町田さんのところへ向かうことに。

ロビーの女性に町田さんを呼んで貰うと、町田さんは仕事があるので、昨日一緒に居た小林さんが連れて行ってくれることになりました。

私は「また迷惑かけるなあ」と思いつつも、温厚な小林さんは嫌な顔することなく、逆に喜んでホイホイと近くのレストランへ誘ってくれました。11時20分頃、カオパット(炒飯)、トムヤムスープ、カイチアオ(卵焼き)を注文され、12時回る前にアイスクリームまで出される豪華さ。腹減った時に“食う物無い”とか、“食ってはいけない”というのは本当に苦しいもので、この日は我々から「飯食わしてくれへんか?」と実質の“タカリ”に行っているようなもので、私としては申し訳ない気持ちは大きいところでした。

メガネのフレームがガタつくのでネジ修理を頼んだ藤川さんは、こんな感じ(イメージ画像、3月に撮った時計の修理です)

タンブンしてくれた小林さんはタイ生活が長く、「ワシは3日に1回ぐらい正露丸飲んでるよ!タイで日々屋台で飯食ってたら何食わされているか分からんからな、寄生虫発生の恐れもあるから飲んでおいた方がいいよ!」という、私も過去、長くタイに居ながらはあまり深く考えなかった有難い忠告。

食事後は藤川さんのガタつくメガネのフレーム修理をメガネ屋へ寄って頼むと、此処もお店側のタンブンで無料。何から何までタンブン尽くし。この後、小林さんにバス停まで見送られて、また市内バスでサイタイマイバスターミナルへ向かい、寺入りした日と同じ、ペッブリー行き高速バスで寺へ帰りました。

◆バンコクは楽しかった!

バンコクに居た間に藤川さんに言われた、ウチの寺の若い比丘の程度低い連中のこと思うと、こんな馬鹿どもと付き合うのが馬鹿馬鹿しくなる自分も馬鹿な私。門まで辿り着くと何となく虚しい気持ち。

そんな仲間の一人メーオくんがクティの入口に居て、ニッコリ話しかけて来ました。「どこ行って来たの?」とは聞かれるも、「クルンテープ(バンコク)だよ、以前遊んだことあるパッポンの前も通ったよ」と言ってやるも、こいつ行ったこと無いのか、あまりウケはしなかった。

振り返ればバンコクではいろいろな人と出会って楽しかった。市内バスに乗ってすぐさま席を譲られること3回。やっぱり比丘は一般人より位が高いことを実感し、そこに胡坐(あぐら)を搔いていてはいけないことも肝に銘じ、より修行しなければいけない立場であることも実感しました。なのに新米比丘の私が、やがて還俗していくことを考えると、やっぱり罪なことしているように思うのでした。

思えば友達多いことは大事なこと。カモにされるとムカつきますが、藤川さんが行った先で飯を食わせてくれる友達がいるのも実際には私も助かった話でした。

厳密に言えば比丘は、お金で対価を払う行為はやってはいけないので物を買って食べることは出来ません。そういう場合にデックワットにお金を渡して連れて歩き、必要とするものはデックワットが買って手渡しされたものを戴くことになりますが、そこまで徹底するのは現在の文明社会では無理なので、やるのは厳格な修行寺だけになります。そういう金銭に触れる事態を極力回避する為にも藤川さんは「飯食わせてくれ!」といった、知人をカモにする場合も多いのでしょう。特に日本へ帰国の際は、頼れる人が多いと助かるのも確かでしょう。

でも私としては、昨日の佐藤夫人と今日の小林さんには、還俗したら御礼に伺おうと思うほど。その行為は俗人に戻っても、テラワーダ(南方上座)仏教として間違っているかもしれませんが、日本人として恩返ししなくてはと思うところでした。

さて、翌日の満月の日を迎えると2回目の剃髪があり、そんな寺にも慣れた頃、ラオス行きも視野に入れ、また違った日々の風景が見えて来ます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

江幡塁が華麗に舞う TITANS NEOS.23!

先月のMAGNUM.46に於いては14試合中7試合が引分けだった興行に対し、今回は公式戦11試合とエキシビジョンマッチ1試合は全39ラウンド。1ラウンド決着が7試合。消化したラウンドは全22ラウンド。今までに無いかもしれない早いペースで進行した興行で、観衆としては心地良い豪快KOが観れ、疲れない長さで堪能した様子。

江幡塁も被弾しながら強烈な右ストレートを打ち込む
ユン・ドクジェの蹴りのパワーと連打で、江幡塁の左脇が赤く腫れる

◎TITANS NEOS.23
4月15日(日)後楽園ホール17:00~19:48
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
   VS
ユン・ドクジェ(MAX FC 57kg級C/韓国/55.4kg)
勝者:江幡塁 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢49-48. 仲49-48. 少白竜49-48

終盤の江幡塁が優っていった左ミドルキック

江幡塁のローキックに右ストレートを合わせて来るユン・ドクジェ。組み合ってもすかさずヒザ蹴りを返し、たじろがないユン。蹴りも強く江幡塁の左脇腹が赤く染まり、被弾した顔面もやや赤みが増す。なぜかリズムに乗れない江幡塁だったが、第5ラウンド終盤には怒涛のパンチラッシュでユンを追い詰めるが的確さに欠け、ノックアウトに至らず終了。

苦戦の原因を尋ねるとセミファイナルまでの試合進行が早く、ウォーミングアップが足りなかったことを述べ、3ラウンド辺りから身体が解れ、ペースアップに動いたが、ユンを調子付かせてしまった反省点を述べていました。

江幡塁が6月8日に2度目の「KNOCK OUT」出場で、国内幾つかのタイトルを獲得している小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)と対戦します。兄の睦は、5月31日にタイ国ラジャダムナンスタジアム出場が予定されており、ランキング入りを懸けた戦いとなるか、ツインズの次なるステップへ、終わりなき挑戦が続きます。

江幡塁もペースを上げ、本来の鋭い攻めを見せた左ハイキック
緑川創のボディブローから上下打ち分けヒジに繋いでいく

 

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vsアニーバル・シアンシアルーソ(アルゼンチン/69.2kg)
勝者:緑川創 / TKO 1R 2:45 / ヒジによる顔面カットでドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:宮沢誠

アニーバルの蹴りにパワーは有るものの、繋ぎ技は少ない。緑川はボディーブローから上下打ち分け、パンチ連打にヒジ打ちを加え、アニーバルは右側頭部をカット、流血に見舞われ、レフェリーストップ、緑川創がTKOで圧勝。

緑川創が教授のようにキックボクシングの技を叩き込む
重森陽太のハイキックの方が鋭く重くウ・スンボムを襲う

 

◆ライト級 5回戦

重森陽太(伊原稲城/61.1kg)vsウ・スンボム(KMMAF韓国60kg級C/韓国/60.9kg)
勝者:重森陽太 / TKO 1R 2:35 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

ウ・スンボムの勢いあるハイキックを冷静に対応。重森もハイキックを軽く返していくと、これでノックアウト出来そうな雰囲気が漂う中、その強いハイキックから連打、最後は右ストレートで倒して圧勝。

重森陽太の右ハイキックから右ストレートへ繋いで倒す
エキシビジョンマッチで軽やかな動きを見せる勝次
先輩相手に遠慮無い変則ファイトのHIROYUKI

◆エキシビションマッチ

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本)EX日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(藤本)&日本フェザー級4位.皆川裕也(藤本)

再起に動き出した勝次(=高橋勝次)が後輩2名とエキシビジョンマッチで登場。昨年出場した「KNOCK OUT」での全トーナメント戦に於いて通算何度ダウンしたことか。そのダメージを抜いて、7月興行に於いて、ランカークラスのムエタイボクサーと再起戦が予定されています。

皆川は正攻法の攻めで終わるも、HIROYUKIは開始早々から飛び蹴り、また変則的な攻勢を見せ、三者三様の鋭い動きでそれぞれが好調ぶりを発揮されていました。

◆73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)
   VS
任朝恵(ワイルドシーサー沖縄/73.1kg)
勝者:斗吾 / KO 1R 2:16 / 3ノックダウン
主審:少白竜

実力差が現れたパンチの交錯。斗吾が圧力掛けて出て、やや空振りもあるが3度のダウンに結び付けて圧勝。

強いパンチで追い詰める斗吾

◆59.0kg契約3回戦

JKIスーパーフェザー級チャンピオン.葵拳士郎(マイウェイ/58.6kg)
   VS
日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原/59.0kg)
勝者:髙橋亨汰 / TKO 1R 2:45 / 左ハイキック一発、ノーカウントのレフェリーストップ 
主審:仲俊光

静かな序盤を様子見で終わるかと見えた初回の終盤、ガードの空いた葵拳士郎の右顔面に髙橋亨汰の左ハイキックがヒット、あっけなく豪快に勝った髙橋亨汰は雄叫びと号泣で喜びを表す。

左ハイキック一発でノックアウト直後の高橋亨汰

◆ミドル級3回戦

TENKAICHIミドル級チャンピオン.Tomo(天下一・沖縄/72.3kg)
   VS
日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟/72.4kg)
引分け 1-0 / 主審:宮沢誠 / 椎名29-29. 仲29-29. 少白竜29-28

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.1kg)vs千久(伊原/61.15kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 仲29-28. 宮沢30-28

◆61.5kg契約3回戦

日本ライト級6位.渡邉涼介(伊原新潟/61.5kg)vs同級7位.大月慎也(治政館/61.3kg)
勝者:大月慎也 / TKO 2R 3:12 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆ウェルター級3回戦

J-NETWORKウェルター級10位.涼介(不死鳥/66.45kg)
   VS
ワンパンマン浦野(名護ムエタイS/66.3kg)
勝者:涼介 / KO 1R 2:37 / 3ノックダウン
主審:宮沢誠

◆ライト級2回戦

林瑞紀(治政館/61.0kg)vs松崎祐樹(トーエル/60.8kg)
勝者:林瑞紀 / TKO 1R 0:40 / カウント中のレフェリーストップ

◆58.5kg契約2回戦

瀬川琉(伊原稲城/58.3kg)vs小田切健吾(マイウェイ/58.0kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 1R終了 / 顔面負傷による棄権

《取材戦記》

若いと言われた江幡ツインズも今年27歳。デビューから10年経ち、今や円熟期。昨年12月から“江幡祭り”と新たなキャッチフレーズが付き、今年に懸ける変化が見られてきました。宮元啓介(橋本)戦に続く日本人対決を迎える江幡塁と、2年ぶりのラジャダムナンスタジアム出場の江幡睦の勝負とその先が注目の、夏に向けたこの季節となります。

苦戦し反省はあるが表情は明るく勝者コールを受ける江幡塁、右は伊原信一協会代表、レフェリーは椎名利一氏

次回興行は5月13日(日)に後楽園ホールに於いて、治政館ジム主催興行「WINNERS 2018.2 nd」が開催。日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)がメインイベントの他、日本ウェルター級王座決定戦で、1位.政斗(治政館)vs3位.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原)戦が行われます。

リカルド・ブラボが勝てば、新日本キックボクシング協会に於いては、朴龍(韓国/市原)以来の外国人チャンピオン誕生となる、伊原ジムが期待を掛ける若い外国人選手。治政館が期待を掛ける政人は王座へ2年ぶり2度目の挑戦となります。

藤本ジムの三羽烏、左からHIROYUKI、主役の勝次、皆川裕也

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する