戦後80年、「戦争トラウマ」を知って下さい ── 藤岡美千代さんのお話会と『ルポ 戦争トラウマ』

尾﨑美代子

8月31日、私の店で行った藤岡美千代さんのお話会、感想は昨日購入した『ルポ 戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う』(朝日新書)を読み終えてから書きたいと思っていた。

『ルポ 戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う』(朝日新書)

以前書いたが、共通の知り合いが何人もいる美千代さんが、あるとき「9歳の時、父が亡くなって兄とバンザイ!と叫び大喜びした」という投稿を見て驚いたことがあった。その背景に、戦争から戻った父から美千代さんや兄が壮絶な暴力を受けていたこと、「いただきます」というなりひっくり返されるちゃぶ台、それと同時に始まる父の大暴れ。美千代さんと兄は急いで表に逃げ、父が酒に酔って寝るまで外で待つ。そっと帰った部屋で、畳に散らばったご飯やおかずを急いで口に詰め込む。料理が土間にまで飛んだときはみそ汁だけすする。夜中に急に起きだし、子どもに暴力をふるう父。それがいつおきるかわからず、熟睡できず、学校でボーとしていたという美千代さん。

この夜中にガバッと起きだす様を、昨年一人で見た映画「火影」(私も見た。塚本監督のこの映画や「野火」には戦争トラウマの犠牲者が描かれている)に出てきて、映画館で過呼吸、パニックに陥ったという。

美千代さんが9歳のころ、父と母の離婚が成立し、子どもと母で家を出た2ケ月後、父は自死する。当時は病死と聞いていた美千代さん、自死と知ったのは20歳の頃だった。しかし、当時は「ばんざい!ばんざい!」と喜んだ美千代さんと兄。美千代さんは、父が火葬され、本当にこの世からいなくなるのかと、火葬を最後まで見届けようとしたという。

私は父にも母にも一度も手を上げられたことがない。小学生の頃、私はなぜか、父や母が村の会合などででかけていると、帰ってくるまで気になって自分の部屋でなく、茶の間で待っていた。あの日、父が会合から遅く帰ったときも、私は茶の間の炬燵で寝ていた。戻った父はそんな私をみて「自分の部屋で寝ろや」と足でこつんと私の脇腹をつついた。痛くもないのに、父の足が私の脇腹のどこにあたり、どんな感触だったか、私は鮮明に覚えている。暴力などと言えないのに……。それに比べ、親や大人に暴力を奮われた子供たちは、どんな思いでその後を生きていくのか、ずっと気になっていた。

10年ほど前、ある番組でみた「暴力の連鎖」。ある母と娘が暴力をはたらく父から逃れて2人の生活になった。それはドキュメンタリーなのだが、中学生の娘が暴力こそ振るわないが、母親に向かって「このばばあ、何やってんんだよ」と暴言を吐いていた。母親は、それでも父の暴力から逃れ安全圏にいるからか、「はいはい、わかりましたよ」などと返していたが。やがて大学に入った娘は友達から母親へのそのような態度は改めるべきと忠告され、自身も「何故そうなるのか」と考え、その後、DV、虐待などで傷ついた子供たちをケアする仕事に就きたいと考え始める。

話を戻すと、美千代さんもそうだった。あるとき取材を受けた記者に「ご自身のお子さんに手を挙げたことがあるか?」と聞かれ、すごくドキドキしながら「あります」と答えたという。1歳半の娘が「ちゃーちゃん、ちゃーちゃん(お母さん)」とまとわりついてきたとき、仕事でイライラしていた美千代さんは、子どもをはらいのけたら1.5メートル位飛んだのだという。「父と同じことをしている」。そして「一番触れられたくない部分だけど私が一番いいたかったこと。つまり虐待は連鎖するんです」と美千代さん。美千代さんはなぜそうなったかにじっくり向き合う。

またもうひとつ、考えないようにしてきた父からの性虐待についても考えるようになった。父は美千代さんを膝にのせては身体を触ったりしていた。その後布団に入ってきては、美千代さんの太ももに性器をあてたりした。もちろん当時の美千代さんはその意味がわからない。「父が私の上で腕立て伏せをしていた」とそっけなく語る。父のそうした行為は、母が父のセックスを拒否していたこともあるようだ。

父の死後母と兄と3人で暮らすようになると、今度は兄が美千代さんに父と同じようなことをしてきたという。ふすまをあけ隣の部屋の母に助けを求めるが、母はふすまを閉め助けなかったという。母は兄(長男)を家に引き留めたいと思っていたのだろうと美千代さん。

「だめなものはだめと大人がいわなくてはならない」。どんな悲惨な話もどこかおもしろおかしく話していた美千代さんが、その話をしたとき、少し涙声になっていた気がした。「それはやってはだめ」「それには反対」と気が付いた大人が口にして言わなくてはならない。

世界各地で戦争や紛争が続く今、今後、戦争トラウマでその後何世代にも渡って傷ついてしまう人たちを生むことになるのだろうか。

そうさせないためにも、「戦争反対!」と声高に叫ぶだけではない、いじめ、差別、虐待、暴力……戦争につながる、どんなに小さなことにでも「それはだめ!」「それはやってはいけない!」「それには反対!」と、見た人、知った人が口にしていかなくてはならない。

▼藤岡美千代(ふじおか みちよ)
1959年3月生まれ。鳥取市にて18歳まで過ごす。1977年、高校卒業と同時に、大阪の保育専門学校へ。保育資格、幼稚園教諭免許、短大卒資格を取得。1979年から2009年まで大阪府箕面市効率保育所勤務。2010年、大阪市東淀川区で喫茶店「オリーブガーデン」を開業し、現在に至る。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

冤罪当事者・前川彰司さんが語る「福井女子中学生殺害事件」無罪判決確定報告会

尾﨑美代子

8月9日、ピースクラブで行った「福井女子中学生殺害事件無罪判決確定報告会」には50人以上の方が参加され満席でした。参加された皆様、ありがとうございました。前川彰司さんも「大勢の人が来てくれたね」と喜んでおりました。

初めて参加される方も多く、冤罪事件への関心が少しづつ高まっている気がしました。また検察が上告断念し無罪が決まった8月1日から初めての報告会ということもあり、地元福井から朝日新聞福井支社、日刊福井の方、そして読売テレビ、共同通信の記者も取材に来られた。あと、金聖雄監督とコンビを組む池田カメラマンも。

最初に無罪判決が下された7月18日の雰囲気を皆さんと共有するため動画を見てもらい、判決日と同じ服装をしてきてもらった前川さんに登場頂いた。黄色のネクタイは青木恵子さんから、お帽子は袴田さんから頂いたものだ。前川さんのお話のあと、端将一郎弁護士がパワーポイントを使い、事件の概要と無罪判決のポイントを話してくださった。

それにしてもこの事件、以前にも書いたが、関係者の数が多いうえ、供述がころころ変わり、全体が掴みにくい。それもそのはず。関係者は皆若く、皆、脛に傷持つワルなのだ。前川さんも自戒を込めて「おれもワルかった」という。そんな中おこった中学3年女子の殺害事件、非常に残忍な殺害方法で、当初、少女の不良仲間のリンチと推測された。しかし犯人を絞りこめない。そんなとき、別件で逮捕されていた暴力団組員Aが「犯人は後輩の前川だ」と刑事にいう。しかし、その供述も二転三転。されほど残忍な殺害を犯した前川が犯人というなら、早く逮捕せねばならぬが、逮捕までに時間がかかっている。なぜか? 警察は前川さんを犯人とする「ストーリー」を描き、多くの関係者をその図にうまくはめ込むのに必死になっていたのだ。 

そもそも、前川さんはその女子中学生を知らない。しかし、「前川の黒い手帳に女の子の住所が書いてあった」などという供述もあった。すべてうそ。しかし、ストーリーになんとか信ぴょう性をもたせねばならない。そこで一役買ったのが、例の「夜のヒットスタジオ」のアン・ルイスと吉川晃司がいやらしい踊りをする場面だ。質疑応答で、これがどういう経緯ででてきたのかという質問があった。確か、私が資料を読んだとき、取り調べられた関係者の一人が、事件が起こったのが、木曜の9時ということで、たいてい夜のヒットスタジオみてるなあと思ったのか、少年の一人が「あのいやらしい踊りの日か?」と刑事に聞く場面がある。若い男の子が「いやらしい場面」と言えば、相当強く記憶に残るはずと刑事が考えたのではないか。で、「そうだ、そうだ、その日だ」などといって調子にのせて「NがCと部屋で夜のヒットスタジオを見て、ちょうどアンルイスと吉川晃司のいやらしい踊りをみたあとAから電話で呼び出された」ということにしたのでは。実はNは事件当日「ツレとうどん屋に行って男女の喧嘩をみた」とも言っていた。そっちの供述は実際にあったことだ。うどん屋で喧嘩した男女の証言もあり、その事実を警察もうどん屋に確認していた。またNはその日の深夜車で移動中検問にあい、覚せい剤を持っていたのでドキドキしたという。実際、検問があったことは証明されている。 

Nは一審で2回証言している。一回目は検察側証人として、「いやらしい踊りを見たあと、Aに呼び出され、……血のついた前川を見た」と。その後、弁護団と面談し、「うどん屋で男女の喧嘩をみた」に変えた。そして一審は前川さん無罪となった。 

検察は控訴し、控訴審でNが再度検察側証人として「血のついた前川を見た」と証言する。松山龍司刑事に嘘の証言を頼まれたからだ。自分の覚せい剤の件を見逃してもらうかわりに。嘘の証言をしたあと、松山刑事に飯や酒を奢られたNは、結婚したことを告げると、後日松山刑事から5000円の入った祝儀袋が届いた。二回目の再審で、嘘の証言をしたことを証言し、祝儀袋を証拠提出したN。そのことは知っていたが、まさかその祝儀袋があんなにきれいに保管されていたとは、驚き。

今回最大の問題は、夜のヒットスタジオでアン・ルイスと吉川晃司がいやらしい踊りを踊っていた放送日は、事件のあった日ではなく、翌週だったこと、しかも警察、検察は前川さんを逮捕・起訴したあとの補充捜査で、テレビ局に問い合わせ、その事実を知っていたのに、ずっと隠してきたこと。今回の再審で初めて出てきた287点の証拠の中に、それがあったこと。

これに関しては増田啓佑裁判長も「……裁判では事件当日に放送されたという、事実に反することを、ぬけぬけと主張し続けている。……再審でもこの点について何ら納得できる主張がなされていないことをあわせると、知らなかったと言い逃れができるような話ではない。当時の検察官の訴訟活動は公益を代表する検察官として、あるまじき、不誠実で罪深い、不正行為を言わざるを得ず、到底容認することはできない」と超厳しく批判した。顔もぷんぷんと怒っていたようだった。それにしても判決文で「ぬけぬけと」とは。

質疑応答では、「何故警察、検察は裁かれないのか?」と怒りの質問が多かった。確かにそうだ。

若い時期に殺人犯にされ、服役した前川さんは、精神的に病み、病院に入退院を繰り返した。人を信用できなくなった、しかし徐々に寛解してきたと話された。私は3年前、桜井昌司さんに紹介され、電話で話すようになった。しかし、最初は「はい、いいえ」としか言わなかった前川さんが、昨年秋に再審開始が決定して以降は、電話でも良く話し、そして笑うようになった。そうなるのに、39年かかったということ。あまりに残酷だ。

最後に冤罪犠牲者の皆さんのミニアピール。再審を闘う日野町事件の阪原浩次さん、姫路花田郵便局事件のジュリアスさんのアピールのあと、仕事で参加出来なかった和歌山カレー事件林眞須美さんの長男さんからのアピールを司会の尾崎が代読した。湖東記念病院事件の西山美香さん、そして最後にアピールした東住吉事件の青木恵子さんにより、無罪決定を祝うケーキがプレゼントされた。青木さんは、テレビで前川さんが自身の還暦の誕生日に、コンビニのケーキを食べているのを見て、気の毒になり、また自分も刑務所で寂しい誕生日をおくったことを思い出し、みんなで前川さんの還暦をお祝いしたいと用意してくれた。

「前川さん、再審無罪、お誕生日おめでとう!」

実はこの事件の記事を書き始めた当初、YouTubeでそのいやらしい踊りの場面をみることができていた。が、まもなく見れなくなった。が、昨日帰宅後に再度検索したら、ひと月前にアップしている方がいて、見ることができた。コメント欄には「前川さんからきました」とか「吉川晃司が前川さんの無実を証明した」とかある。多くの人が前川さんの無罪を知って喜び、そして冤罪の残酷さを知って欲しい。アン・ルイス・六本木心中(with吉川晃司)で検索!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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39年前の福井女子中学生殺害事件で前川さんに再審無罪判決! アン・ルイスと吉川晃司のいやらしい踊りのパフォーマンスはいつ放送されたのか?

尾﨑美代子

7月17日、西山美香さんの湖東記念病院事件の国賠で、大津地裁は滋賀県(滋賀県警)の捜査の違法性を認める判決を下した(ただし、国の違法性は認めなかった)。その翌日、名古屋高裁金沢支部で福井女子中学生殺害事件の犯人とされた前川障司さんに再審無罪判決が下された。39年前のこの事件、亡くなった桜井昌司さんから「前川の事件も書いてくれよ」と言われていたが、資料を読み何度も諦めていた。

事件は卒業式の日、家で1人でいた女子中学生が殺害された。非常に凄惨かつ残忍な殺害方法だったため、女子学生が関わる非行グループ内のリンチ事件と考えられた。しかし、捜査は難航。そんななか、逮捕中の暴力団組員の加藤(仮名)が「後輩の前川が犯人だ」と刑事に告げたことから、前川さんが逮捕された。前川さんはこの女子学生と面識はなかったうえ、前川さんを犯人とする証拠も一切なかった。あるのは「血がついた前川を見た」という多くの関係者の証言のみ。その関係者の数だが、AからG位まであり、中には小文字のn、大文字のNとかある。これは、例えば中野が仲野に変わるなど、加藤の証言がころころ変遷していたからだ。

しかも関係者の多くが暴力団関係者やシンナー、覚せい剤を使用していた若者たち。警察に睨まれたくないため、いわれるがままに嘘の調書をとられた。「前川の手に血がついていた」というBの証言、「前川が『あのバカ女』」などと言っていた」というDの証言などをを集めて、前川さんを犯人とした。このようないい加減な証拠しかないうえに、同じ一審で検察側証人に立った若者が、その後、弁護側証人として、前の証言をひっくりかえすなどしたため、一審は無罪だった。しかし、これを不服とした検察が控訴。控訴審では一審で証言をひっくり返した少年が再び「前川を見た」に証言を変え、二審は有罪判決、前川さんは服役してきた。

服役後の第一次再審は再審開始が決定したが、検察が控訴し訴えは棄却されていた。今回の第二次再審で、2024年10年再審開始の決定がでた。その「決定書」を読んだ私は「なんだ、これは?」と驚いた。決定書には、これまでの判決文などに出てこなかった文字が躍っている。「夜のヒットスタジオ」「アン・ルイス」「吉川晃司」。なんなんだ?

こういうことだ。当時流行った歌番組「夜のヒットスタジオ」でアン・ルイスが「六本木心中」を歌う後ろで吉川晃司が過激な踊りを披露するという場面があった。実は、私は取材を始めた頃、その場面をネットで探して見たことがある。吉川がアン・ルイスの後ろで腰を打ち受けたり、アン・ルイスがマイクを吉川の股間に押し付けるという過激な内容だった。裁判では、木曜日夜9時の同番組で、その過激な踊りが放送されたのは、事件当日だったとされた。山田(仮名)と林(仮名)という加藤の手下の若者は、山田の家でこの番組を見ており、2人で「いやらしいな」と話していたが、ちょうどそのとき、加藤から電話があり、車で迎えにいったというのだ。 当時見ていた方はご存知だろうが、夜のヒット・スタジオにはその週ヒットした歌手が出演して、生放送で歌っていた。なのでヒット曲を持ち続ける歌手は、毎週のように出演するわけだ。なので、新聞の番組欄には毎週のように2人の名前がでていたはずだ。警察は関係者にその新聞をみせ「この日で間違いないな」などと確認していたのだろう。

黃色の勝負ネクタイは、青木恵子さんからプレゼントされたもの。入廷行進で被っていたお帽子は袴田巌さんから頂いたもの

時は過ぎ、新たに弁護団に入った若手の弁護士らが、「いやらしい踊りってどんな踊りなんだろう?」と興味をもち、なんとAIに質問してみたという。すると、古舘伊知郎が語る場面がでてきたそうだ。その放送日は1985年10月2日。古舘はその日初めての司会だったので、そのいやらしい場面が「目について離れない」と語っていたという。え? 1985年?? さらに調べると、その場面は翌年1986年に再放送されていた。「ヒットパレード、この1年間の思い出に残った曲」などという特集でも組まれたのではないか?しかし、その放送日は1986年の3月26日で、事件のあった3月19日ではなかったのだ。さらに驚いたのは、再審で弁護団が開示させた新しい証拠の中の「捜査報告書」には、その事実がはっきり書かれていた。「いやらしい踊りをしている場面が放映されたのは3月26日、3月19日にはありません」と。その報告書の作成日は1989年1月28日、つまり一審が続けられていた時期だ。

おい、どういうことだ。警察、検察はいやらしい踊りの放送はその日でないことを知りつつ、裁判を続けた。何故なら、山田と林が事件当日見ていたのは、ただの夜のヒットスタジオでアン・ルイスが歌う場面ではない。吉川晃司といやらしい踊りを踊った番組だ。だから、印象に残っているのだ!事件のあった日だ。ちょうどその時、加藤の兄貴に呼びだされただと……。そうか、だから、検察は裁判で、この一番重要な証拠について、証人に聞くことはなかった。「アン・ルイスと吉川晃司はどんな踊りをしていたんですか?」とか「それを見てあなたはどう思いましたか?」などと。詳細を聞けばうそがばれる可能性があったからだ。一方、裁判官が証人にそのことを聞いた。証人は「間違いないです。その(いやらしい踊りが放送された)日です」と証言した。

結局、その証人は、再審で、証言を変えたことについて、当時自分も覚せい剤をやっていたので、それを見逃してもらうため、警察のいうがままに嘘の証言をしたと証言した。裁判で更に嘘の証言をした日は、刑事に飯を奢られ、スナックで飲まされたとも証言した。その際、結婚したことを告げた証人に、その刑事が5000円入ったお祝い金をくれたと、刑事の名前がばっちり入った祝儀袋を証拠提出した。

もちろん、それ以外でも弁護団は多くの新たな証拠を提出し、無罪を争っていた。それにしても本当に悪質だ。冤罪は証人の記憶違いや小さな間違いで作られるものではない。警察、検察が何十年も証拠を隠し続け、必死で作っているのだ。前川さんの無罪は、控訴期限の8月1日で決定する。前川さんはその後全国各地を報告会で回るようですが、まず最初に大阪に来て話したいといいますので、8月9日土曜日に大阪で報告会を行いたいと、現在弁護団と調整中です。決まりましたらお知らせします。ぜひ、多くの方々に集まって頂きたい。

◎前川障司さんをお招きしての大阪報告会開催決定!◎
8月9日(土)14時~(開場13:30)
「福井女子中学生殺害事件」報告会
報告:前川障司(冤罪犠牲者)、端将一郎(弁護士)

事件から39年で再審無罪!
開示証拠が無罪の決め手に!
判決は警察・検察を厳しく批判!

会場:社会福祉法人ピースクラブ4階
(大阪メトロ大国町駅5番出口南へ5分)
参加費:800円(資料代込み)
主催:実行委員会
問い合わせ:090-7356-1747(オザキ)
 hanamama58@gmail.com

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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冤罪「湖東記念病院事件」滋賀県に勝訴! 国の責任を認めず!

尾﨑美代子

冤罪「湖東記念病院事件」の国賠訴訟、本日、大津地裁で判決がくだされた。傍聴券抽選のため、ロビーは希望者で溢れたが、私はどうにか傍聴券を頂いて中に入れた。

判決は、滋賀県警の捜査に対する違法について、原告の主張をほとんど認めた。とくに、警察が、捜査当初から鑑定医が「患者さんの死亡は痰詰まりの可能性がある」とした捜査報告書を検察に送致していなかったことについて、違法だと認め、この違法がなければ、美香さんは起訴すらされなかったと判断した。

私はこの国賠訴訟、第一回目を傍聴したが、その後は仕事で傍聴ができていなかった。が、裁判で証言した刑事は「報告書といってもメモ的なものもあるのですべて送致するわけではない」などと言い訳したそうだ。しかも送致しなかった報告書は「ちゃんと保管してますわ」と刑事が親指と人さし指で3~5センチほどの厚さを示したと、井戸弁護士が指で示した。つまり警察は私たちの税金で集めた証拠の多くを検察に送致していなかったということだ。

もちろんその証拠の中には、患者の死因は「痰詰まりの可能性がある」という、美香さんに無罪判断を下す証拠もあるのである。この捜査資料の不送致の違法性を厳しく断罪した判決は過去に例がないと思われるとのことだ。

一方、判決は、国(検察)については原告の違法の主張をすべて認めなかった。裁判所はとくに、早川検事が作成した調書についての不合理について全く判断しなかった。次の内容だ。美香さんは、当時勤務していた病院で呼吸器を付けて永らえていた患者さんが死亡した件で、呼吸器の管を抜いたとして殺人罪で逮捕・起訴され、有罪判決で服役した。

それまでの経緯だが、一人の看護師が「(呼吸器を抜いた際に出る)アラームが鳴っていた」と嘘を付いたことから始まり、結果、看護助手を美香さんは山本誠刑事にマインドコントロールされ、「管を抜いた」と嘘の自白を強いられた。

「管を抜く」イコール「殺す」とは考えてもいなかった美香さん。警察はその後、具体的にどのように殺害したかを供述させなくてはならない。滋賀県警と山本刑事はどうやったか? 実は、その後の捜査で実際はアラームは鳴っていなかったことが判明。では管を外したのにアラームが鳴らないようにするにはどうしたらいいか。警察は考えた。そこで警察は、呼吸器の専門家に技術的なことをレクチャーしてもらった。呼吸器には消音機能維持装置があって、管を抜いてアラームが鳴ったらそのボタンを押すと消える。それから60秒経つと再度鳴るので、その前にまた押す。それを3回、つまり3、4分管を外し、酸素を送らずにいたら、絶命するということだ。

しかし、ここで困った事態がおこる。美香さんは看護助手なので、呼吸器などの医療器具を扱う立場にない。やり方もしらない。しかもこの消音機能維持ボタンについては普通の看護師でもしらないそうだ。「何故そんな装置を知ってたか」と問われ、美香さんは当初「看護師さんがやっていたのを見て覚えた」と話していたという。しかし、同病院の看護師全員に聞いたところ、その装置の使い方を知る人はひとりもいなかった。

そこで気が付け! 早川! 看護師がだれひとり知らなかった装置を看護助手の美香さんがしっているはずないだろう? ところが、警察の作った嘘・デタラメな調書を本物のようにするために上塗りするのが検事の仕事。そこで検事として頑張った早川、患者に強い殺意を抱いて管を抜いた美香さんが、そのとき装置についたボタンを偶然押した。「あらま、アラームが止まったわ」と美香さんが思ったか思わなかったか。しかし、問題はそこからだ。美香さんは何故か胸のなかで「1、2、3……」と数えたという。いやいや、美香さん、そのやり方(アラーム音止めるボタンを押したのち、60秒したらまた鳴るという)しらないってば? と突っ込みたくなるのは私一人ではないはず。早川! そう思わないか?

なお、判決全体で井戸弁護士が強く批判したのは、弁護団と美香さんが最も強く主張した「供述弱者」についての判断が全くないことだ。滋賀県警と山本誠刑事は、美香さんが山本に恋心を抱いていることを利用して違法な取り調べを行ったことの違法については判断を避けたことだ。この点が全くネグレクトされている点について、井戸弁護士は裁判所としてはありえないと断罪した。弁護団、美香さんも国に対して控訴することを決めているが、控訴審ではこのネグレクトの違法性をとことん追求していくそうだ。

ここにきて、朝からバタバタして突然力尽きた尾崎さん。いろんな人にも会ったからね。それにしても最後の記者たちのつまらない質問。「美香さん、今日のお洋服は白ではないのですか?」みたいな。そんななか、青木恵子さんが花束を贈る時間がなくなってきた。私は亡くなった桜井昌司さんの「記事を書くなら記者席に座れ」を守り、偉そうに記者席の前から2列目に陣取っていたので、事前に司会の方に伝えておいた。が、青木さんらが明日の福井女子中学生殺人事件の判決に向けた、今日中に金沢入りということで、電車の時間が迫っていた。大勢の記者が多くの質問をするのはよいが、最後「何故、今日は白い洋服ではなかったんですか」とか要らないだろう、とイラついていたら、青木さんが「ママ(私)、時間ないわ」と言ってくるので、司会の方に伝えたら、急遽花束贈呈をいれてくれることになった。

それにしても井戸弁護士のお話のなんてわかりやすいこと、美香さんの受け答えのなんと的確でユーモアに溢れていること。詳細は判決文を読んでまたまとめよう。写真は全然撮れてなくて、入廷行動の写真は東京の部落解放同盟の安田さんから、旗出しの写真は水戸さんにお借りした。皆さま、お疲れ様でした。

◎新プロジェクトX~挑戦者たち~「無罪へ 声なき声を聞け」滋賀・看護助手 知られざる15年
 再放送予定 7月19日(土)午前0:10~~午前1:00
 https://www.nhk.jp/p/ts/P1124VMJ6R/episode/te/56K65391MP/

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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大阪万博で4つの下請け業者に建設費を払っていない「GLイベンツ社」とは

尾﨑美代子

7月13日、フリージャーナリスト西谷文和さんの万博問題の講演会に参加。会場は交野市内で市内からはかなり遠いので諦めかけたが、行って良かった。新たに分かったことも沢山あったし、「子どもたちを危険な万博へは行かせません」の山本市長のお話も聞けた。

万博では、現在9つの海外パビリオンで建設費未払い問題がおこっている。GLイベンツはそのうちドイツ館、セルビア缶、ルーマニア館、マルタ館で4つで未払い問題を起こしている。 GLイベンツ社とは何か? もとはフランスにある世界最大級のイベント会社だそうで、日本法人は2016年に作られた。当時の社長ロベール・ヴェルディエ氏は、もともと起業家で日本でも数々の企業を手掛けている人だそうだ。

そんな大企業で建設費用の未払い問題なんて起きるか?と不思議に思う方もいるはず。じつは咲州のビルに入るこの会社には、被害者の会の人たちや支援者らが二度抗議に訪れている。西谷さんの講演でその動画が公開された。2回目に訪れた動画で、被害男性が「ホテルの中で屈強な男性8人に囲まれ……」と話す場面があった。

「何のことか」と質疑応答で私はその場面について質問した。思った通り、ある業者の人が数人で同社を訪れたら、近くのホテルの一室に連れていかれ、そこで屈強な男性らに取り囲まれたという。「ガタガタいうな」と脅すようなものだ。そのため被害者らはその後は支援者らと大勢で行くことにしたそうだ。

先日私はFacebookで、GLイベンツで対応した男性の腕に刺青が入っていたそうだと書いた。記事の写真では男性が日本人か外国人かわからなかった。スポーツ選手などもそうだが、外国人はファッション、アートとして刺青をいれることが多い。なので、日本人のヤクザなどが入れる和彫りの刺青と若干意味が異なる。西谷氏の話では、そのGLイベンツで対応した腕に刺青の男性は日本人で、先ほどのホテルで被害業者を取り囲んだ屈強な男性の中にもいたという。いわばGLイベンツの「用心棒」として、「金を払って」と言いにくる業者を威嚇するためにいるようなものだ。

では、GLイベンツがどうしてここまで大胆に建設費未払いを公然と行うことが出来るのか?誰でも思うことだが、その背景には大物議員がいるんじゃないの、と。 

実は、起業家ロベール氏が、多くの功績が認められ、フランス政府から勲章を受けることになった。その授賞式に、日本からわざわざお祝いにかけつけた政治家がいる。森喜朗元首相だ。ロベール氏は元々ラグビー選手で、日本ラグビー協会会長の森と親交があったようだ。

やっぱり!このうさんくさい会社の裏には日本の国会議員が付いていた。森だけではない、五輪、ラグビー大会などは文科省の管轄、そこには裏金議員の下村、萩生田なども関わっている。大阪ではそこに維新がずぶずぶと関わっている。

大屋根リングから見えるカジノの建設現場。麻生セメントががっぽり儲けに食い込んでいる

GLイベンツに関しては、更にここ数日で新たな事実が明らかになった。GLイベンツの東京事務所は、大屋根リングを設計した「梓設計」と同じビルの同じ階にあり、何と「郵便受け」が一緒だという。どうなっているんだ! 郵便受け位、コーナンで数千円で買えるだろうに。

では、何故、9つもの海外パビリオンでこんな未払い問題が多いのか?あとで触れる万博のために作った「特例」のためでもあるが、もう一つは大屋根リングが先に作られたことも大いに関係している。というのも、リングの中で工事をするのだが、資材や機材を入れるのが非常に困難になるからだ。ダンプに積んでチャチャチャと現場に運び入れればいい重い資材を、おっちらこっちら人力で運ばなければなたないのだ。どんだけ大変か!遅れに遅れた工事が余計遅れるではないか?

もう一つ、こんな実務経験のないイベント会社や「建設業許可」のない会社が元請けにはいれたか? そのからくりが、今万博のために作られた「特例」(「令和7年に開催される国際博覧会の準備及び運営為に必要な特別措置に関する法律」)だ。

講演前に「万博協会や維新はどういう経緯、どういう理由でこのような特措法を作ったのだろうか」と西谷さんにお聞きした。西谷さんは会見で吉村知事に聞いたが、明確な答えはなかったという。この特措法のせいで、建設作業の実績もないイベント屋らが元請けに参入できたのだ。仮設ステージや来賓のテント作るのと、パビリオン作るのは全く違うぞ。しかし、万博協会は最後には「半年だけの構造物なので、仮設を作る業者でもいけると考えた」とでもいうのではないか、と西谷さん。

しかし、刺青とタトゥーが違うし、カーペンターと大工の源さんも違う。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

「いのちかがやく」大阪・関西万博で、下請け労働者のいのちが切り捨てられようとしている

6月22日(日)、大国町「ピースクラブ」で開催の原口剛神戸大教授の「釜ヶ崎で考える」反-万博論にお集まりの皆様、お疲れ様でした。

冒頭、主催として何故万博が始まった今、この問題を取り上げるかを少し話させて頂きました。

今回の大阪・関西万博、開幕前予測していた以上の酷い問題が噴出している。中でも釜ヶ崎に関わる者として見逃せないのが工事費用未払い問題。アンゴラ館に続き、ドイツ、セビリア、ルーマニア、そして6月20日最新情報では中国パビリオンでも。中国パビリオンの電気工事を請け負った二次下請け会社社長は、5月に結成された「被害者の会」(万博工事未払い問題被害者の会)の代表と会見し、「国家プロジェクトで未払いがまかり通るのは恐ろしい」と語った。なお、アンゴラ館で未払い状態の5次下請けの業者の下にはひとり親方の業者さんもいる。数か月家賃が払えない人もいるという。

SNSでは「貯金してなかったあんたが悪い」という人もいる。でも問題はそこではない。

「そんなことで文句いうな」「引き受けたあんたらが悪い」と言う人たちもいる。あげく「万博見に来た人たちを笑顔にさせて。そんな笑顔見たら満足だろ」という方も。

いやいやいや、何言ってるんですか? 笑顔見てもメシ食えんから。笑顔ナンボ見ても1980円の古古古古米さえ買えませんよ。

もともとゼネコンがやらない仕事(そこには大きな理由があった)、工期が迫ってる、開幕を延期しないと決めた吉村知事はテレビで「絶対開幕に間に合わせますっ」と豪語し、万博協会も必死で下請け業者に「やってくれ」と頼みこんだ。「だったらやってやろうじゃないか」と、引き受けた業者はそれこそ昼夜問わず働いた。

そんな人たちに未払い、しかも頼み混んだ吉村や協会が解決に取り組まない。あげく、万博来た人たちの笑顔見たら満足でしょう、とは。

協会はユスリカの大量発生やレジオネラ属菌にはすぐに対策本部作ったのに、未払い問題は放置したまま。下請け業者、作業員はユスリカ以下ですか?

そして始まった原口さんトークショー(詳しい内容は仲間が動画にしてくれます。楽しみに待ってください)、休憩を挟んでの質疑応答。何とそこで「被害者の会」の方が発言。会場に来てくれたことに驚き!

私も疑問に思っていたことを聞いた。「なぜ、建設許可証を持たない、建築実務のない業者が入札に入れたのか?」「なぜ建築実務のない広告代理店が関われたのか?」

「被害者の会」の方は必死で答えてくれた。そこには、この万博で維新のお気に入り、維新のお仲間を儲けさせるために、中抜きしやすくするために、従来労働者を守っていたはずの法律というか入札する際の基準を変えていたという余りにえげつない実態が……。

しかも圧倒的に多いのは中国系の業者だ。ここで、原口さんが「中国系の業者と中国の人たちを分けて考えないといけませんね」と注意を! 確かにそうです。

例えば打合せで図面がわずか2枚のペーパーしかないとか。どんな資材を使うかもわからない。そんなことだから、一旦やった仕事にクレームがつきまくり。当然だ。どうやって欲しいか注文する図面が2枚しかないのだから。いくらベテランの業者でもうまくいくはずがない。さっき、ゼネコンがこのタイプのパビリオン建設を断ったのは、こんなところにも理由があったのだ。そのくせ、「守秘義務がありますよ」だの「口外しないように」とどんどん罰則を強めてくる。

この実態を今後広めて行かねば……。下は「被害者の会」の方の投稿です。フォローして応援しましょう!

https://www.facebook.com/share/p/16Nq1BfnuK

【追記】 6月23日、「被害者の会」は大阪府に要望書を提出。その後府庁で会見を開いた。参加した業者の話では、ルーマニア、ドイツ、セルビアの3パビリオンで計約2億3700万が支払われていないとのこと。また被害者は、作業員とその家族を含めると約1000人にも及ぶという。会は未払い金の一時的立て替え、建設許可証なく工事に参入した業者名の公表などを要望、6月27日までに回答するよう求めた。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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6月22日(日)原口剛氏講演 ── 釜ヶ崎から考える「反万博論」にお集りを! 大阪・関西万博の何が問題かをとことん考えてみよう!!

尾﨑美代子

大阪・関西万博だが、開幕前に予想していた以上の問題が噴出している。中でも釜ヶ崎に関わる者として気になるのは下請け業者への工事費未払い問題だ。アンゴラパビリオンを請け負った5次下請けの業者には約4300万が支払われないままだ。その下はひとり親方の業者だ。すぐに支払いがないとメシも食えないぞ。アンゴラのほかにもネパール、マルタ館も未払いだそうだ。もとは業者が集まらない中、「どうにかして、助けて」と呼び掛けていたくせに、国も大阪府・市、そして万博協会もしらんぷりだ。余りに無責任ではないか! 

「今回の万博は酷いが70年万博は良かった」という人もいる。しかし、それは大間違い!万博や五輪などメガイベントはずっと労働者を犠牲にしてきたのだった。

2019年1月5日西成区民センターで開催した「日本一人情のある街、西成が無くなる!?」、私も進行をさせて頂いたシンポジウムのコーナーで、島和博さん(大阪市立大人権問題研究センター)がこう話していた。

「一番大事なのは、釜ヶ崎は行政によって作られてきたということです。証拠ははっきりあります。70年大阪万博の前に、大阪府の労働局が『労働者を送ってくれ』とお願いをだした。その結果として大量の若い労働者が西日本を中心に釜に集められた。釜ヶ崎は国家によってつくられた。そうして作られた労働者が『もういらない』といわれている。これは絶対おかしい。普通の企業なら大問題になり、闘争が起こります。センターの撤去に象徴されているのは端的にこれは首切りです。釜の場合、個々の労働契約は個々に結んではいませんがね。『必要だから釜ヶ崎に来てね』といわれ集められたのに、今度は『もう必要なくなったから野たれ死んでね』といわれている、それの象徴的なあらわれがセンターの撤去です。『お前らが来い言うて釜ヶ崎に働きに来たのだから、死ぬまで面倒みろよ』ということでしょう。最盛期には約3万人の日雇い労働者が働いていた。国が呼び寄せた。それをさんざん安くこきつかって、『もういらないからどっかに消えて』という。あるいはせいぜいよくて3畳一間の福祉マンションに囲い込んで飼い殺しにする。普通の労働現場では『新しい機械入れたから、あんたは首や』などとは絶対できないが、釜ヶ崎では言えている。そこのところをぜひ皆さんには理解してほしいなと思います。」

そして22日、お話をされる原口さんも、70年万博当時も大量の労働者が犠牲になったと話されている。70年万博の工事では、尻無川水門事故で11名が生き埋め死亡、会場造成工事で17人が死亡、開幕後も万博関連事業の一環である地下鉄天神橋筋六丁目の建設工事では、ガス爆発で79名死亡、420名重軽傷の犠牲を出すなど、多くの労働者が犠牲になっている。

今回も万博だけを見ていてはわからない。万博開幕と同時に工事が始まったIR・カジノ事業の建設工事など、その前後に関連事業がやまほど行われる。それもすべて私たちの税金、そして、そこでどんだけ労働者が犠牲になることかわからない。 
そう、「70年万博は良かったのに……」ではないのだ。

そして万博などメガイベント開催と共に強化される差別と排除、釜ヶ崎でも露骨に進んでいる。

「万博は社会的弱者を排除する装置として機能しているのだ」

「万博の何が問題なのか?」

開催されている今だからこそ、みんなでとことん考えてみよう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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特区民泊が増え続ける西成区、大丈夫か?

尾﨑美代子

大阪市内に増え続ける特区民泊、なかでも西成区は突出して多い。ほかに中央区、浪速区も多く、それぞれ1000件を超えている。確かに、ここ数年、ちょっとした道路に面して建設される多くの建物が民泊だ。全体的に日本家屋っぽい造り、入口にのれん、猫の額ほどの庭に、これまた日本っぽい樹木が植えられている。

しかし、民泊の名前が微妙だ。明らかに日本人がつけた名前ではない。知らない感じも使われている。実際、6割が中国人経営だそうで、香港、台湾を含めると8割にも上るそうだ。中には移住する人も。

ひとつき程前、毎日通うスーパー近くの小路に大きめなキャリーバッグをゴロゴロ転がした白人系のインバウンド客が10人ほどで入っていくのを目撃。「おいおい、どこいくんだよ。行き止まりじゃないのか?戻って来いよ」とのんびり見てたのだが……。

先日、そのスーパーに行ったついでに小路に入ってみた。写真は出さないが、古い一般住宅の間に民泊、また民泊。空き地もあるが、ここにも民泊が出来るのだろうか?この小路を突き抜け、左に曲がると、民泊ブランド「住一」が手掛けた一棟建て民泊が10数件立ち「住一VILLA花園町」もある。

このように、民泊名に日本では使われない文字が入っているのも特徴だ

それにしても、近隣住民の皆様はなんとも思わないのか? いや、中国人、外国人が危ないというのではない。ただ、ゴミを放置、昼夜構わず、キャリーバッグごろごろ、入室方法がわからず、隣の家にピンポンで「どーやってはいるのですか?」と尋ねるとか、様々な苦情も報道されている。「民泊建設反対」の声をあげる地域もあるほどだ。さきごろ、大阪市が売り払った土地に、14階建て200室以上もの部屋を有する民泊が建設済みで、まもなく運営されようとしているとの報道が。この規模の民泊なら、実質ホテルといってもいいくらい。しかし、ホテルや旅館より縛りが緩いため、さまざまな問題が起こるのではと近隣住民からは反対の声もあがっている。

こうした背景について、安倍政権時の2015年に「経営管理ビザ」を規制緩和したことがきっかけではないかとのことだ。

※編集部:2015年4月1日施行の入管法により、それまで「投資・経営」ビザと呼ばれていたものが「経営・管理」ビザに変更された。この改正により、外国資本との結びつきに関する要件がなくなり、国内資本企業の経営・管理を行う外国人にも「経営・管理」ビザが付与されるようになった。
※[参考]外国人経営者の在留資格基準の明確化について(出入国在留管理庁)
 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html

いずれにしても、今後、何らかの規制が必要なのではないか? いや、「もう、これだけ出来てるのだから、もうおせえよ」なのか。

しかし、この小路の住民は大変やなあ。誰も文句言わないのかな?と見てたら、小路入口の店舗が維新の会のメンバーのご実家だった。関係あるのか、ないかは定かではない。

◎[参考動画]テレビ大阪ニュース【急増する民泊と中国人】大阪を飲み込むチャイナマネー…500万円で日本に住める!?「経営管理ビザ」の実態とは?

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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7・12「鹿砦社反転攻勢の集い・関西」にお集りを!

尾﨑美代子

7・12「鹿砦社反転攻勢の集い・関西」にお集りを! 私も発起人になっています。

私と鹿砦社の関係をお話します。鹿砦社の松岡氏は以前から知っておりましたが、2005年松岡氏が不当逮捕された時期にはほとんどつきあいはありませんでした。なので一番大変な時期に救援も支援も出来てませんでした。

ふたたび、知ることになったのは、3・11以降でしょうか。月刊『紙の爆弾』も読ませていただきました。そんなおり、鹿砦社から反原発季刊誌『NO NUKES voice』(2014年8月創刊。現在の『季節』)が発刊されました。3・11以降、釜ヶ崎の仲間と反原発、反被ばく問題に取り組んでいた私は気になって購入しました。

ところが、内容は、いわゆるミサオ・レッドウルフ氏率いる「首都圏反原発連合」(以下、反原連)関係の記事が大半でした。松岡氏は反原連に結構な額のカンパを送っていました。のちに聞いたところ、反原連に送ったカンパは、鹿砦社が信頼し、懇意にしている「たんぽぽ舎」にも流れていると勘違いしていたそうです。

記事の中でも極めつけはミサオ氏へのロングインタビュー、ロングとあるだけにかなりの紙幅でした。ミサオ氏はそこで、「被ばく」のひの字を一回も使わずに反原発を淡々と論じてました。ある意味、すごい「芸当」だと感心したものです。3・11以降は小泉純一郎だって反原発です。では、私たちはなぜ原発に反対するか? それは、被災者に住民に労働者に無用な被ばくを強い続けるからではないですか?

その後、ある事件をきっかけに反原連と鹿砦社は袂を分かつことになり、以降、鹿砦社の反原発誌は、反原発と同時に反被ばくを強く打ち出すようになりました。反原連と袂を分かつきっかけとなったのが、また衝撃的でした。その後、松岡氏、鹿砦社で、大々的に支援を始めることになった、カウンター内でのM君リンチ事件でした(筆者注・2013年東京新大久保、大阪鶴橋などで、在特会などによる、「朝鮮人殺せ」などとヘイトスピーチ[憎悪表現]を煽るデモが増えた。これに対してカウンター[対抗]行動を行う人たちがでてきた)。

じつは、偶然ですが、2013年鶴橋で行われたネトウヨらの差別的なデモ行進には、私もカウンターの一員として参加していました。M君はカウンターに最初から参加していました。私はその後、あることがきっかけで参加を止めてました。いわゆる鹿砦社のM君リンチ事件本に、私のそのいきさつを寄稿しています。関心のある方はぜひお読みください。

詳細は省きますが、その後、M君へのリンチ事件が発覚します。松岡氏らはM君への支援を始めます。その経緯もリンチ本でご確認ください。

私は特に、反差別、反権力を訴える方々が、リンチした側に付いたことに非常に驚き、M君裁判を傍聴するなどして支援してきました。

長々書きましたが、私は反原発や野宿者問題、そして冤罪事件などに関わっていますが、その中で、とりわけミサオ氏らの被ばくを矮小化、あるいは被ばくに反対する人たちを攻撃するような反原連の反原発運動に反対であることと、その反原連運動の延長線上にあるかと思いますが、次のターゲットであるカウンター行動に移ってきては、反差別、反権力を訴えながら、仲間・同志にリンチを加えた人たちを擁護することに絶対納得できず、鹿砦社に賛同してきました。松岡氏とは意見の違う点もあります。しかし、松岡氏と鹿砦社の「間違いがあったら、いつでも指摘してください」との対応が本当に素晴らしいと考えております。私もまた、死ぬまで間違いを指摘して欲しいと思っているからです。松岡氏とは意見の違う点もあります。しかし、松岡氏と鹿砦社の「間違いがあったら、いつでも指摘してください」との対応が本当に素晴らしいと考えております。私もまた、死ぬまで間違いを指摘して欲しいと思っているからです。

今回の集いは、『紙の爆弾』20周年、『季節』10周年の記念の集いです。私は『紙の爆弾』の「日本の冤罪」シリーズに執筆させて頂いたり、『季節』は編集委員で関わらせて頂いております。この2冊は、このような時代だからこそ、絶対続けていかなくてはと考えております。

どうぞ、皆さま、お集りください。また支援をお願いいたします。

参加できる方は尾崎までご連絡ください。
宜しくお願いいたします。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年6月号

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利権まみれの大阪・関西万博パビリオン建設 ── 維新は、お仲間業者を儲けさすことに必死のパッチ

尾﨑美代子

◆トラブル続きで「死者がでるかも」

維新の会は、お仲間業者を儲けさすことに必死のパッチ。

万博、開幕前予想していたトラブル以上のトラブルが起こっている。アンゴラパビリオンの建設を請け負った下請け業者に、上の業者が4000万円支払ってない件、しかもその上の業者が大阪府から建設許可証をとってないとか、建設の実績はほぼないとか、あり得ない事態もおこっている。

アンゴラパビリオンは開幕日に1日だけ開館し、その後ずっと閉めているって気の毒すぎだし、この件で万博協会が「民間同士の契約トラブルのため関与しない」とつれないそぶりなのも無責任すぎないか。これ、国家事業だろう? 大阪府も市も絶賛推進してただろう? 吉村なんかずっと万博ワッペン付けてただろう。それで「しらんぷり」はあり得んだろよ。下請け業者さん、うえの業者に何回連絡しても繋がらないって。「死者がでるかも」だって。

◆万博利権と類似した釜ヶ崎の労働関連施設建設をめぐる癒着構造

この件で思い出したのが、釜ヶ崎の「あいりん総合センター」の解体が決まって、そこに入っていた2つの労働施設、あいりん職安と西成労働福祉センターが2019年春に、隣の南海電鉄高架下の仮庁舎に移転した件だ。

センターは頑丈な重量鉄骨構造、職安は簡易なプレハブ構造と、構造がまるで違っていた。公金(税金)使う場合は最低限にしなくてはならないのだし、数年しか使わないのだから、簡易なプレハブ作りでよいはずだが。

センター仮庁舎は1517㎡、費用は約7億500万円。同じ規模の公的な建物(警察署とか公民館)と比べても非常に高い(ちなみにプレハブ構造の職安の建設費用は2億3000万円)。センター仮庁舎と同じく4年から6年使用する予定の他の仮庁舎の場合、建設から解体、現状回復までかかった費用は、センターの半分以下の3億円を超えるものはなかったという。センター仮庁舎を作った業者はどれだけ中抜きしているのだ!

当時、私たちもそれを問題にしてきたのだが、行政はその工事は南海電鉄高架下に作るという「特別な工法」なので、南海電鉄関連業者に随意契約でやってもらうしかないと言ってきた。どこがどう「特別な工法」かはわからなかったが、なんと出来て数か月で雨漏りがしたという……出来てすぐに雨漏りがするという「特殊な工法」だったのか。疑問が深まる。

プレハブ構造のあいりん職安
重量鉄筋構造のセンター
[左]開業から2ヶ月で天井から雨漏り。これが「特別な工法」のせいか??/[右]すんごい穴!

と、そんな頃、店の客の仮枠大工の兄さんから「ママ、7億あればけっこうなマンションが建つで」と言われた。「えっ本当?」と思っていたら、ある情報番組でハリウッドの「ヒルズだからビューが素晴らしい」という3階建て300坪、プール付きの大豪邸が約5億円と紹介されていた。建設費用と完成物の違いはあるものの、他でも調べると、ハリウッドのセレブな人たちの超豪邸が7億円未満でいくらでもあるではないか。7億円というのはそういう金額なのだ。セレブな方々の豪邸は何年たっても雨もりなんかしないゾ。

◆パビリオン建設に名を連ねる維新のお友達業者

ほかにもあるパビリオン建設費用の未払い問題で考えたのは、そのいい加減な業者は絶対維新のお友達業者であろうということだ。

維新の松井一郎の親族会社「大通」の主要取引先が南海電鉄グループの企業である住之江競艇場を経営する住ノ江興業で、松井の親族はここの電飾関係の管理や修理を行い儲けている訳だ。

あるいは、大阪城の樹木や大阪各地の街路樹をバッサバサと伐採する造園業「翠宝園」という八尾市の業者は、維新の前田洋輔府議の実家で、その前田府議の職歴見ると、この翠宝園のほかに大通も入っているという。ちなみに彼は松井の秘書をやっていたこともあるという、どんだけわかりやすいお仲間構図なんだ。

星野リゾート前のJR高架下に出来た「屋台村」もずっと閑古鳥が鳴き続けていたが、ついに撤去となった。あそこの連中もきっと維新のお仲間なのだろう。

◆万博会場で販売されていた統一教会系飲料水「メッコール」

そういえば、万博会場で販売されてた水「メッコール」が販売中止となったが、あれは、流石に社会的に問題となってる統一教会の関連業者とバレたからだ。バレなきゃ売り続けていたということか。お仲間業者を儲けさすことしか考えない維新の会。しかし、この万博が維新の会の命取りになるだろう。維新政治を終わらせるために、万博が始まっても万博反対を訴えていこう!

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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