黒薮哲哉
「4・10増減」(よんじゅう・そうげん)と呼ばれる変則的な「押し紙」の手口がある。4月と10月に「押し紙」を増やす販売政策である。なぜ、4月と10月なのか。
結論を先に言えば、4月と10月のABC部数が、折込広告の設定枚数(折込定数)を決めるための有力なデータになるからだ。4月の数値は、6月から11月の折込定数に反映し、10月の数値は、12月から翌年の5月までの折込定数に反映する。新聞社は、それを知っているから「4・10増減」に走るのである。
西日本新聞の元販売店主(長崎県)が起こした「押し紙」裁判は、「4・10増減」が争点になった。裁判の中で、西日本新聞社が、全販売店の実売部数や残紙の程度を把握していたことを示す内部資料の存在が明らかになった。それにもかかわらず第一審で裁判所は、西日本新聞の「押し紙」政策を認定しなかった。7月3日には、控訴審の判決がある。
一目瞭然の「押し紙」政策の存在が客観的に立証されていながら、新聞社に軍配を上げ続ける裁判官の姿勢。
これは、裁判官が有する人を裁くただならぬ特権を悪用しているのではないか?
※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年6月22日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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