◆裁判長遅刻の挙句の不当判決

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

5月16日(火)13時12分頃、吉岡茂之裁判長による不当判決の代読をした男性裁判長の声が広島地裁201号法廷に響き渡り、傍聴に来ていた筆者らは茫然としました。

判決は本来13時10分から言い渡しの予定でしたが、所定の時間になっても裁判長は現れず、筆者らがじらされていると、書記官が慌てて、裁判長席の後ろのドアを開けて裁判長らを呼びに行きました。そして、遅れて現れた挙句に不当判決。余計にがっくりきました。

 

◆軽く扱われた非正規労働者の命

広島の私立の高校・広島国際学院高校の英語科非常勤教師だった後河内麻季先生は、精神疾患を発症して自死に至りました。

採用されてからは任期3年間という有期雇用契約でした。しかし、いつまでも非正規というわけではなく、それ以上契約を延長する場合は、いわゆる正規雇用(期間の定めのない雇用)にすることが期待される状況でした。そして、3年の期限がくる前年の秋には「来年もよろしく」と声がかかっていました。しかし、期限が来ても非正規のままで、しかも自分よりも後輩が先に正規になるという有様でした。仕事ぶりもご両親から見ても大変熱心でした。

しかし、正規教員になかなかなれない、また、周囲の先生方からのパワハラなどもあって、自死に追い込まれました。

また、後河内先生が亡くなられた翌日、同僚の先生が花束を後河内先生の机に手向けたら、校長がすごい剣幕で激怒したそうです。

「次に来る人が困るじゃないか」

というのです。亡くなってすぐに、次の人が来るはずもありませんから、周囲の先生方も「校長はおかしくなったか?!」と思ったそうです。

非正規労働者を弔うのがご法度。そういう異常な雰囲気だったのです。

もちろん、ご両親などの遺族が、労働災害の認定を求めました。しかし、国は、学校経営者側の主張を丸呑みする形で精神疾患と業務との関連性を認めず、認定を却下。ご両親がその却下処分の取り消し=労災認定を求めて国を提訴していました。

◆原告の訴えに正面から答えず、国の主張なぞるだけの薄っぺらな判決文

この日の判決の判決文は、弁護人の佐藤真奈美先生によると20ページと、この手の裁判では異例の薄さだったそうです。要は、原告の主張には正面から応答せず、国の主張をなぞるだけ、というものだったのです。

この日、ご両親は勝つつもりで麻季先生の遺影を持ち込まれていました。ご両親は今後ともご支援をお願いしたいと頭を下げられました。

裁判後の交流会でも、筆者も含めて、今後ともご両親を支援していくことを申し合わせました。

筆者からは、筆者がかつて大阪府内で非正規の行政関係の労働者の雇止め裁判を支援した経験をご紹介・地裁では不当判決だったが、2007年ごろから人格権侵害が認められるようになる流れが勃興し、人格権侵害の主張により、2010年の高裁では逆転勝訴、2011年最高裁で勝訴確定しており、あきらめずに支えていきたいという思いを申し上げました。

◆原発、産廃……「権力忖度」の常習犯 吉岡茂之裁判長

今回の裁判を担当した吉岡茂之裁判長は、実は、「行政に忖度した」判決や決定が目立つ裁判官です。

2017年3月31日、筆者ら「伊方原発広島裁判」の原告が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請を吉岡茂之裁判長は却下しました。原告が高裁に抗告すると、高裁は、阿曾山大噴火により伊方原発に危険が及ぶ可能性があるなどとして、運転差し止めをいったんは認めたのです。

その後、被告・四国電力側から異議が申し立てられてしまいました。そうした中で、原告側も再度仮処分申請を申し立てました。しかし、2021年11月4日、またまた、吉岡茂之裁判長により、阻まれてしまいました。この決定は、被告の四国電力に十分な安全性の立証を求めずに、住民側に、伊方原発の地盤特性などを比較するよう求めるものでした。戦後最悪ともいえる不当決定でした。(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=41158

そして、三原の産廃処分場問題でも吉岡茂之裁判長が登場します。2022年6月30日に広島地裁は、いったん認められていた産廃処分場差止の仮処分への業者による異議申し立てを認めてしまったのです。この時の裁判長が吉岡茂之さんです。「住民が利用する井戸まで有害物質が含まれる水が到達する可能性があると認めるに足りる資料がない」という理屈でした。環境問題におけるいわゆる予防原則を無視する暴論でした。

◆重要な論点含む訴訟、引き続き支援したい

ただ、逆に言えば、吉岡裁判長の決定は、高裁によって覆った例もあります。あきらめてはいけません。

この裁判が問うている精神疾患の労災認定はあまりにも労働者に厳しい運用のままです。かつては、心臓脳血管疾患についても厳しい運用でしたが、労働者側の運動で改善させています。引き続き、取り組んでいきたい。

また、日本・広島の学校現場が公立・私立問わず、あまりにも労働者、ことに非正規労働者である先生方を使い捨てる状態が続いています。最近では文科省もようやく重い腰を挙げつつありますが、実効性は上がっていません。人を育てる学校こそ人を大事にしてほしい。そうした声も粘り強く上げ続けたいものです。

この判決があった5月16日は、この判決の直後、河井案里さんの腹心だった県議・渡辺典子被告人の公選法違反(被買収)事件の裁判の初公判もありました。

金権腐敗政治を糺す市民団体(写真)の皆様も裁判所にお見えになっていました。筆者からも、後河内先生の裁判があることをお知らせし、市民団体の皆様にも一緒に連帯して傍聴いただきました。

広島県民の皆様にもぜひともこの裁判にご注目いただき、ともに声を上げていただきたく伏してお願い申し上げる次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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月刊『紙の爆弾』2023年6月号

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

G7広島サミットが5月19日から21日、開催されました。結論から申し上げれば、「核兵器廃絶」を目的とするならば、「G7サミットを広島に誘致する」という手段が全くの誤りだったことが明白になりました。

 

栃木県警の警察労働者の皆様。建物に入出入りする人は全員検問されていた。広島駅北口で筆者撮影

そして、2万4千人もの警察労働者を全国各地から広島に動員した過剰警備・過剰交通規制で、市民・県民の生活が大打撃を受けただけでした。

もちろん、全国の機動隊の方が押し寄せて儲かったお好み焼き屋さんもあったのですが、全体としては「売り上げが半減した」(ラーメン店主)、「物流が止まって必要な薬が手に入らないということでひやひやした」(持病のある女性)「保育園の給食が止まって、弁当を持たせないといけなくなった」(女性労働者)など影の部分が目立ちました。サミット期間中は、ヘリコプターの轟音が東区の筆者の自宅でも午前2時を過ぎても鳴り響きました。

◆従来の日本政府のスタンスの焼き直し「広島ビジョン」

今回のサミットでは、地元選出の岸田総理が目指しておられた「核なき世界」への前進は全く見られませんでした。

総理が議長として19日に発表した「広島ビジョン」は従来の日本政府のスタンスを一歩も出るものではありません。

第一に、核兵器禁止条約に全く言及していません。これは、従来の日本政府の姿勢を考えれば、当然と言えば当然です。「核保有国と非核国の橋渡しをする」と言いながら、日本政府=ほぼ自民党のことですが=は何もしてこなかった。

第二に、それどころか、核兵器先制不使用にすら触れませんでした。今すぐ、核兵器をなくすのは難しくても、核兵器をこちらからは先に使わない、という約束をすれば、ぐっと緊張緩和の機運も高まります。「先制攻撃されるかもしれない」という恐怖で満ちているからこそ、「抑止力」という名の軍拡で対抗しようと各国は走り出す面が大きいからです。核兵器先制不使用にすら触れないのは残念です。もちろん、これとて、オバマ大統領が2009年頃に核兵器先制不使用を打ち出そうとしたときに日本政府こそがこれを阻止しようとした歴史的経緯もあります。その日本が今回議長国なのだから、そんなことは最初から期待すべくもなかったかもしれません。

第三に、2000年のNPT再検討会議で合意された核兵器廃絶への明確な約束にすら触れていません。この約束は、当時、世界のNGOが核兵器保有国に対してNPT六条を根拠に迫り、実現した歴史的なものでした。まさに、2000年の水準からさえも後退した文書が「広島ビジョン」です。被爆者のサーロー節子さんらが「サミットは失敗だった」と怒るのも当然です。

◆中国包囲網にゼレンスキー参加 緊張激化に広島が利用された

その上、今回は事前の日米首脳会談で「抑止力の強化」と称した軍拡を合意しています。また、いわゆる台湾有事を煽り立てつつ、いわゆる中国包囲網をインドなどグローバルサウスもこの会議に招待することで構築しようというのが今回のサミットの狙いです。

そもそも、国共内戦の延長である台湾問題に日本が軍事介入すれば、日本はロシアを非難する資格を失います。ロシアも、ウクライナ国内問題であるドンパス紛争に介入してロシア系住民を守ると称してウクライナに侵攻したわけです。ドンパス地方におけるウクライナ政府側の非人道的な行為も批判されるべきだし、中華人民共和国も、武力で台湾を制圧するということは絶対に避けるべきです。だが、だからといってロシアがウクライナに侵攻してしまったらそれは侵略です。そして、台湾に日本が軍事介入したら、これも中国に侵略への反撃と称した日本攻撃の口実を与えてしまいます。

さらにサミット終盤にはウクライナのゼレンスキー大統領が参加し、各国に武器支援を要求したとみられます。外交交渉ですから詳しいことはベールに包まれていますが、このタイミングで武器を要求しないわけがありません。広島は、戦争当事者の片方に加担する会議の場となってしまいました。

もちろん、ロシアの核による威嚇は許しがたい。しかし、それに対して、軍拡で答えるアメリカなどにも待ったをかける。そして、ヒロシマ・ナガサキに続く核戦争による悲劇が起こらないよう体験をもとに呼び掛けていく。これが1945年の被爆からいままでの平和都市広島=ヒロシマのスタンスだったはずです。

ゼレンスキー大統領単独で見学に来てもらい、復興支援を求めるメッセージに絞って発言していただくか、あるいは、適当なタイミングでロシアのプーチン大統領と両方呼んで、和平交渉への顔合わせを広島でする、というのであればまだわかるのですが、G7という場に来てもらったのはまずかった。

◆G7首脳の原爆資料館見学のプラス面は少ない

なお、G7首脳が原爆資料館で40分程度勉強したことを成果とする向きもあります。しかし、そのことを差し引いても、トータルではマイナスの結果だったのは明白です。そもそも、核大国の首脳になるほどの政治家はしがらみも多いのです。

政治家に核兵器の悲惨さについて勉強してもらうなら、例えば、核大国以外の国の首脳とか、核大国でもしがらみの少ない一年生議員に広島に来て勉強してもらう方が中長期にも国際世論の喚起や、核兵器保有国内での政策転換に役立つのではないでしょうか?

◆自民から共産まで、全員サミットを評価・期待!? 問われる広島県議の政治センス

筆者は統一地方選挙2003の広島県議選に立候補しました。マスコミや市民団体の政策アンケートでG7広島サミットについての設問では「サミット誘致を評価しない」「サミットに期待しない」という趣旨の回答をさせていただきました。

ところが、自民党、公明党はもちろん、立憲民主党、日本共産党に至るまで、既成政党系の候補者は全員、「サミット誘致を評価する」「サミットに期待する」というご回答をされていました。特に総理の軍拡にあれほど熱心に反対しておられる日本共産党の県議候補お二人がお二人とも「サミット誘致を評価する」スタンスで回答されていたのには腰を抜かすほど驚きました。特に安佐南区で筆者と議席を争った女性候補については、彼女の市議時代は、筆者も公選はがきを百枚単位で書かせていただくなど支援をさせていただいただけに衝撃は大きい。結果として筆者は当選に至らなかったが筆者が立候補しなければ、県民に対して選択肢を示すことはできなかったと痛感しました。

G7広島サミットに被爆者・当事者が僅かなのぞみをかけるのはよくわかります。サミットが行われる以上、そこに来る首脳にガツンと伝えるべきことは伝えないといけない。

しかし、サミットを誘致する立場(総理、知事、市長の行政トップ)、あるいはそれを議会で予算や法律などの面からチェックすべき政治家は「サミット開催が核兵器廃絶に資するかどうか」ということを精査する義務がある。そして残念だが、県議に関していえば、自民から共産まで精査した形跡がないのです。

◆「法の支配」が聞いてあきれる広島・日本の腐敗しきった行政

今回のサミットは、中国に対抗して、「法の支配」を推進するということもテーマでした。

しかし、足元の広島、日本の政治や行政は「法の支配」をえらそうに語れる状態でしょうか?

例えば、広島県の平川理恵教育長。外部の弁護士の調査でも地方自治法違反、官製談合防止法違反を指摘された上、「高すぎる」タクシー代についても虚偽答弁が発覚したにも関わらず、居座っておられます。彼女に代表されるような腐りきった県政は、「法の支配」とは程遠いものがあります。

また、日本の裁判所は住民vs行政の裁判では、ほとんど行政の主張をうのみにする場合が多い。原発、産業廃棄物、労働問題など。これで「法の支配」が行き届いていると言えるのでしょうか?

◆過剰警備や「お願い」に過ぎぬ過剰規制も「法の支配」と程遠く

また、前後を含むサミット期間中の過剰警備・過剰規制には筆者も含む広島都市圏住民は悩まされました。

特に、廿日市市宮島には、識別証を持たない人は入れない、という報道がされていました。ところが、筆者の友人が「規制が始まる」18日12時を過ぎてから宮島に渡ろうとして「規制」とやらの法的根拠を現場の外務省職員に問うたら法的根拠はなく「お願い」をしているだけだというのです。そしてそのお願いに基づいて、宮島ではお店に休業してもらっている。そして補償もしないという。これもまた「法の支配」とは程遠いものがあります。

◆明白だった平和都市としての「ヒロシマ」と旧白人帝国主義国本位の「G7」の「矛盾」

そもそも、戦後の広島という都市は建前では日本政府とも違うスタンスでした。繰り返しになりますが、日本政府は核兵器禁止条約そのものに反対だし、核兵器先制使用禁止をアメリカが打ちだそうとした際にはこれを阻止したのはむしろ日本政府でした。アジアに位置しながら、西側の一員として、日本政府は存在しました。しかし、広島という都市は、陣営を超えて、核というものは二度とわれてはいけん、なくさんといけん、というスタンスで建前はやってきたのです。

一方で、G7は西側=旧白人帝国主義国家に偏った集団です。所詮は旧白人帝国主義国家+脱亜入欧だった日本から構成されるものです。さらに、筆者も市民団体のアンケートでもふれたのですが、日本政府自体が、G7で名誉白人扱いされて舞い上がっているだけの感もあるのではないでしょうか?

こうした背景がある以上、G7はG7の論理で会議を進め結論を出すし、それはどうしても広島の思いとはかけはなれるのはわかりきったことです。

しかし、無理に広島でG7サミットを開催したことで、広島がG7による抑止力という名の軍拡を容認した形になってしまいました。自民から共産までの県議の皆様もそれを結果として後押ししてしまったのです。

また、世界は大きく変わっており、日米欧の世界経済などに占める割合は格段に落ちてきています。今回、グローバルサウスを呼んだのもそのことを日米欧も認めているということです。G7そのものが前世紀の遺物であることを自白しているということです。この点からもG7には期待できないし、広島サミットにも期待できないのは当然です。

◆市民が対抗して声を上げたのが「成果」

G7サミットは毎回そうですが、はっきり言って首脳たちによって庶民にプラスになるような成果はほとんどなかったというべきです。しかしながら、市民がサミットに対抗して声を上げていく(いわば反作用)に意義があったと言えるでしょう。

5月14日に原爆ドーム前で行われたG7サミットに反対する市民集会

 

5月14日の市民集会に参加した筆者

筆者も、G7サミット開催を目前にした5月14日に原爆ドーム前で行われたG7サミットに反対する市民集会に参加しました。グローバルサウスからフィリピンの元国会議員。そして今回、尹大統領も参加される韓国人で広島在住の方。そして台湾有事という名の軍拡合戦で犠牲を強いられることが予想される沖縄から参加、挨拶をいただきました。

また、多くの若者の皆様も、今回のG7サミットをしっかりチェックしていただいています。(https://twitter.com/Kakuwaka

そして、サミットに期待・サミット誘致を評価していたような政党の政治家も、「広島ビジョン」を見て、失望や怒りに変化しています。

筆者は、今後とも、総理の選挙区でもある広島からガツンと為政者(中央政府)に対して物申していく決意です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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まず、全国の皆様に対しては、筆者の地元・広島選出の岸田総理の暴走や迷走により、多大なご迷惑をおかけしていますことを心からお詫び申し上げます。

 

迷走が止まらない岸田総理と腹心で旧統一協会との関係も明らかになった市議の政治活動用ポスター

軍拡やそのための増税、あるいは、介護保険改悪、医療費負担増についてはまさに暴走です。

一方、核廃絶をライフワークとしながら、核兵器禁止条約に入らない、それどころか、オブザーバー参加すらしないのは「迷走」と言えるでしょう。

その総理の迷走がもうひとつ増えました。「産育休中にリスキリング」です。「子どもが小さい時の育児中に勉強どころではない。」という怒りの声が上がったのは当然です。筆者には子どもはいません。しかし、それでもその程度のことは7歳下の妹が生まれた時の我が家の様子などから想像がつきます。「聞く力」があると自慢する総理なら、「異次元の少子化対策」とおっしゃる総理なら、当然、その程度のことは認識しておられるのではないか?どこに耳をつけておられるのでしょうか?

◆総理こそリスキリングが必要だ

そもそも、育児休暇を「休暇」と称することが間違いかもしれません。筆者は、広島県が主催する男女共同参画を学ぶエソールひろしま大学を長年受講してきました。そこでお世話になった大学教授(男性)は「『育児労働』と呼んだ方がいいのではないか?」とおっしゃっていました。筆者が河井案里さんに選挙で挑む2011年以前のことですから、12年以上経過しています。

◆育児そのものがリスキリングという発想転換も必要

また、そもそも、育児とは、真面目にやれば、いわゆるマルチタスクでしないといけない。そういう訓練を経ていることは、実は会社での仕事にも生きてくる部分も大いにある。そのことも最近では注目されています。すなわち、育児そのものがリスキリングになるともいえるのです。また、商品・サービスの開発の面でも「近頃の子どもの需要」をつかむことは大事です。

総理の議論は、「育児休暇=無為な期間であり遊んでいる期間」のような前提が暗黙のうちにあると言わざるを得ません。全く問題外であり、総理こそ、リスキリングが必要なのではないでしょうか?

◆低賃金を自己責任に転嫁する総理は「重症の新自由主義患者」だ

上記の論点については、マスコミや野党はもちろん、若手や女性の議員を中心に自民党内からさえも突っ込みが入っています。筆者は、今回強調したいのは、総理が賃上げ、特に(男性の育休取得促進が事業者に義務付けられた今でもそうはいっても育児の多くを担わされている)女性の賃上げを「リスキリングしない女性の自己責任で解決すべき」ととらえていることが明らかになったということです。

広島弁でいえば、「あんたら、勉強せんけん、給料が上がらんのじゃ。育児休暇中に遊んどらんと勉強しんさい!」ということです。

これは実は、インターネット上で自称お金持ちの人が低賃金の介護労働者や保育労働者、あるいは非正規公務員に「文句があるなら勉強したらいいのに」というのと一緒です。まさに新自由主義だ。総理は、「新自由主義脱却」を一時は叫んで自民党総裁選挙、そして衆院選2021を勝ち抜いてこられました。しかし、今の総理は正真正銘の新自由主義者である、と言わざるを得ない。というか、新自由主義者であることの自覚症状もない「重症患者」かもしれません。

◆ケア・教育・食料etc. 確保へ「有無を言わせぬ賃上げ」の勢い必要

いま、例えば、広島の介護現場などは給料が低すぎて外国人労働者(ほとんどが20-30代の女性)がどんどん東京に流出しています。こういう中で、サービスの崩壊を防ぐには勉強どうのこうのではなく、有無を言わさず給料を上げるくらいの姿勢が必要です。

あるいは、教員も含む公務員も非正規が多くなっています。自治体によっては(民間への業務委託、指定管理者も含むのでしょうが)「6割が非正規」(当該自治体の市議)というところもあります。教員など仕事がきついのに、安い給料でこき使われたら定着しないのは当然です。「だめだ!こりゃ!と塾の先生になる人も多い」(前出市議)なのです。

その結果、介護や保育、あるいは教育、そして市民、県民の悩みにこたえるサービスが確保できなくなる。それにより、「自分はお金持ちだから大丈夫」と高をくくっていた人たちも含めて、慌てることになるのです。

民間に目を転じても、第一次産業(広島の場合はカキ打ちが代表的)がこのままだと労働者流出で成り立たなくなくなる農業や漁業への所得保障、コスト補償などによる食料安保政策で労働者の給料を上げられるようにすべきでしょう。

◆賃上げと教育無償化で基本は十分

また、そもそも、賃上げをして労働者が経済的な余裕を持つ。教育を無償化する。これにより、リスキリングをしたい人はしやすくなるでしょう。現状では、そもそも、育児中の人でなくとも、賃金が低すぎるうえ、時間がなくて学びなおしどころではありません。

ありていに言えば「貧乏暇なし」状態です。これを打破することで、育休中の人ももちろん、勉強したい人はしやすくなるでしょう。「ことさらに」育休中の人をターゲットにしてリスキリングなどと迷走する必要はないのです。

◆「政商コンサルばかり儲かるだけ」恐れ

皆様も「職場や地域で外部講師による研修を受けたけど、全然仕事に役立たなかった」というご経験がある方も多いのではないでしょうか?

例えば、広島県の平川教育長がお友達の会社に研修を多数、外部委託しています。教育委員会には教員の研修の為に指導主事がたくさんいるにもかかわらずです。

「平川教育長は、何のために県費を使っているのだかさっぱりわからん」という声が県内で噴出しています。

現状の日本や地元広島の政治の腐敗ぶりをみると企業が国の補助を受けて行う「リスキリング」においても、広島県教委で起きているようなことが起きる可能性は極めて高いと言わざるを得ません。何のことはない。

企業なら売り上げの改善、行政なら住民サービス、教育ならこどものためになっていなくても、漫然と政治や行政の「えらい人」たちと親しい業者は儲かる。そんな事になりかねません。

◆欧州では職業教育は行政と労組の仕事

なお、欧州では、ざっくり言えば職業訓練、職業教育は行政の仕事であり、また、労働組合の仕事でもあります。国によっては労働組合から職人を派遣する、という形式を取っている場合もあります。

日本のように「勉強しないと給料が上がらんぞ」と総理が脅し、そして、効果が怪しいコンサルが儲ける、という構図とは雲泥の差があります。

労組の再生については、筆者も労働組合の幹部として取り組んでいきますが、総理は政治家です。筆者も政治家として、行政がもっと教育に責任を持つよう、教育無償化含めて全力を挙げていく覚悟です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士 1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。2023年広島県議選にも立候補。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)。
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月刊『紙の爆弾』2023年6月号

広島市長の松井一実さん。厚生労働省官僚のご出身で新自由主義色が濃い市政をされています。

※[過去記事]官僚出身・ネオリベ広島市長の暴走が止まらない! 中央図書館移転問題で市民の声を完全無視! 

 

広島市学童保育連絡協議会の田中富範さん

特に子どもに関する福祉に対しては完全に背を向けていると言わざるを得ない対応を取っておられます。

その一つが学童保育=広島市では放課後児童クラブと呼ぶ=の有料化です。実は広島市の学童保育は全国でも珍しく、無料です。もちろん、指導員は非正規の会計年度任用職員ばかり、使っている建物も老朽化が進んでいるなど、問題は多くあります。それでも、無料はありがたいという声は強くあります。

その学童保育の有料化を2023年度から松井市長は強行する姿勢です。年収800万円世帯で月5000円。減免される世帯でも(年収240万円の場合)月3000円の負担になります。240万円の世帯の場合、3000円でも結構負担は大きいものがあります。

それに対して、許さないと声を上げておられる広島市学童保育連絡協議会の田中富範さんのご講演を、1月22日(日)、筆者は「ひろしま自治体学校」(広島自治体問題研究所主催)でお聞きしました。田中さんのお話しなどによると、以下の市長の暴走ともいえる状況が起きています。

◆学童保育料金徴収の根拠条例がない

何事も、市が市民からお金を取る以上は、市民の代表である議会の決議を経た条例が必要です。国の場合でも、例えば「消費税率は10%」などと法律で定めています。それらと同じことです。

ところが、広島市の場合、驚くべきことに学童保育の料金の根拠となる条例がないのです。条例どころか規則さえないのです。あくまで、要綱を根拠に徴収するというのです。そして、「広島市は私人として、保護者と契約しているから条例無しで徴収できる」というのが市幹部のスタンスだったそうです。私人と言えばどこかで聞いたことがあります。辺野古の問題では、沖縄県に埋め立てを不許可にされた国(防衛局)は私人として、不服申し立てをしたのです。

一方で、国はもちろん、強大な権力を持っています。市ももちろん、学童保育の指導員の任免権を持っています。権力者があるときは私人を装う。あるときは、もちろん、強大な権力者として労働者や市民、国民を押さえつける。セコイし脱法行為としかいいようがありません。

◆国の考えを過剰に忖度

私人としてふるまう広島市は一方で、国の考えを過剰に忖度します。国は昔から予算編成にあたって、一応、学童保育の費用は、半分を保護者負担、半分を国、県、市で賄うとしています。しかし、これはあくまで国の予算編成にあたっての考えであり、市に対して「こうしなさい」という指示をするものではまったくありません。実際に広島市は独自に無料=保護者負担分を市がカバーする=を続けてきたのです。ところが2011年に松井市長が市長に就任されてから、「まるで国の出先機関のように」振舞っています。

実は、松井市長は筆者の父が厚生労働省の医系技官だった時代の部下だったそうです。父によると若き日の松井市長は非常に真面目な方だったそうです。国の官僚であるならば、それはそれでいいでしょう。さすがは労働委員会の事務局長まで上り詰められた方です。

しかし、いまの松井さんは選挙で選ばれた「市民の代表」です。いつまでも「国の官僚」のような態度では困るのです。困るのですが、現に、ネオリベ方向で国の考えを過剰に忖度し、実行しようとしておられます。

◆将来は8700円まで引き上げの構え

そして、広島市は、将来は8700円まで学童保育の保護者負担を引き上げる構えです。市側の言い分としては、「国の言う通り、半額を保護者負担にするのであれば、8700円になる。だから、現状でも高所得者家庭は8700-5000=3700円、低所得家庭でも8700-3000=5700円「配慮している」」というのです。

だが、本人がどこまで本気かどうかは別としても、地元選出の岸田総理も「異次元の少子化対策」とぶち上げておられるときです。わざわざ、それに逆行するような方向での学童保育の有料化、さらなる値上げというのもいかがなものでしょうか?実際のところ、松井市政の国を都合の良い時は隠れ蓑にして、こどもへの支援はサボタージュしたい、という本音が透けて見えます。

◆「サービス向上」が招く指導員の執行体制崩壊

さて、値上げするならサービスの向上がなければ、利用する保護者も子どももたまったものではありません。古びた施設の修繕は当然としても、そのほかのサービス向上の内容は「いままで休所していた第二土曜日を開所する」というものです。

ところが、学童保育の指導員の執行体制は現状でもボロボロです。2022年度当初は72人欠員が生じたので補充はしています。しかし、15人がすでに2023年1月現在で退職。2割以上が1年どころか10か月もたたずに退職とは筆者の勤務先の介護現場は別として、異常事態です。

安い給料でもやりがいだけでなんとかモチベーションを維持してきた指導員たちも限界です。そこへ来て、これまで休みだった第二土曜も開所しろという。しかも、労使合意もないままです。このままいけば、「有料になるわ、サービスは崩壊するわ」で保護者や子どもも地団駄を踏むしかなくなります。

◆いい加減すぎる市長、議会で追及を

今回のイベントでコメンテーターを務めた田村和之広大名誉教授は、「松井市長は就任以降細々な負担引き上げをし、それで数千万円の歳入増はするが、しかし数百億規模の事業で無駄遣いをしている。」と指摘します。

学童保育の根拠は民主党政権が方向性をつくった2015年の児童福祉法改正でできた。その第21条の10に「市町村が放課後児童健全育成を行う」と定められており「私人」扱いはない。」。

「公の施設は条例を定めないとできない。広島市は保育料も規則でさだめている。違法の疑いがある。学童保育は規則でさえなく要綱でやろうとしている。こんないい加減なことをやっている市を法を根拠に追及する議員が議会にいないのか?」と田村名誉教授は嘆きます。統一地方選で、松井市長を打倒できればいいのですが、市長打倒にいたらずとも、市長をガツンと追及する市議もふやしていく必要があると痛感しました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士 1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。2023年広島県議選にも立候補。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)。
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月刊『紙の爆弾』2023年6月号

3月4日、学習シンポジウム 「市民の声が地域医療を守る」が広島市内で行われました。広島県知事の湯崎英彦さんは、広島県病院、JR病院、中電病院、舟入市民病院(小児救急)などを統廃合し、病床を大幅に削減した上で、広島駅北口に集約することを一方的に発表しています。

主催者で広島民医連会長の 佐々木俊哉代表は開会あいさつで、湯崎知事の病院再編について「男性の医療サイド関係者ばかりで議論した医療機関統廃合案で住民の声が反映されていない。」と指摘しました。

続いて、府中市立北市民病院の独立行政法人化に反対する裁判を闘われた、府中市上下町(じょうげちょう)の黒木整形外科リハビリテーションクリニック院長の黒木秀尚先生から「公立公的病院再編統廃合対策-草の根住民運動による住民自治・民主主義の獲得と「医療を受ける権利の基本法」の制定」と題してご講演いただきました。ご講演からは今の広島が抱えている課題がよく見えてきました、

◆強引に地域を引き裂いて府中市に編入された上下町

 

黒木秀尚=黒木整形外科リハビリテーションクリニック院長

以下は黒木先生のお話しの概要をもとに筆者が再構成したものです。

広島県の無医地区は59あり、北海道に次いで第2位。そうした中で、府中北市民病院はなくてはならない病院です。府中市上下町は2004年4月に府中市に編入されました。

(ちなみにこの直前まで筆者は、県庁職員として、広島県備北地域保健所に勤務し、このあたりの介護や福祉の行政を担当させていただいていました。この合併で、管轄区域から上下町だけ外れたのを鮮明に覚えています。)

上下町はもともと、甲奴町、総領町とともに「甲奴郡」でした。府中市中心部とは26kmもあります。府中市は都市部であり、医療資源も豊富で上下町は90センチも積雪したこともあるくらいの中山間地で医療過疎。まったく府中市とは特性が違います。

日本人の平均寿命が延びた大きな要因としては、昭和20年代の自治体病院の設立、そして、1961年に国民皆保険制度が確立したことが挙げられます。

◆赤字と人口減少理由に府中北市民病院の縮小計画

しかし、府中市は合併後の2007年に赤字と人口減少を理由に府中北市民病院の縮小計画を発表しました。

これは、病院規模を3-4割削減し、常勤医師も7→3名に減らす、直営だったのを独立行政法人化して給料を減らす。療養病床を減らしてなんとサ高住にしてしまう。急性医療をあきらめ、慢性期医療に特化する。

このような地域特性を考えない内容です。

当時は、新自由主義で有名な伊藤吉和市長だったことも影響しています。また、上記の病院リストラは、新自由主義色が濃い2007年12月の総務省の公立病院改革ガイドラインの「突撃隊」ともいえるものです。

そして、2009年には府中地域医療提供体制計画が発表され、旧上下町と旧府中市では距離があるにもかかわらず、府中市全体をひとつの地域とみなし、民間病院に急性期を任せ北市民病院は手術や救急患者の受け入れを止めるというものでした。

これに対して、府中北市民病院の現状維持を求める運動がおこり、2010年12月にシンポジウム、2011年1月には広島県知事に陳情、となります。

そもそも、同病院は全国の同規模の自治体病院の中でも経営は健全な方だったのに伊藤市政が「病院の再生は困難」と決めつけたのは事実と異なっていました。

◆独法化強行で目を覆わんばかりの惨状

そして、伊藤市政は2012年4月に独法化を強行。これにより、救急車の受け入れは困難になり、患者も早期退院を迫られる、マムシにかまれた人も世羅町に搬送せざるを得なくなるなど患者に大きな負担がかかりました。

一方で、医師や看護師の過重労働も深刻化。職員も将来に不安を感じ、退職者も相次ぎました。そして、経営自体も改善しませんでした。むしろ、町営時代よりも医業収支比率は低下してしまいました。

そひとたび独法になってしまうと、住民の声も通らない、市長が政権交代して指導しようにも指導できない、議会の関与も難しいという有様になってしまったのです。要は、独法化とは非民主的な法人になるということです。

黒木先生は、ふるさと上下を愛しておられます。現在も病院を守るための住民運動は続いています。

一貫した要求は
・85床、常勤医師6名
・府中市の直営に戻すこと、
・協議と合意の実現です。

◆独法化取り消し訴訟も棄却

そうした中で、独法化取り消し訴訟を住民は2012年4月30日提起。しかし、2016年、最終的に最高裁でも訴えは棄却されてしまいます。この理由は、日本の医療法・医師法は医療施設や医療従事者への「取締法規」に過ぎず、国の政策に奉仕するものにすぎないからです。だから裁判官も、医療を受ける権利を求める住民の訴えを棄却するのです。

憲法25条はありますが、日本の裁判官は憲法判断を避ける傾向にあります。したがって、やはり法律を作る方が問題解決には手っ取り早いのです。したがって、リスボン宣言のような患者を擁護する立場に立った内田博文全国人権擁護委員連合会会長が提案する「医療を受ける権利に関する医療基本法」を制定しないといけないのです。そして、医療は政治であり、新自由主義から民主主義へ変えていかなければならないのです。

実際、コロナ禍では、特に2020年4月~5月に医療は瀕死状態になりました。この背景には、最近の政府による社会保障費・医療費抑制政策があります。そして13万人もの医師不足が問題です。

◆「人口が減るから整理統廃合」の落とし穴

また、国は、「人口が減るから整理統廃合」という政策を病院でも学校(特に高校)でも進めてきました。

現在は「自治体戦略2040構想」という形で進められています。ところがそれにより、余計に人口が減るということが起きているのです。広島県は、自治体を86から23に減らし、県立高校の統廃合も強力に進めています。その広島県は、人口流出全国ワーストワンです。

広島県(湯崎知事)が進める病院の再編構想も結局は「人口が減るから整理統廃合」路線なのです。

しかし、その「2040構想」の方向で進めばどうなるか? 県内の平成の大合併であったような、市議も出せずに民意も通らないで衰退する周辺地域がさらに拡大・広域化します。そして、外部委託や独立行政法人化で民意を反映する首長や議会の関与も難しくなるのです。

そして、公務員が激減し、非正規ばかりになり、サービス低下、地方自治、住民自治、住民主権が崩壊します。そして、中央集権専制国家、さらなる人口減少、パンデミックや大災害に弱い国になってしまいます。

新自由主義政治から、民主主義への転換。患者を擁護する立場に立った「医療基本法」の制定、草の根住民運動継続による住民自治・地方分権の獲得。これをしっかりやることです。

黒木先生たちの活動は「『医療は政治』 地域医療を守る広島・府中市 草の根住民運動の全記録」として記録されています。

◆新自由主義卒業で人口流出を止めよう

これまでもご紹介しているように、人口流出と新自由主義のスパイラルが起きている広島県。新自由主義から民主主義へ転換することで止めていきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士 1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。2023年広島県議選にも立候補。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)。
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

「深呼吸して、今の「政治」を語り合う 広島の政治を良くするつどい」が統一地方選挙を前にした3月12日、「新しい広島市長を誕生させる会」の主催でありました。「誕生させる会」は、広島の政治、とくに松井市長による暴走を憂慮した市民が、対抗馬を擁立するために集まった団体です。しかし、手を上げる人がおらず、結局、団体独自の候補擁立は断念しました。

しかしそれでも、目前に迫った統一地方選挙を前に、広島の政治を少しでもよくしなければならない。そのために集まって市民の声を市長選、県議選、市議選候補らにぶつけていく。そういう方向で進むことになったものです。その第一段階として、今回、市政や県政のいろいろな課題に取り組む方が意見を述べ合うことになりました。

◆「図書館のあり方」に反する「にぎわい」重視の松井市長

 

松井市長の暴走が続くエールエールA館への広島市中央図書館移設問題に取り組む学校の先生は「図書館は1地方図書館ではなく世界のヒロシマの図書館だ」。「中央図書館は現在地にあるからこそ平和の発信力がある」と強調。

この問題に取り組むもうひと方もエールエール館移転について情報公開を求めたら真っ黒の文書が出てきた、と呆れました。またそもそも、「にぎわい」を市長は強調するがこれは図書館のあり方と違うと指摘しました。

◆「はだしのゲン」削除問題

ついで、教科書ネットワークの岸直人さんからは、市教委の暴走が続く、「はだしのゲン」問題について、議事録に「誤解を懸念する」意見は出ているが「はだしのゲンを止めて他に変えたほうがいい」という結論は出ていないことが明らかにされました。「議論されないまま削除するのはおかしい。」と岸さんは怒ります。

その後も、中学校教材の第五福竜丸が削除されたり、高校教材での中沢啓治さんの被爆体験の核心部分はごっそり削除されたりするなどの市教委の暴走が続いています。

そして、中学校では第五福竜丸の代わりにオバマ来広時の写真、被爆二世のインタビューが取り上げられていています。

「原爆被害の悲惨さを伝える内容から、アメリカと一緒にすすむことが大事というメッセージに変わった」「戦争の加害や差別性を批判する力を育てない平和教育になっている。

◆法改正背景に教育長独裁進む

官製談合事件を中心に広島の教育行政について今谷賢ニさんが報告。既報の通り、平川教育長は自分自身については、給料の3割2ヶ月自主返納、現部長の課長級職員に処分をしました。

1.教育長が親密なNPO法人に事業丸投げしたこと。
2.調査費用に三千万円をかけたこと。
3.タクシー費用を一年間100万円以上も使っていたこと。

これらについて、今谷さんは監査請求を行いました。

また、広島市立中央図書館に関する議論は、文教委員会でされていたのが総務委員会でされています。これは法律改正によるもので、首長の意向がストレートに図書館行政にも反映されるようになりました。

そもそも、教育長も昔は教育委員長の部下でした。ところが、安倍晋三さんによる地方教育行政法改正により、教育長がすべての権限を持っており、教育長に対しては首長しか処分ができないようになっています。

そして、教育大綱は首長がつくることになっており教育基本法の理念を活かす余地はなくなっているそうです。

「はだしのゲン」の削除についても実は教育委員会が平和教材を押し付けるのが問題、と今谷さんは指摘します。平和教育というのは、本来は教育実践をしながら改訂するものであり、それを一方的にやるのが大きな問題である。知事や市長言いなりの教育行政が問題だと力を込めました。

また、広島市では、プールも壊れたら修理せずバスで麓の学校に入りに行くが、ほとんど水に入る時間がないそうです。「市教委はこれまで指導要領を守れと言ってきたがあれは何だったのか」と今谷さんは呆れました。

◆センター方式給食強行で暴走、シングルマザーにも冷たい広島市

学校給食の無償化に取り組む新日本婦人の会からは、「広島市は10年後に5ブロックでセンター方式にしたい意向だ」と嘆きます。その上で、「給食無償化は41億円あればできる。」と自校式での無料給食の実現を訴えました。

◆住まい失った親子に冷たすぎる広島市政

子どもの貧困化については反貧困ネットワーク広島から報告がありました。同ネットワークではシェルター支援をされています。今日まで、2000人の利用者がおられます。これまでは二十代~四十代男性が解雇と同時に住まいを失ったケースが多かったのです。しかし、ここのところ、DVから逃げた母子や高齢者も増えています。労働政策の見直しや社会保障の充実が必要、と担当者は強調します。

シェルター利用者の中には中学生が親代わりに手続きなどしている家庭があります。しかし、住所が定まらないと広島市の場合は行政サービスにつながらないのです。「広島市はシングルマザーに冷たすぎる。」と担当者は憤ります。

◆広島の都市づくりは「わや」

「広島の都市づくりは「わや」(広島弁で無茶苦茶、という意味)じゃ」。

二葉山トンネルを考える市民の会の越智俊二さんは断じます。二葉山トンネルは現在、工事が中断し、2020年完成予定がのびのびになりました。費用も爆増しています。トンネル掘るカッターが故障しまくりです。そして不可解な事業費増額も相次ぎました。当初の87億どころか345億円まで工事費は増額しています。

そして、大林組主導のJVも壊れやすいカッターをわざわざ使っており、施工管理委員会で誰も問題にしない状況です。その委員は、陥没事故を起こした外環道の委員と同じでした。

シールドマシンは騒音規制の対象ではないため、住民は迷惑しています。そして、団地で異常隆起しても委員会は上のことに感知しないという、無責任な状態です。そして有料道路は本来40年間で無料化のはずが92年後に無料化先延ばしになっており、踏んだり蹴ったりです。

一方、安佐南区の上安産廃処分場では盛り土崩落しました。汚染水も出ています。この盛り土は2021年7月に崩壊して多数の犠牲者を出した熱海の盛り土よりも大きな盛り土で、段切せず滑りやすいものです。

しかも、耐震基準は水平振動のみ対象でたったの140ガルです。しかも地震動は山地形では増幅されやすく盛り土上部ではよく揺れます。豪雨にも弱いのです。

◆野党内でも「自民幕府」に阿る人たちを打倒する「高杉晋作」を!筆者強調

筆者も、手を上げて発言を求めました。

筆者は「高杉晋作は、どうやって幕府を倒したか?まず、長州藩の中で、幕府に阿る人たち、すなわち俗論派を絵堂・大田の戦いで打倒し、その上で討幕に向かった。」

「広島においては、自民、公明は言うに及ばず、立憲民主党も知事や市長に阿っている。野党の中でも自民党幕府に阿る人たちを打倒する高杉晋作のような人間が必要だ。自民、公明、立憲を打倒する高杉晋作のような人の登場を一人でも多く望む」と、檄を飛ばしました。

うなずく出席者も多くおられましたが、シーンとなってしまいました。それでもあとから何人かから「よく言ってくれた」というおほめをいただきました。

◆サミット翼賛体制だ!

田村和之・広島大学名誉教授からはまとめのコメントをいただきました。

今の広島の政治は「G7広島サミット翼賛体制になっている。法的な根拠もなく、市民の行動を制限している。」と指摘しています。実際に、サミット期間中は、宮島の観光を制限するなど、市民生活には多くの影響が出ます。

田村名誉教授は、このサミットに伴う行動規制について、「ねらい・効果は現在の体制を肯定し、無批判に従う風潮を拡大するもの。」と憤ります。

そして、広島の政治の特徴としては中央官僚出身の首長ばかりがトップを占めていることです。

湯崎県知事 通産省、自公民推薦
松井広島市長 厚労省 自公民推薦
枝広福山市長 財務省 自立公民推薦。

中央政府の政策を忠実に実施し、県民・市民福祉を軽視しているという点で共通しています。そのうち、湯崎知事は四期目でやりたい放題であり、松井市長は開発行政に邁進しています。そして、議会が全く機能しておらず、知事・市長の翼賛機関だ、と糾弾しました。

平和行政についても、2021年6月、日本国憲法が登場しない【平和推進基本条例】ができてしまいました。この条例では、核兵器禁止条約の締結・批准も求めません。

「県民・市民は各分野ではよく取り組んでいるがそれらの力が一つになっていない。各課題についての認識が共有できていない。また、労働運動も生活課題に取り組むべき。」などと指摘しました。

◆リニューアルできるか? 広島の政治

今回の集いでも、また、筆者が政治活動で接する自民党支持者含む多くの広島県民・市民が広島の政治に不満を持っていることは実感しています。

問題は、それが、4月9日執行の広島市長選挙、広島県議会議員選挙、広島市議会議員選挙の結果に反映されるかどうかでした。

広島市長選挙については無投票の雰囲気もありましたが、共産党新人の高見あつみさん、そして無所属の大山ひろしさんが相次ぎ立候補を表明しました。正直、松井市長を打倒するところまではいかずとも、論戦が盛り上がり、過去は圧勝しまくりだった現職の松井さんを少しでも追い上げられれば、少しは市政も引き締まると思われました。ただ、結果は松井さんが8割近い得票で再選されました。

また、市長の暴走に待ったをかけられなかった市議会の自民多数派、公明、立憲の現職議員。

また知事や教育長をここまで増長させた県議会の同じく自民、公明、立憲の現職議員。

そうした人たちを市民・県民が一人でも多く打倒できるか? も焦点でした。自民党は後退したものの、県議会では河井陣営からお金をもらった方も当選されていますし、組織をバックにした人の強さが目立ちました。筆者自身も県議選に参加し、終盤では、組織の力に跳ね返されてしまいました。組織中心、お金中心の広島の政治の在り方をリニューアルする先頭にあきらめずに立ち続けます。

市議会では、中央では自民よりも新自由主義寄りの維新が3議席を新たに獲得しました。実は維新でも個々人では筆者の知人でリベラルな本音をよく存じている方も多いのですが、松井市政に対してどういう動きをされるのか? 一市民として注視してまいります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士 1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。2023年広島県議選にも立候補。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)。
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月刊『紙の爆弾』2023年5月号

4月19日(水)、伊方原発運転差し止め広島裁判の第32回口頭弁論が広島地裁で行われました。

 

広島地裁

この裁判は、あの東電福島原発事故から5年に当たる2016年3月11日に広島市民らが、四国電力を相手取って伊方原発3号機の運転差し止めを求めて提訴しました。現在では広島県内だけでなく、伊方原発に近い愛媛県八幡浜市を含む全国各地から原告が加わっています。

この伊方原発運転差し止め裁判の「人証調べ」が始まりました。この人証調べとは、生身の人間が証言し、それが証拠となることです。虚偽答弁をすれば偽証罪に問われます。

この日は、原告でもある哲野イサクさん(戸籍名:伊奈道明さん)が避難計画について研究するwebジャーナリストとしての立場で証言しました。まずは、原告側弁護人による主尋問に答える形で哲野さんが伊方原発による避難計画について述べました。その内容は、避難計画の杜撰さを暴露するものでした。

◆広島市は国の指示待ち、県は指示要望も国はなしのつぶて

南海トラフ地震についての防災計画はもちろん、広島県も広島市もあります。ところが、伊方原発事故が発生した場合の避難計画は広島県も広島市もありません。もし伊方原発が過酷事故を起こせば、原子力規制庁の楽観的なシナリオでも広島市も4ミリシーベルト以上のヒバクを1週間ですることが読み取れます。

 

 

※また、瀬戸内海、太田川を伝って、汚染水が原爆ドームなど中心部はもちろん、安佐南区の長束・西原あたりまでさかのぼることが予想されます。実際に、このあたりまで海水が遡上しているので、当然、放射能も遡上するのは明らかです(筆者注)。

南海トラフ地震では広島市内は多くの場所で震度6弱と想定されますが、中区の全域や西区、南区などでは液状化が予想されます。液状化により道路なども寸断される可能性が高く、放射能(や放射能を含む海水)が襲ってきても避難は極めて困難です。

そうした中で、広島市は、哲野さんの問い合わせに対して避難計画はない、国の指示がなければ作成しない、というのです。

筆者の元職場である広島県は、市よりは少しマシだそうです。県は国に対して避難計画作成の指示をするように文書で要望をしているそうですがなしのつぶてのようです。

広島県の担当者は「県独自で避難計画を立てられないのか?」と問うた哲野さんに対して、「原発事故の避難計画を作成できるだけの人材も予算もノウハウもない」と回答しているそうです。

◆伊方周辺の原発事故避難計画、南海トラフ地震は全くリンクせず

では、原発事故が想定される地元の愛媛県はどうか?哲野さんは、愛媛県内と山口県上関町(上関原発計画があるが、実は伊方原発に近い)が対象となっている避難計画についても全く機能しない、と指摘します。

原発事故の避難計画は地元の伊方町のいわゆるPAZ地域、そしていわゆるUPZの伊方町、八幡浜市、大洲市、西予市、宇和島市、伊予市、内子町については策定されています。

しかし、この避難計画も南海トラフ地震とは全くリンクさせていません。他方で、南海トラフ地震の防災計画には伊方原発事故は想定されていない。要は、南海トラフ地震に続いて伊方原発事故が起きるというシナリオは想定外なのです。

さて、この避難計画によると、クルマ(自家用車)での避難を基本としつつ、クルマでの避難が困難な人については愛媛県バス協会がバスを提供して避難してもらうことになっています。

原子力防災対策 広域避難計画(愛媛県原子力情報)

名目上は、避難に必要な輸送力は確保しているように思えます。しかし、実際には、バスはいろいろなところで通常運行されています。原発事故が起きたからといって、すぐに路線バスや観光バスとして運行されているバスを避難用に回すのは机上の空論です。

そして、致命的なのは、時間軸がこの避難計画にはないことです。原発事故における避難は時間との戦いです。しかし、この避難計画には、その時間軸がない。これではもたもたしているうちに人々はヒバクしてしまいます。

そして、さらに致命的なのは、南海トラフ地震でインフラが壊滅することを想定していないことです。伊方町の国道197号線は、多くの区間で、斜面が片側または両側から迫っていたり、脇が崖だったりします。震度6強程度の揺れに見舞われれば多くの区間で土砂崩れ、がけ崩れによりずたずたになり、避難どころではなくなります。

また、佐田岬半島西部(三崎町)の人たちは、東側に原発がある以上、西へ向けて海経由で避難するしかありません。しかし、南海トラフ地震では、多くの港の設備が崩壊すると予想されています。そんな中で、船で避難するどころではありません。

また、南海トラフ地震が起きれば、避難計画で避難先とされている松山市でも家屋の倒壊などで8万人以上が避難を強いられる予測です。そういう中で原発による避難民を受け入れる余裕があるのでしょうか?

また、地震で負傷した伊方町民らを避難させるのにはどうすればいいのでしょうか? これも想定されていません。

この避難計画は、一応、国の原子力防災会議で承認はされていますが、ほとんど会議では審議されていません。

他方、アメリカでは、事故発生時の天候や時刻など様々な条件をきちんとシミュレーションして避難計画を立てることが義務付けられています。そうしたことを背景にニューヨーク州のロードアイランド電灯会社によるショアハム原発が避難計画をまともに立てられず、住民の反対運動もあって、いったん完成したものの、営業運転することなく廃炉に追い込まれています。

◆被告・四国電力弁護士の反対尋問、避難計画そのものの矛盾に言及できず

被告・四国電力の弁護士が、この後、哲野さんに反対尋問を行いました。しかし、その内容は、「哲野さんの著書に避難計画についてのものがあるのか?」とか「イギリスやフランスの避難計画はどうなっているのか?」などでした。

哲野さんの主張の根幹である避難計画が南海トラフ地震とリンクしておらず、全く機能しないことへの反論は全く聞くことができませんでした。

次回の口頭弁論は5月31日(水)11時からです。被告・四国電力社員への人証調べが行われます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年春号(NO NUKES voice改題)

月刊『紙の爆弾』2023年5月号

2021年11月、大阪市平野区の老人ホームにおいて一人で宿直勤務していた女性介護労働者(当時68)が、入居者の当時72歳の男性被疑者に金槌により惨殺される事件が発生しました。被疑者はその後、飛び降り自死したとみられます。後日、被疑者死亡で書類送検されています。

老人ホームで殺されたヘルパーの母 「介護現場の安全を」遺族が提訴

この女性介護労働者の娘さんら遺族がこのほど、老人ホームを経営する会社を訴えました。

筆者も現役介護福祉士として「介護現場で働く職員の安全確保に目が向くきっかけになれば」という娘さんと思いを心から共有します。

◆介護職員へのセクハラや暴力は〈不問同然〉の実態

いささか旧聞に属しますが、介護職員へのご利用者・ご家族からのハラスメントについては、連合系の労働組合の日本介護クラフトユニオンさんが、アンケートを実施し、2018年4月に公表しています。

https://www.nccu.gr.jp/torikumi/detail.php?SELECT_ID=201806250004

筆者は全労連系労働組合の幹部を拝命しておりますが、このように、介護労働者へのハラスメントについてまず実態把握をしようとされているクラフトユニオンさんには心から敬意を表します。

上記のアンケート結果によると、調査に回答した2411名中、74%の介護労働者が利用者やご家族からハラスメントを受けた、と回答されています。ハラスメントを受けた方の内4割がセクハラ、94%がパワハラを受けた経験があるというものです。

また、セクハラについて上司や同僚に相談したけれども状況が変わらなかったという方が48.5%もおられます。

パワハラについても、上司や同僚に相談しても状況が変わらなかったという方が43.5%もおられます。

相談しても変わらない。そんな深刻な状況が垣間見えます。皆様もご承知と思いますが、介護職員が入居者に暴力や暴言をすれば、もちろん、虐待になります。

しかし、逆に入居者から介護職員への暴力やセクハラは事実上、不問に付されてきたといってもいいのではないでしょうか?

◆暴力・ハラスメントの野放しは介護現場の荒廃へ

上記のアンケートでもセクハラで19%、パワハラで22。8%の方が誰にも相談しなかったと答えておられ、「誰に相談しても解決しないから」「認知症の周辺症状だから」と回答しておられます。

特に年配女性労働者の中には【そういうものだ】と我慢してしまう方が多いように筆者の経験上、感じます。しかし、我慢している場合ではありません。

現状のように、安全確保もしてもらえず、給料アップも不十分では、外国人も含む若い人も介護の仕事につこうとしなくなる。このままでは現場は崩壊してしまいます。

なお、すぐ利用者にキレてしまう人ならそういう場所で平気で仕事をできるかもしれません。だが、その場合はお年寄りや障がい者に対する虐待が続発するでしょう。いや、すでにそうなっているような施設も見受けられ、恐ろしいものがあります。

◆無策の延長線上に今回の惨劇

そもそも、暴力やセクハラ傾向があるお年寄りも、たとえ認知症があったとしても無差別ではなく現実には、弱そうな相手を狙っていると感じることも多々あります。例えば露骨に入浴では女性に介助してもらわないと嫌だという男性入居者もおられます。そうした時に「そういうものだ」ということで、何も対策を講じないのはいかがなものでしょうか? その延長線上に今回の事件があったのではないでしょうか?

今回の事件では、
・3日前に他の入居者に暴行・傷害。
・その10日前には別の職員に椅子を投げる

また、最近の72歳は、例えばゲームばかりやっていて引きこもっているような若者と比べても遜色ないくらい腕力がまだある方も多いのです。そういう人が認知症の周辺症状としても、暴走すればシャレにならない。他の入居者の命にかかわる場合もあります。

事業者=会社側は十分に危険を予見できたはずだと思います。

だとすれば、例えば夜勤をワンオペではなく複数体制にするなどの対応が必要だったのではないでしょうか?労働者の安全、そして他の入居者の安全。両方を守る義務が会社にはあり、それを怠っていたと言っても仕方がない状況があるのです。

◆配置基準の緩和どころか増員こそ必要

この原稿を書いている間にも広島県内三原市では、(主として、精神障がい者の方向けの施設とみられますが)グループホームで71歳の男性入所者が他の入居者を殺害するという事件が発生してしまいました。

はっきり申し上げます。現実問題として、他の利用者や職員の安全に対する脅威になるお年寄りや障害者がおられることを前提に体制を整備すべきではないでしょうか?

もちろん、絶対にお年寄りや障がい者に対して虐待になってはいけません。虐待を避けつつ、安全を守るにはどうすべきか?

基本的には、お年寄り・障がい者に丁寧に対応するしかない。こちらがイライラすると、利用者の暴走も加速するからです。

厚生労働省も以下のようなマニュアルを三菱総研に委託して作成しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html

ところが、マニュアルのように丁寧に対応するためには、今回の事件現場となった老人ホームのようないわゆるワンオペ夜勤では無理です。

筆者の地元・広島選出の岸田総理はDX(デジタルトランスフォーメーション)を口実に、介護職員の配置基準を減らそうとしています。しかし、そうなれば、丁寧な利用者への対応は難しくなります。あなたのやっていることは、まったくあるべき方向とあべこべです。

筆者が幹部を拝命している広島自治労連が結集する「全労連」では、以下の署名も呼びかけております。

こんな低賃金では働き続けられません! ケア労働者の大幅賃上げと職員配置基準の引き上げをしてください

https://chng.it/JmqqtWSQ5K

賃上げとともに

「2.職員配置基準を改善すること
1)「ワンオペ夜勤」の改善など、利用者の安心・安全の確保と労働法令が遵守できるだけの職員が正規職員で配置できるように、職員配置基準を抜本的に改善すること。」

を要求しています。ぜひともご協力をお願い申し上げます。

また、筆者自身も広島県議会内で介護現場出身の初の議員としてこの問題について全力で取り組んで参る覚悟です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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2023年4月9日、統一地方選挙・広島県議会議員選挙が執行されました。

筆者はあの河井案里さんの地盤だった安佐南区で無所属・れいわ新選組推薦で立候補しました。

2673票、9人中8位という結果で及びませんでした。

広島県議選 広島市安佐南区選挙区
定員 5 有権者数 193,624 投票率 34.16%

当 灰岡 香奈 自民 現 39歳 12,782(19.9%)
当 栗原 俊二 公明 現 63歳 11,128(17.3%)
当 竹原 哲  自民 現 49歳  8,938(13.9%)
当 鷹広 純   無 現 48歳  8,191(12.8%)推薦:立民・国民県連・社民
当 藤井 敏子 共産 新 69歳  6,672(10.4%)
  前田 康治 自民 現 57歳  6,157(9.6%)
  小田 康治 維新 新 47歳  5,246(8.2%)
  佐藤 周一  無 新 47歳  2,673(4.2%)推薦:れいわ
  伊藤 守   無 新 47歳  2,356(3.7%)

改めて、ご支援をいただきました皆様、ご協力をいただきました皆様にお礼申し上げます(インターネットでのお礼は公選法で認められていますが、これをプリントアウトすると違反になりますので、ご注意ください)。

筆者は、2022年の5月、参院選広島から県議選安佐南区への転出を決定。その後、参院選2022終了後、無所属で県議選への準備を進めて参りました。12月にれいわ新選組の推薦を頂きました。

◆広島が大好きだからこそ、広島の現状を憂える

 

広陵高校出身の担任の先生にカープを叩き込まれた小学校時代。そして、安佐南区が主要な舞台となった井伏鱒二の「黒い雨」に感激した高校時代。そして、安佐南区の長束小学校のネットでの平和学習を進められていた先生や生徒さん、大学の先生との交流。そして大学卒業後は国家公務員と県庁を受かって県庁を迷わず選んだ筆者。採用面接では「広島が好きだから県庁を選びます」と申し上げました。

県庁時代には、しかし、おひとりおひとりが大事にされているか疑問に思いだしました。組織やお金、過去の成功体験に囚われた広島の政治をリニューアルしないといけない。そういう思いで、2011年、県議選安佐南区で立候補。4278票で及ばず、3年間政治活動を続けるも限界を感じ、東京へ戻りました。

だが、2014年8月20日、広島土砂災害2014の一報に、「広島をなんとかせにゃあいけまあ」という思いで、広島へ帰りました。そしてボランティア活動に奔走。広島に貢献したいと介護の仕事を開始し、政治活動を再開しました。

だが、組織やお金、過去の成功体験に囚われた政治が続く中で、広島の現状はいかがでしょうか? ひとりひとりが大切にされていると言えるでしょうか? 平和都市に恥ずかしくない、政治・行政と言えるでしょうか?

そんな思いが強まる一方で、2021年、河井案里さんの当選無効による参院選広島再選挙に立候補しました。

◆広島の現状は人口流出ワーストワン2年連続

筆者の勤務先の介護施設でも外国人労働者もすぐ辞めて東京へ向かうという危機的な状況。

広島駅周辺などへの投資は県や市は熱心でも、安佐南区などの防災工事や道路の補修は進まず。

教育長は思い付きの改革を進めた挙句に、官製談合事件。現場の先生は非正規ばかり。

学校のプールなど補修が追い付かない。

水源地のど真ん中に産廃処分場が許可されてしまう

筆者自身が県議選立候補の為に県庁を去ってから、特にこの2~3年の広島の政治・行政の状況は悪化する一方です。このままでは、いけない、という思いからふたたび、立ち上がりました。お金や組織、過去の成功体験に囚われた政治をなんとかせにゃあいけまあ。

「県政をガツンとリニューアル」「広島とあなたを守る大改革」

をスローガンに、
ケア労働者などを中心に広島で働くあなたのお給料大幅アップ。
非正規の使い捨てを止める。
介護する人もされる人も笑顔の広島県。
産廃から水や食料を守る。
地域食材のオーガニック無料の給食導入で農家支援。
国保料大幅引き下げ、子ども医療費無料化18歳までの拡大。
総理の暴走・迷走を広島から止める。
などを全力で訴えました。

◆かつてなく多くの方にご支援いただく

筆者が立候補した過去2回の選挙、すなわち県議選2011、参院選広島再選挙2021では、選挙カーの上の筆者の隣には運転手しかいない、という状態がほとんどでした。

しかし、今回は、多くの方にご支援をいただきました。れいわ新選組チーム広島の皆様にはさとうしゅういち後援会員という形で、スタッフを担っていただきました。これまで、筆者が自分でやらなければいけなかった、事務的なことも多くをしていただき、体制としては雲泥の差でした。

また、選挙直前の決起集会では大島九州男参院議員、そして選挙期間中も、竹村かつし・下関市議、「次次期参院議員」の辻恵弁護士、大学の先輩でもある高井たかし・れいわ新選組幹事長が次々と応援にかけつけてくださいました。

さらに、途中、地元の大物弁護士らも応援にかけつけてくださいました。

古市橋駅前での出発式 竹村かつし下関市議の応援演説

◆「さとうさんは今回、行けるでしょう」という下馬評の落とし穴

 

農村部でも訴える筆者

今回の選挙では、「さとうさんは今回、行けるでしょう。」という下馬評が、あちこちから聞かれました。根拠としては、そうはいっても、参院選広島再選挙にも立候補していて知名度は高いこと、長年、地域を回っていたことです。「今回はいける」というのが敵味方問わず出てくるのは当然。他陣営の調査でも筆者が当選圏内ということが漏れてきました。

しかし、これがいけないのです。筆者が支持をお願いした方々に対して他候補が「さとうさんは大丈夫だからうちへ」というお願いをしていった、という情報を多数得ています。

そして、見る見るうちに、支持は削られ、蓋を開けてみれば、他陣営の事前予測等の3分の1程度の票になっていた、というわけです。

◆共産党の局地的突風的追い風

日本共産党は、全国的には松竹信幸さん除名問題などで、惨敗しました。しかし、広島では、河井事件の余波がまだ残っており、それが共産党への追い風となりました。また、被爆地ということで、総理の暴走に不安を感じる層が、共産党というそうはいっても看板の古いところに流れた感があります。実際に、筆者を支持してくださっていた方の中でも相当、共産党の藤井候補に票が流れた感じはします。

◆相手候補が筆者の主張に寄せる場面も

 

2014年の土砂災害被災地で訴える筆者

今回、途中で、相手候補者が主張をわたしの主張に寄せてくる場面もありました。

教育長に甘い姿勢だった立憲推薦の現職も、マスコミなどのアンケートには教育長更迭すべし、と回答するようになりました。与党現職女性は、熱心に非正規教員の問題を取り上げるようになりました。与野党候補の論戦をリードする形にはなったと自負しています。

◆既成政党以外で選挙を回す集団が広島に出現

今回はれいわ新選組ボランティアの皆様に、あくまで、さとうしゅういち後援会で活動していただくという形ですが、大変お世話になりました。後援会事務局長は普通のサラリーマンですが、最大限、できることをしていただいたと思います。

旧来の組織型政党や団体とは違う形で、市民が個人として参加し、選挙を回すという集団が現れたことは広島の政治史上、画期的なことです。

世襲か、高級官僚か、公明党か、共産党か、いわゆる労働貴族か。そういう人しか、事実上、県議や国会議員になれないような広島の状況をリニューアルしたい。

今後とも、筆者は、労働組合役員などの活動を通じて、労働者の待遇改善や、介護サービス、教育現場の改善などの先頭に地域で立っていきながら、政治活動も続けます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島高裁は3月29日、水源地ど真ん中の産廃処分場を容認してしまいました。

三原の本郷産廃処分場はJAB協同組合が経営。三原市と竹原市の水源地ど真ん中にあります。2018年4月に計画が持ち上がりました。住民の皆様は当然、猛烈な反対運動を展開し、三原市議会でも竹原市議会でも全会一致で反対決議が採択されました。しかし、広島県(知事・湯崎英彦さん)は、この処分場を許可してしまいました。そして、2020年5月から工事が始まっています。

これに対して、住民は広島県に対しては許可の取り消しの行政訴訟、そして事業者に対しては工事の差し止めを求める仮処分申請を提起しています。

2021年3月に広島地裁は工事差し止めを認めましたが、事業者が異議を申し立てました。そして、地裁は2022年6月に業者の異議を認めて、産廃処分場の稼働を容認してしまいます。それに対して住民が高裁に抗告していました。

◆群馬や長野からゴミが広島へ流入

差し止めを求めている原告のお話によると、今現在、高崎ナンバーや松本ナンバーの車が大量に入ってきているそうです。

「高い日本の高速道路料金を払ってまで群馬や長野から来ているゴミって何ですか? よほど危ないものなのではないのですか?」と原告の一人は語気を強めておられます。

そのゴミは、「ほとんど、開封して検査している様子もなく、そのまま重機で埋め立てられている」ようです。

広島は全国でも産業廃棄物処分場が多くあります。特に、安定型処分場は二番目に多くなっています。この安定型というのが曲者で、シートすら敷かずに建前は、安全なゴミを搬入するはずなのですが、現実には危険物も運び込まれ、何か起きない限り、ほとんど検査もされない。いい加減な運用になっているのは、皆様もご存じと思います。その安定型処分場が広島では多いのです。それは、広島に他の都道府県のような水道水源保護条例や環境配慮条例がないからです。かくて、規制が緩い広島を目指して日本中からゴミが集まっているのです。

 

◆まさかの不当決定 「伊方原発」に続いて「やられた!」

2023年3月29日、桜が満開の中、裁判所の前で、「満開の桜のような決定があるといいね」と原告や支持者の筆者らは雑談していました。しかし、決定が言い渡される14時過ぎ。険しい表情で若手弁護士が法廷から出てきます。

「不当決定」

筆者も頭の中が真っ白になり、その時の状況をよく覚えていません。

実は、筆者は選挙準備などで時間がなくて目撃できていませんが、3月24日(金)には、同じ高裁が伊方原発広島裁判の運転差し止め仮処分を却下しています。それに続いて「やられた」感でいっぱいでした。

そうした中、弁護団の山田延廣弁護士が、決定を受けて、コメントしておられました。

「みなさまの運動は正義にかなった運動。行政や裁判所までがそれを認めないとは。裁判所や行政の決定に屈せずに里山や水を守るために闘っていこう」などと呼びかけました。

原告や支持者は差し止め絶対阻止をシュプレヒコールを上げて決意表明しました。


◎[参考動画]不当決定 本郷産廃処分場差止ならず 2023年3月29日 広島高裁

◆「水は鉛直にしか染み込まない?!」常識外の決定

ざっくり申し上げると、裁判所は、
・有害物質が付着・混入して処分場に運び込まれる恐れ
・それらが処分場の外に染み出す恐れ
については認めました。

ところが、処分場と井戸の距離が700mあって、高低差が60mしかないことを理由に、「井戸水に有害物質が入る」恐れがあることは、住民側に立証責任がある、としました。

裁判官は、「水は鉛直にしかしみ込まない」といういわば、常識外の決定をしました。

たとえば、介護現場や子育てを経験していればわかることですが、尿を漏らした場合、そこだけではなくて、オムツに広範囲に尿が広がりますよね?筆者は呆れてしまいました。

弁護士も「負けた気がしない」といっておられました。原告代表の方も「高齢者は、先が短いから汚染された水を飲まなくてもいいかもしれない。だけど、子どもや孫はそうはいかない。だから頑張る。」という趣旨の決意を表明されました。

◆水道水源保護条例や環境配慮条例の制定に全力

裁判闘争と並行して、立法も大事です。今の裁判所は残念ながら、行政に対しては、法律で明確に禁じていないことを禁じない判決しか出しません。そうした中では、明文で、行政に対して、産業廃棄物処分場などを許可する際に、環境に配慮することを義務付ける条例が必要です。他の自治体ではすでに制定されているところも多い「水道水源保護条例」や広島弁護士会も提言している「環境配慮条例」などです。原告の皆様もそうした条例の制定運動もされています。

筆者の地元・安佐南区でも上安産廃処分場が外資に買収されて巨大化しています。さらに、同処分場の盛り土が崩落していたことも発覚しています。産廃処分場規制は喫緊の課題です。筆者も広島県議会においての条例制定に全力を尽くす所存です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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