《ウィークリー理央眼022》戦争法案に反対する若者たち VOL.16 仙台

8月9日(日)、宮城県仙台市青葉区で安全保障関連法案に反対するデモが行われた。
このデモを呼びかけたのは仙台市内の大学生約20名からなる「SEALDs TOHOKU(自由と民主主義のための学生緊急行動 – 東北)」だ。毎週金曜に国会前で巨大抗議行動を行う学生団体SEALDsの動きに呼応し、東北の学生らによって7月に結成された。この日は東京からSEALDsのメンバーや近隣県からの学生、宮城県内で法案に反対する人々などが参加し、総勢500人が仙台の街で反対の声をあげた。


[動画]戦争法案ヤバいっしょ!学生デモパレードin宮城/SEALDs TOHOKU – 2015.8.9 仙台市(13分39秒)

できれば映像を視聴し、デモの雰囲気を感じ、コールやスピーチを聞いてもらいたいのだが、時間がない場合は以下のスピーチの書き起こしだけでも読んでもらいたい。

大学生(女性)
「初めてひとりぼっちで東京の学生デモに参加してから一年。まさか自分たちでデモをおこす日が来るなんて夢にも思っていませんでした。でも『一緒にデモ行くよ』っていう友達がいたから、『宮城でデモあるなら行く』っていう友達がいたから、だから学生が自分たちの声を上げる場所を作りたいと思って今日こうやってみんなで集まってます。『デモなんて意味ない』っていう人もいるけど私はそうは思いません。民意と事実を目に見えるようにする、訴えが広がれば広がるほどメディアを通して必ず政治家も無視できない存在になります。それと同時に私はデモができる時代に生きていきたいと思っています。嫌なことに『嫌だ』ってきちんと言える国で生きていきたいからこうやって声を上げています。いろんな意見がありますが、それでも私は今回の法案や決め方に絶対納得いきません」

大学生(女性)
「私たちは目立ちたい訳でも、パフォーマンスがしたい訳でもありません。政治がもっと日常的なものであるべきだと、社会の意思決定は偉そうな政治家ではなく、私たちがするんだということを自分たちの姿で示したいんです。だって民主主義です。みなさん、一緒にこの社会について、自分たちの生きる社会について真剣に考えましょう。血に染まった歴史を繰り返すのはもうやめましょう。国民が国の駒になる時代には終止符を打ちましょう。そして全ての個人が一人の人間として尊重される社会を共に作りましょう。今日は図らずも、原子爆弾が長崎に落とされてから70年の日です。悲しみの記憶を希望の明日の為の力にしましょう。人間は歴史に学ぶことができます。8月9日、私は戦争法案に反対します」

高校生(女性)
「政治のことを学校で話すことがタブーだというこの時代、覆してやりませんか。『子供だから黙ってろ』って言われるかもしれません。実際何度も言われてきています。でも黙ってたら賛成だと思われてしまいます。私たちはただ見世物の為にこのデモパレードをしているわけではありません。自分たちの未来は自分たちで作っていきたいじゃありませんか。本当はこんなことしたくない、こんなところに身を削ってまで声を上げたくない、でもこんな時代だから、こんな時代に生れたから、自分は黙って見てて決まったことに『そうなんだ』って軽い言葉で収めてしまう傍観者にはなりたくない。原発問題を含め、私たち若者の未来は私達が声を上げないと、とんでもないことになります。だからみなさん、声を上げてみることからしてみませんか」

SEALDs TOHOKUも、単に戦争法への反対だけでなく、『民主主義』や『人権』を守るという意思があり、SEALDsの主張する『フルスペックの民主主義』の考えも共有しているのだと感じた。
女性のスピーチにあった『国民が国の駒になる時代には終止符を打ちましょう』という言葉は、東京ではおなじみのコールである『言うこと聞かせる番だ俺たちが』を東北の人が奥ゆかしく言うとそうなるのかもしれない。『東北だって黙ってないさ』というプラカードも象徴的だ。

全体的にスピーチからデモへの偏見の強さというか、デモ参加のハードルが高いという認識があることが伝わってきた。確かに東北では、まだまだデモが一般的・普通なことではないと私も感じている。
聞いてみると、「デモに行ってる人」として狭いコミュニティの中で思われてしまうのが嫌だとか、「デモはダサい」というイメージが参加の妨げになっているようだ。東日本大震災直後から比べると、デモを取り巻く状況は改善されてきているものの、それでも「デモに参加している人は特殊な人だ」という認識の人がまだまだ少なくない。
今回のデモの名称が「デモ”パレード”」となっていることに気付いただろうか。このデモに限らず、デモのマイナスイメージの払拭の為に「デモパレード」という名称を用いることがある。「デモ」だと怖かったり堅かったりするからパレードの明るいイメージを足したい、「パレード」だと祝祭あるいは遊んでいるイメージがあるから真面目なイメージを足したい、などの意図があってのことだ。

そんな仙台に若者をこんなに集めたデモが行なわれた。
デモの前日まで「七夕まつり」が行われていた仙台らしく、サウンドカーに七夕飾りのくす玉吹流しが付けられていた。荷台に人が乗らず、飾りが乗っているサウンドカーは初めて見た。リズミカルなコールや色鮮やかなプラカードが、今までなかった街の風景を作り出している。
若者が行けるデモがここにはある。もう一人ではない。



[2015年8月9日(日)・宮城県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田
◎《020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷
◎《019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎

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