日本人の2人に1人がガンになる時代の〈ガンになりにくい食生活〉とは?

◆37兆2000個の細胞=肉体のエコシステム

わたしたちの肉体は37兆2000個の細胞から成っている。すべての細胞は遺伝情報(ゲノム)によって制御され、必要以上に分裂・増殖しないようにできている。

わたしたちがケガをしたときに、皮膚の細胞が増殖して傷口をふさぐ。やがて傷が治れば、皮膚の細胞は増殖を停止する。ところがガン細胞は、わたしたちの身体からの命令を無視して増殖し、大切な臓器などを破壊してしまうのだ。遺伝情報が何らかの原因で傷つき、制御が効かなくなっているからである。

正常な細胞の遺伝子に傷がつくことで、変異細胞が発生する。この変異細胞は1日に3000個も発生するとされている。正常な細胞に決まった異常が起きるようになると、その細胞は増殖をはじめる。やがて第二の異常が起きると、増殖のスピードが上がるといわれている。

◆わたしたちは生まれながらにしてガン細胞を持っている

あまり知られていないことだが、じつはわたしたちは母体のなかで生命を授かる段階で、ガン細胞を生まれながらにして持っていた。胎児が9ヶ月で3000グラムほどに育つのは、ガン遺伝子の旺盛な力によるものなのだ。誕生とともにガンの遺伝子は読み込まれないことから、わたしたちの誕生のメカニズムに関係していると考えられている。かようにガン細胞は誕生の謎とともにあるわけだが、誕生とともに死亡にも関係しているのだとしたら、何とも不思議な気がする。

いま日本人の2人に1人が、ガンになっている。そして3人に1人がガンで亡くなっている(死因全体の3割)。国民病ともいえるガンをどう克服するのか、じつは医療技術と薬品開発の加速度的な進化で、ガンは完全に克服できることが明らかになってきた。

たとえばmycと呼ばれるガン遺伝子は、タンパク質のはたらきによって際限のない増殖を引き起こすとされている。そうであるなら、タンパク質のはたらきを抑え込む薬を見つければよいのだ。日本人のなかで最も多いガンである肺ガンについても、オプジーボ(ニボルマブ)という新しいタイプの薬が承認されたのは、2015年2月のことである。このオプジーボは皮膚ガンの新薬として世界に先駆けて承認されたものだが、肺ガンにも追加承認された。

薬の研究だけではない。光免疫療法という方法もこころみられている。アメリカの国立ガン研究所の小林久隆氏を中心にした研究チームは、IR700という色素を患部の抗体に結合させ、赤外線を照射してガン細胞を破壊することに成功している。抗体(キラーT細胞)がガン細胞を敵と認識して、ガン細胞の転移や浸潤まで破壊することが想定されているという。この研究はまもなく、全世界で臨床試験の段階に入る。

あるいは、ゲノム編集(修復)を特定のウイルスを使って治療する、いわゆる遺伝子治療も有望視されている。ウイルスがガン細胞の棲む臓器に入りこみ、細胞の遺伝子を元どおりに書き換えるのだ。こちらも遺伝子治療の研究者によれば、あと数年でガンは怖い病気ではなくなると言う。

ガン研究は日進月歩であり、むしろ臨床実験の煩雑さをどう解決するのか。ガン保険などの先端医療適用をどうするのか、薬学・医療技術よりも政策の遅れが危惧されているところだ。わたしが編集長を務めていた出版社の社長は、胃と肝臓の末期ガンで亡くなった。そのさい、ガン細胞にピンポイントで効く新薬(先端医療)を頼ろうとしたが、あまりにも高額のために諦めたという。ガンは生活習慣病である。日々の生活習慣、とくに食生活の影響がもっとも大きいという。

◆ガンになりにくい食生活とは何なのか?

それではガンになりにくい食生活とは何なのか? 肉類はひかえめにして、魚を食べるように。黄緑色野菜を摂りなさい。納豆のナットキナーゼには、腐敗菌を排除し血液サラサラ効果がある。トマトのリコピンはDNAの損傷を修復するので、ガン抑制効果がある、などなど。健康食材の情報は多い。

しかしここに挙げた健康食品である納豆・トマトに、じつは悪性新生物の発生と、つよい相関関係があるのだ。国民の食生活を調査した『国民健康栄養調査』と国民の死因を調べた『都道府県死亡調査』を12ブロックに分けて、その相関係数から納豆とトマトにガンとの相関性が高い結果が得られた。ただし、相関係数は直接のガン因子ではないので、さまざまな研究例からその根拠を探してみた。

その成果をこのたび、鹿砦社LIBRARYから刊行する拙著『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(5月11日発売)に記した。健康食品のなかにひそむ危険な発ガン性、ぎゃくに赤身肉にもガンの抑制効果があること。さらには日本酒のアミノ酸に、ガンを抑制する物質がふくまれていること。ビールにもガン抑制効果があることを発見できた。食生活を見直すとともに、従来の常識をくつがえす知見にご注目いただきたい。

▼横山茂彦(よこやましげひこ)
著述業・雑誌編集者。著書に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など多数。医療関係の仕事に『新ガン治療のウソと10 年寿命を長くする本当のガン治療』(双葉社)、『日本語で受診できる海外のお医者さん』(保健同人社)、『ホントに効くのか!? アガリクス』(鹿砦社)、など。

5月11日発売 横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)
『紙の爆弾』6月号 安倍晋三“6月解散”の目論見/「市民革命」への基本戦術/創価学会・公明党がにらむ“安倍後”/ビートたけし独立騒動 すり替えられた“本筋”