司法が画期的判断! 滋賀医大附属病院を相手取り「治療妨害の禁止」を求めた岡本医師と患者7名の仮処分申立て、大津地裁が請求を認める決定下す!

決定を前に勝利を確信して語る宮内さん

5月20日、滋賀医大小線源講座で岡本圭生医師の治療を希望しながら、病院側の一方的な通告により岡本医師の手術を受けることができない、ハイリスク前立腺がん7名の患者さんと岡本医師が「治療妨害の禁止」を求め、大津地裁に仮処分を申し立てていた事件について、大津地裁(西岡繁泰靖裁判長)は、岡本医師の申立てを全面的に認める決定を下した。

患者さんと岡本医師には、代理人を通じて「(5月)20日に決定を出す」と5月17日に連絡が入っていたそうだ。

決定の発表を控えて申立人の宮内さんは、既に勝利を前提とした心境を明かしていた。

裁判所に入る宮内さんと鳥居さん

「たぶん常識的な判断を裁判所はしてくれると思います。でもこれで終わりじゃないんですよね。文字通り『同病相憐れむ』ではないですが、我々の後に患者になられる方が、ほとんど確実に治る治療を受けたくなるのが当たり前です。そのためには岡本先生に大学に残って頂いて後進を育てていただきたいです。これはまだ一里塚で本当のゴールは『岡本メソッド』が全国どこでも不安なく享受できる姿になるべきだと思います」

これまで滋賀医大問題では行政への申し入れや、街頭活動も当初は朝日新聞を除き大手メディアは一切無視。黒藪哲哉さんが参戦していただいたころからようやくマスコミの注目が集まり始めた。

あの頃を思い返すとわたし自身、妥当な決定を確信していたが、宮内さんよりも内心、最悪のケースへの懸念が抜けなかったのが正直な心境だ。

軽快な足取りで駆け出してくる宮内さんと鳥居さん

13時30分、弁護団と申し立て患者、鳥居さんと宮内さんが大津地裁に入った。

13時36分頃、裁判所内で決定書を受け取った鳥居さんと宮内さんが、裁判所玄関から正門へ向かい駆け出してきた。

二人は朗らかな表情で「待機患者の救済認められる!」のメッセージを裁判所の外で待つ患者会メンバーと、マスコミに掲げた。

「おめでとう!」の声と拍手が沸き起こった。鳥居さんは、決定内容への質問に対して「われわれ7人だけではなく、現在岡本先生の治療を受けて手術を希望している患者の11月までの手術も認められました!」と満面の笑顔で語った。

文字通りの完全勝利であった。

笑顔で勝利のメッセージを掲げる
「裁判所は病院に強い警告を発した」と解説する小原弁護士

16時30分から教育会館で岡本医師も参加し記者会見が開かれた。弁護団の石川賢治弁護士と小原弁護士が決定内容とその意義を解説した。

小原弁護士は、決定について、「岡本医師の申立てははほぼすべて認められた一方で患者側の訴えは却下ですが、内容を拝見しますと、患者も治療を受けられる結果に変わりはありません。したがって我々から見ると、『病院が医師の治療を制限した』措置に対して『そのような制限は許されない』と裁判所が、強い警告を導いたと理解しています。前例のないケースについて画期的な判断をしていただいたと理解しております。今回大津地裁の決定に対して深い敬意を表したいと思います。特に待機患者の方々は高リスクの前立腺がんを抱えた方々です。こうした人々の治療が放置されることに対して、裁判所としても強い警告を発したといっていいのかと思います。患者に寄り添った判断をしていただいたと思います。個人的な感想ですが最近の裁判所は、ともすると大きな組織に対してはその措置を覆すことに、ためらいがちだという印象を持っておりましたが、今回の大津地裁は果敢な判断をしていただき、きちっとした患者の立場に立った判断が行われたと考えております。大学あるいは病院に、是非要請したいことは、裁判所がメッセージとして発した『患者を第一に考える』を強く受け止めていただいて、是非この決定に対しては、異議の申し立て等をせず、すぐさま7月以降治療にとりかかれるよう強く要望したいと思います」と評価した。

決定への感想を述べる岡本医師

続いて岡本医師がコメントを求められた。

「今回私の治療を頼って、全国から来られている患者さんに対して、私の治療を認めるという判断が司法からなされたことで、前立腺癌で私を受診し治療を待望し、今や遅しと待って頂いている方にとって、大変ありがたい判断をしていただいたと思っております。担当医として裁判所の適正な判断に、心から敬意と感謝を表したいと思います。今回の仮処分においてわれわれが提起した問題はなにかということは、そもそも『医療とは誰のものなのか』。『医療とは誰のために行われるものか』という、根本的な問いであります。いうまでもなく医療は患者さんのために存在し、患者さんを救うために行われるべきです。医療を守っていく立場の人間の一人として、今回、医療の秩序を守るべき決定がなされたこと今後社会的にも大変重要な意義を持つのではないかと考えます。やはり医師の使命は『患者ファースト』であり『患者さんの命を救う』ことです。それが阻害される医療環境、あるいは教育機関であっては医療は立ち行かないと思います。これを機に医療の在り方を、メディアの方・社会もしっかり考えていただいて、あるべき姿に戻していただきたい、と強く望む次第です」と岡本医師は断言した。

喜びと覚悟を語る鳥居さん

続いて待機患者の鳥居さんが感想を述べた。

「今回こういう結果になって本当に喜んでおります。弁護士の先生方には深くお礼を申し上げたいです。それ以上に患者会の皆様。『待機患者のために』と本当にいろいろなことをしていただいたことに、頭が下がる思いでございます。ありがとうございました。皆様のおかげでこういう結果を勝ち取れたと思っています。ただ個人としては喜んでいますが、11月26日ということはそれ以降のことは、まだ未定なのでその点では心配しています。というのも非常に多くの方が岡本先生の治療を受けたいという声が上がっているからです。たくさん待っておられる方のことを考えると、これからが勝負のしどころ、と肝に銘じています。治療が終わって完治しましたら、今度は患者会の方々がわたしたちにしていただいた、それ以上の行動をして、前立腺がんで苦しんでいる患者のためにできることをしてゆきたいと思います」と将来への展望も含め感想を語った。

ついで宮内さんも「患者に寄り添った命令を出していただいた裁判所に感謝申し上げます。弁護団の先生方、マスコミの方々にもお力添えを頂き、同僚といったらおかしいですが、患者会の皆さんにも、自らの治療が終わっているにもかかわらず我々患者のために動いていただいたことを心から感謝申し上げます」と感謝の念を述べた。宮内さんは続いて、決定が出る前に伺ったの同様の内容とコメントした。

このニュースは関西地方で同日の夕刻、MBS、ABC、関西テレビ、琵琶湖テレビで放送された。ところがNHKテレビカメラの姿は、裁判所前にも、記者会見の席にもなかった。また、記者会見で京都滋賀に大きな力を持つ新聞の記者は、決定の意味を意図的に薄めようとしているかのような質問を発していた。

滋賀医大がこの決定を不服と判断すれば、法的には「仮処分異議」をおこなうことができる。しかし、その行為はすなはち「司法の判断を受けても、患者に治療をさせない=命の大切さを度外視する」ものであることは理解されよう。この決定が確定し、ごく当たり前に手術を受ける権利を持つ患者さんたちが、安心した健康を取り戻す日を切望せずにはいられない。弁護団、マスメディアの誰もが口にしていたが、歴史的な決定が出た一日であった。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)