日本サッカー男子がスペインに快勝したのは「奇跡」か

報道によれば、7月26日にロンドン五輪にて、日本男子が優勝候補のスペインを1-0で撃破した勝利を「グラスゴーの奇跡」と呼んでいるようだ。
日本全体で1996年のアトランタ五輪で強豪ブラジルを破った「マイアミの奇跡」から16年。決勝トーナメント進出を大きくたぐり寄せ、44年ぶりのメダル獲得にも期待が膨らんだことについて、サッカーファンのみならず日本中が浮かれているようだ。

「冗談じゃありませんよ。森岡幸太、大津祐樹、永井謙佑、清武弘嗣らは世界でもトップクラス。どこの誰とは言いませんが、ヨーロッパのクラブに呼ばれてから金も名誉に手に入れて、CMでがっぽり稼いでいる、大人の日本代表たちとは、ハングリーさがちがいます。勝って当然ですよ」(スポーツ・ジャーナリスト)
日本の勝利は奇跡でもなんでもない。順当な勝利である。
サッカーの専門ライターやジャーナリストたちの多くはそう見ているが、ここでは割愛する。

残念ながら、スペインのチームなどはロンドン五輪などに情熱を傾けていない。
彼らが狙うのは、ワールドカップであり、ユーロである。
このところワールドカップに続いて、ユーロもスペインが制覇したが、これは、シャビとイニエスタという稀代のファンタジスタがいることに大きく依存している。二人がいないスペインは素人集団も同然だ。

サッカーは「和」のスポーツである。個々の実力が劣っていたとしても、チームワークがよければ、勝利する。
しばしば金で選手をかき集めたプロのチームが天皇杯で大学のチームに負けたりする。
これがサッカーの醍醐味である。

話を変える。「和」のサッカーをする岡田武史氏が中国に渡り、「杭州緑城」というチームを率いて奮闘している。
岡田監督が好むサッカーは、ワントップで、放り込んだボールをワントップが起点となって攻撃を展開するスタイルだ。
しかし現代サッカーは「パスを縦横に回す」サッカーにシフトしつつある。
ロングボールを放り込むようなスタイルが、いまひとつ通用しなくなってきたのは、守備のシステムの研究が進化してきたからだ。

岡田監督は、一部のサッカー関係者から、中国で指揮していることを大きく批判されているようだ。
しかし、日本サッカー男子をワールドカップでベスト16まで引き上げた功績は大きい。だれもなしえていないことだからだ。
2006年のワールドカップにて、日本がジーコ監督でオーストラリアに3―1でボロ負けした時点で、少なくとも日本サッカー界では「勝利するためのサッカーのシステムの研究」が各所ではじまった。Jリーグでも、アマチュアでも今や「ディフェンスラインの上げ下げ」について激論が交わされる。

今、その成果がロンドン五輪で出ている。日本男子が勝利したのは奇跡ではない。そして、その礎を作ったのは、まずまちがいなく、岡田武史氏、その人である。
名将、岡田武史。ぜひ中国のチームを世界一にしていただきたい。勝てる日本サッカーの「原型」を作り上げたのは、岡田監督にちがいないのだから。

(九頭龍家元)

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