厚顔無恥に「表現の自由」踏みにじる、FM熊本の回答

FM熊本から、回答が来た。
この間お伝えしているように、『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』『東電・原発おっかけマップ』を「コラコラ・コラム」で取り上げた、高校生向けの進路情報番組『ラジオキャンパス』が、FM熊本で番組ごと打ち切りになった。
これに対して、鹿砦社が抗議した。その回答が、11月19日付で来たのだ。

内容を引用する。
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平成24年10月28日に放送予定とされていた番組『ラジオキャンパス』内の「コラコラ・コラム」は、貴社出版の『タブーなき原発事故調書』『東電・原発おっかけマップ』を取り上げ紹介するものでした。ただ、紹介にあたっては、パーソナリティーの納谷正基氏から、当該書籍には、原発推進にかかわったとされる関係者の自宅住所やその略図が掲載されていることが強調されており、あわせて同関係者にはプライバシーがない旨の発言もなされています。そこで、エフエム熊本は、「コラコラ・コラム」の内容は、個人情報やプライバシーに対し慎重な対応を定めた同社の番組基準に照らし適切ではないと判断して放送を見合わせることにしたものです。したがって、今回のエフエム熊本の対応は、貴社の主張されるような憲法21条の定める「表現の自由」や「検閲の禁止」に抵触するものではありません。なお、エフエム熊本としては、放送予定の上記番組のうち、「コラコラ・コラム」の部分のみ放送を見合わせることにしていましたが、納谷氏のご意向により『ラジオキャンパス』全体の中止となったものです。
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エフエム熊本が、「コラコラ・コラム」の内容にクレームをつけ、それを納谷氏が承諾しなかったため、『ラジオキャンパス』の中止に至った、というのは、私たちも確認している通りの経緯だ。
しかし、これを「納谷氏のご意向」による番組中止、と言うのは正しいのか。

原発を批判した『サマータイム・ブルース』『ラヴ・ミー・テンダー』などの削除を求められて、忌野清志郎はそれを受け入れず、東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)から発売される予定だったアルバム『COVERS』は、発売中止となった。
これを、「忌野氏のご意向」による発売中止、とは、当の東芝EMIでさえも言わなかった。

それを考えれば分かる通り、あまりにも厚顔無恥な回答である。
しかも回答を送ってきたのは、FM熊本そのものではなく、三藤省三氏という代理人弁護士である。
言うまでもなく、様々な事柄について、それぞれに異なる見解を持つのが、弁護士だ。
『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』では、今はなき日隅一雄弁護士が、同書の趣旨に賛同して、インタビューに応じてくださっている。
FM熊本が、自分の言葉で答えるのではなく、弁護士に代弁させているのは、自らが言論機関の一つである、ということを否定したに等しいのではないか。

原発の危険性、なかんずく福島第一原発については、多くの識者から、津波や地震に耐えられない、という具体的な指摘が事故の遙か前からなされてきた。
東京電力はデータ改竄などをくり返し、安全性を装い、原子力ムラに抱えられた御用学者たちは、それにお墨付きを与えてきた。
福島第一原発の事故によって、双葉病院と介護施設「ドーヴィル双葉」の患者50名が、避難によって死亡している。これから、放射能の影響によって、どのような被害が出てくるかも分からない。
福島第一原発の事故は、業務上の過失による死傷責任が問われるべきことである。

事故直後に放射能の安全性を強弁して、福島の子供たちにより多くの被曝を強いた学者らも含め、『タブーなき原発事故調書』で上げた超A級戦犯26人は、本来なら法廷で裁かれるべき存在だ。
だが、政財界、マスメディアを貫く、いまだ根強い原子力マフィアの厚い壁に阻まれて、誰1人として逮捕もされず、当時の東電の会長や社長は、天下りして悠々と生活している。
社会的な制裁さえも、受けていない。

そうした彼らの生活ぶりを浮き彫りにするためにも、『タブーなき原発事故調書』には彼らの言動の詳細を記すとともに、居住地を記載した。これは憲法21条で守られている「表現の自由」に他ならない。
納谷氏は「コラコラ・コラム」で、『タブーなき原発事故調書』『東電・原発おっかけマップ』に、事故の責任者に連なる者たちの、住所と地図があることについて、「賛否両論あるだろう」「えげつないと思う人もいるかもしれない」と断った上で、「そのやり方でしか見えてこないものがある」「ジャーナリズムとはなにかと考えた時に、当然ありうる方法」と語っている。
それは「組織のヒダに逃げ込むな」「個人として責任を取れ」ということであり、「上司に言われたから、会社の仕事だから、といって責任を逃れようとするのは、卑怯、ずるい、みっともない」「プルトニウムは飲んでも大丈夫といった学者は、発言の責任を取って欲しい。逃げないでくれ」と、生き方の問題として納谷氏は訴えかけている。

納谷氏のはっきりとした主張が語られているのであり、「コラコラ・コラム」の放送見送りにしても、『ラジオキャンパス』そのものの放送打ち切りにしても、憲法21条で禁じられている「検閲」以外のなにものでもない。

『タブーなき原発事故調書』『東電・原発おっかけマップ』で明らかにされているのは、一般市民の個人情報やプライバシーではない。フクシマの人々の暮らしを根こそぎ破壊し、命まで奪った事故に責任のある者たちだ。

FM熊本が言論機関だというのなら、まずは自分の言葉で回答すべきだろう。

(FY)