我ながら、情けないほど動転してしまったことがある。かれこれ20近く前のことだ。
素っ裸の若い女性が、前から歩いてきたのだ。新宿の厚生年金会館の辺りである。
「ヤバイ、逃げなきゃ」
とっさに考えたのが、それである。抱きつかれでもしたら、自分が犯罪者になってしまう、とそこまで頭を巡らせたわけではないが、とにかく尋常ではないことが起こっていると思った。

だが、なんのことはない。後ろから、カメラを構えた男が3人、ついてきていた。
プロの業界人の仕事なら、カメラマンは1人だ。女性モデルを雇った、アマチュアのグループだろう。
それが分かると、業界人であるのに動転してしまった自分が、あまりにも恥ずかしかった。
言い訳をすれば、女性があまりにも素人っぽく、生々しかったのだ。
当時は、その道の業界人として、似たようなことをやっていた身である。
通報するなどの無粋なことはしなかったが、このような行為は、刑法第174条の公然わいせつ罪が適用されることになる。

確かに、公然わいせつ罪は必要な法律だ。男だって、いつでも女性の裸を見たいと思っているわけではない。野鳥の観察をしようと思って公園に行って、裸の女性がいたら、本来の目的に集中できなくて困る。女性ならなおさら、男の下半身は見たくない、という場合のほうが多いだろう。

だが異性(同性の場合もあるだろうが)の裸を見たいというのは、人間の本能だ。
もちろん女性にも、その欲求はある。最近では女性向けのアダルトビデオが売れている。六本木に行けば、男性ストリップもある。

本能であるからこそ抑制する必要があり、公然わいせつ罪があるのだろう。
それを考えると、以下のような事例はどうなのだろう。
7日、旭川のハプニングバー「異空間」で下半身を露出した、旭川地裁会計課の事務官ら、男性4人が公然わいせつの疑いで逮捕された。経営者の男女も、公然わいせつほう助の疑いで逮捕された。
昨年も、札幌中央署が摘発に入ったSMクラブで、裸になっていた男を逮捕してみたら、警察官だったということがあった。

ハプニングバーやSMクラブは、野鳥観察をするところでも、刺繍や生け花をするところでもない。裸になりたいという者がいることを承知の上で、性的刺激を求めて集まる場である。
法の濫用であり、全くの不当逮捕だ。即時、釈放されるべきである。

夜中にクラブで躍ることも許されない世の中になってきたが、裸になれる場所も、残しておいてほしいものだ。

(深笛義也)