札幌地裁が泊原発の運転認めない判決! 大阪では「老朽原発このまま廃炉!」大集会に2100人が結集! 老朽原発の完全廃炉を実現すれば、この国にだって世界の脱原発の動きを先導できる! 尾崎美代子

5月31日、北海道電力・泊原発(北海道泊村)の周辺住民1200人が、泊原発に地震や津波に対する安全性が不十分だとして、1号機から3号機の運転差し止めや廃炉などを求めていた裁判で、札幌地裁・谷口哲也裁判長は、「現在ある防潮堤は津波に対する安全性の基準を満たしていない」などとして、運転を認めない判決を言い渡した。

一方、廃炉の請求は「具体的な必要性がない」として認められなかった。提訴から10年、泊原発は再稼働に向けた原子力規制委の審査中であった。にも関わらず、「安全性に問題がある」と運転を認めない判決が下された背景には、多くの論点について北電が主張を先延ばししてきたこともある。そのため判決は「提訴から10年以上経っても(北電側が)主張を終える見通しが立っておらず、審理を継続するのは相当ではないと判断した」とされた。


◎[参考動画]”泊原発「運転認めない」判決 廃炉請求は棄却(2022年5月31日)

この大きな判決に先立つ5月29日、大阪市内の靭公園で「老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」が開催された。真夏のような猛暑のなか、全国から反原発、老朽原発廃炉を訴える人たちが2100人も結集した。

若狭の僧侶、中嶌哲演さんは、主催者あいさつで「戦争も原発もそれを推進する元凶は、もっともらしいプロパガンダで本質を覆い隠し、それに抵抗・反対する人たちを弾圧している。しかし、今や戦争に反対し、老朽炉稼働に反対する潜在的な世論は、絶対過半数を超えているはずだ。その不同意・不服従する意志を非暴力的に表明するチャンスは、6月の参議院選挙だが、その潜在的世論をどう高めていくか、本日の集会で共に考え、共に声をあげていきましょう」と訴えられた。

僧侶の中嶌哲演さん(前列中央)

以下、集会での発言者の報告を要約紹介する。

◆美浜3号機運転差止裁判と5月26日東京地裁で第1回期日が始まった「311子ども甲状腺がん裁判」について 井戸謙一さん(弁護士)

老朽美浜3号機の運転差止仮処分は、昨年5月に提訴されました。その後、6月23日に再稼働した美浜3号機は、テロ対策施設の未完のため、一旦停止、今年の10月テロ対策施設が完成したら再稼働の予定です。先日5月23日、第4回の審尋が行われ、関電はなんとかひきのばそうとしましたが、裁判所はそれを許さず、次回7月4日の審尋で期日は終わり、10月の再稼働までには判決が出そうです。関電はまともに反論出来ていないので、勝てると考えております。40年超の老朽原発を止める闘いは、非常に重要な闘いです。ぜひ、ご注目ください。

もう1つ、5月26日東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」の第1回期日がありました。沢山の方が集まり、27席しかない傍聴席の抽選に226人の方が並んでくれました。裁判は、まず弁護団が内容を説明したあと、原告6人のうち1人の女性の意見陳述がありました。原告は、この間の辛かったことを思い出して言葉にしており、水をうったように静まり返った法廷のあちこちですすり泣く声が聞こえ、本人も涙を流しながら、最後までしっかり陳述しました。裁判官も身を乗りだして聞いていましたが、その目は赤かったと私には見えました。

その後、私たちは裁判所に、残り5人の原告の意見陳述もさせて欲しいと訴えました。関電代理人は、事前の進行協議では反対していましたが、さすがに反対とは言えず「裁判所に任せます」と言わざるをえませんでした。それだけの力があった意見陳述でした。

裁判後の記者会見には、入りきれないほど大勢のメディアが来ていました。先日、TBSの報道特集がこの問題を取り上げており、その後「被ばくで甲状腺がんが増えるんはデマ」という激しいバッシングが起こっていました。しかし、福島で甲状腺がんになった被害者が初めて声をあげた歴史的な日だと思います。これを報道できないメディアは駄目ですが、そうならば、私たちは、口コミでこの話を伝えていかなくてはならないと考えます。この裁判を絶対勝たせるために、ぜひ強力なご支援をお願い致します。

弁護士の井戸謙一さん

◆福井県の敦賀市から駆け付けた元原発技術者・山本雅彦さん
 
電力会社と立地自治体は、この間、共同で巻き返しをはかっています。政府のカーボンユートラル政策、ウクライナ情勢に便乗し、エネルギー安定供給には原発が必要だと、政府のクリーンエネルギー政策に沿って、日本原電の3、4号機の新増設、廃炉のもんじゅ敷地内に新型原子炉の建設、更には美浜、1、2号機をリプレイスをさせようとしています。また首長は口を揃えて、原発をテロや戦争の攻撃から守るために自衛隊の誘致しようとまで言い始めています。

昨年秋、福井農業高校の生徒さんたちが、原発を題材にした「明日のハナコ」を上演したが、ケーブルテレビで放送除外となり問題となりました。劇中で、元敦賀市長が石川県で原発を誘致する際「原発は金になる木で、50年後100年後に産まれた子供が『カタワ』(脚本ではカタカナ表記)になるかもいれないが、今は原発をやったほうがいい」という台詞があり、それが差別発言に当たるからだと言われました。

福井県、財団から金がでていることから、彼らに忖度したのでもないかといわれています。こうした報告を聞くと、原子力ムラのやりたい放題ではないかと思われるかもしれない。しかし、昨年6月に私たちが実施した美浜町全戸でのアンケートでは、原発不必要の方が54%、反対が61% 再稼働に不安と考えている方が71%もおられた。今年4月講演会を行った際にも、皆さんは「避難先がおおい町では近すぎて不安だ」「避難ができたとして本当に故郷に戻れるのか」などの悲痛な声がでました。

私たちの運動によって、こうした声を圧倒的多数にすれば、原子力ムラの画策を止めることができるのではと確信しています。共に頑張りましょう。

◆「東海第二原発の再稼働を止める会」副代表の佐藤勝十郎さん

老朽原発の1つで、3・11の被災原発である茨城県東海第二原発のある茨城県からかけつけました。東海第二では、昨年3月、日本原電を相手とした裁判で、運転を禁止するという勝訴判決がだされました。その後、原告・被告とも控訴、現在東京高裁で控訴審に入っていますが、控訴審も一審勝訴を確定させたいと思っています。

この間、380頁にも及ぶ控訴理由書を提出し、再来月進行協議が始まる予定です。何故勝てたのか? 規制委は「深層防護」の1層~4層までは合格とし、第5層の住民避難については規制委の審査はないが、裁判所は不十分と判断しました。今後は、この問題を深堀し、事実として東京高裁に認めさせていきたいと考えています。

◆木原壯林さん(実行委員会)が読み上げた「集会アピール」(案)

ほかにも、青森県、島根県、愛媛県、鹿児島など全国の反原発を闘う皆さんが発言したり、アピールを寄せてくれた。最後に実行委員会の木原壯林さんが「集会アピール」(案)を読み上げた。

「老朽原発動かすな!の闘いは、国内だけではなく、韓国はじめ世界の脱原発運動から注目されている。現在、川内原発1、2号機、高浜3、4号機が運転開始後36年を超えており、韓国の原発5基も35年を超え、2機は来年40年を迎える。もし、高浜1、2、美浜3号機の再稼働を許せば、国内だけでなく、世界の原発の40年超運転の前例にされてしまう。
 一方、老朽原発の運転と原発新設を阻止すれば、最悪でも2033年に若狭から、2049年に存国から稼働する原発がなくなり、世界の脱原発の動きを先導できる。老朽原発完全廃炉に向けてやれることは全て実行しよう。
 とりわけ6月参議院選挙には『老朽原発動かすな!』を争点にし、核依存、原発推進の岸田政権にノーをつきつけよう!」

アピール(案)は、満場からの大きな拍手で確認された。

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号

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季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

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「甲状腺がんは増えている」はデマではない!「311子ども甲状腺がん裁判第1回口頭弁論」 被害者の訴えを聞き、放射能被害の現実を知っていこう! 尾崎美代子

5月26日、東京地裁で、311子ども甲状腺がん裁判の第1回口頭弁論が行われた。この裁判は、福島原発事故当時、福島県内に居住していた6才から16才だった男女6名が、東電に対し、事故に伴う放射線被ばくにより甲状腺がんを発症したとして、損害賠償を求める裁判だ。

6名はいずれも甲状腺がんの手術を受け、うち4名は再発に伴う手術で甲状腺を全摘、甲状腺がんの発症や、それに伴う手術、薬の服用などで進学・就職などにも大きな被害が生じている。

裁判では、原発事故と、6名の原告の甲状腺がんの因果関係や原告が受けた損害の評価が実質的な争点となる。午後2時からの第1回期日では、5名の弁護士が弁論を行ったのち、原告2さんが意見陳述を行った。

その後の報告集会の冒頭、井戸謙一弁護団長は、「今日の法廷の印象は、5人の弁護団が手分けしてそれぞれの弁論をしましたが、それは前座で、本番は原告の女性の素晴らしい意見陳述でした」と話されたあと、期日の成果を以下のように述べられた。期日前の進行協議では、毎回意見陳述を認めるかどうかが話しあわれていた。被告・東電は、毎回やることに反対し、裁判所も消極的な感じだった。しかし、今日原告の意見陳述を聞いたあと、再びその話題になり、裁判長が被告代理人に意見を求めた。被告代理人は、建前的には大事なのは争点整理で、それを優先すべきと主張していたが、原告の意見陳述を認めるか否かについて反対とは言えず「最終的に裁判所に委ねます」と述べた。

裁判所も「もう一度考えます」と態度を変えた。被告代理人が反対できなかったのは、原告女性の意見陳述が、彼らの胸にも響いたからだと思う。当時の子どもたちをどう救済していくかで一番大事なのは、原告がどう苦しんできたかを裁判所に理解させる、そのことによって真っ当な判決に導いていくことだ。

先日TBSで報道された「報道特集」について、中身も知らずに「デマだ」とバッシングする輩が大勢いるが、そうではないということを発信して頂きたい。このようにバッシングする社会の風潮を変え、被害者の原告を支援していく社会的風潮をつくっていくということが、この裁判で真っ当な判決を出させる大きな力になると思います。

原告2さんの意見陳述作成を担当した柳原敏夫弁護士から、それまでの経緯が話された。

「彼女は自分から第1回目に陳述すると言ってくれた。そのとき、私が偉そうに彼女に言ったのは、裁判官に届く言葉、あなたにしか言えない言葉を言って下さいとお願いした。人間として扱われなかった治療や手術のことは思い出したくないだろうが、あなたしか言えないのだから。本人も悩んだようだが、連休明け、それまで書いた文章に、本人も思い出したくないアイソトープ治療について2000字を書き足してきました。それが今日のメインテーマでした。書いただけで精魂尽き果てただろうに、今日法廷でもう一度読むのも大変だったろうが、今日は最善の意見陳述をしてくれました。ここには来れませんが、皆さん、彼女に拍手をお願いします」。

その後、前日意見陳述を練習した際の原稿2さんの声が、会場に流れた。「意見陳述要旨」から、その一部を紹介する。

「あの日は中学校の卒業式でした。友達と「これで最後なんだね」と何気ない会話をして、部活の後輩や友達とデジカメで写真をたくさん撮りました。そのとき、少し雪が降っていたような気がします」

3月16日、放射線量が高かったことを知らない彼女は地震の影響で電車が止まっていたため、歩いて学校に行き、外で友達と話し、歩いて帰ってきた。県民健康調査で甲状腺がんがみつかり、精密検査を受けた。結果は甲状腺がんだったが、医師はそうは言わず「手術が必要です」と説明した。

「手術しないと23才までしか生きられない」と言われたことがショックで今でも忘れられません」

病気を心配した家族の反対もあり、大学は第一志望の東京の大学ではなく、近県の大学に入学、しかし、その大学にも長くは通えなかった。甲状腺がんが再発したためだ。

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「治っていなかったんだ」「しかも肺に転移しているんだ」とてもやりきれない気持ちでした。「治らなかった、悔しい」この気持ちをどこにぶつけていいのかわかりませんでした。「今度こそあまり長くは生きられないかもしれない」そう思いました。……

「手術の後、肺転移の病巣を治療するため、アイソトープ治療を受けることになりました。高濃度の放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで、がん細胞を内部被ばくさせる治療です。

1回目と2回目は外来で治療を行いました。この治療は、放射性ヨウ素が体内に入るため、まわりの人を被ばくさせてしまいます。病院で投薬後、自宅で隔離生活をしましたが、家族を被ばくさせてしまうのではないかと不安でした。2回もヨウ素を飲みましたが、がんは消えませんでした。

3回目はもっと大量のヨウ素を服用するため入院することになりました。病室は長い白い廊下を通り、何回も扉をくぐらないといけない所でした。至るところに黄色と赤の放射線マークが貼ってあり、ここは病院だけど、危険区域なんだと感じました。病室には、指定されたもの、指定された数しか持ち込めません。汚染するものが増えるからです。

病室には、看護師は入って来ません。医師が1日1回、検診に入ってくるだけです。その医師も被ばくを覚悟で検診してくれると思うととても申し訳ない気持ちになりました。私のせいで誰かを犠牲にできないと感じました。

薬を持って医師が2、3人、病室に来ました。薬は円柱型のプラスチックケースのような入れ物に入っていました。

薬を飲むのは、時間との勝負です。医師はピンセットで白っぽいカプセルの薬を取り出し、空の紙コップに入れ、私に手渡します。

医師は即座に病室を出ていき、鉛の扉を閉めると、スピーカーを通して扉越しに飲む合図を出します。私は薬を手に持っていた水と一緒にいっきに飲み込みました。

飲んだ後は、扉越しに口の中を確認され、放射線を測る機械をお腹付近にかざされて、お腹に入ったことを確認すると、ベッドに横になるよう指示されます。

すると、スピーカー越しに医師から、15分おきに体の向きを変えるように指示する声が聞こえてきました。

食事はテレビモニターを通じて見せられ、残さず食べられるか確認し、汚染するものが増えないように食べられる分しか入れてもらえません。

その夜中、それまでは何ともなかったのに、急に吐き気が襲ってきました。すごく気持ち悪い。なかなか治らず、焦って、ナースコールを押しましたが、看護師は来てくれません。ここで吐いたらいけないと思い、必死でトイレへ向かいました。吐いたことをナースコールで伝えても吐き気止めが処方されるだけでした。時計は夜中の2時過ぎを回り、よく眠れませんでした。

次の日から、食欲は完全に無くなり、食事ではなく、薬だけ病室に入れてもらうことのほうが多かったです。2日目も1,2回吐いてしまいました。

私はそれまでほとんど吐いたことがなく、吐くのが下手だったため、眼圧がかかり、片方の目の血管が切れ、目が真っ赤になってしまいました。扉越しに、看護師が目の状態を確認し、目薬を処方してもらいました。

病室から出られるまでの間は、気分が悪く、ただただ時間が過ぎるのを待っていました。

病室には、クーラーのような四角い形をした放射能測定装置が、壁の添乗近くにありました。その装置の表面の右下には数値を示す表示窓があり、私が近づくと数値がすごく上がり、離れるとまた数値が下がりました。

こんなふうに3日間過ごし、ついに病室から出られる時がきました。パジャマなど身に着けていたものはすべて鉛のごみ箱に捨て、ロッカーにしまっていた服に着替えて、鉛の扉を開け、看護師と一緒に長い廊下といくつもの扉を通って、外に出ました。……こんなつらい思いをしたのに、治療はうまくいきませんでした。治療効果がでなかったことは、とてもつらく、その時間が無駄になってしまったと感じました。以前は、治るために治療を頑張ろうと思っていましたが、今は「少しでも病気が進行しなければいいな」と思うようになりました。……通院のたび、腫瘍マーカーの「数値があがってないといいな」と思いながら病院に行きます。でも最近は毎回、数値が上がっているので、「何が悪かったのか」「なぜ上がったのか」とやるせない気持ちになります。……自分が病気のせいで、家族にどれだけ心配や迷惑をかけて来たかと思うととても申し訳ない気持ちです。もう自分のせいで家族に悲しい思いはさせたくありません。もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできません。この裁判を通じて、甲状腺がん患者に対する補償が実現することを願います。

……………………………………………………………………………………………

裁判の傍聴希望者は約200名、うち傍聴出来たのは27名、期日後の記者会見でも多くのメディアから質問があったとお聞きした。甲状腺がんなど原発事故の放射能による健康被害に関心が高まっている。被害者に対する支援の輪を、今後さらに広めていかなくてはならない。

311子ども甲状腺がん支援ネットワーク 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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それで良いのか福島「県民健康調査」検討委員会 ── 長崎大医学部「山下俊一チルドレン」高村昇座長選出の問題点 民の声新聞 鈴木博喜

「あれ?ない……」
13日午後、福島駅前のホテルで開かれた第44回「県民健康調査」検討委員会。配布資料をめくると、筆者はすぐに〝異変〟に気付いた。委員名簿にあるはずの名前がなかったのだ。記者席で思わず声を出してしまったほど驚いた。

7カ月前の昨年10月に開かれた前回委員会で座長に再任されたばかりの星北斗氏(福島県医師会副会長)の名前も、座長代行になったばかりの稲葉俊哉氏(広島大学 原爆放射線医科学研究所教授)の名前もない。さらに2人を加え、計4人の委員が「一身上の都合」で辞めていたのだ。2年の任期が始まったばかりだというのに……。

「『県民健康調査』検討委員会設置要綱」第3条7項で「座長に事故があるとき又は座長が欠けたときは、座長代行が、その職務を代理する」と定められている。座長に選ばれたばかりの星氏が夏の参院選に自民党公認で立候補することから、次の座長は当然、稲葉代行が務めるものと考えていた。

開会までまだ時間があるので、旧知のフリーランス記者とその事で立ち話をしていると、会場に1人の委員が入って来たのが目に留まった。高村昇氏(長崎大学 原爆後障害医療研究所教授)だった。高村氏は前回委員会を欠席。それ以前もコロナ禍でリモート形式での開催が続いたので、会場に姿を現すのは実に2年ぶりのことになる。

「まさか…」
物書きとして冷静でいなければいけないことは分かっていたが、徐々に鼓動が激しくなっていった。もし高村氏が新しい座長に選ばれれば、「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。クヨクヨしている人に来ます」(2011年3月21日、福島県福島市での講演会)と言い放った山下俊一氏(初代座長)とともに福島県内各地で〝安全講演〟をした人物が座長に就任することになるからだ。


◎[参考動画]3.11直後の山下俊一発言

果たして、その「まさか」が的中した。
「福島県復興のためにご尽力されている。高村先生以外にはいない」、「やっぱりここは高村先生しかいらっしゃらない」などと称賛を受けての選出だった。高村氏は2020年4月から「東日本大震災・原子力災害伝承館」の初代館長(非常勤、任期5年)も務めており、検討委員会も〝牛耳る〟ことになったのだった。

高村氏の問題点については、これまで何度も「民の声新聞」で指摘してきた。
福島県の担当者は「伝承館」の館長に選出した理由について①考え方に偏りが無い、人格的に温厚で高潔②福島県の復興、避難地域等の支援に関わってきた③「伝承館」の運営に必要な能力を持っている─の3点を挙げた。しかし、高村氏は「考え方に偏りが無い」と言えるだろうか。

「伝承館」初代館長就任にあたり内堀雅雄知事を表敬訪問した高村氏。山下俊一氏の影響下にある高村氏が検討委員会も〝牛耳る〟ことになり、検討委の中立性が揺らいでいる=2020年撮影

高村氏は1993年に長崎大学医学部を卒業。2013年度からは同大原爆後障害医療研究所の教授を務めている。原発事故直後の2011年3月19日には、山下俊一氏とともに福島県の「放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任。県内各地で行った講演会では「放射性セシウムはろ過されやすいので水道水には出てこない」、「放射性セシウムセシウム 137 が体に入った場合の半減期は30年では無い。子どもであれば2カ月、大人でも3カ月程度で半分になる」などと発言したほか、子どもたちの鼻血についても「放射線の影響ではない」と断言していた。

飯舘村では震災発生から2週間後の2011年3月25日に県と村の共催で高村氏の講演会が行われている。その場で「マスク着用や手洗いなどをすれば、健康に害なく村内で生活できる」という趣旨の発言をしているが、実はこの講演会、そもそもの目的が「村民に安心してもらうため」だったのだ。当時の菅野典雄村長が著書「美しい村に放射能が降った」のなかで「私も安心した」と明かしているほどだ。

復興庁が2018年3月に発行した冊子「放射線のホント~知るという復興支援があります。」は「原発事故の放射線で健康に影響が出たとは証明されていません」と書いているが、「作成にあたり、お話を聞いた先生」に名を連ねているのも高村氏。
伝承館館長就任にあたって「一番の主眼は、復興のプロセスを保存して情報発信すること」、「ぜひイノベーションコースト構想の一翼を担いたい」と語って内堀雅雄知事を満足させたのも高村氏。

事故発生直後から被曝リスクを全否定し、住民を線源から遠ざけるどころか逃げないように〝安心〟させ、国や福島県が画策する原発事故被害の矮小化と復興PRに加担するような人物を座長に選んで本当に良いのだろうか。筆者は委員会後の記者会見で質問した。高村座長は苦笑していたが、どの委員も質問に答えなかった。答えないも何もない。司会役の県職員が全力で質問をブロックしたのだった。

「申し訳ありませんけれども、本日の議事議題に関係ありませんので、お答えを控えさせていただきます」

原発事故後に神奈川県に区域外避難、現在は避難元の郡山市と行き来している松本徳子さんは、今回の検討委員会や記者会見を動画で観て福島県の県民健康調査課に電話をかけた。「子どもが健康調査を受けている親として、県民健康調査検討委員会の場で傍聴や質問をする権利を与えてもらえませんか?」と申し入れたが、けんもほろろに断られたという。

「県民健康調査課と私との意見交換の場を設けてもらえませんか?とも言いましたが、『それもできません』とのことでした。どれだけ詰め寄っても『それは松本さんの見解なので仕方ありません。これ以上お話しても意味がありません』と電話を切られてしまいました」

検討委員会後の記者会見に臨む当時の星北斗座長(左)と高村昇委員。自民党公認で参院選に出馬する星氏の後継座長に高村氏が選ばれた=2017年撮影

高村氏は昨年2月、原子力産業新聞のインタビューで次のように語っている。

「もちろん、今後もいろんな調査研究を進めていく必要があるが、因果関係を調べた結果、10年経った現時点では、福島で見つかる甲状腺がんは被ばくの影響とは考えにくいという結論に至っている」

「福島では、これまで甲状腺検査をしてこなかったから見つからなかったものが検査をすることにより見つかるようになった」

これではもはや、検討委員会の方向性は見えている。

そもそも、初代座長が「子ども脱被ばく裁判」の一審証人尋問で厳しく追及され、二代目座長は原発再稼働に躍起になっている自民党の公認候補として参院選出馬。その路線を継承するのが〝山下チルドレン〟の三代目座長。そんな委員会が説得力を持ち得るのだろうか。

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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原発は、自国に向けた核爆弾 ── 水戸喜世子さんに聞いたロシアのウクライナ原発攻撃とこれからの「戦争と平和」 尾崎美代子

3月7日、水戸喜世子さんのご自宅で、脱被ばく子ども裁判の控訴審と、被ばくで甲状腺がんを発症した若者6人が東電を訴えた裁判についてお話を伺った。居間に通されるなり、目についたのが水戸さん手作りのプラカードだった。ロシアのウクライナ侵攻から2週間以上経過し(3月7日現在)、世界中で反戦の声が高まっている。

とりわけロシアがウクライナの原発を攻撃したことで水戸さんの怒りが最高潮に達した。こうした事態を予測していたかのように、2017年7月、水戸さんは、日本の原発へのミサイル攻撃を懸念し、運転差し止めの仮処分を提訴した。裁判は敗訴。その苦い経験から、懸念したことが現実となった今、「心配していたことが現実になって寒気がする」と話される。 (聞き手・構成=尾崎美代子)

◆世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう

 
高槻駅で続けられるスタンディングに立つ水戸さん(写真提供・二木洋子さん)

水戸 去年から、ずっと眩暈がひどくて、家でも何かにつかまって歩いていたのですが、ロシアの武力攻撃を知って、いてもたってもいられなくて、キャリーを引きずってスタンディングに参加するようになりました。

2017年、今頃の季節でしたね。北朝鮮が弾道ミサイルを立て続けに発射したことがありました。その時、私はたった一人で、高浜3、4号機の運転差し止めの仮処分を大阪地裁に提訴したのです。あのときは内閣総理大臣が自衛隊法の「破壊措置命令」、つまりミサイルが飛んできたら撃ち落としていいという指示を発令していたのです。

新幹線を運休したり、東京では地下鉄も止めましたよね。子どもまで学校で真剣に避難訓練をさせられ、登下校時の注意書きまで、学校から家庭にお手紙が配られました。戦時中、警戒警報や空襲警報のたびに防空頭巾をかぶって、机の下にもぐった国民学校時代のドキドキした息の詰まるような記憶がよみがえって、言葉にならない怒りがこみあげてきました。国民学校3年の3月です。家の地下に掘った防空壕では危険だからと、商品取引所の地下室に逃げて、命だけは助かりましたが、家は焼けて、着の身着のまま、弟の手を引いて、逃げた時の記憶は消えないのです。 二度と子どもに、あんな思いはさせないぞと強く願って生きてきましたから。

 
高槻駅陸橋で行われているスタンディング。3月10日、働いている人たちにもアピールしようと、夕方から行われた(写真提供・二木洋子さん)

「原発は、自国に向けた核爆弾だ!」ということは世界の常識。国が知らない筈はないのに原発を動かしたまま、子どもまで動員して避難訓練させる安倍内閣の意図をマスコミも指摘しないという呆れ果てた世情に怒り絶頂だったのです。

そんな時、河合さんから電話があって「水戸さんはどう思う?」と言われたので「訴訟したい!」と二つ返事だったのです。同志に出会えた、と本当に嬉しかった。政府のいかさまを裁判長に見抜いてほしい、万一訴訟に負けても世間に「ミサイルと原発」を意識してもらうきっかけになるし、安倍政権の危険な世論操作に気づいてもらえる、そんな思いでしたね。

本当に危険であれば、真っ先に原発を止めるのが常識だってことを、今度のウクライナ侵略戦争が、世界に示したと思います。キエフの住民たちも、まさかこんな戦争になるとは思わなかったと語っているように戦争はいつの時代も突発的です。世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう。

◆プーチンも教科書でトルストイを読んでいるはず

 
水戸喜世子(みと・きよこ)さん 子ども脱被ばく裁判の会・共同代表。1935年名古屋市生まれ。お茶の水女子大学、東京理科大学で学ぶ。反原発運動の黎明期を切り開いた原子核物理学者・故水戸巌氏と1960年に結婚後、京大基礎物理研究所の文部教官助手就任。1969年「救援連絡センター」の設立に巌氏とともに尽力。2008年から2年間中国江蘇省建東学院の外籍日本語教授。2011年3月11日以降は積極的に脱原発・反原発運動にかかわる。

── プラカードに書いてある「トルストイが泣いている」に込めた思いは?

水戸 私はヤースナヤ・ポリャーナにあるトルストイの生家に行ったことがあるんです。植民地文学学会の西田勝先生(故人)が「トルストイの旅」という小さな企画をされて連れていって貰いました。

広大なお屋敷にはお孫さんの家族が住んでおられて、小さな女の子が真っ白の馬に乗っていました。私は高3の頃、教科書がきっかけでトルストイを読みふけるようになりました。弱者への目、深い洞察からの非暴力主義に、とても感銘を受けたような気がします。ロマン・ロランやマルタン・デュ・ガールなど長編小説にのめりこむきっかけでした。

彼は貴族の出身ですが、弱い人と共にありたいという思いが強く、晩年は家出をして、どこかで死んでしまったのだと記憶しています。『アンナ・カレーニナ』など時代を超えて、ロシアで一番愛され、読み継がれているのがトルストイです。ロシア人の心のふるさとであり、プーチンも間違いなく少なくとも教科書では読んでいるはずです。トルストイの非暴力主義の前で、トルストイを心のふるさととするロシアの民衆の前で、己の行為を恥じてほしいのです。

◆日本の原発のテロ対策

── ウクライナではザポリージャ原発を守ろうと周辺の住民がロシア軍に抵抗しましたが、日本の原発のテロ対策はどうでしょうか?

水戸 規制委員会が要求している原発のテロ対策工事は、テロなどで飛行機が落ちても大丈夫な程度の工事です。ミサイルで狙われたらどうなるか、3月9日の衆議院経済産業委員会で立憲・山崎誠議員の質問に対して、「放射能の拡散は避けようがない」と規制委員会の更田委員長が答えています。私が仮訴訟を起こした頃は、規制委員会は機密に属することなので、と明言しなかったのですが、はっきり言いきったのは今回が初めてですね。

関電側は耐えられると強弁していましたが。 めったに起きないテロ対策を電力会社に要求したのですから、ミサイル発射に対して、対策工事を規制委員会は電力会社に要求すべきです。無防備衛あることを認めたのですから。

◆福島の被ばくの闇の深さ

── まもなく11回目の3・11を迎えますが。(3月7日当時)

水戸 「子ども脱被ばく裁判」がいま控訴審の最中で、毎日が3・11ですから、特別の感慨はありません。福島を振り返るのはまだずっと先のことのような気がしています。

昨日(3月6日)FoE japan主催の国際集会があって、私はズーム参加しました。基調報告で武藤類子さんが福島の現状として被災者切り捨て、矛盾を地元に押し付けたままの見かけの復興、進まぬ廃炉作業、加害責任を果たさない姿などを具体的に話され、改めて、心が引き締まりました。早急に被害者への補償と原発の後始末をさせる、脱原発を実現すること。頑張らねば、と思います。

類子さんの話で私が衝撃を受けたのは、「この1年で友人が6人亡くなりました」と語っておられたことです。数年前にお会いした時も、「今年一年で5人の友人が亡くなったの」と顔をくもらせておられたことと重ねて、福島の被ばくの闇の深さに言葉を失う思いがしました。一体いつまで、国と御用学者は『被ばく者はいない』とごまかし続けるつもりなのか、闘いの本命です。広島・長崎の被ばく者から学ぶことがとても大事ですね。

少し先ですが、5月21日、地元高槻市の高槻現代劇場文化ホール2階で「黒い雨訴訟」の原告である高東征二さんをお呼びして「切り捨てられる被ばく 黒い雨から福島へ」と題した講演会を行っていただきます。ほかに「子ども脱被ばく裁判」主催の展示・学習会も致します。第一歩を踏みだしました。どうぞみなさまもお集まり下さい。

5月21日大阪・高槻市で開催される講演会「広島・長崎から福島へ続く核被害~内部被ばくの危険性を考える」&写真展「広島黒い雨から福島へ」

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
『NO NUKES voice』改題 通巻31号
紙の爆弾2022年4月増刊

2022年3月11日発売
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

《グラビア》福島第一原発現地取材(写真・文=おしどりマコ&ケン
《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原子力は即刻廃絶すべきもの

樋口英明(元裁判官)
原発問題はエネルギー問題なのか

中村敦夫(俳優/作家)
表現者は歩き続ける

井戸謙一(弁護士)
被ばく問題の重要性

《インタビュー》片山夏子(東京新聞福島特別支局長)
人を追い続けたい、声を聞き続けたい
[聞き手・構成=尾崎美代子]

おしどりマコ(漫才師/記者)
事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
犠牲のシステム 数兆円の除染ビジネスと搾取される労働者

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream〈サンドリ〉代表)
「いつまで避難者といってるのか?」という人に問いかけたい
「あなたは避難者になれますか?」と

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
沈黙と叫び 汚染水海洋放出と漁師たち

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈最終回〉
語られなかったものは何か

《講演》広瀬 隆(作家)
地球温暖化説は根拠のないデマである〈前編〉

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
原発は「気候変動」の解決策にはならない

細谷修平(メディア研究者)
《新連載》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈1〉
真の暴力を行使するとき――『人魚伝説』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
機を見るに敏なんて美徳でも何でもない

板坂 剛(作家/舞踏家)
大村紀行──キリシタン弾圧・原爆の惨禍 そして原発への複雑な思い!
 
佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
“騙(かた)り”の国から“語り部(かたりべ)”の国へ
絶望を希望に転じるために いまこそ疑似「民主国」ニッポンの主客転換を!

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈15〉
森友学園国有地売却公文書 改ざん国賠・『認諾』への考察

再稼働阻止全国ネットワーク
国政選挙で原発を重要争点に押し上げよう
7月参議院選挙で「老朽原発阻止」を野党共通公約へ
《全国》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《全国》石鍋 誠(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《六ヶ所》中道雅史(「4・9反核燃の日」全国集会実行委員会)
《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
《反原発自治体》反原発自治体議員・市民連盟
《東海第2》披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)
《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
《規制委・経産省》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍

季節編集委員会
我々はなぜ『季節』へ誌名を変更したのか

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ロシアの軍事侵略を非難し、ウクライナの愛国主義に共鳴しつつ、「プーチンの盟友」安倍元首相の「核共有」に加勢する日本国内〈好戦派〉の支離滅裂 田所敏夫

◆直接情報が一番の頼り

ロシアがウクライナに軍事侵略を開始して20日以上が経過した。紛争発生時に、自称「国際学者」や「軍事評論家」が言いたいことを無責任に言い放つ様子にはもう飽きた。なぜならば、短・中期的な分析ですら未知の情報を提示してくれる識者は極めて稀だからだ。

そして、ゼレンスキーウクライナ大統領が大手メディアでは英雄扱いされ、日本からも「志願兵」に70名余りの応募があったと在日ウクライナ大使は明らかにした。ゼレンスキー大統領は日本時間の3月16日にはカナダ、米国の国会でリモート演説を行い、日本でも今週、同様のリモート演説の実施に向けて、自民党と立憲民主党が前向きに協議中だと報じられている。私はバイアスのかかったニュースではなく、なるべく情報源に近づき、自らの判断を下そうと試みる。例えばウクライナ政府機関の発信や、ロシア政府の発信などである。中間にメディアが介在すると、いらぬ解釈が加えられるのでそれらは参考程度にしか利用しない。

ゼレンスキー大統領はFacebookとTwitterを利用しながら、かなり頻繁に発信を続けている。そしてキエフやその他のウクライナ国内在住のかたがたも、かなりの数動画を発信している。それらを総合して私は今なにができるのか、なにを考えるべきなのかを模索する。

◆誰がプーチンを擁護して、育てたのか

理由はどうあれ「侵略戦争」には反射的に嫌悪を抱く私は、ロシアの軍事侵略をやはり許すことはできない。そして20年以上実質上独裁者の座にあるウラジーミル・プーチンを支援してきた日本外交や、政治家の名前をしっかりと思いだし、彼らの言動を注視することは無駄ではないだろう。

日本外交の対ロシア最大の課題は「北方領土返還」らしい。私は本気で北方領土返還を実現したいのであれば、ソ連崩壊後独立国家共同体と名乗っていた間隙に机の下で数兆円を渡せば4島返還の可能性はあったと考え、20年以上そのように発信してきた。だが、この期に及んで「北方領土」などにロシアが関心を払わないことは、誰の目にもあきらかであろう。

米国のベトナム、アフガニスタン、イラク侵略に匹敵する、このような惨事を招致するに至った独裁者に世界でも有数の待遇で接していた、この国のかつての最高権力者がいる。安倍晋三だ。安倍は首相在任中あるいは官房長官など在任中にいったい何回プーチンと面会したことであろうか。首相在任期間中には27回と言われているが、非公式な面会を含めた回数は公開されていない。ロシア訪問の際は必ず経済援助の土産を下げて出かけて行き、2016年プーチンが来日した際には安倍の地元、山口県の高級旅館にまで招いて厚遇した。

◆安倍晋三の犯罪性を注視せよ

そして日本は何を獲得したのか? いま安倍は何を発言しているのか。「プーチンと仲の良い安倍にロシアへ行かせて停戦のために働かせろ」との声は政府内外にある。しかし、安倍がそんな役割を担えるような人間ではないことを、首相岸田も外相岸も熟知している。なにより仲良しであるはずのプーチンが核兵器の使用可能性に言及したとたんに、日本の「非核三原則の見直し」と「核シェアリング」(核兵器の共有、あるいは共同利用)との暴論を平気で発言し、岸田を慌てさせた。要するに安倍晋三によって日本はプーチン独裁を確固とさせる栄養を与えてしまい、にもかかわらず安倍にはその認識がまったくないということに、あらためて注目すべきだろう。

◆核兵器は使えない、原発も「地元核兵器」だ

そして私同様に「侵略戦争反対」の立場の人が、ウクライナを支援する気持ちは理解できるものの、それが即「憲法9条改正論」や安倍が唱える程度の「核兵器容認論」にまで結びつくのは、短絡の極みである。

今次のロシアによるウクライナ侵略により明らかになったことは、「核兵器」は実際には使用できない兵器であることと(一度核兵器が使われれば、攻撃の応酬で人類はおそらく破滅近くのダメージを受ける)だ。国連事務総長までが「核戦争の可能性」を憂慮する事態は「何者かが意図的であろうと、ミスであろうと核兵器を使用してしまえば、人類はもうあらゆるコントロールを失い破滅に向かう」ことへの世界的な恐怖に依拠している。

原発の危険性も同様だ。ロシアが侵略直後にチェルノブイリ原発を支配し、その後も主要な原発に手を伸ばしているのは、電力の首根っこを押さえるのではなく「地元の核兵器」を支配下に置くことが目的である。

◆好戦派への警告ゼレンスキ―大統領の言葉

このような状況下、総論ロシアの暴挙は米国によるベトナム侵略戦、アフガニスタン侵略、イラク侵略同様に非難されるのが道理だ。だがここでちょっといきりたち過ぎた日本国内の「好戦派」には警告を発しておこう。私の見解ではなく、米国議会でリモート演説を行いスタンディングオベーションで称賛を受けた、ゼレンスキー大統領の言葉だ。

「真珠湾攻撃を思い出して下さい。9・11を思い出してください」

9・11の実行者はともかく、真珠湾攻撃の当事者は誰でも知っている。日本だ。第二次大戦後の世界の枠組みで東西冷戦構造は崩れても、敗戦国である日本へのまなざしには変化がないことを、ゼレンスキー大統領は明言した。この言葉の含意は重い。どう答えるのだ。安倍晋三とその支持者よ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年4月号!

地震に便乗してタンク保管のデメリット強調? 作業事故まで持ち出して海洋放出進めたい細野豪志氏に福島から異論 鈴木博喜

「作業の過程で事故が起きてしまうことと、汚染水海洋放出の是非は別問題でしょう。本質的に全く別の問題を並べ比べて、陸上でのタンク保管では駄目だと目の前に突き付けているように思います」

電話取材に応じた福島県の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の織田千代さんは「どこから反論したら良いものか…」と呆れた様子で言葉を紡いだ。

「3・11」を想起させる大きな揺れから一夜明けた17日朝、震災・原発事故発生後の2011年9月に野田内閣の環境大臣に就任した細野豪志代議士(現自民党)が、ツイッターに次のように書き込んだ。大地震に便乗して海洋放出への支持を増やそうとしているように映った。

「昨晩の地震で知ってもらいたいのは処理水をタンクで保管するリスク。地震で処理しきれていない水が流出するリスクは常にある。1000基(一基約1億円)超のタンクの水漏れや劣化をチェックする作業は危険を伴う。タンクから転落死もあった。現状を放置するより、処理して海洋放出する方が安全」

汚染水の海洋放出を推す細野豪志氏の投稿。作業事故にも触れながら「タンク保管より海洋放出する方が安全」と書き込んだ

実は細野氏は地震直後にも、こう書き込んでいる。

「宮城・福島の地震被害が心配だ。東電福島第一原発のタンク破損も気がかり。処理が終わっていないものがある。タンク保管のリスクが顕在化しないことを祈る。#処理水」

ほら、こういう大きな揺れが来たらタンクが壊れるかもしれない。「処理しきれていない水」が漏れ出すリスクと背中合わせじゃないか。だから海に流すべきなんだ─。大地震への心配を装いながら、細野氏の持論が「顕在化」した格好だ。

2020年3月11日には「タンクをあれだけ近くで取材しながら、処理水を保管し続けるリスクをなぜ説明しないのか!」と「報道ステーション」への怒りをツイッターに綴り、同年7月13日には「処理水タンクは放射性廃棄物となる。タンク保管を続ければ廃棄物が増える タンクは改良されたが、台風や竜巻によって処理しきれていない水が流出するリスクがある タンクの水漏れや劣化をチェックする作業は危険を伴う。タンクから転落死した作業員もいる。 #タンク保管を続けることに反対します」と書き込んでいる。

織田さんは言う。「地震の直後は、確かにタンク保管を心配する人もいるかもしれません。ただ、細野さんたちが発信するのは影響が大きいので、日頃あまり関心を持っていない人が目にすると『やっぱり海に流すしかないのか』となりかねない。彼らもそれを分かっていて発信していると思う。もうすぐ海洋放出という政府方針決定から1年が経ちます。『地元(大熊町や双葉町)が望んでいるから』などと少しずつ論点をずらしながら放射能を拡散する方向に進んでいます。汚染水は一度流してしまうと回収できません。取り返しがつかないんです。中身のことも学べば学ぶほど恐ろしい。細野さんがいくら長生きしたって海洋放出の影響に責任を取れないということを分かって欲しいです」

福島県内では海洋放出に反対する声が多い。織田さんたちも「陸上保管継続を」と訴え続けている

細野氏の主張を後押ししている人物がいる。初代原子力規制委員長を務めた田中俊一氏だ。昨年2月に発刊された著書「東電福島原発事故 自己調査報告」のなかで細野氏と対談している田中氏は、こう語っている。

「凍土壁の工事では作業員が1人、感電で亡くなっています。貯水タンクを造っている最中にも、タンクから落下して1人亡くなっている。トリチウムの海洋放出を先送りにしたことで、2人が殉職しているんです。そういう人命と、何千億円というお金が費やされている。そういうことも踏まえて判断するのが有識者の使命だと思うんです」

確かに尊い命が失われるような作業事故はあってはならないが、2015年1月に発生したタンクからの転落死亡事故では、安全帯を使用せず単独で作業してしまったことが原因だと報告されている。作業事故を挙げて海洋放出の是非を語るのは全くの筋違いなのだ。

長く原発労働者問題に取り組んでいる狩野光昭いわき市議(社民党福島県連代表)も「それはフランジ型タンクだと思いますが、確かに単独作業で落下し、作業員が亡くなりました。でも、それが『タンク保管を継続したことでの事故』であって『だから海洋放出する方が良い』と結びつけるのは論理の飛躍だと思います。あくまでも作業工程のなかでの労働安全衛生上の問題ですよ。発注者としての東電の責任もあるし、元請け企業の責任もある。それを海洋放出の是非と結び付けるのは暴論というか飛躍しすぎ。そこは納得いかないですね。全くの別問題です」と語る。

タンクでの陸上保管を求めているのは織田さんたちだけではない。ミクロネシア連邦のディビッド・W・パニュエロは昨年4月、汚染水の海洋放出に関して大きな懸念を示す書簡を当時の菅義偉首相宛てに送付。「タンク貯蔵が効果的で緊急性のある解決方法だ」と海洋放出しないよう綴った。

これに対し、資源エネルギー庁・原子力発電所事故収束対応室の福田光紀室長は昨年11月、織田さんたちとの意見交換の場で「陸上でのタンク保管についてはいくつかの論点がある。そもそもタンクから水が漏えいしないのが大前提。漏えいを防ぐために検査をやらなければいけない」などと陸上保管のデメリットを強調していた。

昨年2月の大地震でも今回も、貯蔵タンクから汚染水が漏れ出したとの報告はない。本当に陸上保管より海洋放出の方がメリットが多いのか。

「海底トンネルをつくって30年にわたって海に流す計画なのだから、配管(トンネル)が大きな揺れで破断することだって考えられる」

狩野市議はそう指摘する。しかし、海底トンネルのリスクは語られない。

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

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紙の爆弾2022年4月増刊

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子どもたちの犠牲だけは本当に耐えられない ── 水戸喜世子さんに聞いた「子ども脱被ばく裁判」「311子ども甲状腺がん裁判」の争点と課題 尾崎美代子

3月7日、久しぶりに高槻市の水戸喜世子さんのご自宅にお邪魔した。2月14日、仙台高裁で2回目の期日が開かれた「子ども脱被ばく裁判」の控訴審と、1月27日、3・11の原発事故の被ばくにより甲状腺がんを発症した6人の若者が東電を訴えた「311子ども甲状腺がん裁判」について、お話を伺ってきた。 (聞き手・構成=尾崎美代子)

 
水戸喜世子(みと・きよこ)さん 子ども脱被ばく裁判の会・共同代表。1935年名古屋市生まれ。お茶の水女子大学、東京理科大学で学ぶ。反原発運動の黎明期を切り開いた原子核物理学者・故水戸巌氏と1960年に結婚後、京大基礎物理研究所の文部教官助手就任。1969年「救援連絡センター」の設立に巌氏とともに尽力。2008年から2年間中国江蘇省建東学院の外籍日本語教授。2011年3月11日以降は積極的に脱原発・反原発運動にかかわる

◆「子ども脱被ばく裁判」5つの争点

水戸 2月14日の2回目の期日は、私は体調が悪くて行けませんでしたが、井戸謙一弁護士から頂いた期日報告に沿っておおまかに説明します。

1つ目は、国の意見の中に「1ミリシーベルトの被ばくをしない利益が法的保護に値しない」というのがあります。この1ミリシーベルト被ばくしても当たり前という国の言い分に対して弁護団は、1ミリシーベルトがどれだけ危険かと準備書面で反論しました。ICRP(国際放射線防護委員会)は、100ミリシーベルト以上浴びると癌で死ぬ確率が0.5%高まると主張しているので、それに基づいて計算すると1ミリシーベルト浴びると年間350人が死ぬことになる。

一方、日本の環境基本法は、大雑把に言って生涯それを飲み続けた場合に、10万人に1人がん死するようなものを「毒物」と規定しています。東京の豊洲市場の地下水が汚染され、ベンゼンが検出されたが、それをずっと飲み続けると10万人に1人以上が亡くなるということで大騒ぎになった。一方で1ミリシーベルト被ばくすると、10万人中350人の死者が出るという環境を放置していいというのが「法的保護に値しない」という内容で大嘘ですね。

2つ目は、「裁量論」についてです。判決では、安定ヨウ素剤を飲ませなかったのも、スピーディーを公開しなかったのも、授業再開も行政の裁量権の範囲内であるというものでした。つまり、法律で決められていることもあるが、決められてないこともある。放射線に関しては事故を想定してないから、決められてないことのほうが多い、そのときは、行政の裁量権に任すしかないというわけです。

── ヨウ素剤を飲ませる、飲ませないも、各自治体、現場の判断に任せると。

水戸 そう。でもそれは違うでしょう。命に関わる重要なことを行政が勝手に決めていい訳がないというのが、弁護団の言い分です。法の取り決めがない場合、では何を根拠にするかというと、1つは憲法、もう1つは国際法です。 それを準備書面の[5]で提出しましたが、未完成だったので、次回に改めて提出します。

── 国は、控訴人らによる「被災者の知る権利」の主張に対し、反論を拒否したとありますが、反論を拒否するとは?

水戸 「あなたたちは独特の理論を主張しているから、勝手にやってください」という態度だと、井戸弁護士は仰ってました。この裁判は、前に話したように、放射線についての国内法が整備されていないのですから国際人権とか憲法とか、もっと大きな土台の上でやっています。放射線に対する規制がないからなのです。環境基本法にもやっとこの間、放射線の項目をとりこむことはできたが「教室なら、この線量以下で」とかの基準とすべき具体的な数字は、今も一切出ていません。いかに安全神話のうえにあぐらをかいていたかということですよね。

「子ども脱被ばく裁判」裁判前集会(武藤心平さん撮影)

── 3つ目の、控訴人が「国賠訴訟」を追加したというのは?

水戸 子ども人権裁判は義務教育を受けている子どもが原告になって訴訟をおこしたが、もう中学生が4人しかいなくなった。それで裁判が自動消滅したら困るので追加訴訟を加えました。安全なところで義務教育を受けられなかったので損害賠償をしろと。でも、福島市、郡山市、いわき市は、裁判の途中で新たに追加するのは「違法だ」と異議を申し立ててきた。裁判長もちょっと首をかしげてます。次回却下されるかもしれないが、さらにしっかりと反論していくことになります。

4つ目が、危険な環境の施設で教育をしてはいけないという原告の要求に対して裁判長から、地方自治体の学校指定処分とどのような関係になるのか、子どもがいれば学校を作るという規則がある、でも今の学校では線量が高いから教育を行ってはいけないということの関係性はどうなるのですかと聞かれ、次回弁護団から説明することになりました。一時的に線量の低い地域に避難して教育を継続出来るのですから矛盾することではありません。安全な環境で教育をうける権利という教育基本法を根拠に反論していくでしょう。

5つ目は、原告の意見陳述で、Aさんが、無用な被ばくをさせられてしまったため、子どもに何か体調が悪いことがあると、被ばくと結び付けて考えてしまうという苦しさについて述べられました。

「子ども脱被ばく裁判」街頭で訴える(武藤心平さん撮影)

◆「311子ども甲状腺がん裁判」甲状腺がん発症者6人による生身の訴え

 
「311子ども甲状腺がん裁判」報告集会の様子

── 先日、東電を提訴した6人の訴訟ですが、弁護団は子ども裁判とほぼ一緒だそうですが?

水戸 ええ、私たちは無用な被ばくをさせられたこと、安全な環境で教育を受ける権利を争っていますが、6人の訴えは生身の訴えですものね。一見理念的にみえた子ども脱被ばく裁判が突如リアリティを伴って立ち現れた思いがして衝撃でした。6人は実際に甲状腺がんを発症し、全員が2回から4回の手術を受けている。経緯は子ども裁判の主張と完全に一致するので、脱被ばく子ども裁判弁護団は全員入り、ほかに海渡弁護士なども加わり、弁護団がつくられています。17歳から27歳までの若者が自分の人生をかけて法廷に立つのですから、何としても勝利したいと思います。

── 提訴後の報告会に私も出席しました。皆さん、10年間孤立していた。先日、井戸弁護士と河合弁護士が出席した日本外国特派員協会の記者会見で、6人の方々は河合弁護士のところに相談にきたと仰ってましたが。

水戸 崎山比早子さんが代表で河合弁護士に関わっておられる「3・11 甲状腺がん子ども基金」などでも繋がる機会はあったんでしょう。福島県立医大は嫌だからと避難先の病院で見てもらっている人もいるし、患者さんは孤立していて、繋がるのは本当に困難だったと思います。その意味でも氷山の一角ですね。「黒い雨裁判」の原告を足を棒にしてつないで歩いた高東征二さんのご苦労から学ばねばと思います。

── 今後、子ども裁判と6人の裁判はどのように闘われるでしょうか。

水戸 全く別の裁判として展開されるのは当然ですが、私は、子ども裁判には、絶対「黒い雨裁判」の成果を取り込まないと勝てないと思っていて、子ども裁判の通信に書かせて頂きました。まだ弁護団のなかで話しあわれてはいませんが。

「黒い雨裁判」の一番のポイントは、黒い雨には明らかに放射能が含まれていて、降った地域の野菜を食べたり、空気を吸って内部被ばくしたことを認めたこと。広島県がとても偉いと思うのは、アンケート調査を何度もやり、降雨地域で病気になった人が非常に多いという事実をつかんだこと。これは外部被ばくだけでは全く説明がつかない。だから残留放射線を浴びた人、食べ物や空気から放射線を吸った人が内部被ばくしたということを、広島地裁も高裁も認めたわけです。地裁は、国の決めた11の疾病にり患していることを根拠にしたが、高裁は、内部被ばくは晩発性だから、今そういう病気がでていなくても、いつでてくるかわからないから、黒い雨を浴びた人全員被ばく者と認定した。そうしないと、一般のがん患者と放射線によるがん患者の区別は今の医学では因果関係を証明できないと思います。本質の到達出来ない時には、現象から迫るのは科学の手法であると、武谷三男の三段論法論で説かれていますけどね。

6人の裁判は「311甲状腺がん子どもネットワーク」が中心に支援していますが、私たちの子ども裁判も実質的に支援していきます。6億円超の損害賠償を求めていますから、訴状の印紙代だけでも大変な額になります。裁判をおこすということは本当に大変。でも一人1億円なんて、若い人の一生涯のことを考えると、小さな額だと思いますよ。 とくに親はどんなに辛いかと思いますよね。私たちの力不足を若者たちにお詫びしたいです。今回のウクライナもそうですが、私は、大人の愚かさのために、無邪気な子どもたちが犠牲になることだけは本当に耐えられません。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
『NO NUKES voice』改題 通巻31号
紙の爆弾2022年4月増刊

2022年3月11日発売
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

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《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜

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樋口英明(元裁判官)
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井戸謙一(弁護士)
被ばく問題の重要性

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《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
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《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
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《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
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《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍

季節編集委員会
我々はなぜ『季節』へ誌名を変更したのか

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)発行にあたって 原発の危険性を再認識させられたロシアによるウクライナ侵略 季節編集委員会

日本では2011年3月11日にまだ生まれていなかった子どもたちが既に小学校に通っています。同時に大地震の頻発、原発事故からCOVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミック、そして20世紀に最大限懸念された「核」戦争の危機に、今日全人類は直面しています。

 
『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

ロシアのウクライナ侵略へ、国際社会が強い非難を浴びせていますが、日本国内では「こんなことになるから核武装をしなければならない」、「憲法9条で国は守れない」、「米国と核兵器をシェアーしよう」などと、火事場泥棒的な猛烈に無茶苦茶極まる発言が元総理安倍晋三や維新の松井一郎代表などから聞かれます。

私たちはこれらの暴論を「ふざけるな」と踏みつぶします。今次のロシアによるウクライナ侵略は、細部にデリケートな要因があるにせよ、間違いなく暴挙です。そしてロシアが侵略後、いち早く「原子力発電危機の象徴」である「チェルノブイリ原発」を支配したのは、「原発」が持つ危険性と、国際紛争にあっては「兵器」として機能する危険な存在であることを示した、と理解すべきではないでしょうか。

このような侵略行為が始まれば「核による抑止力」などは一切通用せず、「原発」が核兵器同様に扱われることが、侵略者ロシアによって明確に示されました。これまで本誌を愛読していただいた皆さんも「まさか21世紀にこんな戦争が起こるなんて」と驚いている方が多くいらっしゃることでしょう。私たちも同様です。ロシアによるウクライナへの全面侵略などは、正直予想できませんでした。

◆戦争がなくても「原発」は危険だ

ただし、私たちは平時においても「原発が核兵器同様に危険である」ことは創刊以来感じていましたし、これまで原稿を寄せていただいた、多くの皆さんに指摘していただいた通りです。福島第一原発の大事故により、290名を超える若者が甲状腺がんに罹患してしまいました。政府・福島県や無恥な政党(自民党・維新・国民民主党)はこの明確な健康被害に、「風評被害」とトンデモない言いがかりで応じていますが、僅か10年ほど前の事実すら理解できない、これらの人々に政治を任せるわけにはいきません。

◆なぜ『季節』と誌名を変えたのか

『季節』と誌名を変更した理由については、本日発売の誌面の中で詳述しております。是非手に取ってお読みください。そしてお知り合い、ご友人に広めてください。

少しだけ誌名変更のエッセンスをご紹介しましょう。世界の多くの国には「季節」が廻り、なかでも日本には四季があります。春夏秋冬、落葉樹はそのいでたちを変えながら次の年を迎えます。冬眠する動物もいます。私たち人間の生は長くとも100年程度ですが、私たちが生まれてくる遙か昔から、いま生をうけた私たち全員がこの世から消えた未来にも、過去と変わらずに春夏秋冬は廻ることでしょう。

このような長大な歴史の中で、人間が地球史的にはごく短時間に、犯してしまった間違いの象徴が「原発」だといえるのではないでしょうか。人間みずからの存続はもとより、生態系を破壊するほどの暴走を、原発(核)は持っている、このことを再度肝に銘じたいと思います。残念ながら原発(核)の廃絶には、その汚染物質の処理を考慮に入れれば、最も希望的な観測に基づいても、現在科学の力では数十万年を要します。

私たちは日本だけでなく、世界中の原発の即時停止、廃炉を求めるものですが、仮にその夢が叶ったとして汚染物質の処理には、気が遠くなるような時間が必要です。その間にも「季節」は幾たびも廻るでしょう。今次の侵略戦争での侵略者による「原発」の扱われ方は、そのことへの再度の警鐘です。

2014年の創刊から8年、『季節』は「原発」を絶えまなく凝視しながら、時代・文明の病・欺瞞を突く総合誌への発展を目指し、本日再出発します。ご支援をお願いいたします。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
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