ムエタイ興行、ルンピニージャパンタイトルマッチ3試合は1ラウンドKO決着!

ムエタイを掲げるセンチャイジム興行の年内最終興行として組まれた6つのタイトルマッチ、ムエタイオープンタイトル三つは判定決着ながら白熱した展開。

翔(しょうた)センチャイジムの最終試合は引分け。国内王座を5つ獲得の実績を残し、ここまで戦って来て獲れたチャンピオンベルトには、センチャイ会長から与えられたチャンスと育て上げて頂いた感謝を述べ、引退テンカウントゴングを聴いた。

引退テンカウントゴングに送られる翔(しょうた)
猛攻始まったUMAが喜入衆を追い回す

◎MuayThaiOpen.47 / 12月1日(日)新宿フェース 15:30~19:55
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

◆12. ルンピニージャパン・ウェルター級タイトルマッチ 5回戦  
チャンピオン.喜入衆(NEXT LEVEL渋谷/66.5kg)
    vs
UMA(K&K BOXING CLUB/66.4kg)

勝者:UMA / TKO 1R 1:54 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

初回早々のローキックから接近してUMAがすぐ打って出る圧力があった。

喜入の隙を突いて素早く左ヒジ打ちを打ち込むと、喜入はノックダウン。

そこからUMAの倒しに掛かる勢いは増し、休ませない猛攻。コーナーでパンチを打ち込み喜入をスリップダウンさせる。

そのまま追い続け左ハイキックから蹴りの連打で喜入を倒し、タオル投入によるものか、いずれもレフェリーが試合をストップする判断を下し、UMAが第2代チャンピオンとなる。

UMAの左ヒジ打ちが喜入衆にヒットし、ノックダウンを奪う
UMAの猛攻の末、倒されてしまった喜入衆

◆11. ルンピニージャパン&MuayThaiOpenバンタム級王座統一戦 5回戦

パンチの有効打と蹴りの反則でダメージ深くなってしまった壱世

ルンピニージャパンChamp.壱・センチャイジム(与那覇壱世/センチャイ/53.35kg)
    vs     
ムエタイオープンChamp.岩浪悠弥(橋本/53.45kg)
勝者:岩浪悠弥 / KO 1R 1:15 / 3ノックダウン / 主審:神谷友和

けん制のパンチからロープ際で岩浪のパンチ連打で壱世からノックダウンを奪うも倒れた壱世の顔面を蹴ってしまった岩浪。これが反則と判断したレフェリーがノックダウンは認めるが反則打として岩浪から1点減点を宣言。

更に壱世に1分間の回復インターバルを与える。その後の再開もダメージが残る壱世に岩浪がパンチの連打で続けて計3度のダウンとなった時点で岩浪のノックアウト勝利となった。

14連勝中の壱世に勝利した岩浪は「今後もっと上に行けるように頑張ります」と語った。岩浪悠弥は第4代ルンピニージャパン・バンタム級チャンピオン。ムエタイオープン・バンタム級王座初防衛成る。

岩浪悠弥の右ハイキックから壱世を追い込む突破口となった
壱世から2度目のノックダウンを奪う岩浪悠弥
「壱世を倒すのは俺しかいない」と豪語して臨んだ岩浪悠弥、左は橋本敏彦会長

◆10. ルンピニージャパン・スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

実方拓海の左ストレートが齊藤敬真にヒット、最初のノックダウンを奪う

LBSJスーパーライト級チャンピオン.実方拓海(TSK Japan/66.45kg)
    vs
齊藤敬真(インスパイヤードM/66.4kg)
勝者:実方拓海 / KO 1R 2:15 / 3ノックダウン
主審:シンカーオ・ギャットチャーンシン

スーパーライト級の実方拓海がスーパーウェルター級王座決定戦に出場。

実方は初回からローキックの様子見から距離を詰め、左フック、ストレート。

いずれもパンチの攻勢で3度のノックダウンを奪って危なげない快勝で2階級制覇。第2代チャンピオンとなる。

最後は左ストレートで齊藤敬真を倒した実方拓海、完勝だった
2階級制覇とはなったが、今後どのクラスで戦うか実方拓海

◆9. MuayThaiOpenスーパーフライ級王座決定戦 5回戦

橋本敏彦会長とともに白幡裕星勝利のツーショット

WMC日本スーパーフライ級5位.村井雄誠(エイワスポーツ/51.95kg)
    vs
MuayThaiOpenスーパーフライ級3位.白幡裕星(橋本/52.05kg)
勝者:白幡裕星 / 判定1-2 / 主審:和田良覚
副審:シンカーオ49-48. 神谷48-49. 少白竜48-49.

前半のローキック主体に蹴り合う中でも互角の立ち上がり、中盤から白幡が徐々に村井を追い気味の展開。

的確に打って出た白幡。迎え打った村井だが白幡に勢いがあった。

完全な優位に立ったとは言えないキツイ終盤もふんばる両者。僅差の判定勝利を掴んだのは白幡となり王座獲得。

白幡裕星が追い気味に進めたが村井雄誠も踏ん張った
白幡裕星が蹴る、わずかに攻勢を維持

◆8. MuayThaiOpenスーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.J(ジェイ/TSK Japan/69.6kg)vs 降籏健嗣(士道館ひばりケ丘/69.65kg)
勝者:J(ジェイ) / 判定:3-0 / 主審:河原聡一
副審:シンカーオ49-48. 神谷49-48. 少白竜50-48.

序盤はやや離れた間合い。レフェリーにファイトを命ぜられるほど見合いが続く後、徐々に打ち合いに移るがまだ激しさが無い中から中盤、ジェイがやや優勢に攻めだし、第4ラウンドは両者の苦しそうな表情からジェイのパンチのヒットが目立っていく。

最終ラウンドは降旗が鼻血を流し、鼻の上をカットし、左目尻もカットの血みどろになりながらの終了。ポイント的には僅差ではあったが、ジェイが押し切った勝利で防衛。

終盤の流血した降籏健嗣の顔面にパンチを打ち込むジェイ
我武者羅の打ち合いとなったラストラウンド、ジェイが追い続ける
キツイ試合を乗り切って防衛成功したジェイ

◆7. 翔(しょうた)・センチャイジム引退試合 ライト級3回戦

JKIライト級チャンピオン.翔・センチャイジム(=佐藤翔太/センチャイ/37歳/61.1kg)
    vs
大谷翔司(スクランブル渋谷/28歳/61.2kg)
引分け 0-0 / 主審:主審:谷本弘行
副審:シンカーオ29-29. 河原29-29. 和田30-30.

静かな立ち上がりから強い蹴りへ移っていく。接近すれば組み技ヒジ打ちを繰り出す両者。大谷は後ろ蹴りも見せる。

終盤には翔(しょうた)が鼻血を流すが最後まで両者、技を出し切り翔のラストファイトとなった。

引退セレモニーでは翔の長いコメントが続き、ジム仲間や応援してくれた仲間、センチャイ会長に「今迄育ててくれて有難うございました。」と感謝の言葉を述べてテンカウントゴングに送られた。

遠慮の無い打ち合いとなった大谷翔司vs翔太
戦い終えてセンチャイ会長を中央にスリーショット

◆6. MuayThaiOpenスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

稔之晟(じんのじょう/TSK Japan/53.2kg)vs 加藤洋介(チームドラゴン/53.25kg)
勝者:稔之晟 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:谷本50-46. 河原50-47. 和田50-45.

初回から様子見ながら徐々に稔之晟が蹴りで自分の距離を作り、第2ラウンドにはヒジ打ちで加藤の額をカットし、組み合えばヒザ蹴りや崩し倒し、稔之晟がハイキックを多用し優位を保ったまま大差の判定勝利となって王座獲得。

19歳の稔之晟が41歳の加藤洋介を攻め続けた
稔之晟が大差判定で王座獲得

◆5. 58.0kg契約3回戦

佐藤政人(NEXT LEVEL渋谷/57.95kg)vs 森岡悠樹(北流会君津/57.8kg)
勝者:森岡悠樹 / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:谷本29-30. 河原29-30. 和田29-30.

◆4. フェザー級3回戦

成澤龍(SRC/56.8kg)vs 浦林幹(クロスポイント吉祥寺/57.1kg)
勝者:浦林幹 / 判定0-3 / 主審:シンカーオ・ギャットチャーンシン
副審:谷本29-30. 少白竜29-30. 神谷29-30.

◆3. スーパーバンタム級3回戦

鈴木貫太(ONE’S GOAL/55.2kg)vs 森本直哉(グランディール池袋/55.05kg)
勝者:鈴木貫太 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:シンカーオ30-29. 少白竜30-28. 神谷30-29.

◆2. スーパーフライ級3回戦

バンサパーン・センチャイジム(タイ/51.95kg)vs 花岡竜(橋本/51.9kg)
勝者:花岡竜 / 判定0-3 / 主審:河原聡一
副審:シンカーオ28-29. 少白竜28-30. 神谷28-30.

◆1. スーパーバンタム級3回戦 

健・センチャイジム(センチャイ/55.1kg)vs 豪之晟(マイウェイスピリッツ/55.06kg)
勝者:豪之晟(ひでのじょう) / 判定0-3 / 主審:谷本弘行
副審:シンカーオ28-29. 和田28-30. 河原29-30.

喜入衆から王座奪取したUMA

《取材戦記》

ルンピニースタジアムからソムキアット・タノムクム氏がスーパーバイザーとして来日。こういった母体団体からスーパーバイザーが来日することはタイトルマッチとして重要な部分でしょう。

ルンピニージャパン王座は第1ラウンド決着となったが、ムエタイオープン王座は5回戦をフルに戦い、我慢の闘いとなる、いずれも白熱した戦いとなった。

翔・センチャイジムは13年の現役生活に終止符。多くの団体興行と単体プロモーション興行に出場して5つのタイトルを獲得。2013年12月に第7代NJKFライト級王座獲得している。公式最終試合はこの日、大谷翔司戦を終えての引退セレモニーを行なった。この前の試合は11月1日、「KNOCK OUT」に於いて重森陽太に4ラウンドKO負けだった。

壱センチャイジムvs岩浪悠弥戦は最初のノックダウンの後に反則打が伴ない、壱センチャイにとっては力を出し切れぬ結末に繋がってしまっただろう。回復の為のインターバルを与えられての再開だったが、レフェリーの処置によってはいろいろなパターンの裁定が下される可能性があった。

神谷レフェリーは一旦カウントし、どういう対処をするか手の内を見せなかった。そして壱センチャイが立ち上がったことによってダメージ具合を量ることが出来た上で、岩波の反則打と宣言し、壱センチャイにインターバルを与えることにも繋がった。

最初のノックダウンと続いた反則打の時点で、レフェリーはどう対処するか分からないから、壱センチャイは立てるなら立たざるを得ないだろう。また本能的に立ってしまうものでもある。ルールの細かさとレフェリーの判断、選手の思惑が絡むと運命と結果はいろいろ変わってくるものである。

来年の興行は5月31日(日)にMuayThaiOpen.48が予定されています。年4回の興行予定が新宿フェースで行なわれるようです。

2016年のムエタイTOYOTA CUPのようなビッグイベントの予定は無いか、センチャイ会長の奥さんに聞いてみると、「今のところ、その予定はありません!」と言われ、ああいうイベントは睡眠時間も奪われる準備の忙しさ、運営の大変さが滲み出ていて今後も無さそうな回答。でもタイから全く話が来ない訳ではないらしい。各団体等で新しいイベントが生まれる興行戦争の時代、センチャイジム興行もいずれはまたタイへ衛星中継されるムエタイイベントもやらねばならないだろう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

設立24年目、三代目理事長のNJKFの年内最終戦、S-1トーナメント決勝!

アジアで勢力を伸ばしているONE Championship出場で海外試合が多い健太は6月以来の登場。9月22日、大阪で中野椋太に判定勝利しているチョ・ギョンジェ(韓国)にヒジで切られる苦戦も辛うじてドロー。

タイ国発祥の、名を馳せたソンチャイプロモーター主宰のS-1トーナメントの日本版“S-1ジャパン”2階級で決勝戦。この優勝者は次なるタイでのS-1やIBFムエタイ世界戦に繋がることになる。

◎NJKF 2019.4th / 11月30日(土)後楽園ホール 17:00~20:55
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、S-1

チョ・ギョンジェの威圧的に出た左ストレートが健太の出ばなをくじく

◆第10試合 メインイベント 63.5kg契約3回戦

WBCM日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/63.1kg) 
    vs
チョ・ギョンジェ(韓国/63.5kg)
引分け0-1 / 主審:中山宏美
副審:竹村29-29. 少白竜28-29. 和田29-29. 

離れた距離からローキック、接近すればヒジやヒザ蹴り狙うアグレッシブなチョ・ギョンジェに対し、健太は凌いで蹴りやパンチを返すもチョ・ギョンジェを圧倒するには至らない。第3ラウンド開始早々にはチョ・ギョンジェの強引なヒジ打ち連打で意外にも眉間を切られた健太。
打ち合い激しくなった最終ラウンド。チョ・ギョンジェの勢いを止められないドローとなった。

残り時間少ない中、健太がチョ・ギョンジェを追い詰めるがチョのパンチは厄介だった
チョ・ギョンジェのヒジ打ちで切られた健太、こんな姿は珍しい

◆第9試合 S-1ジャパントーナメント55kg級決勝戦 5回戦

大田拓真の蹴りが馬渡亮太の巻き返しを阻んだ

WBCM日本フェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/54.9kg)
    vs
馬渡亮太(治政館/55.0kg)
勝者:大田拓真/ 判定2-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村49-47. 中山49-47. 和田48-48

序盤からけん制し合うパンチと蹴り。その突破口探る展開から第2ラウンドに大田拓真がいきなりの右ハイキックを馬渡がまともに貰うとあっけなくダウン。

柔軟なムエタイテクニックを持つ者同士、タイでの試合が上回る馬渡が徐々に盛り返すが、いつもの勢いがやや弱く、ノックダウンを奪い返すに至らず、大田拓真の判定勝利による優勝となった。

大田拓真がノックダウンを奪った右ハイキックが馬渡亮太にヒット
大田拓真と一航の兄弟チャンピオンが誕生、二人を密着取材するメディアも現れた

◆第8試合 S-1ジャパントーナメント65kg級決勝戦 5回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/64.55kg)
    vs
NJKFウェルター級チャンピオン.中野椋太(誠至会/64.9kg)
勝者:中野椋太 / TKO 2R 2:01 / 主審:少白竜

強打同士の対戦。第1ラウンドはパンチとローキックにハイキックも折り混ぜてけん制。

第2ラウンドに入ると距離が徐々に縮まり、パンチの交錯から中野椋太が勢いを強め、畠山隼人を左フックでノックダウンを奪い、更にロープに詰めて連打したところでレフェリーが止め、中野椋太がTKO勝利で優勝。

中野椋太が蹴られても怯まず徐々にパンチの攻略にかかる
中野椋太が畠山隼人からノックダウンを奪った左フック
最初のダウンでダメージがあった畠山、中野は勝利を確信したか
最終ゴング寸前までMOMOTAROが攻め続けた

◆第7試合 59.0kg契約3回戦

MOMOTARO(前・WBCM・INフェザー級C/OGUNI/58.8kg) 
    vs
琢磨(前・WBCM日本スーパーフェザー級C/東京町田金子/58.5kg)
勝者:MOMOTARO / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:少白竜30-27. 中山30-28. 宮本30-27.

MOMOTAROは2013年に琢磨に2度判定負けしているが、多くの試練を経て王座も獲得し大きく成長。初回からヒジ打ちで琢磨の眉間をカット、先手を打つ蹴りで優り、組み合えば崩し転ばし、調子付くとバックハンドブロー、後ろ蹴り、飛び蹴りも見せる。

琢磨も必死にMOMOTAROの技をかわして意地を見せ、MOMOTAROは倒すに至らずも判定ながら雪辱を果たす。

MOMOTAROが主導権を奪い多彩に琢磨を攻め続ける

◆第6試合 第12代NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.日下滉大(OGUNI/53.3kg)vs 3位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/53.4kg)
勝者:一航 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:少白竜49-50. 和田47-49. 宮本47-49

序盤から一航のややタイミングずらして鋭く蹴る見映えがいい。日下は正攻法で立ち向かい互角に打ち合うが、一航のリズムを崩すには至らず。一航は第12代NJKFバンタム級チャンピオンとなる。

ロープ際に追い込むと飛びヒザ蹴りを試みた一航
一航の蹴りが日下洸大にヒット

◆第5試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ3回戦

SAHOが接近戦で力を発揮、連打で攻め続けた

チャンピオン.SAHO(闘神塾/55.0kg)
    vs
1位.浅井春香(KICKBOX/55.2kg)
勝者:SAHO / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:少白竜30-28. 竹村30-29. 和田29-28

序盤、浅井の右ストレート主体のパンチが冴えたが、接近戦で若いSAHOのスピード衰えぬパンチの的確差と手数が優って防衛成功。

◆第4試合 65.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級4位.マリモー(キング/64.85kg)
    vs
NJKFスーパーライト級8位.野津良太(E.S.G/65.7kg)
勝者:野津良太 / 判定0-3 / 主審:宮本和俊
副審:中山27-30. 竹村27-30.和田27-30.

若さで優るSAHOが疲れを見せず浅井を攻め続けた

◆第3試合 61.0kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛汰朗(VERTEX/60.8kg)
    vs
hayato(FOKAIJAPAN/60.9 kg)
引分け0-1 / 主審:少白竜
副審:中山29-30. 竹村29-29. 宮本29-29.

◆第2試合 58.0kg契約3回戦

向後宏昭(キング/57.8kg)vs 将栄(team lmmotal/57.65kg)
勝者:向後宏昭 / TKO 1R 1:56 / 股間ファールブローにより試合続行不可能となった将栄。
主審:和田良覚

◆第1試合 66.3kg契約3回戦

宗方888(キング/66.3kg)vs 謙(PIT/65.4kg)
勝者:宗方888 / KO 1R 2:43 / 3ノックダウン / 主審:竹村光一

エスコートキッズに選ばれたファンとツーショットの中野椋太

《取材戦記》

S-1ジャパン65kg級準決勝は、9月22日大阪と翌23日後楽園ホールで、1試合ずつ行なわれる予定だった。その9月22日、大阪での誠至会主催興行に於いて、中野椋太はチョ・ギョンジェ(韓国)に判定負け。その試合は準決勝ではなく、単なるノンタイトル戦だった。中野椋太は当初から決勝戦進出が決定していたらしく、この決勝進出の事実だけ知らされ、翌23日のNJKF興行で「中野椋太はチョ・ギョンジェに勝利した」という誤報が流れた。

畠山隼人は栄基(エイワS)に判定勝利で決勝進出を決め、もう一枠がなかなかリリースされず不可解ではあったが、結局65kg級は当初から3名の争奪戦だったことになる。

そしてこの11月30日の決勝戦では、中野椋太が強打で畠山隼人を圧倒して倒し、決勝戦のみ出場で優勝を果たした。

前座第2試合、故意ではない股間ファールブロー(ローブロー)を受けて悶絶TKO負けを喫した将栄。プロボクシングの場合、最大5分のインターバルを与えて続行できない場合はTKO負けとなる。

パンチで切られた外傷は目で確認できるが、股間の場合、リング上では確認できないことや、故意に反則勝ちを拾う為、痛いフリをして続行を拒否することも考えられ、防具として“ノーファール”となる防具を装着することからも続行できると判断される。その為、負傷判定や無効試合とはならない。

トリプルPの星紗弓さんとMOMOTAROの勝利のツーショット

今回のNJKFでも同様の裁定を迅速に下したことはすばらしい。また、ムエタイのノーファールカップは、一人で装着出来るものではなく、ベテランのトレーナーに紐をしっかり縛って貰わないと不安定になってしまう。初めて着けて貰う選手はその紐が尻や腰に食い込んで「痛テテテッ!」となるが、それぐらいしっかり縛らないと危険らしい。

そんな強いとは思えない蹴りで悶絶するような試合続行不可能となった場合、「ノーファールカップの紐の縛り方が悪いんだ!」と語るムエタイに詳しいトレーナーから聞いたことがあります。また「ムエタイ式ノーファールカップを越える安全なノーファールカップは他に無い」と言うあるトレーナーもいました。

それでも蹴られれば痛いだろうと思う毎度の股間のファールブロー。絶対安全で蹴られても痛くないノーファールカップは作れないものだろうか。“誰か作って特許とれば儲かるぞ”と思うが、試行錯誤繰り返し、何度股間蹴られなければならないか、やっぱり難しいものだ。

女子キックで勝利したSAHOは後援会や応援仲間の居る北側を向いて最後まで支援の御礼とマイクアピールをしていたが、映像を録っているカメラは南側とその近い方向のニュートラルコーナーにあった。後援会や応援仲間に感謝の気持ちを述べることに意識が働くのだろう。

現在は全国ネットでテレビ地上波放映されることは稀だが、インターネットではどこに居ても誰でも観れる時代。テレビカメラに向かって全国のキックボクシングファンへ挨拶する立派な姿を後援者、応援仲間に見て貰うことも大切なことと思う。

NJKF三代目・坂上顕二理事長率いる2020年の最初の興行は、2月16日(日)後楽園ホールで開催予定です。

以下、年間予定
3月15日(日) レンブラントホテル厚木(主催:新興ムエタイジム)
6月14日(日) 後楽園ホール
9月12日(土 )後楽園ホール
11月15日(日)後楽園ホール
他、加盟各ジムの主催興行が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

アマチュアキックボクシングの原点、全日本学生キック選手権大会開催!

プロ関係者の観戦も多かったこの大会。学生キックからプロ入りし、国内外のチャンピオンとなった選手も多く、OBの中には、土屋ジョー(東海大学)、小笠原仁(國學院大學)、SHIGERU(東海大学)、藤原あらし(明治大学)、城戸康裕(国士舘大学)、黒田アキヒロ(専修大学)、及川大夢(東海)、小嶋勇貴(東洋)をはじめ後輩となる現・大学生選手を指導する機会も多いようです。

この全日本学生キックボクシング連盟は1972年設立(大会開催は翌年より)。過去一度も分裂の起こらなかった、大学生を対象としたアマチュアキックボクシングの原点とも言える、地味ながら最も継続が長い団体で、伝統を守りながら防具付き試合、アマチュアムエタイ、女子フィットネスなど新しい試みもして、底辺拡大の為、加盟校増加にも力を注いでいる様子です。

大会会長・内藤光博氏、開会の御挨拶
新日本キックボクシング協会、伊原信一代表も応援に駆けつけた

◎第88回全日本学生キックボクシング選手権大会 2019年度チャンピオン決定戦
11月23日(土)後楽園ホール9:20~14:05
主催:全日本学生キックボクシング連盟

最優秀選手賞:西方大智(東海大学3年)
優秀選手賞:冨原旭日(創価大学2年)
喜多川賞:中原昴生(専修大学4年)
技能賞:執行航平(創価大学3年)
ベストバウト賞:小野祥平(東海大学3年)vs 三枝航己(日本大学3年)
団体優勝(1位):東海大学
団体準優勝(2位):日本大学
団体3位:拓殖大学

団体優勝は東海大学
ベストバウト賞:小野祥平(東海大学3年)の優勝ベルト姿

◆第1試合 ウェルター級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

柳 遼太(日本1年)vs 安河内大樹(中央1年)
勝者:安河内大樹 / KO 1R 1:15

◆第2試合 ウェルター級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

谷崎史麿(日本1年)vs 和島偉大(國學院1年)
勝者:谷崎史麿 / KO 3R 0:53

◆第3試合 ミドル級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

小宮諒也(明星4年)vs 植村直希(専修3年)
勝者:植村直希 / KO 1R 1:44

◆第4試合 ミドル級男子U-2 中止

甲斐野良介(日本4年)vs 加藤燿央(=計量失格/東洋1年)
甲斐野良介のエキシビジョンマッチ1ラウンド披露
◆第5試合 ライト級男子U-1 3回戦

冨原旭日(創価2年)vs 中原昴生(専修4年)
勝者:冨原旭日 / KO 3R 2:13

◆第6試合 フェザー級男子U-1 3回戦

今泉貴裕(中央3年)vs 須藤幸太(東海2年)
勝者:今泉貴裕 / 判定2-0 (29-28. 29-29. 30-29)

◆第7試合 ライト級男子U-1 3回戦

今村諄(拓殖2年)vs 浅川航平(日本2年)
勝者:今村諄 / KO 1R 0:50

◆第8試合 フェザー級男子U-1 3回戦

吉永 航(=アキレス腱断絶により負傷欠場/専修3年)vs 高橋伶諸(東海3年)
高橋伶諸の不戦勝

山口隼也(拓殖大学2年)、優勝ベルト姿

◆第9試合 ライト級男子U-1 3回戦

執行航平(創価3年)vs 佐藤広継(東洋3年)
勝者:執行航平 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-29)

◆第10試合 フェザー級男子U-1 3回戦

戸塚正弥(明星4年)vs 西方大智(東海3年)
勝者:西方大智 / KO 1R 2:29

◆アマチュアムエタイエキシビジョンマッチ1R

2015年ライト級チャンピオン.瓦田脩二(2016年WMFアマチュアムエタイ世界大会63.5kg級優勝/拓殖大学出身)
    EX
2010年ウェルター級チャンピオン.及川大夢(元・MuayThaiOpenスーパーライト級チャンピオン/東海大学出身)

プロで活躍する及川大夢(夢・センチャイジム)が登場。

◆2019年度UKFチャンピオン決定戦
 第11試合 フェザー級決勝 3回戦

山口隼也(拓殖2年)vs 安 晟太(中央1年)
勝者:山口隼也 / 判定2-0 / 主審:古居秀史
副審:小林30-28. 長谷川30-28. 千代田30-30
山口隼也が2019年度チャンピオン

激しい打ち合いが続いた展開。山口の上下打ち分け的確さが上回ると、安は頬を目の下を腫らし、鼻血も流す苦しさ。安のローキックを貰った山口も苦しい時間が続いた。

フェザー級決勝に向かう山口隼也の円陣
フェザー級決勝・山口隼也 vs 安晟太
山口隼也の右ストレートがヒット

◆第12試合 バンタム級決勝 3回戦

小野祥平(東海3年)vs 三枝航己(日本3年)
勝者:小野祥平 / 判定3-0 / 主審:河野友信
副審:小林30-27. 長谷川30-26. 千代田30-28
小野祥平が2019年度チャンピオン

パンチのヒットが目立った展開で小野がやや的確さが優ったか、第3ラウンドの残り少ない時間で更に打ち合うも小野がラッシュを強め、三枝からスタンディングダウンを奪って勝負を決定付けて王座を勝ち取る。

小野祥平は、なかなか活躍する舞台を見せてやれなかった御両親にこの優勝した姿を見せられたこと、またその両親への感謝、更に地元の友達、部活の先輩後輩に皆が居たから頑張って来れたことへの感謝を述べた。

小野祥平 vs 三枝航己
小野祥平がバンタム級優勝

◆第13試合 フライ級決勝 3回戦

川原俊將(創価3年)vs マグダレナ・ヴィンス(拓殖2年)
負傷引分け TD 1R 1:57辺り / 1R途中、偶然のバッティングによる川原俊將の試合続行不可能となり終了、両者を2019年度チャンピオンに認定。
主審:小林利典

蹴り合いから接近、クリンチになりがちなところへ頭同士が当たった様子。

川原俊路の円陣
ここでバッティングが起こった様子
フライ級はマグダレナ・ヴィンス、川原俊路、両者優勝

◆第14試合 ライト級決勝 3回戦

大館秀長(日本2年)vs 一ノ瀬浩太郎(東洋4年)
引分け1-0 / 主審:長谷川隆二
副審:古居30-30(大館を優勢支持). 河野30-28. 千代田30-30(大館を優勢支持)
大館秀長が勝者扱いにより2019年度チャンピオン(公式記録は引分け)

パンチとローキック主体の攻防。振り分け難い展開が続いた。ドロー裁定した二者のジャッジは大館を支持し、敗者扱いとなった一ノ瀬は4年生として後が無かったか、その場で泣き崩れた。

大館秀長は、今迄生きて来た中で、一番になったことが無かったと言い、ここで優勝できて大きな自信に繋がった様子。そして御両親、先生、先輩、大学や高校の友達に感謝を述べた。

大館秀長 vs 一ノ瀬浩太郎
引分けながら優勝果たした大館秀長と泣き崩れた一ノ瀬浩太郎

《取材戦記》

30年ぶりに学生キックボクシングを訪れ撮影。昔のキックボクシング(プロでの)のような雑な打ち合いもあったが、選手全体の技術は向上していた様子。

今あるアマチュアムエタイやジュニアキックは近年のプロ団体から派生し運営されるアマチュア部門ですが、全日本学生キックボクシング連盟は設立当初から大学役員による構成で大学生が運営進行する大会です。

偶然のバッティングによる試合続行不可能となったフライ級決勝。両者チャンピオンなんて矛盾した裁定だが、アマチュア学生タイトルだから仕方無いところかとは思う。

大館秀長がライト級優勝

最終試合のライト級決勝は“引分け勝者扱い”が発生したが、これは正しい裁定でしょう。延長戦ではなく、引分けを下したジャッジに“優勢支持”を義務付けた。

これはプロボクシングでも行なわれているトーナメント戦ルール。規定のラウンドを超えた延長は行なわないのが原則。

そして「公式記録は引分け」としっかりアナウンス。こういうところはプロの方が分かっていない。

ハーフタイムショーでは拓殖大学2年生女子による全身運動のエクササイズ、K-1 FIT FIGHTデモンストレーションを披露。各試合のラウンドガールは拓殖大学3年生の2名がリングに登場。30年前と比べれば大会がかなり明るく飾られたリングの華となりました。

今年のパンフレットは例年に比べ、豪華だったという声がありました。設立当時からの歴代団体優勝校と1995年から始まった歴代個人戦年度チャンピオンが掲載されており、

「この選手も学生キック出身か!」と新たな発見もできる貴重な資料となりそうです。

来年もプロ関係者の観戦も多くあるでしょう。プロ興行、アマチュアムエタイ、ジュニアキックと共に、現存する一番古い団体の学生キックは忘れてはならない存在でしょう。

K-1 FIT FIGHTデモンストレーションを舞う拓殖大学2年生の皆さん
ラウンドガールを務めた拓殖大学3年生の二人

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈66〉タイで三日坊主! Part58 5年ぶりのムエタイとお寺

◆高津くんの出家

高津くんはチャイヤプーム県にあるワット・コークコーンで9日間の出家だった。彼はタイで初めてのムエタイ修行したフェアテックスジムに居る師匠で、パイブーンというかつての名選手(元・ルンピニースタジアムランカー)の出身地にあるお寺に導かれての出家だった。因みにパイブーン氏をフェアテックスジムに紹介したのが私の黄衣を預かってくれたチャンリットさん。古く遡れば遠い親戚のような縁が繋がっていく因果があるものだ。

後々の写真を見せて貰うと、高津くんは元々髪が短く、剃髪してもさほど変わらぬ顔つきのようだ。体調を壊し若干の入院生活があったようだが、日々唱えるお経もしっかり覚え、毎晩の懺悔の儀式もこなしたという。黄衣の纏いもしっかりしていて、パイブーンさんも在家信者としてしっかり付き添ってくれたようだ。

高津くんは「僕はたった9日間だから!」と謙遜するが、チャランポランで写真撮っていた私とは真剣さが違った。長い戦歴とムエタイ修行の厳しさが物言う習得力と思う。

チャイヤプーム県で出家した高津広行、10年パンサー級の風格
出家前のネイトさん。その後、どんな人生を送っただろうか 1994.12

◆ネイトさんの悟り

それからネイトさんは、藤川さんとカンボジアへ巡礼の旅から帰ってから、また更に当初から藤川さんが計画していた軍事政権下のミャンマーへの困難な旅をこなし、その後も彼は一人でもタイ国内の寺を巡る旅をして、托鉢中に犬に噛まれたり、デング熱病に罹りながらもノンカイに戻り、還俗する前に藤川さんにもう一度会いに来て言っていたらしい。

「これで普通の生活に戻っても、仏陀の弟子として、生涯仏教の教えを道標として、理想の人間に近づくよう生きていく自信が付きました」と。

そしてほぼ半年の出家生活を終え、一旦はアメリカに帰ったらしく、その後の様子は分からないが、出家した経験は収穫大きい人生の分岐点となったことだろう。またどこかで会うことが出来るだろうか。藤川さんと出会った人物には、この他にもいろいろな影響受けた人が居たのだった。

◆タイ再訪への導き

諸々の出来事を絡みながらも、徐々に変化する藤川さんの比丘生活を聴きながら、私も藤川さんが移籍したお寺を訪問するチャンスが訪れたのは2000年12月。格闘技の取材中心だったこの頃、12月3日に新日本キックボクシング協会が企画するタイ国ラジャダムナンスタジアム興行が予定されていたところ、組まれたツアーの取材陣枠に、いつもコンビを組んでいた記者と参加することになった。旅費は記事掲載する出版社持ち。ならばこのチャンスを逃がすまい。5年ぶりのムエタイとお寺であった。

小笠原仁を祝福するアンモープロモーター、伊原信一代表、ラジャダムナンコミッション役員 2000.12.3
ウィラポンのV5を祝福する役員たち 2000.12.5
侍姿の楠本勝也を祝福するNJKF藤田真理事長 2000.12.5

このムエタイに絡むツアーの様子に触れると、日程は12月2日から6日の5日間。3日のラジャダムナンスタジアムには日本チャンピオン6人が出場した日本vsタイ対抗戦は2勝4敗(深津飛成がKO勝利)。

小笠原仁(伊原)は王座決定戦で1ラウンドKO勝利し、同スタジアム・ジュニアミドル級王座獲得。藤原敏男以来、22年ぶり日本人二人目の快挙だった。

12月5日には王宮前広場で国王生誕記念日興行が開催され、ここまでの取材態勢を組んで臨んだ日程となった。ここでは過去、辰吉丈一郎からWBC世界バンタム級王座奪取したウィラポン・ナコンルアンプロモーションの5度目の防衛戦があり、同じ王宮前広場の隣のリングではタイvs外国勢の豪華なムエタイ興行で、ニュージャパンキックボクシング連盟が協賛し、NJKFバンタム級チャンピオン(第2代)楠本勝也(東京北星)が1ラウンドKO勝利で最終試合を飾った。

このイベントは深夜に及び、疲れた身体で翌朝の早い便で帰国の途に付いた取材陣一行たち。一人残った私はそこから自由の身。ムエタイから仏教へ思考を変え、藤川さんのお寺を目指した。

◆タイのお寺で藤川さんと再会!

ワット・ポムケーウの内側から見た門

改めてゆっくりバンコクの街を歩くと、5年前には無かった高架鉄道が走るまでになっていた。もう市内バスの路線番号も忘れてしまい、車掌に行き先が上手く言えないとエアコンバスに乗るのも難しくなった(エアコン無いボロバスは4バーツほどの一律料金)。

でも何とか乗り継ぎ、サイタイマイバスターミナルに再び立った。私が黄衣纏って歩いた想い出の地でもある。青いリムジンバスに乗り、サムットソンクラーム県のメークローンへ向かった。

バンコクから70キロメートルあまり。ペッブリーより近く1時間で到着。メークローンはそれなりに栄えている地方都市で交通量が多かった。

藤川さんが在籍するワット・ポムケーウはバスターミナルから「すぐ目の前!」と言われていたが、歩いて50メートルぐらい。そこに“ワット・ポムケーウ”の門があった。

境内で犬に餌をやっていた中年の比丘に「プラ・キヨヒロ・ユーマイカップ(キヨヒロさん居ますか)?」と尋ねると「ローサックルーナ!(ちょっと待ってて)」と言ってクティらしき方向へ入って行った。

ワット・ポムケーウで藤川さんと再会

2分ほどして出てきた藤川さん。いつもの姿だが顔艶の良く元気そうな第一印象だった。

「“日本人が来た”って言うから誰かと思うたら、何やお前か!」とガッカリしたような素振り。せっかく日本からわざわざ会いに来たのに“何やお前か”は無いだろう(ムエタイ取材のついでだけど)。

来るに至った経緯は手紙で知らせてあったので驚くこともアテが外れるということもないだろうが、タイのお寺で会うのは5年ぶりである。荷物が嵩張る旅だったから御土産は薬類だけだが、それでも喜んで貰えた。

そして、「試合は日本人が勝ったんか?」と言うから「日本人2人目のムエタイチャンピオンが誕生しました!」と言うと、「その話はここの連中の前ではするなよ!」と言う藤川さん。移籍前の寺の時からその事情は聞いていた。

懺悔の儀式も日課、先輩僧に向かう

日本vsタイの試合がある時はなるべく寺に居たくないのだという。辰吉丈一郎がタイ人(シリモンコン戦=1997年)とやった世界戦の時はバンコクへ逃げたと言う(大袈裟な言い方)。

日本人が勝てば、「八百長だろう。幾らか払ったんだろう?」と言い出すタイ人。タイ選手が勝てば「どうだ、タイ人は強いだろう!幼い頃からムエタイやっているからな、日本人なんかに負けないんだよ!」。どこかの国みたいな洗脳教育がされているのかと思うほどだという。

日本の水着タレントのグラビア見て「幾らだ?」と言い出すムエタイ選手だったり、一概には言えないが、彼らは決して威圧的に主張してくるのではなく、学歴低い田舎者の自慢話程度のこと。藤川さんの長話しよりマシだろうし、彼らはテレビで観れる範疇のボクシングがストレス発散の“娯楽”だから聞いてあげていいだろうと思う。

◆泊まりは野宿!?

クティは和尚さんが「部外者をあまり中に入れるなよ!」と言われているらしく、誘ってはくれなかった。

私を泊めてくれたのは外にある物置小屋の縁側。そこもクティの一部で、30歳ぐらいの比丘(仮称=ソムサック)が使っている部屋があり、その扉の前にある縁側に蚊帳と毛布を持って来てくれた藤川さん。

するとソムサックさんが廊下を掃除してくれて蚊帳を吊るのを手伝ってくれた親切な比丘だった(このソムサックさん、後々また会うことになる)。それでも金鳥の蚊取り線香は焚く私の念の入れよう。蚊帳吊るのはラオス以来だな。

翌朝は巣鴨以来の、藤川さんの托鉢に着いて行くことになっていた。

クティの廊下を掃除してくれた若いお坊さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

11月7日発売 月刊『紙の爆弾』2019年12月号!
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

石原將伍、新団体初登場もハイキックでペットルンに倒される!

今年4月、新日本キックボクシング協会から離脱し、令和元年5月1日にジャパンキックボクシング協会を設立した主要ジムは治政館、ビクトリー、市原、JMN、KickBoxなど。

3度目の興行となる本年締め括り興行も、打ち合いに出るアグレッシブな展開を見せる試合が多かった。しかし、8月4日旗揚げ戦での石川直樹(治政館)に続いて石原將伍もTKO負け。今後、重く圧し掛かる試練のメインイベンターである。

高い蹴りは圧し掛かるように重さとしなりがあったペットルン
転ばせておいてヒザ蹴りを入れるペットルン

◎KICK Insist.9 / 11月9日(土)新宿フェース 第2部 18:00~20:50
主催:VICTORY SPIRITS、治政館 / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第8試合 タイ国チョムロム・ムエサヤーム認定中部スーパーフェザー級王座決定戦5回戦

2位.石原將伍(ビクトリー/58.35kg)
    VS
5位.ペットルン・シットパーケット(タイ/58.4kg)
勝者:ペットルン / TKO 2R 0:58 / 主審:ノッパデーソーン・チューワタナ

副審は椎名利一、少白竜、ナルンチョン・ギャットニワット(タイ)が務めた。スーパーバイザーはムエサヤームのアルン氏。

股関節柔らかいペットルンのヒザ蹴り
次々とペットルンの蹴りがヒット、石原はかなり効いてきたか

「石原將伍は、3月2日にタイ国サラブリー県でゴーンスリヤー・ギャットナティーと、中部スーパーフェザー級王座決定戦で敗れ、勝利したゴーンスリヤーは後に怪我により王座返上」という情報。

このタイでの試合で右足首を捻って骨折した石原將伍は、この日が再起戦であり、再び空位となった同王座の決定戦だった。

初回、石原はローキックからパンチの様子見を、ディフェンス良いペットルンが軽くいなし、高めの蹴りが石原に強く圧し掛かる。ローキックでバランス崩させて転ばしから顔面にヒザ蹴りを繰り出すペットルン。

第2ラウンドにも転ばしからの蹴りを当らなくても再三、プレッシャーを石原に与え続け、更に蹴りの圧力を強めたペットルンの右ハイキックが側頭部を捕らえると石原はバッタリ倒れ、ノーカウントでレフェリーに止められてしまった。

側頭部襲ったペットルンの右ハイキック、ガードの上からでも効きそう
ハイキック喰らって意識がとんでしまった石原將伍、セコンド陣に抱えられる

◆第7試合 第2代ジャパンキックボクシング協会バンタム級王座決定戦 5回戦

2位.翼(ビクトリー/53.52kg)vs3位.田中亮平(市原/53.3kg)
勝者:翼 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井50-47. 松田50-47. 仲50-47

初回のローキックでの様子見は少々。すぐ距離が縮まり、蹴りからパンチ主体の主導権争う攻防激しい展開が始まる。

第2ラウンドには接近戦でヒジ打ちでの切り合い攻防となって互いの流血が見られるが、第3ラウンドから翼の蹴りからパンチの勢いが増し、田中がやや失速。

互いの気力維持とスタミナ消耗が最も苦しい第4ラウンドも手数優った翼が主導権を奪ったまま、田中は顔面流血と蹴られた脇腹にアザを残しながら踏ん張るも、最終ラウンドも翼が勢いを緩めず攻勢を保って判定勝利を掴んだ。

勢い衰えぬ翼がハイキックで田中亮平を追う
徹底して攻めた翼の左ハイキック。勢い緩めなかった翼が勝利を掴んだ
念願の王座に就いた翼、これから国レベルのエース格に昇りつめられるか
距離の読み方が上手かった永澤が徹底的にヒジ打ちで攻めた

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

JKAライト級1位.永澤サムエル聖光(ビクトリー/62.0kg)
    VS
NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/61.65kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / TKO 3R 2:29 / 主審:少白竜
ヒジ打ちによる顔面カットの悪化でレフェリーストップ

初回から棚橋の振り回す強打で永澤はやや下がり気味だが、顔面が空き気味の棚橋にヒジ打ちヒットに繋げ眉間をカットする。

それでも棚橋はパンチ主体で出て来るが、永澤が下がりながらもヒジ打ちを狙う応戦。レフェリーのいけるところまで戦わせようと配慮があってか直ぐには止めず、次第に棚橋の傷が深くなった時点でレフェリーがストップした。

強打者・棚橋賢二郎に右ストレートをヒットさせる永澤サムエル聖光
永澤のヒジ打ちで棚橋の顔面は傷だらけ

◆第5試合 ミドル級3回戦

JKAミドル級チャンピオン.今野顕彰(市原/72.4kg)
    VS
NKBミドル級4位.剱田昌弘(テツ/72.45kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-28. 少白竜30-29. 仲30-28

剱田のパンチで我武者羅に攻める前進に押される今野。距離感掴めば顔面が空く剱田に右ストレートや前蹴りを顔面にもヒットさせる技の的確さで攻勢を保つも、攻め返す頑丈さは見せた剱田。今野は勝利を着実に掴む判定勝利。

格の違いを見せた今野顕彰、剱田昌弘に右ストレートヒット
我武者羅に出る剱田に前蹴りヒットさせる今野
今後の抱負を語る翼、このチャンピオンベルトの価値を上げると宣言

◆第4試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級3位.モトヤスック(治政館/66.6kg)vs宮城涼矢(真樹・沖縄/66.6kg)
勝者:モトヤスック / 判定3-0 / 主審:松田利彦
副審:椎名30-28. 少白竜30-28. 桜井30-28

◆第3試合 ライト級3回戦

JKAライト級4位.野崎元気(誠真/61.1kg)
    VS
MuayThaiOpenスーパーフェザー級1位.角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/61.23kg)
勝者:野崎元気 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:桜井30-29. 少白竜30-29. 松田30-28

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

睦雅(ビクトリー/60.0kg)vs眞斗(KIX/59.9kg)
勝者:睦雅 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井30-27. 仲30-26. 松田30-26

◆第1試合 56.0kg契約3回戦 

西原茉生(チームチトク/55.75kg)vs健センチャイジム(センチャイ/55.8kg)
勝者:健センチャイジム / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名28-29. 仲29-30. 松田28-30

◎KICK Insist.9 / 第1部 14:00~16:00

◆第8試合 68.0kg契約3回戦

JKAウェルター級1位.政斗(治政館/67.7kg)
    VS
テーパリット・ビクトリージム(タイ/67.2kg)
勝者:政斗 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-29. 桜井30-29. 仲30-29

テーパリットは下がりながら政斗のパンチと蹴りの前進を凌ぐテクニシャンぶりを見せるが、ロープ際に下がって待ち構えたり、組み合って動きを止めたり、ヒジ打ち以外に自から政斗を仕留める技は出ない。

わずかでもパンチと蹴りをヒットさせる距離を掴めば連打で追い詰め倒しにいく姿勢を見せる政斗、結果的には僅差ながら判定勝利を飾る。

転ばせたテーパリットを踏みつける動作の政斗、フェイントのみ
出て来ないテーパリットにヒザ蹴りを蹴り込む政斗
第1部メインイベンターを務め上げた政斗、次はウェルター級王座か

◆第7試合 62.5kg契約3回戦

WPMF日本ライト級チャンピオン.長谷川健(RIKIX/62.5kg)
    VS
JKAライト級2位.林瑞紀(治政館/62.4kg)
勝者:長谷川健 / TKO 2R 2:12 / ヒジ打ちによる顔面カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:松田利彦

初回に林のパンチと蹴りのスピードが、出遅れる長谷川を上回り、左ストレートでノックダウンを奪う。

第2ラウンドに勢い増す林のパンチに合わせ、長谷川のカウンターのヒジ打ちが続けて入ると、林を流血に追い込み逆転TKO勝利を掴んだ。

攻勢続く林瑞紀の左ストレートが長谷川健にヒット、ノックダウンを奪う
ヒジで2ヶ所切った長谷川健、逆転TKOに成功

◆第6試合 62.5kg契約3回戦

JKAライト級4位.興之介(治政館/62.5kg)
    VS
ダーウサヤーム・ノーナクシン(元・ラジャダムナン系スーパーフライ級9位/タイ/60.2kg)
勝者:ダーウサヤーム / TKO 2R 1:33 / ヒザ蹴り、ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆第5試合 スーパーバンタム級3回戦

JKAバンタム級1位.幸太(ビクトリー/54.7kg)
    VS
高橋茂章(KIX/55.25kg)
勝者:幸太 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-28. 少白竜29-28. 松田30-28

◆第4試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級3位.渡辺航己(JMN/57.0kg)vs又吉淳哉(市原/57.0kg)
勝者:渡辺航巳 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-27. 仲30-27. 松田30-27

◆第3試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級4位.櫓木淳平(ビクトリー/56.75kg)vs都築憲一郎(エムトーン/57.0kg)
勝者:櫓木淳平 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 仲30-28. 桜井30-29

◆第2試合 ウェルター級3回戦

下津隆介(つくば/65.35kg)vs大島優作(RIKIX/66.6kg)
勝者:大島優作 / TKO 1R 1:59 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦

◆第1試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制) 開始14:00

山本ユノカ(KICK BOX/48.6kg)vs鍵山奈穂(岩崎/48.7kg)
勝者:山本ユノカ / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜30-28. 松田30-27. 桜井30-27

《取材戦記》

左は立会人のアルン氏、王座認定を受けたペットルン、右は主審のノッパデーソン氏

第2部メインイベントのタイ国タイトル“チョムロム”はグループ、クラブ、集会といったか意味で、“ムエサヤーム”は名のとおり、タイで人気のムエタイ雑誌に関連している様子です。各地方の有識者(ムエタイ記者など)で構成される組織で中部地区、北部、東北部、東部、西部、南部が在り、それぞれに王座が制定・認定されています。

インタビューを受けるペットルン、目標は“また東京で試合したい”

ペットルンに今後の目標をインタビューしたリングアナウンサーの細田昌志さん。通訳のノーナクシン会長を介して、「また東京で試合をしたいです。また呼んでください。」と返って来たコメント。“目標”という日本語での意味はノーナクシン会長を介して、伝わり難くかったかもしれませんが、咄嗟にはこう応えるしかなかったかもしれません。

外国から声が掛かることも増えたムエタイ選手。それはカマセで呼ばれる三流以下枠ではなく、「また日本で指名されるようにチャンピオンを維持していけるよう頑張ります。」流れからすればこんな意味かと思います。

第1部メインイベントで政斗と対戦したテーパリット。昭和の時代の沢村忠と対戦したテーパリットも頭髪が薄かったが、本気を出した時は一流だった。あの似たような風貌にはかつてのテーパリットを思い出す人も居たかもしれません。

2020年新春興行は1月5日(日)後楽園ホールに於いて行われます。本来の治政館ジム中心の主催となるもので、新団体の2年目もメインイベンターに難敵をぶつける興行は増えていくでしょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

五輪と衰退経済 2020年を目前に現実味を帯びてきた東京五輪返上・中止の可能性

IOCの決定により、来年予定されている東京五輪のマラソン・競歩が札幌に競技場を移されることが決定し、競技の日程もマラソン男女が同日の実施と変更になるなど、大混乱をきたしている。


◎[参考動画]【報ステ】札幌で決定 小池知事「合意なき決定」(ANNnewsCH 2019/11/01)

◆オリンピックは本当に「神聖なもの」ですか?

本通信で何度も強調してきたように、わたしは東京五輪開催に再度強く反対の意思を表明する。IOC(国際オリンピック委員会)は決して身ぎれいで、崇高な意思を持った団体ではない。今日オリンピックは完全に「商業イベント化」されていて、その大元締めがIOCだと考えていただいて間違いない。

開催国の決定から、スポンサーによる巨額収入の使途まで、IOCには明かされない部分があることは、多くのひとびとが指摘してきたとおりであり、しかしながらその「暗部」が表面化しないのは、「オリンピックは神聖なもの」である、との幻想と、世界の主要メディアをスポンサーとしてIOCが抑えている構造。主要メディアもニュースソースとして、IOCやオリンピックの情報はぜひ欲しい、という情報提供主と情報産業の「持ちつもたれる」の関係性が災いしている。


◎[参考動画]猪瀬直樹東京都知事のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

◆札幌に一部競技を移したら、もうそれは「東京五輪」とは呼べはしない

だいたい、2020年の夏季五輪は開催地として、東京が選ばれたはずであるのに、かつて冬季五輪を開催した札幌に一部競技をうつしたら、もうそれは「東京五輪」とは呼べはしない。海外の人にしてみれば、「同じ日本の中だから、トウキョウもキョウトもフジヤマもサッポロもどうせ小さな島の中にあるんだろう」と思われているのかもしれないが、当事者のわれわれは東京と札幌が距離的、文化的、意識的にどれほど距離のあるかは実感できている。

しかも、IOCはマラソン・競歩の札幌実施について、事前に東京都へはなんの相談・連絡もしていなかった。知事小池百合子が「暑いところが問題であれば北方領土でやれば」などと頓珍漢で軽薄なコメントを口にするようだからか、あるいは東京ともIOCも同様に「腹黒い魂胆」の隠し合いをしているためか知らないが、開催地としてはこれほど馬鹿にされた対応はない、と感じるのは無理もないであろう。


◎[参考動画]滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

◆度重なる災害で増加する通常の生活を送ることができない人たち

しかし、そもそも直近の千葉県を中心に膨大な被害をだした台風や大雨による惨状が示す通り、記憶されている範囲だけでも、広島、佐賀などでの水害被害、大阪、熊本、北海道、そして東日本大震災での地震津波被害など、自然災害と人災により、通常の生活を送ることができないひとびとが残念ではあるが年々増加するばかりだ。

それら災害の一つ一つが、数年間の間をおいて発生すれば、全国の注目を浴び、復旧へのまなざしももっと強く注がれ、政府の対策への注文もより強いものになろうが、このように甚大な自然災害が毎年のように発生していると、日々の情報消費速度が一貫して加速する社会にあっては、各被災地や被災者への記憶は、当事者ではないひとびとの日常からは薄れてゆかざるをえない。

大阪で震度7を初めて経験した茨木市や吹田市の古い住宅の屋根には、その数はだいぶ減ったものの、いまだにブルーシートの姿が見える。同じ関西に居住しているが、関西圏でも大阪での大地震(揺れの時間が短かったので東日本大震災のように甚大な被害ではなかったが、死者も出すほどの大きな揺れだった)に対する記憶は、ほとんど語られることがない。


◎[参考動画]東京2020/国際オリンピック委員会の記者会見(Olympic 2013/09/08)

◆日本はもはや経済大国ではない

そして、あまり口にする人はいないが、かつては「経済大国」であったこの島国、日本がもう世界的に経済大国としての地位を、失いかけていることに、日本居住者は鈍感であるがゆえに、バブル経済破綻まで崩れなかった「土地(地価)神話」のように、去りゆく「日本経済大国」幻想から、覚醒することができていないのだろう。

わたしが、指摘するまでもなく日本は20年以上デフレが続いていて、OECDのなかでこの20年間成長率は最下位だ。20年間最下位がつづくと、どういう現象が起きるか。たとえば為替レートが20年前と同じOECD加盟国に出かけたら、日本はデフレで物価が上がっていない(給与所得も上がっていない)が、その他のOECD加盟国は年率で2-4%の成長を続けてるので、20年前に日本より安価だと感じていた外食の価格が逆転し、さほど贅沢でもなさそうな外食に1000円~2000円払わなければならないという現象が起きている(豪州などでこの「逆転現象」は顕著である)。

豪州では30年ほど前に、シドニーを除くメルボルンやブリスベンなど都市近郊の約200坪プール付きの住宅が1500万円ほどで購入できたが、都市周辺部の地価はここ20年で約4倍(6倍の地域もある)に上昇しているという。かつては日本で建売住宅を買うよりも安く買えた、広々としたプール付きの住宅が、いまでは日本の給与所得者には手の届かない値段になっている。

全国各地に100円ショップが展開し、非正規雇用が4割を超える。この現象の進行を日本にいて日々生活をしていると「こんなものか」としか感じられないかもしれないが、確実に日本の経済力は低下していて、国家財政は破綻が目の前だ(山本太郎氏率いる新政党は「MMT理論」で国債発行は問題ない、としているが、私は「MMT理論」には懐疑的である。国債発行で国家財政が賄えるのであれば、苦労して行政は税金を集める必要がなくなるのではないか)。

あなたのお給料や年金は、ちゃんと毎年上がっていますか? 下がってはいませんか? 高度成長期を経験した、あるいはバブル期を経験した世代の方であれば、その後の急激な不景気がご記憶にあるだろう。今後日本は長期間にわたり、あのような不況がつづく。大企業に利益が集中し内部留保ばかりが増え、中小企業や低所得層が消費税で締め上げられる構造が維持される限り、間違いない。

ようするに、もうに日本は過去の日本のように「金持ち」ではないのだ。そして1964年に東京五輪を開催した時代のように、この先高度成長はやってくることはない。2020年東京五輪を開催すれば、巨額の請求書をのちに押し付けられ、それを支払うのは東京都民であり、日本国に納税する私たちであると、再認識しよう。五輪後の「不正経理」問題は長野五輪で経験済みだ。

「企業の祭典」、「灼熱地獄の忍耐競争」、「ボランティアという名のタダ働き」、「綺麗ごとを並べる権力者の利権争い」……。薬物禁止のポスターではないが、「百害あって一利なしの東京五輪はやめましょう」


◎[参考動画]2020年夏季五輪開催都市 東京に決定(ANNnewsCH 2013/09/08)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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江幡睦、4度目の挑戦もベルト奪えず! タイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級タイトルマッチ

攻撃力は上回るも、引分けというあと一歩が越えられないムエタイの壁。日本人のローキックで殿堂チャンピオンが倒れるなんて在り得なかった過去。でも江幡睦ならやるかもしれない。淡い期待もありながら、ムエタイ関係者は「その可能性は極めて低く、中盤以降にヒジで切られる可能性が高い」と言い切った。それほどサオトーの上り調子は素晴らしく、試合運びの上手さの前評判だった。

試合を終え、江幡睦の顔面はヒジ打ちを貰った3箇所の傷と腫れ、サオトーは足を引き摺りながら歩くダメージを残した。

判定結果を聞く江幡睦の表情、何を想うか
江幡睦のローキックが序盤からヒットさせサオトーにダメージを与えた
江幡睦の左ボディーブロー、これで何人も倒してきた

◎MAGNUM.51 / 2019年10月20日(日)後楽園ホール 17:00~20:15
主催:伊原プロモーション / 認定:ラジャダムナンスタジアム、WKBA

◆第9試合 タイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.サオトー・シットシェフブンタム(タイ/53.45kg)
    VS
同級7位.江幡睦(伊原/53.35kg)

要所要所でサオトーは江幡の弱点を狙っていた左ハイキックをヒット

引分け 0-0 / スーパーバイザー:ジット・チオサクン(ラジャダムナンスタジアム支配人)
主審:ジラシン・シララッタナサクン 48-48
副審:ウォーラサック・パックディーカム 48-48 
副審:ナリン・ポンヒラン 48-48

序盤は想定どおりサオトーはムエタイ特有の手数少ない様子見ではあるが、江幡睦の強いローキックをやや貰うと効いた様子が伺え、更に睦みの左ボディーブローも貰ってしまう。場内に“もしかしたら・・・!”という期待が沸く。

しかしさすがの殿堂チャンピオン。そんな脆く崩れることはなかった。しぶとさを見せていくサオトーは想定どおり第3ラウンドから本調子を上げて来た。ヒジ打ちは、けん制を含めて第1ラウンドから出していたが、パンチとローキック主体にガンガン前に出て連打していく江幡睦に対し、応戦しながら要所要所で鋭いヒジを打ち込んでいくサオトーは、江幡睦の右目尻を切り、単発ながらヒザ蹴りも効果的にヒットさせた。

しかし江幡睦は組み合ってもサオトーの有利な体勢にさせない対策も活かしていた。更なるサオトーのヒジ打ちで、目下も切られた江幡睦は、紫色の内出血を残して第5ラウンドも必死に出て行き、江幡睦の右ストレートで仰け反ってしまうサオトーだが、ヒジとヒザを随所に当てていたポイントがどう流れるか分からない展開が続いた試合となった。

判定を聞く睦の表情は曇りがち。引分けでまたも逃がしてしまったムエタイ激戦区の最高峰のチャンピオンベルトだが、全力を尽くした結果にインタビューに応える表情は清々しかった。

打たれたら打ち返すサオトーのパンチもヒット
江幡睦の左ミドルキック、この蹴りをもっとヒットさせたかった
サオトーの得意のヒジ打ちはどこからくるか分かり難い

江幡睦は「倒しきれなかった、それに尽きると思います。ひとつのダウンでも取れなければ、ラジャのベルトは取れないということです」と率直な感想。

前回、2015年3月の当時のチャンピオン、フォンペットに挑戦した時は、ラウンドを増す毎のインターバルでだんだん返事をしなくなるほど疲労困憊していたが、今回は最後まで冷静にセコンドや伊原会長の言うことに返事し、次どう行くか確認する様子が伺えた。

試合中は激しく檄を飛ばす伊原会長だったが、試合後のインタビューが終わった後、頭を“ポン”と撫でるように触れ「お前はよく頑張ったよ!」と褒め称えていた。

相打ち覚悟のパンチの応酬
最終ラウンドも必死に攻める江幡睦

サオトー陣営のアンモープロモーターに、「もう一回やりたいと言ったら対戦可能ですか?」と問うと、すかさず「ダーイ(OK)!、またここ(後楽園)でやってもいい!」とデッカイ声で喋る。「次はヒジ打ちの勝負になる!」とも語った。

足を引き摺りながら歩くサオトーにも同じ質問をしてみた。こちらもすかさず笑顔で「チョックダーイ(OK)!」と元気を見せ、ここはハッタリでも “同じ失敗は繰り返さない”という意欲をみせるのがムエタイ戦士なのだろう。

実際、対策は練ってくるだろうし、ローキックはまともには貰わないかもしれない。それは江幡睦にも対策はあることだろう。再戦が行なわれるかは分からないが、このカードはラジャダムナンスタジアムで再戦して欲しいものだ。

とにかくノックダウンを奪いたかった江幡睦、バックステップして打たれても倒れないサオトー
健闘称え合い役者が揃う、右はジット・チオサクン氏(スタジアム支配人)

◆第8試合 WKBA世界スーパーライト級王座決定戦 5回戦

アニーバルをロープに追い詰めパンチ連打する勝次

2位.勝次(藤本/63.0kg)
    VS
4位.アニーバル・シアンシアルーソ(アルゼンチン/63.1kg)
勝者:勝次 / KO 2R 2:59 / 3ノックダウン / 主審:椎名利一

序盤はパンチと蹴りのけん制から始まり、アニーバルのパンチ、蹴りの強さとタイミングを見極めた勝次がパンチでアニーバルを後退させると一気に連打した勝次。その勢いで第2ラウンドに進み、パンチ連打でロープ際に追い込みヒザ蹴りを加えスタンディングダウンを奪い、更なるパンチの攻勢でロープ際から逃げられない状態を作ると2度目のスタンディングダウン。

勝次は更に攻勢を続け、防戦一方となったアニーバルは最後まで倒れ込むことは無かったが、レフェリーに止められ(3ダウン相当)、勝次のKO勝利となった。

勝次がパンチから今日も出た飛びヒザ蹴り
しぶといアニーバルを徹底して攻めた勝次
キックボクシング世界で最初のWKBAタイトルを獲得した勝次、試練はこれから

◆第7試合 73.0kg契約 5回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/72.8kg)vsイ・ジェウォン(韓国/69.5kg)
勝者:斗吾 / KO 2R 2:49 / テンカウント / 主審:桜井一秀

序盤は距離をとって蹴りで様子見。斗吾の圧力が徐々にジェウォンを下がり気味に追い込む第2ラウンドに入ると、距離が縮まりパンチの交錯が始まる。バランス崩して横を向いてしまうジェウォンは気を抜き過ぎで、斗吾の右フックを貰ってノックダウンしてしまう。そこから斗吾のパンチのラッシュが始まり、ロープ際で滅多打ちからヒザ蹴り、更に追い詰めてボディーブローの連打でジェウォンは2度目のノックダウンし、そのままテンカウントアウトされた。

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/61.95kg)
    VS
ペットワット・ヤバチョーベース(タイ/61.45kg)
勝者;髙橋亨汰 / TKO 2R終了 / 主審:少白竜

髙橋の左ミドルキックを腕に受け続けたペットワットが負傷を示し、第2ラウンド終了後のインターバル中、棄権を申し出た陣営をレフェリーが受入れ試合を終了させた。

腫れた太腿を氷で冷やすサオトー、足は相当効いていた

◆第5試合 バンタム級3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/53.5kg)vs.Mrハガ(ONE’S GOAL/53.5kg)
勝者:泰史 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-28. 少白竜30-27. 桜井30-27

泰史の蹴りとパンチで攻勢を続ける展開。下がりながらも応戦して危機を乗り越えるMr.ハガ。泰史はノックアウトに結び付けられない課題を残す。

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

日本ライト級3位.渡邉涼介(伊原新潟/62.9kg)vs風来坊(フリー/62.85kg)
勝者:風来坊 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-30. 少白竜29-30. 仲29-30 

◆第3試合 57.5kg契約3回戦

瀬川琉(伊原稲城/57.45kg)vs新田宗一郎(クロスポイント吉祥寺/57.25kg)
引分け 0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-29. 宮沢29-29. 仲29-29

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

井桶大介(クロスポイント吉祥寺/59.65kg)vs宇野高広(パラエストラ栃木/59.95kg)
勝者:井桶大介 / TKO 1R 0:44 / ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:少白竜

◆第1試合 女子48.0kg契約3回戦(2分制)

栞夏(トーエル/47.55kg)vs erika(SHINE沖縄/47.25kg)
勝者:erika / KO 2R 1:53 / 3ノックダウン / 主審:椎名利一

ファンに詫びる江幡睦

《取材戦記》

最高峰の王座や名誉が懸かるとムエタイ選手は強いものだ。譲れないものだけに互いが必死の戦いになった。これがランカー以下のノンタイトル戦だったら江幡のローキックで、過去のタイ選手のようにヘナヘナと倒れ込んでいただろう。

そのサオトーの前評判は「ちょっと映像で見ただけだが、サオトーはあまり強さを感じない攻めで、日本人とやれば面白い展開になりそう。江幡が勝つかもしれない!」という知人も居たが、先に応えた関係者談が「江幡睦のローキックはかわされ、サオトーのヒジで切られる!」と言った予想もあり、私の予想も「もしかしたらサオトーは江幡のローキックでヘナヘナと倒れ込むのではないか!」と思ったが、試合展開から言うと、大雑把ながら皆、何らかの指摘が“近いところにいった”という経過となった。

最高峰への通過点ながら、ひとつの目標だった老舗のWKBA世界タイトルを獲った勝次はまず防衛しなければならない。前回のライト級でドローの末、延長戦で王座を持っていかれたノラシン・シットムアンシー(タイ)や国内にも敗れている難敵は居るが、WKBAを懸けて戦えばその因縁が面白くなる(ライト級は7月に王座決定戦で重森陽太が獲得)。本人は以前、「3回ぐらい防衛してその上に行きたい」と言っていたが、5回ぐらい極力短期で連続防衛してWKBAの活性化と権威向上に貢献して貰いたい。

新日本キックボクシング協会次回興行は、12月8日(日)後楽園ホールに於いて藤本ジム主催興行「SOUL IN THE RING CLIMAX」が開催されます。今年4月14日にWKBA世界スーパーウェルター級王座獲得した緑川創(藤本)の初防衛戦と、勝次と江幡ツインズ兄・塁も出場予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

ラグビーワールドカップで南アフリカの国歌に驚かされた

10月20日夜、急な取材のため、でかけたものの帰宅できなくなり、安宿で一夜を過ごすことになった。この日はラグビーワールドカップの準々決勝、南アフリカ―日本戦が19時過ぎから行われ、のちの視聴率調査では40%を超える数字を得たという。

自宅にはテレビがないが安宿の食堂では、宿泊客がNHKの中継に見入っていてた。ラグビーは国境を意識させないスポーツとして、だいぶ以前に本通信で好意的に紹介した記憶がある。その一方、日本開催となった本大会に限れば、来年予定されている「企業の祭典」東京五輪の予行演習の側面と、例によって、にわかファンの騒ぎぶりに、ひねくれものは反応してしまい、ろくろく試合も見ていなかった。

◆「Nkosi Sikelel’ iAfrika」(神よ、アフリカに祝福を)

20日、日帰りを予定していた出張が、予想外に長引いたことでわたしも南アフリカ―日本の試合を観戦することができた。そして試合前にわたしは自分の不勉強と、虚を突かれることになった。ラグビーのワールドカップは他の競技と異なり、純粋な国対抗ではない。英国だけでもスコットランド、ウェールズ、イングランドが今大会に出場している(アイルランドも国だけではなく英国領アイルランドとの合同を意識したチームだ)。だから試合前の「国家斉唱」では通常の英国国歌とされるものではない歌詞やメロディーを使わざるを得ない。

そこまではわかっていたが、自分の無知を恥じたのは、南アフリカ国歌が流れたときだ。「え! あの歌が国歌になっていたんか!」と声を出してしまった。あれは何年だっただろうか。リチャード・アッテンボロー監督の映画『Cry Freedom』(邦題「遠い夜明け」)で聞いた曲だ。


◎[参考動画]Nkosi Sikelel’ iAfrika – Cry Freedom [1987]

当時国際社会から非難されながらも南アフリカでは、明確な差別、人種隔離政策“Apartheid”(アパルトヘイト)がまだ蛮行を続けていた。『Cry Freedom』のエンドロールでは、「1962年の国会において、南ア政府は法律なしでの勾留を認めるようになった。これから紹介するのは、それ以降投獄され死亡したひとびとの、名前と死因の公式発表である」の説明のあとに延々と名前が続いたことが忘れられなかった。

『Cry Freedom』の主人公は、南アの有力新聞デイリー・ディスパッチ紙の白人記者ドナルド・ウッズだ。けれども実際の主人公は1968年に「南アフリカ学生機構」を立ち上げ、のちにドナルド・ウッズと親交を結ぶことになる、スティーブ・ビコだ。スティーブ・ビコは1968年に「南アフリカ学生機構」を設立し、南アにおける黒人解放運動の指導者として、もっとも有名な人物のひとりである。つまり『Cry Freedom』は実話をもとにした映画作品であった。ビコは映画の途中で早々に、虐殺されてしまい、フィルムのかなりの時間はドナルド・ウッズの南アからの、脱出物語にさかれている。このあたりに、若かったわたしには「ちょっと、主役が違うんじゃないか」と感じた記憶もある。

メロディーが記憶にあったのは、調べてみるとコザ語、ズール語による「Nkosi Sikelel’ iAfrika」(神よ、アフリカに祝福を)という曲だったようだ。作詞作曲されたのは19世紀。以来アフリカの多くの国で、独立象徴の歌として歌い継がれたようだ(19世紀アフリカの解放歌が、キリスト教に依拠していた事実をどう考えるか、の課題は横に置く)。

南アの国歌は、わたしが一回聞いただけだが記憶にある「Nkosi Sikelel’ iAfrika」だけではなく、途中で著しく変調した。後半はアフリカーンス語の「Die Stem van Suid-Afrika」(南アフリカの呼び声)を編曲したものだ。1997年にネルソン・マンデラが大統領に就任して出来上がった、2つの歌が合体しているので、変調が際立ってきこえたのかもしれない。

◆寒い国で初めて出会った南ア人

『Cry Freedom』を鑑賞したのより、さらに10年ほど前、わたしは最低気温がマイナス30度を下回る国を放浪していた。その時も安宿に宿泊していた。二段ベッドが3つ並ぶドミトリーといわれる、最安値の宿だ。その国の住民と同じく白人の宿泊者が会話をはじめた。

「あんたこの国の人間かい?」

「いや、俺は南ア人だよ」

「フー、大変なところにすんでるな。黒人(blackとその白人は発語した)が面倒だろう」

「ああ、俺は徴兵を終えたばかりなんだ。軍隊はよかったよ。黒人に気をつかうことがなかったから」

「この国でも黒人はいつも問題をおこしてばかりさ」

なんというあけすけな人種差別をする連中か、とかと呆れていたら。こちらに声が向いてきた。

「あんたはどこからきたんだ?」

「南アだよ」

下手くそな英語で嫌味を返したつもりだった。

「そんな英語が下手な南ア人はいないさ」

すぐにみやぶられ、日本からやってきていることを告げて、

「南アの白人にとっては、有色人種は黒人と同じなんだろう?」

実際そうであると聞いていたので、素朴な質問をなげかけた。

「いや…。ウーン。日本人は特別扱いされると思うよ」

こちらの機嫌を気にしたのか、南ア白人は曖昧にこたえ

「あした、3人でクロスカントリースキーをやらないかい? 俺はやったことがないんだ。日本は雪が降るんだろう?」

と、妙ななりゆきで誘いをうけた。予定も立てていなかったので、3人でクロスカントリースキーを借りて、山道を歩き(滑るというほど初心者に簡単なものではなかった)まわった。

わたしの知る南ア人は、彼だけだ。山道を苦労しながらドタバタするなかでも、彼は饒舌だった。

「おれは規律がすきなんだ。だから軍隊が心地よかった。ワン、トゥー、ワン、トゥー!」

わたしは規律が嫌いで、軍隊に入ることなど想像もできない。

「雪山はきれいだな! 白はいい! 人間も白に決まってる!」

うそのような話だが、黄色人種のわたしの横で、休憩のために腰を下ろして,たばこを吹かしながら大きな声で、もう一人の白人に同意をもとめる。彼は“Apartheid“が廃止され、ネルソン・マンデラが大統領になる日が来るなど、考えもしなかったことだろう。

わたしは、たったひとりの南ア人とは1泊2日をともにしただけだから、そこから決めつけるのは乱暴すぎるかもしれないが、その後、日本で聞くニュースやなどからも、南アフリカについては複雑な感情しか持てなかった。

それだけに、その後ろくろく南アフリカの情報に関心を向けなかった自分の不勉強を、ラグビーの試合によって偶然知るしる機会を得たのは果報だった。まさかあのメロディーが「国歌」になるなんて。信じられなかった。両チームの選手には申し訳ないが、そのことの驚きは、かなり長時間持続した。わたしは「君が代」が大嫌いだ。陰鬱なメロディーで、「解放」などとは無関係な歌詞。対照的に、キリスト教を下地にしているとはいえ、アフリカ全土で歌われた、黒人解放歌が国歌だなんて、素晴らしいじゃないか。


◎[参考動画]Nelson Mandela – Nkosi Sikelel’ iAfrika (God Bless Africa)

南アには貧困、エイズ、引き続き人種による軋轢など、さまざまな問題があることは知っている。犯罪発生率も際立って高いことも。解放歌が国歌になっているぐらいで、感激しているのは、おめでたい奴だとじぶんでも思う。でも正直、久しぶりに感激した。きっと、それほどにわたしは、常日頃、冷めきっているのだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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「企業欲の祭典」東京五輪に対する最善の処方箋は開催の「中止・返上」である

「国際オリンピック委員会(IOC)は10月16日、東京五輪の猛暑対策として陸上のマラソンと競歩を札幌開催に変更する案の検討に入ったと発表した。東京より気温が約5度低く、地理的な条件などを理由としている。五輪開幕まで1年を切り、IOCが会場変更を提案するのは異例の事態で、実現には難航も予想される。猛暑を見据えて準備を進めてきた現場サイドでは驚きと戸惑いの声が上がった。」(10月17日付スポーツ報知)

◆いよいよ混乱が本格化しはじめた

ほーらみろ。いよいよ「企業欲の祭典」、東京五輪の混乱が本格化しはじめた。前回1964年に東京で五輪が開催されたのは、10月。台風の懸念はあるが、年間通じて普通のひとにも過ごしやすい時期だ。あれから半世紀以上がたち、いまの東京8月は、もう「温帯」の気温ではなく「熱帯化」している。わたしが説明するまでもないだろう。関東にお住まいの方であれば「8月の東京」の灼熱ぶりが、五輪に適すか適さないかくらい、簡単にお分かりいただけよう。

そういう自然条件を承知のうえで、五輪招致委員会は「8月の東京」にこだわったのであり、IOCもそれを了承した。どうして8月でなければならないのか? それは北半球の多くの国で、8月が夏休みに充てられ、高い放送料が設定できるからだ、これが10月にずれ込むと放送料は数割安くなってしまう。つまりIOCも招致委員会も、最初から「商売第一」で「8月の東京」をごり押ししたのだ。

ところがである。先に行われたドーハで行われた世界陸上では、あまりの高温多湿にマラソンや長距離競技、競歩で棄権する選手が続出した。当然選手から批判の声が相次いで上がり「二度とこんなコンディションでは、走らせたくない」とコメントするコーチも現れた。

しかもそう発言したのは日本人選手のコーチだった。夜間でも40度を上回り湿度も90%を超える気候で、長距離競技が行われることを前提に、ルールはできていない。日本でも歴史あるマラソンは(福岡国際、別大、琵琶湖、女子マラソン)はすべて冬季に集中しているし、駅伝競技も同様だ。

◆ビジネス最優先のIOCと関連団体の「勘定論」

マラソンは15度くらいに温度が上がると「暑い」と表現され、20度を超えると「厳しい」、25度を超えると「過酷な」コンディションと表現される(気温は概ねの値である)。30度や40度近い気温の中で行われる競技ではないのだ。マラソンだけではない。トラック競技の1000mや20キロ、50キロ競歩なども同様だ。

さて、例年東京の8月の気温はどうであろうか。「熱帯夜」と呼ばれる最低気温が25度を下回らない夜は当たり前。25度どころか30度を下回らない夜も珍しくはない。そんな気温の中で「根性論」ならぬ「勘定論」の上に計画されたのが、東京五輪である。

けれども「勘定論」であるから、競技中に選手がバタバタ倒れたり、救急車がやってくる様子が画面に映ったのでは、非常に具合が悪い。スポンサーのイメージはむしろ下がってしまうから、高いスポンサー料を払っている企業からすれば(その中には朝日、毎日、読売、日経、産経など全国紙も含まれる)「惨憺たる灼熱地獄」を放送したくはない。

そこで、急遽「選手の健康第一」など殊勝な理由をでっちあげて、札幌でのマラソン実施を発案したのだ。IOCをはじめとする「スポーツに詳しいはず」の団体が、競技コンディションなどは二の次で、金勘定だけでうごいていることを証明することになった、象徴的な出来事といえよう。

しかしすでに述べた通り、灼熱地獄で行われるのは、マラソンだけではない。トラック内で行われる1000mは競技時間はマラソンよりは短いが、すり鉢状の競技場を観客が埋めれば、自然気温以上に空気が滞留し、高温化する可能性が高い。そして、あえて指摘しておけば、関東のかたがたがつい最近経験したような、大雨による水害や、地震はいつ発生するか予想ができない。関東を台風19号が直撃した日、千葉沖を震源とする最大震度の地震も同時に発生していたことを、関東以外にお住まいのかたはご記憶だろうか。

◆被災した人々の生活回復を第一に考えれば

自然災害は防ぎようがない。だから「東京五輪」を自然災害だけを理由に批判するのは的外れかもしれない。しかしながら、地震、大雨、火山噴火などここ数年の自然災害により、通常の生活を送ることができなくなっているかたがたがまた増えた。台風19号による被害者がもっとも多かったのは、福島県であった。

福島県……。人間も、自然もどこまで福島に不幸を強いるのであろうか。

被災した人々の生活回復を第一に考えれば、マラソンを札幌に持っていく程度のちゃちな子供だましで、被災者は救われないことくらい理解されるだろう。

東京五輪に対する、唯一最善の処方箋は、「中止・返上」することである。


◎[参考動画]Learn about Olympic Agenda 2020 The New Norm(IOC Media 2018年10月10日公開)

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壱センチャイが次なるビッグイベントへの前哨戦を圧勝!

壱の左ハイキックが誓を攻める

11月1日に「KNOCK OUT」に於いて、HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本)と対戦が予定されている壱(=いっせい/センチャイ)が、誓(=飯村誓/ZERO)をヒジ打ちで圧勝。

鳩(=あつむ/TSK JAPAN)がボディーブローで、ムエタイオープン・スーパーバンタム級王座獲得。

8月11日にタイ・チョンブリー県でWPMF女子世界ピン級王座獲得した田中“暴君”藍(PCK亘理)も、より成長した強さを発揮し、ヒジ打ちでTKO勝利。

8月31日、タイ・バンコクに於いてルンピニースタジアム最高責任者、デットウドム・ニチャラット将軍より、日本支部となる「ルンピニー・ボクシング・スタジアム・オブ・ジャパン」の認定が2年延長されました。

2015年8月7日、ムエタイの殿堂、ルンピニースタジアムが認定する史上初の海外支部となる「Lumpinee Boxing Stadium of Japan」発足以来、ムエタイオープン興行を中心に、ルンピニー日本王座とランキングを管理し、ムエタイ文化の国際普及に貢献してきたルンピニージャパン代表、センチャイ・トングライセーン氏は、この4年間に及ぶ功績を認められた様子です。

壱と誓のまだ静かな立ち上がりの蹴りあい
劣勢を撥ね返そうとパンチで出る誓

◎MuayThaiOpen.46 / 2019年9月29日(日)新宿フェース16:00~19:27
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニー・ボクシング・スタジアム・オブ・ジャパン(LBSJ)  
 
◆第12試合 バンタム級ノンタイトル3回戦

LBSJバンタム級チャンピオン.壱センチャイジム(=与那覇壱世/センチャイ/53.3kg)
    vs
NJKFフライ級1位.誓(ZERO/53.25kg)
勝者:壱センチャイジム(赤コーナー) / TKO 3R 2:18 / 主審:山根正美

左瞼を腫らし、左目尻を切られた誓は苦しい展開

初回、誓の蹴りのけん制から壱の蹴り返す圧力が増し、第2ラウンドも攻防は壱が圧力を掛け、誓はロープ際に圧される展開が続く。接近戦から組み合うとヒジ打ちやパンチの交錯が続くと、誓は圧されながらもヒジ打ちをヒットさせ、壱の右目尻を小さくカット、攻勢を保ちながら切られた壱もやりかえそうと手数を増して出て行く。

第3ラウンドには蹴り合いから縺れ合って首相撲になると、壱がヒジ打ちを放った様子で誓の左目尻をカットする。すでに第2ラウンドにヒジ打ちで左目辺りにダメージがあった様子で、左瞼がやや腫れ、見え難いのか顔をしかめてしまう誓。更に蹴りから組み合うと、壱は誓の頭を下げてヒザ蹴りを蹴り込み攻勢を維持。蹴り合いから縺れ合って倒れるとヒジが当たったか誓の負傷箇所が悪化し、ドクターの勧告を受入れたレフェリーが試合を止めた。誓は格上との対戦の試練が続く4連敗となった。

相打ち気味の誓の右パンチが壱にヒット
至近距離の打ち合いは互角
離れての蹴りは壱が優勢
あっけなくも狙ったボディーブローでTKO勝利した鳩

◆第11試合 MuayThaiOpenスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

鳩(TSKJapan/53.0kg)
    vs
デンナダーオ・モー・ピンガローイジュンボーイ(タイ/52.65kg)
勝者:鳩(赤コーナー) / TKO 1R 1:44 / 主審:河原聡一

両者のローキックのけん制の様子見が続き、鳩が軽い右ローキックから強い左ボディーブローをヒットさせるとデンナダーオは蹲るように倒れ込んでしまうとレフェリーがカウント中に試合をストップし、鳩のTKO勝利となった。

左ボディーブローに移る鳩、これで仕留めるとは……
ラウンドガールとセンチャイ氏に囲まれる鳩
44歳の松崎公則のミドルキックが冴える

◆第10試合 スーパーフライ級3回戦

バンサパーン・センチャイジム(タイ/51.9kg)vs 松崎公則(Struggle/51.95kg)
引分け三者三様 / 主審:神谷友和
副審:河原29-28. 桜井30-30. 山根29-30

激しさは無いが、ローキックやミドルキックの攻防が休むことなく続く両者。そして松崎のしぶとく落ち着いた表情は激戦の兵と感じさせる。

最終ラウンドは松崎が攻勢を掛けてパンチと蹴りで前に出るが、バンサパーンは上手く捌きながらポイントに繋ぐようにハイキックを繰り出し劣勢を凌いだ。

三者三様の引分けがコールされて残念そうな両者

◆第9試合 スーパーフライ級3回戦

白幡裕星(橋本/51.9kg)vs 佐藤仁志(新宿スポーツ/52.16kg)
勝者:白幡裕星 / 判定3-0 / 主審:少白竜          
副審:河原30-28. 神谷30-28. 山根30-28

組み合えば田中のヒジが襲う、Saeは防戦一方

◆第8試合 女子47.5kg契約3回戦(2分制)

KOKOZ(=ココゼット/TRYHARD/47.4kg)vs 443(=よしみ/NEXTLEVEL渋谷/47.3kg)
勝者:KOKOZ / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:河原30-29. 神谷30-29. 少白竜30-29    

◆第7試合 女子45.5kg契約3回戦(2分制)

WPMF女子世界ピン級チャンピオン.田中“暴君”藍(PCK亘理/45.1kg)
    vs
Sae-KMG(=さえ/クラミツ/45.0kg)
勝者:田中“暴君”藍(赤コーナー) / 公式TKO 2R 0:02 実質1R終了 / 主審:山根正美

互いが対峙してのローキックのけん制から組み合うと早くも田中“暴君”の勢いが増していった。首の掴み方、体重の掛け方のバランスが良く、すぐさまヒジ打ち、ヒザ蹴りを入れ、田中の圧力を抑えることが出来ないSaeは険しい表情。

田中のヒジ打ちで左頬を切られたsaeは第2ラウンド開始と同時にドクターチェックが入り、そのままレフェリーに試合を止められた。

第2ラウンドの開始ゴングを待ってのドクターチェックで、再開されないままの終了であり、実質は1ラウンド終了時のTKOとなる。おそらくJBC式でも「TKO 1R終了時」となる。

田中“暴君”藍のヒザ蹴りがSaeにヒット
WPMF世界ピン級チャンピオンとしてより実力アップした田中“暴君”藍

◆第6試合 女子フライ級3回戦(2分制)

RAN(Monkey☆Magic/50.55kg)vs 竹井成美(エイワスポーツ/50.35kg)
勝者:RAN / 判定3-0 / 主審:河原聡一
副審:桜井30-27. 山根30-27. 少白竜30-28

◆第5試合 バンタム級3回戦  

稔之晟(=じんのじょう/TSK Japan/53.15kg)
    vs
チャローンリット・ソー・ウィセットキット(タイ/53.5kg)
勝者:稔之晟(赤コーナー) / KO 1R 1:43 / テンカウント / 主審:神谷友和

◆第4試合 66.0kg契約3回戦

ポッキー・ラジャサクレック(タイ/65.4kg)vs 雑賀弘樹(NEXT LEVEL渋谷/65.7kg)
勝者;雑賀弘樹 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:神谷28-30. 山根28-30. 河原29-30

◆第3試合 スーパーフェザー級3回戦 

洸杜(T’sKICKBOXING/58.8kg)vs 直希(AKT/58.5kg)
勝者:洸杜(赤コーナー) / TKO 2R 2:10 / カウント中のレフェリーストップ / 主審:桜井一秀

◆第2試合 フェザー級3回戦  

三浦翔(クロスポイント大泉/56.85kg)vs 成澤龍(SRC/56.55kg)
勝者:三浦翔(赤コーナー) / KO 1R 1:58 / テンカウント / 主審:山根正美

◆第1試合 フェザー級3回戦  

健・センチャイジム(センチャイ/56.6kg)vs 岡田将充(クラミツ/56.2kg)
勝者:岡田将充 / 判定0-3 / 主審:河原聡一
副審:山根29-30. 少白竜28-29. 桜井29-30

着実に日本のトップ戦線に躍り出た壱、次戦はHIROYUKI戦

《取材戦記》

壱(=いっせい)は、昨年11月25日のMuayThaiOpen43に於いて、小嶋勇貴(仲FS)からルンピニージャパン・バンタム級王座奪取。この日、誓を下し、11月1日には「KNOCK OUT」に於いて、日本バンタム級チャンピオンのHIROYUKI(=茂木宏幸/藤本)と対戦が予定されています。2017年11月26日のデビュー戦では敗れたが、この日で15戦13勝(5KO)1敗1分。このMuayThaiOpenから生まれたスターが日本のトップクラスのリングで他団体チャンピオンと戦います。

「キックボクシングは今が全盛期ではないか」と言う運営関係者が居ました。

「乱立はしているが、組織の在り方は軟弱だが、多くの興行が成り立ち、ビッグマッチが行なえるイベントが増えてきた。イベントの盛り上げ方は、昭和の全盛期を上回るのではないか」と言う意見。団体や興行プロモーションは増え、王座は乱立したが、確かに興行が増え、交流戦が当たり前になり、トップクラスの戦いも増えた。これが時代の流れなのだろう。全国ネットで放送され、2団体しかなかった“昭和の良き時代”の語り部となっている我々世代はもう戻らぬ時代を想い、懐かしむだけの遅れた人間なのだろうと気付かされる。

地道に進むムエタイオープンも紆余曲折を経て46回目を迎えました。会場に入る度、センチャイファミリーが運営する興行という雰囲気が漂います。タイ人プロモーターによる、イベントタイトルどおりにムエタイの趣が表れる興行は幾つか存在し、ムエタイ殿堂のルンピニースタジアム傘下のルンピニージャパンタイトルは、公式ルールを遵守する運営で、より伝統・格式が付いてくるもので、しっかり継続して貰いたいタイトルであります。

と、毎度綺麗ごとで纏めてしまうが、タイ人関係者(プロモーター)との意思の疎通は難しいと感じることがあります。疑問点が生じて事情を伺うと、言葉は伝わっても意味が伝わらないこと多い。しかし日本人であっても問題摩り替えて答えを無難に、はぐらかす者も多いから、記者が挑む取材は難しい仕事と思う。

ムエタイオープン47は12月1日(日)に、やっぱり新宿フェースに於いて行なわれます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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