《NO NUKES voice》原発避難者から住まいを奪うな〈3〉「自己責任」と孤立の果て 民の声新聞 鈴木博喜

「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんは2019年6月に埼玉県川越市内で行われた講演会で、こんな想いを口にしている。

「僕が貧困問題に取り組んでいて、一番嫌いな言葉が『自立』。原発事故から8年経ったのだから避難者の人たちもそろそろ自立してください、と自立を強制している。国家公務員宿舎からの追い出しはまさにその典型。自立をして出て行けという事。この事を〝加害者〟である国や東電が言うのは絶対に許せない。福島県庁の担当者もこの話ばかりします」

一方的に期限を決めての自立強制。なぜ避難者は避難したのか。国も電力会社も「絶対に壊れない」と言い続けた原発が爆発し、放射性物質が拡散されたからだ。生活圏に被曝リスクが入り込んで来たからだ。それをなぜ、〝加害者〟側に止められなければいけないのか。行政ばかりではない。立憲民主党系の福島県議でさえ「そろそろ戻ってきたらどうか」と口にするほどなのだ。

郡山市から静岡県内に避難し「避難の協同センター」世話人の1人である長谷川克己さんは2018年5月、衆議院議員会館で行われた政府交渉の席上、こんな言葉を口にしている。

「私は避難後に収入が少しだけ増えたので、住宅無償提供打ち切り後に始まった福島県の家賃補助制度を利用することが出来ない。それでも生きていかなければならない。2人の子どもたちを路頭に迷わすわけにはいかない。この流れに飲みこまれるわけにはいかないと必死に生きているし、自分なりのやり方で抜け出そうとしている。でも周囲を見たときに、本当にこれで大丈夫なのか、みんなちゃんと濁流から抜け出せるのかと思う。結果的に抜け出せた側に立って『公平性を保つ』と言うのは、それは違うと思う。私は私のやり方で、目の前の子どもたちを濁流の中から救い出さなくちゃいけないとやってきた。でも、はっと後ろを見た時に、そう出来ていない人もいる。『(生活再建を)している人もいるのだから、この人たちのように、あなた達もやらなくちゃ駄目ですよ』と言われてしまうのは心外だ」

自己責任社会などと言われるようになって久しい。区域外避難者も例外ではなく、インターネット上には「いつまでも支援を求めるな」、「早く自立しろ」などの罵詈雑言が並ぶ。長谷川さんは、それらの言葉を「ある意味正論、もっともだと思う。どこにあっても自立を目指すのがまともな大人の姿だから」と冷静に受け止めている。

「でも…」と長谷川さんは続ける。

「それでも、何らかの事情で自立出来ない避難者がいれば、救済の手を考えるのが本来、政府のするべきこと。加害責任者でもある『政府』が必ず果たすべき責任だ」

避難当事者はこれまで、何度も「追い出さないで」と訴えてきた。しかし、福島県の内堀知事は「自立しろ」との姿勢を貫いている

区域外避難者が常に直面して来た「自立の強制」と「孤立」の問題。それを指摘しているのは瀬戸さんたちだけではない。山形県山形市のNPO法人「やまがた育児サークルランド」の野口比呂美代表は、福島県社会福祉協議会が2012年11月に発行した情報誌「はあとふる・ふくしま」で次のように語っている。

「避難されてきたお母さんにはいくつかの共通点があります。①母子世帯が多い、②経済的な負担感が多い、③健康や先行きに不安が大きい、④孤立傾向にある」

「避難するにしてもしないにしても、福島のお母さんたちは本当に大変な選択を迫られています。私たちは皆さんの選択を尊重していきたいし、それを尊重できる場所が必要なのだと思います」

しかし、国も福島県も孤立する区域外避難者には目もくれず、2020年東京五輪に向かって「原発事故からの復興」演出に躍起になって来た。

「福島原発事故の責任を棚上げにしたまま『日本再生』を演出しようとする政府の方針は、被害者であるはずの原発避難者に対して、有形無形の圧力を加えた。避難者の中には、公的支援や賠償の打ち切りによって生活困窮者に転落していく当事者も少なくない。母子避難者はその典型だ。彼女たちは制度的支援を打ち切られ、社会的に『自己責任』のレッテルを貼られたまま孤立に追い込まれています」と瀬戸さん。

孤立の果てに、避難先で自ら命を絶った女性もいる。そういう事例を目の当たりにしているからこそ、瀬戸さんは国や福島県がただ相談を待っているのではなく、自ら出て行く『アウトリーチ』の必要性を強調する。

「離婚などで家族関係が壊れると相談相手がいなくなります。SOSを受けて僕らが電話をすると、まず言われるのが『こういう話を久しぶりに出来て良かった』という言葉。具体的な要望についてはあまり語らない。『話を聴いてくれる人がいてうれしかったです』、『また電話して良いですか』と。だから、行政にはアウトリーチをやって欲しい。アウトリーチをする中で、何度か会話をする中から本当の苦境が分かってくる」

復興庁は言う。「全国26カ所に相談拠点を設けています」。

しかし、避難者が必死に想いで相談しても、傾聴されて終わってしまうケースもある。行政の福祉部門につなぐだけのこともある。「『相談拠点』への相談件数がなぜ、少ないのか。福島県が避難者宅への個別訪問を行っても何故、大半の世帯が会おうとしないのか。その理由は、福島県からの説明は常に支援終了や縮小ありきで、避難者の事情を考慮できない一方的な説明だからだ」と瀬戸さん。。これでは、避難先での孤立は解消されない。

「確かに相談窓口は拠点化されていますが、とても事務的。そして、仕事を二つも抱えている避難者はなかなか行かれない。だから避難の協同センターに連絡が来る。やはりもう少し、ただ開いているのではなくて、あそこに行けば本当に相談に乗ってくれる、自分の悩みが話せる、本当にその場づくりをもう一度きちっと初めから考え直していただいた方がよいのではないか」

松本さんの願いはしかし、叶えられていない。「結局、〝自主避難者〟は根なし草のような存在なのだろう」という長谷川さんの言葉が重い(つづく)

都内にも原発避難者向けの相談拠点が設けられたが、どこも「待ち」の姿勢。瀬戸さんは行政の側から避難者にアプローチする「アウトリーチ」の必要性を訴え続けている

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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五輪・原発・コロナ社会の背理〈5〉誰が「戦後処理」を引き受けるのか 田所敏夫

どう考えても、あるいはどこから秘策を探っても、惨憺たる戦後は確定している。では、「戦後」を確信するわたしと、暴走する主体を入れ替えて(ありもしないが)わたしが、開催責任者だったらと、思案してみよう。

嘘を座布団に敷かないかぎり、はたまた政治家のように厚顔無恥な言い放ちに平然と己をおとしめないかぎり、あらゆる条件設定で“Yes!We Can!”とはいえない。匿名であれ、ペンネームであれ、本名であれ絶対に発語できない。「東京五輪」には、従前から極端といわれるであろう激しい物言いで「反対」していたわたしが、精一杯主催者の立場に視点を置き換えようと、この期に及んで無駄が必定な仮説に身をおこうと試みた。

「敵」の心象は、どこまでも、ひつこく、論理にはまったく欠けていて、それでいて傍若無人なのだ。なら、間違いなく存在している、大きな力からの発語者である「そんなひとたち」のお考えは内面どう処理されるのか。IOCのバッハ会長、菅総理大臣、丸川五輪大臣、小池東京都知事、五輪スポンサーにして、毎年部数を減らす全国紙とその系列のテレビ局……。全員気持ち悪い表情で、言語的には整合しない文脈や誌面・番組を、平然と織りなす。この連中の神経はどうなっているんだ?はたして人間の感性を持っているのか。人間の感性は、微笑みながらひとを大混乱や殺戮に導くことに、こうも厚顔でいられるものなのか。

30代になりたての頃、職場で民主的な方法により、トップに選ばれた人が、わたしに「田所いまいくつだ?」と問うた。「30ちょいですよ」と答えると「そりゃ若いな。40超えて45超えると、俺みたいに不感症になってくるんだよ」と彼は仰った。相当にわたしが煙たかったのだろうが、彼の言葉に「そんなことあるものか」と内心では楯突いた記憶は定かだ。ライヒの翻訳者としても知られたあの賢人から、叱責(?)されて四半世紀が経ってもその反応に変化はない。

さて、在野や役職が付かないときには、仲間であったり仲間以上に過激な先導者だったりした先達が、大したこともない(といっては失礼だろうが)肩書の一つも与えられたら、途端にビジネス書を手にしだして、管理職気分になるあの気持ち悪さ。たかが中規模の所帯で中間化離職になろうが、トップになろうが、株主の締め付けがあるわけでもなかった、あの職場でどうしてみなさん「転向」していったのだろうか。

ずいぶん横道にそれたようだが、「裸の大様」だということを「五輪禍」を語る上でに、過去の経験とわたしの変化しない体感からご紹介したかったわけである。IOCも日本政府、組織委員会、東京都、聖火リレーを諾々と行う都道府県…全部が狂っているとしかわたしには思えない。

以前に本通信で書いたが、もう「東京五輪」が開催されようが、中止されようが、この国は「絨毯爆撃」を食らった状態であって、あとは開催されれば「原爆投下」が加わる、つまり1945年の8月初旬と比較しうる惨憺のなかに、すでにわれわれはおかれている。このことだけで充分に悲劇的だし、「敗戦後」には「戦後処理」が急務となる。「戦後処理」とは、今次にあっては、膨大な税金の浪費によって、なにも生み出さないどころか、「泥棒」(大資本や電通など)がますます肥え太り、「真面目な庶民」からの税金で財を成した連中の、焦げ付きにまたしても「尻ぬぐい」のツケが回ってくることだ。増税であったり、行政サービスの低下、年金の切り下げとして形になろう。

MMTなるインチキな理論によれば、「自国通貨で国債を発行している限り財政破綻はない」らしい。そんな理屈が成り立つのならば国債は不要で、税金も不要なはずだ。ひたすら貨幣をすればいい。この理論はリーマンショック後の米国が前述の対応で、さしてインフレにならなかったことに依拠しているらしいが、一方で暴走的に膨らむ「非実体経済」(金融商品などの担保に由来しない価値)の問題には、処方箋を持たず、なによりも資本主義末期にあげく体制への「助け舟」として機能していることを、見逃してはいないだろうか。

今次の「戦後処理」にソフトランディングはない、と直感する。ただし「原爆」は何としても避けたい。「原爆」は世代を超えて禍根を残すのだから。「五輪」、「コロナ」、「MMT」あれもこれも詐欺的である。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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やはり竹中平蔵は「政商」である──東京五輪に寄生するパソナのトンデモ中抜き

またこの男の立ち回りが脚光を浴びている。「なぜか捜査を受けない竹中平蔵の脱税疑惑 ── 持続化給付金と規制緩和の利益誘導で私腹を肥やす?」(2020年12月2日)において、竹中の浅薄な経済政策理解を批判してきた。

◆いまだ解明されない脱税疑惑

「『格差が問題なのではなく、貧困論を政策の対象にすべき』としてきた結果は、中間層までも不安定な雇用関係に陥らせる格差の拡大、大企業の内部留保(500兆円)だった。いまや、消費の低下が国民経済を最悪のところまで至らせている元凶となるものが、この竹中による構造改革・労働政策だったというほかにない」と。

そしてその「罪業」は、小泉政権時の経済政策担当大臣、安倍政権におけるブレーンとしての経済政策だけではない。

「国民の血税をかすめ取る吸血鬼のような男ではないだろうか。その竹中平蔵の脱税疑惑は、小泉政権当時から指摘されていた」のである。

元国税庁職員だった大村大次郎(経営コンサルタント、フリーライター)は、こう批判している。

「竹中平蔵氏が慶応大学教授をしていたころのことです。彼は住民票をアメリカに移し日本では住民税を払っていなかったのです。住民税というのは、住民票を置いている市町村からかかってくるものです。だから、住民票を日本に置いてなければ、住民税はかかってこないのです。
 もちろん、彼が本当にアメリカに移住していたのなら、問題はありません。しかし、どうやらそうではなかったのです。彼はこの当時、アメリカでも研究活動をしていたので、住民票をアメリカに移しても不思議ではありません。でもアメリカで実際にやっていたのは研究だけであり、仕事は日本でしていたのです。竹中平蔵氏は当時慶応大学教授であり、実際にちゃんと教授として働いていたのです。」(2020年10月1日付けのメルマガ)

ようするに竹中平蔵は、日本で仕事をしながらアメリカに住人票を置いて、「節税」をしていたのだ。つまり巧妙な、そして明白な「脱税疑惑」があるのだ。

 
佐々木実『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社文庫2020年9月)

ジャーナリストの佐々木実は、『竹中平蔵 市場と権力』において、次のように指摘してきた。

「竹中平蔵の本業は慶應義塾大学総合政策学部教授だったが、副業を本格的に始めるために〈ヘイズリサーチセンター〉という有限会社を設立した。法人登記の『会社設立の目的』欄には次のように記されている。

『国、地方公共団体、公益法人、その他の企業、団体の依頼により対価を得て行う経済政策、経済開発の調査研究、立案及びコンサルティング』

「フジタ未来経営研究所の理事長、国際研究奨学財団の理事というふたつのポストを射止めた段階で、副業はすでに成功していたといえる。竹中個人の1997年の申告納税額は1958万円で、高額納税者の仲間入りを果たしている。総収入は6000万円をこえていただろう」と。

◆持続化給付金を吸い取る

竹中が個人的なビジネスで成功するのはいいだろう。それが「脱税疑惑」であれ何であれ、個人的なものにすぎない。

だが、竹中は小泉・安倍政権に寄生することによって、政商ともいうべき地位を築いたのだ。みずからのリスクを投じたビジネスではなく、国民の税金を吸い上げる利権に群がる利殖構造を築いたのである。

昨年の持続化給付金の業務は、サービスデザイン推進協議会という一見してニュートラルな組織に769億円で委託され、そこから電通に749億円で再委託されている。その段階で電通が約20億円を中抜きし、さらに下請け孫請けで実務が行なわれていたのだ。あまりにも複雑怪奇な外注に、自民党の政策担当者も驚かざるをえなかったという。

そして、この持続化給付金の業務委託を実質的に請け負った主要企業のひとつが、竹中平蔵が会長を務めるパソナだったのである。いや、そうではない。一次請けの「サービスデザイン推進協議会」それ自体が、元電通社員・パソナの現役社員が名を連ね、最初から最後まで税金を中抜きするトンネル構造だったのだ。

立憲民主党の川内博史議員は、国会においてこう指摘している。

「社団法人を通じて、電通をはじめとする一部の企業が税金を食い物にしていたわけです。持続化給付金事業に限らず、経産省の事業ではそうしたビジネスモデルが出来上がっている」と。

◆東京五輪の日当35万円というトンデモ報酬

そしていままた、東京オリンピック利権に竹中平蔵のパソナが大きくかかわっているのだ。

コロナ禍にもかかわらず、今回のオリンピック・パラリンピックには多くの市民ボランティアが無償奉仕する。9万人といわれるボランティアのうち1万人が辞退し、80%の国民が「中止・延期」を希望しているものの、国民の奉仕精神に依拠した大会は、まがりなりにも実現されるのであろう。

それはひとつには、強硬開催することで国民的な祝祭感をつくりあげ、コロナに人類が打ち勝ったという雰囲気で、政治危機の突破をはかる菅政権。

そして組織としての存続が、強行開催をもってしか果たせないIOCおよびその周辺の「オリンピック貴族」、各種スポーツ団体。

そしてもうひとつは、オリンピック開催で暴利を得ようとする企業。その筆頭が大手広告代理店であり、大手派遣会社パソナなのである。

大会の準備業務をになうディレクター職は、1人あたり1日35万円のギャラだという。40日間でひとり1400万円が得られることになる。運営計画業務のディレクターは1人あたり25万円。こちらも40日間で1000万円である。

以下、運営統括が1日25万、サブディレクターが1日10万円、ボランティアとほぼ同じ業務のサービススタッフも1日2万7000円である。募集人員は800人、報酬金の総額は6億2300万円であるという。

5月26日の衆議院文部科学委員会で、このトンデモ報酬は追及に遭った(立憲民主党の斉木武志議員の質疑)。

しかるに、丸川珠代五輪相は「守秘義務で見せてもらえない資料がある」などと称して答弁に応じなかった。国税をつぎ込んだ事業の受注した企業のどこに「守秘義務」が生じるのか、そもそもこの大臣は基本的な行政知識がない。自民党も政府と一体となって、参考資料の配布を拒むという悪あがきに終始したのである。


◎[参考動画]衆議院 2021年05月26日 文部科学委員会 #04 斉木武志(立憲民主党・無所属)

◆募集欄は時給1650円

これらトンデモない高額報酬の人材確保は、つねのことながら電通、博報堂をはじめとする大手代理店に丸投げされ、諸経費として20%が代理店に落ちる。20%は通常の広告出稿手数料だが、丸投げでは中抜きと言わざるをえない。

ところが、である。この業務に参加するスタッフに支払われるべき報酬は、募集段階で大半がどこかに消えてしまうのだ。

算数ができる人間ならば、誰にも目を疑うような事態が起きている。パソナのオリンピック業務募集欄を見ていただきたい。

スタッフの募集欄には、1650円と明記されているのだ。1日8時間労働として、1万3200円である。上記の最低賃金「サービススタッフ」ですら2万7000円だというのに、半分以上が中抜きされているのだ。この「中抜き」はしかし、パソナの収益構造なのだ。政府が募集業務の内容を限定し、直接雇用した場合は、そもそもこんなトンデモ報酬は発生しないはずだ。

もはや明らかだろう。今回のオリンピックは菅政権の政治的ツッパリであるとともに、寄生業者とりわけ広告代理店とパソナによる利権事業と化しているのだ。じっさいに、パソナの昨年の収益は10倍に伸びたという。持続化給付金で味をしめた寄生業者パソナは、派遣業務というある意味ではフレキシブルな業態によって、イベントを高額化することで、いままた法外な超過利潤を得ようとしているのだ。


◎[参考動画]【竹中平蔵の骨太対談】 第7回 前編 パソナグループ代表 南部靖之氏(KigyokaChannel 2016年12月3日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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《NO NUKES voice》原発避難者から住まいを奪うな〈2〉「身体と心を温めたい」 民の声新聞 鈴木博喜

「避難の協同センター」が設立されたのは5年前の2016年7月12日。避難当事者や支援者、弁護士などが名を連ねた。長く貧困問題に取り組んでいる瀬戸大作さんは、事務局長として参議院議員会館で行われた記者会見に出席。「経済的、精神的に追い詰められて孤立化している避難当事者の皆さんと支援者が『共助の力』で支え合う。『身体を心を温める』支援から始めたい」と話した。本来は国や福島県がやるべきことを民間団体が担わなければいけない。それが区域外避難者支援の現実だった。設立に至る経緯を、瀬戸さんが後に講演会で語っている。

「2016年の5月に入り、自主避難者個々に一斉に福島県から通知文書が届いた。入居している応急仮設住宅の退去通告だった。都内では、都営住宅での個別説明が始まった。団地集会所での個別説明会が計6カ所で開かれた。約1時間、集会所に呼ばれて1人ずつ面談。避難者1人に福島県や東京都の担当者が4人、対応した」

まるで〝圧迫面接〟だった。ある女性は面談後、食事も睡眠もままならなくなり、40日にわたって入院してしまった。母子避難した後に離婚したので行政の区分では『母子避難』ではないので支援対象外。面談では、退去を前提に「改めて都営住宅に申し込まないのであれば、自ら民間住宅を借りて2年間じっくり考える時間をつくったらどうか」などと迫られたという。

しかし当時、この女性が入居していた都営住宅の倍率は160倍に達していた。そもそも、公営住宅はどこも入居希望者が多く、申し込んだところで当選する可能性は低い。国家公務員宿舎からの追い出し支障を起こされた避難者は、これまでに14回も都営住宅の抽選に外れている。それでも、とにかく区域外避難者を追い出そうと福島県は動いていた。

「避難の協同センター」が設立されたのは2016年7月。5年経った現在も、孤立と困窮から原発避難者を救おうと奔走している

瀬戸さんたちの動きも早かった。都営住宅での「個別相談会」で退去を通告され、避難者一人一人が精神的に追い込まれている状況を知り、避難者や支援者有志が急きょ「避難の協同センター準備会」を立ち上げた。同時に相談ダイヤルを開設。別の都営アパート集会所でチラシを配り、何人もの避難当事者と話したという。

「多くの区域外避難者たちが『自主避難者も賠償をもらっているんだろ?いつまで甘えているんだよ』という世間の偏見と中傷の中、東京の片隅で避難生活を送っていた事に気付いた」

瀬戸さんは、事務局長として政府交渉や福島県との交渉に参加するばかりでなく、24時間365日携帯電話に寄せられるSOSに対応し、車を走らせた。時には宿泊費や当座の生活費を手渡すこともある。生活保護申請にも何度も同行した。

「避難者の方々は、様々な公的支援制度について詳しく知らない。自分が置かれた状態であればどういう支援を受けられるのか、分かるはずがない。単独で行政窓口に行って『生活に困っているんです』と言った時、窓口の人は生活困窮者の制度を念頭に置いて対応するから『あなた、車持っていますね。福島には土地がありますね。それならば保護は出来ません』と、まず断られる」。

国や福島県が本当に「避難者一人一人に丁寧に対応」しているのなら、瀬戸さんたちの出番は少ないはずだ。しかし現実には、瀬戸さんの携帯電話が鳴らない日はない。

「寄せられるSOSは、住まいの相談から生活困窮の相談に内容が変化していった。ただでさえ母子世帯の暮らしは厳しい事が分かっていながら一律に住宅無償提供を打ち切り、生活支援策を講じなかった。国も福島県も『一人一人に寄り添う』と言う。寄り添うならなぜ、これまで出会った母子避難のお母さんが『いのちのSOS』を発するのだろう。なぜ放置されているのだろうか」

それは、「寄り添う」だの「ていねい」だのという美辞麗句と真逆の施策が展開されてきたからだ。

「左手で執拗に退去を迫り、『時期が来たら訴えるぞ』と拳を振り上げ、右手では『個別に相談に応じます。住まい相談に応じます』などと振る舞う福島県に、いったい誰が本音で相談出来るだろうか。経済的に厳しいと嘆く避難者に容赦なく家賃2倍請求をし、転居費支援も一切しない。住宅相談にしても、不動産業者につないで『あとは直接、業者に相談してください』で終わり。だから新しい住まいが決まらない。私たちは転居費が不足している避難者への給付金補助、保証人代行もしっかり行っています」

福島県との話し合いでは毎回、厳しい視線を送る瀬戸大作さん

世話人の1人で、自身も田村市から都内に避難した熊本美彌子さんも、2018年7月11日に開かれた参議院の東日本大震災復興特別委員会でセンターに寄せられるSOSの深刻さを述べている。

「川崎市内の雇用促進住宅に入居していた40代の男性は、体を壊して仕事ができない状態でいるときに、『もう住宅の提供は打切りだ』、『出ていけ』と言われた。雇用促進住宅というのは、家賃の3倍の収入がなければ継続入居ができない。とても困って、出ろ出ろと言われるから男性は退去した。退去したけれども職がない、働けない。それで所持金が1000円ぐらいになって、どうしていいか分からないとセンターに相談があった」

2018年7月11日には、「避難の協同センター」として、①区域外避難者が安心して生活できる『居住の保障』、②民間賃貸家賃補助の継続、③希望する避難者を公営住宅特定入居の対象とする(区域外避難者を対象に加える)、④安心して生活できる『居住の保障』が実現するまで国家公務員宿舎の継続居住期間の延長(住まいの確保の制度的保障)の4項目を提起したが、政策に加えられることはなかった。

「そもそも日本の居住政策には、住まいは基本的人権として保障するという考え方が欠けている」と瀬戸さん。2019年1月には、「原発事故被害で苦しみ、家族と自らを守るために避難してきた皆さんの身体と心を少しずつ温める事もせずに、この国は自立を強制し、身体をまた冷えさせている。私たちは『身体と心を温め合う社会』づくりに向けて、少しずつでも活動を続けたい」と語っている。「自立の強制」に抗いながら、今日も奔走している(つづく)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道
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五輪・原発・コロナ社会の背理〈4〉マスメディアよ、あなたたちは、菅のイヌか? 田所敏夫

簡単に理解できる、絶対矛盾を一つ例示しよう。どうしてこの国では「経済再生担当大臣」が新型コロナウイルスの対策担当に当たっているのであろうか。疫病であるウイルスの蔓延と、「経済再生」がどのような関係にあるのか。

また、ワクチンの担当にどうして「行政改革大臣」が任じられるのか。ワクチン対応にも、旧来とは異なる行政対応を導入したい、との志あってのことなのか。そんなことはあるまい。元防衛大臣で「防衛大臣専用機が欲しい」とのたまった河野太郎は、相変わらず回らない滑舌で、ウイルスの遅滞弁解に忙しいだけだ。河野洋平だってそんなに評価に値する政治家ではなかったけれども、息子のできの悪さを嘆いているのではあるまいか。

行政改革は結構ではあるが、本来厚生省と労働省が担っていた業務には、水と油といってもいい利益相反の業務もあったのだ。それが無理やり合体させられてしまい、結果として医療行政や労働行政には大幅な後退が生じている。全国的な保健所の減少などもその結果である。横浜市はホームページで誇らしげに

《指揮命令系統の一元化により、広域的で緊急的な課題に迅速に対応するとともに、その基盤となる情報を一元管理できるよう18区に分散していた保健所を1か所に集約し、健康危機管理機能の強化を図りました。》

と書いているが、これはつまりかつて18か所あった横浜市の保健所が、現在は一か所だけになっていることをあらわす。

保健所は結核や、感染病が発生したときに、感染源を突き止め消毒を行ったり、医療への誘導を行うのが業務の一環だが、今次のコロナ蔓延には全国的に保健所の数が半数以下に減らされた「行政改革」のしわ寄せが遠因として働いている、ともいえる。京都市では保健所職員の中に昨年1年で2000時間(!)近くの残業を強いられている職員がいたことが判明した。

ひとつき20日の勤務で年間2000時間の残業は、一月あたり160時間の残業を意味するが、一日は誰にも平等に24時間しかない。この保健所勤務の職員さんはコロナでなくて「過労死」してしまっていないか、本当に心配になる。公務員の中には、とくに高級官僚の中には、不労所得や役得にあずかっているものが少なくない実態はあるにせよ、「行政改革」が結果として最低限の行政サービスをおろそかにしてしまっては本末転倒だ。

そもそも「改革」という言葉自体を近年は疑ったほうがよさそうでもある。「司法改革」は雨後の筍のように無意味で、既に半数以上が閉店した法科大学院と、法律の知識を持たない市民に、場合によっては「死刑」判決に立ち会わせる「裁判員裁判」さらには「司法取引」を生み出しただけであるし、企業における「意識改革」は労働者に確立された権利の忘却と、さらなる利益追求のための自己犠牲を強いる。

5月3日憲法記念日、コロナ禍の下とはいえ、いったいどんな営みや議論が交わされ、報じられたことだろうか。「批判する価値はない」とわたしが決めつけた報道各社は、期待にたがわず素っ頓狂な報道に明け暮れた。共同通信は改憲の必要性を誘引する世論調査を行い、わざわざ「改憲における緊急事態条項の必要性」までを質問項目に加えている。コロナにおける緊急事態宣言とを結びつけてある。現憲法で「緊急事態宣言」は発令可能であったのにどうして、改憲が必要なのか、また改憲に「緊急事態条項」を盛り込まなければならないのか。このような基本的な事項すら、論理的に理解できない頭脳が、今次この国におけるマスメディアの実態である。

あなたたちは、菅のイヌか?と罵倒されても仕方あるまい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』7月号

紀州のドン・ファン事件 20余年前の「あの事件」との比較で見えてくるもの

GW前から注目を集め続けている紀州のドン・ファン事件。そんな中、この事件は1998年の「和歌山カレー事件」と捜査のやり方が似ていると指摘する報道が散見されるが、実は似ている事件がもう1つある。

1999年に注目を集めた「本庄保険金殺人事件」がそれだ。この事件とドン・ファン事件を比較すると、「あること」が見えてくる。

◆本庄保険金殺人事件の被害者たちは「覚せい剤中毒」だった

 
八木死刑囚の弁護団の著書『偽りの記憶「本庄保険金殺人事件」の真相』。弁護側の無罪主張が詳細に綴られている

埼玉県本庄市で金融業を営んでいた八木茂死刑囚が債務者たちに保険をかけ、殺害していたとされる本庄保険金殺人事件。逮捕前に連日、「有料記者会見」を開いて話題になった八木死刑囚は一貫して無実を訴えたが、裁判では2008年に最高裁で死刑が確定した。

確定判決によると、八木死刑囚は愛人女性3人と共謀のうえ、95年に工員の佐藤修一さんにトリカブトを食べさせて殺害し、保険金約3億円を詐取。さらに98~99年にかけて連日、多額の保険をかけた元パチンコ店店員の森田昭さんと元塗装工の川村富士美さんに大量の風邪薬を飲ませ、その結果、森田さんを殺害し、川村さんに急性肝障害などの傷害を負わせたとされる。

そんな本庄保険金殺人事件とドン・ファン事件が似ていることは2つある。

1つ目は、「被害者」とされる男性が覚せい剤を摂取していたことだ。ドン・ファン事件では、周知のように須藤早貴容疑者(25)が元夫で資産家の野崎幸助さん(享年77)に致死量の覚せい剤を飲ませ、殺害した疑いをかけられている。一方、本庄保険金殺人事件でも、八木死刑囚らに大量の風邪薬を飲まされていたとされる森田さん、川村さんの2人が実は覚せい剤中毒だったことが判明しているのだ。

実は八木死刑囚の裁判では、弁護側が多数の医学的根拠に基づいて、森田さんの死と川村さんの傷害は風邪薬が原因ではないと主張し、2人の症状が実は覚せい剤の接種によるものである可能性も浮上していた。しかし、森田さん、川村さんが覚せい剤中毒だったこと自体がほとんど報じられていないので、そのことを知る人は世間にほとんどいないだろう。

◆報道されなかった「ニコチンコーヒー」の酷い味

本庄保険金殺人事件がドン・ファン事件と似ていることのもう1点は、被疑者が死亡した男性に「味が酷いもの」を経口摂取させた可能性が疑われていることだ。

まず、ドン・ファン事件。須藤容疑者は野崎さんに口から覚せい剤を摂取させた疑いをかけられているが、複数のメディアが覚せい剤は強烈に苦く、口から飲ませるのは難しいと指摘している。一方、本庄保険金殺人事件でも、八木死刑囚らは佐藤さんをトリカブトで殺害する前に連日、タバコの葉とコーヒー豆を煮出して作った「ニコチンコーヒー」なるものを飲ませていたとされている。

このニコチンコーヒーの味に関しては、今日にいたるまで疑問を指摘した報道を見かけない。しかし、筆者がこれを実際に作ってみたところ、臭いが凄い上、口に含むだけで吐き気をもよおすほど強烈な味だった。こんなものを本当に飲ませることができたのか…と疑問を禁じ得なかった。

このニコチンコーヒーを佐藤さんに飲ませる役目を務めたとされる八木死刑囚の愛人女性は、容疑を認めているが、過酷な取り調べで「偽りの記憶」を植えつけられた可能性が心理学者から指摘されている。実際、ニコチンコーヒーを作ってみると、この心理学者の見解に信ぴょう性があるように思われた。

こうしてみると、本庄保険金殺人事件と比べ、ドン・ファン事件では、捜査の筋書きに疑問を抱かせる情報が多少なりとも報道されている。本庄保険金殺人事件の頃以降、20余年の間にインターネットが普及し、裁判員裁判も始まり、重大な冤罪が次々に明らかになったりしているので、事件報道も昔ほどは捜査機関にベッタリではなくなったのだろう。2つの事件を比べると、そういうメディアの変容が見えてくる。

▼片岡 健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史、発行元・リミアンドテッド)など。

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《NO NUKES voice》原発避難者から住まいを奪うな〈1〉「寄り添って」など、すべてウソ 民の声新聞 鈴木博喜

5月14日、福島地裁で2件の〝追い出し訴訟〟の口頭弁論が行われた。被告は福島県から区域外避難(いわゆる自主避難)し、国家公民宿舎に入居する福島県民。これで4世帯すべての審理が始まった。人数も生活実態も把握されないまま10年が経った区域外避難者。4年前に住宅の無償提供が打ち切られてから切り捨てが加速している。間もなく設立5年を迎える「避難の協同センター」の活動を中心に、原発事故後の区域外避難者の置かれた状況を確認しておきたい。

2020年9月17日、菅義偉政権の誕生とともに就任した平沢勝栄復興大臣もまた、就任会見で歴代大臣と同じ言葉を何度も口にした。

「被災地に寄り添って、各省庁の縦割りを排して、現場主義に徹して福島の本格的な再生再興、東北の再生再興に取り組んでほしいと、こういうことでございました」

今年3月30日の定例会見でも「私自身が先頭に立って現場主義を徹底し、被災地に寄り添いながら1日も早い復興に全力で取り組んでいきたい」と語っている。前大臣の田中和徳氏も「現場主義」と「被災者に寄り添う」を盛んに強調していた。歴代大臣は皆、判を押したように役人の用意したペーパーを読み上げた。

国だけではない。福島県の担当者も、事あるごとに「内堀(雅雄)知事からは、避難者一人一人の個別の事情をお伺いし丁寧に対応していくよう、常日頃から言われております」と口にしている。では、国や福島県に「寄り添われた」と考える原発避難者はいるだろうか。

2017年5月25日、衆議院の「東日本大震災復興特別委員会」に参考人として招かれた松本徳子さん(「避難の協同センター」代表世話人、福島県郡山市から神奈川県に避難)は、こんな言葉で避難者の思いを代弁した。

「口をそろえて『避難者に寄り添って』など、全て嘘でした。今思えば、私たちは行政、国の言葉を信じ、必ず私たちを守ってくれると夢を描いていました。しかし、それは夢でしかありませんでした。現在の政権を握っているトップは、私たちの苦しみなど何とも思っていないということです」

松本さんのように、被曝リスクを避けるために避難した人々は、避難元が政府の避難指示が出されなかった区域にあるということで〝自主避難者〟(区域外避難者)と呼ばれ、避難指示による強制避難者とは支援や賠償の点で大きく差がつけられた。

公的支援と言えば家賃6万円までの無償化と日本赤十字からの「家電6点セット」くらい。それとて、福島県は積極的に県民に知らせず、それどころか新規申し込み受付を2012年12月28日で一方的に打ち切ったのだ。松本さんは、子どもを被曝リスクから守ろうと保護者が立ち上げたグループのメーリングリストで偶然、神奈川県内の住まいを「みなし仮設住宅」として借りられると知り、動けたのだった。

「あの当時、災害救助法に基づく住宅提供を知り得た家族はどのくらいいたでしょう」と松本さん。実は長女は住宅支援を受けられていない。同じ原発避難でも、動くのに時間がかかったというだけで住まいも何もかもが「自力」。松本さんは国会議員たちを前にその現実を訴えた。

「2016年5月にようやく、家族3人で〝自力避難〟しました。長女夫婦も悩んだあげくの移住だったと思います。長女家族は住宅提供を受けていません。2012年12月末で住宅提供を締め切られていたためです。このように、住宅提供を受けられず避難をしている家族がいます」

唯一の公的支援であった住宅の無償提供もしかし「もはや災害救助法で言う『応急救護』の状況ではなくなった」として2017年3月末で終了。アパートなど民間賃貸住宅への住み替えを促し、収入要件に該当する世帯に限って2年間の家賃補助制度(初年度月額3万円、2年目同2万円)に移行した。国会でも県議会でも十分な議論がないまま、これも一方的に決められた。

福島県から〝追い出し訴訟〟を起こされている男性は、国家公務員宿舎から退去する意思はあるものの都営住宅に当たらない。14回も外れている

「福島原発かながわ訴訟」の原告団長を務める村田弘さん(南相馬市小高区から神奈川県に避難)は、区域外避難者切り捨てが加速した背景に「原発事故後10年にあたる2020年の東京五輪までに『原発事故を克服し、福島の復興を成し遂げた』と世界に宣言するという目標を国が掲げた」ことがあると指摘する。2019年12月20日に東京高裁で行われた控訴審の第1回口頭弁論では、自ら法廷で意見陳述した。

「避難指示が出されなかった地域については大人1人8万円、子ども・妊婦40万円という原子力損害賠償紛争審査会の『中間指針』に依拠した賠償のみで良しとされてきました。唯一、避難生活の支えになっていた住宅の無償提供も、福島県による災害救助法の適用終了宣言によって2017年3月末で打ち切られました」

「避難者は生活の基盤である住宅提供を打ち切られ、『帰還か自立かの二者択一』を迫られているのです。被害者・避難者は、原発事故による癒えない傷を抱えたまま、かさぶたを引き剥がし、塩をすりこむような非情な政策によって二重三重の被害を強いられ続けているのです」

打ち切りを4カ月後に控えた2016年11月30日には、福島市などから多くの人が避難した山形県米沢市の中川勝市長が福島県を訪れ、直接「住宅無償提供の継続」を求めたが、内堀知事は面会すらせず、担当者に要望書を受け取らせただけ。普段は煮え切らない発言の目立つ内堀知事も、区域外避難者切り捨てに関しては決断も動きも早かったのだった。

区域外避難者との面会を拒み続けている福島県の内堀雅雄知事。2017年には1年を表す漢字に「共」を選んだが、実際には避難者に寄り添ってなどいない

住宅無償提供が打ち切られた翌年の秋に実施された福島県知事選挙で圧勝し、再選されたが、公開質問状で「知事に就任した場合、区域外避難者への経済的支援を含む住宅支援の再開などを提案する意思がありますか」と問われると「ない」ときっぱりと答えた。「避難者の方々は、健康、仕事、教育、生活など様々な課題を抱えていると受け止めております」、「避難者一人一人の状況に応じた支援をしっかりしてまいります」とも答えていた。

だが、「一人一人の状況に応じた支援」はやがて「みなし仮設住宅からの追い出し」に姿を変えた。昨年3月には国家公務員住宅「東雲住宅」に入居する4世帯を相手取り、追い出し訴訟を福島地裁に起こした。松本さんの言うように「口をそろえて『避難者に寄り添って』など、全て嘘」だった。国も福島県も見放すばかりの事態に急きょ、民間支援団体がつくられた。「避難の協同センター」と名付けられた。(つづく)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道
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官邸の犯罪は暴かれるか? 1億5,000万円の責任の行方 横山茂彦

安倍政権下の官邸独裁と暗闘の硝煙が、いまだ燻(くすぶ)っている。河井案里への巨額選挙資金である。

すでに河井案里は有罪判決をうけ、議員資格をはく奪された。夫で元法相の河井克行被告も「民主主義の根幹をゆるがす悪質な犯罪」と論告求刑され、実刑有罪が必至との見方をされている。

そこで、残された問題は「悪質な公選法違反」「カネで票を買った」その原資の出どころの解明である。買収をさせた陣営の張本人(犯人)を解明しないのでは、この世紀の選挙犯罪の全容を明らかにしたとはいえない。

そしていま、その犯人捜しをめぐって醜い責任のなすりつけ合いが、自民党内で佳境に入っているのだ。

◆自民党本部と選挙対策委員長の「身の潔白」

5月17日、自民党は幹事長の二階俊博、幹事長代理の林幹雄らが会見して「釈明」した。その内容は「支出された当時、私は関係していない」(二階)というものである。ようするに、党の実務の最高責任者としての責任を否定したのだ。河井案里の有罪判決にさいして「われわれも、他山の石としなければならない」などと語り、党としての責任を他人事のように語っただけのことはある。政治倫理の「り」の字も理解できないのだ。この人物については、明らかな認知症の症状があることを指摘しておこう。

そして林幹事長代理は驚いたことに「いろいろと(二階俊博)幹事長も発言しているんだから、根掘り葉掘り、あまり党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」などと記者団をけん制したのだ。

自民党は「公党」ではなく、私的集団、任意団体であるとでも言いたいのだろうか。1億5,000万円の大半は政党助成金という公費(国民の税金)であり、取りざたされている内閣機密費(安倍政権7年間で78億円)からの拠出であっても、原資は国民の税金なのである。それを私的な党内問題であると言いなす。

このような政治家としての素養を欠いている人物に、なぜ自民党は幹事長代理のポストを与えたのか。これら一連の対応で、自民党はその支持層のなかから、きたる総選挙において、大量の忌避(反対投票行動)を出すことは疑いない。


◎[参考動画]1.5億円 相次ぐ“関与否定” 自民党内から「選挙戦えない」(TBS 2021年5月19日)

◆「自分ではない」という証言こそが、真犯人を明らかにする

林幹事長代理の問題発言はもうひとつ、二階幹事長の責任回避をするあまり、現場に責任をなすりつけたことだ。語るに落ちた、言わずもがなの内部暴露である。
「(二階が)幹事長をしていたのは事実だが、当時の選対委員長(甘利明)が広島を担当しており、細かいことは分からないということだ」と説明したのである。
これに甘利明が反論した。

「わたしは1億5,000万円には、1ミリも関わっていません。もっといえば、1ミクロンも関わっていない」「まったく承知していない」と明言したのである。

したがって、両者の言い分をまっとうに聞くならば、かれらのほかに1億5,000万円を河井陣営に調達した人物がいる、ということになるのだ。

林は「根掘り葉掘り聞くな」と言うが、知りたいのはメディアと国民だけではない。ほかならぬ自民党員たちが、最も知りたがっていることなのだ。

誰よりも「根掘り葉掘り聞きたい」のは、岸田前政調会長であろう。二階幹事長や甘利が関与を否定していることに対して、岸田はテレビ番組で不快感を示したのである。

すなわち、5月18日夜のBS-TBSの番組で、河井案里の当選無効にともなう4月の再選挙で自民候補が敗れた要因に「1億5,000万円が買収の原資に使われたのではないかという党への疑念があった」と敗戦の弁を語った。
さかのぼれば、岸田派と安倍政権の確執が、1億5,000万円の拠出と前代未聞の買収事件の発端だったのだ。

2019年の参院選挙では周知のとおり、岸田文雄政調会長に応援された溝手顕正(岸田派)への党本部からの入金は、わずか1500万円だった。これに対して、河井陣営には十倍の1億5000万円が入金されたうえ、安倍晋三総理や菅義偉官房長官が応援に入ったのである。とりわけ安倍事務所からの秘書団こそ、買収事件の先兵だったと言われている。

◆やっぱり犯人は官邸だった

もはや、1億5,000万円を拠出した犯人は、誰の目にも明白であろう。二階の「私は関係していない」も、甘利の「1ミリも関与していない」という証言も、官邸が勝手に動いたのだ。安倍政権(安倍晋三・菅義偉)こそ真犯人であると証言しているのにほかならない。

安倍が河井案里を擁立したのは、つぎの溝手顕正の発言が原因だったという。

「(安倍)首相本人の(参院選挙敗北の)責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」(2007年)

「もう過去の人だ。主導権を取ろうと発言したのだろうが、執行部の中にそういう話はない」(2012年2月)

自分に歯向かう者はゆるさない。反対勢力は排除するという、きわめて狭量な政治センスは安倍晋三らしいと評しておこう。


◎[参考動画]安倍総理「問題ない」河井案里議員に1億5,000万円(ANN 2020年1月27日)

◆菅批判を回避した二階

ところが、5月24日になって事態は急展開した。二階幹事長は24日の記者会見において、河井案里元参院議員の陣営に党本部が提供した1億5,000万円について「関与していない」とした先週の発言を修正したのだ。責任は「総裁(安倍晋三前首相)と幹事長(二階氏)にある」と述べたのである。

この発言は、かれの認知能力の低下によるものと指摘しておこう。菅政権への批判がそのまま、みずからの党内影響力に直結すると判断したからにほかならないが、現在の菅政権の危機的な状態(支持率30%に低減)をみれば、政治的立場の沈下は一蓮托生となるのは必至だ。

国民の80%が「中止」「延期」をのぞむオリンピックの強行開催によって、菅政権の命脈は尽きようとしている。それはまた、党内に圧倒的な影響力を誇示してきた二階俊博の政治生命をも、呑み込むかたちで終焉に向っているのだ。

生き馬の肝をぬく政治の世界で、堕ちた偶像は容赦なく叩かれる。アメリカの意向と官僚の不服従によって、一敗地にまみれた旧民主党政権の末期のごときありさまが、いまや自民党を覆っている。政権交代の流れをつくり出し、勝ち馬に乗る国民の投票行動をつくり出せ。


◎[参考動画]河井案里議員の豪華すぎる応援演説陣を学ぼう!【広島県】(2020年6月15日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

最新刊!タブーなき月刊『紙の爆弾』6月号

《NO NUKES voice》福井県高浜1、2号機、美浜3号機再稼働反対! 6月6日開催の「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」を多くの皆さんと共に! 尾崎美代子

新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないなか、国は老朽原発再稼働に向け、着々と準備を進めてきた。福井県高浜1、2号機、美浜3号機再稼働について、地元美浜町、高浜町は昨年内に同意、今年に入り杉本知事は、それまで議論の前提としていた、関電が使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を棚上げし、県議会に再稼働に向けた議論を要請し始めた。

4月6日、政府が、一原発あたり25億円の交付金を提示したことを受け、県議会は23日の臨時議会で、再稼働を求める意見書を可決、再稼働反対や慎重な議論を求める請願59件を不採決とした。再稼働容認の判断を一任された杉本知事は、27日、梶山経産相や森本関電社長らとオンラインで面談、28日再稼働同意を表明するに至った。

関電は、高浜2号機について5月再稼働を目指していたが、コロナ禍の人員不足などで特定重大事故等対処施設の工事が遅れ、動かしても、工事設置期限の6月9日以降停止しなくてはならないため、当面の間再稼働を断念するとした。

一方、設置期限が10月25日の美浜3号機については、6月下旬の再稼働を目指すとして、5月20日燃料棒の装荷が行われることとなった。当日、現地美浜町には関西を中心に50名が集まり、緊急の抗議行動が行われた。

美浜原発へデモ(撮影=Kouji Nakazawa)
美浜町役場前で発言する木原壯林さん

12時より美浜町役場前で始まった抗議集会で、木原壯林さんの発言。

「福島原発事故から10年たちましたが、未だに大勢の人たちが避難したままです。事故炉内部の詳細は未だ不明で、増え続ける汚染水は海に垂れ流されようとしています。原発は人類の手に負えないものでないことは明らかです。その原発が老朽化すれば、どれだけ危険か、よく御存じのことです。その美浜3号機に今日から燃料棒が装荷されます。
 美浜町や福井県はこの間、関電の事業本部長と会談していますが、美浜町の戸嶋町長は、競争入札をしない『特命受注』などの仕事をやるからと頼まれ再稼働に同意しました。
 杉本知事は、国から美浜原発に5年間で25億円の新たな交付金を貰ったと自慢気に再稼働に同意しました。全て金の亡者です。関電はそれよりもっと酷い亡者で、人々の安全・安心を蔑ろにして原発を動かそうとしている。
 3月18日の水戸地裁の判決でも明らかになったように、避難はとうてい無理です。美浜原発から28キロのところに琵琶湖があり、滋賀県、京都府、大阪府、岐阜県などの人たちは避難できないどころか、関西一円の人たちが放射能に汚染される可能性があります。
 今日はそういう意味でなんとしても燃料装荷に抗議し、6月下旬と言われる美浜原発再稼働に向け、反対の声をあげたいと思います。私たちがもし、ここで大きな行動をしなかったら、日本中の原発の60年運転を唯々諾々と許したことになります。
 日本の原発が60年超えて運転されることになれば、韓国もこれに見習うことになります。今日の闘いは、世界の原発を止める非常に重大な闘いであります。今日の闘いを出発にして、6・6大阪大集会を成功させ、なんとしても美浜原発を止めなければならないと考えます。

町内デモ(撮影=Kouji Nakazawa)
中嶌哲演さん

続いて、小浜市明通寺の中嶌哲演さんの発言。

「今朝、6、7時から美浜原発ゲート前で福井の仲間が抗議行動を行ってきました。今日は50名もの皆さんが関西から参加して下さり、本当に心から感謝申し上げたいと思います。
 昨年9月に美浜3号機、高浜1号機の安全対策工事が完了したとたん、国と関西電力は猛烈な攻勢を県議会、県知事にかけてきました。皆さんもつぶさに見ていただいた訳ですが、もう私は若狭、福井県民として憤ろしく悲しく情けなく、本当に恥ずかしい。関西の皆さんも、同じ感情を共有して頂いていると思いますが、しかし私たち若狭の人間にとっては、彼らの姿というのは半世紀前からあまり変わっていない。私には同じ光景をまた見てしまったという既視感があります。それも麻薬患者化している感があります。
 私はこれまで皆さんに『原発マネー・ファシズム』『国内植民地化された若狭』と訴えてきました。そういう抽象的な表現ではなかなかご理解できなかったかもしれませんが、今回の一連の美浜、高浜町議会、県議会、知事の情けない姿を見て頂いて、少しご理解頂いたのではないでしょうか。これは原発マネー・ファシズムに支配された側の姿です。
 きたる6月6日は、その原発マネー・ファシズム、国内植民地化を福井県に押し付けてきた支配者側の人たちに、どう鉄槌を加えていくのかが問われる集会になると思います。
 私たちは町議や県議、知事を恥ずかしく思っていますが、関西一円の皆さんも、関西電力がやっていることを恥ずかしがり、情けないと考え、なんとかこれを糺して頂きたいと思います。何故ならば、関電は株式会社で、筆頭株主は大阪市、第二か第三に神戸市が入っています。京都市はちょっとランク外ですが、そういう単なる純粋な民間企業ではなく、半官半民の株式会社である、その関電と国が二人三脚でこういうことを展開しています。
 そのことを6月6日に、関西の皆さんと認識を共有し、どういう闘いを展開し、最終的に原発ゼロに追い込んでいくかを一緒に考えていきたいと思います。まずその前哨戦として今日の闘いがあります。実行委員会の中でも『若狭の原発を考える会』の皆さんが、本当に地道に活動を重ねて、若狭と関西の架け橋を益々強く大きく作って頂いていることに心から感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

美浜町役場(撮影=Kouji Nakazawa)
河本猛・美浜町町議

最後に美浜町町議の河本猛さんの連帯アピール。

「5月17日の全員協議会で関電から再稼働の工程が示されました。原発の安全性を高めるなら、老朽炉にこだわる必要はなく、新型炉の検討をしてもいいと思うんです。しかし、新型炉の検討をすると、美浜原発は活断層にぐるりと囲まれた敦賀半島に立地しているので、新型炉を作ろうとして地質調査などをすると、3次元モデルで地下構造を分析しなければなりません。
 現在は40年以上前の老朽原発が存在しているので3次元モデルで地下構造の分析はしておらず、最新の技術で地下構造を分析すれば、当時わからなかった破砕帯や活断層、地下構造が明らかになる。だから新型炉でやろうとしたら、活断層に囲まれたこの場所では絶対に原発はできません。
 老朽原発より新型の方が安全性は高いに決まっています。そういう議論をしないで老朽原発を動かそうとしている。安全なんて考えていないのです。古くなればなるほど、巨大なエネルギーを制御して運用するコンクリートと鉄の塊は危険になる。重要施設は設備を替えるといいながら、原子炉容器など取り替えができない場所もあるのでつぎはぎだらけの巨大な施設になる。
 安全は何も担保されていない。それなのに言葉だけは『安全・安全』と言って老朽原発を動かそうとしている。それは科学的に間違っていると、私や松下議員は主張し、議会でも再稼働をやめるように訴えています。しかし、町長も議会も原発推進派が多いので地元同意を覆すところまではいきませんが、原発に反対する皆さんの声は、私と松下議員で伝えております。 原発を止める方法はいろいろあると思います。あらゆる手段を講じて原発を止めたい。皆さんとともに一緒にがんばります。」

美浜3号機は6月23日にも再稼働されると報じられている。その前段として、6月6日、若狭の原発の最大の電力消費地・大阪で「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」が開催される。多くの皆さんとともに「老朽原発うごかすな!」の声を上げていこう!

6月6日「老朽原発うごかすな!大集会in大阪」開催!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

【対李信恵訴訟控訴審報告】5・25控訴審(大阪高裁第2民事部)開始、一回で結審! 判決は7・27午後1時15分より! 私たちは逆転勝訴を信じ全智全能、総力を尽くした! どのような結果になろうとも悔いはない! 鹿砦社代表 松岡利康

当社が出版した「M君リンチ事件」(カウンター大学院生リンチ事件、しばき隊リンチ事件)関連出版物4冊と「デジタル鹿砦社通信」の記事について 一審(大阪地裁)では、李信恵の主張を一方的に認め、私たちに賠償金165万円と「デジタル鹿砦社通信」の一部削除を命じた不当判決に対して、鹿砦社は大阪高裁に控訴していました。この控訴審第1回弁論が、5月25日午前10時、大阪高裁で開かれました。

大阪地裁による不当判決のあと、論理的整合性のある判断を求め、私たちは、全智全能、総力を尽くしました。多くの方々が快く協力してくださいました。

弁護態勢は、当初からの大川伸郎弁護士に加え、元裁判官(大阪高裁にも勤務経験のある)で「日本裁判官ネットワーク」の中心メンバーとして司法を内部から変えようと長年にわたり献身された、良心的法曹人の象徴的な存在、森野俊彦弁護士に代理人として加わっていただきました。

次いで「控訴理由書」と共に「公平、公正で慎重な審理を求める要請書」を法曹、言論関係の専門家を中心に31名の皆さんより頂き、大阪高裁へ提出いたしました。

そうして心理学者・矢谷暢一郎先生(4月20日付けでニューヨーク州立大学名誉教授に任命)の「意見書」、また刑事事件でも数々の精神鑑定実績のある精神科医・野田正彰先生の「精神鑑定書」、さらには取材を手伝ってくれたジャーナリスト・寺澤有氏の「陳述書」、リンチ被害者M君の「陳述書」、加えて控訴人鹿砦社代表・松岡の「陳述書」などを提出しました。

これまでの判断基準では私たちの主張が裁判所に受け入れられないのではないか、と思慮し、松岡、寺澤氏、M君の証人申請も行いましたが、大阪高裁は「陳述書で事足りる」として、いずれも却下されました。

一審判決は、暴力を容認しリンチに加担する判決でした。M君は1時間近くにわたる殴る蹴るの凄絶なリンチによって記憶も曖昧になる中で、李信恵が出合い頭に「なんやねん、おまえ! おら!」とM君の胸倉を摑み(この事実は本人の証言で明らかです)殴り掛かりましたが、その最初の一発が「平手」か「手拳」かに異常に拘泥し、M君の記憶が変遷していることを理由に「信用できない」として李信恵の主張の全体を認めるという、まさに「木を見て森を見ない」判断となりました。この一部分で全体を判断されてはたまったものではありません。地裁の裁判官も、1時間ほどリンチを受けたらどうや、とさえ言いたくもなります。50発も60発も殴られて、正確に記憶している人などいないでしょう。

M君は一方的にリンチに遭い、この間、李信恵らは悠然とワインをたしなみ談笑するという修羅場でした。挙句に“名台詞”となった「死ぬんやったら店の中に入ったらええんちゃう」と言い放ち、リンチが終わるや、師走の寒空の下にM君を放置し立ち去っています。M君は必死でタクシーを拾い帰宅しましたが、血まみれのM君に驚きタクシーの運転手は料金を受け取らなかったといいます。

リンチ直後のM君の悲惨な顔[左]とこれに倣ってその後、ネットで流布された画像[右]。筆舌に尽くし難いネットリンチ! ここまでくると犯罪だ!
リンチ後になされたセカンドリンチの一例。「反差別」とか「人権」とかうそぶく者はここまでやるのか

◆リンチ被害者M君と出会って5年──

私たちがM君と巡り会ったのはリンチ事件から1年余りも経っていましたが、李信恵や彼女の周辺は事件の隠蔽を図り、それは成功するかに見えました。しかし、悪事は必ず発覚します。私たちは偶然にこの事件を知り救済を求めてきたM君に対して、救済・支援と真相究明に関わることにし、それから5年余りが経ちました。断ろうと思えば断れたかもしれませんが、この時の私の選択は間違いなかったと今でも思っています。

鹿砦社は特別取材班と共に地を這うような徹底した取材により、これまでに6冊の出版物にして世に問いました。マスメディアが李信恵を、あたかも「反差別」運動の旗手であるかのように表面的な虚飾を報じ、しかし凄惨なリンチ事件を報じない中、私たちの努力は、心ある少なからずの方々の琴線に触れ共感を得ることができた、との感触が確かにあります。

控訴審は一回結審となりました。私たちは大袈裟かもしれませんが、死力を尽くしました。また一審判決の誤判部分も明らかにしましたので、基礎的な読解力と論理に立脚すれば、即日結審であろうと、私たちに不利な判断はないものと信じます。もし敗訴があるとすれば、一審同様、法務局や大阪弁護士会がイベントの講師として招く李信恵に忖度した場合でしょう。

典型的な村八分行為「エル金は友達」活動。これでM君は精神的に滅入ったという
同上
これだけハッキリ言われるとは……。これをツイートした呉光現は某キリスト教組織の幹部。当然抗議したら腰砕けになった

私たちが問いかけたのは、差別の根源に関わる問いです。表層は若者に対するリンチ事件でありましたが、その深層にはさらに深刻な民族差別(在日コリアンに象徴的な)が横たわってはいないか? このことは何度でも繰り返したいと思います。私たちが取材を通じて知り合った在日コリアンの方々は、「差別」や「人権」を弄ぶ似非反差別主義者を強く批判され、李信恵やコリアNGOセンター幹部らのリンチ事件への狡い対応が、逆に在日コリアン全体が狡いという悪いイメージを増幅、拡大すると言われました(しかしみな報復を怖れ表立っては言えないと忸怩たる表情で語られました)。

詳しくはいずれ「デジタル鹿砦社通信」や続編出版物などで報じたく思っています。

判決がどうなれここで一区切りと言ってよいでしょう。これまで陰に日なたに応援していただいた皆様に深く御礼申し上げます。私も、特別取材班の中心メンバーたちも大阪地裁における不当判決以降、全力で突っ走ってきました。正直25日の期日のあとは、若干の疲れが出たことも事実です。

私はこの件が、きっちり片が付くまでは引退しません。引き続きご注目とご支援をお願いいたします。

【追記】傍聴に、リンチに連座した伊藤大介が来ていました。わざわざ関東から来たようです──彼は保釈期間中だと推察されますが、そうであれば移動制限はないのでしょうか。一審の裁判終了後、李信恵らと出掛け深酔いして深夜極右活動家を呼び出し暴行に及び事後逮捕→起訴→保釈、現在横浜地裁で非公開の争点整理が数回なされたとの噂を聞きました。

伊藤やしばき隊・カウンター界隈は箝口令を敷いているようで、その後の経過が判りません。ふだん饒舌な神原弁護士も一切ツイートしていません。一度のりこえネットの「NO HATE TV」で神原弁護士や、安田浩一、野間易通らは「伊藤の事件を伊藤が被害者であるヘイトクライムだ」と語っているのですから、無罪を確信するのであれば広く社会運動、反差別運動に於いて、きちんと公開し報告すべきでしょう。

伊藤の行為の司法的な処罰は、まだ結果が出ていないようですが、裁判が終わって飲み歩き、酒の勢いで気に食わない者を呼び出し暴行を加える──M君リンチ事件と同じ行動により事件が起こったことは間違いないのですから。蛇足ながら今回は、幸か不幸か非常事態宣言で飲み屋は営業していませんでしたが、果たして伊藤は何事もなく神奈川県平塚市の自宅に戻ったでしょうか。

昨年11月24日の一審本人尋問のあと同日夕方のSNS。これから数時間後の25日未明、伊藤らは極右活動家を呼び出し暴行、後日逮捕される

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 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『暴力・暴言型社会運動の終焉』