《スクープ》宮内庁職員も困惑する皇室結婚騒動の本音!

皇室の某女性が民間人の男性と結婚したいと、意向を明らかにしている。それに関しては一部報道で皇室から離脱するにあたり「持参金1億5,000万円」との報道もなされている。

そこで、一番身近にいる公務員である宮内庁へその内情を電話で取材した。

◆正直に回答してくれる宮内庁職員

宮内庁 はい、こちら宮内庁でございます。
佐野  恐れ入ります。今、ご結婚を予定されていらっしゃいます何とか様の一時金についてお尋ねをしたいのですが。
宮内庁 ちょっとお待ちくださいませ。
宮内庁 宮内庁でございます。
佐野  宮内庁のどちらの部署の方になりますでしょうか?
宮内庁 宮内庁の秘書課になりますが。
佐野  お名前をお尋ねしてもよろしゅうございますでしょうか。
宮内庁 ○○○○と言います。
佐野  恐れ入ります。教えていただきたいのですが、これは報道で見たのですけれども、今結婚を予定されている……
宮内庁 眞子内親王殿下と小室圭さんですね。
佐野  持参金というか……
宮内庁 皇室を離れるにあたっての一時金でしょうかね。
佐野  はい。それが一億いくら……
宮内庁 これは実際には皇室を離れることが決まった段階で、皇室経済会議というものが開かれましてそれで額も確定されるというような状況です。
佐野  前にですね……
宮内庁 黒田清子様ですね。
佐野  その時はおいくら…
宮内庁 1億5,000万円です。要は、皇族費という定額が3,050万円というものがあって、あとは皇族の身分を離れる方がどういうお立場かによって額が前後する。例えば、内親王なのか簡単に言えば女王なのか、天皇への近さによって違うわけです。
佐野  遠ければ、皇族でももっと額の安い方もいらっしゃる。
宮内庁 一番近い所では高円宮内庁様の三女絢子女王という方が守谷慧という方とご結婚されましたけれど、その方の時にはもっと少ない。あの方は女王というお立場なんですね。内親王ではなくて女王。これは天皇からの近さですね、何親等という、天皇から四親等以下(三親等以下の言い間違い?:取材者)は王、女王とするということがあるものですから。
佐野  それが適応されるのは何親等までなんですか。
宮内庁 皇族はみんな適応されます。そもそも皇族であれば皇族を離れる時には。皇族を離れるというのは基本女性皇族ですよね。


◎[参考動画]眞子さま「結婚」再延期を発表 小室圭さんと意思は変わらず(FNN 2020/11/13)

◆皇室でLGBTが発生したら!? 快活に笑って答えてもらった

佐野  仮に皇族で同性愛の方がいたら、皇族を離れるとなったら今の時代、ややこしね。
宮内庁 ああ、今は想定されてないんで。そういうことが実際にあれば考えなきゃいけないんでしょうけれど。
佐野  皇族で同性愛になったらちょっと困るね、宮内庁さんもね。
宮内庁 ハハハ、宮内庁なのか政府なのか。
佐野  ヨーロッパとかではあるじゃないですか、結構。
宮内庁 そうですね。普通にあるって言ったらおかしいですけれどね。
佐野  普通にあるって言ったらおかしいけれど、ないわけじゃないから。その時になって、この人と結婚認めるか認めないかといったら、またややこしい話になりますね。
宮内庁 そうですね。

◆祝福されない結婚と認識している宮内庁職員

佐野  ごめんなさい。お尋ねしたかったのはですね、額は結婚が決まった後に皇室経済会議で決まる。いずれにしてもそれは歳費から出されるわけですね。
宮内庁 国家予算ですね。
佐野  その国家予算から支出される根拠というのは皇室典範なんですか?
宮内庁 皇室経済法です。皇室経済法があって経済法施行法というのがあります。
佐野  週刊誌程度の知識しかないんですけれど、こういう人にお金を持っていってもいいのかしら。
宮内庁 こういう前例というのも変ですけれど、普通は皆さん祝福されてですね……
佐野  だいたい言っては何ですけれど、家柄もいい方が、宮内庁さんとも齟齬なくですね。
宮内庁 良好な関係とでも言いますかね。
佐野  皆さんが「よかったですね」というようなことが。
宮内庁 はい。
佐野  しかも一時金の中には「品位を保つために」という文言がありますね。
宮内庁 皇族であった者が皇族を離れたあとに品位保持のためにとなっています。
佐野  法律の文言なんですね。これは普通の人間にはちょっと理解しにくい概念ですね。
宮内庁 それはあるかもしれませんね。
佐野  貧乏人でも頑張ってる人もいっぱいいるわけですよね。その人たちに品位があるかないかということはわからないですけれども、品位を付けようと思ったらお金が必要だということが根拠になってお金が出るわけでしょ。ということは、お金がない人間は品位が保てないということの逆説的な意味も包含しますよね。
宮内庁 うーん。
佐野  品位があろうがなかろうが、もう別にいいんじゃないですか?結婚されたあと。
宮内庁 ふふふ、まぁそうですけれど。私がどうのこうのと言うことじゃないですけれど。
佐野  私は一納税者として申し上げているんですけれども、彼ら彼女らの品位のために私の税金が使われるということにはちょっとこれ違和感を感じざるを得ないですよね。
宮内庁 なるほど。はい。


◎[参考動画]秋篠宮さま 眞子さまの結婚「認める」(ANN 2020/11/30)

◆1億5,000万円出費への疑問に、同意する!宮内庁職員

佐野  だって結婚後の品位を保つために税金で保証してもらえる人なんてどこにもいないでしょ、皇族以外は。
宮内庁 そうですね。
佐野  私は品位のない人間だと自分で思ってますから、もうちょっと品位のある人間になりたいなと日々努力しています。こういうケースで、額がどうかはわからないけれど、1億5,000万って庶民にとっては小さな額ではない。今、電話でご担当いただいている方にしたってね。
宮内庁 当然当然そうです、はい。
佐野  で相手はあれでしょ、お母ちゃんが訳わからない、髪の毛を茶色く染めて、金を詐取してるかどうかわからないような、そういう相手の所に税金持ってくかもわからないという話でしょ、簡単に言ったら。
宮内庁 はい。
佐野  これ、宮内庁さんも困ってるんじゃないの?
宮内庁 私なんかはこうやって皆さんからの意見を伺って、上にあげている立場なんですが、実際に今回のことについての宮内庁の公式な見解は何なんですかと言われても、あんまりはっきり出てこないというか、われわれも聞かされていない。
佐野  出せないからでしょう。
宮内庁 まぁそういうことなんでしょうかね。
佐野  そんなに簡単に認められると逆に肩透かしなんですけれど(笑)。

◆「正直言ってうちの役所ってわかりにくいんです」

宮内庁 正直言ってうちの役所ってそういうところがあってなかなかわかりにくいんですね、こういうことが起きても。われわれこうやって電話を受けていますけれども、なかなか質問に答えられる材料がないんですよね、正直に言いましてね。
佐野  ちなみに宮内庁の職員の方というのは、公務員試験を受けて?
宮内庁 はい、公務員試験を受けてです。
佐野  一般の省庁ですと自分が志望したり、省庁の方から引っ張られたりということがあると思うんですけれど。
宮内庁 合格者名簿に名前が載って、自分が志望したり役所から声が掛かったりということです。
佐野  やはり他の省庁と同じなんですね。
宮内庁 私なんかは昔でいう初級試験、今だったら三種ですかね。だいたいうちの役所は変わっているところは、課長とか部長とか上の人たちは各省庁からの出向の方が多くて、プロパーの人は少ないんです。ちょっと特異な所ですよね。天皇陛下とかのお側付きの侍従とかっていうのも各省庁からの出向となっています。
佐野  侍従という方とか宮内庁内にいらっしゃる方は公務員の方もいらっしゃるけど、そうじゃなくてずっと家柄で継いでらっしゃる方もいらっしゃるでしょ。
宮内庁 そういう人は今はもうあまりいないですね。侍従っていうのは特別職で。
佐野  侍従はそうだけれども、侍従ではなくてお側でお世話なさる方、特に女性でお世話なさる方というのは?

◆縁故採用はいまでもある!

宮内庁 例えば侍従に対応する女性の女官というのがおりまして、この辺は縁故採用みたいな、女官は侍従と同じで特別職なんですね。あと、奥の女性職員、こういう職名は今はあまり外に対しては使わないんですが、女嬬とか雑仕とかこういう職員が身の回りのお部屋のお掃除をしたり洗濯をしたりという人はいますね。
佐野  そういう方は一般の試験で入ってくるわけではなく、ずっとお家柄で繋がっていたりとか。
宮内庁 いや、今はそうでもないですよね。あとは宮内庁中三殿という皇室の宮内庁中祭祀を司っている場所があるんです。これは皇室の私的な行為として今はなさっているのですが、そこに勤めている、例えば掌典であるとか女性の内掌典という、こういう人は公務員ではなくて、例えば天皇家のポケットマネーというんでしょうか、内廷費というのが年額で支給されているのですが、そういうところからその人たちの給与は支払われている。
佐野  そうですね。それは言ってみたら、向こう側の世界みたいなところがあるわけですよね。
宮内庁 そうですね。ちょっとわれわれとは全く違う世界です。
佐野  知りえないと言うことはないけれど、ちょっと違うルールで動いているところがあるわけですよね。
宮内庁 はい、そうです。
佐野  ありがとうございます。1億5,000万円というのはまだ決まってはいないけれども……。
宮内庁 これまでの慣例でだいたいこのくらいとか、たしか1億4千万円と書いている紙面もあったと思いますけれども、それは何かというと清子様の1割引きで1億4千万みたいなことを言われている。
佐野  1割引き、魚屋の閉店直前の割引みたいな言い方やね。
宮内庁 へへへへへ、それはですね、清子様は結婚する時に、平成の、ですから今の上皇様のお子様だった。眞子さまは秋篠宮内庁様のお子様であって、今の天皇は伯父様であって、そこらへんの違いで1割引きになるんじゃなかという、そういう判断です。
佐野  私は強い批判をしようと思ってお電話しているわけではなくて、教えていただこうと思ってお電話しているのですが、結構うるさい電話が掛かってくるんじゃないでしょうか。
宮内庁 はい。さっきもお宅様がおっしゃったように、小室さんの側にいろいろクリアにならない部分がありまして、こういう方の所に国民が納得していないのにどうしても結婚したいって言うんだったら「もう一時金は辞退してください」とか、「一切皇室とか関わらないでください」とか、そういう意見多いですよね。
佐野  そちらの方がむしろ多いということですね。
宮内庁 はい。ああいうお宅が皇室と縁続きになるのは許せないです、とか。要するにこれはずうっと親戚関係みたいなものが続くことになるわけですからね。
佐野  皇室を離れても小室さんという方は、言い方が悪いですが、利用できますもんね。
宮内庁 そうなんです、そういうことも言われるんです。眞子さまが何かの広告塔みたいなことにされて利用されて、金儲けの種にされるんじゃないのかとかですね。
佐野  少なくとも血族関係ではそういう関係ができるわけですからね。
宮内庁 これまでいろいろ週刊誌で言われてることを見てるととても許せないという方が多いですね。
佐野  今たくさん広報でお電話とか苦情とかいろいろあると思うんですけれども、受けていらっしゃって、なかなかお尋ねするのは難しいと思いますが、率直なところどうお考えになりますか、この件につきまして。
宮内庁 これはちょっと私の私見を申し上げるのはちょっとなんとも……。
佐野  お話伺っていると、だいぶ「かなわないな」というようなニュアンスが伝わってくるんですけれど。
宮内庁 これは仕事ですから。これも仕方ないとは思いますけれど、電話くださる方の中にも、単純に怒ってこられるというよりは、皇室のことを慮って、例えば眞子さまのことを心配してとか、そういう方もいらっしゃるので、それは真摯にお伺いしなきゃいけないなと思います。そういう感じはします。
佐野  ただその相手の方が週刊誌だけでなくて、実際金銭問題がまだクリアにならないから、それははっきりしてくださいというようなことを誰がおっしゃっていたのかな。
宮内庁 それは宮内庁の長官ですね。
佐野  宮内庁の長官が言うということは、宮内庁も疑念があるということでしょう。ああいうようなことをおっしゃることはないでしょう。
宮内庁 そういうものを少しでもクリアにしなきゃいけなんじゃないかということだったと私は推測するんですが、長官がおっしゃったことなんでね。
佐野  困ってらっしゃるというのは事実でしょう。大昔の明仁さんが美智子さんと結婚した時には、あんまりそういう話はなかったと思うんですね。
宮内庁 「みっちーブーム」とか。
佐野  テレビが売れたり、そういう感覚は今の話にはなさそうな気がするんですけれども。
宮内庁 それはそういう感じではとてもないと思います。われわれは職員で仕事ですから、淡々とご意見はご意見で伺って、というところですね。
佐野  やっぱり否定的な意見を言ってくる人が多いということですね。
宮内庁 はい、その方が多いです。
佐野  ありがとうございます。お忙しい中お邪魔いたしました。失礼いたします。
宮内庁 いえ、失礼いたします。

誠に誠実かつ正直ご回答いただけた、当該職員に頭の下がる思いである。質疑の内容については読者のご判断に委ねたい。


◎[参考動画]眞子さまと小室圭さん お二人のこれまで(ANN 2020/11/30)

▼佐野 宇(さの・さかい) http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=34

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

《書評》『NO NUKES voice』26号 松岡利康他「ふたたび、さらば反原連!」と富岡幸一郎×板坂剛の対談「三島死後五〇年、核と大衆の今」を読む

『紙の爆弾』も『NO NUKES voice』も、ほぼ毎回紹介記事を書かせていただいているが、提灯記事を書いても仕方がないので、すこしばかり批評を。なお、全体のコンテンツなどは、12月11日付の松岡代表の記事でお読みください。

 
『NO NUKES voice』Vol.26 《総力特集》2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を

今号は、松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志の「ふたたび、さらば反原連! 反原連の『活動休止』について」と富岡幸一郎・板坂剛の対談「三島死後五〇年、核と大衆の今」がならび、ややきな臭い誌面になっている。くわえて、わたしの「追悼、中曽根康弘」、三上治の「政局もの」という具合に、反原発運動誌にしては暴露ものっぽい雰囲気だ。

運動誌の制約は、日時や場所が多少ちがっても、記事のテンションや論調がまったく同じになってしまうところにある。いまも出ている新左翼の機関紙を読めば一目瞭然だが、20年前の、いや30年も40年前の紙面とほとんど違いがない、意地のような「一貫性」がそこにある。これが運動誌の宿命であり、持続する運動の強さに担保されたものだ。

そのいっぽうでマンネリ化が避けられず、飽きられやすい誌面ともいえる。その意味では『NO NUKES voice』も、編集委員会の企画にかける苦労はひとしおではないだろう。

◆記事のおもしろさとは?

暴露雑誌も運動誌も、けっきょくはファクト(事実)の新鮮さ。あるいは解説のおもしろさ、言いかえれば文章のおもしろさだ。

たとえば新聞記事は事件の「事実」を挙げて、その「原因」「理由」を解説する。わかりやすさがその身上ということになる。したがって、事実ではない憶測や主張は極力ひかえられ、正確さが問われるのだ。新聞記事は、だから総じて面白くない。日々の情報をもとめる読者に向けて、見出しは公平性、解説はニュートラルなもの、一般的な社会常識に裏付けられたものが必要とされるのだ。

これに対して、週刊誌は見出しで誘う。新聞やネットニュースの速報性には敵わないが、事件を深堀することで読者の興味をあおる。そして文章においても、新聞記事とはぎゃくの方法を採ることになる。事実ではなく、憶測から入るのだ。事実ではなく、疑惑から入るのだ。文章構成をちょうど逆にしてしまえば、新聞記事と雑誌記事は似たようなものになる。

じっさいに、わたしが実話誌時代に先輩から教えられたことを紹介しておこう。ある事実をもとに、それが総理大臣の親しい人物の女性スキャンダルだったら、見出しは「驚愕の事実! 総理官邸で乱交パーティーか?」ということになる。女性スキャンダルにまみれた人物と総理の関係を書きたて、いかに総理の周辺にスキャンダラスな雰囲気があり、あたかも総理官邸でそのスキャンダルが起きたかのごとく、そしてそれが乱交パーティーではないかという噂をあおる。その噂は「情報筋」のものとされ、最後に事実(他誌の先行記事=多くの場合週刊誌)がそれを裏付ける。

わずかな煙で、あたかも大火災が起きたかのように書き立てるのだ。これをやったら新聞記者はクビになるが、実話誌の編集者(実話誌に記者などいません)は、その見出しの卓抜さをほめられる。もちろん嘘を書いているわけではない。

では、運動誌でそんなことをやってもいいのか、ということになる。ダメです。はったりの実話誌風の見出しは立てられませんし、噂だけで記事をつくるのは読者への裏切りになることでしょう。

だからといって、おもしろくないレポートを淡々と書いていれば良い、というわけでもない。とりわけ市民活動家の場合は、書くことに慣れてしまっているから、ぎゃくに文章を工夫しない癖がついている。できれば、わたしの実話誌崩れの悪文や板坂剛の破天荒な文章から、よいところだけ真似てほしいと思うこのごろだ。

それほど難しいことではない。たとえば「ところで」「じつは」「信じられないことだが」「あにはからんや」という反転導入で、読者を思いがけないところに連れてゆく。いつも読んでいる週刊誌のアンカーの手法を真似ればよいのだ。

◆反原連による大衆運動の放棄

記事の批評に入ろう。

松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志の反原連への批判、とくにその中途半端な活動停止宣言への批判は、いつもながら凄まじい。ひとつひとつが正論で、たとえばカネがなくなったから活動をやめるという彼らは、福島の人々の被災者をやめられない現実をどう考えるのか。あるいはなおざりな会計報告、警備警察との癒着という、市民運動にはあるまじき実態を、あますところなく暴露する。

これらのことは首都圏の運動世界では公然たる事実になっているが、全国の心ある反原発運動に取り組む人々に発信されるのは、非常にいいことであろう。少なくとも運動への批判、反批判は言論をつうじて行なわれるべきものであって、絶縁や義絶をもって関係を絶つことは、運動(対話)の放棄にほかならない。

松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志「ふたたび、さらば反原連! 反原連の『活動休止』について」(『NO NUKES voice』26号)

◆デマやガセこそが、仮説として研究を推進する

富岡浩一郎と板坂剛の対談「三島死後五十年、核と大衆の今」にある、25年ぶりの対談というのは、文中にあるとおり鈴木邦男をまじえたイベントいらいという意味である。

富岡幸一郎×板坂剛《対談》「三島死後五〇年、核と大衆の今」(『NO NUKES voice』26号)
 
三島由紀夫の割腹自殺を報じる1970年11月27日付けの夕刊フジ1面(板坂剛さん所蔵)

じつは当時、夏目書房から板坂剛が「極説・三島由紀夫」「真説・三島由紀夫」を上梓したことで、ロフトプラスワンでのイベントになったのである。板坂が日本刀を持参し、鈴木邦男の咽喉もとに突き付けて身動きさせないという、珍無類の鼎談になったものだ。

板坂は「噂の真相」誌でたびたび、三島由紀夫の記事を書いていたので、おもしろい! こいつはひとつ、本にしてみたら。というわけで、夏目社長とわたしが岡留安則さん(故人)に連絡先を訊き出し、初台にあったアルテフラメンコの事務所に板坂さん(このあたりは敬称で)を訪ねたのを憶えている。富岡さんはすでに関東学院大学の教授で、イベントそれ自体を引き締める役割だった。

今回の記事は、いまや鎌倉文学館の館長という栄えある役職にある富岡幸一郎が、三島研究においては独自の視角から、いわば暴露主義的な業績を積んできた板坂の投げかける警句に、やむをえず応じながらそれを諫めるという、妙味のあるものとなった。

たとえば、ノーベル賞作家川端康成の晩年には、いくつかの代筆説がある。在野の三島研究者・安藤武が唱えたものだが、「山の音」「古都」「千羽鶴」「眠れる美女」を代筆したのが、北条誠、澤野久雄、三島由紀夫だというのだ。当時、川端康成は睡眠薬中毒で、執筆どころではなかったと言われている。真相はどうなのだろうか?

注目すべきことに、いまや三島研究の権威ともいうべき富岡も「『古都』の最後はそうかもしれない」と、認めているのだ。ガセであれデマであれ、それが活字化されることで、本筋の研究者たちも目を皿にして「分析」したのであろう。それは真っ当な研究態度であり、作品研究とはそこまで踏み込むべきものである。あっぱれ!

わたしの「中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪」は、知識のある方ならご存じのことばかりだが、史料的に中曽根海軍主計少佐の従軍慰安所づくりは、ネトウヨの従軍慰安婦なかった論に対抗するネタとしてほしい。中曽根が原発計画を悔恨していたのも事実である。もって瞑目すべし。

富岡幸一郎さん(右)と板坂剛さん(左)(鎌倉文学館にて/撮影=大宮浩平)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

“Go To 停止”発表直後に国民の血税で豪遊する菅義偉ポンコツ総理のトホホ晩餐会 ── 言行不一致の末、感染防止「勝負の3週間」の敗北が確定 横山茂彦

トホホである。国民には5人以上の会食を禁じていながら、みずからは連日5人以上で豪華な会食をくり返しているのだ。過去の話ではない、今日も明日も、このポンコツ総理は国民の血税で豪遊するつもりなのだ。

これで政権が宣言していた「勝負の3週間」は敗北した。ほかならぬ政権の責任者が国民に命じた禁止事項を犯すことで、感染者は最大値を記録し、敗北が明確になったのだ。


◎[参考動画]“GoTo停止”発表直後に・・・総理ら8人でステーキ会食(ANN 2020年12月16日)

とりあえず、12月14日夜のことを再確認しておこう。その愚行の、直接の原因も明確なのである。

Go Toトラベルの一時中止を宣言したあと、菅総理は二階派の幹部らの猛反発をうけたという。

「Go Toトラベルがどれだけ旅行業界に寄与していたのが、菅首相はわかっているのか。救われた旅行業界、ホテル、お土産店、交通関連の会社などがどれだけあるのか知っているのか。それも一番の稼ぎ時、年末年始には全国で停止。どれだけ多くの人が頭を抱えているのかわかっているのか。中止なら、業界への金銭的支援策とセットでやるべきだ。なんのバックアップも発表せずに、中止だなんて、二階幹事長の顔に泥を塗るようなものだ。『誰のおかげで総理になれたんだ』『もう次はないぞ』と派閥から強硬意見も飛び出した」(二階派幹部の言葉、週刊朝日取材班)。

これはもう、猛反発といえるだろう。

したがって、二階俊博がセッティングしたステーキパーティー(政権幹部のほか、杉良太郎、王貞治、みのもんたらが参加)に、参加しない選択肢はなかったのである。

この夜、ホテルニューオータニで財界人(青木拡憲AOKIホールディングス会長ら15人)との会合のあと、報道陣を従えながら銀座のステーキ店に向かったのだった。そこで40分、ステーキコースを堪能したらしい。一人あたり7万円といわれる会食をすることで、国民への訴えをみずから反故にしたのである。

「5人以上はダメ」と国民に訴えていた西村コロナ対策大臣は、国会で「一律に5人以上はダメということではない」などと、苦しい答弁を余儀なくされた。

いや、そもそも菅総理の密会合は、毎朝の番記者たちとの朝食に始まり、夜は深夜にもおよぶ5人以上の会食で埋め尽くされているという。コロナ感染者数が最高に達し、重症率・死亡率が高水準に達している認識が、この男にはつゆほどもないのだ。


◎[参考動画]“勝負の3週間経過”“ステーキ会食”受け菅総理(ANN 2020年12月16日)

◆Go To中止を躊躇した理由

Go To トラベルについての、分科会での専門家提言と菅総理の認識は真逆である。「移動することで感染が拡大するエビデンスはない」というのは、いうまでもなく「感染しない」というエビデンスも存在しない。すなわち、感染経路の不明が過半数をこえる実態を踏まえたものではない。

そもそもGo To事業の公募期間は、5月25日から6月8日までのわずか2週間弱しかなかった。このことは、全国を対象とする大規模な事業であるため、事前に周到な準備がなされていたはずである。そしてこの事業を引き受けたのは、持続化給付金事業にも関わっている大手広告代理店などが出資する会社だったのだ。その意味では、Go Toは観光業界、飲食業界への経済刺激である以前に、政財界を巻き込んだ利権構造だったのだ。なぜGo Toを止めないのか、国民が抱いていた疑問の先には、利権政治があったのだ。


◎[参考動画]菅総理 ネット番組の発言から一転“GoTo”見直しへ(ANN 2020年12月14日)

◆ジリ貧の支持率とポンコツ答弁

12日には毎日新聞と社会調査研究センターが、全国世論調査を実施している。菅内閣の支持率は40%で、11月7日に行った前回調査の57%から17ポイント下落したという。不支持率は49%(前回36%)で、菅内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは初めてだ。

政党支持率は、自民党が33%で前回の37%より低下した。
立憲民主党12%(前回11%)
日本維新の会8%(同6%)
共産党6%(同5%)
公明党3%(同4%)
れいわ新選組2%(同3%)
国民民主党1%(同1%)
社民党1%(同0%)
NHKから国民を守る党1%(同1%)
「支持政党はない」と答えた無党派層は31%(同31%)だった。

就任当初からの学術会議への政治介入、国会では秘書官のメモ抜きには答弁できないポンコツさ、そしてGo To継続による感染率の増大。いや、無策というべきであろう。とりわけ、ほとんど自分だけでは記者会見できない、政治家としても無理なのではないかと思われるポンコツぶりは、ひろく国民も知るようになってしまった。

たとえば12月4日に、総理就任後2カ月半ぶりの記者会見を行なった。2カ月半も、国会答弁は別として国民から逃げ回っていた人物に、総理という資格があるものだろうか。

そしてその会見は、当日の朝9時半に各報道機関への告知と受付がはじまり、締め切りが2時間後の11時半。つまり、官邸記者クラブいがいは事前に準備していなければ参加できない、ほぼ身内の会見だったのだ。総理がパンケーキで手なづけている記者クラブ以外、フリーの記者は抽選による参加である。

しかもその会見の態様が、記者クラブのよる出来レースだったのだ。事前に官邸広報から「訊きたいことはありますか。ご興味があるテーマは?」などと各社に打診があり、それに応じた社から質問が許されるという、およそ官製会見ともいうべきもので、菅総理はひたすら事前に用意したメモを朗読するのだ。これほど答弁応力がないのは、鈴木善幸総理(寝業師で、表に出る人物ではなかったと評されている)以来ではないか。

じっさいに、フリーの立場で質問ができたのは安積明子だけだった。その安積なる人物は『野党共闘(泣)。―学習しない民進党に待ち受ける真っ暗な未来―』『“小池”にはまって、さあ大変! ―「希望の党」の凋落と突然の代表辞任―』などの著書で、ほぼ一貫して野党叩きの立場で自民党を応援している「政治ジャーナリスト」なのである。

いま、医療関係者は春以来の激務に疲れ、医療施設そのものがコロナ患者の受け入れによって経営的にも疲弊している。医師、看護師は家族以外との接触を禁じられ、複数人での会食などもってのほかとされている。その精神的、肉体的な疲労困憊は想像以上のものがあるだろう。そんな国家国民が危急存亡のときに、みずから国民に禁じた5人以上の会食を、夜な夜な行なっている政権責任者に、その資格があるのだろうか。


◎[参考動画]菅首相×有働「8人で会食」ナゼ? “新型コロナ”全部聞く(日テレNEWS 2020年12月16日放送「news zero」より)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

《NO NUKES voice》「原発には先がない」と思う人たちが増えている原発立地、福井県・美浜町の今とこれから ── 脱原発町議の松下照幸さんに聞く

2012年6月、福島の原発事故後、初めて再稼働の是非を審議していた福井県おおい町議会で、議長(当時)が取材陣にコメントを求められた際、ふざけて「一言だけ……『あ』。」と答えたことがあった。議長はその後不謹慎だったと辞任したが、全国から注目される原発再稼働が、こんな人たちに決められているのかと驚いたことを覚えている。


◎[参考動画]一言だけ「あ」とコメントのおおい町議長辞任へ(ANN 2012年6月13日)

再稼働を決める原発立地の町議会、しかしそこには必死で止めようと闘う議員もいる。そのお一人、美浜町の松下照幸議員に、議会について、原発の立地する美浜町の今、そしてこれからについてお話を伺った。(聞き手・構成=尾崎美代子)

◆もんじゅの下請企業の元職員が議長を務める美浜町議会

美浜町議員の松下照幸さん

── 老朽原発の美浜3号機の再稼働にむけて美浜町議会はどう動いたのでしょうか?

松下 美浜町議会は議員が14名います。議長は元もんじゅの下請企業の職員、あと関電OBが一人、土木関係の仕事をしていた議員などがいます。みな行政とつながっています。2年前、僕が3期目の1年頃などは、僕が発言するとすごいヤジが飛びました。その後私の存在が認められたのか、ヤジは飛んでいません。

12月4日に大阪地裁判決がでましたが、12月3日に僕は一般質問で老朽原発である美浜3号機の再稼働には反対と訴えました。地域の人から「松下さん、よかったね。判決が出てからだと後追いと思われるが、出る前にやったので値打があるね」といわれました。各家庭にケーブルテレビが入っていて、議会の様子が放映されます。これが大きい。僕らも一般質問に力をいれて、何日もかけて原稿をつくります。

一般質問への返答は、敦賀に常駐する規制委員会の人と相談して書いているのではないかと推測していますよ。あとややこしい質問の返答は、関電と相談していると思いますね。12月議会は6人やって、僕と河本(猛)議員は1時間びっしり、時間オーバーするくらいやりました。議長もいつもは止めるんですが、今回は少しだけやらせてくれましたね。

雪降る中、再稼働反対を訴えて、美浜町役場前に集まった人びと(写真提供=橋田秀美さん)

◆行政とつながる業者・関係者たちが「再稼働推進」を請願する

── 再稼働推進の請願を出したのはどういう人たちですかね?

松下 原発利権や行政発注工事とつながる業者、観光協会や商工会、区長関係からの請願書を推進側は2本にまとめて出しました。反対側は10本ほどだしました。僕は中嶌哲演さん(小浜市の明通寺住職)、木原壯林さん(若狭の原発を考える会)、全国の議員連盟234人の方の請願、そして美浜3号機の件で規制委を訴えた名古屋地裁での裁判のものが1本。それらを紹介議員として請願ごとに説明しました。

共通点として老朽原発を動かすなということ、あとは関電のコンプライアンス、ガバナンス問題などです。規制委は原発を安全に動かす仕組みをつくるといいますが、名古屋地裁の裁判の内容をみると、かなり手抜きをしていることがわかります。基準地震動も過小評価しているし、圧力容器のデータの問題でも関電のいいなりで、基本となる原データの公開を頑なに拒んでいる。それを認めたうえで再稼働を容認しているわけで、今後大阪地裁の判決が名古屋の裁判にも影響していくと思います。規制委は安全を保証する組織ではなく、福島の事故前の原子力安全保安院とよく似た事態に陥っていると思います。

同上(写真提供=橋田秀美さん)

◆原発があることの不安と、なくなることへの不安

── 町全体は、不安だが再稼働するしかないという感じですか?

松下 いや、ぼくが町を回っている感じでは、原発があることの不安と、なくなることへの不安とが半々だと思うね。ただ、町民の皆さんも大阪地裁の判決には驚いたようですね。判決後、全員協議会で関電と規制委の説明会がありました。本当はそれ抜きに、9日の原子力発電特別委員会で採決の予定でしたが、前日に説明会があり、大阪地裁の被告・規制庁が、議員全員に判決の不当性を訴えていました。判決は本意ではないと。

僕らは、規制委が判断した内容には問題があるし、自分たちが決めたガイドを守らなかったから問題だと判決はいっているので、なぜそれをやらなかったのか?と質問しました。規制委員会は、平均値やバラつきについては検討しなかったが、その他の要因の部分はきちんと検討している。地裁判決はそれをみていないという答弁でした。

── しかし判決の効力は最終的な結論が出るまで発揮されませんね。

松下 彼らは裁判の正当性や是非が問題ではなく、再稼働を続けることが最大の関心ごとだと思う。そのために控訴する。だけど上訴しても、動かすことに関して一定の理由があれば差し止めも可能という判決が、伊方原発の最高裁判決で示されている。彼らは、上訴すれば何年かけても再稼働できるというのを狙っているが、こちら側にも別の方策があるということです。最高裁判決は覆すことができないから。こういう問題があるから、基準地震動の見直しやデータのばらつきの問題を見直さないと、大きな地震がきたときに破壊されてしまうと理論的にやっていく裁判になるといいですね。

12月9日美浜町議会原発特別委員会で、再稼働を求める請願2件が採択され、反対を求める請願10件が否決された。関電原子力事業本部へ向かうため、美浜駅に集まった人たち(写真提供=河本猛美浜町議)

◆「原発には先がない」と知っている地元企業関係者

── あと、使用済み燃料の置き場を県外へ作る問題も決まっておらず、そう簡単には再稼働はできないでしょうね。関電の原発マネー不正還流事件については町の人の反応は?

松下 美浜町は、「あれは高浜の問題で美浜は関係ない」と宣伝しています。美浜原発とつながる地域の大手土木会社が、森山元助役に月50万か払っていたそうです。町は「美浜は関係ないから調査もしない」と言うが、問題ないなら、調べて問題ないというのが筋だが、最初からやらないということは、やっぱり臭いものに蓋をしたいということの状況証拠になりますね。あと美浜には、森山さんのような、関電と直接交渉するようなボスはいなかった。

── 再稼働しないとなると、困る人は多いでしょうか?

松下 困る会社もあるが、ただ田舎は仕事がなくなってもクッションがあってね。僕ら団塊の世代も原発で働いていたが、仕事がなくなって会社が倒産しても、大きな問題にはならなかった。定検短縮などで単価がどんどん切り下げられてきた。ある末端の経営者が僕を探し出し「非常に厳しい」という内部告発をしてくれました。関電の秋山会長の頃ですが、そのあたりから単価が切り下げられ、地元企業もなかなか利益をだせない、そういう状況なのでみんな「原発は先がない」と知っていた。再稼働できなくて、相当ひどい反発があるかといえば、それはない。銀行も調査していますが、そんなに影響はないというようだったようです。マスコミは一部の「困った。困った」という業者は取り上げるが、それ以外は取り上げない。原発に入る業者は設備関係ですが、違う仕事を取りにいくなどしているようですね。

── 私は原発の再稼働には反対ですが、地元の人は困るだろうなと思っていましたが?

松下 もうみんな原発に先はないなと思っていますよ。昔と金のまわり方が違う、どんどん単価を下げている。定検短縮で入れる業者も絞られていく。昔はいい加減な会社も入れたが、被ばくしてなんぼの仕事なので、単純作業が多いからね。

── 私の住む釜ヶ崎から原発の仕事に行った人がいるはずですが、ほとんど聞かない。厳しい緘口令が敷かれているからですかね?

松下 僕らが町で原発の学習会をやったとき、原発の仕事をする知り合いが来てくれた。話のあと、彼が前に出て「自分たちはこういう風にして問題を隠した」と具体的な話をしてくれた。その後、彼は仕事を貰えなくなったからでしょうか、町から出ていきました。これは都会の人が考えているより、相当厳しいですよ。

── 今日はどうもありがとうございました。

美浜町議会は、12月9日、原子力発電所特別委員会で再稼働を求める区長会や推進団体らの請願2件を賛成6、反対1で採決、15日の本会議でも採決された。しかし町には「原発に先はない」と思う人たちが増えていることも事実。一部の人たちの利権のためだけに、末端の被ばく労働者に犠牲を強いて、危険な老朽原発を動かすことは許されない!!


◎[参考動画] 原発廃炉後の美浜町の未来を見つめて 松下照幸さんのお話を聞く会(CNIC 2013年12月13日)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

『NO NUKES voice』Vol.26《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

『NO NUKES voice』Vol.26
紙の爆弾2021年1月号増刊
2020年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 2021年・大震災から10年
今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

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《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
樋口英明さん(元裁判官)
水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
[司会]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)

[インタビュー]なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
被ばく労働の実態を掘り起こす

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
どの言葉を使うかから洗脳が始まってる件。「ALPS処理水」編

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発災害の実相を何も語り継がない  「伝承館」という空疎な空間

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈10〉 避難者の多様性を確認する(前編)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈20〉五輪翼賛プロパガンダの正体と終焉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
東電福島第一原発の汚染水「海洋放出」に反対する

[報告]松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志
ふたたび、さらば反原連! 反原連の「活動休止」について

[対談]富岡幸一郎さん(鎌倉文学館館長)×板坂剛さん(作家・舞踊家)
《対談》三島死後五〇年、核と大衆の今

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が放射能汚染水の海洋投棄と原発の解体、
再処理工場の稼働と放射性廃棄物の地層処分に反対する理由

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述家)
中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
やがてかなしき政権交代

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
誑かされる大地・北海道
人類の大地を「糞垂れ島」畜生道に変えてしまった“穢れ倭人”は地獄に堕ちろ!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈10〉人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
原発反対行動が復活! コロナ下でも全国で努力!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
《伊方原発》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《高浜・美浜》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《規制委・環境省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京電力》佐々木敏彦さん(環境ネット福寿草)
《東海第二》小張佐恵子さん(彫刻家、いばらき未来会議、福島応援プロジェクト茨城事務局長)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表)
《福島第一》片岡輝美さん(これ以上海を汚すな!市民会議)
《地層処分》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関西電力》老朽原発うごかすな!実行委員会

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

長澤まさみが演じた「史上最悪の毒母」、服役中の文通で見せた「知られざる素顔」

タイトルに「毒親」と入った本が続々と発売されるなど、今年も続いた毒親ブーム。そんな中、7月に公開され、話題になった映画が長澤まさみ主演の『MOTEHR マザー』だった。

同作は、2014年3月に埼玉県川口市で起きた、当時17歳の少年による祖父母殺害事件が題材。少年の母親の毒親ぶりに世間の注目が集まったのは、同年12月、少年の裁判員裁判がさいたま地裁で開かれた時だった。

当時の報道によると、母親は少年を学校にも通わせずに働かせ、赤ん坊だった娘(少年にとっての妹)の世話も少年に任せ、自分自身はホストクラブに通う日々。その挙げ句、少年に「殺してでも、金を借りてこい」と示唆し、自分の両親(少年にとっての祖父母)の家に向かわせ、少年が本当に祖父母を殺害する事態を招いたように伝えられた。

母親も自分の裁判で懲役4年6月の判決を受けたが、少年の裁判の結果はそれよりはるかに重い懲役15年。そのことが同情的に報道されたりもした。

実を言うと、私はこの母親が札幌刑務支所で服役中、彼女と手紙のやりとりをしていた。その実像に触れると、「史上最悪の毒母」という世間的なイメージとは少し異なるところもあった。ここで少し紹介してみたい。

この事件を題材にした長澤まさみ主演の映画『MOTHER マザー』の公式HP

◆凄まじかった本の差し入れの要求

「長澤まさみさんが私の役をやって、事件のことが映画になるみたいで……今テレビで初めて知ったんです! どうにかならないでしょうか……」

今年6月中旬のある日、久々に電話してきた彼女は焦った口調でそう言った。上記の映画『MOTHER マザー』が7月から公開されるのを知って驚き、その勢いのままに私に電話をかけてきたのだ。

「もう映画の公開をとめられないですよね……」

彼女は電話口で嘆いていたが、要するに映画により世間の人たちが自分のことを思い出すのがいやなのだ。公開が間近に迫った映画の公開をとめられないかと発想すること自体、やはり思考回路が少し変わっている人ではあるのだろう。

実際、服役中に手紙のやりとりをしていただけでも、彼女は毒親らしさを感じさせることがよくあった。とくに印象に残っているのは、本の差し入れの要求がすさまじかったことだ。手紙に毎回、石田衣良、新堂冬樹、誉田哲也など、好きな作家の名前とその作品名を連綿と綴ったうえ、〈来月(12月)のクリスマス前までぐらいに古本でいいので、送ってもらえないでしょうか?〉〈出来たら、年末年始の休みになる前に単行本(小説本)を送ってほしいのです〉などと自分の都合最優先で一方的にせがんでくるのだ(〈〉内は彼女の手紙から引用。以下同じ)。

小説以外にも、女性がよく読む『LDK』という雑誌やクロスワードパズルの本、フリーペーパー、求人誌など、彼女は何ら遠慮なく次々に欲しい物の差し入れを求めてきた。このほかにも、生活支援の受け方を調べて欲しいとか、出所後に東京に帰る交通手段を教えて欲しいとか、よくそこまで頼めるな……と思うほど、本当に頼みごとが多かった。

報道では、彼女は事件前、生活費をあちこちに無心していたようにも伝えられていた。実際に彼女と付き合ってみて、ああいう報道はやはり本当だったのだろうと思ったものだった。

事件の現場になった祖父母宅

◆手紙に綴ってきた「母親としての愛情」

一方、彼女は人懐っこいところがあった。たとえば、手紙で唐突に、〈顔は若い頃、おにゃん子の内海って言われたな~(笑)最近は友近って、言われた時もありました。性格は明るい、天然で、ちょっと短気の時も〉などと自己PRみたいなことを書いてきたことがある。

そうかと思えば、出所後に私と会いたいと切り出し、〈お酒、飲みに行きたいですワ~、カラオケも。私カラオケ大好きだったから〉などと、てらいもなく綴ってきたこともあった。事件前の彼女は男が絶えなかったように報じられていたが、それはこういう小悪魔的な性格があってこそだろう。

彼女は裁判の際、少年に「殺してでも、金を借りてこい」と示唆したことを否定したと報じられたが、私に対しても改めてそう主張した。

彼女の主張をそのまま記せば、〈弁護士が私を悪く言っているとか、本人(息子)も怖くなって私のせいにしているんだって検事さんがそう言っていました〉〈ありもしないことを言われ、本当に我慢しました。本当にショックで仕方なかったです〉ということになる。

このあたりの真相がどういうことだったかは、私にはわからない。ただ、彼女は少年に対し、母親としての愛情をまったく有していないわけではないように思われた。

〈息子のこと大好き。離れたことも一度もなかった〉

彼女は手紙にそう書いてきたことがある。実際、彼女は仕事をせず、金がないために野宿した時期も少年を自分の両親に預けたりはせず、一緒に過ごしていた。それが少年本人にとって幸せなことだったか否かはともかく、彼女としては息子と一緒にいたかったのは確かだろう。

もっとも、服役中は「出所したら、息子に会いに行きたい」という趣旨のことを手紙に綴ってくることもあったが、出所後に実際に息子に会ったという話は聞かない。息子との縁はもう切れているか、あるいは服役先の刑事施設に面会に行っても、拒絶されているのかもしれない。


◎[参考動画]映画「MOTHER マザー」予告編(出演:長澤まさみ)

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。分冊版の第13話では、林振華を取り上げている。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

自動車社会に警鐘を鳴らす二つの暴走老人裁判の行方 ── 元東京地検特捜部長の石川達紘被告と元通産官僚の飯塚幸三被告

◆コンピュータは「絶対ではない」と強調──石川達紘被告

11月26日、暴走死亡事故の被告・石川達紘被告(81歳・弁護士・元東京地検特捜部長)の裁判が大詰めを迎え、最終意見陳述が行われた。起訴内容は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)である。

石川達紘被告

その陳述の中で、石川被告はこう述べた。

「若い頃、ロッキード事件がありまして──」

事件とは無関係のことだが、さらに裁判長に向かって、こうつづけた。

「『新しい飛行機は不具合が生じる』『コンピューターは絶対ではない。最後は人が操作するのだ』と聞いた。釈迦に説法ですが、そのことを申し上げたい」

周知のとおり、ロッキード事件は石川被告が若いころに捜査にかかわった事件である。その「業績」を裁判長におもんぱからせながら、コンピュータは絶対ではないと強調したのである。

石川被告の事件後の言動を再録しておこう。

「はやくここから俺を出せ!」※通行人に向かって、被害者(死亡)を気遣うこともなく、自分の救出を命じたのだ。その上級国民ぶりはすごい。

そして、「車に不具合があり勝手に暴走した。(石川の)過失はなかった」「自分ではなくクルマが悪い(故障した)」と、今日まで明言している。事件の日、石川は若い美女とゴルフに行く途中だった。

◆被害者遺族への謝罪なし──飯塚幸三被告

12月3日、暴走事故で9人を死傷させた(死者2名)被告・飯塚幸三の裁判も、証人調べの段階に入った。この日は現場に居合わせた3人のドライバーが証言台に立ち、飯塚被告のクルマが「加速していった」「ブレーキランプは点いていなかった」と、それぞれ証言した。3人は飯塚被告のすぐ後ろを走っていた証人である。警察の実況検分でも、ブレーキ痕はなかったことが確認されている。

飯塚被告の事件後の言動も再録しておこう。

「アクセルがもどらなかった」「フレンチ(食事の予約時間)に遅れるから急いだ」「メーカーは老人が安全に乗れる自動車を造るよう、心がけてほしい」
であった。

3人の証人の証言が明らかになった公判後、松永真菜さん(当時31)と長女・莉子ちゃん(当時3)を亡くした遺族の松永拓也さんは、報道陣の取材にこう答えている。

「あくまで私の印象ですが。最初は(飯塚被告が)私の方を見ているのかなと感じました。ただ、現場の状況を示す地図がモニターに映った時だけ顔を上げていました。この方は私を見るのではなく、おそらくこの事故が自分に有利になるには(どうすればよいか)ということ、自分の裁判の行方に頭を巡らせていたのではないかと感じました。モニターから地図が消えた時には目を伏せていました」

「前回(10月8日)の初公判では、私の調書が読み上げられた時には一度も顔を上げませんでした。今日は地図が出た時には顔を上げていました」

「この方は私たち遺族のことは頭にないんだなと思いました。(遺族の顔を)見られないというのもあるかもしれませんが」

 と、被告と心が通じないもどかしさを語った。

「私は裁判前からずっと、2人の命と私たち遺族の無念と向き合ってほしいと言い続けていますが、現在もそれは感じられません。私も残念です」

「淡々と自分の裁判をこなしているような印象を受けてしまいます。入廷時、退廷時も目線を合わせることはありませんでした」

そして、証言についてはこう語ったという。

「証言してくださった方々の言葉は非常に重いものでした」

被告の無理な運転で亡くなられた犠牲者、被害者遺族の思いを考えると、暗澹たる気分になる。飯塚被告は、松永さんに正式な謝罪もしていないのだ。自分の責任ではないのだから、当然だと考えているのだろうか。


◎[参考動画]池袋事故裁判 後続ドライバーが語る事故の衝撃(TV東京 2020年12月4日)

◆オートマのミッション故障は起きるのか?

ふたつの裁判の争点は、石川被告と飯塚被告が、ともに「アクセルがもどらず、ブレーキが効かなかった」「オートマチック(コンピュータ)の故障ではないか」と主張しているところにある。それでは、じっさいにギアミッションのコンピュータは故障するものなのだろうか?

踏み間違いではない、オートマギアの故障による事故は起きていない。正確に言えば、これまでに立証されていない。だが、理論的にはありうるという。

ガソリンエンジンの自動車の場合、ブレーキのパワーアシストは吸気ポートの負荷サーボであるという。ブレーキそのものがパワーブレーキなのである。

何らかの原因でエンジンが全開になった場合、この吸気ポートの負荷が発生しなくなるという。したがって、ブレーキの踏み込みがかなり重くなるはずだというのだ。

ここでいう「何らかの原因でエンジンが全開になる」という状態は、どういうケースなのだろうか。この点について、専門家に意見を訊いてみた。

コンピュータ式のギアミッションに可能性があるとすれば、コンピュータに激しい電磁波を当てるとか、クルマが被雷する(ゴムタイヤのクルマは通電しないので、被雷もしない)。ようするにコンピュータを電気的に破壊することでしか生じないというのだ。あるいは、数十万キロ走ったり、完全に機械的に壊れた結果(廃車状態)なら、何が起きても不思議ではないが、そもそも車検に通らないだろうという。それゆりも先に、シフトレバーがスライドしなくなったり、固定できなくなったりするという。そういう例は、わたしも知人のクルマで知っている。経年劣化による部品の故障である。

だが、そもそも一件でも車検OKのクルマで、オートマのギアミッション事故が起きていれば、その車種がリコールされるどころではないだろう。クルマ社会が成立しないはずだ。その意味では、石川被告と飯塚被告の主張が立証された場合、交通史を根底から変えるほどの事件となるはずなのだ。ぎゃくに言えば、かぎりなく立証不可能に近い。

直近のものではないが、関連する事故統計があるので確認しておこう。

警察庁の統計によると、2015年(平成27年)の日本国内でのブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故は58件だという。そのうち65歳以上の高齢ドライバーが50件である。

2013年(平成25年)の統計でも、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いによる人身事故は6,448件発生し、死者は54人であったという。いずれもオートマ車による踏み違い事故である。

これに対して、マニュアル車の踏み違い事故はゼロである。したがって死者もゼロである。この統計を見るならば、オートマ車そのものが「踏み間違いを誘引する」不良車ということになるのだろう。

◆自動車社会を変える裁判になるか?

やや論点はちがうが、自動車社会そのものが危険だと、わたしは警鐘を鳴らしてきた。50歳代に自動車運転の危険性を直感し、わたしは自転車に乗り換えた。地球環境と健康という、今世紀の人類が見出した価値観に視点を合わせると、自動車こそ最悪の選択で、自転車こそ時代のニーズにかなっていると考えるからだ。

モータリゼーションそのものが危険きわまりない社会システムであり、ましてや運動能力と判断力の低下した80歳以上がドライブをする危険性を指摘した記事を、お時間がある時に参照してほしい。

『元東京地検特捜部長の石川達紘被告と元通産官僚の飯塚幸三被告 「上級国民」自動車事故裁判で「悪いのは自動車メーカー」か「逮捕されない叙勲者」たちか?』(2020年2月26日)

ふたつの裁判は、自動車資本主義という20世紀の遺物を批判するものでもあると思う。そして同時にそれは、上級国民という日本社会のひずみを暴くものでもある。かたや検察のエリートとして辣腕をふるい、かたや通産官僚として霞が関に君臨してきた。ふたりとも叙勲を受けた選良であり、逮捕すらまぬがれた上級国民なのである。裁判のゆくえに注目したい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

ウィキペディアから「歴代検事総長の天下り先情報」が丸ごと削除される怪

ウィキペディアで調べものをしていたら、ある異変に気づいた。「検事総長」のページから、それまで記載されていた歴代検事総長たちの天下り先の企業名・団体名が丸ごと削除されていたのだ。

履歴表示を見ると、その削除が行なわれたのは10月1日18時46分のこと。削除を実行した人物のIPアドレスは、240f:6f:c6e8:1:bc91:7593:489b:f90eで、削除された文字数は3929文字に及ぶ。

この人物の素性は不明だが、いかがわしい事態であるのは間違いない。法務・検察のトップである歴代検事総長たちの天下り先は、検察が捜査や公判活動を適切に行っている否かを見極めるのに有用な公益性の高い情報だからだ。

ウイキペディア「検事総長」のページの編集の履歴。右の状態から、歴代検事総長の天下り先の情報が丸ごと削除され、左の状態になっていた

◆検事総長の天下り先は公益性の高い情報である理由

たとえば、関西電力の歴代役員が、同社の原発が立地する福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた「原発マネー還流問題」。この問題では、多数の市民が金品を受け取っていた関電の歴代役員を大阪地検に刑事告発したが、地検はなかなか告発状を受理しようとしなかった。

このことが公正か否かを見極めるに際し、この問題が発覚する以前、元検事総長の土肥孝治氏が長く同社の監査役を務めていたという情報は重要な判断材料だ。そのことは論を待たないだろう。

また、2015年に東芝が2000億円超の粉飾決算をしていたことが発覚した際、「なぜ、東芝に東京地検特捜部の捜査のメスが入らないのか?」と疑問を口にした人は多かった。そういう人たちにとって、元検事総長の筧栄一氏が同社で監査役や取締役を務めていたことは見過ごせない情報であるはずだ。

そして忘れてはいけないのが、旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三氏が“上級国民”であるために逮捕を免れた疑いを抱かれ、国民的バッシングを受けている池袋暴走事故だ。

「暴走したのは、乗っていた車(トヨトのプリウス)の不具合のせいだ」

飯塚氏が裁判でそう主張し、無罪判決を求めているのに対し、実は飯塚氏の主張を否定し、有罪を立証しようとしている検察からは岡村泰孝氏、松尾邦弘氏、小津博司氏…と歴代検事総長たちがトヨタに絶えることなく監査役として天下っている。この事実を知ると、事件の見え方が多少なりとも違ってくるだろう。

ウィキペディアの情報は正確性に問題があるのは確かだ。それでも最初にウィキペディアで情報を入手し、それから他の資料で裏付けをとるのは効率的な調べもののやり方だ。筆者自身、これまで「検事総長」のページに出ている歴代検事総長たちの天下り先の情報を糸口に、取材や検証を進めたことは何度もある。それが削除されたら、歴代検事総長の天下り先を調べられなくなるわけではないが、関連する問題を見過ごすことは増えるかもしれない。

現時点で深読みし過ぎると、陰謀論のような話になってしまうので控えるが、いかがわしい事態であるのは確かだ。今後、また何か有意な発見があれば当欄で報告したい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。創業した一人出版社リミアンドテッドから新刊『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史)を発行。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

唯一の脱原発マガジン『NO NUKES voice』26号本日発売! 2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

『NO NUKES voice』Vol.26発行にあたって

本年は年頭から新型コロナに振り回された一年でした。いまだにとどまるところを知らない勢いです。

こうした中で、3・11から10年近く経ち必死で生きる福島現地の方々、意に反し故郷を遠く離れて暮らしておられる方々らの存在が忘れられようとしています。

今こそ Look back in anger ! (怒りを込めて振り返れ!) Don’t forget Fukushima ! と叫びたい気持ちです。皆様方には、なんとしてもこの師走を乗り切り無事に年を越していただきたいと願っています。

さて、本誌今号では、お馴染みの小出裕章さん、水戸喜世子さんに加え、かの歴史的な大飯原発再稼働差止め判決を下された樋口英明元裁判官の座談会を実現させることができました。くだんの判決同様、歴史的な座談会といえるでしょう。

「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の流出である」(2014年5月21日、大飯原発再稼働差止め判決より。裁判長は樋口英明さん。本誌創刊号に判決要旨を掲載)

歴史に残る名判決です。本誌はこの精神を継承いたします。

皆様方、良い新年をお迎えください。そして3・11 10周年を共に笑顔で迎えましょう!

2020年12月11日 『NO NUKES voice』編集委員会

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.26 《総力特集》2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を

『NO NUKES voice』Vol.26
紙の爆弾2021年1月号増刊
2020年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 2021年・大震災から10年
今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を!

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《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
樋口英明さん(元裁判官)
水戸喜世子さん(「子ども脱被ばく裁判」共同代表)
[司会]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)

[インタビュー]なすびさん(被ばく労働を考えるネットワーク)
被ばく労働の実態を掘り起こす

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
どの言葉を使うかから洗脳が始まってる件。「ALPS処理水」編

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発災害の実相を何も語り継がない  「伝承館」という空疎な空間

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈10〉 避難者の多様性を確認する(前編)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈20〉五輪翼賛プロパガンダの正体と終焉

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
東電福島第一原発の汚染水「海洋放出」に反対する

[報告]松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志
ふたたび、さらば反原連! 反原連の「活動休止」について

[対談]富岡幸一郎さん(鎌倉文学館館長)×板坂剛さん(作家・舞踊家)
《対談》三島死後五〇年、核と大衆の今

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が放射能汚染水の海洋投棄と原発の解体、
再処理工場の稼働と放射性廃棄物の地層処分に反対する理由

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述家)
中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
やがてかなしき政権交代

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
誑かされる大地・北海道
人類の大地を「糞垂れ島」畜生道に変えてしまった“穢れ倭人”は地獄に堕ちろ!

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈10〉人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
原発反対行動が復活! コロナ下でも全国で努力!
《玄海原発》豊島耕一さん(「さよなら原発!佐賀連絡会」代表)
《伊方原発》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《高浜・美浜》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《規制委・環境省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東京電力》佐々木敏彦さん(環境ネット福寿草)
《東海第二》小張佐恵子さん(彫刻家、いばらき未来会議、福島応援プロジェクト茨城事務局長)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表)
《福島第一》片岡輝美さん(これ以上海を汚すな!市民会議)
《地層処分》瀬尾英幸さん(脱原発グループ行動隊)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関西電力》老朽原発うごかすな!実行委員会

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!


《速報》歴史は繰り返すのか ──「M君リンチ事件」は教訓化されていない! 「カウンター/しばき隊」中心メンバー・伊藤大介氏逮捕について 鹿砦社特別取材班

11月24日、大阪地裁では鹿砦社が李信恵氏に訴えられた(もとはと言えば、李信恵氏による「鹿砦社クソ」発言に対する損害賠償請求訴訟で鹿砦社が全面勝訴し判決も確定したけれど、その裁判の後半になって急遽李信恵氏が「反訴」を申し立ててきたが、裁判所には認められず、別の裁判として李信恵氏が提訴した)裁判の本人(証人)尋問が行われた。

午前中は被告である鹿砦社側証人として特別取材班キャップの田所敏夫が証言台に立った。午後からは原告李信恵氏が証言した(この詳細については本通信11月26日27日の記事参照)。

ところが閉廷から数時間後に、思わぬ事件が発生していた。当日傍聴席に姿を現した、伊藤大介氏(「M君リンチ事件」現場にも同座していた人物)が、裁判後なんらかのいきさつで極右活動家・荒巻靖彦氏を呼び出し、逆に荒巻氏が所持していた刃物により、伊藤大介氏は負傷したとの情報が飛び込んできたのだ。

その事件現場に居合わせたのが伊藤大介氏一人であるのか、あるいは複数であるのかの確証を、取材班は確認できていない(2人との情報がある)。しかしながら発生以前の夕刻に、李信恵氏と伊藤大介氏が食事(おそらくアルコールも入っていたであろう)している姿は、李信恵氏のSNS発信により確認できる。

伊藤大介氏を襲ったとして、「殺人未遂」容疑で大阪府警に逮捕された人物の実名は、ネット上に即座に公表されたので特別取材班も確認できている。また、情報が錯綜する中、取材班は経過を冷静に見てきていた。

不思議であったのは、この事件の存在(事実)が報じられていて、あるいは関係者がごく簡単にコメントしていて、それが「一方的」なものであれば、被害者側の人々は、必ずや指弾、糾弾するであろうに、そういった発信がまったくと言っていいほどなされていなかった(特別取材班サイバー班調査結果)事実である。

われわれは、知りえない事実について、軽々に発信をすべきではないと判断し、「伊藤大介襲撃事件(仮称)」についても、最低限の事実を書くにとどめ「考えさせられる事件である」と結んでいた。

しかし、下記の発表が大阪府警からあった。

大阪府警の検挙情報(2020年12月7日付け)
産経新聞2020年12月8日朝刊20面(大阪版)
管轄の大阪府警曽根崎警察署

ここでは匿名ではあるが、一部報道機関では実名で報道されている。念のために大阪府警に詳細を問い合わせたが、「25日事件の被害者が逮捕されたことに間違いはない」と大阪府警広報から回答を得た。

以上が簡単ではあるが、現在明らかになっている事件の概要である。われわれは繰り返すが「刑事事件の被疑者は刑の確定まで、推定無罪が相当」であるとの前提に立つ。したがって、伊藤大介氏を襲撃したという極右活動家・荒巻靖彦氏の行動、あるいはそれ以前に暴行を行ったとされる伊藤大介氏の行動にも、一定の留保を保ちながら論評するものである。

繰り返すが、事件の詳細はわからないのでどちらに非があるのか、といった判断をわれわれは述べない。しかしながら一つだけ断言できることがある。「M君リンチ事件」が発生した際との、恐ろしいほどの共通項が揃っているということである。

前述の通り、11月24日は李信恵氏と鹿砦社の裁判、それも「本人(証人)尋問」期日であり、その後李信恵氏の発信によれば、伊藤大介氏とどこかへ食事に出かけている(18時頃)。そのあと李信恵氏が同行したかどうかは不明である(現時点の情報では「犯行現場に、李信恵氏はいなかった」との情報もある)が、伊藤大介氏が日付けが25日に変わった深夜、荒巻靖彦氏を呼び出し、諍いになり、伊藤大介氏が殴りかかり、逆に反撃に遭い伊藤大介氏が刺された、ということは事実である可能性が濃い。

この展開は、何かに似てはいないか? そうだ、「M君リンチ事件」」の際の展開と同様なのだ。当時は李信恵氏が在特会を相手取っての裁判が展開されていた。その期日のあと、韓国料理店、キャバクラ、ラーメン屋、カレー屋、ワインバーなど5軒ほどはしごをして「日本酒に換算して1升」(李信恵氏の発言)ほど飲酒したあとに、深夜M君を呼び出し「リンチ」に及んだのである。ここでも伊藤大介氏はリンチ現場に居合わせている。

われわれは、これまで「そのような行為は反差別を主張するものとしては、適切ではない」と主張してきたし、24日証人尋問でも田所敏夫は「そのような行為に及ぶのは『反差別』を闘う人への冒涜だと思う」と証言した直後だった。ちなみに、田所自身、広島被爆二世として差別と闘ってきている。

繰り返すが、事件の詳細は不明なのでこれ以上特別取材班は踏み込まない。しかしながら、そのようないきさつであったにせよM君が予言した通り「このままでは、また同様の事件が起こりますよ」が現実になってしまった。

鹿砦社ならびに、特別取材班は「あらゆる差別に原則的に反対」である。であるがゆえに、反差別界隈で発生した「M君リンチ事件」に、重大な関心を持ち取材してきたのである。そこには「このような体質の集団には、また同様の事件を起こす可能性が極めて高い」との懸念もあった。

どうやらわれわれの「懸念」が現実のものとなったようである。24日の期日を終え新横浜到着後「圧勝」宣言をした、李信恵氏の代理人・神原元弁護士は、この事態をどうとらえているのであろうか? 事件直後の11月25日に、「俺の大切な友人を刺したレイシストに抗議する」とツイートしたあとは黙している。同じく李信恵氏の代理人・上瀧浩子弁護士は今、何を考えているのだろうか? そして他ならぬ、李信恵氏ご自身は、再度発生した、深夜の不幸な事件についてどのようにお考えであろうか? 是非とも見解をお伺いしたい。

2020年11月25日の神原元弁護士のツイート
2020年11月27日の有田芳生議員のツイート

繰り返す。李信恵氏は24日の証人尋問で「自分が女だから攻撃された」などと、述べていたが、それは完全に失当である。李信恵氏はひとりぼっちではなく、常に周りに「屈強な」味方が寄り添っている(24日、傍聴席で見かけた伊藤大介氏の振る舞いや開廷中の「ヤジ」にはドスがいたものを感じた)。

11・24裁判後、事件前の伊藤大介氏と李信恵氏

われわれは「弱者」を狙って「攻撃」をしたりはしない。そんなことは自らを辱める行為に他ならず、そもそもそのような発想が浮かばない。このことは断言しておく。

そして、伊藤大介氏の事件を契機に、その周辺の方々は、是非一度立ち止まり、自身を振り返られることをお勧めする。「脚下照顧」という言葉もある。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

菅義偉政権が推し進めるマイナンバー制度強行普及の不気味 国民ナンバリングこそが独裁権力の本質である 横山茂彦

メディアが報じるところから紹介しておこう。

「マイナンバーカードの普及促進に向けて、総務省はカードを取得していないおよそ8000万人を対象に、スマートフォンで申請ができるQRコードがついた申請書の発送を28日から始めることになった」

「マイナンバーカードの普及率は、11月25日時点で22.8%にとどまっているが、政府は令和4年度末までにほぼすべての国民に行き渡るようにする目標を掲げている」という。

QRカードで釣ると言っても、そもそもスマートフォンの普及率が66%程度ではないのか?

「武田総務大臣は、閣議のあとの記者会見で、まだカードを取得していないおよそ8000万人を対象に、28日から申請書の発送を順次始めることを発表した」

8割近くが「面倒くさい」「政府の情報管理能力に疑問」を感じている事案を、なんだか強権的にクリアできると思っているかのようだ。

中小企業・個人事業主への「維持化給付金」の未支給、GoToキャンペーンの不正使用など、デジタル化がらみのトンネル会社(大手広告代理店への外注丸投げ)、国民の半数以上が恩恵に預かれないシステムへの不信。いや、パソコンやスマホを使えない人々には無縁なサービスをもって、何とかなると思い込んでいるところに、ネット社会の現実を知らない菅義偉総理のおめでたさがあると指摘する必要があるだろう。


◎[参考動画]武田総務大臣 記者会見(総務省 2020/11/27)

◆なぜ管理したがるのか?

古い世代には、懐かしい言葉かもしれない。国民総背番号制という言葉である。現在の行政言葉では国民識別番号、具体的に進行しているのは「マイナンバー(個人番号)」という。

古くは1970年に第3次佐藤栄作内閣が「各省庁統一コード連絡研究連絡会議」を設置して省庁統一個人コードの研究を行い、1975年の導入を目指したが、議論が頓挫した経緯がある。以後、各省庁ごとに行政上の国民のナンバリングは以下のジャンルで行なわれてきた。

○基礎年金番号=20歳以上。数字10桁。(厚労省)※年金手帳の統一
○健康保険被保険者番号=国民全員(扶養家族ふくむ)数字6桁か8桁。(々)
○日本国旅券(パスポート)番=任意。9文字。アルファベット2文字と数字7桁。(外務省)
○納税者の整理番号(旧:法源番号)=納税者。数字8桁。(財務省国税局)
○運転免許証番号=16歳以上の資格者。数字12桁。(自治体公安委員会)
○住民票コード=数字11桁。(自治体)
○雇用保険被保険者番号=数字11桁。(厚労省)

以上の数字はそれぞれバラバラで、相互に関連付けがされていない。とくに納税(所得税・住民税)において、管理できていないのではないかと、国家は常に国民の隠し資産に疑惑を抱いているのだ。国民を番号で管理したい。それは国家の本質といえよう。

そしてNHK視聴料(1割以上が未契約)の強制契約のために、これはもっぱらNHK独自の利害から、自治体(およびメーカー、販売店)へのテレビ購入者の住民識別を徹底するというものだ(政府関係に反対多数)。

戦後日本は多元的な民主国家であり、たとえば自治組織の末端である町会(自治会)や共同住宅の管理組合にも、その参加は基本的に任意(罰則がない)である。とりわけ都市住民という、資本主義のもとでアトム化された匿名的な存在は、表札すら出さないことが多い。共同住宅では、部屋番号という匿名性が担保されているからだ。

したがって、戦後の日本において高度管理システムを可能にするコンピュータが完備されているにもかかわらず、総背番号制は実現しなかった。デジタル化が進まない各省庁の無能はさておこう。

住基ネット、グリーンカード、マイナンバーと名を変えても、それは実現できなかった。ここに筆者は権力の支配をきらう日本人の特性を、たとえば江戸幕府の華美禁止令にたいして刺青(衣服の下の美装)を彫った町奴いらいの反骨精神を感じてきた。それゆえに国民はネットで支配されず、台湾や韓国のように戦時体制的なコロナ防疫ができなかった。防疫よりも個人主義が優先されたのである。それはそれで、健全なことなのだ。

◆菅義偉の個別政策論

だがいま、陰湿な権力欲にとらわれたある政治家の発議で、ふたたび総背番号制の野望がうごめいている。その政治家とは、わが菅義偉総理のことである。

なかば手弁当で研究者たちが参集する日本学術会議を既得権団体と見誤り、実効性のうたがわしい携帯電話料金の低減をメーカーに強い、GoToキャンペーンなる「コロナ感染拡散政策」に執着する菅義偉総理。この個別政策論は、みずからが官房長官をつとめた安倍政権末期に、配られないアベノマスク、不良品のマスクの失敗と同じ道をたどるであろう。大局観なき政治構想は、貧弱な個別政策の破綻をたどるしかないのだ。その予感が焦燥として顕われている。

そこで、背水の陣を敷いて取り組もうとしているのが、マイナンバーの健康保険証との関連付けなのである。国民がもっとも必要不可欠とし、皆保険という制度上の特質に目を付け、2年後までの実現を期すとしている。

50年間できなかったことを、自分の代で実現するという。それは安倍政権が「憲法改憲をわたしの代で」という大言壮語に比べれば、いかにもスケール感がない。とはいえ、健康保険証は所得税に対して算出される、いわば間接の申告制である。所得がない場合は、扶養家族としての登録になる。

ここにマイナンバーカードをもって申告しろというのなら、健康保険証が発行されない場合をも想定しているのだろうか。保険証が欲しいのなら、カードの発行手続きを取れと? この国民への挑戦は、大いに見ものである。これから先の日本が右へ倣えの統制国家になるのか、それとも国家の必要すら感じなくなる国民の「自助」が新たな何かを見出すのか。結果を注視したい。


◎[参考動画]臨時国会が会期末 菅首相がようやく2回目の会見(TOKYO MX 2020/12/04)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他