堀田春樹
勇志はムエタイの壁を破れずも成長見せた攻防の技。
どん冷え貴哉が挑戦権獲得。チャンピオンのカズ・ジャンジラと真摯に対峙。
小磯哲史が52歳でTKO勝利。大月慎也を圧倒。
◎爆発シリーズvol.5 / 10月18日(土)後楽園ホール17:15~20:50
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会
戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています(オート以外)。
◆第12試合 58.0kg契約3回戦
NKBフェザー級チャンピオン.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.9kg)
16戦11勝(5KO)3敗2分
VS
オート・ノーナクシン(元・ラジャダムナン系バンタム級5位/2001.3.28タイ国出身/ 57.85kg)
100戦70勝25敗5分(推定)
勝者:オート・ノーナクシン / 判定0-2
主審:前田仁
副審:高谷30-30. 鈴木29-30. 笹谷27-30
メインイベンター勇志は去年12月、NKBフェザー級王座決定戦で、鎌田政興(ケーアクティブ)に判定勝利し王座獲得。オート・ノーナクシンは右ミドルキック、右ストレートが得意で日本トップクラスの選手と多く対戦しており、勇志にとってはなかなかの強敵となった。
初回、ミドルキック中心の蹴りの攻防は、勇志が強く蹴ると、オートが上回るスピードとしなやかさで圧力掛けて来た。互角の蹴り合いと言いたいところだが、ややオートの返しが優る攻防となった。

第2ラウンドもより攻防が激しくなり、勇志が左ストレート打っても躱したオートがヒザ蹴りに出てニュートラルコーナーに追い詰めると勇志がバランス崩してしゃがみ込み、ノックダウンかと思われたがスリップ扱いで救われた。勇志は左ハイキック出してもブロック。全く怯まず直ぐ蹴り返す落ち着きのオート。勇志は強く蹴り返す勢いでは意地を見せて攻めて出た。

第3ラウンドはその勢いでややオートを下がらせたが、主導権奪うに至らない展開の勇志だった。見方によって失点無しの引分けからオートのフルマークとなる大差まで、差が開く判定となった。勇志は悔しい判定負け。

勇志は喋りたくないであろう言葉を振り絞って出してくれた声は、「オートは強かった。負けは負けです。また頑張ります。」とだけ応えた。
テツジム大阪の一生(=イッセイ)会長は「ジャッジ一人はフルマークだったから納得いかないですね!」と不満な言葉。
広報担当している木村充利氏は、「勇志はパンチで行くのかなと思っていたら、蹴りで対抗したのでオートの術中に嵌ったのかなと。でも惜しかったですね。勇志も強い蹴り出していたし良い試合でした。ジャッジはオートの蹴りのインパクトが印象に残ったんでしょうね」という回答をされました。
◆第11試合 NKBウェルター級次期挑戦者決定戦3回戦
NKBウェルター級3位.どん冷え貴哉(TOKYO KICK WORKS/1988.10.15滋賀県出/ 66.4kg)
50戦27勝(6KO)21敗2分
VS
NKBウェルター級5位.健吾(BIG MOOSE/1993.10.10千葉県出身/ 66.15kg)
8戦5勝(1KO)2敗1分
勝者:どん冷え貴哉 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:高谷30-29. 鈴木30-29. 前田30-29
来年2月21日での、チャンピオンCAZ JANJIRA(Team JANJIRA)への挑戦権を懸けた、どん冷え貴哉vs健吾戦。
パンチと蹴りの様子見からすぐ組み合う展開へ移り、ヒザ蹴りの互角の攻防が続く。第3ラウンドにどん冷え貴哉がヒジ打ちで健吾の右眉尻をカットし、リズム掴んだ貴哉が首相撲で攻勢を維持。時間の無い中、健吾もパンチで倒しに掛かる猛攻を見せるが、冷静に躱し切った貴哉が判定勝利した。

試合後、リングに現れたチャンピオンのカズ・ジャンジラが「来年4月に引退します。」と宣言し、どん冷え貴哉に対し、「今回勝てないともうリベンジ出来ないですよ!」と促した。
どん冷え貴哉は、「カズさんとは3回目の試合で、しかもタイトルマッチという最高の舞台となりました。前回は今年の2月に僕が喧嘩売っといて負けたんですけど、また精一杯頑張ってカズ選手の目の前まで辿り着きました。今度は絶対勝つんで有終の美は飾らせないと思ってます。」と宣言した。

◆第10試合 59.0kg契約3回戦
NKBフェザー級3位.矢吹翔太(team BRAVE FIST/1986.8.2沖縄県出身/ 58.5kg)
18戦11勝4敗3分
VS
NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/ 59.0kg)
35戦11勝(4KO)19敗5分
勝者:矢吹翔太 / 負傷判定3-0 / テクニカルデジションタイム 第3ラウンド 58秒
主審:鈴木義和
副審:前田30-28. 関30-29. 笹谷30-29
39歳と44歳の戦い。矢吹翔太がローキックから首相撲。離れても矢吹が先手打って蹴りからパンチ、そして首相撲に掴まえる。
第2ラウンド以降も首相撲に繋がる展開が続き、第3ラウンドに矢吹のパンチヒットでフラ付いた半澤信也を追って倒しに掛かったところで偶然のバッティングが起こった。負傷したのは矢吹の方。左瞼がパックリと割れ、ドクター勧告で試合はストップ。攻めて出たところでのアクシデントで負傷判定となって矢吹翔太が勝利した。

◆第9試合 66.0kg契約3回戦
小磯哲史(元・J-NETWORKライト級Champ/テッサイ/1973.8.8神奈川県出身/ 65.85kg)
55戦20勝(7KO)30敗5分
VS
大月慎也(Team arco iris/1986.6.19埼玉県出身/ 66.0kg)27戦11勝(5KO)12敗4分
勝者:小磯哲史 / TKO 2ラウンド 2分7秒
主審:高谷秀幸
初回か先手打つ小礒哲史が蹴りからパンチ、ハイキックと繋げ、大月慎也を後退させた。大月はミドルキックを返しても流れを変えられない。
第2ラウンドも小礒がペース崩さず前進。右ハイキックでコーナーに追い詰め、更に右ハイキックでアゴを打ち抜きノックダウンを奪った。大月は立ち上がるも効いている様子で、小礒がパンチラッシュで大月をコーナーに追い込み、連打したところでレフェリーストップとなった。

◆第8試合 バンタム級3回戦
NKBバンタム級5位.兵庫志門(テツ/1996.4.14兵庫県出身/ 53.3kg)20戦8勝(2KO)9敗3分
VS
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/ 53.3kg)5戦3勝(1KO)2敗
勝者:兵庫志門 / TKO 2ラウンド 2分29秒
主審:鈴木義和
パンチと蹴りのスピーディーな攻防。涌井大嵩の前蹴り躱した兵庫志門が右フックか、ノックダウンを奪った。第2ラウンドに入ってもダメージ回復には至らない涌井だったが、ローキックで踏ん張って時間稼ぐも、兵庫志門が右ストレートで2度のノックダウン奪ったところでレフェリーストップが掛かった。

◆第7試合 63.0kg契約3回戦
利根川仁(TOKYO KICK WORKS/2003.1.24東京都出身/ 62.7kg)8戦7勝(1KO)1敗
VS
ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 62.9kg)44戦7勝(3KO)33敗4分
勝者:利根川仁 / 判定3-0
主審:高谷秀幸
副審:関30-28. 前田29-28. 鈴木30-28
利根川仁が蹴りとパンチの圧力で優るが、ちさとはまともに食わないのが上手さか。攻勢続ける利根川だが、ラストラウンド残り30秒でラッシュ掛けたちさとはパンチで圧し、ロープ際でヒザ蹴り、上からヒジ落とす技も使ってコーナーに追い詰めたところで終了。利根川がこの終盤以外に終始攻勢を続けた結果の判定勝利。

◆第6試合 フェザー級3回戦
JKIフェザー8位.仁虎(BOXFIGHT/2009.4.1富山県出身/ 56.65kg)7戦4勝(1KO)3敗
VS
シオチャイ・FJ KICK ASS(FJ KICK ASS/2007.11.13神奈川県出身/ 56.7kg)
6戦3勝(1KO)3敗
勝者:シオチャイ・FJ KICK ASS / 判定0-2
主審:笹谷淳
副審:鈴木29-29. 前田29-30. 高谷29-30
シオチャイがパンチと蹴りから組み付きに行きヒザ蹴りが徐々に攻勢維持した流れ。両者の蹴りと打ち合いもアグレッシブで、仁虎もフック系パンチがあったが、巻き返すには至らず終了。僅差ながらシオチャイが判定勝利。

◆第5試合 ライト級3回戦
リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.9kg)5戦3勝(2KO)2分
VS
魔娑屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/ 61.05kg)8戦3勝(3KO)5敗
勝者:リョウヤ・ハリケーン / 判定3-0
主審:関勝
副審:高谷30-28. 鈴木30-28. 笹谷30-28
リョウヤは二度の股間ローブローを受けてインターバルが与えられた。魔娑屋に注意警告。更に偶然のバッティングも起こり、リョウヤの戦力落ち気味も、ラストラウンド残り10秒で右ストレートヒットし魔娑屋がノックダウン。大きなポイントを拾ったリョウヤが判定勝利。
◆第4試合 女子50.5kg契約3回戦(2分制)
みずほ有刺鉄線(テツ/1989.5.24東京都出身/ 50.4kg)1戦1敗
VS
実穂(クロスポイント大泉/1985.3.25静岡県出身/ 50.05kg)2戦1勝1敗
勝者:実穂 / 判定0-3
主審:前田仁
副審:高谷28-30. 鈴木29-30. 笹谷28-30
アグレッシブに蹴りとパンチで打ち合う中、実穂が徐々に打ち優る勢いが目立った。みずほも手を休めず攻め返し好ファイトとなった。
◆第3試合 ライト級3回戦
猪ノ川海(大塚道場/2005.9.30茨城県出身/ 61.1kg)6戦3勝(2KO)2敗1分
VS
津田宗弥(クロスポイント吉祥寺/1980.1.8神奈川県出身/ 60.75kg)4戦1勝(1KO)3敗
勝者:猪ノ川海 / 判定3-0
主審:関勝
副審:笹谷30-28. 鈴木30-28. 前田30-27
蹴りからパンチの多彩な攻防は猪ノ川海のヒットが優っていく展開。津田宗弥も踏ん張って打ち返し、見極め難い中、ジャッジ三者が揃ったのは第1ラウンドのみだったが、猪ノ川海が順当に判定勝利した。
◆第2試合 フェザー級3回戦
岡部惇(アント/1993.10.20岡山県出身/ 56.95kg)5戦1勝(1KO)4敗
VS
加藤宙(神武館/2008.11.26埼玉県出身/ 56.75kg)1戦1勝(1KO)
勝者:加藤宙 / TKO 1ラウンド 1分0秒
主審:高谷秀幸
加藤宙が接近戦で振り回した左ヒジ打ちヒットで岡部惇の右眉尻をカットし、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。
◆プロ第1試合 ライト級3回戦
大森利己(T-GYM/1998.11.30山梨県出身/ 60.15kg)3戦2勝1敗
VS
小池奨太(Bushi-Do~武士道~/1988.7.14新潟県出身/ 59.75kg)3戦2敗1分
勝者:大森利己 / 判定2-0
主審:前田仁
副審:鈴木29-29. 笹谷30-28. 関30-27
両者の蹴りとパンチの攻防の中、大森利己のカーフキックが効果を現し判定勝利。
◆アマチュア第3試合 『問答無用』東西対抗戦41.0kg契約 2回戦(2分制/延長1R)
41kg関東王者.田中春翔(WIVERN/ 40.75kg)vs41kg関西王者.高橋海翔(NK/ 40.8kg)
勝者:高橋海翔 / 判定1-2 (20-19. 19-20. 18-20)
◆アマチュア第2試合 『問答無用』東西対抗戦37.0kg契約2回戦(2分制/延長1R)
37kg関東王者.太陽(D-BLAZE/ 36.75kg)vs37kg中四国王者.北山義(岡山/ 36.25kg)
勝者:太陽 / 判定2-0 (20-18. 20-19. 20-20)
◆アマチュア第1試合 『問答無用』東西対抗戦35.0kg契約2回戦(2分制/延長1R)
DBS、UIZIN35kg王者.KANON(問答無用 関東推薦選手/ 35.0kg)
VS
中四国33kg王者.滑飛夢乃(テツジム滑飛一家/ 34.95kg)
勝者:滑飛夢乃 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 19-20)
《取材戦記》
あるジム関係者の声。「挑戦者決定戦は5回戦にすべきですね。タイトルマッチに準ずる試合が3回戦はおかしい!」。
3回戦とは本来キャリアの浅い新人戦の枠組みである。「本来の5回戦に戻る日は来るのだろうか」という意見は一定数有るのも事実である。
勇志の試合については、「勇志の試合は30-27が物語っているんじゃないですかね」とフルマークも妥当と見た意見だった。試合終了した時点で、忖度があるならば引分けかという空気が流れたのも事実だろう。勇志も攻め倦む中、全力で向かった強い蹴りも多かったので、巻き返したとも見れる流れ。でも僅差判定負けが妥当なところだろう。団体の代表的エース格として、また成長を見せねばならない課題多き勇志である。
今年のメインイベンターは、2月に棚橋賢二郎vs乱牙(=蘭賀大介)に始まり、4月、皆川裕哉vs山本太一、6月、釼田昌弘vs TOMO・JANJIRA、そして勇志vsオート・ノーナクシンと繋がって来ました。乱牙はチャンピオンとなった次戦で敗れ、山本太一も皆川裕哉に倒され、剱田昌弘は勝ったが引退。期待の勇志もムエタイに跳ね返された。そんな中での次回、日本キックボクシング連盟爆発シリーズvol.6は、12月13日(土)に後楽園ホールに於いて開催予定です。不振を覆す締め括りに期待したいものですが、メインカードが決まっていないのも寂しいところです。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
