「虚偽通知」で新宿区がコロナ被災者たちをホテルから追い出し! 街中に消えた87人の無念と不安と怒り 林 克明

◆声をあげ行動し徐々に実現

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都はネットカフェにも休業を要請した。安定した住居を持たずネットカフェなどで生活する「ネットカフェ難民」は、2018年から2019年にかけての東京都の調べによると約4000人。

文字通り路上生活を余儀なくされている人に加え、24時間営業のファストフード店やネットカフェが休業してしまえば、そこで寝泊まりする人々が路上にたたき出されてしまう恐れがあった。

そこで、ホームレス支援30団体以上が協力して「新型コロナ災害緊急アクション」を結成。東京都に緊急支援を要請してきた。

その結果、施設休業で済む場所を失った人をビジネスホテルに一時滞在できるようになっていった。

従来の収容施設で相部屋や室内に二段ベッドが並ぶ集団生活をせざるを得ない状況だった。

それでは、新型コロナウイルスに感染の恐れがあり、実際に行政を通して宿を得たものの相部屋が恐ろしいと、そこから出てしまった人もいる。

そこで、支援団体が交渉の末、東京都は原則個室のホテルを用意するように方針を定めることになった。

また、当初は都内に居住して6カ月以上という条件をつけていたが、支援者らの粘り強い交渉で、その条件を撤廃した。

5月25日に緊急事態宣言解除が決定されたあとも、東京都は必要ならホテル滞在期間を延長する措置を講じ、各区市に通達している。

ところが、23区と26市の中で唯一、コロナ災害による住居喪失者を一律にホテルから出してしまったところがある。

それが新宿区だ。

◆新宿区が虚偽通知で退去させた

5月29日、新宿区は「緊急事態宣言に伴う東京都の緊急一時宿泊事業としてホテルを利用されている皆様へ」と題する文書で「ホテル利用は5月31日(チェックアウト6月1日朝)まで」と利用者に通知したのだ。

実は、東京都は6月7日チェックアウトまで延長すると5月22日付で通達し、23区26市など東京都下のすべての自治体に伝わっているはずである。

しかも、6月1日付通知で、6月14日チェックアウトまで再延長されていた。それなのに新宿区は87名のホテル利用者を追い出してしまったのだ。

コロナ災害の状況では、就職先が確保されたなどというのは少数で、多くの人は野宿を強いられている可能性がたかい。

手違いや間違いではなく、明らかに虚偽の通知だとして、ホームレス支援団体が6月8日、新宿区役所まで抗議に出向いた。

抗議に訪れたホームレス支援関係者たち(6月8日新宿区役所)
抗議文を手渡す稲葉剛氏(つくろい東京ファンド代表理事)と受け取る関原陽子氏(新宿区福祉部長)

応対したのは、関原陽子・福祉部長と片岡丈人・生活福祉課長。支援団体関係者たちは、まず区としての公式見解と当事者に対する謝罪を求めた。

これに対し区側は、
「案内、説明が至らなかったことは深く反省しています」
「困っている人は相談にきてくださいと伝えている」
などと、何度質問しても、説明の仕方に不備があることを謝罪しても、虚偽事実を利用者に伝えたこととそれに対する謝罪はない。

当日、抗議に訪れていた生活保護問題対策全国会議の田川英信事務局長が説明する。

「これから先を心配するホテルを出された当事者と一緒に新宿区の窓口を訪ねました。すると担当者は、新宿区の決定として延長はできないと明言しました」(趣旨)

当事者と同行したのは、5月29日と6月5日。このときの対応から、窓口での手違いや説明不足などではなく、6月1日から住居喪失者にホテルから退去させると新宿区が方針を決めたことは明らかだろう。

実際、田川氏らが具体的事実を突きつけると、区側の説明はしどろもどろだった。

一方、市民団体が抗議におとずれた当日(6月8日)から、新宿区は、連絡先のわかっている元ホテル滞在者に連絡を取り始めたという。

退去させられて1週間も経っており、その間に電話を止められた人もいることだろう。

◆新宿区長が謝罪、お金を払いホテル滞在延長

話し合いは堂々めぐりでらちがあかず、会合は解散となった。

そして一夜明けた6月9日、吉住健一新宿区長が謝罪文を出した。以下に全文を示す。

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■ネットカフェの閉鎖によりホテルに宿泊されていた皆様への対応について

新宿区役所

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言時に、宿泊先を喪失してしまったネットカフェ生活者へのホテル宿泊事業期間が延長されたことを、適切にお伝えしないまま、多くの方に退出していただいてしまっていました。

ご利用者の皆様に対して、寄り添った対応が出来ていなかったことを、率直にお詫び申し上げます。

また、この件につきまして、区民の皆様にも大変ご心配をおかけいたしました。

現在、ご連絡先の把握できている方には福祉事務所より、引き続きホテルを利用できる旨をご案内させていただいていますが、6月1日以降、14日までで宿泊できなかった期間の宿泊料相当(1泊3500円)を、支給させていただくことといたします。

本事業は東京都との連携事業ですが、制度の趣旨を鑑みて、適切に支援事業が執行されるよう、再発防止に取り組んでまいります。

この度は、困窮された方への配慮が至らず、申し訳ありませんでした。

令和2年6月9日
新宿区長 吉住健一

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以上のように、新宿区は謝罪してそれなりの対応をとった。形としては一見落着となったのだが、あえてここに記録するのは、再発防止を念頭に置いているからである。

新宿区や東京都のみならず厚労省を含めて、コロナ禍の生活困窮者をめぐり、類似する事態を今後も防がなければならない。

なお、6月25日に新宿に問い合わせたところ、ホテル利用者への1日3500円の支給は6月23日に支払われた。対象者は44人である。

新宿区役所正面に掲げられた新宿区民憲章には、「心のふれあう おもいやりのある福祉を考え実行します」と記されている

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政
〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書13】闘いはまだ終わってはいない!(11) 平気で嘘をつく人たち(4) ~ 師岡康子の場合 鹿砦社代表 松岡利康

朝日新聞・北野隆一編集員渾身の連載、6月19日は第5回目で、これでお終いということです(やれやれ)。

師岡康子弁護士

最後を飾るのは、カウンターの東の理論的支柱で『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波書店)の著書もある師岡康子弁護士です。

師岡登場となると、私としては、やはり一言申し述べておかねばならないでしょう。

師岡、外面的なイメージは悪くはなく、カウンターのスポークスマンとして記者会見にもよく出ています。

しかし、M君リンチ事件について取材班からの質問書はことごとく無視、やむなく電話取材を試みたところ、記者会見での堂々とした態度とは異なり、逃げの一手でした。

師岡との電話のやり取りを再録しておきましょう。──

朝日新聞6月19日夕刊

師岡 はい、もしもし。
── お邪魔いたします。師岡先生の携帯電話で間違いございませんでしょうか?
師岡 はい、師岡です。
── お忙しいところを申し訳ございません。先生に鹿砦社から、郵送で『ご質問』を送らせていただいていると思うのですが、ご覧いただきましたでしょうか?
師岡 あの~、この携帯電話番号は、どちらで聞かれたんでしょうか?
── 取材の情報源は秘匿しなければいけないので、申し訳ございませんが、それは申し上げられません。
師岡 ああ、そうですか。
── はい。
師岡 ちょっと、あの~対応する気はありませんので。
── (『ご質問』は)ご覧はいただいているのでしょうか? 郵送したものは。
師岡 それについてもちょっとノーコメントで。
── 一応レターパック便で送らせていただいておりますので、こちらで届いたという記録は残っているのですけれども(注:レターパックは質問者の誤認で、正確には普通郵便)。
師岡 ええと、あの~私のほうでちょっと対応する気がありませんので、失礼します。
── 対応なさるおつもりがないと……。」(第3弾『人権と暴力の深層』より)

リライトは全然改ざんなどしていません。これを見て読者のみなさんは、私たちがいかに丁寧かつ穏やかに取材したかがイメージできるでしょう。どこに「恐怖」を感じるというのでしょうか?

なぜ、私たちは師岡に対して質問書を送り回答を求め、リンチについての意見を求めたのでしょうか──それは、カウンター運動の理論的支柱として著書もあり、そのスポークスマンとしての役割をし、たびたびマスコミに登場していること、それから、例の「師岡メール」といわれる書面の存在がささやかれていてリンチ事件隠蔽活動の一端を担っていたと推察されたこと、隠蔽のための会議(例えば辛淑玉文書への対応のため)を師岡の事務所で行ったとの情報が入ったこと等によります。「ヘイトスピーチ」を糾弾しながら、それでいてリンチ被害者M君への、カウンターやしばき隊メンバーらによる、まさに〈ヘイトスピーチ〉やネットリンチ、村八分行為を是認(黙認)してきたキーマンとして、ここはぜひ師岡の意見表明を求めなければならないと考えたのです。

「師岡メール」は、第5弾本を出すまで遂に見つけることができませんでした。存在の真偽もあやふやでしたし、『もうないのか』と思っていたところ、第5弾本出版直後、メールの相手・金展克みずからが暴露したのです。

予想した以上の衝撃でした。『やはり本当だったんだ』と思い、金展克はなんでもっと早く公にしてくれなかったのか、と金展克が秘してきたことを嘆いたものです。「師岡メール」がもっと早く公になっていたならば、リンチ事件をめぐる転回もM君の訴訟も、もっと違ったものになっていたとさえ思いました。こういうA級資料は、タイムリーに出さないと効果半減です(金展克さん、聞いてるか?)。

師岡は「人権派」の看板とは裏腹に、トンデモないことを金展克に求めています。歴史に残るほどの内容です。すでにこの連載の「7」(6月8日掲載)でも掲載し私見を申し述べておりますが、あらためて再録しておきますので、とくとご覧ください。これが「人権派」と持て囃される弁護士がやることか!?(喝)

いわゆる「師岡メール」

ヘイトスピーチ規正法の成立のために、凄絶なリンチ被害者M君を黙らせ泣き寝入りするように金展克に説得させようとしています。師岡は、リンチの被害者が刑事告訴すれば、「これからずっと一生、反レイシズム運動の破壊者、運動の中心を担ってきた人たち(注:李信恵ら)を権力に売った人、法制化のチャンスをつぶしたという重い批判を背負いつづけることになります。そのような重い十字架を背負うことは、人生を狂わせることになるのではないでしょうか。」と言っています。

頭の中が倒錯していると言わざるをえません。「重い十字架を背負う」のはリンチ加害者の李信恵らでしょう。盛り上がってきた反ヘイトや反差別の運動に水を差したのですから。リンチ事件は、そうした運動の盛り上がりを「破壊」するに足る蛮行ですから、リンチの加害者が「反レイシズム運動の破壊者」というのならまだしも、なんでリンチ被害者が「重い十字架を背負」い「反レイシズム運動の破壊者」になるのでしょうか? そうならないために泣き寝入りを求めるとは常識的には到底考えられません。

この「師岡メール」、李信恵の「まぁ殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」という“名台詞”と同じぐらいの歴史的“名文”だと思います。みなさん、心して熟読されたい。

私は、この4年余り、全くの白紙の状態から、カウンターとかしばき隊とかいう人たちの「反差別」運動、その主な担い手の言動を見てきました。差別問題については、私なりに若い時から体験したり見聞きしてきました。いつかあらためて書き綴っておこうとも思っていますが、例えば、学生時代1年下の在日の学友と深夜飲んで騒ぎ自転車に二人乗りして警官に呼び止められ、私はすぐに解放されたのに、彼は延々長時間拘束され、幸いそれ以上にはなりませんでしたが、釈放後の彼の悄然とした表情が忘れられません。

また、これもこれまで公には話してはいませんでしたが、かの「八鹿高校事件」に先輩が巻き込まれたことがありました。彼は解放同盟(以下解同)側にも逆の側(共産党系)にもつかない立場を取り、どちらからも責められています(かつて共産党系のライターが書いた、この事件についての本に解同による暴行の被害者に実名で記されていたのを発見し驚きました)。これ以降、解同による激しい糾弾闘争が先鋭化していきました。

こうした事件から、私なりに差別について長年考えてきました。悩んでいた時期にアドバイスいただいたのは、師岡佑行(故人。歴史学者、元京都部落史研究所所長。同じ「師岡」でも師岡康子とは関係がないと思われますが、一時、師岡佑行の父親か縁者ではないかと思ったこともありました)と土方鉄(故人。作家、『解放新聞』元編集長)でした(お二人には対談していただき、これは記録として残っています)。お二人は、いわゆる「糾弾闘争」を批判されていました。

そうした中で、くだんのリンチ事件に遭遇し、現今の「反差別」運動の実態を具体的に知り、驚くと共に義憤、悲哀を感じました。全然進歩していませんし、逆行しているではないか、というのが長年、私なりに差別について考えてきたことからする感想でした。さらに悪いことには、このリンチ事件が起きたことを、真正面から真摯かつ主体的に対応するのではなく、事件をなかったものにしようと隠蔽活動に精を出しています。

本来なら、師岡康子らのような中心的な人物が率先して、人間的な解決の指揮を執るべきではなかったのか? 前田朗の言葉を借りれば、「今からでも遅くない」、真正面から真摯かつ主体的に対応することが必要ではないのでしょうか? 何度でも繰り返します、私の言っていることは間違っていますか?

この朝日の5回連載の執筆者の北野隆一、ちょっと調べてみると“確信犯”だったことが判明しました。けっこう執拗な取材もやり、かの小林よしのりのマンガにもなっているそうですが、北野さんもこれをお読みなっているのなら決して逃げないでください。関西の朝日の記者らは、都合が悪くなると「広報を通してくれ」と逃げましたが、北野編集委員についてはそういうことはないと信じます。今、調査・取材を始めましたので、後日、あらためてこの「通信」にて記述したいと考えています。(本文中敬称略)

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 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

検察とマスコミのロッキード時代の超ズブズブぶり 朝日とNHKの記者が実名で明かした凄い本 片岡 健

黒川弘務元検事長が新聞記者たちとの賭けマージャンを週刊文春に報じられた騒動をめぐっては、検察とマスコミはそこまでズブズブだったのか……と驚く声、呆れる声があちこちで沸き上がっている。それでも、ひと昔前に比べたら、検察とマスコミのズブズブ感は薄まっているのかもしれない。2016年に発行された書籍『田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と特捜検察「栄光」の裏側』(朝日新聞出版)を読めば、おそらく誰もがそう思うだろう。

同書は、朝日新聞のウェブサイト「法と経済のジャーナル」で22回に渡って連載された「特ダネ記者がいま語る特捜検察『栄光』の裏側」を書籍化したもの。朝日新聞、NHKの両社で検察取材を担当した記者1人と元記者2人が、2013年に亡くなった吉永祐介元検事総長のエピソードを中心に検察の捜査や、検察報道の今と昔について、裏の裏まで語り合っているのだが、その中では、検察とマスコミの超ズブズブぶりも具体的エピソードと共に明かされた凄い一冊だ。

◆元検事総長から捜査資料を提供されたことをNHK記者が告白

『田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側』(朝日新聞出版)

吉永氏は東京地検特捜部の副部長時代にロッキード事件の捜査を指揮したのをはじめ、数々の特捜事件を手がけ、「検察のレジェンド」と呼ばれる存在。本書でこの吉永氏のことなどを語り合っているのはNHK元記者の小俣一平氏(1952年生まれ)、朝日新聞元記者の松本正氏(1945年生まれ)、同・現役記者の村山治氏(1950年生まれ)の3人だ。いずれも検察取材が長く、小俣氏と松本氏の2人は吉永氏に深く食い込んだ記者だったという。

そんな同書では、村山氏が担当した前書きに、小俣氏のことを次のように紹介する文章が出てきて、いきなり驚かされる。

〈小俣さんは、歴代のマスコミ各社の記者の中で最も吉永さんに食い込んだ記者だった(中略)吉永さんの家族同然で、吉永さんが亡くなるまで濃密に付き合った。2006年には、吉永さんの捜査資料をもとに、坂上遼の筆名で『ロッキード秘録 吉永祐介と四十七人の特捜検事たち』(講談社)を執筆した〉(P19)

小俣氏が元検事総長の吉永氏と「家族同然」の付き合いをしていたというのも凄いが、何より特筆すべきは、小俣氏が吉永氏の捜査資料をもとに本を書いたことがあけすけに語られていることだ。普通に考えると、小俣氏に捜査資料を見せた吉永氏の行為は国家公務員法上の守秘義務違反にあたるからだ。

黒川氏と新聞記者たちの賭けマージャンが発覚した際には、黒川氏が捜査情報を記者らに提供するなどの守秘義務違反を犯しているのではないかと疑う声が飛び交った。黒川氏と記者たちの間でそのようなことが本当にあったのだとしても、吉永氏と小俣氏のズブズブぶりに比べたら、まったくかわいらしいものである。

ロッキード事件では、マスコミが検察と手を組み、田中氏を追及していた(朝日新聞東京本社版1983年1月27日朝刊1面)

◆朝日新聞社会部長はロッキード事件で検察の捜査を支持することを事前に確約

ロッキード事件に関しては、さらに凄い話が出てくる。村山氏によると、検察が捜査開始宣言をする2日前、朝日新聞の佐伯晋社会部長が密かに東京・霞が関の検察庁ビル8階の検事総長室に布施健(たけし)検事総長を訪ねていたというのだが、同席した東京高検検事長の神谷尚男氏から次のように持ちかけられたという。

「法律技術的に相当思い切ったことをやらなければならないかもしれない。それでも支持してくれますか」(P69)

これに、佐伯氏は「もちろん」と答えたというのだが、「法律技術的に相当思い切ったこと」とは、5月27日付けの当欄で紹介した「嘱託尋問」のことだろう。

検察が日本で起訴しないことを約束し、最高裁も刑事免責を保証したうえで、アメリカで行われたロッキード社のコーチャン氏らに対する嘱託尋問では、コーチャン氏らが田中氏への贈賄を証言し、検察が田中氏を刑事訴追するための有力証拠となった。しかし、当時の日本では刑事免責は制度化されておらず、コーチャン氏らの証言は最高裁に証拠能力を否定されたというのはすでに述べた通りだ。

当時、この証言の違法性がほとんど注目されなかったのは、マスコミが水面下で検察と手を組んでいたからだったのだ。

◆「田中角栄を逮捕した男」は自宅で毎日のように大勢の記者と飲み会

同書では、松本氏もひと昔前の検察とマスコミのズブズブぶりをこう証言している。

〈吉永さんや当時の特捜部の幹部は、「マスコミこそが、特捜の応援団なんだ。その支えを失ったら、検察は終わりだ」とよく話していました〉(P98)

実際、ロッキード事件の捜査、公判に関する当時の新聞記事を見ると、マスコミが検察の応援団と化し、田中氏を一緒に追い込んでいるような雰囲気だ。マスコミにとっても、検察と手を組み、政治権力者の疑惑を追及するのは「正義の実現」という認識だったのだろう。

そして極めつけが、吉永氏と記者たちの関係を振り返った次のくだりだ。

〈吉永さんは、田中元首相の一審公判の判決前後に東京地検次席検事を務めた。東京地検次席検事は、検察のスポークスマンで、毎日定例会見を開き、記者の夜討ち朝駆けも受ける。夜はたいてい、自宅に記者が大勢来て、酒を飲む。そういう中で毎日のようにトイレが汚れた。誰かが酔っぱらって粗相をするのだ。それを見つけるといつも吉永さんは長男を捕まえ「お前また汚しただろ」と叱りつけた。後に、長男は小俣さんに「あれは親父が犯人だったんですよ。検事のくせに他人のせいにするんですよ」と話した。鬼検事の吉永さんも家庭では普通のダメ親父だった〉(P98)

東京地検次席検事の自宅で、毎夜、記者が大勢集まり、酒を飲んでいた……。黒川氏の賭けマージャンの会場が産経新聞の記者の自宅だったとか、黒川氏が記者に提供されたハイヤーに便乗して帰宅していたとか、これに比べれば実に些細なことだと思えてくる。

賭けマージャンが発覚した黒川氏が訓告、朝日新聞の元記者が停職1カ月といずれも甘い処分で済み、刑事責任も追及されないことについては、批判する声が少なくない。しかし、これまで検察とマスコミがズブズブに付き合っていた歴史を振り返ると、検察も新聞社も賭けマージャンくらいで厳しい処分を下すことはできないというのが実情なのだろう。

この本の著者たちの言葉の1つ1つは、賛同できるか否かはともかく、検察とマスコミの裏面を世に伝える貴重な資料であることは間違いない。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第9話・西口宗宏編(画・塚原洋一/笠倉出版社)が配信中。

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書12】闘いはまだ終わってはいない!(10)平気で嘘をつく人たち(3)~ 再び李信恵の場合 鹿砦社代表 松岡利康

6月18日の朝日新聞夕刊は北野隆一署名記事で、性懲りもなく李信恵らを持ち上げています。安田浩一、上瀧浩子といった、いつもの名(笑)もありますが、これまでのこの連載との関連で、ここでは李信恵のみを採り上げます。

リンチ直後の被害者M君の写真。血の通った人間なら、これを見て恐怖を感じませんか?

人を正確に評価するには、その人の表面だけでなく裏面、光だけでなく影、陽の部分だけでなく陰の部分、上辺だけでなく暗部なども採り上げ検討しないと評価が不正確で偏頗なものになってしまうのではないでしょうか? ジャーナリズムの世界では基本中の基本です。そうですよね?

北野編集委員の一連の文章を読んでみると、表面のみ、光のみ、陽のみ、上辺のみをキレイごとにまとめ掲載しているだけで、私如き地方小出版社のオヤジが批判するまでもなく、不正確で偏頗なものになっています。これが現在の、わが国を代表する大新聞社の編集委員ともいう者のレベルというのなら嘆かわしい限りです。みなさん、そう思いませんか?

そうすると、李信恵という人を評価する場合、彼女が連座した大学院生M君リンチ事件という暗部にも触れずに「彼女は差別されてきた」ということばかりを殊更に強調すると、読者に不正確な人物像を伝えることになるのではないでしょうか? 
特に、くだんのリンチ事件は、カウンター運動に関連して、その中心メンバーによって惹起されたのですし、北野の記事にある裁判後に、懇親会のみならず5軒も飲み歩き「日本酒にして一升」(李信恵談)余りも泥酔した中で起きました。

さらに、リンチ被害者M君は、李信恵の仲間やカウンター運動に関わる者らによって激しいネットリンチをなされ村八分にされます。私たちは、この事件を知るまで1年余りも一部の知人ぐらいがM君をサポートするぐらいでM君は孤立していました。

李信恵が発信したツイートの数々
朝日新聞6月18日夕刊

確かに民事訴訟や刑事手続きで李信恵は賠償金も罪も課されませんでした。李信恵や神原元弁護士らは「正義は勝つ」とか狂喜乱舞し酒場でのバカ騒ぎをネットで発信(別掲)していますが、これは、裁判所がよく使う言葉「一般読者の普通の注意と読み方」によれば、明らかに〈誤判〉だと思います。激しいリンチで冒頭の写真のような重傷を負ったM君の気持ちを更に傷つかせた判決でした。ひとりの生身の人間に激しい物理的暴力を加えることは、加えられた人の人権を蔑ろにすることですよね? 裁判所は「人権の砦」ではなかったのではないでしょうか?

李信恵らは、くだんの対ネトウヨ裁判後、飲み歩き泥酔した勢いで日付も変わった深夜、M君を呼び出し、M君が到着するや、李信恵は「なんやねん、お前! おら!」(「反差別」や「人権」の旗手はこんな汚い言葉を使うようです)と胸倉を掴み一発手を出し、これをきっかけにして主に「エル金」こと金良平を実行犯として長時間のリンチが続きました。李信恵はリンチの最中も悠然とワインをたしなみ、なんとそれをSNSで発信しています(別掲記載右側中)。殴られ続け、リンチ直後の写真(別掲)を見れば誰もが恐怖を感じるように、リンチ最中のM君の恐怖はいかばかりだったでしょうか? M君はその後、現在に至るまでPTSDに苦しみ深夜に知人に電話してくるほどだといいます。それはそうでしょう。

さらに、リンチも時間が経ちM君がぐったりしているところで、
「まぁ殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」
と、一躍有名になった“名台詞”を吐いています。「反差別」の旗手で「人権」を声高に叫ぶ人は、こんな残酷な言葉を吐くのでしょうか。

李信恵が賠償を免れたことで狂喜する李信恵と神原元弁護士ら。不法行為と賠償金を押し付けられた格好になったエル金(金良平)の浮かぬ表情が印象的。エル金は、この後、賠償金支払いに苦慮した

本稿では、李信恵がリンチ後、被害者M君に出した「謝罪文」を全文挙げておきます。これはその後、M君が孤立しているのを見計らってか撤回しますが、「反差別」の旗手で「人権」意識の高い(ん?)人は、時に常人には理解できないことをなされるようです。

李信恵「謝罪文」(P01-P02/全7枚)
李信恵「謝罪文」(P03-P04/全7枚)
李信恵「謝罪文」(P05-P06/全7枚)
李信恵「謝罪文」(P07/全7枚)

李信恵が連座した大学院生M君リンチ事件は、李信恵に連携する徒輩による隠蔽活動にもかかわらず、知る人ぞ知ることになりました。

上瀧浩子弁護士が、李信恵がネトウヨを訴えた件の訴訟に「意見書」執筆を依頼し、これに応じた前田朗東京造形大学教授は、鹿砦社の本で、このリンチ事件を知り李信恵に対し「唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なう」とまで批判しています。

李信恵が「唾棄すべき低劣さ」から脱するには、まずこの「謝罪文」に立ち返り、M君に心から謝罪し、真に主体的に反省するところから始まると思います。

私の言っていることは間違っているでしょうか?(本文中敬称略)

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 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書11】 闘いはまだ終わってはいない!(9)平気で嘘をつく人たち(2)~ 野間易通の場合  鹿砦社代表 松岡利康

朝日新聞6月17日夕刊

帰宅し夕食前に朝日新聞6月17日夕刊を見て驚きました。われらが野間易通が写真入りで登場しているではありませんか。一気に食欲を失くしました。朝日は、いまだにこういう記事を書くのか――「北野隆一」名の署名記事です。なんだ駆け出しの記者かと思いきや、なんと編集委員だということです。

記事を読むと、目新しい内容はなく、私たちから見れば、どうということもない記事ですが、逆に綺麗事で粉飾されているからこそ、事情を知らない人が読めば、野間易通という人に良いイメージを抱き、“ヘイトスピーチと闘う正義の人”と誤認するでしょう。

この北野編集委員は、野間が、ヘイトスピーチと見紛うような汚い言葉を、自らの意に添わない人たちに浴びせ、リンチ被害者M君や某地方公務員から提訴され、裁判所は野間の不法行為を断罪し賠償金を課したこと(2件とも確定)や、あるいは何度もツイッターでアカウントを変えたりして汚い言葉(言葉の暴力!)で相手を攻撃したり誹謗中傷したことで相次いでアカウントを閉鎖され、「永久追放」されたとも聞きますが、こういうことを知った上で、こんな歯の浮くような記事を公にしているのでしょうか。「在日コリアンを助けるためではなく、自分たちの問題として取り組む」(本文より)──失笑せざるをえません。少しは事情をご存知の方なら、私と同じく感じられることでしょう。

私が「しばき隊」とか「カウンター」とかいわれる人たち、さらにはこれに繋がる「反原連」「SEALDs」に疑問を持ったのは、2015年、彼らによる、韓国から親子で日本に研究に来ていた京都大学研修員(当時。現在も日本で大学の非常勤講師を務め滞在)だった鄭玹汀(チョン・ヒョンジョン)に対する激しい攻撃、誹謗中傷、ネットリンチでした。詳しい内容は、野間らによる「誹謗中傷・罵倒の限りをきわめ、彼女の全人格を根本的に否定するものでした。果ては名誉毀損や脅迫とおぼしき行為にまで至り」、鄭の研究者仲間が鄭を守るために奮闘し支援者らが作ったサイト「社会運動上の人権侵害を許さない」(https://www.facebook.com/groups/1612146335704041/1618038885114786/?notif_t=group_activity)をご覧ください。野間は「闇のしばき隊@kdxn」なるハンドルネームで先頭になって鄭攻撃を行い、カウンター/しばき隊/SEALDs関係者がこぞってこれに倣っています。これこそ、言葉の真の意味で、まさに〈ヘイトスピーチ〉そのものだと思いました。

リンチ本第5弾『真実と暴力の隠蔽』(2018年5月28日発行)P79~83

それまでは深い事情も知らず「反原連」(首都圏反原発連合)に毎月相当の資金援助も行っていました(1年間で300万円余り!)が、私が『NO NUKES voice』誌上に書いた記事(6号「解題 現代の学生運動──私の体験に照らして」2015年11月25日発行)が彼らの意に添わないということで有無を言わさず公に絶縁宣言を出され、そうこうしているうちに(2016年2月~3月頃)彼らと連携する者(李信恵ら)によるM君リンチ事件を知り、「いくらなんでも、これは酷いだろ」とM君救済と真相究明に取り掛かり、それまでの蜜月関係から一気に対立関係へと転換しました。一時は多額の経済的支援をしたのなら、少しは感謝してもよさそうなものですが、感謝の気持ちなどなく、国会周辺では「たんぽぽ舎」に委嘱した『NO NUKES voice』のチラシの配布は妨害されるということです。まあ、これが彼らの人間性でしょうが……。

野間は、一貫して加害者側に立ち、このリンチ事件の被害者M君を執拗に攻撃し、M君から提訴され敗訴しています。朝日の編集委員ともいう者が、こういうことはちょっと調べればすぐに判るはずなのに、全くスルーしています。いや、知っていてスルーしているのなら、さらに悪質と言わねばなりません。こうしたことをスルーして、歯の浮くように野間を美化する記事を書くことに問題はないのでしょうか? 社会の公器としての大手新聞人がやることではありません。

野間らは言う、「リンチはなかった」! まさに「南京大虐殺はなかった」、あるいは「ガス室はなかった」などというに等しい三百代言です。

野間による〈言葉の暴力〉=〈ヘイトスピーチ〉は数限りなくあります。リンチ本第5弾『真実と暴力の隠蔽』で、ほんの一部を掲載してみました。「糞チョソン人」「南洋土人」──沖縄で機動隊が現地住民に「土人」と詰(なじ)りマスコミに大きく報じられ問題になったことがありましたが、野間が言ってもマスコミはなぜ黙っているのでしょうか? 大いに疑問です。北野編集委員、どう思われますか? ぜひお答えいただきたいものです。

リンチ本第5弾『真実と暴力の隠蔽』(2018年5月28日発行)P79~83
リンチ本第5弾『真実と暴力の隠蔽』(2018年5月28日発行)P79~83

◎翌日の6月18日夕刊にも安田浩一、李信恵、上瀧浩子といったリンチ事件加害者(擁護者)が登場しています。もうこの人らのしらじらしい言説には飽き飽きしました。後日、この記事に対してもコメントいたします。(本文中敬称略)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉【後編】

JKS安國樂團によるサックスとトランペット演奏にのせて澁澤光紀による陀羅尼品第二十六が始まった。

「アニ、マニ、マネ、ママネ……」とサンスクリット語の音写によるリズミカルな呪文をどんどん加速させながらと共に木柾を打ち鳴らしながら天を仰ぎ反り却って高速なパッセージ呪文をまくし立て、山崎春美が銅鑼をバシャバシャと打ち鳴らす。これはもはやフリージャズの様相を呈している。

黒の僧衣に、白い袈裟というドレスコードで統一されて格好よろしい。「ま、上杉主宰曰く、シュールレアリズム運動だから……と。」と山崎春美氏の談。日蓮イズムとはいかなるものか考えさせられる
 

この日、残念ながら発起人である上杉代表は74歳・持病あり・静岡在住のため緊急事態宣言下での移動は憚れることもあり欠席ということだった。上杉代表に代わり澁澤光紀による回向文(亡くなった人の冥福を祈る文)にて、

「伏して祈らくは我等 JKS47 日本祈祷団四十七士は死者のメディアたらんと決意し、無告の民の声を聴き、敗れし者の傍らに身を置き、死者との共存・共生・共闘、死者と共に在り、死者と共に生き、死者と共に闘うことを理念として掲げ、ひたすら死者による裁きを神仏に懇請し祈念し奉る国家諫暁を志す者である。日米安全保障条約・日米地位協定に基づく沖縄をはじめとするすべての在日米軍基地の存続、原発再稼働と原発海外輸出、自衛隊の再軍備と海外派兵、天皇制の再利用、憲法改正等々を企み、現下の適切早急なコロナ対策を怠り誤り大失態・大失政を繰り返す国賊安倍政権とそれに加担する政官財学の悪しき売国奴に、死者の裁きが下されんことを、ここに祈念し奉る。」

と呪殺の主題を読み上げた。

 
「経産省前テントひろば」の三上治さん

「確かにコロナウイルスは人々の命を蝕む危険極まりない病原菌である。しかしそれよりも恐ろしいのは再び日本を大日本帝国憲法下の治安維持法が猛威をふるったあの時代に、人々から全ての自由を奪い、言論からすべての表現の自由を奪い、人々を貧しい生活のどん底に追い込むそのような日本のあり方を画策している『アベウイルス』をまさに退陣させなければならない。」と締め括った。

三上治は「経産省前テントひろば」を代表して、

「我々はコロナウイルスの問題に関して(政府やメディアを通じての)情報しか知らないわけですから、情報が自由でなければ本当のことが伝わってこないわけです。国立感染研究所のような政府の機関というのは本来、科学に基づいて問題への対策をとっていくべきだが、正しく機能していないのは科学が政治に支配されてしまっている。政治的な思惑ではなく科学的な対応をしていくべきなので、科学の上に政治を置いてはいけない。科学が機能するためには自由が必要なんだ、自由があって初めて科学精神・科学技術というのは成り立ったんだ。しかし残念ながら日本社会では科学精神ではなくて科学技術だけが輸入され、それらが国家によって作りあげられてきたという明治以降の歴史があり、科学者が科学的に対応してくれないのは(今回のコロナ禍も)原発問題でもそうです。科学というものは宗教的な(政治的な)権威から自立する形を通して成立してきたということ。また、情報が正しく機能するためには自由が大事なんだ。」

と自由がいかに重要か指摘した。

◆地下室を捨てよ、町に出よう

現代のSNSを中心として世の中に漂う「わかりやすい共感」主体の清廉潔白とした装いの社会正義と比較すると、JKS47のアプローチは何やら物騒で不気味な怪しい祈祷集団によるパフォーマンスであるが、個々人の信念に基づく自由な老人達のダークヒーロー的なパワフルな表現のあり方は全共闘世代から現代の若者へのギフトなのではないだろうか。ライブハウスが相次いで閉鎖となっている時節と絡めて無理くり論ずるならば、ミュージシャンは「地下室を捨てよ、町に出よう」という契機なのかも知れない。JKS47の呪殺祈祷会は毎月定例で行われているので、開催日をチェックして現場に急行してみて欲しい。

【JKS47 月例祈祷会】
日時:2020年6月19日(金)午後2時45分より
会場:経産省前テントひろば
JKS47事務局
合 掌

最後にJKS47のWEBサイトにて『呪殺祈祷考「呪殺祈祷会―死者が裁く―」についての経典・御遺文の文証について』という本活動に対する方々の日蓮宗関係の僧侶から殺到した批判に対して回答した論考の中から、「呪殺」という言葉についてより詳細な解説をみつけたので要旨を掻い摘んでここに紹介する。

「呪」の元は「祝」であり、祝りと呪いの両義性があって、祝呪することが「呪」である。また仏教語「呪」の原意となるmantraも「真言」と訳されるように、聖なる言葉によっての祝呪が「呪」の意味となる。

「殺」とは、たたりをひきおこす獣を戈(ほこ)で殴って殺す形で、これによって祟りを殺ぎ(へらし)、無効とする行為を「殺」といい、減殺(へらすこと)がもとの意味である、

今回の祈祷会で本僧団が使った「呪殺」の意味は、「呪」は「のろい」ではなく「いのり」であり、「殺」は「祟りをひきおこす煩悩を減殺していく」ことである。(本文中敬称略)(了)

打ち鳴らされる団扇太鼓が官庁街に木霊する。世界最古の太鼓と目されるメソポタミアのフレームドラムと同じ共鳴体のない一枚皮の構造。人類の根源的なサウンドにして、仏教がシルクロードを通じて伝来したことの証左になろうか

◎原田卓馬 《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
【前編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35521
【中編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35541
【後編】http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35549

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
ご意見ご感想、もしくはご質問などはtwitter@dabidebowie

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

『NO NUKES voice』Vol.24
紙の爆弾2020年7月号増刊
2020年6月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/148ページ

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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

黒川氏は氷山の一角! 検察庁法改正案に反対した松尾邦弘氏をはじめ、検察は天下りでもマスコミとズブズブ 片岡 健

元検事長の黒川弘務氏が新聞記者らとの「賭けマージャン」を週刊文春に報じられ、辞職に追い込まれた一件をめぐっては、検察とマスコミのズブズブぶりに対しても批判の声が渦巻いている。「権力監視が使命」などとうたうマスコミが実際には捜査当局とズブズブだというのはもはや常識だが、「それにしても、ここまでとは……」と驚いた人も少なくなかったのだろう。

実を言うと、検察とマスコミがズブズブなのは、検察官が現職の時だけの話ではない。退官後、マスコミに天下る検察幹部も散見されるからだ。今回はその実例を紹介したい。

◆松尾氏はテレビ東京の監査役に7年近くも在任

監査役を務めるテレビ局に自分の活躍を報道させる松尾邦弘氏(テレ東NEWSより)

筆者は当欄で、検察OB14人が検察庁法改正案に反対意見を表明し、ヒーロー扱いされた異常事態の危うさを繰り返し指摘してきた。あの14人の中でも存在感が際立っていた元検事総長の弁護士・松尾邦弘氏については、マスコミに天下った検察官の実例としても真っ先に紹介しなければならない。

というのも、松尾氏は2013年6月にテレビ東京ホールディングスの社外監査役となり、それから7年近くに渡って在任し続けているからだ。このように東京キー局の役員に検察OBが長く名を連ねるケースは珍しく、松尾氏は検察とマスコミがズブズブの関係であることを象徴する人物だと言っていい。

では、松尾氏以外の検察官のマスコミへの天下り状況はどうかと言えば、現在、テレビ局や新聞社、通信社に天下っている例は見当たらない。一方で目立つのは、広告代理店に天下っている検察官たちだ。何しろ、広告代理店の大手各社が揃って検察官の天下り先となっているのだ。

◆高橋まつりさんの過労死をきっかけに電通に天下った検察OB

まず、業界最大手の電通グループ。2015年12月、入社1年目の女性社員・高橋まつりさん(当時24)が過労を苦に自殺し、大バッシングされたのをうけ、同社は2017年2月、有識者3人から成る「労働環境改革に関する独立監督委員会」を設置した。その委員長を務めたのが、元福岡高検検事長の弁護士・松井巖氏だった。そして松井氏は今年3月から同社の社外取締役についている。

高橋さんが自殺に追い込まれた件では、電通は検察に労働基準法違反罪で略式起訴され、罰金50万円の有罪判決を受けているが、このように同社が刑事事件の加害者となったのをきっかけに、検察OBが役員のポストをゲットしたわけだ。

次に、扱い高が業界2位の博報堂DYホールディングス。同社では、2015年6月から最高検刑事部長だった弁護士の松田昇氏が社外取締役を務めている。松田氏は元々、2005年1月から同社の完全子会社である博報堂の社外監査役を務めており、社外役員としては破格の長期在任だ。ズブズブ中のズブズブだと言っていい。

そして最後に、総合広告代理店の中では扱い高3位のADKホールディングス。現在の役員に検察OBはいない同社だが、元々、検察との結びつきは前出の2社よりも強い。前身のアサツーディ・ケイ時代、2012年3月から2014年3月にかけて元検事総長で弁護士の大林宏氏が社外取締役を務め、さらに2014年3月から2015年3月まで大林氏の後任を務めたのも元広島地検検事で作家の弁護士・牛島信氏だったくらいだ。

ちなみに牛島氏が検察官として働いたのは若い頃に2年程度だが、同氏は弁護士としてはやり手のようで、松竹で社外監査役、エイベックス・グループ・ホールディングスで社外取締役を務めたこともある。マスコミとは切っても切り離せないエンターテイメント業界ともつながっているわけだ。

こうした前例をみると、新聞記者らと賭けマージャンをするほど親密な関係だった黒川氏も何事もなければ、退官後はマスコミに天下っていた可能性がありそうだ。「懲戒免職にならないのはおかしい」と批判され、退職手当をもらうことにまで厳しい目を向けられている黒川氏だが、すでに地位以外の様々なものを失っているのかもしれない。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第9話・西口宗宏編(画・塚原洋一/笠倉出版社)が配信中。

6月7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政
6月11日発売!〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

【カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)検証のための覚書10】 闘いはまだ終わってはいない!(8) 平気で嘘をつく人たち 鹿砦社代表 松岡利康

ずいぶん前に話題になった『平気でうそをつく人たち~虚偽と邪悪の心理学』(M・スコット・ペック著、草思社刊、1996年。現在は草思社文庫)というタイトルの本を思い出しました。出版直後、タイトルに惹かれて購読した記憶がありますが、書棚に見当たらず、今は文庫になっているというのでアマゾンで取り寄せました。思ったように分厚い本で、今読み直しているところです。「平気で嘘をつく人」の心理や気持ちを知るために。

松岡と裁判前に喫茶店で「偶然の遭遇」をしたという李信恵の虚偽のツイート

先の李信恵の「陳述書」でも、例えば「李信恵さんの裁判を支援する会」事務局長の要職にありリンチ事件直後に加害者らに対する事情聴取の場に同席した岸政彦教授が「『リンチ事件』と称する暴行事件に関して、事実関係も何も全く知らないのです」という記述は誰が読んても嘘だと判ります。

私たちが事情を知らないと思ってか、李信恵という人は、こうした嘘を平然と書く──取材などで会った多くの人から、李信恵が「平気で嘘をつく人」だとたびたび言われました。当初は半信半疑だったのですが、別掲のツイートで、「ああそうか、こういうふうにして、この人は物語を作り嘘をつくのか」と思った次第です。

ここで李信恵は、「月曜日の裁判の日、早く到着したので入った喫茶店で。ずっとこっちを見て立ち上がったり、辺りを見回したり、近くまで来る男性がいて。怖いし何だろうかと思ったら、鹿砦社の松岡氏ってことを後で知ったり。」とツイートしています。

残念ながら、こういう事実はありません。虚偽のツイートで、まさに名誉毀損ものです。私松岡が初めて彼女の顔を拝したのは、この裁判の本人尋問ででした。それまでは一面識もありませんでしたし、当日の尋問の前に喫茶店で会ったこともありません。顔かたちも知りません。何という名の喫茶店ですか?この件をネットで批判しましたが、李信恵からの反応はなく、沈黙し逃げています。よくこんな見え透いた嘘が平気でつけるものです。

そして今回の「陳述書」での岸政彦教授が「『リンチ事件』と称する暴行事件に関して、事実関係も何も全く知らない」という、誰が読んても嘘と判ることを平然と、まことしやかに記述しています。

くだんのリンチ事件が発生するまで李信恵や上瀧浩子弁護士の仲間で昵懇だった凜七星(上瀧弁護士とは「友だち守る団」というグループで一時一緒に活動)は、『真実と暴力の隠蔽』(134ページ)で、「たぶんねぇ、悪いのはだいたい李信恵なんですよ。彼女は言い訳だとか、話を捻じ曲げて自分の都合のいいようにするのが得意」と私に仰いました。なるほど、合点がいきました。

さらに、このたびリンチ事件について調べ直す過程で、神原元弁護士と、しばき隊/カウンターグループのボス・野間易通のツイッターのやり取りが出てきました。

リンチ被害者M君が必死で録音した音声データを、あろうことかリンチがなかったことの「証明」だと、恣意的に事実を捻じ曲げています。この人たちの頭の構造が理解できません。この音声データが明るみに出るや、こうした三百代言を思い付き、まことしやかに公言しています。

リンチの最中の音声データが「リンチがなかった」ことの「証明」だと言い張る神原弁護士と野間易通のツイート

ナチスの宣伝相・ゲッベルスは、「ウソも百回つけば本当になる」との有名な言葉を遺していますが、いやしくも「人権」だ「反差別」だと声高く語る人がやる手法ではありません。

このように彼らにかかっては、いかなる証拠も自分らの都合のいいようにこじつけられ偽造されてしまいます。

みなさん、リンチの最中の録音(『真実と暴力の隠蔽』に付けたCD)をお聴きください。ちょっと聴いただけで吐き気がしますが、これがなんでリンチがなかった「証明」になるのでしょうか?

しかし、賢明なみなさんは、私たちが額に汗し這うように調査・取材しまとめ上げた5冊の本によって、彼らがいくらまことしやかに言い募っても、その中のウソを見抜いているでしょう。もうウソは通用しません。(本文中敬称略)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

コロナ禍で隠される日本人の死因 ── 4月の東京都の「超過死亡数」が約1500人 コロナ死119人の12倍=やはり全国で1万人以上が死んでいる? 横山茂彦

東京都の発表によると、今年の4月の死亡者数は10107人だった。ここ数年(平成27年~令和元年)の平均死者数(8626人)を、じつに1481人も上回る「超過死亡」が出ていることがわかったのだ。そして3月の死亡者数も、ここ数年で最多だった。

[図表]平成27年から昨年までの平均死亡者数と今年の比較(出典=産経新聞6月12日)

これは都が発表した、新型コロナによる両月の死者数計119人の約12倍になる。ぎゃくに、2月が例年よりも少なかったことから、3~4月の死亡者数の多さは、そのままコロナ関連死ではないかと考えられるのだ。

この数字を日本全体(東京都は14000万人弱・日本は1億2700万人)とすると、累計1万4000人近くが死亡している可能性があることになる。政府発表の942人の12倍とすれば、1万1000人以上がコロナ関連死していることになる。いずれにしても、1万人以上の死者が出ていることを、東京都の3・4月データはしめしているのだ。

◆隠された死因

わたしは本欄の『紙の爆弾』(7月号)紹介書評において、拙文を「数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)はウルトラ仮説ながら、根拠がないわけではない。じっさいに、法医学病理学会の調査では医師から要請があっても、保健所と国立感染研は遺体のPCR検査を拒否しているのだ。肺疾患の場合、病院の医師は肺炎を併発していても、ガン患者の死因を肺ガンにする。ガン保険を想定してのことだ。

しかし今回、遺体へのPCR検査を避けたかった厚労省医系技官(保健所を管轄)および国立感染研においては、意識的にコロナ死者数を減らす(認定しない)のを意図していたのではないか。その答えは年末の『人口動態統計』を参照しなければ判らないが、年間10万人の肺炎死の中に、コロナ死がその上澄みとして何万人か増えているとしたら、日本はコロナ死者を隠していたことになるのだ。」と紹介した。

[図表]世界のコロナウイルス死者数(外務省・現地集計)

今回の東京都の3・4月の死亡者数はまさに、肺炎をはじめとする他の死因に新型コロナウイルスによる死者が隠れている可能性を顕したのだ。

日本政府はコロナ罹患の少なさ(じつは検査数の圧倒的な少なさによる)、および死者数の少なさをもって、「基本的に防疫に成功した」(安倍総理)、「日本人の民度の高さを誇るべき」(麻生財務相)などと喧伝してきた。

とりわけ「民度の高さ」などという、上から目線の言辞を批判されたものだ。死者の数だけを言うならば、死亡者ゼロのウガンダやベトナム、モンゴル、カンボジアなどのほうが日本よりもはるかに「民度が高い」ということになる。死亡者ゼロはドミニカ、フィジー、セーシェルなど、枚挙にいとまがないのだ。

◆今の日本に欠けているもの

菅直人元総理は『NO NUKES voice』24号(最新号)において、歴史学者のユヴァルノ・ノア・ハラリの言葉を紹介している。

「今回の危機で私たちは重要な二つの選択に直面している。一つには『全体主義的監視』と『市民の権限強化』のどちらを選ぶのか。もう一つは『国家主義的な孤立』と『世界の結束』のいずれを選ぶのか」

中国(武漢)が「全体主義的監視」のもとに都市をロックダウンし、韓国と台湾においても「戦争継続(休戦)国家」ならではの管理の徹底による防疫が成功したといえよう。麻生副総理の「民度」発言は、戦争継続国家でもない日本が「良くやった」と言いたいのであろう。

◆日本はIT後進国だった

だが、上記三国と日本の決定的な違いもまた、明らかになった。わが国がITインフラおよびその完熟力において、はるかに遅れた国だったことである。中国や韓国が義務教育レベルでネット授業を行なったのに対して、わが国は小中学高校生を自宅自習(じつは有休)にとどめた。大学などの高等教育においてすら、慌ててIT環境をととのえる試行錯誤に終始した。このどこが「民度が高い」というのだろうか。
アジア諸国とのIT受容力の違いは、じつは近代化・現代化の曲線によるものだ。すなわち、アジア諸国に先駆けて電線網(および公衆電話)を整備した日本において、ぎゃくに携帯電話の普及が遅れたのである。携帯電話の普及の遅れはそのまま、PCおよびスマホの普及の遅れ、とりわけ高齢層のIT受容力が低いままの社会となったのだ。初等教育における携帯電話の禁止、あるいはSNSの制限なども作用し、国民全体がネット社会を成熟させられない現状がある。

◆ITを使いこなせない行政府

IT受容力の低さは、定額給付金におけるネット申請時のサーバーのダウン、あるいは持続化給付金(ネット申請のみ)の遅配(当局の無応答も多い)として顕われている。いやそもそも、コロナ感染者数の情報伝達すらも、FAXに頼るがゆえに数値に誤差が顕われるなど、防疫行政の中枢から「アナログ状態」を露呈していた。じつに「IT民度の低さ」こそが、いまだに感染が収まらない一因なのだといえよう。
『紙の爆弾』(7月号)において、わたしはPCR検査を抑制した原因を厚労省医系技官、および国立感染研OBのデータ独占にあると指摘した。当初それは、オリンピックの無事開催を見すえた、国策的な検査抑制であった可能性も高い。そしてそれは、現在も継続していると改めて指摘しておこう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉【中編】

4月22日、定刻の午後三時、経産省の正面玄関前に黒地に白で「鎮魂 死者が裁く」と染め抜かれた横断幕が掲げられ、トランペットの独奏によるファンファーレで開式となった。

拡声器から再生される「怪獣ゴジラ」の咆哮と「仁義なき戦い」のテーマがコラージュされた不気味なBGMとともに、サイケデリックなニット帽の上からペストマスクという不穏な出立で現れた山崎春美(ロックバンド『ガセネタ』『TACO』のリーダー/編集者)による朗読が始まった。

サイケデリックなニット帽の上からペストマスクという不穏な出立で現れた山崎春美による朗読

男が一人門の前にやってきて
俺を殺すな
人々がばたばたやって来て
皆よってたかってその男をひきずりおろして
地下室へ連れてった
いずれ死ぬんだからここで死んだっていいんだ
いいかよく聴け
お前の右手が
俺の左手を打つ
俺の右手がお前の左手を打つ
そしてお前の左手を掴む
するとこうやって二人が
抱き合うみたいにして今度はもつれて
それが敵っていうもんだ
それが敵の必要にして十分な条件というものだ
そこんところお前はよく弁えてな
そしてお前は
振り返りざま 撃て
嫌だ俺は殺されたくない

現在そのような状況です

(細部省略)

長期に及ぶシベリア抑留を体験した詩人・石原吉郎の晩年の作品である「背後」(詩集「斧の思想」所収)という詩に、時事問題や即興的なカットアップが盛り込まれた、狂人の悲鳴のような叫び声が霞ヶ関の官庁街に響き渡った。

シベリアで過酷な強制労働を強いられ、また引き揚げ後に帰国した日本も適者生存の熾烈な競争社会で、どちらにもうんざりした石原吉郎が詩人としての表現活動を通じて生きる希望を見つけたというエピソードを鑑みると、文明社会の致命的な構造的欠陥を指摘しまた自由な芸術表現のみが人類個々人の生命を鼓舞する最後の切り札であるということを提示したものであるのかと邪推する。

澁澤光紀(日蓮宗善龍寺住職)による勧請(神仏を呼び寄せる儀式)に続いてコロナウイルスと東北大震災の死者への追善菩提(追悼供養)のために「妙法蓮華経如来寿量品第十六」の読経が行われた。

自我偈とも呼ばれ法華経の真髄ともされるテーマソングのような経で、「仏の命は永遠である」と説く。死者にむけた「いつまでもあなたのことを忘れませんよ」という不滅のラブソングのようなものであると解釈できよう。ここでは死者に呼びかけて集合を促すような意味があるようだ。

表白文(法会または修法の始めにその趣旨を仏前で読みあげ仏法僧の三宝および大衆 に告げること)の中で福島泰樹は、
「新型コロナウイルス国内感染者が1万人を突破してしまった。国民の生命よりオリンピック開催と自身の栄誉を優先していた安倍が、オリンピック延期決定以降、小学校の一斉休校を手始めに、「国難」と称しウイルス禍を喧伝し始めたのだ。しかも、「接触機会八割減」の大号令で国民に外出自粛を強要しておきながら、休業補償を一切しようとはしない。家賃、子供の学費、日々の支払いに苦慮し、明日の不安に戦き、食事さえも減らさざるを得ないということなのである。防衛費に、5兆2,574億円の血税を投入し、アメリカから買い上げた兵器等そのローン残高は5兆3,000億円にものぼっている。なぜ、それを国民の生活と文化の向上に廻そうとはしないのだ。中小零細企業主、個人経営者、従業員、さらに非正規労働者、解雇が続出する外国人労働者たち、パート業務を失った主婦、生活苦に喘ぐ人々の悲歎を思え」と政府による棄民政策を断じ、「原発を推進、日本の国土を汚染し、農業を切り捨て、国土と人心を荒廃させ、さらにはアメリカに日本を身売りする国賊安倍晋三よ。コロナウイルス厄災の御蔭で、森友、加計、桜と国税の私物化への批判が消え、テレビメディアが、アベノマスク10万円給付に踊らされているのをいいことに、許せないのは、「非常事態条項」設置を画策し、火事場泥棒宜しく、日本国憲法の侵犯に他ならない「検察庁法改正案」を、今国会において審議入りさせたことである。政権の腐敗にメスを入れての検察であろう。検察をも私物化し、悪政のかぎりを尽くそうというのか。なぜ、「東京新聞」を除くマスメディアは、この国家私物の危機に警鐘を鳴らし、批判のキャンペーンを張ろうとしないのだ。マスメディアよ心せよ!」とマスコミへの報道姿勢を批判した。(本文中敬称略)(つづく)

ドスの効いた低いダミ声で唸るように表白文を奏上する福島泰樹氏。「絶叫朗読」という独自の表現スタイルを確立した世界的に活躍する歌人でもある

【JKS47 月例祈祷会】
日時:2020年6月19日(金)午後2時45分より
会場:経産省前テントひろば
JKS47事務局
合 掌

◎原田卓馬 《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
【前編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35521
【中編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35541
【後編】http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35549

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
ご意見ご感想、もしくはご質問などはtwitter@dabidebowie

〈原発なき社会〉をもとめて 『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

『NO NUKES voice』Vol.24
紙の爆弾2020年7月号増刊
2020年6月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/148ページ

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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

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