日本「餌場」市場で始まったユダヤマネーとチャイナマネーの覇権戦争

昨年11月、日本から「シティバンク銀行」が撤退した。日本では数少ない外資系都市銀行で、総資産2兆2000億ドル、アメリカ、ニューヨークに本店を置く世界最大の一般銀行である。銀行として初めて当座預金口座を開設し、複利預金、無担保ローンを商品化、クレジットカード「マスターカード」を提供し、いまではダイナースクラブもシティグループの傘下にある。ATMの24時間開放、支店数を絞って人件費を削り、穴埋めとしてATMを他行と供用するなど、現在では普通に行われている銀行の運営をはじめた先進的な銀行である。

シティバンクの日本上陸は1902(明治35)年、横浜に外貨取引銀行として支店を開設したのが最初で、実に百年の歴史がある。それが消えた。業務縮小や、旧顧客向けの窓口を残すこともない。顧客は日本の既存銀行、SMBCに託す形で跡形もない。

撤退の理由として「日本の市場には将来性がない」といささか腹立たしいと共に、捨て台詞とも取れる言葉を残している。

撤退に至るまで、確かにシティバンクはいくつもの「事件」を起こしている。2004年には、マネーロンダリングの幇助を指摘され、虎ノ門支店の認可が取り消されている。2009年、には大口顧客に対する利益誘導等があったとして続けて業務停止命令を受け、2011年に受けた「多数の法令違反」があるとして、業務停止命令が出された。何度も縮小や、関連グループとの合併、子会社化を行ったが、ついに2015年撤退ときた。

きわめて不自然な消え方だといえる。日本の証券会社や銀行でも一部顧客への利益誘導やマネーロンダリングによる不正はあったとしても、それが理由で廃業に追い込まれはしない。

ここで巷間、多くささやかれるのが「ユダヤ・イルミナティー」の策謀である。
ユダヤ・イルミナティ説の多くは眉に唾をするようなものから、真実味に富んだものまで挙げられているが、ここで注目したいのが「日本という地域性」だ。

古来、キリスト教が優勢になって以来ユダヤ人は被差別民であった。国土もなく、居住地、職業選択の自由もない。「ゲットー」と呼ばれる壁の中に暮らし、賤業に就いていた。この時代、アメリカはまだ存在せず、アラブ地域はオスマントルコ帝国の支配地である。ユダヤ人には、まだ、力もなく、影響力はヨーロッパに限られていた。ユダヤ人同士の繋がりがあるとしてもまだ細々としていた。

一方、貨幣経済が発達してくると卑しい職業とされていた「金貸し」が次第に力を得てくる。つまり銀行である。一部の富裕なユダヤ人が貴族に協力し「宮廷ユダヤ人」として力を得るようになる。

ユダヤ金融が一挙に勢力を拡大するのは1812年、ドイツ、フランクフルトのマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドがワーテルローの戦いでイギリスの国債が高騰したのを得てからである。その後、マイヤーの息子たちはパリ、ロンドン、ナポリ、ウィーンへと散らばり、金融業を展開する。ユダヤ系資本は国籍にとらわれない特性から瞬く間にヨーロッパを席巻する。

とはいうものの、やはり歴史の古いヨーロッパはユダヤ人に対する弾圧は強い。対して、移民を受け入れてきたアメリカでは比較的、差別は少ない。ユダヤ・イルミナティーはヨーロッパを拠点に次第にアメリカでも広がってくる。もちろん、アメリカでもユダヤ差別は皆無ではない。アメリカの大統領はほとんどがプロテスタントであり、カソリックは少数に留まる。ユダヤ教徒に関しては皆無である。この状況の中で拡大するシティが経営陣からユダヤを排除する可能性は高い。

他方、今回取り上げた「シティバンク」は「シティバンク・オブ・ニューヨーク」として1812年、はからずもロスチャイルド銀行が設立したのと同年開業し、1895年、アメリカ最大の規模に発展する。この段階でユダヤ・イルミナティーが介入する余地はない。

ロスチャイルドの発展からアメリカでも後発のユダヤ資本が食い込んで、企業体を資金面から浸蝕していく。企業体、ロックフェラーなどはそれ自体がユダヤ系であるとされる。

もちろん、アメリカが食い荒らされている間も、入ってこられない地域がある。アラブ、中国、日本である。日本は徳川時代「鎖国」を行っていた。中国(清国)も、1717年から1842年まで「海禁」と呼んで事実上の鎖国状態にあった。

しかし、日本は太平洋戦争の敗戦で「染まりきったアメリカの資金」が大量に導入されてくる。

10年ほど前、ある大手出版社の雑誌が廃刊になった。昨今、雑誌の廃刊など珍しくないが、退職した当時の編集者、A氏とのコンタクトに成功した。
「突如上の方から『その本は出すな』号令がかかった。記事の差し替えや、書き換えは珍しくないのでその類だろうと高をくくっていた。内容はユダヤ資本に関する批判でどこにでもあるような内容です。『あれよあれよ』と言う間に雑誌は休刊。編集部は解体。異動されるか、退職した者もいます。しばらくしてわかったのが、銀行から圧力がかかっていたんですよ。日本の銀行ですが、ユダヤ資本が入っていて、記事のうちどれかが本筋をついていたのでしょう」

日本の金融市場を狙うのはユダヤ資本ばかりではない。近年になって膨大な資金源が登場した。いわゆる「チャイナ・マネー」だ。

2010年「日本の総生産が中国に抜かれた」と報道された。その後も中国は毎年10%近い成長を続け、昨年度でGDPは日本の二倍を突破した。決済通貨としても「USドル」「ユーロ」「イギリスポンド」「中国元」「日本円」の並びになり、昨年「元」の流通量が「円」を越えた。

中国にとって日本は豊かな「餌場」なのだ。資金のやり取りも為替を使用するより、銀行を介した方が早い。となると、日本に居座る外資系銀行「シティ」は邪魔物となった。

日本ではあまり普及していないが、マスターカードが運営するCirrus(シーラス)という銀行決済システムがある。世界93ヶ国、100万か所のATMで利用できる。クレジットカードの多くは海外でも利用できように、クレジット払いのシステムを銀行決済に適用したのがCirrus。日本国内で預金した「円」を、海外に出向いて同じ銀行カードを使って外貨を引き出すことができる。ビジネスには圧倒的に有利な海外決済、送金方法だろう。

Cirrusを真っ先に日本に導入したのが、シティバンクであり、実に30年前である。他に日本では、シティと最初に提携した「ゆうちょ」、2007年から提携を開始した「セブン銀行」、シティから業務委託をうけた「SMBC」しかない。

一方、日本にも次々と中国系の資本が入ってきている。中国国営銀行である「中国銀行」、中国系クレジットカード「ユニオンペイ(中国銀聯)」などである。中国銀行は日本での支店数は少なく、「ユニオンペイ」こそ、日本とアメリカで提携を増やしているが、世界的に優勢なマスター系列のCirrusとも、ビザ系列のPLUSとも連携していない。一方、中国は銀聯に続いて、Alipay、Chinapay、快銭の導入を開始している。

Cirrusの大元であるシティを日本から追い出すのは、中国にとって欠かせない戦略だ。

中国の動きはシティの不祥事にも影を落としている。

「実はシティ撤退のきっかけとなったマネーロンダリング事件、これは日本の暴力団が覚せい剤で得た利益をシティバンク経由で香港で現金化したという内容です。マネーロンダリングには色々な方法があるが、多く使われる方法が投資を装うやり方だろうね」(経済ジャーナリスト)

不正に得た現金を損益が出ると判っていても第三者に貸し付ける。数年経って減額した資金をひきだす。引き出したカネは株なり、国債なりの売却資金として「洗われたカネ」になる。ところがシティの場合は虎ノ門の支店で預金した資金を単純に香港で下ろしただけだ。資金洗浄だとしたらあまりに稚拙に過ぎる。

状況証拠でしかないが、中国当局にはめられた、という見方もできる。

シティはユダヤ・イルミナティーに疎まれ、中国との交流もない。旧勢力と、新勢力の戦いによって日本という戦場からたたき出されたのである。

確かに日本の一般銀行にはイルミナティーの息がかかっているだろう。だが、例外も多い。農家の資金運用を一手に引き受けるJA。民営化された「ゆうちょ」。日本にはまだまだ手つかずの膨大な資金が眠っている。

これらを虎視眈々と狙っているのが、ユダヤと中国。

いま、日本という豊穣な市場をめぐって、新旧の大勢力が火花を散らしている。

(伊東北斗)

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』7日発売!

反原連はなぜ原発避難や被曝問題を争点にせずに「再稼働反対」だけ唱えるのか?

「安倍政権NO!0214大行進in渋谷、無事終了しました。約一万人の参加者でした。皆さまお疲れ様でした!安倍政権妥当の為に引き続き、力を合わせて頑張りましょう!」

これは2月14日に反原連Twitterに記されたメッセージだ。誤字脱字が日ごろから多い私は、このメッセージの中の「安倍政権妥当」の揚げ足とりなどするつもりはない。とんでもない変換ミスや打ち間違えを頻繁に繰り返す自分への反省から、「この部分は訂正されてはいかがですか」とご指摘申し上げておくだけだ。

◆原発避難や被曝問題を排除して再稼働反対だけを唱える違和感

しかしながら以下のインタビューで語られた反原連の「女帝」氏のコメントとの整合性はどのように理解すればよいのであろうか。

「参加者のなかには福島からの避難者のこととか、子供たちの被曝のこととか、自分たちのイシューをかぶせようとする人もいます。私も被曝の問題は重大だと思ってますけど、まず大飯の再稼働を止めることで、大きな風穴を開けたい。『野田政権打倒』を掲げる人たちもいるけど、私たちはそれが目的ではない。代替案として誰々を首相にしろと、そこまでいえるのなら具体性が出てくるけど、具体的なイシューがないと焦点がぼやけてきて、運動に酔うだけの人が増える気がする。だって内閣を打倒して運動が収束して、いざ他の内閣になったら、もっと原発が悪いことになる可能性だってあるじゃないですか」

このコメントは週刊ポスト2012年8月31日号に掲載されている上杉隆氏による女帝氏へのインタビューにおける発言である。社会問題を自分なりに考察した経験のある人間ではない、との吐露のようなこのコメントは前述の「安倍政権妥当(正しくは打倒)」とどのように整合性を保つのであろうか。女帝氏はここで「野田政権打倒」を掲げることが「私たちはそれが目的ではない」と断言し、その後は詳述するのも憚られるような理屈にもならない思い込みだけを語っている。「野田政権打倒」は「目的ではなく」、「安倍政権妥当(打倒)」なら整合性があるのか。

ここに私は痛烈な違和感を禁じ得なかった。「シングルイシュー」を看板に活動し始めたこの団体は女帝氏が述べている通り「福島からの避難者のこととか、子供たちの被曝のこととか、自分たちのイシューをかぶせようとする人もいます」と切り捨てていた。

私自身、2007年頃から反原発運動を始めたばかりの新参者だし、いまデモを主催する反原発連合に入っている13のグループのうち、11団体は3・11以降にデモを始めた人たちです。みな一般の感覚に近いので、とにかく普通の人たちが来やすい雰囲気を心がけました」(赤文字は田所)。

この時点で既に私は一見反対運動を纏った、「翼賛運動」あるいは「ガス抜き」が堂々と登場したことに大変不快だった。「一般の感覚」や「普通の人たち」の定義は何だ。自分を「新参者」と認識しておきながら、何十年も脱原発運動をして来た先輩の運動は「一般の感覚」や「普通の人たち」に受け入れられないとでも言わんばかりである。傲慢とはこのような態度を示す言葉だろう。

◆自由な公道で警察と協力して他者を排除する「市民運動」の矛盾

さらに「排除の論理」を確信していることは以下の発言から明らかである。

「(略)3・11以前も反原発の集会などをすると、革マルや中核っていうのが来るわけですよ。私はその頃からとにかくアンチセクトでやっているんですが、(参加しないでくれという)クレームをつけると面倒くさいので、来られても放置みたいな状況でした。
いま、私たちの反原発連合では、組織や反原発以外ののぼり旗を立てない、勧誘のビラを配らないといった(自主的な)ルールを設けています。それは反セクト的な意味だけじゃなくて、一般の人が入りやすいという理由もあるんですけど、それで裾野が広がった。だんだんシングルイシュー的な部分が理解されて、運動が成熟してきたわけですが、やはり最後はこの問題なんですよ。
 結局、デモが巨大化してから、(セクト系が)またドーッと来るようになった。でも、これに始末をつけなければ、本当の意味での市民運動にならないっていう思いが私の中で強い(略)」(赤文字は田所)。

これは完全な勘違いと思い上がりである。女帝氏たちは当初日の丸を掲げて抗議運動を行っていた。私は中継越しにその姿を見て「なんなんだ、こいつら」と強烈に不快感を覚えた。片方で「組織や反原発以外ののぼり旗を立てない」ように要請しておきながら、主催者の横には「日の丸」がある大矛盾。その方が「一般の人」が入りやすいと決めつける傲慢。そして極めつけは「(セクト系が)またドーッと来るようになった。でも、これに始末をつけなければ、本当の意味での市民運動にならないっていう思いが私の中で強い」という公安警察顔負けの弾圧思想である(赤文字は田所)。

誤解なきように付言しておくが、私はどのような政党や政治団体であれ集会に参加するのは自由であると考える。個人的に政党や党派への感度の差はもちろんある。自民党や創価学会の旗を持った参加者が居れば議論をしたいと感じるだろうし、嫌いな党派には近づくこともないだろう。しかし場所は路上集会である。誰が来ようと拒む筋合いはない(公安警察が市民を装い侵入していた場合は別だが)。

そして極めつけは、
「野田首相と面会するときもこの運動を一緒に作ってきた警備の警察官に同行してもらいたいってコアメンバーと話しているほどなんです。彼らが人事異動するのが一番怖いですね(笑い)」

(笑い)じゃないだろう。ここまで警察権力との合作、癒着を誇示している市民運動は世界にも例を見ない恥ずべき現象だ。社会を構成する力学や政治、国家や暴力に対するごく基本的な知識すら欠いていることに唖然としたものだ。

「皇室の存在を日本が世界に誇るものと」語る上杉隆氏を私は信用していない。自由報道協会は一定の成果を収めているが上杉信の「タヌキ」振りには要注意だとまだ気が付かない読者には警告しておく。その上杉氏が女帝氏に問う。

「これまでのデモは、『権力側は敵だ』という前提から入っていたけど、今回は政治とも話し合いの場を持とうとしている」と。女帝氏が答える。

「デモとか抗議って、それ自体は国策を変えるわけではない。やっぱりエネルギー政策の転換は国会で政策を練らないといけないことだと考えています。数で押すことによってようやく議員さんが反応を示すところまで来たな、と」

私の感想はもう述べない。述べる気にもならない。「安倍政権妥当(打倒)」に異議はないが。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎『NO NUKES VOICE 』VOL.7本日発売!「反動」と決別し、再決起戦闘宣言!
◎高浜原発4号機一次冷却水漏れ事故から分かる原発再稼働の無理
◎山本太郎が闘った原発推進派、石原伸晃を「護憲派」とつぶやく反原連の女帝
◎菅直人VS安倍晋三裁判──請求棄却判決の不当とねじれ過ぎた真実

『NO NUKES voice』Vol.7!

気鋭の憲法学者、木村草太氏の白熱講義!──第5回「前田日明ゼミin西宮」

2月28日(日)、前田日明ゼミ in 西宮(第5回)がゲストに木村草太首都大学東京准教授を迎え、「憲法と日米安全保障の重大問題~メディアが伝えない重大問題」をテーマにノボテル甲子園で約100名参加の中、行われた。

木村草太=首都大学東京准教授を迎えての第5回前田日明ゼミin西宮(2016年2月28日開催)

春めいた晴天の中、定刻通りに14:00松岡社長の挨拶から会は始まった。事前に配布されていたタイムスケジュールでは木村氏、前田氏それぞれ30分ずつ講演の後休憩をはさんで両氏の対談、と告知されていたが木村氏が聴衆へ配布する極めて詳細なレジュメをご用意頂いたなどの事情から冒頭1時間程度木村氏が講演を行った後に、前田氏との討論に入るという形式で会は進行した。

◆一体あの「安保法案」は何であったのか?

安保法制参議院特別委員会の参考人として同法案に「反対」の意見表明をおこなった木村氏は明快ながら実に多くの要素が盛り込まれた6頁にわたるレジュメにそって、一体あの「安保法案」は何であったのか、また国会内で交わされた議論の中で注意を払うべき個所はどこにあるか、さらにはほとんど報道されることがない(したがって国民にほとんど知られていない)「付帯決議」の存在などを明らかにした。

憲法学専門の木村氏にとっては極めて初歩的な講義だったのであろうが、大学の講義のような雰囲気で進行される立て板に水のお話についていくのには、かなり頭が錆びついている私にとっては結構な集中力を必要とした。

「安保法制」の全体像を理解するため「武力行使と治安活動」の定義から始まり、国際法(国連憲章)は原則として「武力不行使原則」(2条4項)を定めていること。その例外として「集団安全保障措置」(憲章42条)が国連安保理決議を根拠に認められてはいるものの、国連安保理決議には内容が不明確な場合が多いという問題を孕むこと。「個別的自衛権」、「集団的自衛権の行使」要件などが詳述された。

この辺りの知識を昨年の議論以前に広く国民が知っていれば国会や特別委員会で首相や、防衛大臣、外務大臣から答弁された内容の多くに基礎的な誤りが多く含まれていたことに、もっと敏感な反応があったのではないかと考えさせられる内容だった。

◆安保法制は「違憲」もしくは「不要」

写真右から前田日明氏、木村草太氏、松岡利康鹿砦社代表

続いて日本国憲法が「武力行使」をどのように定めているか、そしてそれにはどのような議論があるかが紹介された。「武力行使」といえば「9条」がすぐ頭に浮かぶが国民の幸福追求権を定めた「13条」にも「武力行使」(とりわけ個別的自由権の議論)は深くかかわりがあると紹介された。

さらにそもそも憲法の原則は「組織法的な権限規定」であることが説明され、政府に負託された権限は「行政権」(国内統治作用のうち立法・司法を控除したものと「外交権」(外国の主権を尊重して関係を取り結ぶ権限)に限られることが明らかにされた。

その後、憲法から見た安保法制への数点の指摘の後、結論として「安保法制」はそもそもそれ以前イラク戦争に日本が派遣した行為に対する「反省」、「検証」が全くなされていないとの言及があった。

イラク戦争への自衛隊派遣については名古屋高裁が2009年4月17日に「航空自衛隊の活動の一部は違憲である」との判決がある。外務省は「イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については、我が国としても厳粛に受け止める必要がある」とこっそりHPには掲載しているもののそれは4頁に過ぎない短い文章であることが木村氏により批判された。
「普通虐めで子供が自殺したら4頁の報告書で済ませるという事はないと思いますが、戦争に加担しておいて僅か4頁の検証は軽すぎるのではないか」。
まさにその通りだと首肯した。

そして安保法制の「法的」課題や、現実に「集団的自衛権」が違憲ではないかどうかを木村氏は解析し「違憲」もしくは「不要」と結論付けた。

次いで安保法制は成立してしまったものの国会答弁では横畑法制局長官や中谷防衛大臣、そして安倍首相本人から、かなり「武力行使」を困難にする言質が取れていること、及び元気・改革・次世代の三党が付帯決議と閣議決定を求めるよう与党に要請し、それが実現している(このことが殆ど報道されていないが大きな意味を持つ)ことが語られ講演は終了した。

前田日明氏と木村草太氏の白熱討論

◆前田日明氏と木村草太氏の白熱討論

休憩をはさんで前田氏との議論に移った。前田氏は終戦時以来のサンフランシスコ講和条約の不可思議さ、国連における旧枢軸国に対する「敵国条項」が未だに完全に撤廃されていない状況などから「改憲」などは無理であり、隠された問題の本質は他にあるとの説を展開し、それに関連して日本と同様敗戦国であったドイツでは憲法がどのようになっているのか、国際社会でドイツはどのように扱われているのかを木村氏に問うた。

木村氏は日・独の憲法(ドイツでは「基本法」と呼ばれた)の成り立ちの違いや政治制度の違いのポイントを挙げて解説し、日本とは相当な歴史的違いがあることが明らかにした。

対談の最後には司会松岡社長の指名で、この日聴衆として参加していた西宮ゼミ第一回のゲストでもあった鈴木邦男さんが感想を述べた。
「昔右翼をやっていた時は押し付けられた憲法を変えてしまえばそれですべてが解決すると思っていたが、最近の動きを見ると押し付けられたものであれ何であれ、戦争をしない憲法で闘うという木村さんの姿勢が大変印象的だった。憲法を変える必要はないでしょう」と語った。

本来は会場から集められた質問に木村氏、前田氏が回答する予定だったが、熱のこもった討論に予定時刻はあっという間に過ぎてしまい前田日明ゼミ第5回は終了した。

◆最終的には国民投票で可決されるのは難しい

第1回前田ゼミのゲストだった鈴木邦男氏も参加。「戦争をしない憲法で闘うという木村さんの姿勢が大変印象的だった」と語る

引き続き講師のお二人を含め希望者が懇親会に移った。どうでもよいことだが、木村草太氏は健啖家だった。多数の人から語りかけられ、それに答えながらも絶妙なタイミングで料理の並ぶカウンターへ何度も足を運びたくさん召し上がっていた。

歓談に忙しい合間を縫って私は1点だけ質問した。
「ここ数年の流れを見ると『改憲』が現実味を帯びてきたように思う。マスコミの加担は益々露骨で安倍政権の支持率が現在も5割近い。かつては考えられない現象が起こっている(森政権退陣前の支持率は3%を割っていた)。自民党も選挙で『改憲』を明言するようだが『改憲』の現実的可能性についいてはどうお考えになるか」。

これに対しての答えは「最終的には国民投票で可決されるのは難しいと考えるので『改憲』はないのではないかと考える」というお答えだった。

これまで様々なホストとゲストの組み合わせで5年に渡り行われて来た「西宮ゼミ」の中でもアカデミックな色合いがことさら強く、多くを学ぶことが出来た1日となった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎『NO NUKES VOICE 』VOL.7本日発売!「反動」と決別し、再決起戦闘宣言!
◎高浜原発4号機一次冷却水漏れ事故から分かる原発再稼働の無理

『NO NUKES voice』Vol.7!福島原発事故から5年──その現実と社会運動の行方

小保方手記本で再び高まる早大理工学部への「風評被害」

「STAP細胞はありま~す」と世間を騒がせた小保方晴子氏(元理化学研究所・ユニットリーダー)が出した暴露本「あの日」(講談社)が話題を呼んでいる。

この本で怒りが収まらないのは、早稲田大学の理工学部の職員や学生たち。
「STAP細胞の騒動を『すべて填められた』として逃げている。こんな恥ずかしい本が出たら、学生の就職にも影響する。いっそのこと、他人の論文をパクった博士論文の取り消しだけでなく、修士論文も、審査すべきだと思うな」(早稲田大学関係者)

また、別な研究者は憤る。
「この際、小保方さんの修士論文を審査して、不備があったら、学位をすべて取り消して卒論を再提出させろ、という話は講師たちの間で確かにあったようですが、教授会にあがるような話でもありませんし、すぐに話は立ち消えました」(早稲田大学理工学部関係者)

◆小保方さんの出身学部であるという理由で嫌がらせのような面接を受けた早大生

「小保方さんの本は発売から2日たった時点では、35冊のうち、17冊売れました」(都内中堅書店)というからまずまずの売れ行きだ。

ところが世間でもぶちあげた「STAP細胞の再現」ができなかった原因を、完全に他人のせいにしている部分が批判を浴びている。とりわけ、第十五章「閉ざされた研究者への道」では、博士論文の内容に疑義があるとして再提出を求められた経緯を展開しつつ大学が、訂正論部は提出されたが、訂正作業が終わらなかったとして、博士号の取り消しを決めた事実について『早稲田大学は強く否定したが、私には大学の教育方針よりも社会風潮を重視した判定を下したとしか思えなかった。結局、約束されていたはずの論文指導を受ける機会は与えられず、審査に対する反論すら受付けられないまま、私の博士号はいとも簡単に剥奪された。』(第十五章 「閉ざされた研究者への道」より)。

早稲田大学の理工学部4年のある学生は
「私たちは、けっこう小保方さんの出身学部であるという理由で、いやがらせのような面接、たとえば『卒論は偽造していないよね』などと言われました。この上、古巣を罵倒するなど、研究者としてやってはいけない行為だと思いますよ」と語る。

早稲田大学の広報に「小保方さんの書籍で早稲田大学の博士号書き直しのプロセスが批判されているが」と聞くと「内容を見ていないのでなんとも言えませんが、もちろん事実誤認があれば訴訟も視野にいれます」とのこと。「修士論文の審査はあるのか」と聞くと「今のところそのような動きはありません」とした。この騒動はまだまだ尾をひきそうだ。

(伊東北斗)

◎誰もテレビを見ない時代が到来する?──テレビが売れない本当の理由
◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる
◎ストーカーメールの正体を暴く

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

山本太郎が闘った原発推進派、石原伸晃を「護憲派」とつぶやく反原連の女帝

甘利経済再生大臣が辞任してその後任者となった石原伸晃。ご存知石原慎太郎の息子にして環境大臣時代を勤めた経験もある奴は、環境大臣就任前だが2014年6月16日、首相官邸で記者団に対し、福島第一原発事故に関する汚染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設について「最後は 金目 (かねめ) でしょ」と発言したあの男だ。私から見ればまったく評価する点のない「極悪政治家」の1人であるが、一部の人たちに的外れな石原伸晃への「誤解」があるようだ。「反原発」界では「女帝」として君臨するある人物が下記のごとくツイッターに書き込みをしていた。

「石原伸晃は意外だけど護憲派。反原連のメンバーが伸晃ブログにそう書いてあるのを発見し事務所に電話したら「先生は昔から護憲派です」との答え。今ぐぐったらこんなアンケートも。http://tknottet.sakura.ne.jp/Article9/Anti9_tokyo.html?…安倍内閣に入閣、改憲についても考えを変えるのだろうか?」

え!そんな馬鹿な! こいつは以前から確信的な「改憲主義者」として知られているじゃないか。政治家が前言を翻すのは日常茶飯事だが、「昔から護憲派」は完全な嘘だ。

その証拠を示そう。2012年の衆議院選挙を控えて毎日新聞が実施した下記のアンケートだ。石原伸晃は「憲法改正賛成」、「集団的自衛権容認」、「原発再稼動賛成」、「2030年に原発をゼロにする(当時民主党政権の一時的政策)には『反対』」、「TPP反対」、「辺野古基地建設推進」を明言している。衆議院では2014年にも選挙が行われており、その際に示されたのが最新の見解、政策ということができよう。仮に最新のアンケート結果と違う政治姿勢に転じたのであれば「公約違反」ということになる。

ちなみに「女帝」様が示しているアンケートは2009年8月30日に行われたものである。直近2014年に行われた毎日新聞のアンケートでは下記の通りだ。

「憲法9条改正には反対」だが「集団的自衛権には賛成」、「アベノミクスを評価」、「原発は日本に必要」、「靖国神社に首相が参拝することは問題ない」、「村山談話・河野談話は見直すべき」、「特定秘密保護法は日本に必要」、「道徳を小中学校の授業で教え、評価することに賛成」、「カジノ解禁に賛成」が石原伸晃の最新の主張だ。このアンケートではTPPへの設問はない。

政治家の政策を判断するのは直近の情報でなければ参考に値しない。彼らは簡単に前言を翻すからだ。万が一石原伸晃が「改憲には賛成だが9条改憲には反対」であるとしても「集団的自衛権」を容認しているのだから「9条」を実質無視する政策を支持する人間であることに変わりはない。
http://senkyo.mainichi.jp/46shu/kouji_hirei_meikan.html?mid=D05001001008

なにが「昔から護憲派」だ! アホぬかせ! 2012年には告示直前に現参議院議員の山本太郎氏が石原伸晃と同じ東京8区から出馬を表明し、落選したものの、7万票を得て話題となった選挙だった。山本太郎氏は「最も全国で注目されるところ、東京最強といわれる石原おぼっちゃま」に挑んで真っ向から反対の政策を打ち出したじゃないか。たった4年前のことももうお忘れなのか「女帝」様。それに石原伸晃は「反原発集会は集団ヒステリー」と発言したこともあったし、福島第一原発を「福島第一サティアン」と呼んだこともある。脱原発陣営からすれば明確すぎるほど明確な「敵」ではないか。

ちなみに石原伸晃は「政教分離を進める会」(公明党の政教分離を問題にする議員の会)に所属していた過去があるが、現在選挙では公明党が有力な支持母体になっている。さらに本人は新興宗教の「宗教真光」の信者であり「神道政治連盟国会議員懇談会」にも所属している。一時公明党の政教分離を問題にしていたわりには神道に甘く上記のアンケートの回答どおり「靖国神社への首相参拝問題なし」と言い放つ人間である。

「女帝」様のツイッターの書き込みには呆れてものが言えない。しかし要するにこの程度の認識、感覚の人間が「専制的」に運動を仕切るのだから、テーマに何を掲げてもその運動が「翼賛運動化」していくのは頷ける。だいたい反原発を掲げる団体の人間が「再稼動容認」で自民党の中心にいる人間にいったい何を期待するのだ。河野太郎だって平議員の時は「脱原発」を口にしていたくせに、入閣するや原発への言及は一切なくなったではないか。あなたたちは「反原発」を掲げる団体ではないのか?「再稼動容認」を名言する石原伸晃に何を期待しているのだ。誤った情報を基にして。

こう指摘すれば、たとえば、
「石原氏への言及は本人のブログと事務所への確認を行った(裏を取った)ものであり、間違いはありません。ツイッターでの言及はあくまで『入閣後に改憲への意見を変えるのか』という視点を提供しているだけで、石原氏への支持を意味するものではないことは『普通の人』なら理解できるでしょう。そうでない言いがかりは根性の曲がった曲がった『ヘサヨ』的偏見です」
とかなんとか言い出すんだろう。

原発事故後に社会運動を始めた山本太郎氏は「首を取りに行く」ターゲットとして石原伸晃を見据えた。落選はしたがその視点には共感できる。石原伸晃こそ現代的な自民党議員の代表と言ってもいい人間だからだ。 

石原伸晃は4年前の選挙で「TPP反対」を明言していながら、その担当の大臣に就任するとは、まったくもってご立派な感性の持ち主ではないか。この点を「女帝」様はご存知か?もしご存じなければどうお考えになるだろう。

要するに石原伸晃は「嘘つき」だ。その嘘、しかも見え見えでこちらが恥ずかしくなるような稚拙な嘘に騙されるような人間が君臨する運動体は大丈夫か? え? どうなんだ?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』出版記念で小出裕章さんを囲む会!
◎菅直人VS安倍晋三裁判──請求棄却判決の不当とねじれ過ぎた真実
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
 

反骨の砦に集え!月刊『紙の爆弾』!

経済合理より治安優先の「東京マラソン」──危機管理演習への嫌悪感

2007年に第一回大会を実施した東京マラソンが今年も2月28日行われる。10回目大会となる。

1964年東京オリンピックでの都内中心コースのマラソンが実施されて以降、東京の都心では「経済的影響を考えると実施は不可能」と言われ、大阪、名古屋などの大都市が女子マラソンを中心にフルマラソンの大会を活性化させても、長く東京都(あるいは「国」)や陸上関係者は東京都心でのマラソン実施に熱心ではなかった。23区内ではないが青梅マラソンが市民参加型として歴史を持つこともあり、「東京マラソン」は「経済的観点から」長期間現実的なものとして考えられることがなかった。

◆石原都知事時代の布石──ビックレスキュー2000と「三国人」発言

その風向きが変わったのが2003年、当時の石原慎太郎都知事が「東京マラソン実施」構想を発表して以来だった。石原は「経済波及効果、スポーツ観光の振興につながる」ことを理由に「東京マラソン」実現に相当な力を注いだが、日本財団会長(当時)だった曽野綾子や笹川スポーツ財団などが強く後押しをした。

それに先立つこと3年前の2000年9月3日、石原は「東京総合防災訓練(ビックレスキュー2000)」を実施している。この訓練には警察・消防の他に自衛隊が参加し、表向きは災害・緊急時の訓練を装っていたものの、多くの人から「治安維持訓練ではないか」との疑問が呈された。1万余名の参加者のうち7000名を自衛隊員が占め、都心を工装車が走る異様な姿が見られた。パラシュート部隊落下訓練もあった。

1999年から東京都の災害対策担当参与に就任していた元自衛官で好戦派として知られる志方俊之が訓練に参加していたことも「治安維持訓練」疑念を湧き起こさせる理由となった。災害対策の訓練に何故装甲車が必要なのか? パラシュート部隊が災害の際に何の役に立つのか? 直下型地震やそれに付随する災害への対応というが、今から振り返っても東日本大震災で自衛隊が活躍した場面で装甲車やパラシュート部隊などが役割を果たす場面は皆無だった。

「ビックレスキュー2000」の真の目的は、石原自身の口から、それに先立つ同年4月9日、自衛隊練馬駐屯地で語られている。「今日の東京を見ると、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している」「こういった状況で、すごく大きな災害が起きたときには大きな騒擾事件すら想定される」から「こういうときに自衛隊に出動してもらって、災害の救急だけではなく治安の維持も自衛隊の大きな目的として遂行してもらいたい」

つまり災害対策ではなく「治安訓練」もしくは「軍事訓練」を実施したいとするのが石原の本音だった訳だ。上記の発言はその内容もさることながら「三国人」という差別語を差別的な意味で使用したことが大きな批判を撒き越した。

◆「経済の理論」を「治安の理論」が凌駕した「東京マラソン」

話が逸れたようだが、東京マラソンの実施も石原及び日本財団などからは単なるスポーツイベントとしてではなく、治安訓練を兼ねた一種の「演習」と最初から位置付けられていた。石原は前述のように東京マラソン実施の理由に「経済波及効果」を挙げてはいたが、それは端から飾り言葉であり、真の目的は有事(戦争)の際の人口移動や統率・管理のシュミレーションと情報収集にあったのだ。つまり「経済の理論」を「治安の理論」が凌駕した結果産れたのが「東京マラソン」なのだ。

それを裏付けるのが下記のテレビ番組だ。2009年に放送された「ウソかホントかわからないやりすぎ都市伝説スペシャル」で「東京マラソンの裏にある国家機密」が3分余り取り上げられているが、この中ではかなり的を射た指摘がなされている、最後の風水についての言及を除いて(この真偽を私は知らないので)語られていることは全て真実ばかりである。著作権の関係でいつ消去されるかわからないので要点を抽出しておく。


◎[参考動画]東京マラソンの裏にある国家機密【やりすぎ都市伝説】(2009年SP)

・主要幹線道路を7時間も封鎖すると交通がマヒするとの反対意見が開催前には多かった。
・しかし国にはどうしても実施しなければいけない理由があった。マラソンコースを見ればわかる。明らかに都心の中心部で混雑を誘発するコース設定だ(カギ十字、風車型になっている)。その中心は霞が関だ。
・通常のマラソンは給水程度しかないのに、東京マラソンはバナナ、パン、チョコ、白米、みそ汁など食事が用意されていた。
・有事の際の人間がどう移動するかのデータを知りたくて行われているのではないか。その証拠にランナーには「RC」チップを付けることが義務付けられているが、これを付けていると主催者はどの人間がどう動いたか完全に掌握が出来る。人の動きのデータが取れる。
・実際に2008年に東京マラソンが実施された2か月後に国は東京に直下型地震が起きた際の避難シュミレーションを発表した。多くの専門家は「実際に何万人かの人間を動かさないと算出できるはずのないデータだ」と驚いている。

◆「東京オリンピック」並みの嫌悪感

東京マラソンの参加者は2007年第一回大会、申込者が95,044人で参加者は30,870人(出走者)だったが、昨年は申込者が305,734人で参加者は35,797人と参加希望者は年々増加している。運営のために「一般財団法人東京マラソン財団」が2010年に設立されており、この財団は基本財産だけで8億8千万円を保持するマンモス財団だ。フルマラソン参加者は10,800円の参加費用(国内、海外からは12,800円)を参加費として支払うが、それ以外にも多数の協賛スポンサーからの収入もあるだろう。

昨年からは一般ランナーに交じって「ランニングポリス」と呼ばれる警察官が(主催者要請により)走っている。昨年10キロ交代で計64人の警察官が「参加」したと発表されている。

私はマラソンが嫌いではない。でも東京マラソンだけはその出自が元より気持ち悪かったので関心が薄い。否、正直に言えば「治安訓練」に他ならない「東京マラソン」には「東京オリンピック」並みの嫌悪感が消えない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎日本経済のラストタンゴがはじまる
◎「戦中」突入社会──民間船員の予備自衛官化は「徴兵制開始」である
◎間近に迫った日弁連会長選挙──日弁連がネットの「言論の自由」を弾圧か?

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

虚言を検証することなく「号外」として出す読売新聞の無知蒙昧

天敵のようにこの島国の政府、メディアから看做されている「朝鮮民主主義人民共和国」が、自称「水爆実験」を行ったのは1月6日だった。読売新聞は号外を出し、聞くところによると同日夕刻NHKテレビは7時のニュースを通常の30分から1時間に広げて報道したそうだ。

朝鮮の核実験は過去にもあった。その都度朝鮮のプロパガンダも含めこの島国のメディアはあたかも「明日にも核ミサイルが飛んでくる」かのごとき報道をした。その際に本質的には関係のない「拉致被害者家族」のコメントを添付することを忘れはしなかった。それは今回も同様だ。2001年に小泉首相が電撃訪朝し、結果として拉致被害者の一部が帰国出来て以来、拉致被害者帰国へ向けた日本政府の効果的な働きかけは私が見るところ皆無だ。

「圧力と対話」などという成立しない矛盾を平然と掲げ恥じることなく、多くの国会議員の左胸には青いバッチが見て取れ得る。「拉致被害者」は政争の具に使われている、と察知したかつての「家族会事務局長」蓮池透氏は「家族会」から離れた。弟の薫氏が羽田空港に降り立った時、彼の胸にある金正日バッチを指さし、悲しい時間を忘却するように弟を指弾した蓮池透氏は呪術から解かれたように柔和な表情で、朝鮮との関係や原発問題(彼は福島第一原発3号機に勤務する東電社員であったが定年を待たずに退職している)を語るようになった。

蓮池透氏の態度の変貌にこそ我々は学ぶべきではないか。「信用に値しない」仮想敵国が自国の国民向けに発表した時点で「北朝鮮水爆実験」の号外を出す読売新聞社の価値判断基準はどこにあるのだ。仮想敵国の勝手な言い分ならば少なくとも過去同様の検証があって後の断定でなければ間違いの可能性はないのか。朝鮮は毎日のように韓国との緊張の高まり、戦争の可能性をニュースで流し続けているけども、毎度毎度のプロパガンダを本気で取り合っていればこれまでに何百回南北間で戦争が起きていなければおかしいではないか。

当日私に知人から何通かのメールが来た。「北朝鮮が水爆実験?大丈夫か?」との疑問に私は「今発表されているのは朝鮮本国の言い分だけであり、米軍機が上空で核種の取集を行っているが過去と異なり現在のところ何の核物質も検出されていない。これが核実験の可能性は排除できないが、極端な話単に多量のTNT爆薬を集めての『偽装核実験』の可能性も排除できないと思う」と回答した。

2日とおかずに米国政府は朝鮮が「水爆実験」と発表した事件が「水爆実験」ではなかったとする見解を明らかにする。安倍首相も水爆実験を否定する。で、読売新聞は「号外」の誤報をいったいどのように抗弁したのであろうか。私は読売新聞「程度」のレベルの低い反応をするメディアを軽蔑するので彼らの報道を検証する気すらない。彼らの報道には何の思想も一貫性もない。そのことを恥に思わないのかとだけ聞いてみたいのだ。

常に天皇制に依拠する自民党権力に寄り添いながら、中国、朝鮮を仮想敵国視しながらも、その「虚言」を検証することもなく「号外」として出す。このような行為を日本語で「無知」、「破廉恥」と呼ぶ。

そこで形式ばかり配慮されるのは「拉致被害者」の家族だが、政府は「北朝鮮憎し」の世論喚起のためだけに彼らを利用しつづけているだけで、本気で拉致被害者の帰国を実現する気などさらさらない。しかもその背後に本来は強く意識されるべき日本の朝鮮半島侵略行為という重大な歴史についての配慮など微塵もありはしない。

日本と韓国の間には「日本国と大韓民国の間の基本関係に関する条約」(通称「日韓基本条約」)が1965年に締結されている。戦時(侵略)補償について極めて不平等な「日韓条約」が存在する。「日韓条約」締結を巡っては日本・韓国両国の国民の間で激しい反対運動が展開された。この条約が日本の戦争(侵略)賠償を十分に行うものでなく、条約に盛り込まれた以外の全ての請求権を韓国に放棄させるという「不平等条約」だったからだ。しかしながら不充分であっても一応の補償をしたのは事実ではある。

他方、日本が侵略した当時は1つの国の一部であった朝鮮に対しては、今日に至るまで戦争(侵略)賠償は1円もなされていない。「日韓基本条約」では朝鮮半島における唯一の政府を韓国と決めつけている無茶もあり、「拉致問題」を議論する前提としての「戦後処理」すら終わっていないのが日本と朝鮮の関係だということが、この島国の多数の国民には知られていない。

朝鮮の核開発に私は反対だ。また朝鮮の政治が世襲的独裁体制であることも好感しない。だが、日本政府があたかも「北朝鮮より日本は自由ですよ」と垂れ流すプロパガンダにも大きな嘘が内包されていると感じる。朝鮮での軍事パレードや一連の政府行事に動員される市民は、おそらく「強制」であって拒否する権利などないだろう。

では、正月の「一般参賀」に皇居を訪れる日本人はどうだろうか。強制もされていないのに日の丸を持って「自らの意思」で皇居を訪れ「天皇陛下万歳」を叫ぶ。この姿は明治憲法で「大元帥」(戦争の最高指揮官)として中国侵略、第二次大戦開戦を行った昭和天皇が存命時から一向に変わらない姿だ。

朝鮮の専制は酷かろうが、日本のこの様はどうだ。ドイツでヒットラーやナチスをいまだに有難がり「カギ十字」を振る大衆が居るか。イタリアでムッソリーニの子息を有難がり戦争時代を懐かしむ馬鹿がいるか。「自由」と言いながら朝鮮と何変わらぬ風景を皇居や靖国神社で毎年繰り返している(そこへ向かう大衆の数は増えているという)この島国は朝鮮を笑えるか、批判できるか。 

朝鮮の核実験には言わずもがな反対だが、原発4機を爆発させていながら再稼働に突き進むこの島国の為政者と経済団体の感覚は朝鮮の無茶さと同等だとすら言えまいか。

さて、7日以来大騒ぎの朝鮮による「実質的ミサイル打ち上げ」騒ぎには深く言及する気さえ起らない。理由は既に米国が確認している通り「人工衛星」2つが確認されており、打ち上げられた物体が「ロケット」であることが明らかだからだ。

それを「ミサイル」だと大騒ぎする国際世論、マスコミには「馬鹿だ」と一言だけいっておく。

踊らされてはならない。「馬鹿」どもに。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎日本経済のラストタンゴがはじまる
2016年のジャパン・カオス──2026年正月に記された日系被曝難民家族の回想記
◎2016年逝きし世の日本へ──2024年8月15日に記された日系難民家族の回想記

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

日本経済のラストタンゴがはじまる

証券会社の個人顧客担当者が忙しくなってきた。好調な推移を見せていた株価の下落と主として利回りの高い外国債の為替差益が大きくマイナスに転じ始めたからだ。

ブラジルの通貨リラや南アフリカの通貨ランドは米ドルと連動しない動きをする通貨として市場関係者の間では知られているが、この10年程円高、日本株低迷の中で個人投資家を対象とする証券会社の営業担当者は積極的にブラジル国債、インド国債などへの投資を勧めてきた。

利回りが高いこれらの国の国債は為替差益で含み損が出ない限り、利息も含めかなりの高収益を生む。だが利回りが高いことは、それだけ「不確定要因」も高いことを意味する。かつてデフォルトを起こしたアルゼンチン国債同様の事態は高利回りの国債商品には付き物のリスクであることは言うまでもない。

円安の中ブラジルのリラが下落し始めた。原油価格は1バーレル30ドル台(数年前の最高時には1バーレル160ドルを超えていた)、連動して天然ガスの価格も暴落している。

◆米大統領選挙の年には世界経済が大きく振動する

今年は米国大領選挙の年でもある。大統領選挙の年には世界経済が大きく振動することは常識といってもいい。

円は現在ドルに対して110円代後半だが、これは輸出産業を優遇するために安倍政権が恣意的に引き起こした「円安」誘導の結果であり、長く続くものではない。このレベルの為替相場が続けば産油国をはじめとする原材料輸出国や米国が必ず圧迫をかけて来るに違いない。現在の極端な原油安もその先で利益確保を狙った投機筋の意図的操作と見て間違いないだろう。

既に米国FRB(連保準備制度)は利上げ実施し、これまで世界各地、とりわけアジアに滞留していた資金を急激に米国本国に引き上げようとしている(追加の利上げは今のところ見送られている)。

そういった基本的な状況を認識しつつも今後の景気予想、株価予想は大きく分かれている。週刊現代は数カ月前まで「株価3万円も!」と株価の増進をひたすら予想する記事を毎号組んでいたが、ここへ来て急に弱気になっている。最近号の広告では「株価1万4千円台も」がメインの記事だ。一方、週刊ポストは「まだまだこれから」派のようだ。「半年後株価2万3千円これだけの根拠」が特集されている。

◆サミット後には急激な円高がやってくる

中国の景気後退が明らかになり、成長率が昨年は6.5(統計によっては6.8)%だったと発表された。だがこの数字は多分に疑わしい。上海株式市場は取引停止銘柄が半数を超え、日本でいう「ストップ安」の際に働く自動取引停止システムが起動しっぱなしだ。これに対して中国の投資家からは厳しい批判が沸き起こっている。売り逃げが出来ないからだ。

要するに世界経済は「中国の成長」という、大前提に立った1つの時代が終焉を迎えているのだ。日本では「バブル」という時代があった。あの時代が日本における「あぶく銭」多量流通の最後のあだ花だったことは今となっては明らかだ。「爆買い」で日本を訪れる中国からの観光客の姿もあと数年で終息するだろう。東アジアの成長は頭打ちで、産業成長の中心はいまだに人口増を続けるベトナムやビルマ、マレーシアに移行していくだろう。

だから、証券会社の営業担当者は忙しいのだ。手持ちの顧客の資産を減らさないように、それでいてある程度の取引を定期的に行わせて手数料収入を確保するために。株式相場は企業の収益や利益を素直に反映するものではない。だから予想が困難なのだが、米国の利上げが決まったからには海外の機関投資家は日本株をどんどん売りに走るだろう。日本ではこれから株価が下がると私は推測している。

日銀は「マイナス金利」を打ち出した。日銀の当座預金にも「手数料」をかけることにより、金融機関が日銀に設ける当座預金の資金を市場へ吐き出させようとの狙いらしい。日銀がここまで必死になるのは「2%」の物価上昇を実現するためだと言う。デフレスパイラルからの脱却(インフレ誘導政策)を掲げた安倍政権の公約実現が目標だそうだ。

しかし、そんなもの意味があるか? 消費税8%への引き上げで末端消費者だけでなく、中小企業も仕入れ値の実質的上昇を食らっている。さらに便乗値上げも相次いで「デフレ」感など財務省や大企業以外感じていないのではないか。昨年は(「連合」を中心とする「労組」の闘いではなく)安倍の要請により経団連は賃上げを受け入れ、今年も引き続き経団連は賃上げを表明している。儲かっているんじゃないのか。大企業は。

そしてサミット後には急激な円高がやってくるだろう。そのタイミングで今も青色吐息のシャープが台湾の「鴻海」に完全に買い叩かれるだろう。かつては世界をリードした液晶のシャープはかくして日本企業ではなくなる。同時期に全国のマクドナルドが閉店するかもしれない。ご本山米国のマクドナルドの経営不振も深刻なようだ。

昨年私がこのコラムでマクドナルドの不調を取り上げて以来、日本マクドナルドの収益はさらに悪化し、米国のマクドナルドも日本マクドナルド株の売却を検討しているとの情報もある。

間もなく株価が下がり、円高が進み、シャープが売られ、マクドナルドの閉店が相次ぐことを予想しておく。

上記はいずれも私には全く関係のないことである。
貧乏でよかった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎間近に迫った日弁連会長選挙──日弁連がネットの「言論の自由」を弾圧か?
◎2016年のジャパン・カオス──2026年正月に記された日系被曝難民家族の回想記
◎2016年逝きし世の日本へ──2024年8月15日に記された日系難民家族の回想記

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

「戦中」突入社会──民間船員の予備自衛官化は「徴兵制開始」である

戦争へ向かう潮流はついに実質的な「徴兵制」を立ち上がらせ始めた。1月29日、全日本海員組合は記者会見を行い、下記の声明を発表した。

「一昨年からのいわゆる『機動展開構想』に関する一連の報道を受け、全日本海員組合は、民間船員を予備自衛官として活用することに対し断固反対する旨の声明を発し、様々な対応を図ってきた。しかしながら、防衛省は平成28年度予算案に、海上自衛隊の予備自衛官補として『21名』を採用できるよう盛り込んだ。われわれ船員の声を全く無視した施策が政府の中で具体的に進められてきたことは誠に遺憾である」

全日本海員組合の2016年1月29日付け声明

※全文は全日本海員組合のHPを参照

この「事件」は明らかな「徴兵制」あるいは「徴用」が海洋部門で始まったことを示す重大事だ。大々的に報道され、多くの人が知るべきだが私が知る限り毎日新聞がそこそこの紙面を割いて報道している以外に大きな報道は見当たらない。
<船員予備自衛官化>「事実上の徴用」海員組合が反発(毎日新聞 2016年1月29日配信)

既に「構想」や「想定」の範囲を超えて、防衛省は2016年度予算に「21名」の民間人を予備自衛官補として「徴用」する予算を確保しているのである。防衛省は「強制はしない」と言っているそうだが、予算を確保し具体的な人数まで明言して「徴用」を行わないはずがない。

◆「強制をするものではない」は空手形の常套句

政権が無茶な法制や施策を導入しようとする際、強烈な世論の反対に少々の配慮をして「強制をするものではない」は必ず用いられる空手形同様の常套句である。「国家・国旗法」が施行された小渕政権時の1999年にも多くの世論の反対を受けた。
小渕は国会答弁で、
「学校におきまして学習指導要領に基づき、国旗・国歌について児童生徒を指導すべき責務を負っており、学校におけるこのような国旗・国歌の指導は、国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われておるものでありまして、子供たちの良心の自由を制約しようというものでないと考えております」
「国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております」

と「強制はしないと」明言したが、一度法制化して時間が経過すれば、やがて既成事実化が積み重なり、それに対する反対は「踏みつぶせる」ことを予見していたに違いない。事実、近年「日の丸・君が代」は不可侵の色彩さえ帯び始めた。小渕は翌年首相在任中急逝するが、後世に禍根を残す悪法を成立させた罰があたったのかもしれない。

◆防衛省の海員「徴用」は確実に進められる

「国歌・国旗法」施行の際の「空手形」で明らかなように、防衛省の海員「徴用」が確実に進められることは間違いない。全日本海員組合はその歴史を見てもさほど革新的な組合ではなく、むしろ発足当時から民社党(当時)を支持する系統の組合だ。現在は連合に加盟しているが、過去には「海の日導入運動」を提唱するなど、思想的には右派的な性格も包含する組合のようである。

しかし、この声明は国民と周辺諸国に向けた最大級の警鐘だ。

実質的「徴兵制」が、昨年の戦争推進法案成立後1年も経たず起動する。海洋部門に目を付けるとはさすが、大手広告代理店に政策立案や広報の相談を怠らない安倍政権らしい選択だといえる。不思議な現象だが報道の世界では昔から一般の「事故・事件」でも同様の被害が「陸上」で発生した場合と比べると「海上」は軽視されやすい傾向にある。権力はやがて導入されるであろう奨学金返納の困難者に対する「自衛隊におけるインターンシップ」と称される若者を狙った「徴兵制」には反論が予想されることから、まずは「海洋」での「徴兵制」に着手したのだ。

◆時代はすでに「戦中」

多くの高校生が受験する「一般曹候補生」の志願者数が急減している。2015年度の全国分は前年度と比べて19%減の2万5092人で2012年の半数近くにまで激減している。解釈改憲が行われた2014年も前年比10%減だったが、前年比約20%の落ち込みは過去最大級に際立っている。原因を防衛省は「景気好転で民間企業に流れたため」と言うが、解釈改憲から戦争推進法案成立へ繋がる流れが要因であることはこの数字が示している。同様の志願者減少は第二次湾岸戦争後イラク派兵が本格化した2004年に前年比11%減を記録したことがあり「戦争」が現実化を帯びれば帯びるほど自衛隊の志願者は減ることが明らかになっている。

一方2012年、つまり東日本大震災の翌年には自衛隊志願者は増加している。景気のありようもさることながら、被災者救援の活動に従事する自衛隊の姿を目にして「災害救助」つまり「人の命を救う」仕事に就きたいと考えた若者が増加したことは想像に難くない。

自衛隊が戦争に赴くのは時間の問題だ。安倍自民党政権が続く限りその加速は止まらない。「戦争は嫌だ」と考える若者は自衛隊を志願しない。戦争を全く知らない親だってここまで戦争が現実化すれば子供が自衛隊を志願することに異論を唱えだすだろう。自衛隊は今後も減り続ける人員不足分を「徴兵制」で補う。21世紀型「赤紙」の印刷は既に始まっている。

誇張なく時代は既に「戦中」に入っている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎間近に迫った日弁連会長選挙──日弁連がネットの「言論の自由」を弾圧か?
◎2016年のジャパン・カオス──2026年正月に記された日系被曝難民家族の回想記

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

間近に迫った日弁連会長選挙──日弁連がネットの「言論の自由」を弾圧か?

日本弁護士連合会(日弁連)会長の選挙が行われている。大阪弁護士会所属の中本和平弁護士と東京弁護士会所属の高山俊一弁護士が会長候補に立候補している。

投票は2月5日で現在激しい選挙戦が展開されているが、知人の弁護士から不可思議な情報提供があった。ある弁護士が匿名の自身のブログで片方の候補を応援したところ、日弁連から注意を受けたとのことだ。その方が現在掲載しているブログの内容を引用する。

「さっき、日本弁護士連合会選挙管理委員会の副委員長さんから、わざわざお電話をいただきました。 わたくし、なんかの選挙に出た覚えがないので、ビックリしたのですが、なんと私のブログ記事が日弁連の選挙管理規定に違反するので、削除して欲しいと言うのです。
  問題となったのは以下の記事。2016年1月17日付け記事で、
【悲報】日本弁護士連合会の執行部側○○○○候補が、稲田朋美自民党政調会長に何度も献金していた。というもの。
  取り敢えず非公開にしましたのでリンク切れになっていますし、候補者の名前も匿名にしました。
  今回の日弁連会長選挙にはふたりしか立候補者がいないので、片方の先生を批判すると、もう片方の先生を応援したことになるから選挙運動だ、という話なんです。
  そして、会長選挙管理規定が今回の選挙から「改正」されて、WEB選挙活動が認められるようになってたけど、それは各陣営に1つずつのオフィシャルホームページだけ。
他の人は、選挙対策本部の弁護士も一般会員も、WEB上で1人の特定の候補に有利になる発言は許されないという驚くべき改定がされたというのです。
こんなの、WEB選挙が認められるようになったと言えますか?
逆に、明らかに言論の自由が制限を受けるものです。」
◎「宮武嶺のエブリワンブログ」より

◆「言論の自由」を守るべき日弁連に「言論の自由」感覚が欠如している

本当だろうか。事実を確かめるべく日弁連に電話取材した。応対に出た日弁連総務課の事務担当者(氏名は名乗らなかった)に上記質問をぶつけたところ「選挙管理委員会の副委員長がそう述べたのなら事実でしょう」との回答であった。

おいおい、言論の自由もへったくれも日弁連には無いのか? 通常の国政選挙、地方選挙でも実質的にネット選挙はほぼ全面的に解禁されている。それに対して、時には国を相手に闘う職務にある弁護士が全て所属する「日弁連」がこのように矮小な、選挙運営を行っていては、日本司法における対抗勢力の脆弱性、もしくは偏狭性の現れと感じられても仕方がないであろう。

「言論の自由」を守るべき日弁連に「言論の自由」感覚が欠如している。これは重大かつ深刻な問題と言わざるを得ない。

さらにこのブログ執筆者が、中本弁護士の過去、自民党稲田朋美政調会長に政治献金をしていたことに言及していたが事実であろうか。中本弁護士所属事務所に取材してみた。それによると中本弁護士は「一水会」(鈴木邦男氏が発足させた「一水会」とは同名だが無関係)という大阪の弁護士集団の実力者で、その後輩である稲田朋美氏を応援していたことは事実であるという。

3万円の政治献金も過去確かに行っていた。ただし電話応対に出た弁護士の話では「中本弁護士は憲法などについてはむしろ稲田氏と全く逆の考え方で社民党の福島瑞穂さんや民主党議員との付き合いの方がはるかに深いです」とのことだった。なるほどそう言われればそうか、と騙されそうになるが、この曖昧さこそ現在日本を覆う困難を引き起こした「どっちつかずの態度」なのではないのか。

中本弁護士は安倍のような改憲主義者ではないだろう。しかし「後輩だから」という理由で稲田朋美を応援していた過去があるようでは日弁連の会長を任せようとは思わない。社民、民主を応援しながら小選挙区制を進めたり、2大政党制を進めた大学教員のようなものだ。

私はもちろん弁護士資格など持っていないので自由に発言できる。日弁連会長候補者としての中本氏を私は支持しない。一見リベラル、一見穏当な姿勢の中にこの時代を誘引した細かであっても、過ちを包含している人物のように思えて仕方がない。
一方、高山俊一弁護士の主張全てにおいて中本弁護士よりは余程明白だ。何よりも「反戦」に対する考え方が極めてはっきりしている。私自身の考えに近い。
一般人には関係なさそうではあるが日弁連は本気になれば相当な力を国に対しても発揮しうる団体だ。選挙の推移を注視したい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「先頭で行動する政治学者」山口二郎氏を迎えて前田日明ゼミ第4回開催!

『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン