誰もテレビを見ない時代が到来する?──テレビが売れない本当の理由

大手電機メーカーの友人と雑談したが「今、とにかくテレビが売れない」のだという。「テレビが売れない」ということは「誰もテレビを見なくなった」ことを意味する。

◆4Kテレビを必要と感じている人はどれくらいいるのか?

革新的といわれた4Kテレビが発売されるようになってもダメか。確実にテクノロジーは進歩している。まず技術としては現行のハイビジョンの横方向の画素数(2Kとは2000のこと)が2倍になる4K(フルハイビジョン[約207万画素]の4倍の約829万画素もの緻密な画素数で表示できるテレビのこと)のさらに4倍になる8K、というスーパーハイビジョンの映像技術自体は、すばらしい。ただ、それを必要と感じている人は果たしてどれくらいいるのだろうか。はなはだ疑問である。

たとえばこんな報道がある。少しは希望が見えてきたか?

ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(東京:中野区)は、家電量販店における4Kテレビの販売動向を発表した。
【概要】
・2014年11月第2週の50インチ以上薄型テレビにおける4Kテレビの金額構成比は51%
・テレビ購入意向者の92%が4Kテレビを認知し、そのうち43%が4Kテレビの購入を検討
【家電量販店 4Kテレビ販売動向】
4Kテレビは2013年以降、メーカー各社が50インチ、60インチ台を中心に本格的に製品展開を開始し、2014年に入ると40インチ製品を投入するなどモデルラインアップを拡充させた。販売モデル数も2013年の13モデルから、2014年11月時点では既に45モデルと3.5倍に増えた。家電量販店店頭をみると、AV製品売り場では高単価製品である4Kテレビを前面に押し出している店舗が多くみられる。こうしたメーカー、量販店の訴求の結果、2014年11月第2週(11月3日~9日)における4Kテレビの販売金額構成比は24%、特に50インチ以上薄型テレビ内では51%と初めて50%を突破した(図1)。また販売数量構成比は、薄型テレビ全体に対しては6%、50インチ以上製品内では34%となった。? 2014年7月に実施した消費者調査によると、過去半年以内に4Kテレビを購入した消費者のうち、事前検討をせずに購入したと回答した割合は24%であった。4Kテレビの高精細な画質に惹かれてその場で購入を決断した消費者は少なくないと想定される。(「GFK」より引用

だが家電店スタッフは「いやいや、金持ちだけが4Kに興味があるのでしょう。販売店では4K時代なんて感じていません。すぐに売れなくなりますよ」とため息をつく。

◆40代以降しか雑誌も買わないし、テレビも観ない時代

このほど、昨年の雑誌の売り上げが前年比の4~5%ダウンだということで、「もはや雑誌は40代以降しか買わない」という分析が記事で出ていた。テレビなど、10年前から「40代以降しか観ない」と指摘されてきた。

たとえば、東芝は2012年にテレビ事業からの撤退をアナウンスした。東芝にとっては、12年3月期のテレビ事業は約500億円の赤字と経営の足を引っ張っており、コストのかかる国内生産はもはや維持できないと判断。ただし、海外での生産は継続し、台湾メーカーなどへの生産委託も増やす方向性を打ち出した。

「かつての計算機やファックスがすぐに流行遅れとなったように、テレビがもはや、時代遅れとなった感は否めないですよ」(東芝関係者)

「長い歴史のある深谷事業所(埼玉県深谷市)で(テレビの)生産をやめることには忸怩(じくじ)たる思いがある。しかし経営の重しとなっては(継続は)難しく、(生産終了の)判断をしなければならなかった」

東芝の佐々木則夫社長は当時、経営方針を説明した記者会見で、苦渋の決断だったことを強調している。国内最後のテレビ生産拠点だった深谷事業所はテレビの設計・開発とアフターサービスの拠点に衣替えとなった。

こうした背景には、韓国の電機メーカーが元気に満ちていたことがあげられる。
特にサムスンに関しては、韓国の政府を挙げて資金面でも経営環境面でもバックアップしている。

また、ソフトに目を移せば、「見逃し番組」は、今や各テレビ局ごとにコンテンツを販売しているが、テレビ局をまたいでダウンロードできるシステム構築が提案されている模様だ。

テレビにコマーシャルを流しても「まったく宣伝効果がない」と企業が考え始めたのも痛い。「とにかく値段が下がっている。15秒の枠を30万円で売った時間帯もありましたよ。今年に入ってからの話ですけど」(広告代理店社員)

◆視聴者のニーズがわかっていない作り手がテレビ凋落を加速化させる

僕は、テレビの凋落は「作り手が、視聴者のニーズをわかっていない」ことにつきると考える。

ブレイクしそうな芸人が出現したら、とにかく起用して、どこかでやったようなネタを平気でやらせて視聴率を稼ぐ。カリスマ予備校講師が売れたら、番組を持たせてみる。名門の入試問題をもとにしたクイズ番組が人気が出たら、みな一様に真似をする。

「そうした創意工夫なきコンテンツが、視聴者から見放されてしまったのでしょう。逆に今、70年代のテレビ番組のアーカイブが人気で、CSなんかでは視聴率を稼いでいるようですよ」(制作会社)

矢沢永吉が30歳のときにNHKの番組に出たときの映像が「ユーチューブ」にあがっていて、爆発的にカウントを集めていた。また、昔のドラマで「とんぼ」もアップされており、上位にランクされていた。

「こうして勝手にアップされた番組を無料で見れるのも原因でしょう。今、やたらとテレビ番組には『番組を投稿しないでください』とテロップが出るが、これも必死すぎて見ていて引くね。本当におもしろい番組を作れば、みんなネットやゲームをやめてテレビに戻ってくるが、もはやそうした気力は現場にはありませんよ」(放送作家)

そもそも、テレビは「報道」という点でも取材スピードではネットには勝てない。悲しいかな、テレビを誰も見ない時代が本当に到来しそうだ。

[伊東北斗]

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