第7次エネルギー基本計画のここが問題 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆〔1〕実現性のない電力供給計画

第6次エネルギー基本計画(エネ基)は2021年に策定された。内容は2030年に再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、火力40%(天然ガス20%、石炭19%、水素・アンモニア1%程度)としている。

今から5年余り先の見通しだが、これが実現できる可能性は全くない。

原発が20~22%占めるためには、概ね27~30基程度が稼働していなければならない。その出力は2700万kw程度。しかし現在再稼働しているのは12基、約1100万kw。

新規制基準適合性審査を通過した原発全てが動いたとしてもプラス5基で17基。1700万kw余り、全電力の15%程度に過ぎない。あと5年で再稼働できる原発は他に存在しないから、現段階で、目標値はもはや成り立たない目標であることは明白だ。

第7次エネルギー基本計画(第7次エネ基)では、これがどのような数値になるのか未だ不明だが、原子力の利活用という方針に大転換すると見られるので、2030年ではなく2035年に原発が36~38%占めるという計画になるのだと思われる。

しかし結局これも実現することはない。仮に36基とした場合、新規制基準適合性審査を通過した17基に加えて19基ほど必要になるが、現在審査中のものは7基、合計で2300万kw程度だ。建設中の大間と島根3号が稼働しても26基、2500万kw程度だが、それでも圧倒的に足りない。

加えて再稼働原発は全て60年超の老朽炉になる(*)から、これが進んだとしても新増設をしない限りいつかは脱原発になる。経産省や原子力ムラにとって絶対に避けねばならない事態だ。

*例えば高浜1号は10月16日に50年の「長期管理計画」が規制委により認可されたが、GX法により最大限延長したとしても2050年までには廃炉になる。これは高浜2、3号、美浜3号、川内1号も同じだ。

◆〔2〕経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった

政府は福島第一原発事故の教訓から、2014年の第4次エネ基から現在の第6次エネ基まで原発依存を「可能な限り低減」するとしてきた。

このような表現の下でも原子力は常に推進されてきた。特に核燃料サイクル政策は六ヶ所再処理工場の建設が大幅に遅れ、実現可能性さえ危ぶまれているのに一切見直しの気配すらない。

原発の利用を低減するのならば再処理は最初に中止するべきものだ。

しかし核燃料サイクル事業は中止されなかった。原子力政策は見せかけの「原発依存の低減」のもとで「推進」されてきたのである。

その中でも特徴的なのは一貫して原発を推進してきた経産省だ。責任官庁として「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった。むしろ計画的かつ段階的に原発を復活させ推進してきた。

これに呼応する原子力規制委も、40年の運転期間制限を炉規法で定めていながら、「極めて例外的」(当時の田中俊一委員長)といいつつ20年延長を認める規定のもとで60年運転を既成事実化した。

さらに2023年、脱炭素電源法(GX電源法)で運転期間の規定を規制委所管の原子炉等規制法から経産省所管の電気事業法に移したことで、ついに微かな歯止めさえなくなり、全ての再稼働原発が事実上60年運転許可を得ることになる法律改訂が強行された。

この「GX」が、そもそも欺瞞と詐欺の温床である。GX(グリーン・トランスフォーメーション)という名目の「脱炭素」方針を利用して、発電時に二酸化炭素を出さないという点だけを取り上げて「ゼロエミッション電源」などと原発を規定している。

ゼロエミッションとは「廃棄物を出さない」という意味だが、放射性廃棄物を大量に発生させる原発に使っているということだけで、その意味のすり替えぶりが分かる。

カーボンニュートラルという言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やすタイミングを殊更問題視するために使っている用語であり、原発が極めて大きな環境汚染源であることを見えなくさせる言葉遣いだ。

本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築することを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられるのが「脱炭素」だ。

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料中心の産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作ることを目的とする、という名目だ。

しかし原子力開発の暗部を知らなかった時代に「無限に安定的に供給でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した理念である。

原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない。

核分裂時に出ないことを殊更強調しているだけだ。ライフサイクルにおける原発の排出原単位は極めて大きいと考えられ、キロワット当たり180~288グラムという研究もある。なお国は19~20グラムとしている。

LNG火力は470グラムで、原発との差は2倍程度というのが実相。とりわけ三分の二の原発が止まっている日本の場合、それらは単に二酸化炭素を出すだけの存在になっている。

◆〔3〕徹底した省エネルギーこそが最大の政策だ

「第7次エネ基」において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設を含むGX法の完全反映を目指す。

「エネ基」を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻している。

これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電をおこなうことである。

第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30~50%も増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通しを出している。

電気自動車、データストレージ(データセンター)、AI(人工知能の活用)など、新たな電力多消費産業の開発により電力消費量は増加するというのが政府の基本的認識のはずだが、2030年の再生可能エネルギー電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、電力消費量の分母を小さくする偽装を用いたためだ。

「第7次エネ基」では、もはや「偽装」ではなく現実問題として2035年および50年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわゆる「目標値」を達成できないことになる。

分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネしか方法はない。

再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須となる。

1つは広域連系の拡大、もう一つは電力貯蔵システムの構築だ。また、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。

再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。

まだ火力発電の役割があるとしたら、この点である。

また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつきまとう。価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後蓄電池市場が高騰することも考慮しなければならない。

当面は火力発電によるバックアップが不可欠になるのである。

その火力はガス火力発電。

エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限まで減少させる技術が必須になる。

廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。

日本が海外に売り込める技術になるだろう。

◎初出:2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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日本原電敦賀原発2号機 新規制基準「不合格」をめぐる7つの問題点〈後編〉 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆〔4〕本審査結果……『この原発が今後適合することはない』の恒久性について
 さらに審査を求める行為を拒否することも審査書に明記すべき

規制委員会はK断層は後期更新世以降の活動が否定できないこと及びK断層は2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できないことから、設置許可基準規則第3条第3項に適合しているとは認められないと判断した。

したがって、本申請は、原子炉等規制法第43条の3の8第2項において準用する原子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号に適合しているものとは認められないとの結論である。

上記結論に達した以上、『この原発が今後適合することはない』と考えるべきだ。
巨額の投資をしているからとか、新たな知見が見つかったなどとして審査を求めることは、大きな費用を追加投入することになるので厳しく批判されなければならない。

敦賀原発2号機については、この状況においてはさらに審査を求める行為を拒否することも合わせて審査書に明記すべきである。

◆〔5〕経理的基礎の不存在について
 敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できない

原電については、既に東海第二原発の再稼働を巡り「経理的基礎」についての審査が一度行われている。

その中で、原電に経理的基礎がある根拠としているのは原電が建設している(審査段階では建設予定である)のは2014年5月20日付けの原電による申請に対する審査で、安全対策工事のうち防潮堤に関しての資金である1740億円についてのみである。

この安全対策工事にかかる資金を原電が調達できる見込みがあるかどうかを確認しているにすぎない。

これは、それ以外の経営上必要な費用については、東海第二と敦賀2号機の「維持管理費用」として調達できるからであり、これが土台になっていることが前提だった。
 
ところが今回、審査結果として敦賀2号機の運転が不可能となることで、この土台が失われることが確定的になった。

現時点では日本原電は、依然として敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できるかの前提で経理的基礎はあると主張するのだろうが、それは虚飾と言うほかはなく、三電力の株主及び消費者にとっては、無駄な資金提供を原電に続けることとなる。

このような不当な状況を回避するために、再び経理的基礎を有するかの審査が必要だ。

◆〔6〕東海第二原発の欠陥防潮堤
 日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている

これに加えて、原電は現在、東海第二の防潮堤工事を進めているところだが、この工事に重大な欠陥があり防潮堤が完成できない状況にある。そのため1740億円をはるかに超える費用がかかることは間違いなく、先の経理的基礎が失われていると考えられる。

敦賀2号機の運転ができない状況となったことから、将来的には東海第二の再稼働どころか、日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている。

そのことは東海第二の安全対策工事にも影響を及ぼすこととなるので、規制委は改めて東海第二の安全対策工事や防潮堤工事について、本当に竣工可能なのか、経理的基礎を改めて審査するべきだ。

◆〔7〕日本原電の電気料金収入の問題
 使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正である

経理的基礎の喪失と同時に、原電の収入には大きな問題がある。

2011年度以降2023年度までの電力収入は累計1兆5658億490万円に達している。これは発電など全くしていない2基の原発のために5電力会社が支出した金額だ。

この資金は全て電力会社の電気代つまり消費者から集めた資金である。この資金は、原電の2基の原発を再稼働することでまかなうはずだった。

そのうち敦賀原発2号機の再稼働ができなくなったことについて、原電はいかなる責任を負うのか、規制庁はヒアリングを行い、こうした問題について解明するべきである。

特に、敦賀原発2号機の審査を更に継続しようとする計画であることを原電自らが主張し、さらに電力3社や経団連がそれを支援するなどとしているが、そのために更に巨額の維持管理費用を各電力会社の顧客は負担しなければならない。

原発に拘泥し、使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正であることを規制委は明確にするべきである。(了)

◎山崎久隆 日本原電敦賀原発2号機 新規制基準「不合格」をめぐる7つの問題点
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51517
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51523

◎初出:「月刊たんぽぽニュース」2024年10月号

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

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《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

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 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

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《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
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※          ※          ※

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《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
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 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
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 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

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《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

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《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
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   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
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《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

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 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
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《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
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「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
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 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

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日本原電敦賀原発2号機 新規制基準「不合格」をめぐる7つの問題点〈前編〉 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

原子力規制委員会(規制委)は8月28日の定例会合で、日本原子力発電(原電)敦賀発電所2号機(PWR、116万kW)の新規制基準適合性審査で「安全上重要な施設(原子炉建屋等)は将来活動する可能性のある断層等の露頭がないことを確認した地盤に設置する」との条件に適合しないことから「原子炉設置変更を許可しない」(すなわち再稼働不可)とする「審査書案」を了承し、パブリックコメント(パブコメ)が実施された。

そのパブコメに送った意見をベースに、この審査書案の7つの問題点を指摘する。

◆〔1〕審査書案の位置づけが不明確
 具体的な記述がない、明確化して記載するべき

 まず、この審査書の位置付けである。この審査書は「原子炉等規制法第2項の規定により準用する以下の規定に適合しているかどうかを審査した結果を取りまとめたものである。」とし、「本審査書の構成」では『「2(ローマ数字、以下同じ) 耐震重要施設の地盤の変位(第3条第3項関係)」には、設置許可基準規則のうち設計基準対象施設の地盤に係る耐震重要施設の地盤の変位に係る規定への適合性に関する審査内容を示した。「3 審査結果」には、規制委員会としての結論を示した。』としている。

このような位置付けで審査を行った結果が本書であるとして、この後の審査書の記述は事実上断層による地盤変異が生ずる可能性についての議論だけが記載されている。

原子炉等規制法では、そのほかにも多くの項目があるが、それらについては審査は行われていない。

地盤変異の可能性が否定できなければ、その後の審査は不要であるとの考え、または意味をなさないとの立場であると思われる。

そのことについての判断としては正当であると思うが、そうした具体的な記述がないため、明確化して記載するべきであると考える。

◆〔2〕有識者会合の報告書を無視した原電
 浦底断層の認定、敷地内断層の活動の可能性

この原発については、2012年の炉規法改正による新規制基準の策定以前から多くの指摘がされてきた。

特に浦底断層の認定、敷地内断層の活動の可能性は多くの地震学者や地質科学者が指摘してきたことで、今になって浮上したことではない。

このうち問題となったK断層は後期更新世以降に活動した形跡がない「断層」とはいえないことは、2013年に原子力規制委員会の有識者会合の報告書において「原子炉建屋の直下に活断層が走っている可能性がある」とした時点で明白であった。

日本原電は敦賀2号機の新規制基準適合性審査申請(2015年)を行うべきでなかった。また、規制委員会も、その申請を受理するべきではなかった。

有識者会合の報告を無視して審査の申請書を提出したときから、今日に至るまで行われた審査会合及び現地調査等が、規制委員会が申請書を受理したために行われた。

有識者会合の現地調査等で、事実上今回の審査書に記載された事項は結論が出ていることであり、改めて新知見が明確になって断層活動による地盤の変位の可能性が生じたわけではない。

こうした有識者会合における結論と、今回の9年近くにわたり行われた審査において出された結論とは、何が異なるのか、または異ならないのかも合わせて審査書の中で具体的に言及するべきである。

◆〔3〕規制される活断層の定義は誤り
 国土地理院の定義では260万年以降が正しい

規制委が示す「将来活動する可能性のある断層等」は「後期更新世以降(約12~13万年以降)の活動が否定できない断層等」としているが、これには科学的根拠がない。

敦賀原発2号機に限らず、他の原発についても、以前は1~5万年前以降としていた時期もあったし、現在でも40万年以降とする規定もある。
 
現在、海洋の断層について調査を強化する動きが地震本部などで開始されているが、特に海底下の断層では、トレンチ調査もできない。

国土地理院の定義では260万年以降の第四期における活動が認められれば活断層である。

今回の敦賀原発では、12~13万年の「境界線」前後の何処で動いたのかを細かく議論しようとしている。

しかし本来は原発の耐震安全性を、できうる限り強化するために審査することが重要である。

その観点に立つならば「将来活動する可能性のある断層等」については後期更新世以降よりもさらに遡り、国土地理院が定めている活断層とするべきである。(つづく)

◎初出:「月刊たんぽぽニュース」2024年10月号

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫
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核武装に執着する者たち〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆高速炉と軽水炉との違い

高速炉の燃料が1般の原発の燃料とどう違うのか。軽水炉の燃料から取り出すことができるプルトニウムは、核分裂性すなわち核兵器として使えるプルトニウムは239、241だが、核分裂性ではないプルトニウム238、240、242が3割以上含まれる。言い換えるならば、プルトニウムの純度が悪い。核爆発装置を作ることは出来るし、ナガサキ型原爆を作ることも可能だが、現代ではプルトニウムの核分裂を起爆剤に核融合により威力を発揮する核融合爆弾すなわち水爆が主流だ。

この水爆の起爆剤を作る場合、不純物の多いプルトニウムは不純物の発する中性子により早期爆発を引き起こしたり、中性子を吸収して逆に核爆発威力(収量という)を減衰させたり、発散する放射線が強すぎて周囲の回路や材料を劣化させたり、取扱者を被曝させるなど問題が多い。

しかし高速炉ブランケット燃料から取り出せるプルトニウムは不純物がほとんどない98%程度の純度である。これは原爆開発初期から存在する黒鉛炉と高速炉でしか製造できないので、フランスのラプソディ高速実験炉から取り出したプルトニウムがムルロワ環礁の地下核実験(1996年)に使用されたとき、世界中の核兵器関係者が注目したのである。

この核実験には米国エネルギー省も立ち会ったといわれている。米国が所有しない高純度プルトニウムによる核実験であった。フランスは高速炉から得た兵器級プルトニウムで400発の核兵器を製造したという。

日本が最初に導入した英国製の原発は、東海村で現在廃炉・解体中の東海原発だが、これは黒鉛炉だった。そのため英国と日本との取り決めで、使用済燃料は全量英国に返還し、日本には残されなかった。これは黒鉛炉の燃料から高純度のプルトニウムが生産できるからである。英国は黒鉛炉を使って核兵器開発を進めていたが、日本からのプルトニウムも使っていたといわれている。

核兵器生産に使える原子炉はもう1つ、重水炉がある。これは中性子を減速する材料に重水を使い、水で冷却する構造だが、プルトニウム239の純度を高く保つ運転が可能だ。実際にインドが核兵器用プルトニウムを生産したのはカナダから導入した重水炉からだ。

日本には重水炉も存在した。現在廃炉・解体中の「ふげん」がそうである。「ふげん」の使用済燃料は東海再処理工場で再処理されたが、1般の軽水炉のプルトニウムと混ぜて取り出すことになったため、核兵器級の純度を持つことはなかった。重水炉は「ふげん」しか存在しなかったし、黒鉛炉は東海原発しか存在しなかった。いずれも日米原子力協力協定による原子力開発が進められる過程で、以後は全部米国製軽水炉が採用されることになった。これは日本の核武装を阻止するためである。

これらの共通項は「プルトニウム239の高い純度」である。軽水炉でもまったくできないことはないが、そのためには断続的に運転を停止し頻繁に燃料を交換する必要がある。この燃料交換サイクルがわかれば、燃料から取り出されるプルトニウムの純度が推測できる。北朝鮮の原子炉の運転間隔が米国などの重要な衛星情報になっているのはこれが理由だ。

IAEAが日本の原発を常時監視しているが、その目的も核兵器開発を阻止するためである。そのため原子炉内には常に監視カメラが取り付けられており、運転時も停止時も止められることなく監視し続けている。主に使用済燃料プールの燃料体が計画外で取り出されていないか、あるいは運転間隔が不自然ではないかなどを監視しているとされる(「保障措置上の監視」という)。

◆核兵器開発を止めさせよう

日本の現状は、米国による東アジアの覇権を維持するために、日本にも「応分の負担を求める」として、防衛費を倍増させ、米国の兵器を爆買いさせてきた。これがアジアの緊張を高めていることは紛れもない事実である。

これに加え、日本の核武装の隠れもない姿勢は、核拡散も加速する恐れが出てきている。

北朝鮮が核兵器体系を高度化するためのミサイル実験を繰り返す中で、韓国にも危機感が高まり、プルトニウムを抽出する再処理を志向し始めている。韓国には重水炉もあるので、高純度プルトニウムを生産することも十分可能だ。

日本を筆頭に核なき世界に逆行する現状を転換しなければ、いずれ核軍拡競争がアジアで始まる。

日本が核武装を放棄するには、原子力政策、とりわけ再処理政策を放棄するほかはない。電力需要にまったく寄与しないばかりか、巨額の費用が投じられ、その分、電気代に跳ね返る再処理事業には、巨額の税金も投入されている。

環境を汚染し、核のごみを拡散させるだけの再処理工場を廃止させることから始めよう。

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論
〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
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『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
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 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

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 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

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※          ※          ※

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 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

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※          ※          ※

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《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
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《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
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《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
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《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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核武装に執着する者たち〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆何の利点もない「核燃料サイクル政策」

使用済燃料再処理・廃炉推進機構によると、日本原燃が建設中の再処理工場の建設費について、約4,000億円増額の約15.1兆円に達した。変動した要因は、新規制基準対応に係る検討、円安やインフレなどの経済指標などの反映、規制への対応や安定操業について追加対策を行ったこと、核燃料税などの税負担の反映などとしている。

また、敷地内に建設中のMOX燃料加工工場についても約200億円増の約2・43兆円となった。6月21日に発表した。

再処理事業は、膨大な放射性廃棄物を生み出す。これがどれほどのものかを知る方法がある。福島第一原発の現状を直視することだ。

現在、福島第一原発では、デブリと呼ばれる放射性廃棄物の取り扱いをめぐり極めて困難な状況が生じている。これをわずか1グラム取り出す計画すら、何年も停滞し続けている。デブリとは溶けた核燃料が制御棒や構造物やコンクリート材と混じり合って生じた高放射性物質の塊で、使用済燃料を再処理して生成される高レベル放射性廃棄物とプルトニウムとウランを混ぜたような存在だ。

デブリの取り扱いができないのだから、再処理工場で事故が起きた際に流出する可能性がある高レベル放射性廃棄物も手に負えないことは自明である。

東海再処理工場では、こうした高レベル放射性廃棄物が液体で372立方メートルも存在し、そのほかガラス固化体も354本貯蔵している。地震や津波などの災害、航空機落下などの事故や軍事攻撃を受けた場合のリスクは巨大だ。毎年数百億円もの規模で維持管理、廃止措置費用がかかっている。

これらは税金でまかなわれている。このような再処理事業を、一体何のために行ってきたのか、そしてさらに巨大な六ヶ所村再処理工場も建設中で、いずれ稼働することになっている。そのために「再処理拠出金(以前は引当金)」が徴収されている。事実上の税金であり、もちろん電気料金に付加されて徴収されている。概ね核燃料1グラム当たり700円程度である。100万キロワット級原発で1基あたり30トンほどの燃料が装荷されているから、単純計算で210億円である。

しかしこの程度の費用で済むとは考えられない。実際には遙かに大きな費用がかかる。再処理工場の稼働率が極めて低いことも考慮するならば、足りない分は税金を使って補填するしかない。

現状では残される廃棄物、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体やそれ以外の高レベル放射性廃棄物である燃料パーツ類などの金属残渣、そのほかにも除染により生じた廃棄物など、高い放射線を出す廃棄物類は、どのように処理・処分するのかも決まっていない。

◆今や隠さなくなった「核武装」のための原子力

原子力開発を巡っては、震災以前までは「平和利用」の名の下で「日本は核武装するとの謂れなき中傷」や「謂れのない国際的な疑惑」といった反論が席巻していた。震災後、原子力開発に急ブレーキがかかったところから、まるで開き直ったかのように政治家などから次々に「原子力をやめてしまったら国防上大きな問題を引き起こす」「潜在的核兵器開発能力が失われる」などと主張するものが現れる。つまり 「疑惑」でも「中傷」でもなく、明確に核武装を志向して実施されてきた核開発が厳然と存在したことを意味する。

開き直ったかのような「核武装オプション論」は、アジア諸国を強烈に刺激する。2013年、韓国では以前からくすぶっていた米国のダブルスタンダードへの反発が顕著になる。日米原子力協定において核武装国以外で唯1認めた「核燃料サイクル政策」についての懸念である。

再処理工場はプルトニウムを取り出すためには欠かせない施設だ。世界中で核兵器国以外で保有している国はない。日本が東海村に東海再処理工場を建設し始めた頃に、ジミー・カーター大統領(当時)が待ったをかけた。日米原子力協定においては核燃料はもとより、軽水炉についても米国から導入し、米国の技術で造られたものである。米国はこれに制限をつけており、平和利用以外の目的で利用しようとしたら差し止める権利を留保している。

事実上、米国の許可がなければ原発の建設も運転も、再処理工場の建設もできない。カーターは東海再処理工場の運転を差し止めようとした。これに猛烈に抵抗したのが日本政府である。様々な条件を受け入れながらも、再処理事業を実現することだけに固執し続けた。結果、1977年から1999年まで運転を続け、合計1140トンの使用済燃料の再処理を行い、その後の六ヶ所再処理工場計画も米国に認めさせている。

韓国は2014年に改訂された米韓原子力協力協定でオバマ大統領に対してウラン濃縮と再処理を認めさせようとした。結果は失敗に終わるが、これは日本の原子力政策に強く影響を受けたものであることは確かだろう。

中核施設は高速炉の再処理工場ここまでは軽水炉、日本で1般的な原発である沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉(合わせて軽水炉という)の燃料再処理について触れてきたが、過去に、そして今も日本が重要視しているのは高速炉の燃料再処理技術である。

現在、廃炉作業中の高速「増殖」原型炉「もんじゅ」は、1995年に発生したナトリウム火災事故に起因し、計画が頓挫したまま震災後の2016年に廃炉が決定した。運転した期間はわずか4ヶ月たらずだった。掛かった費用は本体建設だけで1兆2000億円、今後も約4000億円かけて廃炉にする計画だ。

この高速炉、原子力基本計画上の位置づけは「次世代炉」であり、言い換えるならばプルトニウムを消費しながら生産することが目的の原子炉だ。軽水炉の燃料を再処理して取り出したプルトニウムを高速炉の炉心燃料として装荷し、 周囲に「ブランケット燃料」(毛布のように炉心を覆うことからついた名称)に中性子を照射してプルトニウムを生産する。このプルトニウムをまた高速炉の燃料として使用すれば、1種の「循環」ができることから、核燃料のリサイクルが出来るとしていた。

実際には高速炉燃料のうち、炉心燃料の再処理は極めて困難であり、現実にはブランケット燃料の再処理だけが実用化される見通しだった。そのためにリサイクル燃料試験施設(RETF)という再処理施設を東海村に建設中だ。

RETFは高速炉のブランケット燃料からプルトニウムを取り出す再処理の技術開発を目的に計画され、約817億円を投じて2000年に地上6階、地下2階の建物を造った。しかし「もんじゅ」が廃炉になった今、建物だけが存在し中身である再処理設備は取り付けられていない。

三菱重工業が米国から提供された技術で製造することになっているが、使うあてのないものをさらに巨額の費用を投じて造る理由がないため、がらんどうのまま建物だけが建っている異常な状況である。

もちろん、国は諦めていないから、こうした中途半端な中断状態でも設備建設を続行する計画だ。というのは、ブランケット燃料体は「もんじゅ」だけでなく、茨城県大洗町にある高速増殖実験炉「常陽」にも残されている。これらを再処理することが当面の目的とされている。

「核開発に反対する物理研究者の会」が旧動燃、現在の原子力研究開発機構から1994年に得た情報によると、「大洗にある常陽において同位体純度99.4%の兵器級プルトニウムを22㎏生産し『もんじゅ』において同位体純度97.5%の兵器級プルトニウムを62㎏生産し、合計84㎏の兵器級プルトニウムを動燃は所有している」。

これを再処理してプルトニウムを抽出すれば、ただちに30発以上の核兵器を作ることができる。そしてこれを抽出する施設がRETFである。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
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たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫
私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

核武装に執着する者たち〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆現在の核兵器状況

2024年、米、露、英、仏、中、インド、パキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、およびイスラエルの9カ国は、合計で約1万2,121発の核兵器を保有しており、そのうち9,585発が運用可能と考えられている。

そのうち約3,904発の弾頭が運用部隊に配備されており、約2,100発は高度な運用警戒態勢に置かれているとされる。これは前年度より約100発増加している(ストックホルム国際平和研究所2024イヤーブックより)。

現在は、2009年4月プラハでの演説でバラク・オバマ米大統領(当時)の提唱した 「核なき世界」とは対局的に、冷戦構造の再構築とともに核戦力の拡大が続いている。

◆核開発が止まらないのは核武装のため

結論から述べると、日本で原子力開発とりわけ核燃料サイクル政策を維持し続ける大きな理由は、核武装技術を維持し取得するためである。

政府は原子力を「平和利用」と称し、エネルギー政策に利活用するとしている。しかし電源開発に位置付けるだけならば、核燃料サイクル政策を推進する理由はない。世界中で核燃料サイクルを所有して稼働させているのは米英仏ロシア中国に限られ、それ以外には存在しない。すべて核武装国でありそれらの核兵器開発を維持存続させるために核燃料サイクル(これらの国々にとっては核兵器サイクルに他ならない)を保有している。

原発を導入しようとした時代、1950年代からすでに、日本では核兵器開発に向けた技術開発を推し進める体制を作り上げてきた。

当時は、原子力開発は核兵器開発と同義であり、原子力開発を目指す国は必ず自国の核兵器開発を行う目的で導入した。

世界中でウラン濃縮、高速炉開発(高純度プルトニウム生産に必須)、再処理施設建設が模索され、一部は実現した。しかし核兵器の拡散が世界の平和に対する重大な脅威になるとの考えが主流になり、核拡散防止条約や核兵器開発技術の移転禁止を定めたロンドンガイドラインの制定などを通じて核兵器開発技術の非核国への移転禁止が大きな課題になった。

きっかけの1つが、カナダから重水炉を導入して1974年に核実験を成功させたインドの存在がある。インドは中国の核兵器開発に対抗するために核兵器開発を行い成功させた。その中国は旧ソ連に対抗するために核兵器開発を行った。その中国から技術を導入してパキスタンが核兵器を開発したが、これもインドへの対抗からである。

こうしたドミノ倒しのように、対立国が優位性を保つ、またはギャップを埋めようと核兵器開発を進めることは、核拡散防止条約があっても止められなかった。

4度の中東戦争を通じてイスラエルが核兵器を開発したのは、アラブ諸国への対抗だったが、これを支援したのはフランスと米国である。

そのイスラエルに対抗して核兵器開発を進めているのがイランである。印パ、中ソなども、それぞれが自国の影響力を維持、強化しようとする帝国主義的発想から、同盟関係にある国に秘密裏に核兵器技術を移転していたのである。

核拡散防止条約では、条約発効前に核兵器を保有していた米ソ英仏中に 「核兵器を保有し続ける権利」があるとされ、その後は条約内で核兵器開発はできなくなる。さらに条約に加盟していないインドの核兵器開発に衝撃を受け、ロンドンガイドラインの制定により核兵器転用可能技術の制限が決められた。

しかし日本周辺を見渡せば、米国への対抗姿勢から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核拡散防止条約から脱退して核兵器開発を進め、これに対抗して韓国でも核兵器保有論が高まっている。

「核なき世界」を志向し、ノーベル平和賞をもらったオバマ大統領による 「成果」は、その影響力を失うとともに崩れ去ろうとしている。

次期大統領を狙うドナルド・トランプは、前政権時代にすでに核の拡散も厭わない姿勢を示し、日韓が核武装してもかまわないとの立場だ。米国内や共和党がそうした考えに同調しているとは思わないが、例えば中国や北朝鮮の核の脅威や軍事的脅威を強調し続ければ、対抗手段としての核兵器保有議論は、今以上に無視し得ない影響力を持つことになる。

福島第一原発の事故以来、脱原発の世論が台頭する中でも核兵器を開発するために原子力技術を保有し続けようとする勢力には、絶好の国際状況であることは間違いないであろう。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


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『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
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《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
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《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

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 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
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《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
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 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

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電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点〈後編〉電力会社はなぜ東西連系線を強化しないのか 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』33号(2022年9月11日発売号)掲載の「電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点」を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。文中での全国の原発再稼働に関する記述は、2022年8月当時の状況であること、あらかじめご了承ください。

◆動かせない理由を説明せよ

現在、新規制基準適合性審査を通過した原発は17基、そのうち1度でも再稼働した原発は10基である。残り7基は現在も運転できる状態にはない。

その7基の内訳は、東電柏崎刈羽6、7号機、日本原電東海第2、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機、関西電力高浜1、2号機。これらはすべて安全対策工事又は特定重大事故等対処施設の工事が終わっていないか、地元合意を得ていないか、最もひどい例は電力会社の運転資格を再確認中のもの(これが東電)である。すなわち法的にも道義的にも動かせないものばかりである。

定期検査中で稼働できないものは、夏のピークだ、電力逼迫だといっても動かせるわけがない。法令上の理由で稼働できていないのに、そのツケを規制のやりすぎだとか、反原発の圧力だと、勝手な憶測をばらまいている参議院議員選挙候補や政党(選挙期間中に)の何と多いことか。さらに問題なのは、これら主張について経産省はこれ幸いとばかりに、訂正することもなく、むしろ助長するかのように、必要もない

電力逼迫注意報だ、警報だと、電力不足をあおり立てている。だが、電力逼迫を引き起こした最大の責任者は経産省だ。だから責任の目先、追及の矛先も変える必要があるというわけだ。

原発の再稼働が困難な事例のいくつかを示す。高浜4号機は6月8日から10月(いわゆる夏のピーク時の期間)まで停止する。その理由は定期検査。関電によれば「10月下旬の原子炉起動、11月中旬の営業運転再開を見込む」という。

また、高浜3号機は定検中に蒸気発生器伝熱管に損傷が見つかったため運転再開が遅れている。6月末で稼働している原発は大飯原発3、4号機。

玄海4号機は定検の終了予定を7月上旬に前倒ししてむりやり運転再開。40年超の老朽原発、美浜原発3号機は21年6月に再稼働したものの特定重大事故対処等施設が出来ておらず、

わずか4ヶ月後の10月に停止した。これを8月12日に再稼働しようとした、

漏水により延期されている。当初は10月20日が予定されていたが夏のピーク時に少しでも重ねようという意図で約2カ月前倒した。

◆地域間連携や再エネを軽視

東日本大震災後11年以上経つというのに、当時から指摘されていた問題に迅速に取り組むでもなく、漫然と時を過ごし、再生可能エネルギーへの国の投資も怠り、送電網整備の責任を怠ってきた。そのことを指摘する報道も、ほとんど見られない。

日本列島には潜在的に自然エネルギーを活用できるところがたくさんある。日照の多い地域では太陽光が、風況の良いところは風力が期待できるが、これらは消費地から離れている。発電した場所から電力を送るには、既存の送電線に接続する必要があるが、送電線は9電力がほぼ独占状態だ。

これに自然エネルギーを優先的に接続できるような体制の整備は国にしか行えないが、進んでいない。

経産省は、最悪の事態、例えば全国規模のブラックアウトをあえて起こそうとでもしているのではないか。そんないやな感じさえ、昨今の政府の無策ぶりには感じてしまう。実際にコロナ対策では、それに近いこともしている。

◆東西連系線を強化する

3月や6月の電力逼迫の注意報が出たときにも、西日本では電力不足は起きておらず余力があった。東電のエリアで不足するなら西日本から供給すれば問題は解決する。しかし、東日本と西日本では周波数が異なるため、そのまま電気を送ることができない。50サイクルの東と60サイクルの西の間には「周波数変換所」が必要になる。

その容量は現在210万kWだが、震災時に120万kWしかなかったものを増強した。これで足りるとは誰も思っていないので、今後も増強する予定だ、最終的には300万kWにするが増強には1750億円かかり2027年の完成予定。これは速やかに完成させるように取り組むべきだ。震災後の11年間に柏崎刈羽原発再稼働準備として累積1兆2千億円もつぎ込んできた東電にとっては、大した費用ではない。資金の使い道を間違ったことが、今回の逼迫に繋がっている。

日本列島は南北に延びているから、北海道と九州では気候が違う。日本中で電力の連系ができれば、どこかで逼迫が生じても必要なところに電力が送れる。設備も効率よく使えて良いことずくめだ。

電力会社に投資余力がないとしたら、公共事業として造れば良い。 「変換所」を発展させ、日本中を直流送電で繋ぐという方法だ。直流に変換すれば周波数問題は起きない。大動脈として東西直流送電線を引くことを公共投資として行えば、電力需給問題は解決できるうえ、南海トラフ地震のような大規模災害対策にもなるのである。例えば、震災以来原発につぎ込んだ5兆7000億円を使っていれば、すでにできていたはずだ。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
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《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
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《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

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《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
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 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
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 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
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《報告》平宮康広(元技術者)
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《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
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 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点〈前編〉原発再稼動を急がせる政府の意図 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』33号(2022年9月11日発売号)掲載の「電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点」を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。文中での全国の原発再稼働に関する記述は、2022年8月当時の状況であること、あらかじめご了承ください。

◆原発再稼動を急がせる政府

夏の電力不足を理由として、原発再稼働が前のめりに進められている。2022年には川内2号が6月11日、玄海4号が7月10日、大飯4号が7月17日、そして7月24日には高浜3号が起動した。

他にも、美浜3号は本来、10月までかかるはずの定期検査を前倒して8月12日に運転再開すると発表したが、その後、2次系設備の漏水で延期された。大飯4号も定期検査を前倒しての再稼働だ。

夏のピーク対策というのだが、西日本は今年の夏の供給予備率(100%から、その日の最大想定需要の割合を引いた数値)はすでに明らかになっていて、3%台の後半から4%程度と見込まれ、美浜3号などを前倒ししても特に大きく改善はしない。

再稼働予定の原発のうち、運転開始から44年6ヶ月経っている美浜原発3号機を無理矢理動かして、重大事故が起きることになれば、取り返しがつかない。

事業者の立場から見ても、定期検査を前倒ししてまで強行する利点はない。政府は5月27日に夏の電力需要について予測し「7月は東北から中部エリアで3.1%と非常に厳しい見通し」とする広報を行い、電力需要が高まる時期に足りなくなる恐れがあるとしていた。

そして6月末に東電エリアで設備の準備不足から想定予備率が1時ゼロになるという失態を演じたが、これを奇貨として夏の電力不足を大きくアピールした。6月末の電力逼迫騒動の謎については、次節に詳細に述べる。原発再稼動を進めるとの首相声明を参議院選挙中に突如出して、ショック・ドクトリン[注]の手法を使った再稼働推進策を打ってきたのである。

[注]ショック・ドクトリンとは、 ナオミ・クラインによる「惨事便乗型資本主義。大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革」のことである。

◆夏ピークの直前に東電で逼迫の事態

6月27日の梅雨が明けていない東電のエリアで、電力逼迫の注意報が突如発令された。すぐにも警報に切り替えそうな勢いで、経産省の役人が記者会見をしてまで、電力逼迫の危機を演出して見せた。だが、実際には90%台の後半の設備利用率になったものの電力危機は起こらなかった。電力会社は東電だけではないし、需要が高まるとすれば電力取引市場で多くの発電事業者が電気を市場に売り出すから、突如として停電が起きるとすれば設備の故障や自然災害以外には考えにくい。

この危機を細かく見ると逼迫は2つの時間帯で見られた。1つは「使用量のピーク点」である午後2~3時台、最大5254万kW(以下、万kWを省略)の需要に対して設備は5674で92%だった。

もう1つは「使用率ピーク点」で午前9時~10時台、最大4669に対して4820で、97%だった。6月のピークは、実際にはその後の時間帯に出現している。逼迫注意報は30日午後6時で解除されているが、この日の午後2時から3時の需要量ピークでは5487に対して、6036が準備された。率にして90%は、例年でも余裕がある水準。午前9時から10時台は4947に対して5145の設備で、率にして96%、こちらの方が厳しいが、「警報」という水準ではない。

夜に発電能力が落ちるのは、東電は太陽光発電を1400ほど有しているため、夜間の発電能力が落ちるからだ。

では、夏のピークどころか6月下旬に電力が逼迫したのはなぜか。この時期は例年、比較的需要が少ない時期だが、今年は早々に梅雨が明け、気温が急激に上昇し、湿度も高く、例年ならば7月下旬頃の天候状況になっていた。

加えて、火力発電所の多くが定期検査に入っていて、発電能力が大幅に制限されていたため、ピークに対する余力がなくなっていたところに、石油火力を中心に長期休止しているものも多く、稼働できない設備が多数あった。

夏のピーク時には定期検査が終わった火力が投入される。設備は常に6000以上が準備されるので、逼迫は例年起きていない。こうした時間のずれが電力逼迫の注意報に繋がっただけである。東電による想定の甘さと、電力供給力整備の遅れなど、リスク管理に失敗し続けたことが、時季外れの電力逼迫に繋がったのである。

◆「それに備えて原発」なのか?

むしろ、原発で大電力を供給するほうがはるかにリスク(この場合は特に停電リスク)が高いことは、東日本大震災と2007年の中越沖地震で経験ずみだ。原発も火力も海沿いに多数立地しているから、津波に襲われれば被災する。仮に発電所に大規模な破壊が生じなくても、高圧送電線や変電所が被災すれば電気は来ない。地震や津波では原発こそ停電のリスクが高い。自然災害に強いシステムとは、むしろ1つ1つが脆弱でも広く分散して設置され、地産地消の仕組みが出来ているものである。

とはいえ大都市ではそれは困難なので、その場合はできるだけ消費地に近いところに立地し、被災しても早期復旧が見込める天然ガス火力が良い。これを補完するためには立ち上げが早くメンテナンスも容易な石油火力を温存しておくことだ。もちろん、排ガス対策は十分行い、高機能で高効率なものに置き換える必要がある。

もう多くの人は忘れてしまったのかも知れないが、東日本大震災後の電力設備の復旧も、火力が圧倒的に早かった。震災で被災した原発15基は、いまだに1基も再稼働していないが、火力は震災の年の7月までにすべて復旧している。また、震災直後に大量のディーゼルやガスタービン発電機を調達し、電力供給を行うこともできた。

これは原発では不可能なことだ。2007年の中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の7基は、2011年までに再稼働できたのは、重要設備の損傷が少なかった6、7号機など4基に留まっていた。こんなものに電力を頼っていたら、近い将来発生する南海トラフ地震では、日本中(特に西日本)がブラックアウトしたまま復旧に長期間要することになる。防災対策上も極めて危険な事態を招く。

今年夏の節電要請は、震災直後の2012年以来10年ぶりと各社報じたが、ではその前はいつだったかご存知だろうか。2007年である。この年の7月16日に中越沖地震が発生し柏崎刈羽原発が全部止まったため節電要請が出されている(経済産業省関東圏電力需給対策本部決定 平成19年7月20日付)。つまり過去の節電要請はすべて原発の停止が原因だったといっても過言ではない。(つづく)

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

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《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/
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政府「エネルギー基本計画」における「原子力の位置付け」の嘘八百〈後編〉  立地妥当性や経済性を「対象外」とした規制基準 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆環境適合性は最悪の原発

「環境(適合性)」については唯一「発電段階で二酸化炭素を出さない」この1点だけだ。

日本の発電所から排出される二酸化炭素は全放出量の4割程度である。

この4割のうち半分以上は石炭火力なので、これを全部廃止し、天然ガスまたは最近注目を浴びるアンモニア(混焼を含む)などを使えば、4分の1以下にできるという。火力の全部を原発にすることは不可能だが、石炭火力を全部天然ガスやアンモニアにすることは現在の技術でも十分可能だ。

二酸化炭素だけをとっても原発でなければならない理由はない。もちろん、再生可能エネルギーに置き換えることが最も重要だが。原子力の環境問題と言えば、もっと重大なもの、放射性物質(廃棄物を含む)による被ばくの問題は無視されている。

原発は運転中にも大量の放射性物質を海や大気に放出しており、例えば加圧水型軽水炉の玄海原発では10年間に約800兆ベクレルのトリチウムを放出してきた。これは福島第一原発で今問題となっている汚染水に含まれる量に匹敵している。ほかにもセシウムやヨウ素なども一定量を排出している。

さらに重大なのは、エネ基でも「推進する」とされている核燃料サイクルのうち「原発が1年で放出する放射能を1日で放出する」とされる再処理工場だ。

一般に、原発には「五重の壁」があり、放射性物質はそれに封じ込められているから人体や環境に影響を与えないと宣伝されている。再処理工場ではこの壁をことごとく取り去って使用済燃料を硝酸に溶かし、ウランやプルトニウムを取り出す。この工程で大量の放射性物質を海中や大気中に放出している。

事故が起きなくても再処理工場の沖合や周辺敷地にはヨウ素、セシウム、ストロンチウム、トリチウム、ルテニウム、コバルト、プルトニウム、ウランなどの放射性物質が蓄積している。これが環境汚染でなくて何であろうか。

さらに、福島第一原発事故のような大事故を起こせば、その何百倍もの取り返しのつかない環境汚染を引き起こし、回復には膨大な時間がかかる。これに対して責任を取れる会社などない。

国も責任を取れない(取らない)のは、現状を見れば明白だ。

◆安全性は誰も保証していない

「安全」については電事連は新規制基準をクリアしていれば安全と主張する。しかし規制委は「安全性を保障するものではない」と否定している。

この関係については、阿部知子議員(立憲民主党)による質問主意書(2014年10月7日)に対する答弁書が明らかにしている。

質問「なお、田中規制委員長が一貫して述べている『規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない』との表現と9月10日会見での『運転にあたり求めてきたレベルの安全性』との表現とは同じ『安全(性)』という語を用いているが、その意味するところは異なると思われる。それぞれの表現における『安全(性)』の定義と相互の関係を示されたい。」に対して、

答弁「御指摘の『規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない』という発言の趣旨は、『いわゆる安全神話に陥ることなく、最新の科学的知見に基づき、不断に向上させるべきものである旨を述べたもの』さらに、『運転にあたり求めてきたレベルの安全性』が確保されることが確認されたとは、規制委が九州電力から提出された川内原発の設置変更許可申請について、原子炉等規制法の設置変更許可基準に適合していることを確認したことを述べたものである。」としている。

これは閣議決定を経た文書であり、政府の公式見解だ。

「安全性の確保」には2つの意味がある。狭義には原子炉等規制法の求める基準を満たすこと。しかしこの基準は現在の知見や福島の経験に依拠しているので、新知見や新発見そして想定外の事態があれば未達成になる可能性は国も否定しない。

それに対して広義の安全性は、「不断の努力により向上させることで達成する」との考え方だ。

重要なのは「最新の科学的知見」が反映され、常に更新され続けて初めて、新知見や新発見を取り込んだ水準になるから、新規制基準適合性審査が常に安全性を担保するものではないことだ。

なぜならば、規制委以外に「更新されているかどうか」を判断する機関や組織がない。震災以前は、原子力安全委員会と原子力安全.保安院という組織がありダブルチェックする建前になっていたが、 今はそれさえなくなった。

新規制基準では、火山ガイドや基準地震動の見直しなどを適宜しているとされるが、安全を保証できるものではない。そもそも新規制基準で対象としているのは一定の自然災害と、従来の想定を超える過酷事故への対策(テロを含む特定重大事故)にとどまり、例えば立地地点の妥当性(地質、地盤、断層以外)や経済性は審査済として対象外にされている。

当然ながら経済性が悪化すれば安全対策の劣化にもつながるのだが、審査対象外だ。

唯一、日本原電の東海第二原発で「経理的基礎」が審査対象とされた。このため日本原電は東電、東北電に支援の意思を示す文書の提出を要請し、関西、中部、北陸を加えた5社で合計で3500億円が安全対策費用として資金支援されることになった。

規制委が問題にしたのは新規制基準で追加設置を余儀なくされた防潮堤などの津波対策費や特定重大事故等対処施設関連の費用だった。

これまでも日本原電に対して5社は年間約1000億円を設備維持費用として支払ってきた。しかしこれではまったく足りないため、東電に対しては電気料金の前払いとして支払いを求めている。これがなければ東海第二の再稼働はできない。

資金支援はいずれ清算される。一部は再稼働後の電気料金として充当されるが、原発が動かなければ債務不履行となり倒産する。日本原電の「経理的基礎」はきわめて脆弱だ。これでは安全の足を引っ張るのではとの危機感は、規制委にも電事連にもない。

◎山崎久隆 政府「エネルギー基本計画」における「原子力の位置付け」の嘘八百
〈前編〉原発を「準国産エネルギー」と呼ぶ欺瞞
〈後編〉立地妥当性や経済性を「対象外」とした新規制基準

本稿は『NO NUKES voice』(現『季節』)30号(2021年12月11日発売号)掲載の「『エネルギー基本計画』での『原子力の位置付け』とは」を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

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政府「エネルギー基本計画」における「原子力の位置付け」の嘘八百〈前編〉   原発を「準国産エネルギー」と呼ぶ欺瞞 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

原子力は「安全性、経済性、安定供給、環境への適合」(いわゆるS+3E)に勝れているだろうか。第6次エネルギー基本計画(以下、エネ基)は、パブリックコメントが終わり、2021年10月22日には19日に公示された選挙期間中にもかかわらず閣議決定された。

法令上は国会での議決を要しないが、十分な議論もしないままに決定された。エネ基には2030年時点の電源別構成比など、問題点が多くあり、個別に指摘するべきだが、それらはすでに他の人々から指摘する文書が発表されているので、ここではエネ基での原発の位置付けを批判する。

◆「S+3Eの観点」とは何か

エネ基には「S+3Eを大前提に」という表現が随所に出てくる。「S+3E」については「3.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)の確認」として定義が書いてある。また、経団連や電気事業連合会(電事連)も「S+3Eに優れた電源」との表現を使う。それは「経済性(Economical efficiency)」「安定供給(Energy security)」「環境(Environment)」に加えて「安全(Safety)」だという。

電事連は、

「エネルギー源の中でも、原子力は3Eのすべての点において優れた特性を持っており、エネルギーミックスの一翼として欠かすことができない重要な電源」

と位置付ける。しかし、これは間違っている。

◆経済性の欠如はもはや明白

「経済性」の欠如は、朝日新聞(2021年8月3日付)の記事が端的に証明している。

「経済産業省は3日、電源別の発電コストの試算について詳しい数値を公表した。原発は2030年時点で1キロワット時あたり『11.7円以上』となり、前回15年の試算より1.4円上がった。最も安かったのは事業用太陽光で、『8.2円~11.8円』だった。太陽光のコストが原発を将来下回る見通しが固まった。」

経産省の原発の原価計算では、大きなボリュームを占めるはずの「10万年にもわたる将来」の核のごみ処分費用はほとんど含まれていない。これは試算そのものが2030年時点としているため、その先の処分費用については現時点での試算値を当てはめているからだ。

高レベル放射性廃棄物の処分については、ガラス固化体の地中処分費用として3.1兆円を計上しているが、福島第一原発の廃炉ですら8兆円で見通しが立たない現状では、これで済むはずがない。

さらに、福島第一原発の事故による費用の積み上げについても15.7兆円を計上するが、 これについても 「下限」であることを認めている。すでに22兆円を超える費用がかかることは確定的なうえ、100年かかるか200年かかるかという現状だ。

「ありえない」前提を置いた試算でもキロワットあたりの単価が11.7円と他の電源を上回ることが明らかになっているので、経済性に劣ることは経産省が自ら認めている。

◆原発は安定供給性に資するか

「安定供給」とは、電事連によると「エネルギー資源を安定して輸入できるようにする必要」とされている。すなわち中東依存度を下げることを言う。

しかし安定供給といえば一般的には停電しないこと、夏冬のピーク時に電力不足にならないことや、特に災害時においての系統の強靭さ(停電しない、または停電してもすぐに復旧する)を思い浮かべるが、電事連は中東依存度こそ問題だという。明らかに感覚がずれている。

しかも、中東依存度を下げることが課題となったのは第一次オイルショックの1972年以降。その当時中東原油輸入依存度が77.5%だったからだが、なんと近年では90%近くまで上昇している。

自分で課題としておきながらこの間、無策だったといっているに等しい。原発が安定供給に資するかどうか以前の問題だ。

その原発だが、燃料に使うウランはすべて輸入品で海外依存度は100%だ。電事連は同時に「日本の1次エネルギーの海外依存度は88.2%」とも言っているから、理由の1つは原発だ。

ところがここでトリックを使う。原発を「準国産エネルギー」としている。だが、これはまったく意味不明である。核燃料は運転中にプルトニウムを生成し、ウラン燃料を寿命まで燃やした場合、その4割程度の熱量が燃料の中で生成されたプルトニウムの核分裂から生じる。それを「原子炉の中で生成されたプルトニウムが作り出した熱」=「原子炉は日本にあるから準国産」なのだという。これを普通は屁理屈という。

さらに「原発の燃料はいったん装荷したら1年間は交換しなくてもよいので、その間は輸入が止まっても発電が可能」という。しかしこれも1年以上燃料が供給されなければ止まるので単なる時間差にすぎない。これに対して、核燃料サイクル施設を国内に建設し、原料ウランを輸入して濃縮プラントに入れるので、サイクル内に備蓄する効果が期待できるという。しかしそれも時間差にすぎず屁理屈だ。国内の核燃料サイクルで「上流側」とされるウラン濃縮から加工に至る施設は、現在ほとんど稼働していない。

国内の原発の多くが止まっている影響もあるが、新燃料の場合は、輸入したほうが国内で作るよりも遥かに安く済むから、電力会社が国内加工燃料を使いたがらないという事情もある。コスト高が響いて、原発の非経済性が浮き彫りになっている。

安定供給の追求は、電事連が掲げる「原発の有利さである経済性」に、ことごとく矛盾している。(つづく

◎山崎久隆 政府「エネルギー基本計画」における「原子力の位置付け」の嘘八百
〈前編〉原発を「準国産エネルギー」と呼ぶ欺瞞
〈後編〉立地妥当性や経済性を「対象外」とした新規制基準

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