◆セコンドの基本編

古代ボクシングでは、次に出場する選手が、その時戦っている選手の補佐役を務めた為に付いた文字どおりのセコンド、2番目を意味することがインターネットで調べればそんな由来が出て来るとおりと言えそうです。

現在のプロボクシングに於けるセコンドの役割は多く解説されており、試合中に観衆の目に映る範囲でも解るかと思いますが、誤解され易い部分も含めて、理解を深めて頂ければと思います。更にキックボクシングとの比較についても述べたいと思います。

セコンドの人数はプロボクシングの場合、三名まで認められていますが、インターバル中、リング内に入れるのは一名。他二名はロープの外側からの補助役となります。

控室の準備は割愛しますが、キックボクシングやムエタイの場合、「ムエタイの隠し味!」編で述べたようなタイオイルを塗るのもセコンドや側近の仕事となります。

選手のリング入場時から試合での三名のセコンドがやるべきことは多く、入退場の補佐や各ラウンド終了ゴングが鳴ったら、次のラウンドへ向けて1分間のセコンドの重要な任務に入ります。選手がコーナーに戻って来るまでにコーナーに椅子を入れ込み、選手のマウスピースを取り出して水で洗い、うがいさせてマウスピースを口に嵌めさせて次のラウンドへ送り出す。他にも汗を拭き取り、腫れた部分を腫れ止め金具で抑えたり、ワセリンを塗ったり、揉んだり、その間にアドバイスも送ります。その小道具を機転を利かせて手際よく手渡しするのもセコンド陣営のチームワーク。

選手が出血した場合、プロボクシングではセコンドに代わってカットマンという止血のプロが処置に入る場合もあります。正味50秒ほどで傷の具合を見て的確に止血するのも腕の見せ所でしょう。セコンドアウトのホイッスルやブザーが鳴ったら、すみやかに椅子や水の入ったボトル、漏斗なども撤去してリング下へ移動します。

中川栄二に着く千葉ジム陣営、戸高今朝明氏のセコンド姿、昭和の雰囲気抜群(1983.9.18)

 

飛鳥信也に着く陣営は目黒ジムの雰囲気抜群(1995年頃)

◆あまり意識されない規則

ドクターチェックの際はタイムストップされていてもラウンド中なので、リング内に入ることは出来ません。レフェリーにドクターの方へ呼ばれた場合はロープの外側やリング下から回らねばいけません。

選手がダメージを負い、これ以上の続行は棄権と判断した場合、リング内にタオル投入し、レフェリーに棄権を伝える行為がありましたが、プロボクシングではJBCが2019年6月にタオル投入ルールを変更し、チーフセコンドがコーナーからタオルを振って棄権を知らせるウェイビングに変更した模様です。

タオル投入はレフェリーの背後に落ちた場合、気付くのが遅れる場合があることが要因でしょう。

しかし、キックボクシングでの棄権はタオル投入が続いていますが、まだ昭和の時代にウェイビングを行なったセコンドが居たことも事実です。このウェイビングは今後も影響を受けそうで徐々に改善されていくことでしょう。

他に、プロボクシングの場合、風を送る為にタオルで扇ぐのは禁止です。おそらく棄権を意味するウェイビングと紛らわしい点があるかと思います。紛らわしくなくても似た行為による禁止でしょう。団扇(うちわ)で扇ぐのは可能で、これらは昔からあるルールです。

キックボクシングにおいて、最近はタオルで扇ぐ行為はあまり見られなくなりましたね。

セコンドは試合中に大声でアドバイスを送るのは厳密にはルール違反です。声をあげてアドバイスを送るのは黙認されているのが現状でも、特に相手側に罵声を浴びせることは厳重注意となるでしょう。

「セコンドはラウンド中、リング下の椅子に座って、リングマット、コーナーポスト等に手を触れてはならず静粛にしていること」というルールがあります。

この静粛ルール、私(堀田)が初めて知ったのは平成初期に立嶋篤史さんから聞いた話でした。

その後(1990年代)、プロボクシングの試合でレフェリーがタイムストップし、セコンドに簡潔な注意を与えたのを見たことがあります。レフェリーは熊崎広大さんで、素早く的確に処置後、すぐ再開させていました。

[左]赤土公彦のランシットスタジアムでの試合、足下に有るのが水受け皿(1989.1.9)/[中央]佐藤正男に着く渡邊ジム陣営 渋さ抜群(1992.4)/[右]小野瀬邦英のセコンドに着いた戦友、ガルーダ・テツ(2002.12.14)

◆緩やかな任務

キックボクシングを観ていると、リング内に椅子の入れ方もまごつく姿を見ることがあります。後楽園ホールのリングの場合、ロープの最下段から椅子を寝かせて先端を、くの字を描くようにリング内に入れて立てればOKだが(やったことある人は解ります)、なかなか入らなくて、ロープとロープの間から入れようとしても上手く開かずまごついたり、ロープ最上段から入れる為にロープ際に上がって余計手間が掛かって「遅い!」とチーフセコンドに怒られたり、近くで見ていて笑いたくなるほどでしたが、セコンドをやったこと無い者がたまたまお手伝いでやらされると、こんな連携不足にも出くわします。プロボクシングでは役割分担も綿密に組み込まれ、そのライセンスされた者がセコンドを務めるので、多くのセコンドチームワークはしっかりしているでしょう。

よく疎かになりがちなのが濡れたマットを拭くこと。ボクシングでは水を吹き掛けることは禁止されていますが、キックボクシングやムエタイでは頭から浴びるように水を掛けたことがありました。

過去のキックボクシングはリング上に大きい水受け皿を上げて使われていた時期もありましたが、最近は使われていない模様。後楽園ホールではプロボクシングでもリング下の水受け用鉄板(皿)が置かれていましたが、最近は置かれていません。水を使ったらリング下の受け皿が無いので多量に水を使わせない工夫かと思います(うがいした水は漏斗によってリング下のバケツに溜まるようになっています)。

キックボクシングにおいて、他のジムのセコンドに着く例では、元・日本フェザー級チャンピオン、葛城昇さんは平成初期頃、習志野ジム、小国ジム、キングジム。一つの興行で三つのジムのセコンドに着いていたかな。過去所属したジム仲間の縁から友情セコンドとなった例で、キックボクシングだから可能だったことでしょう。現在も団体が分かれている為、厳格なライセンス制度が無く、ジムは違うが友人のセコンドに着くという例はたまにあるようです。

過去の例では小野瀬邦英氏の引退試合に宿敵、ガルーダ・テツ氏がセコンドに着いた話題の試合もありました。ライバルだからこそ知り得た癖。どこまで活かされたかは二人だけが知ることかもしれません。

雄希ワセリンを塗るガルーダ・テツ会長、まだ最近(2024.2.17)

◆セコンドのマナー向上

キックボクシングにおいて、最近のセコンド陣営はマナーがいいと言われます。リング中央で相手側セコンドとも握手し、ラウンド中は椅子に座ってのアドバイス。判定に不服があっても騒がない。血の気の多い会長やセコンド陣営が居た昭和世代とは大きな違いでしょう。こういう正しい行為がキックボクシングの品格を上げることに繋がるので、多くの陣営の力で続けていって欲しいものです。

そんなセコンド風景も撮影すること多い私ですが、選手同様、撮影しておけば後で役立つこと多いので、人生でリング上に立っている時間はわずかしかない、この瞬間を記録させて頂きたいと思います。

今回はキレイに纏め過ぎたか、セコンドに纏わる過激なエピソード、あるにはありますが、また時期を見て披露したいと思います。

先日のタイトル戦、ジョニー・オリベイラのセコンドに着くトーエルジム陣営、ワセリンを塗るのは現代の紅闘志也(2024.3.3)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年4月号

新たなチャンピオン誕生。デビュー20年のジョニー・オリベイラ戴冠。
木下竜輔は大抜擢ながらチャンスを活かせずも、まだエース格へ成長の力あり。
ベテラン瀬戸口勝也はNJKFの山浦俊一をノックダウン奪って判定勝利、存在感示す。

◎MAGNUM.59 / 3月3日(日)後楽園ホール17:15~21:16
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

(戦績は当日プログラムより、この日の結果を加えています)

◆第12試合 59.0kg契約3回戦(6oz)

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 58.8kg)42戦31勝(14KO)8敗3分
       VS
山浦俊一(前・WBCM日本SFe級Champ/新興ムエタイ/ 59.95→59.9kg=計量失格、減点2、グローブ8oz使用)33戦17勝(3KO)14敗2分

勝者:瀬戸口勝也
主審:少白竜
副審:宮沢30-25. 勝本30-24. 中山28-25 (山浦に減点2含む)

初回、山浦俊一が蹴りで仕掛けるが、瀬戸口が距離を詰めて来てボディーブローを狙う。パンチの勢いは瀬戸口が攻勢だが、ヒジ打ちを合わせるタイミングや組み合ったら崩すのは山浦が上手く、ヒジで瀬戸口の右瞼をカットしたが、第2ラウンドには瀬戸口がヒジ打ち返しで山浦の眉間をカットした。

最終第3ラウンドの開始早々に瀬戸口が強打で出て来た。ロープ際に詰まった山浦に右ストレートがヒットし、ノックダウンを奪う。すぐ立ち上がりダメージは小さいが勝利は大きく瀬戸口に傾いた。更に打ち合った中、瀬戸口の連打で山浦は2度目のノックダウン。更に倒しに行った瀬戸口だったが、打ち合いに耐え凌ぎ、組み合ったら崩し転ばす山浦。ハイキックも見せた山浦は意地を見せて打ち合いに応じた中、瀬戸口も最後のヒットを見せることが出来ず判定に縺れ込んだ。

ラストラウンド、瀬戸口勝也の右ストレートで山浦俊一がノックダウン

山浦は前日計量ではうつむいた暗い表情も、試合では瀬戸口の強打と打ち合うアグレッシブな展開が見られた。瀬戸口の強打を貰ってしまったが、ムエタイ技の上手さを活かせた山浦だった。

山浦は「瀬戸口さんのパンチは重いとは感じなかったです。これなら耐えられるな、というパンチでしたけど、結果ダウンしているんでダメですけど。減量は完全に自分のミスだと思います。」と反省していた。

最後の打ち合い、瀬戸口が強打で山浦を攻めるが倒し切れず

◆第11試合 日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦

日本スーパーフェザー級2位.木下竜輔(伊原/ 58.65kg)11戦4勝(2KO)7敗
      VS
同級4位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 58.9kg)61戦16勝(1KO)27敗18分
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:宮沢48-50. 少白竜49-50. 中山48-50

 

チャンピオンに上り詰めたジョニーはこのベルトの価値を上げられるか

木下竜輔は2021年4月デビュー。一昨年5月15日にはベテランの王座挑戦経験を持つジョニー・オリベイラを第1ラウンドに右ストレートで失神TKO勝利して一気に注目を浴びる存在となった。

初回、両者のローキック中心の蹴りで様子見から距離を詰めてパンチに繋ぐ展開も、前回のように木下竜輔が強打の右ストレート狙うも、ジョニーも警戒し主導権支配には至らない探り合いが終盤まで続く。

第4ラウンドにはジョニーが組み付くシーンが増え、消極的展開にレフェリーが両者へ注意を与える。

第5ラウンドもジョニーの組み付くシーンが続いてレフェリーの注意を受けたが、少ない残り時間を支配しようとアグレッシブさが増したジョニー。木下は攻め倦む中、積極性を失い、ジョニーが攻勢で終わる流れとなった。試合終了後も延長の可能性を賭けてか、木下陣営はアドバイスを続けていた。判定は第3ラウンド以降、ジョニーが優勢に傾くも、ジャッジ三者揃ってジョニー・オリベイラに付けたのは最終ラウンドだけだったが、勝利を得るに至った。

木下竜輔は「僕はジョニーさんとの初戦からいろいろ始まったのですが、連敗している僕は試合できる身分ではない中でチャンスを頂いたことと、対戦したジョニーさんに感謝しています。」と語った。

ジョニー・オリベイラは、「木下さんのパンチは重かったし効きました。でも我慢して練習して来たテクニック出して頑張りました。試合はとても良い感じで勉強になりました。」と語り、ジョニーのチーフセコンドを務めた中川卓さんは、「1月に王座決定戦が決まってからジョニーと100ラウンドぐらいスパーリングしましたよ。ジョニーは試合はちょっと力んでしまいましたけど、練習の調子良さが出せれば勝てると思いました。」と語った。

練習量と経験値で優ったジョニー・オリベイラ

◆第10試合 69.0kg契約3回戦(8oz)

佐藤界聖(聖域統一ウェルター級Champ/ PCK連闘会/ 70.9→70.3kg=計量失格、減点2)
15戦11勝(3KO)3敗1分
      VS
大谷真弘(BRAVE FIGHT CLUB/ 68.9kg)7戦5勝(2KO)1敗1分
引分け 0-1
主審:勝本剛司
副審:椎名28-29. 28-28. 中山28-28 (佐藤の減点2含む)

初回はスピーディーな展開でパンチ中心に出て来る大谷真弘だったが、佐藤界聖がローキック、主にカーフキックを連発していくと大谷の攻撃力が弱まり、佐藤が完全に主導権を奪って攻勢を維持したが、減点が響いて引分け。ウェイト差が出た展開かは分からない。

[左]佐藤界聖に攻められながら耐えた大谷真弘/[右]佐藤界聖(右)が優勢ながら計量資格の減点響いて引分けとなった

◆第9試合 78.0kg契約3回戦

マルコ(伊原/ 78.05→77.9kg) 7戦4勝(1KO)3敗
      VS
雄也(新興ムエタイ/ 77.55kg)10戦2勝7敗1分
勝者:マルコ / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:椎名30-25. 少白竜30-25. 勝本30-25(三者とも各ラウンド同一採点)

初回、マルコはパンチから強烈な右ローキックを連発して主導権を奪う。パンチとローキック中心の流れはマルコが優勢のまま最終第3ラウンド、マルコのパンチ連打で雄也がノックダウン。立ち上がった雄也は打ち合って前に出てヒザ蹴りを出すとローブローに近かったか、逆にマルコのヒザ蹴り仕返しで二度目のノックダウン。立ち上がって反撃するも巻き返せず終了。

マルコの蹴りと重いパンチに雄也が後退

 

Nao(右)が常に挑戦者の気持ちで戦う不屈の闘志でRUIを攻める

◆第8試合 女子(ミネルヴァ)48.5kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・アトム級チャンピオン.Nao(AX/ 48.2kg)5戦5勝(2KO)
        VS
RUI・JANJIRA(JANJIRA/ 48.05kg)4戦1勝3敗
勝者:Nao / 判定2-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-29. 宮沢29-29. 勝本30-29

NJKFで2023年の女子部門優秀選手賞を受賞したNaoが5戦目を迎えた。

手数と攻防は互角の展開を見せるが、ヒザ蹴りのヒット、パンチや前蹴りのヒットとインパクトがやや優ったNao。ジャッジ三者が揃う明確な差のラウンドは無かったが、僅差判定勝利を飾った。

◆第7試合 51.8kg契約2回戦

渡邊匠成(伊原/ 51.4kg)3戦1勝1敗1分
      VS
大久保貴広(京都野口/ 51.65kg)2戦2勝(1KO)
勝者:大久保貴広 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名19-20. 中山19-20. 勝本18-20

◆第6試合 ウェルター級2回戦

宇野澤京佑(伊原/ 66.35kg)1戦1敗
      VS
崚登(新興ムエタイ/ 66.4kg)3戦2勝(2KO)1分
勝者:崚登 / TKO 2ラウンド2分35秒
主審:宮沢誠

初回、崚登のパンチ連打の後、ヒザ蹴りから右ストレートが宇野澤京佑の顎にヒットでノックダウン。

第2ラウンドには崚登がパンチから右ヒザ蹴りを宇野澤のボディーへヒットさせ、右ミドルキックを腕の上から蹴ったが、ボディーが効いていてノックダウン。立ち上がったがカウント中のレフェリーストップとなった。

崚登の右ストレートヒット、KOへ繋いでいく

◆第5試合 アマチュア女子37.0kg契約2回戦(2分制)

西田永愛(Queen’s Fight 全国トーナメント初代35kg級覇者/伊原越谷/ 36.9kg)
        VS
渡邊梨央(Queen’s Fight準優勝/MtF MUGEN/ 36.4kg)
勝者:西田永愛 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)女子49.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ライトフライ級2位.佐藤”魔王”応紀(PCK連闘会/ 47.6kg)
22戦11勝(6KO)9敗2分
          VS
同級3位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/ 49.35→49.25→49.0kg)
14戦5勝(1KO)8敗1分
勝者:佐藤”魔王”応紀 / TKO 2ラウンド1分14秒
主審:中山宏美

初回早々、10秒あまりで佐藤はローキックから右ストレートで紗耶香からノックダウンを奪う。第2ラウンドも佐藤が蹴りから右ストレートでノックダウンを奪い、少々の首相撲の後、再度右ストレートで紗耶香からノックダウンを奪うとレフェリーがノーカウントで試合を終了した。紗耶香は試合前から右膝にテーピングされており、試合でもローキックを貰ってフットワークに影響あったかもしれない。

紗耶香の右膝へカーフキックを決める佐藤魔王応紀

◆第3試合 ミネルヴァ公式戦 女子49.0kg契約3回戦(2分制)

ナディア・ブロン・バビルス(伊原/アルゼンチン/48.05kg)7戦3勝1敗3分
          VS
ミネルヴァ・ライトフライ級チャンピオン.Yuka★(SHINE沖縄/48.75kg)11戦5勝4敗1分
引分け 三者三様 (29-29. 29-30. 30-29)

◆第2試合 アマチュア45.0㎏契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/ 44.7 kg)vs龍翔(TRASH/ 44.55kg)
勝者:龍翔(青コーナー) / 判定0-2 (19-19. 19-20. 19-20)

◆第1試合 アマチュア31.0㎏契約2回戦(2分制)

武田竜之介(伊原越谷/ 30.9kg)vs米田賢吾(VALLEY/ 29.85kg)
勝者:武田竜之介(赤コーナー) / 判定3-0 (20-18. 20-19. 20-19)

《取材戦記》

今回の興行、伊原ジムに於ける前日計量で4名のウェイトオーバーがありました。そのうちの一人はマルコ。余裕の計量に臨みながら、わずか50グラムのオーバーで減量失敗ではなく、少々の運動で数分後にクリアー。

紗耶香は350グラムオーバー(コスチューム分を除く)だったが、スウェットジャケットを着てシャドウボクシングを続けて規定の2時間以内に3回目の計量でクリアー。佐藤界聖は1回目の計量で1.9kgオーバー。地下の伊原ジムで縄跳び等を経ても1.3kgオーバーで諦めた様子。当人と陣営は相手陣営に平謝り。

プロモーター関係者からは「だらしない試合するのが一番ダメで、良い試合して勝って謝りなさい!」と檄を飛ばされていた。

山浦俊一は950グラムオーバーで、再計量でも900グラムオーバー。こちらも諦めざるを得ない状況でした。本人は試合後、「自分の不甲斐無さです!」と自分を責めたが、加工食品の添加物などは疎くて気にしていないという。

近年、よく聞く大幅な計量失格。昔は飲まず食わずの過酷ながらもジャケット着てしっかり動けば、ウェイトは何とか落ちたもので、リミットクリアーするのが殆どだったが、古き昭和時代の経験者は「今時の選手は我慢が足らない。我々の時代は1週間、水一滴も飲まずに落としたもんだよ!」と言う元・選手もいます。

現在は食物のカロリーなど計算された中で、水分と栄養を摂りながらウェイトを落とす時代でもありますが、普段からいろいろな添加物の食生活になっているのが我々現代人で、昔と比べより増えたホルモン剤による食肉加工品(特に外国産)を食べていれば人間の健康にも影響が出ない訳が無いと言われます。あくまで仮説ですが、そんな食生活で身に付いた筋肉や脂肪は、プロボクサー等の計量に向けた短期で落とす減量には思うように落ちない現象もあるのかもしれません。

新日本キックボクシング協会に新たなタイトルが誕生しました。現状の興行体制で賛否両論はある中、新王座の成り行きを見て行くしかないでしょう。

ジョニー・オリベイラは在日ブラジル人で、2004年デビューから20年となるベテランは46歳という。タイトル挑戦が決まったのは1月中頃で、最後のチャンスとなるタイトル戦へ向けた日々が始まりました。

過去の王座挑戦は2012年12月9日に日本ライト級で、石井達也(藤本)に挑戦は判定負け。2016年12月11日には勝次(藤本)に挑戦もノックアウトで敗れていました。まだまだ戦い続ける意欲あるジョニー・オリベイラ。練習量が豊富で体脂肪率も低いという。今後も注目してみましょう。

新日本キックボクシング協会次回興行は、5月12日に後楽園ホールに於いてTITANS NEOS.34が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

杉山空と谷津晴之は2021年10月16日に対戦し引分け。2年4ヶ月ぶりの再戦となった。その後、両者ともそれぞれの団体で王座挑戦があり、杉山空は昨年2月18日に王座決定戦で龍太郎(真門)に判定勝利してNKBフライ級王座獲得。

谷津晴之は2021年12月5日にNJKFフライ級チャンピオン、優心(京都野口)に挑戦も判定負け。昨年9月17日に2度目の挑戦も引分けで王座奪取は敵わず。今回、杉山空にとってはチャンピオンとして負けられない立場となっての再戦となった。

◎冠鷲シリーズvol.1 / 2月17日(土)後楽園ホール 17:30~20:35
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第11試合 52.0kg契約 5回戦

NKBフライ級チャンピオン.杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/51.45kg)
8戦5勝1敗2分
        VS
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/2003.5.7神奈川県出身/51.8kg)
11戦5勝(1KO)4敗2分
勝者:杉山空 / 判定2-0
主審:前田仁
副審:加賀見50-47. 鈴木49-49. 笹谷50-48

ローキック中心に蹴りで距離感を掴みながらパンチの交錯の後、すぐ組み合ってから縺れ合い、ヒザ蹴りなどスピーディーな展開が続く。崩し転ばすのは杉山がやや上手。

好戦的に戦う両者にとっては最も苦しいであろう第4ラウンドも主導権を奪おうとする勢い衰えず、最終第5ラウンドには杉山空がバックハンドブローがヒットするインパクトを与え、ヒジ打ちで谷津晴之の左眉尻をカットし、谷津晴之は序盤から時折飛びヒザ蹴りを見せたが、杉山空の勢いに優ることは出来なかった。

杉山空のバックハンドブローが炸裂

全体ではパンチと首相撲からの崩しは杉山空が支配したか。ジャッジ三者が揃って10対9を採点するラウンドは無いほど差が付き難い展開ながら、幅がある分かれ方で杉山空が判定勝利した。

杉山空は「1年ぶりの試合で不安な要素もいっぱい有って、凄くパンチを練習していたんですけど、その成果が少し出せて、遠い所(静岡県裾野市)から応援団が沢山来てくれて、その人達の応援の力の御陰で最後まで粘って戦うことが出来ました。」

対戦相手の谷津晴之については、
「谷津選手のミドルキックを警戒していたんですけど、やっぱりそのミドルキックが強くて何とか凌いで攻めを上回ることが出来ました。次戦はまだ決まっていませんが、防衛戦になると思います。防衛戦に向けてパンチを強化して倒せる選手になりたいと思います。」
と語った。

杉山空が試合終了間際に主導権を奪って終えたと言える左フックがヒット

◆第10試合 バンタム級3回戦

キッシンチャイ(=森貴慎/AKSドミネーター/1992.1.13静岡県出身/53.5kg)
15戦12勝(7KO)3敗
        VS
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/53.25kg)5戦4勝(2KO)1敗
勝者:キッシンチャイ / 判定3-0
主審:高谷秀幸
副審:鈴木30-29. 加賀見30-29. 前田30-29

元・JNETWORKバンタム級チャンピオン森貴慎がキッシンチャイとリングネームを変更し、5年ぶりの再起戦。雄希は202年12月デビューで4戦無敗の新鋭ながら、現在の両者の実力拮抗を量るマッチメイクとなった。

パンチとローキックの攻防は互角の展開。第2ラウンドにはキッシンチャイの左ストレートヒットと首相撲からの崩しでやや優勢を維持したか。大きな差は無いままラウンドが進んだが、第2ラウンドをリードしたキッシンチャイが辛くも判定勝利した。

雄希側陣営は試合内容、展開について「蹴りを上手くはやらせて貰えんかったですね。」と言っている間に、近くで聞いていた雄希本人が悔しそうに「動きは悪かったです。出直します!」と反省を述べていた。

[左]タイミングはズレたが、キッシンチャイの組み合った中でのヒザ蹴りで圧力掛けた/[右]5年ぶりの復帰戦を勝利で飾ったキッシンチャイ

◆第9試合 61.0kg契約3回戦

角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/1989.8.14富山県出身/60.7kg)23戦12勝8敗3分
       VS
山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/60.9kg)15戦5勝(4KO)7敗3分
勝者:角谷祐介 / 判定2-1
主審:笹谷淳
副審:鈴木30-28. 高谷30-29. 前田29-30

開始早々、山本太一は猛ダッシュで角谷祐介に飛びヒザ蹴りを浴びせる。ヒットはしなかったが、角谷祐介は焦ることなく冷静に試合を進め、蹴りからパンチの互角の攻防から徐々にヒットを増やしたが、山本太一のアグレッシブなパンチと蹴りの前進には評価は分かれる展開で、スプリットデジションとなる判定勝利となった。

試合開始早々に山本太一が突進しての飛びヒザ蹴りはヒットせず

角谷祐介の前蹴りが山本太一にヒット

◆第8試合 65.0kg契約3回戦

大月慎也(元・JKAライト級4位/TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/65.0kg)
22戦9勝(4KO)9敗4分
       VS
ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/64.6kg)39戦7勝(3KO)29敗3分
勝者:大月慎也 / TKO 3ラウンド1分25秒
主審:加賀見淳

蹴りの攻防から接近戦に持ち込みたいちさとに、離れた距離での蹴りでは徐々に大月慎也のヒットが増えていく。

第2ラウンドには左ハイキックでノックダウンを奪い、度々ハイキックがちさとを襲う。大月のローキックもヒットが増え、第3ラウンドにもガードが低いちさとに左ハイキックを後頭部ヒットで倒すと、立ち上がる様子はあったが、レフェリーがほぼノーカウントで試合を止めた。

大月慎也の左ハイキックがちさとを襲う、辛うじてブロックしたちさと

大月慎也の左ハイがちさとの後頭部にヒット、今度はブロック出来ず、大月慎也がTKO勝利に繋げた

◆第7試合 58.5kg契約3回戦

NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/58.5kg)
30戦11勝(4KO)15敗4分
       VS
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/58.3kg)4戦4勝(4KO)
勝者:利根川仁 / TKO 2ラウンド1分25秒
主審:鈴木義和

パンチと蹴りの攻防は第1ラウンドから利根川仁が右ストレートのタイミングを探っていたか、第2ラウンドには追い詰めていく中でカウンターでヒットさせるとノックダウンとなってカウント中のレフェリーストップとなった。

利根川仁の右ストレートが半澤信也にヒット若い力がベテランを制した

◆第6試合 ライト級3回戦

猪ノ川海(大塚道場/2005.9.30茨城県出身/60.85kg) 3戦2勝(2KO)1敗
      VS
龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/61.2kg)8戦7敗1分
勝者:猪ノ川海(赤コーナー) / TKO 1ラウンド2分52秒
主審:笹谷淳

開始から猪ノ川海の距離感で蹴りとパンチが優り、組んでのヒザ蹴りも効果的に攻める。龍一のパンチをやや喰らっても、すぐにパンチ、ヒジ打ちで巻き返し、左ハイキックから右ハイキック、更にパンチ連打から右フックで倒し切ると、レフェリーストップとなる圧勝となった。

◆第5試合 ライト級3回戦

魔裟屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/60.05kg) 3戦3敗
      VS
中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/61.0kg)2戦2勝
勝者:中山航輔(青コーナー) / 判定0-2 (29-30. 30-30. 28-30)

◆第4試合 62.0kg契約3回戦

森野允鶴(渡邉/2001.1.17東京都出身/61.75kg)2戦2勝
      VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/61.6kg)9戦6勝(4KO)2敗1分
勝者:森野允鶴(赤コーナー) / 判定2-0 (30-28. 29-29. 30-28)

◆第3試合 56.0kg契約3回戦

ATSUSHI(NK/2001.11.21大阪府出身/54.95kg)2戦2勝(1KO)
      VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/54.85kg)3戦2敗1分
勝者:ATSUSHI(赤コーナー) / 判定2-1 (30-29. 30-29. 29-30)

◆第2試合 51.0kg契約3回戦

TAKUMI(Bushi-Doo/1989.12.8新潟県出身/50.9kg)6戦6敗
      VS
緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/50.65kg)1戦1勝
勝者:緒方愁次(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

九龍悠誠(誠真/1999.12.1神奈川県出身/53.45kg)2戦1勝1敗
      VS
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/53.2kg)2戦2勝(1KO)
勝者:涌井大嵩(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

 

北側応援団に向かって感謝を述べる杉山空

《取材戦記》

今年のシリーズ名、冠鷲のように杉山空は狙った獲物は逃さない、今年のエース格に上り詰められるか。

2022年10月29日より始まった、NKBに於ける12年ぶりのフライ級王座戦となった4名参加の王座争奪トーナメントで、翌年2月18日には杉山空が龍太郎(真門)との王座決定戦で判定勝利し王座獲得となった。そこから1年、試合が空いてしまうのは成長期に勿体無い事態だったが、今回の判定勝利で「次は防衛戦になると思います。」と言うように「防衛してこそ真のチャンピオン」をこのNKBでも実践して欲しいものである。

現在は興行運営一歩退いた感のある渡邊信久連盟代表理事は、NKB実行委員会代表としてもリングサイドに陣取り、大御所としての存在感は健在です。血気盛んに興行を担っていたお手製のチケットだった頃は、1枚1枚席番を押印する手作業をやっていたり、更なる昔は手書きの時代もあり、そんな昭和の時代は“切符”と呼んでいました。現在も“入場券”という言い方は残っていますが、若い世代の大方は“チケット” と呼んでいるでしょう。

長きに渡って続けられて来た“切符販売”は大変な苦労ですが、渡邊ジム設立以来54年続けられて来た販売の技と、日本キックボクシング連盟設立40周年の地道な継続の力での次回の冠鷲シリーズvol.2は4月20日(土)に後楽園ホールに於いて開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

100万円争奪東西対抗戦となった今回のCHALLENGER興行。アマチュア2試合含め、全13試合全てがチーム対抗戦となり、いずれかの勝利チームとなれば選手一個人が勝っても負けても3万円獲得。更に判定勝ちで+5万円。KO勝利すれば+10万円で。計13万円が贈呈されることになり、チーム13選手全員がKO勝利すれば156万円となるが、100万円からオーバー予算分は武田幸三氏が「私が何とかします!」と宣言。余った場合はMVP賞に与えるという。

ポイントは判定勝利が1点。KO勝利が2点。引分けは0点。タイトルマッチ3試合は判定勝利が2点。KO勝利が5点。結果、東軍が12対7で勝利チームとなった。

MVPは鮮やかTKO勝利を飾った嵐が獲得。

◎NJKF CHALLENGER / 2月11日(日)後楽園ホール 17:20~22:10
主催:TAKEDA GYM / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

◆第11試合 第14代NJKFフェザー級王座決定戦 5回戦

 

今更といった感もあるNJKF新チャンピオンとなった大田拓真、目指すは上位へ

1位.大田拓真(新興ムエタイ/24歳/ 57.15kg)36戦27勝(8KO)7敗2分
      VS
2位笹木一磨(理心塾/27際/ 57.0kg)22戦12勝(4KO)9敗1分
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:宮沢50-46. 中山50-46. 児島50-46

初回は牽制の上下の蹴り、パンチと多彩に突破口を探る両者。第3ラウンドには徐々に攻勢を強め、ヒザ蹴りからパンチやハイキックで流れを引き寄せた大田拓真。第4ラウンドにはヒザ蹴りで優位に立ち、笹木一磨の反撃も衰えないが、劣勢に流れた態勢を立て直すには至らない。

最終ラウンドも大田ペースで終了。序盤に攻め倦んだ印象は強いが、打ち優っていく底力を見せた展開は、ジャッジ三者とも第2ラウンドから大田拓真が10対9を付ける大差となっていた。

試合後控室では「知らない選手だったので、どういう選手なんだろうかと考え過ぎて様子見し過ぎました。映像はちょっと古い試合ばかりで、あまり参考にならなかったので見てなかったです。」と語り、セミファイナルで弟の一航が負けたことも影響し、「慎重になり過ぎました。」という反省もありました。

4月にはまた海外で試合が予定されているという。海外での試合が多い大田拓真。

国内でもメインイベンターをこなし、精力的な連戦が続きます。

第3ラウンド、大田拓真の右ミドルキックがヒット、徐々に攻勢を増していった

第4ラウンド、より勢い増した大田拓真のヒザ蹴りがヒット

 

新チャンピオンの真琴。今後の注目株である

◆第10試合 第10代NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/22際/ 55.3kg)27戦18勝(4KO)7敗2分
      VS
3位.真琴(誠輪/19歳/ 55.25kg)13戦10勝(1KO)2敗1分
勝者:真琴 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜47-49. 中山47-48. 児島47-49

多彩な蹴りパンチの様子見の攻防は一進一退の中、徐々に真琴の勢いが増し、第3ラウンドに真琴のヒジ打ちで一航の額を切る。

このラウンド2度のドクターチェックを受ける一航。マットに落ちる夥しい流血はストップが掛かるかに思われたが続行は許された。

第4ラウンドには打ち合いで一航の勢いが増したが、一航の右パンチに合わせて真琴の軽く飛び気味の右ヒザ蹴りを顔面に受けた一航はノックダウンを喫する。

最終第5ラウンドは激しい攻防となる中、一航の底力を見せる猛ラッシュも、真琴が圧されながらも打ち返し、この勝負を落とせない懸命のラッシュ。

最終第5ラウンドのみポイントはジャッジ三者揃って一航に流れたが、真琴が判定勝利を飾った。

パンチの距離で真琴の左ジャブが先にヒット、一航は珍しく劣勢

カメラ位置は悪かったが、真琴のヒザ蹴りでこの後、一航がノックダウンとなる

◆第9試合 第15代NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

3位.嵐(キング/18歳/ 53.45kg)13戦11勝(5KO)1敗1分
      VS
2位.甲斐元太郎(理心塾/21歳/ 54.5→53.85kg 減点1)19戦7勝(2KO)10敗2分
勝者:嵐 / TKO 2ラウンド2分54秒
主審:宮沢誠

前日計量では甲斐元太郎が1kgのオーバーで再計量に向けウェイト調整に入った為、後の記者会見は欠席。この対戦では嵐のみの公開インタビューとなったが、「あいつ居ないんで何も言うこと無いですけど、明日はあいつを殺すんで伝えておいてください。以上です。」と語ると席を立って退席。

甲斐元太郎は2021年8月8日にNJKFバンタム級暫定チャンピオンと認定されているが、王座決定戦の相手、志賀将大(エス)の欠場で認定されたもので翌年、その志賀将大に判定負けで王座陥落している。ここは正規に勝利して王座奪取を狙いたいところだったが、ウェイトは350グラムオーバーで計量失格。タイトルは届かないものとなってしまった。

試合は予告どおり初回から倒しに行く体勢の嵐はパンチでも蹴りでも上下打ち分け、強く打ち込む勢いが増して行く。甲斐元太郎も打ち合いの体勢で互角に展開はするも、第2ラウンドには嵐の右ヒザ蹴りヒットで効かせてロープ際に追い込んで二発目ヒザ蹴りで甲斐は堪らずノックダウンを喫する。立ち上がるには苦しそうな中、レフェリーストップとなった。第1ラウンドにも嵐のヒザ蹴りが入っており、手応えはすでにあったかもしれない。

前回興行セレモニーで散々罵り乱闘寸前の展開を見せながら、試合中は正攻法な戦いで、バッティングかローブローがあったか、そこはグローブタッチしてスポーツマンシップを守った両者。嵐はTKO勝利後も倒れている甲斐元太郎を気遣う声掛けをした後、チャンピオン認定されてから母親をリングに上げ、「チャンピオンは俺を産んだ母」と言わんばかりにチャンピオンベルトを巻いてやった親孝行ぶり。なかなか好青年の嵐であった。

嵐の右ヒザ蹴りがグサッと甲斐元太郎のボディーへヒット、TKO勝利へ繋げた

“本当の”チャンピオンとツーショット、嵐の親孝行

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

ジャムワンスック・ゲッナァーウィー(タイ/21歳/ 64.25→64.2→63.8kg)約90戦超
       VS
真吾YAMATO (元・NJKFスーパーライト級Champ/28歳/大和/ 64.05→64.0kg)
37戦25勝(13KO)10敗2分
勝者:ジャムワンスック / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:少白竜30-27. 多賀谷30-27. 児島30-27

(ジャムワンスックはタイ国ノンタブリー県ジットムアンノンスタジアム・スーパーライト級チャンピオン)

東西対抗戦にタイ選手が加わるのは不自然ではあったが、真吾は先手を打って蹴りやパンチで攻めてもジャムワンスックは距離に応じた蹴りやパンチのバランスが良く、真吾の空いたところを突くのが上手く、首相撲でもヒジ打ちの距離も脅威で余裕の展開を見せた。ジャッジ三者ともフルマークの大差で東軍のジャムワンスックが判定勝利を飾った。

蹴り足をキャッチした真吾、しかしジャムワンスックは体幹良く崩れない

◆第7試合 ウェルター級ノンタイトル3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凛太朗(VERTEX/23歳/ 66.5kg)
24戦11勝(3KO)9敗4分 
       VS
WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.青木洋輔(大和/29歳/ 66.45kg)
27戦13勝(2KO)11敗3分
勝者:吉田凛太朗 / 判定2-0
主審:宮沢誠
副審:児島29-29. 多賀谷30-29. 中山30-29

両者様子見の攻防から吉田凛太朗は第2ラウンド後半から的確さが増し攻勢に転じたが、青木洋輔はローキック(カーフ)に拘ったか、あまり積極性を感じない流れとなって、第2ラウンドを抑えたポイントで僅差ながら吉田凛太朗が判定勝利を飾った。

前蹴りで青木洋輔の前進を阻止、チャンピオンと成って存在感増した吉田凛太朗

◆第6試合 61.5kg契約3回戦

NJKFライト級1位.岩橋伸太郎(エス/36歳/ 61.1kg)19戦7勝10敗2分
       VS
TAaaaCHAN(=ターチャン/聖域統一スーパーライト級Champ/PCK連闘会/32歳/ 61.5kg)
34戦21勝(10KO)12敗1分
勝者:TAaaaCHAN / TKO 3ラウンド2分29秒
主審:少白竜

両者のアグレッシブなパンチと蹴りの交錯が続く中、TAaaaCHANのパンチのヒットがやや上回った印象を受ける。最終第3ラウンドにはTAaaaCHANの左ヒジ打ちで岩橋伸太郎は額を切られてドクターチェックを受けるが続行許され、打ち合い激しくなるが、TAaaaCHANのパンチ連打で岩橋はノックダウン。立ち上がるもダメージを見たレフェリーがストップをかけた。

◆第5試合 ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級5位.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/17歳/ 66.45kg)
8戦5勝(3KO)2敗1分
VS
YUYA(クロスポイント吉祥寺/32歳/ 66.55kg)11戦7勝(2KO)3敗1分
勝者:亜維二 / TKO 2ラウンド1分58秒
主審:多賀谷敏朗

蹴りから次第に激しいパンチの交錯が続き、YUYAのパンチで亜維二がグラつくも打ち合いが続き、亜維二の強打でYUYAは倒され、カウント中のレフェリーストップとなった。

◆第4試合 NJKFライト級次期挑戦者決定戦3回戦

3位.TAKUYA(K-CRONY/30歳/ 61.15kg)13戦5勝(1KO)7敗1分
      VS
4位.祖父江泰司(理心塾/25歳/ 61.25→61.2kg)8戦6勝(4KO)2敗
勝者:祖父江泰司 / 判定0-3
主審:児島真人
副審:多賀谷27-29. 宮沢26-30. 少白竜26-30

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)49.5kg契約3回戦(2分制)

真美(Team ImmortaL/33歳/ 49.5kg)20戦15勝(3KO)5敗     
VS
美斬帝(=喜多村美紀/テツ/37歳/ 49.5kg)31戦14勝13敗4分
勝者:真美 / 判定2-0 (29-28. 29-29. 29-28)

(真美はS-1レディース世界ライトフライ級チャンピオン、美斬帝はミネルヴァ・ライトフライ級1位)

◆第2試合 フライ級3回戦

明夢(新興ムエタイ/21歳/ 50.65kg)9戦2勝5敗2分
      VS
永井雷智(VALLELY/15歳/ 50.75kg)3戦2勝(1KO)1分
引分け 0-1 (28-28. 28-29. 28-28)

◆プロ第1試合 57.0kg契約3回戦

藤井昴(キング/21歳/ 56.8kg)1戦1分
      VS
祖根亮麻(大和/ 26歳/ 56.7kg)6戦3勝(2KO)2敗1分
引分け 0-0 (29-29. 29-29. 29-29)

◆アマチュアジュニアキック第2試合 45kg級2回戦(2分制)

竹田奏音(TAKEDA/ 43.85kg)vs大澤透士(TRASH/ 44.55kg)
勝者:大澤透士(青) 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

◆アマチュアジュニアキック第1試合 35kg級2回戦(90秒制)

坂田銀牙(TAKEDA/ 34.5kg)vs河野獅童(クロスポイント大泉/ 31.65kg)
勝者:河野獅童(青) / 判定0-2 (19-19. 18-20. 19-20)

《取材戦記》

最近の後楽園ホールで開催のNJKFは西側(正確には南西)に赤コーナー、東側(正確には北東)に青コーナー設定でしたが、今回は後楽園ホール本来の定位置である、赤コーナーが東側、青コーナーが西側に戻った形でした。おそらくは東西対決の意味合いで東が東軍、西が西軍。当たり前の方角だが元々、赤コーナーが東側、それは日本列島東日本側であることが関連しているだろう。テレビ画面で言えば右側奥に赤コーナーが来るのはメインイベンターの顔が正面から見られる位置に。やっぱり後楽園ホールは右側(北東)側に赤コーナーがあるべきと思った次第でした。

東西対決がメインテーマとなった今回の興行。それでもメインイベントにかけ観衆が減っていくのは従来どおり。チーム対抗戦より個人戦。自分らの応援する選手の試合が終われば帰ってしまう傾向は拭えなかった。エース格、大田拓真を以てしてもこの状態。まあ終了が22時回っては終電の事情もあったかもしれません。

NJKFを本気でトップの団体にすると宣言している武田幸三さんの次なる策は何か。

セレモニーでは、過去NJKFで活躍した現・K-1ワールドグランプリ・スーパーライト級チャンピオンの大和哲也氏をリングで紹介し、大和のGRATINESSジムがNJKFに加盟したことを発表。更にKNOCKOUT代表の山口元気氏もリング上で紹介され、NJKFとの対抗戦の話も進めていた武田幸三氏の戦略は諸々あると考えられますが、今後の展開に注目が集まるでしょう。一方で「武田さん、NJKFでも引っ掻き回さなければいいですが!」といった頑張り過ぎの懸念の声があったのも事実。まず今年は11月10日興行の「NJKF祭り」までじっくり見て行きましょう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

『紙の爆弾』2024年3月号

電通・靖国・笹川財団・CIA 安倍派とは何か
「首相は自分のことしか考えていない」岸田派解散の舞台裏
躍進するロバート・ケネディ・ジュニア アメリカ大統領選挙の実相
民進党勝利で改めて問う 米国仕込みの虚構の台湾有事
東京五輪は東日本復興を遅らせた 能登半島地震でも維新「万博固執」の大愚
「司法の偏向」で形骸化する「三権分立」辺野古代執行訴訟が孕む三つの大問題
重信房子氏が語るパレスチナ・ハマース「決起」の理由
3回接種で特定のがんが多発 ワクチン問題研究会が明かす「メッセンジャーRNA」の真実
企業が学問・教育を崩壊させる第二の日本学術会議問題 国立大学法人法改正
権力による教育内容への管理統制強化 加速する「教育デジタル化」の陥穽
問われる「こども家庭庁」委員の関与「ベビーライフ事件」と国際養子縁組の闇
高GABAトマト、マッスル・マダイ、ウイルス耐性ブタ……「ゲノム編集」は生態系も人類も損壊する
「松本人志」「旧ジャニーズ」で見えた変わらぬ大手メディアの忖度体質
米国マスコミが自主検閲で隠してきた2023年の重大ニュースTop25
シリーズ 日本の冤罪47 鶴見事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTMNC4ZD/

 

悠の入場シーン、雄叫びを上げて気合いを入れた入場

まだ新人でも、ここまで来る間に入門から多くが振り落とされる長い道程。
チャンピオン目指す悠は4勝目でランキング入り確定。

◎DUEL.29 / 2月4日(日)GENスポーツパレス18:00~19:28
主催:VALLELY / 認定:NJKF

◆第6試合 スーパーフライ級3回戦

悠(=吉仲悠/VALLELY/ 52.15kg)9戦4勝4敗1分
     VS
清水健人(白龍/ 51.8kg)6戦6敗
勝者:悠 / TKO 2ラウンド1分32秒
主審:椎名利一

下がり気味の清水健人にやや手を焼いた悠。第2ラウンドにパンチで牽制して攻勢を掛け、コーナーに追い込みパンチ連打で倒した。清水は立ち上がろうとするもカウント中にレフェリーストップされ終了。

悠は「ちょっとやり辛かったですけど、2ラウンド目に相手が前に出て来たので、そこでパンチの打ち合いに持って行って倒せたので良かったです!」と感想を述べてくれました。

VALLELY米田貴志会長は「清水にステップワーク使われて攻め難かったところはありましたけど、もっとガツンとインパクトある勢いで倒せればよかったですね。」と語った。

悠が前蹴りで牽制、距離感を掴みパンチに繋いでいく

インターバルで米田貴志会長のアドバイスを聞く悠

◆第5試合 72.3kg契約3回戦

風成(エス/ 71.15kg) 2戦1敗1NC
        VS
木戸翔太(テツジム関西/ 71.75kg)3戦2勝(1KO)1分 
勝者:木戸翔太 / TKO 1ラウンド2分14秒
主審:宮沢誠

蹴りからパンチのアグレッシブな展開から木戸翔太の強い右フックで風成がノックダウン。再開後も木戸がラッシュを掛け、再び右フックで崩れ落ちた風成。

すぐ立ち上がるもレフェリーストップと成り、あっけなく負けとなった風成は呆然とした表情も負けを受け止めリングを下りた。木戸翔太はテツジム関西から出場で今日が誕生日、41歳になった。

「オヤジも頑張れるんで、オヤジのアマチュアキック団体の強さ見せたいと思います!」とマイクでアピールした。

木戸翔太が右ストレートで威嚇、ノックアウトへ繋いでいく

マイクを持った木戸翔太、関西弁で元気に語った。今日誕生日でした

◆第4試合 63.0㎏契約3回戦

須貝孔喜(VALLELY/ 63.0kg)5戦2勝(1KO)3敗
        VS
関龍之亮(士道館植野/ 63.0kg)3戦2勝1敗 
勝者:関龍之亮 / 判定3-0
主審:児島真人          
副審:椎名26-30. 井上26-30. 宮沢26-30

パンチ打ち合いに繋がる至近距離の主導権争いが続き、第2ラウンドには関龍之亮がハイキックをヒットさせて徐々に攻勢を維持する流れ。

悠と同じVALLELYジムの須貝孔喜、インターバルで米田会長のアドバイスを聞く

終始打ち合いの間合いは続き、第3ラウンドには関が連打でノックダウンを奪うと須貝は立ち上がるも更に関が連打で追い、時間はほぼ無い終了手前に連打で2度目のノックダウンを奪う。

立ち上がったところで試合終了となるところが、ゴングを鳴らすタイミングが遅いが為、更に追撃を貰ってしまう須貝。打ち合いは須貝の逆転のチャンスもある流れで好ファイトとなった。

終盤に関龍之介が攻勢を掛け、右ストレートが須貝孔喜にヒット

ラウンドガールとツーショットは勝利者の特権、関龍之介のポーズ

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制)

YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/ 52.1kg)7戦4勝2敗1分
        VS
MIKU(K-CRONY/ 52.05kg)4戦2勝2敗
勝者:YURIKO・SHOBUKAI / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名29-28. 児島30-28. 宮沢30-28

蹴り中心の攻防からパンチも加わっていく中、第2ラウンドに効果的なYURIKOの右ストレートヒットでMIKUがノックダウン。最終ラウンドはMIKUが次第に立て直すも差を縮めるに至らず終了。

終盤はMIKU(右)も盛り返したが、ノックダウン奪ったYURIKOが(左)が勝利

女子キックはYURIKOが判定勝利

◆第2試合 ライト級3回戦

渡部瞬弥(エス/ 61.05kg)8戦1勝6敗1分
      VS
属増壱(拳友会/ 60.95kg)1戦1分
引分け0-0 (29-29. 29-29. 29-29)

蹴りからパンチに繋ぐも効果的なヒットは無く、接近戦すれば首相撲からヒザ蹴りと鬩ぎ合う中、第2ラウンドに渡部瞬弥が取り、第3ラウンドに属増壱が取り返す三者同一採点の引分けとなった。

◆第1試合 スーパーバンタム級3回戦

古山和樹(エス/ 55.3kg)3戦1勝2敗
      VS
久住祐翔(白山道場/ 54.9kg)2戦2敗
勝者:古山和樹 / 判定3-0 (29-28. 30-28. 30-29)

第1ラウンド、久住祐翔のパンチで古山和樹が右眉尻をカットし、2度のドクターチェックを受けるが続行可能、手数で巻き返した古山和樹が判定勝利。

《取材戦記》

最終試合でTKO勝利した悠は今回が4勝目で、これでNJKFのランキング入りは確定するという。昭和時代も“4勝で5回戦昇格”というシステムはありましたが、層が厚いと即ランキング入り出来る訳ではなかったでしょう。

ランキング10位以内に入れない選手は、いわゆる“ノーランカー5回戦”でした。現在は団体乱立していて一団体だけでは人材不足でランキングも埋まらない現状。更に“5回戦昇格”という文言も使えないほど3回戦制が定着してしまっている現状である。

2003年10月25日、北海道札幌市出身の悠は本名が吉仲悠(よしなか・ゆう)。地元の佐藤友則が運営するGRABSジムに小学校3年生で入門し高校1年生でプロデビュー。2戦して高校卒業後上京。米田貴志氏が運営するVALLELYジムに移籍。佐藤友則氏と米田貴志氏の関係は共に小国ジム所属で2000年代の同時期に活躍した選手である。

悠は昨年9月28日のDUEL.28で徹平(ZERO)に判定負けの後、12月10日にはジャパンキックボクシング・イノベーション興行で、JKIランカーの亜々斗(井上道場)にパンチ連打で効果的に攻め判定勝利と調子を上げています。

悠の「今後NJKFフライ級チャンピオンになるので宜しくお願いします!」というアピールはリング上やインタビューで発言しているので、その自信で実現目指していくことでしょう。米田貴志会長も「先ずNJKFチャンピオンには成れると思います!」と不安は無さそうでした。

この団体のチャンピオンとなった場合の先からが真の日本チャンピオンへ真価を問われる存在となるので頑張って貰いたいものです。

過去にも述べていますが、正月は昭和時代なら豪華カードやタイトルマッチが揃った時代でした。現在は正月はコロナ禍の影響もあってかプロ興行も休む傾向があり、今年も静かな年明けでした。

その中で、最近は無名のイベントを追うこと多く、アマチュアやプロ新人戦の中からテーマを拾っていますが、ここにも埋もれた実力者が居る。負け込んでいても突然化ける選手も居る。そんな閃いたテーマから選手やイベントは、今後もあらゆる視点で追っていきますが、それなりに御注目ください。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

3月16日に初陣興行が控える中、昨年8月の全日本キックボクシング協会設立後、3度のアマチュア大会が行われています。

元・日本ライト級チャンピオン飛鳥信也さん出場。昨年からのこの大会での栗芝貴代表と飛鳥信也さんは、目黒ジムの原点と全日本キックボクシング協会の原点回帰が重なる再会でした。

本日のベストファイト賞は伊藤健翔(左)と飛鳥信也(右)、トロフィーを贈呈する栗芝貴代表(中央)

◎全日本キックボクシング協会第3回アマチュア大会
 1月28日(日)稲城ジム14:00~16:15(全イベント終了時)
 主催:稲城ジム /

◆第1試合 ジュニア(中学生以下)Dクラス 34.0kg以下 2回戦(1分制)

海老原琉偉(岡田道場)vs 古山風愛我(TAKADA KBA)
勝者:古山風愛我 / 優勢判定 (審判三者支持数不明)

第1試合、ジュニアDクラス34.0kg以下勝者、古山風愛我。レフェリーは竜哉さん

◆第2試合 ジュニアDクラス 34.0kg以下 2回戦(1分制)

佐々木空(岡田道場)vs GENSEI(TAKADA KBA)
引分け(審判三者支持数不明)

◆第3試合 一般男子Dクラス 52.0kg以下 2回戦(1分制)

横尾空(稲城)vs 佐藤寿輝也(スクエアーアップ)
勝者:横尾空 / 優勢判定3-0

◆第4試合 一般男子Cクラス 86.0kg以下 2回戦(90秒制)

義斗(Kick Boxing fplus)vs 山下大樹(ウルブズスクワッド)
勝者:義斗 / TKO(RSC)2ラウンド

◆第5試合 一般男子Cクラス 55.0kg以下 2回戦(90秒制)

伊藤健翔(IDEL)vs 藪祥基(スクエアーアップ)
勝者:伊藤健翔 / 優勢判定3-0

◆第6試合 一般男子Eクラス 55.0kg以下 1回戦(1分制)

小堀海凪(岡田道場)vs 横山潮音(稲城)
引分け三者三様

◆第7試合 一般男子Cクラス 62.0kg以下 2回戦(90秒制)

藤本KID(TAKADA KBA)vs 早川悠太(ウルブズスクワッド)
勝者:早川悠太 / TKO(RSC)2ラウンド

◆第8試合 一般男子Dクラス 62.0kg以下 2回戦(1分制)

吉田秀介(稲城)vs 田所匠(相模原burn)
勝者:田所匠 / 優勢判定0-3

◆第9試合 一般男子Dクラス 66.0kg以下 2回戦(1分制)

森谷一貴(スクエアーアップ)vs 望月一斗(相模原burn)
勝者:望月一斗 / 優勢判定0-2

◆第10試合 一般男子Dクラス 70.0kg以下 2回戦(1分制)

ダイチャン(team彩)vs 立花俊太
引分け1-0

◆第11試合 一般男子Dクラス 64.0kg以下 2回戦(1分制)

飛鳥信也(目黒・新宿スポーツ)vs 熊田真幸(スクエアーアップ)
勝者:飛鳥信也 / 優勢判定3-0

元・日本ライト級チャンピオン、飛鳥信也の攻勢、熊田真幸を下す

戦う指導者、飛鳥信也さんの現役時代同様のアピール

◆第12試合 一般男子Aクラス 58.0kg以下 3回戦(2分制)

高橋巴俉(スクエアーアップ)vs 吉田鋭輝(team彩)
勝者:吉田鋭輝 / 優勢判定0-2

◆第13試合 一般男子Dクラス 86.0kg 2回戦(1分制)

木村健太(JTクラブ)vs 山下大樹(ウルブズスクワッド)
勝者:山下大樹 / 優勢判定0-3

被災地に仮設住宅を建設中から上京、山下大樹の蹴りで攻勢

山下大樹勝利、レフェリーは勝本剛司。この日は竜哉氏と親子でレフェリーを務められた

◆第14試合 一般男子Cクラス 55.0kg以下 2回戦(90秒制)

伊藤健翔(IDEAL)vs 横山潮音(稲城)
勝者:伊藤健翔 / TKO(RSC)1ラウンド1分16秒

顔は隠れたが、勝負を決定付けた伊藤健翔の右ストレートヒット

伊藤健翔の右ストレートヒットで横山潮音を倒す

《取材戦記》

キックボクシング系プロ各団体等でアマチュア大会が活発である。乱立はするものの交流も活発で、アマチュア大会で実績を残してプロ出場資格を得る選手もいるでしょう(プロテストも有ります)。

創価大学丈夫会でキックボクシングを指導している飛鳥信也氏は、前回12月17日に引分けた熊田真幸と再戦。新人枠ではないオヤジファイトに近いが、前回はEクラスとして1分のみの1ラウンド制。今回はCクラスとして2回戦でした。熊田真幸に勢いで圧されても相手をしっかり見て打ち込む有効打とバランスの良さが優り、優勢支持を受ける判定勝利。全盛期には及ばなくても、経験値豊富な当て勘がありました。

試合後、いずれまた対戦するかもしれない熊田真幸と語り合う飛鳥さん。ディフェンスの大切さを伝授。「熊田さん次は更に上手くなって来てやり難くなるかもね!」と言いながら試合が楽しそうだった。

栗芝貴代表に健闘を称えられて飛鳥信也、熊田真幸のスリーショット

第13試合の山下大樹は、能登の被災地で仮設住宅作っている中での出場だったという。ウルブズスクワッドジムは富山にあるジムで震源地には近いが、通信障害の影響で会長がなかなか連絡取れなかったとか。そんな参加で優勢判定勝利(2戦目)を得て、また被災地に戻って頑張っている模様です。皆、それぞれの事情を抱えながら出場しているのが常である。

プログラムと画像確認すると、山下大樹は第4試合にも出場して敗れているが、スタンディングダウンから早めのレフェリーストップでダメージは無かった模様。
最終試合でTKO(RSC)勝ちした伊藤健翔は、第5試合にも出場して藪祥基に優勢判定勝ち。

2試合終えて「久しぶりの試合で凄く疲れたんですけど、最後までセコンドの言うこと聞いて、ここまで信じて練習して来て良かったです。」と応えた。

全試合終了後に希望者参加のスパーリング大会が予定されていたが、二人組になっての前蹴りの避け方、ブロックと蹴りに入る練習、軽いマススパーリング、首相撲からの崩し方など栗芝貴代表が見本となる動作からタイ人トレーナーも加わって指導。小学生から成人まで入り混じっての練習となっていた。こういう底辺からプロへ育っていく過程は重要である。

そんな先を見据えてプロ初陣興行を控える栗芝貴代表は、「プロ興行はデビューする選手集められてスタートらしいスタートに向けています。年末に向けてタイトルマッチに準ずる試合まで進められたらいいですね。」と語る。そのプロを目指すアマチュア大会も競技の基礎固めとして開催が続きます。

昨年10月15日は41試合、12月17日は36試合行われていますが、今回は正月明けで参加数は少なかった様子でした。やっぱり正月は皆休みたいのか、国内ではプロ興行も少なかった感じがします。

3月31日(日)大森ゴールドジムで第4回アマチュア大会が開催予定で、今度は試合数も多く戻って来る様子です。

今回、稲城ジムを初めて訪れて、栗芝貴代表が行なうイベントの様子を窺って、見ておきたかったものは勿論、飛鳥信也さんの還暦を越えた動きと、3年後を見据えた全日本キックボクシング協会の姿でした。私の予想は殆ど外れるので今は何も語りませんが、悪しからずです。

試合後の公開練習、マイクを使って蹴りの指導する栗芝貴代表

◎全日本キックボクシング協会 https://www.ajkba.com/

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

『紙の爆弾』2024年3月号

電通・靖国・笹川財団・CIA 安倍派とは何か
「首相は自分のことしか考えていない」岸田派解散の舞台裏
躍進するロバート・ケネディ・ジュニア アメリカ大統領選挙の実相
民進党勝利で改めて問う 米国仕込みの虚構の台湾有事
東京五輪は東日本復興を遅らせた 能登半島地震でも維新「万博固執」の大愚
「司法の偏向」で形骸化する「三権分立」辺野古代執行訴訟が孕む三つの大問題
重信房子氏が語るパレスチナ・ハマース「決起」の理由
3回接種で特定のがんが多発 ワクチン問題研究会が明かす「メッセンジャーRNA」の真実
企業が学問・教育を崩壊させる第二の日本学術会議問題 国立大学法人法改正
権力による教育内容への管理統制強化 加速する「教育デジタル化」の陥穽
問われる「こども家庭庁」委員の関与「ベビーライフ事件」と国際養子縁組の闇
高GABAトマト、マッスル・マダイ、ウイルス耐性ブタ……「ゲノム編集」は生態系も人類も損壊する
「松本人志」「旧ジャニーズ」で見えた変わらぬ大手メディアの忖度体質
米国マスコミが自主検閲で隠してきた2023年の重大ニュースTop25
シリーズ 日本の冤罪47 鶴見事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTMNC4ZD/

1月21日に後楽園飯店でニュージャパンキックボクシング連盟2023年の年間表彰式が行われました。この表彰式はこの一つの団体で行なわれているイベントで、他団体は含みません。

・最優秀選手賞 大田拓真(元・WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン/新興ムエタイ)

・年間最高試合賞 NJKFスーパーライト級タイトルマッチ、畠山隼人(E.S.G)vs吉田凜汰朗(VERTEX)
・殊勲賞 NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX)
・敢闘賞 龍旺(NJKFスーパーフェザー級チャンピオン/Bombo Freely)
・技能賞 嵐(NJKFバンタム級3位/KING)
・努力賞 坂本直樹(道場373)
・新人賞(関東) 赤平大治(VERTEX)
・新人賞(関西) 髙木雅巳(誠至会)
・イーファイト賞、バウトレビュー賞 大田拓真(新興ムエタイ)
・女子優秀選手賞 Nao(ミネルヴァ・アトム級チャンピオン/AX)

受賞選手6名

武田幸三氏から高評価を得た大田拓真は最優秀選手賞

 

最優秀選手賞受賞した大田拓真

◆受賞者コメント

最優秀選手賞、バウトレビュー賞、イーファイト賞 大田拓真(新興ムエタイ)

「三つの賞に選んで頂き有難うございました。NJKFの会長さん方々には、お世話になっていますので、今年も僕は結果を出して、NJKFと自分の選手としての価値を上げて行くだけなので今年も勝ち続けていきたいと思います。宜しくお願い致します。」

 単独コメント
「武田幸三さんに、試合を生で見て貰ったのは前回(昨年11月12日)の試合が初めてだったのですが、『初めて見たけど凄くテクニックも有って全体的にバランスも良かった。』と言って頂いて評価は良かったです。序盤、相手(対ルークワン戦)はグローブを交えてやっぱり強いと思ったので、僕も戦いながら考えましたが倒して勝って、武田さんの現役時代をテレビで観ていた憧れの存在だったので、その武田さんに評価されたことは凄く嬉しかったです。」
と語ってくれました。

殊勲賞、年間最高試合賞 畠山隼人(E.S.G)vs吉田凛汰朗戦

吉田凜汰朗(VERTEX)
「まず2月11日、勝ちと内容をしっかりと、NJKFの中量級は自分しかいないなというのを魅せるので注目していてください。畠山隼人戦については、最初にダウン喫したのですけど、タイトルマッチ5ラウンドあるというところで、絶対逆転出来るという気持ちが第2ラウンドに活きました。今後は世界を獲る為に一戦一戦確実に仕留めていきます。自分の試合に来ればハズレは無いなと思って貰える様にやるべきことに集中して強くなって年間最高試合賞獲ります。最優秀選手賞も獲りたいと思います。応援宜しくお願い致します。」
  
 単独コメント
「今年はWBCムエタイ日本タイトルを獲りに行かないといけません。今年中にもう一回畠山隼人さんと、今度はノックダウン取られないように無難にノックアウトで勝ちたいです。次は2月の東西対決ですが、ここを制して次のタイトルですね。」と語ってくれました。

殊勲賞受賞した吉田凛汰朗

畠山隼人を倒してチャンピオンとなった吉田凛汰朗は殊勲賞

年間最高試合賞 畠山隼人(E.S.G)は欠席の為、NJKF発表の本人コメント 
「この度は名誉ある賞をありがとうございます。倒し倒されの熱い試合が出来たのも対戦相手の吉田凛汰朗選手の御陰です。選手を続ける以上は見ている方に面白いと思って貰える様な熱い試合を心掛けたいと思います。」

敢闘賞 龍旺(Bombo Freely)は欠席の為、NJKF発表の本人コメント 
「沢山の選手がいる中で選んで頂き嬉しいです。チャンピオンとしては勿論、NJKFを引っ張っていける選手になります。期待していて下さい。」

NJKFスーパーフェザー級チャンピオンとなった龍旺(左)は敢闘賞、右は大田拓真

技能賞 嵐(KING)  
「今回は技能賞に選んでくださり有難う御座います。今年のNJKFの主役は俺になると思うので応援宜しくお願いします。」

 単独コメント
──「今年はMVPを狙うとなれば、大田拓真を越えるような存在となりますか?」
嵐「その気で居ます。」
──「2月11日の甲斐元太郎(理心塾)との東西対決は、前回11月21日のセレモニーで両者エキサイトした発言となりましたが、この時の発言は本気でしたか?」
嵐「今もムカついているのでぶっ倒すつもりです。1ラウンドから倒しに行こうと思っています。」と自信満々の回答でした。

努力賞 坂本直樹(道場373) 
「この度努力賞に選んで頂き有難うございます。2024年も賞に選ばれるように頑張りたいと思います。毎試合皆の記憶に残る試合をするので応援よろしくお願いします。」

[左]努力賞受賞した坂本直樹/[右]技能賞受賞した嵐

新人賞(関東)赤平大治(VERTEX)
「このような新人賞を頂いてとても嬉しいです。更にやる気に満ち溢れてきたので今後も賞を頂けるように精一杯努力して、勝利はもちろんKOを量産出来るようにNJKFを盛り上げていきたいと思います。」

新人賞(関東)を受賞した赤平大治

 

女子の優秀選手賞受賞したNao

新人賞(関西) 髙木雅巳(誠至会)は欠席の為、NJKF発表の本人コメント 
「団体からこのような賞を頂いたことは素直に嬉しいです。今後の抱負として、NJKFのチャンピオンになります。」

女子(ミネルヴァ)優秀選手賞 Nao(AX)
「ミネルヴァ優秀選手賞に選んでくださり有難うございます。このような素敵な賞を受賞できて本当に嬉しいです。昨年4試合目でタイトルマッチを組んで頂いて、アトム級のチャンピオンに成ることが出来ました。今後は追われる立場になるのですけど、今後も一戦一戦挑戦するという気持ちを忘れず、チャンピオンベルトを守っていきたいと思いますので、今後も宜しくお願い致します。」

《取材戦記》

ニュージャパンキックボクシング連盟に限って見れば、大田拓真の活躍は想定出来た範疇で、今年も世界規模の期待が掛かるエース格です。

畠山隼人の牙城を崩した吉田凛太朗の王座奪取は予想外だった意見は多いようでした。今年は安泰と行くか、チャンピオンとしての真価が問われる年でしょう。嵐の喧嘩腰のアピールは賛否はあるものの、本気で最優秀選手賞とバンタム級王座狙っているチャンピオン候補です。

◆年間最優秀選手賞はパウンド・フォー・パウンド!?

複数階級あってもウェイト差関係無く評価した場合、最優秀選手賞はその年のパウンド・フォー・パウンド的最高峰と言えるでしょう。試合でまず判定でも勝つことが重要ながら、その勝利に多くの評価を得るには感動を与える名勝負を残すことが重要です。

プロボクシングでは1月16日に、日本ボクシングコミッション、日本プロボクシング協会、東京運動記者クラブ・ボクシング分科会による2023年の年間表彰候補者を発表された模様です。最優秀選手賞候補は井上尚弥(大橋)、寺地拳四朗(BMB)、井岡一翔(志成)、中谷潤人(M・T)。新鋭賞には那須川天心(帝拳)も候補に挙がっています。

受賞者は2月2日に発表される模様で、2月19日に例年どおりなら東京ドームホテルで年間表彰式が行われます。

やっぱり存在感の大きさを感じるのがこのプロボクシングの組織の在り方です。世界戦の前日計量と調印式や、年間表彰式は新聞社記者クラブの記者がドッと繰り出し、コロナ禍前の日本プロスポーツ協会が主催の年間表彰式も同様に記者がドッと繰り出していました。

先日1月20日の全日本キックボクシング協会設立記者会見は格闘技専門マスコミの記者が3名のみ。翌21日のニュージャパンキックボクシング連盟年間表彰式は記者1名のみ(いずれも私以外)。

そんなキックボクシングも選手層の薄い各団体枠でなく、業界全体を見渡せば厚い選手層となる中での年間表彰式から選出されれば、受賞はより遠い存在となってしまうにしても、より一層希少価値が上がり、選手はモチベーションも上がることでしょう。

今年も進化あるキックボクシングに期待して、次回の年間表彰式も多くの記者や関係者が賑やかに談笑していることに期待したいものです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

今年最初の「キックボクシング 2023年の回顧と2024年の展望」の中で述べました、新団体の全日本キックボクシング協会設立と活動に向けての記者会見が1月20日に後楽園ホールで行われ、概要が発表されました。

[左]原点回帰、初陣興行ポスター [右]全日本キックボクシング協会の役員と加盟ジム一覧

栗芝貴代表は、

「私達はこの度、昨年8月1日、全日本キックボクシング協会を設立致しました。この協会名は皆さんの御存知のとおり、日本のキックボクシング最初期に作られた名称です。
 これは私達がもう一度、この素晴らしい格闘技を見つめ直すという気持ちを込めて、この団体名となりました。キックボクシングがプロスポーツ競技として益々発展し、子供達に夢や希望を与える目標に掲げて設立に至りました。現在の立ち技格闘技は多様化された幾つかのルールへと移行しております。私達が目指す本格キックボクシングは、ムエタイを始め、世界各国の強豪選手にも対等に戦える技術や精神を身に付けて、会場に来られた皆様には感動や勇気を感じて頂けるように選手を育てていくことが重要であると考えます。」

という設立の趣旨を語りました。

全日本キックボクシング協会代表となった栗芝貴代表

団体名については、「いろいろ調べましたが、以前(平成期)の全日本キックボクシング連盟と昭和期の石原慎太郎氏がコミッショナーを務めた旧・全日本キックボクシング協会の繋がりは無く、その後存続していない模様。どなたも関わっていないので問題無いと思います」と説明。

協会副代表に就任したかつての名チャンピオン、小野瀬邦英氏は「この6年程、キックボクシング界から離れていたのですが、またこの機会を昨年、栗芝会長からお話を頂いて、日の当たるところへ出して頂き、そしてまた皆さんとお会い出来ることを嬉しく思います。今後とも頑張りますので宜しくお願い致します」と語り、過去の垣根を越えた新たな顔合わせの栗芝代表との連携に注目が集まります。

かつて日本キックボクシング連盟でエース格を務めた小野瀬邦英氏が副代表を務める

◆原点回帰

栗芝代表は、

「我々がやりたいのは、やはり本格キックボクシングです。他の団体との違いは、試合によってヒジ打ち無しとか、ヒザ蹴り無しというルールは無いことです。ヒジ打ち有り、ヒザ蹴り有りという中で、時間の都合(興行内)もあるんですが、3回戦と5回戦という元来のラウンド制で、58年前にスタートしたキックボクシングという競技の姿へ、もう一度その原点に立ち返って作り上げる。世間やテレビ側に合わせるだけのイベントではなくて、プロ競技として確立したい。私達の認識はプロスポーツ競技として、常に選手が上を目指す道筋を作っていかなければならない。デビュー戦からチャンピオン目指す志を皆で共有して、原点に返って頑張ろうという気持ちで原点回帰になりました。そして我々が経験してきた様々な経験の中で、どうしたらお客さんが後楽園ホールに集まって頂けるかチャレンジしていきたいです。」

と語った。

全部で19軒の加盟ジムが発表された中、大半は新鋭のジムで、平成初期までに選手として活躍後、ジムを立ち上げ実績積み上げた会長は幾人かいますが、仲ファイティングジムとして加盟している仲俊光会長は唯一、昭和の全日本キックボクシング協会で王座挑戦まで経験した大御所でしょう。

かつての新団体立ち上げは、チャンピオンを抱えていたジムが新加盟し、初回興行から豪華カードやタイトルマッチが備わっていたものでしたが、この全日本キックボクシング協会は“1からのスタート”と言えるほど新人から育てるスタートである。正に原点からスタートする初陣興行は、3月16日土曜日に、新人戦中心ではあるが、全13試合がマッチメイクされています。今後の興行で6月、9月、12月に勝ち上がっていく選手からランキング入りし、全ての階級でチャンピオン揃うのはまだ先の話となる模様。

新日本キックボクシング協会で2022年10月23日に日本フェザー級王座挑戦まで経験した瀬川琉(稲城)はメインイベンタークラスだが、内臓損傷の為、リハビリトレーニング中で復帰時期を調整中。6月の第2回目興行か、それ以降に復帰予定という。この瀬川琉と王座を争う有力候補にあるのが同じく新日本キックでフェザー級で戦った仁琉丸(ウルブズスクワッド)だが、これが今度の全日本キックボクシング協会最初のタイトルマッチ(王座決定戦)となる可能性は高い模様。

エース格としてチャンピオン目指し、他団体にも喧嘩売る勢いでアピールした瀬川琉

◆確立したプロスポーツへ

近年はどこの団体も集客力が落ちていく中、イベント系格闘技は集客力があるが、栗芝代表らが育ってきた新日本キックボクシング協会や日本キックボクシング連盟といった団体が培ってきた日本タイトル戦。こういった道筋を築いていかなければ、何らかのショー的要素ばかりで将来、キックボクシングは無くなってしまうんじゃないかという強い想いがあったという。

「私は今から36年ぐらい前になりますけど、日本プロスポーツ大賞新人賞を頂きまして、他のプロスポーツ競技選手と同様に表彰されるような舞台に立たせて頂いたのですが、このような表舞台へまた選手を送り出せるよう、このキックボクシングをもう一回原点に立ち戻って、プロスポーツ競技として確立していくことが一番の志です。」

と栗芝代表は語る。

瀬川琉と稲城ジム栗芝貴会長、愛弟子が勝つと喜びのあまりツーショットに収まること多かった

◆任期は3年?

栗芝氏は過去39年間、伊原ジムで伊原信一会長のもとで裏方として支えて来られましたが、今回の設立後も「小野瀬くん代表やって!俺裏方やるから。」と言ったところが、小野瀬氏から「それダメです!」と突っ撥ねられて、「ならば俺、3年で全国に全日本キックボクシング協会の名前轟かせる。3年でスター選手作る。その暁には代表は小野瀬くんに代わるという計画です。組織が発展する為には、ルール、人事、常に刷新していかねばならないと思っています。一応3年で代表を代わっていく為には、後楽園ホール満員にして、この3年で作り上げていくのが僕の責任と思っています。」という“常に刷新”という発言には組織の在り方として進化が期待出来る部分です。

栗芝貴氏が過去、新人賞を受賞した日本プロスポーツ協会表彰式での、プロ野球や大相撲、プロボクシングの各競技者と並ぶ舞台に立ったことは何よりも誇らしい経験だったでしょう。しかしキックボクシング競技の確立性が伴わなかった過去、キックボクサーはステージの上でも周囲の注目が集まり難い存在でした。

確立したプロスポーツを目指すことは50年前からしっかりやるべきだった基礎固め。原点回帰して、本来有るべきキックボクシングの確立を、今から目指すことは素晴らしいことながら、これから3年でどこまで進化させられるか。まず3月16日の初陣興行に注目が集まります。今後、キックボクシング界に新風を巻き起こせれば、全日本キックボクシング協会設立の意義は、より活きてくるでしょう。

記者会見に出席した役員と各ジム会長が揃った

◎全日本キックボクシング協会 http://www.ajkba.com/

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

◆頭と頭がぶつかる原因

偶然を装うヘッドバッティングについては、「キックボクシング、勝ちたい一心の反則行為」でも少々触れましたが、プロボクシングでもキックボクシングでも起こり得る戦略でしょう。また、故意ではなくても試合早々、バッティングで試合が終了してしまう事態も多くありました。

杉山空の鼻が則武知宏にぶつかったバッティング(2022.10.29)

 

バッティングで瞼を切った杉山空はこの後、試合を止められた

その一例は1983年(昭和58年)7月10日のプロボクシング世界戦、渡嘉敷勝男vsルペ・マデラ、因縁の第3戦(渡嘉敷氏のV6防衛戦)では、偶然のバッティングでルペ・マデラが試合続行不可能に陥り、渡嘉敷勝男が第4ラウンド1分50秒、TKO負け裁定。当時は第3ラウンドまでの採点による判定(3ラウンド以内は負傷引分け)。期待された決着戦はあっけなく終了。こんな試合終了は選手当人や応援するファンとしても残念でならないでしょう。

プロボクシングでバッティングが起こる原因は、クラウチングスタイルが多い為、踏み込む足より頭が前に出る選手は、互いに打ち合いに行った際、頭同士がぶつかる場合が起こり得ると言われます。

キックボクシングでは蹴りに移る為、重心が後方に掛かりアップライトスタイルが普通。例えとして「パンチは頭をぶつけるように突っ込んで打て!」といった指導もあったようで、キックボクサーがボクシングを習って、パンチだけで頼っていくのは重心が前に掛かって、蹴りとパンチのコンビネーションブローが崩れると言う元・選手もいます。

◆切られる外傷より怖い眼窩底骨折

現在レフェリーを務める中山宏美氏は選手時代、偶然のバッティングで負傷。ドクターチェックで「相手が二人に見える」と言ったらレフェリーストップとなり、診察では眼窩底骨折が判明したと言います。

ドクターチェックにより杉山空は試合続行不可能へ、幸い負傷判定勝利

格闘群雄伝登場の赤土公彦氏は現役時代、蹴りに忠実なスタイルのせいか、「幸いバッティングの経験は無かったです。」という。しかし、20年以上前に弟さんがデビュー戦での第1ラウンドに偶然のバッティングが起こり、インターバル中、「相手が二重に見える」と言われ、「そんな強い攻撃を受けた感じもなかったので『気合いを入れろ!』と昭和チックな檄を飛ばしたのですが、試合後、検査をしたら眼窩底骨折という事で、すごく責任を感じた経験があります。」と語られました。

タイでの試合で、ある日本人選手のセコンド陣営の話では、「バッティングが起こった第3ラウンド終了後、選手がコーナーに戻って来た際に焦点が合っていない状態で『相手が二重に見える』と訴えるものの、会場のギャンブラーも陣営のタイ人トレーナーも異様に盛り上がっていて、試合を棄権させる判断が出来ませんでした。」という。幸い、視力は何事も無く徐々に回復したようでしたが、脳震盪や視界の異常はセコンド、トレーナーとしてどうすべきか、周りの盛り上がりに圧されず、危険なスポーツである認識を持って判断しないといけないと反省していた様子でした。

眼窩底骨折は眼窩の奥や底は薄い骨で、頬骨や目の周りの骨は丈夫でも、打撃の衝撃で眼窩壁が骨折し、眼球陥没等が起こる現象があります。ヒジで斬られる外傷と違って、リング上では選手が本音で「相手が二重に見える」等を言わない限り、レフェリーやドクターが目視では判断し難い状況でもあるでしょう。

初回早々、偶然のバッティングで倒れ行く花澤一成、ダメージ深く立ち上がれず負傷引分けとなった(2023.3.19)

 

この画像はバッティングではないが、傷が深い頭部の負傷は痛々しい (2023.5.21)

◆昔の選手は偶然のバッティングの経験が無い!?

昭和の選手ではバッティングで試合中断やTKOという経験が少なく、テレビ放映でも殆ど見なかった感じがします。

昭和のレジェンド達の話では、藤原敏男氏は「俺なんか意識的に頭から突っ込んで行ったよ!」という発言自体も過激ながら、試合もそういうアグレッシブな展開ではありました。

現レフェリーで、高橋宏(当時全日本フライ級チャンピオン/東金)とタイトルマッチ経験ある仲俊光氏は「現役時代、バッティングはあったかもしれないけど殆ど記憶に無く、“ちょっと頭当たったかな”ぐらい!」と言い、増沢潔氏も思い出せないほどバッティングの記憶が無い様子でした。

歳取って記憶力が衰えた訳ではなく、それほど過激な試合展開で、投げられて転ばされ、踏み付けられたり顔面蹴られたり、反則スレスレの何でもあり過ぎて、偶然のバッティングはよほどの衝撃か故意でない限り、印象に残らない様子の昭和の選手達。

少し時代が後の船木鷹虎氏は「バッティングは経験無いけど、斎藤京二さんに投げられて倒された際に顔面にヒジ落とされました。流れの中では何でもあった時代だけど、そういう事態に陥る方が悪いからね。相手より下になってはその場は負けです!」と懐かしく語られました。

 

流れの一瞬の中、接近戦での頭を押し付ける攻防。菊地拓人vs隼也JSK(2023.11.26)

◆テクニックの進化が原因!?

ムエタイの首相撲では両腕で首を掴み、頭をアゴに押し付けてロックするやるやり方はテクニックの一つですが、「意図的に頭部を使っているので厳密には反則」という意見がある一方、「戦略として頭を押し付けて行くのは有り」という意見もあります。

対首相撲のヒザ蹴り選手に対する戦法として、偶然を装うバッティングを教わった選手は頭部の使い方をしっかり伝授されているようで、ムエタイは反則スレスレの技まで奥が深いものです。

昔に比べ、バッティングで試合続行不可能になる展開が増えた近年は、ルールの徹底で負傷による早めのストップが掛かり易いこと、多彩なテクニックを学ぶ機会は増えたものの、タイ選手のように器用ではない等、ヒジ打ちや蹴りとのコンビネーションでのバランスの狂いがあるのかもしれません。

現在においては比較的背の高い選手はバッティングは起こり難いようです。階級的には長身だったNJKFの若武者役員、桜井洋平氏や若林直人氏もバッティングは経験が無いと言われました。

パンチでノックアウトされるよりダメージが深い場合もあるバッティングで、名勝負があっけなく終わることが極力無いように願いたいものです。今回のプロの意見も十人十色なので、ここでの意見は参考までに、一例として捉えてください。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◆導かれた野口ジム

ブルース京田(本名=京田裕之/1960年6月30日、富山県富山市出身)は、プロボクシング日本スーパーフェザー級4位まで上昇。チャンピオンには届かなかったが、勝った試合はすべてノックアウトで、逆転も多いアグレッシブな展開で人気を得た。

 

現役時代のプログラムに載ったブルース京田のクローズアップ

リングネームはブルース・リーが好きだったことの影響が大きいが、観客から「お前、アレクシス・アルゲリョに似てるな!」と言われたことから「アレクシス京田」も考えたという。

「とにかく目立つ名前にしたかった。ブルースでいいかな!」と思い付いたネーミングだった(4回戦時代は本名)。

昭和の殺伐とした時代で口数少ない選手が多い中、ユニークな感性を持っていたブルース京田。小学校3年生の頃からプロレスを観てアントニオ猪木のファンになり、その頃のプロボクシングでは西城正三、大場政夫、ガッツ石松、輪島功一らの世界戦に感動したことや、キックボクシングでは富山県で沢村忠の試合も観戦し、控室まで忍び込んでも、快くサインをしてくれた感動から、将来はいずれかの競技を目指していた。

しかし、「プロレスはヘビー級中心だし、目指すなら小さい身体でも出来る階級制があって世界的に競技人口多いプロボクシングの世界チャンピオン」と決めた。

高校時代、富山ではボクシングジムは存在したが、野口ジムの元・プロボクサーだった地元の先輩に野口ジムを勧められていた為、高校卒業後、上京してジム入門する計画だった。その為、一年生から続けていた陸上競技で基礎体力を付け、1979年(昭和54年)3月、卒業するとすぐに上京、野口ジムに入門。

高校時代は具志堅用高が一世を風靡していた時代。その協栄ジムに行きたかったが、先輩に対し、そんな我儘は言えなかった。入門後、練習中の肩の大怪我で長期療養し、プロテストは少々遅れることとなったが、1982年(昭和57年)春、C級を難なく取得。スパーリング審査では右クロスカウンター一発、相手を1分ほどで倒してしまった。観ていた輪島功一氏には「お前凄いなあ!」と褒められたことが嬉しく、強烈に記憶に残っているという。

◆勝利への魔力

デビュー戦は同年7月6日、平野直昭(本多)に第1ラウンドにフラッシュ気味ながらノックダウン喫し、第3ラウンドで逆転ノックアウト勝利。スリルある展開はデビュー戦から見せていた。

東日本新人王スーパーバンタム級予選トーナメントは1983年9月2日、島袋朝実(帝拳)に3ラウンドノックアウトで敗れ予選落ち。当時、野口ジムでは萩野谷さんというトレーナーが居たが、重病を患い入院してしまい、萩野谷氏が不在となると練習生は誰も来なくなってしまった。

その後、退院した萩野谷氏が三鷹市にある楠ジムを任される立場になって移籍した為、ブルース京田も楠ジムに移籍することになった(後の楠三好ジム)。

新人王スーパーバンタム級トーナメント予選は島袋朝実に敗退(1983.9.2)

島袋朝実にKO負けの直後(1983.9.2)

移籍第1戦目は1984年8月2日、2度目の挑戦となった東日本新人王スーパーバンタム級トーナメント予選は、ランボー平良(京浜川崎)に第2ラウンドと第3ラウンドにノックダウン奪われた絶体絶命のピンチのインターバル中に野口ジム時代の先輩、龍反町さんがやって来て、「京田~!お前ふざけんじゃねえぞ、コラー!」とドスの利いたでっかい声で恫喝されたのが効いたか、第4ラウンドに逆転ノックアウト勝利。

楠ジムへ移籍第一戦目はランボー平良にKO勝ち(1984.8.2)

これで準決勝に進んで黒沢道生(鹿島灘)に敗れたが、ここまで7戦5勝(5KO)2敗。次戦は初6回戦だったが、スーパーバンタム級では減量がキツく、二階級上げてスーパーフェザー級でのB級6回戦スタートとなった。二階級上げるのはなかなか居ないが、フェザー級でもフラフラで、それだけキツかったという。

同年9月24日、初の8回戦でウルフ佐藤(日立/後のチャンピオン)と引分け。それまで4ラウンドを越えたことは無かったが、全然噛み合わない凡戦ながら初めて8ラウンド終了まで戦う貴重な経験をした。

同年12月5日、強打者・飯泉健二(草加有沢)に打ち合いで敗れた後、1986年7月14日は、これも強打者で、勝つも負けるもノックアウト決着の砲丸野口(川田)だった。この試合が決まる前、高校時代の友人だったテレビディレクターが企画した「今風ボクサーは目立ち屋さん」というテーマで、TBSのテレポート6での特集が組まれたが、いざ試合となった第1ラウンドに、二度ノックダウン奪われ、「テレビ企画どうなるんだろう?」とそちらに不安が向いてしまう試合だったという。

やがて砲丸野口が失速、第5ラウンドに逆転ノックダウン奪い、第6ラウンドに連打でノックアウト勝利して後日、友人プロデューサーから「番組の評判良くて電話が何本も入ってたよ!」と喜ばれたというこの勝利でランキング入りとなった。

更に1986年12月9日、前年度西日本ライト級新人王の久保田陽介(尼崎)も第6ラウンドで倒したが、1987年3月23日、元・日本スーパーフェザー級チャンピオンの安里佳満(ジャパンスポーツ)に第3ラウンド、ノーカウントのレフェリーストップ負け。安里は元・協栄ジムで名が売れた選手。メッチャ強く上手かったという。

安里佳満にノーカウントのレフェリーストップ負け(1987.3.23)

 

最後の勝利となった佐久間孝夫戦(1987.8.25)

◆ノックアウト必至の陰り

1987年、ランキング4位まで上がるも、同年10月22日、後に日本スーパーフェザー級チャンピオンとなる赤城武幸(新日本木村)に第5ラウンドのノックアウト負け。

ここから引退まで6連敗を喫してしまう。強打者とのハードな試合が続いたのは、マッチメイカーが持って来る依頼を断ったりすると試合が組まれなくなるから、三好渥好会長が全て受けてしまっていたようだ。

もう自分が描く動きが出来なくなっていた中のラストファイトは、1989年(平成元年)10月16日、高橋剛(協栄)に第1ラウンドのノックアウト負け。これで正式に引退を決意した。生涯戦績:20戦9勝(9KO)10敗1分。

「チャンピオンに届かなかったら1位も10位も全部負け組!」と語っていたブルース京田。引退後も汗を流すことが信条で、そんな青春の忘れ物を取り戻すかのように練習を続け、楠三好ジムと古巣の野口ジムには頻繁に足を運んでいた。

◆トレーナーとして開花

ブルース京田はデビュー前からキックボクサーと交流は深かった。その縁は、まだデビュー前の1981年7月当時、権之助坂にあったキックボクシングの目黒ジムが立ち退きになる危機があった。そこから路地を下った目黒雅叙園側にある野口ジムと合併になり、キックボクサーとの合同練習の毎日となった。当時は現役バリバリの伊原信一氏にはアドバイスを受けたり、食事に連れて行って貰ったりとお世話になったという。キックボクシングを勧められたのも言うまでもない。

引退間近、我孫子稔戦(1989.5.8)

野口ジムの他の練習生らはキックボクシングに興味は無かった様子だが、ブルース京田は元からプロレスファンだったり、小学生の頃、沢村忠さんに優しく接して貰った感動からキックボクシングに理解も深かった。後にはチャンピオンと成る鴇稔之や飛鳥信也らとは頻繁に食事に行ったり、キックボクシングの技を教わって練習したりと、彼らとの交流は長く続いていた。

そんな引退後の日々、目黒ジム野口和子代表から「力ちゃん(小野寺)を視てやって!」と指示を受け、パンチの指導が始まったことは新たな展開となった。他の選手も視ているうちトレーナーとして存在感が強まると、自分の練習時間は無くなり、指導一本の時間が増えていった。

選手らは皆礼儀正しく練習熱心だが、当時の新人の北沢勝は自ら「御指導お願いします!」と名乗り出て来て、教えたことをしっかり復唱して繰り返し、また疑問を問いかけて来る。この熱心さには、チャンピオンを獲らせてやりたくなる存在だったというブルース京田。実際に北沢勝が2002年1月に日本ウェルター級チャンピオンと成った時は自分のことのように嬉しかったという。

そうして選手を育てる達成感も積み重なってくると、声が掛かるのは目黒ジムだけではない、他のジムからも引っ張りダコ。トレーナーとして忙しくなる日々へ、ブルース京田の第二の人生は大きく移り変わっていくのであった。

トレーナーとして小野寺力を指導、目黒ジムで多くのキックボクサーを指導した(1995.12.2)

※写真はブルース京田氏提供

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年2月号

前の記事を読む »