トップ団体へ挑戦が続く全日本キックボクシング協会、日本からアジアへの基礎固めへ!

堀田春樹

瀬川琉は前回に続いて韓国戦士を迎え撃ち、インパクト残す判定勝利。
広翔は前回の判定負けを払拭。韓国戦士に圧倒の展開で判定勝利。
勇生欠場で、弟・野竹生太郎が存在感見せたTKO圧倒勝利。

◎SAMURAI WARRIORS 挑戦3rd / 10月5日(日)後楽園ホール17:30~21:32
主催:全日本キックボクシング協会 /

前日計量は4日(土)稲城ジムにて14時より行われ、一人を除いて一回でパス。その一人も30分後に難なくパス。
戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第13試合 60.0kg契約3回戦 

全日本スーパーフェザー級チャンピオン.瀬川琉(稲城/ 59.5kg)23戦16勝(4KO)6敗1分
      VS
鄭相鉉(=チョン・サンヒョン정상현/韓国プロムエタイ55㎏級Champ/ 59.5kg)
16戦13勝3敗
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竜矢30-29. 勝本30-28. 和田30-28

初回早々から瀬川琉がサウスポーからのローとミドルキックで早くもリズム掴んだ流れ。左ミドルキックは腕の上からでも強くヒットさせたが、鄭相鉉の打たれ強さと頑張りもあって仕留めるには至らなかったが、テクニックで優って判定ながら完勝の内容。

瀬川琉の左ミドルキック、初回から主導権を奪っていった
腕の上からでも折らんばかりに強く蹴って出た瀬川琉

試合後のリング上では、「ちょっとデカいこと言いたかったんですけど、12月28日にもう一回いい試合して、自分の言いたいこと、しっかりアピールしていきたいと思います。」とKO出来なかったことへの反省と、「今27歳ですけど、23歳で格闘技で飯食えなかったら辞めようというつもりでいました。だけど今の勤める会社の社長に拾って貰ったからこそチャンピオンベルト巻けて格闘技が出来ていると思います。練習も仕事も続けられる環境で、格闘技をバックアップして応援して頂いています。」と観戦している社長さんを紹介。

控室に帰ってからは、「相手は蹴り終わりを狙っていたので、そこを警戒し過ぎてたかなと感じます。今迄の中では一番見えていたんですけど、ちょっとまた練習の半分も出せていない感じですね。来年に向けて一試合一試合、自分の中では合格点出して他団体なり、トップどころと戦いたいなという目標はありますね。」と以前も他団体やトップ選手の存在を意識した発言があったが、来年へ向けて更に力強く抱負を語った。

瀬川琉が勤務するエコプロコート株式会社は、住宅関連各種コーティング施工関連の業務の模様。保護犬格闘家として、ファイトマネーを保護団体に寄付する活動をしている瀬川琉は犬や猫が安全に快適に過ごせるように床材を保護する施工の仕事のようである。

◆第12試合 スーパーライト級3回戦

ジョカミ・ナカジマ(ドミニカ/中島道場/ 63.45kg)1戦1敗
VS
アイドゥル(=金炳秀キム・ビョンス김병수/韓国/ 63.25kg)14戦7勝7敗
勝者:アイドゥル / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:竜矢25-30. 勝本24-29. 少白竜25-30

勇生(=野竹勇生)欠場で代打出場のジョカミ・ナカジマはドミニカでの全国大会優勝の実績ある選手。アイドゥル(=金炳秀)は6月20日に瀬川琉に判定負け。

ジョカミ・ナカジマはテコンドー技で変則的にアイドゥルを手古摺らせたが、最初の1分半程まで。動きが読めて来たアイドゥルはパンチや組んでのヒザ蹴りで圧力掛けていった。ジョカミは鼻血を流し、圧されながらも屈しない攻防を続けた。

後ろ蹴りなどテコンドーで鍛えた技を変則的に使ったジョカミ・ナカジマ

第2ラウンドにアイドゥルの組み付いてのヒザ蹴り連打でスタンディングダウンを取られたジョカミ。第3ラウンドもアイドゥルのヒザ蹴り連打でスタンディングダウンを取られるも大きなダメージは受けていない様子で後ろ蹴りも見せるも逆転は成らず。アイドゥルが大差判定勝利した。

ジョカミの動きを読んだアイドゥルは多彩に攻め優っていった

◆第11試合 スーパーバンタム級3回戦

広翔(稲城/ 55.1kg) 6戦4勝(1KO)2敗
VS
申大容(=シン・デヨン신대용/韓国/ 54.95kg)2戦2敗
勝者:広翔 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:竜矢30-28. 椎名30-28. 少白竜30-28

広翔の鋭いミドルキックやローキックが申大容の前進を阻む。申大容もアグレッシブに攻めるが、広翔がパンチから蹴りのコンビネーションブローが申大容の前進を許さぬプレッシャーを与えた。なかなか鋭く落ち着いて迎え撃つ広翔。テクニックで圧倒した広翔が失点なく判定ながら完勝した。

広翔の蹴りが鋭く申大容を圧倒した。今後はKOが重要となる

広翔は試合後の帰り際、「前回(3月)の試合で負けたので、プレッシャーがあった感じで、蹴りで倒しに行きたかったですけど、行くところとで行けなかったので、次はもっとメンタルを強化してしっかり攻めて行きます。野竹兄弟に負けないようにKO目指します。今日は野竹生太郎がKO勝利で先を行かれたので、ここからもっと練習して打倒野竹兄弟で上を目指します。」と全日本キックボクシング協会のエース格争いにも階級超えたライバル意識が感じられた。

広翔も腕の上からでも強く蹴り込んだ。連続でしつこく蹴りたかった

◆第10試合 63.0kg契約3回戦

野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 62.85kg)4戦4勝(1KO)
        VS
キム・ハヌル김하늘(漢字表記不明/韓国/ 61.75kg)4戦2勝2敗
勝者:野竹生太郎 / TKO 1ラウンド 2分0秒
主審:勝本剛司

兄・勇生の分までインパクトあるTKO圧倒勝利を残した野竹生太郎。開始早々から両者アグレッシブに攻めるが、野竹生太郎が的確なヒットのローキックで優った。蹴って出たキム・ハヌルにヒザ蹴りで迎え撃つと、ボディーへまともに貰ったキム・ハヌルはノックダウン。

立ち上がるもパンチで反撃するキム・ハヌルに生太郎は迎え撃ち、更にヒザ蹴りボディーヒットでキム・ハヌルは苦しそうに蹲り、ノーカウントのレフェリーストップとなった。

野竹生太郎のヒザ蹴りを受けたキム・ハヌルは堪らず蹲った

◆第9試合 スーパーウェルター級3回戦

義斗(FPLUS TEAM QUEST/ 68.05kg)5戦3勝(2KO)2敗
        VS
康示勲(=カン・シフン강시훈/韓国/ 68.6kg)4戦3勝1敗
勝者:康示勲 / 判定0-2
主審:竜矢
副審:和田29-29. 椎名28-29. 勝本29-30

康示勲のアグレッシブな蹴りとパンチの圧力が義斗を圧していく。やや調子付かせてしまったか。大差は付かないが、我武者羅に出る康示勲に義斗は距離感掴めず、僅差判定で康示勲が勝利した。

康示勲の我武者羅に打って来るタイミングが掴めない義斗は攻め倦む

◆第8試合 ライト級3回戦

山田旬(アウルスポーツ/ 61.2kg)5戦4勝1分
        VS
清宮拓(GODSIDE/ 61.05kg)10戦2勝(1KO)7敗1分
勝者:山田旬 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:和田29-28. 椎名29-28. 竜矢30-28

大きな差は無いが、パンチと蹴りの攻防が続き、第3ラウンドには山田旬が圧力掛けて蹴りのインパクトを残し僅差ながら判定勝利。

ラストラウンドで攻勢掛けた山田旬。蹴りでインパクトを残した

◆第7試合 スーパーフライ級3回戦

HIROKI(AKIRA~budo school~/ 51.8kg)8戦4勝(1KO)4敗
      VS
鬼久保海斗流(健成會/ 51.7kg)2戦2敗
勝者:HIROKI / 判定2-0
主審:勝本剛司
副審:少白竜30-29. 椎名29-28. 竜矢30-30

初回は蹴りから組み合う展開が増えた。偶然のバッティングで鬼久保海斗流が痛そうに蹲ること2度。更に股間ローブローもあって鬼久保は苦しい展開。ジャッジ三者が揃うラウンドは無かったが、僅かながら攻勢に立ったHIROKIが判定勝利。

◆第6試合 ライトヘビー級3回戦

星のケースケ(百足道場/ 78.1kg)2戦2勝
      VS
菊池圭治(GODSIDE/ 78.65kg)13戦9勝(4KO)3敗1分
勝者:星のケースケ / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:少白竜30-28. 椎名29-28. 勝本29-28

菊池圭治は変則的にフェイント掛けながら蹴りやパンチを当てるが、第3ラウンドに星のケースケが菊池をロープに詰めてパンチ連打。最終ラウンドを制した星のケースケが際どくも勝利した。

◆第5試合 66.0kg契約3回戦

Katsuya Norasing Family(Norasing Family/ 64.9kg)5戦3勝(2KO)2敗
        VS
NAOKI(ウィラサクレック/ 65.65kg)4戦1勝3敗
勝者:Katsuya Norasing Family / 判定2-0
主審:竜矢
副審:少白竜30-28. 和田29-29. 勝本30-29

◆第4試合 59.0kg契約3回戦

KAI×A.K.G(A-BLAZE×KICK/ 58.85kg)3戦3勝(1KO)
        VS
杉浦昂志(キックスターズジャパン/ 58.9kg)5戦2勝2敗1分
勝者:KAI×A.K.G / 判定3-0
主審:椎名利一    
副審:少白竜30-29. 竜矢30-28. 勝本30-28

◆第3試合 67.0kg契約3回戦

滝口遥輝(中島道場/ 65.5kg)4戦3敗1分
      VS
成瀬晴規(無所属/ 67.1→67.0kg)6戦3勝2敗1分
勝者:成瀬晴規 / 判定0-2
主審:和田良覚
副審:少白竜29-30. 竜矢29-30. 椎名29-29

手数少ない両者にレフェリーがアグレッシブに攻めるようにイエローカードが示された。攻め難さがあったか、第3ラウンドにやや攻勢掛けた成瀬晴規が僅差で勝利。

◆第2試合 68.0kg契約3回戦

石塚健太(武士魂2代目闘心塾/ 66.5kg)2戦2敗
        VS
小玉倭夢(Norasing Family/ 67.9kg)3戦2勝(1KO)1敗
勝者:小玉倭夢 / TKO 3ラウンド 1分42秒 /
主審:勝本剛司

蹴りパンチの攻防は徐々に小玉倭夢が攻勢強め、第3ラウンドにはコーナーに詰めパンチ連打。2度のスタンディングダウンとなってレフェリーストップ。

◆第1試合 スーパーバンタム級3回戦

渡邊獅生(JTクラブ/ 55.2kg)2戦1勝1敗
      VS
梅原竜雅(龍成會/ 55.3kg)2戦1勝(1KO)1敗
勝者:梅原竜雅 / KO 1ラウンド 2分40秒 /
主審:竜矢

蹴りから首相撲とパンチと蹴りの攻防。組んで崩す梅原竜雅に圧される渡邊獅生。ロープ際でパンチで攻める梅原はヒジ打ちも放ったか、渡邉の額から鮮血が流れ、崩されて倒されると脳震盪のダメージもあったのか、ノックダウンとなって立ち上がるも足下ふら付いてテンカウントが数えられた。

《取材戦記》

韓国戦士を迎え撃った瀬川琉、ジョカミ・ナカジマ、広翔、野竹生太郎は場内盛り上がるアグレッシブな展開が見られたが、第3試合から第9試合は主導権支配の難しい僅差の判定が続いた。皆全力で戦っているが、感動のノックアウトはなかなか難しいものである。

全日本キックボクシング協会・栗芝貴代表が設立当初から目指すもの。

前回6月20日興行が終った後、全日本キックボクシング協会は中国の団体との交流へ臨みました。栗芝貴代表は8月2日、 海南省三亜市に訪れ、中国と日本のキックボクシングの交流と発展を促進するための会議が開催されました。中国の選手も全日本キックボクシング協会へ参加したいという話が進んだ模様です。

今回の興行の後、栗芝代表は香港に向かい、昭和の時代に試合をした際に交流あった香港ムエタイ協会との交渉も進め、来年を足掛かりにアジアトーナメントへプランを進める方向である。

栗芝代表は前日計量にて全出場選手に対し、「来年から本格的にアジアトーナメントに向けて準備していかねばならない。アジアトーナメントには強い日本人が必要なんですね。プロとして世界の強豪選手と戦える選手を作っていかねばならない。それで会場に来たお客さんに感動や勇気を与えられるような試合でなければならない。何を目指してやるのか。僕たちは日本や世界でトップに立てる選手になろう。腹を括って出て来る人を待っているんです。その為に私も目一杯やっています。」と語り、またメディアとの対話では、「まだウチの協会はテレビに載せられる人材が少な過ぎる」という。

その昭和時代のような地上波テレビ放映に向けては、「まだウチは設立以来7回目の興行です。来年は4回の興行、全て後楽園ホールで日曜日も取れました(土曜1回、日曜3回)。僕らは後楽園ホールでしかやりません。なぜか。スターを作りたい。輝く舞台を用意したい。その一心です。トップに行くこと。これが目標なんです。これからも世界に向けて準備をどんどん進めています。今から60年前に日本でキックボクシングがバーンと注目された時、毎週テレビ放送したんですね。ここもう一度、僕、絶対掴みます。なので明日の試合、スターになってください。全力で戦ってください。是非盛り上げて頑張ってください。宜しくお願いします。」と叱咤激励して締め括った。

他団体にも期待の新星と言える選手は多く居るが、全員が勝ち上がれる訳ではない、トップに立つスターはごくわずかとなる勝負の厳しさが有ります。全日本キックボクシング協会にも野竹勇生・正太郎兄弟や広翔が注目度高い選手で来年に期待が掛かっています。団体内ではなく、日本のトップ、更に世界最高峰に立てるか。

近年、地上波放送というのは難しい話だが、今月はキックボクシングの新イベントがテレビ東京で地上波放送という発表もされています。キックボクシングを知らない人の目に触れる機会が大きいのが地上波放送の力。ボクシングで例えれば、井上尚弥の名前は知っていても、中谷潤人の名前を知らない一般の人が多いのは、過去に地上波での世界戦が多かった方が知名度高いということでしょう。キックボクシング各団体がいろいろなイベント試みる中、設立3年目、初陣興行から7回目の全日本キックボクシング協会がどこまで躍進するか。栗芝貴代表の手腕に期待が掛かります。

次回の全日本キックボクシング協会SAMURAI WARRIORS 挑戦4thは12月28日(日)に後楽園ホールで開催されます。期待される出場選手は瀬川琉、広翔、野竹兄弟でしょう。

後半戦セレモニーで対峙した日韓各選手達

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」