1945年8月15日に大日本帝国は、天皇ヒロヒトがあらかじめ録音しておいた「玉音放送」をNHKラジオを通じて放送し、国民に敗戦を伝達した。連合国との戦争に無条件降伏したのだから、あの戦争は「負け」であった。第二次大戦における日本の敗戦、それにとどまらず15年戦争の総体が敗戦に帰結したのは歴史的に確定した事実である。

勿論わたしも日本の敗戦にはこれまで全く疑義を持ったことはなかった。戦前と戦後が隔絶せず、不謹慎な地下水脈で繋がっている構造への不信感は持っていたにせよ(あるいは敗戦処理を自国民の手では充分になしえなかったのではないかとの疑義も)、日本の敗戦を疑ることはなかった。史実的にはわたしがどのように感じようと日本の敗戦は確固としたものであって、どんな材料を持ってきたところで「日本の敗戦」を疑う視点は、焦点のずれた議論だ。


◎[参考動画]宮内庁:玉音放送の原盤を初公表(毎日新聞)

それを承知の上で、あえてごく最近ではあるが頭に浮かんだ想念がある。

あの戦争で日本は負けた。これは間違いない。しかし、形式上の負けの陰に隠れて、「戦前日本(大日本帝国)が死守したかったもの」の確保が、実のところ果たされているのではないか。つまり「敗戦」との言葉の陰には「実体的には不変」である秘匿すべき本質の保持。なにを差し置いても、どれだけの被害が出ようとも、死守したかった唯一最大の精神的幻想はいまも戦前同様に生きつづけているのではないか、と感じる事件が起きたからだ。

今次わたしを再びこの問題に立ち返らせたのは、他でもない7月8日に安倍元首相が殺された、その日の午後からであった。あの事件がきっかけになり、わたしの想念は元首相が殺されたことよりも「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」へと思考が傾注した。

事件は参議院選挙中であったこともあり、各政党は次々に「民主主義に対する卑劣な攻撃で、絶対に許すことができない」旨のコメントを発信し、選挙活動を1日停止した。驚いたことにネットニュースでチェックしていたら、地上波各局のアナウンサーは黒いネクタイや、あからさまな喪服を着て同じ内容を繰り返し放送していた。

「民主主義に対する卑劣な攻撃で、絶対に許すことができない」最初の違和感はこのコメントだ。わたしは第一報をラジオで聞いた。現場の様子の録音だ。安倍元首相の演説が始まって間もなく、火薬の爆破音が聞こえ、二回目の爆破音が明瞭に聞こえた。素人のわたしにその音だけで判断できたことは、使用された武器は一般の拳銃やライフルではないことだ。拳銃やライフル(自動小銃)はあのような爆音はしない。むしろ文字にすれば「パン」あるいは「タタタ」という感じの軽い音がするものだ。だからアナウンサーが「銃で撃たれた」と伝えていたので、武器は水道管かなにかを利用して作ったものだとすぐにわかった。そしてそうであれば、組織的な犯行ではなく、完全に個人的な犯行である可能性が高い。いまの日本で組織的に政治目的を保持しながら、独自の銃器や爆弾の作成を実行している団体があると、わたしには思えなかったからだ。つまり政治的な文脈ではなく「個」と「個にかかわる国家的なもの」の観点をクローズアップせざるを得なくなるのではないか、と直感した。

わたしの直感通り犯行実行者に、政治的な目的がなかったことは数日で判明した。背景に未だ知られていない力学がある、との説も残ってはいるが、統一教会の存在が事件に大きくかかわっていることがはっきりした。

ここでわたしの想念が行きつ戻りつしはじめたのだ。安倍元首相が統一教会と懇意であることは、従前から前から知っていた。それに加え安倍元首相が敬愛してやまない祖父である岸信介が日本に統一教会を招き入れた、実質上の最大功労者であることも承知していた。安倍元首相は岸信介のすべてに心酔していた。小学生時代に当時家庭教師をしていた現衆議院議員の平沢勝栄に東大闘争の様子を見せられれたとき、安倍元首相は「おじいちゃんは悪くない!」と憤激したエピソードを平沢から聞いたことがある。祖父と孫の間睦まじい関係はいいだろう。ただ「おじいちゃん」はいかにも不思議な人物である。

岸信介は大戦中に商工大臣の地位にあり、戦後東京裁判でA級戦犯と認定された。ところが3年半の勾留のあと岸は不起訴で保釈されている。A級戦犯で有罪が下った14名のうち7名は死刑が執行され、残りの7名も終身禁固や有期禁固刑が言い渡されている。死刑を免れたA級戦犯のほとんどは1952年全国的に展開された「戦犯保釈運動」などの影響で出獄しているのではあるが、岸が起訴すらされなかった理由は(あれこれ解説は散見するが)わたしには判然としない。

そして、公職追放されたにもかかわらず岸は周知のとおり、総理大臣の地位にまで上り詰め、戦争中は内閣の一員として対峙していた、米国と日米安保条約を締結する。「鬼畜米英」が終戦から15年もせずに「軍事同盟」を結ぶに至るメンタリティーを、まずわたしは理解できない。もっとも岸個人ではなく、自民党の議員も同様の行動をしたのだから、「日本人って不思議な精神性をしているなぁ」といったところだ。

岸は米国とは安保を締結し、韓半島からは文鮮明を招き入れていたのだ。統一教会の教義は日本を韓国に貢がせる国としていて、本来日本の保守政治家には親和性のない教義だと思われるかもしれないが、文鮮明はたくさんの土産を岸に用意したのだろうし、岸だって相手が誰であれ「利用できるものは利用する」人間であるから、利害が共有できたのだろう。

だからといって、岸個人や自民党に多少都合がよくても、日本国民や日本外交(国益)に統一教会が利益をもたらしたのかといえば、回答は7月8日に出た通りである。多くの人が最近になって安倍元首相の死を「身から出た錆」、「自業自得」と表現している。そう表したい気持ちもわからなくはないが、その奥に緞帳のように広がる、さらなる暗黒が見落とされてはいないだろうか。

手がかりを示してくれるのは岸信介だ。彼はどうしてあれほど熱心に満州国建国に尽力したのか。どうして東京裁判で起訴されなかったのか、なぜ米国との軍事同盟を自身の総理の座と引き換えにも優先したのか、そして文鮮明(=統一教会)をはじめとする、主張においてまったく相容れない団体とも深い関係を築いたのか。岸は何を得ようとしなにを守ろうとしていたのか。岸の行動は「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」を象徴的に体現したと考えられないだろうか。

安倍元首相が「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」のために殉じたい、と考えたことはあっただろうか。彼は常々支離滅裂な愛国論を語り、軍拡にも熱心であったが、敬愛する祖父のまいた種が皮肉にもみずからの命を奪うことをあらかじめ知っていたら、統一教会との関係を従来通り続けただろうか。

安倍元首相殺害は大きなニュースではあるが、統一教会を整理すれば問題は片付くだろう。しかし岸信介までさかのぼってその精神性の問題まで掘りあかされることを政府は望んでいない。被疑者を4か月もの長期間精神鑑定すると決定したのは、これ以上被疑者の口から吐かれる言葉を封じるためであり、国葬を手早く決めたのも安倍元首相の称揚のためというより、この事件が触れるかもしれない更なるやっかいな「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」の問題には、絶対に議論を向けたくなかったのが岸田総理の本音ではないか。その証拠に総理大臣就任時あれほど声高だった「憲法改正」が今次内閣発足の際には一切言及されることはなかったではないか。

終戦記念日の8月15日、形式上の敗戦に隠れて戦後から生き残った「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」は決して弱体化しておらず、むしろその総体がもとよりさらに厄介な代物に変容しているのではないだろうか。

今次にあっては理性的、合理的な判断分析はことごとく無化され放逐される。わたしたちに流布されるニュースやコメントの大半は、したがってほとんどが非本質的である。本文中「戦前日本(大日本帝国)が死守したかった何ものか」との表現で、わたしが示唆した概念は、おそらく多数の読者には了解していただけるであろう。

龍一郎・揮毫

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

旧統一教会問題と安倍晋三暗殺 タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年9月号

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

ことし4月にがんの治療を受けた。がんといっても「悪性腫瘍」では軽度の部類に分類されるもので、生命の危機を感じる恐怖はなかった。

ところが、病名の付かない体調不良は毎年増加の一途である。昨年は首から下の動きを制御できなくなったり、腸の一部に穴が開いたりして2度ほど救急車のお世話になった。このように書くと、わたしの年齢を実際とたがえてお感じになる読者も少なくないのであるが、実のところわたしはまだ、60歳にも達していない若輩者(?)である。

加齢にしたがい、時間経過の速度を実際よりも早く感じるのは、脳科学で説明がつくらしい。それは良いとして、年齢とともに衰える身体と、年齢を経ても変わることのない、依然未熟な精神(あるいは思想)の乖離は個人的に大問題である。環境は差別なく1秒、1時間、1日、1年を刻む。他方わたしの思考は誰もが、異議をさしはさむことのできない「絶対尺度」に共振し、穏やかに精神の年齢を重ねることができない。基本的にこれは「性分」に属する問題であることを、自認しているつもりである。性格と言い換えてもいいだろう。しかし居心地が悪い。

ただし、8月6日を迎えるたびに、それら些末な問いを排して「本当にそれはお前の個人の問題なのか」との自問を発せざるを得ない。

わたしの母は広島で原爆による放射能を浴びた。でも、わたしを出産してしばらくは、その過去を振り返る必要がなかった。兄弟の多い母親にして、だれもが40歳以前に健康の不調を訴えることはなかったからである。そして変調はおそらく、当事者やその親(わたしの祖父母)がそのこと(被曝)を忘れた時期になって叔父の間に多発しはじめた。

広島の爆心地近くで被爆した叔父たちが、50歳を超えると次々にがんを発症し、言い合わせたように数ヶ月で絶命していったのだ。

長寿だった祖母はその悲しみを日記に膨大な量綴っている。多くの子どもがいても、「逆縁」がいかに母親を苦しめたか。筆まめだった祖母は重ねて子どもを失った「慟哭」ともいうべき文章を、何度も、何度も書き連ねている。あの「慟哭」は誰かに読まれることを前提にしたものではない。祖母はそのようなことを好む性格ではなかった。幸い本人は長寿であった祖母との交流のなかで、わたしは断言できる。

今年も騒がしい。こんな表現は批判の対象になるかもしれないが、「大層なようで矮小」な出来事が重なっているように思う。同時に普通の人は気づかないかもしれないがわたしのとっては「小さなことのようで、取り返しがつかない」と感じる流転が、年々増える一方だ。

広島に原爆が投下され多くの市民が焼き殺され、あるいは生き残っても苦しみ、体と心に傷を負った日から77年経って、わたしは自身を取り巻く諸々(もろもろ)に、これまでになくいきりたっている。表現が正確ではない「怒って」いる。戦争と非戦争、人殺しと「偽りのヒューマニズム」、生命体としての必然を無視した暴論を基本に据えて国連が発する「SDGs」との欺瞞。

ここまで見事に「NewSpeak」が行き渡ると思ったかい、オーウェルよ?

2022年8月6日、日本には「何の希望もない」。ありもしない偽りの影のようなものをでっち上げる報道よりも、この絶望感が幾倍も実相をえぐっているだろう。広島出身の人間が総理大臣になっても、そんなものになんの意味もないことは、明明白白だ。

わたしの自分へのミッションは、嫌がられても生きながらえて、この「性分」を貫徹することだとかんがえている。仲間は少ない。でも少ない仲間はみな信用できる人ばかりだ。

龍一郎・揮毫

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

◆「民主主義に対する挑戦」とは位相が異なる事件

7月8日、奈良市で参議院議員選挙に立候補した自民党候補者の応援演説を開始してまもなく、安倍元総理が男性に手製の銃で射殺された。日本で政治家の「暗殺」は少なくない。有名なところでは、現役の首相、犬養毅が銃弾に倒れた「5・15」事件や複数大臣が暗殺された「2・26事件」、社会党(当時)の浅沼稲次郎委員長が演説中に刺殺された事件などが、わたしの年齢の層には思い浮かぶ。

安倍元総理射殺事件の直後、与党も野党も、おそらくはどのマスコミも(マスコミのすべてを検証はしていないが)「民主主義に対する卑劣な攻撃・挑戦であり断固として許せない」旨のメッセージを発していた。選挙期間中に首相在位期間最長者である、安倍晋三氏が殺されたのであるから、なんらかの「政治的背景」があるのではないか、と考えても無理はない。というよりも時期や状況から判断すれば、動機は判然としないものの「政治的な背景を持ったテロ」だとの推測が大勢であった。

しかし、容疑者(とはいえこの事件の場合、現在明らかになっている供述から「容疑者」との呼称ではなく「犯行遂行者」と呼ぶ方が適切かもしれない)からは、与野党・マスコミ・おそらくは警察当局も想定していなかったであろう、意外な供述が発せられた。

「統一教会に家族(人生)をバラバラにされたので、統一教会を日本に連れてきた岸信介の孫である安倍元首相の殺傷を狙っていた」、「統一教会最高幹部が来日した際に、暗殺を計画したが果たせなかった」……。

犯行遂行者は長期間にわたり、自分の家族が崩壊させられ、自分の人生も狂わされた「敵」として統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を捉え、復讐の機会を探っていたようだ。そうであれば、事件の直接被害者は安倍元総理ではあるが、犯行の動機は政治的なものではない。むしろ自分の人生を壊した統一教会に本来は向かっていたものを、それが果たせなかったために、統一教会の支援者と考えられる安倍元首相への攻撃へターゲットを切り替えたと推測される。

ここで事件が帯びる性質の全体像が大きく変化するのである。仮に「犯行実行者」が「安倍元首相の政治姿勢」あるいは「政治手法」などについての批判を動機として持っていれば、たしかに、「政治テロ」事件としての色彩からの捜査が進行するであろうが、「犯行実行者」は現在伝わっている情報の限りにおいて、まったく「政治」と無関係にひたすら統一教会による被害(「犯行実行者」が感じる被害)が、事件実行の動機だったと述べているようだ。

そうであれば、この事件は結果として安倍元総理が暗殺されたとはいえ、冒頭に述べた「5・15」、「2・26」、「浅沼委員長刺殺事件」と衝撃においては似ていても、動機においてはまったく位相が異なる事件である可能性があるのではないだろうか。

7月14日岸田総理は安倍元総理の「国葬」を行うと発表したが、同時に原発9基の再稼働を経産大臣に指示したことも表明した。

弱小党派や少数野党がときに「自民党政権は議席を多数保持していても、内心では極限まで追い詰められている!」というような定型文的なアジテーション文章や声明を出すことがある。7月中盤参議院選挙終了直後の自公政権は、奇しくもその状態に陥っているのではないかと感じる。

◆権力中枢に浸透し、暗然たる力を保持していた統一教会

若年層はともかく、50代以上の人々にとって、統一教会は桜田淳子や元体操選手・山﨑浩子が「合同結婚式」で結婚したことはまだ記憶の中にあるだろう。ところが統一教会の活動は70年代から各界で広がりを見せ、80年代には「霊感商法」などで大々的に問題にされるも、21世紀に入ってからめっきり報道が減っていた。これは統一教会が活動を縮小したからではなく、想像するに95年のオウム真理教事件をピークにマスメディアが意識的に扱わなくなったことと関連があるのではないか。マスメディアにおける統一教会の扱いが減っていた原因は、統一教会がそれだけ権力中枢に浸透し、暗然たる力を保持したからだと言い換えられる。

当選回数の少ない議員と統一教会の関係が断片的に報じられているけれども、元総務大臣で安倍元首相同様タカ派の急先鋒であり後継者ともいわれた、事件発生地奈良出身の高市早苗氏と統一教会についての関係は、地元だけでなく、政界・報道関係者であれば周知の事実である。不思議なことに事件発生後、安倍元首相の搬送された病院と東京にいながら連絡を取っていたというにいたといわれている高市氏と統一教会の関係にフォーカスが向いたマスメディアの報道は大々的に行われていない(総務大臣はテレビ局免許の認可権を持つ)。

◆矛盾を顕在化を恐れる岸田政権

さらに不思議なのは、韓国の右翼とKCIAがその活動を援助したといわれる韓国右翼団体である統一教会は教義に「韓国語(ハングル)による世界統一」など偏狭な主張を持つ団体であるにもかかわらず、日本の右派、特徴的には「日本会議」から批判が聞かれないのはなぜであろうか。

皇室を持ち上げ「日本民族の優秀性」を強調する日本の右派と、韓半島統一は良いにしても「韓国語(ハングル)による世界統一」を教義の一部に持つ団体とは、主張においてまったく相容れないのではないか。それらの矛盾を顕在化させないために、岸田は早期に「国葬」決定と原発再稼働命令との、まったく理解不能な煙幕の如き選択肢しか思いつかなかったのではないだろうか。

最後にわたし自身が経験した統一教会との接点を紹介しておこう。80年代半ば、米国に半年ほど滞在したことがある。数か月間は毎日マンハッタンに電車で通った。グランドセントラルステーションは多くの映画にも登場する、著名な場所だが、電車を降りて構内をあるいていると、わたしはアジア系と思われる若い女性からしばしば声をかけられた。

“ Are you looking for purpose in your life ? “

発音には日本語のなまりがあり、年齢は当時のわたしと変わらないひとたちだった。

「あなた、原理(原理研)でしょ!」

と日本語で吐き捨てると、すぐに離れていった。80年代から統一教会が引き起こす各種の問題を放置したから、皮肉にも安倍元首相殺傷事件は引き起こされたのではないか。


◎[参考動画]全国霊感商法対策弁護士連絡会 記者会見(2022年7月12日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

前回本通信で鈴木伸哉との会話を公表した。鈴木は重ねて「自分とは関係ない」、「この書き込みが自分のものであると証明しろ」と繰り返した。取材班キャップ田所は、情報の出所がリンチ被害者M君であり、それ故、鈴木の会社だけではなく、携帯電話の番号や自宅住所も知りえたし、アカウントについても同様であると「証明」した。それでも鈴木はひたすら「証明しろ」、「証明しろ」を繰り返したので、本日は「leny φ(^▽^)ノ#鶴橋安寧! (@LenyIza )」が鈴木のアカウントであることを、言葉ではなく過去の関係人物とのやり取りを示すことにより、誰の目にもわかるように再度「証明」する(本来このような無益な作業は不要と考えるが、鈴木が要求するので仕方なく時間を割く)。

以下はかつてカウンターであったが、リンチ事件を契機にカウンターの手法に疑問を持ち、現在は距離を置いている三輪吾郎さんからご提供いただいた情報である。実名で勇気ある「証明」を行っていただいた三輪さんに感謝したい。

まず紹介するのは、あるイベントで作成したチラシが余ったため、大阪市内居住の三輪さんが鈴木の会社まで残部を送付した際のやり取りだ。

三輪さんの自宅から鈴木の会社へ宅急便を送る相談がなされていることがわかる。この時期2人の間には、何のわだかまりもなく、むしろ一定の信頼関係があったと、このやり取りからは推認される。ところがM君リンチ事件後、鈴木の態度は一変し、三輪さんとも以下のやり取りを残している。

三輪さんと鈴木がこの時点ではもう決裂しており、鈴木が「神戸の時に俺の電話番号教えたよな?」と凄んでいる。が、実はそれ以前に鈴木は三輪さんに自分の名刺を渡し、会社の住所などを教えていたのだ。でなければ、最初に紹介した荷物の送付を行えない。

さて、鈴木は自らと自らの勤務先を限りなく特定させる書き込みをいくつも残している。

鈴木の勤務する会社はホームページによれば、1996年の設立であり、この書き込みと符合する。

そして今は敢えて名前は出さないが、鈴木は自身の勤務する会社の名前が判明する書き込みを複数行っている。

ここで鈴木が名前を挙げている会社と鈴木が勤務する会社が隣接していることは、Googleストリートビューではっきり目視できるので、関心がおありの方はご確認を。

ちなみに、これら書き込みは鈴木自身の手によるもの(誰でも見ることができる公開情報)であり、それを取材班のサイバー班が保存したものである。そして、

と鈴木は前職が大和証券であることを明かしている。土井定包氏は大和証券の会長を務めた人物である。

さらに、リンチ被害者M君ともかなり懇意な時期があり、以下の書き込みが残っている。

写っているのは、リンチ被害者M君で、「普段、硬派っぽい人ほど甘いものが好きな気がする。まっ、自分も好きやけど…*それにしても、めっちゃ嬉しそうな」とまるで恋人同士かと勘違いしそうなコメントを添えている。

その後、李信恵らによる集団リンチ事件によって鈴木と被害者M君の仲が決裂した後、この写真をコラージュした卑劣かつ非人間的が画像も何者かから発信されている(リンチ関連本第5弾『真実と暴力の隠蔽』巻頭グラビアに掲載)。これが鈴木によるものとの噂があり、このことについても「警告書」では真偽のほどを鈴木に求めている。回答がないが、「関係ない」と言うのなら、そう回答すればいいではないか?

もうこれ以上の言葉は必要あるまい。鈴木伸哉がツイッターアカウント「leny φ(^▽^)ノ#鶴橋安寧! (@LenyIza )」の発信者であることに争いはないだろう。

鹿砦社は金銭保証を求めているわけではない。前回警告した通り、鈴木が、「leny φ(^▽^)ノ#鶴橋安寧! (@LenyIza )」というアカウントがみずからのものと潔く認め、誠実な謝罪をすれば、これ以上の追及や、鈴木が電話で自ら求めた「裁判所」などに持ち込むつもりはない。

だが、本日が最終期限である。本日23:59までに、鹿砦社代表・松岡宛メール(matsuoka@rokusaisha.com)、あるいは書面(ファックス0798-49-5309)、そのほか形のある方法で鹿砦社に謝罪の意を明らかにするように要求する。これは本当の最後通告である。

《関連過去記事カテゴリー》
 しばき隊リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

前回(6月7日)、鹿砦社代表・松岡の怒りの記事でご紹介した通り、「警告書」を送り回答を求めた鈴木伸哉からは回答期限を過ぎても返信がなかった。そこで仕方なく取材班は鈴木に電話で意向を聞くことにした。ことは鹿砦社の名誉毀損に関わることだけに、曖昧にすることはできない。

6月1日正午過ぎ(一般的な企業の昼休み時間)鈴木の携帯電話に電話をかけたが鈴木は出なかったので、仕方なく同日午後鈴木が勤務する会社に電話をかけた。

◆自分と関係なければ「関係ありませんよ」と回答すればよいものを、やましさ故に逃げまくる鈴木

田所敏夫(以下、田所) お世話になっております私株式会社エスエル出版の田所と申しますが、鈴木様いらっしゃいますでしょうか。

電話受けた社員 今電話中なんですけれども。

田所 よろしかったらこのまま待たせていただいてよろしいでしょうか。

電話受けた社員 それではこのまま少々お待ちください。

(1分半ほど保留音)

鈴木伸哉(以下、鈴木) はい。お電話変わりました鈴木です。

田所 お世話になります。私、株式会社エスエル出版の田所と申しますが、お世話になっております。

鈴木 はい。

田所 恐れ入ります。鈴木様宛に5月6日付けで、株式会社鹿砦社から「警告書」を送付させていただいたのですが。

鈴木 それがどうしました。はい。

田所 私は取材班の田所と申しますが

(遮って)

鈴木 そういうのはお断りしているんで。

田所 「警告書」をお受け取りいただいたという記録がこちらの手元にあるのですが。

鈴木 それはもう弁護士の方に送っていますので。

田所 一点だけお尋ねしたいのですけれども、鈴木様は「企業ゴロ」という言葉でですね

鈴木 ちょっと営業中なんですけれども。そういうのは書面で送っていただけますか?

田所 ですから「警告書」をお送りしたんですね。

鈴木 あなたの名前で送ってきてないでしょ?

田所 ですから鹿砦社の代表取締役松岡の名前でお送りしております。

鈴木 いや、それはあなたが送ったんですか?

田所 私は株式会社鹿砦社特別取材班キャップの田所と申します。

鈴木 いや、それね、はっきりいって文書以外で受け付けしていないんで。

田所 それは鈴木様のご事情ですけれども

(遮って)

鈴木 あなたが取材したいんでしたら、取材したいと連絡するのが社会常識でしょ?

田所 取材をしたいのではありません。取材ではなく「10日以内に書面で明確な説明をお願いいたします」とお願いしたんです。お願いをしたのですがお答えを頂けないので

(遮って)

鈴木 はい、お断りします。

田所 お答えは頂けないということでしょうか。

鈴木 そうです。

田所 お答えは頂けないわけですね。

◆自分が書き込んだ証拠を「裁判所で出せ」と発言する鈴木は民事提訴を望むのか?

鈴木 はい。はっきり言って因果関係もわからないことにお答えできませんよ。

田所 鈴木様が書き込まれたものに……。

(遮って)

鈴木 私が書きこんだと、どういう根拠でおっしゃっているんですか。

田所 鈴木様がLenyというアカウントを使っていらっしゃる……。

鈴木 その根拠をお示しください。

田所 鈴木様の複数のお知り合いの方から、これは鈴木様のアカウントであると確認を取っております。

鈴木 いや、あのね、僕、複数の友人て知らないんですよ。まず根拠をちゃんと示して、それからお問い合わせください。

田所 はい。かつては李信恵さんも認めていらっしゃいました。

眼鏡はかけていないが鈴木伸哉と金良平、李信恵。李信恵のツイッター(2015年12月27日)に掲載されたもの

鈴木 いや、そういう話は聞いてません。ですからそれも書面で何月何日に……

田所 すいません、お尋ねしているのはこちらなんです。

鈴木 こちらは根拠を示しなさいと言っているんです。

田所 ですから鈴木様が「芸能プロダクションに寄生して小銭稼ぎをしている極左崩れの企業ゴロ」などと……。

(遮って)

鈴木 ですからそのように私が書きこんだという根拠を示しなさい、と言っているんですよ。

田所 それはあなたが勝手に求めているだけのことです。

鈴木 違います。あなたが私に聞くんでしたら、まず根拠を示してから聞きなさいと。

田所 根拠は、あなたの情報をリンチ被害者のM君から聞いたからです。

鈴木 関係ないです。ちゃんと書き込んだという根拠を、法的にちゃんと示しなさい。

田所 その必要はないです。なぜならば、あなたがたくさん違法な行為を書いているからです。

鈴木 関係ないです、まず示しなさいと言っているの。

田所 「反社出版社」とは「反社会的出版社」を示す言葉ですね。

鈴木 あのね、社会常識なさすぎです。まずその書き込みを私が書いたっていう根拠を示しなさいと言ってるの。裁判所を通してちゃんとそれを私が書いたと示せばいいんですよ。

田所 裁判所を通して示す? そんなことはどうやってやるんですか?

鈴木 なんでもいいですけど法的に示しなさいと言ってるんですよ。

田所 ということは、「訴訟を起こしてくれ」ということですか?

鈴木 そんなことを言ってるんじゃない。

田所 あなた、今「裁判所を通して」とおっしゃったじゃないですか。

鈴木 まずね、その書き込みを私がしたっていう証拠を示してから話が進むんですよ。

田所 では、なぜ私があなたの携帯電話の番号を知っているんですか?

鈴木 それはうちの電話番号は警察署にも届けていますから。

田所 今は会社にお電話をかけているわけです。

鈴木 私の名前は会社のホームページにも書いてありますからね。

田所 違います。私は鈴木さんの携帯電話の番号を知っているわけです。なぜ私が鈴木さんの携帯電話の番号を知っているんですか?

鈴木 それは知りませんよ。

田所 あなたのことを知っている人が教えてくださったから、私は知っているのです。

鈴木 だからその人が、誰がいつ私の書き込みが関係あると、証明したのか、まず示せと言っているんですよ。

田所 ですからリンチ被害者のM君がまだあなたと仲が良かった頃に、あなたがLenyというアカウントを使って書き込みを行っていた時代から、知っているわけです。これで充分でしょ!

鈴木 だったらM君がそれをちゃんと示して……。

田所 必要ありません。この際私はM君のことを問題にしているのではありません。

鈴木 関係ありません、あなたはまずね……。

田所 逃げていますね。

鈴木 あなたがちゃんと証明してからじゃないと話が進まないんですよ。

田所 M君はあなたの電話番号も自宅の住所も知っていますよ。

鈴木 M君は関係ないでしょ。あなたが示さないといけない。

田所 このアカウントが鈴木さんのものであるとわかればはっきりするじゃないですか。

鈴木 証明したらいいじゃないですか。

田所 すでにしていますよ。M君はあなたの会社を知っていたし、あなたのアカウントも住所も自宅の電話番号も知っているということですよ。あなたが散々誹謗中傷している被害者が知っているわけです。

鈴木 関係ないんじゃないですか。

田所 関係ありますよ。あなたの論理は全く破綻しています。破綻している以上におたくは会社ですよ。一般の学生さんなどと鈴木さんは違いますよ。鈴木さんはB(会社名。今回はあえて名を秘す)という立派な会社の取締役をなさっているわけでしょ。

鈴木 それと書き込みと何の関係もないじゃないですか。

田所 そういった立場の方が特定の出版社を「不法に小銭稼ぎをしている極左崩れが社長の反社出版社」という書き込み方をされると、これは明らかに名誉毀損ですよ。

鈴木 だから、まずそれを書いたのが私だということを証明しなさい、と言っているの。

田所 それは出来ていると言っているんです。

鈴木 出来ているんであればそれをまず示したらいいじゃん。

田所 今、言葉で示したでしょ。M君が私にあなたの携帯電話を教えてくれたから、私はあなたの携帯電話もあなたの住所も知っているわけですよ。

鈴木 それ脅しですか。

田所 は? この書き込みとあなたの関連性がどうあるかを示せとあなたが言うから、それを証明しただけですよ。

鈴木 あの、営業妨害なんですけど。

田所 あなたの求めに応じて証拠を申し上げたのです。

鈴木 あの、10分以上かかわっているんですけどね、営業妨害ですよ。

田所 こちらにとっては名誉毀損なんですけど。

鈴木 何で業務中にこんな関係のない電話してくるんですか。

田所 こちらの業務にかかわることで「反社出版社」と書かれ業務に関わりますから。

鈴木 関係ないです。まず示しなさいと言っているでしょ。関係ない所に電話してきて。

田所 関係、大ありですよ。

鈴木 業務妨害で、えーっとエスエルの田所さんですか。電話番号は何番です?

田所 鹿砦社特別取材班キャップの田所です。

鈴木 電話番号は?

田所 私の携帯番号表示されていませんか?

鈴木 いや、言ってください。

田所 それこそお調べいただいたら結構ですよ。鹿砦社の電話番号はオープンにしていますから。

鈴木 じゃあ株式会社エスエルっていう所の電話番号は?

田所 株式会社鹿砦社。

鈴木 関係ないでしょ。

田所 関係は鹿砦社とエスエル出版は親会社─子会社の関係なんです。

鈴木 どちらが親会社なんですか?

田所 調べなさい、そんなことくらい。

鈴木 あなたは自分のことをまず……。

田所 私は田所敏夫と言います。知っているでしょ。しばき隊の中心人物で私の名前知らない人間一人もいませんから。

鈴木 俺は知らないです。

田所 M君の裁判の時、傍聴券抽選前にあなたの隣にいたのが私ですよ。眼鏡かけて来られていましたね。私はあなたの顔も知っています。

鈴木 とりあえず営業妨害なんで御社の方に連絡行くと思いますけども。

田所 はい結構です。

鈴木 もうこれで切りますんで。

◆鈴木への最後通告

身に覚えのある悪行の数々が世間に披歴してしまったら……。鈴木の恐怖感は手に取るように分かった。そして繰り返し根拠を説明しても、話を逸らす鈴木。

だが読者には勘違いしないでほしい。取材班は鈴木への民事提訴も視野に数年間、鈴木の発信を観察、証拠を保存し続けてきた。何もなければ忙しい中このようなつまらぬ人物に時間を割きたくはなかったが、ここへ来て鈴木の発信がまたしてもエスカレートしているので、仕方なくアクションを起こさざるを得なかったのである。

そして、鈴木は前述のとおり「書き込みと自分の関係」に拘っていた。そこで、続報では誰の目にも明らかな証拠をお伝えする。すでに複数の協力者から公開をご快諾頂いている。

鈴木よ、われわれは「企業ゴロ」ではないから、われわれが求めているのは金銭ではない。鹿砦社やリンチ被害者M君を誹謗中傷したことへの真摯な謝罪があれば、これ以上の追撃は行わない。しかし、書面で尋ねた事項への公然たる「無視」、ならびに「営業妨害」を持ち出しての卑怯な逃げを続けるのであれば、われわれは、追及を続けなければならない。

有り余る証拠と複数の対処手段はすでに検討済みである。鹿砦社に公式に謝罪する最後のチャンスは次回、この原稿が掲載された日の23:59までだ。

《関連過去記事カテゴリー》
しばき隊リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

◆あえて批判覚悟で山本太郎を批判する

まもなくやってくる今夏には、参議院選挙が控える。政党地図を眺めると、年のせいか出るのはため息ばかりだ。

さて、鹿砦社は自由な言論を保証する出版社である。これは間違いない。だから敢えて『紙の爆弾』や本コラムで、どちらかといえば評価されている、山本太郎氏率いる政党についての、わたしが抱く違和感と嫌悪感を批判覚悟で申し述べる。

本コラムで山本氏が率いる政党を旗揚げした直後に「な・に・が『れいわ』だ!『新選組』だ!どあほうが! 「維新」さえ下回る最低最悪な党名『れいわ新選組』を掲げた山本太郎議員への絶望どあほう!」(2019年4月16日)とその命名を激烈糾弾する文章を書いた。

その思いは今も寸分も変わらない。自公に国民民主党と維新がすり寄って、ほぼ「大政翼賛会」が完成しつつある今日、山本氏率いるあの党名をどうあっても、わたしは口にすることはでない。当たり前だろうが。国会に議席を持つ政党の中では最も「反動的」な名前なのだから。差別の元凶天皇制と倒幕の時代に暴れまわった暴力集団、新選組。どうしてこんな名前を選んだのか訳が分からない。わたしにとっては、最低最悪の党名である。

そして、どうもここに来て山本氏の独裁ぶりが目に付くようになってきた。一つのサインは山本氏自身が、衆議院議員を辞職して、またしても参議院東京選挙区から出馬することを表明した事実だ。

党勢拡大のためには比例区で得た議席を有効利用するために、辞職して次点候補の繰り上げを図る戦法は理解できなくはない。しかしながら、はっきり言えば山本氏以外に「目玉」のない政党にとって、東京でもう一勢い入れたいとの思惑が明らかなのである。


◎[参考動画]【会見LIVE】山本太郎 参院選出馬選挙区表明(2022年5月20日)

◆「国債は国の借金ではない」の虚構

さらに、わたしには昨今山本氏の主張の中心である「国債は国の借金ではない」、「積極財政を」の掛け声がまったく腑に落ちない、どころか「それは違う!」と重ねて追及したい。

25年以上デフレに陥っていた日本で「賃上げを伴った」2%インフレであれば景気回復の要因にはなりえたであろう。けれども、おそらく山本氏も予想していなかったであろう、小麦や原材料の国際的価格上昇と急激な円安によって、日本の物価上昇は2%をはるかに超えてしまった。それに対して大企業の賃上げが報じられているけれども、中小企業は原材料上昇を価格に転嫁できないことから、賃上げどころか倒産に近い状態に追い込まれているケースが少なくない。なによりも多くの国民は「好況感」など抱いておらず、物価だけ上がる「スタグフレーション」が既に家計を直撃しているのだ。

これは山本氏が主張していた「国債はいくら刷っても、通貨発行権があれば借金ではない」がそうではなかったことを示す現実だと理解すべきだ。時間軸に沿って山本氏を弁護すれば、山本氏が主張する以前から自民党政権は「赤字国債」を乱発していたのであり(公共事業によりやがて還流するODAのように)、その結果毎年の国家予算で30兆円以上を返済に回さなければならないところまで、この国の財政は追い込まれていたのだ。

たしかに、政権与党が理性をもって税制と予算編成を行えば、ここまでの「スタグフレーション」は回避できたはずだが、FRB(米国通貨準備委員会)がゼロ金利政策の見直し(利上げ)を宣言したのに、日銀は政策金利の引き上げを宣言できない。なぜか。理由は簡単だ。利上げすれば国債の利払いが増してしまい、予算が組めなくなる、それだけのことだ。

こういった事態はわたしのような経済の素人にも容易に予想できたにもかかわらず、山本氏率いる政党はなぜか「国債は借金ではない」の主張を引っ込める気配がない。まったく不合理である。くわえて「国債発行は国の借金ではない」論を展開するために、極右の論者とも手を握っていた事実は、猛省に値する。

【何があっても心配するな。そんな国をあなたと作りたい。(82号簡略版)】

◆どうして水道橋博士なのか?

そしてちょっと驚いたのが、水道橋博士の擁立である。水道橋博士の人物像は知らないが、松井大阪市長に訴えられて「反スラップ訴訟」を公約に掲げると発信しているようである。「スラップ訴訟」はたしかに問題ではあるけれども、山本氏率いる政党の政策にこれまでその項目はあったであろうか。

選挙は政策だけではなく、「知名度」も重要な武器である。もともと芸能界出身の山本氏が水道橋博士を擁立するのも解らなくはない。けれども、山本氏が率いる政党の主張と「反スラップ訴訟」の接点はあまりにも希薄ではないか。生稲晃子を東京選挙区に擁立する自民党との違いはどこにある?


◎[参考動画]【街宣LIVE】東京・秋葉原駅(2022年5月29日)

◆本気で闘うのであれば本気の党名に変更せよ!

労組の名に値しない「連合」による「野党潰し」といっても過言ではない最近の狼藉に対して、自公・国民民主党・維新の実質「大政翼賛会体制」を揺るがすには、相当の衝撃が必要であることはわかる。だが、そうであるならば、山本代表は「野党中の野党」としてふさわしい党名をまずは採用すべきではないか。わたしも含めて彼が初当選時に応援した人間の半数以上は彼から離れている事実を山本氏は直視しなければならない。

元号や歴史的な暴力集団の名前を冠するのではなく、山本代表の発想であれば、いくらでも魅力的な党名が思いつくであろうが。それとも、やはり山本代表は政界の色に染まってしまい、そういった発想からはもう離れてしまったのか。


◎[参考動画]NHK日曜討論 山本太郎発言まとめ【2022/05/29】

◆初当選の支持者は半分去ってしまった、これでいいのか?

「原発を止めるために選挙に出た」と公言していた初心はどこに行ったのか。わたしは山本氏率いる政党についての論争では各方面から言いがかりに近い暴論を吹っかけてこられた。暴論も暴論。話にならなかった。だが、今日山本氏率いる政党のある意味成長ぶりと、「変節」を直視すれば、わたしの心配が杞憂であることを望むほかない。安田好弘弁護士・辻恵氏といった大物までが、あの破廉恥な党名を平気で発語している。こんな時代をわたしは、徹底的に嫌悪する。

ただし、橋下に直接楯突いて当時話題になった、大石あきこ議員には好感を持つし、彼女の活躍にも期待するところは大きい。その際、安心して呼ぶことのできる政党名に山本氏率いる政党は名前を変更するべきだ。原則的な「差別反対論者」にはあの政党名を投票用紙には書けない。この致命的なデメリットを誰か進言してほしいものだ。


◎[参考動画]【街宣LIVE】山本太郎と桜を見る会 熊本県・熊本!(2022年5月7日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◆ウクライナ情勢が浮き彫りにした日本の「好戦」指向

個別の事態が確実なものであったとしても、ではなぜその事態が生じさせられたのか?ある独裁者の思い込みだけが原因だと、断定することは乱暴ではないのか?身近な何人もの識者や学者がロシアによるウクライナ侵略の全体像をどのように考えればよいのか、苦悶している。

まさか21世紀に突きつけられようとは、予想もしなかった隣国へのある意味原始的な手法による侵略。この設問への私的な困惑は深く簡単になにかを断じることができない。ロシアの侵略行為に私は全く同感しないし、承認することはできないが歴史(直近から中長期のそれ)や、現存するNATOと消滅した「ワルシャワ条約国機構」の問題、さらには原発を巡るロシアの一貫しない軍事行動などを耳にすると、これが総体としていかなる現象(現地で痛みを負い無くなっておられるひとびとには失礼な表現かもしれないが)であるかの総体を表現することが極めて困難に感じるのだ。

◆軽すぎ薄っぺらすぎる言説と報道

一方でいまだに「西側」、「東側」という呼称が通用しているのもおかしな話だとしか思えない。ロシアもベラルーシも自称「旧社会主義国」ではあったが、現在経済体制は資本主義であり、その視点を維持すれば「西」対「東」の対決ではなく、帝国主義間の終末的領土・資源収奪争いの側面も、あながち無いとはいいきれないのではないか。

わざわざ「キエフ」を含む複数都市の日本における読み方の変更を政府が発表したら、何の疑問もなく新呼称を採用するのが大マスコミであり、政府専用機で20名の避難者を林外相が連れてきたことが大きく報道される。これまで政治難民申請に冷酷無比と言ってよかった日本政府の入管政策を知るものとしては、強烈な違和感を禁じ得なし、米国が侵略したアフガニスタンやイラクから日本政府は(米国侵略直後)難民を受け入れたか。そもそも「米国」を侵略者と規定する報道があったか……。

難民を受け入れることにわたしが反対なのではない。「日本政府は、ウクライナ情勢の前と後で、やることが全然違うじゃないか」というのが正直な感触だ。

◆強烈な違和感を象徴する「共産党の自衛隊容認姿勢」に迫る

そしてこの違和感は政府・マスコミだけに向けてのものではない。リベラルと呼ばれる層も含め、日本全体がまたしても「次のきな臭い段階」に入ったのではないか、とわたしは感じる。以下に一つの例を挙げよう。4月8日には「有事の際には自衛隊を活用すると訴え」共産党の志位委員長が述べたと報道された。

ことの次第を確かめるべく、4月11日共産党本部に電話で話を聞いた。

田所  報道で拝見しましたが、志位委員長が「日本に侵略があった際は自衛隊を活用して侵略を防ぐ」と発言をなさったと聞いているのですけれども、それは間違いありませんでしょうか。

共産党 共産党は日本国憲法を順守する考えだと理解していますが。

田所  日本国憲法と自衛隊は矛盾しない、というのが共産党の考えですか。

共産党 矛盾します。矛盾するというか今の自衛隊は9条とは相いれないと思っています。ですので将来的には解消を目指す立場です。

田所  憲法と矛盾する自衛隊に国を守らせる、ということですか。

共産党 そうですね。

田所  それがにわかには理解できません。

共産党 順序だてて言いますとね、憲法と相いれないと思っていますが、今すぐには無くせないんですよ。御存知の通り国民の8割、9割は自衛隊に好意というか、評価していますので。

田所  共産党の方々はいかがなのですか。

共産党 私たちだって憲法とは相いれないけど、敵視しているわけじゃないし。災害出動なんか大いに評価していますよ。

田所  災害出動が役に立つのは理解できますが、武装している自衛隊も是認なさっているわけ?

共産党 是認というか、憲法にはやはり相いれない。ですから解消を目指すんですけど、時間がかかるんです。明日政権に入っても国民がこれだけ「自衛隊が必要だ」と言っていると、いきなりは無くせないですよね。そんなことをやったら独裁になっちゃいますから。相当長い期間がかかるんですよ。そうしたら国民が自衛隊がなくても安心できる状態なるかといえば、やはり北朝鮮のミサイル開発ですね。あのようなことが解決するとか、中国の覇権主義的な行動がなくなるとかね、そういうことがないと、なかなかそういう世論にはならないです。平和な東アジアを作る外交を大いに共産党はやって、その条件を作る努力をしていきますけれど、時間がかかる。その前に私たちは「過渡期」と言っていますが、5年10年ひょっとしたらもっとかかると思いますよ。その間に仮に、そういう事態が起きたらどうするのかという話なんです。

田所  万一そう事態が起きたときに共産党は与党であったらという前提で仰ってるわけですか。

共産党 与党であっても野党であっても賛成するってことですよね。

田所  今は野党でしょ。

共産党 今、野党です。

田所  野党であってもあの憲法違反の自衛隊の存在に塩を送ると宣言なさるということですか。

共産党 認めるということですよ。

田所  (あまりの断言にやや間をおいて)日本国憲法の前文をもちろんご存知だと思いますが、その前文と9条は結びついてますね。にもかかわらず9条違反の自衛隊を認めないのに、侵略があった時には自衛隊の活動を認めると。その理屈はなかなか分かりにくいですね。

共産党 わかりにくいですか。さっき言ったように「過渡期」があると。

田所 「過渡期」というのであれば、共産党が自衛隊をなくそうとした時からが「過渡期」なのでしょ。

共産党 はいはい。

田所  今なくそうとするところにも至ってないんじゃないですか。

共産党 いえいえ、だから、なくそうとしていますよ。

田所  誰が?

共産党 私たちが党として。

田所  どういうふうに?

共産党 なくすために努力して、その為に平和な東アジアを作ることが大事なんですよ。

田所  でもあなたさっき仰ったけど、例えば北朝鮮の脅威、中国の脅威がなくなるようにということは外交努力で出来るかもわからない。けれども、今外交する立場に共産党はないわけですよね。いまは外交を司ってるのは自民党と公明党の連合政権でしょ。で彼らの延長線で良いということなんですか。

共産党 いえ、違いますよ。例えば夏に参議院選挙がありますけどそういうことをうちが掲げて……。

田所  いま仮に政権の座にいらっしゃったら、例えばロシアがウクライナに侵攻した。北朝鮮はミサイルを発射する。中国は軍備を増強している。これについてどう対処なさるんでしょうか。

共産党 例えばいま国会をやっていますけど、近々の課題はウクライナ問題ですよ。これは政府に質問をぶつけていますよ。外交的解決をするためにあるいは国際的世論を高めるために、日本政府として大いに努力しろと、いうことは常に言っていますよ。

田所  それは承知しています。ではなくて仮にですよ、いま政権の立場にあればウクライナ、あるいはウクライナがなくても危機と仰った朝鮮、中国に対してどのような外交を展開になさるんでしょうか。

共産党 中国で言えば、いま敵対しているわけですよね。中国とアメリカ、日本、豪州、インドとかなり軍事的な方向でやっているわけです。軍事演習も中国の目の前でガンガンやっているわけです。それではあかんと。たとえばASEANは域内で数十年来紛争しないと努力してきているわけです。ASEANを中心に東アジアサミットという枠組みがありまして、そこには中国もアメリカも日本も入っているわけです。その枠組みを利用して、中国も引き込みながらその中の話し合いで中国に「ちょっとやめとけよ」という話し合いをやって行こうと訴えています。

田所  中国の軍拡をちょっと収めてくれという訴えをするということですか。

共産党 順序がありますので、まずはそう言うところからはじめるというね。大事なのは信頼醸成ですよね。お互いに話し合って同じ方向で解決してゆこうと。急にこんなことはできるものではありませんから。で、最初の話でいうとそういうかなり時間のかかるプロセスがあると思うんです。その時に万が一攻め込まれた時、目の前で日本の国民が殺されかけているときに「自衛隊は憲法違反だからじっとしていろ」と、いう話にはならないですよね。

田所  なるかならないかは共産党のご見解です。憲法違反と言いながら憲法違反のやつらに武力行使を認めるというのが共産党の立場でしょう。

共産党 そうです、そうです。そういうことです。

田所  それを私は個人的には理解できないですね。憲法違反のものは憲法違反。憲法違反の人たちに何でもさせるということであれば、例えば刑法違反の人たちが何かを行っても認めると。刑法はもっと下位法ですから。

共産党 お宅様の立場は、そういう事態になってもじっとしていろと?

田所  日本国憲法に従う限りそうですね、仮に侵略があっても。

共産党 私たちはそれを責任のある政党の立場だとは思っていませんので。

田所  私は別に団体の代表でも何でもなくて個人なので、共産党が今まで自衛隊をすぐにはなくさないということを過去表明された事実も知っています。また国会の開会式には天皇がやってくることを理由にずっと出席をしなかったけれども、ある時期急に天皇が出席する国会の開会式に出席されるに至った経緯も知っています。ということは、どんどん右傾化してるんじゃないですか。共産党は。

共産党 だっていま仰いましたけど自衛隊のことは20年前ですよ。いまの見解を表明したのは……。

田所  だから20年以上前に明確に「転向宣言」出されたんじゃないですか。

共産党 そんなことないですよ。それはなんの絡みで言ったかといえば「9条の全面実施」という流れで言っているわけです。

田所  9条を全面的に実施するのに自衛隊を認められた。

共産党 うん。そういう国民的な疑問も出てきて、その中で改めて表明したわけです。

田所  だって「長沼ナイキ」って古い話ですけど、違憲判決もあったわけですよね。裁判所ですらが。控訴審でひっくり返っておりますけれども、それを共産党は認めるというわけですか。

共産党 何を認めるというのですか?

田所  だから自衛隊というもの自体が憲法違反だということを認めていながら、彼らが、仮に侵略者がいるとすれば武力行使することを認める、というご判断なんですね。

共産党 自衛隊が解消するまでの期間に、万一そういう事態があれば、ということです。

田所  なんでそんなこと今頃おっしゃるんですか。

共産党 だから……あなた自身も前から知っているとお認めになってるじゃないですか。

田所  いえいえ。志位委員長がどうしてこのタイミングで仰るのか。自衛隊をなくす間に、連立政権を実現するために共産党が自衛隊問題については「留保する」判断だと私は理解してたんですけど。

共産党 「留保」ではなく自衛隊が万一の窮迫性の事態の時には自衛隊を活用する、ということですよ。ちゃんと言っています。

田所  そんなことを胸張って言われたら余計にがっかりしますね。

共産党 22年前の22回大会で……。

田所  わたし党員じゃないから詳しいところまで知りません。だけども、22年前からはっきり言えば自民党と同じ主張をしていらっしゃったということですね。

共産党 同じじゃないですよ。違憲だというところは全然違う。

田所  違憲と言いながら、武力行使を認めるわけでしょ。違憲の武装集団が仮に攻撃を受けた場合の武力行使を認めるわけでしょ。それはごく基本的な論理的なところで矛盾じゃないかな。

共産党 個人で矛盾だと言う方々がいるだろうとは思いますけど、お宅様もたぶんそうなんでしょう。ただ私たちは政党ですからね。現実にそういう事態があってその時に自衛隊があって、訓練も積んでいると。スタンバイOKだというときにその出動を待てと。「お前ら憲法違反だから一歩も動くな」というのは政党としてはちょっと無理ですよ。国民の命がかかってるわけですから。

田所  国民の命がかかっている?

共産党 一方でそういう事態が起こらないように努力をしてゆくということです。

田所  分かりました。ありがとうございました。

例によってわたしと共産党のやり取りへの判断は読者諸氏にお任せする。ただし、わたしは共産党の言に強烈な違和感を抱いたことだけは強く述べておく。


◎[参考動画]日本共産党の躍進で日本の前途を切り拓く(日本共産党2022年4月7日)

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◆直接情報が一番の頼り

ロシアがウクライナに軍事侵略を開始して20日以上が経過した。紛争発生時に、自称「国際学者」や「軍事評論家」が言いたいことを無責任に言い放つ様子にはもう飽きた。なぜならば、短・中期的な分析ですら未知の情報を提示してくれる識者は極めて稀だからだ。

そして、ゼレンスキーウクライナ大統領が大手メディアでは英雄扱いされ、日本からも「志願兵」に70名余りの応募があったと在日ウクライナ大使は明らかにした。ゼレンスキー大統領は日本時間の3月16日にはカナダ、米国の国会でリモート演説を行い、日本でも今週、同様のリモート演説の実施に向けて、自民党と立憲民主党が前向きに協議中だと報じられている。私はバイアスのかかったニュースではなく、なるべく情報源に近づき、自らの判断を下そうと試みる。例えばウクライナ政府機関の発信や、ロシア政府の発信などである。中間にメディアが介在すると、いらぬ解釈が加えられるのでそれらは参考程度にしか利用しない。

ゼレンスキー大統領はFacebookとTwitterを利用しながら、かなり頻繁に発信を続けている。そしてキエフやその他のウクライナ国内在住のかたがたも、かなりの数動画を発信している。それらを総合して私は今なにができるのか、なにを考えるべきなのかを模索する。

◆誰がプーチンを擁護して、育てたのか

理由はどうあれ「侵略戦争」には反射的に嫌悪を抱く私は、ロシアの軍事侵略をやはり許すことはできない。そして20年以上実質上独裁者の座にあるウラジーミル・プーチンを支援してきた日本外交や、政治家の名前をしっかりと思いだし、彼らの言動を注視することは無駄ではないだろう。

日本外交の対ロシア最大の課題は「北方領土返還」らしい。私は本気で北方領土返還を実現したいのであれば、ソ連崩壊後独立国家共同体と名乗っていた間隙に机の下で数兆円を渡せば4島返還の可能性はあったと考え、20年以上そのように発信してきた。だが、この期に及んで「北方領土」などにロシアが関心を払わないことは、誰の目にもあきらかであろう。

米国のベトナム、アフガニスタン、イラク侵略に匹敵する、このような惨事を招致するに至った独裁者に世界でも有数の待遇で接していた、この国のかつての最高権力者がいる。安倍晋三だ。安倍は首相在任中あるいは官房長官など在任中にいったい何回プーチンと面会したことであろうか。首相在任期間中には27回と言われているが、非公式な面会を含めた回数は公開されていない。ロシア訪問の際は必ず経済援助の土産を下げて出かけて行き、2016年プーチンが来日した際には安倍の地元、山口県の高級旅館にまで招いて厚遇した。

◆安倍晋三の犯罪性を注視せよ

そして日本は何を獲得したのか? いま安倍は何を発言しているのか。「プーチンと仲の良い安倍にロシアへ行かせて停戦のために働かせろ」との声は政府内外にある。しかし、安倍がそんな役割を担えるような人間ではないことを、首相岸田も外相岸も熟知している。なにより仲良しであるはずのプーチンが核兵器の使用可能性に言及したとたんに、日本の「非核三原則の見直し」と「核シェアリング」(核兵器の共有、あるいは共同利用)との暴論を平気で発言し、岸田を慌てさせた。要するに安倍晋三によって日本はプーチン独裁を確固とさせる栄養を与えてしまい、にもかかわらず安倍にはその認識がまったくないということに、あらためて注目すべきだろう。

◆核兵器は使えない、原発も「地元核兵器」だ

そして私同様に「侵略戦争反対」の立場の人が、ウクライナを支援する気持ちは理解できるものの、それが即「憲法9条改正論」や安倍が唱える程度の「核兵器容認論」にまで結びつくのは、短絡の極みである。

今次のロシアによるウクライナ侵略により明らかになったことは、「核兵器」は実際には使用できない兵器であることと(一度核兵器が使われれば、攻撃の応酬で人類はおそらく破滅近くのダメージを受ける)だ。国連事務総長までが「核戦争の可能性」を憂慮する事態は「何者かが意図的であろうと、ミスであろうと核兵器を使用してしまえば、人類はもうあらゆるコントロールを失い破滅に向かう」ことへの世界的な恐怖に依拠している。

原発の危険性も同様だ。ロシアが侵略直後にチェルノブイリ原発を支配し、その後も主要な原発に手を伸ばしているのは、電力の首根っこを押さえるのではなく「地元の核兵器」を支配下に置くことが目的である。

◆好戦派への警告ゼレンスキ―大統領の言葉

このような状況下、総論ロシアの暴挙は米国によるベトナム侵略戦、アフガニスタン侵略、イラク侵略同様に非難されるのが道理だ。だがここでちょっといきりたち過ぎた日本国内の「好戦派」には警告を発しておこう。私の見解ではなく、米国議会でリモート演説を行いスタンディングオベーションで称賛を受けた、ゼレンスキー大統領の言葉だ。

「真珠湾攻撃を思い出して下さい。9・11を思い出してください」

9・11の実行者はともかく、真珠湾攻撃の当事者は誰でも知っている。日本だ。第二次大戦後の世界の枠組みで東西冷戦構造は崩れても、敗戦国である日本へのまなざしには変化がないことを、ゼレンスキー大統領は明言した。この言葉の含意は重い。どう答えるのだ。安倍晋三とその支持者よ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年4月号!

◆「医療問題」とは、言葉にしずらい日常的な関心事

健康状態が良好なときには、関心を持つこのと少ない「医療問題」。本人や家族が疾病や怪我で、医療機関にかかった際に、運が悪いと直面する。「医療問題」とまで大上段に構えずとも、医師や病院の信頼性や態度は、健康状態を悪化させている本人や家族にとって言葉にはしにくいものの、日常的な関心事だ。

人間はいずれ生命を全うする。その最終局面を医療機関(病院)で迎えることは今日常態化しているといってもいいだろう。医師や看護師の手厚く心のこもった治療姿勢の後に最期遂げる。その遺族は、医療機関が「業務」として提供したサービスであっても、悲しみの中「お世話になりました。本当にありがとうございました」と感謝の念を抱く。不幸の中にあってもこのような姿は、遺族にとっては一縷の救いとなり、感謝の気持ちで病院を後にする。

◆事件の経緯から裁判資料まで、医師と患者の間に横たわる諸問題を詳述

 

出河雅彦『事例検証 臨床研究と患者の人権』(2021年11月 医薬経済社)

ところが医療機関(病院)や医師の行為から不信感を抱かされると、患者の困難がはじまる。仮に命には別条のない施術や治療であっても、医師から納得のいく説明を受けることが出来なかったり、あるいは説明もなく治療を行われ、その予後が思わしくないと、患者には不信感が残る。病院を選ぶことのできる環境に生活する人であれば、病院を変えることができようが、そうではない患者にとって「不信感」をもって医者にかかることは、極めてフラストレーションの高い不健康な状態である。

さらに、病院(医師)の判断・行為で命を落とされたり、本来は避けられる副作用で苦しむことになったらどうであろうか。医師と患者の「絶対的服従関係」はインフォームドコンセントが常識化した今日、過去に比べればかなり改善されたといえようが、その陰には多くの患者・遺族そして医師自身の苦悩や闘いがあったことを、わたしたちは充分には知らない。出河雅彦氏の手になる『事例検証 臨床研究と患者の人権』(2021年、医薬経済社)は医師と患者の間に相変わらず横たわる問題の中でも、極めてデリケートな「臨床研究」と治療の問題について、発生した事件の詳細から裁判資料までを紹介する重厚な書物である。

◆6つの「医療事件」をめぐる緻密で膨大な調査報道

出河氏は、医師が適切な手順で患者を治療したか(プロトコール違反はなかったのか)? 臨床試験に「同意」は存在したか? なぜ日本では「人体実験」と区別のつかない「臨床研究」があとを絶たないのか? などを着目点に「当事者がどのような主張を行い、どのような結末に至ったのか」を詳述する。

6つの事件(愛知県がんセンター、金沢大学病院[2件]、東京女子医科大学、群馬大学病院、東大医科研病院)を追った出河氏の報告は「調査報道」に分類することも可能かもしれないが、当事者に取材し膨大な準備書面を提示する手法は、法律家の技に近いともいえる。

しかし出河氏がこのように緻密で膨大な資料を示した理由はわたしにも推測できる。一般の民事裁判とは異なり、「医療事件」は病院サイドが圧倒的に多くの情報を握っているために、内部告発者でもいない限り患者(遺族)側が対等な条件で闘うことが、極めて難しいからではないだろうか(実際に第二章「同意なき臨床試験」金沢大学病院では金沢大学の医師が「告発者」として活躍した事実が紹介されている)。また「プロトコール違反」、「臨床試験」といった基本的な概念の理解にすら、医師によってかなりのばらつきがあることも読者は学ぶことになる。

◆読者はまるで陪審員(裁判員)、裁判官の立場に置かれたかのような錯覚を抱く

「これでもか、これでもか」と叩き付けられるような証拠の山に、読者は陪審員(裁判員)あるいは裁判官の立場に置かれたかのような錯覚を抱くかもしれない。「良い」、「悪い」という単純な善悪二分法では解決することができない、しかしながら解決しなければ患者の人権擁護を確立することのできない、極めて困難な設問に出河氏は事例報告だけではなく、生命倫理研究者橳島次郎氏との対談で法制度の未整備について率直な指摘を展開している。

昨年まで朝日新聞の記者として、現場を飛び回っていた出河氏は最前線の記者だった。それにしては、文体が一般の新聞記者のように硬直していない。極めて入り組んだ医療最前線の問題を長年地道に取材し、新聞紙面では一部しか紹介できなかった取材成果を醸造、その成果の一部を纏めたのが本書といえよう。

余談ながら金沢地裁で争われた金沢大学(国)を訴えた遺族が提起した裁判の裁判長として、現在原発差し止め訴訟などで著名な井戸謙一弁護士も登場する。出河氏と井戸弁護士はその後、滋賀医大病院における説明義務違反訴訟で取材者と原告弁護団長の立場で再会を果たすことになったのは、本書とは関係ないが偶然とは思われない。

病院と無関係で一生を終えられるひとはいない。いま医療現場で問題になっている最先端の問題(最先端医療ではない)は何なのか、を知っておくことは、誰にとっても有益なことだろう。600頁を超える大著から学ぶことは多い。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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生きた。生き抜いた。それだけで充分価値があった。生き抜いた「生命」はもちろんのこと、残念ながら生物的には終焉を迎えた人々の「精神」にすら、それが輝いていた日々を思い起こせば「充分価値があった」のだ。

希薄で触感に乏しく、手で触っても質感・凹凸すらを感じない。色は不明確で、匂いもしない。それがこの時代の主流派(メインストリーム)の共通項だ。地球温暖化のために「脱炭素社会」を目指す一団であったり、「SDGs」とかなんとかいう国際的欺瞞を堂々と掲げている連中は全員その一味だと考えていい。

「新自由主義」は金融資本がやりたい放題狼藉を働くために、「米国流」と称する基準の世界への押し付けじゃないのか、と目星をつけていたが、「新自由主義」もどうやら質的変化を遂げたようだ。その正体、曖昧ながら反論を封じる回答が「SDGs」ということのようである。

近年耳にしなくなったが、「南北問題」という設問(あるいは課題)があった。地球の北側に裕福な国が集まり、おしなべて南側のひとびとは貧しいこと、を指す言葉だ。「南北問題」は解決したわけではまったくない。問題の位相が南北だけではなく、東西にも広がり尽くし「北側」の国の中にも貧困がどんどん拡大しつつある。「グローバル化」を慶事の枕詞のように乱発した連中は、相変わらず同じ題目を唱え続けているのだろうか。「南北問題」つまり「階級格差」の世界的拡大こそが、今日の困難を端的に指し示すひとつのキーワードであろう

その端では「国連」をはじめとする国際機関が、中立性や科学を放棄し、目前の銭勘定や政治に翻弄される姿も顕在化する。ほかならぬ「災禍の祭典」東京五輪を控えて、「わたしは五輪終了まで一切五輪についてコメントしない」と勝手にみずからを律した。

ここで多言を要せずとも、「東京五輪」がもたらした「返済不能」な負債は、財政問題だけではないことはご理解いただけよう。コロナウイルス猛烈な感染拡大の中、開催された「東京五輪」は、開催直前にIOCの会議にWHOの事務局長が出席するという、わたしの語彙では説明ができない狼藉・混乱の極みと、価値の喪失を堂々と演じた。ここでバッハであったり、テドロス・アダノムといった個人名を取り上げてもあまり意味はない。「五輪」をめぐる利益構造への洞察と徹底的な批判だけが言説としては有効だと思う。

「東京五輪」は単に災禍であった。あれを「それでもアスリートの姿に感動した」などと評する人がいるが、社会を俯瞰する視野をまったく持たない悲しい輩である。

選手村の食事が大量に捨てられたことが報道されたようだが、そんなことは当然予想された些末な出来事の「かけら」に過ぎず、小中学校の運動会が規制され、修学旅行が取りやめになるなかでも「世界的な大運動会」を恥じることなく行ったのが、「日本という国」であり、「東京という都市」だ。「レガシー」という言葉を開催のキーワードに使っていたようだが、資本の論理で巨大化したIOCと称するマフィアは、健康や感染症の爆発的拡大と関係なく「五輪」を今後も開きつづける、と「東京五輪」開催で高らかに宣言をしたのだ。それが連中の「レガシー」だ。

WHOもIOC、国連。一切が利権により不思議な律動を奏でる今日の世界。液晶の向こうには何でもありそうで、本当はなにもない日常。「繋がっていないと不安」な精神は逆効果として個人の精神をますます蝕み「繋がること」と「疎外」が同時に成立する不可思議。なにかの「終焉」が足音を早めると感じるのはわたしだけだろうか。

生きた。生き抜いた。それだけで充分価値があった。生き抜いた「生命」はもちろんのこと、残念ながら生物的には終焉を迎えた人々の「精神」にすら、それが輝いていた日々を思い起こせば「充分価値があった」のだ。

本年も「デジタル鹿砦社通信」をご愛読いただき、誠にありがとうございました。2022年が読者の皆様にとって幸多き年となりますよう、祈念いたします。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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