2018年7月12日付け日刊スポーツ

◆本質とまるで正反対な2020年「復興五輪」

〈2020年東京五輪・パラリンピック調整会議が12日午前、都内で行われ、東京五輪聖火リレーの出発地点を福島とし、開始日は20年3月26日と決定した。大会組織委員会の森喜朗会長が提案し、小池百合子都知事、鈴木俊一五輪相ら関係団体のトップが集まる同会議で了承された。〉(2018年7月12日付け日刊スポーツ)

そうだ。こう来るだろうと予想した通りだ。2020年東京五輪はその本質と正反対に「復興五輪」と、まったく虚偽の謳い文句で持ち上げられている。7月12日の新聞各紙の見出しには「トリチウム汚染水海へ」の文字がある。(2018年7月12日付けNHK)

 

2018年7月12日付けNHK

福島第一原発敷地内に溜まりにたまった汚染水の処分方法がないから、「希釈して海に流す」と東京電力はいよいよ本格的に準備をはじめるようだ。希釈したって毒物には変わりはない。希釈したら毒性が問題なくなるようなレベルの汚染水だったら、わざわざ山ほどの貯蔵タンクを敷地内に無計画にどんどん建てて、保管する必要はなかったではないか。

世界初の原発4機爆発を引き起こした「東京電力」でさえ、「汚染水は海には流せない」と判断したから貯蔵タンクに保管していたのだろうが。危険物質は既に膨大な量が海や地下水に流れ出している。貯蔵タンクに保管されている汚染水よりもその総量は多いかもしれない(正確に測定で出来ないので断言はできないが)。行政が測定するとほとんど「基準値以下」か「検出基準以下」の値しか出てこない。そんな馬鹿なことがあるか。

原発4基が爆発して、そこから放出された放射性核種の量が、「健康に問題ない」のであれば、どうして病院のレントゲン撮影室の前には「妊娠の可能性のある方は申し出てください」と書かれているのだろうか。甲状腺がんは通常、100万人あたり1~3人が発症の割合とされるが、福島県を中心に既に200人以上の発症が確認されている。誰が見たって、事故との因果関係は明らかであるが、一部の科学者や専門家に言わせると「スクリーニングを丁寧に行ったからだ」(普通行わないほど多くの子供の検査を行ったから発症がわかった)と、素人が呆れるような稚拙な嘘を平然と口にする。「福島県内の医療機関はすべて福島県立医大の支配下にあり、自由に診断もできない」と多くの医療関係者が嘆いている。医師が抑圧されていたら、まともな診察や治療が行えないじゃないか。

残念で残酷至極だが、福島を中心とした汚染はいまだに「すぐ逃げなければならない」レベルから下がってはいない。そこに汚染水の海への放出が加わればさらに環境は汚れる。

◆猛暑の中、汚泥をスコップですくい上げる時の重さ

なにも解決も改善もしていないじゃないか。西日本を襲った豪雨の被害は目に見えやすいので、その惨状が一葉の写真であれ、映像であれ目にすれば容易に被害の深刻さが理解される。あの惨状を目にして「直ちに健康に影響はない」という人はさすがに居ないだろう。

西日本の豪雨による被災者の皆さんは、猛暑の中激烈な日々を過ごしておられる。スコップで水を含んだドロをすくい上げるときの重さは、経験したことのある人には、簡単に理解されるだろう。その作業を避難所で寝起きしながら、猛暑の下続ける負荷はいかばかりか。

かたや、福島を中心とする放射性核種による汚染地域では、その汚れや危険性が目に見えない。目に見えないだけではなく、危険性を知らせようとしない(隠蔽しよう)とする巨大な力が、国ぐるみで綿密に準備され、即実行されている。その最大の隠蔽工作が「2020東京五輪」である。「オリンピックが政治そのもの」であることは、冬に開催された平昌五輪で朝鮮が参加を表明し、女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成され、その後に南北首脳会談が板門店で実現、さらに電光石火で6月にはシンガポールで米朝首脳会談まで実現させた、ダイナミズムが記憶には新しい。

行く末は明瞭ではないが、ほとんどの人が予想さえしなかった米朝首脳会談の実現は、歓迎すべき出来事であり、それが「オリンピックの政治性」によって誘引されたのだとしたら、オリンピックの政治性は評価に値する。しかし多くの場合、オリンピックの政治性は「和平」や「融和」ではなく、国威発揚や国内問題の封印のために力を発する。1969年の東京五輪、モスクワ五輪やロスアンジェルス五輪、北京五輪には濃厚にその側面が表出していたし、古いところではミュンヘン五輪では選手が政治的文脈で殺される事件も起きている。

「2020東京五輪」は資本主義最終末期・人口減にあえぐ、日本の権力中枢が、国家破綻の引き金にもなりかねない「福島第一原発事故」隠蔽と、嘘っぱちに紛れた虚飾の美辞麗句で一儲けを企む金の亡者との結託により開催が目論まれる、反人民的、打史上比類ない悪意に基づく悪行集合体である。

東京でオリンピックを開催したら、それがどうして「復興」と関係があるのか。まずはこんな単純極まりない問いを、少し頭を冷やして考えれば、その欺瞞性は理性ある人には理解できるはずだ。聖火リレーの出発点か通過点か知らないけれども、そんなことを画策する者どもは、福島の人々の本質的被害から目を逸らさせようとする極悪人ばかりである、と私は断じる。

「2020東京五輪」は人倫的犯罪である。私は断固反対するし、「2020東京五輪」のスポンサー、待ちのぞむマスコミ、何気なく乗せられる庶民に対して、明確に異議を明らかにする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』8月号!

『NO NUKES voice Vol.16』明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

国会議員の事務所に質問や、疑問があって電話をしたら9割以上「お答えしかねます」か「貴重なご意見として伺っておきます」との回答が返ってくる。ご多忙な読者諸氏には、そんな馬鹿なことに時間を費やす余裕もないであろうから、7月9日の本通信でお伝えした「赤坂自民亭」について、片山さつき議員の事務所に電話をしてみた。

事務員 片山さつき事務所コールセンター××でございます。
――  お邪魔致します。真偽だけ教えていただきたいのですけれども、インターネットで片山先生が7月6日、大雨が来ているときに「赤坂自民亭」との新人議員との懇親会をなさっていて、それをツイッターに上げていらっしゃったのは、間違いないのでしょうか?
事務員 そうですね、あのー「コールセンター」で電話を受け付けておりますので、事務員の者から確認次第折り返しお電話させていただいてよろしいでしょうか。
――  失礼しますが「コールセンター」というのは片山先生の事務所に「コールセンター」があるのですか。
事務員 あ、そうですね、私事務所の者ではないので、あの……。
――  「コールセンター」ってそちらは大企業なんですか。国会議員の事務所に電話をかけて「コールセンター」などといわれたのは初めてですよ。
事務員 あ、恐れ入りますが、そのように、あのー……。
――  誰のお金であなたは雇われているのですか。「電話の受付担当」と言われるのであれば分かりますが「コールセンター」?
事務員 失礼しました。受付でございます。
――  では「コールセンター」は撤回しますか。
事務員 はい失礼いたしました。
――  撤回するのですね。何十人もいるわけではないのですね。
事務員 はいさようでございます。
――  電話の受付の方は何人いらっしゃるのですか。
事務員 いまは私でございますが。
――  おひとりですね。
事務員 はいさようでございます。
――  ほかに事務所の方はいらっしゃらないのですか。
事務員 さようでございます。
――  あなたおひとり。
事務員 さようでございます。
――  あなたの目のまえにパソコンはありますか。
事務員 パソコンでございますか。
――  はい
事務員 真偽についてのお尋ねと言うことで……。
――  いや、パソコンはあるんですね。
事務員 パソコン、はい。
――  それでは片山議員がツイッターで何を書かれているかは、確認できますね。
事務員 申し訳ございません。私は今そのようなことはできかねますので。
――  は?
事務員 私の方で調べることはできかねます。
――  なぜできないのですか。私にできてなぜあなたにできないのですか。
事務員 申し訳ございませんができかねます。
――  どうしてできないのですか。それは技術的にできなのですか。
事務員 いまあのー、私、受付の者ですので、それ以外のことはできかねます。
――  じゃあ、なんのために目の前にパソコンがあるんですか。
事務員 あのー……。
――  シンプルなんです。片山先生が「赤坂自民亭」と言う名前で、自民党の議員の方々、大臣の方々が宴会を開いている写真を掲載されたのが、事実かどうかだけを確認させていただきたいのです。
事務員 かしこまりました。それは事実について正しくお話しできる者から折り返しお電話さしていただいてもよろしいでしょうか。
――  申し訳ないけれども、これは100歩譲った質問をしているのです。そのことはニュースで報道されていますよ。「在るもの」をなぜ「在る」と認めていただけないのですか。
事務員 「在るかどうか」につきまして、きちんと状況説明できる者から、折り返しお電話さしていただければと思うんですけれども。
――  それは結構ですが新聞でもニュースで出ていますよ。ではあれは嘘ですか。
事務員 ニュースが正しいのかどうかはわからないので……。
――  私にお答えただけなくてもいいですよ。でも片山先生のツイッターには、今でも残っているじゃないですか。
事務員 さようでございますね。
――  でしょ。
事務員 さようでございます。
――  私はその意味とか、それがどういうことか、ではなくて、その書き込みが「在るのかないのか」とだけ聞いているだけです。
事務員 はい。
――  だからありますね。
事務員 さようでございますね。
――  酷いと思いませんか、あなた。
事務員 (沈黙のあと)はい、あのーおっしゃっていることはわかりますが。
――  やはり、優しい感性を持っていらっしゃたら酷いと思われますよね。
事務員 おっしゃっていることはわかりますが。
――  大災害の中で多くの人が恐怖心を抱いているときに、こういうことをなさっていた神経がどうなのか。はいま電話に出て頂いている方も、私と同じような疑問をもっていただけるということでしょうか。
事務員 はい、おっしゃっていることは、はい、わかります。
――  ありがとうございました。

議員事務所に電話をしたら「コールセンター」といわれ、股関節が外れそうになった。が、よく聞けばたった一人の受付担当の方であった。その後のやり取りについてのご感想は読者に委ねる。

私は呆れた。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

〈風にたなびくあの旗に 古よりはためく旗に
意味もなく懐かしくなり こみ上げるこの気持ちはなに

胸に手をあて見上げれば 高鳴る血潮、誇り高く
この身体に流れゆくは 気高きこの御国の御霊

さぁいざゆかん 日出づる国の 御名の下に

どれだけ強き風吹けど 遥か高き波がくれど
僕らの燃ゆる御霊は 挫けなどしない

胸に優しき母の声 背中に強き父の教え
受け継がれし歴史を手に 恐れるものがあるだろうか

ひと時とて忘れやしない 帰るべきあなたのことを
たとえこの身が滅ぶとて 幾々千代に さぁ咲き誇れ

さぁいざゆかん 守るべきものが 今はある

どれだけ強き風吹けど 遥か高き波がくれど
僕らの沸る決意は 揺らぎなどしない

どれだけ強き風吹けど 遥か高き波がくれど

僕らの燃ゆる御霊は 挫けなどしない

僕らの沸る決意は 揺らぎなどしない〉

 

RADWIMPS『カタルシスト』

別段驚きもしない。むしろ「やっぱりそうだったか」という程度。くしゃみが出る前、鼻のなかで痒いような、くすぐったいような不快さに似たような感覚とでも言おうか。

読者諸氏はご存じであろうけども、上に紹介した私からすれば「頭が修正不能にどうかした」人間の錯乱。“時代錯誤”な言葉の羅列ではあるが、同時に“時代の先端感覚”であることもまた確かである心情の吐露は、RADWIMPSが、「HINOMARU」とズバリの名を冠して作詞、作曲したものだ。正確には同グループの野田洋次郎の手になる楽曲である。

私はもうかなり前だが、若い友人がRADWIMPSのファンで、熱くその素晴らしさを語ってくれたうえで、何曲かを聞かせてもらったことがあった。「あ、また、この手の奴らか……」と内心はちょっと不快ではあったけれども、若い友人には悪いので「ふんふん」と聞いていた。ただ「野田君は帰国子女で慶応にもいってすごいんだよ」と持ち上げるので「『帰国子女』と今は言わないよ。『帰国学生』ね。それから『帰国学生』みんなが優れているというのは、誤解だよ」とだけ話した記憶がある。

若者から広い支持を受けているRADWIMPS。彼らの楽曲数曲を聞いただけ、どうして直感的に私は気持ち悪かったのであろうか。あえて同類の経験を挙げれば、その昔X-JAPANというバンドに同じような気持ち悪さを感じたことがあったことを思い出す。

かといって私はRADWIMPSもX-JAPANも楽曲をろくに聞いたことがない。というより聞きたくない。優れた音楽性を持っているのであろうが、彼ら(RADWIMPSとX-JAPANは音楽に詳しい人には全然異なるグループであるのだろうけども)の楽曲からは、「ベールに隠された国家のようなもの」を直感してしまうのだ。そしてそれはRADWIMPSを熱心に聞く若者たちへの私の不安にも共通しているように思う。

映画「君の名は」が少し前に大ヒットした。観に行こうかな、と思った。知人にストーリーを聞き「音楽がハイテンポのRADWIMPSで良かった」と聞いて観る気がなくなった。実はそれくらいに私はRADWIMPSを無意識に嫌悪していた。X-JAPANも同様だった。当時仲の良かった私より年上の韓国からの留学生が「X-JAPANは凄いわ。いっぺん聴いてみ」と言ってくれたので、貸してもらったCDを車の中で聴こうとしたが、10分持たなかった(その後X-JAPANのYOSHIKIが「平成天皇在位10年の祝賀行事」に招かれる)。何かが気持ち悪いのだ。

そんな中6月26日、RADWIMPSのコンサートが神戸で行われるので「HINOMARU」を気に入らない人たちが抗議行動を行おうとしたら、1名が不当逮捕されたとのニュースに接した。

私は相矛盾するようであるが、「あんな連中」(RADWIMPS及びそのファン)に抗議をしてもまったく無駄だと考える。何故ならば、野田は「HINOMARU」にかんして「……日本に生まれた人間として、いつかちゃんと歌にしたいと思っていました。世界の中で、日本は自分達の国のことを声を大にして歌ったりすることが少ない国に感じます」と述べ、「まっすぐに皆さんに届きますように」と書き込んでいた「確信犯」だからだ。

野田は私の敵であり、そのファンも敵だ。さらに言えばそれが広く受け入れられる時代そのものが、私や私と同様に考える人たちを「殺しに」かかっていると体感する。「HINOMARU」の歌詞が明らかになった時、私はかつて私にRADWIMPSを教えてくれた若い友人に「私はあなたたちからこのように『殺されかけています』」とメールを送った。返信はない。

「表現の自由」だの、「国を愛して何が悪い」、「批判するのが間違っている」とRADWIMPSには「正しい」擁護論が多いそうだ。結構。私はその「正しさ」自体が気持ち悪く、「正しさ」に完全包囲されてしまったと感じる。早い話がもう手遅れなのだ。RADWIMPSよ! 堂々と「HINOMARU」を歌いまくれ! 時あたかもサッカーワールドカップで日本代表が16強に勝ち残り、無残に敗退したけれども、渋谷にはパブリックビューに若者が詰めかけ、試合の何時間も前から「君が代」を歌って盛り上がっていた。「愛国心」が大いに燃え盛っている最中だ。

ワールドカップが終わっても、NHKで毎日「HINOMARU」を何回も流せ!だって「正しい」んだから。震災後にひとびとを騙した「花は咲く」のように。一刻も早く日本が改憲できるように! 自衛隊が「日本軍」になれるように! 再び朝鮮半島や中国、アジアに侵略できるように! そして侵略したアジア各国に、現地の人の気持ちを踏みつぶして再び「日の丸」をはためかせる日が来るように!

RADWIMPSもファンもそう望んでいるのだろう? ちがうのか?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』8月号!

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

大雨により河川の氾濫や土砂崩れにより被災された方々、被害にあわれた方々には、あらためてお見舞いを申し上げます。あと片付けは途方もないエネルギーを使いますので、一転して高温に見舞われ蒸し暑いなか、くれぐれも皆様体調管理にはご留意くださいませ。

大雨による大災害に西日本が見舞われる中、週明けの9日午前、東京の知人が「テレビを見ても何も起きてないように見える。NHKは普通に番組をやっているし、形だけでも安倍首相が作業服を着ている姿もない。民放の方がまだましだ。日本で起きている災害よりも、タイで洞窟に取り残された子供たちの報道の方が印象深いくらいだ」と教えてくれた。


◎[参考動画]上空から見た豪雨被害=広島(時事通信映像センター 2018/07/07に公開)

◆国内で100人死んでも他人事かのような首都圏メディアの異常

関西では先週末から8日にかけて、NHKや民放も一時通常番組を切り替えて、災害情報を伝えていたようだ。中国、九州も同様だったらしい。しかし、意図的なのかそうでないのかはわからないが、東京(中央)と被災現地には情報量と、被災実感の凄まじい差があるようだ。先の知人は「永田町にいると、災害に対して鈍感になるんですよ。国会周辺は高台だから水害の恐れはないし、東日本大震災時も国会が丁度開かれていましたが、あの程度(東京でも死者が出たが、国会議事堂に被害が出ることはなかった)の揺れでしょ。これは恐ろしいことだなと思いました」と続けた。

このたびの大雨は自然災害であるから、誰にも止めることはできなかった。その点で、あらかじめ人間の意志で防ぐことができる原発の事故とは性質が異なる。台風、地震、大雨、竜巻……。自然現象は一部を予想することはできても、それを止めることはできない。私たちは地面があり、山がそびえ、川が流れる地形が「動かないもの」である前提で、住み家を建て生活している。でも日本列島に限らず地球上のあらゆる表面(陸地、海を含め)は、地球全体から見れば、実に薄っぺらい「地殻」の上に乗っかっているにすぎない。

地球の直径は12,742kmで日本列島の長さ(3,328km)の約3.8倍ほどだ。それに対し地殻の深さは5-6kmといわれるので、高熱の「内核」、「外核」、「下部、上部マントル」と、厚さを比べれば、地殻は「卵の殻」のように薄いものであることがわかる。

薄い卵の殻の上で、造山運動が起き、プレートが動き、降雨で山が削られる中で、現在の陸地や地形が形造られてきた。私たちの生命は長くとも100年ほどだが、地球は何十億年を費やして現在の構造に至っているのであり、その動きは今でも止まっていない。だから地震が発生する。動きが続いている「卵の殻」の上で私たちが生活している実感は、地球史的時間からは測定できないような短時間であるが、地球は「動いている」ことは再確認されてよいだろう。

そして、天候については予報技術がかなり向上してきたので、台風や大雨にはかなり細かい注意報や警報が出されるようになった。多くの人が持つ、携帯電話に直接警報を伝える手段も進化している。それでも9日までに死者116人、安否不明者80人超、2万人超が避難している未曽有の事態(しかもこの数字は時刻ともに変化するだろう)を防ぐことはできなかった。

河川の氾濫は個別の河川によって、若干事情の違いがあるかもしれないが、気象観測史上は例のないほどの大雨が降った、そのことが大災害の原因である。警報は豪雨の中何度も鳴った。できうる予報と警鐘は大雨の前から伝えられたけれども、どの地域でどれ程の被害が出るかまでは、人知の及ぶところではない。無数の国民が不安の最中で気が気でないとき、このようなことに興じていた人間たちがいた。

◆異常気象以上に深刻な安倍内閣の「異常神経」

7月5日、既に大雨が降り始めていた最中、醜悪な笑顔で宴に興じる連中の姿を全国民は、しっかりと心に刻むべきだろう。大雨は「8日頃まで続く見込み」であると天気予報は何度も警告を発していた。さらに関係なさそうではあるが、6日7名の死刑執行を行うことに了承した上川法相は「7月3日に死刑執行に署名した」と死刑執行後の記者会見で述べている。

「7名の国家殺人遂行」を命じたあとに、このような馬鹿馬鹿しい写真に笑っておさまることができるのが上川であり、深刻な災害到来が確実な中、笑ってワインを飲んでいられるのが安倍の正体だ。

別に「会合を慎め」とまで私は思わない。でも仮定して考えてみよう。「7名の人殺し」を明日に控えた上川の立場がもしあなただったら、笑って馬鹿げた宴会に興じることができますか? なにかが心に引っ掛からないだろうか?

首相安倍には、豪雨被害が確実な時期に、首相として国政とは無関係の「若手議員との懇談会」にどうして「初参加」する動機が生まれるのだろうか?

「異常気象」とか「記録的な」と大雨は表現されている。確かにそうだろう。しかし、この連中の「異常神経」も同様ではないか。「7名の人殺し」は自然災害ではない。その執行を言い渡した上川は、執行の前日に宴に興じている。安倍の顔もある。安倍が「災害対策本部」を立ち上げようが、陣頭指揮に立とうが、被害に変わりはなかったろう。にしても、もう少し、人間としての配慮や慎みを感じる神経は持てないものなのか。安倍自身が改悪した教育基本法により、教科化された「道徳」をこの連中は微塵も持ってはいないではないか。醜悪の極みだ。

あらためて災害被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げます。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

7月6日早朝から「麻原彰晃死刑執行」のニュースが、列島を襲う大雨情報の中を狙ったかのように散発的に報じられ始めた。オウム真理教関連の死刑確定囚は13人。そのうち実に7人の死刑がこの日正午までに執行された。

オウム真理教関連の死刑確定囚は3月に東京拘置所から、全国の「死刑執行」施設のある拘置所に移送されており、「東京五輪前に一斉執行があるのではないか」と関係者の間では推測されていたが、「東京五輪前」どころか国会会期中で、全国的気象災害が懸念される非日常的天候の中、戦後史最大人数の「同日死刑」が執行された。

◆「人の死を止められなかった」経験から死刑制度を考える

私は「死刑廃止」論者である。

どんな悪党でも、何人殺人を犯そうが、国家による死刑には絶対反対である。理由は簡単だ。「人を殺す」ことは(正当防衛や殺意のない過失致死などを除いて)、絶対にあってはならない「悪行」である、と確信するからだ。この議論になると必ず「じゃあお前の家族や子供が殺されたらどうする?」という問いを投げかけてくる人が多い。私の回答は、

「私はたぶん殺人者に敵意や殺意を抱くだろうが、私的復讐感情を吸収するのが、成熟した法治国家の姿である。私が殺人者を殺せば、復讐感情の連鎖が起こる。『感情』の問題と『法』の問題を混乱させるべきではない」

である。表面的に格好をつけているように聞こえるかもしれないが、私は過去に、「ひとの死を止められなかった」経験がある。それも複数人である。私がもう少し注意深かったら、神経が繊細であったら、忙しくなかったら彼ら・彼女らが命を失うことを止められた可能性がある。つまり私は人の死に積極的に関与したわけではないが、自然死ではない「死」を止めることができたかも知れない立場の人間であった。その経験は私をいまだに「縛って」いる。ときどきに彼ら・彼女らの顔や言葉を思い出す。私は「殺人犯」としての責任はなかったにせよ、彼ら・彼女らの命を「途絶えさせる」ことに関係した責めを負って生きている。

と同時に私は殺意に近い感情を長年抱いている対象者が複数いる。私を「殺そう」と企図した人間や、私を破滅させようと徒党を組んでいた連中である。しかし、私は前述の原則に則って、絶対に怨嗟による「殺人」を犯さない、と決めている。決めているが情念の部分では「憎い」ことに変わりはない。

後先考えずに「殺(や)ろう」と思えば、「殺(や)れた」瞬間はいくらでもあった。が、愚かな私でも社会を学び、世界に接し、法に触れる中で「殺人」には絶対に手を染めてはならない、と確信が持てるようになった。「殺人」は個人による殺意に基づく「殺人」や、権力による法を後ろ盾とした「殺人」(死刑)、さらには国家間の意思による「大規模殺人合戦」(戦争)があり、それらは規模や動機の違いはあれ「人を殺す意思を持った行為」である点においては共通ではないのか。であるならば「公の言い訳」を与えられた大規模殺人合戦(戦争)は、ほぼ「絶対悪」(侵略者に対する抵抗など少数を除き)であるとの結論に至った。

回りくどいようであるが、「戦争」を嫌悪し、忌避するのであれば、「死刑」にも反対せねば理屈が一貫しない(世間では「戦争」も「死刑」も賛成の言説が増えているようである)。極めて簡単な論理なのだが、いまだに「被害者の復讐感情」を過剰評価する、精神性から抜けきることができない日本文化では、まだ「死刑」が存置されている。私は被害者感情を「無視しろ」、「放置しろ」と思ってはいない。私自身、殺意に基づいて「殺され」かけた経験があるので、被害者感情の一端は理解している。だから被害者感情は「死刑」ではない、それこそ国家によるケアーで解決が目指されるべきものであると考える(被害者感情が解消できるか解消できないかは、簡単な問題ではないが)。

ようやく日弁連も「死刑廃止」を遅まきながら方針として打ち出した。繰り返すが理屈は簡単だ。「人殺し」は「悪」なのだ。「人殺し」に対する処罰が「人殺し」であるのは、明白な矛盾であり倒錯だ。

◆オウム真理教はなぜ権力から放置されたのか?

この期に及んだので当時からの疑問を披歴する。オウム真理教はどうしてあそこまで肥大化し武装するまで、権力から放置されたのか? オウム真理教が急成長したのは、新左翼対策に大幅な人員増がなされた公安警察や公安調査庁の人員が余り、彼らが「仕事」を探さなければならない時期であった。新左翼の退潮により「仕事を探していた」はずの公安警察、公安調査庁は、1989年に坂本堤弁護士一家殺人事件を起こし、素人目にも危険性が明らかであったオウム真理教をどうして、監視対象にしなかったのか(公安調査庁に対しては「廃止論」が現実的に議論されていた時期でもあった)。

ヘリコプターや武器材料をロシアから輸入していること、ロシアでも広範な布教活動を行い現地から短波ラジオ放送を行い、マフィアと結びついていたことを、公安警察や公安調査庁は、本当にまったく知らなかったのか。この点がどうしても納得できないし、なによりも不自然である。

同日7人の死刑執行という「国家による暴虐」が行われた日に、他人事としてではなく「死刑」を考えよう。その延長線上に、おぼろげであった輪郭が像を結びだしてきた「戦争」があるのだ。内に向けては「死刑」、外に向けては「戦争」。国家の実像がそこにある。


◎[参考動画]オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(63)ら7人の死刑執行を受けて「ひかりの輪」の上祐史浩代表が会見(ANNnewsCH 2018/07/06公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
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本日発売!月刊『紙の爆弾』8月号!

20年周期で発生する「オウム」的なもの=日本の暗部にわれわれは今、どう立ち向かうべきなのか?『終わらないオウム』上祐史浩・鈴木邦男・徐裕行=著 田原総一朗=解説 四六判/256ページ/上製/カバー装 定価:本体1500円+税

どこから情報を掴むのかわからないが、いわゆる「架空請求」のメールが時々やってくる。以前は日に数百を超えることもあったが最近では数カ月に一回程度には減って入る。私は送り付けて来る文面自体が気に入らないので、徹底して電話をかけまくり、悪徳詐欺を働く人間を追い詰めて、実際に何件か潰したこともある。しかし世間での「架空請求」詐欺被害はいっこうに減らないようだ。

下記会話は数年前、私の居住地の警察署に「架空請求」の情報を提供したときの会話である。それ以前にも110番通報や電話で何度か警察には情報提供をしていたが、会話にもある通りひどいときは「民事事件は警察の管轄ではない」と言って切られたこともあった。今回はそのやりとりの後編だ。

―― そんな役人みたいなこと言わないで。お巡りさんは鉄砲もってますよね。
警察 ただ持たされてるだけですけどね。
―― 力があるわけでしょ。
警察 そこまでの力はないんですけどね。
―― いえいえ、捜査をする力はあるでしょ。あなたお一人ではなくとも警察として、こういう詐欺事件に緊急に対応する力を持っていらっしゃるでしょ。
警察 当然刑事の方ではそういう形で、対応させていただきますし、安心していただいたらいいと思います。
―― 私はいいんです。私ではなく、ほかの人が引っかかってからでは遅いでしょ。「警察に連絡してください」ってあちこちのポスターに書いてあるじゃないですか。
警察 そうですね。
―― それが電話したら「なかなか……」って言われたら、どうしたらいいのか、となりますよ。
警察 早急に上の方には伝えときますんで。ご住所から伺っていいですか?
―― ○○市の○○と言います。
警察 ○○市以下の住所伺っていいですか?
―― こんないい加減な対応されたら住所までいうのは怖いわ。ちゃんと「やりますよ」と言ってくれたら住所いいますよ。はっきり言いますが、情けないですよ。私は被害申告をしているんですよ。
警察 まあ、たしかにそうなんですけど。
―― そうでしょ。それを「ご意見として伺っておきます」っていうけど意見じゃないですよ。被害申告なんですから。
警察 ご意見というのは別の話で、「電話などの凍結をしろと」とか。
―― 私は「電話の凍結をしろ」なんって一言も言ってませんよ。とにかく電話一本かけて事情を聴くのは令状もなにもいらないでしょ。
警察 うーん……。
―― 要らないよ。痴漢でもなんでもあれば、「あなたどうだったの?」と事情を聞きに行くでしょ。同じじゃないですか。
警察 これが詐欺のメールだというのは、こっちも重々承知なんですよ。
―― でしょ。なら確証もあるわけですね。私は踏み込めとか、検挙しろといってるんじゃなくて、「あなたたちなにをやっているのか」と電話一本入れるだけでも違いますよ。なぜかといえば、警察ではない私が電話したって、そのあと違うんですから。私は民間人ですよ。民間人の私が架空請求の詐欺を2、3件潰したことあるけど。
警察 2、3件。おおお。
―― 「おおお」じゃないでしょ。そんなところで感心されたら困るんですよ(笑)。おまわりさんがしっかりしてくれないから私が電話かけなきゃいけない。かけたくないですよ。電話代使ってね。お巡りさんたちがしっかりしてくれないから私が自腹で電話をかけなきゃいけない。しっかりしてくださいよ。頼みますよ。
警察 おっしゃる通りだと思います。
―― おっしゃるとおりって(爆笑)。「それは違います」と言ってくれたら安心できるけど、「おっしゃる通り」といわれたら、全然信用できない。どうすればいいんですか、市民は?
警察 たしかにこのメールは何千何万という人に連絡して、その回答を待ってようなやつなんですよ。
―― そうよね。
警察 それで、これが本当のものだと勘違いした人だけを対象にしたものなんですよ。
―― 知ってます。
警察 基本的には無視していただく、っていうのを警察は指導させていただいているんですよ。電話番号も何千何万とありまして……。
―― だけど、これはいま申し上げ上げたけれども、インターネットで検索すれば、この番号自体がたくさん……。
警察 それもね、1つだけじゃないんですよ。
―― 知ってます。知ってます。日替わりで変わるし、2、3日しか営業しないわけでしょ。
警察 そうなんです。2、3日しかしないです。
―― だから2、3日のうちに止めておくことが大切でしょ。
警察 そうなんです。それが早急にね、できる……
―― なんで民間の私にできてお巡りさんにできないの?
警察 あのー、できるっていうのはあれですよね?
―― 電話をかけるだけで向こうは萎縮するんですよ。
警察 ああ、萎縮するということですか?
―― そう。
警察 ほー。
―― 私は弁護士に相談してやったこともありますよ。本気で(振込詐欺を)防止しにいきなさいよ。
警察 たしかにおっしゃるとおりですね。
―― なんで民間人の私が電話代を払ってそれをしなきゃいけないの?
警察 あー。
―― 「あー」じゃないよ。
警察 おっしゃられていることも一理ありますね。
―― たしかにこのあたりはお巡りさんの数も予算も少ないとは伺っているので、お忙しくて大変だろうとは思うけど、それでもこれはのんびりほおっておいたらいいものではないでしょ。
警察 そうですね。これについては防犯指導が必要ですね。電話番号をとめたからといって、すべての方の意識づけをまずかえたほうがいい。
―― いや、それは別の話。もちろん広報とかは必要でしょう。けれども年を取ってわからない人に広報してもわからないでしょ。だからいつまでたってもなくならないわけでしょ。
警察 そうですね。
―― 元から断つのは申し訳ないけども、意識づけだけではできない。モグラたたきのように、出てきた奴を警察に叩いてもらうことをやってもらわないと仕方がないわけでしょ。
警察 まず刑事の方に上げさせていただきます。
―― これ以上は申し上げませんけど、上に早く上げてください。
警察 本当に貴重なお話だったんで。
―― だから、本当はね、あなたに気概があったらすぐに電話しないといけないよ。こんなの職務規定違反でもなんでも何でもないんだから。一般市民から連絡が来て、詐欺の電話の話がある。インターネットにもその番号は載っていると申告がある。そちらの署のなかにパソコンが1台もないわけじゃないでしょ。
警察 そうですね。もちろんそれ分かってるのは当然のことやと思うんですよ。それが詐欺で別のところにも相談があるようなものだと思いますので。
―― だから「当然のこと」と気にしているんじゃなくて、1件1件しっかり潰していく。悪い奴は。
警察 なるほど。
―― 「なるほど」じゃないよ(爆笑)。○○さんは元々○○県の方ですか?
警察 ええ。
―― そうか。○○県の人おっとりして性格の良い方多いもんね。
警察 出身は違いますけどね。
―― ご出身は?
警察 ○○県ですね。
―― そうなん。関西弁上手ですね。
警察 ま、ま、ま、妻ももらってますしね。
―― 幸せやな。
警察 いえいえ。でも本当におっしゃることは当然のことやと思いますし。
―― だから思ってもらうだけじゃなくて、お巡りさんには行動してもらわないと。警察のしかるべきところからビシッと行ったら、こいつらはビビりよるから。どうせ飛ばしの電話番号やけどね。
警察 そうなんですよね。
―― 飛ばしの電話番号でもキャリアはすぐわかるから。キャリアたどっていけばわかる。裁判所で令状一枚とればすぐ動けるよ。
警察 そうですね。
―― でしょ? だから早急にやって。しっかり頼みますよ。
警察 ありがとうございます。(了)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

どこから情報を掴むのかわからないが、いわゆる「架空請求」のメールが時々やってくる。以前は日に数百を超えることもあったが最近では数カ月に一回程度には減って入る。私は送り付けて来る文面自体が気に入らないので、徹底して電話をかけまくり、悪徳詐欺を働く人間を追い詰めて、実際に何件か潰したこともある。しかし世間での「架空請求」詐欺被害はいっこうに減らないようだ。その理由の一端をご紹介しよう。

下記会話は数年前、私の居住地の警察署に「架空請求」の情報を提供したときの会話である。それ以前にも110番通報や電話で何度か警察には情報提供をしていたが、会話にもある通りひどいときは「民事事件は警察の管轄ではない」と言って切られたこともあった。警察署とのやりとりを前編と後編の2回にわけて公開する。

◆民事は警察(の管轄)じゃない……?

警察 かわりました相談係の○○と申します。
―― お願いいたします。
警察 これに対するお金等振り込みをされていますかね。
―― もちろんしていません。
警察 良かったですね。
―― していないです。明らかに全く身に覚えがないのですが、拙い文章がメールで来ました。「裁判をする」、「延滞金がかかる」などとあって電話番号が書かれているので、これにはお巡りさんから電話をかけて頂いき、早急に警告していただいた方がよいと思いまして。インターネットでこの番号を調べても「詐欺だ」という情報がたくさん出ています。電話番号は03-XXXX-XXXXです。
警察 ちなみにこれどういう経緯で入って来たんですかね?
―― 私のメールアドレスに来ました。
警察 その相手のメールアドレスわかりますか?
―― はい………(メールアドレス)です。
警察 これ何年ごろ入ってきました?
―― 最初に来たのは昨日の朝9:18です。嘘でしょうが会社名も書かれています。
警察 要は有料コンテンツの未払いとかそういう内容ですか?
―― そうです。そんなのは全然使っていませんので、昨日あえてそこに電話をしたんですが、どういうわけか取り合ってくれなくて。私はこの手の詐欺・架空請求が来ると、徹底的に電話をして追い詰めるんですね。
警察 ほー。
―― 今朝電話したら「かけ直す」と言っていましたがかけてこないし、先ほども言いましたが「この番号は詐欺だ」との情報はネットに多数出ています。一刻も早く警察で対応していただくべきだと思いご連絡しました。
警察 なるほど、ありがとうございます。とりあえずおっしゃられた通り「詐欺」のメールですんで、一切相手にしなかったらいいですから。それで相手にどう話されたんですかね?
―― 昨日は電話をかけたら、向こうは私の生年月日を聞くわけです。正直に言うことはないから、本当ではない非常な高齢者を名乗りました。それ以降かかってこなくなりました。
警察 ほー。そうですか。電話はどういうふうにかけられたんですかね。
―― 普通に番号が通知されるようにかけましたよ。
警察 通知でかけているんですか? ほー、なるほど。
―― そのあと20回くらいかけましたけれど取らなかったですね。
警察 ほー。そんなにかけたんですね。わかりました。それでしたら全く騙される要素なさそうですし。
―― 私は騙されませんよ。私はいいのですが、お巡りさんにはこういう詐欺は止めてもらわないといけないでしょ。
警察 はい。
―― 止めてもらわないと。架空請求しているわけだから。
警察 あ、そうです。架空請求です。
―― 詐欺未遂でしょ。
警察 そうですね。
―― だからこの番号に電話していただくなり、捜査していただくなりして、至急これを潰していていただくと。
警察 なるほど、ごめんなさい。これについてはですね、情報として上げさせていただくんですけれども、「早急に」というのはなかなか難しいんですよ。
―― え、なんでですか? 電話一本かけたら向こうがどんな連中かわかるでしょ。
警察 そうなんですよ。
―― 前にも連絡したけど、おたくのお巡りさん「民事は警察じゃありませんから」って言って切られたよ。
警察 民事は警察じゃない……?
―― 「民事事件は警察の管轄ではありませんから」といって。この番号に電話したらそういわれた。なんで動けないんですか? これだけ証拠や情報を提供しているんですから。「振込詐欺に誤魔化されるな」と広報してるでしょ。だったら電話一本かけるくらいのことはできるじゃない。
警察 ええ。これは詐欺の電話だっていうのは分かってるんですよ。

◆目の前にパソコンはないんですよ。その関係で本部に投げてですね……

―― だったら令状がなくても、電話を一本かけて「警告」くらいしとけばいいんじゃないですか。
警察 ええ。
―― 「ええ」じゃない。これをほっておくから被害が広がるんじゃないですか。
警察 まあおっしゃるとおりですね。
―― 警察から電話したら奴らだって萎縮するでしょ。
警察 それが全く萎縮しよらへんのですよ。
―― しなかったら令状取って踏み込んだらいいじゃないですか。
警察 ええ。ご忠告は上げさせていただきますんで。
―― いえいえ。対応してくださいよ。私理解できないのだけど、「情報があったら警察に知らせてくれ」とポスターが街のあちこちに貼ってあるでしょ。私は情報提供何度もしていますが、そのたびに「すぐ動けない」と。それだったら何の意味もないじゃないですか。
警察 うーん。おっしゃる通りかもわかりませんね。
―― 私はいいですよ。騙されませんから。でもほかの知らない人や気の弱い人は騙されますよ。相手はプロなんだから。お巡りさんわかってると思うけど。
警察 そうなんですよ。
――  「そうなんですよ」じゃ困るの(苦笑)。それを止めるのが警察の仕事でしょう?
警察 そうなんです。
―― 「そうなんです」じゃないでしょ(爆笑)。いや笑っている場合じゃないですよ。
警察 全くの正論をおっしゃられているんで。だからその通りですよ。
―― なんでできないんですか?
警察 私の立場では何ともお答えができないんですよ。わかんないんですよ。
―― 「わかんない」ってなに?(再度大爆笑) なに言ってんのあなた。
警察 専門じゃないんで。
―― 「専門じゃない」って、バカなこと言うんじゃないですよ。あなたお巡りさんでしょうが。
警察 うーん。刑事の方にはこういうことがあったと報告させていただくんですが、そのあとすぐに対応できるかというところは、なかなか難しいところがあるみたいなんです。
―― なぜですか? これは110番通報と一緒ですよ。詐欺未遂申告の。私が詐欺にあっていれば詐欺ですが、詐欺未遂で不法行為が成立しているでしょ。
警察 そうなんですよね。
―― 「そうなんですよね」じゃなくて。わたしは弁護士に相談しているんじゃないんですよ。警察官でしょあなたは。
警察 そうです、そうです。
―― こういうのは迅速に対応しないとね……。 
警察 そうなんです。それが出来たらいいんですけどね。一番は。
―― 出来たらじゃない。なぜ対応しないのよ?
警察 それがね。なんとも……。
―― 「なんとも」ってあなた。いい加減な業者みたいなこと言わないで。
警察 詐欺と認められてすぐに措置が出来たらいいんですけどね。
―― 目の前にパソコンあるでしょ。
警察 パソコンにあがってくるんですか?
―― パソコンの検索エンジンにこの番号を入れたら、「この番号は詐欺だ」との情報がたくさん出てきます。調べてみましたか?
警察 あのー。目の前にパソコンはないんですよ。
―― え! ないの?
警察 予算の関係やらそんなんもありますし。
―― 予算の関係?
警察 その関係で本部に投げてですね。
―― そんな悠長なことやってるんですか?
警察 そうなんですよ。現状はそんな形なんですよ。
―― お巡りさんいらっしゃるのは「生活安全課」?
警察 刑務課ですね。
―― そんなスローな対応してたら、絶対に根絶できませんよ。
警察 それは、ご意見その通りだと思います。(つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

 

2018年6月24日付け読売新聞

〈政府は、北朝鮮の非核化工程で人的な貢献をする方向で検討を始めた。複数の政府関係者が明らかにした。原子炉の廃炉に関わる民間の技術者や専門家らの派遣を想定している。東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい考えだ。〉(2018年6月24日付け読売新聞

だそうだ。「制裁!」、「制裁!」ばかり叫んでいて、まさか本当に米朝首脳会談が行われるなどと、予想も予見も、さらに言えば独自ルートでの情報収集もできなかったのがこの島国の政府と、その外交能力である。トランプには電話で「拉致問題を話題にしてくれ」と頼み、何の証拠もないのに「拉致についての言及があった」と一人よがりしているのが、安倍晋三という男であり、その恥ずかしい姿を頂くのに痛痒を感じないのが、外務官僚の低能ぶりだ。

米国にとっては「どーでもいい」日本の拉致問題をたった40数分の会談の中でトランプと金正恩が議論した、などと信じている人はまずいまい。初対面の休戦国(米国と朝鮮はいまだに「戦争状態」であり「休戦」が続いているに過ぎない)首脳同士の会談で、他国の問題を議論する余地などあるはずがないだろう。

米朝首脳会談前に、この島国ではことさら「拉致問題」を新聞は大きく取り上げ、さらには「北朝鮮への制裁足並みに乱れはでないか?」と底意地が悪く、恥ずかしいほど的はずれで、短射程のコメントが飛び交った。それらをのうのうと口にした「識者」は今でも同様のだらしないコメントを垂れ流しているけれども、状況は世界屈指の外交音痴の安倍ですらが、冒頭紹介したように「朝鮮非核化に人的貢献を検討する」と発言せざるを得ないところまで来ているのだ。

6月21日朝日新聞は、
〈政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定して今年度中に全国各地で予定していた住民避難訓練を中止する方針を固めた。米朝首脳会談が開かれるなど対話ムードが高まる中、北朝鮮によるミサイル発射の可能性は低いと判断した。21日、政府関係者が明らかにした。政府関係者によると、訓練を中止するのは宮城、栃木、新潟、富山、石川、奈良、徳島、香川、熊本の9県。総務省が近く通知を出し、正式に伝える方向だ。
 訓練は政府や自治体が主催し、ミサイル発射を全国瞬時警報システム(Jアラート)や防災行政無線で伝え、住民らが学校や公共施設に避難するもの。昨年3月以降、25都道県で計29回行い、12日の米朝首脳会談の直前にも群馬と福岡の各県で実施した。〉と報じた。(2018年6月21日付け朝日新聞

国民の危機意識を扇動し、「北朝鮮憎し」の世論を高め、軍事膨張の隠れ蓑に利用していた「まったく意味のない訓練」を中止すると発表した。この訓練のバカさ加減を証明するのには多言を要しない。例えば朝日新聞に掲載された下の写真だ。

東京都23区内の多くの小学校の防災(主として地震)訓練では、ヘルメットや防空頭巾が登場する。2011年3月11日、東日本大震災の日にも集団下校する小学生は、防空頭巾をかぶっていた。私は本物の防空頭巾を目にするのは初めてで、小学生の姿に驚いたが、地震後の集団下校にはふさわしい防御具だと言えるので、その準備の良さに感心した記憶がある。

 

2018年6月21日付け朝日新聞

それに対してこの写真である。こんな無意味な訓練をさせる行政や、何の問題も感じずに記事化する朝日新聞のトボけた感覚には、もうあらゆる論評をする気力も失せかける。それにしても仮に「ミサイル」が飛来したときに「倉庫の中で頭を守る」行為がなにを意味するか、誰か思案する人はいないのだろうか。

「ミサイル」は通常火薬や爆発物質(時には核爆弾)を搭載して攻撃に利用する。それに対して「倉庫の中で頭に手をのせたら」何らかの防御になると、考えている人がいるのであれば、私にその根拠を教えて頂きたい。メールアドレスは本文の下に明記してある。

ガラスの破片や屋根瓦の落下を頭部に受ければ、深刻は怪我が予想される。だから集団下校する小学生が、防空頭巾をかぶっていたのは理にかなった防御策だといえる。他方直撃を受ければ、建物そのものが破壊(消えてしまう)される「ミサイル」飛来に対して、この姿は何を意味するか。

そもそも朝鮮の危機を煽るだけでなく、「対話と圧力」と言っていたはずの姿勢が、一方的に「制裁!」、「制裁!」と狂信的にエスカレートし、「世界で一番悪い国」のように政府が国民を洗脳し、また外交政策上も各国にそのような方向を牽引する方向でのみにあくせくしていたから、緊張が高まったのではないのか。そして誰にでもわかるが、今回の米朝首脳会談実現に、日本政府は「まったく」寄与していない。むしろ婉曲な妨害を画策していたのではないと、思われるほど「意地悪」を貫徹していたし、今でもそうである。

まったくの「他力」で実現した結果としての緊張緩和によって、無意味な「訓練」が中止になったのは結構なことであるが、もうこの島国の国民は、こんなにも無意味で、害悪でしかない「国民総動員」を企図する訓練に参加することを、なんとも思わなくなっていることに薄気味悪さを感じる。

そして、冒頭の「朝鮮非核化への人的貢献」である。私は日本にその資格はないと考える。その理由は記事中にもある通り、「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい」が理由とされているからだ。

通常の原子炉の廃炉作業は多くの、原発保有国に経験がある。この国にもある。しかし「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見」とはなんだ。原子炉冷却のため、ひたすら水を入れ続け、汚染水が溜まり続けたら「希釈して海に流す」という。こんな知識を「知見」と呼べるか? 世界初の原子炉4機連続爆発を防げなかった国に、どうしてわざわざ核関連施設の解体作業を依頼する理由があるのだ?

最近の出来事を目にするたびに、「私の頭はずいぶん狂っている」ような気がする。でもひょっとしたら、私以上に政府や社会がとんでもないのかもしれないとも穿っている。どなたか教えて下さらないものであろうか?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

18日午前8時前。机上に置いた携帯電話が、警戒音を鳴らしだしたのは、揺れが起きて数秒後だった。ということは、震源が近いはずだ。小刻みな横揺れは安普請をきしませ、大きな音を立てたが、揺れ自体の長さは10数秒であっただろう。


◎[参考動画]【速報】大阪府北部で震度6弱(ANNnewsCH 18/06/18)

関西は「阪神淡路大震災」を例に出すまでもなく、活断層がいくつも確認されている。18日の地震は高槻市、茨木市に大きな被害をもたらした。この地域では震度1から2の地震が比較的頻繁に起こる地帯で、「有馬-高槻断層帯」のほぼ真上にあたるが、ここ数百年「有馬-高槻断層帯」での大きな地震の記録はない。

有馬-高槻断層帯

しかし一昨年の熊本地震の例が示す通り、内陸の断層による地震は、近隣の断層を刺激する。不幸にも震度7を2回経験した熊本地震発生の際に、私は最初の地震が「これが前震にならなければよいが」と書いた。気になる予感は的中してしまった。2016年4月14日の震度7に続き、2日後の16日にも再び震度7の揺れに熊本は襲われた。

気象庁は「今後1週間おなじ程度の揺れに注意するように」と、紋切り型の注意勧告を行っているようだ。そんなことは素人にでもわかる。行政による「地震予知」は現実に、何の役にも立たないことを、私たちはここ20年ほどのあいだに何度も学んだ。また、時々こっそりと(具合が悪いからだろうか)発表される情報の総体は「日本列島に地震を心配しなくてもよい場所はない」ことを結果的に示している。近いところでは千葉県周辺での「スロースリップ」現象(通常よりもプレートが早く動く現象)が発表され、実際に千葉県や群馬県では小さな規模の地震が頻繁に起きている。幸いこの地域での内陸直下型大地震はいまのとこと起きてはいない。

しかし、当該地域に住まい、お勤めの方々には充分に警戒されることをお勧めする。18日朝、大阪で発生した地震のマグニチュードは5.9だ。「阪神淡路大震災」は7.3、「東日本大震災」は、9.0、「熊本地震」は7.3だ。

地震の総体を理解するためには、マグニチュードが大きな意味を持つが、被害や災害を理解するためには、マグニチュード(地震のエネルギー)よりも、実際にどれほど「揺れたか」(震度)が重要である。津波が来なければ、海底を震源とする、マグニチュード8や9の地震でも、生活に何の影響も支障もない。逆に直下の浅い震源では、マグニチュード6以下の地震でも、今回のように被害が出る。なによりも避けがたく不具合なことは、人口密集地での地震は、そうでない地域に比べて甚大な被害を出すという事実だ。

18日の地震でブロック塀の倒壊や電柱の傾き、数件の火災、エレベータ内の閉じ込めや電車の停止は報じられているが、大規模な家屋倒壊は、いまのところ報告されていない。しかし既に複数の犠牲者が出ている。そしてインターネットではテレビ映像が視聴可能となり、繰り返し被害状況や交通機関の運行状態を伝える。その報道順位に、日ごろテレビを見ない私は、発見があった。テレビ映像はまず、地震による被害と交通機関の運行状況をつたえあと、「原子力発電所の状況」を繰り返し報じている。今回の地震による福井県の震度は3程度だ。にもかかわらず、優先順位の第一に「原子力発電所の状況」を繰り返し伝えるのは、テレビ局も「原発が地震に弱い」ことを自覚していることの証拠だろう。

活断層が縦横に走り、海底には巨大な地震と津波を引き起こすプレート境界が横たわる日本で原発を動かす条件は存在しない(2013年1月4日付赤旗より)

ただし、大都市で電車が止まり、停電が起き、水道管が破裂すればテレビは競って、その情報を映像付きで放送するが、「原子力発電所の状況」に、異常が起きたときにはどうだろうか。解説は不要だ。7年前を思い起こせばいい。「手遅れ」になっても「大丈夫」、「ただちに健康に影響のでるものではない」と、たった7年前に「騙した」台詞を、何の痛痒も感じずに垂れ流すに違いない。

地震は予防できない。そして、18日の地震がまたしても不幸にして「前震」であったとしても、「本震」を止めることはできない。万が一そうであれば、大阪を中心とする、関西在住の住民の皆さんはどうすればよいのか? それこそを政府は指し示すべき出だろう?「1週間程度はおなじ程度の揺れに気をつけろ」と言われても、古い家屋に住んでいる人はどのように「注意」すればよいというのだ?

首相官邸に「対策室」ができようと、自衛隊が災害派遣されようと、地震の被害を減ずる程度の予想を立てる力と智慧を人間は持たない。その前提ですべての取りうる対策は前提を立てるべきではないのか。素人でも発案可能なことはある。最悪の終末を相当高い確率で生じせしめる、全国の「原子力発電所」を即時停止、廃炉にすること。震度5以上の揺れが大都市で発生したら、その後数日間は個人の判断で「防災休暇」をとることができる制度を創設すること。暫時人口密集地域を解消すること…。

実現可能性よりも、「生き残るための必要条件」を優先するべきだ。と私は考える。

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

昨晩開票された新潟県知事選は脱原発をめぐる候補者の姿勢があいまいにされたことで残念な結果となったが、昨日に続き本日発売の脱原発雑誌『NO NUKES voice』16号の怒涛の内容を紹介する。

特集は「明治一五〇年と東京五輪が福島を殺す」である(その内容は昨日の本通信でお伝えした)。読者諸氏の目にはやや物騒にうつるかもしれないが、私たちは「当たり障り」のない雑誌を創ろうとは、微塵も考えていない。事実が、真実が悪意に基づくものであれば、それを「悪意」と言うことに躊躇はない。

◆二木啓孝さんが語る三里塚闘争と3・11以後の生き方

真実は幾重もの事実により構築される。今号も多様な方面の方々にご登場いただいた。90年代のオウム真理教事件報道の際、流行語「ああいえば上祐」の発案者とされるジャーナリストの二木啓孝さんに3・11の衝撃と共に「三里塚闘争とメディアの現場」を回顧していただいた。大学入学から、学生運動、わけても三里塚闘争の中で目覚めた二木さんは、メディアの現場に転身し、現在は千葉県の鴨川で農業に従事されている。その二木さんが3・11で受けた衝撃や反原発への見通しを語っている。楽観に陥らない視点は、さすが元・日刊ゲンダイニュース編集部長らしい。

◆尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」

 

尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」より

尾崎美代子さんは、飯舘村に昨年に続き足を運び、詳しいレポートを寄せてくださっている。「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」である。尾崎さんは普段、大阪市西成区で「集い処はな」の店主で、美味しく安い食事を提供するのにお忙しいが、そのお仕事の間を縫っての飯舘村からの詳細なレポートは、「一割にも満たない帰還率」、「菅野村長の『ハコモノ』の目的」、「放射線管理区域レベルの地域に子どもたちを通わせていいの?」、「放射線セシウムを組み込んだ村の自然循環サイクル」、「高齢者だからと、放射線を吸い込ませ、営農させていいのか?」、「期間困難区域・長沼地区で進む仰天計画 旗振り役は田中俊一前原子力規制委員長?」、「和解案を拒否する東電」。中見出しを列挙しただけでも飯舘村に襲い掛かっている理不尽と謀略が明らかになるが、本文ではさらに詳しい事実や数字が紹介されている。

◆槇田きこりさんが語る88年8月8日八ヶ岳〈いのちの祭り〉から30年の物語

「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三十年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」は『NO NUKES voice』でのこれまでの記事とは少し趣の異なる「楽しい思い出」の記憶と言っても差し支えないだろう。1988年に行われた『NO NUKES ONE LOVE いのちの祭り』を槇田きこりさんが回顧する。

いくつもの詩(うた)が紹介されて、まだ目にすることができた「ヒッピー文化」がエッセンスとなり花開いたイベント。たしか本誌編集長もあの場所にいたはずだ。80年代はどうしようもない時代だったけれども、それでも、こんなイベントに若者が集まっていたと思い返すと、隔世の感がある。

槇田きこりさん「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」より

◆大西ゆみさんの「3・11福島を忘れないロンドン集会」報告

英国暮らしが長かった大西ゆみさんには「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国―3・11福島を忘れないロンドン集会」を報告していただいた。

大西ゆみさん「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 3・11福島を忘れないロンドン集会」より

◆巨石巡礼写真家・須田郡司さんによる飯舘村・山津見神社周辺「聖地と巨石と放射能」

グラビアを担当していただいた須田郡司さんは「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」では被写体に向かう道すがら須田さんが考えたこと、感じたことが述べられる。無言の写真に息を吹きこむ、短文ながら重たい内容である。

須田郡司さん「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」より

◆大学生・川村里子さんの報告「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」

 

川村里子さん「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」より

「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」は下北半島に同行した大学生、川村里子さんによるレポートだ。中道雅史さんの案内で原発や再処理工場、新たな原発建設予定地のひしめく下北半島をめぐりながら、川村さんが中嶌さんや中道さんに質問を投げかける。下北半島よりもさらに原発の密集する「若狭」に住む中嶌さんの目に、下北半島の様子はどのように映ったのであろうか。若狭との相違と相似から、原発立地地域への実態が、また浮き彫りになる。

◆山田悦子さんのインタビュー「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」

「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」は、『NO NUKES voice』15号に「『人間の尊厳』としての脱原発」を寄稿していただいた、甲山事件冤罪被害者の山田悦子さんに編集部がお話を伺った。

いっけん原発問題とあまり関係なさそうなテーマのように思われるかもしれないが、山田さんのお話の中には、原発問題に向けた貴重な示唆と指針が示されている。国(司法)と20年以上闘ってこられた経験は、脱原発で私たちが国や大資本と闘う際に、是非参考とさせていただくべきエッセンスに満ちている。

◆山口正紀さんの論考「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」

「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」は元読売新聞記記者でジャーナリスト、山口正紀さんの論考だ。急展開から紆余曲折(外交上双方の牽制)がありながらもどうやら実現しそうな「米朝首脳会談」。しかし、その結果の如何を問わず、日本では〈壊憲〉策動が止まらない。公文書の偽造、虚偽答弁など、すでに内閣がいくつも吹っ飛んでいなければおかしい状況でも、なお胡坐をかき続る安倍政権。その本質的な危険性〈壊憲〉=〈改憲〉の目論見を山口さんは、余すところなく明らかにし、糾合する。脱原発と〈壊憲〉=〈改憲〉策動は切り離すことのできない重大課題だ。

三上治さんは「『セクハラ罪はない』という罪はある」とわかりやすいタイトルだが、シモーヌ・ヴェイユとM・フーコーを援用して状況を撃つ。

山崎久隆さんの報告「株主総会と原発輸出―原子力企業に今求められるものは何か」、温品惇一さんの報告「福島でパンフレット『受けてください甲状腺検査』四千部配りました」、佐藤雅彦さんの「三屠物語―民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末」、そしてお堅い本誌にありながら、毎号読者ならず編集者も楽しませてくれる板坂剛さんの「月刊雑誌『WiLLs』5月号を糺(ただ)す」。心配なのは毎回対象雑誌を変えて頂いているが、その源泉が尽きないか……である。今号も絶好調だ。

その他全国からの活動報告も、さらに充実。より精鋭化し、かつウイングを広げる『NO NUKES voice』16号、自信を持ってお勧めする。

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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