2019年7月6日付け共同通信

「共同通信社は第25回参院選について4、5両日、全国の有権者3万人以上を対象に電話世論調査を実施し、公示直後の序盤情勢を探った。取材も加味すると、自民、公明両党は改選124議席の過半数63を超え、改選前の77議席前後に上る勢い。安倍政権下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、国会発議に必要な3分の2以上の議席維持をうかがう。野党は立憲民主党が改選9議席からの倍増を視野に入れるものの、全体では伸び悩む。」(2019年7月6日付け共同通信)

「21日投開票の参院選について、朝日新聞社は4、5の両日、全国の有権者を対象にした電話による情勢調査を実施した。取材で得た情報を合わせて分析すると、自民、公明の与党は改選議席(124)の半数を大きく上回る勢い。自民、公明と憲法改正に前向きな日本維新の会などの「改憲勢力」が非改選議席を合わせて、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を維持するかは微妙な情勢だ。」(2019年7月5日付け朝日新聞)

このような、選挙告示直後に大新聞や、通信社が「与党有利」の情報を流布する問題は、ここ数年「公平な選挙」を阻害する要因として問題が指摘されている。

◆誰が「思想調査」とたがわない、電話での世論調査に応じるのか?

2019年7月5日付け朝日新聞

誰が「思想調査」とたがわない、電話での世論調査に応じるのか、と思っていたら、ここ数年、コンピューター音声の「世論調査」が拙宅にも何度もかかってくるようになった。あれは固定電話だけに向け、かけているのであろうか。携帯電話も対象か。正直なところこういった社会的なメディアに文章を書くのであれば、それくらいは自力で調べてからご報告すべきである。と読者諸氏に申し訳ない気持ちに満たされながらも、「馬鹿げた芝居」の裏側まで調べる気力がわかない。

正直な方には失礼だが、電話での「世論調査」に本気で答える人など、いるのだろうか? あんな気持ち悪い、かつ一方的な「思想調査」はない。一方的な質問。しかもコンピューター音声による「取り調べ」まがいの調査に、答える義務など当然ない。わたしは無機質なコンピューター音声の質問がはじまると、受話器を電話に叩き付ける。

でも、穏やかな方々はそうはしないのだろう。「あなたの支持政党をお答えください。自民党は1、立件民主党は2、国民民主党は3……」あれを押し間違えたらどうなるのか知らないけれども、新聞に毎月掲載される「世論調査」と名乗った「世論誘導」は非常に巧妙に、世論誘導を行う悪しきく習慣だ。あんなものに信憑性はまったくない。

◆告示直後のこの時期に、どうして投票行動をかなり断言調の見出しで記事にできるのか?

告示直後のこの時期に、どうして投票行動をかなり断言調の見出しで記事にできるのだ。してもいいと勘違いしているのか! わたしは選挙に対して興味はない。しかしこの島国の住民がどのように「騙され」、「誘導されていくのか」は嫌というほど見てきた。その様子が気持ち悪い。

言いにくいけれども、自民党はもちろん、どの政党に投票しようがこの国の未来は2030年に果てるだろうというのがわたしの見立てである。その点、国政に興味のない者、関心を失ったものは、選挙についてあれこれ発言するのはいかがかと思う気持ちもないではない。しかし「もう少しフェアーにやれよ」と感じずにはいられない。選挙に熱心な方々は余計にそうだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

◆習近平先導警察車両が阪神高速道路上で横転の体たらく

どうせ「ろくなものにはならない」ことが、わかりすぎていたので、言及することすら避けてきたが、大阪で行われたG20が、「波乱だらけ」で幕を閉じた。

2019年6月27日付NHK 関西NEWS WEB

まず驚いたのは、一般向けには閉鎖されていた阪神高速で6月27日、習近平を先導していた警察の車が、操作を誤り阪神高速道路上で横転したことだ。

阪神高速、とくに環状線はカーブが多く、走行車両も浪花流運転で、地方から来た運転者は戸惑うことも多い。なかなか難易度の高い高速道路ではある。しかし、事故当時は一般車両は走行しておらず、この警備車両は「運転者の技術」により勝手に横転したのだ。

あるいは大阪府警に潜り込んだ、どこかの反政府組織によるゲリラ攻撃か? といっときだけ、時代錯誤の想像を試みたが、そんなドラマはなかった。要人警備車両が勝手に横転しただけのことだ。このような低レベルの自損事故を要人警備車両が引き起こすのは、権力側からすれば「遺憾」ということになるのだろうが、ひたすら「恥ずかしい」行為である。

◆伊丹空港隣接ビルのトイレに拳銃を置き忘れた20代巡査

さらに28日には、G20サミット警備のため島根県警から派遣された20代の男性巡査が伊丹空港に隣接するビルで、トイレに拳銃を置き忘れた。直後に管理会社の従業員が見つけ、届け出を受けた同僚が回収しており、使用された形跡はなかったらしい。

警察官は誰もかれも当たり前のように、拳銃を携帯しているが、あれは効用よりも弊害のほうが大きいのではないだろうか。滋賀県で発生した巡査の上司銃撃事件や、警察官から拳銃が奪われて大騒ぎするニュースに接するたびに、「警察官が拳銃を持っていなければこんなことにはならないのに」との思いを強くする。

建前は「凶悪犯」に対する威嚇や、犯罪防止なのだろうが、もう何十年も「拳銃があって犯罪が防止された」とのニュースを頻繁に聞くことがない。前述したとおり、逆に拳銃を保持しているが故に、当の警察官に危害が及んだり、犯罪に利用されるケースのほうが多いのではないかとの印象がある。

古いところでは朴正煕暗殺を試みた文世光が使用した拳銃は大阪府警のものだった。警察学校を出れば19、20歳でも拳銃を保持できる制度は、本当に治安に安定に寄与するだろうか。「警察官の拳銃保持の是非」について、日弁連などは議論を提起すべきではないだろうか。


◎[参考動画]“過去最大”警備3万人 G20大阪で通行止めに検問(ANNnewsCH 2019/6/27公開)

◆これほど迷惑な「ショーもない」!

G20の中で何が話しあわれたのか、には正直興味がない。あれはセレモニーに過ぎないのだ。20か国の首脳がいる場所で個別の議題について、具体的な議論が進むと思っている人は、あまり世間をご存じない方だ。議論の素案は事務方が長時間かけて調整し、会議ではもっともらしい発言を、とくに安倍などはもっぱら用意されたペーパーを見ながら読み上げているだけだ。つまり「ショー」なのだ。

しかしこれほど迷惑な「ショー」もない(「しょーもない」に偶然似てしまった)。大阪では幹線道路がほぼすべて閉鎖され、関西地域の物流が不安定になった。大阪城は閉鎖され、せっかく外国や地方から「大阪城のエレベーターに乗ろう」と楽しみにやってきた観光客は追い返されることになってしまった。そのうえ安倍晋三は「大阪城にエレベーターを作ったのはミスだった」と、誰かが冗談で書いたとしか思えない原稿を読み上げてしまい、世界中から大顰蹙と「差別じゃろ」と指弾されてしまった。

◆安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶり

警察の体たらくも相当であるが、安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶりもかなり進行している。安倍は原稿を読まずに真っ当な内容の話を10分以上できない。だから国会でも国際会議でもオリンピック招致演説でも、安倍の読み上げた原稿は「誰か」が書いたものだ。

ちなみに演説以上に安倍は作文が苦手だと言われている。読書経験も極めて少ないので古典からの引用などはできない。今回安倍の「エレベーター設置間違い演説」も、必ず本番前に複数の人間が原稿を確認しているはずだ。しかしその連中も演説案を「問題なし」と見逃してしまった。

安倍の信者の方は、あれこれ弁明をなさるが、これは言い訳のできない「大差別」であることに間違いはない。自民党から出馬予定で、派手すぎる女性問題が暴露され、出馬取り消しとなった乙武洋匡から痛烈に批判されているのは象徴的だろう。「冗談のつもりだった」と鹿砦社を「炎上商法」と例えた、前田朗氏は坊主懺悔して逃亡したが、安倍のこの発言、むしろその原稿が問題なく安倍に手渡される安倍周辺の知的レベルの低さは、醜悪の域に入っている。

◆韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらい

裏では早期から情報があったが、予定通りトランプは日本から韓国へ飛び、板門店で金正恩と会った。わたしごときにもさる情報筋から「板門店会談」の報はあったのに、日本のマスコミの多くはどうやら、まったくその情報をもっていなかったようだ。これには驚いた。そしてG20開催中から相も変らぬ韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらいの態度は、本当に情けなく恥ずかしい。

わたしが本通信で何度も主張している通り「ロシアは北方領土を1つも返さない」ことがあらためて明言された。それでも「平和条約協定に向けて努力する」政府は言う。やめとけ。「平和条約締結に向けての努力」とは「経済協力」と名乗る「持参金」のさらなる無駄な出費だ。

そういえば、かつては韓国同様・中国に対する敵視も過剰だったが、いつのころからか、政府は中国敵視を変更したようだ。来年には習近平を国賓として招くという。この変化は政府の「一貫しない姿勢」を示しているのではない。「強気に傅き、弱気に威張る」一貫した姿勢の表れと理解すべきである。米国同様ついに中国も「かなわない相手」と政府は見解を変えたのだろう。もちろんロシアもである。

「もっとも幸いな場合でも『国家』とは災いである」

と言い放った賢人の至言が身に染みる。それにしてもはた迷惑で、不格好すぎたG20であった。


◎[参考動画]G20首脳らが夕食会(KyodoNews 2019/6/29公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学附属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が6月30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。

◎MBSのドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~」
https://www.mbs.jp/eizou/backno/190630.shtml

 

MBSのドキュメンタリー「映像'19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」6月30日深夜(7月1日午前)0時50分放送

滋賀医大病院をめぐる問題については、本通信でも継続的に取り上げてきたが、いよいよ在阪キー局であるMBSが1時間のドキュメンタリーを今夜放送する。

MBSはTBS系の大阪にある放送局だ。歴史的にTBSへの対抗心が強く、これまでも優れた報道番組を多数生み出してきている。滋賀医大病院問題とは関係ないが、わたしたちが子供のころから現在まで続く「仮面ライダー」シリーズをテレビ化したのも、MBSだった。

「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」のディレクター、橋本佐与子氏が、取材班とともに問題の現場へ登場されたのは、今年の早い時期だったと思う。滋賀医大病院問題については、わたしが関わる前から、朝日新聞が継続的に報じていたが、テレビメディアで継続的な取材・報道を続ける局はなかなか出てこなかった。患者会の皆さんは昨年の秋以降、短期間で2万8千筆の署名を集めた。「岡本医師の治療継続」を求める声は、厚労省、文科省、国会議員へ届けられた。その場面にも橋本ディレクターはじめ、MBS取材陣の姿があった。

しかし、まさか1時間もの長編ドキュメンタリーを放送することになろうとは、わたしも考えなかった。大手メディアとは異なり、小さな影響力しか持たないわたしのようなフリーライターにとっても、橋本ディレクターとMBSのアクションは、うれしい誤算だった。この問題を取材し、話すと「ああよくある医学界の話ね」と反応する方が少なくない。正直な感想なのであろうが、こういう問題が「よくある」ことであってはならない、とわたしは痛切に感じる。

たとえば、現在滋賀医大のHP「病院からのお知らせ」には、6月11日に「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載されているが、その内容は国立がん研究センター発表の報告を、明らかに改ざんしたものだ(この問題については6月28日、本通信で【[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん──岡本メソッドに対する印象操作か?】が黒藪哲哉氏により報告されている)。

こういう明らかな改ざんが、病院長の名前で堂々と行われて問題はないのか?
黒藪氏の報告の中に映像が紹介されている。この映像(https://youtu.be/w3rPzAk9G3E)をぜひご覧いただきたい。

質問をする女性に対して事務職員は、明確に「この資料は国立がん研究センターが作成したものです」と語っている(映像では質問者と回答者の名前も確認することができる。不審に思われる読者諸氏は滋賀医大病院の当該職員に直接確認されたい)。

 

滋賀医大小線源患者会HP

さらに、6月25日にも「病院からのお知らせ」に、一部明らかな虚偽が掲載された。

続発する問題の発生源、滋賀医大病院を橋本ディレクターはじめMBS取材陣はどのように描き出すのか? 視聴可能区域にお住まいの方は、是非ご覧いただきたい。拙宅にはテレビがないので、わたしは既に知人のお宅にお邪魔する準備を整えた。なお、滋賀医大病院にかかわる問題の総体は、以下のサイトに詳しく掲載されている。引き続き正当な「解決」を見届けるまで、この問題は追及したい。

◎滋賀医大小線源患者会HP https://siga-kanjakai.syousengen.net/

◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

以下は6月17日正午現在、滋賀医大附属病院のホームページである。
http://www.shiga-med.ac.jp/hospital/index.html

「病院からのお知らせ」の冒頭に6月11日付けで、「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載された。この日は通称「モルモット事件」の第5回口頭弁論が行われた日である。

滋賀医大附属病院のホームページより

「前立腺がん治療に関する情報提供」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、病院長名での文章が現れ、「詳しくはこちらをご覧ください」の「こちら」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより

滋賀医大附属病院のホームページより

滋賀医大附属病院のホームページより

が表示される。冒頭に、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、注意書きのようなものがあるが、これだけではどの部分が「国立がん研究センター」による発表であるのか、また引用はどの箇所かが判然としない。そこで17日国立がんセンターの広報担当に「このような記載が滋賀医大病院のHPにあるが、国立がんセンターのHPを探しても、一部を除いて同じ記述を見つけることができない。このような発表はあったのでしょうか」と質問をした。17日夕刻同センターから、

《お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、
そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。》

との回答が返ってきた。え!この文章には1/3、2/3、3/3とページが付されている。「普通の感覚」で読めば、一連の文章と理解しても無理はなかろう。しかも各病院ごとの治療成績なども「国立がん研究センター」が作成した図表だと思う人が多いのではないか。実際に複数の現職医師(脳外科医、診療所勤務医)に読んでもらったところ二人とも「がん研究センター、不思議な資料を作るね」と、やはり誤解していた。現職の医師でも誤解するのだから、一般人はなおのことであろう。

この文章掲示が、ただちに法的な問題だ、というつもりはまったくないが、少なくともまぎらわしく、誤解を与えやすい体裁であることは間違いないだろう。それにしても、どうして滋賀医大病院院長松末氏は、専門が整形外科にもかかわらず、「前立腺がん」にこのようにこだわるのだろうか。同病院には多数の診察科があるのに、「病院からのお知らせ」10件のうち、4件が岡本医師関係の記載とは、不自然ではないだろうか。読者諸氏にも是非ご覧いただきたい。わたしの感覚がおかしいのだろうか? 

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

6月11日13時30分から大津地裁で、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内、成田両医師が23名の患者さんに施術の実績がないことを伝えずに手術を行おうとした「説明義務違反」の損害賠償を求める裁判の5回目の弁論が開かれた。

滋賀医大病院をめぐっては、仮処分や裁判が立て続けに起こされている。有印私文書偽造の刑事告訴も大津市警察に行われ(告訴状は未受理)、患者会の皆さんが大津地裁に集まる頻度も上がる一方だ。

裁判期日には、毎回開廷前に大津駅前で集会が行われる。この日は北海道からの参加された患者さんの姿もあった。

学長・病院長・泌尿器科河内教授を批判するプラカード

患者会代表幹事の恵さん

集会では患者会代表幹事の恵さんが、
「5月20日に待機患者の治療を妨害するなとの、仮処分命令が下りましたが、どうしようもない言いがかりをつけて病院は邪魔しようと、異議申し立てをしました。そういう輩なのです。我々は一生懸命闘いますが、あの輩には『情けない人種』だとの気持ちも考慮に入れて。力ずくでは黙り込んだ狸のようなものですので、我々の気持ちが届いているのかいないのかわかりません。熱い気持ちは大事ですが、司法、マスコミの協力を得ながら頭を使ってこれからの闘いに望んでいただきたいと思います」
と、滋賀医大幹部の底抜けのどうしようもなさを指摘し、闘いの方針を提示した。

ついで、代表幹事の小山さんがアピールを行った。小山さんは愛知県在住にもかかわらず、毎週のように滋賀医大前のスタンディングに参加されている。実直なお人柄で社会運動などとは無縁であった方とは思われない日常を昨年以来送っておられる。

毎週愛知県から滋賀医大抗議に訪れる小山さんの訴え

「私たちは滋賀医大病院で前立腺がんの小線源治療を受けた患者とその家族です。滋賀医大病院には高リスクの前立腺がんでも95%以上完治させることができる岡本圭生医師がいます。この岡本医師の卓越した小線源を求めて北海道から沖縄まで、全国から多くの患者が訪れています。ところが滋賀医大病院は今年いっぱいで岡本医師を病院から追い出そうとしています。それはいったいなぜでしょうか。

4年ほど前滋賀医大病院泌尿器科の医師が未経験であるにもかかわらず、それを患者に説明しないまま小線源治療をやろうと計画しました。岡本医師はその危険性を指摘し治療を阻止して23名の患者を救ったのです。

しかしこれをきっかけに滋賀医大病院は、泌尿器科、病院長、学長がそろって岡本医師の排除に向けて動き始めました。200名を超える患者の治療予約を一時的に停止させたり、岡本医師の講座を閉鎖するために学内の規則を変更するなど、患者を無視した嫌がらせのような行動をとってきました。これらは、すべて泌尿器科が行った不当医療行為を、組織ぐるみで隠ぺいするための行動です。

また滋賀医大病院は1年半前、岡本医師による小線源治療は、今年の6月末までとし、その後今年の12月末で岡本医師の治療を終了する、と一方的に宣言しました。しかし、先月20日大津地裁の仮処分決定により、今年の11月まで今まで通り岡本医師の治療を継続することが認められました。

ところが病院側はこの決定を守らず、『泌尿器科も小線源治療を行う』として岡本医師の小線源治療枠を一部横取りして、治療妨害を続けています。そして仮処分決定の取り消しを求める異議申し立てを行いました。新聞報道によると申し立ての理由は、『岡本医師の小線源治療が行われると、治療体制の見直しが必要になること、多くの患者が岡本医師の治療を希望して殺到する可能性が高いこと』を挙げているそうです。

全く信じられないような理由です。多くの患者が希望して、裁判所も継続を認めた治療を行うためですから、治療体制の見直しくらい、なぜできないのか。全く理解できません。やる気がないとしか思えません。2つ目の理由『多くの患者が殺到するから治療継続をやめろ』などということは、まともな病院が言うことでしょうか? 患者の命など全く眼中にないということを示しています。患者の命よりも、内部告発をした岡本医師を追い出して自分たちの地位を守ることが大事なんです。そんな泌尿器科の医師、病院長、学長には即刻退場してもらわねばなりません! 

本日泌尿器科の不当医療により被害を受けた患者さんが泌尿器科の医師を相手に起こした裁判の5回目の口頭弁論が行われます。今後、学長、病院長、泌尿器科の医師を法廷に呼び出して証人尋問が行われます。裁判で不当医療の事実を明らかにして、滋賀医大病院が真に患者ファーストの病院に生まれ変わるよう、闘っていきます。

私たちは抜群の成績を誇る、岡本医師の治療を将来の前立腺がん患者にも受けてほしい、と願っています。そのために来年以降も、岡本医師の治療が滋賀医大病院で継続されることを求めています。市民の皆さん、どうかこの事件に注目してください。多くのがん患者の命綱が繋がるよう、ご支援をお願いいたします」

小山さんが事件の発端から今日の状態までをわかりやすく、訴えた。

大津地裁(西岡繁泰靖裁判長)は5月20日、岡本医師の申立てを全面的に認める決定を下した。笑顔で完全勝利のメッセージを掲げる鳥居さん(左)と宮内さん(右)

次いで5月20日の仮処分で治療の機会を獲得した、鳥居さんが「仮処分」勝利のうれしさと、今後の闘いへの決意を語った。集会前に鳥居さんにお話を伺ったら「手術日が決まりました!」と本当に明るい表情で笑顔を見せてくださった。やはり20日に勝利を勝ち取った宮内さんも、鳥居さんと同じ日に手術が決まったそうだ。宮内さんも喜びと、病院側が仮処分に異議申し立てを行ったことへの憤りを表明した。

次いで患者会代表幹事の宮野さんが、力強い檄を飛ばし集会の「我々は最後まで頑張るぞ!」と気勢を上げた。

我々は最後まで頑張るぞ!

この日も法廷内撮影があった。満席になった傍聴席と原告被告、裁判官の様子が2分間毎日放送により撮影されたのち、開廷が宣言された。裁判では被告が準備書面5を、補助参考人(岡本医師)が準備書面2を、原告が被告準備書面5への反論を弁論(書類を確認)した。その後被告代理人が成田医師が2例目に診察した患者のカルテの送付嘱託(裁判所からの依頼のよるカルテ開示)を裁判官に申し出た。原告弁護団長の井戸謙一弁護士は「必要性を認めない」と却下を求めたが、合議体(裁判官)は送付嘱託を認めた。

被告弁護人は「まだ出ていない証拠のメールがあれば出してほしい」と原告並びに補助参考人代理人に要請し、西岡裁判官も「弾劾証拠以外の証拠は出しておくように」と原告・補助参考人代理人に要請した。わたしは西岡裁判官のこの物言いは、やや必要性の域を超えるものではないかと素人ながらに感じた。これで実質的な弁論終結となったが、次回期日も書証のやりとりとなり、被告側が遅延戦術に出ているのではないかとの印象を受けた。裁判所にも夏休みがあるため、休み前の期日で調節が試みられたが都合がつかず、次回は8月22日、15:00からと決定した。

ここで閉廷となったが、裁判官が法廷を後にしたとき、傍聴席前列から声が上がった。「被告代理人は送付嘱託なんかしなくても『不正閲覧』をしているのであるから、必要ないんじゃないですか! 職員も泌尿器科の医者も不正閲覧しているんですから、裁判所に依頼する必要ないんじゃないですか! どこに必要があるんでしょうね。素人でも不思議ですね」。被告代理人はこの発言をした男性を睨みつけながら法廷を後にしていった。

井戸弁護士

14時からは社会教育会館に場所を移し、記者会見が始まった。井戸謙一弁護団長がこの日法廷で行われた内容の解説を行った。

「今日は被告側から準備書面5、岡本医師から準備書面2それから原告から準備書面5が陳述されました。その内容をご説明いたします。被告の準備書面5には大きく言うと3つの点が書かれています。準備書面4で被告は23名の方々に対する治療は、岡本医師を指導医とする『医療ユニット』によって行われようとしていた。だから成田医師が未経験であることを説明する義務はなかった、と主張していました。法廷で我々は『医療ユニット』とはなんなのかと。そんな言葉は今までに聞いたことがないし、『医療ユニット』について説明してくれと求めました。それに対する回答がまず書いてあります「医療ユニットというのは被告らの代理人である弁護士が作った言葉だ」というのが結論です。大学内部でそのような言葉が使われていたわけではありません、ということです。

では『医療ユニット』の内実は何なのかですか、となるわけです。1つは理屈の問題です。小線源治療学講座は泌尿器科から独立した存在ではなく、あくまで泌尿器科の一部なんだと。寄付講座の治療は泌尿器科の治療として行われたし、カルテも泌尿器科のカルテとして管理されていたと。寄付講座で行われていたことはすべて泌尿器科の一部なんだ、ということが書かれています。ここでなぜこのようなことをいう必要があるのかといえば、結局泌尿器科の科長は河内医師ですから、河内医師の指示・命令に従って小線源治療も行われる必要がある。そういうことを言いたいのだと思います。

もう一つは、河内教授が本件寄付講座の『責任教授』であるという概念を持ち出しています。辞令上河内教授は併任教授です。『責任教授』などという言葉は書いてないし、私どもが調べた範囲では滋賀医大において『責任教授』という概念は職制上用いられていないと思いますが、『責任教授』であると。河内教授が『責任教授』であると、岡本医師は特任教授ですから、趣旨としては寄付講座内部においても岡本医師よりも上だということを言いたいのだと思います。

この二つを言ったうえで寄付講座が始まる直前に、岡本医師を希望してきた患者には岡本医師が施術するわけですけれども、そうではない患者、病院内で診断しか結果、小線源治療が適当だとなった患者については、成田医師が担当することにして、それを岡本医師が指導するということにしたと。そのことを岡本医師に指示したら、岡本医師は異を唱えることはなかったということだけです。『医療ユニット』の実態はこれだけです。

これについて岡本医師は「確かにそのような話はあったけれども、それなら自分自身に直接診察させてくれ。自分が診察しないのであれば責任は持てないからそういうことはできない」と言ったと述べておられます。そのことには一切ふれていなくて、河内医師が指示をして、岡本医師は異を唱えることはなかったのだから、そういう体制でやることになったのだと。いうだけのことであって、そのあと現実に多くの患者の治療について成田医師と岡本医師の間にどういうやり取りがったのか。『医療ユニット』の実態があったのか、なかったのかについては一切触れていません。これが一つです。

二つ目は成田医師は二人の患者さんのプレプランをしています。一人目の患者さんの時に自分は『未経験だとは説明しなかった』が、二人目の時に『説明をした』と主張しています。カルテには説明したと書かれている。それは後から後から書き加えられたもので、虚偽記載であると岡本医師は主張しておられます。その点についてプレプラン時に伝えたから、そのあとの原告の方々の治療が予定されていたわけですが、『こういうことにならなければちゃんと伝えていたはずである』ということが2点目。

3点目は法律上の問題ですが、万が一被告らに責任があるとしても、被告らは責任を負わない。免責されると、そういう主張をしています。これは国家賠償法という法律があります。普通の人が不法行為をして、人に損害を与えたときは、その損害を賠償する責任があります。会社などであればその使用者にも責任があります(民法715条)。行為者は709条によって責任があり、会社も個人も責任を負担するわけです。ところが公務員が公務を執行するにつき、不法行為を犯したときには国、公共団体が責任を負うんですね。そのときに公務員個人も責任を負うのかということについては、学者の間で議論があります。日本の裁判所は公務員は責任を負わないという考え方に立っています。

問題は国立大学法人で医療事故があった場合に、民法が適用されるのか、国賠法が適用されるのかということです。もし国賠法が適用されるのであれば、国ないし公共団体が責任を負うけれども、医療過誤を犯した医師個人は責任を負わないわけです。

民法が適用されるのであれば、両方(病院・医師)とも責任を負うわけです。今回国賠法が適用される事案であるから、原告の主張通りの事実があったとしても、被告である河内氏、成田氏個人は責任を負わないという主張をしていました。国立大学附属病院における医療過誤事故はたくさんあり裁判例もいくつもあります。両方適用している裁判例もありますが、だいたい民法を適用するのが普通だといわれています。だから民法が適用されれば当然個人も責任を負うとなります。被告は例外的な裁判例を引いてきて、「個人は責任を負わない」そういう主張をしてきました。

それに対して補助参加人と原告からそれぞれ準備書面を出したわけです。原告の準備書面は『医療ユニット』が形成されたと言いながら、具体的な中身は何もないのではないか、ということと『責任教授』とはどのような概念なのか明らかにしろ。それから二人目のプレプランをした患者のカルテは虚偽記載であるということ。本件のようなケースは国賠法ではなく民法が適用されるべきであること。そういう内容の準備書面を提出して陳述したところです。補助参加人の主張については竹下先生どうぞ(略)

著者注:竹下弁護士からは小線源講座は泌尿器科から独立していたこと。小線源講座設置の設置目的を根拠とした被告への反論、『責任教授』についての見解。発足当時は学長も小線源講座の独立を認めていたことなどが解説された)

準備書面の内容は以上の通りですね。そ例外にきょう行われたこととして、被告から送付嘱託の申し出がありました。1例目、2例目のプレプランをした患者ですね。2例目の方には説明をしたということが書かれている。それが虚偽であるということを参加人から証拠として提出してあるのですが、そのカルテの全体について送付嘱託をしてきました。

1例目、2例目の方は本件の原告ではないのでこれらの方々の症状は本件とは関係がないと思うし、いったい何を立証したいのかよくわからないので「必要性がない」と意見をだしましたけど、裁判所は採用された。次回期日までに出てくるだろうと思います。今後の予定については被告側は次回までにに人証の申請をするということでした。被告両名だけではなくて、学長、院長のほかそれ以外の大学の関係者。それから医学的評価についての証人も検討しているということですので、多数の尋問申請があるのかもしれません。裁判所はベストエビデンスに反するのではないかということで、ちょっと牽制をしていましたけど次回までに明らかになると思います。次回には主張のやり取りが終わって人証が決まって次々回以降本人尋問、証人尋問に入るという運びになるものと思います。以上です」

続いてこの問題を積極的に取材している毎日放送の橋本記者から、弾劾証拠や、この日の法廷の感想、仮処分決定が本訴訟に与える影響についての質問があった。ABCの浜田記者は原告大河内さんに感想を求めた。

滋賀医大への危機感を語る原告の大河内さん

大河内さんは、「長年、滋賀医大にお世話になった立場からすると、非常に信頼しておりました。今回のこの件で『こんなことがあるんだ』と。滋賀医大は医師を育てる大学でしょ。それが(患者を)医師が実験台というかモルモットという扱いをしていることに、非常に憤りを覚えました。私も危うく命を落とすところだったかなと思っておりました。こういうことがあっては今後よくないということで、訴訟に踏み切ったわけですけれども、そのあとの対応がもっと酷くなっていますね。患者の皆さんの命をを見捨てるような行動に出ている。姿勢を正してくれればいいかなと、いうつもりで始めたのですが、医大の3人組というか4人組というか、そういう人たちが変な方向に舵を切っていって、命を粗末にするようなふるまいをしている。こちらのほうが非常に危険を感じ、危機感を持っています。是非とも滋賀医大が医の倫理を取り戻せるように、我々も頑張りたいし、皆さんも一緒に頑張って頂きたいと思っております」

大河内さんのコメントの後、会場から拍手が沸き上がった。

滋賀医大に関する、訴訟や仮処分で大津地裁に足を向けるのは何回目になるだろうか。大河内さんが指摘されたように、一部の人間により大学病院全体がますますダッチロールの度合いを増しているように感じられて仕方がない。何度も強調するが、自分の生活を犠牲にしても患者に寄り添う医師や医療関係者が大多数の滋賀医大附属病院にとって、3人組もしくは4人組は、文字通り悪の権化である。

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号

〈原発なき社会〉を目指して 創刊5周年『NO NUKES voice』20号 【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

6月1日、JR草津駅東口の広場を、「岡本圭生医師による前立腺がん小線源治療継続」を求める人々が埋め尽くした。患者会による集会とデモが行われ約150名が参加した。 12時30分から始まった集会では、「滋賀医大小線源講座患者会」の代表幹事の宮野さんが口火を切った。

集会に集まった患者会メンバー

集会・デモの意義を説明する宮野さん

「市民の皆さん、お騒がせしております。私たちは滋賀医科大学附属病院で、前立腺がんの小線源治療を受けた患者と、まだ、治療の予定が立っていない患者と、その家族です。滋賀医科大学附属病院には高リスクの前立腺がんでも95%以上、再発させない治療ができる、岡本圭生医師がおられます。
 ところが、滋賀医附属病院は岡本医師の治療を7月で終わり、12月には病院から追い出そうとしました。まったく患者にはわからない。まさに『白い巨塔』です。岡本医師の治療を望む患者は、裁判所から仮処分決定を頂き、7月からの手術は認められたのですが、病院は12月には『何が何でも岡本医師を追い出そう』と妨害をしてきております。
 しかし、私たちは負けません! 岡本医師に命を救ってほしいと願う患者が、今日もこのデモ行進に全国各地から参加しております。私たちは救われる命が、見捨てられようとする。この現実を断じて許すことができません。市民の皆さん、どうか、岡本医師の小線源治療が12月以降も滋賀医科大学附属病院で継続されますよう、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます」

と力強く集会とデモの趣旨を訴えた。       

鳥居さん

引き続き「仮処分勝利」によって岡本医師の治療の機会を勝ち取った鳥居さんがマイクを握った。

「私は昨年5月に人間ドックを受けた際に、数値に異常が指摘され、再検査の結果8月に前立腺がんに罹患していることが判明しました。それも高リスクの前立腺がん。目の前が真っ暗になりました。そんなときに岡本先生との出会いがありました。非再発率96.3%。『大丈夫。私が必ず治してあげるから』と岡本先生は言ってくださり、妻が帰りに『よろしくお願いします』と挨拶すると、先生は妻の目をしっかりと見ながら『こちらこそよろしくお願いします』と言ってくださいました。
 しかし、岡本先生の治療が今年の6月で終了と知らされました。せっかくつかんだ一縷の望みが消えかかりました。そこから熱い闘いが始まりました。きょうここに集まってくれている心強い仲間たち。既に岡本先生の治療が終わっているにもかかわらず、私たち『待機患者のために』と全国から手弁当で駆けつけてくれる仲間たち。ともに闘いました。
 そして5月20日私たちは11月26日まで、岡本先生の治療を延長しなさいという裁判所からの決定を勝ち取りました。その場にいた仲間たちは自分のことのように涙を浮かべて喜んでくれました。
 しかし、裁判所の決定にもかかわらずいまだ不穏な動きをやめない滋賀医大の病院長。どうしてそうなったかとの説明会見も一切実施しない無責任な対応。滋賀医大の病院長は人道主義を貫いて、患者を守ろうとしている岡本医師の治療の妨害はやめてください。前立腺がんの世界的名医である岡本先生の治療を、私たち以上に待っている待機患者の希望を打ち砕かないでください。私たちは今度は後に待っている待機患者のために、ここにいる患者会の皆とともに闘い抜くことを誓います」

と喜びと決意を語った。

宮内さん

ついでやはり待機患者の宮内さんが語った。

「私たち患者会は『岡本メソッド』の恩恵を受けたものとして、つまり『中・高リスク』の前立腺がんを患ったにもかかわらず、ほぼ100%完治し、生活に支障をきたすことなく平穏に暮らせるものとして、岡本先生の滋賀医大での勤務継続を勝ち取るべく闘っております。
 世間での誤解について、その真実をお伝えしたいと思います。(略)『しょせん大学の教授間の派閥争いじゃないの』という意見、これは間違いです。一人の医師とそれを支える患者たち。対する大学病院幹部の闘いなのです。この構造を考えていただければ答えはすぐに出ます。
 なぜ、すでに完治した多くの患者が一人の医師支えて闘うのでしょうか。岡本メソッドの素晴らしさを文字通り体験した患者たちが、『その恩恵を未来の患者さんたちにも享受していただきたい』という姿。対してその評判が自分たちの権力欲、名誉欲の邪魔になると考える大学病院の幹部たちとの闘いです。現に大学病院の幹部は違法行為で刑事告訴されております(著者注:告訴状は未受理)。このような方々にはすぐに退いていただきたいのです。
 最後に、『岡本医師は他の病院に行けばいいじゃないの。そんな優秀な先生であれば引く手あまたでしょう』という声。たしかに目の前の患者を救うだけであれば、その意見は一理あります。しかし、我々が求めるのは、人の命をないがしろにする病院の体質改善と、岡本メソッドの全国展開です。そのためには教育機関である 滋賀医科大学に岡本先生が残って頂き、全国の若手医師の指導を継続していただく必要があります。岡本メソッドの全国展開と、早期発見で、日本人の死因から、前立腺がんが消えます。そんな夢のある未来に対して闘っております。ご支援よろしくお願いいたします」

鳥居さんも宮内さんもご自身の治療は、まだであるのにすでに「未来の患者」のために日差しの強いデモ行進への参加を決められた。スピーチには立たれなかったものの、この日の集会・デモにはほかにも5月20日の仮処分により、岡本医師の治療を勝ち取られた方々が遠方からも参加されてていた。東北や沖縄からの参加者もあった。

患者会による草津駅市周辺でのデモ は1月12日に続き2回目だ。1月12日の集会とデモは真冬にしては穏やかな日和だったが、この日は湿度は低いものの、きつい大陽が照り付けた。

先頭が出発してもまだ動き出せない後尾のデモ参加者。3名のコーラーが指示しながら、デモ隊は前回と同じコースを進んだ

本音が……

滋賀医大病院に対しては、本通信でお伝えしている通り、5月20日、大津地裁で「 11月26日まで岡本医師の治療を病院は妨害してはならない」との仮処分決定が命じられている。

この決定を受け、わたしは5月23日滋賀医大に、
(1)仮処分の決定について大学としてどう認識しているか?
(2)岡本医師の新患患者の受付が止まっているが、その点どう対処するか?
(3)滋賀医大の認識・判断が根源的に間違っていた、と裁判所は判断したが松末病院長の責任をどう考えているか? 
を電話で質問した。

が、回答がなく、翌24日にメールで回答があった。内容は「決定理由を踏まえて適切に対処します」だけであった。私の質問への回答になっていないので、「社会的存在の滋賀医大には説明責任があるので記者会見を開いてほしい」旨電話で広報担当者に告げておいた。

長蛇のデモ隊に注目する買い物客たち

患者会関係者によると、個別には岡本医師の治療を希望する、新規患者の受け入れを一部再開しているとの情報もあるが、滋賀医大病院のHPでは6月1日現在そのような告知は確認できない。停止していた新規患者の受け入れを再開したのであればHP告知しなければ、全国で岡本医師の治療を待っている患者さんに、伝わらないのではないか。

この問題は、朝日新聞、毎日放送などが継続的に取材報道を続けている。毎日放送は6月30日になんと1時間のドキュメンタリーを放送する予定だという。鹿砦社も微力ながら引き続き滋賀医大問題を注視し続ける。

デモ終盤になっても熱量は衰えない

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▼田所敏夫(たどころ としお)
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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

◆丸山穂高議員の発言は「失言」でなく、「本音」である

 

丸山穂高議員のHPより

過日、「日本維新の会」所属の丸山穂高議員が、「北方領土を取り返すには戦争しかない」との趣旨を発信し、「日本維新の会」から除名された。あらまあとしか言いようがないが、丸山議員は「失言」を発したのではなく、本音を発信したとわたしは考える。

そもそも「失言」によっての党籍除名や議員辞職勧告はおかしいのではないか。丸山議員の発言は失言でも、勘違いでもなく、本心がポロリと出たのであり、あの高須クリニックの院長先生も応援しているではないか。

本当の問題はこのような議員を当選させてしまっている、いまの選挙制度、政党の体たらく、さらには有権者の見識のなさではないのか。候補者や議員の本音こそが問題にされるべきではないか。

◆安倍晋三の「本心」をわれわれはもっと検証・議論すべきである

政治家は「失言」により、失脚することが多いが、「失言」よりも「本心」のほうが大切ではないだろうか。安倍晋三を例に挙げれば「さらなる軍備増強を図り、核武装をしたうえでアジア諸国を威嚇し、かつての大東亜共栄圏に匹敵する覇権を日本は握りたい。

そのためには国民の権利を大幅に奪い、緊急事態条項を設け、戒厳令を敷ける法整備を行い、天皇を元首と明記し、政権が使いやすい道具としてその存在を再規定したい」といったところであろうか。

こういった本音に接したら(接しても)安倍自民党に投票する人が多数なのであれば、仕方ない。もう希望などはない。けれども「え! そんなことまで考えてるの?」と多少はいぶかる方々も出ては来るのではないだろうか(極めて根拠の薄い期待であるが)。本来メディアの仕事は政治家の本心を探り出し、報じることであるのではないかと思うが、いかにも機能不全の度が過ぎる。

◆関西ネオリベの起源と拡大──「松下政経塾」から「維新」へ

さて、丸山穂高議員は東京大学後、経産省に勤務し、原子力保安院などを歴任したのちに退官。かの「松下政経塾」の出身者でもある。政界における「松下政経塾」出身者とは、改憲を志向し、時代錯誤な「日本誇大妄想」をいまだに抱き続ける困った人たち(本当は別の表現を使いたいところではあるが……)の集団である。

そして「維新」勢力は、総論自民党の主張とかわりないものの「なにか新しい」と勘違いさせるのに長けた連中である。「維新」の政策と自民党の政策を横に並べてみるがいい。ほとんど変わりはしないことが一目瞭然だ。

かつて橋下徹氏が大阪府知事選挙に出馬した際になにを連呼していたか?「地番沈下した大阪経済を活性化させるために、ヒト・モノ・カネを大阪に集めて……」である。なんのことはない。すでにその機能が失われた、従来の集中都市型の成長神話(高度成長期に時代の発想)を周回遅れで、連呼しているに過ぎない。「ハコもの、イベント」戦略だ。

そこにカジノがプラスされることだけが新しい(たちが悪い)。21世紀になって「万博」を呼んでどうする。黒字の地下鉄を民営化するのはなぜだ。津波が来たら一番最初に被害にあい機能不全が確実な咲州庁舎は災害の時に混乱要因ではないのか……。大阪をめぐる問題は数多いが本質的な問題に迫る言論はまれである。本通信に釜ヶ崎の問題を連続して報告してくださっている尾崎さんの活躍が際立っている。

◆「世襲」自民と「ネオリベ・エリート」維新が「改憲」で繋がるファッショ

 

大阪維新の会の主要役員(大阪維新の会HPより

さて、自民党と「維新」勢力唯一の違いは、自民党に在籍すると世襲議員が優遇される傾向が強いが、「維新」は歴史が浅いので、世襲ではない議員が比較的多いことくらいである。それにしても戦慄すべきは、1984年生まれの丸山議員は東大から経産省とエリートコースを邁進してきたわけだが、霞が関には丸山議員と似たような考えの官僚が、かなり生息しているであろうと推測されることである。

これは根拠のない推測ではない。わたしはある若手の高級官僚が自身の実名Facebookで、被疑者の「殺処分」(死刑以前に殺してしまう)を提案している事実を知り、当該部署の責任者に取材し見解を求めたが、責任者はその重大さに気が付くのに30分近くかかった経験がある。

見ているがいい。わたしは、金輪際望まないが、もし「改憲」がさらに現実味を帯びてきたら、自民党と「維新」は仲良く手をつなぐに違いない。「新自由主義」と「軍国主義」を指向し、アジア蔑視を徹底する点で、自民党も「維新」も何の違いもない。であるのに、いまだに「維新」幻想から覚めない方々が少なくない。本コラムの筆者にもそのような方はいらっしゃる。わたしにはまったく理解のできない感性である。

あるいは東京にお住まいの方や関西以外の方々にはあまりリアリティーがないかもしれないが、大阪市議会の会派別構成を見れば、その尋常ではない様子がご理解いただけよう。大阪市議会の定数は88人。うち「大阪維新の会」が51人、自民党が16人、公明党が15人、共産党が2人、旧民主系が2人、諸派2人だ。国政では与党の自公プラス「維新」で9割以上の議席が占められているのだ。この構成比は大阪府議会も大きく変わりはしない。

府政与党と国政与党が9割の議席を超えれば、「少数意見」などまったく府政には反映されない「異常事態」と本来は大騒ぎにならねばおかしい。政界を引退したと自認する、橋下徹のコメントなどをマスコミは喜んで拾うべきではないのだ。中国や朝鮮は形ばかりの「選挙」を行い、その欺瞞ぶりは誰の目にも明らかであるが、この島国では、一応民主的な選挙を行っても、大阪では極右と国政与党勢力に9割の議席が与えられる。

久しぶりにタバコが吸いたくなった。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

決定を前に勝利を確信して語る宮内さん

5月20日、滋賀医大小線源講座で岡本圭生医師の治療を希望しながら、病院側の一方的な通告により岡本医師の手術を受けることができない、ハイリスク前立腺がん7名の患者さんと岡本医師が「治療妨害の禁止」を求め、大津地裁に仮処分を申し立てていた事件について、大津地裁(西岡繁泰靖裁判長)は、岡本医師の申立てを全面的に認める決定を下した。

患者さんと岡本医師には、代理人を通じて「(5月)20日に決定を出す」と5月17日に連絡が入っていたそうだ。

決定の発表を控えて申立人の宮内さんは、既に勝利を前提とした心境を明かしていた。

裁判所に入る宮内さんと鳥居さん

「たぶん常識的な判断を裁判所はしてくれると思います。でもこれで終わりじゃないんですよね。文字通り『同病相憐れむ』ではないですが、我々の後に患者になられる方が、ほとんど確実に治る治療を受けたくなるのが当たり前です。そのためには岡本先生に大学に残って頂いて後進を育てていただきたいです。これはまだ一里塚で本当のゴールは『岡本メソッド』が全国どこでも不安なく享受できる姿になるべきだと思います」

これまで滋賀医大問題では行政への申し入れや、街頭活動も当初は朝日新聞を除き大手メディアは一切無視。黒藪哲哉さんが参戦していただいたころからようやくマスコミの注目が集まり始めた。

あの頃を思い返すとわたし自身、妥当な決定を確信していたが、宮内さんよりも内心、最悪のケースへの懸念が抜けなかったのが正直な心境だ。

軽快な足取りで駆け出してくる宮内さんと鳥居さん

13時30分、弁護団と申し立て患者、鳥居さんと宮内さんが大津地裁に入った。

13時36分頃、裁判所内で決定書を受け取った鳥居さんと宮内さんが、裁判所玄関から正門へ向かい駆け出してきた。

二人は朗らかな表情で「待機患者の救済認められる!」のメッセージを裁判所の外で待つ患者会メンバーと、マスコミに掲げた。

「おめでとう!」の声と拍手が沸き起こった。鳥居さんは、決定内容への質問に対して「われわれ7人だけではなく、現在岡本先生の治療を受けて手術を希望している患者の11月までの手術も認められました!」と満面の笑顔で語った。

文字通りの完全勝利であった。

笑顔で勝利のメッセージを掲げる

「裁判所は病院に強い警告を発した」と解説する小原弁護士

16時30分から教育会館で岡本医師も参加し記者会見が開かれた。弁護団の石川賢治弁護士と小原弁護士が決定内容とその意義を解説した。

小原弁護士は、決定について、「岡本医師の申立てははほぼすべて認められた一方で患者側の訴えは却下ですが、内容を拝見しますと、患者も治療を受けられる結果に変わりはありません。したがって我々から見ると、『病院が医師の治療を制限した』措置に対して『そのような制限は許されない』と裁判所が、強い警告を導いたと理解しています。前例のないケースについて画期的な判断をしていただいたと理解しております。今回大津地裁の決定に対して深い敬意を表したいと思います。特に待機患者の方々は高リスクの前立腺がんを抱えた方々です。こうした人々の治療が放置されることに対して、裁判所としても強い警告を発したといっていいのかと思います。患者に寄り添った判断をしていただいたと思います。個人的な感想ですが最近の裁判所は、ともすると大きな組織に対してはその措置を覆すことに、ためらいがちだという印象を持っておりましたが、今回の大津地裁は果敢な判断をしていただき、きちっとした患者の立場に立った判断が行われたと考えております。大学あるいは病院に、是非要請したいことは、裁判所がメッセージとして発した『患者を第一に考える』を強く受け止めていただいて、是非この決定に対しては、異議の申し立て等をせず、すぐさま7月以降治療にとりかかれるよう強く要望したいと思います」と評価した。

決定への感想を述べる岡本医師

続いて岡本医師がコメントを求められた。

「今回私の治療を頼って、全国から来られている患者さんに対して、私の治療を認めるという判断が司法からなされたことで、前立腺癌で私を受診し治療を待望し、今や遅しと待って頂いている方にとって、大変ありがたい判断をしていただいたと思っております。担当医として裁判所の適正な判断に、心から敬意と感謝を表したいと思います。今回の仮処分においてわれわれが提起した問題はなにかということは、そもそも『医療とは誰のものなのか』。『医療とは誰のために行われるものか』という、根本的な問いであります。いうまでもなく医療は患者さんのために存在し、患者さんを救うために行われるべきです。医療を守っていく立場の人間の一人として、今回、医療の秩序を守るべき決定がなされたこと今後社会的にも大変重要な意義を持つのではないかと考えます。やはり医師の使命は『患者ファースト』であり『患者さんの命を救う』ことです。それが阻害される医療環境、あるいは教育機関であっては医療は立ち行かないと思います。これを機に医療の在り方を、メディアの方・社会もしっかり考えていただいて、あるべき姿に戻していただきたい、と強く望む次第です」と岡本医師は断言した。

喜びと覚悟を語る鳥居さん

続いて待機患者の鳥居さんが感想を述べた。

「今回こういう結果になって本当に喜んでおります。弁護士の先生方には深くお礼を申し上げたいです。それ以上に患者会の皆様。『待機患者のために』と本当にいろいろなことをしていただいたことに、頭が下がる思いでございます。ありがとうございました。皆様のおかげでこういう結果を勝ち取れたと思っています。ただ個人としては喜んでいますが、11月26日ということはそれ以降のことは、まだ未定なのでその点では心配しています。というのも非常に多くの方が岡本先生の治療を受けたいという声が上がっているからです。たくさん待っておられる方のことを考えると、これからが勝負のしどころ、と肝に銘じています。治療が終わって完治しましたら、今度は患者会の方々がわたしたちにしていただいた、それ以上の行動をして、前立腺がんで苦しんでいる患者のためにできることをしてゆきたいと思います」と将来への展望も含め感想を語った。

ついで宮内さんも「患者に寄り添った命令を出していただいた裁判所に感謝申し上げます。弁護団の先生方、マスコミの方々にもお力添えを頂き、同僚といったらおかしいですが、患者会の皆さんにも、自らの治療が終わっているにもかかわらず我々患者のために動いていただいたことを心から感謝申し上げます」と感謝の念を述べた。宮内さんは続いて、決定が出る前に伺ったの同様の内容とコメントした。

このニュースは関西地方で同日の夕刻、MBS、ABC、関西テレビ、琵琶湖テレビで放送された。ところがNHKテレビカメラの姿は、裁判所前にも、記者会見の席にもなかった。また、記者会見で京都滋賀に大きな力を持つ新聞の記者は、決定の意味を意図的に薄めようとしているかのような質問を発していた。

滋賀医大がこの決定を不服と判断すれば、法的には「仮処分異議」をおこなうことができる。しかし、その行為はすなはち「司法の判断を受けても、患者に治療をさせない=命の大切さを度外視する」ものであることは理解されよう。この決定が確定し、ごく当たり前に手術を受ける権利を持つ患者さんたちが、安心した健康を取り戻す日を切望せずにはいられない。弁護団、マスメディアの誰もが口にしていたが、歴史的な決定が出た一日であった。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

5月10日、滋賀医大附属病院小線源講座岡本圭生特任教授が、同大学病院泌尿器科の河内明宏教授を相手取り「有印私文書偽造」の刑事告訴を大津市警察に行った。岡本医師は代理人を立て10日14時30分から16時頃まで大津市警察内で担当の係官に情況説明を行った。

2019年5月10日付ABCニュースより

※2019年5月10日付ABCニュース(動画あり)のURLへ

弁護団長の井戸弁護士(2019年4月9日)

同時に小線源治療講座患者であった5名が「FACT-P」(生活状態調査)の「私文書偽造」(改竄)を「被疑者不詳」で同時に大津市警察にやはり代理人を立て告発を行った。患者代理人の井戸謙一弁護士によると、「2件ともまだ正式な受理はされていないが、『上司、県警本部と相談して対応を検討する』という答えだった。2時間以上にわたり詳しく話を聞いてくれた」とのことである。

数々の問題が山積する滋賀医大附属病院問題は、いよいよ民事事件としてだけではなく、「刑事事件」としての歩みを前に進めそうだ。滋賀医大附属病院よ、その大半を占める良識に満ちた医療関係者の皆さん!もう「私は知らない」では許されない。滋賀医大附属病院の将来のために、患者のために、あなた方の奮起がいま求められている。

ちなみに岡本医師や「滋賀医大小線源患者会」には、さらなる追撃材料もあるとの情報もある。

岡本医師に今回の告訴についてのコメントを求めたところ「告訴については事実に基づいて弁護士の先生方にお願いしました。それだけです。私の使命は、目の前の患者さん、私の治療を希望される患者さんの治療を実現するだけだと思っています」とのことであった。


◎[参考動画]滋賀医大による癌治療の妨害 岡本医師の妨害阻止に向けた闘い(安江博2019/2/11)

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タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

◆20年超に及ぶ就労目的留学大国・日本

東京福祉大学の留学生約700人が「失踪」して行方不明になったことが問題化している。700人はあまりにも多すぎるけれども、この手の話は大学にとって珍しいものではない。「失踪」は大学にとって由々しき問題であるが、4月から改正入管法で、単純労働者の受け入れが既に始まっている。

厳格にビザで外国人による労働を規制していた時代とは違うのであるから、この問題も入管法が根本的に変わったことを加味して論じられるのが妥当である。日本にお金を出して留学してくるひとの多くが実は「就労(金儲け)目的」であることは、どうやら20年前と変わってはいないようである。

20年前わたしは大学職員として、留学生とかかわる職務に従事していた。2000年を目標に「留学生10万人計画」という愚策が、中曽根総理によってぶち上げられたのは、日本がバブルの真っただ中で、対米輸出黒字がさんざん叩かれていた時代だった。「貿易収支のアンバランスを人の輸入で埋め合わせろ」というわけで、理屈よりも建前が先行して進められた乱暴かつ愚かな政策であったが、文部省(のちに文科省)は、大学の足元をみて留学生の受け入れを半ば強制した。


◎[参考動画]大勢の留学生“所在不明”受け大学に立ち入り調査(ANNnewsCH 2019/03/26公開)

◆「臨時定員(臨定)」という名の落とし穴

仕組みはこうだ。「臨時定員(臨定)」と呼ばれる、入学定員の割り増しが第二次ベビーブームを見越して、各大学に振り分け充てられていた。大学にとっては同じ施設、同じスタッフで割り増しの学生を受け入れることが許されるので「おいしい話」であった。だがその名の通り「臨時の定員」なので、18歳人口が増加から減少に転じるタイミングで各大学は「臨時定員」を文科省に返上しなければならなかった。ここに落とし穴があったのだ。大学はスケベ心を出さずに、さっさと「臨時定員」を返上して、元通りの定員に戻せばよかったものを、多くの大学は「臨定」のうまみが忘れられず、それを恒常的な定員化したいと考えた。

文科省は「臨定をそのまま維持したいのであれば定員の3割を留学生・帰国学生・社会人のいずれかで埋めなさい」と条件をだした。帰国学生(帰国子女)の数などごくわずかであるし、社会人が学生として大学で学ぶには、学費・入学時期・講義の開講時間など様々な障壁があり大量獲得は現実的ではない。そこで各大学がターゲットを絞ったのが留学生の獲得だった。

わたしの勤務していた大学もその波にのまれた。留学生の獲得のために日本国内の日本語学校や、アジア諸国を中心に学生募集に走り回った。そして今から考えれば身の丈にあわないほど多くの留学生を受け入れた。ただ、その大学は建学の理念に「国際主義」を掲げていたので、行政の強制による「留学生受け入れ」が強行される前から、地道に留学生を受け入れ、きめ細やかなケアーをしてきた蓄積があった。

先輩方からマニュアルとしてではなく実践でその実務を学びながら、わたしも留学生担当職員として数百人の留学生と接した。言い忘れたが、わたしが初めて留学生担当業務にかかわったのは、大量の留学生を受け入れる前のことだ。その頃は在籍する留学生全員の名前、年齢はもちろん、下宿やアルバイト先まで把握し、何か問題があれば徹底的に付き合っていた。警察や裁判所に出かけ社会勉強させてもらったのも、留学生のおかげである

◆一貫して、一貫していない入管行政に翻弄される

留学生に限らず、他国で暮らすのは刺激もあろうが、不便や不都合がついて回る。大学に入学できる日本語力を備えているので、日常生活に不自由することはないが、病気にかかったとき、交通事故にあったとき(これが非常に多かった)の対応などは、留学生本人だけで解決は難しく、われわれが手伝うことになる。そして留学生には「資格外活動」という呼称で上限を定めアルバイトが認められたが、風俗業(パチンコ、スナックなど)で働くことは許されていなかった。けれども数多くない留学生の中にも「夜の仕事」に従事し、割のいい収入を得ようとする者もいた。

当時、入国管理局(入管)に風俗営業で留学生が「資格外活動」をしている現場を押さえられたら、即強制送還だった。だから留学生が「夜の仕事」に就いていることがわかると、呼び出して「止めるように」説諭した。それでもとぼけて「そんなことやっていません」としらを切る留学生もいたが、わたしは、そのような場合留学生が働いている店に乗り込んで、現場を抑え就労を断念させた(そのために30分で4万円を自腹で支払ったこともあった)。

短期的には効率よく稼げるようでも、「夜の街」の仕事にはまると金銭感覚がマヒし、学業よりもアルバイトがメインになり大学へ姿を現さなくなる。最悪のケースは入管に踏み込まれ身柄を拘束され、強制送還だ。わたしの在職中にも数人強制送還された留学生がいた。そういった失点がつくと、他の留学生が入管でビザの延長をする際にも悪影響が出る。

入管のビザ申請手続きは、猫の目のようにころころ変わる。留学生への嫌がらせとしか思えないほど、煩雑で数多くの書類提出を求めていた時期があったかと思えば、突如「入学許可書と顔写真だけで」留学ビザが下りるように変更される。きのうまでのあの苦労はなんだったのかと思えるほど審査手順が頻繁に変更されるのが入管業務である(その延長線上に今回の単純労働者受け入れの「入管法改正」を考えれば、一貫して「一貫していない」入管行政の正体が理解されよう)。


◎[参考動画]東京福祉大学紹介(東京福祉大学入学課 2017/08/04公開)

◆中国人から見てもリーズナブルな旅行先となったインバウンド日本

中国だけでなくアジア各国、世界中からの旅行者が増加している。このことを冷静に考えよう。日本に来る旅行者の多くは「短期滞在」ビザを取得する。出発前に本国で取得しなても、日本空港に着いたらそこでビザが発給される国も増えてきた。そして20年まえにはまず認められることのなかった、中国からの個人旅行者へ簡単にビザが下りるようになった。日本訪問のビザ取得が簡易化されたことは、旅行者増加の一因ではある。加えて海外からの旅行者にとって、日本は比較的リーズナブルな旅行先となったことも重要な要因だ。バックパッカーが安宿に泊まって、ファーストフードで食事すれば1月滞在しても10数万円あれば充分生活可能だ。

つまり日本のデフレが観光客呼び込みの主要因であると、わたしは考えている。外国の貧乏学生でも日本を旅することは可能な時代になった。他方、それでもアジアを中心に、いまだに日本とは貨幣・経済格差の大きい国からは「金儲け」の場所として日本が見られていることも事実である。

すっかり聞かなくなったけど「おもてなし」は短期旅行者だけではなく、長期滞在者にこそ必要な配慮であり、冒頭上げた東京福祉大学の例をあげるまでもなく、日本全体の長期滞在外国人への接遇感覚は、単純労働者を受け入れられるとは到底いいがたいレベルに留まっており、この先「軽率な判断をした」と悔やみ、反省を迫られる日が必ずやってくる、とわたしは確信する。自国民もろくろく幸せにできない政権が、外国人労働者を手厚くもてなすはずなどない。これがわたしの推測の根拠である。


◎[参考動画]遠藤誉 東京福祉大学国際交流センター長(jnpc 2012/06/12公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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