共謀時審議の中で、散々な無能ぶりを発揮した法相金田勝年が7月13日、2名の死刑を執行した。金田自身が死刑執行を命じたのはこれで3名となる。この島国ではいまだに「復讐権」を国家に委ねる、前近代的な人権感覚が幅を利かしている。

2017年7月13日産経新聞

死刑とは、いかなる理由を付与しようとも「国家による殺人」にほかならない。

主として被害者感情を利用して、または、まったく効果などない「犯罪予防」を理由に「国家による殺人」がまた行われた。しかも西川氏は再審請求中であり、再審請求者への死刑執行は異例中の異例である。

金田はなぜ2017年7月13日に2名の死刑を執行したのか。それは7月11日に「共謀罪」が施行されたことと無関係だろうか。相次ぐ国会審議の中での失態により、内閣改造では法相を更迭されることが確実な金田に、この際最後の一仕事を法務省は押し付けたのか。

理由はどうでもよい。唯一にして最大の問題は、ようやく日弁連も「死刑廃止」に舵をきり、死刑についての議論が高まる機運が生じたことへ、国家意思は「再審請求中の人にも死刑を強行する」ことを国民に見せつけた、そして庶民レベルではまだまだ「死刑廃止」に対する意識の高まりがみられないことである。

「人を殺したのだから殺されて当然」という、当たり前のように聞こえてその実何の思索も行われていない感情論を耳にすることがあるが、「人を殺したら殺されて当然」だろうか。

金田勝年法務大臣

◆「殺人」行為と「死刑」を短絡的に結び付ける大いなる誤解

戦争はどうだ? あらゆる戦争で戦勝国の兵士が敗戦国の兵士や民間人を殺戮したことにより、裁かれ「死刑」になることがあるだろうか。「戦争」だから殺人は免罪されるのか。また、まったくの不幸なめぐりあわせによる交通事故はどうだ。運転手に微塵の殺意がなくとも、意識不明に陥ったりして複数人の犠牲者が出ることがある。それでも加害者は「死刑」に相当するか(判例上このような加害者で死刑になった人はない)。つまり「殺人」という行為と「死刑」を短絡的に結び付けることは大いなる誤解であるということである。

そして、仮に大量殺人の真犯人であっても、その人に死刑を執行することにより、被害者の生命が回復するのか。被害者感情は本当に回復されるのか。殺人でなくとも、加害者に復讐心を抱くことは日常的に起きているのではないか。そのような個人の復讐心の物理的遂行をとどめる為に、近代法は構成されているのではないか。

そうであるので「死刑」制度の存置自体が近代法の精神にはそぐわず、むしろ前近代的な制度であると、近代法を導入した多くの国家は認識し、「死刑」を廃止したのだ。欧州のほぼ全域、そして制度上は廃止されてはいないが、韓国も死刑の執行を行わないことにより、実質的な死刑廃止国となっている。

金田勝年法務大臣

◆特定秘密保護法・共謀罪のすぐ向こうには「死刑」がある

さらにあまり知られていないが、「一人として人を殺さなくとも」「死刑」以外の処罰がない罪がある。「外患誘致罪」だ。外国の軍隊を国内に招き入れたり、外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者を罰するのが「外患誘致罪」だ。この容疑で逮捕された人は、冤罪であっても死刑を覚悟せねばならない。

おかしくないか。日本には米軍が駐留している。日米安保があるとはいえ、条約は法律よりも優位なのか。米軍が日本に駐留しているのが当たり前になっているので、こんな珍説を説く人はいないが、歴代政権は「外患誘致罪」を継続的に実践してきている。さらには集団的自衛権容認により、よりいっそう外国の軍隊がこの島国に上陸する可能性が増した。これは国家的「外患誘致」導入への地ならしではないか。しかし当然のことながら、国家への「死刑」などは制度上存在しない(例外的に、「革命」が起きればそれに相当しよう)。

売り物が無くなったマスコミが安倍政権に背を向けだした。政権へのマスコミの風向きは月刊『文藝春秋』の特集を注視していると解かりやすい。安倍政権批判が全面解禁されたのは今回も6月9日発売の『文藝春秋』7月号「驕れる安倍一強への反旗」が掲載されて以降だ。右派も含め安倍政権叩きが本格化している。

長きにわたった不幸極まりない安倍政権末期にあり、強行された死刑について我々はわすれてはならない。特定秘密保護法・共謀罪のすぐ向こうには「死刑」がある。他人事ではない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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あなたは、台湾に行ったことがあるだろうか。そして、日本統治下や国民党戒厳令下の歴史や、「原住民」の人々のことを知っているか。

酒井充子監督 1969年、山口県生まれ。大学卒業後、メーカー勤務ののち新聞記者となる。台湾の日本語世代が日本への様々な思いを語る初監督作品『台湾人生』が2009年に公開された。以後、『空を拓く-建築家・郭茂林という男』(2013年)、『台湾アイデンティティー』(2013年)、『ふたつの祖国、ひとつの愛-イ・ジュンソプの妻-』(2014年)を制作。著書に『台湾人生』(2010年、文藝春秋)がある。現在、故郷・周南市と台東縣の懸け橋となるべく奮闘中 (撮影:小林蓮実)

2017年7月22日土曜日より、酒井充子監督ドキュメンタリー台湾3部作最終章『台湾萬歳』が、ポレポレ東中野ほか全国順次公開となる。それにともない、筆者は先日、台湾の台東縣を訪れたが、このことは次週以降に譲る。

本作は、日本統治時代の愛国教育の徹底や戦後の国民党の戒厳令下などを描き出した『台湾人生』、台湾で生まれ育つも時代に翻弄されざるをえなかったそれぞれの生き様をとらえた『台湾アイデンティティー』に続くもの。戦争を体験しながらも漁師として生きてきた張旺仔さん、同様に漁師だが戦後生まれの「原住民」アミ族のオヤウさん夫妻、パイワン族の父とブヌン族の母の間に生まれた中学校の歴史教師でシンガーソングライターのカトゥさんらが登場する。カメラは彼らの語り、衣食住などの生活、「歌い・踊り・祈る」姿を追う。

九州より少々小さい国土の台湾。先日、本作と台湾のことをより深く理解したいと考え、酒井監督へのインタビューをおこなった。

◆「張さんの地球」から描く、困難を経て現在の台湾があることの喜び

—— 酒井監督は、蔡明亮監督『愛情萬歳』をご覧になって台北を訪れ、侯孝賢監督『悲情城市』のロケ地をめぐっていた際に流ちょうな日本語でおじいさんに話しかけられたことを機に台湾への関心を深めたとお聞きしています。映画製作自体は、どのようなタイミングで決心されましたか。

酒井 『愛情萬歳』を1998年の夏に観て、その舞台となっていた台北に立ちたい・そこに行きたいと感じました。軽い気持ちで台湾へ向かったのです。私は現地でよく道を聞かれるほど台湾の人に見えるようなのですが、『悲情城市』の舞台である九份から台北に向かうバスを待っている際、遠くからトコトコと歩いてきたおじいさんに「日本からいらしたんですか」と流ちょうな日本語で話しかけられました。私は当時住んでいた「北海道から来ました」と答え、その後、おじいさんの幼少期に日本人教師にかわいがられたという思い出、再会の希望の話を聞かせてもらったのです。98年で戦後53年が経過しており、私は日本人の先生を思い続ける台湾人が存在することに衝撃を受け、歴史をきちんと知りたいと考えました。このたった1度の訪台で2000年、「台湾の映画を作る」と決意して新聞記者を辞めたのです。

—— 大変な決意と行動力ですね。では、3部作の構想は、いつからでしょうか。

酒井 制作を進めるうち、なし崩し的なものですね。台湾の日本語世代のおじいさんやおばあさんと出会って話を聴き、この声を届けたい、そのためにまずはこの1本(『台湾人生』)を完成させたいと考えました。また、白色テロ(民主化運動などに対する強権的な弾圧のこと。ここでは、中国で共産党との内戦に敗れた国民党が台湾に本拠地を移し、49〜87年の38年間にわたり戒厳令を敷いた時代の暴力的な直接行動を指す)や戒厳令下のことをもっと聴きたいと考えて『台湾アイデンティティー』を制作し、その最中にプロデューサーが「もう1本作って3部でしょう」と口にしたことが現実化しました。ただし、過去2作はインタビュー中心でしたが、今回は極力インタビューを控え、「生活を撮る」ことを意識した点が異なります。それにより、現在の台湾の時間が見えてくるのではないかと考えたのです。

—— 日本統治下や国民党戒厳令下のことは、徐々に知っていったのですか。現在、台湾といえば「親日」というイメージをもつくらいの人がほとんどかもしれませんが。

酒井 台湾の歴史について勉強しながら、映画を作っていきました。一般的には、日本が統治していたことすら知らない人も多いかもしれませんね。「親日」といっても、この2文字では語り尽くせませんし、何文字あっても足りません。表面的なことは身近に感じられますが、それだけではない、複雑なのです。

—— 『台湾人生』のラストに現場の人間同士の交流を見て胸を打たれ、『台湾アイデンティティー』にその発展を見ました。そしてルーツを辿りながら、『台湾萬歳』は「原住民」と地に足のついた生活者へと至ったのだと考えたのですが、個人的には繰り返し観るほど社会派の文脈中心では語りづらく、張さんの魅力あってこそのヒューマンドラマであり、タイトルから監督の台湾に対する愛と祈りとを受け取ったのです。そこで、監督ご自身が本作で伝えたかったことは、どのようなことでしょうか。

酒井 そうですね。いろいろなことがあったけれど、今の台湾があることの喜びでしょうか。そして、作り手が用いれば陳腐な表現になってしまうかもしれませんが、「人間賛歌」ですよね。

©『台湾萬歳』マクザム/太秦

—— では、監督にとって、張さんの魅力のポイントは、どこにあるでしょうか。

酒井 私は現役で働いている日本語世代を台湾の南側に求めていました。彼の第一印象は、あの笑顔と、下着のようなラフなシャツ1枚の姿だったからわかった働いてきた人ならではの胸板の厚さ。初対面から、運動の代わりのように、なんてことのない畑を愛してこまめに世話をしていて、惹かれましたね。私は山口県出身ですが、同郷の香月泰男という画家を愛しています。彼は『シベリヤ・シリーズ』を手がけ、花・野菜・果物・ヨーロッパの風景なども題材にしています。そして、『〈私の〉地球』という作品があり、出身地でありシベリヤから戻った後に過ごした大津郡三隅町(現・長門市)の家と森の半径数百メートルに手を描き、周囲にシベリヤ(日本軍捕虜の強制労働の地)、ホロンバイル(彼の通過した地)、インパール(日本軍の無謀な作戦で敗北を喫した地)、ガダルカナル(日本軍が米軍の物量に圧倒されて敗北した地)、サンフランシスコ(平和条約が締結された地)という地名を書きこんでいます。私は張さんの畑を目にした際、「ここは張さんの地球だ!」と感じました。そして、スタッフに香月泰男のことを話して「張さんの地球を撮りたい」と伝えたら、「わかった」と即答してもらえたのです。そして、5回、計100日の訪台で、最初の2回は1カ月ずつ成功鎮に戸建てを借り、私とスタッフ2人との合宿状態で撮影をおこないました。ただし、毎日カメラをまわすのでなく、張さんの話を聴きながらお茶を飲み、バナナをいただくような日も多くありましたね。

◆屈せず幾度でも立ち上がる台湾の人々の歴史と現在の姿

—— 私は活動家でもあり、ほしいものを獲得できることがある台湾・香港・韓国などの運動や社会をうらやましくも思っていました。先日、別件の取材で、LGBT関連法などの面からも進んでいることも知りました。でも、今回の訪台で、同行の仲間と「どこの社会も変えることの困難は同じだ」「台湾は正式な国として認められていないからこそ国際標準を目指さなければならない」などという会話も交わしたのです。酒井監督は、台湾の現在の社会について、どのようにお考えになりますでしょうか。

酒井 日本統治などは歴史的な事実であり、それを知ることは大切なことです。また、日本が台湾に学ぶべきこともあります。LGBT法や脱原発などの「超最先端」をアピールし、時代を先取りしていく国の立ち位置などですよね。台湾は、世界保健機関(WHO)総会に2009年よりオブザーバー参加してきましたが、17年、中国の圧力で参加が認められませんでした。そのようなことが起こっても台湾はめげることはありませんし、独自のスタンスを示し続けなければなりません。また、末端の声が、国を代表する声になりうる状況ですが、先日、台湾移民を取り上げたドキュメンタリー『海の彼方』の黄胤毓監督は「抵抗すべきことが多くあり、為政者に立ち向かう声が大きくならざるをえない」という旨のことを語っていました。韓国も台湾も80年代に民主化運動が起こり、自らの手で自由を勝ち取ります。日本の戦後、アメリカとの関係などをかんがみれば、大きな違いがあるでしょう。

—— 韓国とアメリカとの関係は、日米関係と似たところはありますが、たしかに大きく異なりますね。とにかく、このような記録には時間的な制限があるとは思いますが、もっと台湾のことも知ることで、日本人が「棄てた」台湾の人々への支援や、原住民の人々・独立についての支援、日本から足を運ぶ人の拡大などにつなげていきたいとも「夢想」しています。

酒井 『台湾人生』に登場してくれた5人のうち4人の方が亡くなり、同様の証言を撮影できるのもあと5〜10年間でしょう。原住民族の村もさまざまです。カトゥさんのブヌン族の村には一体感があり、精神的な豊かさに魅力を感じました。いっぽうで、村全体の佇まいからさびしさや貧しさが伝わる村も多くあります。原住民に対する助成金もありますが、それに頼ってしまうような現状もあって私は、それは大きな課題ではないかと考えています。『台湾人生』のタリグさんによる「名前が日本人や中国人に変わっても、自分が原住民であることを忘れてはならない」「原住民がいなければ今の台湾はない」という言葉が無意識に私の中に残り、それが『台湾萬歳』に結びついたのでしょう。実は、台湾でまだ行ったことのない場所を対象とする次回作の構想もあります。

—— それでは最後に、読者に伝えたいメッセージはありますか。

酒井 とにかく「台湾に行ってください」と伝えたいですね。特に、台湾の人口に比し、原住民の割合は2.3%ですが、台東縣ではそれが3割強にのぼります。『台湾人生』にご登場いただいた唯一の生存者であり、二二八紀念館(1947年に国民党の専売局闇タバコ摘発隊が台湾人女性に暴行を加え、これに抗議した群衆に摘発隊が発砲して1人を殺害。これに対し、2月28日に抗議デモがおこなわれたが憲兵隊による一斉掃射で多数の市民が死傷し、政府関連施設や中国人に対する抗議行動や襲撃事件が全島に拡大した「二二八事件」を伝える場所)でボランティア解説員を務めていた蕭錦文さんは現在引退していますが、会えることもあるかもしれません。そして、『台湾萬歳』はぜひ、笑いながら観てください。

◎台湾3部作最終章『台湾萬歳』http://taiwan-banzai.com/
 7月22日(土)よりポレポレ東中野にて公開ほか全国順次


[参考動画]映画『台湾萬歳』予告編(CINRA NET 2017年6月2日公開)

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)
1972年、千葉県生まれ。大学卒業後、広告代理店・制作会社、サポート校、編集プロダクションを経てフリーライター、エディターとなる。『紙の爆弾』『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『労働情報』などに寄稿。映画評・監督インタビュー執筆、映画パンフレット制作・寄稿、イベント司会なども手がける。ドキュメンタリーや60〜70年代の邦画を好む。また、労働や女性などに関する社会運動に携わる。小林蓮実Facebook 

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◆M君が心底信頼していた趙博

取材班が初めてM君に面会したとき、M君は趙博を心底信頼していた。趙博は「パギやん」とも呼ばれているが、会話の中で「そんなことわかってくれるのはパギやんくらいですかね」というM君の言葉を取材班はたびたび聞いた記憶がある。事後の相談のため、松岡と取材班の一部、M君、趙博らで一度顔合わせをしようということになり、大阪駅近くの居酒屋で顔を合わせた。なにせM君の数少ない支援者であるから松岡をはじめ、取材班の一部も打ち解けて趙と話をした。

だが、その時初対面であった趙の眼差しの印象を、複数の人間は同じ感想で見つめていたことがのちに判明する。趙の目の奥には曰く言い難い「暗さ」があった。しかしその「暗さ」がまさか下記のような展開を誘引する、とまで考えたものは参加者にはいなかった。趙は饒舌であり、また舌鋒も鋭かった。李信恵への人格批判もここには書けないほど凄まじかった。

趙は、

「辛淑玉さん、政治感覚全然ダメ! あのひと全然わかってないから」

「カウンターとか何とか言ってる在日の奴らには『チョン公死ね』言われたくらいでゴタゴタぬかすなって言いたい。1世2世の人たちはどんな思いをして生きてきたか全然奴らわかってない」

「今の運動、変ですよね。なんか変。集まってるのアホばっかりやもん」

など、われわれ外部の人間からすれば、はばかられるような、驚くべき発言を多く聞いた。

趙の見解すべてに参加者が同意したわけではないが、少なくともM君が受けている仕打ちがひどい、ひど過ぎるという点では一致していた(はずであった)。

◆5月6日、趙博の豹変

しかしそれから何が起きたのか、趙は5月5日突如李信恵と会談をする。5月6日に、趙は松岡を含む複数の人間に以下の内容のメールを送っている。

《昨日、李信恵とじっくり話しました。先ず、信義の問題として私が謝罪します。次に、被害者Mの誇張と嘘がはっきりしました。今日、彼と会う約束でしたが「精神的にしんどいので日を改めて欲しい」とのことでした。僕は逃げたと判断します(後略)》

また趙は翌日5月7日にはフェイスブックにもほぼ同内容の長文を掲載している。

今になってはっきりわかるのは、5月5日「趙博─李信恵会談」で、趙は相当厳しい「何か」を李側から突き付けられたのではないかということだ。趙にとっては可及的速やかに「転向声明」を出し、状況をこれまでと逆の方向に動かさねばならない役割に置かれるほど「重大な何か」だ。

その証拠は、下記の通話も含み、趙がM君の「誇張や嘘」と表現している内容につき、何ひとつ具体的な指摘を行っていない(行えない)こと、普段はそれほど頻繁に書き込まないツイッターやフェイスブックに間を置かず、「謝罪」を表明し、同時に取材班の田所にまで電話をして「印象操作」を試みた慌てぶりから明らかだ。

趙は李信恵と会った数日後からM君に「直接話したい」と連絡をよこしだした。松岡はじめ、取材班は「絶対に会いに行くべきではない」とM君を説得したが、これまで世話になった恩義を感じていたM君は「どんな話になるかわからないけど、男と男の話をしてきます」などと思い詰める場面もあった。きわめて危険な罠だった。しかし松岡らの強い説得により、M君は趙との面会を回避することができた。そのM君に対して趙が、どのように語ったか。

◆5月16日、趙博からの電話

下記は5月5日の「趙博─李信恵会談」から10日ほど経った5月16日、18時11分趙博から田所へかかってきた電話の内容だ。

  色んなデマを流されたことに関して、殴ったことに関して、もちろん殴ったことは悪いんだけど、そこの背景を全部抜きにして彼は被害者として振舞って、シネの言葉を借りると「ちゃんと和解しようとしたのにしなかった」という事を言ってる。僕は「じゃあ、あんたらきちっとしなかったの?」というところを詰めたんです。そしたらそれは「エル金を庇うためだ」と。「それ以上私たちがやると彼がしんどくなる」と。でも「それは良くないんじゃない」と僕は言ったら「そうだ」と。シネちゃんはきちっと文章にしてね、やろうといったけど、周りのみんなは「それは止めた方がいい、ほっといたほうがいい」ということだったんです。だから今日その辺をM君に聞こうと思ったんだけど、あいつ逃げたね。
田所 逃げた?

 

 

  と俺は判断した。だったらちょっと俺は……。俺の立場からすると乗せられた感じはしてた(笑)。ちょっとこれはもう白紙ですよ。Mを問い詰めなきゃいけないことになった。だから辛淑玉のことについても僕はきのう突っ込んで聞いたら、辛淑玉の「みんなへの手紙」っていうのは、シネちゃんがすぐ、辛淑玉に言って「違う」ということを言って、それで認めさせたと。そういうことを言ってた。「辛淑玉はそれを了解してんのね?」って言ったら「了解してる」って言ってた。田所さんはっきり言って、これ茶番だよ。ガキどもの。
田所 誰の?
  ガキどもの! ネットガキどもの。ネットでギャーギャーワーワー言ってる連中がさ、なんか暴力起こしてさ。俺はM君が本当に困ってる様子だったからね、付き合ってきたけどさ。田所さん、俺らの業界的に言ったらこれガセネタだぜ。
田所 それは事実もなかったということですか?
  うん。もちろん暴力は振るったんだけど、李信恵は殴ったって俺聞いてたから、そのことについて何度も言ったけど「殴ってない」。で警察にも取り調べの時にもそのことはちゃんと言ったし、まあ民団の前でも言ってたけど、俺は何でかと思ってたけどそうでないという印象をきのう持ちましたよ。
田所 確証を得られたわけですね。
  だから、Mさんとシネさんと会う気ありますって聞いたら、「いつでも会います」って。拒否してんのMの方だよ。という気がした。で、今日あいつが来なかったているのは「精神的にしんどいから日を改めてください」っていうのは決定的ですね、僕にとっては。お前そんな根性で喧嘩する気やったんかという。もういっぺんきちっとあいつと会わないといけないと俺思っている。俺こんなバカなことに関わってられないからね。
田所 仲裁しようと関わって来られたのにね。
  仲裁することは全然やぶさかじゃないけど、Mがそんな態度だったら俺あいつ糾弾しなきゃいけない。結局リツイートしてくれっていたのはあいつだからね。俺がリツイートした。それがわーっとなって、結局なんかワーワーギャーギャーなって(笑)。まあこんなもんかと僕は思っていたけど。まあでもね、シネさんもけろっとしてたよ。きのうは。全然傷ついてないわ。あそんなもんだろうという感じで。ちょっとそれは情報入れとこうと思って、ハハハ。
田所 趙さんとMさんのお付き合いは長いようですが私が趙さんにお会いさせて頂いたのは一回きりで、全体像についてもそんなに深く知っている訳ではないので、趙さんのほうがご存知で奔走されていたということしか知りませんからね。
  僕もそれでなんとか、と思ってたけど。シネは嘘をついてる感じじゃなかったな。きのう。「なんでオッパはそんなことしたの?」って。逆にM君のことを心配しててね。そういうことも含めてちょっとこれは仕切り直しですよ。M君が来たら話そうと思ったけど、僕の印象はあいつ逃げたなという感じだな。残念ですけど。また連絡入れます。
田所 わざわざありがとうございました。

◆M君を裏切った趙博

転身ぶりはこの電話の10日ほど前にすでに明らかにはなっていたが、趙が田所に話している内容は「誇張と噓」だらけであるばかりでなく、根拠のない悪意に満ちている。趙は事件の詳細を知っており、関係資料も目にしている。事実関係がどうであったかは知っている。だからM君を支援していたのではないのか。なにが「誇張と噓」なのか。繰り返すが、趙はその具体性を一切言及できない。M君の主張に「誇張も嘘」もないからだ。逆に李信恵が「M君を心配している」とはよくぞ言えたものだ。この時期李信恵はツイッターで「M君リンチ事件」を無きものにしようと、連日書き込みを行っていたではないか。そんな李信恵が「M君を心配している」? これを聞いて、「ああそうですか」という人は、悪徳商法で壺を買わされる人並みに気の毒な人だけだろう。

「M君リンチ事件」には多くの「裏切り者」が登場する。趙はその象徴的な人物といえる。集団リンチを受けただけでも心身のダメージは計り知れない。M君は幸い体が頑丈だったので、生命の危機には至らなかったが、普通体形の人、あるいは体の細い人だったら、生命の危機にかかわる暴行であったことは間違いない。

そして、読者の中にもご経験おありの方があろうが、「人に裏切られる」ほど精神的に辛いことはない。それが信用していた数少ない年長者であれば、どれほどの落胆とダメージを受けることか。

そんなことはお構いなしに「浪花の歌う巨人」こと趙博(パギやん)は活動を続けている。今も多くの人を欺きながら。


◎[参考動画]グーチョキパーの歌(趙博)(hanabi nw 2014年5月7日公開)

(鹿砦社特別取材班)

最新刊『人権と暴力の深層』カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い(紙の爆弾2017年6月号増刊)

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

夏祭りのカレーに何者かが猛毒のヒ素を混入し、67人がヒ素中毒にり患、うち4人が死亡した和歌山カレー事件。1998年7月25日の事件発生から19年になるが、近年は無実を訴え続ける林眞須美死刑囚(54)について、冤罪を疑う声が増えている。林死刑囚が再審請求後、京都大学の河合潤教授が弁護団の依頼により有罪の決め手とされていたヒ素の鑑定データを解析したところ、林死刑囚の自宅で見つかったヒ素と事件現場で見つかったヒ素が「異なる物」だという結果が出たことなどが原因だ。

一方、林死刑囚については、カレー事件以前にも夫や知人の男性らにヒ素や睡眠薬を飲ませ、保険金詐欺を繰り返していたという別件の疑惑もあり、こちらは今も冤罪を疑う声があまり聞かれない。だが、その別件の疑惑の現場を訪ねて回ったところ、驚くべきことがわかった――。

◆カレー事件以前の「23件」の疑惑とは……

まず、事実関係を整理しておこう。

検察官が裁判で示した起訴内容によると、林死刑囚はカレー事件以前、夫や知人男性2人に4回、死亡保険金目的でヒ素を飲ませる殺人未遂事件を起こしたとされていた。さらに検察官は第一審の論告求刑の際、林死刑囚が起訴された以外にも19回、夫や知人男性に死亡保険金目的でヒ素や睡眠薬を飲ませる「類似事実」に手を染めていたと主張した。結果、これら計23件(4件+19件)の事件のうち6件について、林死刑囚の犯行もしくは関与があった事件だと認定され、林死刑囚がカレー事件の犯人であることの状況証拠とされている。

ところが、実際には、夫の健治氏は裁判で「ヒ素は保険金を騙し取るために自分で飲んでいた」と証言し、自分は被害者ではなく、妻である林死刑囚と一緒に保険金詐欺を繰り返していただけだと訴えた。さらに裁判では、林死刑囚にヒ素や睡眠薬を飲まされたかのように証言した知人男性らが林死刑囚や健治氏と保険金詐欺の共犯関係に会ったことが判明。この知人男性らは保険金詐欺の罪を一切問われていないことなどから、検察側と司法取引的なことをして林死刑囚に不利な証言をしている疑いが浮上していた。

私はこうした疑惑を検証する取材の一環して、林死刑囚が知人男性らにヒ素や睡眠薬を飲まさせたとされる「現場」を訪ねて回った。すると驚かされたのが、検察官の主張通りなら殺人未遂事件が起きたはずの現場で、警察や検察が捜査に訪れた形跡が一切見受けられなかったことである。

◆殺人現場の人たちの意外過ぎる反応

たとえば、検察官の論告求刑によると、林死刑囚は98年5月、大阪府狭山市にある近畿大学医学部付属病院内の食堂で知人の会社社長の男性に対し、睡眠薬を混入させたアイスコーヒーを飲ませ、帰宅の際に車で自損事故を起こさせたとされていた。それが本当ならば、警察や検察は当然、この食堂を訪ね、現場検証をしたり、従業員に事情聴取をしたりしているはずだ。ところが、私がこの食堂を訪ね、カレー事件の発生当時から勤めている女性従業員を見つけて話を聞いたところ、彼女は素っ気なくこう言うのだ。

「そういうの(事情聴取など)は、病院のほうでやっていたみたいですよ」

つまり、捜査には、組織として病院の代表が対応しただけ。殺人未遂事件の現場である食堂の従業員らに、捜査機関は何も話を聞いていないようなのだ。

近畿大学医学部付属病院内の食堂。ここで林死刑囚は知人男性に睡眠薬入りのアイスコーヒーを飲ませたとされたが……

また、検察官の論告求刑によると、林死刑囚は同年7月にもこの会社社長の男性に対し、和歌山市内の「A」という喫茶店で睡眠薬入りのコーヒーを飲ませ、そのために男性が店を出たところで意識を消失し、怪我をする事件があったとされた。ここでも運良く、カレー事件発生当時から勤めているウエイトレスに出会うことができたのだが───。

「ウチでそんな事件があったことになってんの?」

やはり彼女も自分の店でそんな事件があったことにされているとは、まったく知らないようなのだ。私が「警察は捜査に来なかったのですか?」と尋ねると、女性は「来てへんって」と少し怒ったように言った。彼女が何かを隠している様子は微塵も感じられなかった。

さらに検察官の論告求刑によると、林死刑囚は97年9月、大阪府岸和田市の岸和田競輪場に健治らと出掛けた際、当時林家に居候していた知人男性に対し、睡眠薬を入れたコーラを飲ませ、意識を消失させるなどしたとされていた。ところが2008年10月、私が同競輪場に電話取材したところ、同競輪場の参事を務める藤井宗孝氏はこう述べた。

「うちで、そのような事件があったという“噂”になっているんでしょうか?」

“噂”ではなく、“検察”が“裁判”で岸和田競輪場でそのような事件があったと言っているのだと私は伝えた。しかし、藤井氏は、「はあ、裁判で……私はこちらに来て5年になりますが、そのような事件があったと聞いたことはありませんが……」と戸惑うばかり。藤井氏は親切な人で、この時点で同競輪場に9年務めている職員や、23年務めている警備員にも事実関係を確認してくれたが、同競輪場で林死刑囚がそのような事件を起こしたとか、警察が捜査にやってきたという話は「誰も知らない」とのことだった。

林死刑囚が知人男性に睡眠薬入りのコーラを飲ませた現場とされている岸和田競輪の特別観覧席

◆ヒ素を飲まされたとされる夫はかく語りき

では、これらの事実から一体、どんな真相を読み解けばいいのだろうか。私には、健治の次のような言葉が真相を言い当てているように思える。

「Dさん(会社社長の男性)やI(林家に居候していた男性)には、ワシら夫婦は裏切られたわけやけど、ワシはあの2人を恨み切れないんですよ。Dさんは酒を飲むとタチが悪いけど、普段は仏さんのようなエエ男でしたし、Iはワシらによく尽くしてくれましたから。あの2人もワシらを裏切ったのは、そうせざるをえない状況に追い込まれていたからだと思うし、今は本人たちも罪悪感に苦しんでいるのではないかと思うんです」

林死刑囚はカレー事件だけでなく、カレー事件以前に夫や知人男性らにヒ素や睡眠薬を飲ませていた疑惑についても無実を訴え続けている。真相が明らかになる日はくるだろうか。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

愚直に直球 タブーなし!最新刊『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

 

 

  
反原連(首都圏反原発連合)が資金不足から「ドネーション・プロジェクト」を始めている。反原連のHPには、

「2017年度初めの反原連の戦略拡大会議において、2016年度の決算を検討したところ、年間経費の約3分の1に当たる約360万円の赤字が計上され、これに2015年度の赤字額約150万円も加わり、このままではあと1年ほどで活動ができなくなることが判明しました。反原連が現在の運営状態になった4年前から大幅な経費の増加はないため、原発問題の長期化に加え、安倍政権の様々な悪政のため、人々の関心が原発問題以外にも分散したことによる、抗議参加者の減少や、口座へのカンパ額の減少などが原因であると考えています。
 これを受け、同会議で今後の方針を話し合ったところ、『金曜官邸前抗議』をはじめとする反原連の活動の必要性を訴える多くの人々がいること、安倍政権下での、3.11福島原発事故の反省も無い原発推進・原発回帰の情勢の中、道半ばで活動を止めることを考えるのは難しいことから、あと2年以上運営を継続することを目指し、目標額を1,000万円とするドネーション(カンパ)の呼びかけをすることになりました。これまで反原連では、積極的にドネーションの呼びかけをしてきませんでしたが、この度、初めて、強く訴えることを決断するに至りました。」

反原連のHPより

とカンパの訴えが掲載されている。原発問題が風化する中で、反原連に寄せられる寄付が減っているのはわかるが、鹿砦社としては「ああそうですか」と上記の文章を額面通りに受け取ることはできない。

◆反原連の内実を知れば知るほど「支援者」が減る

鹿砦社はかつて反原連に年間300万円を超える実質的支援を行っていた。上記反原連の予算規模がそのままであるとすれば、年間予算の3分の1程度を支援していたことになるが、反原連から一方的に「絶縁」を宣言されたのは、下記の通り2015年12月2日だ。当時の予算規模であればおそらく半額程度を鹿砦社の支援は支えていたことだろう。

反原連のHPより

われわれは「支援したから言うことを聞け」などと言っていたわけでもない。反原連に散見される「独善的」、「排他的」な言動に意見を伝え、出版社として当たり前に、独自の編集方針と、編集権で『NO NUKES voice』 を淡々と発行していたにすぎない。しかし反原連は、失礼千万、編集権への介入も著しい上記声明をHPに掲載した。反原連を鹿砦社が支援してはいたが、実際には社長松岡が反原連の活動に一時的に「騙されて」いたことがこの反原連による声明で明らかになる。

内実を知れば知るほど「支援者」は減るであろう。これが反原連に対するわれわれの偽らざる感想だ。
   
   
  

 

 

◆中沢けい、香山リカ、鈴木邦男、野間易通
  ── 「しばき隊」の別動隊と化した「のりこえねっと」

それは運動を中心で支えている人間の質に頭を傾げざるをえないこと、彼らが連携している他の運動体に、深い病巣を見て取れることから明らかだ。7月7日には複数の国会議員をはじめ、中沢けい、香山リカ、鈴木邦男らも演台に立ったようだが、この三人の登場が現在反原連の姿を明確にあぶりだしている。

中沢けい

香山リカ

鈴木邦男

 

 

  
この三人はいずれも「しばき隊」の別動隊と化した「のりこえねっと」共同代表であり、「M君リンチ事件」に関して隠蔽工作に手を染めた中沢けいや、「M君リンチ事件」にかんして鹿砦社をくどい程攻撃してくる香山リカ。あるいは度重なる鹿砦社、松岡からの問いかけを無視している鈴木邦男といった連中だからだ。

反原連の構成員すべて=「しばき隊」の別動隊と化した「のりこえねっと」の構成員ではなかろうが、現在もこの不健全な運動体を実質的に仕切る野間易通は反原連の一員であることからも、その密着性は明らかだ。

◆反原連よ、あなたたちの独善性は度を越えている

われわれは反原連を100%否定するつもりなどなかったし、健全な議論で問題解決を図ろうと試みた。松岡がそのために流した汗は並ではない。しかし、鹿砦社のまったくあずかり知らぬ「M君リンチ事件」が発生していたことを知るに至り、反原連への支援が、間接的とはいえ、われわれの意思と全くかけ離れた運動体による犯罪に関連していたことを突き付けられたのだ。これが一般市民であれば「ああ、なんとういうことをしてしまったのか……」で済ますことができるかもしれない。

しかし、小なりとはいえど出版を通じて社会に発信を行ってきたわれわれに「沈黙」は許される選択肢ではなかった。反原連よ、「反原発・脱原発」は結構だが、あなたたちの独善性は度を越えている。特定党派を「排除」する声明など出す権利が、公道上で集会を行っている団体にどうしてあるのだ。あなたたちの仲間は「過激派だからこいつら逮捕してくださいよ」と警察に詰め寄った。あの発語は偶然でも、例外的な過ちでもなく、反原連の行動原理の根底に共有されているものだとわれわれは了解する。われわれは反原連のこのような姿勢を断じて容認しない。

それにしても、「M君リンチ事件」とは無関係の登壇者もいるが、中沢けい、香山リカ、そして鈴木邦男の登場には愕然とさせられる。鈴木邦男よ! あなたは松岡の度重なる心の叫びを無視するのか! 鈴木を称して松岡は「八方美人」、取材班は「無節操・ボケたか?」と評したが、ここまで来ると鈴木の妄動は「蝙蝠(コウモリ)」にたとえざるを得ない。

反原連は反原発、脱原発を目指しているはずだろう。その目標に異議はない。しかし、あなたたちのような「3・11」後の運動ではなく、それ以前から石にかじりついて活動してきた人びとへの嫌がらせは目に余る。そしてあなたたちは、なにより「傲慢」にすぎる。

反省など期待できない団体とは知りながらも最低限、鹿砦社として意思表示をしておく。それが一時的とはいえ、「支援」をしたものの責務であるからだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

◆すでに治安維持法より広範囲な共謀罪の犯罪対象

6月15日に成立し7月11日施行された共謀罪だが、北から南まで日本全国で同法廃止へ向けての取り組みがなされている。

犯罪を実行していなくても計画段階で逮捕したり家宅捜査できるのが共謀罪だ。犯罪を「計画した」「合意した」と判定する権限を100パーセント持つのは、警察などの捜査機関だから、警察全権委任法といっていい。

反対者を弾圧した戦前戦中の治安維持法ですら、当初は共産主義者取締などに対象が限定されており、しだいに拡大されて、絵を描く人や俳句の会まで弾圧された。それに対して共謀罪は、277(数え方によっては316)の犯罪に共謀罪がつくので、最初から広範囲の市民に網をかけるものだ。

◆とんでもない危機に、とんでもなくフザけた演劇

すでに法律は施行され、監視が始まっている。戦後日本の最大の危機と言っても過言ではない状況なのだが、このとんでもない危機に、とんでもなくフザけた演劇が上映される。

社会派ブラックコメディを世に放ち続けてきた劇団チャリT企画の『キョーボーですよ!』(作・演出、楢原拓)がそれだ。実は、強行採決直前の6月9日~6月13日に、東京都新宿区の「新宿眼下画廊 スペース地下」で上演されたので筆者は初日に観に行った。

共謀罪をめぐる国会内での与野党の攻防や反対運動がピークに達する時期と上演期間がぴったりと一致してしまったので、リアルな感覚が迫ってきた。この作品が、入場料無料で7月18日に再上演される。

7月18日早稲田大で無料再演決定!『キョーボーですよ!』 

『キョーボーですよ!』上映会のチラシ

今回は、劇団「チャリT企画]と[早大有志の会]のコラボ企画だ。

7月18日(火)18:30開演(18:00開場)
18:30~早大・梅森直之教授 講演「キョーボーですか?」
19:10~劇団チャリT企画 公演「キョーボーですよ!」
早稲田大学小野記念講堂
入場無料(全席自由200席)
詳細は http://www.chari-t.com/pc/information.html
劇団ホームページ http://chari-t.com/kyobodesuyo/

◆「びっくりするほど簡単にあなたも今日から犯罪者」

いったいどのような内容なのか。

《平凡な市民サークルが突然わけもわからずテロ集団と認定され、テロの実行を共謀したとしてメンバーが逮捕されてしまう。そして、ものすごく不当な扱いを受けたあげく、しまいにはメンバー全員に「処分」が下される。

知らなかったでは逃げられない異常な事態。
果たして彼らの運命や如何に?
“今日もあなたを誰かが見ている”》
(以上、同劇団のチラシより)

“今日もあなたを誰かが見ている”

このあらすじは、共謀罪法案の核心を突いている。本人には、犯罪を計画した覚えもなければ、合意・賛同した覚えがまったくなくても、あるいはそう主張しても通用しない。

仮に犯罪計画に一度でも合意(暗黙の合意、目配せでも合意したとされる可能性あり)してしまったら、あとになって「そんなの危ないから止めた」と思って実際に何もしなくても、罪は成立してしまう、ということになっている。

だれかが警察に通報して「こんなことが話されていました」と言えば、犯罪の計画や合意があったとされかねない。そして通報した密告者は、罪を免じられる。したがって、疑いを掛けられた者が助かる方法は密告しかないのである。

本作は、以上のような共謀罪の本質がしっかりと盛り込まれている。人の弱みに付け込んで供述させる警察のやり方、取調べ方法など、おそらくこんなことになるだろうな、と思わせる内容がちりばめられているのだ。
 
もちろんコメディだから笑いっぱなしなのだけれど、笑いながら胃の辺りに不快感を覚えた。夜遅めの食事を採り、朝起きたときに胃がもたれる、あの感覚である。

へたをすると、この演劇はブラックコメディとは言えなくなってしまうのではないか。あたかも近未来の現実をそのまま演じているように思えてしまうからだ。

◆安倍政権こそがブラックコメディ

チラシには小さな文字で「※料理番組ではありません」と笑いを誘うような文言が書いてある。「キョーボーですよ!」のタイトルは、料理番組の「チューボーですよ!」をもじってあるからだ。

だが、公式WEBサイトに掲載された出演者の内山奈々さんのインタビューがアップされている(インタビュアーは小劇場舞台制作団体BMGの長谷川雅也氏)のを見ると、やっぱり料理番組的ともいえる。

「チラシには『料理番組ではありません』と書かれてますが、料理番組と思っていただいてかまいません。どこにでもいる普通のおばちゃんが、『お前、包丁研いだだろ』と言われて捕まるような話です」

その言葉どおりの内容だと言っておこう。

今回の作品を制作した劇団チャリT企画は1998年に結成され、時事ネタや社会問題などの思いテーマをコメディとして世に送り出してきた。「ふざけた社会派」「バンカラ・ポップ」と彼ら自ら称する異色の劇団だ。

過去には、特定秘密保護法をテーマにした『それは秘密です』などを手掛けて注目された。特定秘密の内容はもちろん公開されず、「秘密は秘密」という法律そのものが「秘密は秘密」で一般人にはまったくわからないというマンガ的状況がよくわかる作品だった。

共謀罪でも、森友・加計学園疑獄でも、政府や自民党の対応を見ていると、国会内でブラックコメディを演じているかのようだ。それも、へたなシナリオ、ひどい演技である。

ろくでもない“永田町芝居”を見せられた後に、プロが演じる面白い芝居を観て、共謀罪廃止へ向けてのエネルギーとしていただきたい。


◎[参考動画]チャリT企画『キョーボーですよ!』ゲネプロダイジェスト(2017年6月9日公開)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)ほか。林克明twitter 

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『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

大久保・早稲田・高田馬場に囲まれた一帯、戸山。副都心線の東新宿駅が完成したことでそこそこ交通の便が良くなったとはいえ、新宿近郊にして孤島感が漂う地域だ。そんな戸山の住宅団地“戸山ハイツ”を取材し、日本の団地・集合住宅について考えてみた。

◆戸山ハイツ・今のすがた

1949年、第二次世界大戦後の住宅難を打破すべく東京都が建てた戸山ハイツは、日本の団地としては最初期のものだ。1970年に建て替えられたため当時の姿を見ることはできないが、現在の勇姿を眺めてほしい。典型的な団地の姿であり、その状況も団地一般に当てはまるものなのかもしれない。付近を歩く人の多くが齢70歳を超えており、わずかな例外は33号棟1階のタバコ屋や自転車屋を訪れるスーツ姿のサラリーマンや近所の主婦であろう女性だ。居住者のほとんどが高齢者であることがはっきりと把握できる。そもそも人影が少なすぎるし、遠鳴りの自動車の音しか聞こえないほどの静けさに出会うこともある。

◆「分譲」とした時点で「日本の団地」は初めから終わっていた

日本の団地の大部分は日本住宅公団が建設したものだ。日本住宅公団は主として住宅供給を行う特殊法人で、その起源は同潤会アパートの建設で知られる財団法人・同潤会だ。形態は様々だが、変遷として以下を参考にしてほしい。

同潤会(1924~1941年)→住宅営団(1941~1946年)→日本住宅公団(1955~1981年)→住宅・都市整備公団(1981~1999年)→都市再生機構(2004~2017年現在)。

1950年代半ばから1980年頃にかけて日本住宅公団が大量に作った団地は、ベランダ・水洗トイレ・ダイニングキッチンなどといった近代的な要素を取り入れていたため当時のサラリーマンにとって憧れの住宅でもあった。そんな団地生活を購入した働き盛りのサラリーマンが現在の最高齢層なのだ。

分譲であるため居住者の流動性が低く、また家主が亡くなった場合には空室が生じやすい。このような問題に対処するため、たとえば幕張新都心では都市計画の段階で集合住宅の半数を賃貸として展開することを決めたという。常に一定の若年層を受け入れる余地を保つことで街の高齢化を防ごうという試みであり、その成功は、全てを分譲とした団地は初めから終わっていたのだということの証明にもなっている。

◆空き家はあるのに若者が住む場所に困る都市建築

安価な住居を大量に提供するという目的が果たされたいま、今度は空き家の問題が目立っている。そしてまた、空き家があるにもかかわらず都市の若者が住む場所に困っているという現実も見えている。唐突だが、そんな今こそメタボリズム建築の出番ではないだろうか。居住者の流動という意味での幕張新都心的な新陳代謝にあわせ、建築そのものをニーズに応じて有機的に変化させるというメタボリズムのアプローチを発展させてみてはどうだろうか、ということだ。次回は黒川紀章について書いてみようかしらん。

[撮影・文]大宮浩平

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい)
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

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ヨードヤーンガームvs江幡塁。どんな技でも倒せるひとつの試運転パンチで圧倒

ヨードヤーンガームvs江幡塁。ローキックをブロックされても問題無し

今興行テーマは「より強く」──。江幡塁、緑川創、重森陽太、喜多村誠、ラジャダムナン王座挑戦を目論む臨戦態勢の選手たち。緑川以外は挑戦経験ありますが、再度挑戦を狙う立場でもあります。「打倒ムエタイ」は選手個人の目標であり、キックボクシング発祥の老舗団体を受け継ぐ新日本キックボクシング協会の野望でもあります。

江幡塁は第1ラウンドに左ハイキックでダウンを奪い、ローキックも鋭くヒット。2ラウンドには、ヨードヤーンガームにそれまでにダメージあったか、左ローキック一発で倒し、レフェリーが即座に試合を止めました。「どんな技でもどんな相手でも倒すことができます」──。圧倒的勝利後のアピールに、いよいよ近いかと予感させる、塁にとって4年ぶりのラジャダムナン王座挑戦が見えつつあるところです。

江幡塁vsヨードヤンガーム。この左ローキックで悶絶ノックアウト

緑川創vsゲン。手応えあったと言う左右ボディブローを打つとゲンは苦痛の表情で倒れ込んだ

  

左右フックのボディブローで悶絶ノックアウトした緑川創は、8月20日の「KNOCK OUT vol.4」出場予定で、対戦相手がWBCムエタイ・スーパーウェルター級チャンピオンの宮越宗一郎(拳粋会)に決定。「70kg級ではいちばん強いこと証明します」と宣言していた緑川。宮越との対戦も過去、実現し難かった団体間の壁がありましたが、ここに来てKNOCK OUTに於いて道開けました。いずれ、一度勝利しているT-98(=今村卓也/前・ラジャダムナンSW級C)との再戦も実現すればラジャダムナンへ向けても興味ある対戦が続くでしょう。

緑川創vsゲン。KOに結び付ける上下を揺さぶるローキックの緑川

緑川創vsゲン。ボディブローは息苦しさで心折られる苦痛、とりあえずコーナーに戻ること促されます

重森陽太も鋭い右ローキック一発で仕留める圧勝。苦痛の表情で倒れ込んだタヌーペットでした。重森も「KNOCK OUTvol.4」出場予定で、話題豊富な村田裕俊との対戦が予定されており、フェザー級路線の戦いに注目が集まる存在となるでしょう。

喜多村誠は、昨年12月に緑川がKO勝利しているイッキュウサンを、終始威圧的に攻め、パンチやミドルキックのヒットでイッキュウサンをたじろがせるも返してくるイッキュウサンのしなりある蹴りに喜多村の脇腹が腫れ上がり、攻められながら凌ぎきったイッキュウサンのしぶとさもあって僅差となりましたが、キック的には喜多村誠の圧勝の流れでした。

◎MAGNUM.44 / 7月2日(日)後楽園ホール17:00~20:15
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/55.8kg)
VS
ヨードヤーンガーム・デットラット(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/タイ/55.6kg)
勝者:江幡塁 / TKO 2R 0:56 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(前・日本W級C/藤本/70.0kg)
VS
ゲン・ペットプームムエタイ(元・アーウナーンスタジアムSL級C/タイ/69.2kg)
勝者:緑川創 / TKO 1R 2:13 / カウント中のレフェリーストップ
主審:桜井一秀

タヌーペットvs重森陽太。重森のこのローキックで悶絶KO

タヌーペットvs重森陽太。2歩ほど後退して痛々しく倒れ込んだタヌーペット

◆59.0kg契約 3回戦

日本フェザー級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/58.9kg)
VS
タヌーペット・ペットプームムエタイ(タイ/58.65kg)
勝者:重森陽太 / KO 1R 1:02 / カウント中のタオル投入
主審:仲俊光

◆70.0kg契約 3回戦

喜多村誠(前・日本ミドル級チャンピオン/伊原新潟/69.7kg)
VS
イッキュウサン・ペットプームムエタイ(タイ/69.5kg)
勝者:喜多村誠 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-29. 仲30-29. 桜井29-28

イッキュウサンvs喜多村誠。喜多村の攻勢も脇腹には痛々しい腫れが残る

イッキュウサンvs喜多村誠。パンチでは負ける要素無し、喜多村の攻勢

◆68.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城/67.6kg)
VS
MA日本ウェルター級チャンピオン.為房厚志(二刀会/68.0kg)
勝者:渡辺健司 / 判定2-1 / 30-29. 29-30. 30-29.

◆53.0kg契約3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/53.0kg)
VS
森下翔平(M-BLOW/52.65kg)
勝者:泰史 / 判定:3-0 / 30-26. 30-25. 30-25.

他、6試合は割愛します。

《取材戦記》

揺るぎない新日本キックの永きテーマ、「打倒ムエタイ」に重点を置くことで、
これを目指して来ました。近年は外国人選手のラジャダムナン王座獲得が目立ちましたが、現役の中では、T-98は防衛1度、梅野源治は初防衛成らず、厳しい洗礼が待ち受けている殿堂スタジアムです。

この日勝利した4名と江幡ツインズ兄、睦を含む5名で一気に挑戦ができれば ビッグマッチとなる、そんな興味も沸く新日本キックボクシング協会へのファンの声も聞かれます。

“イッキュウサン”は日本での試合用リングネームかと思いましたが、タイでの通常のリングネームであるようです。在日タイ選手に使われることも多い、日本語混じるリングネームですが、タイ選手にはタイ現地で使っている、そこで支持を受けたリングネームの方が実績が解りやすく、本物である証明のような気がします。

しかし考えてみれば、タイは頻繁にリングネームが変えられる場合があり、日本人もタイに渡ると現地の名前に替えられたりしますので、仕方ないかと思うこともあります。

プロボクシングでさえ、勇利アルバチャコフや、グッシー・ナザロフ、マル・マトベイなど、あまり違和感無く、分かる人には分かる”日本用”リングネームがありました。

考え方が古くなると、頑固な拘りになりつつあることに気付く日々であります。という反省も心に想い、キックテーマもイッキュウサンとなって(一休みして)、タイの旅レポートに気分転換している日々となっています。

「タイは若いうちに行け」、若い選手にそんな忠告もあった昔、今や幼いうちからタイに行かせている現状も見に行きたいものです。

勝利者賞を受けて記念撮影に収まる江幡塁

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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全国に未解決の殺人事件はあまたある。その中でも4年前に千葉県習志野市で起きた女性殺害事件は、特異な経過をたどった事件として印象深い。

現場は、習志野市茜浜1丁目の遊歩道脇の緑地帯。女性が仰向け状態で倒れ、死んでいるのを清掃員が発見したのは2013年6月24日の朝だった。千葉県警の調べにより、ほどなく女性は派遣社員の廣畑かをりさん(当時47)と判明。解剖の結果、死因は首を圧迫されたことによる窒息死の可能性が高いと判定され、財布から金を抜き取られているのもわかった。こうした状況から千葉県警は行きずりの強盗殺人の可能性を疑い、捜査を展開したと伝えられている。

そんな事件は多数の捜査員が動員されながら、4年経った今も未解決。だが、この間には一度、被疑者が検挙されたことがある。

現場近くには多くの人が暮らす団地もあるが、有力な目撃情報はない

◆一度は被疑者が検挙されたが……

千葉県警が廣畑さん殺害の容疑で中国籍の男を逮捕――。事件発生から3年近く経った2016年3月初め、マスコミ各社は一斉にそう報じた。報道によると、被疑者の男は、別の窃盗事件の容疑で有罪判決をうけ、関東地方の刑務所に服役。現場に残されていた遺留物の鑑定の結果、男が事件に絡んでいる疑いが浮上したとのことだった。

そんな報道が出れば、事件は解決に向かったと誰が思う。しかし捜査の結果、千葉地検は「起訴に足る証拠が集まらなかった」と男を釈放し、不起訴に。男は中国に帰国し、事件は再び未解決の状態となり、今に至るわけである。

殺人の容疑で逮捕された被疑者が嫌疑不十分で不起訴になること自体が珍しいが、これほどの重大事件ともなると、警察は普通、検察に相談したうえで逮捕に踏み切るものである。そういう意味でもこの中国籍の男が不起訴となったのは特異なことだった。

現場の遊歩道。夜は暗く、死角になる場所も多い

◆暗く、死角になる場所も多い夜の遊歩道

派遣社員だった廣畑さんは事件当時、現場近くの食品加工会社で働いており、遺体で発見される前日も夜10時から出勤予定だったが、無断欠勤していた。そのため、廣畑さんは夜9時台に出勤していたところを犯人に襲われたとみられている。そこで私もちょうどそのくらいの時間に現場の遊歩道を歩いてみた。

すると、現場は暗いだけならまだしも、生け垣や公園など死角になる場所も多かった。この道を夜9時台に歩いていたとされる廣畑さんが突如、隠れていた犯人に襲われた場面が鮮明に想像できた。遺体が見つかった緑地帯には、花と水が供えられていたが、まだ花は新しく、遺族がこまめに訪れていることが窺えた。遺族は広畑さんの冥福を祈ると共に犯人が検挙されることも切実に願っていることだろう。

一方、千葉県警のホームページでは、様々な未解決事件に関する情報提供が求められているが(http://www.police.pref.chiba.jp/so1ka/safe-life_coop-vicious.html)、中国籍の男が逮捕されて以来、この事件に関しては情報提供が求められなくなっている。

おそらく千葉県警としては、自分たちが逮捕した中国籍の男こそが不起訴になろうとも犯人で間違いないという思いから、この事件の捜査は打ち切っているのだろう。これでは犯人が検挙される可能性はきわめて乏しいと言わざるをえず、廣畑さんや遺族が気の毒でならない。

遺体が見つかった緑地帯に手向けられた花。遺族がこまめに訪れていることが窺える

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

愚直に直球 タブーなし!最新刊『紙の爆弾』8月号! 安倍晋三 問われる「首相の資質」【特集】共謀罪を成立させた者たち

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

 

 

  
前回に続き、安田浩一へのインタビュー(2016年3月23日の電話)の後編を公開する。

《安田から2度目の電話》

安田 あの田所さん、ごめんなさい、もしかしたら『紙の爆弾』とかに書こうとされていますか?
田所 いえ、別に寄稿の依頼はありません。私はこちらから持ち込んで書いてもらえる(ようなところはありません)。『紙の爆弾』に記事を書いたことはありますけれども、今の段階で別にどこのメディアどうこうって全く予定はありません。
安田 あ、そうですか。どちらに書かれるのもご自由だと思いますし、僕が何も制限させてもらうつもりはないんですけれども、『紙の爆弾』であれば、僕はある種何か意趣返しじゃないかなと感じたものですから。
田所 はい? とおっしゃいますと?
安田 『紙の爆弾』でもある種、運動圏に対して非常に厳しい冷たい視線を向けたりしてることが最近ありましたから、『紙の爆弾』はね。あるいは反原連の関係におきましても。しかも『NO NUKES voice』など見ますと、更に大きいネタを掴んでる、みたいなことをたしか松岡さんが書かれてたような記憶もありますんで、そういう文脈であるのであれば嫌だなと思ったのは正直なところです。
田所 今のところ私はこの件では、李信恵さんに電話取材しまして、今日安田さんに電話させていただきまして、あとは実際にカウンターされている方に二、三、情報は聞いてはいるんですけれども、まだまだとてもではないですけれども全体像が掴めていませんので、それがどんな感じのものなのかということ自体がまだわかっていない段階です。それが果たして記事にできるものなのかということすらまだわからない段階で、むしろそういうことの指針をいただきたくて安田さんにはお電話差し上げたということです。
安田 指針なんて言われるほどのものでもないし、どんな媒体に書いてもそれは僕は自由だと思いますから、そこに何か是非を加えたり加えようと思うことは僕はないんです。ただ『紙の爆弾』であれば、松岡さんが何かそういった大きなネタを掴んでるといったような文脈の延長線上に今回の取材があるのであれば、非常に不愉快だなと思って。
田所 それは全くないです。
安田 そうですか。やっぱりそんなにデカいヤマ(事件)なのかどうかっていうことに関して、僕は甚だ疑問ですし、結果的にどうなるかって考えると、もちろんどうもならなくていいし、目的もない記事を量産してきた僕は言えないんだけれども、結果的に何か運動を縮小させたり、せっかく頑張って傷付いて戦ってる人を更に傷付けるってことが目的であるのならば、嫌だなと思ったわけです。
田所 そういう目的は少なくとも私は持ってないつもりです。
安田 今回のことに関してはデマや誇張された形で持っていって流通してるようにも感じますし、誰が喜ぶのか、誰を喜ばせるのかってことを考えた時に、僕は喜ぶ人の顔が見えてすごく嫌なんです。

安田浩一(『人権と暴力の深層』より)

 

 

  
◆「何か運動の中の組織的に行われた暴力ってわけじゃないんでしょ」

田所 誇張したデマなどももうネットには出ているわけですか?
安田 出てますよ。暴力事件がどうのこうのとか。で、結果的に誰が喜ぶのか、誰を利するのかと考えると嫌だなという気はするんですね。結果的にどんな取り繕おうが、どんな美辞麗句を使おうが結果的に運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない。僕個人はそう考えてる。これが社会的大問題であればですよ、例えばかつて新左翼と呼ばれた方々の内ゲバに発展することであったり何かそこで凄惨な粛清が行われたのであれば、それはそれで社会的な問題として提起することが可能であったでしょうけども、そんな問題でもないでしょうしね。
田所 私が伝えられた内容は鼻の骨を折る大怪我をして顔の形が変わっているという表現で伝えられたんですね。
安田 でもそれがね、何か運動の中の組織的に行われた暴力ってわけじゃないんでしょ。なんかよくわからない喧嘩っぽい。
田所 それはわからない。まず私は被害者の方に聞かないことにはわからない。
安田 それはそうですね、それは裏取りする必要がある。
田所 憶測で判断したくはないなと思っているんです。
安田 それをどういう形でもって発表されるかわかりませんし、ただ結果的に僕は疑ってるのは紙の媒体の意図の中で何かうまい具合にネタが作られているような気がしないでもないんですよね。
田所 ネタが作られてる?
安田 ええ。
田所 紙の媒体の中で?
安田 『紙の爆弾』の意思や意図が反映されてるんじゃないかという気がしますし、田所さんがこの取材をされてるということはね。何に興味を持たれてるのかなぁというのが疑問にあります。いったいこの問題のどこに問題があるのか。
田所 かつての新左翼の粛清と言いますか暴力による内ゲバみたいなことがありましたよね。そんなことを私は歴史的には知ってるんだけれども、肉感的には知らないんですね。今のカウンターの人たちがどういう様な形で動いているのかということは、私は現場に行って皆さんと一緒に行動して、安田さんのように現地で取材をするとか、これをメインのテーマとして扱っている人間ではないものですからよく知らないんです。側面から見ていて在特会の問題とかお金の流れとか、そういうことを自分で調べながら記事にすることはあるんですけれども、実際の在特会がものすごい無茶苦茶なヘイトスピーチをしている所へ出て行ってカウンターの方の抑えてる場面とかを取材したことはないんですね、私自身。
安田 そっちの方がよっぽど問題としては大きな問題であって、一方的な暴力によってむしろ傷ついてるのは李信恵をはじめとする在日当事者であって、そしてカウンターと一口におっしゃいますけども、カウンターって組織じゃないですからね。何か組織があるわけではご存知の通り、カウンターって称するって、この間も東住吉に大勢の人が集まりましたけど、誰一人として組織に属してるってわけでもないし、いわば自発的に集まってる人の総称としてカウンターとして呼んでるのであって、論調の違いでもって何かトラブルが起きるとかそういうのはない。まだまだ地雷を抱えながらそれぞれがそれぞれの戦いをしてるのであって。何が問題なのか僕はわからない。
田所 ちなみにちょっと古い話になるんですが、私は20数年前から辛淑玉さんと親しくさせて頂いてまして、石原知事だった頃の「第三国人」発言の際には私も及ばずながら共闘した人間です。ただ私が聞いているのは被害者が顔を殴られて骨が折れて顔の形が変わっているという話です。発表するしないは別に、その真偽を確かめたくなるのは安田さんにもお分かりいただけると思います。もし本当であれば、安田さんがさっきおっしゃったように、そんな軽いことではないという可能性も出てくると思うんですね。
安田 うーん

安田浩一と香山リカ(『人権と暴力の深層』より)

 

 

  
田所 だから安田さんもまだ詳細はご存じないわけであって、私もわからないわけであってそのことに対する評価というものはまだする段階ではないと思うんですね。
安田 わかりました。そういう熱意を持って取材される意味が僕にはよくわからないんだけど。取材されるのは自由ですから、これ以上特に言及することはないんですが、少なくとも、ただここまでお話しましたから万が一、僕の懸念もわかっていだいたと理解した上で取材していただいたと思いますけれども、何度も言いますように一つこう約束してください。僕は取材拒否ということはしたくないので、極力どんなお電話でも取りますし、どんな自分と考え方の違う人の問い合わせであっても極力答えるようにしております。ですから今回もそう思ってあえてこちらからお電話差し上げましたけれども、もしカギ括弧を使うのであれば、僕は運動を貶めるための目的や意図があるのであればご協力したくないということだけ、カギ括弧として使ってください。申し訳ございません、お約束いただけますでしょうか。
田所 もちろん確実にわざわざお電話までいただいて、それを裏切るようなことは決していたしませんので。 (電話の会話は以上)

◆「M君」に対する心遣いの言葉の断片も聞くことはなかった

どうだろうか。太文字と赤い下線の部分を特に注意して再度ご覧いただきたい。安田は最初に「僕もそういう話は聞いたことはありますけれども」と言い、また「僕その場に居たわけじゃありませんし、また聞きですからね」はずなのに、終始事件を「取材」すること自体に疑問を呈し、「訳が分からない」と繰り返している。詳細を知らないはずなのに「だけどもことさら取り上げることの意味がさっぱり分からないし、なんとなくその取材に向かう回路そのものに僕は胡散臭さを感じてるんで、」と極めて神経質に、事件の内容が明らかになることを警戒している。そして明言はしないものの、「取材をしてくれるな」というニュアンスが至る所に見られる。

安田が田所の取材に警戒心を隠さなかったのは、せっかく功を奏しそうだった「M君リンチ事件隠蔽作戦」が社会に広く知られれば「結果的にどんな取り繕おうが、どんな美辞麗句を使おうが結果的に運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない。僕個人はそう考えてる」のと、「僕とすればこれは明らかに李信恵を貶めるための情報だと思うので一切協力はできない」のが本音だろう。

しかしここで安田の言う「運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない」という理由は逆に言えば、「被害者M君の被害回復よりも、運動のほうが大切だ」ということになる。そして事件への言及で安田の口からは、ついぞ「M君」に対する心遣いの言葉の断片も聞くことはなかった。おそるべき加害者擁護、運動第一主義である。

◆「C.R.A.C.」はいまも存在するし、悪名高かった「男組」は明確な組織だった

安田は「カウンターって組織じゃないですからね。何か組織があるわけではご存知の通り」とここでも明白な虚偽を述べている。現在に至るも野間易通が君臨する「C.R.A.C.」は存在するし、解散はしたが悪名高かった「男組」は明確な組織だったじゃないか。そして、何よりITOKENこと伊藤健一郎が鹿砦社元社員藤井正美に宛てたメールにあった「説明テンプレ」と「声かけリスト」はカウンター全員ではなくとも、その中の一部が「組織化」されていた動かぬ証拠だ(詳細は『反差別と暴力の正体』参照)。

「カウンターは組織ではない」、「リンチ被害者などどこにもいない」ように世論形成をしたがっている安田は、「差別反対」であれば「集団リンチ」も黙認し、被害者を無視、いや攻撃さえする。さらには冒頭述べた通り、障害を持つ田所の公開を望まないのに写真を掲載した野間のツイッターを肯定するなど、最近の言葉でいう「アウティング」(身分晒し)を肯定していることになる。

この男、策略と矛盾だらけではないか。

◎M君リンチ事件から李信恵を守るジャーナリスト、安田浩一の矛盾〈前〉(2017年7月17日公開)

(鹿砦社特別取材班)

最新刊『人権と暴力の深層』カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い(紙の爆弾2017年6月号増刊)

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