◆日本は中国よりも遅れていた!

国慶節の中国、武漢には観光客が殺到しているという。3世紀に建造された黄鶴楼(こうかくろう)が人気だという。高校の漢文の時間に習った李白の詩「黄鶴楼にて孟浩然の広陵にゆくを送る」が懐かしい。

故人(こじん)西のかた 黄鶴楼を辞し
煙花(えんか)三月 揚州に下る
孤帆(こはん)の遠影 碧空(へきくう)に尽き
唯(ただ)見る長江の天際に流るるを

何となく悔しいが中国では、ほぼ新型コロナウイルスの封じ込めに成功したようだ。台湾は初期に封じ込めた。

それに引きかえ、日本ではようやくPCR検査がふつうに受けられるようになったばかりだ。PCR検査が行なわれなかった理由に、厚労省の医系技官のセクショナリズムが指摘されてきた。4月段階で「病院が溢れるのが嫌で(PCR検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と発言して物議をかもした西田道弘さいたま市保健所長も元医系技官である。

中国や台湾が素晴らしいばかりとは言わないが、日本の国家と社会に欠陥があるとしたら、ここは必死にその病根を検証する必要があるだろう。

◆問題続出の組織体質

そもそも厚労省という組織の体質に原因があると、消えた年金問題(2007年)でも批判されてきたものだ。しかるに原因の究明は「組織全体としての使命感、国民の信任を受けて業務を行うという責任感が、厚生労働省及び社会保険庁に決定的に欠如していた」(厚労省の調査報告)という一般論、精神論に終始した。

今回のコロナに引きつけていえば、年金問題当時の舛添要一厚労大臣は「医系、薬系含め技官人事、誰も手をつけないで聖域になっている」(「ロハス・メディカル」2008年8月号)と指摘していた。

昨年は「不適切統計問題」が発覚した。厚労省が実施する毎月勤労統計において不適切な調査があったのだ。雇用保険や労災保険、船員保険の給付額に誤りがあることが判明し、影響人数は延べ2千十五万人に及んだ。当事者が既に死去していることから詳細な原因は不明だが、厚労省には当時COBOL(プログラム言語)を理解できる職員が2人しかおらず、チェック体制が不十分だったとしている。

厚労省の組織体質の問題点は、ひとつにはIT化の遅れである。消えた年金ではオンライン化する前の記録ミスがコンピュータに残り、元になった紙記録が破棄されたこと。不適切統計問題はまさに、IT化に対応できなかった結果である。今回も保健所からのPCR検査結果がファックスで行なわれ、正確な数値が出ないなどの問題点が浮上した。そこには労働組合(自治労)の労務強化反対、オンライン化による中層集権化への抵抗なども指摘されるところだ。

もうひとつの体質は、官僚組織にありがちなトコロテン方式の人事であろう。とくに管理職レベルでの持ち回り人事である。

官僚人生のコースが決まっていることから、キャリア組の審議官レベルの人事は一年ごとに交代する。その結果、専門外の部署にトコロテン式に就任した事務官や技官が、何も仕事をせずに過ごすことになる。そこに管理職務の空白が生まれるというわけだ。管理職が何もしないのだから、業務に問題が起きないわけがない。

◆国立看護大学校でもトコロテン人事

そんな厚労省人事の悪慣習が、その傘下にある国立看護大学校(清瀬市)でも行なわれているのだ。

主任の教授が担当の講義を満足に行なえないまま、看護学生たちが必要なスキルを身につけられない事態が発覚したのだ。教授の代わりに講義した助教も、時短講義だったというのだ。

文系の学生や教養科目ならば、休講や手抜き講義も大いに歓迎かもしれない。退屈な講義に出るよりも、夢中になれる読書に時間を使ったほうが有益であろう。

けれども、看護師のような基本スキルが業務になる実務系の大学校では、いやでも実習のさいに手抜き教育が発覚するのだ。学生の実習が現場の実務に直結しているのだから、事態は深刻である。

昨年の秋のことだ。4年生の助産師コースの学生たちが、実習先の病院で研修中だった。ところが、学生たちが助産師の指示がわからず、満足に分娩介助ができなかったのである。

そこで「あら、あなたたち。学校で習ってないの?」となったわけだ。複数の助産師が学生の知識不足に気づき、実習は中断となった。

くわしく訊いてみると、学生たちは「助産診断・技術学Ⅰ」で修得する知識がないばかりか、その理由が担当教授の手抜き講義にあることが判明したのだ。

けっきょく、その病院実習は中断となった。保健助産師の養成所指定規則では「分娩介助を、学生一人につき十回程度おこなわせる」という決まりがある。したがって学生たちは、規定の分娩介助をクリアできなかった。

病院実習が中断になった学生たちは、年末になって担当のK教授とH学部長に呼び出された。そこで学生たちが申し渡されたのは、看護師国家試験(2月)後の3月に補習実習を受けることだった。厚労省管轄の大学であるため、指定規則を絶対に守る必要があるのだ。

就職のための引っ越しを計画していた学生たちがそれを拒否すると、H学部長は「そんなにやる気がないなら、就職もすべてやめてしまいなさい」「そんな人たちに来られる病院もいい迷惑だ」などと言い放ったというのだ。

怒りにまかせたこれらの言葉も、教授たちが育った半世紀前ならOKかもしれないが、あきらかにアカハラであろう。

その後、新型コロナウイルスの流行で補習実習は行なわれなくなったが、「助産診断・技術学は必修科目である。文科省管轄ではない看護大学校の学生にとって、単位を取得できていないことは、学士号の認定を左右されかねない。看護師国家試験の欠格事由にもなりかねない事態だったのだ。

それにしても、K教授は分娩技術が専門外とはいえ、シラバスに記載した講義を部下の助教まかせっきりだったという。その助教の講義も通常より30分早く終わり、講義中も個人的な趣味の話をするなどの手抜き講義だったというのである。

学生たちの告発と学生たちの父兄の要望によって、上部組織である国立国際医療研究センターおよび看護大学校の校長が対応する事態となり、この問題はH学部長やK教授への処分等もないままとなった。

ぎゃくに言うと、早急な対応で問題の芽を摘む手際よさこそ、厚労省所轄の組織らしい事なかれ主義、官僚主義といえるかもしれない。そしてその意味では、トコロテン式の人事で専門外の科目を担当した教授陣も犠牲者なのかもしれない。

東京都清瀬市にある国立看護大学校

◆厚労省こそ民営化するべき

学術会議の任命拒否問題では「学術会議を民営化せよ!」という意見が飛び出している。長期的には理系研究者の育成不足が憂慮される中、それも一案だとは思うが、そうであれば官僚機構を民営化してみてはどうか?

今回のコロナ防疫では、わが国のIT後進国状態(スマホ普及率60%)や官僚組織の限界(PCR検査=厚労省医系技官問題、アベノマスク配布=旧郵政省・日本郵便)が露呈したではないか。

かつて、官公労の労働運動潰しのために民営化に踏み切った。JRは不採算部門の切り捨て、郵政はあいかわらず親方日の丸の体質を残していたのだ。

そして中小企業の持続化給付金において、経産省(中小企業庁)は電通配下の民間企業に委託することで、何とか国のかたちを保った。

このまま後進国に甘んじたくなければ、どんどん官僚組織にメスを入れればよい。問題続出の厚労省こそ、分割民営化するべきではないか。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年11月号【特集】安倍政治という「負の遺産」他

〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』Vol.25

《10月のことば》あきかぜに ゆれる秋桜 いのちのかぎり 咲きほこる(鹿砦社カレンダー2020より/龍一郎 揮毫)

今年の夏は、コロナ禍と猛暑で、これまで経験したことのない夏でした。猛暑だけなら昨年も、一昨年もそうでしたが、新型コロナの蔓延は予想もつかなかったことです。

コロナはまだ勢いを保持していますが、猛暑は、ようやく鎮まったようで、「暑さ寒さも彼岸まで」、彼岸を過ぎると一気に肌寒ささえ感じます。

コロナのせいで、ここ甲子園も例年なら全国から集まる野球ファンの歓声もなく(今は少しありますが)、また知人のお店も閉めたり世の中は苦境に喘いでいます。まるで他人事みたいに聞こえるかもしれませんが、私たちの会社・鹿砦社も売上減をいかに補うか苦慮しています。ただ、飲食関係や小売店に比べればまだマシだというにすぎません。なんとか生き延びれているだけでも幸せと言わねばなりません。これから年末が最大の山、皆様方と共に乗り越えていきたいと思っています。

10月になりました。秋桜(コスモス)が咲きほこる季節です。一日も早くコロナが退散し、気持ち良く咲きほこる秋桜を眺めたいものです。

月刊『紙の爆弾』2020年10月号【特集】さらば、安倍晋三

〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』Vol.25

◆神戸山口組、二度目の分裂

神戸山口組の分裂が進んでいる。それも井上邦雄組長の出身母体である山健組およびその傘下の組が、そろって離脱するというのだ。すでに6月段階で獄中の中田浩司山健組組長から、離脱するとの意向がもたらされていたものだ。

この7月22日には、兵庫県高砂市内の喫茶店を借り切って、山健組の会合が開かれ、約二時間の話し合いののち「方向性が決まった」(参加した組長)となったという。参加者は20団体の組長で、それぞれが「一本独鈷(いっぽんどっこ)でやっていく」方向性だとされる。

織田絆誠(金禎紀)をはじめとする若手組長が、任侠山口組(現在は「絆會」)として離脱していらい、神戸山口組は二度目の分裂となりそうだ。離脱の理由は、任侠山口組のときと同じく、会費(上納金)をめぐってと観測されている。

◆高い会費がネックに

神戸山口組が六代目山口組から分裂したとき、100万円ちかい会費(上納金)と日用品の(本部からの)強制購入が負担になっているという理由だった。

分裂後の神戸山口組は、直参で月40万円から60万円とされていたという。コロナ禍でシノギもままならない中、会費以外にも盆暮れやイベントごとに支出を求められる。傘下組織にはかなりの負担になっていたようだ。そこで中田組長が会費減額を決めたところ、これに井上組長が異を唱えたのが実相だという。

ヤクザのシノギをめぐる、当局の締めつけは厳しい。フロント企業の公共事業からの締め出し。繁華街での用心棒代はもとより、組員直営の店への排除(暴力団お断りの店ステッカーなど、客への店の選別強要)も露骨なものがあった。さらにコロナ禍による繁華街の不況は組織の収益を直撃し、個々の組織の財政状態が組織離脱を決定的なものにしたようだ。

ところで、肝心の中田浩司山健組五代目は、昨年8月に起きた六代目山口組弘道会系の幹部銃撃に関与したとして、現在も拘留中の身だ。

警察関係者によると、「山健のトップ自らヒットマンとして報復に動いたと暴力団関係者は仰天しましたが、中田氏は否認を貫いています。本人は無罪を勝ち取り、数年で復帰できると自信を持っており、獄中から弁護士を通じて離脱の指示を出したとみられます」(文春オンライン、8月1日)だという。

◆「一本独鈷」という選択肢

山健組傘下の三次団体だとはいえ、約20団体がそろって離脱であれば、事実上の分裂ということになるが、関係者は「あくまでも個別の離脱です」と強調する。じつは「一本独鈷」というキーワードが事態を説明してくれそうだ。

というのも、暴排条例が施行されてから10年、指定暴力団は経済活動のみならず、組織運営でも身動きがとれない状態になっているからだ。そこで、一本独鈷(独立組織)となって指定から逃れる方法もないではない、という考えではないか。じっさいに、独立組織で非指定団体は少なくない。上部団体が指定を受けても、下部団体が独自に活動することも不可能ではない。

暴排条例の集中攻撃を受けた、北九州の工藤會の例で説明しよう。

本家およびその母体組織(田中組)の幹部(ナンバー3まで)が獄中に囚われ、実質的に本部機能が崩壊(工藤会館の売却など)し、傘下の組の事務所ものきなみに閉鎖命令。幹部会も公然とは開けない状態になっている。にもかかわらず、傘下の各組織は独自に活動を続けているのだ。

「個々バラバラですが、みんな元気にやっております。会議やら減ったぶんだけ、楽になっておりますね」(工藤會の二次団体の組長)という現状だ。

新たな抗争事件さえ起こさなければ、上部団体から離脱した組織が公然と活動できると、ヤクザ関係の弁護士は云う。非指定団体になる道だ。

工藤會の場合、事務所を使わずに活動継続できるのは、PCとスマホを駆使した活動方法を早くから取り入れていた(溝下三代目時代)からだという。

ただし、野村総裁・田上会長ら獄中幹部の公判は始まったものの、法曹関係者によると「元ヤクザが相手でも、一般人を対象にした殺傷事犯ですから、長期刑は避けられない」との観測である。えん罪事件の上高謙一組長が実刑だったこともあり、獄中の最高幹部が社会不在のままの状態は、ながく続きそうだ。

いずれにしても、改正暴対法・暴排条例のもとでのヤクザ組織の在りようは、昔ながらの一本独鈷というスタイルになりそうな気配だ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

著述業・編集者。2000年代に『アウトロー・ジャパン』編集長を務める。ヤクザ関連の著書・編集本に『任侠事始め』、『小倉の極道 謀略裁判』、『獄楽記』(太田出版)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)、『誰も書かなかったヤクザのタブー』(タケナカシゲル筆名、鹿砦社ライブラリー)など。

最新! 月刊『紙の爆弾』2020年10月号【特集】さらば、安倍晋三

タケナカシゲル『誰も書かなかったヤクザのタブー』(鹿砦社ライブラリー007)

◆利権構造への警戒

前回、よど号メンバーのリーダー・小西隆裕氏による、新型コロナウイルスに触れ、「収束の先行」という出口戦略を主張する論文をきっかけに議論があったことをお伝えした。そして、検査数の増加は可能であり、PCR検査自体に問題はないということを確認。そこで今回はまず、前回少々触れた日本医師会会長に関し、2020年6月に交代したことをおさえておく。

freepik.com

◆日本医師会の会長交代

6月27日、日本医師会会長選の投開票がおこなわれ、安倍晋三との関係が深かった横倉義武氏を破り、副会長だった中川俊男氏が会長に就任した。彼は、「国民の健康と命を守るためならどんな圧力にも決して負けない、堂々と物をいえる新しい日本医師会に変えていこうと思っている」「政府にいいづらいこともはっきり申し上げていく」と語っている。そして中川会長は最近でも、検査拡大・熱中症対策・重傷者の増加に関する危機感などを伝えている。ただし、彼が改革推進派と単純にはいえず、『Asagei Biz』の記事によれば、医療業界の利益を優先するのだという。

◆製薬会社の得る巨額の利益

さて、次に新型コロナウイルス関連の利権構造として、さまざまな意見が散見される。富士フイルム富山化学の「アビガン」についても当初は利権構造の影響で使えないという憶測も呼び、承認を迫る世論が高まった。安倍晋三首相は「5月中の承認を目指す」と明言し、経産省も同様のスタンス。しかし、官邸が期待した「極めて高い有効性」は示されず、臨床試験(治験)は9月までかかる見通しだ。

また、厚労省は副作用を懸念し、日本医師会も「アビガン」の推奨に釘を刺す。その他に関しては、日医工「デカドロン」「フサン」、帝人ファーマ「オルベスコ」、抗マラリア薬「メフロキン」など、さまざまな治療薬の名があげられてきたが、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「特効薬は現時点でなく、今後も存在しない可能性がある」と述べている。

いっぽうワクチンについて政府は、秋にも接種の基本方針を策定しようとしている。優先的に接種する対象を、医療従事者や高齢者以外にどこまで含めるかが議論されているのだ。国内ではアンジェスのDNAワクチン「AG0301-COVID19」が治験を開始したほか、塩野義製薬やKMバイオロジクス、第一三共、IDファーマ、田辺三菱製薬なども開発に取り組む。ただし、世界のワクチン製造には利権が絡むといわれる。

『ConsumerNet.JP』によれば、「2020年7月31日、米ファイザーが新型コロナウイルスのワクチン開発に成功した場合、来年6月末までに日本で6000万人分(1人2回接種で1億2000万回分)のワクチンの供給を受けることで同社と合意したとのプレスリリースが報道されました。まだ見ぬワクチンについて、日本政府とファイザー社との間でどのような契約がなされたのかその中身は不明です。報道によれば、米政府は7月22日、製薬大手のファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテックから、1億回分のワクチンを約20億ドル(約2100億円)で取得する契約を結んだと報道されています。1人当たり約40ドル(約4200円)」「ワクチンは数十億人分が必要とされており、製薬各社は巨額の利益を上げることになります」とのこと。

中国ではワクチンの緊急投与が開始された。ワクチンに関しては近年、さまざまな意見が散見される。科学の正確な面は社会に生かされるべきだが、いずれにせよ私たちは動向を注視し、必要な際には声をあげねばならないだろう。

◆利権構造にまみれやすい背景

また、コロナの影響下でも、さまざまな政策と関連しながら新たな予算が組まれる。『紙の爆弾』本誌でも、電通に関する記事が寄稿されていたが、筆者も電通や凸版印刷、広告制作会社などの広告やウェブ、新たな事業や長年にわたる事業の推進に関する仕事などに携わったことが幾度かある。その際、やはり新たな政策が打ち出されて予算が組まれるとなれば、オリンピックでもカジノでもなんでも、いち早く社内にチームが結成され、報道前に議論が始まるのだ。このようななかから、一般社団法人を介して経産省や総務省から電通に再委託がなされたり、場合によっては委託先の民間企業によってサクラが使われたりしたことなどが問題として、ようやく最近、取り上げられるようになった。新たな予算が組まれたら、これまで同様、慎重にみていく必要があるだろう。

話を前回に戻すと、PCR検査や研究に関しても、NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は、「厚労省─感染研─保健所・地方衛生研究所、さらに専門家会議という『感染症ムラ』」の存在に警鐘を鳴らす(『東京保険医協会』)『Foresight(Yahoo!Japanニュース)『AERAdot.』

近年私が実感していることは、「この社会には利権構造にまみれやすい背景がある」ということだ。「御恩と奉公」のような関係性、そしてそれが安定した際のスムーズさ、保守的・固定的な関係性の誤った「安全・安心」。人間関係の固定化を避け、「コミュニティ・クラッシャー」扱いされる人へのシンパシーのある筆者としては、常に違和感を抱いている。

いずれにせよ、新型コロナウイルスの報道に関しては、原発などとも同様、自ら情報を収集し、考え、判断する必要があるだろう。さまざまな意見が乱れるなか筆者は、それをしたかった。日々報道が積み重ねられるなかではあるが、ともに考え続けていければと思う。

次回以降は、任意と強制、医療従事者の感染、問題の深刻度、併発と原発被害との比較、対策と公衆衛生学、情報開示、補償と財政などについて引き続き、触れたい。そして、原発、台風、コロナなどの問題を総合的に考えた際、導き出される人類の次の生き方についてまで、書き進めていきたいと考えている。

▼小林 蓮実(こばやし はすみ)

フリーライター、労働・女性運動等アクティビスト。月刊『紙の爆弾』9月号「ドキュメンタリー映画『友達やめた。』 ─多様性の受容の前にある互いの理解の尊さと困難」、『現代用語の基礎知識 増刊NEWS版』に「従軍慰安婦問題」「嫌韓と親韓」など。

最新! 月刊『紙の爆弾』2020年10月号【特集】さらば、安倍晋三

先日、ある死刑被告人に面会取材するために東京拘置所を訪ねたところ、不可解な出来事があった。施設に入る際、待機していた職員に「弁護士か否か」を確認され、「違う」と答えたら、「新型コロナウイルス対策の検温に協力して欲しい」と求められたのだ。

このご時世、もちろん検温には応じたが、疑問が残った。刑事施設はどこも平時から、弁護士の面会については、手荷物検査を免除したり、面会時間を長くしたりと、様々な点で一般の面会と扱いが異なるが、それらはすべて被収容者の権利擁護のためだと理解できる。しかし、新型コロナウイルス対策の検温について、弁護士とその他の来訪者を区別する必要は何かあるだろうか?

その職員は、「上から、そうするように言われたんです……弁護士の方は、弁護士会で徹底するそうです」と説明したが、ますます意味がわからない。弁護士会が所属弁護士に対し、新型コロナウイルスに感染しないことや、感染した場合に拘置所や刑務所で感染を拡大させないことを徹底できるはずがないからだ。

実際、他地区の弁護士によると、東京拘置所以外の刑事施設では、弁護士もその他の来訪者同様、入場前に検温をされている例もあるという。

◆弁護士に対する検査は「入場後」に行っていた……

そこで、なぜ、弁護士には入場前の検温を要請しないのかについて、東京拘置所に正式に取材を申し入れた。すると、総務部の職員から電話で次のような回答があった。

「弁護士の方については、拘置所内にある弁護士専用の待合室に入ってから、サーモグラフィーカメラで検査させてもらっています。そのうえで必要があれば、検温もさせてもらっています。ただ、このような対策を始めてから、弁護士の方が検温で発熱が確認された例はありません。一般の方は、発熱が確認された方がこれまでに1人いて、入場をお断りしましたが」

入場前の検温が弁護士だけは免除されている東京拘置所

東京拘置所は元々、弁護士とそれ以外の来訪者では、面会の受付窓口も待合室も別々になっている。それゆえに検温をする場所も違うということのようだ。ただ、弁護士だけは検温をせず、拘置所の建物内に入れていることに変わりはなく、それが新型コロナウイルス対策として適切と言えるかは疑問だ。

では、もしも今後、弁護士が専用の待合室に入ってからの検査で発熱が確認されることがあったらどうするのか? その点も質問したところ、その総務部の職員の回答は歯切れが悪かった。

「実際にそうなってみないとわかりませんが……その場合、入場をお断りするというより、入場しないようにお願いすることになるかもしれません。あくまでお願いベースだと思います」

拘置所や刑務所は現在のコロナ禍において、クラスターの発生が最も恐れられている場所の1つだ。しかし一方で弁護士の面会については、下手に制限すれば、弁護士や被収容者から反発され、面倒な事態になりかねない。この総務部の職員の話しぶりからは、東京拘置所がそのあたりのバランスに苦慮している様子が窺えた。

実際問題、全国各地の刑事施設で職員や被収容者が新型コロナウイルスに感染したというニュースがぽつぽつと報じられている。他ならぬ東京拘置所でもすでに被収容者の感染例が確認されている。「弁護士も入場前に検温しておけばよかった」という事態にならないように願いたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第11話・筒井郷太編(画・塚原洋一/笠倉出版社)がネットショップで配信中。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

昨年、団体分裂によって設立されたジャパンキックボクシング協会。代表は長江国政氏でしたが、満1周年となった5月1日付けで小泉猛氏に交代されています。

NAGAE ISMと銘打たれた今回の興行。2年ほど前から神経性の病で歩行困難になり、闘病を続ける長江国政氏に勝利の報告を届けなければならない治政館ジム勢の戦い。そして当協会の今後の浮上を懸けた戦いでもある。

さらにコロナウィルス蔓延で、7月からプロボクシングの興行も無観客で徐々に再開されて以降、キックボクシングでも無観客や客席を半分以下に減らしての開催が始まりました。

正月明けから7ヶ月ぶりとなった当協会興行。ソーシャルディスタンスを保っての興行で、なかなか厳しい状況が続いているキックボクシング55年目の夏です。

選手皆が復帰戦のような立場の中、閉鎖された藤本ジムからRIKIXへ移籍したHIROYUKIは6月、他興行に出場しており、勘の鈍りは少なかったかもしれなません。

メインイベンター馬渡亮太は不完全燃焼に終わる。今後の出場で本領発揮を期待したい。

◎NAGAE ISM / 8月16日(日)後楽園ホール開場17:00 開始18:00
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

馬渡はアグレッシブに攻めるも、今少し距離が足りない

◆第8試合 56.0kg契約 5回戦

馬渡亮太(前・JKAバンタム級C/治政館/56.0kg)
    VS
ダウサコン・モー・タッサナイ(元・ラジャダムナン系スーパーフライ級3位/タイ/55.45kg)
引分け0-0 / 主審:椎名利一
副審:仲49-49. 和田49-49. 桜井49-49

ムエタイのリズムが続く両者のパンチ、ヒジ、ヒザの時折強いヒットを見せるも相手を弱らせるに至らない。馬渡の方がパンチ蹴りの手数が多いが、首相撲の展開に移るとダウサコンがやや上手を行き、互いの決定打が無い展開が続く。日本での試合、決め手が無ければ引分けになるのが何となく読める中、ジャッジ三者とも49-49ながら、各ラウンドの三者の採点が揃わない展開が続く終了となった(4Rだけ2者ダウサコン、1者馬渡)。  

飛びヒザ蹴りを幾度か見せた馬渡、ボディに炸裂は効果有りか

距離が掴めない中での馬渡のハイキック、巧みにかわすダウサコン

◆第7試合 52.5kg契約 5回戦

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/52.4kg)
    VS
HIROYUKI(前・日本バンタム級チャンピオン/RIKIX/52.5kg)
勝者:HIROYUKI / KO 3R 2:11 / 主審:仲俊光

両者は5年前に対戦し、HIROYUKIが判定勝利。若さとここ最近の勢いでHIROYUKIがスピードで優り調子を上げていく。石川の組みついてのヒザ蹴りを許さない距離から右フックで第1ラウンドにノックダウンを奪い、第3ラウンドにも蹴りからのパンチがヒットしてノックダウンに繋げ、石川は何とか立ち上がるも足下がおぼつかず、レフェリーがテンカウントを数え、HIROYUKIが余裕のノックアウト勝利を飾った。

HIROYUKIの右ハイキックが石川直樹の頬にヒット

HIROYUKIの攻めが冴える。石川直樹はリズムを掴めない

蹴りからパンチをヒットさせ、ノックアウトに繋げたHIROYUKI

◆第6試合 67.0kg契約3回戦

JKAウェルター級チャンピオン.モトヤスック(治政館/66.7kg)
    VS
ジャックチャイ・ノーナクシンジム(元・ラジャダムナン系バンタム級6位/タイ/66.1kg)
勝者:ジャックチャイ / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-30. 和田28-30. 仲29-30

蹴りから首相撲の距離に移るとジャックチャイが主導権支配。モトヤスックのパンチと蹴りは連打が少なく、接近した瞬間にモトヤスックの額にヒジ打ちをヒットさせるジャックチャイ。元ムエタイランカーのテクニックにもう一歩及ばなかったモトヤスック。

ジャックチャイが巧みに自分の距離を保った

◆第5試合 57.5kg契約3回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(ビクトリー/57.5kg)
    VS
NJKFフェザー級1位.小田武司(拳之会/57.5kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:33 / 主審:椎名利一

左ジャブで小田の出方をコントロールする瀧澤。ミドルキック、ヒジ打ちで次第に瀧澤ペースが勢いづいていく。第2ラウンド、瀧澤はヒジ打ちで小田の額をカットして、レフェリーが様子を見て止め、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

ベテラン瀧澤博人の右ハイキックで若い小田武司を攻める

◆第4試合 67.25kg契約3回戦

JKAウェルター級1位.政斗(治政館/67.25kg)
    VS
NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/67.0kg)
勝者:政斗 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:椎名30-28. 桜井30-29. 仲30-28

政斗が打ち合いの中、右ヒジ打ちで稲葉の額をヒットさせ、勢い増していき政斗が判定勝利。

稲葉裕哉と政斗のパンチの交錯

◆第3試合 女子ピン級3回戦(2分制)

女子(ミネルヴァ)ピン級1位.祥子JSK(治政館/45.1kg)
    VS
同級3位.TOMOMI(TEAM FOREST/45.1kg)
勝者:TOMOMI / 判定0-3 (28-29. 28-30. 29-30)

◆第2試合 50.0kg契約3回戦

空明(治政館/49.9kg)vs谷津晴之(新興ムエタイ49.7kg)
勝者:谷津晴之 / 判定0-3 (28-30. 28-29. 29-30)

◆第1試合 56.0kg契約3回戦

義由亜JSK(治政館/55.6kg)vs姉川良(REON Fighting Sports/55.4kg)
勝者:義由亜 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-27)

《取材戦記》

半年ぶりに後楽園ホールに訪れると、当日計量の午前10時より外で報道陣も含めたコロナ抗体検査が行われ、開場時には靴裏の消毒、センサーによる体温測定が行われていました。リングサイドカメラマンはマスクをした上、フェイスシールドを義務付けられ、ファインダーが覗き難かった。フェイスシールドがカメラと擦れあって傷付くとより靄が掛かって見え難くなったが、これは扱い方が悪かったのかもしれない。

注意喚起の上ではあるが、観衆が声を出さないのは異様な光景でした。客席数を半分に減らした上に空席も目立ったので、かなり静かだった。笑いの起こる野次が懐かしい。

団体や主催者、会場によって規制の違いや、今後のコロナ蔓延拡大によっては状況が違ってくるでしょう。選手の戦いの場に、これ以上の中止自粛が続かないことを祈りたいものです。

1席ずつ空けてのソーシャルディスタンス、満席になる日はいつか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

◆再検査というからには、重篤個所があるのでは?

安倍総理の7時間半に及び検診が、永田町をゆるがせた。憶測を呼んでいるのは、検査の事実を公然とテレビに晒したことである。

総理官邸は「休み明けの体調管理に万全を期すため夏期休暇を利用しての日帰り検診」だと発表しているが、安倍総理は約2カ月前の6月13日にも同院を訪れ、このときは6時間にあわって人間ドックを受診。今回の検診について病院側は「6月の追加検査」と説明している。しかし永田町では「やはり体調が悪化しており、それで重篤個所を再検査したのではないか」という憶測が飛び交っている。

それというのも、8月4日発売の「FLASH」が、「安倍晋三首相 永田町を奔る“7月6日吐血”情報」というタイトルで体調問題を報道しているからだ。

8月4日発売の「FLASH」誌面

同誌は7月6日の首相動静に、小池百合子都知事と面談を終えた11時14分から16時34分、今井尚哉首相補佐官らが執務室に入るまでの約5時間強。総理に空白の時間があったとして、この間に吐血したのではないかという情報が永田町に流れていると解説している。安倍首相が抱えている持病の潰瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変、あるいは治療のために服用しているとされるステロイド系の薬剤による影響を指摘していた。

吐血という以上、上部消化器官系(胃・十二指腸)からのもので、持病の潰瘍性大腸炎とは考えにくい。下部消化器系で起きた潰瘍や癌細胞は、大腸から肝臓や胆のう、胃と十二指腸、すい臓、最後は肺に転移するとされている。そこで上記の「瘍性大腸炎に合併する胃や十二指腸の病変」が推測されたわけである。

じつは2015年8月にも「週刊文春」が「安倍首相の『吐血』証言の衝撃」という記事を掲載したことがある。ホテルの客室で会食中に安倍首相が吐血し、今井尚哉秘書官が慌てて慶応大病院の医師を呼び出し、診察を受けたという記事を掲載したのだ。このとき安倍事務所は「週刊文春」発売の翌日に、文藝春秋に記事の撤回と訂正を求める抗議文書を送っている。

しかるに、今回はそのような抗議も打消しの言動もない。

総理と長時間にわたって面談(国会対策と後継者問題か)した麻生太郎副総理は、例によって「あなた、147日間も連続勤務したことある? ないよね。だったらわからないだろうが、それだけ長く勤務をつづければ、体調もおかしくなるということだ」などと逆質問し、菅義偉も例によって「わたしは連日お会いしているが、淡々と職務に専念をしている。まったく問題ないと思っている」と木で鼻をくくるような返答であった。

だがしかし、車列をつらねて慶応病院を訪れ、あたかも国民にアピールするような行動に出たのはなぜか?

◆なぜ秘匿しなかったのか? 政治家の病気は命取りの「常識」

ふつうなら、ひそかに官邸を脱出し、極秘に診療をうける方法もあったはずだ。たとえば国家緊急事態(戦争や内乱時)には自宅からオートバイ(タンデム)で官邸に、渋滞中の首都高を急行する「総理緊急送迎」も実行に移されるはずだ(複数回の演習済み)。その場合は、複数のダミーを走らせてテロの標的にならないようにするという。

外に向かっては自衛隊の総司令官であり、内に向かっては警察の治安出動を命令・指示しうる行政の長であればこそ、国家権力の中心軸としての警護・隠密化がもとめられるのだ。

それは通常、病気においても変わるところがないはずだ。一般に政治家は病気の噂を嫌い、かりに病気が事実であった場合も隠蔽するものである。

かつて池田隼人総理は、在職中に癌に罹患した。池田派の側近議員らが癌であることをひた隠し通した上で、任期を残して退陣する演出を行ったのである。すなわち、東京オリンピック閉会式翌日の10月25日に退陣を表明し、自民党11月9日の議員総会にて佐藤栄作を後継総裁として指名したのだ。後継総裁選びを、退陣予定の総裁の指名で行なった、戦前・戦後を通じて最初のケースであった。池田は翌1965年8月13日に死去した。享年65。

◆予定調和の禅譲劇を準備している

「今後のことは検査結果次第でしょう。何もなければ、少し休息を取って英気を養い、仕事を続けられる。一方、これ以上は体調が持たない、となれば、今月24日に在職日数が単独で歴代最長となるのを待っての退陣もある。その場合は麻生財務相が後継ということで、15日に2人が私邸で会った際に話し合ったのではないかとみられている。しかし、総裁選になれば、解散総選挙を見据えて世論の人気の高い石破元幹事長が勝つ可能性もある。安倍首相は、それだけは絶対に阻止したいのでしょうが……」(日刊ゲンダイ、8月19日)

まさに、この推測が的を得ているのではないか。

第一次政権の二の舞を踏みたくない。みじめな退陣劇だけは避けたいという、予定調和の禅譲劇を準備しているのではないだろうか。

2007年7月29日の参院選で自公過半数割れの大惨敗を喫し、党内から退陣要求が出るも、安倍総理はこれを拒否した。8月27日に内閣改造し、9月10日に臨時国会で所信表明をしたものの、代表質問の予定だった同12日に、突如として退陣を表明した。官邸の側近など事前に相談することもなく、突然の決断だったという。もうそのときは、病状の悪化で身体が動かず、政治的にも死に体だったのはいうまでもない。もう二度と、この人に政界復帰の目はないとまで言われたものだ。

◆危機管理に疲れ、いよいよ政権を投げ出す

今回、政権中枢(麻生・菅)の反応はともかく、安倍総理の側近である甘利明氏までもが、公共の電波で「強制的に休ませなければならない」と、健康不安説を助長させるようなことをわざわざ強調している。長期政権の記録を達成した以上、もう辞めたいのではないか。

新型コロナ対応で感染拡大に歯止めがきかず、経済の立て直しも成果を出せない。今年4~6月のGDPが年率マイナス27.8%(速報値)になり、戦後最悪を記録したことが発表された。いまや異次元の金融緩和や大規模な財政出動で株価を支えてきたため、安倍総理に打つ手は残されていない。景気浮揚のために一縷の望みをかけてきた東京五輪は、中止になる可能性が高い。もはや投げ出したい、それが安倍総理の真意なのかもしれない。


◎[参考動画]麻生大臣「健康管理も仕事」診察受けた安倍総理に(ANN 2020/08/18)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】 新型コロナ 安倍「無策」の理由

◆東京都医師会の尾崎治夫会長の「法的拘束力もつ休業要請」

新型コロナウイルス感染拡大の中、一般市民からも野党からも「国会を召集しろ」という声が高まっている。

もっともな要求だが、そこには落とし穴もある。

7月30日、東京都医師会の尾崎治夫会長は、法的拘束力のある補償付き休業「要請」が必要だと発表し、話題を呼んでいる。法的拘束力のある要請とは実質「命令」だ。

テレビはこの発言を好意的に取り上げ、賛同する世論もあるが、”コロナファシズム注意報”を発令したい。


◎[参考動画]都医師会 PCR検査1400カ所に「抑える最後のチャンス」(FNNプライムオンライン)

◆自民党憲法草案の緊急事態条項に悪用の恐れ

そもそも、コロナ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律)は、今年3月13日に可決し翌14日に施行されたばかり。
 
民主党政権時代に成立したインフルエンザ特措法の一部を変えたものである。具体的には、改正前の「新型インフルエンザ等」の定義の改正。法の対象に新型コロナウイルス感染症を追加した。

最大の問題点は、内閣総理大臣が必要と認めれば、緊急事態宣言することができ、権力の集中、市民の自由と人権が強く制限される危険があることだ。
 
これまでの安倍政権は、憲法を守らず、法律に違反し、国会で虚偽答弁を繰り返し、政権に忖度した役人も公文書を改ざん破棄するなどを繰り返してきた。

したがって、今度の新特措法を破ったり強引に拡大解釈してもなんの不思議もない。過去の事実を見る限り、こちらの可能性の方が高いとみなければならない。

もっとも心配なのは、憲法に緊急事態を盛り込む地ならし、ないし布石にしようと政府・自民党は目論んでいる疑いがあることだ。

2012年、自民党は憲法改正憲草案に「緊急事態条項」を盛り込んだ。これは緊急事態と内閣総理大臣が判断すれば、国会機能を停止し、政府が決める政令が法律と同等の効力を持つ。

行政の独裁になり、緊急事態の期間延長も可能という。その危険性ゆえにナチスの全権委任法のようだと批判がある。まさに日本を文明国から野蛮国に転落させる憲法草案といえるだろう。

新型コロナウイルスが問題になり始めた1月30日の二階派の会合で、自民党の伊吹文明元衆院議長が、「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と述べた事実は見逃せない。

人々の不安とストレスに乗じて「法的拘束力を持つ休業」を安易に取り入れた特措法の再改正をすれば、強権的抑圧体制が進むおそれがある。

これは上からの抑圧だが、もっと恐ろしいのが下からの圧力ではないか。

◆権力の弾圧と下からのファシズム──サンドイッチ規制

前述した自民党の伊吹文明氏が言う、憲法の緊急事態条項にコロナ危機を連動させる野望は、上からの民衆弾圧の思想だ。

一方、全体主義的な空気を一般人が下から煽り立てる危険も現実にある。

前回、緊急事態宣言が発出された日のテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』を思い出す。その日のうちに緊急事態宣言発出か、という緊張した日の朝だった。

出演していたジャーナリストの青木理氏は、緊急事態宣言を出せ、政府に強力な権限を持たせよ、という空気が一般人の中にあることについて「非常によろしくない、非常によろしくない」と繰り返し警告していた。

それに対し、テレビ朝日社員のコメンテーターである玉川徹氏が、「上からでなく下から声が上がってきたのは非常にいいこと」という趣旨の発言を、青木氏のコメントに対応するかたちで繰り返した。

自粛警察、自粛ポリス、マスク警察などを見れば明らかだろう。

国家権力が直接的な強権を発動するのではなく、下から人権や私権の制限および権力の強化を求める機運が高まった時こそ、全体主義が暴走しやすい。

自由を求める少数の人々は、国家権力と民衆の間に挟まれるサンドイッチの具になる。デモ隊の左右を機動隊んが挟み込む規制を”サンドイッチ規制”と呼ぶ。それを立体的にしたようなイメージである。

国会を召集するのは当然としても、安易に「コロナ特措法」の強化に対しては、最大限の警戒を持つべきだ。

◆プラスマイナスで総合的に判断を

そうはいっても、これ以上感染が拡大したらどうするのか? 爆発的に増えたらどうするのか? という意見もあるだろう。その一方で、自由や人権が奪われ、権力が肥大化する恐れがある。

両者をプラスマイナスで考え、より深刻なマイナスを除去する方向で判断するしかないだろう。つまり、どちらがより日本社会に打撃を与えるかの判断が必要ではないだろうか。

コロナウイルスは必ず終息する(100%ではないが)が、いちど強権的システムを構築してしまえば、抑圧体制を容易に終息させることはできない。コロナ終息後も時の権力や支配者たちは、そのシステムを維持するだろう。

そうなれば、ステイホーム、Go to などの号令に従って尻尾を振る飼い犬のような生活が長期間続くことを覚悟しなければならないのだ。

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2020年9月号【特集】新型コロナ 安倍「無策」の理由

◎目次概要◎https://www.kaminobakudan.com/

誰もがいくばくの不安や、気持ち悪さを共有しているであろう、珍しい光景。それもこの国だけではなく、ほぼ世界すべての国を覆いつくしているCOVID-19(新型コロナウイルス)。

「緊急事態宣言」と、大仰な「戒厳令」もどきが発せられたとき、報道機関は一色に染まり、この疫病への恐怖と備えを煽り立てたのではなかったか。あれは、たった数か月前の光景だった。為政者の愚は使い物にならないマスクの配布に象徴的であった。安倍が「無能」あるいは「有害」であることを、ようやくひとびとが理解したことだけが、この惨禍の副産物か。

いま、ふたたび(いや、あの頃をはるかに凌ぐ)感染者が日々激増している。「接触する人の数を8割減らしてください」と連呼していた声は、どこからも聞こえない。それどころか、国は感染対策をきょう時点で、まったくといってよいほどおこなっていない。毎日感染者は激増するだろう。そして都市部から順に医療は崩壊する。COVID-19(新型コロナウイルス)による死者は春先に比べて、少ないようではあるが、医療機関内の混乱とひっ迫に変わりはない。

たった数か月前の「緊急事態」すら発した人間も、発せられた人間も、あの時のことを忘れてしまったのか。そこまで人間の頭脳は、「記憶」機能を失なったのか。

数か月前を想起できないのであれば、75年前を肉感的な事実として、想像したり、それについて思索を巡らすことなど、望むべくもないのだろうか。

残念ながらわたしの体は、それを許さない。

あの日、広島市内で直撃を受けながら生き永らえ、50歳過ぎに癌で急逝した叔父から聞いた、あまたの逸話。その叔父だけではなく同様にあらかじめ寿命が決まっていたかのように、50過ぎに次々と急逝していった叔父たち。そして高齢とはいえ、100万人に1人の確率でしか発症しない、といわれている珍しい癌に昨年罹患した母。担当医に「被爆との関係が考えられますか?」と聞いたが、「それはわかりません」とのお答えだった。それはそうだろう。お医者さんが簡単に因果関係を断言できるわけではない。

不可思議なのだ。長寿の家系……

ついにその足音はわたし自身に向かっても聞こえてきた。

長寿の家系であったはずの、母方でどうして「癌」が多発するのか。科学的因果関係などこの際関係ないのだ。わたしの記憶には生まれるはるか昔、経験はしていないものの、広島の空に沸き上がった巨大なキノコ雲と、その下で燃え上がった町や、焼かれたたんぱく質の匂いが現実に経験したかのようにように刻み込まれている。

人間はどんどん愚かになってはいないだろうか。記憶や想像力を失ってはいないか。

8月の空は悲しい。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年8月号【特集第4弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

◆このままでは、民族滅亡の危機か

全国の感染者がデイリー1000人を越え、とくにウイルス感染の「密集・密接」が顕著な大都市東京において、いよいよ460人越えの感染者数となった(7月31日)。医療崩壊を怖れるあまり、PCR検査にハードルを課してきた厚労省官僚(医系技官)および国立感染研のテリトリー主義の結果、日本はいよいよウイルス禍のなかで滅亡のきざしを経験しつつある。

このまま加速度的に感染者数が増加するようだと、太平洋戦争のような万骨枯れる事態にもなりかねない。4月の超過死亡率は例年通りだったが、法医学学会のアンケートで保健所と感染研が死後のPCR検査を拒否している実態で触れたとおり、厚労省官僚はウイルス禍による死因を隠している可能性が高いのだ。いずれにしても東京のみならず、大都市圏および沖縄のような観光地においても感染者数は増加の一途である。

◆なぜ観光キャンペーンを中止できないのか

にもかかわらず、わが安倍総理は国会審議および記者会見から逃亡し、半休出勤というチキンハートぶりを顕わにしている。それだけならば、危機管理にからっきし弱い宰相のみじめな姿を見るだけですむのに、余計なことをしでかす。

無為無策をかこちながら、安倍政権は反対意見を押し切って「Go To トラベルキャンペーン」を強行したのである。そして政府の新型コロナウイルス対策分科会では、キャンペーンへの疑義が出されたにもかかわらず、政府は議題にもしなかったという(7月31日)。

いったん決めてしまった政策を変更できない。それは日本が戦前にたどった道を彷彿とさせる。戦争への道を変更できなかった戦前の日本を支配したのは、統帥権を梃子にした軍部の政治支配であり、それをささえる国民の愛国心の熱狂であった。

しかし今日、日本の政界を支配してしまったのはカネによる業界利権、そのもとでの政策の捻じ曲げ。すなわち利権による政治の私物化にほかならない。きわめて私的な理由で、政策変更ができなくなっているのだ。

◆観光業界のドン

「週刊文春」によると、この「Go To トラベルキャンペーン」の推進者である二階俊博自民党幹事長をはじめとする自民党の観光立国調査会の役職者37人が、旅行関連業者(ツーリズム産業共同提案体)から4200万円もの政治献金を受け取っていることがわかっている。

つまり、こういうことだ。国民をウイルス禍にさらす旅行キャンペーン(旅行費の35%補助、15%のクーポン支給)は、旅行業界からの政治献金(限りなく賄賂に近い)への見返りだということなのである。

この「観光立国調査会」という組織は、二階幹事長が最高顧問を務め、会長は二階氏の最側近で知られる林幹雄幹事長代理、事務局長は二階氏と同じ和歌山県選出の鶴保庸介参院議員である。

そして実際に「Go To トラベルキャンペーン」の事業を1895億円で受託したのが、上述の「ツーリズム産業共同提案体」なる団体である。自民党議員に4200万円を寄付したのも、じつはこの団体を構成する観光関連の14団体なのだ。

そもそも二階幹事長は観光立国調査会の最高顧問を務めるばかりか、全国旅行業協会(ANTA)の会長でもある。この全国旅行業協会が、上述した観光関連14団体の中枢を構成するのはいうまでもない。二階幹事長はいわば、旅行業界のドンなのである。またもや利権政治、国民の生命を危機に晒しながら利権を追及するという、超の付く政商ぶりを発揮していると言わざるをえない。

週刊文春の記事から引用しておこう。

「(ツーリズム産業共同提案体)は全国5500社の旅行業者を傘下に収める組織で、そこのトップである二階氏はいわば、”観光族議員”のドン。3月2日にANTAをはじめとする業界関係者が自民党の『観光立国調査会』で、観光業者の経営支援や観光需要の喚起策などを要望したのですが、これに調査会の最高顧問を務める二階氏が『政府に対して、ほとんど命令に近い形で要望したい』と応じた。ここからGo To構想が始まったのです」(自民党関係者)

これこそ、政治の私物化にほかならない。

◆即刻「Go To トラベルキャンペーン」をやめ、全国の旅館とホテルをコロナ待機施設に転用せよ

わたしは政権批判のために、二階幹事長の政治の私物化をやり玉に挙げているのではない。感染者が増加しているさなか、1兆7000万円の使い方を間違っていると、そう言わざるをえないではないか。

現在、入院および療養中の感染者は8000人を超えているのだ。このまま毎日1000人を超える感染者が出るとしたら、数千単位で準備しているという病床は足りなくなる。病院への入院調整が、医療現場にたいへんな煩雑をもたらしているという(東京都医師会会長の会見)。心ある自民党員は、党の統制を怖れずに意見を言うべきである。1兆7000万円もの「Go To トラベルキャンペーン」費用を、政府はただちに待機用宿泊費に転用し、第二波パンデミックに備えるべきであると。


◎[参考動画]GoToトラベル「一旦中止を」野党と専門家が論戦 尾身氏は人の動きを見直す提言の可能性に言及

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年8月号【特集第4弾】「新型コロナ危機」と安倍失政 河合夫妻逮捕も“他人のせい”安倍晋三が退陣する日

『NO NUKES voice』Vol.24 総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機

前の記事を読む »