読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」というキャッチフレーズに続いて、次のように社会部への内部告発を奨励している。

「不正が行われている」「おかしい」「被害にあっている」こうした情報が、重大な問題を報道するきっかけになります。読売新聞は情報提供や内部告発をもとに取材します。具体的な情報をお持ちの方はお寄せください。情報提供者の秘密は必ず守ります。

この機会に全国の新聞販売店は、「押し紙」の実態を内部告発すべきではないか。読売社会部が「押し紙」を調査して報道する可能性はほとんどないが、同社のジャーナリズムがどの程度のレベルなのかを知るための指標になる。

◆年間932億円の不正販売収入を生み出す「押し紙」

数年前、わたしはNHKに対して「押し紙」に関する資料を提起しようとしたことがある。結論を先に言えば、この時は門前払いされた。NHKの職員は、資料の受け取りを拒否したのである。その理由は、NHKには部署が多いので、たとえ資料を受取っても行方が分からなくなる可能性があるというものだった。(電話での会話)

他の大メディアに「押し紙」の資料を提供しても、取材対象にはならない公算が強い。「押し紙」問題を報道することが、自分たちの小市民としての経済基盤を崩壊させかねない懸念があるからだ。

しかし、「押し紙」問題は、新聞ジャーナリズムを考える上で最も根本的な着目的である。と、いうのも「押し紙」が生み出す不正な販売収入の額が尋常ではないからだ。この汚点に、公正取引委員会や警察などの公権力が着目すれば、「押し紙」の摘発をほのめかすだけで、暗黙裡に新聞の紙面内容に介入することが可能になる。わたしの試算ででは、新聞業界全体で年間932億円の不正な販売収入が発生している。これは過少に試算した数字である。

試算の詳細については、『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)に詳しいが、概要は次の通りである。2021年度の全国の朝刊発行部数は約2590万部だった。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と仮定する。また、新聞1部の「押し紙」代金を月額1500円をと仮定する。「押し紙」による販売収入は、次の計算式で導きだせる。

518万部×1500円×12カ月=年間932億円

新聞は「朝刊単独版」と「朝夕セット版」の2種類があるが、誇張を避けるために、すべての新聞が価格がより安い「朝刊単独版」として計算した。

それにもかかわらず「押し紙」による販売収入は、932億円になるのだ。この数字がいかに異常かは、たとえば次のデータと比較すると分かりやすい。

(1)統一教会の霊感商法による被害額は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、35年間で1237億円である。年間に換算するとたった3億5000万円程度である。

マスコミは、鈴木エイト氏の後追い取材のかたちで、霊感商法の問題を大きく取り上げた。しかし、それよりも被害が深刻なのは、「押し紙」代金の取り立てである。

(2)しんぶん赤旗(2020年9月15日)によると、自民党から電通に支出された広告費は、19年間で100億円超である。年間に換算すると5000万円強である。この広告費は、倫理的な問題を孕んでいるが、不法行為ではない。これに対して「押し紙」による販売収入は、不法行為である。しかし、しんぶん赤旗もこの問題は避けている。暴露した場合の「反共攻撃」が予測されるからではないか。あるいは新聞記者の生活を守ることを優先するからではないか。

「押し紙」が生み出す不正収入が莫大な額であるからこそ、公権力によるメディアコントロールの温床になり得るのだ。公権力の側も、この点を熟知しているから、「押し紙」問題は黙認しているのだ。裁判所は、サラ金の武富士にはメスを入れても、新聞社に対しては、メスを入れない。

実はこのような構図は、戦前・戦中にも存在した。政府が新聞用紙の配給の権限を握ることで、新聞社を大本営の広報部に変質させていった歴史がある。かつては新聞用紙の配給制度がメディアコントロールの装置として機能し、戦後は「押し紙」制度が公権力による世論誘導の装置として定着したのである。この点を認識することなしに、日本の新聞ジャーナリズムの本質を捉えることはできない。

◆新聞ジャーナリズムの衰退を生み出す「押し紙」

新聞ジャーナリズムの衰退について考える時、大別して2つの視点がある。ひとつは精神的なもの(記者魂の欠落や勉強不足)にその原因を求める論法である。もうひとつは物質的なもの(記者クラブ制度、税制の優遇措置、「押し紙」問題など)にその原因を求める論法である。哲学上の言葉を使うと、観念論の論法と唯物論の論法の違いということになる。

前者の典型としては、「望月記者と共に歩む会」である。このグループは、それぞれの記者が東京新聞の望月記者のような積極性を発揮すれば、ジャーナリズムはよくなるという考えのようだ。新聞ジャーナリズムに対する手厳しい批判は、わたしが調べた限りでは、1960年代には始まっているが、現在まで、その評論の大半が観念論に基づいたものである。結果、ほとんど何も変わっていない。

これに対して後者の例としては、既に述べたように、記者クラブ制度、税制の優遇措置、「押し紙」問題などがある。これらの中で最も問題なのは「押し紙」である。と、いうのも「押し紙」問題は、不正な金銭がらみで、しかもその金額が尋常ではないからだ。

◆販売店主の自殺者などを生み出す「押し紙」

新聞社による「押し紙」代金の回収は、販売店主の自殺者などを引き起している。かつてサラリーマン金融や商工ローンの取り立てが大きな問題になったことがあるが、その比ではない。しかも、問題の中心にいるのが、「社会の木鐸」である新聞社であることに、大きな問題がある。

出版社も、そのほとんどが「押し紙」問題を扱わない。新聞の書評欄から、自社の書籍が締め出されると、大きな打撃を受けるからだ。

読売新聞社会部(大阪)は、内部告発を奨励することで、そのジャーナリズム性をPRしているようだが、こうした戦略を読者はどう考えるだろうか?

 

本稿は『メディア黒書』(2024年09月27日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

福岡・佐賀押し紙弁護団は、10月1日、毎日新聞の元店主Aさんが大阪地裁へ提起した「押し紙」裁判の訴状(3月20日付け)を公開した。

それによると請求額は、1億3823万円。その内訳は、預託金返還請求金が623万円で、販売店経営譲渡代金が1033万円、それに「押し紙」の仕入れ代金が1億2167万円である。

訴状の全文(P01-P02)

訴状の全文(P03-P04)

訴状の全文(P05-P06)

◎訴状の全文(下記からダウンロード可能)
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/10/MDK241001.doc

預託金とは、広義の保証金のことである。身近な例としては、不動産賃貸の敷金の類いである。新聞販売店を開業するに際して、新しい店主は新聞社に預託金を預ける。Aさんの場合は623万円だった。

経営譲渡代金というのは、販売店を廃業して後継者に営業権を譲渡する際に、前任店主が受け取ることが出来る営業譲渡金のことである。新聞部数に連動して金額が異なる。Aさんのケースでは、1033万円だった。

しかし、Aさんは預託金も経営譲渡代金も受け取ることが出来なった。毎日新聞社が「押し紙」によるAさんの未払い金額から、これらの金額を相殺したからである。

今回、提起された「押し紙」裁判のひとつの特徴は、販売店に搬入する新聞の部数の決定方法である。訴状によると、「新聞販売店の注文は、FAXやメール等により行われるのが普通であるが」、Aさんの場合は、担当員の訪店時に部数の増減を報告するだけで、販売店に搬入する新聞の部数は毎日新聞社が決定していた。注文方法そのものが、前近代的なものだった。

ちなみに大半の新聞社は、販売店に送付する新聞代金の請求書に、「新聞部数を注文する際は、購読部数に予備紙等を加えたものを超えないでください」という注意書きを記している。毎日新聞社の場合も例外ではなかった。

しかし、逆説的に見ると、この注意書きは新聞社が俗に言う「積み紙」をも禁止していることを意味する。言葉を替えると、販売店に搬入される新聞の部数のうち、販売店経営に真に必要な部数(実配部数+予備紙)を超えた部数は、違法な部数である。独禁法の新聞特殊指定に抵触する。

メディア黒書は、今後、Aさんの「押し紙」裁判を報じていく。

本稿は『メディア黒書』(2024年10月2日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

 

 

◆「押し紙」の実態

兵庫県で毎日新聞販売店を経営してきたA氏を原告とする1億3823万円の支払いを求める押し紙裁判を大阪地裁に提訴しました。

請求金額の内訳は、預託金返還請求金が623万円、販売店経営譲渡代金が1033万円、押し紙仕入れ代金が1億2167万円です。

この事案の特徴は、Aさんが廃業後の生活に予定していた預託金623万円と販売店譲渡代金1033万円の計1656万円を受け取れないまま、無一文の状態で廃業に追い込まれた点にあります。

これまで、銀行負債を抱えたまま廃業せざるを得なくなった販売店は多数見聞きしてきましたが、信認金(預託金)や販売店譲渡代金を一円も受け取れないまま廃業に追い込まれたケースは初めてです。

販売店経営者は、廃業せざるを得なくなった場合でも、信認金や販売店の譲渡代金があれば、当面の生活費に充てたり、自己破産の弁護士費用に充てることができていました。しかし、Aさんの場合は、蓄えもなく銀行負債を抱えたままで経営が続けられなくされたうえに、信認金や販売店譲渡代金も新聞の仕入代金に充当され、翌日の生活費も残らない状態で廃業させられました。

幸い、Aさんは単身者だったため、経営者仲間の協力でアルバイトをしながら生活を維持することが出来ています。今年の熱い夏、毎日汗水を流しながら新聞配達とオリコミ広告のポスティングをしているAさんには頭が下がります。

しかし、Aさんに奥さんや子供さんがいたとしたら、その生活はどうなっていたでしょうか。考えるだけで恐ろしくなります。

◆新聞社のモラル崩壊

月刊誌『ZAITEN』の5月号に、廃業を申し出た読売新聞の販売店主が本社から廃業を再三慰留されてやむなく経営を続けていたところ、大雪に見舞われ欠配しないように店に泊り込みしたことから体調を崩し、数日、店を休み電話にもでなかったところ、販売店継続意思の放棄であるとして読売から販売店契約を強制解除され、販売店譲渡代金が支払われなくなった記事が掲載されていました。

また、私共が担当した広島県福山市の濱中さんに対しても、読売は補助金の不正受給を理由として大阪高裁が1000万円を超える損害賠償を認めた判決に基づき、浜中さんの預金を差し押さえる状況が生まれています。

共存共栄をうたい文句に販売店経営者に莫大な押し紙仕入代金の支払いを続けさせておきながら、廃業した途端、販売店主に残されたわずかな生活資金まで取り上げてしまう新聞社の非道な仕打ちには言葉も出ません。新聞社のモラル崩壊もついにここに極まれりという感じがしています。

大手新聞社ですら、販売店経営者の最後の命綱ともいうべき営業保証金や販売店経営譲渡金まであてにしなければならないほど危機的な経営状況にあることを示しているのかもしれません。

ABC部数の減少がこのままのペースで進むと、新聞社の経営は10年も持たないのではないかと危惧するむきもあります。

そうなれば、新聞の消滅と共に押し紙もいずれなくなります。長い間、「押し紙」は新聞業界の最大のタブーとして国民の目から隠し続けられてきましたが、ネットの普及によって「押し紙」を検索すればおびただしい情報があふれており、もはやタブーでもなんでもありません。失われた30年を経た現在、日本の現状をみると新聞社のモラルの崩壊がシロアリが巣食うように全国津々浦々にまで及んでおり、もはや日本人の美徳であったモラルの取り戻しは絶望的なようにも感じております。

最後のよりどころというべき裁判所が、この問題にどのような姿勢をしめすのか、これからも押し紙裁判の行方に関心を寄せて頂くようお願いして、毎日新聞押し紙訴訟提起の報告と致します。

*福岡地裁の西日本新聞の2件の押し紙訴訟の内1件は、来る10月1日に結審予定です。最終準備書面を提出しますので、その内容は次に報告させて頂くことにします。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長。綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2024年09月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

読売新聞の元販売店主が読売新聞大阪本社に対して起こした「押し紙」裁判のその後の経緯を報告しておこう。新しい展開があった。

既報したように、この「押し紙」裁判は、大阪地裁でも大阪高裁でも読売新聞が勝訴したが、大阪地裁は読売による独禁法(新聞特殊指定)違反を部分的に認めた。その意味で、元店主が敗訴したとはいえ、画期的な認定が誕生した。高裁が、この認定を取り消したとはいえ、判例集でも公開され、「押し紙」問題の解決に向けた一歩となった。

しかし、読売は、元店主に対して新たな動きに出た。8月1日付けで、元店主の預金口座を差し押さえて、約1300万円(延滞損害金などを含む)のお金を支払うように求めてきたのだ。

◆約1300万円の中身

読売が金銭要求している1300万円が発生した経緯は次の通りである。2020年8月に、元店主は読売に対して、「押し紙」で損害を受けたとして、4120万円(後に1億2486万円に増額)を請求額する「押し紙」裁判を起こした。

これに対して読売は、元店主から約1000万円の補助金を騙し取られたとして、元店主を「反訴」した。返金を求めたのである。

判決は、大阪地裁も大阪高裁も、元店主の請求は1円たりとも認めず、読売の高額請求は認めた。

ちなみにこの「押し紙」裁判の読売代理人を務めたのは、喜田村洋一弁護士ら3名である。喜田村洋一弁護士は、人権擁護団体である自由人権協会代表理事を務め、今世紀の初頭か、地元の東京だけではなく、福岡、大阪、埼玉などへ足を運び、一貫して読売に「押し紙」は一部も存在しないと主張し続けてきた。熱心な「人権擁護活動」が評価されてるのか、メディア関係者や新聞研究者からは、ありがたい存在として重宝がられている。

これまでにも読売は、裁判を起こした(元)店主に対して逆に訴訟を提起するなどして法的根拠をつくり、資産を差し押さえたケースはある。たとえば2012年7月、真村訴訟の元原告だった真村久三氏に対して、自宅を仮差押えする申し立てを行った。裁判所は、早々にこれを認めた。この差し押さえには、喜田村洋一・自由人権協会代表理事がかかわった。

当事者を精神的にも、経済的にも追い詰めかねない預金口座の差し押さえ手続きを行ったのは次の3名である。元店主の人命にかかわりかねない案件なので、以下に実名を公表する。

 軸丸欣哉弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)
 森田博弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)
 森本英伸弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)

なお、今回の差し押さえ事件に関しては、喜田村弁護士の名前はないが、裁判では読売の代理人として重要な役割を果たした。従来どおり、「押し紙」は一部も存在しないと主張し続けた。

判決の評価は、本来であれば判決の全文を公開した上で、議論するのがふさわしいが、読売が判決文に閲覧制限をかけているために、議論の肝心な分部は黒塗りで閲覧できない。

預金口座を差し押さえられた後、元店主は新聞労連にも相談したが支援は得られなかった。新聞研究者も口を閉ざしたままである。緒雑誌のジャーナリズム特集でも、「押し紙」問題だけは除外されている。

◆判決の解説記事

この事件をどう評価するかは読者の自由であるが、わたしが着目しているのは、次の4点である。

(1)裁判所と新聞社は、日本の権力機構の中で、どのような位置づけになっているのか?

(2)新聞社の系統を問わず、裁判所は、大半の「押し紙」裁判で、「押し紙」の存在を認定していないが、公序良俗という観点から、大量の新聞が配達されることなく廃棄されている事実(積み紙)をどう考えているのか。

(3)自由人権協会とは何か。

(4)読売の社会部長は、「押し紙」問題をどう考えているのか。

※関連記事 http://www.kokusyo.jp/oshigami_c/17608/

本稿は『メディア黒書』(2024年08月22日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

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新聞業界の「押し紙」問題の本質を考える上で欠くことのできない公文書の原文を公開しておこう。この文書は、公正取引委員会が1997年(平成9年)12月22日付けで、北國新聞に対して交付した「押し紙」の排除勧告書である。

この事件を契機として、公正取引委員会と日本新聞協会(新聞取引協議会)は、「押し紙」問題解決へむけた話し合いを始めた。そして約2年後の1999年に、独禁法の新聞特殊指定の改訂というかたちで決着した。

ところが不思議なことに改訂された新聞特殊指定は、「押し紙」問題の解決への道を開くどころが、逆に「押し紙」をより簡単に強要できる内容となっていた。実際、その後、「押し紙」率が50%を超えるケースが、「押し紙」裁判の中で判明するようになった。

本稿で紹介するのは、この問題(新聞業界の「1999年問題」)の発端となった公文書である。事件の概要については、下記のURLからアクセスできる。

■北國新聞に対する勧告書(全文)
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/07/IMG_0001.pdf

■北國新聞社に対する勧告について(プレスリリース)
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/07/IMG_0002.pdf


◎[参考動画]Collection of unopened bales of newspapers – possible oshigami

本稿は『メディア黒書掲載の記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

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福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団の江上武幸弁護士による西日本新聞・押し紙訴訟の報告を以下、紹介する(編集部)。

◆福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責)

去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさんが、押し紙の仕入代金3051万円の損害賠償を求めた福岡地裁の裁判で、被告の担当員と販売部長の証人尋問が実施されました。双方の最終準備書の提出を待って、早ければ年内に判決が言い渡される見込みです。

押し紙は、新聞社が販売店に対し経営に必要のない部数を仕入れさせることをいいます。販売店への売上を増やすと同時に、紙面広告料の単価を吊り上げるためABC部数の水増しを目的とする独禁法で禁止された違法な商法です。

押し紙は、1955年(昭和30年)の独占禁止法の新聞特殊指定で禁止されてから約70年になります。このような長い歴史があり、国会でも再三質問に取り上げられてきたにもかかわらず、なぜ押し紙はなくならないのか、公正取引委員会や検察はなぜそれを取り締まろうとしないのか、押し紙訴訟に見られる裁判官の奇怪な人事異動の背景にはなにが隠されているのか、といった問題については、マスコミ関係者、フリージャーナリスト、新聞労連、独禁法研究者、公正取引委員会関係者、司法関係者など多方面の関係者、研究者・学者らによって更に解明が進められることが求められます。

新聞の発行部数は1997年(平成9年)の5376万部をピークに、2023年(令和5年)10月には2859万部と半世紀で約46%も減少しています。新聞販売店も2004年(平成16年)の2万1064店舗から、2023年(令和5年)の1万3373店舗と大きく減っています。

このまま推移すれば、10数年後には紙の新聞はなくなるだろうと予想されており、現在進行中の裁判の経過や背景事情について、時期を失せず皆様にお知らせすることはますます重要性を増しています。

西日本新聞社は、販売店からの注文は書面やメールではなく電話で受け付けていると主張しています。他の新聞社が、販売店の注文はFAXやメールで受けているのを認めているのに対し、西日本新聞社は別途注文部数を記載した注文表のFAX送信を指示しているにもかかわらず、販売店から電話で受けつけた部数が正規の注文部数であるとの主張をくずそうとしていません。

FAXやネットではなく電話で受けた部数が正規の注文部数であると主張するメリットは、電話の会話には文字情報の記録が残らないからです。

押し紙裁判では、販売店経営に真に必要な部数を超える新聞がどれだけ多く供給されているかが審理の出発点となります。

西日本新聞社は販売店が電話で注文した部数が正式な注文部数であり、その部数を供給しているにすぎないと主張しているため、その主張をくつがえすには、電話の会話を録音する以外に他に適当な方法がありません。福岡市西部の西日本新聞・今津販売店の場合、店主は電話で報告した部数をノートに記録して残す方策を構じたものの、電話の会話を録音することまではしていませんでした。

私どもは、ノートに記載した部数は電話による注文部数と同じであるとの立証趣旨でノートを提出しましたが、西日本新聞社はノートに記載された実配数に多数の間違いがあると指摘し、ノートに記載された部数全体の信用性を争う訴訟戦術に出ました。裁判所も結局、西日本新聞社のこの主張を認め今津販売店の損害賠償請求を棄却しました。

今回は、佐賀県で販売店を経営していたBさんが電話で報告した部数を所定の用紙に書き込んで記録として残すだけでなく、電話の会話も録音していましたので、西日本新聞社はBさんが電話で報告した部数と記録された部数とが一致していることは認めざるを得なくなりました。

他方、Aさんは電話録音をしていませんので、録音データーを証拠に提出することは出来ませんが、Bさんが提出した証拠はAさんの裁判でも有利な証拠として利用することが出来ましたので、裁判所はAさんの主張を無下に退けることが難しくなったと見ています。

もう一つの成果は、電話で報告を受けた担当員は、報告部数をその場でメモし、後刻、長崎県全体の販売店ごとに、電話による報告部数と定数を一覧表に整理して記録している事実を認めたことです。

販売店毎の実配数がわかれば、広告主から公正取引委員会に対する押し紙の調査や、警察・検察に対し広告料の詐欺罪の告訴・告発が可能となります。

私は以前、ある新聞社の販売店経営者から、「押し紙をなくすために、まず自分が地元の警察に折込広告料の詐欺罪で自首しようと思っているがどうだろうか。」との相談を受けたことがあります。新聞社と販売店は折込広告料の詐欺罪の共犯関係にあるので、まず自分が自首して新聞業界の押し紙問題を世間に訴えたいというのです。

私は、「警察・検察・裁判所などの司法機関は、記者クラブなどの便宜供与にみられるように、新聞社と日常的に密接に交流しており、基本的には持ちつ持たれつの関係にあると考えた方が良い。仮に自首しても、新聞社は押し紙はしていないと言い張るし、新聞やテレビで報道されることもない。詐欺罪で立件されるとしても犯人はあなただけにされますよ。そうなれば家族を路頭に迷わせ、あなた自身の人生も台無しになるので、自首することは考えないほうがいいですよ。」といって、警察や検察への自首を断念させたことがありました。

今回は、部外秘の佐賀県販売店の部数報告書を内部関係者が公益通報してくれましたので、4・10増減の問題(*注記参照)と併せて、西日本新聞社の折込広告料の詐欺の事実は認定可能ではないかと考えます。

しかし、民事裁判だけでなく、公正取引委員会や、警察・検察庁に対する詐欺の容疑の証拠資料として提出することは決断しかねています。予想される社内圧力により、内部からの公益通報がなくなる危険性が懸念されるからです。

最後に、個人的感想を述べますが、西日本新聞社の押し紙は、読売・朝日等の中央紙の地方進出の防戦のために余儀なくされた側面がないとはいえないと思っています。私は当年73歳になりますが、福岡県南部の農村で生まれ育っており、家の購読紙は西日本新聞でした。

役場の職員の方が朝日新聞を購読しておられるのを知り、インテリの人は読む新聞が違うなと妙に感心したことを思い出します。当時、夏と冬休みの期間中の新聞配達は村の子供達の仕事でした。アルバイト代として10円玉を何枚か握らせてもらった時のうれしさは今でも覚えています。

新聞記者は若者のあこがれの職業でしたので、西日本記者に就職した友人・知人もおります。そのほとんどは社の幹部として定年を迎え、悠々自適の生活を送っています。

隣県の熊本日々新聞社は昭和40年代に予備紙2%の業界の自主目標を達成していますので、私はその事実を法廷で紹介しながら、担当員に、「熊本日日新聞社に習って西日本新聞でも押し紙をなくそうという動きはなかったのですか」と質問しました。比較的若い担当員でしたが、「他社のことですから」と口ごもりながら答えをはぐらかしてしまいました。

政治家、行政・司法官僚、大企業の役員、やくざや半ぐれなど、白アリが木造物を食い尽くすように、社会の隅々までモラルの崩壊現象が発生しています。私は、目を背けたくなるようなこれらのモラル崩壊の元凶は、新聞の押し紙にあると確信をもっていうことが出来ます。

最近、ユーチューブの番組をよく見るようになりましたが、様々な分野の人たちが新聞・テレビでは報道されない問題を分かりやすく紹介してくれています。インターネット社会の情報変化をつくづく感じています。

グーグルで「押し紙」を検索すると黒薮哲哉さんだけでなく、他の多くの人達による押し紙問題の調査・報道の記事、動画があふれるように出てきます。黒薮さんは、今回の裁判に、遠路わざわざ福岡市まで駆けつけていただき、西日本新聞社の証人の証言をいち早く記事にして発信していただきました。

インターネット上の押し紙に関する記事や動画は、海外のマスメディア関係者、公正取引委員会関係者、国会・地方議会の議員、学者・研究者など、関係各方面の多種多様な方たちが閲覧しておられます。本件裁判の行方についても、新聞業界関係者だけでなく、多くの方達から見守っていただいています。

押し紙問題に関する内部情報については匿名で結構ですので、私どもに公益通報していただくようお願いする次第です。

押し紙の解決のために、引き続き皆様のご支援・ご鞭撻をお願いして、今回の報告といたします。

* 4・10増減について

西日本新聞の郡部の販売店の場合、折込広告部数は4月と10月の年2回の定数が基準とされています。その月だけ約200部も多い部数が供給されています。

折込広告主は、折込広告会社の公表部数を信頼して枚数を発注します。あらかじめ押し紙を見込んで7掛けや8掛けで部数を発注する賢い折込広告主もいますが、自治体の広報紙などは公表部数通りの部数を発注しますので完全に税金の無駄使いが行われています。

本稿は『メディア黒書掲載の記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

新聞販売店の元店主が「押し紙」(広義の残紙)により損害を受けたとして損害賠償を求めた裁判の控訴審(約6000万円を請求)で、大阪高裁は3月28日、元店主の控訴を棄却した。

「押し紙」というのは、ごく簡単に言えば残紙のことである。(ただし、独禁法の新聞特殊指定が定義する「押し紙」は、「実配部数+予備紙」を超える部数のことである)。

元店主は、2012年4月にYC(読売新聞販売店)を開業した。その際、前任の店主から1641部を引き継いだ。ところが読者は876人しかいなかった。差異の765部が残紙になっていた。このうち新聞の破損などを想定した若干の予備紙を除き、大半が「押し紙」となっていた。

以後、2018年6月にYCを廃業するまで、元店主は「押し紙」に悩まされた。

大阪地裁は、元店主が販売店経営を始めた時点における残紙は独禁法の新聞特殊指定に抵触すると判断した。前任者との引継ぎ書に部数内訳が残っていた上に、本社の担当員も立ちあっていたことが、その要因として大きい。

控訴審の最大の着目点は、大阪高裁が読売の独禁法違反の認定を維持するか、それとも覆すだった。大阪高裁の長谷部幸弥裁判長は、大阪地裁の判断を覆した。

その理由というは、元店主の長い業界歴からして、「新聞販売に係る取引の仕組み(定数や実配数、予備紙や補助金等に関する事項を含む)について相当な知識、経験を有していた」ので、従来の商慣行に従って搬入部数を減らすように求めなかったというものである。皮肉なことに長谷川裁判長のこの文言は、新聞業界のとんでもない商慣行を露呈したのである。

しかし、残紙が「押し紙」(押し売りした新聞)に該当するかどうかは、本来、独禁法の新聞特殊指定を基準として判断しなければならない。元店主に長い業界歴があった事実が、新聞特殊指定の定めた「押し紙」の解釈を変えるわけではない。この点が、この判決で最もおかしな箇所である。

新聞特殊指定では、残紙が「実配部数+予備紙」を超えていれば、理由を問わず「押し紙」である。もちろん「押し紙」のほとんどが古紙回収業者のトラックで回収されていたわけだから予備紙としての実態もまったくなかった。

 

◆「読売には『押し紙』は一部も存在しない」

この裁判の読売側の代理人を務めたのは、6人の弁護士である。この中にはメディア関係者から重宝がられている自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士も含まれている。喜田村氏は、わたしが知る限り今世紀に入ったころから、読売の「押し紙」裁判に登場して、読売には「押し紙」は一部も存在しないという出張を繰り返してきた。

◆日本の公権力機関に組み込まれた日本の新聞業界

今回の控訴審判決の内容から判断して、わたしは新聞業界と公権力機関の距離が極めて近い印象を受けた。今回に限らず、「押し紙」裁判の判決を読むたびに、両者は普通の関係ではないと感じる。先日の日経新聞「押し紙」裁判における最高裁の決定もそうだった。

新聞販売店訴訟、本社勝訴が確定 最高裁

その意味で「押し紙」裁判の提起は重要だ。たとえ販売店の敗訴であっても、判決のたびに新聞業界が公権力機関に組み込まれている実態が露呈する。「押し紙」により新聞業界が莫大な利益を上げる構図があるので、公権力機関はこの問題を泳がせておけば、新聞の紙面内容に暗黙の圧力をかけることができる。

本来、「押し紙」問題にメスを入れなければならないのは新聞記者である。自分の足もとの問題であるからだ。ジャーナリスト集団が従順な「羊の群れ」ではだめなのだ。有権者は新聞の情報を鵜のみにしてはいけない。

◆弁護団声明
 
濱中さんの弁護団は、次のような声明を発表した。

◎弁護団声明(PDF)
http://denjihanet.mods.jp/wp-content/uploads/2024/04/Statement-of-Defense-Counsel.pdf

※判決の全文の入手を希望される方は、xxmwg240@ybb.ne.jpまでご連絡ください。ただし、読売の喜田村弁護士らが裁判所に対して判決文の閲覧制限を求め、裁判所が早々にそれを認めたので、残紙の実態を示す部分など一部が伏字(■■)になっている点を承知ください。(黒薮)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

デジタル鹿砦社通信に掲載した記事、「読売新聞『押し紙』裁判〈2〉李信恵を勝訴させた池上尚子裁判長が再び不可解な判決、読売の独禁法違反を認定するも損害賠償責任は免責」(5月8日付け)(http://www.rokusaisha.com/blog.php?p=46605)を改編したので、改編部分とその理由を説明しておきたい。

この記事は、読売新聞を被告とする「押し紙」裁判(大阪地裁)の判決を解説したものである。判決は、原告の元販売店主の請求を棄却したが、商取引の一部分に関しては、読売による独禁法の新聞特殊指定違反を認定する内容だった。

今回改編したのは、判決文の取り扱いである。当初、原告の元店主の承諾を得た上で判決文を全面公開していた。ところが6月1日になってメールで、読売新聞大阪本社の役員室法務部部長・神原康之氏から、判決の公開を取り下げることを求める「申し入れ書」が届いた。その理由は、判決の中に読売社員のプライバシーや社の営業方針などにかかわる箇所が含まれていることに加えて、同社が裁判所に対して判決文の閲覧制限を申し立てているからというものだった。

確かに民事訴訟法92条2項は、閲覧制限の申し立てがあった場合は、「その申立てについての裁判が確定するまで、第三者は、秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができない」と述べている。

裁判の審理が進んでいる中で、裁判所に提出された証拠類を含む書面に対して閲覧制限の申し立てが起こされ、裁判所がそれを認めることはよくあるが、判決に対して閲覧制限を請求した例は、わたしが知る限りでは過去に一件もない。判決文に対する閲覧制限は極めてまれだ。しかも、判決文は読売を勝訴させ、元店主の請求を棄却した内容である。

読売の神原氏が指摘するように、法律上では裁判所が判決を下すまでは判決文を公開できないルールになっている。それを理解した上で、わたしは削除に応じた。申し入れ書では削除の期限が6月5日の夕刻になっていたが、3日は削除を完了した。

しかし、裁判所が判決を下した後、判決内容によっては再度判決文を掲載する旨を伝えた。その際に読売が秘密扱を希望する記述を黒塗りにして、2週間を目途にわたしに提示するように求めた。次の回答書である。

 前略
貴殿の2023年6月1日付「申し入れ書」に対し、次のとおり回答します。
申し入れ書によると、御社は2023年4月21日付で、大阪地裁に対し判決文を含む訴訟記録の閲覧等の制限を申し立てられたとのことです。

それを前提に、その申立てがあった場合には、「その申立てについての裁判が確定するまで、第3者は、秘密記載部分の閲覧等の請求をすることができない」(民事訴訟法92条2項)との規定を根拠に、5月8日と30日に、インターネットサイト「MEDIA KOKUSYO」に掲載した、大阪地裁令和2年(ワ)第7369号等判決を、6月5日(月)午後5時までに、上記サイトからの削除を求めるとともに、その他媒体等での公開、頒布も控えるようにとの申し入れが為されました。

御社の担当者のプライバシーや御社の営業秘密に関する問題について、御社との間で無用な紛争に発展することは有害・無益と考えますので、当方は次の通り対応することと致します。

1 判決文のインターネットサイトからの削除について

申し入れどおり、6月5日(月)午後5時までに全文を削除することに同意します。

2 御社が求める削除箇所の特定について

本書面送達後、2週間を目処に、判決文のうち、御社が削除を求める箇所を黒塗りにした判決文をご呈示ください。なお、黒塗りにした部分について非開示を求める理由も、併せてご説明ください。

御社の非開示を求める部分が、裁判の公開原則や国民の知る権利を侵害しないかどうか、検討の上、今後の対応を決め、御社に御連絡することと致します。

なお、本書面到達後、2週間以内に前記2の回答をいただけない場合は、判決文全文の公開を了解されたものと判断させて戴きますので、あらかじめ御了解ください。

◆野村武範裁判長が判決予定

わたしは読売「押し紙」裁判の判決を書いた池上尚子裁判長が所属していた大阪地裁の民事24部に、読売が判決文に対して閲覧制限を申し立てていることが事実かどうかを確認した。対応した職員は、事実だと答えた。

「判決の時期はいつになりますか」

「おそらく来週には出ると思います」

「判決を下すのは、野村武範裁判長ですか」

「そうです」

野村武範裁判長とは、5月1日付けで東京地裁から大阪地裁へ異動して、民事24部に配属された裁判官である。池上裁判官から、この「押し紙」裁判を引き継ぎ、5月17日に、読売勝訴の判決を代読した人物である。東京地裁に在籍中は、産経新聞「押し紙」裁判を途中から担当して、産経新聞を勝訴させた人物でもある。そんな経緯があったので、わたしは野村判事が大阪地裁へ異動して読売「押し紙」裁判を担当したことを知ったとき、読売の勝訴を予測した。その予測は的中した。

その野村裁判長が今度は、読売が申し立てた判決文の閲覧制限を認めるかどうかの判決を下す。判決が下りしだいに結果を報告したい。

※野村武範裁判官と「押し紙」裁判については、6月7日発売の『紙の爆弾』(7月号)の「新聞の部数偽装 『押し紙』をめぐる密約疑惑」に詳しい。

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最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年7月号

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

◆ABC部数は数字自体に「押し紙」が含まれている

田所 ではABC部数はどうなのでしょう。ABC部数は新聞社が自己申告するのですよね。

 

黒薮哲哉さん

黒薮 ABC部数にも「押し紙」が含まれています。ABC部数が減っていることを捉えて「新聞が衰退している」と論じる人が多いのですが、正確ではありません。ABC部数は数字自体に「押し紙」が含まれているからです。「押し紙」を整理しなければABC部数は減りません。正しくは実売部数が減少しているかどうかで、「新聞が衰退している」かどうかを判断する必要があります。このような観点からすると、新聞社の経営は相当悪化しています。

田所 新聞は自分ではそのようなことを書きませんね。

◆販売店は奴隷のような扱いを受けている

黒薮 本当に販売店は奴隷のような扱いを受けています。たとえば販売主さんが、新聞社の担当社員の個人口座にお金を振り込まされたケースもあります。この事実については、店主さんの預金通帳の記録で確認しました。

田所 個人口座へですか。

黒薮 新聞社の口座に振り込むのであればいいけども、その店を担当している担当社員の個人口座に振り込んでいます。平成30年だけで少なくとも300万円ほど振り込まされています。それくらい無茶苦茶なことをされています。

田所 売り上げの全額ではないですね。一部を「私に寄こせ」と。

黒薮 証拠があるからその新聞社の広報部に資料を出して、内部調査するように言っているのですが、調査結果については現時点では何も言ってきていません。足元の問題には絶対に触れません。

◆新聞社の体質を変えなければ、今題は解決しない

 

田所敏夫さん

田所 逮捕されたら未決の人でも追っかけて報道するくせに、自分たちが取材されると逃げ回って答えない。不思議なことですが、私も同様の苦い経験があります。

黒薮 新聞社の人は、会社員としての意識しかないようです。それでは何のために記者になったのか意味がないと思います。後悔すると思いますよ。大問題があるのに黙ってしまったことに。記者を辞めて年を取ってから後悔すると思います。

田所 でも、後悔する人はまだ救われるでしょう。途中でそんなことたぶん考えなくなるのではないですか。メディア研究者の中にも「頑張っている記者を応援しましょう、ダメな記事には批判のメールや抗議をしましょう」という人は結構います。私にはそのような行為が有益だとは思えません。優秀な記者を応援して、ダメな記事を批判しても、新聞社の体質が変わるわけではないでしょう。「押し紙」を含め新聞社の体質を変えなければ、今題は解決しないと思います。

◆紙の新聞が無くなったから、自動的にネットのメディアが良くなるという訳ではない

田所 「新聞社の中ではそういう声は社内に広まるのです」という記者がいるのです。「新聞社は外部からの声にデリケートだ」という記者の人がいますが、私は嘘だと思っています。そんなことで良くなるのであれば、もっとましな新聞社になっているでしょう。経営構造の問題と「腰抜け」というか、そもそもジャーナリズムの意味が解っていない人、ジャーナリズムの仕事をしてはいけない見識・知識・問題解析能力・社会的態度を持ち合わせない人がたくさんその仕事に就いてしまっている。あるいは最初は志があっても挫けてしまう。これが合わさると日本の新聞には未来はない、ということですか。

黒薮 新聞に未来はないでしょうね。紙面内容もよくないし、「紙」という媒体も時代遅れです。これに対してインターネットは、賢明な人が使えば、使い方によっては強いメディアになるでしょう。

田所 ポイントは使い方ですね。情報量は膨大ですが使い方を知らないと、自分の趣味趣向のところに偏って、テレビのチャンネル位しか選択の幅がなくなってしまう性格もあります。問題意識と関心があれば発掘できるとても便利なものですが、意思がないと全く活かしきれない。たとえば動画投稿サイトなどは、一見自由に見えますが実はかなり細かい規制があったりする。決して自由な言語空間ではない。

黒薮 紙の新聞が無くなったから、自動的にネットのメディアが良くなるという訳ではない。そこもコントロールされて行きますからどうするかを考える必要があると思います。模範的な例としてはやはり、ウィキリークスがある。ああいうものが出てくると困るから設立者のジュリアン・アサンジンさんが逮捕され、懲役175年の刑を受ける可能性が浮上しているのでしょう。

◆2002年度の毎日新聞の「押し紙」は36%

田所 『週刊金曜日』の元発行人北村肇さんにかつてお話を伺いました。望ましいジャーナリズムの形は組織ジャーリストと中間規模のジャーナリズムとフリーランスが一緒になって、それぞれができることが違うのでチームを組めばよい成果を上げられるのではないかと指摘されました。ミニマムですが滋賀医大問題で元朝日新聞の出河雅彦さん、毎日放送、元読売新聞記者でのちにフリーライタに転身され昨年亡くなった山口正紀さん、そして黒薮さんに『名医の追放』(緑風出版)を書いていただき、私も少し加わりました。計画したわけではないですが自然の成り行きで、取材や取り組みができた例ではないかと思います。そのもっとダイナミックなことがインターネット上で実現できれば面白い展開ができる可能性がありますね。

黒薮 北村さんがその話をされたのは初めて聞きました。北村さんといえば毎日新聞の内部資料「朝刊 発証数の推移」を外部に流した方です。もう亡くなっているから言いますが、この資料を外部へ持ち出したのは間違いなく北村さんです。新聞の発証数(販売店が発行した新聞購読料の領収書の数)と新聞のABC部数を照合すると「押し紙」の割合が判明します。それによると2002年度の毎日新聞の「押し紙」は、36%でした。(【試算】毎日新聞、1日に144万部の「押し紙」を回収、「朝刊 発証数の推移」(2002年のデータ)に基づく試算 | MEDIA KOKUSYO)

田所 あの人だったらやると思います。

黒薮 毎日新聞の内部資料が外部へ流れたのは、北村さんがちょうど社長室にいらした時ですから、間違いなく北村さんでしょう。

田所 これは全然名誉毀損ではないですね。ジャーナリストとして北村さんへの尊敬の念ですね。

黒薮 その通りです。流出のルートもわかっています。最初は、さっきお話した滋賀県の沢田治さんに流しました。沢田さんから私のところに来て『Flash』や『My News Japan』などが記事にしてくれました。北村さんは自分の考えをそういう形で実践した人です。

田所 短い時間でもこちらが望む以上の答えをいつも頂けたのが北村さんでした。でも、あのように貴重な方から亡くなっていって。

黒薮 残念です。数少ない誠実な人です。(つづく)

◎遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫
〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後 
〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか? 
〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGs”の欺瞞
〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的
〈06〉日本のタブー「押し紙」問題の本質を探る
〈07〉「押し紙」驚愕の実態 新聞社不正収入35年で30兆円以上
〈08〉新聞社社員個人への振り込みを強要されえた販売店主

▼黒薮哲哉(くろやぶ てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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4月25日発売!黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学 消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY007)

大阪地裁が4月20日に下した読売「押し紙」裁判の判決を解説する連載の3回目である。既報したように池上尚子裁判長は、読売による独禁法違反(「押し紙」行為)は認定したが、損害賠償請求については棄却した。

新聞拡販で使用される景品

読売が独禁法に抵触する行為に及んでいても、原告の元店主に対しては1円の損害賠償も必要ないと判断したのである。

連載3回目の今回は、「押し紙」の定義をめぐる争点を紹介しておこう。結論を先に言えば、この論争には2つの問題を孕んでいる。

①池上裁判長の「押し紙」の定義解釈が根本的に間違っている可能性である。

②かりに解釈が間違っていないとすれば、公正取引委員会と新聞業界の「密約」が交わされている可能性である。

◆新聞特殊指定の下での「押し紙」定義

一般的に「押し紙」とは、新聞社が販売店に買い取りを強制した新聞を意味する。たとえば新聞購読者が3000人しかいないのにもかかわらず、新聞4000部を搬入して、その卸代金を徴収すれば、差異の1000部が「押し紙」になる。(厳密に言えば、予備紙2%は認められている。)

しかし、販売店が、新聞社から押し売りを受けた証拠を提示できなければ、裁判所はこの1000部を「押し紙」とは認定しない。このような法理を逆手に取って、読売の代理人・喜田村洋一自由人権協会代表理事らは、これまで読売が「押し紙」をしたことは1度たりともないと主張してきた。

喜田村洋一自由人権協会代表理事(出典:自由人権協会HP)

これに対して原告側は、新聞の実配部数に2%の予備紙を加えた部数を「注文部数」と定義し、それを超えた部数は理由のいかんを問わず「押し紙」であると主張してきた。たとえば、新聞の発注書の「注文部数」欄に4000部と明記されていても、実配部数が3000部であれば、これに2%を加えた部数が新聞特殊指定の下で、特殊な意味を持たせた「注文部数」の定義であり、それを超過した部数は「押し紙」であると主張してきた。

この主張の根拠になっているのは、1964年に公正取引委員会が交付した新聞特殊指定の運用細目である。そこには新聞の商取引における「注文部数」の定義が次のように明記されている。

「注文部数」とは、新聞販売業者が新聞社に注文する部数であって新聞購読部数(有代)に地区新聞公正取引協議会で定めた予備紙等(有代)を加えたものをいう。

当時、予備紙は搬入部数の2%に設定されていた。従って新聞特殊指定の下では、実配部数に2%の予備紙を加えた部数を「注文部数」と定義して、それを超える部数は理由のいかんを問わず「押し紙」とする解釈が成り立っていた。発注書に記入された注文部数を単純に解釈していたのでは、販売店が新聞社から指示された部数を記入するように強制された場合、「押し紙」の存在が水面下に隠れてしまうからだ。従って特殊な「押し紙」の定義を要したのだ。公正取引委員会は、「注文部数」の定義を特殊なものにすることで、「押し紙」を取り締まろうとしたのである。

1999年になって、公正取引委員会は新聞特殊指定を改訂した。改訂後の条文は、次のようになっている。読者は従来の「注文部数」という言葉が、「注文した部数」に変更されている点に着目してほしい。

3 発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。

一 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む。)。

二 販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。

◆「押し紙」の定義の変更

 池上裁判長は、「押し紙」の定義について、改訂前の定義であれば、販売店側の主張する通りだと判断したが、改訂後の条文で、「注文部数」が「注文した部数」に変更されているので、「押し紙」の定義も従来通りではないと判断した。つまり
販売店が新聞の発注書に記入した外形的な数字が「注文部数」に該当するとする認定したのである。それを理由に、残紙の存在は認定していながら、それが「押し紙」に該当するとは認定しなかった。言葉を替えると、公正取引委員会が1964年に「押し紙」を取り締まるために定めた特殊指定の運用細目における「押し紙」の定義を無効としたのである。

※ただし連載(2)で述べたように、原告の元店主が販売店を開業した2012年4月については、「押し紙」の存在を認定した。

その主要な理由は「注文部数」と「注文した部数」では、意味が異なるからとしている。はたして実質的に「注文部数」と「注文した部数」に意味の違いがあるのだろうか。社会通念からすれば、これは言葉の綾の問題であってが、意味は同じである。

それに1999年の新聞特殊指定の改訂時に公正取引委員会は、新しい運用細目を設けていない。従って、運用細目に関しては変更されていないと見なすのが自然である。ところが池上裁判長は、1964年の運用細目は無効になっているとして、販売店が注文書に書き込んだ部数が注文部数にあたると認定したのである。

改めて言うまでもなく、新聞特殊指定の目的は、特殊な条項を設けることで、新聞の商取引を正常にすることである。独禁法の精神からしても、「押し紙」を放置するための法的根拠ではないはずだ。

販売店の店舗に積み上げられた「押し紙」

◆公取委と新聞協会の「密約」の疑惑

仮に池上裁判長の判断が正しいとすれば、1999年の新聞特殊指定改訂の際に、公正取引委員会は、新聞社がより「押し紙」をしやすいように特殊指定を改訂して便宜を図ったことになる。実際、その可能性も否定できない。と、言うのもその後、急激に「押し紙」が増えたからだ。今や搬入部数の50%が「押し紙」と言った実態も特に珍しくはない。

公正取引委員会が新聞特殊指定を改訂した1999年とはどのような時期だったのだろうか。当時にさかのぼってみよう。まず、前年の1998年に公正取引委員会は、北國新聞社に対して「押し紙」の排除勧告を出した。その際に新聞協会に対しても、北國新聞だけではなく、多くの新聞社で「押し紙」政策が敷かれていることに注意を喚起している。

これを受けて新聞協会と公正取引委員会は、話し合いを持つようになった。わたしは、両者の間で何が話し合われたのかを知りたいと思い、議事録の情報公開を求めた。ところが開示された書面は、「押し紙」に関する部分がほとんど黒塗になっていた。「押し紙」に関して、外部へは公開できない内容の取り決めが行われた可能性が高い。

1999年の公正取引委員会が改訂した新聞特殊指定は、新聞社が「押し紙」政策を活発化させる上で、法的な支えになっていることも否定できない。池上裁判長が示した新しい新聞特殊指定の下における「押し紙」の定義が正しいとすれば、両者は話し合いにより「押し紙」の定義を1964年以前のものに戻すことにより、新聞社が自由に「押し紙」を出来る体制を構築したことになる。

しかし、それでは特殊指定の意味がない。特殊指定が存在する以上は、「押し紙」の定義も、それに即した解釈すべきではないか。

このように池上裁判長が示した新しい新聞特殊指定(1999年)の下における「押し紙」の定義をめぐる論考は、2つの問題を孕んでいるのである。(つづく)

読売新聞『押し紙』裁判
〈1〉元店主が敗訴、不可解な裁判官の交代劇、東京地裁から大阪地裁へ野村武範裁判官が異動
〈2〉李信恵を勝訴させた池上尚子裁判長が再び不可解な判決、読売の独禁法違反を認定するも損害賠償責任は免責
〈3〉「押し紙」の定義をめぐる公正取引委員会と新聞協会の密約疑惑

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
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黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

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