前回「トランス女性は女性ですか?〈2〉」では、男性器をお持ちだが心は女性であるというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏による衝撃のツイートをご紹介した。

「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

まだ、性自認問題が広く知られる前の2012年のツイートだったので、尾崎氏にも多少の油断があったのだろう。

これが発掘されて本格的に炎上したとおぼしき2017年には、尾崎氏は逆上ギレツイート。

「俺が女湯に入ったのは事実やけど、痴漢行為を一回もしたことはないわ」

だが、「なーんだ、痴漢行為はしてないんだ! よかった!」と納得する人がいるわけもなく、炎上は続いた。

その後、尾崎氏は「あのツイートはフィクション」と弁解したという。「俺が女湯に入ったのは事実」って断言してたのに、発言、変わりすぎでは?

こんな調子なので、炎上はおさまることはなく、いつの間にか尾崎氏はツイッターアカウントを削除していた。

ウェブ魚拓サイト「archive.today」で最後に尾崎氏のツイートが記録されたのは、2021年7月2日(https://archive.is/2oZll)。おそらく、この頃に、尾崎氏はツイッター上から姿を消したのだろう。

[左]チンコを股にはさめば女湯OKというご認識らしい[右]チンコを股にはさんで女湯に入るのは痴漢ではなく当然の権利というご認識らしい

さて。
我が国の最高学府・東京大学には、清水晶子教授というお偉い先生がいらっしゃる。この方が「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派の親玉と言っても、おそらく過言ではないだろう。

性自認至上主義を批判した東京大学の三浦俊彦教授、武蔵大学の千田有紀教授に対する集団バッシングでは、リーダー的な役割を果たしたのが、この清水教授だった。お偉い先生なので、清水教授の周囲には、子分のような学者・知識人がワラワラ存在し、「右向け右、左向け左」とばかりに、敵とみなした学者・知識人・文化人を寄ってたかって叩くのである。

なお、私が学者先生たちに集団ネットリンチされることなく、予防ブロックされる一方であるのは、私を学者・知識人・文化人ではないと認識したうえでの対処なのだろう。そんな「雑魚」に反撃されては赤っ恥であると恐怖し、頭のよろしい先生方が「予防ブロック」でコソコソしていらっしゃるのだとすれば、頭がいいのも大変だ。

ただし、これは、浅学の徒である私が学界の外からながめた所感であるので、事実と反する点があったら、LGBT活動家と共闘しておられる学者先生の皆様にご指摘いただければ幸いだ。

[左]私を予防ブロックしている学者の一人。歴史学者・呉座勇一氏の仕事をつぶしたことで知られる「オープンレター事件」の中心的人物・さえぼうこと北村紗衣教授(武蔵大学)。[中央]なにを恐れていらっしゃるのか、ノンバイナリー(身体男性)の高井ゆと里准教授(群馬大学)も私を予防ブロック。[右]「あんた、だれ?」レベルで存じあげなかった西田彩先生は、複数の大学で講師をなさるトランス女性だと聞く

 

清水教授は私の批判に対してブロックしてきたのであり、予防ブロックではないという点は、教授の名誉のために申し添えておきたい

清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏の味方である。味方であるがゆえに、歴史ある学術雑誌「思想」(岩波書店)2020年3月号に、「埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために」という尾崎氏擁護の論文を発表された。

重要な事実なので、もう一度、念を押しておきたい。

「東大の清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏を擁護するために、歴史ある学術雑誌『思想』(岩波書店)2020年3月号に、『埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために』と題した論文を発表した」

※岩波書店公式ページ「思想」2020年3月号 

私は実際に「埋没した棘」を読んでみた。17ページの論文を要約、だれにでもわかる表現に変換して内容を要約すると、こうである。

「レズビアンでも白人と黒人がいるように、女性の中にもまんこがある人とチンコがある人がいますよねっ」

「同じカテゴリーに属する女性でも、まんこ持ち女性がチンコ持ち女性を怖がるのって、まんこ持ちゆえの『傷つけられやすさ』を戦略として使っているってことね! でも、それ、よくないネ」

「チンコがある女性は、すでにまんこがある女性に埋没して、女子トイレや女湯に入ってるよ! 気づいてないのなら、最初からそんなことは気にするな!」

「尾崎日菜子氏がチンコを股にはさんで女湯に入ってもトラブルにならなかったっていうことは、周囲の女性たちに女性だと思われていたということ。だから、問題ないね!」

「つまり、埋没していれば(周囲に気づかれなければ)、棘は棘として他者を傷つけることはないってこと。女湯の尾崎日菜子氏は埋没した棘! 股にはさんだチンコも埋没した棘!」

「以上!」

え……? 私がアホすぎて、誤読してるの? これ、東大教授が綴り、岩波書店の「思想」に掲載された論文ですよね?

しかし、どう読んでも、「股にはさんだチンコは埋没した棘!」という結論なのである。もし、これが私の誤読ならば、清水教授から直接「あなた、間違っていますよ」とご指摘いただきたいと思うし、素直にそれを受け入れる気持ちもある。

ただ、それでも、チンコを股にはさんだ尾崎日菜子氏が女湯でトラブルにならなかったという点に関しては、絶対、女性たちは怖くて見て見ぬふりをしていただけだと、私は思う。

女子トイレで女装家に出くわした女性たちだって、よく言っているではないか。「怖くて見て見ぬふりをしてしまった」と。

実際に、女子トイレでは、これらのツイートで語られているような気持ち悪い事件だって起きている。

[左]男性だって、自分より体格がよく力もありそうな不気味な全身タイツ男とトイレで遭遇し、ツーショットを求められたら、自分の身を守るために要求に応じてしまう可能性もあるのでは? [右]「嫌がって逆上されると怖い」……まさにその通りである

全身タイツに女装した男が数年前からたびたび商業施設の女子トイレに出没し、そこで自撮り。時にはその場に居合わせた若い女性たちとツーショットを撮るが、後に女性たちが「怖くて従うしかなかった」と証言しているのだ。

こちらのブログ記事には、顔はぼかしたうえで、その全身タイツ女装男と女の子たちのツーショット写真が掲載されている。

全身タイツ女装また女子トイレへ行き炎上(2023.2)
(ウェブ魚拓 https://archive.md/Qirc5

[左]新宿区議をつとめた経験もあるトランス女性政治家・よだかれん氏のご認識も、このレベル。[右]尾崎日菜子氏のお写真。本当に女湯で埋没できましたか?

尾崎氏への援護射撃だったはずの清水教授の「埋没した棘」は、炎上を鎮めるどころか、いわばガソリンの役割を果たした。それは、炎上中だった尾崎氏にぶっかけたガソリンだったのだ。

以来、「尾崎日菜子さんは、女湯に入ったというツイートはフィクションだとすでに断言しているのに、いつまでもしつこく蒸し返すのは、どうなんですかっ?」という怒りの声に対しては、私はこうこたえている。

「あのツイートだけなら、尾崎氏がフィクションだと明言した後には、炎上も少しずつ鎮まっていった可能性はあります。しかし、最大の問題は、清水晶子東大教授がチンコを股にはさんで女湯に入るという犯罪を肯定し、『埋没した棘』という論文を書き、それをまた岩波書店が『思想』に掲載してしまったことでしょう」

私は、ふと思う瞬間がある。自分は「埋没した棘」を誤読しているのではないか、と。あるいは、「埋没した棘」自体が、私の見た悪夢の一部だったのではないか、と。そんなときには、こちらのレビューを読み、そして、おのれの正気を確信する。

清水晶子氏著『埋没した棘』の読書感想文  Moja Mojappa(@MojaMojappa)

清水晶子「埋没した棘」を読んで。 千石杏香(@Sengoku_Kyouka)

なお、Moja Mojappa氏は性自認女性の身体女性で異性愛者、千石杏香氏は両性自認の身体男性でバイセクシュアル。そして、私はXジェンダーの身体女性でバイセクシュアル。私を含め、異なる属性の三人が、同じようなツッコミを入れているという点は、読者諸氏にもご留意いただきたいと思う。

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46763
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46815
〈3〉チンコは股にはさめば女湯OK! http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46978

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

トランス女性を自称する身体男性が堂々と女子トイレを使い、時には女湯に入っている? 海外ではなく日本でも、そうなりつつある? そんな、まさか!

──と思った皆様には、次のツイートをご覧いただきたい。「私の性自認は女性」と主張する「身体男性」は「女性」として扱うべき、と主張する女性たちのツイートだ。

弁護士 上瀧浩子「トランス女性のペニスは、男根じゃなくて女根でしょ」

yoko_counter「ペニスだと思うから怖いのかな。基本的にトランス女性についてるのはペニスではなくクリトリスだと思ってるんだけど。ちょっと大きいかもしれないけど、なんの害もないよ」

[左]しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子氏による、ペニス=女根説。[右]しばき隊界隈活動家・yoko_counter氏による、ペニス=大きなクリトリス説

ここで、鹿砦社が何年にもわたり追及してきたしばき隊/カウンター/C.R.A.C./ANTIFA等と呼ばれる暴力的な反差別運動体の問題、特に「しばき隊リンチ事件(カウンター大学院生リンチ事件)」の情報に触れたことがある方なら、「ん?」と引っかかるはずだ。

なお、ここで「しばき隊? なにそれ?」という方々にひとことでそれをご説明するならば、「反差別チンピラです」とお返事したい。

2010年代、在日特権を許さない市民の会(在特会)等による悪質な排外主義デモに対抗し、反差別を叫ぶと同時に彼らと同レベルでオラつくことで一定の成果をあげたレイシストをしばき隊(現C.R.A.C.)だが、在特会が弱体化してもオラつき癖が治まらず、しばき隊の暴力性を批判しただけの無辜の市民にまで大いにオラつき、結局は嫌われまくってしまったという、残念な皆様。それが反差別チンピラである。

上瀧浩子弁護士(@sanngatuusagino)は、「しばき隊リンチ事件」の現場にいた反差別活動家で在日韓国人女性の李信恵氏と公私にわたって親しく交流しており、しばき隊リンチ事件裁判やその他の裁判で、しばしば李氏の代理人弁護士をつとめてきた方だ。

 

赤ペンyoko先生の親身な添削で、君もしばき隊現役合格!

今ではこの「女根ツイート」がネット上で有名になり、「女根弁護士」などと揶揄されたりもしている。

そして、yoko_counter氏(@yoko_counter)は、ご自身で名乗っておられる通り、カウンター/しばき隊系の女性活動家だ。バイセクシュアルでありフェミニストでもある。

2018年にはまんこアートの第一人者・ろくでなし子画伯のツイートを差別的であると無料で添削、以降は「赤ペンyoko先生」の愛称でも親しまれている。

しかし、そんなに女根だ、大きなクリトリスだと主張するのならば、ご自身が「私の心は女」と主張しているだけの見知らぬおっさんたちと一緒に、毎日風呂に入っていればよろしいかと思うが、しばき隊界隈の女性たちがそのような反トランス差別的チャレンジをされているという話はうかがっていない。

実行に移さないのであれば、そのようなツイートはきれい事であり、机上の空論であり、単なる言葉遊びにしかすぎないと考えるが、そんな私の心が狭すぎるのだろうか?

さて。ここで、超有名なトランス女性活動家による「女風呂に入っている」という証言をご覧いただこう。

尾崎日菜子「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

[左]このツイートから、チンコを股にはさんで女湯に入る行為を指す新しい表現「ちーっす」が爆誕![右]チンコを股にはさんでいれば女湯に入ってもセーフ! 痴漢行為ではない!

この男性器をお持ちの尾崎日菜子氏は、トランス女性活動家として学術誌にも寄稿されているような方だ。そんなトランス女性活動家(身体男性)が、「私の心は女」と主張すれば女湯に入るのも許され、それは犯罪ではないと考えている。

なので、私はスローガン「トランス女性は女性です」を次のように言い換え、たびたびツイートしている。

「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」

これならば、「トランス女性」が「性別適合手術を済ませて男性から女性になった人」という誤解を招くことも回避できる。「トランス女性は女性です」派が隠したい本音も、丸括弧内できちんと述べてあげるという、親切設計だ。

実は、すでに自分のパソコンで「とらんす」と入力したら「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」と変換するよう、辞書に単語登録もしてある。

[左]チンコを股にはさんで女湯に入るというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏は『コロナ禍をどう読むか』(亜紀書房)にご寄稿。[右]尾崎氏はご自身の写真を「女哲学者」とツイート。しかし、このような人物(チンコを股にはさんでいる)と女湯で出くわして「あっ。女哲学者だ!」と思う女性は一体何人いることだろう?

さらに申しあげると……しばき隊ウォッチャーを自認する方々なら、尾崎日菜子氏の名になにか引っかかりを感じないだろうか?

おそらく、すでにお気づきの方もいることだろう。尾崎日菜子という名は、しばき隊リンチ事件関連の流出資料「ITOKENの声かけリスト」の中にあった、と。

「声かけリスト」とは、しばき隊リンチ事件(2014年12月17日深夜発生)に関し口止めすべき関係者を、しばき隊系活動家ITOKENこと伊藤健一郎氏(当時立命館大学大学院生)がリスト化、配布した文書である。これを見れば、しばき隊につながる人物がひとめでわかるという、貴重な資料でもある。

ITOKENの声かけリストの中に尾崎日菜子氏の名。しばき隊界隈関係者としては古株か?

それにしても、声かけリストの中に、なんでまた尾崎日菜子氏の名が? 加えて、しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子がなぜ、女根発言を? さらには、しばき隊系活動家yoko_counter氏が「大きいかもしれないけどクリトリス」発言をしたのは一体……?

答えは単純だ。LGBTの運動にしばき隊界隈活動家が「寄生」し、暗躍……いや、堂々と活躍しているということだ。

今や、ネットでもリアルでも、しばき隊界隈活動家は「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派として、LGBT活動家と共に大いにオラついている。

だが、私はバイセクシュアル当事者であり反差別でもある立場から、しばき隊界隈の皆様に申しあげたい。「無能な味方は不要だ」と。

現在、しばき隊と一緒になってオラついているLGBT活動家は、市民から忌避されつつある。当然だろう。

そのうちLGBTはヘイトデモのターゲットになるのではないかと、私は危惧しているのだが、そうなったとしても因果応報でしかないと、なかばあきらめの境地だ。

残念だが、LGBT活動家はしばき隊系活動家の暴言・恫喝を大いに利用してきたのだから。そして、我々LGBT当事者はそれを止められなかったのだから。(おわり)

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

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LGBTがらみの人権問題に関心がある方なら、一度は「トランス女性は女性です」というフレーズをネットでご覧になったことがあるだろう。実際、ツイッターでは、現在確認できるかぎりでは2018年末から「#トランス女性は女性です」というハッシュタグが盛んに使われている。

 

2023年6月現在で確認できる、ハッシュタグ「#トランス女性は女性です」を使った最古のツイートは、2018年12月30日のもの

これは文字通り、「トランス女性は女性なので、女性として扱いましょう」という意味だ。ところで、今さらではあるが、「トランス女性(トランスジェンダー女性)」とは一体、どんな女性を指すのだろうか?

いまだに多くの人が、トランス女性を「男性として生まれたが、自分の身体の性別に耐えがたい違和感をいだきつづけ、性同一性障害と診断された後に性別適合手術を受け、体も戸籍上も女性になった人」と解釈しているように見受けられる。しかし、それは、LGBT活動家とその支持者が誘導する事実誤認に見事にはめられた結果だ。

事実は、以下の通り。

①性同一性障害の診断を受けていなくてもトランス女性
②性別適合手術どころか女性ホルモン投与すら受けていなくてもトランス女性
③戸籍上は男性でもトランス女性

そもそも、「トランスジェンダー」とはアンブレラターム(傘言葉)に分類される表現だ。聞き慣れない言葉だが、アンブレラタームとは、「ある共通点が存在するいくつもの言葉を傘のようにおおう表現」と説明される。

ゆえに、上記①②③の状態のような方々でも、「私の性自認は女性」と主張すれば、トランス女性になれる。なにしろ、「私の性自認は女性」と自己申告すること自体が、男性から女性へのトランスなのだから。

トランスジェンダー女性というアンブレラタームには、「私の性自認は女性」と自己申告しただけの身体男性から、性別適合手術を受けて戸籍も女性に変更した方までが含まれる。

ネットで「トランスジェンダー アンブレラターム」で画像検索すると、秀逸な傘の絵がいくつかヒットするが、ここでは、自作の図を「ご自由にお使いください」と公開してくださっている、千石杏香氏作のものをご紹介したい。

 

「トランスジェンダー」はアンブレラターム(図作成・千石杏香)

「トランスジェンダー」という傘の下には、「女装家」「男装家」や「女っぽい男」「男っぽい女」まで含まれている。そのような方々はホルモン投与や手術を受けてはいないどころか、性同一性障害との診断も出てはいないし、そのような自認もない。

「MtF(男から女)」「FtM(女から男)」は一般的に性同一性障害(トランスセクシュアル)を指すが、ぶっちゃけ、「私の心は女」と自称する身体男性、あるいは反対に「私の心は男」と自称する身体女性でも、そのカテゴリーに入る。自称なので、それが真実なのか偽りなのかは、第三者にはわからない。

「Xジェンダー」は女でもなく男でもないという性自認。実は、私は厳密にはこれに相当し、幼い頃から自分は女ではないという感覚が強かったが、とりわけ声高に宣言する必要は感じてはいない。

「性分化疾患(俗に言う『両性具有』)」に関しては、「トランスジェンダーの範囲に入れるな。私たちは男か女、どちらかである」と主張する当事者も多く、「両性具有」という表現も拒絶する人が多数だ。

「第三の性」は性分化疾患を表現する言葉ではあったが、今では身体の性だけではなく性自認(心の性)も含む。

以上のことから、筋肉ムキムキの大柄なヒゲ男であっても、「私の性自認は女」と主張するだけで、トランス女性になれるということが、おわかりいただけたかと思う。

実際、海外では、性別適合手術も女性ホルモン投与もせず、ヒゲ面に派手な化粧をした「トランス女性」が大勢いる。

主に欧米では、体は男性でも「私の性自認は女性」と主張すれば、法的に女性になれる(この制度を『セルフID制』という)国々がいくつもあるし、そんな彼らを「男」と呼ぶのは差別だ。下手すると、ヘイトスピーチで逮捕されたり、社会的に抹殺されたりもする。

ここで、実際のヒゲあり男性器ありのトランス女性の画像をご紹介しよう。

[左]イギリスのトランス女性活動家アレックス・ドラモンド。ヒゲあり。[右]こちらもヒゲのトランス女性。胸毛もペニスもある

[左]TikTokで自分語りをするヒゲのトランス女性。こんなビジュアルの方でも「おっさん」と呼ぶのはトランス女性差別とされる。[右]ブライダル雑誌のモデルにもなったインドのトランス女性活動家。体毛もヒゲもご立派

……ヒゲがない分、懐かしのドリフターズの女装のほうが女らしいと言えはしないか?

こんな人たちが堂々と女子トイレを使い、時には女湯に入り(米国の『Wi Spa事件』が有名)、出ていってくれと抗議の声をあげた女性たちを「トランス女性差別」認定して、オラついているのだから、大問題だ。

そして、日本でも、以前よりこの問題はちらほら浮上しているのである。

Wi Spa事件(No!セルフID  女性の人権と安全を求める会)

(つづく)

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

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