◆音が鳴った

10月18日、六代目山口組若頭の高山清司が府中刑務所を出所する。組長の司忍以上に組織統制の要と言われる高山の出所を前に、4度目の「音が鳴った(銃撃が起きた)」。

すなわち、10月10日に山健組本部前で、六代目山口組の中核組織・弘道会(竹内照明会長)の丸山俊夫幹部組員(68歳)が、山健組幹部2人を弾いた(射殺した)のである。


◎[参考動画]神戸で組員2人射殺 逮捕の男は報道関係者を装う(FNN 2019年10月11日公開)

周知のとおり、弘道会は高山若頭、司忍組長の出身母体だ。この事件をうけて、兵庫県警は11日に六代目山口組総本部事務所と神戸山口組事務所など同県内計11カ所の組事務所について、暴力団対策法に基づく使用制限の仮命令を出した。

9月29日にも、埼玉県飯能において銃撃事件が発生したことが週刊誌で大きく報じられている。撃たれたのは任侠山口組の幹部の弟(堅気の塗装業者)だった。任侠山口組(織田絆誠代表)への攻撃であれば、六代目山口組の組員による犯行との見方がつよい。

それに先立つ8月21日には、六代目山口組の弘道会の兵庫県神戸市熊内町にある関連施設で、やはり発砲事件が発生している。弘道会傘下の二代目藤島組に所属する加賀谷保組員(51)が、複数の銃弾を浴びたのである。撃たれた加賀谷組員は、腕を切断せざるをえなかったという。

さらにさかのぼる4月18日に神戸市内の路上で、神戸山口組の中核組織である山健組の與(あたえ)則和若頭が、弘道会系の組員に刺されている。

8月の事件は4月の事件の“返し”として、山健組が神戸にある弘道会の拠点を襲撃した可能性があり、そうであれば10月10日の事件は、高山若頭の出所を前にした、弘道会の血の報復とみるべきであろう。8月21日の事件は、ほかならぬ高山若頭の住居で行なわれたのだから――。

ここまで読まれて、ヤクザマニアでなければ何が何だかわからないのではないだろうか。いったいどことどこが戦い、山口組はそもそもどうなっているのか(苦笑)。


◎[参考動画]六代目山口組総本部など「抗争状態」判断で使用制限(FNN 2019年10月12日公開)

◆3つの山口組

そこそこに知っている方も、ここでおさらいだ。山口組が分裂したのは2015年8月のことである。

六代目司忍組長・高山清司執行部体制に不満を抱いていた直参グループが、井上邦雄(山健組)を組長に、神戸山口組を旗揚げしたのだった。六代目に対する批判は、弘道会による役職の独占および上納金(月額100万円)、そして生活物資の買い取り(本家からの購入強要)であった。暴対法、暴排条例でシノギが厳しくなった中で、カネに執着する本家への反発である。五代目渡辺芳則組長は、組織拡大路線のもと、上納金を低く抑えていたではないか、と。

ところが、井上組長の神戸山口組もまた、直参組織を上納金で縛るという実態が明らかになったとして、織田絆誠(金禎紀)を首班とする任侠山口組がたもとを分かったのが2017年の4月である。こうして山口組は3鼎立することになったのだ。

六代目山口組 10300人 
神戸山口組   2700人
任侠山口組   460人

もともと、六代目山口組が発足したとき(2005年)に、それまで主流派だった山健組(渡辺五代目の出身母体)は人事で不満を抱いていた。弘道会による執行部人事の独占である。実力派の後藤忠政(後藤組組長)が除籍になったのを機に、13人の直参組長たちが謀反の談合を開いたところ、各個呼び出されて除籍処分になったのが、2015年分裂の遠因である。この除籍の顛末は、談合自体が弘道会の謀略だったという(『血別』太田守正、サイゾー刊)。

◆本格的な抗争は起きない

それはともかく、ヤクザジャーナリズムが騒ぎ立てるほど、本格的な大抗争が再燃するとは思えない。少なくとも組織としての山口組三派は、抗争を禁じる措置をとっているからだ。民法上の使用者責任が組長におよぶ、というのが一番の決め手である。

事件によって挙げられるのは、もちろん組長だけではない。銃撃したヒットマンも、よほどの覚悟がなければ出頭することはできないだろう。むかしなら新聞や実話誌で派手に報じられて、十数年の懲役を受けながらも任侠界に名をとどろかすという一幕だが、いまはそうではないのだ。

ヤクザなら相手を殺せば長期刑(30年か無期)、無期になれば堅気にならないかぎり、仮釈放は認められない(2000年に思想犯の除外を検察庁が更生保護委員会に指示)。見かけだけ堅気になったとしても、組に復帰すれば収監される。無期懲役の仮釈放は、刑期満了ではないからだ。かりに懲役30年になったとして、25歳の若きヒットマンは55歳でやっと出所ということになる。

人生100年時代とはいえ、人生の盛りの大半を獄中の労役で過ごすのである。ちょっと落ち着いて考えれば、捕まりたくないはずだ。そんなわけだから、9月の事件では、ターゲットを誤爆するというチョンボを犯している。しかるに10月10日の事件(2名殺害)は、斯道界のみならず警備当局、市民社会を震撼させるものだった。それがヤクザの犯行ではなく、マフィア的な犯行だからだ。

◆日本任侠道のマフィア化のきざし

当日は山健組の定例会が開かれている場所で、丸山容疑者は取材の実話誌記者たちとともに、記者を装ってカメラバッグの中に拳銃をしのばせていたというのだ。警察官の職務質問にも「実話誌の記者です」と答え、じっさいにカメラで撮影もしている。そして定例会が終わったとき、山健組の組員たちに誰何された段階で、2名射殺という襲撃を成し遂げたのだ。厳重警備を敷いていた警備当局に、その場で逮捕されたのは言うまでもない。

丸山容疑者はしたがって逮捕覚悟、あるいは死を覚悟のヒットマンだったことになる。2名殺せば、ヤクザでなくとも死刑(永山則夫規準)である。家族の将来を組織に託して、抗争事件でヤクザのレジェンドになる。それは確実な殺害と引きかえにヒットマンの犠牲を強いる、マフィア的な犯行である。

末端が禁じられている麻薬や詐欺事犯に手をそめ、捜査当局の締め付けのなか危険なシノギで生き延びる。そして抗争もまた、マフィア化しているというべきであろう。

ワールドカップラグビーの荒々しいプレイが、ある意味で「怖いもの見たさ」の求心力を持っているように、ヤクザ抗争は黒く熱い日本文化でもある。だから抗争事件は恐怖とともに、一般市民にも「のぞき見たい」刺激をあたえる。そうであれば、できれば親分同士が、どつき合いで決着(太田守正)をつけて欲しいものだ。そのときは、かならず取材に馳せ参じる所存だ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

タケナカシゲル『誰も書けなかったヤクザのタブー』

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◆二階斬りに失敗した安倍総理

安倍新内閣の総評が、「安倍内閣を構成する『こんな人たち』に負けるわけにはいかない――派閥にとらわれてボロだらけ」(朝霞唯夫)、「問題集団との関係にまみれた『安倍カルト内閣』」(藤倉善郎)、そして「小泉進次郎の正体は官邸言いなり“客寄せパンダ”」(横田一)である。

 

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本欄でも指摘してきたとおり、派閥順送りの閣僚人事はサブタイトルにあるように「ボロだらけ」である。武田良太国家公安委員長のヤクザ交際。78歳の竹本直一科学技術・IT担当大臣(日本の印章制度・文化を守る議員連盟会長)の「ハンコを大切に」発言、橋本聖子五輪担当相の高橋大輔とのキッス。そして菅原一秀経産大臣のパワハラ。

しかし諸悪の根源は、理念や政策によらない派閥の領袖・二階俊博幹事長(80歳)の続投であると、朝霞は指摘する。幹事長続投をめぐる安倍・二階会談は「どうなってもいいなら、どうぞ」という二階の切り返しで、安倍の「引き続き、お願いします」となったという。「この間、わずか30~40秒だった」。二階斬りに失敗した安倍は、派閥順送りの「ボロだらけ」を囲い込むことになったのだ。

◆カルト内閣

ヒトラーとチャーチルが、ともに占星術に凝っていたのは有名な話だ。ヒトラーは作戦計画にも占いを持ち込み、国防軍の将軍たちを辟易させたという。占星術はまだしも個人的な趣味にすぎないが、宗教と政治が結びつくことで、政教一致委という戦前の国家神道に代表される宗教国家が出現する。だからこそ憲法は20条3項で「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定しているのだ。

個人(私人)としての信仰はともかく、大臣(公人)としての靖国参拝が問題視されるのは、憲法に抵触するグレーゾーンであるからだ。じつは安倍内閣は多くの閣僚が、そのグレーゾーンに踏み込んでいるのだ。

閣僚の多くが、神道政治連盟(略称・神政連)日本会議統一教会(現・世界平和統一家庭連合)霊友会不二阿祖山太神宮などの会員なのだ。とくに安倍総理は多くの宗教団体にかかわり、高額お布施で信者から訴訟を受けているワールドメイトにも関係しているという。

政治家の多くが、その集票力を頼んで宗教団体と関係を持つわけだが、政教一致を禁止している憲法のもと、宗教団体の献金は禁じるべきであろう。創価学会と公明党の関係にも、そろそろ明確な法の処断が必要ではないか。宗教は個人のものであり、政治に介入するべきではないのだ。

◆小泉進次郎の不勉強・無策が明らかに

横田一の論考では、小泉進次郎の「客寄せパンダ」としての実像が明らかにされている。都合の悪い質問は聞き流し、ソフトなパフォーマンスで政権のイメージをアップする。そのいっぽうで、安倍政権の原発推進政策にはまったく踏み込まない「原発ゼロ政策」の欺瞞性。横田一はあまり触れていないが、小泉進次郎を人寄せパンダにすることで、その「ボロ」を出させ、将来の政敵のひとりを葬るのが安倍総理の思惑ではないか。

本欄でも記事を書いている小林蓮実の「実録・台風15号の『人災』」は、ご本人が南房総市在住である。停電でATMを使えず、懐中電灯と水・食料を買ったら手持ちが40円に。この日、東京でのイベントに彼女を招いたのは、ほかならぬわたしで、その講演料が少しでも役立ったのか、それとも災害時に負担をかけたのか忸怩たる思いだが、彼女の行動力には感謝しかない。

行政の対応の遅れが、住民にどんな「二次災害」を与えるのか。記録して教訓とすべきであろう。これを書いている10月10日現在、新たな大型台風19号の接近、関東地方直撃が確実視されている。行政の準備を期待したい。

宮崎県都城市議会の「政治倫理」をめぐる攻防(中東常行)は、地方議会にありがちな疑惑事件の数々、セクハラ、地元政界と警察の癒着を告発した女性ブロガーの怪死事件、市庁舎の整備事業の不透明など、事件好きの好奇心を煽る。

木村三浩(一水会代表)は久しぶりの執筆。内閣官房参与・飯島勲の外交シーンにおける傲岸な態度(フランスが準備したホテルの部屋が気に入らないと勝手に帰国)を枕に、政治とマスコミが傷つけている日韓両国民の関係を掘り下げている。切れ味の良い論考だ。

三田和成の「“横浜のドン”がカジノ反対派になった理由」は、藤木幸夫港湾組合会長の人となりを伝える。父親がヤクザの親分(埋地一家総長)だったのは初見である。IR(カジノをふくむ)の誘致をめぐって、どんな展開が待っているのか、注目したい。

「シリーズ・日本の冤罪」が始まった。初回は本欄でもおなじみの尾崎美代子(釜ヶ崎でフリースペースを主宰)の「湖東記念病院事件」である。鹿砦社系ライターの得意とするジャンルだけの連載に期待したい。

以上、筆者の好みだけでピックアップさせていただいたが、ほかにもファクトでインパクトのある記事満載。「紙の爆弾」11月号をよろしく。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆コンビニ店頭から排除され、終わりをつげる暴力&エロ雑誌

 

最終号となった『実話時代』2019年9月号(2019年7月29日三和出版発行)

もう発売は7月末のことになるが、任侠界の専門雑誌である『実話時代』が廃刊した。そのキャッチは「昭和・平成・令和――激動の時代を駆け抜け本誌完結」「侠熱の三十五年忘れえぬ男たちへ捧ぐ」とあり、記事は「名侠剛侠一代絵巻」「渡世の気魄――本誌が照射したヤクザ三十五年物語」などだ。

往時は公称20万部をほこり、風俗広告に頼らない実話雑誌として斯道界に君臨してきた。ヤクザ公認の「業界誌」あるいは「広報誌」として、抗争なき時代の象徴ともいえる雑誌だったが、近年は福岡県で「悪書指定」を受けるなど、警察庁および暴力団追放運動の販売規制に苦しんできた。

コンビニから排除され、置いてくれる小さな駅前書店が開発計画で廃業するなど、おもに販路の問題から廃刊に追い込まれたというのが、関係者の言うところだ。組織による買い取りや定期購読の努力も行われたが、一般のヤクザファンが気軽に買えない環境では、存続は難しかったというべきであろう。

継承式や事始め(12月13日)を招待されるように取材し、抗争事件を扱わない癒着関係が批判されてきたが、最終号(完結号)にみられるように、ヤクザの序列、貫目にしたがった掲載、役職名の正確さは「癒着関係」があって初めて可能なもので、その意味でも役割の大きな雑誌だったといえよう。

コンビニでは、成人雑誌も置かれなくなった。一説には40億円といわれる売り上げが宙に浮き、リストラと転業を余儀なくされる版元も少なくない。暴力とエロの時代が終わりをつげ、それらはネット社会に収れんされていくのだろうか。

◆ヤクザの業態変化

それはともかく、ヤクザ業界はどうなっているのだろうか。20年前には10万人といわれた組織暴力団の人数は、いまや4万人とも5万人ともいわれる。ちょうど半減したわけだが、暴対法および暴排条例によるシノギの狭隘化、合法部門からの排除が進んだ結果とされている。だが、実際には隠れ企業舎弟ともいうべきフロント企業は増えている。というのも、会員誌の『FACTA』や『選択』に掲載される記事の大半は内部告発だが、そこには「記事にならない記事」が水面下にある。

その記事をめぐって金銭が動く、その頂点にヤクザ組織が介在している。あるいは金銭のやり取りに介在しているのが実態なのだ。もはやみかじめ料や用心棒代といった、昭和時代のシノギは激減し、暴力団組織が情報産業化したといえるのではないか。

その意味では、蔓延する「特殊詐欺」も暴力団のシノギの一端といえるのだが、ヤクザ組織は公式には組員が詐欺にかかわることを禁じている。覚せい剤や賭博も禁じている組織が大半だ。博徒が賭博をやらなくなったのは、借金による組織の荒廃。たとえば格が上の親分が、若い組員に「支払いを延ばしてもらえんやろか」と、貫目にそぐわない人間関係が現出するからだという。そもそも賭場よりも、裏カジノなどのほうがわかりやすい。そもそも若いヤクザは博打のやり方を知らない。

◆暴力団の最後の武器とは?

ヤクザの取材が難しくなったのも事実である。ヤクザ取材には二つの方法があって、ひとつは抗争事件の情報が取りやすい末端の組員と仲良くなる。もうひとつは親分と入魂になることで、トップダウンの情報をもらう。後者が前出の「実話時代」であって、親分が優遇してくれるのだから何でもしてもらえる。が、褒め殺し的な記事しか書けない。

末端の組員と仲良くなるのはいいが、親分を介してない関係は、かなりシビアなものになる。取材をおえて記事を書き、雑誌が出たころにファックスが入る。そこには「貴様、殺す!」と書かれてあったりするものだ。わたしはトップダウンの取材方法で、九州の「最悪の暴力団組織」と呼ばれるトップや、Vシネマの脚本を書く関係で広島や四国、山口組の引退親分の回顧録などを執筆した経験がある。

そのなかで、たとえばわたしが親分が滞在するホテルの一室にいると、そこへ現役の大臣から電話がかかってくる。あるいは人気のお笑いタレントが部屋を訪ねてくる。その場でツーショットを撮る。いっしょに会食をするなどの事実。それが政治家とのプライベートなツーショットである場合、その政治家は「誰とでも写真を撮るので、相手が反社だと知らないケースが多い」と言い逃れることが出来るだろうか。講演会の延長で握手したとか、ホテルのロビーでたまたまとかではない、ホテルの一室で親しく会話している写真なのだ。

なるほど、反社会勢力といえども指定暴力団であり、結社の自由の名のもとに結成された団体。つまり、合法的な結社である以上、警察力をもってしても強制的に潰せるわけではない。だが警察が暴力団を潰さない理由は、みずからの権益拡張すなわち、企業や業界団体への暴力団対策要員としての天下り。あるいは防犯団体への天下り先の確保。こうした直接的な利害とともに、政治家と暴力団の癒着をよく知っているからなのだ。それは選挙がらみの集票マシーンとして、政治家が藁をもすがる思いで、ヤクザ組織を頼みにするからにほかならない。

昨年、安倍総理(当時は衆院議員)にかかる選挙スキャンダル。すなわち工藤會系の事業者に選挙妨害を依頼した事件(火炎瓶事件に発展)が、新たな展開をみせながら、肝心の証人(実刑を受けた当事者)が音信不通になるというミステリアスな結末を迎えた。次回はここだけでしか書けないヤクザのエピソード、暴力団と政治家の密通の現場をお伝えしよう。 ※このテーマは、随時掲載します。


◎[参考動画]【山本太郎事務所編集】2018年7月17日内閣委員会「総理とヤクザと避難所と」(山本太郎 2018/8/29公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

一定の国民が支持するNHK受信料反対・モザイク放送化以外は、N国党はある意味でどうでもいいかな(勝手にやってくれ)と思っていたが、立花孝志のこのかんの言動に典型的な「内ゲバの構造」を見た。

税理士で江東区議の二瓶文隆と東京都中央区議の文徳氏親子にたいして「25歳の二瓶文徳はこれからもね、徹底的に叩き続けますから。オレ、奥さん、この子のお母さんも彼女も知ってますよ。徹底的にこいつの人生を僕は潰していきますからね。二瓶親子、特に息子、覚悟しとけ。許さんゾ、ボケ」などと発言する動画をYoutubeにアップしていたのだ。この感情のなかに、深刻な内ゲバの論理が潜んでいるのを、やや遠回りしながら解説していきたい。


◎[参考動画]裏切り者【二瓶文徳】(25才)中央区議会議員をぶっ壊す!(NHKから国民を守る党 総合チャンネル2019年7月3日公開)

◆内ゲバの論理はこえられなかった

かつて高橋和己は「無私だからこそ」、革命運動の内部ゲバルトは生じると、政治運動の崇高性を前提にしていた(内ゲバの論理はこえられるか)。

高橋和己が体感してきたのは、日共50年分裂(所感派と国際派の軍事路線をめぐる対立)における学生組織のリンチである。その後、全共闘運動の自由な組織感、たとえばデートがあるからデモを休むことが、気軽に受け容れられるなど、新しい学生運動への期待が彼の中にはあった。

しかしながら、高橋死後の日本の学生運動は、周知のとおり連合赤軍の同志殺し、中核VS革マル、社青同解放派(革労協)の内内ゲバに至るまで、まさに惨憺たるものだった。このあたりのわたしの体験は、11月に発売される『鹿砦社創業50周年記念出版 一九六九年 混沌と狂騒の時代』にも書いたので、ぜひお読みいただきたい。

その新左翼運動の内ゲバに「私利私欲」はあったと、故荒岱介は『新左翼とは何だったのか』(幻冬舎新書)で明らかにしている。それは自治会の利権であり、学生活動家の天下り先としての大学生協の維持をめぐって、他党派を排除する内ゲバの論理があったと。

その意味では「カネと女をめぐる対立」というマスコミの下卑た論評は、半分当たっていたことになる。他党派解体という、世界で類を見ない革命運動の陥穽、あるいは病理というべき政治現象は、他党派を排除することで自派が伸長することを意味する。宗派的で独善的なドグマでありながら、市場原理をそのまま運動に体現した、ある意味ではわかりやすい構造である。

◆内ゲバの動機は「感情」である

しかしながら、内ゲバは人間の感情に根ざしたものでもある。単なる私利私欲ではなく、憎悪に組織された暴力でもあるのだ。仲間を殺された恨みと怒り、等価報復で敵に罪を償わせる報復の論理だ。いや、それだけではない。裏切りという即自的な怒りが、裏切り者を徹底的に叩くことへと向かわせる。この即自的な怒りこそ、内ゲバの血の底流なのだ。最大の敵である政治権力に向かう怒りが、それを掘り崩す「裏切り者」へと向かう。

たとえば李信恵らのM君リンチ事件を思い起こしてほしい。もっとも身近な、したがって裏切りへの応報という論理が通じやすい相手が標的にされた事件だ。そこには内輪のことだから泣き寝入りするだろう、という計算もひそかに働いていたに違いない。身近な、自分たちの言語(掟の了解)が通じる相手にこそ、内ゲバの暴力は向かうのだ。


◎[参考動画]二瓶文徳はこんなに応援してもらってあっさり裏切る政治家です (NHKから国民を守る党 総合チャンネル2019年8月13日公開)

◆勝手にやめたのが気に入らない

9月9日の会見において、N国党の立花孝志代表はこう語ったという。「これが恐喝にあたるんですか。起訴され、罰金刑や執行猶予になれば議員を辞職します。けれども、起訴猶予や不起訴なら戦います。世論で辞めろという声が60%以上なら考えるし、80%なら、辞職を考えます。議員にしがみつくつもりはない」などと。まったくもって、完全に常軌を逸した見解である。記者会見では、こうも語っている。

「脅迫になるかどうかについては警察が動いている。私が今日お願いした弁護士さんは正当防衛みたいなものと言っていた。人が殴ってきたのを殴ったのは正当防衛になる」

そもそも、原因は何だったのだろうか。会見からひろってみた。

―― 党におさめるべきお金を収めなかった?

「はい、彼(文隆氏)は党の仕事をせず、お金で解決しようとしていた。コールセンターのシフトに入らず、金を払って代理にやらせていた。コールセンターの仕事をすることなく、父親は領収書を前に、一生懸命、税理士の仕事をしていた。お父さんの方は政党の監査をする資格をお持ちなんですよ。それに対して現場に行ってやらなきゃいけないのをいかずに、通常15万円かかることを10万円でやる。そういうことをやっている。とにかく、裏側にまわってやりたいと、(文隆氏からの)ツイッターのダイレクトメールによれば、『私は政治資金監査人としては希有な人材と自負しています』と。N国党を辞めたからといって、当選して2カ月後に辞めたからといって、ちょっと怪しい人だなと思っていたところ、お父さんが、最初からN国党にいたくなかったと、のうのうとフェイスブックに書いている。これは国民をばかにしていると思って動画の作成に至った」

事務所番をせずに、勝手に党をやめたことが気に入らないというのだ。党に損害が生じたというのならば、ほかに方法があるではないか。今回の二瓶親子の被害届には、NHKがバックにいるとも立花代表は主張している。

「どうしてNHK職員と二瓶さんと接触しているのか。それが被害届けの提出につながっているのではないか、疑っている。(文隆氏の)事務所に行ったら、机の上にNHKの職員の名刺があった」

この一件で、警視庁は立花代表を書類送検した(10月2日)。「徹底的にこいつの人生を僕は潰していきます」とネットで宣言したのだから、ある意味で当然の措置であろう。

N国党は参院選挙を前に、所属の地方議員から130万円を徴収しようとして、支払わない議員を除名にしている。除名された議員のなかには、とんでもネトウヨ議員(NHKは在日に占められていると主張)もいたことから、立花代表の「英断」ととる向きもないではなかった。しかし、勝手に党をやめたことで腹を立て、恐喝まがいの行動に出る。ここに内ゲバの感情が横溢しているのは明らかだ。いずれにしても、事件の帰趨を見極めたい。


◎[参考動画]【10月4日党首会見】豊田真由子さん、堀江貴文さん、小西ひろゆき議員…すべて話しました。(立花孝志10月4日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

◆死者が出かねなかったドーハの惨状

ドーハで開かれている世界陸上選手権の女子マラソン(9月27日)で、棄権者が相次いだ。気温は33度。出走68人のうち、じつに4割以上にあたる28人が途中棄権したのである。優勝したチェプンゲティッチ(ケニア)の2時間32分という記録は2007年大阪大会の2時間30分よりも2分遅い歴代最遅記録だった。

英BBCによると、5位だったマズロナク(ベラルーシ)はレース実行に踏み切った国際陸連を批判し、「アスリートに敬意がない。多くのお偉方がここで世界選手権をすることを決めたのだろうが、彼らはおそらく今、涼しい場所で寝ているんだろう」と皮肉ったという。

医療施設がゴールラインの隣に用意され、コース上で人が倒れるたび、選手たちは担架でそこに運び込まれたという。そもそも炎天下でマラソンを行なうこと自体が正気の沙汰ではない。

◆真夜中のレースでこの惨状

いや、このレースは炎天下ではなく、真夜中に行われたのである(午前0時過ぎにスタート)。気温は33度、湿度は73.3%だった。おなじく真夜中に行われた男女50キロ競歩、女子20キロ競歩でも棄権者が多数出た。ロシアメディア「スポルトエクスプレス」によると、22位でゴールしたトロフィモワ(ロシア)は、レース後に「非人道的な環境だった」と語った。自身のインスタグラムで「10キロで少女たちがまるで“死体”のように道路に横たわるのをみた」と惨状を明らかにした。まさに修羅場である。こんなのを“スポーツ”というのだろうか。

けっきょく、日本選手は7位に谷本観月(天満屋)、11位に中野円花(ノーリツ)と2人が完走したが、池満綾乃(鹿児島銀行)は30キロ過ぎに力尽きた。代表コーチを務める武冨豊天満屋監督は「こんな環境では、もう二度と選手を走らせたくない」と言いきった。

この結果をうけて、オリンピック委員会は来年の東京五輪マラソンを見直すのだろうか。いや、スタートを午前6時に繰り上げたばかりで、本気で強行するかまえを崩していない。選手ファーストどころか、アメリカ巨大ネットワーク放送の意向をうけた、買弁オリンピックを強行しようというのだ。

◆オリンピックで死者が続出してもいいのか

これまでに世界陸上で最低の完走率を記録したのは、1991年の世界陸上東京大会男子マラソンである(9月1日開催)。同大会では60選手がレースに出場し、40%に当たる24人が途中棄権した。当日の気象条件は、午前6時のスタート時で気温がすでに26度、湿度は73%と高温多湿のレースとなった。25キロ付近では気温30度を超え、日本のエース格だった中山竹通も途中棄権を余儀なくされている。

来年の東京オリンピックマラソンは、女子が8月2日、男子が8月9日である。今年の同日の気温を調べたところ、2日が35度、9日は36度である。この夏の驚異的な暑さは、いまも焼けた素肌感覚で残っている。このまま来年のレースが強行されたら、死屍累々たる結果は目に見えている。

しかるに、大会組織委員会、東京都、陸連の対策はといえば、打ち水や温度をためにくい舗装路にする、前述のスタート時間の繰り上げなど、抜本的なものはない。当たり前である。室内ではなく暑い東京の夏を走るのだ。

打ち水はいかにも日本人的な風情というか知恵のようにみえるが、熱気をもった水蒸気が選手に襲い掛かるという。湿度を上げるのだからそれも当然かもしれない。そしてスタート時間の繰り上げにも問題がある。

寝ている時と起きている時では、血圧に差があるのだ。寝ている時は最も血圧が下がってるが、そのため朝起きると血圧が急に上昇するという。その状態で、ランニングをすると、ただでさえ血圧が上がっている状態にさらなる負荷がかかり、血栓が血管を塞いでしまう。したがって、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるというのだ。

一般的に突然死が起きやすいのは午前中というデータがあるが、その理由の一つとして血圧の急上昇が挙げられるのだ。ようするに、気温の比較的低い朝のランニングこそ、人間の体に負担をかける。いや、負担どころか死をまねきかねないというのだ。暑さを考慮して繰り上げたスタート時間が、本当に選手の生死を左右しかねないのである。

◆今からでも遅くない、真夏の大会はやめるべきだ

それもこれも繰り返しになるが、アメリカの大手放送ネットワーク資本の事情によるものだ。

周知のとおり、アメリカでは大リーグのワールドシリーズ(プレイオフをふくむ)、アメリカンフットボールのレギュラーシーズンと、秋にスポーツのビックイベントが重なっている。大きなスポーツ大会のない7、8月の視聴率を埋めるために、オリンピックは夏場に開催されるようになったのだ。このままでは巨大資本のための大会に、選手たちが犠牲となるのだ。

1964年の東京オリンピックの記憶がある方は、あの素晴らしい青空のもと、すがすがしい風と共に思い出されるのではないだろうか。テレビ録画で55年前の入場風景をご覧になった方も、透明感のある空気とスポーツ日和を感じられるはずだ。スポーツの秋という言葉を引くまでもなく、真夏にオリンピックをやる愚は犯すべきではない。いまからでも遅くはない。アスリートファーストという言葉が嘘ではないのなら、今回のドーハの惨状に学ぶべきである。


◎[参考動画]【ドーハ2019世界選手権】日本代表発表!新ユニフォーム発表!記者会見 選手コメント(日本陸上競技連盟2019年7月4日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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ワールドカップの一次リーグでジャパン(日本代表)が世界2位のアイルランドを19対12で破り決勝トーナメント進出への足掛かりを得た。これをメディアはこぞって「奇跡がふたたび」「大番狂わせ」と報道しているが、そうではない。観ていた方はわかると思うが、フィットネスの面でジャパンはアイルランドを圧倒していた。


◎[参考動画]【ラグビーワールドカップ2019ハイライト】日本×アイルランド(DAZN Japan 2019年9月29日公開)

この勝利は勝つべくして勝ったというべきである。そもそも、ラグビーというスポーツに「偶然」は「ラッキー」はない。いや、楕円ボールのラッキーバウンドすらも、練習によって見きわめられた想定内の運動なのである。ラグビーを多少やっていた人間として、ジャパンの強さを解説しておこう。

◆世界にほこるトレーニングの量

もう十数年前になるが、わたしは鹿砦社の松岡社長の紹介で日本ラグビーフットボール協会のA氏(慶応OB)を紹介されたことがある。それが機縁で社会人ラグビー(当時)のプロ化の準備に向けたサイトの運営、テストマッチ(国の代表チームの対戦)や日本選手権の取材などを引き受けていた。

そしてその中で、代表チーム(ジャパン)の個別のトレーニング管理という、きわめて徹底したマネジメントを知って驚いたものだ。代表候補選手に携帯のメーリングシステムを通じて、個人練習(その日に何キロ走ったか、など)を管理するというものだ。そこまでやるのかという、わずかに嫌な印象を持ったものだ。

現在はプロ化(完全ではない)が達成され、代表チームの招集も個別の所属チームに優先するようになったので、スマホで個人トレーニングを管理する必要もなくなったが、それでも激しいトレーニングは世界レベルでもトップではないか。

エディ・ジョーンズヘッドコーチの時代、ボールを使った練習中にホイッスルが鳴ると、数分間走り続ける、選手にとってはうんざりするようなトレーニングが課せられたものだ。80分間走るフィットネスにかけては、世界に敵はいないだろう。

アイルランド戦の勝利は、けっして奇跡ではないのだ。アイルランド選手が動けなくなっているときに、ジャパンの選手たちは体を躍動させていたではないか。そしてリザーブ選手がすぐに試合に順応できる層の厚さも、アイルランドとは好対照だった。

◆日本のラグビー文化の素晴らしさと限界

今回のジャパンの活躍で、にわかラグビーファンが増えるのは悪いことではないが、その反面でラグビーというスポーツ文化への一知半解が従来のラグビーファンの眉を顰めさせることもあるはずだ。

たとえば、テレビでは「サポーター」というサッカー用語をさかんに使っているが、ラグビーのサポーターという意味ならばともかく、個別のチームのサポーターがラグビーに存在するわけではない。よいプレイがあれば相手チームであれ、応援しているチームであれ、拍手で讃えるのがラグビーの観戦マナーである。

サッカーJリーグはファンにサポーターという地位を与えることで、応援で「活躍」する場をあたえた。これは野球にみられる応援文化を、そのまま海外におけるサッカーの応援シーンに合致させたものだ。ラグビーにもプロがあり、南半球のラグビー応援シーンはなかなか派手だ。しかし、大学ラグビーを底辺に構築されてきた日本のラグビー文化は、サッカーのそれを後追いするには異質なものがある。

たとえばアイルランド戦で活躍した福岡啓太選手は、医者を志望しているという。ラグビー選手がプロとしてチームに残る際も、企業のマネージャーとしての立場が必要である。高学歴ゆえに、組織マネージメントや技術者としての役割性を期待されるのだ。

ひるがえって、フリーランスでラグビー解説者やタレント化するほど、ラグビー人気に厚みはない。プロ化のいっそうの推進がどこまで可能なのか。ファンの支援が、サッカー並みに「サポーター」として厚みを持てるのか、これも昔の話で恐縮だが、伊勢丹ラグビー部が解散するときに「おカネがないのなら仕方がないね」で済まされたものだ。ラグビーはエリート社員たちの「余暇」としかみなされなかったのである。

◆ウエイトトレーニングが決め手だった

かつて、早明ラグビー人気を中心に、80年代にはラグビーブームという言葉があった。伏見工業ラグビー部をモデルにしたテレビドラマ「スクールウォーズ」の人気もあって、ラグビー精神のオールフォアワン、ワンフォアオールが人口に膾炙したものだ。その後、早明両校の低迷やJリーグサッカーの隆盛もあって、ブームの去ったラグビーは低迷期に入った。早明に代わって大学ラグビーの王者となった関東学院の生活事故(部員の大麻栽培)による凋落、出発したトップリーグも旧来の社会人ラグビーをリニューアルした以上の印象ではなかった。

ラグビーの変革はやはり、大学ラグビーに表象した。早明ラグビーはラックの早稲田(スピード)モールの明治(圧力)、早稲田の横の展開力に明治の縦の突進という戦術思想に限界がきていた。日本代表もスピードを基本に、日本人に合ったラグビー戦術を採っていたが、世界標準は戦略・戦術の総合力をもとめていた。それをいち早く達成したのは、岩出雅之監督がひきいる帝京大学だった。ウエイトトレーニングの導入で選手の体格・パワーアップに成功。相手をリスペクトするメンタルの高度化によって、規律のある(反則をしない)プレイを徹底した。この戦略は、じつに大学選手権9連覇という偉業を達成した。

そして名門明治がウエイトトレーニングを本格的に導入することで、もともと素材に勝る明治が帝京を破るという流れが、このかんの大学ラグビーである。このような動きと、ジャパンの強化策も同じである。けっきょく、スピード(軽さ)とパワー(重さ)という相反しがちなテーマは、徹底したウエイトトレーニングと走りこむことによってしか得られない。その苦行に、ジャパンは勝ち抜いてきたのである。

かつて、ジャパンはフランス大会においてニュージーランド(オールブラックス)に17対145(ワールドカップ記録)という大敗を余儀なくされていた。ヨーロッパ各国代表とのテストマッチでも100点差ゲームはふつうだった。奇跡ではなく、総合力のアップがジャパンの躍進をささえている。ジャパンのいっそうの活躍を期待したい。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆「経産三羽烏」から官邸の危険な親衛隊へ

今井尚哉総理秘書官(総理補佐官兼務)

今回、補佐官になった今井尚哉(61歳・経産省出身)は、総理秘書官兼務である。秘書官の立場から、補佐官という実権のある立場を兼務させたのは、その忠誠ぶりと辣腕を買ってのことである。東大法学部から通産省(当時)とエリートコースを歩んだ今井氏は、エネルギー政策に関する部署を歴任したことから、原発推進の中心的な官僚だった。

福島第一原発事故をうけて、民主党菅政権が脱原発に動くところ、民主党および嘉田由紀子滋賀県知事、橋下徹大阪府知事ら地方公共団体の首長に直談判して説き伏せるなどして、再稼働への道すじをつけた。これらの活動から「経産省に今井ありと評されるようになり、同期入省の日下部聡、嶋田隆とともに「経産三羽烏」と称された。

叔父の今井善衛は、城山三郎の小説『官僚たちの夏』で主人公と対立する官僚「玉木」のモデルとしても知られ、商工官僚を経て通商産業省で事務次官を務めた。また、同じく叔父で公益財団法人日本国際フォーラム代表理事の今井敬は、新日本製鐵の社長を経て経済団体連合会の会長を務めた人物で、現在はほかに一般社団法人日本原子力産業協会理事長の職に就いている。今井氏の父親こそ医師だが、原子力村の一族といえよう。若いころから「サラブレッド」と呼ばれてきたのは、親族に重要閣僚と財界の重鎮がいるからにほかならない。

安倍総理との出会いは2006年、第一次安倍政権のときに内閣府に出向し、総理大臣秘書官となっている。第二次安倍政権でも秘書官となり、今回補佐官を兼務することになった。

上述の今井善衛の妻は山崎種二の娘であり、安倍晋三夫人である安倍昭恵の叔母が山崎種二の三男(山崎誠三)に嫁いでいるため、今井家と安倍家は縁戚に当たる。したがって、お友だちならぬ「親戚人事」でもあるのだ。アベノミックス、一億総活躍社会などは、この人の発案によるといわれている。

安倍首相と今井尚哉総理秘書官(総理補佐官兼務)の閨閥関係

◆平成・令和の「影の総理」?

メディアによる「評判」は以下のとおりだ。

「今井には何より『総理独り占め』のカードがある。首相のアポは思いのまま、入れたい情報は耳打ちし、入れたくない情報は握りつぶす」(FACTA)

「安倍総理の右腕とも言われ、スケジュールを一手に握っていることから、大物政治家も一目置いている。一方で今井氏の機嫌を損ねると、面会を取り次いでもらえないとの悪評も多い」(週刊文春)

「政局対応、官邸広報、国会運営、あらゆる分野の戦略を総理の耳元で囁く。決断するのは総理だが、その影響力は計り知れない」(プレジデントオンライン)

籾井勝人元NHK会長を覚えておいでだろうか。あの「NHKは政権の言うことを尊重する」などと、公共放送を捻じ曲げた人物である。その籾井会長が350億円の土地購入計画を強引に進めようとしたとき、NHKの理事4人が反対した。これに対し、今井氏は籾井氏を官邸内で徹底擁護している。なぜなら、籾井氏をNHK会長に推したのが叔父の今井敬氏だったからだ。今井氏は同じく安倍首相のお気に入りのNHK解説委員である岩田明子氏と共謀し、反対した理事4人を追放したのだ。悪夢のような「籾井時代」の引き伸ばしに一役買ったといわれている。

「影の総理」とは、雁屋哲原作・池上遼一作画の「男組」に登場する政財界の黒幕のことで、児玉誉志夫(ロッキード事件被告)がモデルと言われている。また、キングメーカーという意味で田中角栄をほうふつとさせる。いずれもロッキード疑惑が発覚する時代に「男組」が連載されていたので、実感をもって「影の総理」という言葉の響きが感じられたものだ。

しかし昭和の「影の総理」とちがって、平成・令和の「影の総理」は姿を隠すことなく、前線で辣腕をふるう。

◆「特殊性」を同和地区に誘導する?

補佐官兼務となった今井尚哉秘書官は、森友学園の公文書改ざん問題で財務省に改ざんを命じた人物ではないか、と言われている。複数のメディアが今井氏を名指して「疑惑の本丸」あるいは「司令塔」と報道していたものだ。前川喜平元文科事務次官もこう証言している。

「官僚が、これほど危険な行為を、官邸に何の相談も報告もなしに独断で行うはずがない。文書の詳細さを見れば、現場がいかに本件を特例的な措置と捉えていたかがわかる。忖度ではなく、官邸にいる誰かから『やれ』と言われたのだろう」

「私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる。国有地の売買をめぐるような案件で、経済産業省出身の一職員である谷査恵子氏の独断で、財務省を動かすことは、まず不可能。谷氏の上司にあたる今井氏が、財務省に何らかの影響を与えたのでは」(「週刊朝日」2018年3月30日号)

それだけではない。森友学園の報道を抑えるために、卑劣な差別的誘導を行なった可能性があるのだ。

森友問題では、財務省の文書に「本件の特殊性」という文言が登場する。この「特殊性」が総理夫人の関わる案件を示しているのは明白だ。ところが財務省が文書改ざんの事実を認める方針が伝えられた時期から「『特殊性』とは同和のこと」なるツイートが大量に拡散されたのだ。ネトウヨや右派評論家たちも、これを書き立てるようになった。同和地区だから、国有財産が安価に下げ渡されたのだと。しかしこれは、まったくのデマである。

じつはこのデマ拡散に、今井首相秘書官がかかわっているのではないかと言われているのだ。「週刊文春」2018年3月22日号で、官邸担当記者はこう語っている。
「今井氏らは夜回り取材などにも饒舌になって、Aさんの自殺を書き換え問題と関連付けないように記者を誘導していました。他にも『〈特殊性〉は人権問題に配慮してそう書いた』との情報を流布させ、事態の矮小化を図っていました」

引用中のAさんとは、自殺した近畿財務局職員のことである。そして明らかに、部落解放運動のつよい大阪という地を意識して、「人権問題を配慮して」なる誤情報を流したというのだ。昭和の「影の総理」が叩き上げの右翼、あるいは土建屋出身の荒々しさを持っていたのに比べて、平成・令和の「影の総理」の何という卑劣で矮小なことか。サラブレッドとは「お坊ちゃん」という意味でもある。この秘書官兼補佐官が地に落ちるとしたら、このあたりの世間知らずが原因になるかもしれないと指摘しておきたい。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆陰険な言論統制と強烈な官僚統制

派閥順送りの閣僚人事は無能大臣を生み出し、国政の停滞をもたらすに違いない。今井絵里子内閣府政務官や小泉進次郎環境相ら若手の「育成」登用も、政権の人気浮揚効果とともに政局がらみであることで、今回の改造人事の内実は明らかだ。しかし国会答弁で詰まるような大臣がいても、それは無視して必要な法案が通ればよい。政局が水面下で展開しようと、審議と実効性のある施策が実施されればよい。それよりも問題なのは、国民に負託されない実権者たちが、この国の道筋を「勝手に」つくってしまうことではないだろうか。

閣僚のほかに、官邸人事も刷新された。じつは議員たちがなりたがる大臣や政務官よりも、官邸人事のほうが政権にとっては重要なのだ。補佐官、内閣特別顧問といった肩書の総理のスタッフこそが省庁に指示を出し、人事権をもって霞が関を統制・支配しているのだから。いわば安倍総理の代理人として、親衛隊として暗躍しているのが官邸スタッフなのだ。

かつて、北村滋内閣情報官(警察庁出身)はメディアから「日本のアイヒマン」と呼ばれてきた。その北村滋は今回、国家安全保障局長および内閣特別顧問となった。これまでどおり、安倍政権の情報統制や政敵のプライベート情報を調査する「情報将校」としての役割をつよめるのは必至であろう。

ただし、アイヒマンという表現は必ずしも当たっていない。親衛隊将校アドルフ・アイヒマンは、ユダヤ人虐殺を行なった収容所行政や囚人輸送に大きな役割をはたしたが、かれが虐殺を立案したわけではない。戦後、南米で潜伏中を摘発され、裁判にかけられたときに、アンナ・ハーレントが彼のことを、どこにでもいる普通の人物が虐殺に手を染めたと、ファシズムにとりこまれる人間の凡庸さを論評したもので、そもそもアイヒマンは情報将校ではないし、北村滋を内閣情報官に任命したのは民主党・野田政権である。

◆危険な総理補佐官

木原稔総理補佐官

それはさておき、今回この欄で取り上げるのは、北村滋のような理論肌の官僚出身者ではない。もっと強引に辣腕を振るいかねない、危険な総理補佐官である。その人物の名は、木原稔。熊本県第1区選出の衆議院議員だ。

ご記憶にあるだろうか。2015年に自民党「文化芸術懇話会」(文化人と政治家が参加)において、作家の百田尚樹が「沖縄のふたつの新聞(沖縄タイムス・琉球新報)はつぶさなアカン」と発言したことを。この懇話会の代表をつとめたのが、木原稔総理補佐官(衆議院議員)なのである。

ほかにも出席者から、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」との声が上がった懇話会である。内閣官房長官の菅義偉すらも、懇話会での「マスコミを懲らしめる」といった発言について「報じられたことが事実だとすれば、どう考えても非常識だと思う。国民の審判を受けて国会に来た人は、自らの発言に責任を持つべきだ」と会見で述べている。この懇談会での報道圧力発言の責任を問われて、木原が党の青年部長を更迭されたのは言うまでもない。


◎[参考動画]【日いづる国より】木原稔、安倍晋三を支える決意[桜H25/1/18](SakuraSoTV 2013/1/18公開)

同じ2015年の沖縄全戦没者追悼式で、安倍総理に怒号が浴びせられたとき、木原は「主催者は沖縄県である」「たくさんの式典や集会を見ているから分かるが、明らかに動員されていた」「そういったことが式典の異様な雰囲気になった原因ではないか」と、ヤジを飛ばしたのは県の動員による参列者であると示唆している。

主催した県側は「動員などはあり得ない」と反論したが、主催者の一人である県議会議長の喜納昌春に「いくら何でもひどすぎる。ゆゆしき発言で、悲しくなる」「自民党に沖縄のことを何も知らない議員がいることが問題。末期的だ」と批判されたのは記憶に新しい。

青年部長を更迭ののち、木原は三か月で党の文部科学部会長に就任する。問題児ながら40代のはたらき盛り。期待の中堅政治家であることに変わりはなかった。

しかるに2017年には「子どもたちを戦争に送るな」という教育は偏向教育であり、特定のイデオロギーだと主張している。それに関連して、自民党のホームページに学校の教員情報を投稿できるフォームを設置したのも、自民党文部科学部会の会長・木原稔議員だったのだ。そのフォームには「学校教育における政治的中立性についての実態調査」とあった。そして、こう呼びかけていたのだ。

『教育現場の中には「教育の政治的中立はありえない」、あるいは「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です。』

『学校現場における主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがあり、高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております。』

そし木原のツイートがこうだ。

『「子供たちを戦場に送るな」というのは、政治的中立を逸脱している。そんな発言をした「先生方」は自民党に報告してほしい。』と。一時的にとはいえ、自民党のホームページが密告を奨励するサイトと化したのだ。自民党および木原に批判が殺到したのは言うまでもない。


◎[参考動画]【木原稔・稲田朋美】地方に漲る力と絆、伝統と創造の会の役割[桜H26/5/16](SakuraSoTV2014/5/16公開)

ようするに、この男は極右政治家なのである。その意味では、官僚出身の総理補佐官とは違って、国民の負託を受けた独自の活動(行き過ぎ)をおこなう危険性がある。木原稔にはこれらの「前科」があることを確認しておこう。

現在、総理補佐官は官僚出身の今井尚哉と長谷川榮一(経産省)、建設官僚出身の和泉洋人、政治家は薗浦健太郎、秋葉賢也、そして木原稔の6人である。かれらが安倍総理の「分身」として暗躍するとき、官邸主導・一極支配の構造はいやがうえにも強化されるのだ。

国民に負託されていない官僚出身者は言動が慎重だとされるが、この総理補佐官の中には官僚出身でも極めて危険な人物もまぎれている。次回は「影の総理」とまで言われる人物を紹介することにしよう。


◎[参考動画]木原みのる財務副大臣 国政報告 アベノミクスの実績 麻生さんの話も(seikei-jpn2019/2/12公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』

順送り人事ゆえに、およそ職務に不適格な高齢閣僚、暴力団との関係が深い反社閣僚、あるいは小泉進次郎の「転向」にみられる政局含みと。ここまで第4次安倍改造内閣の閣僚たちを紹介してきた。ものごとには、いろどりというものがある。今回はその、いろどりを色事で飾ってくれた閣僚たちの物語だ。

◆菅原一秀経産大臣の「愛人」遍歴

菅原一秀経産大臣

週刊誌で「愛人を練馬区議にした」と騒がれているのが、菅原一秀経産大臣である。菅原一秀氏といえば「保育園落ちた。日本死ね」というブログ問題の国会質疑で「匿名だよ、匿名」とヤジを飛ばしたことで名を知られる。経済産業副大臣時代には「政治経済事情視察」として国会を休み、当時の「愛人」とハワイ旅行に出かけていたことが「週刊文春」に暴露された。

菅原氏はバツイチなので、この「愛人」という呼称がふさわしいかどうかはさておき、今回新たに元秘書との関係が「週刊新潮」に暴かれたのだ。「不倫」の尻ぬぐいに、その元秘書を政治家にしたというのが記事のインパクトだ。その秘書は14年間ものあいだ菅原の政策秘書を務めた50代の女性で、昨年の補欠選挙でみごとに当選。今年の統一地方選挙でも上位当選をはたした。と、ここまで書けば本人を特定出来るのがネット社会の怖さである。

「週刊新潮」の記事では、菅原大臣の事務所での暴虐さも暴かれている。秘書たちは朝6時の街頭演説から、夜の11時までブラック勤務を強制されているという。

クルマの運転でも、ちょっとでもミスをすれば怒鳴られる。「このハゲー!」で政界を去った(選挙で落選)豊田真由子元議員の言動が暴露されたとき、「つぎは菅原だ」と囁かれたのが、これらの秘書に対する言動だったという。

2007年には秘書に党支部へのカンパ(毎月15万円)を強要したとも報じられた(菅原氏はカンパの強制性のみを否定)。高校時代(早稲田実業)に甲子園に出場と選挙公報に書いたものの、じっさいには補欠としてスタンドから観戦していた虚偽記載。

女性への言動の酷さは、何度も週刊誌を騒がせたものだ。前述のハワイ行きの愛人に「女は25歳以下がいい。25歳以上は女じゃない」「子どもを産んだら女じゃない」などモラル・ハラスメントしたと2016年6月に週刊文春が報じている。ということは、区議になった元美人秘書は30代から政策秘書(キャリアと能力が必須)を務めていたのだから、女としては扱ってもらえなかったことになる。

2016年には、舛添要一辞職後の東京都知事選挙に立候補が噂された民進党蓮舫代表代行が「五輪に反対で、『日本人に帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた』と自らのブログに書いている。そのような方を選ぶ都民はいない」と発言するが、後日「蓮舫氏のブログではなく、ネットで流れていた情報だった」と釈明している。あまりにも言動が軽く酷すぎる経産大臣が、国会質問で野党の標的になるのは必至だろう。

◆今井絵理子内閣政務官 あぶない男性遍歴の肉食系女子が政務官に

もうひとり、順送り人事のなかでは小泉進次郎環境相とともに、若手の起用となったのが今井絵理子内閣政務官(参院当選1回・35歳)である。沖縄アクターズスクールの出身で、アイドルグループSPEEDの元メンバー。離婚した175R(イナゴライダー)のSHOGOとの間に一子があるシングルマザーで、2009年には「ベストマザー賞」を受けている。

『週刊新潮』2017年8月3日号

ところが、ベストマザーは政治家転身後に不倫を犯す。2017年7月に「週刊新潮」自民党神戸市議員の橋本健氏との不倫疑惑を報じたのだ。今井氏は疑惑を否定しているが、橋本氏が「おおむね事実」と認め、「私が積極的に交際を迫ろうとした」「私自身の婚姻関係は破綻しているが、認識の甘さで軽率な行為をとってしまったと反省している」とコメントした。

橋本氏は妻子持ちであり、メディアは「略奪不倫」と報じたものだ。息子に聴覚障害があることから、SPEEDの復活をのぞむ声や政治家としての活躍を期待されたものの、愛人とホテルに3泊するという下半身交際をしていたのである。今井氏はホテルに宿泊したことは認めつつ、「深夜まで一緒に(講演)原稿を書いていた」と言い訳をしたという。ちなみに、橋本氏はその後、政務活動費の架空請求が明らかになり、神戸地検に詐欺罪で起訴された。2018年10月に懲役1年6月執行猶予4年の有罪判決が確定している。

だが、今井氏の「不都合な男性関係」はこれが初めてではない。参院選挙の出馬表明直後に一つ屋根の下で同居する事実婚男性がいることが週刊誌に報じられていたのだ。報道を受けて本人も「将来を見据えて交際している男性がいます」と同居男性の存在を認めていた。交際相手は沖縄の同級生で初恋の相手だという。実母とひとり息子と4人で一軒家で暮らしていたのだから、事実婚といっていいいだろう。事実婚相手は今井の所有する車を運転するなど、その姿は家族同然だった。今井の自宅近くにある児童デイサービスで送迎車の運転などして働いていたという

ここまでならば、シングルマザーを支えるかつての初恋相手という美しい話なのだが、それだけで終わらなかった。なんと、今井の事実婚相手に逮捕歴があったのだ。報道によると「彼は1年前に風営法と児童福祉法違反で那覇署に逮捕されている。未成年と知りながら中学生を雇い、客の男性にみだらな行為をさせていた。沖縄にいられなくなり、今井が東京に呼び寄せて仕事先まで紹介したらしい」という。そして事実婚相手は、自民党からの出馬が決まると身辺整理のために「捨てられた」のである。ここまで見てくると、恋多きオンナというよりも肉食系女子といった印象がつよい。

裏では「順送り、お友だち人事」と酷評される今回の改造内閣のおもてむきの評価は「育成内閣」だそうだ。しかし、今井氏起用に限っていえば、安倍総理は育成する素材を見誤っているというべきであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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タケナカシゲル『誰も書けなかったヤクザのタブー』

反社会勢力、すなわち暴力団と政治家の関係は、集票とカネ(利権)という政治の根幹にかかわるゆえに、本質的に切れないものである。

第4次安倍第2次改造内閣(首相官邸HPより)

「いい人だけ付き合ってるだけじゃあ選挙落ちちゃうんですよね」
これはたびたび引用することになるが、2016年1月に辞任した甘利明社会保障・税一体改革担当大臣の辞任会見での発言である。URへの口利きのあっせん利得として、事務所(秘書)が建設会社から1200万円を受け取っていた責任をとって、辞任した一件だ。この「いい人だけ」の裏側には「悪い人と付き合う」が含意され、そこにはパーティ券の購入や資金援助、ブラックな人脈との付き合いが政治家の本質だと暗喩されている。

それがただの暗喩ではないことを、今回の改造内閣はわれわれに明示している。すでに派閥均衡(ただし反主流派は除外)の順送り人事であるがゆえに、70歳をこえた老害政治家や、とうてい大臣の任にたえない新閣僚を本欄で紹介してきた。9月18日の記事参照

◆経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく

今回は単に能力がないだけではなく、暴力団と密接な付き合いがある新閣僚を紹介することにしよう。しかし、それを単なるスキャンダルとして突き出すつもりはない。反社会勢力というレッテルも暴力団という概念も、警察官僚が作り出した法律用語にすぎず、かならずしも実態を反映していないからだ。

たとえば警察官のなかに圧倒的に性犯罪が多いのは、抑圧された階級組織に特有の病理である。だからといって警察官が全員性犯罪者とはいえないし、警察組織を犯罪組織とみなすこともできない。ヤクザ(任侠)組織も同様に、犯罪を是認している組織は存在しない。建前だけとはいえ、任侠道はまっとうな人の道を説いている。ヤクザに暴力事犯が多いのはケンカのプロという側面からある意味当然だが、それはカタギ(一般市民)に迷惑をかけてはいけないという組織の規律に担保されている。そして経済のグレーな部分を担う経済ヤクザは、かならず政治家と結びつく。それは政治家とヤクザの関係の本質なのである。

だが大臣となった以上、警察官僚が決めつける反社会勢力との密接交際は許されないことになる。いわば本質と建前のあいだで、政治家は集票力とカネを大臣職と引き換えに返上するシステムになっているのだ。したがって本来はスキャンダルではないはずのものが、閣僚になることでマスコミの標的にされることになる。甘利氏が言うとおり、政治家は矛盾した存在なのだ。そんな新閣僚が、今回の改造内閣でも浮上してきた。

◆田中和徳復興大臣 よく調べてみると、無能だった

「産経新聞」2011年10月22日ウェブ配信から引用しよう。復興大臣に就任した田中和徳氏(70歳)である。※引用の肩書は当時。

田中和徳復興大臣

【自民党の田中和徳(かずのり)元財務副大臣(62)の政治団体が、平成18年に開催した政治資金パーティーで、指定暴力団稲川会系組長が取締役を務める企業にパーティー券を販売し、40万円を受領していたことが21日、産経新聞の調べで分かった。パー券販売は財務副大臣在任中で、暴力団側から政治家側への直接の資金提供が判明するのは極めて異例。暴力団排除条例が全国の自治体で制定されるなど「暴排」の動きが加速する中、国会議員と暴力団側の関係が発覚した。政治資金収支報告書や関係者によると、パー券を購入していたのは東京都品川区に本社を構える企業。設立は昭和62年で、法人登記では「日用品雑貨の販売」「金銭貸付業」などとなっている。捜査関係者によると、同社は暴力団のフロント企業として認定されているという。稲川会系組長は、設立当初は代表取締役を務めていたが、平成4年からは取締役に就任。同社が長年にわたって暴力団の影響下にあり、資金源となっていたことがうかがえる。】(2011年10月22日付け産経新聞

すでに8年前の件でもあり、本来ならば問題視すべきではないことかもしれない。しかし暴力団との結びつきを暴露されるということは、ある意味で無能の証明でもある。そしてこの人物が大臣不適格なのは、あまりにも職務に不勉強であるからだ。9月12日に、田中復興大臣は福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事と会談している。

ところが、この会談では官僚のペーパーを棒読みするばかりだった。記者会見でも避難者の住宅問題などには何も答えられなかった。取材者や県職員からは資質を疑問視する声が上がったという。

「民の声新聞」発行人の鈴木博喜氏は、退出する田中大臣に「自主避難者追い出し訴訟議案」(国家公務人宿舎に入居している避難者5世帯が被告になる)について「福島県が福島県民を訴えるなんて事が良いと思いますか?」と尋ねたが、「いや、これはちょっと私も……」と、しどろもどろの返答なのである。鈴木氏の記事から引用させていただく。

【事務方が「新幹線の時間がありますから」と制する中、筆者は「大臣の所管する話ですよ」、「勉強不足ですよ」と続けた。田中大臣は小さな声で「勉強不足って言われても……」とつぶやきながら会見場を後にした。】(2019年9月13日付け民の声新聞)

勉強不足だと思えば、その場で詳しく聞けばよいだけの話だ。質問の要旨をメモにとって、事務方に調べさせればよいのだ。それすらもできない大臣は、必要ないのではないか。

◆武田良太国家公安委員会委員長 さすがに暴力団からカネをもらったのはマズいだろう

武田良太国家公安委員会

つぎに「朝日新聞」(2019年9月13日付け週刊朝日)から引用しよう。
【2010年11月に公表された、武田氏の政治資金管理団体「武田良太政経研究会」の収支報告書によると、09年4月に開かれた政治資金パーティー代として、東京都のA社が50万円を献金している。また、11年11月公表の収支報告書では、A社の実質的な代表であるI氏が10年4月の政治資金パーティー代として70万円を支払っている。実は、このI氏、警察当局が指定暴力団山口組系の組員ではないかと当局からマークされ、裁判で素性が明かされた人物だった。
 08年12月、東京地裁で開かれた刑事事件の法廷。上場会社E社の創業者のH氏が、暴力団関係者に脅迫され、金銭を要求された恐喝未遂事件の裁判で、被害者として証言に立ったが、本誌が入手した裁判資料によると、I氏についての以下のような記述があった。
弁護士 E社はA社と業務提携なさいましたよね?
H氏   はい
弁護士 Iさんが元暴力団の構成員だというのもご存じですよね?
H氏   知りませんでした。はじめは
弁護士 知った後、あなたはどういう対応を取りましたか?
H氏   契約の解除に動きました
 ここで出てくる、「Iさん」こそ、武田氏に多額の献金をした人物と同一なのだ。】

政治家と暴力団の蜜月は、集票とカネ(利権)にかかわる本質的なものだと、わたしは冒頭で定義した。しかし、大臣は国政の責任を負う存在である。ましてや、警察機構を統括する国家公安委員長が、過去のこととはいえ暴力団から政治資金パーティーの代金を受け取っていたのである。

武田氏は13日の記者会見で「個別の報道には答えを差し控えたいが、政治資金は法令に基づき適切に処理されている」と説明した。もはや論評は不要であろう。警察庁を所轄する大臣が、適切に処理されていれば暴力団から献金を受けても良いと明言したのだ。

◆組長と仲良く写真を撮っていた竹本直一IT担当大臣 

最後は本欄ですでに、ハンコ文化を大切にする新IT担当大臣として紹介した竹本直一氏(78歳)である。同じく「朝日新聞」からだ。

山口組幹部だった男性と竹本直一氏(2018年8月撮影)

【閣僚名簿で「グレーな交友」を疑われたのが、科学技術担当相に起用された衆院当選8回の竹本直一氏(78)。SNSに、18年8月、花火を見物している竹本氏と記念写真に一緒に写っている角刈りの男性の姿がある。指定暴力団山口組系組幹部だったX氏である。同年3月に、竹本氏の後援会が開催した新年賀詞交歓会のパーティーで、X氏と岸田氏が親しそうに写真に納まっている写真が、写真週刊誌「フライデー」にも掲載された。
「X氏は長く幹部である組の顧問を最近までやっていたようだ。昔から、資金力豊富だと有名だった。岸田氏や竹本氏との写真は、箔(はく)をつけるために撮ったのでしょうね」(捜査関係者)そして、宏池会所属のある議員はこう話す。
「(フライデーに写真が出た時から)竹本氏は相手が暴力団関係者であることがわかっていたはず。岸田会長も、あの報道には激怒していましたよ。なぜ、竹本氏はSNSの写真を削除させなかったのか? こんなわきの甘さでは、大臣が長く務まるとは思えないですね」(2019年9月13日 週刊朝日)】

よくわかった。この人(IT政策担当大臣)はハンコをこよなく愛しているが、パソコンはたぶん自分で使えないのだろう。ホームページが「なぜかロックされている」のは既報のとおり、SNSも自分で管理できないから暴力団組長との記念写真を削除できなかったのであろう。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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