◆安倍総理の名でカネを配っていた河井夫妻は7月8日に起訴される見通し

マスコミ報道によると、河井案里容疑者が選挙スタッフに、少なくとも200万円の違法な報酬を支払っていたことが明らかになった(捜査関係者情報)。

これによって、案里容疑者の公職選挙法違反は決定的になった。広島選挙区の自治体首長への「陣中見舞い」など、名目不明の「買収」とは異なり、原則無報酬の運動員に報酬をあたえる、直接的な違法行為であるからだ。

とくに河井克行容疑者においては、法務大臣として公選法を熟知していながらの確信的な犯行である。悪質極まりないというべきであろう。この結果、河井案里容疑者と河井克行容疑者は、7月8日に起訴される見通しだ。

◆主導したのは安倍総理ではないのか?

そもそも自民党総裁としての安倍総理の参院広島選挙区へのテコ入れ自体、みずからに批判的な(安倍総理のことを「過去の人」と発言)溝手顕正氏を追い落とすことにあった。名目的には2議席獲得を掲げながら、案里容疑者に1億5,000万円もの軍資金(政党助成金=血税である)を投入し、溝手顕正氏陣営の有力者を狙い撃ち的に買収するという、まことに不格好かつ強引な手口であった。その結果、割を食ったのは自民党広島県連および溝手氏である(下記の選挙結果)。

当選 森本真治 無所属 現 329,792票 32.31% 立憲・国民・社民・連合推薦
当選 河井案里 自民党 新 295,871票 28.99% 公明推薦
落選 溝手顕正 自民党 現 270,183票 26.47% 公明推薦

その実態も明らかになっている。

「現金を受け取った自民党の地方議員らが、克行容疑者の妻案里容疑者(46)の推薦はがきを用意するなどの支援に動いていたことが3日、関係者への取材で分かった」(中国新聞、7月4日)という、カネで裏切りを強要するものだった。

まさに党本部と官邸の思惑どおり、安倍一強・党本部支配が貫徹され、総理に逆らう者は血祭りにあげられるという個人独裁制を党内外にアピールしたのである。
だがそれは、総理官邸(および党本部)の犯罪でもある可能性が高いのだ。現金を受け取った北広島町の宮本裕之町議会議長は「しんぶん赤旗」の取材にこう答えている。

「受け取ってはいけない金と思ったが、安倍総理の名前を出して強引に渡され、返せなかった。後悔している」(7月5日付)

府中町の繁政秀子町議も「『安倍さんから』と30万円入った封筒を渡された」「『もらえない』と拒否したが、安倍総理の名前を聞いて断りきれなかった」(前出)と証言している。まさに、総理の名による買収だったのだ。


◎[参考動画]「安倍さんから」河井夫妻“買収”めぐり証言続々と(ANNnews 2020年6月25日)

◆買収目的公布罪の立件も視野に

共産党の志位和夫委員長は、安倍総理に「買収目的公布罪」の疑いが浮上したとしている。いや、安倍総理の犯罪を指摘するのは、ひとり共産党だけではない。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士も、河井夫妻に現金を供与した自民党関係者に「買収目的交付罪」が適用される可能性に言及している。

郷原氏は「それ(買収)が行われることを認識し、目的を持って金銭の交付をする行為は交付罪になる」と説明し、「交付を決定した人」が罪に問われる可能性を指摘した(立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党の「実態解明チーム」の会合で。6月24日)

その「買収目的交付罪」の条文を挙げておこう。

「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。」(公選法221条1号)

「第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。」
(公選法221条5号)

「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」(公選法第十六章 罰則【買収及び利害誘導罪】)

そしてこの犯罪の構成要件をみたす、重要な事実関係も明らかになっているのだ。すなわち、このときの選挙で安倍総理の秘書団が、河井陣営を支援するために広島入りしている事実である。

安倍秘書団は河井陣営の先頭に立って、溝手顕正氏陣営の有力者の切り崩しに奔走したとされている。また、河井陣営の運動員を引き連れて企業回りをしては、安倍総理の名を出して強引に面会をもとめたという。


◎[参考動画]検察は“ルビコン川”を渡った!河井前法相事件、今後の展開は?(郷原信郎の「日本の権力を斬る!」#19 2020年6月23日)

◆カネの動きは明白である

参院選前に党本部から計1億5,000万円が送金されていたのは、すでに動かない事実である。検察はこの1億5,000万円の一部が違法報酬の原資になった可能性があるとみて調べているという。

そもそも河井容疑者の自己資金(歳費4,200万円)と自民党から交付された選挙資金(1億5,000万円)に、区別がつくものなのだろうか。検察がいまこの区別をつけようとしているのは、自民党本部および官邸にその責を及ばせようとしているからにほかならない。

森友・加計疑惑、そして桜を見る会における公選法違反疑惑、そして河井選挙買収事件においても、安倍総理(総裁)の関与が疑われている。そうであるがゆえに、安倍総理は賭博常習者の黒川弘務の定年延長を押し通し、検事総長に押し上げることでみずからへの訴追を回避しようと画策したのである。もはや安倍総理の逃げ道は、巷間噂されている今秋の解散総選挙による訴追逃れしかないのかもしれない。


◎[参考動画]2020年6月30日 野党合同国対ヒアリング「河井買収事件実態解明チームヒアリング」(原口一博 2020年6月30日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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やがて武力をともなう政争が、京の都を覆うようになる。

私兵をたくわえた、武士の発生である。われわれが最初の節でみてきた、奈良の都の政争も軍事力によるものだが、それらは律令制の兵役者の動員が焦点だった。国家の兵を動員しようとした手続きが漏れることで、反乱はいとも簡単に露顕してしまっている。奈良朝の貴族たちは、ほとんど私兵を持っていなかったからだ。

皇族の末裔である源氏と平氏が地方に土地をもとめ、あるいは武装した農民たちが荘園を押し取って地侍となったのが武士である。京都においては上皇の警護役として、北面の武士たちが、律令制下の検非違使庁や弾正台に取って代わっていた。

平安末期の保元・平治の乱をつうじて、まず平氏が中央政界に進出する。平氏の政権掌握は、藤原氏のそれと変わらない。娘を皇后や女御として天皇のもとに送り、外戚となることで実権をふるうものだ。平清盛の次女徳子(建礼門院)は、高倉帝の皇后となって安徳天皇を生んだ。武家の女性といえども、政治に関与できるのは子を産むことに限定されていた。

ところが武士の世となるにつれて、女性の政治への関与が大きくなってくる。男性的な戦乱が女性を表舞台に上(のぼ)せるという、一見して矛盾する現象が起きてくるのだ。あるいは女性たちを律令の位階・身分のくびきから、荒ぶる武士たちの時代が解き放ったというべきであろうか。

中世において際立つ女性政治家といえば、源頼朝とともに「鎌倉殿」と呼ばれ、夫の死後は「尼将軍」と呼ばれた北条政子であろう。彼女の荒々しくも情のある生きざまに、わたしたちは中世女性の逞しさを感じる。

政子が頼朝と恋愛関係になったのは、父の北条時政が京都大番役(警護)に出向いていた時期である。のちに政子は「暗夜をさまよい、雨をしのいであなたの所へまいりました」と、逢瀬の苦労を述懐している。父の反対にもかかわらず、頼朝を一途に想う大恋愛。最後は子(大姫)を宿し、堂々たるデキちゃった婚である。

したがって、気性の烈しい政子は嫉妬も並みではない。夫の頼朝も悪い。こともあろうに、彼女が妊娠中に頼朝は浮気をしていたのだ。相手は亀の前という女性だった。頼朝の側近・伏見広綱が彼女を屋敷に置いているのだという。

これを知った政子は、牧宗親に命じて亀の前が寄宿している伏見広綱の屋敷を打ち壊させた。これに怒った頼朝は、牧宗親の髻を(もとどり)を切るという恥辱を与える。牧宗親は北条時政の後妻の父親である。政子も黙ってはいない。

とうとう事態は、北条家と頼朝の対立にまで発展してしまった。北条時政は一族をひきいて鎌倉から伊豆にひきあげ、政子は伏見広綱を遠江に流罪にしてしまうのだ。武家の棟梁が何人も女性を囲うのは、後継者としての男子を得るための常識的な行為であるから、政子の嫉妬は並はずれていたというべきだろう。

そのいっぽうで政子は、義経を想う靜御前を哀れむなど、やさしい女性としての一面もみせている。静が生んだ男の子を、助命しようとしたのは有名な逸話だ。

頼朝亡き後の政子は、まさに尼将軍にふさわしい活躍だった。わが子で二代将軍の頼家は分別がさだまらない若武者で、きわめて独裁的な執政をおこなった。御家人の反発を抑えるために政子がしのんだ苦労はしかし、鎌倉が第一であってわが子のためにするものではなかった。

◆尼将軍

頼家の失政がつづき、さらに乳母の夫の比企能員を重用するにおよんで、北条氏と二代将軍頼家の対立は頂点にたっした。北条氏は政子の名で兵を起こし、謀叛の動きをみせた比企能員を討伐する。頼家は政子の命で出家させられ、伊豆修善寺に幽閉されたのちに暗殺された。それも政子の意志であっただろうか。

幕府を確固たるものにするために尼将軍政子の戦いは、実家の北条時政をも相手にせざるをえなかった。時政の後妻・牧の方という女性がなかなかの陰謀家で、三代将軍実朝を廃して女婿の平賀朝雅を将軍にしようとしたのだ。政子はやむなく弟の義時とともに、父を出家させて伊豆に追放した。だが、わが子実朝は頼家の子・公暁に殺されてしまう。

一族が相撃つ悲劇に苦しむ政子は、後鳥羽上皇に使者をおくり、上皇の皇子を鎌倉将軍として迎えようとする。

ところが、上皇は皇子を下らせる交換条件として、みずからの側室の荘園の地頭の罷免をもとめてきたのだ。この上皇の要求は、征夷大将軍の専権事項をくつがえしかねないものである。ここに、幕府と朝廷は冷戦状態に入った。

承久三年、後鳥羽上皇は京都守護を攻めて挙兵した。義時追討の院宣が発せられたのである。承久の乱である。このとき政子は、御家人たちに頼朝への恩義を言い聞かせ、彼らに鎌倉への忠義をもとめた。『吾妻鏡』にある、政子の演説を掲げておこう。高校生の歴史の史料問題でおなじみの一文だ。

皆、心を一にして奉るべし。これ最期の詞(ことば)なり。
故右大将軍、朝敵を征罰し、関東を草創してより、このかた、官位と云ひ俸禄と云ひ、
その恩すでに山岳よりも高く、溟渤(めいぼつ)よりも深し。報謝の志浅からんや。
しかるに今 逆臣の讒(ざん)によって、非義(ひぎ)の綸旨(りんじ)を下さる。
名を惜しむの族(やから)は、早く秀康(ひでやす)、胤義(たねよし)らを討ち取り、
三代将軍の遺跡(ゆいせき)を全うすべし。
ただし、院中に参ぜんと欲する者は、只今申し切るべし。

※秀康は藤原秀康、胤義は三浦胤義で、三浦は亡き頼家の妻を娶っていた関係で、在京中に鎌倉に造反した。

政子の檄にしたがった東国の軍勢は、19万騎といわれている。帝の錦旗を前にしてもひるむことなく、軍勢は北陸と美濃(墨俣)で朝廷軍をやぶった。京都は関東勢に蹂躙され、後鳥羽上皇は隠岐に配流となった。この乱に勝利することによって、鎌倉幕府の権威は全国に達することになったのである。

同時にそれは、天皇制が地に堕ちた時代の始まりである。所領(荘園)と座(専売権)を武士に押し取られた朝廷と公家は困窮し、受領名が勝手に名乗られるなど、天皇の権威は崩壊する。

ところで、承久の変は政子のように武家の棟梁となった人物の夫人であればこそ、果たすことができた女性政治家の壮挙なのかもしれない。それにしても、乱世のはじまりは、女性が家に籠って夫が通ってくるのを待つ受け身の状態から解放した。
女性たちは武器をとることも厭わなかったようだ。前述した二代将軍頼家が、建仁二年に修善寺に幽閉されたとき、警護したのは十五人の女騎だったと記録がのこっている(『日本の中世4』細川諒一)。

時代をくだって新田義貞が鎌倉を攻めたときに、材木座海岸で合戦になっているが、この合戦場跡地から249体の遺骨が発掘され、そのうち76体が女性のものだったと判明している(『骨が語る日本史』鈴木尚、『合戦場の女たち』横山茂彦、情況新書)。南北朝争乱の時期の記録『園太暦』(洞院公賢)にも、山名勢の残存兵は女騎ばかりだというものが残っている。中世は女性の時代だったのかもしれない。

◎[カテゴリーリンク]天皇制はどこからやって来たのか

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など多数。

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5月20日に発表された宮司の死について、ここでは「怪死」としておこう。殺人など事件性のある「怪死」という意味ではない。おもて向きの発表が「病死」でありながら「自殺」が疑われているからだ。そしてじつは、そこにこそ宮司の死の真の原因が顕われているからである。

というのも、このかん神社本庁の実態を報じてきた「ダイヤモンド」(6月12日付/編集部・宮原啓彰)によれば宮司の死を、
「神社本庁は『存じていない』とし、岩手県神社庁は『心筋梗塞による病死と聞いている』とダイヤモンド編集部の取材に答えた。」
「だが、複数の神社本庁や岩手県神社庁、盛岡八幡宮の各関係者によれば自殺だったという。直前には、盛岡八幡宮の宮司を休職、神社本庁や神政連にも辞表を提出しており、覚悟の上での自死だったのではないかと見られている。」
としているのだ。もしも「自死」だとしたら、その原因は何なのだろうか?

 

岩手県神社庁長・盛岡八幡宮宮司だった藤原隆麿氏の訃報(2020年5月20日付中外日報)

「怪死」したのは藤原隆麿氏(岩手県神社庁長・盛岡八幡宮宮司・66歳)である。肩書のとおり岩手県神社界のトップであるとともに、藤原氏は全国7万9000社の神社を統括する神社本庁の理事、そして憲法改正を推進する神道政治連盟の総務会長なのだ。まさに大物宮司の謎多き「怪死」である。

だが、これを詳報した「ダイヤモンド」によれば、前出の宮司職の休職も、神社本庁や神政連への辞表にも、有力な動機がある。藤原氏を刑事告訴する動きがあったというのだ。したがって自殺である可能性が高い。

神社本庁といえば、不動産売買(職員用宿舎の売却)をめぐって、執行部(田中恆清総長・小野崇之総務部長=当時)の背任疑惑があり、内部告発が行なわれている。その告発者への処分も行われている。

◆三角不倫疑惑

藤原氏を刑事告訴する動きとは、それでは何だったのだろうか。その動きが明らかになるのは、3月に暴露されたスキャンダルにさかのぼる。

そのスキャンダルとは、神社本庁の秘書部長兼渉外部長の小間澤肇氏(57歳)とその部下の女性職員(51歳)の不倫疑惑である。ふたりは新宿歌舞伎町のラブホテルから出てきたところを、張り込んでいた取材陣に活写されたのだ。ふたりは焼き肉屋で飲食ののち、ラブホテルに2時間滞在したという。計画的な取材であることから、内部からのリークによるものであるのは明白だ。(2020年3月16日付『週刊ポスト)

そしてじつは、「怪死」した藤原氏を刑事告訴しようとしていたのは、ほかならぬこの不倫疑惑のある女性職員なのだ。藤原氏から何らかの被害を受けた彼女は、小間澤氏にラブホテルで「相談していた」というのだ。なぜ焼き肉屋で「相談」は終わらなかったのだろうか。三角不倫を想像させるが、それはともかく、事件の概要を整理してみよう。

藤原氏→何らかの犯行?→女性職員→相談?(焼き肉屋・ラブホテル)→刑事告訴の準備?→藤原氏→怪死(病気か自殺) という構造なのだ。

藤原氏と女性職員のあいだに何があったのかは、もはやわからない。だがたとえば、元テレビ局の記者で自称ジャーナリストによる昏睡レイプ事件が、民事では有罪になっても刑事では立件もされない現実を考えると、相応の事実があったのだろう。事実無根として戦う余地がなかったのだと考えられる。その意味では、藤原氏は神職者らしく恥を生きることを拒否して、帰幽(逝去の神道用語)されたのかもしれない。

不倫がいけないとか、神職でありながらけしからんとかの道徳者視点で批判をするつもりはない。しかるに、神社本庁およびその政治団体である神道政治連盟は、夫婦別姓に対して「家族崩壊」につながる。あるいは「不倫の温床になる」と批判をくり広げてきたはずだ。その意味では、死に値する事態だったのかもしれない。

 

ラブホテルから出て来る小間澤肇氏と部下の女性職員(2020年3月2日付地球倫理:Global Ethics)

◆その利権と内部抗争

そして問題なのは、小間澤氏が神社本庁不動産不正取引疑惑を告発した元総合研究部長の稲貴夫氏を懲戒免職処分に、同じく財政部長の瀬尾芳也氏を降格処分にした責任者であることだ。このことからラブホテルの一件(リーク)は、おそらく反執行部側の人物によるものであろうと考えられるのだ。不倫疑惑事件の背後に、明らかな内部抗争がみてとれる。

じっさいに、稲氏と瀬尾氏が処分無効等を求めて東京地裁へ提訴したさいに、小間澤氏は「処分は妥当」とする神社本庁側に立って陳述書を提出しているのだ。そうすると、今回の事件(ラブホスキャンダル・藤原氏の怪死)は、三角不倫と思われる三人のうごきをつかんだ反執行部派がリークした上に、執行部の重鎮でもある藤原氏を刑事告発するうごきがあったと考えるべきであろう。

ここで、上述した神社本庁不動産不正取引疑惑を解説しておこう。疑惑が露見したのは、2015年のことである。全国の神社から選出される評議員会において、神社本庁所有の「百合丘職舎」の売却が承認された。売却先はディンプルインターナショナルという不動産会社で、その額は1億8400万円であった。ところが、ディンプルは百合丘職舎を転売し、最終的には3億円をこえる物件として大手ハウスメーカーの所有となったのだ。

転売した売却益はどこへ行ったのか? いや、それよりも問題となったのは、基本財産目録に記された百合丘職舎は、簿価ベースで土地建物合わせ7億5616万円だったのだ。この一件をめぐって、背任との内部告発が行なわれ、告発者が処分されたのは前述のとおりだ。

民間の財団である神社本庁が憲法改正を掲げ、日本会議など右翼団体に大きな位置を占めているのは、一般にも知られるところだ。あるいは日本遺族会の一部とともに、天皇の靖国参拝を求めている。きわめて政治性の強い組織であるいっぽう、じつに穢れた利権抗争をその内部にはらんでいることが鮮明になってきた。継続して、神社本庁および神道政治連盟の実態を明らかにしていきたい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

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ここまで呪術・神託などのシャーマンを媒介に、古代女性が祭司的な権力を握っていたことを探ってきた。その権力の基盤となっていたのは、日本が世界史的には稀な、母系社会だったことによる。われわれの祖先の社会全体が、母親を中心にした家族構成を認めていたからにほかならない。

万葉集の両親を詠った歌は、母親を主題にしたものがほとんどである。父親を詠ったものはきわめて少ない。そのいっぽうで、夫が来ないことを嘆く女性の歌は、おびただしい数にのぼる。ここに古代(明日香・奈良)から中世にかけて(平安期を中古ともいう)の、日本人の生活様式が明らかだ。

古代の日本は夫が妻のもとに通う、通い婚だったのである。庶民のあいだに家という単位はまだなく、集落で共同して労働に取り組んでいた。そして家族のわずかな財産は、母から娘へと受け継がれたのだ。女性が家にとどまり、男性は外に家族をもとめたからである。財産を継承するには、まだ男性の生産活動は乏しすぎた。母系社会とは集落の中の家を存続するためにはかられた、まさにこの意味である。

この婚姻形態は、平安時代にも引きつがれた。右大将藤原道綱の母による『蜻蛉日記』にはときおり、夫の藤原兼家が訪ねてくるくだりがある。彼女は『尊卑分脈』に本朝一の美女三人のうちの一人とされている。

のちに摂政関白・太政大臣に登りつめる兼家はしたがって、美人妻を放っておいたことになる。ちなみに他の美女二人は、文徳帝の女御・藤原明子(染殿后)、藤原安宿媛(光明皇后)であるという。光明皇后は前節でみた孝謙女帝の母だから、かの女帝も美人だったのだろう。

◆宮中文化も、もとは庶民の文化だった

それはともかく、平安の女性たちは奈良の都の女帝たちにくらべると、いかにも穏やかでおとなしい。彼女たちは実家にいて、夫が通ってくるのを待つのみだ。宮仕えをすれば、それなりに愉しいこともあったやに思えるが、道綱の母の姪にあたる菅原孝標の娘は「宮仕えは、つらいことが多い」(『更科日記』)と嘆いている。

この時代に、世界に冠たる女流文学『源氏物語』(紫式部)や名エッセイ『枕草子』(清少納言)が世を謳歌したけれども、女性の政治的な活躍は見あたらない。いや、それは政治の舞台に視線を定めているからであって、じつは詠歌こそが宮廷内の政治だったとすれば、平安の女性の活躍もめざましい。詠歌は今日も宮中歌会に引き継がれる、天皇制文化の根幹でもあるのだ。武家の花押が閣議の場に引き継がれ、和歌が宮中儀礼に引き継がれる。しかしいずれも、もとは庶民の文化であった。読み人知らずと呼ばれる庶民、もしくは名前を伏せられた詠歌は万葉集の圧倒的多数であって、君が代もまた読み人知らずなのである。天皇制を無力化するというのなら、庶民の対抗文化を創出・流行させないかぎり、擬制の「伝統」に勝てないのではないか。

◆平和とは何かを考える

三十六歌仙には小野小町、伊勢の御息所、その娘である中務、三条帝の女蔵人であった小大君、皇族では徽子女王(村上帝の女御)と、名だたる女流歌人たちがいる。和泉式部は『和泉式部日記』、赤染衛門は『栄華物語』の作者に擬せられる。

ほかに名前を挙げてみよう。佑子内親王家紀伊、選子内親王家宰相、待賢門院堀河、宜秋門院丹後、皇嘉門別当。しかし、いずれも仕えた権門の名、出身家の名前であって、彼女たちの本名がわからない。

そして、いずれもが下々の者だからわからないのだと言えるが、彼女たちが仕えた氏姓(うじかばね)も諱(いみな)もある女人たちは、これまたいずれも史料がなくてわからないのである。やんごとなき姫君たち、あるいは帝の后たちは、歌人としてはいまひとつだったようだ。

平安時代は江戸時代とともに、日本史史上きわめて平和な時代だった。死刑が廃された時代でもある。政治である以上は政争や暗殺もあったし、僧兵(学僧)の反乱はおびただしかったが、平和だからこその騒乱なのである。社会が安定しているからこその、あだ花の学生運動みたいなものだろう。防人の制度(徴兵制度と軍隊)も解散し、死刑もなく、戦争や紛争がなかったから女性の活躍があったはずなのに、それは歌道と小説・エッセイにかぎられていた。

◎[カテゴリーリンク]天皇制はどこからやって来たのか

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など多数。

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

「感染症と人類の歴史」の日本編を書こうとしていたところ、やはり王権史と不可分になる。よって、本稿は「天皇制はどこからやって来たのか」の続編となった。ということで、中身は古代王権および近世の絶対王政における西欧との比較史にならざるをえない。天皇史については、女性天皇および女性宮家の議論に引きつけて、古代女帝論を連載していますのでご一読ください。

◆安倍総理は大丈夫か?

国家の危機管理が政治の責任である以上、感染病をふくめた災害がすべて「人災」と評価されるのはやむを得ないところだ。わが安倍総理においては、もはや意識も朦朧とした状態で、記者会見では官僚が書いた文書を読むことしかできない。わずかに激情的なところは健在で、アベノマスクをあげつらわれると、答弁が激昂する。などと、世間の酷評もある。危機管理のきわめて苦手なこの宰相が、第一次政権のときのように体調を崩さなければよいのだが……。

『金枝篇』の著者ジェームズ・フレイザー(1854年1月1日-1941年5月7日)

◆自然との調和をもとめられる王権

さて、古代王権である。

古代のヨーロッパには、宗教的権威を持つ王が弱体化すると、新たな王を戴く「王殺し」の風習があった(ジェームズ・フレイザー『金枝篇』)。

そのいわれは、イタリアのネミ村の故事である。断崖の真下にある金の枝を手にすることで、逃亡奴隷は森の王となれる。ただし、新たに森の王となるには、金枝だけでなく現在の森の王を殺さなければならないのだ。王を殺す風習はしたがって、古い王が自然との調和を欠いた時、新たな王が取って代わることによる。この寓話は古代において、王朝交代の大義名分となった。

すなわち、自然災害や疫病はこれすべて王の不行状によるものだとして、新たな王は古い王の罪状をあげるのだ。とくに暴君が廃されたところに、われわれは古代ギリシャ・ローマの民主主義のつよさを感じる。

本連載の3回目「院政という二重権力、わが国にしかない政体」の第1項、「殺されるヨーロッパの王たち」において、「歴代ローマ皇帝七十人のうち、暗殺された皇帝が二十三人、暗殺された可能性がある皇帝は八人である。ほかに処刑が三人、戦死が九人、自殺五人。自然死と思われるのは二十人にすぎない」と解説してきたとおりだ。

もともと民主制を基礎にしたローマ皇帝の場合は、上級貴族である元老院の承認が必要であって、王朝交代もふくめて世襲は限られている。世襲が独裁をまねき、民主制をくつがえす潜主をまねくと考えられてきたからだ。事実、11代皇帝のドミティアヌス、賢帝マルクス・アウレリウスの息子のコモドゥスなど、世襲の息子には暴君が多く、かれら暴君はことごとく暗殺されている。

イギリスを創ったとされるアーサー王

東西ローマ帝国においては、キリスト教の受容によって教皇庁および教皇という教会権力が、政治システムとして王の上に君臨した。それは現在のローマ教皇庁につながり、汎世界的な宗教センターとなっている。ローマは皇帝から教皇庁の支配するところとなった。中世の終わりまでこれは神聖ローマ帝国としてつづく。

中世的な王権が成立するのは、ローマ教皇が兼務したフランク王国(現在のイタリア・フランス・ドイツ・ベルギー・オーストリアなど)から諸民族の王が分立してからである。それは近世的な民族国家の萌芽でもある。

中世においても、王は人間の身でありながら宇宙の秩序を司る存在であるから、その能力を失った王を殺害して新たな王を擁立して秩序を回復することが、王朝交代の名分となっていた。中世は司祭の職能者としての王が殺され、王朝は取って代わられる時代だったのだ。

不可侵の王権神授説が登場するのは、絶対制権力としての近世王朝を待たなければならない。イギリスを創ったとされるアーサー王は5世紀の人物(伝説)であり、ローマ帝国を破ってブリテンに自由をもたらした。その意味では天地創造などキリスト教の聖書世界に属するものではない。したがって、ヨーロッパの諸王は王権を神から授かったという宗教理論をもって、その正統性を説明することになったのだ。爾後、国王殺しは大罪となったのである。

◆天子相関説

古代の東洋においても、王(皇帝)の責任は天変地異と疫病におよんでいた。天子が行なう政治が天と不可分であるとする「天子相関説」である。天子の為すところは自然現象に反映され、したがって悪政を行なえば大火や天変地異や疫病をもたらす。天子が善政を行えば、瑞獣や瑞雲の出現などさまざまな吉兆として現れるというのだ。こういった主張は、天子(君主)の暴政を抑止するために、一定の効果があったものと考えられる。

じつは「万世一系」とされる本朝の皇統においても、天子(帝)は天変地異や疫病の責任を問われた。奈良朝の聖武帝が天然痘の猛威によって遷都をくり返し、国分寺と国分尼寺を全国に、奈良に盧舎那大仏を建立したのはすでに述べたが、くり返しておこう。

奈良朝の735年から737年にかけて発生した天然痘の流行は、当時の日本の総人口の30%にあたる100万~150万人が感染により死亡したとされている。この天然痘は735年に九州で発生したのち全国に広がり、首都である平城京でも大量の感染者を出した。737年6月には疫病の蔓延によって朝廷の政務が停止される事態となる。藤原不比等の4人の息子が、相次いで病に斃れた。

いっぽうで、古代天皇権力と藤原氏に代表される貴族(荘園領主)との争闘が、仏教事業をめぐってくり返されていた(長屋王の変、藤原広嗣の乱、橘奈良麻呂の乱、恵美押勝の乱)。最終的には藤原氏の陰謀(弓削道鏡の宇佐神宮神託事件)によって、女帝(巫女)の神託政治が廃され、同時に摂関政治への道がひらかれるわけだが、祟りを怖れ吉兆を尊ぶ政治が終わったわけではない。平安の世の貴族政治は、古代王朝以上に神仏を敬い、その怒りを怖れていた。したがって帝たちは、つねに陰陽師の差配をうけ、あるいは天変地異にその政道を左右されたのである。天変地異にその地位を揺さぶられた、平安朝の典型的な天皇を紹介しよう。

◆天変地異に祟られた天皇

清和帝の人生は、幼い頃から波乱含みだった。

即位したのはわずか9歳、日本史上初の幼帝である。政治の実権を握っていたのは母方の祖父藤原良房で、藤原北家全盛の礎を築いた人物である。また、帝の息子である源経基は源氏の初代であり、清和源氏という血脈でもその名を知られる。
その清和帝の「治世」をざっと年表で確認してみよう。

天変地異に祟られた清和帝(850年-881年)

858年 即位(9歳)
864年 富士山が噴火
866年 応天門の変。大干ばつ
867年 別府鶴見岳・阿蘇山が噴火
868年 京都で有感地震(21回)
869年 肥後津波地震、貞観大地震★
871年 出羽鳥海山の噴火
872年 京都で有感地震(15回)
873年 京都で有感地震(12回)
874年 京都で有感地震(13回)。開聞岳噴火
876年 大極殿が火災で焼失。譲位
878年 関東で相模・武蔵地震
879年 出家。京都で有感地震(12回)
880年 京都で地震が多発(31回)。死去(享年31)

ほとんど毎年、天変地異に襲われていたことになる。

869年の貞観大地震と9世紀の大地震分布図

このうち最も有名なのは、869年の貞観大地震である。地震の規模は少なくともマグニチュード8.3以上であったとされる。地震にともなって発生した津波による被害も甚大であった。東日本大震災はこの地震の再来ではないかと言われている。
日本紀略、類聚国史(一七一)から、その態様を伝えておこう。

「5月26日癸未の日、陸奥国で大地震が起きた。空を流れる光が夜を昼のように照らし、人々は叫び声を挙げて身を伏せ、立つことができなかった。ある者は家屋の下敷きとなって圧死し、ある者は地割れに呑まれた。驚いた牛や馬は奔走したり互いに踏みつけ合い、城や倉庫・門櫓・壁などが多数崩れ落ちた。雷鳴のような海鳴りが聞こえて潮が湧き上がり、川が逆流し、波が長く連なって押し寄せ、たちまち城下に達した。内陸部まで果ても知れないほど水浸しとなり、野原も道も大海原となった。船で逃げたり山に避難したりすることができずに千人ほどが溺れ死に、後には田畑も人々の財産も、ほとんど何も残らなかった」

◆不徳の天子

この貞観地震の教訓は「中通り」と呼ばれる内陸地への居住、街道の発達となった。しかしながら現地(東北太平洋側)では伝承がとぼしく、東日本大震災後にあらためて注目されることになったのだ。

清和帝時代は、このほかに京都でも三年間に40回の有感地震が記録され、大極殿が火災で焼失されるにいたり、帝は譲位を余儀なくされる。31歳で病没まで、地震の多発に悩まされた。

貞観大地震が起きた869年(貞観11年)はまた、祇園祭が発祥した年でもある。京都八坂神社の伝承によると『貞観11年に全国で大流行した疫病を抑えるためにはじめた』とされている。大地震と疫病の発生は、偶然であろうか。朝廷内にも、帝の責を問う者は少なくなかったという。ために、清和帝は退位後に得度し、仏教修行にこれ努めている。天災は天子の責任なのである。

神戸大震災と東日本大震災をその在位期に体験した平成上皇は、当時であればさしずめ「不徳の君子」と言わざるを得ないのであろう。そして令和天皇もまた、感染禍の君子であろうか。

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▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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東京都の発表によると、今年の4月の死亡者数は10107人だった。ここ数年(平成27年~令和元年)の平均死者数(8626人)を、じつに1481人も上回る「超過死亡」が出ていることがわかったのだ。そして3月の死亡者数も、ここ数年で最多だった。

[図表]平成27年から昨年までの平均死亡者数と今年の比較(出典=産経新聞6月12日)

これは都が発表した、新型コロナによる両月の死者数計119人の約12倍になる。ぎゃくに、2月が例年よりも少なかったことから、3~4月の死亡者数の多さは、そのままコロナ関連死ではないかと考えられるのだ。

この数字を日本全体(東京都は14000万人弱・日本は1億2700万人)とすると、累計1万4000人近くが死亡している可能性があることになる。政府発表の942人の12倍とすれば、1万1000人以上がコロナ関連死していることになる。いずれにしても、1万人以上の死者が出ていることを、東京都の3・4月データはしめしているのだ。

◆隠された死因

わたしは本欄の『紙の爆弾』(7月号)紹介書評において、拙文を「数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)はウルトラ仮説ながら、根拠がないわけではない。じっさいに、法医学病理学会の調査では医師から要請があっても、保健所と国立感染研は遺体のPCR検査を拒否しているのだ。肺疾患の場合、病院の医師は肺炎を併発していても、ガン患者の死因を肺ガンにする。ガン保険を想定してのことだ。

しかし今回、遺体へのPCR検査を避けたかった厚労省医系技官(保健所を管轄)および国立感染研においては、意識的にコロナ死者数を減らす(認定しない)のを意図していたのではないか。その答えは年末の『人口動態統計』を参照しなければ判らないが、年間10万人の肺炎死の中に、コロナ死がその上澄みとして何万人か増えているとしたら、日本はコロナ死者を隠していたことになるのだ。」と紹介した。

[図表]世界のコロナウイルス死者数(外務省・現地集計)

今回の東京都の3・4月の死亡者数はまさに、肺炎をはじめとする他の死因に新型コロナウイルスによる死者が隠れている可能性を顕したのだ。

日本政府はコロナ罹患の少なさ(じつは検査数の圧倒的な少なさによる)、および死者数の少なさをもって、「基本的に防疫に成功した」(安倍総理)、「日本人の民度の高さを誇るべき」(麻生財務相)などと喧伝してきた。

とりわけ「民度の高さ」などという、上から目線の言辞を批判されたものだ。死者の数だけを言うならば、死亡者ゼロのウガンダやベトナム、モンゴル、カンボジアなどのほうが日本よりもはるかに「民度が高い」ということになる。死亡者ゼロはドミニカ、フィジー、セーシェルなど、枚挙にいとまがないのだ。

◆今の日本に欠けているもの

菅直人元総理は『NO NUKES voice』24号(最新号)において、歴史学者のユヴァルノ・ノア・ハラリの言葉を紹介している。

「今回の危機で私たちは重要な二つの選択に直面している。一つには『全体主義的監視』と『市民の権限強化』のどちらを選ぶのか。もう一つは『国家主義的な孤立』と『世界の結束』のいずれを選ぶのか」

中国(武漢)が「全体主義的監視」のもとに都市をロックダウンし、韓国と台湾においても「戦争継続(休戦)国家」ならではの管理の徹底による防疫が成功したといえよう。麻生副総理の「民度」発言は、戦争継続国家でもない日本が「良くやった」と言いたいのであろう。

◆日本はIT後進国だった

だが、上記三国と日本の決定的な違いもまた、明らかになった。わが国がITインフラおよびその完熟力において、はるかに遅れた国だったことである。中国や韓国が義務教育レベルでネット授業を行なったのに対して、わが国は小中学高校生を自宅自習(じつは有休)にとどめた。大学などの高等教育においてすら、慌ててIT環境をととのえる試行錯誤に終始した。このどこが「民度が高い」というのだろうか。
アジア諸国とのIT受容力の違いは、じつは近代化・現代化の曲線によるものだ。すなわち、アジア諸国に先駆けて電線網(および公衆電話)を整備した日本において、ぎゃくに携帯電話の普及が遅れたのである。携帯電話の普及の遅れはそのまま、PCおよびスマホの普及の遅れ、とりわけ高齢層のIT受容力が低いままの社会となったのだ。初等教育における携帯電話の禁止、あるいはSNSの制限なども作用し、国民全体がネット社会を成熟させられない現状がある。

◆ITを使いこなせない行政府

IT受容力の低さは、定額給付金におけるネット申請時のサーバーのダウン、あるいは持続化給付金(ネット申請のみ)の遅配(当局の無応答も多い)として顕われている。いやそもそも、コロナ感染者数の情報伝達すらも、FAXに頼るがゆえに数値に誤差が顕われるなど、防疫行政の中枢から「アナログ状態」を露呈していた。じつに「IT民度の低さ」こそが、いまだに感染が収まらない一因なのだといえよう。
『紙の爆弾』(7月号)において、わたしはPCR検査を抑制した原因を厚労省医系技官、および国立感染研OBのデータ独占にあると指摘した。当初それは、オリンピックの無事開催を見すえた、国策的な検査抑制であった可能性も高い。そしてそれは、現在も継続していると改めて指摘しておこう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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『紙の爆弾』7月号本日発売 !

第3弾目となるコロナ禍と安倍政権の失政である。緊急事態の終結が宣言され、まがりなりにも「収束」の兆しが見えはじめた今、といっても東京ではここ数日二桁の感染者が出ているのだが、いずれにしても第2波、第3波のパンデミック襲来にそなえて、防疫失敗の総括を行なうべきであろう。本号は「専門家会議」など危機管理の「司令塔」となったシステムに焦点をあて、その信頼性を検証するものとなっている。以下、わたしの好み・興味のおもむくまま寸評していこう。

野田正彰(構成・本誌編集部)の「政府・専門家会議・マスコミ 素人たちが専門家を僭称して」は、まさに「専門家」の知見のなさを暴露したものだ。傷口(罹患による症状の確認)の状態を差し置いて、原因(どこで発生したウイルスか)の確認に走った段階で、厚労省も日本医師会も「論理の踏み外し」があったという指摘には、溜飲を下げないわけにはいかない。専門家会議の司令塔ともいえる、尾身茂副座長(国立感染研所長)が医系技官出身で、しょせんは役所をうまく生きてきた技官にすぎないと、野田と本誌編集部はいう。重要なのは、医療の現場で基本的な防禦を行ない、経験ゆたかな臨床医がその経験を実地に伝えることであろう。「患者の話を丹念に聞いて、身体をしっかりと目で診て、聴診し、詳しい経過から病気を考えていくという臨床医学の基本がなおざりにされ、診断を補助するものでしかなかった血液検査が優先される逆転現象が起きている」と、近年の医療に警告を発する。これこそ、今回の最大の教訓ではないだろうか。政府が言う「専門家」の実態、近年の医療のゆがみについて、記事を詳読されたい。

「経済専門家による政府の中小企業切り捨て」藤井聡(構成・林克明)は、緊急事態宣言への条件つきだが、3つの観点から批判をくだす。そのひとつは宣言の時期の遅れ(ピークが3月下旬だったのに、4月にずれ込む)、延長の早さ(5月連休明け)である。出口戦略において、専門家会議に入った「経済の専門家」は消費税増税賛成派だった。「コロナによってダメな企業は潰れてもしかたないと主張している東京財団政策研究所主幹の小林慶一郎慶応大学経済学部教授がいる」ことが問題だという。自粛が消費を消し去り、カネが動かない状態で耐えられる「ダメ」ではない企業とは、おそらく内部留保を毎年数十兆円単位で貯めこんでいる大企業のことなのだろう。中小企業はすべてダメ企業ということになる。

記事にはその小林慶一郎をはじめ、専門家会議に参加した竹森俊平(慶応義塾大学経済学部教授)、大竹文雄(大阪大学大学院経済学研究科教授)、井深陽子(慶応義塾大学経済学部教授)のそれぞれの見解がまとめられている。いずれも抜きがたい緊縮派であり、安倍政権が「異次元の金融緩和」などと口にしつつも、危機に際して頼っているのが緊縮派だったという歴史的な証明になるはずだ。

そして怖いのは、コロナと緊縮財政による自殺者が27万人増(年間1万人増)という試算であろう。これはゴールドマンサックスの経済予測をもとに、京都大学レジリエンヌ実践ユニットのシュミレーションを、さらに楽観シナリオと悲観シナリオで想定した後者のケースである。その場合の失業率は2021年末に8%となり、失業率や自殺者数が2019年水準に回復するのは27年後になるということだ。いうまでもなく、スペイン風邪から10年後に世界恐慌が到来したことを想起させる、長期不況がこの試算からはじき出されるのだ。

鈴木直道北海道知事とともに、成長株との評価が高い吉村洋文大阪府知事。じつは大坂が深刻な医療崩壊を招いていたこと、そしてそれがほかならぬ吉村知事と松井一郎大阪市長の維新ツートップの初動ミスによるものだったと指摘するのは「吉村洋文知事に騙されるな 維新が招いた大阪・医療崩壊」(西谷文和)である。その初動における遅れ、あるいは紆余曲折以前に、維新による大阪改革がコロナとの開戦前に、医療を崩壊させていた現実を西谷は指摘する。二重行政の統合、行政合理化のための医療切り捨ての惨たんたる現状を読まされると、維新という政治勢力がいかに新自由主義の負の側面を体現してきたかがよくわかる。

フランス在住の広岡裕児は、フランスの外出禁止が憲法によるものではないことを指摘し「『感染対策に“緊急事態条項”必要』という改憲勢力の嘘」をあばく。足立昌勝は「『自粛』から『強制』へ進行する監視社会」で、不法な監視や自粛警察に警鐘を鳴らす。

最後は拙稿で恐縮だが、このかん日本がコロナ防疫に成功したと喧伝する裏側に、数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)があるのではないか。掲載していただいた「誰がPCR検査を妨害したのか 隠された数万人『肺炎死』」では、医系技官および国立感染症OBによるPCR検査抑制について、その実態と背景にあるセクショナリズムをあばいた。そして数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)はウルトラ仮説ながら、根拠がないわけではない。じっさいに、法医学病理学会の調査では医師から要請があっても、保健所と国立感染研は遺体のPCR検査を拒否しているのだ。肺疾患の場合、病院の医師は肺炎を併発していても、ガン患者の死因を肺ガンにする。ガン保険を想定してのことだ。しかし今回、遺体へのPCR検査を避けたかった厚労省医系技官(保健所を管轄)および国立感染研においては、意識的にコロナ死者数を減らす(認定しない)のを意図していたのではないか。その答えは年末の「人口動態統計」を参照しなければ判らないが、年間10万人の肺炎死の中に、コロナ死がその上澄みとして何万人か増えているとしたら、日本はコロナ死者を隠していたことになるのだ。

その他、東京五輪の不開催も視野に入れた「日本を包み込む『東京五輪バイアス』」(森山高至)「『東京ビッグサイト』使用停止が生む巨額損失」(昼間たかし)は鳥肌ものの記事だ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

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安倍総理の「卑怯な法案」すなわち検察庁法の捻じ曲げが国民世論の前に頓挫し、その法案が意図していた黒川検事長の定年延長も、ほかならぬ本人の違法行為(賭け麻雀)でお釈迦になった。納税者が自粛を余儀なくされていたときに、公僕たる者が御用新聞記者たちと密接交遊の博打に興じていたのだ。まさに噴飯物の顛末だが、さらに追及の手を休めてはならない。


◎[参考動画]【news23】賭け麻雀 黒川検事長が辞表提出(TBS NEWS 2020年5月22日)

なぜならば、安倍政権は黒川「容疑者」を訓告(注意)処分で免罪し、6000万円の退職金で慰労しようというのだ。本来ならば逮捕・起訴処分相当の賭博罪の犯罪者にたいして、大企業並みの退職金で報いようとしているのだ。
さっそく告発の動きがあったので注目したい。

「辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)が知人の新聞記者らと行った賭けマージャンは賭博罪に当たり、立件するべきだとして、市民団体が26日、黒川氏と記者ら3人に対する告発状を東京地検特捜部に提出した。」(共同通信. 2020/05/26 11:42)

この告発によって、検察が黒川の逮捕・立件に動かないとしたら、この国の司法は闇である。賭け麻雀について、じつは2006年に鈴木宗男議員が外務省職員のあいだで麻雀賭博が行なわれている(週刊誌の投稿欄による)との指摘があり、その答弁で「賭博罪が成立しうるものと考える」と、安倍政権は麻雀賭博の定義を答弁しているのだ。

また、防衛省では平成26年ごろから28年ごろにかけて、陸上自衛隊青野原駐屯地内で賭け麻雀を行なった事件がある。このときは自衛隊員9人が停職処分となり、一部書類送検されている。すなわち「懲戒処分」を受けているのだ。

「週刊文春」(6月4日号)によれば、黒川元検事長は10年以上前から、新橋や虎ノ門、時には渋谷にまで足を延ばして、雀荘に足しげく通っていたことが分かった。「黒川さんは、週に1~2回、多い時には週3回もいらっしゃいました」(雀荘の元店員の証言)というのだ。軽い遊びとしての賭け麻雀などではなく、その常習性・犯罪性は明らかだ。

にもかかわらず、今回は5月22日の衆院法務委において、法務省の川原隆司刑事局長は、黒川元検事長が参加した賭け麻雀のレートが1000点当たり100円の「点ピン」だったとして「必ずしも高額とは言えない」と答弁。森雅子法相も「常習とは一般に賭博を反復累行する習癖が存在すること。そのような事実は認定できなかった」などと、犯罪性を打ち消す答弁を展開したのだ。これでは法の正義は地に堕ちたも同じである。

◆法務省が賭け麻雀を「合法化」

つまり賭け麻雀は、法務省によって「合法化」されたのだ。「日刊ゲンダイ」(5月25日)によると、《SNSでは「堂々と賭けマージャンしよう」という呼びかけが広がっている。》という。

《ツイッターでは、「【祝レート麻雀解禁!】検察庁前テンピン麻雀大会」と題し、参加者を募集する人まで現れた。「1000点100円=黒川レート」なんて言葉も出現している。皮肉を込めたイタズラかもしれないが、参加者に「政府は黒川レートならOKなんでしょ」と反論されたら、捜査機関はどうするのか。》

まさに法が実行されない、犯罪容認政権による犯罪奨励がまかり通っているといえよう。


◎[参考動画]黒川前検事長に告発状(テレ東NEWS 2020年5月26日)

◆産経リークと官邸内部の暗闘

ところで、黒川賭博事件は、産経新聞の政治部のリークだと判明している(関係者談)。社内人事で社会部に敗れた政治部が、腹いせ的に「週刊文春」に垂れ込んだというものだ。政治部「記者クラブ」の御用記事体質にどっぷり漬かっている産経政治部にどれほどの正義感があったのかはともかく、ジャーナリズムとしての自浄作用があったのは僥倖である。

そして官邸サイドでは、菅義衛官房長官がやり玉にあがっているという。黒川の身体検査が不十分で、その責は人脈的に菅長官にあるというわけだ。

その菅義偉官房長官は26日の記者会見で、黒川弘務元検事長の退職金が「自己都合退職の扱いになって、退職手当は減額された」と釈明した。また「一般論」とした上で「(黒川氏と同様の)勤続37年の東京高検検事長が自己都合退職になった場合、定年退職よりも800万円程度低くなる」と述べた。

公表されていないが、退職金は約5890万円と試算される。この「自己都合」ではなかった場合は約6727万円だったとみられる。菅官房長官は黒川の退職金を「削る」ことで、自分の責任を明らかにしたのであろうか。

それにしても、黒川「容疑者」への訓告(注意)処分は、辞任による「自己都合退社」となったのだ。なんと都合のいいことか。

刑事訴追されるべき賭博常習者が自己都合退職で(庶民にとっては)高額の退職金を受け取るというのは、とうてい看過できるものではない。検察庁は黒川元検事長を逮捕・訴追せよ。検察への国民の信頼感の回復とは、まさにこのことにかかっているのだ。

◆誰が処分を決めたのか

それでは、誰が黒川元検事長の処分「訓告」を決めたのか、である。

安倍総理はこう明言してきた。

「検事総長がですね、検事総長が、事実、事案の内容等、諸般の事情を考慮して処分をおこなったわけでございます」(5月22日、衆院厚生労働委員会)。


◎[参考動画]総理「責任は私にある」黒川氏に退職金で野党批判(ANNnewsCH 2020年5月22日)

ところが、同じ日に森雅子法相は記者会見で、

「最終的に内閣で決定された。私が検事総長に『こうした処分が相当』と伝え、総長から訓告処分にする、との知らせを受けた」と説明したのである。

安倍総理は「検事総長が決めた」と言い、森法相は「内閣で決定した」というのだ。

この閣内不一致ならぬ事実関係の齟齬について、森法相は25日の参院決算委員会で発言を修正する。

「法務省内で協議を行い、任命権者である内閣とも並行して協議しました。検事総長に法務省から『訓告相当だ』と伝え、総長からも『訓告相当だ』と連絡があった」自身の「内閣で決定」発言を軌道修正したのだ。安倍内閣に特有の、総理の発言に合わせた(忖度した)発言修正である。

醜い責任の押し付け合い、発言の修正はもはやどうでもいい。問題なのは黒川元検事長の常習賭博罪(3年以下の懲役)を、法の番人として立件できるかどうかに、この国の民主主義・法の下の平等がかかっているということだ。


◎[参考動画]黒川氏の訓告処分 森大臣「勤務態度など考慮」(ANNnewsCH 2020年5月26日)

冒頭に「この告発によって、検察が黒川の逮捕・立件に動かないとしたら、この国の司法は闇である。」と書いていたところ、5月27日の午後になって、安倍総理への告発が不受理となった。以下のとおりだ(朝日新聞報を要約)。

安倍総理主催の「桜を見る会」について、憲法学者らが1月に安倍総理を背任の疑いで告発した件で、東京地検が告発を不受理にしていたことが分かった。26日の衆院法務委員会で、共産党の藤野保史氏が明らかにした。不受理の通知は1月31日で、「代理人による告発を受理できない」などの理由だったという。

藤野氏は「森友問題などでも代理人による告発が行われて受理されているのに、なぜ受理しなかったのか」と質問。法務省の川原隆司刑事局長は「捜査機関の活動内容に関わる事柄なので、答えは差し控える」として「一般に、告発については刑事訴訟法の規定をもとに代理を認めないと解している」と答弁した。

手続きの形式問題で、告発を受理しなかったというのだ。ふたたび、畳みかけるような国民的な運動が必要だ。

すでに安倍総理が1億5000万円の血税を投じた政治家夫婦(河井克行・案里夫妻)の外堀は埋まっている。そしていままた、6000万円の血税が、安倍総理の法的担保であった元検事長、賭博常習者の退職金として支払われようとしているのだ。

水に落ちた犬は叩け! 桜を見る会における公職選挙法違反、政治資金法違反の「容疑者」安倍晋三を取り調べよ! 検察は黒川元検事長を賭博罪で取り調べよ。その先に、安倍晋三本人の逮捕・公訴が待っている。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年6月号 【特集】続「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る

衝撃的なニュース。いや、予期されていた大型百貨店の閉店である。

2020年5月20日付西日本新聞

【北九州市八幡西区の百貨店「井筒屋黒崎店」が入居する商業ビルを運営する「メイト黒崎」が、東京地裁から破産手続き開始決定を受けたことが20日、分かった。決定は11日付。破産管財人の弁護士によると、負債総額は約25億2600万円。井筒屋黒崎店は同じビル内の専門店街「クロサキメイト」(約80店)とともに8月に閉店する。】(西日本新聞・5月20日)

「北九州市の衰亡」とでも表現しておこう。2000年の小倉そごう、2001年の門司山城屋、2002年の小倉玉屋の閉店につづき、北九州からまたひとつ、商業・情報発信の拠点がうしなわれたことになる。

いっぽう、福岡市(博多)はこの5月に人口が160万を超えた。政令指定都市の中で160万人をこえるのは、横浜市・大阪市・名古屋市・札幌市についで5番目だという。福岡市の年間移入者数は1万4千人あまりで、じつにその8割が15歳から24歳である。つまり、高校・大学進学と就職の両面で、地方における一極集中が加速しているのだ。

2020年5月20日付西日本新聞

北海道における札幌市、東北における仙台市、中国地方における広島市と、ミニ東京への人口集中が、その他の地方の衰亡を招いている。そんな中でも、北九州市の衰亡は昭和型工業都市の凋落、福岡市は商業都市の隆盛として典型的であろう。

◆重厚長大産業の崩壊

北九州の凋落と福岡市の隆盛は、まさに戦後の日本の歩みを象徴しているといえよう。もともと福岡市(博多)は黒田52万石の城下町で、戦国時代いらいの博多商人の商業地でもあったのは史実である。

しかし、わたしが北九州に生まれた昭和30年代には、博多は単なる地方の商業都市にすぎなかった。というのも、北九州が五市合併(小倉・八幡・門司・若松・戸畑)で沸き立ち、県庁所在地(福岡市)を圧倒するいきおいで人口が増えていたからである。東京都の向こうを張って「西京市」という新市名が検討されたほどである。なぜ博多(福岡市)のように地味な町に県庁があるのか、子供ごころに不思議だと思っていたものだ。

合併のなった昭和38年に、三大都市圏(京浜・阪神・中京)以外では、初の政令指定都市となった。世に言う「日本四大工業地帯」のひとつでもある。すごいのは工業だけではなかった。門司鉄道総局とその機関区は九州の国鉄の司令部であり、西鉄の路面電車は80年代に全国最長を誇った。3大新聞の西部本社が存在するという意味でも、北九州市は博多(福岡市)を圧倒していたのだ。※松本清張は朝日新聞社の嘱託だった。

だが、その産業構造は石炭(炭田)と鉄(八幡製鉄)・セメント(石灰石産地)・化学工場(三菱・住友)・窯業(TOTO・黒崎播磨)など、重厚長大そのものであった。※佐木隆三は八幡製鉄、草刈正雄は東洋陶器の社員だった。

♪天に炎をあぐる山 鉄の雄叫び洞海に

わが母校の校歌の一節である。炎をあげている山は筑豊炭鉱(炭田)のぼた山、洞海湾にとどろく鉄の雄たけびは、いうまでもなく八幡製鉄である。なんともワイルドで、高度成長下の昭和を感じさせる歌詞ではないか。じっさいに校舎の近くには石炭列車の引き込み線があり、教室の窓から洞海湾が望めたものだ。

往時の八幡製鉄は2交代制勤務で、八幡の山沿いに住んでいる労働者たちは、リポビタンDを早朝・深夜営業の薬局でもとめ、ゾロゾロと工場の門に吸い込まれていた。また、小倉の繁華街では明け方まで、夜勤の新聞印刷労働者たちが酒を酌み交わしていたという。

若松港や門司港は、火野葦平の父親・玉井金五郎親分の時代から、港湾労働者(沖仲士)のメッカでもあり、喧嘩っぱやい気質は「北九モン」(北九州者)と、他県の人々から怖れられていたものだ。その地に仕事をもとめて、日豊線・筑豊線・日田彦山線・山陽線からの労働力が集中したのである。

だがその重厚長大な産業構造は、高度成長の限界とともに下降線を描くことになる。博多(福岡市)にくらべて、土地の狭隘さも仇となった。北九州市は海に面しているとはいえ、旧五市の中心地が山に遮られた盆地のような形状なのだ。住宅地は山裾に貼りつき、風光明媚な風景の反面で住みにくい町でもあった。

工業地帯としての凋落は、八幡製鉄と富士製鉄の合併(新日本製鐵・昭和45年)から始まった。このとき、多くの鉄鋼労働者家族が千葉県の君津(新日鉄君津工場)に移住し、北九州市の100万都市「崩壊」がはじまった。オイルショックのさなか、八幡製鉄所の溶鉱炉が消える。いよいよジリ貧である。

現在では、ネットのまとめサイト(Wiki)によると、工業地帯(地域)としての産業規模も凋落している。

【京浜工業地帯約55兆円、中京工業地帯約48兆円、阪神工業地帯約30兆円、北関東工業地域約25兆円、瀬戸内工業地域約24兆円、東海工業地域約16兆円、北陸工業地域約13兆円、北九州工業地帯約7兆円となり、工業地帯とは大きな差が開き、5工業地域との比較でも最少の北陸工業地域の半数程度まで低下した。】

ちなみに、現在の北九州市は自動車産業(郊外に工場誘致)が主要な産業だという。都市特有のドーナツ現象で、小倉魚町いがいの商店街はシャッター通りと化している。

北九州市観光情報サイトより

◆天神というブランド

北九州市の凋落のいっぽうで、博多(福岡市)は広大な筑紫平野とアジアへの航路を背景に、商業都市としての発展をとげてきた。天神は東京・横浜発の流行情報を真っ先に取り入れ、中洲は歓楽・観光拠点として全国に知られるようになった。

凋落の始まった北九州が、パンチパーマとノーパン喫茶、競輪発祥の地として、社会の仇花のような名を売っていた時期である。六本木とそん色のない天神の繁華街、プロ野球ダイエーホークスの誘致によって、両者の勝負は決定的なものになった。かたや旧100万工業都市、かたやアジア経済の拠点である。

もともと、黒田52万石時代に旧領の中津などから移住がおこなわれ、とくに美女を集めたといわれている。この事情は、佐竹氏(茨城→秋田)が美女を新領地の秋田に移住させたとする説「秋田美人」と重なる、いわゆる「博多美人」である。北九州の女性の「ケバさ(関西風の厚化粧)」にくらべて、いかにも東京風に洗練されている。このあたりも一因となって、若者の北九州離れ、博多流入が加速されたとみていいだろう。

いまや北九州は全国の政令指定都市のなかで、老齢化率ナンバーワンとなって久しい。じっさいに小倉や黒崎の街を歩くと、お婆さん率の高さに驚かされる。

そんな北九州市が生き残る方法は、もはや観光しかないのだ。門司港(レトロ地区)を中心に、映画のロケ誘致、古い倉庫群の保存などが、ようやく実を結びつつあるものの、広大な市域が不均等な発展、すなわちスラム化をもたらしている。その結果が、今回の黒崎井筒屋の閉店であろう。

あまりにも希望がなさすぎるので、宣伝用に観光広告を貼らせていただく。どうか、衰亡いちじるしい北九州市をよろしく。

◎北九州市観光情報サイト https://www.gururich-kitaq.com/
◎門司港レトロ http://www.mojiko.info/


◎[参考動画]わたしの北九州 ~近代産業発祥の地に刻まれた近現代建築を訪ねて ~(北九州市観光情報ぐるリッチ北九州)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年6月号 【特集】続「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る

◆コロナ自粛で明らかになった経済の本質とは、「消費」である

新型コロナウイルス対策としての「自粛」によって、現代経済の本質が誰の目にも明らかになったはずである。

経済の本質は「労働」でも「生産」でもない。われわれ消費者の「消費」なのである

その本質は「労働」でも「生産」でもない。あるいは「商品」や「サービス」でもなく、われわれ消費者の「消費」なのである。

店を開けなければ、おカネはまわらない。おカネを使わなければ、社会がまわらないのだ。商品生産も在庫も、労働力も流通も以前と変わりはないのに、おカネがまわらない(消費がない)から食べていけない。そして小規模事業者は資金繰りに行き詰まる。経済とはそもそも、おカネがまわることなのである。

じつに単純な原理だが、その原理をないがしろにしてきた結果、不況でも食べられる(貯蓄がある)人々と食えない(貯蓄がない)人々を、われわれの社会はつくってしまっていた。はなはだしい「富の偏在」である。

政治家たちは、需給バランス(生産と消費)やプライマリーバランス(税収と財政)を信奉する古典主義経済学(旧大蔵省官僚)の経済規律に縛られたまま、富の配分(賃金)を怠ってきたのだ。ピケティが言うとおり、富を独占した者たちは、けっしてそれを明け渡そうとはしない。

◆造幣局はおカネを刷れ!

だが、解決策がないわけではない。ことさらMMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)に拠らずとも、事業者(資本家)が借金を返す意志と事業計画さえあれば、銀行は金を貸し続ける。それを国家レベルに行なうのが「赤字国債」であり、カネを行きわたらせる金融緩和・財政出動(リフレーション)である。

企業が事業資金を融資されることを「赤字融資」などとは呼ばないであろう。決算も赤字にすることで、わが国の大手企業は法人税をまぬがれてきた。財務省が言う「国の借金」をひたすらまじめに返済しているのは、われわれ納税者なのである。マクロ経済政策(金融政策や財政政策)を通じて、有効需要を創出するケインズの思想を呼び起こせ。

ちょうどニュースが入った。財務省は5月8日に、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金が2019年度末時点で1,114兆5,400億円となり、過去最大を更新したと発表した。2020年4月1日時点の総人口1億2,596万人(総務省推計)で割ると、国民1人当たり約885万円の借金を抱えている計算になるという(共同通信)。

べつに何の問題もない。物資不足・食料不足にならないかぎり、ハイパーインフレは来ないのである。もう20年以上もこの議論はやってきたではないか。戦間期ドイツも敗戦後の日本も、物資不足からハイパーインフレを体験したのである。それがまた、好況への起爆剤になったもの史実である。

わが国の資本家と安倍政権は、日本型経営(終身雇用)を解体するいっぽう、その補完物としての労働市場の自由化(非正規)を拡大し、消費経済は逼塞してきた。買い手におカネを配らないで、商品(およびサービス)が売れるはずはない。

そもそも大量生産は大量消費によって支えられる経済構造であるのに、片方を潰してしまったのが80年代以降の新自由主義なのである。日本型経営がじつはフォーディズム(労働者に余暇と賃金を与え、クルマと生活を保証する)であり、労使が共同体として経済成長を達成してきた原理であることを、80年代後期のバブル崩壊によって破壊してしまったのだ。

◆生産者を食べせる賃金が、資本を回転させる

にもかかわらず、安倍政権は「働き方改革」として「同一労働同一賃金」をスローガンに掲げた。この心地よいスローガンを取り入れる安倍総理のパフォーマンスを、われわれは社会主義的な労働証書制として解釈しようではないか。

1991年にソビエト連邦が崩壊し、中国も市場経済(資本主義)の道をきわめた今日、資本主義の政治的代理人が労働証書制を口にしたのである。財界・労働界・諸政党も、そして国民もこれに異論はないという。

共産主義の第一段階(社会主義)における労働証書制とは、工場委員会やコミューン(地区ソビエト)が、この労働者は何時間労働したという証明書を発行し、労働者はその範囲内で自分が必要とする生産物を、労働協同組合の倉庫から取り出すというものである。

資本主義における賃金が労働力の価値(価格)であるのに対し、労働証書は労働そのもの時間数(量)である。資本主義の労働力の価値(価格)とは、労働者が生きて明日も労働者として働ける今日の労働力の再生産費であって、実際に行なった労働の量とは異なる。この差が「剰余労働」であり、資本家が労働者から搾取している。と、マルクス主義経済学は説明する。この搾取をなくせ、というのがマルクスの主張である。

ようするに、資本+労働-賃金=剰余労働(価格)をなくしてしまえば、そこに労働量(労働証書)が残る。それは同一の労働に対して、同一の賃金で報いるということだ。

それでは、安倍政権の提唱する「共産主義の第一段階(社会主義)」は、どうすれば実現できるのだろうか。大目標(共産主義的にいえば最大限綱領)ではなく、最小限綱領(実現可能な政策)として、可能性はあるのだろうか?

方法はそれほど難しくない。国民(成人)ひとりあたり20万円のベーシックインカムを実施し、年間40兆円といわれる企業の内部留保を財源に充てればよいのだ。それができない企業は潰して(国有化して)しまえ。

問題は「同一労働同一賃金」を時間で測るのか、それとも労働の質を「同一労働」とするのかであろう。いますぐに、政府は「自粛後」の生活資金を支給せよ。配るカネがない? いや、刷ればいいのだ。


◎[参考動画]【財源の話】れいわ新選組代表 山本太郎(2019年国会質問&スピーチ集より)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など。

月刊『紙の爆弾』2020年6月号 【特集】続「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る

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