黒川弘務元検事長が新聞記者たちとの賭けマージャンを週刊文春に報じられた騒動をめぐっては、検察とマスコミはそこまでズブズブだったのか……と驚く声、呆れる声があちこちで沸き上がっている。それでも、ひと昔前に比べたら、検察とマスコミのズブズブ感は薄まっているのかもしれない。2016年に発行された書籍『田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と特捜検察「栄光」の裏側』(朝日新聞出版)を読めば、おそらく誰もがそう思うだろう。

同書は、朝日新聞のウェブサイト「法と経済のジャーナル」で22回に渡って連載された「特ダネ記者がいま語る特捜検察『栄光』の裏側」を書籍化したもの。朝日新聞、NHKの両社で検察取材を担当した記者1人と元記者2人が、2013年に亡くなった吉永祐介元検事総長のエピソードを中心に検察の捜査や、検察報道の今と昔について、裏の裏まで語り合っているのだが、その中では、検察とマスコミの超ズブズブぶりも具体的エピソードと共に明かされた凄い一冊だ。

◆元検事総長から捜査資料を提供されたことをNHK記者が告白

『田中角栄を逮捕した男 吉永祐介と 特捜検察「栄光」の裏側』(朝日新聞出版)

吉永氏は東京地検特捜部の副部長時代にロッキード事件の捜査を指揮したのをはじめ、数々の特捜事件を手がけ、「検察のレジェンド」と呼ばれる存在。本書でこの吉永氏のことなどを語り合っているのはNHK元記者の小俣一平氏(1952年生まれ)、朝日新聞元記者の松本正氏(1945年生まれ)、同・現役記者の村山治氏(1950年生まれ)の3人だ。いずれも検察取材が長く、小俣氏と松本氏の2人は吉永氏に深く食い込んだ記者だったという。

そんな同書では、村山氏が担当した前書きに、小俣氏のことを次のように紹介する文章が出てきて、いきなり驚かされる。

〈小俣さんは、歴代のマスコミ各社の記者の中で最も吉永さんに食い込んだ記者だった(中略)吉永さんの家族同然で、吉永さんが亡くなるまで濃密に付き合った。2006年には、吉永さんの捜査資料をもとに、坂上遼の筆名で『ロッキード秘録 吉永祐介と四十七人の特捜検事たち』(講談社)を執筆した〉(P19)

小俣氏が元検事総長の吉永氏と「家族同然」の付き合いをしていたというのも凄いが、何より特筆すべきは、小俣氏が吉永氏の捜査資料をもとに本を書いたことがあけすけに語られていることだ。普通に考えると、小俣氏に捜査資料を見せた吉永氏の行為は国家公務員法上の守秘義務違反にあたるからだ。

黒川氏と新聞記者たちの賭けマージャンが発覚した際には、黒川氏が捜査情報を記者らに提供するなどの守秘義務違反を犯しているのではないかと疑う声が飛び交った。黒川氏と記者たちの間でそのようなことが本当にあったのだとしても、吉永氏と小俣氏のズブズブぶりに比べたら、まったくかわいらしいものである。

ロッキード事件では、マスコミが検察と手を組み、田中氏を追及していた(朝日新聞東京本社版1983年1月27日朝刊1面)

◆朝日新聞社会部長はロッキード事件で検察の捜査を支持することを事前に確約

ロッキード事件に関しては、さらに凄い話が出てくる。村山氏によると、検察が捜査開始宣言をする2日前、朝日新聞の佐伯晋社会部長が密かに東京・霞が関の検察庁ビル8階の検事総長室に布施健(たけし)検事総長を訪ねていたというのだが、同席した東京高検検事長の神谷尚男氏から次のように持ちかけられたという。

「法律技術的に相当思い切ったことをやらなければならないかもしれない。それでも支持してくれますか」(P69)

これに、佐伯氏は「もちろん」と答えたというのだが、「法律技術的に相当思い切ったこと」とは、5月27日付けの当欄で紹介した「嘱託尋問」のことだろう。

検察が日本で起訴しないことを約束し、最高裁も刑事免責を保証したうえで、アメリカで行われたロッキード社のコーチャン氏らに対する嘱託尋問では、コーチャン氏らが田中氏への贈賄を証言し、検察が田中氏を刑事訴追するための有力証拠となった。しかし、当時の日本では刑事免責は制度化されておらず、コーチャン氏らの証言は最高裁に証拠能力を否定されたというのはすでに述べた通りだ。

当時、この証言の違法性がほとんど注目されなかったのは、マスコミが水面下で検察と手を組んでいたからだったのだ。

◆「田中角栄を逮捕した男」は自宅で毎日のように大勢の記者と飲み会

同書では、松本氏もひと昔前の検察とマスコミのズブズブぶりをこう証言している。

〈吉永さんや当時の特捜部の幹部は、「マスコミこそが、特捜の応援団なんだ。その支えを失ったら、検察は終わりだ」とよく話していました〉(P98)

実際、ロッキード事件の捜査、公判に関する当時の新聞記事を見ると、マスコミが検察の応援団と化し、田中氏を一緒に追い込んでいるような雰囲気だ。マスコミにとっても、検察と手を組み、政治権力者の疑惑を追及するのは「正義の実現」という認識だったのだろう。

そして極めつけが、吉永氏と記者たちの関係を振り返った次のくだりだ。

〈吉永さんは、田中元首相の一審公判の判決前後に東京地検次席検事を務めた。東京地検次席検事は、検察のスポークスマンで、毎日定例会見を開き、記者の夜討ち朝駆けも受ける。夜はたいてい、自宅に記者が大勢来て、酒を飲む。そういう中で毎日のようにトイレが汚れた。誰かが酔っぱらって粗相をするのだ。それを見つけるといつも吉永さんは長男を捕まえ「お前また汚しただろ」と叱りつけた。後に、長男は小俣さんに「あれは親父が犯人だったんですよ。検事のくせに他人のせいにするんですよ」と話した。鬼検事の吉永さんも家庭では普通のダメ親父だった〉(P98)

東京地検次席検事の自宅で、毎夜、記者が大勢集まり、酒を飲んでいた……。黒川氏の賭けマージャンの会場が産経新聞の記者の自宅だったとか、黒川氏が記者に提供されたハイヤーに便乗して帰宅していたとか、これに比べれば実に些細なことだと思えてくる。

賭けマージャンが発覚した黒川氏が訓告、朝日新聞の元記者が停職1カ月といずれも甘い処分で済み、刑事責任も追及されないことについては、批判する声が少なくない。しかし、これまで検察とマスコミがズブズブに付き合っていた歴史を振り返ると、検察も新聞社も賭けマージャンくらいで厳しい処分を下すことはできないというのが実情なのだろう。

この本の著者たちの言葉の1つ1つは、賛同できるか否かはともかく、検察とマスコミの裏面を世に伝える貴重な資料であることは間違いない。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』【分冊版】第9話・西口宗宏編(画・塚原洋一/笠倉出版社)が配信中。

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

 

『紙の爆弾』7月号本日発売 !

第3弾目となるコロナ禍と安倍政権の失政である。緊急事態の終結が宣言され、まがりなりにも「収束」の兆しが見えはじめた今、といっても東京ではここ数日二桁の感染者が出ているのだが、いずれにしても第2波、第3波のパンデミック襲来にそなえて、防疫失敗の総括を行なうべきであろう。本号は「専門家会議」など危機管理の「司令塔」となったシステムに焦点をあて、その信頼性を検証するものとなっている。以下、わたしの好み・興味のおもむくまま寸評していこう。

野田正彰(構成・本誌編集部)の「政府・専門家会議・マスコミ 素人たちが専門家を僭称して」は、まさに「専門家」の知見のなさを暴露したものだ。傷口(罹患による症状の確認)の状態を差し置いて、原因(どこで発生したウイルスか)の確認に走った段階で、厚労省も日本医師会も「論理の踏み外し」があったという指摘には、溜飲を下げないわけにはいかない。専門家会議の司令塔ともいえる、尾身茂副座長(国立感染研所長)が医系技官出身で、しょせんは役所をうまく生きてきた技官にすぎないと、野田と本誌編集部はいう。重要なのは、医療の現場で基本的な防禦を行ない、経験ゆたかな臨床医がその経験を実地に伝えることであろう。「患者の話を丹念に聞いて、身体をしっかりと目で診て、聴診し、詳しい経過から病気を考えていくという臨床医学の基本がなおざりにされ、診断を補助するものでしかなかった血液検査が優先される逆転現象が起きている」と、近年の医療に警告を発する。これこそ、今回の最大の教訓ではないだろうか。政府が言う「専門家」の実態、近年の医療のゆがみについて、記事を詳読されたい。

「経済専門家による政府の中小企業切り捨て」藤井聡(構成・林克明)は、緊急事態宣言への条件つきだが、3つの観点から批判をくだす。そのひとつは宣言の時期の遅れ(ピークが3月下旬だったのに、4月にずれ込む)、延長の早さ(5月連休明け)である。出口戦略において、専門家会議に入った「経済の専門家」は消費税増税賛成派だった。「コロナによってダメな企業は潰れてもしかたないと主張している東京財団政策研究所主幹の小林慶一郎慶応大学経済学部教授がいる」ことが問題だという。自粛が消費を消し去り、カネが動かない状態で耐えられる「ダメ」ではない企業とは、おそらく内部留保を毎年数十兆円単位で貯めこんでいる大企業のことなのだろう。中小企業はすべてダメ企業ということになる。

記事にはその小林慶一郎をはじめ、専門家会議に参加した竹森俊平(慶応義塾大学経済学部教授)、大竹文雄(大阪大学大学院経済学研究科教授)、井深陽子(慶応義塾大学経済学部教授)のそれぞれの見解がまとめられている。いずれも抜きがたい緊縮派であり、安倍政権が「異次元の金融緩和」などと口にしつつも、危機に際して頼っているのが緊縮派だったという歴史的な証明になるはずだ。

そして怖いのは、コロナと緊縮財政による自殺者が27万人増(年間1万人増)という試算であろう。これはゴールドマンサックスの経済予測をもとに、京都大学レジリエンヌ実践ユニットのシュミレーションを、さらに楽観シナリオと悲観シナリオで想定した後者のケースである。その場合の失業率は2021年末に8%となり、失業率や自殺者数が2019年水準に回復するのは27年後になるということだ。いうまでもなく、スペイン風邪から10年後に世界恐慌が到来したことを想起させる、長期不況がこの試算からはじき出されるのだ。

鈴木直道北海道知事とともに、成長株との評価が高い吉村洋文大阪府知事。じつは大坂が深刻な医療崩壊を招いていたこと、そしてそれがほかならぬ吉村知事と松井一郎大阪市長の維新ツートップの初動ミスによるものだったと指摘するのは「吉村洋文知事に騙されるな 維新が招いた大阪・医療崩壊」(西谷文和)である。その初動における遅れ、あるいは紆余曲折以前に、維新による大阪改革がコロナとの開戦前に、医療を崩壊させていた現実を西谷は指摘する。二重行政の統合、行政合理化のための医療切り捨ての惨たんたる現状を読まされると、維新という政治勢力がいかに新自由主義の負の側面を体現してきたかがよくわかる。

フランス在住の広岡裕児は、フランスの外出禁止が憲法によるものではないことを指摘し「『感染対策に“緊急事態条項”必要』という改憲勢力の嘘」をあばく。足立昌勝は「『自粛』から『強制』へ進行する監視社会」で、不法な監視や自粛警察に警鐘を鳴らす。

最後は拙稿で恐縮だが、このかん日本がコロナ防疫に成功したと喧伝する裏側に、数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)があるのではないか。掲載していただいた「誰がPCR検査を妨害したのか 隠された数万人『肺炎死』」では、医系技官および国立感染症OBによるPCR検査抑制について、その実態と背景にあるセクショナリズムをあばいた。そして数万人単位の隠されたコロナ死(肺炎死)はウルトラ仮説ながら、根拠がないわけではない。じっさいに、法医学病理学会の調査では医師から要請があっても、保健所と国立感染研は遺体のPCR検査を拒否しているのだ。肺疾患の場合、病院の医師は肺炎を併発していても、ガン患者の死因を肺ガンにする。ガン保険を想定してのことだ。しかし今回、遺体へのPCR検査を避けたかった厚労省医系技官(保健所を管轄)および国立感染研においては、意識的にコロナ死者数を減らす(認定しない)のを意図していたのではないか。その答えは年末の「人口動態統計」を参照しなければ判らないが、年間10万人の肺炎死の中に、コロナ死がその上澄みとして何万人か増えているとしたら、日本はコロナ死者を隠していたことになるのだ。

その他、東京五輪の不開催も視野に入れた「日本を包み込む『東京五輪バイアス』」(森山高至)「『東京ビッグサイト』使用停止が生む巨額損失」(昼間たかし)は鳥肌ものの記事だ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

本日7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

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『紙の爆弾』5月号は、久々の「特集」となった。総合雑誌ならワンテーマの特集が編集になじみやすい。とはいえ、本誌のように政治・芸能・経済・社会全体をカバーする「暴露雑誌」「批評雑誌」の場合は、時事的なテーマの煮詰まりが特集内容を決める。それほど「新型コロナ危機」が日本社会にとって喫緊のもの、いや全世界的・人類的な危機をもたらしている、ということになるのだろう。

とりわけ大言壮語のいっぽうで、危機管理にからっきし弱い安倍政権のもとでは、その対応を批判するのみならず、防疫の道筋を提案することが、われわれ国民の「生き延びる権利」となる。どの記事も誌面に惹き込む力をもっているが、例によって筆者の好みで紹介していきたい。

◆安倍晋三の元ブレーン・藤井聡が主張する
「新型コロナウイルスによる経済被害は安倍首相が原因の人災である」(構成・林克明)

 

緊急事態宣言の本日7日発売!タブーなき月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号

まずはリフレ論者で、MMTの推進派として安倍政権の元ブレーンでもある藤井聡氏(京大教授・「表現者クライテリオン」編集長)のインタビュー。林克明さんがやってくれた。

最初に藤井は、安倍政権が1月末にいたるまで「多くの中国人の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」(在中国日本大使館)と、中国人感染者を招き入れていたことを指摘する。インバウンドを期待した、安倍政権の浮かれた経済重視がウイルスを招き入れたのだ。ちなみに、武漢が閉鎖されたのは1月23日である。じっさいに、春節期の中国人来日者数は、前年比で22.6%増の92万4800人だった。水際で止めていれば、日本にコロナウイルスが上陸することはなかったのだ。

その後、専門家の意見を無視したパフォーマンス的な休校要請、中途半端なイベントの延期や中止要請で、自粛劇を蔓延させてしまった。藤井は計量経済学も守備範囲なので、消費税のよる経済変動についても、数値を挙げて解説してくれる。結論から言えば、やはり消費税は上げるべきではなかったのだ。

いま、経済対策として必要なのは消費税ゼロ、所得をうしなった人々への補償、そして思いきったリフレである。藤井はさすがに書いていないが、財務省を中心としたプライマリーバランス論者の「宗教」(藤井)を打破することこそ、日本経済救出のカギであろう。

◆フランスからの視点
「フランスから見た安倍政権の異常性」(広岡裕児)

フランス在住のジャーナリスト、広岡裕児さんがコロナ対策の日仏比較で警告を発する。フランス政府の徹底した情報開示、大統領と首相が国民に語りかける危機管理能力にたいして、安倍政権はいかにも鈍重である。とくにフェイクニュース「人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません」(1月段階)と語っていたのだ。事態はまさに、安倍総理の言明とは正反対になった。これが戦争であると明言したフランス政府の機敏な対応に対して、わが安倍政権はようやく本日(4月7日)、緊急事態宣言を発する。

これら安倍政権の対応の遅れ、危機管理の甘さは法整備にも顕著である。民主党時代に成立していた「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の発動の遅れ、改正法「新型コロナ特措法」の遅れに結果した。

しかも安倍政権は「緊急事態条項」を盛り込むことで、改憲へとみちびく意図が入っていると、足立昌勝さんは指摘する(「新型コロナ特措法と自民党改憲『緊急事態条項』」)。この期におよんでも、安倍総理はウイルスとの戦いを政局寄りに展開してしまうのだ。フェイクによる政治的パフォーマンスと政権維持のための国会対応、法整備、そしてマスク2枚という漫画的な防疫対策。これではウイルスに勝てないだろう。

「『ダイヤモンド・プリンセス』号 乗客に聞く『14日間』」は、編集部による乗客インタビューをもとにしたドキュメントだ。監禁された人々の切羽詰まった状況が、苛酷な船内風景とともに、いま明らかになる。乗員や救命スタッフの献身、人身御供にされた乗客の声を聴け。

コロナ特集はほかに「感染拡大で露見した日本社会が抱える弱点」(森山高至)、「内閣記者会は『安倍独裁』の共犯者」(浅野健一)、「野党第一党の弱腰で“大政翼賛会”の危険性」(横田一)、「安倍政権の『責任逃れ』でアジアで進む『日本離れ』」(片岡亮)など。

次号で、ウイルス封じ込めに成功した台湾の事例を、誰かレポートして欲しいと、編集部にリクエストしておこう。民主化運動で誕生した政権は、人材登用にしても政策運用においても、じつに手際が良い。

◆連載「NEWSレスQ」から

警察と住吉会の蜜月から、とんだ下半身スキャンダルが露見した。警視庁組織犯罪対策本部の警部補(51歳・第3課)が、住吉会の幹部と会食後に、幹部が紹介した女性とラブホテルに出入りするところを「フライデー」に撮られたのだ。

記事中でジャーナリストの中東常行さんが語っている通り、この叩き上げの警部補は、対立組織にハメられたのかもしれない。

警察官が暴力団関係者と密接交際するのは、親密に付き合わなければ情報が取れない、という表向きの理由だけではもちろんない。カネとオンナが付いてくる交際に、何のためらいがあろうか。警察官にかぎらず、官僚・役人というのは昇進・昇格によって生涯賃金がほぼ完全に計り出せる。そうであるがゆえに、出張費や諸手当、相手の心づけに弱いのである。暴対法・排除条例は警察官僚(警察庁)のものであって、そもそも警視庁の末端には及ばない法規なのである。

もうひとつ、「NEWSレスQ」から。「このハゲー! ボケー!」の豊田真由子元議員がタレント(ワイド番組)に転身とのこと。真由子サマのイメチェンが好評らしい。藤村太蔵元議員のタレント的な成功は周知のとおり、政界専門家としても、イジリやすいキャラとしても元議員は受ける。

夫の宮崎謙介元議員の浮気発覚の余波で、自らも落選した元衆院議員の金子恵美も芸能事務所に所属し、本格的にタレント活動を始めた。ほかに上西小百合(元維新)なども期待されるところだ。政治をお茶の間の話題にという意味では、民主的な政治におおいに貢献するのではないか。

◆東陽片岡の「シアワセのイイ気持ち道講座」

店(経営するスナック)の現状と引きこもり生活を活写。これはいよいよ、絵の吹き出しにあるベーシックインカムへの道か。本気でAIとベーシックインカムを議論する時代が来そうだ。

◆市民が阻止した天皇“奉迎”児童再動員(永野厚男)

2019年4月、昭和天皇陵における平成上皇の「退位報告」のさい、八王子市教育委員会が児童を「奉迎」に動員した。12月3日には令和天皇の「即位の報告」が予定されていたところ、八王子市民の粘り強い取り組みで、児童の動員を阻止したレポートである。

このような具体的な活動によって、われわれは天皇制イデオロギーの支配に抗することができると証明された。地域の粘り強い活動こそ、万言を擁する論評よりも強い、天皇制廃絶への道である。

◆巻末には松岡利康本人による圧巻の「創刊15周年記念」追想レポート

昨日の本欄で、松岡利康みずから触れた「本誌創刊15周年記念」の記事「『紙の爆弾』が創刊された二〇〇五年に何が起きたのか?」圧巻の追想レポートである。読みごたえがある。

とくに個々の局面で、誤ってしまった判断、同業雑誌関係者をふくむメディアの反応。絶望的な状況にもかかわらず、獄中(拘置中)での思いが伝わって興味ぶかい。

逮捕から三か月も接見禁止(ふつうは、23日間の取り調べが終われば接見禁止は解かれる)には、あらためて驚かされた。黄色の上質紙に印刷された本稿は、永久保存版である。

『紙の爆弾』創刊15周年記念号の表紙画像と、別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

『紙の爆弾』創刊15周年記念号別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

本日発売!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

※松岡代表の逮捕と鹿砦社弾圧事件をめぐっては、板坂剛氏による「松岡逮捕の衝撃と教訓 鹿砦社への出版弾圧十五年によせて」が4月15日発売の『情況』4月号に掲載されます。

 

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

本日『NO NUKES voice』23号が発売される。総力特集は「〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故」だ。

奇しくも発売日が3・11と重なった。ことしは政府主催の追悼記念式典が、新型コロナウイルスの感染により中止された。いっぽう常磐線が昨日、福島第一原発至近の、大熊町地域でも運転を再開した。

ただし、「避難指示」が解除されたのは0.3平方キロに過ぎない。常磐線の再開は地域の方々にとって、一部福音かもしれないが、わずか0.3平方キロ四方だけを「避難指示」区域から解除する、という政策を3・11に合わせて行う。行政の決定には科学的な根拠よりも、政治的なプログラム進行を優先させようとする意図が透けて見える。

◆終わらない東京電力福島第一原発事故──菅直人元首相が語る、事故から9年の今、伝えたいこと

本号の巻頭インタビューには事故当時の首相であった菅直人氏にご登場いただいた、菅直人氏は事故当時、なにを考え、どう行動したのか。

そして事故から9年後思うことは何なのであろうか。本誌編集長が直接、濃密にインタビューを敢行した。

 

菅直人元内閣総理大臣が語る「東電福島第一原発事故から9年の今、伝えたいこと」

飛田晋秀さん(福島県三春町在住写真家)、横山茂彦さん(編集者・著述業)、尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)、伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)、鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)、四方田犬彦さん(比較文学者・映画史家)×板坂剛さん(作家・舞踊家)、本間龍さん(著述家)、山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)、三上治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)、山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)、佐藤雅彦さん(翻訳家)、渡辺寿子さん(核開発に反対する会/たんぽぽ舎ボランティア)、大今歩さん(農業・高校講師)

多彩な執筆陣が原発問題にとどまらず、核から、サブカルチャー、法哲学の分野にまで論を展開する。『NO NUKES voice』は23号にして、飛行機にたとえれば離陸直後の上昇から、水平飛行へと紙面構成においては一定の方向性を定めることができたのではないとも感じている。

しかし、決定的に足らない要素がある。それは若者が主体的にあげる声の誌面への反映である。編集部はこのことについて、怠惰であったつもりはない。論の通った(あるいは論が未成熟でも)若者の声は積極的にとりあげようと、アンテナをはってきたが、近年残念なことに、その発信自体を掴むことが困難になっている。

目を見張るような個性や、優れた感性がなくなったわけではない。しかし、わずかな例外を除いて、若者の発信がわれわれを揺さぶることは、珍しいといわねばならない。

放射能被害にもっとも敏感であるはずの若者からの、総体としての「無関心」には政府や、教育機関の「洗脳」も理由に挙げられようが、はたして、理由はそれだけであろうか。

北村肇元週刊金曜日編集長(のちに発行人)は、「『週刊金曜日』が生き残るために奇跡を信じたい」(『創』2018年・12月号)を遺稿のように、亡くなってしなった。北村氏も誌面作りで「若者をどう取り込むか」散々苦労なさったことが紹介されている。

本誌は、しかしながら、今後も若者への訴求を努力・研究しながらも、現在の発行方針を維持してゆこうと考える。すなはち「われわれが重要だと評価する情報は、広範に誌面に掲載する。その際読者には媚びない」ということである。内情は青色吐息での赤字出版がつづくが、鹿砦社が経営的に危機を迎えるまで、本誌は発行を止めることができない。

3・11から9年目、『NO NUKES voice』23号発売の日にあたり、あらためて、決意を明らかにしたい。

2019年12月15日の大熊町。ツタに覆われた車(飛田晋秀さん口絵「福島原発被災地・沈黙の重さ」より)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

『NO NUKES voice』Vol.23
紙の爆弾2020年4月号増刊
2020年3月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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総力特集 〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故
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[グラビア]福島原発被災地・沈黙の重さ(飛田晋秀さん

[インタビュー]菅 直人さん(元内閣総理大臣)
東電福島第一原発事故から九年の今、伝えたいこと

[インタビュー]飛田晋秀さん(福島県三春町在住写真家)
汚染されているから帰れない それが「福島の現実」

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述業)
元東電「炉心屋」木村俊雄さんが語る〈福島ドライアウト〉の真相

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
車両整備士、猪狩忠昭さんの突然死から見えてくる
原発収束作業現場の〈尊厳なき過酷労働〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈7〉
事故発生から九年を迎える今の、事故原発と避難者の状況

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
奪われ、裏切られ、切り捨てられてきた原発事故被害者の九年間

[対談]四方田犬彦さん(比較文学者・映画史家)×板坂 剛さん(作家・舞踊家)
大衆のための反原発 ──
失われたカウンター・カルチャーをもとめて

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈18〉
明らかになる福島リスコミの実態と功罪

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
「特定重大事故等対処施設」とは何か

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
停滞する運動を超えて行く方向は何処に

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈7〉記憶と忘却の功罪(後編)   

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
5G=第5世代の放射線被曝の脅威

[報告]渡辺寿子さん(核開発に反対する会/たんぽぽ舎ボランティア)
「日本核武装」計画 米中対立の水面下で進む〈危険な話〉

[読者投稿]大今 歩さん(農業・高校講師)
原発廃絶に「自然エネ発電」は必要か──吉原毅氏(原自連会長)に反論する  

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
老朽原発を止めよう! 関西電力の原発と東海第二原発・他
「特重」のない原発を即時止めよう! 止めさせよう!

《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
「5・17老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」に総結集し、
老朽原発廃炉を勝ち取り、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しよう!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
1・24院内ヒアリング集会が示す原子力規制委員会の再稼働推進
女川審査は回答拒否、特重は矛盾だらけ、新検査制度で定期点検期間短縮?

《全国》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
原発の現局面と私たちの課題・方向

《北海道・泊原発》佐藤英行さん(岩内原発問題研究会)
北海道電力泊原子力発電所はトラブル続き

《東北電力・女川原発》笹氣詳子さん(みやぎ脱原発・風の会)
復興に原発はいらない、真の豊かさを求めて
被災した女川原発の再稼働を許さない、宮城の動き

《東電・柏崎刈羽原発》矢部忠夫さん(柏崎刈羽原発反対地元三団体共同代表)
柏崎刈羽原発再稼働は阻止できる

《関電・高浜原発》青山晴江さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
関西のリレーデモに参加して

《四国電力・伊方原発》名出真一さん(伊方から原発をなくす会)
三月二〇日伊方町伊方原発動かすな!現地集会 
レッドウイングパークからデモ行進。その後を行います。圧倒的結集をお願いいたします。

《九州電力・川内原発》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長/杉並区議会議員)
原発マネー不正追及、三月~五月川内原発・八月~一〇月高浜原発が停止
二〇二〇年は原発停止→老朽原発廃炉に向かう契機に!

《北陸電力・志賀原発》藤岡彰弘さん(命のネットワーク)
混迷続く「廃炉への道」 志賀原発を巡る近況報告

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『オリンピックの終わりの始まり』(谷口源太郎・コモンズ)

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

◆瀕死の安倍政権を鞭打つ

 

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

今号で、やってくれた(!)のは浅野健一氏である。「安倍野合政権崩壊へ『桜を見る会』再終幕」では、ホテルニューオータニに執拗に取材した末、ついに決定的な証言を得たのである。浅野氏ならではの電突取材は「個別の案件」ではなおものの、ANAインターコンチネンタルホテルと同じ「個別に契約することはない」「明細書は存在する」「営業上の秘密を理由に、明細書の提供(発行)をお断りすることはない」と、ニューオータニの支配人が回答したのである。しかもその明細書や見積書は「七年間は保存される」と明言したのだ。

記事には具体的なやりとりが「ナマ放送」に近いかたちで再現され、みずからニューオータニ「鶴の間」に足を運んで、参加費の支払い方法を検証している。これらの取材・調査活動は、記事の後段で報告される刑事告発に生かされるに違いない。東京地検は「犯罪構成要件に該当する具体的な事実を特定して欲しい」と、異例の「加筆・修正」を求めてきたという。検察の動きが注目される。

安倍政権が東京高検・黒川弘務検事長の定年延長で画策した「司法の私物化」はしかし、河井夫妻への強制捜査など、あまり功を奏していないかにみえる。が、籠池夫妻への刑事裁判では、論告求刑に虚偽記載があるという。記事は「大阪地検劣化の果てに『論告求刑』虚偽記載」(青木泰)である。捜査報告書と論告求刑の中身が矛盾するというのだから、大阪地検の劣化ぶりは明らかだ。

◆ビートたけし──誰も祝わない結婚

本誌芸能取材班のレポートは「ビートたけし再婚」である。18歳の年齢差結婚の相手・古田恵美子(55歳)はとんでもない女のようだ。自分の再婚を“大ニュース”とはしゃいでみたものの、誰も祝福しない深い理由が全面的に暴露されている。そもそも古田による略奪婚だったのだ。関係者によるベトナム人への不法就労、事務所関係者への恫喝にパワハラ。そして、たけし自身による軍団の切り捨て。そもそもオフィス北野からの独立劇も、古田恵美子の主導したものだったという。

◆小泉進次郎──地に堕ちた若手のホープ

環境大臣になったがために、その内容と実務力のなさを露呈してしまった小泉進次郎。私見ながら、若手のホープの座は北海道の鈴木直道知事に奪われたと言っていいだろう。記事「小泉進次郎の本性」(横田一)は、創価学会に接近する進次郎のパイプづくりが、菅義偉官房長官を介して行われているというものだ。

◆強力連載陣の見どころ

「れいわ新選組の『変革者』たち」(小林蓮実)第5回は、船後靖彦(参院議員)さんだ。「人は、自分の死と真剣に向き合ったとき、使命を確信し、それに向かって進む決意をする」(ハイデッガー)が座右の言葉とのこと。活躍に期待したい。
「格差を読む」(中川淳一郎)は「コロナ騒動が露呈させた『分断』」。いわゆる「上級国民」現象による分断も怖いが、資産階級および老後勝ち組の象徴だったクルーズ船が、いまや「監獄」であることに諸行無常を感じる。

マッド・アマノさんの連載「世界を裏から見てみよう」は「実は『横田幕府』が日本を支配している」で、かなり怖い内容だ。35年前、御巣鷹山に墜落した日航機事故に、自衛隊が関与していた疑惑をさぐる。横田幕府とは何か? 乞うご期待。
「日本の冤罪」(尾﨑美代子)は、強殺事件で冤罪をうけ、再審勝訴および国賠訴訟を勝ち取った布川事件。無罪の証拠を隠し続けた検事が、何の処分もされない現実を糺す。

連載ではないが、Paix2のプリズン・コンサート500回達成の様子(横浜刑務所)が活写されている(松岡利康執筆)。ファンクラブへの入会は、本誌挟み込みの振替用紙(Paix2ファンクラブ用)に、名前と住所を記入の上、入会費1000円・年会費5000円です。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、最近の編集の仕事に『政治の現象学 あるいはアジテーターの遍歴史』(長崎浩著、世界書院)など。近著に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『男組の時代』(明月堂書店)など。

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

見よ、このタイトルを。教育利権を暴く総力特集と言って、はばかりないものだ。

 

月刊『紙の爆弾』2020年1月号好評発売中!

①「アベ友政治の食い物にされる教育行政」(横田一)
②「『幸福の科学大学』に萩生田文科相と癒着の構造」(藤倉善郎)
③「萩生田光一文科相が利権化目論む民間資格検定試験の実態」(三川和成)

内容を解説していくと、①が記述式導入(安西祐一郎=元慶応塾長・中央教育審議会会長のメモ)、英語民間試験導入(吉田研作上智特任教授)、そしてベネッセ人脈(シンクタンクの所長と理事)、東進ハイスクールの安河内哲也講師、ベネッセ関連団体の鈴木寛代表(元経産官僚・元参院議員)らの下村博文元文科相の人脈だ。派手な見出しキャッチを付けるとすれば、「民間試験導入に動いた闇の人脈とその利権――教育利権のネタにされた入試改革」とでもなるだろうか。

今後の取材の方向性としては、やはり教育産業とベッタリの下村博文元文科相の言動およびその裏にある利権構造の深さであろう。極右政治家でありながら開明派を気取り、文科官僚に強引な利益誘導を強いる(東大に民間試験導入をさせよと指示)手法は、とうてい看過できるものではない。

政治資金の闇(事実上の政治団体・博文会への反社資金)や「マルクス・レーニン主義の公教育を変えたい」という安易で的外れな言動(文部行政への参画時)など、この男の政治生命を早急に断つことこそ、反権力ジャーナリズムのテーマといえよう。

 

大川隆法『下村博文守護霊インタビュー』

その下村博文をすら守護霊インタビューし、その罵詈雑言や国家主義的教育観、岡田光玉(崇教真光の教祖で故人)との関係(幸福の科学大学の認可妨害)を批判していた幸福の科学教団が、萩生田文科相と癒着関係にあると指摘するのが②である。そもそも幸福の科学大学は、大川隆法の「霊言」を全学部共通科目にするなど、普通に考えて認可が認められるはずがないものだった。

にもかかわらず、幸福の科学は千葉県長生村に「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)を開設しているのだ。教団傘下の高校のみならず、早稲田大学や慶応大学に合格していた受験生(信者)も、この無認可のHSUに「入学」させたという。そしてじつは、下村博文元文科相および萩生田現文科相が、HSUの学長人事をめぐって教団と交渉をしていた事実があったこと。「守護霊本」の刊行をめぐる取り引きやアドバイスをしていたことが、記事のなかで暴かれている。

それにしても、トンデモ教団のトンデモ大学である。教団の「幸福の科学大学シリーズ」89冊のうち、「霊言」というワードが1280件も検索ヒットするというのだ。あるいは「守護霊」「悪魔」「宇宙人」「UFO」なども多数ヒットする、およそ学問とは呼べない教育内容のどこに、文科省が指導する余地があるのか。この教団の大学認可策動から目を離すことはできない。

さらに、やはり萩-生田光一文科相の民間資格検定試験への関与を暴くのが③である。

「身の丈発言」で結果的に、英語民間入試の問題点を暴露した萩生田文科相だが、じつはそれを称賛する背後に、文教族のリーダーが森喜朗から萩生田に移りつつある反映ではないかと、記事は指摘する。すなわちベネッセと下村博文の抜き差しならぬ関係である。ところが、問題はベネッセだけではないと記事は暴いてゆく。

◆「桜を見る会」を刑事告発とある夫婦の悲哀

浅野健一の「安倍晋三『桜を見る会』買収疑獄」は、安倍晋三の税金私物化を容共地検に告発した実録である。浅野によれば、公金を使った飲食接待(随伴文化人や御用メディア相手)は「桜を見る会」だけではないという。これらの行為は「業務妨害罪」「贈収賄罪」にあたるとの見解(高山佳奈子京大教授・刑法)もある(記事中)。評者は思うのだが、数百人・数千人単位での集団民事訴訟を提起してもいいのではないだろうか。使われているのは、われわれの「血税」なのだから。

いっぽうで、安倍総理夫妻に切られた人々の悲哀は、読むに堪えないほどのものがある。「【森友事件】籠池刑事裁判 これは“首相反逆罪”か『夫婦共7年求刑』の無法」(青木泰)だ。たしかに補助金の不正受給があったのは事実で、籠池夫婦も認めているものだ。不正受給額の約2000万円は全額返済している。

にもかかわらず、詐欺罪で7年もの求刑が行われたのだ。あれほど肩入れしておきながら、不正受給や巨額の「不正」国有地払い下げがマスコミの餌食になるや、手のひらを返したように「わたしたち夫婦は無関係」(安倍総理)とばかりに切り捨てる。そして信義違反を告発するや、総理の意を汲んだ検察は、このレベルの事件では「極刑」に近い求刑を行なう。すでに文書改ざんで下級官僚が自死し、臭いものにはフタという流れの中でのスケープゴートである。

今回も自分の好み(政局・疑獄好き)で選んだ書評となったが、読んでお徳の600円(税込み)である。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他

 

高部務『あの人は今 昭和芸能界をめぐる小説集』

著者は1968年に高田馬場にある大学に入学、と『一九六九年 混乱と狂騒の時代』の冒頭にある。ベトナム反戦運動のさなか、立川の高校に通っていたというから60年代末を多感な時期に体感したといえよう。そんな著者が週刊誌のトップ屋稼業をはじめた70年代からのエピソードをもとに、昭和の空気を味わうがごとく切りとった小説作品集である。実在の人物をもとにした小説であれば、仮名を用いてもそこはかとなく登場人物の息づかいが感じられ、暴露ものではないと思いつつも「あっ、これは誰それだ!」という興味が先を読ませる。なかなかのエンターテイメントなのだ。

たとえば、表題作「あの人は今」の西丘小百合は南沙織である。おりしも出版社系週刊誌の黎明期で、スクープをねらう芸能記者のうごき、事務所と結託した番組スタッフのうごめき、そしてその結果としての女性歌手のささやかな夢の実現。彼女が沖縄米軍基地および日米地位協定の理不尽さに憤りをもっているのは、わたしのような芸能界門外漢でも知っていることだけに、読んでいてリアルで愉しい。

◆昭和の芸能一家の喜悲劇

その西丘小百合こと南沙織が南田沙織としてブラウン管に登場する「蘇州夜曲」は、福島県いわき市の一家の父親が娘のかおりを歌手デビューさせようと奮闘する、70年代にはよくあった東北と東京の光景ではないか。700万円で戸建ての家が造れた時代に、資産家とはいえ1千万円単位でデビュー資金を要求される。坪3000円の土地担保で融資された4千万円は、すでにレコード大賞の審査員や著名な音楽家たちの懐に渡っているのだ。1億円近くを詐取された父親は、警察に告訴するも娘とカネはもどってこない。芸能界の華やかなステージの裏側に、こんな喜悲劇(せめて喜びもあったとしたい)は山とあったのだろう。我慢という名前の芸能プロデューサーが実刑判決を受けたのが、父親とこの作品にとっては唯一の救いだ。名曲蘇州夜曲が物語の背景にあることがまた、昭和のロマンを伝えてくれる。

「同窓生夫婦」も芸能界デビューを夢みる少女の物語だ。第二の山口百子(=山口百恵)を夢みた少女は、地方の勝ち抜き歌合戦をへて芸能プロに所属することになる。母親を援けたいという動機はしかし、女と駆け落ちをした父親との再会という、やや救いの乏しい現実から出発している。これが作品中に果たされないのは、読者にとっては虚しい。

ともあれ彼女は堀米高校(=堀越学園)に通いながら、同級生のライバルたちと凌ぎを削る。しかるに、凌ぎを削るのは異性関係の足の引っ張り合いというか、スキャンダルであるのは言うまでもない。少女は芸能プロの男とのあいだに出来た子供を堕胎したことを、新人賞をめぐるライバルの同級生にリークされ、賞レースの年末までに華やかなステージから沈んでしまう。救いは彼女を慕って(?)いた中学からの同窓生の男の子だった。おそらく今でも大半の歌手志望者が落ち着く、カラオケスナックを第二のステージにした歌手生活が、彼女のささやかな幸せを受け止めたのだ。喝采。

「マネージャーの悲哀」の麻田美奈子モデルがあるとすれば、大阪から上京した赤貧の母娘と言う設定なので、浅田美代子ではなく麻丘めぐみであろうか。そのアイドル候補に怪我をさせた件(濡れ衣)で母親に土下座させられたマネージャーは、女子大生ブームの新しいアイドルにも身代わりの土下座をさせられた末に、暴露本ライターに行き着く。ベストセラーになったらしく、かれは国道沿いにホルモン店をいとなむ。何というかまぁ、めでたし。

順番は前後するが「消えた芸能レポーター」は喫茶店のボーイから記者(芸能レポーター)になった元受験生が、じつは強姦犯だったというミステリアスな展開だ。作品のなかばからドキュメンタリータッチに感じられる筆致は、この原案が事実だったことを感じさせる。失踪した元強姦犯は樹海の中で死んだのか、それともまだ生きているのか――。


◎[参考動画]南沙織 夜のヒットOPメドレー

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。『一九六九年 混沌と狂騒の時代』では「『季節』を愛読したころ」を寄稿。

高部務『あの人は今 昭和芸能界をめぐる小説集』

◎朝日新聞(2019年11月23日付)にも書評が掲載されました!
高部務〈著〉『あの人は今 昭和芸能界をめぐる小説集』(評者:諸田玲子)

 

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

自分が寄稿させていただいた本を解説するのも、最近では「自著を語る」というスタイルで雑誌や研究会に定着している。今回、デジ鹿編集部の要請もあって、いわば「共著」本を書かせていただくことになった。この本の肝心な部分は、それなりに学生運動や党派の歴史を知っている者にしか書けないということで、お鉢が回ってきたものとみえる。

もっとも「自著を語る」というスタイルは、人文系の専門書に特有のものであって、大著を読みこなす評者が限られているために、ふつうに書評を頼めば数ヶ月を要し、肝心の著書が本屋さんから返本されたころに書評が出るという、困った事態を回避するのが目的でもある。この書評がデジ鹿に記載されるころに、本書はまだ本屋の店頭を飾っているだろうか。

◆「7・6事件」とは何か

何を置いても、本書の最大の読みどころは「7・6事件考」(松岡利康)である。1967年10・8羽田闘争を反戦運動の導火線とするなら、68年は全共闘運動の大高揚の年、パリの五月革命をはじめとするスチューデントパワーの爆発。いわゆる68年革命の翌年、69年は挫折の年である。1月に東大安田講堂が陥落し、古田会頭以下の辞任と自己批判を勝ち取った日大闘争も、佐藤栄作総理の「政治介入」によって解決の出口が閉ざされていた。

全共闘運動が崩壊するなかで、70年安保決戦を日本革命の序曲とするために、ブント(共産主義者同盟)は党内闘争に入っていた。国際反戦デーの「闘争目標を新宿で大衆的に叛乱をめざすべきか、それとも日本帝国主義の軍事的中枢である防衛庁攻撃にすべきか」をめぐって、政治局会議で幹部たちが殴り合うという事態(68年秋)もあった。

そして「党の革命」「党の軍隊建設」を掲げ、首相官邸をはじめ首都中枢を3000人の抜刀隊で占拠し、前段階蜂起をもって日本革命の導火線にする。という主張をもった、のちの赤軍派フラクがブントの全都合同会議を襲ったのが、7・6明大和泉校舎事件である。重信房子さん(医療刑務所で服役中)の「私の『一九六九年』」と合わせ読めば、事件の概略はつかめると思う。

 

松岡利康/垣沼真一編著『遙かなる一九七〇年代─京都』

問題なのは、このブント分裂の引きがねとなった事件が尾ひれをつけて語り継がれてきたことだ。その結果、中大1号館4階から脱出するさいに、転落死した望月上史さん(同志社大生)が、中大ブントのリンチで手の指を潰されていた」という伝説になっていたのだ。その件を、ある作家の著書からの引用として『遥かなる一九七〇年代』(垣沼真一/松岡利康)に書いたところ、中大ブントを代表するという神津陽さん(叛旗派互助会)から、事実ではないとの批判が寄せられていたものだ。

検証の結果、中大で赤軍派4名を監禁したのは情況派系の医学連の活動家で、当初は暴力があったもののきわめて穏和的な「軟禁」であったという。証言したのは、わたしも編集・営業にかかわった『聞き書きブント一代記』(世界書院)の石井暎禧さん(現在は幸病院グループの総帥)である。軟禁中の塩見孝也さん(のちに赤軍派議長)らが、ブント幹部の差し向けたタクシーで銀座にハンガーグを食べに行っていた、などという雑誌記事を学生時代に読んだ記憶があるが、医学連OBの配慮だったかと得心がいく。中大ブントとひと言で言っても、数が多いのである。荒岱介さんの系列だったという九州の某ヤクザ系弁護士の中大OBを知っているし、情況派の活動家も少なくはなかった。その意味では「中大ブントがリンチ・監禁をした」というのは、あながち間違いではない。何しろ中大全中闘は5000人の動員を誇り、有名人では北方謙三が「赤ヘルをかぶっていた」とか、田崎史郎が三里塚闘争で逮捕されたとか、じつに裾野が広い。また目撃談として「塩見さんが生爪を剥がされていた」という証言もあるという。元赤軍派の出版物も出るので、今回の松岡さんの「草稿」がさらなる事実の解明で豊富化されることに期待したい。

それにしても、ブントは分裂して赤軍派を生み出し、最後は連合赤軍という同志殺し事件を生起させた。マルクス主義戦線派との分裂過程でも、暴力をともなう党内闘争はあった。その後、四分五裂する過程でも少なからず暴力はあった。けれども、寝込みを襲撃するとか出勤途中の労働者をテロるといった、中核VS革マル、革労協のような内ゲバには手を染めていない。だからこそ7・6事件という、いわば牧歌的な党内闘争の時代の内ゲバ死を問題にできるのであろう。死者が100人をこえる「党派戦争」の反省や総括の試みが、上記の党派からなされることは、おそらく絶対にないだろう。なぜならば「同志」は「死者」となったまま、いまも「闘っている」のだから、生きている人間が「誤りだった」などと言えるはずがないのだ。

 

板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

◆板坂剛の独断場

もう一本、本書の記事を推薦するとしたら、板坂剛さんの「激突対談」であろう。小中学校が同期だった中原清さん(仮名)とのドタバタ対談、激論である。前著『思い出そう!一九六八年を!!』の座談会では、真面目にやろうとしたことが仇となってしまったが、今回は相手にもめぐまれて、もう読む端から爆笑を誘うものになった。やり取りを引用しておこう。

板坂 だからおまえなんかにゃ判らねえって言ったんだよ。
中原 だったらこんな対談、無意味じゃねえか?
板坂 無意味じゃねえよ。
中原 俺には無意味としか思えんな。
板坂 それはおまえが無意味な存在だからだよ。
中原 やっぱりちょっと外に出ようじゃないか?
板坂 まだ終わってねえっつうんだよ。

もちろん内容もちゃんとある。ストーンズに三島由紀夫、中村克巳さん虐殺事件、日大芸術学部襲撃事件などなど。けっきょくこの対談を三回読み返したわたしは、いままた読み始めてしまっている。

◎鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』関連記事
〈1〉鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』発売を前にして
〈2〉ベトナム戦争で戦死した米兵の死体処理のアルバイトをした……
〈3〉松岡はなぜ「内ゲバ」を無視できないのか
〈4〉現代史に隠された無名の活動家のディープな証言に驚愕した!

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。『一九六九年 混沌と狂騒の時代』では「『季節』を愛読したころ」を寄稿。

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

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月刊『紙の爆弾』2019年12月号

巻頭は「自民党政治家も絡む“原発マネー”をめぐる政官業の癒着構造」(横田一)だ。いまさらながら、原発マネーが地元発の金品受領事件として露見した、関西電力福井高浜原発。マスコミ報道では森山栄治元助役の剛腕が強調され、関西電力はあたかも「被害者」のように描かれているが、そうではないと横田は指摘する。

計画停電をチラつかせ、行政を手玉に取る手法はまさに原子力ムラのいっぽうの雄である。そして森山助役の力の背景に、自民党大物政治家の影があることを暴露する。その大物政治家とは、亡き野中広務元自民党幹事長である。そして森山元助役が部落解放同盟の県連書記長だったことから、野中との関係は想像できるというものだ。

これについては、部落解放同盟中央本部の組坂繁之執行委員長が10月7日付で「書記長は2年で解任され、解放同盟とは無関係」とコメントしている(「週刊新潮」ウェブ)。とはいえ、高浜町で自由にモノが言えない雰囲気を作ったのは、森山元助役の「人権」をカサに着た言動だったのではないか。さらなる取材を期待したい。

◆安倍長期政権の底流にある宗教・暴力団・カネ

「菅原一秀前経産相の卑劣なる取材妨害と『虚偽告訴』」(藤倉善郎)は、取材を申し入れたジャーナリスト(藤倉氏および「やや日刊カルト新聞」の鈴木エイト氏)を、菅原事務所が「建造物侵入」で刑事告訴したというものだ。菅原一秀は「カニ」「メロン」そして秘書香典の辞任大臣である。しかし今回、藤倉氏の取材テーマは、菅原一秀元経産相の「統一教会との関係」なのである。

カルトと安倍政権の分かちがたい関係は前号で既報のとおり、ここが長期政権の核心部分なのかもしれない。練馬の菅原事務所前での取材妨害は、そのままリアルに再現されているので臨場感たっぷりだ。突撃取材のノウハウにもなるので、ジャーナリスト志望者はぜひ参考にしていただきたい。

もうひとつ、安倍長期政権を支えているものは、暴力団との癒着であろう。「『カネ』と『暴力団』から始まった自公連合20年“野合”の底流」(大山友樹)は、自公連立の契機に、創価学会と後藤組(五代目山口組の武闘派組織)後藤忠政組長との関係を指摘する。

本欄で連載している「反社という虚構」には自民党政治家とヤクザの切っても切れない関係が選挙にあると指摘してきたが、創価学会の場合は、つねに付きまとう「正教不分離」のウィークポイントを、暴力の力でけん制するという乱暴な手法だった。都議会公明党のドン・藤井富雄(元都議)が「反創価学会議員対策」で後藤組長と密会しているところを、ビデオ撮影されていたのである。

これをネタに創価学会を「恫喝」したのが、亡き野中広務だという。22万部のベストセラーになった後藤忠政元組長の『憚りながら』(宝島社)を読まれた方は、組長の創価学会批判が「それまで散々働いてきた連中や、俺みたいに協力してきた人間を、用済みになったら簡単に切り捨てるようなやり方が許せん」の真意がわかろうというものだ。

テーマは政治ではなく芸能だが、暴力団記事がもう一本。周防侑雄に煮え湯を飲まされた笠岡和雄(元大日本新政會会長・笠岡組元組長)の反撃が待たれると予告するのは、編集部による「収監・元用心棒が握る“決定的証拠”芸能界のドンの暴力団人脈」である。周防バーニングプロ社長に用心棒として頼りにされ、共同出資で産廃事業に乗り出したところで頓挫。

この経緯については『狼侠』(サイゾー刊)に詳しいが、同書を反撃の狼煙にしたところを、仁科明子がらみの事件で逮捕、今年2月に2年の実刑判決を受けた。その背後に、周防社長の警察人脈があるのは明らかだ。そしてその周防の暴力団人脈こそ、笠岡元会長が最もよく知る住吉会系(笠岡組は住吉会の前身・港会の傘下組織だった)であり、六代目山口組(弘道会・司興業)なのである。今後の展開に注目したい。

◆国民の総反撃が始まるか?

田原総一朗インタビュー(林克明+本誌編集部)「『野党』と『世論』の可能性」が、久しぶりに田原の慧眼さを伝える。自民党の党内権力の一元化によって、党内はおろか国民まで巻き込んだ『消極的支持』が長期政権を支えている」と、田原は政治の劣化を読み解く。論点は消費税廃止、格差の是正(月収20万円以下が1000万人という現実)、そして失敗許容社会であるとする。この失敗許容とは、サラリーマン化した企業の経営者に対するものだ。アメリカでは3回か4回失敗しない人間は認められない(トランプか?)と田原は言う。

いっぽう、年内の衆院解散が噂されている。安倍政権のさらなる長期化のために、最短で12月解散、あるいは来年1月下旬、来年6月の都知事選との同時選挙が有りうる。というのは「衆院解散『2020年1月』安倍政権を終わらせる野党共闘の行方」(朝霞唯夫)である。党内政局の動きはすさまじい。二階俊博が麻生太郎に「もう一度、総理をやったらいい」(10月に2度、料理屋で会合)。これは安倍総理の総裁4選をうながす、隠然たるアドバルーンではないかと。朝霞は「れいわ新選組」の可能性について「参院選の遊説で見せた“言葉の破壊力”は凄まじいの一言。山本氏を加えて、どのようなスキーム、統一候補の筋書きを描けるかがカギとなりそうだ」とする。

連載では、シリーズ「日本の冤罪」の二回目が甲山事件。「れいわ新選組の『変革者』たち」は、辻村ちひろ氏だ。今回も好みで選んだレビューだが、読み応え満載の12月号をよろしく。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

学生運動に興味のない読者(本通信では少数であろうが)にとっては、「全学連」も「過激派」も「共産党」も同じに見えるかもしれない。けれどもそれらは個々ずいぶん違う性質のものであるので、本日の文章をご理解いただくために、最小限の用語の意味だけご紹介しておく。

 

鹿砦社創業50周年記念出版!『一九六九年 混沌と狂騒の時代』10月29日発売!

◆「全学連」と「全共闘」

「全学連」とは「全日本学生自治会総連合」の略語で、各大学の自治会が寄り合った組織である。当初は一つであったが、60年安保闘争を前にして主流派が共産党と訣別し死者をも出しながら激しく闘い世界に「ゼンガクレン」という名を広めるほど有名になった。一方、反主流派の共産党系も「全学連」を名乗って今に至っている。共産党ではない(主として共産党から離脱した)新左翼系の「全学連」は、60年安保闘争後いったん解体し66年に、いわゆる「三派全学連」(ブント、社青同解放派、中核派)として再建され、60年代後半の運動を牽引したが、党派による連合体の形をとったが故に、利害関係などから長続きせず、やがて各党派ごとの「全学連」に移行する。ブント系を除き今でも各派で「全学連」を名乗っている。

これに対して「全共闘」は「全学共闘会議」の略称であるが、上記の「全学連」が党派連合なのに対し、「全共闘」は、党派も抱き込みつつ、党派による弊害を感じた学生たちが、自由意思により、大学(高校)ごとに共闘する運動体を打ち立てた。その先鞭として有名なのが「日大全共闘」であり「東大全共闘」である。

日大は日本一の学生数を擁する大学であったが、学内での集会の自由を認めない、など大学としての最低限のレゾンデートルも、踏襲していなかった。60年代後半、それまで学生運動とは無縁だった日大で、30億円に上る使途不明金問題が勃発。それに呼応する形で自然発生的に「日大全共闘」が結成される。このように、最初から旧来の党派ありきではなく、自然発生的に生まれ、それゆえ瞬く間に広がったのが「全共闘」運動の特徴といえるだろう。「日大全共闘」をはじめ、全共闘運動については『思い出そう!一九六八年を?』(2018年、板坂剛と日大芸術学部OBの会編著、鹿砦社)で経験者、板坂氏らが詳しく紹介しているので是非ご一読いただきたい。

そして、まさに「全共闘」が全盛を極めたのが1969年であった。『一九六九年 混沌と狂騒の時代』は「全共闘最盛期」の報告と副題を付すことも可能かもしれない。1969年は『一九六九年 混沌と狂騒の時代』に詳しい年表を付しているが、年始から実に様々な事件や、のちの世代に影響を残す事柄が集中的に起きていることに驚かされる。翌1970年に70年安保という大事件を控えながら、大衆運動としての学生運動は、『一九六九年 混沌と狂騒の時代』に寄せられた数々の原稿を目にすると、1969年でピークを迎えていたような印象すら受ける。
しかし、それはわれわれが、まだ1968年と1969年を解析したように、1970年(~代)についての充分な情報収集を行っていないからかもしれないが…鹿砦社では1968年・1969年に続き来年は1970年(~代)をテーマとした書籍を出版する予定だと聞いている。

◆同志社大学出身者たちが当事者として語る「東大安田講堂籠城戦」

さて、「全共闘」に話題を戻そう。全共闘は各大学で生まれ、参加者や議論の制約を設けない、新しい形の運動体だった故に、それまでの学生運動には距離を置いていた学生の中からも、参加者が劇的に増加する。

そんな中闘われたのが1月の「東大安田講堂籠城戦」だ。東大全共闘が中心であったが、全国から応援の部隊が駆け付けた。26日の本通信で、

《1969年を知る上で、もし、「安田講堂」闘争参加者に直接お話を聞くことができれば、この上なく貴重な資料になるだろうと考えた。しかしことはそれほど簡単ではない。あれからすでに半世紀が経過しているのだ。若くとも当時の学生は70歳前後になっているはずだ。しかも、ことがことだけに、簡単に質問にお答えいただける方は、なかなか現れない。当然だろう。当時の籠城学生は全員検挙されたのだから。探り当てては「勘弁してください」と“あのこと”については語ることを拒まれる方が続いた。》

とご報告した通り、証言者は当初見つからなかった。ところが偶然にも鹿砦社代表・松岡の先輩筋に、かつてその戦闘性で全国の学生運動を牽引した「同志社大学学友会」のOBの親睦団体「同大学友会倶楽部」でここ数年共に活動している方が安田講堂籠城組で、おそるおそる今回の出版企画への寄稿をお願いしたところ、単独の執筆は勘弁してほしいが「私の限られた経験でよければ」と“証言”を頂けるとのありがたい許諾を受けた。けっきょく6人の座談会となった。

松岡も私もかなり緊張し興奮しながら、取材当日を迎えた。“証言”を受けていただいた方は、2人が松岡と共に学友会倶楽部で顔を合わせたことのある方だったが、お二方はご親切にもご友人にもお声がけいただいて、取材には6名の皆さんがお集まりいただき「1969年」を振り返る「座談会」を催すことができた。いずれも同志社大学出身(中退・卒業)6名の皆さんに自己紹介からお話を始めていただくと、なんと3名が「安田講堂籠城組」であることがわかり、松岡もわたしも驚きの声を抑えることができなかった。

貴重な証言は細部に及んだ。同志社大学から、どうして東大闘争に駆け付けることになったのか? 京都を出発する時点で、「決死の闘争」へ参加する覚悟はできていたのか? 安田講堂内での守備位置はどこだったのか? 機動隊員が内部へ入ってきた時の様子は?われわれの質問は果てることがなく、参加いただいたみなさんのお答えにも、なんの躊躇もなかった。

これまでの報道では決して報告されなかった、いくつもの事実が初めて明らかになった。その多くは意外な事実であったが、中には例外的に大爆笑を止めることができないような“秘話”も含まれている。

現代史の発掘の妙味は、体験者に直接語って頂くことだ、とあらためて痛感した座談会であった。帰路松岡も、わたしも興奮が冷めやらなかった。お一人が語ってくれるだけでも望外だと思っていたのに3名もの証言者のご協力を得ることができ、それにより質疑ではなく経験者同士の対話も展開され、より事実の発掘が深まったからだ。この座談会「元・同志社大学活動家座談会   一九六八年から六九年」は間違いなくお勧めだ。

元・同志社大学活動家座談会

◆重信房子氏が回顧する「私の一九六九年」

さらにである。6名のうち5名の皆さんは、その後活動期間の長短はあれ、「赤軍派」に参加されていたことも判明する!

森恒夫、田宮高麿、遠山美枝子、坂東国男、重信房子…といった、多くの人たちがその名を知っている方々。

いずれも大事件に関係した、「あの時代」を知っている人であれば、興味のある人であれば何度も目にした名前が、直接の登場人物として話題に上る。上記4氏の中で、生死がはっきりしているのは重信房子氏だけである。森恒夫氏は赤軍派から連合赤軍を結成し、山岳ベース事件で多くの仲間をリンチ死に至らしめ、逮捕後、獄中自死した。

「あさま山荘事件」といえば、50代以上の誰もが記憶しているであろう、あの事件の前段での不幸ともっとも関係が濃密な人物である。坂東國男氏は、海外にいるとされるが、生死、消息不明だ。座談会出席者の中には森氏と、個人的に知り合いであった方もいた。そしてその方は森氏の危険性を予期していた!

田宮高麿氏は、「よど号」ハイジャックで朝鮮に渡ったグループのリーダーであり、遠山美枝子氏は山岳ベース事件で「自己批判」の末、命を絶たれることになった被害者だ。やはり座談会参加者の方からは遠山氏のお人柄も、証言されている。重信房子氏についてはさらに詳細な議論が交わされた。もうこれ以上本通信では明かすことはできない。

「おいおい、えらくコアな証言のようやな」と読者の声が聞こえてきそうだ。その通りだ。これだけでも読了後は結構な汗をかくのだが、最後的な決定打がさらに準備されている。

東日本成人矯正医療センターに収監されている重信房子氏も寄稿して頂けたのだ! シンプルに「私の一九六九年」という題で重信氏が回顧する原稿からは、一部マスコミのミスリードにより、「冷血なテロリスト」との印象を刷り込まれた読者諸氏に大きなショックを与えるに違いない。重信氏の人間性溢れる貴重な原稿だ。

いよいよ本日発売の『一九六九年 混沌と狂騒の時代』(税別800円、安すぎる!)にはその他にも「あの時代」の証言、告発、問題提起が詰め込まれている。
かつて松岡は『季節』という雑誌を発行していて、その5号、6号は電話帳のように分厚いもので、ある人に「奇妙な情熱」と揶揄されたというが、今回もA5判・224ページと、思った以上に分厚く、それでいて本体価格800円という安価――これもまた松岡の「奇妙な情熱」といえるだろう。

「絶対」という言葉は、よほど注意しなければ使わないが、あえて「絶対」にお勧めの一冊である。そして『一九六九年 混沌と狂騒の時代』は歴史に名を残す書籍になるであろうことを確信する。この種の本には珍しく1万部ほどを発行したという。松岡は強気だ! 売り切れ要注意、すぐに書店に向かうか、ネット書店や直接鹿砦社(sales@rokusaisha.com)にご注文を!(了)

◎鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』発売を前にして
〈1〉鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』発売を前にして
〈2〉ベトナム戦争で戦死した米兵の死体処理のアルバイトをした……
〈3〉松岡はなぜ「内ゲバ」を無視できないのか
〈4〉現代史に隠された無名の活動家のディープな証言に驚愕した!

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

鹿砦社編集部編『一九六九年 混沌と狂騒の時代』10月29日発売!

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07YTDY97P/

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