◆戦史は歴史観か、それとも史料になるのか

年々、新たになるのは古代史や中世史だけではなく、現代史においてもその中核である日中・太平洋戦争史でも同じようだ。今年の終戦特集番組はそれを実感させた。

 

『不死身の特攻兵(1)生キトシ生ケル者タチヘ』(原作=鴻上尚史、漫画=東直輝、講談社ヤンマガKCスペシャル2018年)

個人的なことだが、父親が予科練(海軍飛行予科練習生)だったので、本棚は戦史もので埋まっていた。軍歌のレコードもあって、聴かされているうちに覚えてしまい、昭和元禄の時代に軍隊にあこがれる少年時代であった。そういうわたしが学生運動にのめり込んだのだから不思議な気もするが、じつは両者は命がけという意味で通底している。

たとえば三派全学連と三島由紀夫へのシンパシーは、一見すると真逆に見えるが、三島研究を進めるにつれて、そうではなかったとわかる。自民党と既成左翼に対抗するという意味で、三島と三派および全共闘は共通しているのだ(東大全共闘と三島由紀夫の対話集会)。

つまり過激なことが好きで、戦争に興味があるのも、ミリタリズムへの憧れとともに、そこに人間の本質が劇的に顕われるからではないだろうか。およそ文学というものはその大半が、恋愛と戦争のためにある。

◆特攻は志願制ではなかった

戦史通には改めて驚くほどのことではないかもしれないが、テレ朝の「ラストメッセージ“不死身の特攻兵”佐々木友次伍長」は、戦前の日本人の死生観を考えるうえで興味深いものがあった。

その特攻隊は、陸軍の万朶隊という。日本陸軍は基地招集の単位で動くので、万朶隊は茨城県の鎌田教導飛行師団で編成され、フィリピンのルソン島リパへ進出した。そこで特攻隊であることを命じられ、岩本益臣大尉を先頭に猛特訓に励む。ときあたかもレイテ海戦で海軍が敗北し、フィリピンの攻防が激化していた。

最近の特集番組で明らかになったのは、特攻隊がかならずしも志願制ではなかったという事実だ。

従来、われわれの理解では部隊単位で各自に志願を問われ、全員が手を挙げて志願することで、特攻は志願者ばかりだった。と解説されてきたものだ。ところが、実態は「どうせ全員が志願するのだから、命令でいいだろう」というものだったようだ。

レイテ決戦のときの「敷島隊」の関行男中佐も「僕のような優秀なパイロットを殺すようでは、日本も終わりだ」と言い捨てたと明らかになっている。従来、敷島隊は「ぜひ、やらせてください」という隊員の反応(これも確かなのだろう)だけが伝わっていた。

 

大貫健一郎、渡辺考『特攻隊振武寮 帰還兵は地獄を見た』(朝日文庫2018年)

さて、特攻を命じられた岩本隊長は、ふだんの温厚さをかなぐり捨てて、大いに荒れたが、部下には「大物(空母や戦艦)がいないなら、何度でもやり直せ。無駄死にはするな」と命じていた。特攻の覚悟はあったが、暗に通常攻撃を督励していたといえよう。

岩本は特攻機を改造もさせている。特攻機は爆弾をハンダ付けし、機体もろとも突入することで戦果が得られる。爆弾を内装する爆撃機仕様の場合は、起爆信管が機体の頭に突き出している。

その「九九式双発軽爆撃機」の3本の突き出た起爆管を1本にする改造を行っている。このときに爆弾投下装置に更に改修が加えられ、手元の手動索によって爆弾が投下できるようになったのだ。

これは番組では岩本の独断とされていたが、鉾田飛行師団司令の許可を得てあったのが史実だ。

だが、その岩本大尉は同僚の飛行隊長らとともに、陸軍第4航空軍司令部のあるマニラに行く途中に、米軍機に撃墜されてしまう。万朶隊の出撃を前に、司令部が宴会をやるので招いたというものだ。

クルマで来るように指示したのに、飛行機で来たからやられたとか、ゲリラがいるのでクルマで行ける行程ではなかったとか、これには諸説ある。

◆9回の特攻命令

雨に祟られた甲子園大会も、なんとか再開したが野球のことではない。

9回特攻を命じられたのは、下士官の佐々木友次伍長である。佐々木は岩本大尉の教えに忠実に、大物がいなかったから通常攻撃(爆弾投下)で戦果を挙げていた。つまり突入せずに帰還したのである。

ところが、大本営陸軍部は佐々木らの特攻で「戦艦を撃沈」(実際は上陸用揚陸艦に損害)と発表し、佐々木も軍神(戦死者)のひとりとされていた。軍神が還ってきたのである。

第4飛行師団参謀長の猿渡が「どういうつもりで帰ってきたのか」と詰問したが、佐々木は「犬死にしないようにやりなおすつもりでした」と答えている。

第4航空軍司令部にも帰還報告したところ、参謀の美濃部浩次少佐は大本営に「佐々木は突入して戦死した」と報告した手前「大本営で発表したことは、恐れ多くも、上聞に達したことである。このことをよく胆に銘じて、次の攻撃には本当に戦艦を沈めてもらいたい」と命じた。

 

鴻上尚史『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書2017年)

ようするに、天皇にも上奏した戦死なので「かならず死ぬように」というのだ。機体の故障、独断の通常攻撃、出撃するも敵艦視ず、また故障。という具合に、生きて還ること9回。正規の命令書に違反しているのだから軍規違反、敵前逃亡とおなじ軍法会議ものだが、なにしろ岩本大尉の「無駄死にするな」という命令も生きている。戦果も上げる(突入と発表される)から故郷では二度まで、軍神のための盛大な葬式が行なわれたという。詳しくは、鴻上尚史『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書2017年)を参照。
そうしているうちに、フィリピンの陸軍航空団もじり貧となり、第4航空軍の富永恭次中将が南方軍司令部に無断で台湾に撤退した。この富永中将は特攻隊員を送り出すときに「この富永も、最後の一機に乗って突入する」と明言していた人物である。

海軍の特攻創始者である大西瀧治郎は、敗戦翌日に介錯なしで自決。介錯なしの自決には、陸軍大臣阿南惟幾も。連合艦隊参謀長(終戦時は第5航空艦隊長官)の宇垣纏は、玉音放送後に17名の部下を道連れに特攻出撃して死んだ。

本当に特攻は有効だったのか、アメリカ海軍の記録では通常攻撃の被害のほうが大きかった。というデータがあり、従来これはカミカゼ攻撃の被害を軽微にしたがっているなどと解説されてきた。だが、海軍の扶桑部隊などの歴史を知ると、訓練不足の若年兵はともかく、ベテランパイロットによる通常(反復)攻撃のほうに軍配が上がりそうだ。ともあれ、特攻が将兵の自発的・志願制ではなく、日本人的な暗黙の強制だったことは明白となってきた。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』9月号

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

秋の総選挙前に、興味深いレポート記事がそろった。そして北朝鮮をテーマにした記事、とくに小坂浩彰氏の登場に「興奮」だ(後述)。

 

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』9月号

まずは8月8日告示となった横浜市長選挙である。(横田一「横浜市長選で菅義偉一派の姑息栓術」

横浜では当選前に「カジノ誘致は白紙」としていた林文子市長(再選立候補)が積極誘致に転じ、市民の期待を裏切ってきた。ハマのドンこと藤木幸夫横浜港ハーバーリゾート協会会長がカジノ誘致の反対の論陣を張ることで、IR(横浜港湾地域の再開発問題)は混迷をふかめてきた。

だが、自民党の小此木八郎国家公安委員長(前衆院議員)が「カジノ絶対反対」を掲げて出馬表明。作家で元長野県知事の田中康夫氏が出馬表明、立憲民主の山中竹春(元横浜市大教授)、維新の松沢成文参院議員(前神奈川県知事)など、カジノ反対派はじつに7人も立候補したのである(記事では8人となっているが、郷原信郎弁護士が立候補を取りやめ)。

すなわち、カジノ誘致反対票が、反対派の立候補者乱立によって、分散してしまうことが確実となったのだ。しかるに、小此木氏とキーマンの藤木氏は三代にわたる家族付き合いがあり、小此木氏の父親の秘書を務めていたのが、菅義偉総理なのである。小此木氏に「隠れカジノ推進派」との疑惑が持ち上がるのは、けだし当然であろう。反対派陣営の候補者一本化への内幕もレポートされている。

いずれにしても、横浜市は菅総理の地元であり、ここで小此木氏が敗れるようなことになれば、政権維持にも直撃する。そこで「カジノ誘致反対(隠れカジノ誘致)」の立場をとりながら、マヌーバー的に誘致へとシフトする。その意味では選挙後の小此木氏の立場にも目が離せないということになる。

◆総選挙は山口三区が焦点に

いまから秋に向けて注目すべきは、派閥の瓦解へのつながる可能性のある、自民党内の政局である。(山田厚俊「衆院選で瓦解へ 自民党内で露見した亀裂」

秋の総選挙で決定的となっているのが、現職の不出馬(引退=10名以上)である。伊吹文明、竹下亘、冨岡勉など、派閥の幹部クラスが相次いで引退することになる。そこで「派閥の瓦解」である。

そのうえで、ポスト菅をめぐる党内亀裂が二階派と宏池会(岸田文雄)との間で起きるのではないかと、山田は指摘する。そのキーマンは、山口三区に参院から衆院に転じる林芳正元文科大臣であるとする。

その衆院山口三区は、二階派の河村建夫元官房長官が公認候補となる予定だ。この亀裂が10年後の自民党の派閥の力関係を決め、将来の主流派を占うのだとしたら、山口三区からは目が離せない。政治の世界は寸分先も見えない。20年前に安倍長期政権、菅政権を予見できた人がいただろうか。

◆怖い噂

NEWSレスQの記事「河井案里事件 自殺した担当検事をめぐる怖いウワサ」が注目に値する。自殺したのは昨年12月だが、その背景には安倍の側近Aなる人物から電話があると、誰かが死を選ぶことになる。という怖い噂だ。

特定秘密保護法を批判した内閣参事、自民党山田健司代議士の不正を告発しようとしていた秘書、UR問題で担当者だった国交省職員、森友学園問題の造園会社社長、そして近畿財務局の赤木俊夫氏と、政権にとって都合の悪い人物が死を選ぶ──。

その赤木ファイルを検証した青木泰「財務省腐敗 改ざんに抵抗した命がけの記録 赤木ファイルが訴えるもの」は保存版であろう。

◆久々の「証言」 小坂浩彰

小坂浩彰氏は、日本にいての北朝鮮のことは絶対にわからない。という、ある意味では当たり前のことから出発する。じっさい、北朝鮮通の小坂氏にしても、わかっているふりをして「予測発言」したが、外れて大恥をかいたという。

ジャーナリストや証言者は「批評家」ではないのだから、当然と言えば当然である。Z世代にもわかりやすく書いているというが、このような記事こそが読者にとどく。

とはいえ、新たなファクトは、あまりない……。小坂氏にはもっと北朝鮮に足を運んでもらい、多少あやしいものでも「証言」を期待したい。

◆「平壌の人びと」伊藤孝司インタビュー by 小林蓮実

これも「証言」ではないが、日本人が課題としなければならない問題。北朝鮮における残留日本人と日本人妻(帰還運動による)、あるいは墓参と遺骨収集などである。

写真展は8月24日~9月5日。ギャラリーTEN(台東区谷中2-4-2)http://galleryten.org/ten/

イベントは8月29日18時~。不忍通りふれあい館(文京区根津2-20-7)
https://www.city.bunkyo.lg.jp/bunka/kanko/spot/museum/fureai.html

◆スポーツとは何かを考える

片岡亮「東京五輪開催の今こそ 大坂なおみの問いを見つめなおす」は、スポーツとりわけオリンピックやプロスポーツを考えるうえで、刺激的な問題提起である。

国籍問題もさることながら、スポーツのありかたをめぐっては、ラグビー協会制度(国籍ではなく、協会所属3年で日本代表に参加できる。イギリスには3つの協会=イングランド、スコットランド、ウェールズが併存する)についても考察を広げるべきであろう。大相撲についても、相撲が「スポーツ」なのか「神事」(神への奉納)なのかという、議論を深めるべきテーマがあるはずだ。相撲協会および横綱審議会が、この点を曖昧にしてきたことも一因である。

私見を申し上げれば、相撲は神事であるとともにスポーツでもある。そこに顕われる品格問題を優先するのか、スポーツとしての可能性をどこまで容認するのか。時々の議論があって成り立つ、ある意味では可変的な論争的な内容を持つがゆえに、魅力のある舞台なのだ。

神事(様式美)で通してしまえば、八百長(無気力相撲)も容認されるし、それへの憤り(スポーツの厳しさ)がまた魅力を増す。その意味では、神事や品格を理解しないモンゴル勢がつよいという矛盾、その危うさこそが大相撲の魅力とも言えるのだ。そこにあるのは、スポーツ文化をめぐる議論の楽しさであり「結論」などはない。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』9月号

本日11日、全国の書店やアマゾンなどで『NO NUKES voice』が発売される。本号の特集は「〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉」だ。創刊以来28号を数える本号は、奇しくも〈当たり前の理論〉がますます踏み倒される2021年6月の発売となった。

元福井地裁裁判長の樋口英明さん(『NO NUKES voice』Vol.28グラビアより)

◆理性も理論も科学もない「究極の理不尽」との闘い

 

『NO NUKES voice』Vol.28 《総力特集》〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉

原発を凝視すると、その開発から立地自治体探し、虚飾だらけの「安全神話」構築、そして大事故から、被害隠蔽、棄民政策と、徹頭徹尾〈当たり前の理論〉を政治力や、歪曲された科学が平然と踏み倒してきた歴史が伴走していることに気が付かれるだろう。

南北に細長い島国で、原発4基爆発事故を起こし〈当たり前の理論〉が通用していれば、とうに原発は廃炉に導かれているはずである。が、あろうことか、「原発は運転開始から40年を超えても、さらに運転を続けてよろしい」と真顔で自称科学者、専門家と原子力規制委員会や経産省は「さらなる事故」の召致ともいうべき、あまりにも危険すぎる〈当たり前の理論〉と正反対の基準を認め、電力会社もそちらに向かって突っ走る。

ここには理性も理論も科学もない。わたしたちは原発に凝縮されるこの「究極の理不尽」との闘いを、避けて通ることはできないのである。「究極の理不尽」は希釈の程度こそ違え、もう一つわかりやすい具象を日々われわれに突きつけているではないか。

◆「反原発」と「反五輪」

誰もが呆れるほどに馬鹿げている「東京五輪」である。わたしは「反原発」と「反五輪」はコロナ禍があろうとなかろうと、通底する問題であると考える。それについての総論、各論はこれまで本誌であまたの寄稿者の皆さんが論じてこられた。とりわけ本間龍さんは、大手広告代理店に勤務された経験からの視点で「五輪」と「原発」の相似因子について、詳細に解説を重ねて下さってきた。

絶対的非論理に対しては、遠回りのようであっても〈当たり前の理論〉が最終的には有効であるはずだと、わたしたちは確信する。そのことは、政治や詭弁が人間には通用しても、自然科学の本質にはなんの力ももたないという、例を引き合いに出せば充分お分かりいただけるだろう。

どこまで行っても、新しい屁理屈の創出に熱心な原発推進派には、〈当たり前の理論〉で対峙することが大切なのだ。そのことをわたしたちは多角的な視点と、多様な個性から照らし出したいのであり、当然その中心には福島第一原発事故による、被害者(被災者)の皆さんが、中心に鎮座し、しかしながら過去の被爆者や原発に関わる反対運動にかかわるみなさんとで、同列に位置していただく。

絶対に避けたいことであり、本誌はそのためにも存在する、ともいえようが、たとえば大地震が原発を襲えば(その原発が仮に「停止中」であっても)、次なる福島がやってこない保証はどこにもない。膨大な危険性と危機のなかに、日常があるのだということを『NO NUKES voice』28号は引き続き訴え続ける。本誌創刊からまもなく7年を迎える。収支としてはいまだに赤字続きで、発行元鹿砦社もコロナの影響で売り上げが悪化していると聞く。

原発を巡る状況に部分的には好ましい変化があっても、楽観できる雲行きではない。そんな状況だからこそ〈当たり前の理論〉で〈脱原発社会〉を論じる意味は、過去に比して小さくはないはずだとわたしたちは考える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.28
紙の爆弾2021年7月号増刊 2021年6月11日発行

[グラビア]「樋口理論」で闘う最強布陣の「宗教者核燃裁判」に注目を!
コロナ禍の反原発闘争

総力特集 〈当たり前の理論〉で実現させる〈原発なき社会〉

[対談]神田香織さん(講談師)×高橋哲哉さん(哲学者)
福島と原発 「犠牲のシステム」を終わらせる

[報告]宗教者核燃裁判原告団
「樋口理論」で闘う宗教者核燃裁判
中嶌哲演さん(原告団共同代表/福井県小浜市・明通寺住職)
井戸謙一さん(弁護士/弁護団団長)
片岡輝美さん(原告/日本基督教団若松栄町教会会員)
河合弘之さん(弁護士/弁護団団長)
樋口英明さん(元裁判官/元福井地裁裁判長)
大河内秀人さん(原告団 東京事務所/浄土宗見樹院住職)

[インタビュー]もず唱平さん(作詞家)
地球と世界はまったくちがう

[報告]おしどりマコさん(漫才師/記者)
タンクの敷地って本当にないの? 矛盾山積の「処理水」問題

[報告]牧野淳一郎さん(神戸大学大学院教授)
早野龍五東大名誉教授の「科学的」が孕む欺瞞と隠蔽

[報告]植松青児さん(「東電前アクション」「原発どうする!たまウォーク」メンバー)
反原連の運動を乗り越えるために〈前編〉

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
内堀雅雄福島県知事はなぜ、県民を裏切りつづけるのか

[報告]森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)
「処理水」「風評」「自主避難」〈言い換え話法〉──言論を手放さない

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈12〉
避難者の多様性を確認する(その2)

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈21〉
翼賛プロパガンダの完成型としての東京五輪

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
文明の転換点として捉える、五輪、原発、コロナ

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
暴走する原子力行政

[報告]平宮康広さん(元技術者)
放射性廃棄物問題の考察〈前編〉

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
新・悪書追放シリーズ 第二弾
ケント・ギルバート著『日米開戦「最後」の真実』

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
五輪とコロナと汚染水の嘘

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈12〉
免田栄さんの死に際して思う日本司法の罪(上)

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
コロナ下でも自粛・萎縮せず-原発NO! 北海道から九州まで全国各地の闘い・方向
《北海道》瀬尾英幸さん(泊原発現地在住)
《東北電力》須田 剛さん(みやぎ脱原発・風の会)
《福島》宗形修一さん(シネマブロス)
《茨城》披田信一郎さん(東海第二原発の再稼働を止める会・差止め訴訟原告世話人)
《東京電力》小山芳樹さん(たんぽぽ舎ボランティア)、柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表)
《関西電力》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《四国電力》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》杉原 洋さん(ストップ川内原発 ! 3・11鹿児島実行委員会事務局長)
《トリチウム》柳田 真さん(たんぽぽ舎共同代表/再稼働阻止全国ネットワーク)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク、経産省前テントひろば)
《反原発自治体》けしば誠一さん(杉並区議/反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)

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◆小池氏の動向に焦点

2本の記事が、端無くも「小池劇場」ということになった。

7・4東京都議選を見据えて、五輪中止を最大限利用するのではないか。横田一の「小池百合子の専制政治」および、衆院選がらみで政局を照らし出した山田厚俊の「ワクチン・東京五輪と衆院選の行方」である。

 

衝撃満載!タブーなき月刊『紙の爆弾』7月号

さて、五輪中止という公約が本当に都議選挙の公約となるのか。横田によれば立憲民主の蓮舫代表代行が「十分あると思っている」、共産党も「五輪中止」を選挙公約のトップに掲げるという。ネット上の中止署名も白熱していることから、都議選がオリンピックの成否をめぐり、大きなハードルになる可能性は高い。

だが、7月4日投票であれば、もう五輪の準備はととのっているはずだ。この苛烈な政治過程・政局を小池百合子が「独裁者」として、どのように突っ走るのか。個人的には彼女の凱歌を聴いてみたいような気がする。

衆院選はどうだろう。山田の分析では「このコロナ禍に首相交代論など出せるわけもない」というものだ。そうしてくると、ますます小池総理という芽も出てくるのかもしれない。

都議選に関連して、「NEWS レスQ」の「東京都議選、創価学会・公明党が乱発する謎のサイン」が注目だ。学会系の出版物に、学会員しかわからないキーワードが発せられているというのだ。同党が全員当選を果たせるのか、今後の連立政権のゆくえを占うものになるだろう。

◆古代オリンピックの興廃

佐藤雅彦の「偽史倭人伝──アスリート・サクリファースト」がおもしろい! 記事の意図するところは「東京五臨終大会」で、競技選手が「いけにえ」になる戯画的な指摘だが、ラテン語の語源からそうであったとは、目からウロコである。

そしてこの記事でわかるのは、古代オリンピックが「自由市民の男性に限定された」「市民平等の証しだった」という点だ。未婚女性は父親と同伴のうえ、全裸になった男たちを「観戦」したというのだ。この記事は「前編」なので、次号にも期待したい。東京オリンピックの強行開催には反対だが、天皇制とともにオリンピックは悪魔的な魅力がある。

◆告発する記事たち

森友事件の刑事裁判の解説記事は、丸山輝久弁護士へのインタビュー(青木泰)だ。なんと、検察による録音データの証拠改ざん・恣意的な編集が行なわれているというのだ。籠池諄子の「ぼったくって」という発言を、前後の脈絡を省いて補助金の不正請求と結びつけているのだ(犯行動機の立証か?)。今後も、裁判の詳報を期待したい。

地味な記事だが、編集部による「行政は見て見ぬふり“介護崩壊”の実態」は貴重な告発である。今年の一月に、末期がんの78歳の夫の介護に疲れた72歳の妻が、夫を殺害した同じスカーフで首吊り自殺をした、悲惨な結末から、老々介護と福祉行政の酷薄をレポートしている。福祉制度の欠陥は、入管による「違法」滞在者への扱いとともに、われわれの社会が向き合わなければならない課題である。

沖縄の世界遺産登録地に、米軍の「危険地帯」が存在する。小林蓮実女史のレポートである。DDTやBHC、PCBなど、どうやら米軍が不要なものを廃棄したのではないかと推察される。そればかりではない。実弾が放置されているというのだ。米軍のYナンバーのクルマ(私有車)が頻繁に見られることから、組織的というよりも無秩序な放棄も考えられる。

コロナ禍関連では、はじめすぐるの「グローバルダイニング訴訟が問う 日本のコロナ政策の本質」が、時短命令の狡猾さを告発する。ここでも小池知事の強権が落とす影は大きい。

コロナ禍については、武漢感染研ウイルス兵器説(アメリカの研究者由来)がそろそろ誌面を賑わせてもいいのではないか。論陣を張る材料は出てきたと思われるので期待したい。

村田らむの「キラメキ☆東京放浪記」SOLMAN剃る男、がテーマを凝縮しておもしろい。クリアランスなこの時代、男の悩みは脱毛なのである。(文中敬称略)

部落差別テーマの検証記事は、稿を改めたい。わたしへの批判的な内容もあり、その誤読を指摘しているうちに、かなり長くなりました。乞うご期待。(つづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』7月号

◆今からでも、中止は可能だが

時節がら、東京オリンピックの可否をめぐる記事が誌面をうめている。本欄でも何度か扱ってきたが、IOCの経済的事情(4年に1度の収益)で、中止は出来ないという前提がいかにも重苦しい。

 

衝撃満載!タブーなき月刊『紙の爆弾』6月号

この「前提」を突き破る論考が、広岡裕児の「東京五輪はやめられる──IOCの意向も補償金も解決可能」である。目先のカネに目がくらんでいるIOCの意向に関係なく、日本側から中止を切り出せるというのだ。

その論拠は、NBCとの契約金は14年契約の1兆3,000億円だから、東京大会中止の損失補償は3,000億円ぐらいのはずだ、と広岡はいう。ただしニュースソースは「週刊文春」の記述で「政治部デスク」の発言である。

NBCと同じく、全米3大ネットワークのCBSとABCは、どういう契約なのだろうか。このあたりは、きちんと取材を重ねたうえで、秋以降の臨時国会の論戦に生かせる内容に煮詰めておく必要があるだろう。おそらく失敗(無観客でシラケる大会)におわる東京五輪の、政治的責任を問うことが今後の課題ではないか。

それにしても、国民は8割が中止ないしは延期という東京オリパラである。「五輪パンデミック」を予測するのは、青木泰の「世界にコロナを拡散する『五輪パンデミック』 今すぐ五輪を中止し、命を守る戦略を!」である。

ふじみの救急病院の鹿野晃院長のインタビュー。戦略的な検査体制の必要、は必読である。

オリンピック開催の陰で、ある国の存在がひそかな注目を浴びている。永世中立国スイスである。じつにスイスにこそ、オリンピック利権の裏舞台があるというのだ(「権力者たちのバトルロワイヤル」第24回 永世中立国スイスの支配者、西本頑司)。

米中対立が顕在化するなかで、WHOやWTO、ILOなどの国連中枢機関、およびIOC(本部はローザンヌ)など、国際機関はスイスに本部を置いている。その実効支配者は誰なのか? 国際金融資本のロスチャイルドの番頭ともいえるソロス家の財団、スイス銀行の支配者シェルバーン一族、スイスの影の支配者タクシス家の主家はハプスブルグ家(旧ヨーロッパ王朝)だという。これらが世界経済フォーラムのダボス会議を牛耳り、世界支配を「グレートリセット」として組みなおす可能性が高いとされる。けっして表には出ない世界支配の構造は、国際機関というかたちで、われわれの生活を支配しているのだ。その一端がIOC、東京オリンピックということになるのだろうか。

◆オリンピック精神の復活はどこに?

東京オリンピック反対の論考は、それとしてマスメディアが報道しない空白を埋めるものだが、スポーツ文化論やスポーツ社会学などの視点が必要ではないか。

もともとクーベルタンの「参加することに意義がある」の含意は、国別対抗になったオリンピックの勝利至上主義を批判したもので、近代オリンピックの本来の姿からかけ離れた、ナショナリズムのオリンピアリズムを問題にしたものなのである。その意味では、クーベルタンの理想を顧みずに、商業主義と国家主義に堕した現在のオリンピックをどう批判するか。

単なる反対ではなく;スポーツ礼賛の立場からこそ、オリンピック批判がなされるべきであろう。オリンピックそのものが悪であるかのような論調に陥るとしたら、やはり左翼は反対しか唱えない教条主義だと忌避され、国民的な議論を喚起できないことになる。少なくとも、おもしろい議論にしなければ、中間派の人々に読まれない。

「神社本庁と警察の不適切な関係」(三川和成)は、神社本庁の職員宿舎の不正売買事件の裁判結果をうけて、公安警察との関係を暴露している。この訴訟が提訴される前、原告側の最初の相談が、公安警察を通じて被告側に伝わっていたというのだ。このことによって、原告は解雇されたのだ。

そこにあるのは、公益通報者保護法という、警察の天下り構造である。ようするに警察に不正の事実を相談すれば、その情報が不正の当事者に密告されるのだ。愕くべき構造があったものだが、警察権力・情報が利権化されているのだからどうにもならない。こんな不正構造は余すところなく暴くべきであろう。

政局ものでは「自民党で聞こえる『安倍晋三待望論』菅総裁では選挙に勝てない」(山田厚俊)が時宜をえた記事である。オリンピック開催問題での政局がすでにその影をチラつかせ、二階俊博幹事長の「これはもうスパッとやめなきゃいけない」発言も、じつはコロナ・オリンピック責任問題が政治過程に関わって来るからにほかならない。秋口にはボロボロになっているはずの菅政権では、総選挙を戦えない。いや、それ以前に菅が選挙の顔では戦えない。自民党の危機を救えるのは、安倍晋三前総理となるのか?

◆士農工商をめぐって

連載検証の「『士農工商ルポライター稼業』は『差別を助長する』のか?」(第8回)は、士農工商をめぐる議論である。筆者(横山)が本通信で「紙爆」前号の紹介でふれた内容への反批判となっている。

端的に言えば、士農工商が江戸時代の公文書にないことから、その存在を否定するあまり、江戸期において身分差別がなかったかのように表象されることへの批判であろう。

この点については鹿砦社編集部の言うとおり、江戸時代の身分が中世のそれよりもはるかに固定的であり、その意味では厳然たる身分社会であったことは言うまでもない。身分は血縁ではなく職業に由来するものだったが、家職を変えることは難しかった。

ちなみに、江戸時代の身分の変更は、女性に対する身分刑としての「奴(やっこ)」があり、男性の犯罪者が非人身分に落とされた例も多かった(非人手下=ひにんてか)。

いっぽうで、農民や商人から武士になるケースも少なくなかった。有名なところでは藤田東湖の父幽谷、勝海舟の父小吉、近藤勇や渋沢栄一などで、この場合はカネを積んで養子に入るとか、武勇や聡明さを見込まれてのものだ。

公文書によらない史実を重視するべきという鹿砦社編集部の指摘も、昨今の政府答弁や公文書の改ざんを例にすれば的を得たものだ。

それにしても「士農工商」という言葉が、近代部落史に果たしてきたものは大きかった。この文言による差別の再生産を看過すべきでないことから、部落解放同盟においても、史実検証の知見として重視せざるを得ないのであろう。

士分以外の「身分外の身分」(位階・官職・職分など)については稿を改めたいが、身分社会であるがゆえに差別はことさら顕在化しないまま、穢多・非人が人間以下の人間として扱われていたのは史実である。

たとえば一般民と穢多身分の者が喧嘩した場合には、公儀に訴え出ても相手にされなかった例が記録に残されている(『えた非人──社会外の社会』柳瀬勁介著・塩見鮮一郎訳。初出は明治34年)。

「解放令」にたいする反解放令一揆も、江戸時代の身分差別が普通のこととしてあったがゆえに、解放令に反対する一般民が部落民を虐殺する事態にまで至ったのである。

さらに言えば、差別が顕在化するのは近代的な人権思想、人間としての平等思想が成立したが故である。これまでの差別がおかしいと気づくのは、じつに近代人の発想なのである。封建遺制としての身分差別が再生産されるのも、近代思想の一面、すなわち差別を好む資本制の景気循環と階級社会によるものなのだ。そして日本人は残念ながら、差別の好きな国民なのである。

以上、この場を借りて批判への答えにしておきたい。

次号では、昼間たかしが拠って立つ、竹中労の見解について検証するという。その批評精神は、どこまで現代のルポライターに受け継がれているのか。さらに議論が深まることを期待したい。(文中敬称略)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

最新刊!タブーなき月刊『紙の爆弾』6月号

布川事件の冤罪被害者の桜井昌司さん(74)のエッセイ&詩集「俺の上には空がある 広い空が」の出版を記念した会が、4月11日大阪市内で開催された。無実の罪で29年服役し、無罪を勝ち取るまでに43年7ケ月かかった桜井さんは、現在国と癌の二つと闘っている。

国を相手取った国賠訴訟は、1審が勝訴、6月25日控訴審判決が下される。2019年秋に余命1年と宣告された癌にも、食事療法で打ち勝ちつつある。会は桜井さんの歌とお話で構成されたが、今回は、ゲストでお招きした「夜明けのさっちゃんズ」のお話と桜井さんのお話の後半を紹介する。(取材・構成=尾崎美代子)

◆僕の妹が死んでから (「夜明けのさっちゃんズ」矢島敏さん)

僕たち「夜明けのさっちゃんズ」は、僕の妹の矢島祥子が死んでから10年間、毎月釜ヶ崎でやるライブで「釜ヶ崎人情」を歌い続けてきました。

たまたま祥子のことを取り上げたNHKの番組を、「釜ヶ崎人情」を作られた作詞家のもず唱平先生が見てくださり、僕たちのライブにきてくれました。そして祥子の歌をつくると約束してくださり、実現したのが今から歌う「さっちゃんの聴診器」です。

もず先生が詩を書いてくださり、それに僕が曲をつけました。今日はもず先生のお弟子さんの高橋曄子さんと一緒に歌います。**〈演奏歌唱タイム〉**

写真左から西川まさひささん、高橋樺子さん、swing masaさん、矢島敏さん。「夜明けのさっちゃんズ」は2009年の矢島祥子殺人事件を受けて、事件の真相究明活動で遺族が釜ヶ崎に通う中、ミュージシャンである長兄の敏さんが同地のミュージシャンと組んだバンド。敏さんは神奈川県茅ヶ崎市で三線工房をしている琉球民謡登川長師範

◆理不尽に殺害された痛みと冤罪の痛み(桜井昌司さん)

 

桜井昌司さん

理不尽に殺害された祥子さんの痛みと、冤罪の痛みは変わりませんよね。真面目に一生懸命生きてきた祥子さんが殺害されるなんて許されていいと思いません。残念ながら日本はそういう国だと思いました。

雨合羽とイソジンがいる大阪は大変ですね(笑)。あんないい加減な奴らがやっている政治はだめですよ(拍手)。ああいう人たちをもてはやして、世の中が変わると思っている人たちは駄目です。イソジンや雨合羽が悪いわけではなく、ああいう人を選ぶ人が悪い。

日本人は自覚しない。菅総理が何故4割も支持率とれるか理解できません。彼はまともな日本語しゃべれないじゃないですか。安倍さんはまだ嘘が上手だった。彼の親父の安倍慎太郎が晋三を「こいつほど言い訳のうまい男はいない」と言ったそうです。そのとおりで、嘘がペラペラでてくる。

ああいう人を良しとした日本という国は、やっぱりそういう国家なのだと思います。残念ながら、体裁だけ整えばいい国家。私は74歳になりますが、刑務所に29年いたから、今の社会に責任はありません(笑)。当時娑婆にいた方、責任とってください(笑)。一人一人が正しいことを正しい、正義を正義という社会にしようと思いませんか? 今日は、私が刑務所で書いた詩をライブで初めて朗読します。

「目くばせから」「カラスの鳴く朝に」「一度だけでも」「手」「25年目のラブレター」「同居者に」「空」

◆人様の善意と触れ合えたことが人間としてどんなに嬉しいか(桜井昌司さん)

父ちゃんやお袋のことを話すといつも涙がでてきます。「死んだお墓に布団はかけれない」と言いますが、今、うちの恵子さんの親の足が動かなくなって、実家に帰っていて私は自炊していますが、自炊するのも結構楽しい。どんなことがあっても、人生は楽しいと思っています。癌の食事療法も彼女がいたからできた。そのおかげで癌が治ったと思っています。本当に人様に守られ、生き永らえたので、少し世の中のためになるよう頑張ろうと思っています。

冤罪は本当に辛い。私のように明るく楽しく生きられる冤罪被害者はなかなかいない。20歳に逮捕して頂いたお陰で、54年たってもまだまだ元気ですよ。

私、詩人だったでしょう。刑務所のなかでちゃんと詩が書けた。なぜか? あの苦しみのなかで、日本国民救援会の皆さんから「頑張ってね」と言われた。人様の善意と触れ合えたからです。それが人間としてどんなに嬉しいか。あの善意の人たちと一緒に生きて、飾り気なく生きられる人生が、どんなにさわやかかと目覚めた。飾りのある人生はつまらないじゃないですか? 「あなた素晴らしい人ですね」と言われて、陰で何しているかわからなかったら、こんなに疚しいことはない。だから自分はあの29年があったことで、すべて浄化された気がする。

私はそれまでろくでもない男だった。嘘も上手かった。安倍や橋下徹なんかたいしたことないくらい(笑)。橋下の口はたいしたことない。吉村もアホ。だいたい高利貸しの代弁するような橋下や吉村は駄目ですよ。なんのために弁護士になったのか?弱い者を助けるためじゃないのと思いますよ。そういう弁護士が少なすぎる。
私は自分が馬鹿だからはっきりいうが、頭のいい奴もたいしたことはない。自分で馬鹿と言うほうが本当に楽です。
 
次は娑婆に帰って作った歌です。自分の幸せを救援会の人たちに作っていただいた喜びをどう伝えようかと思い、「今あなたに」という歌にしました。皆さんにお送りする歌です、聞いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

◆お金は大事ですよ。でもお金が生きる目的ではないはずです(桜井昌司さん)

4月13日菅さんが、福島第一原発から出た汚染水を海に流すと決めるそうです。トリチウムを海の水で薄めて流すから大丈夫だという。薄めて流す? そのまま流しても薄まるじゃないですか? 汚染水はきれいじゃない。トリチウムは消えない。なぜ嘘をいうのか? 地球は我々だけのものじゃない。我々には、人類が生まれてからずっと命の歴史を未来につなぐ義務があるじゃないですか。そのために政治しなくてはいけないのに、今がよければ、今、金儲けできればよいという。何なんだ! 怒りが湧きます。そういう人たちが多すぎる。恥ずかしいと思いませんか! 

お金は大事ですよ。でもお金が生きる目的ではないはずです。我々が税金を納めるのはその税金で個人ではできないことをして欲しいから。こんなコロナの時こそ、税金を使って、全員に検査して、感染者見分けて、大丈夫な人は働けばいいでしょう。それをやらずに1年以上ぐずぐずと自粛ばかり続けている。大阪は、緊急事態宣言解除してたった1週間でまた「まんぼう」だという。なにやってるの? 我々、怒らなくてはなりません。私は怒ると癌になるので怒りません(笑)。みなさん、怒ってください。吉村どうにかしてください。声を広げて!

警察が悪いと知れば、社会の皆さん、悪いことは止めろと声をあげますよね。警察は真面目と思っているから、我々は信頼しているのであってね、やはり正義の声をあげて社会を変えましょう! 変えられますからね。**〈演奏歌唱タイム〉**

◆29年刑務所に入れて頂いたお陰で、自分は嘘を言わないようになった(桜井昌司さん)

 

桜井昌司さんの新刊『俺の上には空がある 広い空が』(マガジンハウス)

人はなぜ死ぬんでしょうか? 小学校4年の夏休みに「少年ジェット」という番組を見ていたら、悪人の怪傑デビルが人を殺した。そのとき、いつか死ぬと知って死ぬのが怖いと感じました。

「桜井、お前な、ここでやっていないというと死刑になるぞ。死刑になってから違うといっても遅いんだぞ。今のうちに観念して言え。助かれ」と刑事に言われましたね。そして私は死刑が怖くて「やった」と嘘を言ってしまいました。でも、一昨年癌と言われたときは全然怖くなかった。こんなに幸せに生きたんだから、死んでもいいと思った。今死ぬことが怖い人は、まだやることがあるからです。

昨日、ホテルに入って夜テレビをみました。先日亡くなった柔道の古賀さんが、膝をけがして金メダル取ったときのことをやっていた。「判定のとき負けてもおかしくないのに、なぜ勝てたか?」と聞かれ、古賀さんは「相手は私に勝つ気がない技を仕掛けてると判った。私は勝ち負けでなく、ひざが悪いので、柔道らしい柔道をしようと必死に迫めた。その気持ちが審判に伝わって勝ったのだろう」と、彼はいいました。

それを聞いた時、もしかすると私が人様に恵まれたのは、自分の一生懸命さが人様に伝わったのかもしれないと思いましたね。29年刑務所に入れて頂いたお陰で、自分は嘘を言わないようになった。何も隠さないで済むようになった。嘘はやめよう、一生懸命生きようという思いをもってきた。もしかしてそれが人様に伝わったのかもしれない。

死ぬのが怖い人、今日を一生懸命生きてください。目の前のことに一生懸命にやってください。きっといいことがある。私は74歳、まだ夢はあります。本の最後でそれを書いてます。私はまだ才能が自分の中に眠っていると思っている。

もし、刑務所と同じような苦しみや困難が起こったら、自分の中に埋もれている何かが花開くかもしれない、本当に思っています。夢は「紅白歌合戦」と「徹子の部屋」(笑)。

では最後に「私の人生」を歌います。たった一曲だけ、私の作曲ではなく、大滝賢一郎さんという方が、テレビ東京の番組の中で作曲してくれました。聞いてください。**〈演奏歌唱タイム〉** (了)

◎[参考動画]桜井昌司さん、出版記念パーティーの一コマ
(竹内たつおさん撮影。竹内さんの4月11日フェイスブックより)
https://www.facebook.com/100025186875552/videos/888223768693844/

◎尾崎美代子「俺の上には空がある 広い空が」 布川事件冤罪被害者の桜井昌司さん出版記念会報告
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=38753
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=38827

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

布川事件の冤罪被害者の桜井昌司さん(74)のエッセイ&詩集「俺の上には空がある 広い空が」の出版を記念した会が、4月11日大阪市内で開催された。

 

桜井昌司さんの新刊『俺の上には空がある 広い空が』(マガジンハウス)

無実の罪で29年服役し、無罪を勝ち取るまでに43年7ケ月かかった桜井さんは、現在国と癌の二つと闘っている。国を相手取った国賠訴訟は、1審が勝訴、6月25日控訴審判決が下される。2019年秋に余命1年と宣告された癌にも、食事療法で打ち勝ちつつある。会は桜井さんの歌とお話で構成されたが、お話の部分を前半と後半に分けて紹介する。(取材・構成=尾崎美代子)

◆癌の宣告を受けた時、ほとんど動揺しなかった

皆さん、こんにちは! 先日、「冤罪犠牲者の会」で初めて屋形船に乗ったんですよ。屋形船ってコロナ騒動があったので、みんな敬遠していましたが30人で乗りました。料理は目の前で作ってくれるし、川の上なので風が吹いて換気もいい。私は、2019年に癌になって飲まないようにしていたが、当日は結構飲んで久々に記憶がなくなりました。ずっと酒をセーブしてきて、顔色も良くなり、癌もほとんど消えたようです。これからがまだ大変ですが。

私は、癌の宣告を受けた時、ほとんど動揺しなかった。「あっきたな。どうしよう」と思っただけです。最初に食事療法を紹介してくれたのは、SwingMasaさんで、その時は「食事で治るはずない」と聞き逃していましたが、その後ほどなく別の方からも紹介され、食事療法の店にいったら、富田林のMasaさんの店の隣でびっくりでした。あれ以来おかげさまで治ってきました。

 

桜井昌司さん

ただし肉、魚、小麦粉、化学調味料、砂糖などずっと食べないでやっていくのはどれだけ大変か。やはり意志力が問われます。自分にそれができたのは人様の支えだと思う。本当にこれまで人様に支えられてきたのだと、改めて思いました。子供の頃から私は人に恵まれてきた。自分は、口は悪しい大した人間じゃないのに、何故こんなに人様に恵まれるのか、不思議でしょうがないです。

刑務所にいるとき、娑婆に帰りたいと思いましたが、そう思うと、自分がその思いに負けてしまうと思い、その気持ちを捨てました。刑務所にいる限り、その中で満足する日を送ってやろうと心から思っていました。その千葉刑務所で、帰りたいという思いを歌にした「帰ろ、帰ろ」を聴いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

◆娑婆に帰ってから作った歌

刑務所から帰ったとき両親はもういなくて、一番悲しかったのは、家に帰ったとき、いとこが「昌司、これがあんたの家の柿の実だよ」と柿の実を1つとっておいてくれて、その時ぼろぼろ泣きましたね。親のいない家に帰ったときの空しいような切ないような気持ちを思い出しましたね。

次の曲は娑婆に帰ってから作った歌「春風の乙女」です。帰ったとき、親戚の小学校の娘らが、毎日競うように我が家に来て学校のことを話してくれたり、毎日5キロくらい走るのに着いてきてくれた。その子たちをイメージしてつくりました。 **〈演奏歌唱タイム〉**

◆数えきれない位いる私の恩人

私の恩人は数えきれない位います。一人は、1審で無期懲役判決が出た後、拘置所に面会にきた柴田五郎さんという弁護士さんです。「何やったか言ってみろ」というので「窃盗しました」というと、チェッと舌打ちする。「なぜ自白した」というので、これこれと説明するとまたチェッと舌打ちする。最後に「この事件は裁判で勝てないから、社会に訴えろ」という。

弁護士が裁判で勝てないとは、なかなか言わないでしょう? 変わってる弁護士だなと思いましたね。その後、国民救援会を教えていただき、手紙を書きました。もちろん返事はすぐには来ない。するとまた柴田弁護士が面会にきて「手紙だしたか?」ときく。「出しました」「返事は?」「まだです」「また手紙書け」と言って帰る。

柴田弁護士の言うとおり、裁判では勝てませんでした。11年裁判やって無期懲役が確定して千葉刑務所に送られ、それから44年かかって勝ったので、柴田先生の言う通りだった。冤罪に関わる弁護士は沢山いますが、刑事裁判で負けてから、自分でイニシアティブを取って再審をやろうという弁護士はなかなかいない。でも柴田先生は違った。「おれは桜井と杉山と同じで無期懲役を受けた。再審をやる」と言って下さった。あの先生がいたから、今の自分があると思います。

柴田先生はもうお亡くなりになったが、古い弁護士も新しい弁護士もみんな同じ、先生と呼ぶのはやめようとなり、思想信条関係なく「布川事件をやろう」と声をかけてくれ、広い心でやってくれた。あの先生と出会えなかったら、救援会とも出会えなかったし、高橋勝子さんとも出会えなかった。このかっちんという女性がまたいい人で、彼女の5月の誕生日に「五月の空に」という曲をプレゼントしました。聞いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

じつはかっちんも癌で、東京で開催される出版記念パーティーにも来られないというので、ちょっと胸がつまってしまいました。プロじゃないですね。今日は皆さんにお金を出して参加して貰っているのにね。踏んだり蹴ったり殴ったり(笑)。すみません。許してください。

自分は演歌が好きで、刑務所でも良く口ずさんでいました。社会に帰ってきたとき、ヤクザになっていた友達が「昌司、ヤクザなんてしょせん金だ。汚い世界だ。辞めたいがなかなか辞めれない。お前が羨ましい」と言っていました。

最後は堅気になって、自宅で焚火をして火が飛んで火傷して入院したら癌が見つかり、3ケ月で亡くなった。彼とカラオケにいくといつも「昌司、歌ってくれ」という曲。ああ、涙出てきた。いい奴でした。では「若いふたり」。聞いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

◆拘置所に入っている11年間は歌えなかった

彼が死んで11年。本当に骨と皮になって死んでしまいました。阿修羅って知ってます? 髪がもじゃもじゃで、今にも日本刀持って飛び出しそうな顔で、彼はそんな顔で死んでました。私は「寝ろ、寝ろ」と言ってしまいました。死に顔って凄いですよ。笑って死んでいる人も2人見ましたが、やっぱり生きたように死んでいくのではないかと思いました。多分、私は笑って「幸せだったな」と死んでると思います。死んだらぜひ会いにきてください(笑)。

次は北島三郎さんの「川」。私は歌に自信があったんですね。ところが拘置所に入っている11年間は歌えなかったので、声が出なくなった。千葉刑務所に移ってのど自慢大会に出たが、全然だめで鐘が2つしか鳴らなかった。おかしい、おかしいと思っていて、もうすぐ娑婆に出るというとき、この「川」を歌ったら突然すっと声がでた。「あれ、出るんじゃん」と思い、そのあとののど自慢大会では風邪ひいて、準優勝でしたが、そのときの思い出の歌です。聞いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

◆社会に戻って24年、なんて社会って楽しいのか

皆さん、刑務所ではお酒飲めないのは知っていますよね。私は20歳のとき逮捕されたので、そんなに飲みたいとは思いませんでした。それまでも酒飲んで酔って騒ぐだけで、美味しいとか思いませんでしたから。娑婆に戻ってビールで乾杯しましたが、苦くて不味いと思いましたが、1ケ月たたないうちに、あっというまに「美味しい」と思えてきた(笑)。

11月14日に帰ってきて、12月4日から働き始めた。楽しかった。刑務所では走ったら怒られるが、娑婆で土方やったら、重いものを持ったら仲間が喜ぶし、身体も鍛えられる。汗かいて気持ちいいしビールが美味しいし、金も貰える。天国だと思った。なんて社会って楽しいのかと。社会に戻って24年になりますが、楽しいことばかり。悲しいことってあったかな? 去年ちょっとありましたが、それ以外全て楽しいことばかり。こんなんでいいのでしょうか? やはり29年間刑務所で不自由を味わい、いつも自由をみつめてきたから、自分が自由で何でも出来るということが本当に幸せです。

多分みなさんは刑務所の不自由を知らないから、自由は当たり前になっている。でもその自由の尊さをいつも有難いと思って生きられるのは、こんなに嬉しいことはない。だから29年、刑務所に入れて頂いたことに心から感謝しています。嘘ではありません。本にも書きましたが、私は真犯人なんか何も興味はない。人間というのは、自分のやったことを決着できるから生きられる。決着できないで、自分の中にずっと持ち続け生活していくということは、辛いことだと思う。

自分自身も決着できないことが2、3個あります。清算しようと思っても出来ない。でもその苦しさは本人しかわからない。真犯人が人を殺した事実は消えようもない。自分は昔泥棒しました。この事実は消えない。もしその泥棒で誰かの人生が変わったら、取り返しがつかない。犯罪とはそういうことだと思ったら、真犯人が逮捕されず刑務所に行かなかったら、「あんた気の毒だね」と考えてしまう。決着つけたら、また違う人生があったかもしれない。何、話してたんだっけ? 酒の話ですね。1週間前、金(聖雄)監督らと飲んで楽しかったなあ。(金監督、桜井さんにビールを届ける)。「酒よ」を歌う前に少し飲みます。では聞いてください。 **〈演奏歌唱タイム〉**

先月初めて腸に再生を示す数値がでてきました。再生が始まった。皆さんはトイレが普通でしょうが、私の場合は普通でなかったが、この頃普通に出るようになった。出血もほとんどなくなった。もし自分が治ったら「癌は治りますよ」と言って、教祖様になってしまいますね(笑)。最初は本当に死を覚悟して、こんなに幸せだったからもう死んでもいいやと思ったが、本当に皆さんに感謝しかありません。これからもう少し頑張りますという気持ちで、刑務所にいるとき作った演歌「屋台酒」を歌います。(つづく)


◎[参考動画]MICSUNLIFEが恩師に捧げる/ありがとう。(桜井昌司Ver.) 男性3人で構成する音楽ユニット「Mic Sun Life」のリーダーSUN-DYUさんこと土井佑輔さんも、泉大津コンビニ強盗事件の冤罪被害者で、無罪を勝ち取ったのち、仲間と冤罪撲滅ライブなどを開催している

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

4月1日から商品やサービスについて、消費税込みの価格を示す「総額表示」が義務化されたが、案の定な展開になっている。昨年秋頃、ツイッター上で「#出版物の総額表示義務化に反対します」というハッシュタグをつけるなどして騒いでいた人たちがいつのまにか、どこかに消えてしまっているのだ。

彼らは当時、「出版物が総額表示を義務化されると、消費税率変更の際にカバーの刷り直しや付け替えを余儀なくされ、少部数の本が絶版になったり、小さな出版社が潰れたりする恐れがある」などと危機感をあおっていたはずだ。しかし、いつのまにかフェイドアウトしてしまったのは、実際はそこまで心配する必要のない話だと気づいたからだろう。

一体、いつまでこういうことを繰り返すのだろう……と私は正直、げんなりせずにいられない。過去にも同じような例をたびたび目にしてきたからだ。

日本書籍出版協会と日本雑誌協会はHPで出版物の総額表示に関するガイドラインを発表した

◆思い出される「ぼったくり防止条例」や「裁判員制度」が始まる時の騒動

たとえば、思い出されるのが、2000年に東京都が全国で初めて、性風俗店や飲み屋でのぼったくり防止条例を施行した時だ。これは当時、新宿・歌舞伎町などで酷いぼったくり事件が相次ぎ、社会問題になっていたのをうけて作られた条例だった。

この条例が施行される前、メディアでは「有識者」たちが条例の不備を色々指摘し、「こんな抜け穴だらけのザル法では、悪質なぼったくり業者は取り締まれない」と読者や視聴者を不安に陥れるようなことを言っていたものだった。

だが、実際に条例が施行されると、新宿、池袋、渋谷、上野という規制対象地域の路上からは、風俗店や飲み屋の客引きが一斉に姿を消した。条例ができた効果により、ぼったくり業者が激減したわけである。私は当時、歌舞伎町のぼったくり業者にそうなった事情を取材したが、彼はこう説明してくれた。

「条例に不備があろうが、ザル法だろうが、そんなのは関係ない。ああいう条例ができたということは、お上が『これからはぼったくり業者を厳しく取り締まる』という意思表示をしたということだから。そうなれば、俺たちはこれまで通りの商売を続けるわけにはいかない。警察がその気になれば、法律なんか関係なく誰だって捕まえられるんだから」

私はこの説明を聞き、深く得心させられた。警察に理屈など通用しない。この現実を知っているぼったくり業者たちからすれば、メディアに出てくる「有識者」たちが解説する「条例の抜け穴」など机上の空論に過ぎないわけである。そして机上の空論で騒ぎ立てていた「有識者」たちは何事も無かったように消えていった。

2009年に裁判員制度が施行された時も同じようなことがあった。制度の施行が間近に迫った時、またメディアでは「有識者」たちが、「裁判員の呼び出しを拒んだら罰則があるというのでは、苦役の強制であり、徴兵制と同じだ」とまで言って、読者・視聴者の不安を煽ろうとしていた。

しかし実際に制度が始まってみると、裁判員の呼び出しを辞退する人はいくらでもいるし、それで罰せられた人がいたという話はまったく聞かない。私はこれまで様々な裁判員裁判を取材し、判決後にある裁判員たちの会見にも出席してきたが、裁判員たちは「参加して良かった」「良い経験になった」と前向きな感想を述べる例が多いのが現実だ。

そしていつしか、裁判員裁判について「徴兵制と同じだ」とまで言っていた「有識者」たちはどこかに消えてしまったのだった。

◆権力に物申す「言論」というのは結局……

そしてまた今回の「#出版物の総額表示義務化に反対します」騒動である。書店に並んだ書籍は4月1日以降もそれ以前と変わらず、新旧の価格表示が混在したたままだが、それで何か問題が起きたという話はまったく聞かない。出版社側も帯やスリップに消費税込みの価格を表示することで、今後消費税率が変わってもカバーの刷り直しや付け替えはせずに済むようにして、事足りているようである。

こうしてこの問題について不安を煽り、騒いだ人たちはどこかに消えてしまったのである。

誰もがそうだというわけではないが、権力に物申すのが好きな人たちの中には、事実関係をほとんど調べず、思い込みだけでものを言っている人が少なくない。「#出版物の総額表示義務化に反対します」と声高に叫んでいた人たちは、そのことを改めて証明した。今後も新しい制度や法律ができるたび、彼らは懲りずに同じ行動を繰り返すはずなので、しっかり観察させてもらいたい。

▼片岡 健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(著者・久保田祥史、発行元・リミアンドテッド)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』5月号

◆「『買収』が支える安倍晋三王国・山口」(横田一)と「森喜朗の偉大なる足跡」(編集部)
 
まったくもって、異常としか言いようのない事態がスクープされた。公選法を知らないのだろうか? いや、無法地帯というべきなのであろう。安倍晋三元総理の地盤、山口県下関市で起きた「事件」である。

 

タブーなき注目記事満載!月刊『紙の爆弾』5月号

「桜を見る会」への招待、および前夜祭への費用補填で、利益供与(事前買収)あいた有権者たちを前に、安倍元総理は市長候補への「投票を依頼」したのである。

本誌グラビアでは、下関市長二期目をめざす前田晋太郎とともに、シュプレヒコールの拳をあげる安倍元総理のすがたが活写されている。記事は「『買収』が支える安倍晋三王国・山口」(横田一)である。

今回の下関市長選挙は、安倍派と対立関係にある保守の林芳正派(宏池会)が分裂を回避し、連合山口までが前田候補の応援に回った。にもかかわらず、無党派ともいえる田辺よし子候補が、2万2,774票を獲得した(前田候補は5万7,291票)。田辺氏は市議選でせいぜい2,000~3,000票の地盤であるから、今回の大健闘は、ほぼ安倍批判票だといえよう。

それにしても、下関における安倍利権の凄まじさには閉口する。ここは北朝鮮ではないのかと思うほどだ。横田一ならではの、現場直撃質問も本文を読んでほしい。すくなくとも、ひきつった安倍の表情がうかがえる。

「森喜朗の偉大なる足跡」(本誌編集部)は圧巻だ。ほとんどダメ政治家でありながら、総理の座を射止めた男の軌跡。そこには「なりたくてもなれないのが総理総裁」という格言が、逆に「正統性のなさ」ゆえに政治というものの不可思議さを、われわれに教えてくれる。サメの脳みそ、ノミの心臓、でも下半身はオットセイと揶揄されても気にしない感性のなさこそが、森を政治家たらしめた核心部なのかもしれない。

◆強力な連載陣──岡本萬尋、マッド・アマノ、西本頑司

今回は連載にも注目してみたい。「ニッポン・ノワール」を上梓したばかりの岡本萬尋の連載「ニュースノワール」は、袴田事件の帰趨を解読している。いま、再審の争点になっている味噌タンクから一年後に発見された「5点の衣類」(袴田さんとはサイズが合わないうえ、血痕の色の変化)のほか、凶器のクリ小刀など、袴田さんの無罪を立証する証拠調べにはそれほど苦労しない。にもかかわらず、東京高裁が再審決定を却下するなど、裁判所の「メンツ」へのこだわりは酷すぎる。差し戻し審の三者協議の進行が待たれる。

マッド・アマノの「世界を裏から見てみよう」は、有刺鉄線の歴史だ。戦争が政治の異なる手段をもってする延長(クラウゼビッツ)だとして、兵器は総力戦の時代において、政治をも規定するものとなった。有刺鉄線はまさに、総力戦の「時代に移行した戦術、塹壕戦の立役者であろう。炸裂弾による兵士の消耗をふせぐために、第一次大戦は700キロをこえる西部戦線に塹壕を張り巡らせ、戦車が登場するまで有刺鉄線こそが戦場の立役者だった。

そしてその歴史は、アメリカの西部開拓史抜きには語れないという。開拓者たちの有刺鉄線はカウボーイたちの自由放牧と、真っ向から対立した。さらには白人の開拓史が、6500万頭のバッファローを絶滅させた。ここでも「武器」は文明のあり方を変えてきたのだ。

「権力者たちのバトルロイヤル」(西本頑司)は、退陣するアンゲラ・メルケル独首相の偉業をたどる。そして再び到来するかもしれない「ベルリンの壁の崩壊」に言及する。その意味は、ドイツの孤立である。

◆冤罪事件から部落差別問題まで

「シリーズ 日本の冤罪」は、尾崎美代子取材による「滋賀バラバラ殺人事件」である。逮捕時68歳だった杠共芳(ゆずりはともよし)さんが、13個に切断された殺人事件で懲役25年の判決を受けたものだ。

「犯行に至った動機・経緯について不明な部分が残る」という、信じられないほど杜撰な判決である。杠さんが一貫して犯行を否認したにもかかわらず、高裁では証拠調べをすべて却下した一回廷の判決だったという。そして今年の2月に最高裁は被告の上告を棄却した。

レポートでは、杠さんがむしろ被害者を親身になって面倒を見てきた立場であり、被害者の預金(銀行融資)から約70万円を引き出した(この別件逮捕が捜査の糸口となった)のも、信用貸しで被害者に貸していたカネだったという。別件で起きたバラバラ殺人事件とともに、事件の真相を明らかにするためにも、杠さんの再審がもとめられる。

「【検証】『士農工商ルポライター稼業』は『差別を助長する』のか?」(第7回)は鹿砦社編集部による、士農工商の存否(身分制か職階か)をめぐる問題だ。

「士農工商」が江戸時代には「職階」にすぎず、明治に入ってから「身分制度」としての認識が醸成された。したがって、江戸時代には身分制度がなかった、との歴史解釈には極めて大きな違和感がある、というものだ。これには少なからぬ誤認があるので指摘しておこう。

「部落史における士農工商 そんなものは江戸時代には『なかった』」(横山茂彦 2021年3月27日)でも明らかにしたとおり、「江戸時代の文書・史料には、一般的な表記として『士農工商』はあるものの、それらはおおむね職分(職業)を巡るもので、幕府および領主の行政文書にはない。したがって、行政上の身分制度としての『士農工商』は、なかったと結論付けられる。むしろ『四民平等』という『解放令』を発した明治政府において、『士農工商』が身分制度であったかのように布告された。すなわち江戸時代の身分制が、歴史として創出されたのである。」

つまり、江戸時代の「士農工商」は行政上の身分制度ではなく「職分」(職階=職業上の資格や階級ではない)であり、北大路家康が、「『士農工商』、もう教科書にその言葉はありません」と語り、図版アニメの『士農工商』図は、士とその他に変形した。江戸時代に武士階級とその他しかなかった身分制度を表現したとおり、士分(武士)と一般民の身分差は厳然とあった。身分制度は存在したのである。

すなわち、士分と一般民、そして身分外の身分として、天皇や公家、医師、非人(穢多などをふくむ)が存在し、江戸時代はまさに身分制社会だったといえる。

中世前期の自由闊達な交通社会とは異なり、百姓の大多数が定住を強制された排外的、かつ差別的な社会だったのは、疑いのない史実である。

豊臣政権と江戸幕府が「政策的に」差別構造をつくったのだとしたら、兵農分離・検地による定住政策こそが起点といえよう。中世的な流動層が定住するには、もはや劣悪な土地と職業しか残されていなかったからだ。

にもかかわらず、それをもって政策的・行政的に「士農工商」という身分制度があったとは言えない。行政文書に「士農工商」という文言が存在しないからだ。これが史料批判を第一義に置く、文献史学の原則なのである。

そして「四民平等」の「解放令」において、部落民を「新平民」とした明治政府がさらに、天皇・皇族・華族・士族・平民・新平民という新たな身分制を再生産し、かつそれが「解放令反対一揆」にみられるように、庶民の中に根強い差別意識が存在したことを歴史が教えてくれる。

つまり江戸時代においても、穢多・非人に対する差別は、為政者においてではなく庶民のなかに旺盛だったのである。この論点こそが、こんにち「士農工商」が差別の根拠としての身分制ではなく、江戸庶民の意識の中にこそ身分差別があった。そして明治以降も、差別は支配者の政策ではなく、一般民の意識の中にある、とするものなのだ。その差別意識は、われわれの中に潜んでいる。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』5月号

3.11大震災・原発事故10周年に、『NO NUKES voice』Vol.27が発行された。2014年の創刊から6年半、日本で唯一の反原発雑誌が持続していることは、そのまま反原発運動の持続力あってのことだ。そして運動の持続性に応える版元の努力も讃えられてしかるべきであろう。

 

『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

おやっ、と思ったのは、本誌表2(編集用語で表紙裏です)に東洋書店新社という出版社の広告が入っていることだ。書名は『原発「廃炉」地域ハンドブック』(尾松亮・編)である。ロシア・東欧をテーマにした版元のようで、出版物をみると版元のこだわりが感じられる。版元の親会社をみると、わたしのような編集者には「あぁ、なるほど」とわかるわけだが、何にしても出版不況のなかで、こだわりを持った版元が頑張っているのは心強いというか、かたちだけでも応援したくなる。

『紙の爆弾』の先行誌ともいうべき『噂の眞相』も暴露雑誌ゆえに、とくに編集長の岡留安則氏(故人)の周辺や、編集部行きつけの居酒屋の広告は入っても、一般企業や出版社は限定的だった。その事情は『紙の爆弾』も本誌『NO NUKES voice』も同じで、なかなか広告取りはかなわない。万単位の配本があるのに比してである。

一般に雑誌の採算が取れるのは、紙広告の衰退(ネット広告の全盛による)にもかかわらず、最低限の編集費・製作費はAD(広告)でまかなわれる。ないしは現在ではコンビニ販売を取り付けて、安価大量販売(といっても2万部前後)をはかる以外に、なかなか雑誌の販路は開けない。

そんな中で、運動関係であれ反原発書籍限定であれ、本誌を広告が支えていくのであれば、さらに持続力は増すであろう。

◆読み応えがある菅直人、孫崎享、小出裕章の論考

前置きが長くなった。本誌の中身に入ろう。

巻頭カラーは「双葉町原発PR看板標語」運動の大沼勇治さんの10年を写真で追う。そして菅直人元総理による、原発事故からの10年をふり返って、である。さすがに読みごたえがある。

とくに「原発から再生エネルギーへ」「農地を利用した営農型太陽光発電」の提言は、この10年間の省エネ発電の普及、長島彬さん考案の「ソーラーシェアリング」など、具体性があって良いと思う。

※長島さんの『日本を変える、世界を変える!「ソーラーシェアリング」のすすめ』(発行:リックテレコム)に詳しい。

オンカロを視察する菅直人元首相(写真提供=菅直人事務所)

孫崎享さん(東アジア共同体研究所所長)の「二〇二一年 日本と世界はどう変わるか」は、国民の決定権の問題、報道の自由など、民主主義の根幹にかかわる問題を提起する。アメリカの衰退のなかで、世界はどう変わっていくのか。左派のシンクタンクともいえる分析に加えて、いくつかの提案も含まれている。

たんぽぽ舎で講演する孫崎享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)

小出裕章さん(元京都大学原子炉実験助教)は「六ヶ所村再処理工場の大事故は防げるのか」として、六ヶ所村で事故が起きたとのシミュレーションである。講演録をもとにしているので、パワーポイントの図表がわかりやすい。さてその仮定の結果は、本誌をお読みいただきたい。その悲劇的な結末は、思わず人に話したくなるものだ。

大阪で講演する小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)

◆コロナ下で大衆運動はどう立ち上がるか
「さようなら原発」鎌田慧×「たんぽぽ舎」柳田真の対談

鎌田慧さんと柳田真さんの対談は、コロナ下で制約されている大衆運動について、運動の内部まで検証するものになっている。内部の弊害では、先行する運動体の前衛意識と防衛本能。運動もまた、人間の縄張りなのである。

もうひとつは、若者の参加が一時的にはシールズのようなものはあったが、やはり少ないということだろう。鎌田さんは労働運動の弱体化をその原因のひとつに挙げ、いっぽうで生協運動の大きなプラットホームの有効性を語っている。今後の課題は、やはり対面の集会、小さくてもいいから顔を合わせる活動の再開であろう。

左から鎌田慧さん(ルポライター)と柳田真さん(たんぽぽ舎共同代表)

◆哲学は原子力といかに向かい合ってきたか

板坂剛の「新・悪書追放シリーズ 第1弾」の歯牙にかかるのは、ケント・ギルバート『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』である。この本に「真実」がないことを揚げ足取り的に、完膚なきまでに論破する。一服の清涼剤である。

拙稿「哲学は原子力といかに向かい合ってきたか」は、『原子力の哲学』(戸谷洋志)と『3.11以降の科学・技術・社会』(野家啓一)を扱った。哲学書(今回は解説書)を簡単に読む方法、お伝えします。

同じく、哲学の歴史的考察から、その現代への適用をわかりやすく解読したのが、山田悦子さんの「人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か」である。この論考は前号(Vol.26)の後編である。よく勉強しているなぁ、という印象だ。

SDGs(持続可能な開発目標)も人類の欲望の亜種にすぎず、地球の尊厳を歴史の理念基盤にするべきだとの主張は、もうすこし具現化されるべきであろう。男女二項対立の図式も、やや古いリブの思想に見えてしまう。おそらく生産力主義を批判するあまり、論者の人類の将来が多様性の視点に欠ける(抽象化される)からであろう。とはいえ、その男性社会への批判的視点には正当性がある。

最後に、乱鬼龍さんの「読者文芸欄」をつくる提案は良いと思う。ただし、運動の表現としてのみ、川柳や俳句を扱ってしまうと、運動への芸術文化の従属という、古い課題に逢着するはずだ。文化活動に尊厳を持つ選者や評者があっての文化コーナーではないだろうか。この批評の冒頭にあげた、雑誌の持続力が読者参加にあるのは言うまでもない。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

『NO NUKES voice』Vol.27
紙の爆弾2021年4月号増刊

[グラビア]
3.11時の内閣総理大臣が振り返る原発震災の軌跡
原発被災地・記憶の〈風化〉に抗う

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《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道
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[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
日本の原発は全廃炉しかない
原発から再エネ・水素社会の時代へ

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
二〇二一年 日本と世界はどう変わるか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
六ケ所村再処理工場の大事故は防げるのか
   
[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
東電柏崎刈羽原発IDカード不正使用の酷すぎる実態

[対談]鎌田慧さん(ルポライター)×柳田真さん(たんぽぽ舎共同代表)
コロナ下で大衆運動はどう立ち上がるか
「さようなら原発」とたんぽぽ舎の場合

[報告]大沼勇治さん(双葉町原発PR看板標語考案者)
〈復興〉から〈風化〉へ コロナ禍で消される原発被災地の記憶
   
[報告]森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表)
「被ばくからの自由」という基本的人権の確立を求めて

[報告]島 明美さん(個人被ばく線量計データ利用の検証と市民環境を考える協議会代表)
10年前から「非常事態」が日常だった私たち

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈11〉
避難者にとっての事故発生後十年

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
原発事故被害の枠外に置かれた福島県中通りの人たち・法廷闘争の軌跡

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)
コロナ収束まで原発の停止を!
感染防止と放射能防護は両立できない

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎共同代表)
柏崎刈羽原発で何が起きているのか

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
新・悪書追放シリーズ 第1弾 
ケント・ギルバート『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
コロナ禍の世界では想像しないことが起きる

[書評]横山茂彦さん(編集者・著述業)
《書評》哲学は原子力といかに向かい合ってきたか
戸谷洋志『原子力の哲学』と野家啓一『3・11以後の科学・技術・社会』

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈11〉 人類はこのまま存在し続ける意義があるか否か(下)

[読者投稿]大今 歩さん(農業・高校講師)
「核のごみ」は地層処分してはいけない

[報告]市原みちえさん(いのちのギャラリー)
鎌田慧さんが語る「永山則夫と六ケ所村」で見えてきたこと

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ下でも工夫して会議開催! 大衆的集会をめざす全国各地!
《全国》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
三月の原発反対大衆行動──関西、東京、仙台などで大きな集会
《女川原発》舘脇章宏さん(みやぎ脱原発・風の会)
民意を無視した女川原発二号機の「地元同意」は許されない!
《福島》橋本あきさん(福島在住)
あれから10年 これから何年? 原発事故の後遺症は果てしなく広がっている
《東海第二》阿部功志さん(東海村議会議員)
東海第二原発をめぐる現状 
原電、工事契約難航 東海村の「自分ごと化会議」の問題点
《東京電力》渡辺秀之さん(東電本店合同抗議実行委員会)
東電本店合同抗議について―二〇一三年から九年目
東電福島第一原発事故を忘れない 柏崎刈羽原発の再稼働許さん
《規制委・経産省》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
新型コロナ下でも毎週続けている抗議行動
《高浜原発》木原壯林さん(老朽原発うごかすな!実行委員会)
関電よ 老朽原発うごかすな! 高浜全国集会
3月20日(土)に大集会と高浜町内デモ
《老朽原発》けしば誠一さん(杉並区議/反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
大飯原発設置許可取り消し判決を活かし、美浜3号機、高浜1・2号機、東海第二を止めよう
《核兵器禁止条約》渡辺寿子さん(たんぽぽ舎ボランティア、核開発に反対する会)
世界のヒバクシャの願い結実 核兵器禁止条約発効
新START延長するも「使える」小型核兵器の開発、配備進む
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
山本行雄『制定しよう 放射能汚染防止法』
《提案》乱 鬼龍さん(川柳人)
『NO NUKES voice』を、もう100部売る方法
本誌の2、3頁を使って「読者文芸欄」を作ることを提案

『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

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