『紙の爆弾』12月号に寄せて

中川志大 『紙の爆弾』編集長

日本初の女性首相として10月21日に始まった高市早苗内閣は、自維連立の経緯からして民意を無視したものですが、スタート時の支持率は68%(朝日新聞同月25~26日調査)。昨年の衆院選、今年の参院選で自民党が惨敗を喫した主因であり、公明党離脱のきっかけにもなった企業・団体献金の規制(廃止ではない)を拒否し、一方の日本維新の会も、廃止の主張を棚上げにして成立した高市政権に対してこの高支持率。トランプ米大統領来日時の従米姿勢すら大手メディアがほとんどまともに批判しない中で、本誌今月号では「責任ある積極財政」の中身など、詳細な分析を行ないました。そもそも、高市氏といえば、総務相時代の「電波停止」発言から、メディアと対立してきたように思われていますが、その一方で新聞業界から献金を受ける、新聞社の既得権益の擁護者でもあります。本誌記事「高市早苗首相のマネーロンダリング疑惑」は、そうした内実も明らかにしています。

自民党内に同居する極右・新自由主義・保守中道の3つのグループの中で、比較的財務省と距離を置いているように思われていたのが高市早苗氏でしたが、総裁に就任すると執行部人事で財務省路線(と統一教会癒着)を明確にしました。他方、総裁選後にみられた野党連携で首班指名選挙の対抗馬となったのは、元財務官僚であり、昨年衆院選で打ち出された消費税減税の流れを潰した玉木雄一郎・国民民主党代表で、どっちに転んでも財務省。さらに公明党の連立離脱は、政治経済学者の植草一秀氏が指摘してきた「2大従米保守グループの交代制」の構図が見え、対米自立リベラル勢力は消滅の危機にあります。

一方で公明党については、自民党との攻防とその後の「下駄の雪」路線を事実上主導してきた支持母体・創価学会の池田大作三代会長が2年前に死去したことから、今さらの方針転換は難しいものと認識していました。連立離脱が斉藤鉄夫代表の言う「自民党の不祥事を説明して歩かなきゃいけない」ことへの学会員の不満を背景にしているのであれば、高市自維政権よりよほど「民意」に基づいた結果といえます。

維新については前号でジャーナリストの吉富有治氏が、同党内で自民党との連立に対して考え方が二分していることを指摘。これを原因として9月に起きたのが維新議員の離党だったと分析しており、その後の展開を先読みする形となりました。その維新は自民党の補完勢力の役割を全うするとともに、大阪での自民との差別化もあいまいになって存在意義を失いつつあるものの、カジノ利権が引っ張れれば、あとはどうでもいいのかもしれません。

さらに今月号では、ロシア・ウクライナ戦争をめぐる詳細な分析を元外交官の東郷和彦氏が行ない、これは「反戦」を考えるうえで必読の内容です。またエマニュエル・パストリッチ博士が5カ国電子スパイ同盟ともいわれる「ファイブ・アイズ」の戦略を解説。いずれも他誌には読めないレポートです。『紙の爆弾』は全国書店で発売中です。

本誌執筆者で元TBS記者・田中塾塾長の田中良紹氏が病気のため10月7日に亡くなられました。直近では8・9月合併号「日本に野党はあるのか?」が、日本の「野党」の本質をえぐり、本誌のレベルを一段上げるレポートでした。今後も新たな視点を提供していただけることを期待していただけに、本当に残念に思っています。ご冥福をお祈りします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2025年12月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年11月7日発売

「政治とカネ」を闇に葬る最悪連立 自維金権腐敗政権 植草一秀
政治献金のグレーゾーンとマスコミ癒着 高市早苗首相のマネーロンダリング疑惑 黒薮哲哉
「万博」「都構想」「身を切る改革」そして…維新と吉村洋文は何度でもウソをつく 西谷文和
高市自維政権からの“報復”公明党連立離脱の全真相 大山友樹
「プーチンとの戦い」に前のめりなヨーロッパ ロシア欧州戦争の可能性 東郷和彦
戦争のできる国へ突き進む安保法制十年の軍事拡張 足立昌勝
漏洩された秘密文献から判明「ファイブ・アイズ」の対中国戦争計画 エマニュエル・パストリッチ
国家でもAIでもなく“決済”が言論を殺す クレジットカード帝国の静かな世界支配 昼間たかし
高市首相にあえて「保守」の姿勢を問う 木村三浩
日本社会を崩壊させる「SNS乗っ取り」と「ディープフェイク」の実態 片岡亮
BSL4施設の目的とは エボラウイルス研究所新宿移転の闇 早見慶子
公取委に訴えられた沼津市ほか「官製談合」疑惑 青木泰
エコロジストたちの大きな過ち メガソーラーが農業経営を圧迫する 平宮康弘
“芸能界のドン”引退でも再び利権化する「日本レコード大賞」 本誌芸能取材班
自罠党は二度死ぬ 佐藤雅彦

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
ニッポン崩壊の近未来史 西本頑司

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「パレスチナ国家承認」の真実

広岡裕児(紙の爆弾2025年11月号掲載)

タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。

◆「二国共存」とは何か

漆黒の闇にそびえたつエッフェル塔に、平和の鳩を真ん中にパレスチナとイスラエルの国旗が映し出された。ニューヨークの国連本部でのマクロン大統領のパレスチナ承認演説へのパリ市のエールだ。もっとも、イダルゴ市長が土壇場になってマクロンがビビらないように釘を刺したともいえる。

この9月21・22日、新たに、フランス・英国・ポルトガル・アンドラ・オーストラリア・ベルギー・カナダ・ルクセンブルグ・マルタ・サンマリノがパレスチナ国家を承認した。日本は、承認を見送った。

岩屋毅外相は9月19日の記者会見で、日本が「二国家解決」を一貫して支持するとの姿勢を改めて強調した。そのうえで、今はそのタイミングではない、と判断したのだという。

1988年11月15日、パレスチナ独立宣言が亡命先のアルジェで出されたが、そこには「この決議こそが、依然としてパレスチナのアラブ人民の主権と国家独立の権利を保証する国際的な正当性の条件を提供している」と記されている。「この決議」とは、1947年11月29日に国連総会で採択された、英国の委任統治領だったパレスチナを分割しユダヤ人国家とアラブ人国家をつくるという決議181号(Ⅱ)である。

承認されたパレスチナは、一部でプロパガンダされているような、イスラエルをこの世から抹消しようとするものではない。二国共存である。

ユダヤ人にとってイスラエルの地はユダヤ民族の揺籃の地である。だが、そこには、昔から別の人たちが生活していた。ユダヤ人がそこに戻るということは、彼らを追い出すということだった。そこで、イスラエルが建国されると何度も戦争が起きた。そして40年、おそらく世代交代もあるだろう、ついに、追放されたパレスチナ人は故郷の半分以上を諦めることに同意した。

一方、イスラエルも独立の時からこの決議181号(Ⅱ)によって建国が可能になったことを認めていた。1948年には、パレスチナ難民の帰還や補償について定めた決議194号(Ⅲ)が出されたが、イスラエルは国連に加盟する際、この両方を実行すると約束している。ところが、これを守らず、これ以降に出された国連決議もことごとく無視した。戦争に勝ったという事実だけをもって本来パレスチナ国家となるべき地域を占拠した。

しかし、パレスチナ人の二国共存受諾に引き続いて、イスラエルでも二国共存を認める勢力が政権をとった。アメリカも後押しした。こうして1993年にオスロ合意が成立したのである。

ところが、この動きはイスラエルの内部から崩壊し、パレスチナ国家を認めない連中が政権を牛耳るようになった。パレスチナ国家となるべき地域に植民が続き、パレスチナ人の反抗を理由に自治政府の長も軟禁された。そして、いつのまにか国連決議によってイスラエルは建国されたのではなく、近隣アラブ諸国との苦しい独立戦争によって建国されたのだというストーリーに替わっていった。現在では、イスラエルはパレスチナのテロの犠牲者で、ガザの連中はその代償を払っているにすぎないという言論がまかり通っている。

パレスチナ人の間でも、外部の支援もあって、イスラエル国家を認めない勢力が台頭した。それがハマスである。現在のイスラエル・ハマス戦争はともに、両国の二国間共存を認めない勢力同士の争いである。

国際社会は、パレスチナを承認して二国の並立を事実とすることでこの勢力に対抗するのである。パレスチナ国家承認は、強烈なハマス攻撃でもある。

9月19日の会見で、岩屋外相は「国際社会が直面しているパレスチナの情勢は、『二国家解決』の前提を崩しかねないものになっております」という。だからこそ、今なのである。

◆フランスが動いた意図

パレスチナ自治政府は、発言もできる国際連合総会オブザーバーの資格を持っている。だが、アメリカ政府は、マフムード・アッバス大統領らの総会出席を阻止するために、ビザを発給しなかった。ルビオ国務長官は、和平努力を妨害し、「仮定上のパレスチナ国家の一方的な承認」を求めていると非難して正当化した。嘘だ。今回パレスチナ承認に踏み切った国々はイスラエルも承認している。この承認によって「二国間解決」しかないと内外に示したのである。

岩屋外相は「イスラエルが『二国家解決』実現への道を閉ざすさらなる行動をとる場合には、我が国として、新たな対応をとることになります」ともいう。

9月11日、ネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸地区の大規模入植地建設計画E1の調印式で、「我々は約束を守る。パレスチナ国家は存在せず、この地は我々のものとなる」と演説した。スモトリッチ財務兼国防省付大臣は「パレスチナ国家は、スローガンではなく行動によって消滅させられつつあるのだ」と述べた(ル・パリジャン9月11日付)。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n5f1ebe9f2ee2

「万博成功」のはずが離党ドミノ 維新「副首都構想」の目的 

吉富有治(紙の爆弾2025年11月号掲載)

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◆万博成功アピールの裏

激動が続く2025年。昨年10月に石破茂政権が誕生してわずか1年の間に、自民党は衆院選と参院選で大敗。その責任をとる形で石破首相は退陣に追い込まれた。もっとも、首相に辞任を迫ったのは旧安倍派の裏金議員たちだ。石破政権で冷や飯を食わされた政治家たちが、自分たちの利権を取り戻そうと“石破おろし”に躍起となったのは間違いない。この原稿を書いている時点で新首相の顔は不明だが、誰になっても日本はしばらく、混沌とした政治状況は続くだろう。

私が住む大阪もまた、激動と混乱の年だった。4月には「2025大阪・関西万博」が開催され、10月13日に閉幕した。

大阪は万博で悲喜こもごもの年だった。万博効果で大阪がお祭りムードに酔っている印象を受けるかもしれないが、それは一面的な見方にすぎない。すべての大阪人が両手を挙げて万博を賛美しているわけではない。白けた目で眺めている人も少なくなかった。

人々の間でも万博が話題になることはあまり多くない。はしゃいでいるのは吉村洋文大阪府知事と大阪維新の政治家、そしてマスコミくらいではなかったか。これまで私が会った人の中で、「万博、行った?」「あのパビリオン、良かったね」と熱く語る人は不思議とお目にかかったことがない。逆に「つまらなかった」「二度と行かない」と文句を言う人は何人かいた。

ちなみに、私は取材を兼ねて万博へは2度行った。ただ、1970年の「大阪万博」を知っている私にすれば、まるで物足りない。まず、入場には予約が必要で、これがあまりにも雑なシステムだった。前回の万博では、米国館が「月の石」や「アポロ宇宙船」を展示し、ソ連館では「ソユーズ宇宙船」を来場者に見せて国力を誇示した。民間パビリオンでも、当時は珍しかった大型コンピューターや、また携帯電話の元祖となる無線式の電話を展示し、見る者が度肝を抜かれた。だが、今回の万博では各国のパビリオンにしても映像が主体の展示ばかりで、驚嘆するものは少ない。小国が集まるパビリオンなどは、地方の物産展かと目を疑うような内容ばかりだった。1970年の万博以降、私は国内で開かれる国際博や国内博を数多く取材してきたが、今回ほどショボいと落胆したものはなかった。

開幕前から疑問視されていた収支はどうか。目標とする入場者数に達したとして、万博協会は一応「大成功」をアピールするだろう。チケット販売も採算ラインをクリアしたようで、なんとか運営費は黒字になりそうである。だが、パビリオンの建設工事に参加した下請け業者に工事代金が支払われていないなど、裏に回れば胡散臭い話ばかりが聞こえてくる。代金の踏み倒し問題を含めて、閉幕後に、これまでのツケが回ってきそうだ。

まず交通。万博会場で2030年代に開業予定の統合型リゾート(カジノ・IR)までは、莫大な予算を投資した地下鉄は空気を運ぶことになりそうである。万博のシンボルである全長20キロの「大屋根リング」については、その一部分を大阪市が「市営公園」として整備することが、9月16日に関係者の検討会で正式決定された。だが、大阪市が管理するなら新たな税負担を強いられる。これでは市民の反発を受けるだろう。万博後に残るものは「レガシー」ではなく、虚しさと税負担の二重苦だと予想している。

◆維新を襲う自業自得の離党ドミノ

その万博を推進した大阪維新も新勢力の参政党にお株を奪われて、これまでの勢いは見られない。昨年の衆院選で、小選挙区で当選したのは大阪・京都・広島・福岡の西日本だけで、東京をはじめとする東日本は全滅という有り様だ。7月の参院選にしても、選挙区の当選者は大阪(定数4で2議席)と京都の3人だけ。全国政党を掲げても、実態は大阪のローカル政党のままである。

維新から抜け出す議員も後を絶たない。大半は地方議員だが、維新の地元である大阪市議会でも今年に入って3人が離れ、それぞれが1人会派として活動を続けている。各市議が離党した理由は不明だが、聞くところでは維新に愛想が尽きたか、嫌気が差したのは間違いなさそうだ。この離党ドミノは、おそらく今後も続くだろう。
同じ離党でもインパクトがあったのは、日本維新の守島正衆院議員(大阪2区)だ。守島氏は9月8日、党本部にほかの2人と離党届を提出した。離党の理由について本人は、「結党当初の理念との乖離が大きくなった。今の国会議員団に同調できない」と話しているという。やや漠然とした言い方だが、維新の国会議員団は与党病や大臣病を患っていると言いたいのだろう。

守島氏は2011年4月の統一地方選挙で大阪市議に初当選した、いわゆる「橋下チルドレン」の1期生である。同期に吉村知事らがおり、大阪都構想の制度設計を担うなど、維新内部でも若手のホープと見られていた。国政に転身してからは日本維新の執行部で活動し、それだけに同氏の離党は党内外に大きな波紋を広げた。守島氏に対して吉村代表は「彼らしくない」と首を傾げ、党に残るよう説得した。それでも本人の意思は変わらないと見たのか、その後は「離党ではなく議員辞職が筋」と強硬な態度に出て、9月17日付で除名処分を下した。

守島氏が離党した理由については様々な憶測が飛び交っている。彼は、ときどき突拍子もないことをやらかして周囲を慌てさせるとの噂があって、そのキャラクターが原因だという意見もあるが、たぶん違う。原因は、連立与党に加わりたい維新議員と、それに反対する議員との確執である。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/ne13b2005e92f

総力で月刊『紙の爆弾』の発行継続を勝ち取ろう! 今こそ集中して圧倒的なご支援をお寄せください!

まずは鹿砦社の書籍を買って応援してください!
まだ未購読の書籍がありましたら、直ちにご注文お願いいたします!
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『紙の爆弾』編集長 中川志大 鹿砦社代表 松岡利康

月刊『紙の爆弾』を愛し支持される皆様!

このかんたびたび繰り返し申し述べているように、私たちは、常に休刊の危機に喘ぐ月刊『紙の爆弾』の発行継続を図るために呻吟しています。

ご承知のように月刊『紙の爆弾』は2005年の創刊から幾多の苦難を乗り越えて本年4月で20周年に至り、多くの皆様方に祝っていただき、また叱咤激励も受けました。少なくとも4・5、7・12の東西2つの「反転攻勢の集い」に参加された計150名余の方々は『紙爆』に対して大きな期待を持っておられることが直に判り感銘いたしました。おそらく多くの雑誌が権力のポチ化し、『紙爆』のようにタブーを恐れない雑誌がなくなったからでしょう。以後私たちは、次の10年に向けて歩み始めていますが、なかなか財政問題をクリアできず、いまだ苦境にあります。

ちなみに、ここに来て老舗の芸能雑誌が続々と休刊になっています。領域は異なりますが、雑誌を毎月発行していくことが困難になってきた時代を象徴することだと実感しています。

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そうして、これまで発行した既刊本や『紙の爆弾』のバックナンバー(一部の方々にはお知らせしていますが倉庫代軽減のため年内で断裁処分せざるをえなくなりました)などのご購読(できればまとめ買い)を早急にお願いいたします。既刊本の内容につきましては、鹿砦社HPをご覧になってください。また、HPに掲載していない書籍のリストは本社にご請求ください。そうして、ここ数カ月続けて来た「セット直販」もお願いいたします(年内いっぱい受け付けます)。

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「『化学物質過敏症』の原因は、本当に化学物質だけなのか──見落とされる別の病因」、『週刊金曜日』の加藤やすこ氏の記事について

黒薮哲哉

『週刊金曜日』(9月26日付)が、「化学物質だらけで医療や介護が受かられません」と題する記事を掲載している。執筆者は環境ジャーナリストの加藤やすこ氏で、化学物質や電磁波による人体影響に詳しく、市民運動も組織している人物である。

この記事は、化学物質過敏症を考える際の重大な視点が欠落しているので、指摘しておく。なお、私は環境問題を取材してきた立場ではあるが専門家ではない。したがって、以下に述べることは、私が取材を通じて学んだ考察であることを付記しておく。

加藤氏は記事の中で、化学物質過敏症が原因で介護や医療を受けることに支障を来している人の事例をいくつか紹介している。医療や介護の現場にはさまざまな化学物質があふれており、そのために医療機関を利用できなかったり、介護士との接触が困難になっているという。例えば次のような事例である。

【小林さんのケース】
「小林さんは化学物質過敏症と電磁波過敏症を併発しており、ごく微量の化学物質や電磁波で頭痛や目まいに苦しむ。以前は症状を理解し、香料や化学物質を身につけない看護師がいたが、退職したため介護を受けられなくなった」

「(略)介護士には家に入る直前に下着や靴下を交換してもらい、小林さんはようやく介護を受けられる状態になる。」

【Aさんのケース】
「愛知県に住むAさん(58歳)も、介護士を見つけるのに苦労した。10年前に脳神経疾患を発症し、焼けるような痛みやひどいめまいに襲われるようになった」

「その後、柔軟剤やシャンプーなどの香りに敏感になり、介護士や看護師の制服の香料など、さまざまな化学物質や電磁波に反応するようになった。そして、化学物質過敏症と電磁波過敏症だと診断された」

◆加藤氏が紹介した2人の症状は、おそらく客観的な事実であるが……

加藤氏が紹介した2人の症状は、おそらく客観的な事実である。本人には加藤氏が描写したような症状が実際に現れている可能性が高い。

ただし問題は、こうした症状の原因を単純に化学物質や電磁波に結び付けている点である。たとえばAさんの場合、「10年前に脳神経疾患を発症し、焼けるような痛みやひどいめまいに襲われるようになった」経緯がある。したがって体調不良の原因は脳神経疾患にある可能性の方がはるかに高い。

この点について、化学物質過敏症に詳しい舩越典子医師は、何らかの原因で神経が傷つくことで、加藤氏が指摘するような症状が現れるケースがあると指摘している。従って、傷ついた神経を修復すれば症状は改善する。従来、化学物質過敏症は「不治の病」とされてきたが、必ずしもそうではないという考えである。実際、舩越医師は、化学物質過敏症と自己診断していた患者を根治した症例も報告している。

【参考記事】化学物質過敏症は不治の病気ではない。舩越典子医師インタビュー

◆舩越医師の理論を裏付ける公的文書

舩越医師の理論を裏付ける公的文書も存在する。東海大学医学部の坂部貢医師(写真)は、「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務」と題する報告書の中で、化学物質過敏症と同じ症状を示す患者には精神疾患の症状が見られる場合があると述べている。精神疾患との併症率はなんと80%にも達するという。

この報告書が公表されたのは平成27年、すなわち2015年である。つまり9年前にはすでに、化学物質過敏症の伝統的な解釈に疑問が提起されていたのである。

◆体調不良の原因を安易に化学物質過敏症に結び付けることには問題がある

私の取材経験からすると、微量な化学物質や電磁波に反応する人は確かに存在するが、その割合は少ない。少ないからといって無視できる問題ではないが、電磁波過敏症を訴える人の中には、実際には別の病気に罹患している人もいるのだ。不可解な症状を訴える人に対して、安易に化学物質過敏症の診断を下し、他の治療を避けてしまうと、悲劇的な結果になりかねない。

加藤氏が指摘するように、化学物質が有害であり、日本政府による規制が欧米に比べて緩いのは事実である。しかし、それを理由にアンケートなどを実施して、体調不良の原因を安易に化学物質過敏症に結び付けることには問題がある。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年9月29日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

《新刊案内》髙見元博=著『ミッシングリンク 日本左派運動の失環』

髙見元博=著『ミッシングリンク 日本左派運動の失環』
四六判 128ページ ソフトカバー装 
定価1210円(税込み)10月17日発売!

私たちはどこで間違えたのか──
なぜ日本では左派は衰退し続けるのか。
日本左派の混迷の中に光明はあるのか。
半世紀余り、左派の高揚期から
低迷期を体験してきた著者が
左派復活のカギを提案する!
“彼らは本気だ、しかし、われわれも本気だ”

【もくじ】
植民地主義── 許されざるガザのジェノサイド── ふたつの世界への分裂 
「自己責任論」と小泉反動 
労働運動解体と再興── 全日建関生支部 
乗りこえの運動としての新左翼=「マルクス・レーニン主義」の誤り=【ガラパゴス日本左翼】 
エセ「マルクス主義者」たちにマルクスは激怒した 
ロシアのエセ「マルクス主義者」たち 
「人民の意志党」を継いだ「社会革命党(エスエル党)」 
左翼エスエル党とボリシェヴィキ── 誰がマルクスを継承したのか 

《革命と民主主義》
 【もっとも民主的な「ソビエト」の樹立と、ボリシェヴィキの一党独裁による空洞化・形骸化】 
第二回全露労働者・兵士代表ソビエト議会 
農民代表ソビエト全ロシア大会
憲法制定議会 
第三回全ロシア労働者・兵士・農民代表ソビエト大会 
「ボリシェヴィキ」の反民主主義性はどこにあるのか 
ブレスト・リトフスク条約 
第四回全露ソビエト大会── ブレスト・リトフスク条約の承認 
マフノ軍(ウクライナ革命反乱軍) 
ボリシェヴィキと農民との内戦の開始 
穀物徴発
貧農委員会(Kombed) 
第五回ソビエト大会── 民主的ソビエトからボリシェヴィキ一党独裁への変質 
「左翼エスエル党」の反乱 
タンボフ農民反乱 
ボリシェヴィキの残虐 
現代に引き継がれた一党独裁主義=理性なき「内ゲバ」主義 

著者について
髙見元博(たかみもとひろ)
1951年生まれ。1960年代高校造叛学園闘争を闘う。甲南大学卒。反戦青年委員会(ベトナム戦争に反対するため「総評」が作った青年労働者の大衆組織)に加入。大学生協職員などを経て1977年郵政省職員。全逓信労働組合に加盟し、1978年年賀状配達を止めた越年順法闘争を闘い1979年より支部青年部副部長(分会青年部長)を2期務める。1991年職業病である頚肩腕症候群を原因とする精神障害により免職。解雇撤回を争い1999年神戸地裁で解雇取消しの勝訴、2000年大阪高裁で逆転敗訴、同年最高裁で敗訴確定。1994年兵庫県精神障害者連絡会結成に加わり、現在代表を務める。1995年まで「全国『精神病』者集団」の執行委員である「事務局員」を勤めた。
共著書として、『生きている!殺すな!』(山吹書店)『重度精神障害を生きる』(批評社)。

※予約申し込みは、
鹿砦社販売部 sales@rokusaisha.com
②Amazonなどネット書店 https://www.amazon.co.jp/dp/4846315916/
③最寄りの書店にお願いいたします。

『紙の爆弾』11月号に寄せて

中川志大 『紙の爆弾』編集長

自民党総裁選は前回に見た面々、誰が勝っても同じという不毛なものでした。自民党にとって昨年より状況が悪化しているのにこれでは……と誰もが思うでしょうが、では誰がいるのかといえば、誰も思いつかない。だから「石破辞めるな」が説得力を持ってしまったのでしょう。むしろ、維新・国民民主、あるいは参政党と、どの補完勢力を選ぶかということの方が、まだ考えようがあります。加えて、自公政権が衆参で少数与党である中で、今回も自民党の総裁選が電波ジャックをすることに正当性があるのか。マスメディアの異常さが、ますます浮き彫りになっています。

総裁選の不毛さを自ら強調するかのように、候補者が「外国人政策」を訴えたことに、参政党躍進の影響があるのは言うまでもありません。付け加えるなら、彼らは参政党を排外主義とみて、それが受けたと考えていることが、その主張の内容から読み取れます。10月号では、「日本人ファースト」がなぜ支持されたのか、その理由に焦点を当てました。大西広慶應義塾・京都大学名誉教授の指摘は、彼らこそ読むべきものです。「日本人」がどういう状態にあるのか、その原因は何なのかに向き合わない限り、国内世論の断絶を含めた「移民問題」は解決に向かいません。

そもそも、排外主義はどこではびこっているのか。個人的な実感をいえば、それなりに共生している地域が大半だと感じます。本誌執筆陣のひとり、木村三浩氏が代表の一水会のX(8月27日付)で、「川口市内各地の住民5000人に治安について聞いたところ、大半が『自宅周辺の治安は良い』と回答したが、同時に大半が『川口市内の治安は悪い』と回答した」という埼玉県川口市議の調査結果が紹介されています。そもそも日本人同士がきちんと共生しているのか。今の混乱状況自体を問題視すべきだと考えています。

消費税減税や政治資金問題の根本解決を封殺した石破首相が、それでも「レガシー」にできたはずだったのが、「パレスチナ国家承認」でした。フランスやイギリスが承認に動く中、石破首相は国連演説で、「イスラエルが『二国家解決』への道を閉ざすさらなる行動をとる場合、パレスチナを国家として承認する」などと述べたのは、まるで自分がカードを持っているかの物言いです。見送りがアメリカ政府を忖度した結果であることは言うまでもありませんが、少なくとも1990年代の日本には、アラブの国々に対して日本の自主外交を示した実例があり、それゆえに国際的な評価を受けていました。当時よりも対米従属が深化していることを、今回の事態は示しています。一方で、フランスをはじめ「承認」に回った国々にも、一定の目論見があるようです。本誌記事で詳細に明かしています。

ほか今月号では、10月13日閉幕の「2025大阪・関西万博」の“成功”をアピールしながら“辞任ドミノ”に揺れる維新の内情を解説。「大川原化工機事件」違法捜査が明らかとなった公安警察の歴史、国際表現規制といわれる「ハノイ条約」について提案国・ロシア外務省を取材、ネパール・インドネシアなどで相次ぐ“デモ暴動化”の理由、「アフリカ・ホームタウン騒動」の裏側など、本誌独自の視点でレポートをお届けします。『紙の爆弾』は全国書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2025年11月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年10月7日発売
 

石破政権とは何だったのか? 財務省に操られた日本政治の真相 植草一秀
「万博成功」のはずが離党ドミノ 維新「副首都構想」の目的 吉富有治
フランスが動いた意図「パレスチナ国家承認」の真実 広岡裕児
米欧も絡むガザ沖合天然ガス争奪戦 イスラエル暴走の理由と「核危機」 平宮康弘
中国軍事パレードの裏で中ロ首脳の最大関心事 浜田和幸
原子炉格納容器がはらむ6大リスク 柏崎刈羽原発6号機設計者が語る脆弱性 後藤政志
「大川原化工機事件」違法捜査の闇 国民監視組織・公安警察の実相 足立昌勝
大江健三郎も上野千鶴子も“禁書”に?国際表現規制危機「ハノイ条約」とは何か 昼間たかし
日本政府「パレスチナ承認見送り」の大愚 木村三浩
混乱を招いた日本政府の不作為「アフリカ・ホームタウン」騒動の深層 片岡亮
「グローバリズム」はこうして始まった イチからわかるディープ・ステートの正体 広瀬隆
ネパール・インドネシア デモ暴動化の背後 早見慶子
予言への正しい向き合い方 佐藤雅彦
経団連による教育現場介入の危険性 永野厚男
シリーズ日本の冤罪 品川美容外科捜査資料漏洩事件 片岡健

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
【新連載】ニッポン崩壊の近未来史 西本頑司

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0FTFV61YB/

前田良典小論選集『野の人』が完成しました! 

鹿砦社代表 松岡利康

あれだけ暑かった今夏もようやく過ぎ、彼岸と共に秋の訪れを感じさせる季節となりました。酷暑の中、先輩方と頑張り、同志社大学此春(ししゅん)寮、また同大学友会の尊敬すべき大先輩で1960年代同大学生運動の生き証人の前田良典さんの小論選集『野の人』が完成しお届けできることを皆様方と共に喜び合いたいと思います。

史上空前の猛暑のゆえ、当の前田さんは7月30日に脳梗塞で倒れられ、また数年来の癌と戦いながら、この企画を中心的に進めてこられた先輩KMさんは、あろうことか完成を待たず8月20日に亡くなられました。本書は、まさに死を賭した編集作業によって完成したといえるでしょう。

私松岡は、いわば「遅れて来た青年」(大江健三郎)で、1970年に同志社大学に入学し、以後、〈二つの安保闘争〉をめぐる激動の時代に、その戦闘性で全国の学生運動を牽引した栄光の同志社大学学友会を舞台に活動してまいりました。僭越ながら、私は70年代前半にみずからが関わった学生運動の意味を探究することをライフワークとして出版活動を持続してまいりました。この点では、折に触れ送られてくる、世代の異なる前田さんの卓見に共鳴することが多々ありました。

このたび、そうした前田さんの著作集の編集・出版をおおせつかったことは無上の喜びです。

私たちはまた、元学友会委員長・堀清明さんらと共に「同志社大学学友会倶楽部」という、OBの親睦と交流、そしてかつての闘いの意義を共有し忘れないという活動(記録集出版、講演会など)を長年続けてまいりました。開始以来代表世話人を務めてこられた堀さんが、ご高齢と健康上の都合で代表を辞され、本年から私が引き継がせていただき、規模を小さくすることを余儀なくされつつも、活動を継続することになりました。学友会倶楽部の活動として2013年から、毎年11月初めに行われる大学のホームカミングデーで教室を借り年1回講演会を実施してまいりました。昨年までの実行委員会は初期の目標だった10回の講演会活動が一段落し解散しましたので、まだ固まっていませんが、今後共にやりたいという方がおられましたらご一報ください。

前田さんが活動された1960年代は、時代が大きく変わる転換期でした。それは政治的な面のみならず文化や音楽の面でもそうで、こちらも中川五郎さんや豊田勇造さんらを招いたこともありました。

せっかく1960年代の生き証人でもある前田さんの著作集が出版されましたので、本年は、後輩である私としてはこの本を参考に「1960年代 同志社ラジカリズムとは何だったのか?」をテーマに開催させていただくことにしました。

かつて同志社のキャンパスや旧学生会館を舞台に活動、活躍された皆様方にもぜひご参集いただき、若かった時代に戦争(当時はベトナム戦争)や、社会と世界の不条理に対し闘ったことの〈意味〉を共に語り合おうではありませんか! 

2025年9月24日記

(四六判、上製、本文240ページ 非売品)

【主な内容】
第一章 友人・先輩への追悼集
個と共同(藤本敏夫追悼) 
大森昌也さん追悼 
思い出ボロボロ 堂山道生と私 
同大の先輩たち(中島鎮夫さん・望月躬三さん・片山昌伸さん)
 「境毅(バラ均)さん追悼」走り書き
第二章 同志社ブント・関西ブント記
六〇年代同志社学生運動私記 
    「同志社学生運動」編纂について(コメントひとつ) 
一九六九年ブントに何があったのか 
第三章 同志社此春寮(砂野文枝寮母と寮生)
砂野寮母の生誕と葬送 
砂野ママ葬送一周年追悼集会に寄せて 
深草墓参
同志社リベラル 
第四章 洛南反戦と地域労組
第五章 書 評
第六章 時代論評
時代は回る 
3・11大地震・津波・原発被災と南相馬の村のこと(メモ) 
南相馬への旅 
反原連運動(しばき隊)はスピリチュアル運動か 
「慰安婦と非正規労働」問題(同志社の友人へ) 
原発・沖縄・天皇・障碍者殺害 
ウクライナ戦争と資本主義の変容 
第七章 古代史

▼前田良典(まえだ・よしのり)
1962年同志社大学入学。在学中、同大学友会書記長、京都府学連副委員長を歴任。故・塩見孝也氏とは同期、故・藤本敏夫氏は寮の1年後輩。

◎本書は「非売品」で書店では発売しておりません。ご希望の方は松岡までメールください。刊行会に諮り、ご希望に沿うように努めます。
◎同志社大学ホームカミングデーは11月9日(日)。学友会倶楽部の集いについては後日ご案内。

『3・11の彼方から 「季節」(「NO NUKES voice」)セレクション集vol.1』をお届けするにあたって

『季節』編集委員会

私たちの出版活動、特に『季節』をご支援、ご支持される皆様──

『3・11の彼方から 「季節」(「NO NUKES voice」)セレクション集vol.1』がようやく完成いたしました。当初の目論見に反し編集に苦戦、発行が遅れ、ご心配をおかけしました。

印刷所から届いたばかりの『3・11の彼方から』

予想以上に難産でした。しかし、後々に残る立派な本になりました。

本書は、わが国唯一の脱(反)原発情報誌『季節』(前身の『NO NUKES voice』含む)創刊10周年記念事業として企画されました。

当初一巻本として、約400ページで出版する予定でしたが、編集の過程で、収録し後世に残したいものが数多あり、結局608ページで、それも三巻に分けて出版することになりました。史料としての価値も大いにあるものと自負しております。

『季節』は、『NO NUKES voice』の名で2014年8月に創刊いたしました。当初編集長は発案者の鹿砦社代表・松岡が務め、その後、小島卓が引き継ぎ、また誌名も『季節』に改題し現在に至っています。

創刊時、まだ3・11から年月もさほど経っておらず脱(反)原発の機運が盛り上がり国会周辺には多くの人々が結集し抗議の声を挙げていましたが、徐々に減っていき、今はほぼなくなりました。

また、創刊号から小出裕章氏ら錚々たる方々にご協力、ご寄稿賜りながら、私たちの営業力不足で実売的には苦戦し、残念ながらいまだに黒字に転じていません。当初は鹿砦社の景気も好況で、本書の赤字は会社の利益で消していましたのでよかったのですが、多くの企業のように新型コロナ以降、一転不況になり、そうもいかなくなりました。

新型コロナというパンデミックの襲来もありましたが、福島の悲劇の記憶はなしくずし的に風化しようとしています。遺憾なことです。

『季節』の今後につきまして、気分的には発行継続の方針ですが、現実問題としては資金的に困難な情況であることを隠しません。皆様方のご支援をお願いする次第です。まずは本書を一冊買ってご支援ください!

そして、どうか紐解いていただき、気に入れば周囲の知人、友人の方々にもご購読をお薦めいただければ幸いです。

本書vol.2は来年前半、vol.3は来年後半の刊行予定です。ご予約を入れておいていただければ助かります。

まずは『3・11の彼方から』完成のご挨拶にて失礼いたします。今後共『季節』、及び鹿砦社の出版活動をご支援、ご支持お願いいたします。

[A5判、本文608ページ、カバー装、限定500部、定価4950円(税込み)]

Ж お申し込みは、Amazonなどネット書店、最寄りの書店、または直接鹿砦社
本社 j-info@rokusaisha.com まで。

鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?group=new&bookid=0

2025年9月  
『季節』編集委員会  
株式会社 鹿砦社

《書評》野田正彰著『流行精神病の時代』 評者:黒岩秩子

黒岩秩子(くろいわ・ちずこ。社会福祉法人理事長。元参議院議員)

すごい本でした。

優生保護法によって、不妊手術をさせられた人が原告になった裁判で、勝訴した。ところが、この不妊手術をされた人の85%が精神障がい者であるにもかかわらず、原告の中には、精神障がい者はいなかった。

1950年ごろに東京都立松沢病院で、「臺実験」(うてなじっけん)と呼ばれる人体実験があった。ロボトミー手術をした人の脳を生検用として、切除する。この臺はその後、東京大学の教授となっている。

内村鑑三の孫、内村祐之が北大・東大の教授となって、「精神病は遺伝する」というでたらめを定着させた。「精神病遺伝説」は医学教育を通して、医者たちに浸透し,中学・高校「保健体育」教科書・マスコミを通して社会に浸透した。

これについての反省もないままに忘れている。たくさんの精神障がい者が、この考えのもと死んでいっているにもかかわらず。

北海道は特に優生手術がたくさんされている。『優生手術1000件突破を顧みて』という優生手術を礼賛する記録誌を北海道衛生部が出している。この本の中にはもっともっとぞっとするような実話が出ている。

野田さんは中高校の教科書にかいてある「精神病遺伝」説を批判して、朝日ジャーナルに2つの論文を出した。それによって、教科書は、書き換えられた。著者を抜きに出版社が反省も謝罪もないまま、書き換えたのだ。

うつ病や、発達障害という病名を多発することで、向精神薬、精神安定剤、覚せい剤が過剰に投与されている。それらによって自殺に追いやられる子どももいる。

野田正彰氏は、1969年に北大医学部を卒業して、1970年からの15年間、滋賀県の湖西地域で、精神科病院の改革を始める。地域に出て行って、相談を受ける会を作ったり、精神疾患の患者さんが、地域の中で暮らせるようにと、あらゆる企画を実践に移している。3人の患者さんの例を事細かに紹介しているので、彼らがどんな取り組みをしたのかが具体的に良くわかる。

◆旭川の少女自殺事件と「発達障害」

亡くなった少女は小さい頃は、少し目先がきく普通の子だった。ところが、先生が謝りに来なさいといったとき、彼女はその行為をしていなかったので、行かなかった。それを発達障害といわれ、病院に行かされて、精神安定剤を飲まされる。「薬を飲むと、ボーとする」と本人が言う。そして、中学に行くといじめられる。精神病院へ行って入院させられる。自殺予防として素っ裸にさせられる。かくて雪の中での遺体発見となる。まさに「発達障がい者作り!」

事件後に調査委員会が2回開かれている。第2次調査委員会に精神科医として参加して、報告を書いたのは斎藤環。「いじめ被害のトラウマによってPTSDに罹患していた」と。何も調べることなく書いている。斎藤環は、フィンランドにおける「オープンダイアローグ」を日本に紹介した人として知っていたので、この話にはびっくりした。

この事件については、「発達障害児作り」の典型的な事案と思われる。

大阪心療内科放火殺人事件についって野田さんの意見は、下記のようなものです。

この放火されたクリニックは、患者さんが大勢で、一人の診療時間は、数分だった。ほとんど話を聞かずに薬を出すだけ。そういうクリニックに通って、全然よくならないこの「犯人」は、拡大自殺(一人でではなく、周りを殺してする自殺)にこのクリニックを選んだ。当時、この事件の報道では、このクリニックの医者はとても「いい先生」でそんな先生を殺すなんてひどいという論調だったことを記憶している。「犯人」は4年10か月で112回もクリニックを受診している。ちっとも治らなかったのに。

このクリニックでは、医者が一人で、患者は600人とか800人とか言われている。そんな数の患者を診るには、まさに3分診療である。そんなことで患者が治るわけはない。そういう診療体制に対する「抗議」だったのではないか?

「どうすればよかったのか」というタイトルの映画が大勢の人に見られている。統合失調症の姉を持った弟が作った映画で、両親が医者である。両親は、精神医療の現状を知っているので娘を病院に入院させることはしないで、自宅で見ている。それを弟が赤裸々に撮った作品だという。野田さんによれば、ご両親が選択した「家で見る」ことには成功しているのでは?と問題を提起している。

福島の原発事故で自殺した方の追跡もしています。精神鑑定書を3人分、実に丁寧に書いています。この方々は、皆、もともとは元気な方々でした。うつ病などもないし、親族で自殺した方もない、ごく普通の方でした。原発事故で、身動きが取れなくなって、自殺なさった方ばかりです。一人一人の生活史にまで入り込んでの鑑定書です。原発さえなければ防げた自殺でした。

とにかく、この本を読んでほしい。

(評者の承諾を得て掲載させていただきました。)

◆     ◆     ◆     ◆     ◆

『流行精神病の時代』
野田正彰(精神科医)著

四六判 カバー装 本文248ページ 
定価1980円(税込み) 好評発売中!

「発達障害」と「精神病遺伝説」
──精神科医、製薬会社、NHK、学校の病気創りによって、無数の子どもが犠牲になっている。
日本で「精神医療」と呼ばれているものの実相とは。

目次
第一章 「優生保護法」は日本精神医学の常識
 一・一 現代に息づく優生保護法の思想
 一・二 業界による隠蔽
 一・三 優生保護法をめぐるお祭り訴訟
第二章 教科書と「精神疾患」
 二・一 精神病遺伝説を常識とした学校教育
 二・二 偏見に加担する教科書と法
 二・三 偏見改まらぬ教科書
 二・四 開かれた精神医療をめざして
 二・五 地域精神医学の現状
第三章 旭川少女殺人事件と「発達障害」
 三・一 「発達障害」という流行精神病の作り方
 三・二 旭川女子中学生いじめ凍死事件 雪の少女へのレクイエム
 三・三 雪の少女の哀しみ
 三・四 隠蔽のための「再調査」
第四章 事件と映画に思う
 四・一 自死とは世界の消去なのか 大阪放火事件に思う
 四・二 映画『どうすればよかったか?』を観た人へ
第五章 原発事故被害者の精神鑑定
 五・一 原発被害者が死ぬ前に見た景観
     [精神鑑定書1]菅野重清さん  
     [精神鑑定書2]大久保文雄さん
     [精神鑑定書3]Aさん
 五・二 原子炉との深夜の対話

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315827/