星野陽平『芸能人に投資は必要か? アイドル奴隷契約の実態』(10月26日発売)

著者の星野陽平氏は学生時代から知っている。といっても、わたしは星野氏よりもふた回りほど年上で、早稲田大学の学生サークルに請われて部室に出入りしていた関係でおそらく一方的に、そこに知己のあった氏を知ったということになる。

そのサークルからは、歌舞伎町やアジア系犯罪組織などの本を著し、編集プロダクションを立ち上げたO氏、『噂の真相』でデビューしたフリーライターのO・K氏、作品社の取締役編集者となったF氏、ほかにも業界紙記者や出版社の女性編集者など、いまにして思えば錚々たる人材を輩出したことになる。

当時すでに何冊かの著者があり、総合誌の編集者、出版プロデューサーだったわたしは、ひそかに彼らの「師」を任じていた。ちょうど『アウトロー・ジャパン』(太田出版)を立ち上げる直前のことだったが、星野氏についてはほとんどコンタクトがなく、のちに市場系の本を著したことで記憶が喚起された記憶がある。

鹿砦社から刊行された『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』は、版を重ねて準ベストセラーと呼ばれるにふさわしい内容を擁していた。アマゾンを見れば旧版・新版ともに、高評値のレビューがそれを裏付けている。その続編ともいうべき新刊が『芸能人に投資は必要か? アイドル奴隷契約の実態』(鹿砦社)である。

◆日本の芸能界の構造的な弱点 

上條英男氏の『BOSS』がプロデューサーの側からみた芸能界の歴史であれば、星野氏の芸能本はノンフィクションライターが膨大な資料を背景に書き上げた、芸能界のドキュメンタリーということになる。

前著とともに、堅実な作業の積みかさねがなさしめた仕事である。日本の芸能界の問題点は星野氏が強調するとおり、アメリカのショービジネスとの対比に明らかである。すなわち、日本では音楽事務所協会の「統一契約書」によって肖像権(パブリシティ権)や出演を選択する権利が、芸能事務所に帰属することになっている。そこで「奴隷契約」に縛られたタレントたちは独立をめざすのだ。それはしかし、タレントを食い扶持にしている事務所が許してくれない。

アメリカでは俳優の労働組合が1913年に設立され、劇場に対して何度もストライキを積み重ねることで労働条件の改善がはかられてきた。組合はユニオンショップであり、強力な発言権をもっている。しかもタレント・エージェンシー(芸能プロ)は反トラスト法の規制で、制作業務を行なうのを禁じられている。したがって、芸能プロが俳優や歌手を抱え込んで、番組制作まで仕切ることはできないのだ。単なる営業代理店ということになる。

◆このままでは、本格的なショービジネスは育たない

著者の調べによると、アメリカではタレントと芸能事務所(タレント・エージェンシー)の関係は対等であるという。そしてアメリカの芸能事務所は、そもそもタレントに投資をしないのだ。しばらく前にNHKで放送されていたアクターズ・スクールのような、アクティング・スタジオ(俳優養成学校)がタレントを育てる。タレント(俳優)志望者たちは、ここでスキルを磨きながらエージェントをさがす。ちょうど大リーグにおけるエージェント(代理人)をイメージすればいいのだろうか。エージェントはモデル、コマーシャル、演劇の三つに区分される。

とはいえ、演劇ジャンルでは高度な演技力がもとめられるために、ハリウッドでもエージェントを持てない俳優が多いのだという。そこでオーディションが大きな位置を占めてくる。日本でも大きなプロジェクト(予算規模の大きな映画など)ではオーディションが行なわれているが、実態は芸能事務所の力関係によるところが大きいと言う(独立系の俳優の話)。

じっさいに、筆者はVシネマの脚本を手がけた経験があるが、小さな芸能事務所の売り込みはすさまじい。ギャラの未払いも気にせずに、何の実権もない脚本家に売り込んでくる。それはしかし、ほとんど意味がなかった。キャスティングの大半は、配給元の東映やミュージアムに、箱書き(あらすじ)段階から握られていたのだから。

◆生々しいタレント稼業の実態

日米のタレントの境遇の違いは、そのままショービジネスの規模の違いに反映される。日本のように芸能事務所が「奴隷契約」でタレントを縛り、テレビ局と事務所間の力関係や政治力で配役が決まるという馴れ合いでは、真のアーティスト精神は生まれない。作品のために厳しい役づくりに取り組み、まさに「当たり役」という奇跡を演じるのは、タレント(才能)ではなく努力であろう。その努力を、日本の芸能界は必要としないのだ。

いっぽうで、独立して厳しい条件からでも再出発しようとするタレントを、テレビ局と芸能事務所が「干す」という行為に出る現実がある。本書はその意味では、芸能人の残酷物語の第二幕でもある。

もはや論じるよりも内容を列挙しておこう。本書のタイトルとは別ものである。安室奈美恵の独立騒動、江角マキコ独立後の「暴露報道」、ビートたけし独立事件の裏側、安西マリア失踪事件の真相、ちあきなおみの芸能界への失望、中森明菜の独立悲話、加勢大周の芸名騒動、ホリプロからの独立した石川さゆりの演歌力、松田聖子性悪女説は音事協の陰謀である、などなど。どうです、すぐにも読みたくなったでしょ?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
編集者・著述業・Vシネマの脚本など。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社)など多数。

奴隷契約、独立妨害とトラブル、暴力団との関係とブラックな世界―著者は公正取引委員会で講演、その報告書で著者の意見を認め、芸能界独占禁止法違反を明記!芸能界の闇を照らす渾身の書!

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月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

 

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』

西城秀樹をはじめ、日活ポルノ女優の田中真理、青春スター吉沢京子、安西マリア、カルメン・マキ、舘ひろし、浅田美代子、川島なお美など、多くのスターと歌手を発掘してきた上条英男の自伝が、この『BOSS』である。われわれも名前をよく知る芸能人たちの、素の顔がひもとかれる。そんな覗き見をする興味と共扼しながら、読みやすい語り口にも助けられて3時間ほどで読み通してしまった。著者の語り口をとおして、芸能界を身近に感じる本だと紹介しておこう。

◆発掘されるスターのカッコ悪さと神話化

この種の本、といっても類書がそれほど多いわけではないが、興味ぶかいのはスターが発掘されるその瞬間であろう。西城秀樹は広島の地元ですでにロック系、ジャズ系のバンドを経験していたことは知られているが、家出同然で東京(原宿)に出てきてからの話は初めて知った。

それなりにアーティスト志向だったはずの秀樹が、徹底的に田舎少年として紹介されている。著者が描写するところはすこぶるカッコ悪いが、真実なのかもしれない。とくに反対する両親に対して、秀樹の姉が説得したことはあまり知られていないのではないか。秀樹の姉は、某大物ヤクザの姐さんとして斯道界に知られるひとだ。秀樹の父親が、彼がブレークしてからは、自宅では芸能パパ的に振る舞ったことは書かれていない。

スターがブレークした後のマネージャーと事務所の軋轢は、読む者を不快にするほど型どおりの醜さである。それにしても、敏腕スカウト(マネージャー)への手切れ金が100万円とは情けなさすぎる。


◎[参考動画]西城秀樹「傷だらけのローラ」(1974年)

舘ひろしが硬派暴走族だったというのは、かなり盛られた話だというのが定説だが、チームに岩城滉一がいたのだから伝説が成立するのもやむをえないところだろう。いまはどうなのかは知らないが、かつての不良青年青少女は芸能界でブレークするのが、ツッパリの延長にあった。ツッパルぐらいでなければ、野心は実現できないというべきであろう。かの関東連合ですら、芸能界入りを展望していたという。

悪い出会いもあるところが、本書の圧巻である。吉沢京子の名前が出れば、いま還暦以上の読者諸賢にとっては、甘酸っぱい記憶がドーパミンを分泌させるのではないだろうか。その吉沢京子を二股をかけて傷つけたのが、当時は公然と付き合っていたはずの松平健だったという。なんと同棲状態だった松平の部屋で、吉沢は彼の浮気のベッドを目撃してしまうのだ。いまも清純派の吉沢の涙を思うだに、松平の卑劣は上條ならずとも怒りが納まらない。

その松平健は大地真央との離婚後に、再婚した松本友里をも自殺に追い込む。著者は「私が死ぬまでにどこかで公にしたかったので、まさに今は溜飲が下がる思いである」と、そのくだりを締めている。テレビドラマでの松平健の正義漢ぶりはしたがって、まったくの演技ということになる。人は見かけによらぬものだ。


◎[参考動画]吉沢京子 「恋をするとき」(1971年)

◆「芸能プロ」と書いて「芸能ゴロ」ではなかったのか

筆者のように、芸能界に明るくない者にとって、60年代から70年代の芸能プロの構造変化は、わかりやすかった。渡辺プロといえば「ナベプロ抜きに歌謡番組は成立しない」とまで言われた芸能王国だったが、その牙城を崩したのは「スター誕生」をはじめとするコンテスト系の公募イベントだった。

爾後、堀プロ、周防郁雄(バーニング)、田辺エージェンシー、オスカープロモーション、太田プロという具合に芸能プロが林立して覇を競い合う。ジャニー喜多川との掛け合いのような関係も興味ぶかい。外から描けば、「芸能ゴロ」と呼ばれることが多い面々だが、著者が内側から書くことによって素顔に触れられる気がした。


◎[参考動画]安西マリア「涙の太陽」(1973年)

ところで著者は77歳にして現役のマネージャーにして、スタジオで歌唱指導するプロデューサーである。ひとりの歌手にかける夢、売ってナンボのステージ興業(古いか)、裏切りや出し抜きがふつうの芸能界で、いまも歌い手にエンターテイメントを仮託する姿は清新でうつくしい。


◎[参考動画]Flower Travellin’ Band(ジョー山中)「Anywhere」(1970年)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
 編集者・著述業・Vシネマの脚本など。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社)など多数。

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』西城秀樹、ジョー山中、舘ひろし、小山ルミ、ゴールデン・ハーフ……。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

本日発売!月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

◆冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない

 

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

きっかけは、いっけん偶然かのように見紛われる。ある日偶然は、主人公が知りもしない世界へ強引に連行し、激烈な鞭打ちを浴びせかける。「どうして?」、「なにがどうなったの?」疑問をゆっくりと巡らせる暇もなく、主人公を「殺人犯人」と決めつける報道が全国を席巻し、主人公の名前や顔写真はおろか、住処の町名までが、量販店のバーゲンセールの広告を掲載するかのような、気軽さで新聞に掲載される。容赦のない取り調べは、有形でこそないが純粋な意味において「暴力」以外の何物でもない。

冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない。もっとも不幸な人は、何の関係もない咎により、首切られる(死刑)。または処刑台までいかずとも、長期にわたり拘置所、刑務所に幽閉される。あるいはまれに、嫌疑が晴らされマスコミにより「冤罪被害者」として扱われる場合がある。逮捕当時、あるいは公判中「犯人」と決めつけた報道を垂れ流していた罪など、ついぞ反省することなく、「加害者」を「悲劇の主人公」と報じる矛盾に、うち苦しむ報道機関はない(個人としての反省のケースはみられる)。

冤罪被害から解放されても、失った時間、主人公に襲い掛かった罵詈雑言の数々、報道被害が主人公に残した「加害の総体」は、何らかの尺度で測りうるものではない。主人公の語る言葉を、大衆はわかったような気になっているかもしれないが、それは大方の場合誤解である。わたしがこのように断定的に主人公が被った非道を論じるのは「テレビを見て、普通に笑っているんだと気がついたんです」と、事件解決後20年も経過した、主人公からの言葉をつい最近聞いた衝撃に由来する。笑いながら会話していたが、わたしの心の中は冷え切った。主人公に対して無遠慮であった自分を恥じた。

◆主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る

主人公はしかし、ただの被害者でありつづけたわけではない。「唯言」に登場する、執筆者をはじめとする、広大な人脈は、主人公が能動的に事件のあとを生きた証だ。「唯言」に登場する関屋俊幸、弓削達、高橋宣光、玉光順正、高田千枝子の各氏は主人公がいなければおそらくは出会うことがなかったであろう、それぞれ異なる分野で活躍された方々だ。あたかも書籍を編纂するように、主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る。その過程及び到達点から、乱反射する日本の姿(歴史・思想傾向・民族性など)の本質を、掌握した主人公が重ねて語るキーワードは「無答責と答責」である。

古代ローマ時代から、日本書紀を経て江戸・徳川時代から、明治維新、諸々の戦争を経て現在へ。主人公の歴史観は教科書で綴られるそれとは、かなり趣を異にする。日本の成り立ちについても同様だ。浅学で史実をほとんど知らない、あるいは「こうあって欲しかった」と幼児のように駄々をこねる、歴史修正主義者に対して、主人公の主張はどう映るか。冷厳な史実を見つめ続け、見つめるだけではなく、みずからが責任を取ろうとの試みは、常人の発想しうるものではなく、後にも先にも同様の試みを耳にしたことはない。

◆人間に暖かい社会とは何か?

主人公は国家が放棄した戦争責任を、「市民がどう引き受けるか」というとてつもない試みに足を踏み入れる。韓国と日本の間で何度もシンポジウムや講演会を開催する「答責会議」の発足は、主人公の存在なしにはありえなかった。その成果は『無答責と答責』(寿岳章子。祖父江孝男編、お茶の水書房 1995年)として世に出ることになるが、じつは『無答責と答責』の実質的編者は、主人公であったと、複数の知人から聞いた。その行動力の源泉は、はたしてなんであるのだろうか。冤罪被害者としての経験だけですべてを説明するのは不可能だとわたしは断じる。

主人公を際立たせすぎて紹介したが、「唯言」執筆者の方々はいずれも、個性的なその分野でトップを走った方ばかりである。当初部数限定の自費出版として編纂された「唯言」を手にした多くのひとびとは敏感に反応した。時代が「唯言」を要求していたといってよいだろう。世界史から物語が消えうせ、歴史が「自己解散」を宣言し、世界的にも事象はもっぱら権力者の気まぐれか、2進法による貸借対象表の合法的改ざんによる幻想のなかにしか存在しないかのごとき今日、「唯言」は無理やりにでも「自己解散」を宣言した歴史に「再結集」を命じる。

主人公・山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)は、冷徹な態度で、人間に暖かい社会とは何かを仲間と語り合った。

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

 

函館市HPより

 

函館市HPより

9月6日北海道を大地震が襲った。295万世帯が停電し、泊原発は緊急停止した。現地の様子を調べようと各自治体のホームページを閲覧していると、函館市のホームページに驚かされる文字があった。

そうだった。函館市は大間原発の建設停止を求めて、前代未聞、市が国や電源開発を提訴し、建設の差し止めを求める訴訟が提起されている。同訴訟の弁護団に加わっている井戸謙一弁護士は「初めてのケースですので、どういう審議になるかわかりませんが、画期的な提訴だと思います」と東京地裁で語ってくれていた。

提訴に至る考え方を説明した工藤壽樹函館市長の説明が、簡潔でわかりやすい。

このような姿勢が、住民の生命財産を守る責任者としては、至極原則的な考え方であろう。しかしながら、多くの都道府県や知町村長は、ごく原則的な判断もできずに、住民を危険に直面させている。

函館市HPより

◆吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬さん、それは誤解です!」

そんな中、本日9月11日、『NO NUKES voice』17号が発売される。「フクシマを忘れることなく多角的に」の編集方針に揺らぎはない。

本号巻頭では前号16号で広瀬隆さんが展開した「原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)」への問題提起に対する吉原毅さん(原自連会長)からの対論的論考「広瀬さん、それは誤解です!」を特別寄稿として掲載させていただいた。メガソーラー等の自然エネルギーへの過度の依拠の危険性を指摘した広瀬隆さんに、城南信用金庫理事長時代から「反原発」に様々な取り組みをしてこられた吉原さんが「誤解を解く」解説を丁寧に展開されている。加えて木村結さん(原自連事務局次長)にも吉原さんの論をさらに補強する論考「原自連は原発ゼロのために闘います」をご寄稿いただいた。

吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬隆さん、それは誤解です!」(『NO NUKES voice』17号より)

◆高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」は読んでいると少し重たい気分にさせられるかもしれない。畢竟特効薬などなく、わたしたち個人が考え、行動する以外に回答はないのかもしれない。

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」(『NO NUKES voice』17号より)

◆蓮池透さんと菊池洋一さん──二人の元当事者が語る「原発の終わらせ方」

 

蓮池透さん(『NO NUKES voice』17号より)

蓮池透さんは、拉致被害者の家族であり、東京電力の社員であった21世紀初頭日本を取り巻いた政治事件の中心に、偶然にも居合わせた人物だ。蓮池さんは東電を定年前に退職した。3・11以来東電には様々な怒りを感じておられる。蓮池さんご自身福島第一原発の3号機と4号機に勤務していたご経験の持ち主で、今回初めて明かされるような驚くべき杜撰な現状が語られる。「東京電力は原発を運転する資格も余力もない」は故吉田昌郎所長とも親しかった蓮池さんのお話は必読だ。

菊池洋一さんは元GE技術者の立場から、やはり原発建設がいかに、問題を孕んでいたのか、を解説してくださっている。簡潔に言えば「いい加減」なのである。しかしながら菊池さんのお話からも、現場の技術責任者でなければ知り得ない、驚愕の事実がいくつも暴露される。

 

菊池洋一さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆本間龍さん「東京五輪は二一世紀のインパール作戦である」〈2〉

本間龍さんの連載「原発プロパガンダとは何か?」は今回も東京五輪の問題を鋭くえぐり出している。「国民総動員」の様相を見せだした「ボランティア」と称する「無償労働」の問題と意義を今回も徹底的に解析していただいた。「反・脱原発と東京五輪は相容れない」編集部の代弁をしていただいた。

◆何度でも福島の声を──井戸川克隆さん(元双葉町町長)、吉沢正巳さん(希望の牧場)

元双葉町町長の井戸川克隆さんの「西日本の首長は福島から何を学んだか」は鹿児島県知事三田園をはじめとする西日本、とりわけ原発立地現地行政責任者に対して、匕首を突きつけるような、厳しい内容だろう。冒頭ご紹介した函館市との対比が極めて不幸な形で鮮明になろう。

「吉沢正巳さんが浪江町長選挙で問うたこと」は「希望の牧場」で奮闘し続ける吉沢さんからの、吉沢さんらしい問題提起だ。行動のひと吉沢さんは浪江町長選挙に出馬した。浪江役場前には「おかえりなさい、ふるさと浪江町へ」の横断幕が掲げられてる。対して、吉沢さんは「除染してもサヨナラ浪江町」の看板を掲げる。この一見対立していそうで、不和解のように見えるメッセージを吉沢さんは「どちらも正しい」と語る。そのことの意味は?吉沢さんが闘った町長選はどのようなマニフェストだったのか?

希望の牧場・吉沢正巳さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆佐藤幸子さんの広島・長崎報告と伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在

「広島・長崎で考えた〈福島の命〉」は事故発生直後から、対政府交渉などの先頭に立ち続けてきた佐藤幸子さんの広島・長崎訪問記である。被災者の間に生じる(生じさせられる)軋轢を乗り越えて、お子さんの成長を確認しながら広島と長崎に原爆投下日にその身をおく、福島原発事故被災者。70余年の時をたがえて交わる被災者と、被災地のあいだには何が生じたのだろうか。

伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在(その1)では、事故後の避難で何が問題だったのかの実証的な指摘が詳細に分析される。7年が経過して、記憶もおぼろげになりがちな事故の進行と非難の実態が、時系列で再度明らかにされる。

佐藤幸子さんの広島・長崎報告(『NO NUKES voice』17号より)

 

黒田節子さんが書評した『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』(三一書房2018年6月)

◆黒田節子さんによる書評『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』

『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』(三一書房)を解説的に紹介してくださるのは黒田節子さんだ。

「首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由」を山崎久隆さんが解説する。ここで事故が起きたら東京は壊滅する=日本は終わる。それでも東海第二原発を再稼働する道を選ぶべきであろうか。

「セミの命も短くて…」は三上治さんのが経産省前テント村で生活するうちに、四季の移ろいに敏感になった、三上さんの体験記だ。ビルとコンクリートだらけの、霞が関の地にだって季節の変化はある。当たり前のようで、重要な「気づき」を三上さんが語る。

「赤ちゃんの未来は、人間の未来――国家無答責とフクシマ」(山田悦子が語る世界〈1〉)は本号から連載を担当していただく山田悦子さんによる論考である。「国家無答責」の概念は国家としての日本を理解するうえで欠くことができない重要な概念だ。山田さんは長年の研究で独自の「法哲学」を確立された。次号以降も本質に迫るテーマを解説していただく。

横山茂彦さんの「われわれは震災の三年前に、3・11事故を『警告』 していた!」は雑誌編集者にして、多彩な著作を持つ横山さんを中心に、東京から札幌まで1500キロを自転車で走りながら、原発に申し入れ書を提出するなどの行動が行われていた報告である。横山さんの多彩な興味範囲と行動力にはひたすら驚かされるばかりだが、このような人がいるのは、誠に心強い。

◆板坂剛さんと佐藤雅彦さん

 

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」(『NO NUKES voice』17号より)

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」は、芸風が安定してきた板坂による、例によって「右派月刊誌」へのおちょくりである。大いに笑っていただけるだろう(闘いにユーモアは必須だ!)。

佐藤雅彦さんの「政府がそんなに強硬したけりゃ民族自滅の祭典2020東京国際被爆祭をゼネストで歓迎しようぜ!」。佐藤さんの原稿はいつも下地になる資料が膨大にあり、事実や史実を示したうえで、最後に「佐藤流」のひねりで「一本」を取る。「板坂流」とは異なり、読者にも解読力が求められるが、内容はこれまたユーモアに満ちた批判である。

その他全国各地の運動報告や読者からのご意見も掲載し、本号も全力で編纂した。
地震・大雨・酷暑と自然災害が連続したこの数カ月。大震災列島の未来は〈原発なき社会〉の実現なくしてはじまらない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

本日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

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『NO NUKES voice』vol.17
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被曝・復興・事故収束
安倍五輪政権と〈福島〉の真実

[グラビア]サン・チャイルド/浪江町長選「希望の牧場」吉沢正巳さん抗いの軌跡
(写真=鈴木博喜さん)

[特別寄稿]吉原 毅さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 会長)
広瀬さん、それは誤解です!

[特別寄稿]木村 結さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 事務局次長)
原自連は原発ゼロのために闘います

[追悼]編集部 志の人・納谷正基さんを悼む 

[報告]高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?

[講演]蓮池 透さん(元東京電力社員/元北朝鮮による拉致被害者「家族会」事務局長)
東京電力は原発を運転する資格も余力もない

[講演]菊地洋一さん(元GE技術者)
伝説の原発プラント技術者が語る「私が原発に反対する理由」

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈14〉
東京五輪は二一世紀のインパール作戦である〈2〉

[講演]井戸川克隆さん(元双葉町町長)
西日本の首長は福島から何を学んだか

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
希望の牧場・希望の政治 吉沢正巳さんが浪江町長選で問うたこと

[報告]佐藤幸子さん(福島診療所建設委員会代表)
広島・長崎で考えた〈福島のいのち〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈1〉その始まり

[書評]黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)   
セミの命も短くて……

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマ

[報告]横山茂彦さん(著述業・雑誌編集者)
われわれは三年前に3・11原発事故を「警告」していた!
環境保全をうったえる自転車ツーリング【東京―札幌間】波瀾万丈の顛末

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
『不・正論』9月号を糺す!

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
政府がそんなに強行したけりゃ 
民族自滅の祭典・2020東京国際ウランピックをゼネストで歓迎しようぜ!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
首都圏の原発=東海第二原発の再稼働を止めよう

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
原発事故 次も日本(福島のお寺の張り紙)
二度目の原発大惨事を防ぐ・東海第二を止めるチャンス

《福島》春木正美さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去について・第二弾

《原電》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
日本原電は、社会的倫理の欠落した最低の会社だ!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
核分裂「湯沸し装置」をやめよう
~とうとう東海第二設置許可を認可する規制委、第五次「エネ計」で原発推進する経産省~

《地方自治》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長、杉並区議会議員)
全国自治体議員・市民の連携で安倍政権の原発推進に歯止めを!

《福井》木原壯林さん(「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」)
原発の現状と将来に関わる公開質問状を 高浜町長、おおい町長、美浜町長に提出

《島根》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発3号機の適合性審査申請に対する了解回答は撤回すべきだ!

《伊方》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
二〇一八年九月原発のない未来へ 伊方原発再稼働反対全国集会

《玄海》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会)
原発は止め、放射性廃棄物は人から離し測定して監視し地下に埋めても修復できる体制を

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『言論の飛礫(つぶて)─不屈のコラム』(鎌田慧・同時代社)

『NO NUKES voice』vol.17
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GW4GYDC/

◆疑惑の4点がすべて載った衝撃記事

 

本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号より

本日9月7日発売の月刊『紙の爆弾』(2018年10月号)に掲載されている記事「安倍晋三『下関暴力団スキャンダル』の全貌を暴く」は、安倍首相や自民党にとって「不都合な事実」が満載だ。

いまインターネット上で話題の#ケチって火炎瓶 #安倍とヤクザと火炎瓶 の事件を紹介。そのうえで執筆者のタカノシゲル氏が過去の取材にさかのぼって具体的な人名をあげ、背後にある全体の構造を示しているからだ。

キーワードは4つ。①安倍晋三、②工藤會(を含む暴力団)、③自民党(および同党大物政治家)、④警察、である。

◆#ケチって火炎瓶 “安倍とヤクザと火炎瓶

あらためて安倍首相をめぐる暴力団がらみの事件を整理しよう。1999年4月の下関市長選で、安倍陣営の江島潔候補(現参院議員)を応援するため、建設会社会長の小山佐市氏が、対立候補の古賀敬章氏に対する誹謗中傷ビラを撒いた。選挙妨害である。

そもそもが当時安倍首相の佐伯伸之秘書(故人)から中傷ビラ配布を頼まれたというのが小山氏の主張だ。

佐伯秘書は古賀候補の女性スキャンダルを扱った週刊誌記事を小山氏に見せ、「それで、僕は『こんな記事が出るヤツは国会議員の資格がない』と 小山に言うた」と、スキャンダル記事は見せたが、中傷ビラをまけとは言っていないとインタビューに答えている。

 

続きは本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号で!

そして佐伯秘書は絵画購入の代金として300万円を小山氏に支払ったが、それが恐喝だとして小山氏は逮捕。しかし不起訴となる。

このあと、選挙で対立候補を「当選させないための活動」をしたにもかかわらず、見返りがなかった。そのため安倍首相らとも交渉して念書の類の書面を交わした。(この念書が出てきたことで、今回の事件に火がついた)

ところが思い通りに行かなかったため小山氏は、指定暴力団「工藤會」系の高野組・高野基組長に依頼して、2000年6月から8月にかけて、安倍晋三氏宅ら4軒(間違えて攻撃した場所を含めれば5軒)に火炎瓶を投げさせた。

国会議員の自宅や後援会事務所など4か所に火炎瓶が投げられたのだから当然、大騒ぎになり大々的な捜査が行われるはずだ。

しかし報道もされず、当初はだれも逮捕されなかったのである。これは考えられないことだ。安倍氏の筆頭秘書・竹田力氏(故人)は、山口県警刑事部捜査第一課次長(警視)だ。

こうした警察につながる人物が安倍氏の筆頭秘書をつとめていたが、前述の300万円恐喝で逮捕されたが小山氏はすぐに釈放され起訴もされていない。そして連続火炎瓶事件でも、山口県警は大々的に動かなかったという。

事件から3年経った2003年11月、小山氏、高野組長ら複数名が火炎瓶事件で逮捕起訴され、小山氏懲役13年、高野組長懲役20年(服役中)の判決が下ったのだ。

事態が急変したのは、服役していた小山佐市氏が今年2月に出所し、逮捕直後から事件を追っていたフリージャーナリストの山岡俊介氏(アクセスジャーナル主宰、事件の連載記事執筆)と、火炎瓶事件の電子書籍「安倍晋三秘書が放火未遂犯とかわした疑惑の『確認書』」の著者、寺澤有氏に連絡してきたことだ。

2人は急遽下関に飛び、5月13日に5時間にわたり小山氏をインタビューし動画撮影を行った。決定的なのは、それまでに存在はわかっていたが現物が出てこなかった、安倍事務所と小山氏が交わした文書3通の現物を2人が目撃し、動画撮影したことである。

選挙妨害後のトラブル処理のために1999年6月から7月にかけて署名捺印された2通の確認書と1通の願書だ。

それによると1999年7月3日に、安倍首相と小山氏は一対一で面談しているのである。なお、2014年8月にも山岡氏と寺澤氏が筆頭秘書の竹田力氏を取材したさい、竹田氏は、小山氏と安倍首相が1対一で会ったことを認めている。それが、今回文書でも確認されたのだ。

現在、総理大臣を務めている人ぶるが、民主主義の根幹にかかわる選挙妨害に関与し、指定暴力団とつながりの深い人物と直接接触していた事実は重い。

しかも、当初から追及してきた山岡俊介氏が新宿の階段から転落する事故も起きている。過去に山岡氏は、取材執筆活動が引き金となって自宅を放火されたり、脅迫状やカッターナイフを送りつけられた事実があるだけに、私は事故直後に彼のインタビュー記事を書いている。

◆安倍首相の国会答弁「一切の関わりを断ってきた」の重大な意味

本件に関してマスコミは報道を避け、野党も本格的な追及をしない中で、ただ一人山本太郎参議院議員が7月17日の参院内閣委員会で安倍首相に質問した。この中で注目すべきは、安倍首相の次の答弁だ。

「一切の関りを断ってきた中において、発生した事件であるわけでございます」

筆頭秘書である故竹田氏の証言(もちろん音声録音している)に加え、今回現物が明らかになった書面により、安倍首相と小山氏が直接接触していたことは明らかだろう。したがって「一切の関りを断ってきた」というのはまったく通用しない。

だが、「紙の爆弾」10月号のタケナカシゲル氏の記事が衝撃的なのは、さらに深く、安倍首相の「一切の関りを断って」の意味に斬り込んでいるからだ。

《「断ってきた」という言葉に、自民党と工藤會の蜜月が表現されているのだといえよう。たとえば2001年の参院選挙において、福岡選挙区から当選した松山政司議員(現在三期目)は、出陣式を工藤會館(現在、暴対法で閉鎖中で行おうかと溝下秀男工藤會総裁(故人)に冗談を言って、逆にたしなめられていた。これは同じ選挙に比例区として出馬した作家・宮崎学氏の選挙準備の際に、筆者が溝下氏から直接聴いた話である》(記事より)

ここの引用した以外にも、自民党の選挙と工藤会の関係が実名を含めて照会されている。

そしてもうひとつ、警察と暴力団との関りについて。福岡の博多の違法カジノバーの手入れ情報を流して報酬を得た警察官ら10名が逮捕された2000年の事件に触れていることも興味深い。

その違法カジノの経営者は、工藤會の最高幹部だった。

こうしてみると、安倍晋三・自民党・工藤会(ほかの暴力団も)・警察 による枠組みの中で、いま話題とされている#ケチって火炎瓶事件が位置付けられる。
 
このような人物が自民党の総裁選に出馬することは論外だし、総理辞任、議員辞職は当然だ。

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

7日発売!月刊紙の爆弾10月号

日本史上最大の英雄織田信長は、黒幕の謀略によって殺されたのでなければならない。これが「家来に殺されたバカ殿」ではない、求められる歴史ドキュメントなのである。

 

安部龍太郎 『信長はなぜ葬られたのか 世界史の中の本能寺の変』(2018年7月幻冬舎新書)

◆安部龍太郎の『信長はなぜ葬られたのか』

直木賞作家・安部龍太郎の『信長はなぜ葬られたのか』https://www.amazon.co.jp/dp/4344985052/(幻冬舎新書)が読まれているようだ(公称7万部)。そこでさっそく読んでみたが、小説『信長燃ゆ』のモチーフをエッセイにしたようなものだった。

史料的には特筆するようなものはない。たとえば、幕末に匹敵する尊皇運動が起こり、関白近衛前久が信長殺しをくわだて、明智光秀に白羽の矢を立てたというもの。そのいっぽうで、イエズス会は神になろうとした信長を倒すために、これまた信長包囲網を形成する。そしてポルトガルを併呑したスペインとの交渉が決裂したとき、賽は投げられた。秀吉も密偵の知らせでこれを知っていたが、あえて動こうとはしなかった。と、作家が勝手に「思う」のがこの作品のすべてだ。

イエズス会とキリシタン勢力が大きな役割りを果たし、権力中枢(信長家臣団・朝廷と貴族たち)では守旧派と改革派がせめぎあう、テーマとしては面白いことこのうえないが、じつは歴史研究ではほとんど異端の「朝廷黒幕説」「イエズス会の陰謀説」を足してみたものの、戦国時代のゴッドファーザーこと黒田官兵衛や近衛前久らの動きが有機的に構成されているわけでもなく、買うんじゃなかった感がつよく残った。いや、初めて氏の作品を読む人にはおそらく新鮮に感じられるにちがいない。何しろイベリア両国(スペイン・ポルトガル)の植民地政策(外圧)に対して、信長が採った策が妄想されるのだから。

作家の歴史エッセイは、研究書よりもわかりやすいという原理からか、ベストセラーになることが多い。秋山駿の『信長』は流麗な文章で織田信長の足跡を追い、今日も隆盛な信長ブームをつくり出した。上杉謙信をあつかった津本陽の『武神の階(きざはし)』も史料を羅列したエッセイ風の読物だが、地方紙に連載時から評判を呼んでよく読まれた。

ただし、原史料や軍記ものをほとんど無批判に取り入れている結果、すこしでも歴史研究に馴染んだ向きには読み飽きてしまうのだ。安部龍太郎の妄想力と戯れるのは悪くないけれども、朝廷黒幕説やイエズス会黒幕説など、史料的な裏付けが希薄な論がはびこるのはよろしくない。というわけで、安部作品のバックボーンになっている立花京子(故人)のイエズス会黒幕説を俎上に上げてみよう。

◆立花京子のイエズス会黒幕説は『信長と十字架――「天下布武」の真実を追う』

 

立花京子『信長と十字架―「天下布武」の真実を追う』(2004年1月集英社新書)

立花京子のイエズス会黒幕説は『信長と十字架――「天下布武」の真実を追う』https://www.amazon.co.jp/dp/4087202259/(集英社新書)1冊である。その主要な論点は、南欧勢力(イエズス会・キリシタン・ポルトガル商人・イベリア両国国王=フェリペ2世)が信長に天下布武思想を吹き込み、信長はその軍事技術的な援助のもとに天下統一を進めた。信長が神になろうとしたので、光秀に信長を討たせた。さらに謀反人の光秀を後継者にはできないので、秀吉に光秀を討たせたというものだ。

イエズス会の軍事技術的な援助とは、鉄砲の開発と硝石の輸入に関するものだという。その論拠として、キリシタン大名大友宗麟の書状、すなわちイエズス会宛の「毛利元就に硝石を輸入しないように」というものを挙げている。

だが大友や毛利にかぎらず、鉄砲で武装した大名は無数にいた。イエズス会と結んでいなければ、鉄砲の玉薬の原料である硝石が手に入らないのであれば、東の上杉氏や武田氏、北条氏などの有力大名はどうしていたのだろうか。そもそも硝石が輸入するしかなかった、という史料はない。硝石を鉱物か何か埋蔵されたものと考えるから、輸入に頼らざるを得ないことになってしまうのだ。硝石は日本のような湿度の高い家屋でふつうに採取できる、有機化合物すなわちバイオテクノロジーなのである。人間や動物の排尿にひそむバクテリアが化学変化して結晶化したものが硝石なのだ。つまり床下から採取できる、きわめて身近な物質である。国内で大量生産されるようになるまで、輸入先はもっぱら東南アジアだった。けっきょく、イエズス会に依頼したにもかかわらず、大友宗麟は毛利元成との門司城をめぐる五次にわたる攻防で敗北しているのだ(門司城失陥)。イエズス会の実力がどれほどのものか知れるといえよう。

◆イエズス会という修道会がどのような組織なのか

そもそもイエズス会という修道会がどのような組織なのか、立花京子も安部龍太郎も調べた記述・形跡がない。イエズス会はカトリックだが、プロテスタントの宗教改革運動に対抗するために若い修道士を中心に組織されたものだ。日本の戦国時代には全世界に1000人の会士がいたという。

しかし、たった1000人なのである。日本には使用人もふくめて数十人といったところであろうか。イエズス会の会士がすべて、武器商人であったり技術者であったわけではない。ポルトガル商人をともなう場合はあったかもしれないが、ルイス・フロイスの『日本史』にも『イエズス会士日本通信』にも、商人として旺盛な活動を記したものはない。むしろ南米においてはイエズス会はポルトガル商人と奴隷の売買をめぐって激しく対立している。そしてナショナリズムの台頭したイベリア両国から、イエズス会は排除されていくことになるのだ。

◆立花京子と安部龍太郎は決定的なことを見落としている

本能寺の変後のイエズス会の動向について、立花京子と安部龍太郎は決定的なことを見落としている。本能寺の変が安土城に伝わった翌日、オルガンティーノをはじめとするパードレ(司祭)とイルマン(修道士)および信者の総勢28人は、琵琶湖の沖島に退避しようとする。なぜ信長謀殺の黒幕が退避しなければならないのか、もちろんイエズス会黒幕説は説明してくれない。安土城を脱出した一行は、途中で追いはぎにあってしまう。命よりも大切な聖書を奪われ、衣服も奪われたという。沖島に着いてみると、こんどは漁民たちが湖賊の正体をあらわし、イエズス会の面々を監禁してしまった。何のために黒幕として陰謀を働いたのか、これではわけがわからない。イエズス会の面々は信長からは多大な恩恵を受けたが、光秀からは何も得られなかったのである。そもそもイエズス会は光秀を反キリスト主義として忌み嫌っていた。庇護者である信長がみずからを神にたとえたとしても、逆らうだけの力も意志もなかったはずだ。

 

山岡荘八『徳川家康』文庫 全26巻 完結セット(講談社2012年5月)

それにしても、信長を英雄視するようになったのは、ここ20年ほどのことだ。安部作品も例にもれず、信長の合理主義的な発想とその偉大さが物語の主柱である。戦後、経済成長期には立身出世のスーパースターとして、豊臣秀吉がもてはやされた。高度成長で企業が安定的な業績をおさめるようになると、経営論としての徳川家康論が大勢を占めた。おりしも、山岡荘八の大河小説『徳川家康』がサラリーマンの愛読書となった。

戦前はじつは上杉謙信と楠木正成だった。戦国武将の人気はそのまま、世評を映しているのだといえよう。いま、信長がもてはやされるのは、強いリーダーが待望されているからであろう。

お友だち政治で失政だらけの安倍晋三の人気が、不思議なまでも保たれているのは、ほかに強気のリーダーが居ないからではないか。慎重で何もしない指導者よりも、危険だが改革と豪腕の指導者が望まれる時代。それはファシズムの時代によく似ている。(このテーマ、断続的につづきます)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

大反響『紙の爆弾』9月号

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

けっして仲良しではないが、気になる相手というものがいるものだ。遊び仲間ではないけれども、いつも気になって仕方がないから、何かと内輪で話題にしてみる。そんな経験はないだろうか。鹿砦社および「紙の爆弾」とは距離を置いているけれども、どうも気になって仕方がない。そんなネット雀さんたちの面白いツィートがあった。どうやら、鹿砦社をイジっているらしい(苦笑)。

 

その内容は、旧流対協系の出版社80数社の代表が連名で発信した、杉田水脈のLGBT差別への抗議声明に、鹿砦社松岡利康の名前が入っていないではないか。という「疑問」から、鹿砦社が日本雑誌協会に入っていないことを探り当て、さらにはABC協会および雑誌広告協会にも入っていない。ゆえに「紙の爆弾」は雑誌ではないのではないか(笑)、というものだ。

べつにこのツィートをフェイクだとか、ネガティブキャンペーンだとか言うつもりはない。出版雑誌業界の知識がないゆえに、勝手に思い込むのも無理はないであろう。とはいえ、ブログにしろツイッターにしろ、全世界に発信しているのだ。ちょっと検索すれば「鹿砦社」「紙の爆弾」「雑誌ではない」というキーワードで拡散される怖れがある。どんな些細な情報でも、ネット上の情報源になりうるのだ。

つまりネット上の誤情報として、全世界にフェイクとして流布されることに想像力を働かせなければならない。無責任なフェイクニュースが飛び交う中、SNSや公開サイトに発信する人は、「ネットに書く責任」に自覚的でなければならないのだ。最近はネット上での誹謗中傷・名誉毀損・不法行為についても、訴訟や告発がなされるようになった。単に報道の道義的責任のみならず、法的な責任も発生しているのだと指摘しておこう。書きたいなら、裁判闘争を覚悟して書け。である。

◆LGBTの多様性は、従来の男女二項対立では解けない

ところで、杉田水脈のLGBT差別への出版各社代表の批判は、わたしも言論に関わる人間として大いに賛同するものだが、これらの出版人が本業の中でLGBTの多様性を広めるのでなければ、しょせんは一片の抗議文にすぎない。というのも、LGBTはあまりにも多種多様で、従来の反差別の視点では収まりきれないものがあるからだ。たとえば、よくフェミニストに「女性差別」だと指弾される「萌え絵」「美少女ゲーム」などは、じつは「やおい」「ボーイズラブ」の裏返しの表象なのである。つまり美少女になりたい、萌える美女になりたい。女性になって女性を愛したいという、男性のトランスセクシャルのバリエーションとして成り立っているのだ。ユング心理学における「アニマ」(内的女性性)である。

だとしたら「萌え絵」や「美少女ゲーム」を、男性による女性の隷属や性欲の発散などという文脈は的はずれになってしまう。なぜならば、女性がフィクションの中で男性になって男性を愛したい欲求としての「やおい」や「ボーイズラブ」が、女性による男性の隷属や性欲の発散ではない「アニムス」(内的男性性)と同じ原理だからだ。いや、性欲の発散であってもいいだろう。ただしそれは、トランスセクシャルとしての性欲なのである。それを性差別と言えるのだろうか。かように、LGBTの多様性は奥深い。

 

◆業界団体および雑誌コードと書籍コード

話を「紙の爆弾は雑誌ではない」にもどそう。ツィートの書き手の論拠は、鹿砦社が雑誌協会に加入していないからだという。そうではない。月刊「文藝春秋」とともに、わが国の論壇誌を代表する月刊「世界」の発行元である岩波書店も、日本雑誌協会には加入していない。岩波の「世界」「思想」とともに左派系の学術系雑誌として、全国の図書館に置かれている「現代思想」「ユリイカ」の発行元・青土社も雑誌協会には加盟していない。新左翼系の老舗雑誌「情況」(情況出版)も雑誌協会に入っていない。若者に人気のサブカルチャー雑誌「Quick Japan」の発行元・太田出版も雑誌協会に入っていない。

いや、この「Quick Japan」こそ、書籍コード(ISBN)で発行されている定期刊行物、雑誌(雑誌コード)ではない雑誌なのだ。中身は雑誌であっても、法的(出版ルール的)には書籍という意味である。雑誌コード(「紙の爆弾」は「雑誌02719」)の有無が、出版ルールでは雑誌なのである。この雑誌コードは飽和状態にあり、新規に得ようとすればムックコード(書籍コードと雑誌コードを併用)になると言われている。

そもそもツイッターの書き手が論拠にした日本雑誌協会とは、雑誌をおもな業態にしている大手出版社の業界団体にすぎない。任意の業界団体として取次や図書館行政と交渉したり、広告業界に向けて雑誌の刷り部数を公表したり、雑誌の利益のために任意の活動をしているだけなのだ。ABC協会と雑誌広告協会にいたっては、雑誌の部数を印刷会社の保障のもとにアピールし、広告価格の「適正化」をはかっているにすぎない。広告をとるための団体だと言っても、差しつかえないだろう。

現在5000社とも6000社ともいわれる出版社が、数千といわれる雑誌を出しているとされているが、総合誌(オピニオン誌)と呼べるものは、そのうちわずかである。講談社の月刊「現代」、朝日新聞出版の「論座」、文藝春秋の「諸君」、左派系の「インパクション」(インパクト出版会)、「atプラス」(太田出版)が姿を消し、週刊誌も部数を激減させている。そのような中で、「紙の爆弾」が貴重なのは言うまでもない。それは左右という垣根を越えて、あるいは膨大なネット上の書き手にも解放された誌面として、公共性をもっているがゆえに貴重なのである。わが国から論壇誌・総合雑誌が消えた日、それは民主主義が消える日であろう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
著述業・編集者。酒販業界雑誌の副編集長、アウトロー雑誌の編集長、左派系論壇誌の編集長などを歴任。近著に『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』9月号

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

◆明治維新の過ちが混迷の原点

安倍政権に牛耳られた日本は、断末魔の様相を呈している。国会内でくりひろげられるウソ、はぐらかし、傲慢な態度。

役人は忖度し、公文書を改ざん=歴史偽造を実行しても甘い処分しか受けていない。一部の金持ちはどんどん肥え太り、貧しい人はより貧しくなる。そのうえ生活保護の削減で、関連する行政サービス(40以上)が低下し、保護受給世帯ばかりかほかの人々の生活も苦しくなる。

完全に日本は分断されている。いったい誰のせいか?
それは「安倍のせいだ」という人が多い。

確かにその通りで、貧困を拡大させ、国の基本法である憲法に明らかに違反する法律(安保法制、秘密保護法、共謀罪など)を次々と制定施行してきたのが安倍政権である。

「個別の問題に取り組むのではなく、安倍政権そのものを打倒しなければならない」

保守的な人まで含めて、この共通認識が定着したのは、安保法制反対運動が起きていた2015年夏頃だろう。

だが、もっと深いところに現在の日本の混迷と危機があるのではないか。それは、明治維新そのものが今日の安倍政権の暴走にみられる日本の危機をもたらせている、ということだ。

 

関良基『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(作品社2016年)

そのことを明示してくれたのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新~テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著・作品社刊)である。

この本が提示することをひと事で言い表すと、こうである。

《江戸時代末期に芽生えた立憲主義・議会制民主主義の夢をテロリストたちがつぶし、彼らが権力を握った。そして維新後に専制政治を打ち立て、第二次大戦の敗戦をも生き延び現在に至り、暴走している》

これを著者は「長州レジーム」と名付ける。つまり、この長州レジームをつぶさないかぎり、国民・住民・市民は安心して寝られない、と筆者は思う。

◆150年ぶりの大チャンス

筆者は、かなり長い期間にわたり、現在の日本社会の問題は、敗戦後の改革が徹底しなかったことに原因があると考えていた。

だから、日本をよりよい方向に改革するには、1945年までさかのぼらなければならない、と。

ところが昨年(2017年)3月、共謀罪に反対する集会の会場で、ある人に出会ったときにハットしたのである。

「もう一回、1945年に立ち返って日本を抜本的に改革しないとダメですよね。72年ぶりの真の政権交代が必要です!」
 
と私がいうと、こんな言葉が返ってきた。

「いや、150年ぶりですよ。政権交代どころか150年ぶりに市民革命の大チャンスがやってきた。世界情勢をみても日本国内を見ても・・。アメリカの支配層も割れている」
 
この「150」という数字を聞いた瞬間、私の頭の中でパチっとスイッチが切り替わったような感覚に襲われた。150年前といえば、明治維新である。

以来、それまで見えなかったものが見え、聞えなかった声が聞こえ、新しい視点や人物、情報などが筆者の視野に入ってきた。

◆歴史から消された巨人・赤松小三郎とは?

その中で出会ったのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著、作品社刊)に他ならない。

一読した筆者は、声も上げられないほどの衝撃を覚えた。

明治維新150年を目前にして数年前から、明治維新を批判的に分析・批評する本が相次いで出版され、「明治維新イコール善という神話」に強い疑念の声が増しているのは事実だろう。

しかし、この本が突出しているのは、全国民(国中之人民)を対象とした普通選挙で選ばれた議員が構成する議会を国権の最高機関と位置付ける構想を著した人物に光を当てたこと。

その人物とは、信州上田藩の藩士・赤松小三郎であり、彼の思想と生涯を丁寧に追い、現代の日本と照らし合わせたのが、この本なのだ。

赤松の建白書類では、明文化はされていないものの、女子の参政権も認めていると考えられる。江戸時代のことだから、世界最先端の思想と言ってまちがいない。

赤松の構想では、国軍(陸軍2万8000人、海軍3000人)を創設する。最初は武士がその任にあたるが、有能な者を育てたうえ志願制度に切り替え、軍人に占める士族出身者の比率を減らしていく。

国軍とは別に民兵制度も提唱しているのが特筆に値する。一般国民はふだんは各自の仕事を行い、居住地域で教官により定期的に軍事訓練を受ける。訓練は男女平等に課せられる。

著者の関氏は「小三郎が女性参政権を認める立場だったと推定する根拠はここにある」と述べている。

◆「維新の志士たち」がテロでつぶした立憲主義の夢

驚くのは、赤松小三郎の先進的な構想を認める人たちがたくさんいたことだ。つまり、道理をわきまえた改革者たちの間では、立憲主義は常識になっていた事実は「重い」。明治維新前の慶応年間に!

こうした動きをテロで葬ったのが、まさに長州テロリストたち。彼らによる「長州レジーム」が2018年の現在も続いていることが日本の最大の危機ではないか。

維新で権力を握った彼らが、どのように専制支配体制を固め、現在の安倍政権に至ったのか。近代日本の出発点とされる明治維新そのものに誤りがあったと思わざるを得ない。

そして現在、安倍政権は、長州レジームを暴力的に強化しようとしている。長州テロリストの末裔たちが安保関連法制、秘密保護法、共謀罪、刑訴法改悪・・・と違憲立法を強行し、最終的には憲法改正で大日本帝国を復活させようともがいている。

いま、道理のある人間、心ある人間がやるべきことは、長州レジームを終わらせることである。

かなり危険なところに日本は追いやられているが、一発逆転するチャンスが来ている。

なぜなら、多くの人々が「おかしい」と心の底、奥深いところで気づき始めているからだ。

こんなことを思わせる本だ。最後に著者の関良基氏の言をひいておこう。

《近代日本の原点は明治維新にあるのではない。
江戸末期に提起された立憲主義にある》

長州レジームから日本を取り戻すための必読書である。

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本書の著者、関良基氏の講演案内

■8月18日(土)第107回草の実アカデミー■
 
長州レジームからの脱却
2018年のいま、
テロリストたちに葬られた立憲主義を実現させる
 
講師 関良基氏(拓殖大学教授)
日時 2018年8月18日(土)
   13:30開場、14:00開演 16:40終了
場所 雑司ヶ谷地域文化創造館 第2会議室
http://www.toshima-mirai.jp/center/e_zoshigaya/
交通 JR山手線徒歩10分 地下鉄副都心線「雑司ヶ谷駅」2番出口直結
資料代 500円
主催 草の実アカデミー


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▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

『紙の爆弾』9月号

 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

昨晩開票された新潟県知事選は脱原発をめぐる候補者の姿勢があいまいにされたことで残念な結果となったが、昨日に続き本日発売の脱原発雑誌『NO NUKES voice』16号の怒涛の内容を紹介する。

特集は「明治一五〇年と東京五輪が福島を殺す」である(その内容は昨日の本通信でお伝えした)。読者諸氏の目にはやや物騒にうつるかもしれないが、私たちは「当たり障り」のない雑誌を創ろうとは、微塵も考えていない。事実が、真実が悪意に基づくものであれば、それを「悪意」と言うことに躊躇はない。

◆二木啓孝さんが語る三里塚闘争と3・11以後の生き方

真実は幾重もの事実により構築される。今号も多様な方面の方々にご登場いただいた。90年代のオウム真理教事件報道の際、流行語「ああいえば上祐」の発案者とされるジャーナリストの二木啓孝さんに3・11の衝撃と共に「三里塚闘争とメディアの現場」を回顧していただいた。大学入学から、学生運動、わけても三里塚闘争の中で目覚めた二木さんは、メディアの現場に転身し、現在は千葉県の鴨川で農業に従事されている。その二木さんが3・11で受けた衝撃や反原発への見通しを語っている。楽観に陥らない視点は、さすが元・日刊ゲンダイニュース編集部長らしい。

◆尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」

 

尾崎美代子さんの飯舘村報告「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」より

尾崎美代子さんは、飯舘村に昨年に続き足を運び、詳しいレポートを寄せてくださっている。「避難解除から一年 飯舘村『ハコモノ復興』の現実」である。尾崎さんは普段、大阪市西成区で「集い処はな」の店主で、美味しく安い食事を提供するのにお忙しいが、そのお仕事の間を縫っての飯舘村からの詳細なレポートは、「一割にも満たない帰還率」、「菅野村長の『ハコモノ』の目的」、「放射線管理区域レベルの地域に子どもたちを通わせていいの?」、「放射線セシウムを組み込んだ村の自然循環サイクル」、「高齢者だからと、放射線を吸い込ませ、営農させていいのか?」、「期間困難区域・長沼地区で進む仰天計画 旗振り役は田中俊一前原子力規制委員長?」、「和解案を拒否する東電」。中見出しを列挙しただけでも飯舘村に襲い掛かっている理不尽と謀略が明らかになるが、本文ではさらに詳しい事実や数字が紹介されている。

◆槇田きこりさんが語る88年8月8日八ヶ岳〈いのちの祭り〉から30年の物語

「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三十年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」は『NO NUKES voice』でのこれまでの記事とは少し趣の異なる「楽しい思い出」の記憶と言っても差し支えないだろう。1988年に行われた『NO NUKES ONE LOVE いのちの祭り』を槇田きこりさんが回顧する。

いくつもの詩(うた)が紹介されて、まだ目にすることができた「ヒッピー文化」がエッセンスとなり花開いたイベント。たしか本誌編集長もあの場所にいたはずだ。80年代はどうしようもない時代だったけれども、それでも、こんなイベントに若者が集まっていたと思い返すと、隔世の感がある。

槇田きこりさん「八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年 順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語」より

◆大西ゆみさんの「3・11福島を忘れないロンドン集会」報告

英国暮らしが長かった大西ゆみさんには「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国―3・11福島を忘れないロンドン集会」を報告していただいた。

大西ゆみさん「老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 3・11福島を忘れないロンドン集会」より

◆巨石巡礼写真家・須田郡司さんによる飯舘村・山津見神社周辺「聖地と巨石と放射能」

グラビアを担当していただいた須田郡司さんは「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」では被写体に向かう道すがら須田さんが考えたこと、感じたことが述べられる。無言の写真に息を吹きこむ、短文ながら重たい内容である。

須田郡司さん「聖地と巨石と放射能 飯舘村・山津見神社周辺を歩く」より

◆大学生・川村里子さんの報告「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」

 

川村里子さん「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」より

「中嶌哲演さんと下北半島を一周して」は下北半島に同行した大学生、川村里子さんによるレポートだ。中道雅史さんの案内で原発や再処理工場、新たな原発建設予定地のひしめく下北半島をめぐりながら、川村さんが中嶌さんや中道さんに質問を投げかける。下北半島よりもさらに原発の密集する「若狭」に住む中嶌さんの目に、下北半島の様子はどのように映ったのであろうか。若狭との相違と相似から、原発立地地域への実態が、また浮き彫りになる。

◆山田悦子さんのインタビュー「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」

「法哲学を紐解いて見つけたもの『人権思想』と『法』とはなにか」は、『NO NUKES voice』15号に「『人間の尊厳』としての脱原発」を寄稿していただいた、甲山事件冤罪被害者の山田悦子さんに編集部がお話を伺った。

いっけん原発問題とあまり関係なさそうなテーマのように思われるかもしれないが、山田さんのお話の中には、原発問題に向けた貴重な示唆と指針が示されている。国(司法)と20年以上闘ってこられた経験は、脱原発で私たちが国や大資本と闘う際に、是非参考とさせていただくべきエッセンスに満ちている。

◆山口正紀さんの論考「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」

「安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機―『北の脅威』を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を」は元読売新聞記記者でジャーナリスト、山口正紀さんの論考だ。急展開から紆余曲折(外交上双方の牽制)がありながらもどうやら実現しそうな「米朝首脳会談」。しかし、その結果の如何を問わず、日本では〈壊憲〉策動が止まらない。公文書の偽造、虚偽答弁など、すでに内閣がいくつも吹っ飛んでいなければおかしい状況でも、なお胡坐をかき続る安倍政権。その本質的な危険性〈壊憲〉=〈改憲〉の目論見を山口さんは、余すところなく明らかにし、糾合する。脱原発と〈壊憲〉=〈改憲〉策動は切り離すことのできない重大課題だ。

三上治さんは「『セクハラ罪はない』という罪はある」とわかりやすいタイトルだが、シモーヌ・ヴェイユとM・フーコーを援用して状況を撃つ。

山崎久隆さんの報告「株主総会と原発輸出―原子力企業に今求められるものは何か」、温品惇一さんの報告「福島でパンフレット『受けてください甲状腺検査』四千部配りました」、佐藤雅彦さんの「三屠物語―民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末」、そしてお堅い本誌にありながら、毎号読者ならず編集者も楽しませてくれる板坂剛さんの「月刊雑誌『WiLLs』5月号を糺(ただ)す」。心配なのは毎回対象雑誌を変えて頂いているが、その源泉が尽きないか……である。今号も絶好調だ。

その他全国からの活動報告も、さらに充実。より精鋭化し、かつウイングを広げる『NO NUKES voice』16号、自信を持ってお勧めする。

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ)定価680円(本体630円+税)6月11日発売!

明日11日『NO NUKES voice』第16号が発売になる。特集は「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」だ。

50代以上の読者にとって「明治」は必ずしも「歴史」ではなかったのではないだろうか。戦争帰りの祖父や叔父の中に、まだ「明治生まれ」の人々が居たし、明治生まれの女性からは、「大正デモクラシー」を経験した自由さよりも、戦時の厳しい生活を潜り抜けた話を、たくさん聞かされた記憶がある。

今年は「明治一五〇周年」だそうだ。私たちが、辛うじて知っていた「明治生まれ」の人たちは、その青年期に大正デモクラシーを経験していたはずだが、私の限られた経験からは、明治生まれ=「頑迷」、「真面目」、「禁欲的」、「保守的」とのイメージがある。

◆日高六郎さんが亡くなった

そういえば、先日社会学者の日高六郎さんが亡くなった。日高さんには生前一度だけお手紙を差し上げ、お返事を頂いた(まだ私が高校生の頃だった)。その日高さんと後年一時的とはいえ、同じ職場に勤務することになろうとは想像しなかった。

日高さんとお話していると、戦中の著名人と極めて親交が深かったことに驚かされた。破格に博識で、人格も素晴らしい偉人だった。そして日高さんの肩のあたりには「自由の風」が吹いているように感じられた。日高さんは1917年、大正6年のお生れだった。

◆「明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ」(広瀬隆さん)

 

『NO NUKES voice』16号より

私たちは明治維新後に成立した「大日本帝国憲法」により、「臣民」となり、「日本国憲法」によって「市民」となった。この2つの憲法が成立する前の日本については、ずいぶん昔のように感じてしまい、「江戸時代」はあたかも「蛮族」が支配していた暗黒時代のように(例えば、サムライは立腹すると、すぐに時代劇のように「斬り捨て御免」で大立ち回りを連日演じているようなイメージ)刷り込みをされている部分がある。

「斬り捨て御免」は事実だが、連日の「大立ち回り」は後々「時代劇」が観客の目を、楽しませるために用意した演出に過ぎず、あんなことは実際には不可能だ(人を斬ると骨により日本刀の刃は欠けるし、まとわりつく、筋肉や血液でドロドロになり、「時代劇」で演じられるような、10人以上も「斬り捨てる」ことはよほどの名刀で、剣の名手でも不可能だと言われている)。

また、事実江戸時代には何度もの飢饉が起こり、農村では子女の身売りが多発したが、同様の悲劇は明治維新以降に何度も起きている。

つまり、私たちは、疑うことなく「明治以前の日本」が文明の遅れた国で、明治以降、日本は飛躍的に「進歩」したと、信じているがそれは本当なのだろうか? 政府をはじめ、各団体が主催して「明治150周年記念」行事が行われるようであるけれども、「明治」(明治維新)とはそれほど、素晴らしい時代だったのか? 今回はこの大テーマを、広瀬隆さんが詳しく解き明かしてくださる。題して「明治150年の驕慢(きょうまん)と原自連のウソ」だ。

史的観点の持ち方、事実を明示して、明治(明治維新)がなんとなく、想起されているものと大いに異なる史実を示したうえで、今日的な原発の問題へ論を落とし込んでゆく。権力や金脈を系図によって炙り出す「広瀬式」分析はロスチャイルドを描いた『赤い盾』などで有名である。本論文の中には、実際の系図は登場しないが、読者は広瀬氏の指摘に、これまで気が付くことのなかった、新たな発見をされるに違いない。

◆「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」(本間龍さん)

 

『NO NUKES voice』16号より

150年前の称揚が盛んであるのであれば、2年後の「災禍」を無視するわけにはゆくまい。毎号広告の問題を玄人の目から眺める本間龍さんは「東京五輪は21世紀の〈インパール作戦〉である」、わたしは「原発事故隠しの『東京五輪』に断固反対する」を掲載した。本間さんと私は原稿を書く段階で、まったく打ち合わせを行っていない。にもかかわらず、本間さんと私の感じる問題点は、極めて近く、その危機意識も同様である。

原発の問題は「運動」として、「思想」として、「文明論」として『NO NUKES voice』は多角的な方向性と、行動により核心に近づくことができうることを、15号までを世に出す中で学んできた。本号の特集「明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す」は、過去から将来へと国家が奏でる欺瞞を、歴史軸を用いて串刺しにした。しかしもちろんそれだけではない。原発に直結する、また、一見直結しないように思われるが、大いに関連のある話題や論文を満載している。その詳細は明日ご紹介しよう。

『NO NUKES voice』16号より

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『NO NUKES voice』Vol.16 目次
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総力特集
明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

[講演]広瀬 隆さん(作家)
明治一五〇年の驕慢と原自連のウソ

[インタビュー]二木啓孝さん(ジャーナリスト)
「反原発は、生き方の問題です」
三里塚とメディアの現場 〈農〉と〈生〉

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈13〉
東京五輪は二一世紀の〈インパール作戦〉である

[報告]田所敏夫(本誌編集部)
原発事故隠しの「東京五輪」に断固反対する

[報告]尾崎美代子さん(「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主)
避難指示解除から一年 
飯舘村「ハコモノ復興」の現実

[報告]槇田きこりさん(ヒッピー、冨士山御師)
八八年八ヶ岳〈いのちの祭り〉から三〇年
順(まつろ)わぬヤポネシアの民の物語

[報告]大西ゆみさん(英会話教師)
老朽化で〈原発ゼロ〉に向かう英国 
3・11福島を忘れないロンドン集会

[報告]須田郡司さん(写真家)
聖地と巨石と放射能 
飯舘村・山津見神社周辺を歩く

[報告]川村里子さん(大学生)
中嶌哲演さんと下北半島を一周して

[インタビュー]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
法哲学を紐解いて見つけたもの
「人権思想」と「法」とはなにか

[報告]山口正紀さん(ジャーナリスト)
安倍窮地でも続く〈壊憲〉の危機
「北の脅威」を利用した〈戦争する国〉作りに訣別を

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
「セクハラ罪はない」という罪はある

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
株主総会と原発輸出
原子力企業に今求められるものは何か

[報告]温品惇一さん(放射線被ばくを学習する会代表)
福島でパンフレット「受けて安心 甲状腺検査」四千部配りました

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
三屠物語
民死主義・世襲縁故主義・公害大量殺戮のこの国の行く末

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
月刊雑誌『WiLLS』5月号を糺す!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
東海、大間、大飯、志賀、島根、浜岡、伊方、玄海……
原発は〈市民の力〉で止められる

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発は市民運動で止められる可能性
 首都圏の運動を一回り大きく、強くできるならば……

《青森》中道雅史さん(大間原発反対現地集会実行委員会事務局長)
不当判決に屈しない七月十四日(土)~十五日(日)
「大MAGROCK Vol.11」

《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
 モニタリングポスト撤去を許さない! 
私たちの「知る権利」を奪わないで!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
 東海第二原発の運転延長を認めるのか?
 核ゴミに囲まれた首都圏に最も近い老朽・被災原発を動かすな

《茨城》けしば誠一さん(杉並区議会議員、反原発自治体議員・市民連盟事務局次長)
 茨城県の自治体議員・市民との連携し東海第二原発再稼働ストップ!
 東海第二原発三〇キロ圏自治体から二〇年延長反対の声をあげよう

《新潟》山田和秋さん(たんぽぽ舎ボランティア)
 再度、新潟県知事選挙を勝ち取る

《北陸電力》藤岡彰弘さん(反原発市民の会・富山)
 もう あきらめよ!北陸電力──赤字経営、活断層問題

《中部電力》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク 代表)
 浜岡原発──六四の脱原発市民運動団体の参加により知事へ「再稼働容認するな」の要求

《中国電力》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク事務局)
新規の島根原発三号機は絶対に稼働させてはならない!

《九州電力》工藤逸男さん(戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会)
 九州電力よ、玄海原発の再稼働を直ちに停止せよ!

《関西電力》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
 大飯原発3、4号機の再稼働は許したものの、反原発運動の意義は大きい!

《ABC兵器》水野伸三さん(たんぽぽ舎ボランティア)
三つのレンズで覗いてみたら──A(核兵器)・B(生物兵器)・C(化学兵器)物語

《書評》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
 新藤宗幸著『原子力規制委員会――独立・中立という幻想』(岩波新書)
〈新しい安全神話〉〈原子力規制委〉幻想を事実にもとづいて打破し続ける作業 

『NO NUKES voice』16号 総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す    6月11日発売! 定価680円(本体630円+税)A5判 総132ページ(本文128ページ+カラーグラビア4ページ) 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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