「まったく……ろくな世の中じゃない」、「野党は情けないし、マスコミは頼りないし」。日本全国で、心あるひとびとが肩を落とす姿と、吐き出す嘆きが聞こえる。無理もないだろう。「合法的外国人奴隷労働法」(改正入管法)が、拙速に強行採決され、準備不足を政府も認める中、来年4月から施行するという。

見ているがいい。非人道的な労働環境で働かされる外国人労働者の激増は、政府や経団連どもがもが、腹黒く得ようとした「安価な労働力」ではなく「非人道的な外国人労働者の扱い」として必ずや社会問題化するだろう。

思いだそうとしたところで、あまりに悪法や、悪政が山積しているので、正直なところ、今年の初め頃、何が起きていたのかを正確に記憶だけでは再生ができない。それほどに散々な日常にあって、「本当のこと」、「真実に依拠した言論」、「権力者や社会的に認められている権威への抗議」をまとまって目にすることができる雑誌が極めて少なくなった。

『NO NUKES voice』 18号は、上記のような憤懣やるかたない言論状況に、どうにもこうにも腹の虫がおさまらない、真っ当な感覚を持つ読者諸氏に向けて、鹿砦社から最大級の「お歳暮」と評しても過言ではないだろう(購入していただく「お歳暮」というのはおかしな話ではあるが)。

 

孫崎 享さん(撮影=編集部)

◆孫崎享さんが語る日本「脱原発」化の条件

『戦後史の正体』で日米関係を中心に戦後の日本史を読み解いた、元外務官僚の孫崎享(うける)さんが外務諜報に長年かかわった経験から〈どうすれば日本は原発を止められるのか〉を語る。ベストセラーとなった『戦後史の正体』が世に出てから、孫崎さんはテレビ、新聞などに頻繁に登場していたが、最近ではその頻度が極端に少なくなっているように思える。孫崎さんの主張が時代遅れになったり、風化したから孫崎さんの登場が減っているのではない。時代やメディアが孫崎さんを「危険視」しているからではないだろうか。そうであれば『NO NUKES voice』 にこそご登場いただこうではないか。

◆小出裕章さんと樋口健二さんは東京五輪とリニア建設に反対する

小出裕章さんと樋口健二さんが同じイベントで、講演、対談なさった記録も「すっきり」読ませてもらえる。怒らない小出さんと、いつも怒っている(失礼!)樋口さん。しかしご両人ともが抱く、危機意識と怒りは年々増すばかりであることが、回りくどくない言葉から伝わるだろう。

樋口健二さんと小出裕章さん(撮影=編集部)

 

中川五郎さん(撮影=編集部)

◆鶴見俊輔の精神を受け継ぐフォークシンガー、中川五郎さん

中川五郎さんは、音楽を武器に「反・脱原発」戦線の先頭でひとびとを鼓舞する、貴重な存在だ。中川さんの楽曲もさることながら、インタビューで直接的な問題意識は原発問題社会問題に立ち向かうときの、普遍的な視点を示唆するものだ(とはいえ、中川さんの演じるライブを聞かれるに勝る迫力はなかろうが)。

◆鎌田慧さん、吉原毅さん、村上達也さん、おしどりマコ・ケンさんらが訴える東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会の熱気

東海第二原発運転STOP! 首都圏大集会に集った、鎌田慧さん(ルポライター)、吉原毅さん(反自連会長・城南信用金庫顧問)、村上達也さん(東海村前村長)、おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ・ジャーナリスト)の発言は、「本当に東京が住めなくなる可能性が極めて高い」東海第二原発の危険性をそれぞれの立場から、強く訴える。

 

おしどりマコ・ケンさん(撮影=大宮浩平)

◆タブーなき連載陣ますます充実──冤罪被害者・山田悦子さん、行動する思想家・三上治さん、闘う舞踊家・板坂剛さん等々

連載「山田悦子が語る世界」、本号のテーマは「死刑と原発」だ。この夏オウム真理教関連の死刑確定囚13名に死刑が執行された。いまだに「被害者感情」や実体のない「犯罪の抑制効果」にのみ依拠して、「死刑」を存置する日本。この問題についての山田さんの論文には熱が入り、本号と次号で2回に分けての掲載となった。「死刑」を根源から考える貴重なテキストであり、国家や原発との関連が浮かびされてくる。

板坂剛さんの〈悪書追放キャンペーン 第一弾 百田尚樹とケント・ギルバードの「いい加減に目を覚まさんかい、日本人」〉は、板坂流似非文化人斬りが、ますます冴えわたっている。どうしてこんなしょうもない本が売れるのか?不思議な二人。その答えは二人ともが「嘘つき」の腰砕けだからだ。そのことをこれでもか、これでもか、と看破する。面白いぞ! 板坂さん! もっとやれ!

その他、鈴木博喜さんの〈福島県知事選挙”91%信任”の衝撃〉、伊達信夫さんの〈「避難指示」による避難の始まり〉など福島の事故当時、現在の報告が続く。

全国からの運動報告も盛りだくさんだ。

右を向いても、左を向いても「読むに値する雑誌がない」とお嘆きの皆さん!ここに心底「スッキリ」できる清涼剤がありますよ!『紙の爆弾』同様に、この時代他社では、絶対(といっていいだろう)出せない本音満載の『NO NUKES voice』 18号。お買い求めいただいて損はないことを保証いたします。

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

本日12月11日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

2018年最後の『NO NUKES voice』が本日11日に発売される。発刊以来第18号。特集は「二〇一九年・日本〈脱原発〉の条件」だ。

うすらとぼけた、頓珍漢なひとびとは、利権の集積「2020東京五輪」に血眼をあげる、だけでは満足できず、「2025大阪万博」などと、半世紀前の焼きなおしまでに手を染めだした。大阪はその先に「IR」(つまり「カジノ」)誘致を狙っていることを明言し、理性も、将来への配慮も、財政計画といった何もかもが政策判断の「考慮事項」から排除されてしまった。

「将来? そんなことは知らん。儲けるのはいまでしょ! いま!」。どこかの予備校教師がタレントへの転身を果たすきっかけとなった、フレーズを真似るかのように、恥ずかしげもない本音が、誰はばかることなく横行する。「水道民営化」法案まで国会を通過し、いよいよこの島国の住民は、「最後の最後まで搾取される」段階に入ったといえよう。

◆中村敦夫さんから檄文をいただいた!

われわれは、あるいは、われわれの子孫は、「搾りかす」にされるしかないのか……。

そんなことはない! そしてそんなことを認めても、許してもならない!

そういう熱い思いを持った方々に、本号も登場していただいた。紹介の順番が不同だが、本誌への激励のメッセージを俳優であり、作家、かつては国会議員でもあった中村敦夫さんから頂いた。木枯し紋次郎では、「あっしにゃぁ関わりのねぇこってござんす」のきめセリフで、無頼漢を演じた中村さんからの檄文だ。

原爆と原発は、悪意に満ちた死神兄弟のようなもの。
世界の安全を喰い散らし、出張った腹をさらに突き出す。
『NO NUKES voice』よ。死神たちを放置してはならない。
平和を愛する人々の先頭に立ち、
言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ。

 

中村敦夫さんから頂いた『NO NUKES voice』への檄文

過分にして、この上なく有難い激励である。われわれは今号も含め全力で「反・脱原発」の声・言論を集め、編み上げた。しかし時代は、あたかも惰眠を貪っているいるように仮装され、真実のもとに泣くひとびとの声を伝えようとする意志は、ますます希薄になりつつあるようである。

つまり逆風が暴風雨と化し、一見将来に向かっての「展望」など、むなしい響きにしか過ぎない無力感を感じてしまいがちであるが、そうではないのだ。「死神たちを放置してはならない」この原点に返ればまた力が再生してくる。「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」この言葉を待っていた!

2018年は、総体として決して好ましい年ではなかった。語るに値する、勝利や前進があったのかと自問すれば、そうではなかった、と結論付けざるを得ないだろう。畢竟そんなものだ。半世紀以上も地道に「反核」、「反・脱原発」を訴えてきた、先人たちは、みなこのように敗北街道を歩んできた(でも、決して諦めずに)のだ。

大きな地図の上では劣勢でも、局地戦では勝利を続けているひとびとがいる。今号はそういった方々にもご登場いただいた。表紙を飾るミュージシャン、中川五郎さんの躍動する姿は、本誌の表紙としては異例といえるが、期せずして中村敦夫さんの檄文に答えるバランスとなった。

「言論による反撃の矢を容赦なく浴びせ続けよ」中村さんの要請をこう言い換えよう。

「言論による反撃の矢を尽きることなく死神どもに、われわれは浴びせ続ける!」と。

『NO NUKES voice』第18号は本日発売だ。締まりのない時代に、全編超硬派記事のみで構成する「反・脱原発」雑誌は、携帯カイロよりもあなたの体を熱くするだろう。


『NO NUKES voice』Vol.18
紙の爆弾2019年1月号増刊

新年総力特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
どうすれば日本は原発を止められるのか

[講演]小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)
核=原子力の歴史 差別の世界を超える道

[講演]樋口健二さん(報道写真家)
安倍政権を見てると、もう本当に許せない
そんな感情がどんどんこみあげてくるんです

[議論]樋口健二さん×小出裕章さん
東京五輪とリニア建設に反対する

[インタビュー]中川五郎さん(フォークシンガー/翻訳家)
原発事故隠しのオリンピックへの加担はアベ支持でしかない

[報告]東海第二原発運転延長STOP! 首都圏大集会
(主催:とめよう! 東海第二原発首都圏連絡会)
鎌田慧さん(ルポライター)
プルトニウム社会と六ヶ所村・東海村の再処理工場
吉原毅さん(原自連会長・城南信用金庫顧問)
原発ゼロ社会をめざして
村上達也さん(東海村前村長)
あってはならない原発──東海村前村長が訴える
[特別出演]おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ/ジャーナリスト)
福島第一原発事故の取材から見えること

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
福島県知事選挙〝91%信任〟の衝撃

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈2〉
「避難指示」による避難の始まり

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
震災で被災し老朽化でぼろぼろの東海第二原発再稼働を認めるな

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
脱原発の展望はいずこに──

[インタビュー]志の人・納谷正基さんの生きざま〈1〉

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈2〉死刑と原発(その1)

[報告]板坂剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン 第1弾
百田尚樹とケント・ギルバートの『いい加減に目を覚まさんかい、日本人! 』

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク 全国各地からの活動レポート

鹿砦社 (2018/12/11)
定価680円(本体630円)

『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM1WMYM/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 

話題の最新刊!板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

日芸(日大芸術学部)は日大とは、また別の大学だと言われる。いまでは芸能界やテレビ業界との結びつきを言われることもあるが、その真髄は芸術家志望という華やかさであろう。それ自体がお祭のような日大闘争のなかで、きわだって劇場のごときイメージが芸闘委にはある。その芸闘委を中心とした芸術学部OB会の『思い出そう! 一九六八年を!!』を読んだ。稀代のカリスマ、板坂剛のプロデュース・主筆によるものだ。板坂は冒頭にこう書いている。

「私が探しているのは、自分が遭遇したあの劇的な一時期、若者に活力を与えた“時代”の正体である」わたしはその「正体」は、ほかならぬ日大闘争そのものにあったと思う。

◆発火した68年の記憶

ヘルメットにゲバ棒、長髪にGパン。圧倒的に大量な若者たちの層、おびただしい学生の数は、おそらく彼らが何かを流行らせれば、そのまま大きなブームとなる時代であった。事実、学生運動にかぎらず登山やサーフィン、水上スキーなど、団塊の世代がさまざまなジャンルで小さなブームをつくっては、文化の裾野をひろげた。68年はまたグループサウンズブームの年(全共闘と軌を一に、約一年で終息した)でもあり、いわば発火しやすい年だったのである。当時、小学生だったわたしは、時代が発火しているという記憶だけが鮮明だった。

発火するからには、入れ物が大きくなければならない。板坂も引用している『情況』2009年12月号の特集サブタイトルは、じつに「全共闘運動とは日大闘争のことである」だった。元日大生の座談会やインタビューを編集しながら、わたしはそれまで見聞していた全共闘運動のイメージが激変するのを意識していたものだ。ふつうの学生たちが立ち上がり、右翼学生との命がけの闘いのなか、助けにきてくれたはずの警察(機動隊)が自分たちに暴力を振るう。6月11日の祭の始まりがそれだ。

9.30(団交勝利)以降、あるいは11.22(東大集会)から翌年にかけて、全共闘から70年安保闘争の政治活動家になった日大生も少なくはなかったのを知っている。だが、ほぼ半年のあいだに、ノンポリ学生から全共闘の活動家になり、そしてそのまま普通の学生にもどった人たちの言葉には、当時のままの意識がやどっているようで興味を惹かれた。この本の巻末にも、当時の意識のままの座談会で生身の言葉を拾うことができる。なにしろ、ふだんは活動家っぽくない板坂剛が学生運動の歴史を、座談会の参加者に(けっこう熱っぽく)概説しているのだから──。ほんと、党派のコアな活動家みたいだ。

秋田明大氏(右)と著者(左)(文中より)

山本義隆氏(文中より)

◆東大イベントに殴りこめ

数が質を生み出す原理から、日大生が立ち上がったことで「学園紛争」に火が点いたのは疑いない。同じ時期に東大医学部で処分問題が学生自治会のストライキを生み、その延長に闘争委員会方式の全共闘が誕生した。そして当時の日大全共闘と東大全共闘の位相の落差とでもいうべき「相互の意識」あるいは、愛憎にも似た感じ方もこの本でよくわかった。東大全共闘も主役には違いないのだから、日大への気遣いの足りなさは「御多忙」というしかないと、わたしのような外部の者は思う。

ただし、日大全共闘には不義理な山本義隆氏が情況前社長の大下敦史(元はブント戦旗派)の追悼集会で講演を行なったのは、山本氏が主宰者の一人でもある「10.8山﨑君プロジェクト」のベトナム訪問協力への返礼を兼ねてであって、同プロジェクトに大下の義弟が深く関与していることから、その義弟が主催する追悼イベントに義理で講演したというのがウラの事情である。山﨑博昭君が大阪大手前高校の後輩であることから、山本氏は同窓生に誘われてのプロジェクト参加であったこと。したがって、山本氏はきわめて個人的な義理を尊んだということになる。

それにしても、日大全共闘と東大全共闘には溝があるのだろう。来年の1月に安田講堂を借り切って、元東大生たちがイベントを計画しているという(未公表)。殴りこんでみたらどうだろう。なぜ君たちは東大を解体しなかったのに、記念イベントなんてやるんだと。いますぐ、この赤い象牙の塔を壊そうじゃないかと。なぜならば、いまなお日大生は右翼暴力団の支配に苦しんでいるのだ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

『情況』編集部。編集者・著述業・Vシネマの脚本など。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社)など多数。

矢谷暢一郎『日本人の日本人によるアメリカ人のための心理学━アメリカを訴えた日本人2』

松岡利康/垣沼真一編著『遙かなる一九七〇年代‐京都 学生運動解体期の物語と記憶』

 

本日発売!板坂剛と日大芸術学部OBの会『思い出そう! 一九六八年を!! 山本義隆と秋田明大の今と昔……』

『思い出そう!一九六八年を!!』の表紙には心が躍った。どこの党派間のゲバルトかは判然としないけれども、キリン部隊衝突の写真は、時代の空気を伝えようと意図されたものであろう。あの時代こんな風景は東京や大阪ならどこにでも見られた。民青(共産党系の学生青年組織)相手のゲバルトや、逆に民青からのゲバルトも熾烈を極めた。

と、あたかもそこにいて、経験したように、いっちょ前の感想をビール片手に書いているが、小生1968年には満三歳。ある地方都市で元市長の官舎に使われていた、敷地が狭くない庭で、祖母と草木に戯れていた。あれ以来50年。小生が覚えた草木の名称の7割以上は、祖母から3歳時までに教えてもらったものだ。

だから「一九六八」の記憶などに、心躍らせること自体がフェイクであり、ナンセンスの誹りをを逃れようがないのだが、この感情は嘘じゃないんだから、仕方ないではないか。たとえば10・8羽田、あるは国際反戦デー、騒乱の渋谷、新宿。佐世保エンプラ寄港阻止闘争。三里塚強制収容から管制塔占拠。

どれもこれも、自分はその場にいたわけでもないのに、Youtubeなどで映像にヒットすると「オッ」と思わず前のめりになる。「超法規措置での収監者解放」、「人の命は地球より重い」と総理に言わしめたハイジャック闘争など、映画を見るより鳥肌が立つ(そのお陰で搭乗手続きが煩雑になり、迷惑もこうむっているけども…)。社会や時代を動かす力を、若者は持っていたし、なかには人の迷惑顧みず、命がけでたたかう学生だって少なくなかった。

真逆の時代に何十年も砂を噛むよう思いをさせられ続けた「割を食った」世代としては、その時代のややこしさや、負の側面など関係ない。単純に熱い時代への憧憬しかないのだ。

◆板坂剛らの手になる山本義隆、秋田明大の実像

そのただなかにいて、山本義隆、秋田明大という二人を直接知る、板坂剛の手になる『思い出そう!一九六八年を!!』は、1968年から50周年企画や出版が様々なされる中で、確実に一番「おもしろい」書籍であると確信する。板坂の秋田明大への親近感と山本義隆へのちょっと冷めた視線が「おもしろい」。山本義隆への人物評を「調整役」としたのには驚いたし、秋田明大が岡本おさみ【注】、加藤登紀子作曲で「あほう鳥」なるレコードを出していた(ってことは日大全共闘議長秋田明大は「歌手」でもあったのか! 知らんぞ! 秋田明大は運動から離れたあとは町工場で過去を語らずに生きていたイメージがぶっ飛んだ)ことも事情を知らぬ人たちには驚きだろう(その代わり、本書でも触れられていない秋田明大の私生活の秘密を知ってるけど、それは内緒!)。

小熊英二が『1968』を書いている。あれは学術書だからだろうか。さっぱり「おもしろくない」。なにより小熊自身が1968になんの共振、共感も抱いていないことが明白で、事実の羅列、年表としか感じなかった。

小熊などと板坂を比べたら、板坂からどんな仕打ちをされるか分かったものではない(小生は板坂との初対面の際、しこたま酔った板坂に筆舌に尽くしがたい仕打ちを受け「噂通り、やっかいなおっさんだ」との確信を強めた。が、後日昼間にしらふの板坂に再会した際、挨拶すると「どちらさまでしたっけ」と板坂は全く覚えていなかった。板坂とはそういう「まじめ」な男である)。しかし、それほど『思い出そう!一九六八年を!!』は全共闘の中で自らが望まずとも、表出せざるを得なかった、山本義隆、秋田明大二人の人物像と個性を知る板坂が(これも強調しなければならないが)、極めて上質な文体と分析から描く「生もの」である。

「1968」をどう評価するか、関心を持つかはおのずから各人の自由であるが、あの年の肌触りを実感し、ここまで再現できる人物はそうはいないはずだ。板坂と春日(この人物についての知識はない)に感服する。

【注】「あほう鳥」の作曲者の加藤登紀子はご存知の通りで注釈を省くが、作詞者の岡本おさみは、レコード大賞を受賞した森進一の『襟裳岬』、吉田拓郎の『旅の宿』、ネーネーズの『黄金(こがね)の花』などのヒット曲がある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

本日発売開始!
板坂剛と日大芸術学部OBの会=編
『思い出そう! 一九六八年を!!
山本義隆と秋田明大の今と昔……』
(紙の爆弾2018年12月号増刊)
1968年、全共闘は
国家権力と対峙していた。
戦後資本主義支配構造に対する
「怒れる若者たち」
当時の若者には、
いやなことをいやだと
言える気概があった。
その気概を表現する
行動力があった。
権力に拮抗した
彼らの想いを知り、
差別と排除の論理が横行する
現代を撃て!!

 

星野陽平『芸能人に投資は必要か? アイドル奴隷契約の実態』(10月26日発売)

著者の星野陽平氏は学生時代から知っている。といっても、わたしは星野氏よりもふた回りほど年上で、早稲田大学の学生サークルに請われて部室に出入りしていた関係でおそらく一方的に、そこに知己のあった氏を知ったということになる。

そのサークルからは、歌舞伎町やアジア系犯罪組織などの本を著し、編集プロダクションを立ち上げたO氏、『噂の真相』でデビューしたフリーライターのO・K氏、作品社の取締役編集者となったF氏、ほかにも業界紙記者や出版社の女性編集者など、いまにして思えば錚々たる人材を輩出したことになる。

当時すでに何冊かの著者があり、総合誌の編集者、出版プロデューサーだったわたしは、ひそかに彼らの「師」を任じていた。ちょうど『アウトロー・ジャパン』(太田出版)を立ち上げる直前のことだったが、星野氏についてはほとんどコンタクトがなく、のちに市場系の本を著したことで記憶が喚起された記憶がある。

鹿砦社から刊行された『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』は、版を重ねて準ベストセラーと呼ばれるにふさわしい内容を擁していた。アマゾンを見れば旧版・新版ともに、高評値のレビューがそれを裏付けている。その続編ともいうべき新刊が『芸能人に投資は必要か? アイドル奴隷契約の実態』(鹿砦社)である。

◆日本の芸能界の構造的な弱点 

上條英男氏の『BOSS』がプロデューサーの側からみた芸能界の歴史であれば、星野氏の芸能本はノンフィクションライターが膨大な資料を背景に書き上げた、芸能界のドキュメンタリーということになる。

前著とともに、堅実な作業の積みかさねがなさしめた仕事である。日本の芸能界の問題点は星野氏が強調するとおり、アメリカのショービジネスとの対比に明らかである。すなわち、日本では音楽事務所協会の「統一契約書」によって肖像権(パブリシティ権)や出演を選択する権利が、芸能事務所に帰属することになっている。そこで「奴隷契約」に縛られたタレントたちは独立をめざすのだ。それはしかし、タレントを食い扶持にしている事務所が許してくれない。

アメリカでは俳優の労働組合が1913年に設立され、劇場に対して何度もストライキを積み重ねることで労働条件の改善がはかられてきた。組合はユニオンショップであり、強力な発言権をもっている。しかもタレント・エージェンシー(芸能プロ)は反トラスト法の規制で、制作業務を行なうのを禁じられている。したがって、芸能プロが俳優や歌手を抱え込んで、番組制作まで仕切ることはできないのだ。単なる営業代理店ということになる。

◆このままでは、本格的なショービジネスは育たない

著者の調べによると、アメリカではタレントと芸能事務所(タレント・エージェンシー)の関係は対等であるという。そしてアメリカの芸能事務所は、そもそもタレントに投資をしないのだ。しばらく前にNHKで放送されていたアクターズ・スクールのような、アクティング・スタジオ(俳優養成学校)がタレントを育てる。タレント(俳優)志望者たちは、ここでスキルを磨きながらエージェントをさがす。ちょうど大リーグにおけるエージェント(代理人)をイメージすればいいのだろうか。エージェントはモデル、コマーシャル、演劇の三つに区分される。

とはいえ、演劇ジャンルでは高度な演技力がもとめられるために、ハリウッドでもエージェントを持てない俳優が多いのだという。そこでオーディションが大きな位置を占めてくる。日本でも大きなプロジェクト(予算規模の大きな映画など)ではオーディションが行なわれているが、実態は芸能事務所の力関係によるところが大きいと言う(独立系の俳優の話)。

じっさいに、筆者はVシネマの脚本を手がけた経験があるが、小さな芸能事務所の売り込みはすさまじい。ギャラの未払いも気にせずに、何の実権もない脚本家に売り込んでくる。それはしかし、ほとんど意味がなかった。キャスティングの大半は、配給元の東映やミュージアムに、箱書き(あらすじ)段階から握られていたのだから。

◆生々しいタレント稼業の実態

日米のタレントの境遇の違いは、そのままショービジネスの規模の違いに反映される。日本のように芸能事務所が「奴隷契約」でタレントを縛り、テレビ局と事務所間の力関係や政治力で配役が決まるという馴れ合いでは、真のアーティスト精神は生まれない。作品のために厳しい役づくりに取り組み、まさに「当たり役」という奇跡を演じるのは、タレント(才能)ではなく努力であろう。その努力を、日本の芸能界は必要としないのだ。

いっぽうで、独立して厳しい条件からでも再出発しようとするタレントを、テレビ局と芸能事務所が「干す」という行為に出る現実がある。本書はその意味では、芸能人の残酷物語の第二幕でもある。

もはや論じるよりも内容を列挙しておこう。本書のタイトルとは別ものである。安室奈美恵の独立騒動、江角マキコ独立後の「暴露報道」、ビートたけし独立事件の裏側、安西マリア失踪事件の真相、ちあきなおみの芸能界への失望、中森明菜の独立悲話、加勢大周の芸名騒動、ホリプロからの独立した石川さゆりの演歌力、松田聖子性悪女説は音事協の陰謀である、などなど。どうです、すぐにも読みたくなったでしょ?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
編集者・著述業・Vシネマの脚本など。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社)など多数。

奴隷契約、独立妨害とトラブル、暴力団との関係とブラックな世界―著者は公正取引委員会で講演、その報告書で著者の意見を認め、芸能界独占禁止法違反を明記!芸能界の闇を照らす渾身の書!

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月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

 

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』

西城秀樹をはじめ、日活ポルノ女優の田中真理、青春スター吉沢京子、安西マリア、カルメン・マキ、舘ひろし、浅田美代子、川島なお美など、多くのスターと歌手を発掘してきた上条英男の自伝が、この『BOSS』である。われわれも名前をよく知る芸能人たちの、素の顔がひもとかれる。そんな覗き見をする興味と共扼しながら、読みやすい語り口にも助けられて3時間ほどで読み通してしまった。著者の語り口をとおして、芸能界を身近に感じる本だと紹介しておこう。

◆発掘されるスターのカッコ悪さと神話化

この種の本、といっても類書がそれほど多いわけではないが、興味ぶかいのはスターが発掘されるその瞬間であろう。西城秀樹は広島の地元ですでにロック系、ジャズ系のバンドを経験していたことは知られているが、家出同然で東京(原宿)に出てきてからの話は初めて知った。

それなりにアーティスト志向だったはずの秀樹が、徹底的に田舎少年として紹介されている。著者が描写するところはすこぶるカッコ悪いが、真実なのかもしれない。とくに反対する両親に対して、秀樹の姉が説得したことはあまり知られていないのではないか。秀樹の姉は、某大物ヤクザの姐さんとして斯道界に知られるひとだ。秀樹の父親が、彼がブレークしてからは、自宅では芸能パパ的に振る舞ったことは書かれていない。

スターがブレークした後のマネージャーと事務所の軋轢は、読む者を不快にするほど型どおりの醜さである。それにしても、敏腕スカウト(マネージャー)への手切れ金が100万円とは情けなさすぎる。


◎[参考動画]西城秀樹「傷だらけのローラ」(1974年)

舘ひろしが硬派暴走族だったというのは、かなり盛られた話だというのが定説だが、チームに岩城滉一がいたのだから伝説が成立するのもやむをえないところだろう。いまはどうなのかは知らないが、かつての不良青年青少女は芸能界でブレークするのが、ツッパリの延長にあった。ツッパルぐらいでなければ、野心は実現できないというべきであろう。かの関東連合ですら、芸能界入りを展望していたという。

悪い出会いもあるところが、本書の圧巻である。吉沢京子の名前が出れば、いま還暦以上の読者諸賢にとっては、甘酸っぱい記憶がドーパミンを分泌させるのではないだろうか。その吉沢京子を二股をかけて傷つけたのが、当時は公然と付き合っていたはずの松平健だったという。なんと同棲状態だった松平の部屋で、吉沢は彼の浮気のベッドを目撃してしまうのだ。いまも清純派の吉沢の涙を思うだに、松平の卑劣は上條ならずとも怒りが納まらない。

その松平健は大地真央との離婚後に、再婚した松本友里をも自殺に追い込む。著者は「私が死ぬまでにどこかで公にしたかったので、まさに今は溜飲が下がる思いである」と、そのくだりを締めている。テレビドラマでの松平健の正義漢ぶりはしたがって、まったくの演技ということになる。人は見かけによらぬものだ。


◎[参考動画]吉沢京子 「恋をするとき」(1971年)

◆「芸能プロ」と書いて「芸能ゴロ」ではなかったのか

筆者のように、芸能界に明るくない者にとって、60年代から70年代の芸能プロの構造変化は、わかりやすかった。渡辺プロといえば「ナベプロ抜きに歌謡番組は成立しない」とまで言われた芸能王国だったが、その牙城を崩したのは「スター誕生」をはじめとするコンテスト系の公募イベントだった。

爾後、堀プロ、周防郁雄(バーニング)、田辺エージェンシー、オスカープロモーション、太田プロという具合に芸能プロが林立して覇を競い合う。ジャニー喜多川との掛け合いのような関係も興味ぶかい。外から描けば、「芸能ゴロ」と呼ばれることが多い面々だが、著者が内側から書くことによって素顔に触れられる気がした。


◎[参考動画]安西マリア「涙の太陽」(1973年)

ところで著者は77歳にして現役のマネージャーにして、スタジオで歌唱指導するプロデューサーである。ひとりの歌手にかける夢、売ってナンボのステージ興業(古いか)、裏切りや出し抜きがふつうの芸能界で、いまも歌い手にエンターテイメントを仮託する姿は清新でうつくしい。


◎[参考動画]Flower Travellin’ Band(ジョー山中)「Anywhere」(1970年)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
 編集者・著述業・Vシネマの脚本など。著書に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社)など多数。

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』西城秀樹、ジョー山中、舘ひろし、小山ルミ、ゴールデン・ハーフ……。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」

本日発売!月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

◆冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない

 

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

きっかけは、いっけん偶然かのように見紛われる。ある日偶然は、主人公が知りもしない世界へ強引に連行し、激烈な鞭打ちを浴びせかける。「どうして?」、「なにがどうなったの?」疑問をゆっくりと巡らせる暇もなく、主人公を「殺人犯人」と決めつける報道が全国を席巻し、主人公の名前や顔写真はおろか、住処の町名までが、量販店のバーゲンセールの広告を掲載するかのような、気軽さで新聞に掲載される。容赦のない取り調べは、有形でこそないが純粋な意味において「暴力」以外の何物でもない。

冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない。もっとも不幸な人は、何の関係もない咎により、首切られる(死刑)。または処刑台までいかずとも、長期にわたり拘置所、刑務所に幽閉される。あるいはまれに、嫌疑が晴らされマスコミにより「冤罪被害者」として扱われる場合がある。逮捕当時、あるいは公判中「犯人」と決めつけた報道を垂れ流していた罪など、ついぞ反省することなく、「加害者」を「悲劇の主人公」と報じる矛盾に、うち苦しむ報道機関はない(個人としての反省のケースはみられる)。

冤罪被害から解放されても、失った時間、主人公に襲い掛かった罵詈雑言の数々、報道被害が主人公に残した「加害の総体」は、何らかの尺度で測りうるものではない。主人公の語る言葉を、大衆はわかったような気になっているかもしれないが、それは大方の場合誤解である。わたしがこのように断定的に主人公が被った非道を論じるのは「テレビを見て、普通に笑っているんだと気がついたんです」と、事件解決後20年も経過した、主人公からの言葉をつい最近聞いた衝撃に由来する。笑いながら会話していたが、わたしの心の中は冷え切った。主人公に対して無遠慮であった自分を恥じた。

◆主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る

主人公はしかし、ただの被害者でありつづけたわけではない。「唯言」に登場する、執筆者をはじめとする、広大な人脈は、主人公が能動的に事件のあとを生きた証だ。「唯言」に登場する関屋俊幸、弓削達、高橋宣光、玉光順正、高田千枝子の各氏は主人公がいなければおそらくは出会うことがなかったであろう、それぞれ異なる分野で活躍された方々だ。あたかも書籍を編纂するように、主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る。その過程及び到達点から、乱反射する日本の姿(歴史・思想傾向・民族性など)の本質を、掌握した主人公が重ねて語るキーワードは「無答責と答責」である。

古代ローマ時代から、日本書紀を経て江戸・徳川時代から、明治維新、諸々の戦争を経て現在へ。主人公の歴史観は教科書で綴られるそれとは、かなり趣を異にする。日本の成り立ちについても同様だ。浅学で史実をほとんど知らない、あるいは「こうあって欲しかった」と幼児のように駄々をこねる、歴史修正主義者に対して、主人公の主張はどう映るか。冷厳な史実を見つめ続け、見つめるだけではなく、みずからが責任を取ろうとの試みは、常人の発想しうるものではなく、後にも先にも同様の試みを耳にしたことはない。

◆人間に暖かい社会とは何か?

主人公は国家が放棄した戦争責任を、「市民がどう引き受けるか」というとてつもない試みに足を踏み入れる。韓国と日本の間で何度もシンポジウムや講演会を開催する「答責会議」の発足は、主人公の存在なしにはありえなかった。その成果は『無答責と答責』(寿岳章子。祖父江孝男編、お茶の水書房 1995年)として世に出ることになるが、じつは『無答責と答責』の実質的編者は、主人公であったと、複数の知人から聞いた。その行動力の源泉は、はたしてなんであるのだろうか。冤罪被害者としての経験だけですべてを説明するのは不可能だとわたしは断じる。

主人公を際立たせすぎて紹介したが、「唯言」執筆者の方々はいずれも、個性的なその分野でトップを走った方ばかりである。当初部数限定の自費出版として編纂された「唯言」を手にした多くのひとびとは敏感に反応した。時代が「唯言」を要求していたといってよいだろう。世界史から物語が消えうせ、歴史が「自己解散」を宣言し、世界的にも事象はもっぱら権力者の気まぐれか、2進法による貸借対象表の合法的改ざんによる幻想のなかにしか存在しないかのごとき今日、「唯言」は無理やりにでも「自己解散」を宣言した歴史に「再結集」を命じる。

主人公・山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)は、冷徹な態度で、人間に暖かい社会とは何かを仲間と語り合った。

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

 

函館市HPより

 

函館市HPより

9月6日北海道を大地震が襲った。295万世帯が停電し、泊原発は緊急停止した。現地の様子を調べようと各自治体のホームページを閲覧していると、函館市のホームページに驚かされる文字があった。

そうだった。函館市は大間原発の建設停止を求めて、前代未聞、市が国や電源開発を提訴し、建設の差し止めを求める訴訟が提起されている。同訴訟の弁護団に加わっている井戸謙一弁護士は「初めてのケースですので、どういう審議になるかわかりませんが、画期的な提訴だと思います」と東京地裁で語ってくれていた。

提訴に至る考え方を説明した工藤壽樹函館市長の説明が、簡潔でわかりやすい。

このような姿勢が、住民の生命財産を守る責任者としては、至極原則的な考え方であろう。しかしながら、多くの都道府県や知町村長は、ごく原則的な判断もできずに、住民を危険に直面させている。

函館市HPより

◆吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬さん、それは誤解です!」

そんな中、本日9月11日、『NO NUKES voice』17号が発売される。「フクシマを忘れることなく多角的に」の編集方針に揺らぎはない。

本号巻頭では前号16号で広瀬隆さんが展開した「原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)」への問題提起に対する吉原毅さん(原自連会長)からの対論的論考「広瀬さん、それは誤解です!」を特別寄稿として掲載させていただいた。メガソーラー等の自然エネルギーへの過度の依拠の危険性を指摘した広瀬隆さんに、城南信用金庫理事長時代から「反原発」に様々な取り組みをしてこられた吉原さんが「誤解を解く」解説を丁寧に展開されている。加えて木村結さん(原自連事務局次長)にも吉原さんの論をさらに補強する論考「原自連は原発ゼロのために闘います」をご寄稿いただいた。

吉原毅さん(原自連会長)の特別寄稿「広瀬隆さん、それは誤解です!」(『NO NUKES voice』17号より)

◆高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」は読んでいると少し重たい気分にさせられるかもしれない。畢竟特効薬などなく、わたしたち個人が考え、行動する以外に回答はないのかもしれない。

高野孟さんの「安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?」(『NO NUKES voice』17号より)

◆蓮池透さんと菊池洋一さん──二人の元当事者が語る「原発の終わらせ方」

 

蓮池透さん(『NO NUKES voice』17号より)

蓮池透さんは、拉致被害者の家族であり、東京電力の社員であった21世紀初頭日本を取り巻いた政治事件の中心に、偶然にも居合わせた人物だ。蓮池さんは東電を定年前に退職した。3・11以来東電には様々な怒りを感じておられる。蓮池さんご自身福島第一原発の3号機と4号機に勤務していたご経験の持ち主で、今回初めて明かされるような驚くべき杜撰な現状が語られる。「東京電力は原発を運転する資格も余力もない」は故吉田昌郎所長とも親しかった蓮池さんのお話は必読だ。

菊池洋一さんは元GE技術者の立場から、やはり原発建設がいかに、問題を孕んでいたのか、を解説してくださっている。簡潔に言えば「いい加減」なのである。しかしながら菊池さんのお話からも、現場の技術責任者でなければ知り得ない、驚愕の事実がいくつも暴露される。

 

菊池洋一さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆本間龍さん「東京五輪は二一世紀のインパール作戦である」〈2〉

本間龍さんの連載「原発プロパガンダとは何か?」は今回も東京五輪の問題を鋭くえぐり出している。「国民総動員」の様相を見せだした「ボランティア」と称する「無償労働」の問題と意義を今回も徹底的に解析していただいた。「反・脱原発と東京五輪は相容れない」編集部の代弁をしていただいた。

◆何度でも福島の声を──井戸川克隆さん(元双葉町町長)、吉沢正巳さん(希望の牧場)

元双葉町町長の井戸川克隆さんの「西日本の首長は福島から何を学んだか」は鹿児島県知事三田園をはじめとする西日本、とりわけ原発立地現地行政責任者に対して、匕首を突きつけるような、厳しい内容だろう。冒頭ご紹介した函館市との対比が極めて不幸な形で鮮明になろう。

「吉沢正巳さんが浪江町長選挙で問うたこと」は「希望の牧場」で奮闘し続ける吉沢さんからの、吉沢さんらしい問題提起だ。行動のひと吉沢さんは浪江町長選挙に出馬した。浪江役場前には「おかえりなさい、ふるさと浪江町へ」の横断幕が掲げられてる。対して、吉沢さんは「除染してもサヨナラ浪江町」の看板を掲げる。この一見対立していそうで、不和解のように見えるメッセージを吉沢さんは「どちらも正しい」と語る。そのことの意味は?吉沢さんが闘った町長選はどのようなマニフェストだったのか?

希望の牧場・吉沢正巳さん(『NO NUKES voice』17号より)

◆佐藤幸子さんの広島・長崎報告と伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在

「広島・長崎で考えた〈福島の命〉」は事故発生直後から、対政府交渉などの先頭に立ち続けてきた佐藤幸子さんの広島・長崎訪問記である。被災者の間に生じる(生じさせられる)軋轢を乗り越えて、お子さんの成長を確認しながら広島と長崎に原爆投下日にその身をおく、福島原発事故被災者。70余年の時をたがえて交わる被災者と、被災地のあいだには何が生じたのだろうか。

伊達信夫さんの《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在(その1)では、事故後の避難で何が問題だったのかの実証的な指摘が詳細に分析される。7年が経過して、記憶もおぼろげになりがちな事故の進行と非難の実態が、時系列で再度明らかにされる。

佐藤幸子さんの広島・長崎報告(『NO NUKES voice』17号より)

 

黒田節子さんが書評した『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』(三一書房2018年6月)

◆黒田節子さんによる書評『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』

『原発被ばく労災 広がる健康被害と労災補償』(三一書房)を解説的に紹介してくださるのは黒田節子さんだ。

「首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由」を山崎久隆さんが解説する。ここで事故が起きたら東京は壊滅する=日本は終わる。それでも東海第二原発を再稼働する道を選ぶべきであろうか。

「セミの命も短くて…」は三上治さんのが経産省前テント村で生活するうちに、四季の移ろいに敏感になった、三上さんの体験記だ。ビルとコンクリートだらけの、霞が関の地にだって季節の変化はある。当たり前のようで、重要な「気づき」を三上さんが語る。

「赤ちゃんの未来は、人間の未来――国家無答責とフクシマ」(山田悦子が語る世界〈1〉)は本号から連載を担当していただく山田悦子さんによる論考である。「国家無答責」の概念は国家としての日本を理解するうえで欠くことができない重要な概念だ。山田さんは長年の研究で独自の「法哲学」を確立された。次号以降も本質に迫るテーマを解説していただく。

横山茂彦さんの「われわれは震災の三年前に、3・11事故を『警告』 していた!」は雑誌編集者にして、多彩な著作を持つ横山さんを中心に、東京から札幌まで1500キロを自転車で走りながら、原発に申し入れ書を提出するなどの行動が行われていた報告である。横山さんの多彩な興味範囲と行動力にはひたすら驚かされるばかりだが、このような人がいるのは、誠に心強い。

◆板坂剛さんと佐藤雅彦さん

 

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」(『NO NUKES voice』17号より)

板坂剛さんの「『不正論』9月号を糺す!」は、芸風が安定してきた板坂による、例によって「右派月刊誌」へのおちょくりである。大いに笑っていただけるだろう(闘いにユーモアは必須だ!)。

佐藤雅彦さんの「政府がそんなに強硬したけりゃ民族自滅の祭典2020東京国際被爆祭をゼネストで歓迎しようぜ!」。佐藤さんの原稿はいつも下地になる資料が膨大にあり、事実や史実を示したうえで、最後に「佐藤流」のひねりで「一本」を取る。「板坂流」とは異なり、読者にも解読力が求められるが、内容はこれまたユーモアに満ちた批判である。

その他全国各地の運動報告や読者からのご意見も掲載し、本号も全力で編纂した。
地震・大雨・酷暑と自然災害が連続したこの数カ月。大震災列島の未来は〈原発なき社会〉の実現なくしてはじまらない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

本日発売開始!『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

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『NO NUKES voice』vol.17
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被曝・復興・事故収束
安倍五輪政権と〈福島〉の真実

[グラビア]サン・チャイルド/浪江町長選「希望の牧場」吉沢正巳さん抗いの軌跡
(写真=鈴木博喜さん)

[特別寄稿]吉原 毅さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 会長)
広瀬さん、それは誤解です!

[特別寄稿]木村 結さん(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟=原自連 事務局次長)
原自連は原発ゼロのために闘います

[追悼]編集部 志の人・納谷正基さんを悼む 

[報告]高野 孟さん(インサイダー編集長/ザ・ジャーナル主幹)
安倍政権はいつ終わるのか? なぜ終わらないのか?

[講演]蓮池 透さん(元東京電力社員/元北朝鮮による拉致被害者「家族会」事務局長)
東京電力は原発を運転する資格も余力もない

[講演]菊地洋一さん(元GE技術者)
伝説の原発プラント技術者が語る「私が原発に反対する理由」

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとはなにか〈14〉
東京五輪は二一世紀のインパール作戦である〈2〉

[講演]井戸川克隆さん(元双葉町町長)
西日本の首長は福島から何を学んだか

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
希望の牧場・希望の政治 吉沢正巳さんが浪江町長選で問うたこと

[報告]佐藤幸子さん(福島診療所建設委員会代表)
広島・長崎で考えた〈福島のいのち〉

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈1〉その始まり

[書評]黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発被ばく労災 拡がる健康被害と労災補償』

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
首都圏でチェルノブイリ型事故が起きかねない 東海第二原発再稼働が危険な理由

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)   
セミの命も短くて……

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈1〉赤ちゃんの未来は、人間の未来──国家無答貴とフクシマ

[報告]横山茂彦さん(著述業・雑誌編集者)
われわれは三年前に3・11原発事故を「警告」していた!
環境保全をうったえる自転車ツーリング【東京―札幌間】波瀾万丈の顛末

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
『不・正論』9月号を糺す!

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
政府がそんなに強行したけりゃ 
民族自滅の祭典・2020東京国際ウランピックをゼネストで歓迎しようぜ!

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
首都圏の原発=東海第二原発の再稼働を止めよう

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
原発事故 次も日本(福島のお寺の張り紙)
二度目の原発大惨事を防ぐ・東海第二を止めるチャンス

《福島》春木正美さん(原発いらない福島の女たち)
モニタリングポスト撤去について・第二弾

《原電》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
日本原電は、社会的倫理の欠落した最低の会社だ!

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
核分裂「湯沸し装置」をやめよう
~とうとう東海第二設置許可を認可する規制委、第五次「エネ計」で原発推進する経産省~

《地方自治》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟事務局次長、杉並区議会議員)
全国自治体議員・市民の連携で安倍政権の原発推進に歯止めを!

《福井》木原壯林さん(「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」)
原発の現状と将来に関わる公開質問状を 高浜町長、おおい町長、美浜町長に提出

《島根》芦原康江さん(さよなら島根原発ネットワーク)
島根原発3号機の適合性審査申請に対する了解回答は撤回すべきだ!

《伊方》秦 左子さん(伊方から原発をなくす会)
二〇一八年九月原発のない未来へ 伊方原発再稼働反対全国集会

《玄海》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会)
原発は止め、放射性廃棄物は人から離し測定して監視し地下に埋めても修復できる体制を

《読書案内》天野惠一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『言論の飛礫(つぶて)─不屈のコラム』(鎌田慧・同時代社)

『NO NUKES voice』vol.17
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GW4GYDC/

◆疑惑の4点がすべて載った衝撃記事

 

本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号より

本日9月7日発売の月刊『紙の爆弾』(2018年10月号)に掲載されている記事「安倍晋三『下関暴力団スキャンダル』の全貌を暴く」は、安倍首相や自民党にとって「不都合な事実」が満載だ。

いまインターネット上で話題の#ケチって火炎瓶 #安倍とヤクザと火炎瓶 の事件を紹介。そのうえで執筆者のタカノシゲル氏が過去の取材にさかのぼって具体的な人名をあげ、背後にある全体の構造を示しているからだ。

キーワードは4つ。①安倍晋三、②工藤會(を含む暴力団)、③自民党(および同党大物政治家)、④警察、である。

◆#ケチって火炎瓶 “安倍とヤクザと火炎瓶

あらためて安倍首相をめぐる暴力団がらみの事件を整理しよう。1999年4月の下関市長選で、安倍陣営の江島潔候補(現参院議員)を応援するため、建設会社会長の小山佐市氏が、対立候補の古賀敬章氏に対する誹謗中傷ビラを撒いた。選挙妨害である。

そもそもが当時安倍首相の佐伯伸之秘書(故人)から中傷ビラ配布を頼まれたというのが小山氏の主張だ。

佐伯秘書は古賀候補の女性スキャンダルを扱った週刊誌記事を小山氏に見せ、「それで、僕は『こんな記事が出るヤツは国会議員の資格がない』と 小山に言うた」と、スキャンダル記事は見せたが、中傷ビラをまけとは言っていないとインタビューに答えている。

 

続きは本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号で!

そして佐伯秘書は絵画購入の代金として300万円を小山氏に支払ったが、それが恐喝だとして小山氏は逮捕。しかし不起訴となる。

このあと、選挙で対立候補を「当選させないための活動」をしたにもかかわらず、見返りがなかった。そのため安倍首相らとも交渉して念書の類の書面を交わした。(この念書が出てきたことで、今回の事件に火がついた)

ところが思い通りに行かなかったため小山氏は、指定暴力団「工藤會」系の高野組・高野基組長に依頼して、2000年6月から8月にかけて、安倍晋三氏宅ら4軒(間違えて攻撃した場所を含めれば5軒)に火炎瓶を投げさせた。

国会議員の自宅や後援会事務所など4か所に火炎瓶が投げられたのだから当然、大騒ぎになり大々的な捜査が行われるはずだ。

しかし報道もされず、当初はだれも逮捕されなかったのである。これは考えられないことだ。安倍氏の筆頭秘書・竹田力氏(故人)は、山口県警刑事部捜査第一課次長(警視)だ。

こうした警察につながる人物が安倍氏の筆頭秘書をつとめていたが、前述の300万円恐喝で逮捕されたが小山氏はすぐに釈放され起訴もされていない。そして連続火炎瓶事件でも、山口県警は大々的に動かなかったという。

事件から3年経った2003年11月、小山氏、高野組長ら複数名が火炎瓶事件で逮捕起訴され、小山氏懲役13年、高野組長懲役20年(服役中)の判決が下ったのだ。

事態が急変したのは、服役していた小山佐市氏が今年2月に出所し、逮捕直後から事件を追っていたフリージャーナリストの山岡俊介氏(アクセスジャーナル主宰、事件の連載記事執筆)と、火炎瓶事件の電子書籍「安倍晋三秘書が放火未遂犯とかわした疑惑の『確認書』」の著者、寺澤有氏に連絡してきたことだ。

2人は急遽下関に飛び、5月13日に5時間にわたり小山氏をインタビューし動画撮影を行った。決定的なのは、それまでに存在はわかっていたが現物が出てこなかった、安倍事務所と小山氏が交わした文書3通の現物を2人が目撃し、動画撮影したことである。

選挙妨害後のトラブル処理のために1999年6月から7月にかけて署名捺印された2通の確認書と1通の願書だ。

それによると1999年7月3日に、安倍首相と小山氏は一対一で面談しているのである。なお、2014年8月にも山岡氏と寺澤氏が筆頭秘書の竹田力氏を取材したさい、竹田氏は、小山氏と安倍首相が1対一で会ったことを認めている。それが、今回文書でも確認されたのだ。

現在、総理大臣を務めている人ぶるが、民主主義の根幹にかかわる選挙妨害に関与し、指定暴力団とつながりの深い人物と直接接触していた事実は重い。

しかも、当初から追及してきた山岡俊介氏が新宿の階段から転落する事故も起きている。過去に山岡氏は、取材執筆活動が引き金となって自宅を放火されたり、脅迫状やカッターナイフを送りつけられた事実があるだけに、私は事故直後に彼のインタビュー記事を書いている。

◆安倍首相の国会答弁「一切の関わりを断ってきた」の重大な意味

本件に関してマスコミは報道を避け、野党も本格的な追及をしない中で、ただ一人山本太郎参議院議員が7月17日の参院内閣委員会で安倍首相に質問した。この中で注目すべきは、安倍首相の次の答弁だ。

「一切の関りを断ってきた中において、発生した事件であるわけでございます」

筆頭秘書である故竹田氏の証言(もちろん音声録音している)に加え、今回現物が明らかになった書面により、安倍首相と小山氏が直接接触していたことは明らかだろう。したがって「一切の関りを断ってきた」というのはまったく通用しない。

だが、「紙の爆弾」10月号のタケナカシゲル氏の記事が衝撃的なのは、さらに深く、安倍首相の「一切の関りを断って」の意味に斬り込んでいるからだ。

《「断ってきた」という言葉に、自民党と工藤會の蜜月が表現されているのだといえよう。たとえば2001年の参院選挙において、福岡選挙区から当選した松山政司議員(現在三期目)は、出陣式を工藤會館(現在、暴対法で閉鎖中で行おうかと溝下秀男工藤會総裁(故人)に冗談を言って、逆にたしなめられていた。これは同じ選挙に比例区として出馬した作家・宮崎学氏の選挙準備の際に、筆者が溝下氏から直接聴いた話である》(記事より)

ここの引用した以外にも、自民党の選挙と工藤会の関係が実名を含めて照会されている。

そしてもうひとつ、警察と暴力団との関りについて。福岡の博多の違法カジノバーの手入れ情報を流して報酬を得た警察官ら10名が逮捕された2000年の事件に触れていることも興味深い。

その違法カジノの経営者は、工藤會の最高幹部だった。

こうしてみると、安倍晋三・自民党・工藤会(ほかの暴力団も)・警察 による枠組みの中で、いま話題とされている#ケチって火炎瓶事件が位置付けられる。
 
このような人物が自民党の総裁選に出馬することは論外だし、総理辞任、議員辞職は当然だ。

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

7日発売!月刊紙の爆弾10月号

日本史上最大の英雄織田信長は、黒幕の謀略によって殺されたのでなければならない。これが「家来に殺されたバカ殿」ではない、求められる歴史ドキュメントなのである。

 

安部龍太郎 『信長はなぜ葬られたのか 世界史の中の本能寺の変』(2018年7月幻冬舎新書)

◆安部龍太郎の『信長はなぜ葬られたのか』

直木賞作家・安部龍太郎の『信長はなぜ葬られたのか』https://www.amazon.co.jp/dp/4344985052/(幻冬舎新書)が読まれているようだ(公称7万部)。そこでさっそく読んでみたが、小説『信長燃ゆ』のモチーフをエッセイにしたようなものだった。

史料的には特筆するようなものはない。たとえば、幕末に匹敵する尊皇運動が起こり、関白近衛前久が信長殺しをくわだて、明智光秀に白羽の矢を立てたというもの。そのいっぽうで、イエズス会は神になろうとした信長を倒すために、これまた信長包囲網を形成する。そしてポルトガルを併呑したスペインとの交渉が決裂したとき、賽は投げられた。秀吉も密偵の知らせでこれを知っていたが、あえて動こうとはしなかった。と、作家が勝手に「思う」のがこの作品のすべてだ。

イエズス会とキリシタン勢力が大きな役割りを果たし、権力中枢(信長家臣団・朝廷と貴族たち)では守旧派と改革派がせめぎあう、テーマとしては面白いことこのうえないが、じつは歴史研究ではほとんど異端の「朝廷黒幕説」「イエズス会の陰謀説」を足してみたものの、戦国時代のゴッドファーザーこと黒田官兵衛や近衛前久らの動きが有機的に構成されているわけでもなく、買うんじゃなかった感がつよく残った。いや、初めて氏の作品を読む人にはおそらく新鮮に感じられるにちがいない。何しろイベリア両国(スペイン・ポルトガル)の植民地政策(外圧)に対して、信長が採った策が妄想されるのだから。

作家の歴史エッセイは、研究書よりもわかりやすいという原理からか、ベストセラーになることが多い。秋山駿の『信長』は流麗な文章で織田信長の足跡を追い、今日も隆盛な信長ブームをつくり出した。上杉謙信をあつかった津本陽の『武神の階(きざはし)』も史料を羅列したエッセイ風の読物だが、地方紙に連載時から評判を呼んでよく読まれた。

ただし、原史料や軍記ものをほとんど無批判に取り入れている結果、すこしでも歴史研究に馴染んだ向きには読み飽きてしまうのだ。安部龍太郎の妄想力と戯れるのは悪くないけれども、朝廷黒幕説やイエズス会黒幕説など、史料的な裏付けが希薄な論がはびこるのはよろしくない。というわけで、安部作品のバックボーンになっている立花京子(故人)のイエズス会黒幕説を俎上に上げてみよう。

◆立花京子のイエズス会黒幕説は『信長と十字架――「天下布武」の真実を追う』

 

立花京子『信長と十字架―「天下布武」の真実を追う』(2004年1月集英社新書)

立花京子のイエズス会黒幕説は『信長と十字架――「天下布武」の真実を追う』https://www.amazon.co.jp/dp/4087202259/(集英社新書)1冊である。その主要な論点は、南欧勢力(イエズス会・キリシタン・ポルトガル商人・イベリア両国国王=フェリペ2世)が信長に天下布武思想を吹き込み、信長はその軍事技術的な援助のもとに天下統一を進めた。信長が神になろうとしたので、光秀に信長を討たせた。さらに謀反人の光秀を後継者にはできないので、秀吉に光秀を討たせたというものだ。

イエズス会の軍事技術的な援助とは、鉄砲の開発と硝石の輸入に関するものだという。その論拠として、キリシタン大名大友宗麟の書状、すなわちイエズス会宛の「毛利元就に硝石を輸入しないように」というものを挙げている。

だが大友や毛利にかぎらず、鉄砲で武装した大名は無数にいた。イエズス会と結んでいなければ、鉄砲の玉薬の原料である硝石が手に入らないのであれば、東の上杉氏や武田氏、北条氏などの有力大名はどうしていたのだろうか。そもそも硝石が輸入するしかなかった、という史料はない。硝石を鉱物か何か埋蔵されたものと考えるから、輸入に頼らざるを得ないことになってしまうのだ。硝石は日本のような湿度の高い家屋でふつうに採取できる、有機化合物すなわちバイオテクノロジーなのである。人間や動物の排尿にひそむバクテリアが化学変化して結晶化したものが硝石なのだ。つまり床下から採取できる、きわめて身近な物質である。国内で大量生産されるようになるまで、輸入先はもっぱら東南アジアだった。けっきょく、イエズス会に依頼したにもかかわらず、大友宗麟は毛利元成との門司城をめぐる五次にわたる攻防で敗北しているのだ(門司城失陥)。イエズス会の実力がどれほどのものか知れるといえよう。

◆イエズス会という修道会がどのような組織なのか

そもそもイエズス会という修道会がどのような組織なのか、立花京子も安部龍太郎も調べた記述・形跡がない。イエズス会はカトリックだが、プロテスタントの宗教改革運動に対抗するために若い修道士を中心に組織されたものだ。日本の戦国時代には全世界に1000人の会士がいたという。

しかし、たった1000人なのである。日本には使用人もふくめて数十人といったところであろうか。イエズス会の会士がすべて、武器商人であったり技術者であったわけではない。ポルトガル商人をともなう場合はあったかもしれないが、ルイス・フロイスの『日本史』にも『イエズス会士日本通信』にも、商人として旺盛な活動を記したものはない。むしろ南米においてはイエズス会はポルトガル商人と奴隷の売買をめぐって激しく対立している。そしてナショナリズムの台頭したイベリア両国から、イエズス会は排除されていくことになるのだ。

◆立花京子と安部龍太郎は決定的なことを見落としている

本能寺の変後のイエズス会の動向について、立花京子と安部龍太郎は決定的なことを見落としている。本能寺の変が安土城に伝わった翌日、オルガンティーノをはじめとするパードレ(司祭)とイルマン(修道士)および信者の総勢28人は、琵琶湖の沖島に退避しようとする。なぜ信長謀殺の黒幕が退避しなければならないのか、もちろんイエズス会黒幕説は説明してくれない。安土城を脱出した一行は、途中で追いはぎにあってしまう。命よりも大切な聖書を奪われ、衣服も奪われたという。沖島に着いてみると、こんどは漁民たちが湖賊の正体をあらわし、イエズス会の面々を監禁してしまった。何のために黒幕として陰謀を働いたのか、これではわけがわからない。イエズス会の面々は信長からは多大な恩恵を受けたが、光秀からは何も得られなかったのである。そもそもイエズス会は光秀を反キリスト主義として忌み嫌っていた。庇護者である信長がみずからを神にたとえたとしても、逆らうだけの力も意志もなかったはずだ。

 

山岡荘八『徳川家康』文庫 全26巻 完結セット(講談社2012年5月)

それにしても、信長を英雄視するようになったのは、ここ20年ほどのことだ。安部作品も例にもれず、信長の合理主義的な発想とその偉大さが物語の主柱である。戦後、経済成長期には立身出世のスーパースターとして、豊臣秀吉がもてはやされた。高度成長で企業が安定的な業績をおさめるようになると、経営論としての徳川家康論が大勢を占めた。おりしも、山岡荘八の大河小説『徳川家康』がサラリーマンの愛読書となった。

戦前はじつは上杉謙信と楠木正成だった。戦国武将の人気はそのまま、世評を映しているのだといえよう。いま、信長がもてはやされるのは、強いリーダーが待望されているからであろう。

お友だち政治で失政だらけの安倍晋三の人気が、不思議なまでも保たれているのは、ほかに強気のリーダーが居ないからではないか。慎重で何もしない指導者よりも、危険だが改革と豪腕の指導者が望まれる時代。それはファシズムの時代によく似ている。(このテーマ、断続的につづきます)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

大反響『紙の爆弾』9月号

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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