『季節』2026年秋号巻頭言 第二次熊本地震、千葉大水害が教える原発の危険性に気づき、さらに反(脱)原発の声を高らかに挙げよう!

季節編集委員会

かくもこの世には人間に止めることのできない自然災害が多いのか──。

この夏、私たちを震撼させたのは、まず十年の時を越えて再び襲った第二次熊本地震、そしてこの後に起きた千葉大水害でした。

まずは、亡くなられた皆様にお悔やみ申し上げ、また被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

一見原発とは関係ないように思えますが、よくよく考えると、これらが原発関連施設のある地域で起きたら、もっと大変な事態になっていたでしょう。熊本地震でのイオンや製紙工場での出来事が原発立地地域で起き、さらに原発関連施設で起きていたら、福島で起きたことが再来したでしょう。あまり大きく報じられていませんが、千葉水害でも、放射性物質が流出したとのこと、この影響はないのでしょうか。

実は被災地・熊本は筆者の故郷です。十年前、そして今回と、知人、友人、縁者らの安否確認に追われました。それでも、いささか不謹慎な物言いでしょうが、原発がなかったことによる、正直どこか「安心感」がありました。これが、原発関連施設がある地域だったらどうでしょうか? 二度も大地震が襲った熊本に原発がなかっただけでも不幸中の幸いでした。有明海や不知火海に原発がなかっただけでも後片付けや復旧作業に専念できます。福島の場合、放射能への防御服を着ないと作業はできませんでした。この猛暑のさなか、それがどれほどの後片付けや復旧作業にとって「重荷」になるかは言うまでもありません。

日本は、ひと際自然災害が多い国です。自然の猛威は、ある日突然やってきます。人間に、これを予想し、抗う力はありません。予想でき抗う力があったなら、犠牲者は出なかったはずです。

であるならば、単純な話です、原発再稼働、特に老朽原発の再稼働を断固阻止し、即時廃炉へ向かうべきです。新規原発建設など論外です。

お陰様で本誌は創刊12年を迎えました。毎号発行に伴う財政的やり繰りは大変です。しかし、本誌が持つ〈大義〉はあるはずです。唯一の反(脱)原発情報誌であり、反(脱)原発に微力ながら声を挙げ続ける本誌の発行継続に皆様の力をお貸しください。

2026年猛暑、悲嘆に暮れながら──

季節編集委員会

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉情報誌
季節2026年秋号
『NO NUKES voice』改題 通巻47号
紙の爆弾2026年10月増刊
2026年9月11日発行
A5判 132頁 定価880円(税込み)

《グラビア》原発マフィアに抗うアジアの人々
佐藤大介=ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン)

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 AIと原発

《特集》ファシズムと原発は一体で進む

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 改めて『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』

《報告》七沢 潔(ジャーナリスト)
 原発とサッカーと「苔の一念」 珠洲原発の歴史に学ぶ 

《講演》井戸謙一(弁護士)
 浜岡原発不正問題と原発訴訟

《対談》樋口英明(元福井地裁裁判長)×井戸謙一(元金沢地裁裁判長)
 原発を止めた二人の裁判長が語る 人生・司法・原発訴訟[前編]

《講演》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
 「子ども脱被ばく裁判」の10年
 子どもたちを被ばくから守るために

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 「原発は滅び行く恐竜である」
 熊本地震と浜岡耐震データ偽装からみた原子力産業の現状

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 反省なき原子力拡大路線の構造分析
「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を批判する

《報告》佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局)
 アジアの原発と民衆の闘い
 韓国・台湾・インド・フィリピン


《報告》木村英昭(ジャーナリスト)
[新連載]原発タイムライン〈1〉
 欧州で原発活用の動きが鮮明に

《報告》高野 聡(原子力資料情報室研究員)
 南鳥島での地層処分に潜む問題と植民地主義

《報告》小坂勝弥(核のごみキャンペーン関西)
 「核のごみ」処分地選定のその前に

《報告》山崎隆敏(元越前市議)
 使用済み核燃料をめぐる矛盾と桎梏

《報告》中野広典(弁護士)
 シン・安全神話
 原発再稼働のために裁判所が生み出した三種の神器

《報告》福島敦子(大飯原発差止京都訴訟原告・世話人)
 3・11 私の15年
 奪われた故郷と、子どもの未来を守り抜く連帯の記録

《インタビュー》河野康弘(ジャズピアニスト)
 3・11 私の15年
 原発はすぐに中止できます!!

《対談》二木啓孝(元日刊ゲンダイ編集長)×板坂 剛(作家/舞踊家)
 大衆心理の不確かな実態[前編]

《報告》原田弘三(翻訳者)
「脱炭素伝道師」江守正多氏の低劣な原発擁護論

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
「全国交流会」で再稼働阻止の議論
《全国交流会》青山晴江(再稼働阻止全国ネットワーク)
《北海道》佐藤英行(岩内原発問題研究会)
《福島》黒田節子(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会)
《福島》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
《東海第二》披田信一郎(東海第二の再稼働を止める会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《中国電力》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《四国電力》名出真一(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会会長)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《本の発掘⑤》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

《反原発川柳》乱鬼龍

amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0HBWF57W7/

『季節』2026年秋号をお届けするにあたって ―― 総力で本誌『季節』発行を継続し、一貫して続く政府による棄民政策、東電の開き直り、なしくずし的に忘れ去られている福島の現状に抗って行きましょう! 

『季節』編集長 小島卓
株式会社鹿砦社代表取締役 松岡利康

わが国唯一の反(脱)原発情報誌『季節』を支持・支援されるすべての皆様! いつも『季節』に特段のご協力、ご支援、有り難うございます。

本誌『季節』2026秋号をお届けいたします。今号も、多くの方々にご寄稿、ご協力を賜り無事発行できました。有り難うございました。

◆12年前の本誌創刊当時の暑い夏を思い出す

本誌今号は、創刊から12年になります。『紙の爆弾』が21年ですから、まだまだですが、思い返せば、まだ福島原発事故の衝撃の余韻が残り国会や官邸前などでも多くの人々が抗議の声を挙げていた2014年8月、本誌(当時の誌名『NO NUKES voice』)は産声を挙げました。以来、12年発行を継続してまいりました。創刊時の編集長は松岡、発行人を兼任していました。当初編集長を予定していた人物は直前で意見の対立が生じ降りました。「もうアカンかな」と思っていた矢先、創刊を相談していた「たんぽぽ舎」共同代表の柳田真さんから突然松岡に電話があり「こういう雑誌はないので、協力するからぜひやって欲しい」ということで創刊に至りました。当時は資金的にも余裕があり、他に類似の雑誌はないので1年以内に黒字になるだろうという甘い見通しでした(80年代、小島が神戸時代から知っている松岡の人生、いつも見通しが甘いものでした)。国会や官邸前から人が去り、また政府や東電も棄民政策を採り、年々、福島の現状は忘れ去られていきました。

これまで続けて来れたのは、松岡の福島原発事故に対する怒り、近い将来同種の事故が起きることへの危機感がありました。そして、松岡のこの想いを理解してくれ創刊1年後から編集長を務めてくれている小島卓、また創刊号より寄稿されている小出裕章さん(創刊号には小出さんのほか今中哲二さん、神田香織さんらの名があります)はじめ寄稿者の皆様方、読者、会員、社債引受者の皆様方らのご支援、サポートによることは言うまでもありません。

◆本誌に関わってくださる小出裕章さんらの熱い心をわがものとし、本誌の貴重な存在意義を忘れずに、更に拡販して行きましょう!

本誌は、小出裕章さんのように創刊号から関わってくださっている方はますます筆致が鋭くなり、号を重ねるごとに新たな書き手も増え、内容も充実してきており、わが国唯一の反(脱)原発雑誌として在り続けています。手前味噌ながら貴重な存在だと自負します。

本誌は、12年前に松岡の発意で創刊しましたが、特段強い決意があったわけでもなく、他分野でヒットが続き資金的にも余裕があり、原発事故への怒りと共に、原発問題に多くの人が関心を持つのに定期刊行物がないのはおかしいではないかという素朴な発想からで、上記したように、1年以内に黒字化し、ゆくゆくは隔月刊にしたいとさえ甘く見通していました。

以来12年、1年以内に黒字化など夢のまた夢で、ずっと赤字でした。それでも他分野で稼げれば、この利益を注ぎ込めるわけですが、これを壊したのは新型コロナでした。出版業界でも、多くの書店が閉店し、本社の近くのショッピングモールに在ったA書店は、かつてライバルだったK書店に看板替えしました。

では、ネット書店や電子書籍はどうか? これらもコロナ前と変わりはなく苦戦しています。営業的に、もっとやり方はあるのかもしれませんが……。

それでも、愚直に続けていれば、多くの助け舟が現われ、想定外の幸運もあるものですが、こうした厚意や幸運を活かし切れていないのも大いなる反省点です。

また、寄稿される皆様方、本誌を支持・支援される皆様方にも拡販をお願いする次第です。隠れた読者は絶対にいるはずです。ぜひぜひ、友人、知人などへの拡販をよろしくお願い申し上げます。

発行している期間が『紙の爆弾』より短いですが、『季節』の定期購読は『紙の爆弾』の3分の1にも及びません。何としても『紙の爆弾』ぐらいには拡販したいものです。よくありますが、グループや組織内での回し読みは絶対にやめていただき、1人=1冊、身銭をきって購読することが基本です。この点、よろしくご理解お願いいたします。今すぐ書店に走ろう! あるいはパソコンに向かいネット書店に注文しよう! 
 
今夏は熊本地震、千葉、北陸、そしてつい最近は名古屋などでの洪水といった大きな自然災害に襲われました。末筆になりますが、被害に遭われた皆様には衷心よりお見舞い申し上げます。

残暑厳しき折り、くれぐれもご自愛ください。

2026年9月11日

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉情報誌
季節2026年秋号
『NO NUKES voice』改題 通巻47号
紙の爆弾2026年10月増刊
2026年9月11日発行
A5判 132頁 定価880円(税込み)

《グラビア》原発マフィアに抗うアジアの人々
佐藤大介=ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン)

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 AIと原発

《特集》ファシズムと原発は一体で進む

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 改めて『原発と戦争を推し進める愚かな国、日本』

《報告》七沢 潔(ジャーナリスト)
 原発とサッカーと「苔の一念」 珠洲原発の歴史に学ぶ 

《講演》井戸謙一(弁護士)
 浜岡原発不正問題と原発訴訟

《対談》樋口英明(元福井地裁裁判長)×井戸謙一(元金沢地裁裁判長)
 原発を止めた二人の裁判長が語る 人生・司法・原発訴訟[前編]

《講演》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
 「子ども脱被ばく裁判」の10年
 子どもたちを被ばくから守るために

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 「原発は滅び行く恐竜である」
 熊本地震と浜岡耐震データ偽装からみた原子力産業の現状

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 反省なき原子力拡大路線の構造分析
「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を批判する

《報告》佐藤大介(ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局)
 アジアの原発と民衆の闘い
 韓国・台湾・インド・フィリピン


《報告》木村英昭(ジャーナリスト)
[新連載]原発タイムライン〈1〉
 欧州で原発活用の動きが鮮明に

《報告》高野 聡(原子力資料情報室研究員)
 南鳥島での地層処分に潜む問題と植民地主義

《報告》小坂勝弥(核のごみキャンペーン関西)
 「核のごみ」処分地選定のその前に

《報告》山崎隆敏(元越前市議)
 使用済み核燃料をめぐる矛盾と桎梏

《報告》中野広典(弁護士)
 シン・安全神話
 原発再稼働のために裁判所が生み出した三種の神器

《報告》福島敦子(大飯原発差止京都訴訟原告・世話人)
 3・11 私の15年
 奪われた故郷と、子どもの未来を守り抜く連帯の記録

《インタビュー》河野康弘(ジャズピアニスト)
 3・11 私の15年
 原発はすぐに中止できます!!

《対談》二木啓孝(元日刊ゲンダイ編集長)×板坂 剛(作家/舞踊家)
 大衆心理の不確かな実態[前編]

《報告》原田弘三(翻訳者)
「脱炭素伝道師」江守正多氏の低劣な原発擁護論

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
「全国交流会」で再稼働阻止の議論
《全国交流会》青山晴江(再稼働阻止全国ネットワーク)
《北海道》佐藤英行(岩内原発問題研究会)
《福島》黒田節子(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会)
《福島》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
《東海第二》披田信一郎(東海第二の再稼働を止める会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《中国電力》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《四国電力》名出真一(伊方から原発をなくす会)
《九州電力》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会会長)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《本の発掘⑤》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

《反原発川柳》乱鬼龍

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yodobashi.com https://www.yodobashi.com/product/100000009004287904/

違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか

村岡啓一(紙の爆弾2026年9月号掲載)

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、否認を続けたために、持病悪化による命の危機を訴える中で226日にわたる勾留を受けた角川歴彦・KADOKAWA元会長。「人質司法」の典型として、角川氏は違憲訴訟を闘っている。7月15日、第8回口頭弁論後に弁護士会館で開催された勉強会で、「なぜ、『人質司法』があるのか」をテーマに行なわれた村岡啓一弁護士の講演を編集部でまとめた。

◆「無罪推定」のはずがなぜ「未決拘禁」されるのか

「人質司法」という言葉をご存知でしょうか。国際社会で「ホステージ・ジャスティス(Hostage Justice)」として問題視されてきたものです。

日本の刑事実務では、被疑者が逮捕されると、国家機関(検察官と裁判官)の権限により身体を拘束された状態で、捜査機関の取調べが行なわれます。「身柄を解放されたければ自白せよ」というように、身柄拘束と自白とが対価関係になっています。それゆえ「人質司法」と呼ばれています。

法務省は「日本に人質司法はない」と存在を否定していますが、様々な冤罪事件で知られるように、「人質司法」により被疑者が虚偽自白を迫られた事例には、枚挙の暇がありません。

大正時代の1918年に、京都府知事が府議会議員とともに贈収賄容疑で逮捕される事件(京都豚箱事件)が起きました。当時の訴訟記録によれば、最終的に知事が受けた判決は無罪でしたが、知事らは100日を超える長期の身柄拘束によって自白を迫られました。「人質司法」の実態は、100年以上も前から今に至るまで全く変わらず続いているのです。

さて、日本では、逮捕された被疑者は手錠・腰縄で拘束されます。まだ有罪と決まっていないので「未決拘禁」といいます。でも、どうして無罪が推定されている人間なのに、手錠・腰縄をされるのか? 何かおかしくないですか?

法務省はこの問いにこう答えます。「無罪推定は証拠法上の立証責任を示す原則である。被告人は無罪と推定されるから、国家の側が有罪を証明する責任を負うことを示しているにすぎない」。つまり、法務省は非常に限定した説明をしているのです。

国際的な理解は大きく違い、「国家刑罰権の対象とされた人は裁判所によって有罪とされない限り、刑事手続のどの段階でも制約のない市民的自由が保障されなければならない」です。

また日本では、検察官が取調室で被疑者に対し威圧的な尋問を行なっています。これもおかしくないですか? 被疑者はなぜ一方的に取調べを受忍しなければならないのでしょうか?

これは黙秘権と関係します。黙秘権は憲法38条1項にはっきりと書かれている憲法上の権利です。被疑者が「黙秘します」「これ以上話すことはありませんから、私は房に帰ります」と言って退去してよいはずなのです。ところが実際には、被疑者は取調室で延々と取調官の尋問に晒されます。

これを日本の捜査機関は、次のように合理化します。「捜査機関には被疑者を取り調べる権限があるから、逮捕・勾留された被疑者を取調室にとどめおいて取調べることは許される。被疑者に取調べを受忍する義務があるとしても、黙秘することはできるから、黙秘権を侵害していない」。

その結果、検察官が一方的に尋問し、被疑者は沈黙を続けるという奇妙な闘いが、どちらかが諦めるまで延々と続くのです。そして、時に「検察をなめるな!」と検察官が被疑者を恫喝する事態となるわけです。

カルロス・ゴーン元日産会長の弁護人だった高野隆弁護士の著書『人質司法』(角川新書)の帯文は「逃亡は必然だった」です。ゴーン氏の「日本の刑事司法は中世のままだ!」という叫びには、後述するように明確な理由があります。最近では、ほかにも大川原化工機冤罪事件など人質司法をめぐる国賠訴訟が起こされていますが、角川氏の訴訟は、まさに人質司法の違憲性を正面から問う憲法訴訟なのです。

◆日本国憲法と英文憲法

本題に入り、日本の「人質司法」はなぜ問題なのか、他の国ではこういった問題はないのか、という疑問に答えていきます。憲法・刑事訴訟法・国際人権規約といった法律の解釈について、国際社会の常識と、日本の検察官や裁判官の理解にはズレがあります。このズレについて説明します。

関係する法令は「人身の自由」を定めた憲法34条、身体拘束の要件である「罪証隠滅」を規定した刑事訴訟法60条、国際的な「未決拘禁」のあり方を述べた国際人権規約9条3項です。

まず、憲法から始めましょう。

皆さんは1946年11月3日、日本国憲法とともに「もうひとつの憲法」英文憲法(Constitution of Japan)が公布されたことをご存知でしょうか。国際的な場では、この英文憲法が「日本」の「憲法」として通用しています。英文憲法は日本国憲法を英訳したものではありません。

日本国憲法は形式上、明治憲法(大日本帝国憲法)を改正したものですが、実質的にはGHQが英語で草案をつくり、それに基づき日本で議論がなされました。今日、改憲論議が起きていますが、そこでよく言われる「日本国憲法はGHQに押し付けられた」という主張は、このことを指しています。

では、日本はGHQに押し付けられた憲法を嫌々認めたのかといえば、実態は全く異なります。帝国議会の衆議院と貴族院で、実に丁寧な、逐条的な審議を経て承認したものです。

しかも、草案にはなかった条文まで付け加えています。それが「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」という日本国憲法40条(刑事補償)です。この規定に基づき、不当な身体拘束を受けた冤罪被害者が刑事補償法によって国から金銭的な補償を受けられるようになりました。

GHQはそんなことを考えていませんでした。むしろ、日本の公務員のありようからいって、そんな規定を設ければ、国家の補償を避けるために、かえって被疑者への暴虐行為に走るだろうと考えて反対しました。しかし議員たちは、国家が冤罪を起こせば補償するのが国の当然の責任だと考えて憲法40条をつくったのです。この経過を見れば、日本国憲法は「押し付け憲法」とはいえません。

ここから先はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nf7067dde44f9

月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾 ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である

山田正彦(紙の爆弾2026年9月号掲載)

ここ数年で「食料安全保障」という言葉が広まったように、「農と食」への注目度は、確実に高まっている。しかし肝心の農政において、先の国会で種苗法が再び改悪。国民的関心も高いとは言いがたい。それでも、「希望はある」と語る人がいる。民主党政権で農水大臣を務め、映画『タネは誰のもの』(2020年)や『食の安全を守る人々』(2022年)をプロデュース、数々の著作を持つ山田正彦氏に話を聞いた。(本誌編集部)

◆証明された残留農薬デトックス

―― 2024年~2025年の「令和の米騒動」は、食の量的確保がクローズアップされた一方で、「食の安全」という質的問題が抜けていたように感じます。

山田 最近、衝撃的な話を耳にしました。全国的に少子化が進んでいるにもかかわらず、一部の小学校で教室が足りなくなっているというのです。原因は発達障害が認められる子どもの増加で、別室で授業する通級指導が必要な児童が増えているという。問題は、そのような子どもの増加が、ネオニコチノイド系農薬(殺虫剤)やグリホサート系農薬(除草剤)の全国出荷量と相関していることです。それらは1990年代に登場し、特にここ20年で使用量が増加しました。

―― 2024年の「食料・農業・農村基本法」改正の議論で政府の食料自給率向上への関心の低さが批判されたように、食の供給に不安がつきまとう中で、農薬や化学物質の摂取はある程度仕方ない、という諦めの声も聞かれます。

山田 人体への農薬の影響は、決して軽視できません。世界的な研究で、食べた本人だけでなく、女性の卵巣疾患やホルモン異常、男性の精子数の減少、出生異常も報告されています。

しかし、知っておいてほしいのは、有害物質を摂取しても、排出(デトックス)は可能だということです。2019年、NPO法人「福島県有機農業ネットワーク」の調査で、被験者がまず一般の食材(慣行食材)を食べて尿中のネオニコチノイド農薬等の残留量を測定し、その後、オーガニック(有機)食材だけを摂る生活をしたところ、最初の測定で5ppbだった残留量が5日間で2.3ppbに半減、4週間で0.3ppbと90%以上も低下しました。

―― 「有害物質を摂るのをやめる」ことが重要だということですね。一時期または一部の食事を有機にするだけでも意味がありそうです。

山田 食品の残留農薬の問題は、『食の安全~』でも詳細に取り上げています。私は国会議員になる前から、弁護士業のかたわら農業に携わってきました。有機栽培にも50年前から関わり、地元・長崎でお母さん方とともに、弁護士事務所を拠点として「土と文化の会」を設立してもいます。農家を回って有機野菜を集め、当時始まったばかりの「赤帽」で配送する仕組みを作りました。同会は現在も続いています。

◆「学校給食」の重要性

―― 持続的な有機農業を考えた時、確かに流通の問題は重要です。

山田 そこでポイントとなるのが「学校給食」です。千葉県いすみ市では、2015年から給食に有機米の導入を始め、2017年には全小中学校で100%有機米を達成しました。また、東京都武蔵野市も早くから、母親たちの活動をきっかけに「安全給食」に取り組んでいます。「オーガニック給食」が今、急速に広がりをみせ、2020年には123、2024年には328の市区町村で、何らかの形で導入されています。

今年4月から全国の公立小学校で給食費無償化が始まりましたが、予算面でも負担は大きくありません。2023年には宮崎県綾町でオーガニック学校給食の推進を「町の責務」「学校の責務」と定める日本初の「オーガニック給食条例」が制定されました。

―― 親たちが以前から食への不安を抱えていたことがわかります。

山田 学校側も、子どもたちに表れる変化に、対応の必要性を感じた事情もあるのではないでしょうか。

―― 『食の安全~』ではアメリカの事例が紹介されていました。

山田 映画では、市民団体マムズ・アクロス・アメリカを立ち上げたカリフォルニア州在住の主婦ゼン・ハニーカットさんにインタビューしました。彼女は3人の子どもが特定の食べ物にアレルギーをもっていたことをきっかけに、家庭で食べていたものを調査。するとアメリカで流通する加工食品の85%に遺伝子組み換え食品が含まれていたことが判明しました。

それらを食卓から取り除くと、子どものアレルギー症状が短期間で改善したのです。その事実を他の母親と共有するために、彼女は市民団体を設立。彼女のような活動を契機に、今ではアメリカの多くのスーパーにオーガニック食品が置かれ、日常化しています。

また、韓国では、すでにほとんどの小・中・高校の学校給食が無償かつ有機食材使用です。有機農業が広がり、学校給食に供給されている。ここが重要で、学校給食が子どもたちの健康を支えるとともに、学校給食としての確実な需要が有機農業を支えるという構図があります。

◆「国産」「有機」は需要がある

―― ゼンさんのエピソードは、山田さんの『歪められる食の安全』(角川新書)でも紹介されています。同書は食品表示の問題に焦点を当てた本です。

山田 2013年に成立した食品表示法は、私が農水大臣を務めた頃に議論を始めたもので、国内で製造・加工されたすべての加工食品に原料原産地の表示を義務付けました。ところが2017年に表示基準が改悪され、原材料の産地がどこであろうと、国内で作られた食品は「国内製造」と表示可能となりました。消費者は「国産」と誤解します。

内閣府が実施したアンケート調査によると、「国産」の表示があれば、89%が国産を選ぶと答えました。できれば国産の食べ物を選びたい、というのが当たり前の市民の要求です。すると消費者庁が、国会での議論なしに「国内製造」という表示をつくってしまったのです。大手食品企業の意向を汲んだのでしょう。

―― 有機食材の流通が確保されれば、市場拡大が期待されます。

山田 イオングループに、オーガニック商品の取り扱いを勧めたこともありました。それでも、ネックはやはり有機食品の流通網が確立していないことで、農家が宅配便等で出荷せざるをえず、余計なコストがかかってしまう、といった問題があります。JAは、他方で農薬を扱っていることもあり、非有機の慣行農業に配慮せざるをえません。現場でも、慣行農業で散布される農薬が有機の田畑に飛散したら意味がないし、有機栽培で発生した虫を、慣行農業側は嫌がります。

しかし、状況は変化しています。後述するように、たとえばJA島根は有機栽培の流通を進めるとともに、有機栽培農家と慣行農家が共存できるルールづくりを始めました。

―― 有機栽培農家には、組織体のようなものはあるのでしょうか。

山田 ほとんどが個人経営ですが、自ら通信販売するなどの経営努力が成功を収めるケースが増えています。

◆世界で急速に進むオーガニック

―― 「国産」の需要があるということは、裏返せば、「食の安全」には確実に需要があるということです。

山田 それは世界が証明しています。有機栽培の農地面積が1位のオーストラリアは2021~2022年の1年間で49%も増加。2022年のデータで、インド・アルゼンチン・中国・フランスが続いています。同時期の日本は0.1%増(農地面積全体の1%弱)でした。世界的にオーガニック市場の急拡大が注目を集めています。

アメリカも年10%の割合で伸長。一方で遺伝子組み換え農作物は2016年から頭打ちです。ロシアは2014年から本格的に有機栽培に取り組み、2016年に制定された法律で、遺伝子組み換え作物の栽培と輸入を禁止しました。中国も2017年に同様の法律をつくり、米中貿易摩擦の過程で試料用の輸入を解禁したものの、有機栽培の作付面積はアメリカを追い抜きました。

―― 日本だけが遅れているように見えます。

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月刊「紙の爆弾」9月号から一部記事を公開。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価800円)。書店でもぜひチェックしてください。最新号の記事タイトル一覧はホームページをご覧ください。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾 ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
「絶望ニッポン」の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/

『紙の爆弾』10月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

アメリカによるイラン攻撃が再開される中、キューバで経済封鎖により深刻なエネルギー危機が続いていることは、あまり報じられません。長時間の停電は家庭の明かりを奪うだけでなく、給水や交通・食料・医療など市民生活のあらゆる面に影響を及ぼしています。そんなキューバの現状と、危機の中で抵抗する人々について、同国ジャーナリストのセサル・ゴメス・チャコン氏が本誌に寄稿しています。

“当事者”を除き、あらゆる方面から疑問の声が挙がった「国民会議」というネーミング。そして、結局何が話し合われたのか、何のための会議だったのかも、まったく不明。「国民による会議」ではないのはすぐにわかることでも、では誰による何のための会議だったのか?という問いに答えたのが、今月号の植草一秀氏の論考です。その空虚さゆえに、常に“背後”が垣間見えるのが高市政権の特徴といえます。ならば、表面的な事象を批判して終わっては、背後勢力の術中にはまるだけです。

「高市早苗政権はこんなにも大局観を欠いた国家運営しかできないのか」「首相が(飲食料品の消費税率)1%案を断行しようとするのに対して、野党が『結論ありきだ』と批判するのも当然だ」。前者は7月30日付日経新聞社説、後者は31日付読売新聞社説です。本誌巻頭で指摘したとおり、さんざん逆進性が指摘されてきた消費税が、いまや税収合計の3分の1を占める現状をどう捉えるべきか。ちなみに6年連続の最高税収を記録した2025年度、所得税収・法人税収がそれぞれ大きく上がっても、消費税の総収に占める割合は31%です。

世界のコロナ対策をリードしてきた元アメリカ大統領首席医療顧問、アンソニー・ファウチ博士への追及がアメリカで始まっています。着目すべきはKダブシャイン氏指摘のとおり、日誌に表れたファウチ博士のキャラクターで、いかにも利用されやすそうなのは高市首相と共通するところ。芸能人へのリアクションも似ている気がします。コロナ騒動の本質はもとより、それまで“主流”とされていた見解が逆転するのかに、もっとも注目しています。

8月号から前・中・後編でお送りした植草一秀氏“3つの冤罪事件”の真実。それぞれの事件の状況はもちろん、不可解な経緯と、当時の社会状況についても詳しく説明しています。そこから見えてくるのは、「今の日本」です。なぜ日本だけが「失われた35年」にはまり込み、抜け出せないのか。「失われたもの」とはいったい何か。それらが事件の背景から浮かび上がってきます。

ほか10月号では、首相官邸SNSの“高市PR動画”が炎上した「首相の無意味な熊本視察」と2024年地方自治法改正の関係を解説。これは副首都法や緊急事態法制とも関係します。2026年熊本地震をめぐっては、各地で加速する“AI防災”のリスクについてもレポート。ほか25年目となった「9.11」の真相、「SNS年齢規制」の国内議論の的外れぶりや、ひきこもり支援事業における「労働」についてなど、今月号も独自の切り口で真実を追求します。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在 「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾 ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

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7.28熊本地震をめぐる『紙の爆弾』10月号の注目記事 イオンモールで亡くなった女性従業員2名の親会社とそのエリート経営者を容赦なく弾劾した片岡亮さんのレポートは必読です!

鹿砦社代表 松岡利康

少し早いかもしれませんが、月刊『紙の爆弾』10月号(9月7日発売)の記事の一部を紹介させてください。

去る7月28日に起きた二度目の熊本地震については、私のふるさとでのことで、二度目ということや、イオンモールでの従業員の方々が阿鼻叫喚の地獄絵が同時的に報じられる中で亡くなられたことなどで、殊更胸が締め付けられる想いがしました。こうしたことで、広く募金を集めることにも積極的に協力することにしました。先に皆様方にも明らかにした通りです。

また、近く発売される『紙の爆弾』10月号でも2つの記事を掲載しています。特に片岡亮さんの記事は衝撃的なので、早めながら紹介する衝動に駆られました。この記事だけでも、今号の値打ちがあります。

くだんのイオンモールでは、幸いにお客さんは全員逃げ助かりましたが、一部店舗の従業員に犠牲者が出ました。いったんはモール外に逃げ、誰かの指示でモール内の店舗に戻り帰らぬ人となりました。明らかに人災です。

片岡さんの記事では、この責任を厳しく追及しています。ある店舗の親会社は、熊本では誰もが知る老舗企業グループです。現在の社長は東大を出てエリートコースまっしぐらの人物です。片岡さんはこれを容赦なく弾劾しています。当然です。人ひとりの命以上に勝るものはありません。沖縄・辺野古での事故もそうです(このことで勘違いの発言をして顰蹙を買った大馬鹿者がいますが)。

事故後すぐに社長自らが被害者家族の元に駆け付け、なによりも被害者側に真摯に寄り添うことが大事だということは言うまでもありません。片岡さんの記事の内容は、おそらく地元紙の熊本日日新聞、あるいは大手紙や通信社の熊本支局の記者らは知っているでしょうが、どのように配信したのでしょうか? 地元の有力企業(の関連会社)だからといって忖度してはいないか? だとしたら、メディア本来の使命を忘れているといえるでしょう。熊本には、おだやかなイメージの広告で有名な化粧品会社などタブーが幾つかありますが、同様です。

片岡さんの記事の一部を公開しますので、定期購読などされていない方は今すぐAmazonや鹿砦社通販部にご注文ください。『紙の爆弾』10月号は9月7日書店発売、定価800円です(安い!)。定期購読、会員の方々には去る2日に発送が済みました。取次会社にも搬入済みです。

『紙の爆弾』2026年10月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年9月7日発売

「飲食料品1%」のしょぼい減税でも迷走 財務省が主導する消費税減税反対論 植草一秀
ビル倒壊と瓦礫の謎 行方不明の墜落機体 実行犯にCIAスパイ…9.11 二十五年目の真相 浜田和幸
キューバを襲う米国によるエネルギー危機 経済封鎖という暗闇を武器にしてはならない セサル・ゴメス・チャコン
日本のSNS年齢規制はキエフの大門である 昼間たかし
2026年熊本地震に見た地方自治と緊急事態条項 足立昌勝
“加害者”を隠しきった裁判 優生思想を護持した日弁連とマスコミ 野田正彰
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」後編 無罪の証拠を司法は無視 小泉・竹中批判封じ
「憲法より日米安保が最高法規」の現状を変えよ プーチン大統領択捉島訪問の意味 木村三浩
それでも進む完全自動化 イオンモール爆発の“人災”と“AI防災”のリスク 片岡亮
「使用者」はいても「労働者」はいない ひきこもり支援事業の“空白” 川田祐一
暴力的カウンター運動と「リンチ事件」「反差別運動」についての共産党見解への疑念 黒薮哲哉
LGBT問題の現在「女性スペース法案」の必要性 井上恵子
成年後見制度という宿痾?ある老齢薬剤師の手紙から 鈴木愼哉
サナエ流独裁の奥義 こうして絞め殺される“日本の議会制民主主義” 佐藤雅彦

〈連載〉
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
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《9月のことば》行き当たりばっちり

鹿砦社代表 松岡利康

《9月のことば》行き当たりばっちり(鹿砦社カレンダー2026より。龍一郎揮毫)

9月になりました。昔、『9月になれば』という映画がありましたが、9月になると、なぜかこの映画を思い出します。映画の内容とは異なりますが、暑い夏が過ぎ、9月になれば、少しは涼しくなり凌ぎやすくなって、仕事も捗り恋の展望も見えてくる ── 9月とはそんな季節のようです。

しかし、今夏、9月を前にして、熊本地震(第二次)、千葉豪雨、さらには福井豪雨など大きな自然災害が起き、厳しい暑さも続き、その後片付けや復旧作業で、夢も希望も展望なんて……。突然の自然の猛威に絶望感、脱力感に襲われます。ここでも、こんな自然災害の多い日本で、原発、特に老朽原発は大丈夫か!? 大丈夫なわけがありません。

今年も早3分の2が過ぎ、あと3分の1となりました。なんとか今年も四苦八苦しながら、月刊『紙の爆弾』も季刊『季節』も発行を継続でき、以前からは点数は減っていますが、書籍(紙爆増刊号)も刊行できてきています。苦しい中でも出版活動を継続できているのは、ひとえに読者や支持者、支援者の皆様方のサポートによります。

思い返せば、私(たち)の出版活動は行きあたりばったりだったな。時に行きあたりばっちりヒットすることはありましたが、長い出版活動のうち、どれほどだったでしょうか。浮き沈みが激しい出版人生でした。

私事ながら、今月75歳を迎え、いわゆる後期高齢者となります。人生最後の大きな曲がり角です。もっと違う形で迎えたかったですが、人生最終コーナーになって、新型コロナ襲来によって躓いてしまいました。

でも、皆様のサポートで、まだ生かされています。勝負はまだ終わっていません。必ず勝機を掴み人生3度目の大逆転を狙っています。老骨に鞭打ち、しぶとく“がまだし”(熊本の方言で「頑張る」の意味)ていこう、と思う昨今です。

◎このたびの熊本地震について、さすがに二度ともなると、私たち熊本出身者としては県人会(関西熊本県人会連絡協議会)本部からの呼びかけに応じ、関係の強い高校の同窓会を通して義援金を募ることになりました。近々公表いたしますので、ぜひご協力お願いいたします。

日々報じられる、現地で“がまだし”ておられる方々、ボランティアの方々に励まされ、私たちも頑張っていこう!

『紙の爆弾』9月号に寄せて

『紙の爆弾』編集長 中川志大

9月号では、高市早苗首相のアメリカ時代の経歴詐称疑惑と、高市政権のアメリカ追従政治の関係を考察。執筆者の浜田和幸氏は、高市氏が松下政経塾を卒業後、米下院議員の事務所に籍を置いていた(9カ月間)のと同時期に渡米しワシントンで勤務しており、現地の高市氏をよく知る人物です。

その高市政権の元で、「円弱」がさらに極まりつつあります。彼女が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相は「円が300円になったらトヨタの車が3分の1で売れる。日本への旅行費も3分の1になる。あっという間に経済回復していくという考えはどうか」と述べましたが、「失われた35年」の果て、物価高による生活苦が人災であることを、この発言が証明しています。高市政権のウクライナ・中国・イラン等海外情勢への対応がそれに拍車をかけてトヨタも減産。7月号で元外交官の孫崎享氏が指摘したように、この外交姿勢は師匠である安倍元首相が中国やロシアと一定の安定的関係を維持したのとは真逆でした。前号で「戦後最悪の宰相」としたゆえんです。円安で「ホクホク」しているのは誰か?というのは、重要な現状分析といえます。

そんな中でも国会では、延長してまで皇室・国旗・改憲策動・自維一体と、今の国民生活に寄与しない法案ばかりが成立。高市首相は「睡眠時間ゼロで頑張っている」とアピールしておけば、適当にごまかせるという姿勢です。なお「寝ずに書類を読んでいる」は、まさに前述の孫崎氏のレポートが言及したところ。「外交官の経験からいえば、高市首相の政治スタイルの問題は、ペーパーを読むことばかりを重視している点」「政治の実態を踏まえず首相の肩書きだけで政府を運営しているように見えることが、国民にとって大きな問題につながる」と述べていました。

それでも、マスコミ報道とは違うところで社会を前に進める活動が進んでいます。山田正彦・元農水相は農薬・化学肥料に頼らない有機農業が世界で大きく広がっていることを指摘。日本はまだ遅れているものの、地域ごとの取り組みにより急速な進展を見せています。また山田氏は、体内の残留農薬はデトックスが可能であることも、データとともに示しました。残留農薬といえば、主に輸入農作物のポストハーベスト農薬(収穫後、品質維持等のための農薬)の危険性を最初に指摘すべきですが、その対処としては地産地消の促進が考えられます。山田氏の分析は、ここからさらに踏み込んだものといえます。今国会で再び改悪された種苗法・新育苗法についても、弁護士として種子法廃止違憲訴訟を闘う山田氏が、タネを守る地域の取り組みを紹介。「食料安全保障」と「食の安全」を考える全ての人に、ぜひお読みいただきたい内容です。

そして、長期身柄拘束によって自白を迫る「人質司法」の問題を、村岡啓一弁護士が解説。同記事は、日本の司法の特殊性を指摘するだけでなく、「なぜ推定無罪の原則に反して、未決の被疑者が手錠・腰縄で拘束されるのか?」「推定無罪の被疑者がなぜ強圧的な取調べを受忍しなければならないのか?」といった、根本的な問いから始まります。そして、日本国憲法のありようにも迫ります。

ほか9月号では、再審請求に向け活動を続ける植草一秀氏の、「3つの植草冤罪事件」の真実に前号に続き斬り込みました。静岡県沼津市の「ごみ焼却炉訴訟」で下された“行政利権”を崩壊させる画期的判決も必読記事のひとつです。精神科医・野田正彰氏は、精神病が死に至る病でないにもかかわらず、年間2万4000人が精神病院で亡くなる「日本の精神医療」と「精神科医」の“異常性”を解説。今月号も独自の切り口で真実を追求します。
『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年9月号
A5判 130頁 定価800円(税込み)
2026年8月7日発売

米政府が保有する「首相のカルテ」高市経歴詐称問題とアメリカ追従 浜田和幸
違憲・違法の「人質司法」がなぜ存在するのか 村岡啓一
「令状なし盗聴」にまで手を出した 高市政権が掌握する「情報」という巨大権力 足立昌勝
山田正彦元農水相インタビュー 日本を食の「退国」にしないために 食料自給率80%は可能である
「国力研究会」の本当の目的「中傷動画」が招いた自民党“高市おろし” 片岡亮
絶望へ導く日本精神医学はいかにしてつくられたか 野田正彰
「デジタル主権戦争」敗戦の先にあるもの 昼間たかし
植草一秀インタビュー「冤罪の真実」中編 小泉・竹中経済政策と三つの冤罪事件の闇
ウラジーミル・ジリノフスキー「不屈の愛国者」が訴えたもの 木村三浩
成年後見制度という宿痾?これが「改正」か? 質疑なき論戦の果てに 鈴木愼哉
相次ぐ神社仏閣の火災 その“背景”を考える 早見慶子
LGBT問題の現在⑧ LGBT思想と包括的性教育 益田早苗
高市早苗の「我が闘争」を中間総括する 佐藤雅彦
静岡県沼津市ごみ焼却炉訴訟の「画期的判決」 青木泰
高市売国傀儡茶番劇場暴走阻止イベント 真田信秋

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21年前の7月12日に何があったのか? ── 「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧を想起する

鹿砦社代表 松岡利康

今から21年前の2005年7月12日(以下、7・12と記します)のことは終生忘れられない ── それはそうでしょう、早朝から検察(神戸地検特別刑事部)の一群に自宅を襲われ逮捕、半年以上も幽閉されることになったのですから。それも自分の逮捕を、その日、配達されたばかりの新聞で知るという、何とも言えない経験でした。
21年前の4月7日、この日は悲願の月刊『紙の爆弾』を創刊(編集長・中川志大)し、4号発行した直後の7・12に事件は起きたのでした。神戸地検特別刑事部長・大坪弘道検事に指揮された同主任検事・宮本健志検事(地元・西宮東高出身)と朝日新聞大阪社会部・平賀拓哉記者との周到な連携によって……。

◆1 前史 

昨年4月、『紙の爆弾』創刊20周年に際し東京日比谷・日本プレスセンターに多くの皆様方にお集まりいただき、祝っていただくと共に叱咤激励賜りました。さらに7・12には弾圧の舞台・西宮にて弾圧20年を忘れないという意味で、こちらにも多くの方々にお集まりいただき、この弾圧の悔しさと意味を忘れないことを共有いたしました。そして鹿砦社も、〈小さくても毒を持った出版社〉として在り続けることも、あらためて決意したのでした。1969年に創業した鹿砦社は、すでに50年余りの激闘の時代を潜り抜けてきましたが、くだんの「名誉毀損」に名を借りた弾圧はじめ山あり谷ありの社史を綴ってまいりました。

私は創業者ではなく実は三代目で、創業時のスタッフは、いまだに老いても気を吐いている前田和男(『続 全共闘白書』編集責任者)を残すのみで初代代表・天野洋一はじめほぼ鬼籍に入っています。最初の出版、中村丈夫編『マルクス主義軍事論』の名に象徴されるように、ロシア革命の問い直しを中心としてバリバリの硬派の出版社でしたが、私が引き継いだ1980年代も後半になると時代も変わり、そうした路線ではやっていけなくなり、偶然に芸能スキャンダル問題に遭遇し、いわゆる「暴露本」路線をも採り入れることになり、二代目社長の石川次郎からは「オレの顔にクソを塗った」と詰られたこともありました。

この転換は功を奏し、一挙に売上10億円達成、国税に特別調査されるというオチまでつきました。この衝撃は内外に大きかったようで、鹿砦社=暴露本出版社というイメージが今でも強いようです。

ちなみに、神田に芳賀書店というアダルト書店がありますが、創業者はゴリゴリの左派出版人で、たとえば滝田修・著『ならずもの暴力宣言』などを刊行する左翼系の硬派の出版社だったことを知る人はほとんどいなくなりました。滝田修(本名・竹本信弘)は、われわれの時代のカリスマで、一昨年亡くなりましたが、この名を知る人も少なくなりました。芳賀書店の転換は、時代の変化をいち早く感じた二代目がやったと思いますが、当時私たちを驚かせたものでした。

◆2 路線転換は一度は成功したものの……

鹿砦社の転換は1994年秋から始まり、翌年の阪神大震災で、逆に「地震で自信をつけた」などと嘯き顰蹙を買いながらも“遅れて来たバブル”を謳歌しましたが、鹿砦社バブルは長くは続きませんでした。それでも、暴露本ブームが去っても、ジャニーズ問題はじめ硬軟織り交ぜスキャンダル本は刊行し続けていました。

そうした中、かの『噂の眞相』が事実上廃刊し、特段後継雑誌でもありませんでしたが、取次会社がそう誤認し雑誌コードを出してくれ『紙の爆弾』創刊に至った次第です。

2005年、意気揚々と『紙の爆弾』を創刊し、さあこれからという時に起きたのが、くだんの弾圧事件でした。

『朝日新聞』2005年7月12日朝刊(大阪本社版)
『朝日新聞』2005年7月12日夕刊

『噂の眞相』も創刊直後、「名誉毀損」による刑事事件で立件され、その後、在宅起訴、有罪判決を受けています。私のように逮捕されることもなく微罪ですが、出版物で立件、起訴され有罪判決を受けたこと自体が問題であり、これが後に身柄拘束(逮捕→起訴)、長期勾留、より重い有罪判決(幸いに実刑は免れ執行猶予付きでした)に繋がっていきました。

逮捕の元となったアルゼ告発シリーズ
一審判決報道テレビ報道より画撮
この事件では外国特派員の関心も強く、要請を受け外国人記者クラブにて会見

◆3 21年経って思うこと 

21年経ち、思うことは多々ありますが、激しい表現はあったにせよ〈表現の自由〉の範囲内で不当だという想いは消えません。それは、この事件に関わった者らがことごとく不幸な目に遭っていることからも解ります。「因果応報」という言葉がありますが、「人をハメたものは、みずからもハメられる」ということでしょうか。

事件を指揮した大坪弘道神戸地検特別刑事部長は、その後、東京地検特捜部長に栄転し、厚労省郵便不正事件証拠隠滅に加担し逮捕→検事失職→有罪、主任検事の宮本健志検事は、その後徳島地検次席検事に栄転しながらも持ち前の酒癖の悪さから深夜泥酔し暴れ一般市民の車を傷つけ検挙、和解したことで失職は免れたものの平検事に降格処分を受けています。しかし、これは軽いもので、彼にとっては実弟が起こしたストーカー殺人事件(懲役20年が確定)ほうが深刻でしょう。宮本は検察を退官し今、滋賀県で公証人をやっています。

当時、神戸地検特別刑事部長として事件を指揮した大坪弘道検事逮捕!(朝日新聞2010年10月2日朝刊)

まだまだ不幸は続きます。私を告訴した警察癒着企業「アルゼ」(現ユニバーサルエンターテインメント)創業者の岡田和生は、パチンコ・ゲーム業界の雄として、当時はまだ公表されていた高額所得者名簿の総合トップにもなった男で、フィリピンでカジノホテル事業を開拓する過程で政府高官へ賄賂を贈るなどの不正で逮捕、それでもカジノはオープンさせつつも、実子や子飼いの社長、後妻らによってクーデターを起こされ、みずからが興し育てた巨大企業から放逐されカジノホテルも乗っ取られるという悲劇に遇っています。

遂にアルゼ創業者・岡田逮捕!(2018年8月6日付けロイター配信)。これに至るまでには水面下で資料を提供したり協力、記者はたびたび西宮まで来社した
かつての栄華はどこへやら……みずからが創業し育てた会社から放逐されたことを語った『週刊ポスト』2019年3月22日号
神戸地検と結託し「風を吹かせた」朝日新聞大阪社会部・平賀拓哉記者

なんという“素晴らしい人たち”、これを見るだけでも、鹿砦社弾圧事件が、どす黒い野望で仕組まれたものであるかが垣間見れるでしょう。これに乗ったのが、わが朝日新聞大阪社会部の平賀拓哉記者なのです。一応は朝日独占スクープでしょうが、神戸地検の口車に乗った“官製スクープ”といえるでしょう。検察の裏金を告発して逮捕された元大阪高検公安部長の要職にあった故・三井環氏によれば、こういうのを「風を吹かせる」というようです。検察─マスコミ連携芝居ということです。

平賀記者は一時中国瀋陽支局に勤め、その後大阪社会部に戻り、新聞記事でこのことを知った私は何度となく会見を申し込みましたが、朝日大阪本社広報部からたった一行のメールで断られました。私は当事者も当事者ですよ、この事件で人生を変えられたんですよ。私から言葉巧みに資料も受け取り、神戸地検と連携し一面トップで大きく「スクープ」したわけでしょう。20年近く経って、恩讐を越えて話を聞きたかっただけです。逃げなくてもいいでしょう、私は奥崎謙三ではありません(苦笑)。

◆4 人質司法について

このところ「人質司法」という言葉が語られています。これはオリンピック関係の不祥事で逮捕─勾留された角川歴彦が記者会見したり本を出版したりしたことで話題になりましたが、すでに21年も前に私は機会あるごとに訴えています。角川のような大手出版社グループのトップが言えば問題になり、私のような地方小出版社のしがない社長が言っても話題になりませんでした。

むしろ、「鹿砦社なら仕方がない」といった見棄て感が支配しました。

この問題については聴くことが多々あるので、対談、もしくはインタビューを申し込みましたが返事さえありません。これも相手によって態度を変えるということでしょうか。

私は192日間、角川歴彦は226日でしたが、確かに長期間幽閉されると、日々、精神状態は二転三転します。経験したものにしか解りません。

再三にわたる保釈請求にもかかわらず「証拠隠滅」を理由として保釈はことごとく却下され、長期勾留となりました。私は小なりと雖も会社経営者であり、取引先やライターさんらとの長年の付き合いから、また証拠は多く押収されていて証拠隠滅も逃亡もできるわけがありませんし必要もありません。長期間拘置所に閉じ込め精神的にも肉体的にも痛めつける人質司法は即刻やめるべきです。

◆5 〈7・12〉について今思うこと

7・12の出来事は、私の人生も会社の運命も変えました。一時は私も会社も壊滅的打撃を被り、再起不能とまで、私や会社を知るほとんどの人たちが思ったに違いありません。

そのまま会社を畳み、出版の仕事をやめ日々の食い扶持を求めて賃労働に勤しむ選択肢もありましたが、不器用な私は、そうたやすく転身できませんでした。

こういう時に人となりが解ります。さっと去っていった人もいましたが、これは責められません。ほとんどの取引先、ライターさんらが支援しサポートしていただき、精神的にも持ちこたえることができました。

一審報道についての故・山口正紀さんの記事(『週刊金曜日』2026年7月14日号)。山口さんは公判のたびに自費で来阪され最後(最高裁決定)まで報告記事を記述された

そうこうしているうちに、偶然にヒットが続きました。これは、目的意識的に狙ったわけではなく、まったく奇跡と言わざるをえません。ここを持ちこたえることができたことが、その後、新型コロナによる急激な落ち込みに遭っても、何とか凌いでいけているのだと思います。

2005年7・12で逮捕されてからブレイクのきっかけとなった2009年秋までの期間は、正直、楽ではありませんでした。一時は事務所もなくなり、東京はしばらくの間ジプシー生活を余儀なくされました。本社も、本格的に出版事業に入る際に借り、その後書庫にしていた1ルームマンションを片付け再出発しました。

何とか50万円を都合し、知人の不動産屋に無理を頼み東京の今のビルの5坪の部屋を借りて再出発したのでした。

多くのことが去来します。 ──

ここに記述したのは、この事件のほんの一部でしかありません。事件後、7・12前後に、思いつくことを書き綴ってきました。同じようなことを繰り返しているかもしれませんが、混乱しつつも、心の奥底から込み上げてくるものを書き留めてきました。まとまとりがついているわけでもありません。

その後、出版やメディアをめぐる情況はどうでしょうか? 悪くはなっていませんか? 良くなっていますか? 皆様、どうですか? 

簡単に言われる「表現の自由」は、イメージではありません。〈現実〉です。私たちのやり方が良かった悪かったという問題もあるでしょう。これはこれとして、批判は批判としてなされ、日々培っていくことでしか、守ることはできないと思います。

もう私のような犠牲者を出してはいけません。破綻したとはいえ、このかん議論になっている浅野健一さんによる出版差し止め仮処分など、メディア規制を司法権力の手を借りて行うなど、ジャーナリストや書き手がみずから手を染めてはいけません。だから私は精一杯異議を挙げたわけです。

2005年7・12から21年 ── あと何年、出版の仕事を続けれるか解かりませんが、皆様方のお力をお借りし、精一杯一冊でも二冊でも「一、二年で忘れ去られることのない本」(クラウゼヴィッツ)を作っていく所存です。もうしばらくお付き合いください。

「われわれの出版の目的は、一、二年で忘れ去られることのない本を作ることである」(クラウゼヴィッツ) われわれの出版の〈原点〉に立ち帰り、わが出版人生最終コーナーに差し掛かるにあたって

株式会社鹿砦社代表 松岡利康

鹿砦社の言論・出版活動を支持される皆様!

週明けに『紙の爆弾』最新号をお届けいたしますが、このかん少なからずの方々より、同誌がレベルアップしたとのお声をいただいております。これは創刊号以来編集長を任せた中川志大の経験と力によるものです。

実際、完成した同誌を見て、レベルアップしたとの過分な評価を喜びつつも、老婆心ながら、さらなる飛躍の余地はないか、昨年4月に創刊20周年を迎え東京と関西で皆様方に祝っていただき次の10年に向かって歩み始めましたが果たして創刊30周年は大丈夫か(その頃、おそらく私はいないか活動不能になっているでしょうから)、等々と日々思慮しているところです。

また、主に私が担当する分野の書籍についても、出版人生最終コーナー(9月で後期高齢者に。泣)に達した中で、のちのちに残るような本をどう作るか、考えあぐんでいます。

これまで何度か述べていますが、私が10年間のサラリーマン生活を辞め(直接的には会社整理のため)、みずからの資質、能力、経験などを一顧だにせず、まさに“清水の舞台”から飛び降りる覚悟で本格的に出版の世界に飛び込む際に、歴史家の小山弘健先生に教えていただいた、冒頭に挙げた、『戦争論』という畢生の書を著したクラウゼヴィッツの言葉をたびたび想起しています。「果たして私は、どれほど一、二年で忘れ去られることのない本を作ってきたのだろうか?」と。『戦争論』ほどの名著ではないにしても、のちのちに残る本を作りたい! と願いつつも、先が見えているので焦燥感に苛まれています。もっと早く小山先生に教えていただいたクラウゼヴィッツの言葉を真剣に、かつ真摯に考えて実行に移していればよかったな、と悔いが残ります。

今回、時々定期購読者や会員の皆様方にご提案している「特別セット直販」を新たにご提案させていただいています。このリストの本は、これまで私たちが出版してきた本の一部ですが、このほとんどは私が企画・編集したもので、果たして「一、二年で忘れ去られることのない本」があるのか、皆様、いかがでしょうか? 古い本も新しい本もあり、また左右硬軟雑多に渡りますが、お目に留まった本がございましたら、この機会にぜひ(何冊でも)ご購読お願いいたします。(詳しくは『紙の爆弾』8月号に同封している案内をご覧ください)

予想される猛暑を乗り越え、清々しい気分で秋を迎えましょう!

(7月2日記。別掲写真は小山弘健先生と遺稿『戦前日本マルクス主義と軍事科学』。『紙の爆弾』8月号に同封している文章から)

『紙の爆弾』2026年8月号
A5判 130頁 定価880円(税込み)
2026年7月7日発売

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選挙違反の政権が憲法を壊す 戦後最悪の宰相を生んだ日本政治の根本欠陥 門脇翔平
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