「いい人だけ付き合ってるだけじゃあ選挙落ちちゃうんですよね」たびたび引用させていただいているが、2016年1月に安倍政権の社会保障・税一体改革担当大臣を辞任したさいの、甘利明の辞任会見での発言である。

甘利はURへの口利きのあっせん利得として、事務所(秘書)が建設会社から1200万円を受け取っていた責任をとって辞任した。この「いい人だけ」の裏側に「悪い人と付き合う」が含意され、そこにはパーティー券の購入や資金援助、ブラックな人脈との付き合いが政治家の本質だと暗喩されているのは言うまでもない。

田中和徳復興大臣

◆安倍政権閣僚と暴力団

この「悪い人との付き合い」が政治家の必要条件であることを、今回の安倍改造内閣でも田中和徳復興大臣(70歳)の例が証明している。本欄でも既報だが、再録しておこう。

「(田中和徳復興大臣の)平成18年に開催した政治資金パーティーで、指定暴力団稲川会系組長が取締役を務める企業にパーティー券を販売し、40万円を受領していたことが21日、産経新聞の調べで分かった。パー券販売は財務副大臣在任中で、暴力団側から政治家側への直接の資金提供が判明するのは極めて異例。暴力団排除条例が全国の自治体で制定されるなど『暴排』の動きが加速する中、国会議員と暴力団側の関係が発覚した。政治資金収支報告書や関係者によると、パー券を購入していたのは東京都品川区に本社を構える企業。設立は昭和62年で、法人登記では『日用品雑貨の販売』『金銭貸付業』などとなっている。捜査関係者によると、同社は暴力団のフロント企業として認定されているという。稲川会系組長は、設立当初は代表取締役を務めていたが、平成4年からは取締役に就任。同社が長年にわたって暴力団の影響下にあり、資金源となっていたことがうかがえる」(「産経新聞」2011年10月22日ウェブ配信)。

武田良太国家公安委員会委員長

田中復興大臣だけではない。暴力団を指定し、取り締まる国家公安委員会のトップに就任したのが、暴力団との交際を報じられている武田良太(51歳)である。これも既報だが、再録しておこう。

「2010年11月に公表された、武田氏の政治資金管理団体「武田良太政経研究会」の収支報告書によると、09年4月に開かれた政治資金パーティー代として、東京都のA社が50万円を献金している。また、11年11月公表の収支報告書では、A社の実質的な代表であるI氏が10年4月の政治資金パーティー代として70万円を支払っている。実は、このI氏、警察当局が指定暴力団山口組系の組員ではないかと当局からマークされ、裁判で素性が明かされた人物だった」(「週刊朝日」2019.9.13ウェブ配信)

もうひとり、竹本直一科学技術担当大臣(78歳)である。ひとつの内閣に3人も暴力団の密接交際者がいるようでは、自民党政治家の本質が「暴力団準構成員」であると指摘されても不思議ではないだろう。

山口組幹部だった男性と竹本直一氏(2018年8月撮影)

「閣僚名簿で『グレーな交友』を疑われたのが、科学技術担当相に起用された衆院当選8回の竹本直一氏(78)。SNSに、18年8月、花火を見物している竹本氏と記念写真に一緒に写っている角刈りの男性の姿がある。指定暴力団山口組系組幹部だったⅩ氏である。同年3月に、竹本氏の後援会が開催した新年賀詞交歓会のパーティーで、X氏と岸田氏が親しそうに写真に納まっている写真が、写真週刊誌『フライデー』にも掲載された。

「Ⅹ氏は長く幹部である組の顧問を最近までやっていたようだ。昔から、資金力豊富だと有名だった。『岸田氏や竹本氏との写真は、箔(はく)をつけるために撮ったのでしょうね』(捜査関係者)そして、宏池会所属のある議員はこう話す。
『(フライデーに写真が出た時から)竹本氏は相手が暴力団関係者であることがわかっていたはず。岸田会長も、あの報道には激怒していましたよ。なぜ、竹本氏はSNSの写真を削除させなかったのか? こんなわきの甘さでは、大臣が長く務まるとは思えないですね』」(「週刊朝日」2019.9.13)

たまたま暴力団関係者と知り合ったり、政治献金を受けていたわけではない。政治家という職業が誰とでも会合して握手し、選挙で政治家生命を鬻(ひさ)ぐおんであれば、密接交際をする本性を持っているからだ。安倍総理自身が「ケチって火炎瓶」事件(工藤會系の業者に選挙妨害を依頼するも、返礼金を渋って自宅と事務所に火炎瓶を投げられる)を生起させたのも、選挙という「再就職」システムがあるかぎり、何度もくり返されることであろう。

◆かつて政治家はヤクザと同義だった

戦前にさかのぼれば、ヤクザが政治家になるのは普通だった。憲政会の吉田磯吉は火野葦平の『花と竜』に登場する磯吉大親分であり、そのライバルで下関籠寅組の大親分が、立憲政友会の保良浅之助である。もっとも、吉田磯吉の生業は港湾忍足の元締めであり、保良浅之助の籠寅組は土木建築業と芸能興行であった。

吉田磯吉の門下に富永亀吉という親分があり、その系列の中から大嶋秀吉が頭の港湾労働者の元締めとなった。その大嶋組の傘下に、山口春吉の山口組が結成されたのである。のちの広域暴力団山口組の誕生である。

三代目山口組として、中興の祖となった田岡一雄親分の昭和20年代、山口組はまだ30人ぐらいの組織だったという(『狼侠』笠岡和雄、サイゾー刊)。神戸の本多仁介(本多会)と関東の藤田卯一郎(松葉会)の兄弟盃のとき、政財界からの列席者のなかに自民党党人派の総領・大野伴睦の姿があったという。その大野伴睦と自由党で行動をともにした中井一夫は、戦前からの代議士で神戸市長、弁護士でもあった。

中井がマスコミの注目を浴びるのは、四代目山口組と一和会の五年にわたる史上最大の抗争中、神戸ユニバーシアードのさいに「休戦協定」を結ばせた時のことだ。ヤクザと政権中枢が限りなく接近・一体化したのは、竹下登の皇民党による「褒め殺し」事件の時だった。稲川会二代目の石井進が京都の会津小鉄の三神忠を通じて皇民党総裁稲本虎翁総裁と会合し、竹下が田中角栄に謝罪することで話をつけたのである。

その機縁から週に一度、金丸信自民党副総裁と竹下登総理、石井進の三人の会合が持たれ、自民党内では「裏閣議」と呼ばれたものだ。会合の警護役は、若き小沢一郎だったという(『巨影』石井悠子、サイゾー刊)。皇民党事件のときに奔走して調停を計れなかった浜田幸一は、稲川初代(稲川聖城)時代の石井進の弟分である。

◆町内会や自治会を基礎とする自民党政治は、「反社会勢力」と手を切れない

自民党の政治家で、ヤクザと無関係に選挙をコンプリートできている者は、ほとんど皆無だろうとわたしは思う。なぜならば自民党政治の基礎単位が町内会や自治会(町内会と同義)に、地方議員が根を持っているからだ。町内会はそのまま神輿会や神社の崇敬会に重なり、そこには地域社会に根を下ろしたヤクザが介在しているからだ。ヤクザがそこに潜り込んでいるのではない。地域をとりまとめる人物は、本人がヤクザであるかヤクザと親交を結んでいるからだ。それを無理やり「反社会勢力」と手を切れと言ってみても、地域の共同体を破壊することにほかならないのだ。いや、すでに地域社会は拡散し、共同体は崩壊しつつあるのかもしれない。ヤクザ組織の末端が半グレ化し、統制の効かない犯罪組織化しつつある。


◎[参考動画]参院選:弾ける「バンザイ」集:与党編(テレ東NEWS 2019/07/21公開)

[関連記事]
◎「反社会勢力」という虚構〈1〉警察がヤクザを潰滅できない本当の理由(2019年10月9日)
◎「反社会勢力」という虚構〈2〉ヤクザは正業を持っている(2019年11月4日)
◎続々湧き出す第4次改造安倍政権の新閣僚スキャンダル 政治家と暴力団の切っても切れない関係(2019年9月21日)
◎高齢・無能・暴力団だけではない 改造内閣の「不倫閣僚」たち(2019年9月24日)
◎安倍官邸親衛隊の最右翼、木原稔議員が総理補佐官に就任した政治的意味(2019年9月25日)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

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暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が成立したのは1991年のことだった(施行は翌年)。露天商系のヤクザ(テキヤ)が反対デモをするなど、その違憲性が問われたものだ。その後2回の改正をへて、以下のような禁止事項が整備された。執行については、これらに基づいて公安委員会から「禁止命令」が出される。なお、組事務所の移転訴訟などを、地元の住民に代わって暴力団追放センターなどが代行できる訴訟制度の改正も行われた。

【禁止事項】(だいたいわかると思いますので、読み飛ばしてください)
・口止め料を要求する行為
・寄付金や賛助金等を要求する行為
・下請参入等を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して「みかじめ料」を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して用心棒代等を要求する行為
・利息制限法に違反する高金利の債権を取り立てる行為
・不当な方法で債権を取り立てる行為
・借金の免除や借金返済の猶予を要求する行為
・貸付け及び手形の割引を不当に要求する行為
・信用取引を不当に要求する行為
・株式の買取り等を不当に要求する行為
・預貯金の受入れを不当に要求する行為
・地上げをする行為
・土地家屋の明渡し料等を不当に要求する行為
・宅建業者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・宅建業者以外の者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・建設業者に対して建設工事を不当に要求する行為
・集会施設の利用を不当に要求する行為
・交通事故等の示談に介入し、金品等を要求する行為
・商品の欠陥等を口実に損害賠償等を要求する行為
・役所に対して自己に有利な行政処分を要求する行為
・役所に対して他人に不利な行政処分を要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の入札に参加させることを要求する行為
・国等に対して他人を公共工事等の入札に参加させないことを要求する行為
・人に対して公共工事等の入札に参加しないこと又は一定の価格で入札することを要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の契約の相手方とすること又は他人を相手方としないことを要求する行為
・国等に対して公共工事等の契約の相手方に対する指導等を要求する行為

ようするに「不当な方法」で「要求」をしてはいけない。というのが法の趣旨である。構成要件が不当というのだから、従来法で対処できるではないかというのが、当時の任侠団体(ヤクザ組織)の言い分だった。


◎[参考動画]1992年2月テレビ朝日「朝まで生テレビ! 激論! 暴力団はなぜなくならないか!?」 (前半)(2019/4/25公開)

しかしすでに、この頃からヤクザは「不当な強要」や「用心棒代」から「正業」に移行しつつあった。その先鞭が五代目山口組の若頭宅見勝である。宅見は愛人(西城秀樹の姉)に高級焼き肉店をやらせ、みずからは土建会社を経営するなど、経済ヤクザへの道を拓いていた。

ヤクザが組の名刺とともに、企業の名刺を持つようになったのは、暴対法の成立が契機だった。六代目山口組(司忍組長)の弘道会が力を得たのも、中部セントレア空港建設の莫大な利権を独占したからである。一説には地下室のプール一杯に、札束が敷き詰められているなどという情報もあったほどだ。

公共事業や民間事業の建設利権とは、正規の予算外に設けられている「地元対策費」をヤクザが業者を取りまとめることで、そこから予算を吸収する方法。そして同じく正規の予算内で配分した業者への仕事の割り当てを差配し、業者からリベートを受け取る方法がある。さらにヤクザ自身が業者となり、共同事業体の仕事を請け負う。その場合はゼネコンの配下にフロント企業、あるいは企業舎弟を持っていることになる。あとでみる暴排条例は、建設利権などからのヤクザ排除を狙ったものである。

実際に取材したわたしが知るかぎり、飲食系の風俗店を直接経営するのは基本中の基本で、コンパニオンの派遣業、フィリピンでの胡蝶蘭の生産・輸入・販売、不動産業、建設業、移動パン屋、和菓子屋、タクシー会社、ジムの経営、風俗店への仕出し弁当(服役中の組員の奥さんが従事)、個人では彫り師や接骨師など、じつに多彩なものだった。Vシネマの製作、芸能プロダクションの経営などもシノギとしては大きい。このうち、コンパニオン派遣業は当時の労働大臣の認可事業なので、不認可を突かれた若手の組長が逮捕されたのを知っている。ようするに、90年代のヤクザは警察の取り締まりに、業態を変えることで対応していたのである。


◎[参考動画]「暴力団対策法」に反対する共同声明

◆暴排条例の無理押し

ところが、2010年代になると警察不祥事が連続し、とくにヤクザと警察の癒着が顕在化した。博多の中州カジノバー事件(捜査情報を漏洩)では、ヤクザ(工藤會系)から月額100万円を受け取っていた警察官が10人以上も芋づる式に逮捕・事情聴取される事態となった。このときの公判資料には「小指のない刑事」という記載がある。つまり警察官でありながら、断指するような稼業人(ヤクザ)がいたことになる。

警察刷新会議の発足と並行して、自治体レベルでの暴力団排除条例が画策された。この暴排条例は、市民に「ヤクザと付き合うな」という法律であって、市民を取締りの対象にしている。自治体レベルでの決議・施行となったのは、国会では違憲論争に発展すると読んでのことである。このあたりの警察官僚の姑息さは、ある意味で見事だ。

ヤクザと「密接交際した」市民への処罰はじっさいには「企業名の公表」「注意」だけだが、たとえば出版社が現役の組長の本を出版した場合には、印税や原稿料が利益供与ということになる。利益供与の疑いがある出版社には、銀行協会を介して「融資の見直し」という圧力が加えられるのだ。竹書房が「実話ドキュメント」(恵文社発行・2018年5月に紙媒体は廃刊)の販売から撤退したのは、これが大きな理由である。わたしも「血別」(太田守正・神戸山口組太田興業)という本をつくったが、著者の太田さんが現役復帰してしまったので、同書の文庫化はできなかった。引退した親分しか本を出せない時代になったのである。

暴排条例は日常生活にもおよんでいる。組員が喫茶店に入ってコーヒーをオーダーして、店がそれに応じたら「利益供与」なのである。ヤクザが「反社会勢力です」と断らないでゴルフ場の会員になっても「詐欺罪」、身分(ヤクザであること)を隠して銀行口座を開いたり、クルマを購入しても「詐欺罪」となるのだ。銀行口座が使えないのだから、ヤクザは水光熱費の口座引き落としもできない。ヤクザの子供は、カードも使えないことになる。前回の記事で「実話時代」が廃刊に追い込まれたのも、暴排条例を盾にした暴排運動の「成果」にほかならない。

そのいっぽうで、最終的にヤクザ組織を解体できないのは、政治家が選挙運動の裏側で大きく「反社会勢力」に関わっているからだ。


◎[参考動画]指定暴力団 再指定に向けた意見聴取 山口組側は欠席 聴取行われず(サンテレビ2019/4/4公開)

◆政治家のホンネ「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」

たとえば2016年に、甘利明経済再生担当相の秘書が千葉県の建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉を巡り、口利きを依頼され現金を受け取った騒動を思い起こしてほしい。甘利氏は記者会見で、この建設会社側から2013年11月に大臣室で50万円、2014年2月に神奈川県大和市の地元事務所で50万円の計100万円を受け取ったことを認めている。秘書も建設会社側から受け取った500万円のうち、200万円しか政治資金収支報告書に記載せず、残り300万円を私的に使っていたという。その責任をとって辞任するときの弁が「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」これこそが、小選挙区を生きる政治家のホンネなのである。


◎[参考動画]甘利明経済再生担当相が会見「閣僚の職を辞する」(THE PAGE 2016/1/29公開)

今回は暴対法・暴排条例のおさらいから入り、ややおとなしいレポートになってしまった。次回からは、いよいよディープなヤクザ情報をお伝えしよう。※このテーマは随時掲載します。

◎[カテゴリーリンク]横山茂彦「反社会勢力」という虚構 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=76

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

◆コンビニ店頭から排除され、終わりをつげる暴力&エロ雑誌

 

最終号となった『実話時代』2019年9月号(2019年7月29日三和出版発行)

もう発売は7月末のことになるが、任侠界の専門雑誌である『実話時代』が廃刊した。そのキャッチは「昭和・平成・令和――激動の時代を駆け抜け本誌完結」「侠熱の三十五年忘れえぬ男たちへ捧ぐ」とあり、記事は「名侠剛侠一代絵巻」「渡世の気魄――本誌が照射したヤクザ三十五年物語」などだ。

往時は公称20万部をほこり、風俗広告に頼らない実話雑誌として斯道界に君臨してきた。ヤクザ公認の「業界誌」あるいは「広報誌」として、抗争なき時代の象徴ともいえる雑誌だったが、近年は福岡県で「悪書指定」を受けるなど、警察庁および暴力団追放運動の販売規制に苦しんできた。

コンビニから排除され、置いてくれる小さな駅前書店が開発計画で廃業するなど、おもに販路の問題から廃刊に追い込まれたというのが、関係者の言うところだ。組織による買い取りや定期購読の努力も行われたが、一般のヤクザファンが気軽に買えない環境では、存続は難しかったというべきであろう。

継承式や事始め(12月13日)を招待されるように取材し、抗争事件を扱わない癒着関係が批判されてきたが、最終号(完結号)にみられるように、ヤクザの序列、貫目にしたがった掲載、役職名の正確さは「癒着関係」があって初めて可能なもので、その意味でも役割の大きな雑誌だったといえよう。

コンビニでは、成人雑誌も置かれなくなった。一説には40億円といわれる売り上げが宙に浮き、リストラと転業を余儀なくされる版元も少なくない。暴力とエロの時代が終わりをつげ、それらはネット社会に収れんされていくのだろうか。

◆ヤクザの業態変化

それはともかく、ヤクザ業界はどうなっているのだろうか。20年前には10万人といわれた組織暴力団の人数は、いまや4万人とも5万人ともいわれる。ちょうど半減したわけだが、暴対法および暴排条例によるシノギの狭隘化、合法部門からの排除が進んだ結果とされている。だが、実際には隠れ企業舎弟ともいうべきフロント企業は増えている。というのも、会員誌の『FACTA』や『選択』に掲載される記事の大半は内部告発だが、そこには「記事にならない記事」が水面下にある。

その記事をめぐって金銭が動く、その頂点にヤクザ組織が介在している。あるいは金銭のやり取りに介在しているのが実態なのだ。もはやみかじめ料や用心棒代といった、昭和時代のシノギは激減し、暴力団組織が情報産業化したといえるのではないか。

その意味では、蔓延する「特殊詐欺」も暴力団のシノギの一端といえるのだが、ヤクザ組織は公式には組員が詐欺にかかわることを禁じている。覚せい剤や賭博も禁じている組織が大半だ。博徒が賭博をやらなくなったのは、借金による組織の荒廃。たとえば格が上の親分が、若い組員に「支払いを延ばしてもらえんやろか」と、貫目にそぐわない人間関係が現出するからだという。そもそも賭場よりも、裏カジノなどのほうがわかりやすい。そもそも若いヤクザは博打のやり方を知らない。

◆暴力団の最後の武器とは?

ヤクザの取材が難しくなったのも事実である。ヤクザ取材には二つの方法があって、ひとつは抗争事件の情報が取りやすい末端の組員と仲良くなる。もうひとつは親分と入魂になることで、トップダウンの情報をもらう。後者が前出の「実話時代」であって、親分が優遇してくれるのだから何でもしてもらえる。が、褒め殺し的な記事しか書けない。

末端の組員と仲良くなるのはいいが、親分を介してない関係は、かなりシビアなものになる。取材をおえて記事を書き、雑誌が出たころにファックスが入る。そこには「貴様、殺す!」と書かれてあったりするものだ。わたしはトップダウンの取材方法で、九州の「最悪の暴力団組織」と呼ばれるトップや、Vシネマの脚本を書く関係で広島や四国、山口組の引退親分の回顧録などを執筆した経験がある。

そのなかで、たとえばわたしが親分が滞在するホテルの一室にいると、そこへ現役の大臣から電話がかかってくる。あるいは人気のお笑いタレントが部屋を訪ねてくる。その場でツーショットを撮る。いっしょに会食をするなどの事実。それが政治家とのプライベートなツーショットである場合、その政治家は「誰とでも写真を撮るので、相手が反社だと知らないケースが多い」と言い逃れることが出来るだろうか。講演会の延長で握手したとか、ホテルのロビーでたまたまとかではない、ホテルの一室で親しく会話している写真なのだ。

なるほど、反社会勢力といえども指定暴力団であり、結社の自由の名のもとに結成された団体。つまり、合法的な結社である以上、警察力をもってしても強制的に潰せるわけではない。だが警察が暴力団を潰さない理由は、みずからの権益拡張すなわち、企業や業界団体への暴力団対策要員としての天下り。あるいは防犯団体への天下り先の確保。こうした直接的な利害とともに、政治家と暴力団の癒着をよく知っているからなのだ。それは選挙がらみの集票マシーンとして、政治家が藁をもすがる思いで、ヤクザ組織を頼みにするからにほかならない。

昨年、安倍総理(当時は衆院議員)にかかる選挙スキャンダル。すなわち工藤會系の事業者に選挙妨害を依頼した事件(火炎瓶事件に発展)が、新たな展開をみせながら、肝心の証人(実刑を受けた当事者)が音信不通になるというミステリアスな結末を迎えた。次回はここだけでしか書けないヤクザのエピソード、暴力団と政治家の密通の現場をお伝えしよう。 ※このテーマは、随時掲載します。


◎[参考動画]【山本太郎事務所編集】2018年7月17日内閣委員会「総理とヤクザと避難所と」(山本太郎 2018/8/29公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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