なぜ、浅野健一さんの異常な言動を諫めないのか? 出版差し止めを司法権力の手を借りてやることが「ジャーナリスト」として自殺行為であり、出版界に悪弊を残すことを、なぜ気づかないのか?

鹿砦社代表 松岡利康

周知のように浅野健一さんが、あけび書房から出版予定だった山上徹也公判記録本をめぐって、意見の齟齬で あけびはあけびで、浅野さんは三一書房から各々出版されることになりました。これはこれで、二つの本が出ることになり、内容で勝負すればいいだけの話で、読者にとっても一つの事件で二つの見方、考え方の本が出ることは選択肢が広がっていいことだと思います。日本国憲法は言論・出版の自由を高らかに謳っているわけですから。

しかし、浅野さんは一方のあけび書房本に対し出版差し止め(浅野さんの言葉では「出版禁止」)の仮処分を申し立て、続いて本訴も準備されているとのことです。仮処分は去る4月16日に申し立て、本訴は当初5月のGW明け、延びて5月じゅうに提訴するということでした。仮処分は申し立てながらも、いまだにあけび側には裁判所からの特別送達が届かず、また本訴も同様のようです。

私はシンプルに、みずからが過去5度出版差し止めを食らい、この経験からも、これは今後出版界に悪弊を及ぼすので即刻取り下げるべきだと再三訴えてきました。

私事ながら、4月13日に同居してきた高齢の母親が急逝し、自覚するしないに関わらず精神的に動揺、疲弊しつつも、この問題には関心を持って見てきました。この過程で、本来ならば喪に服すべきところ、ことは出版差し止め、双方の主張に注目してきました。

しかし、浅野さんによるあけび本著者・辻井彩子さんに対する、決裂以前からのハラスメントが在り続けていることを知り(その一端は浅野さんのFBを溯って見ていくだけでも解ります)、ここまでして意見の対立するに至った相手方を、まさにネットリンチと言っても過言ではないほど攻撃し、出版を阻止する必要があるのか、素朴に疑問に感じました。これまでさんざん訴訟を争ってきた私たちでも裁判所の封筒で特別送達が届けばビクッとするものです。まだ裁判所からの書類が届いていないとはいえ、「訴訟するぞ訴訟するぞ」と威嚇され続けば、「素人」(浅野言)の、娘さんを育てながら一所懸命に生きる市井の生活人の辻井さんは、日々ナーバスになってきたはずです。これだけでも、俗に「人権派」などといわれている浅野さんに、他人に対する人権意識などないことが解ります。ヤクザでも「素人衆には手を出すな」と言うそうですが、素人を徹底的にイジメる浅野さんはヤクザ以下といえるでしょう。

こうしたケースに遭遇したら私は、事案の内容にかかわらず基本は弱者の側に立つことを信条としています。今回は、浅野さんによる辻井さんへの連日の威嚇、ネットリンチ攻撃が続く限り辻井さんを支援します。まさか威嚇やネットリンチ攻撃をする者を支援するわけにはいかないでしょう。

また、当初は浅野さんに事実確認のやり取りを行ったにすぎない黒薮哲哉さんに対して、(これは今になっては明らかにしていいと思いますが)私との関係回復の仲介を依頼し不調に終わるや一転、攻撃に回りました(他にも仲介を依頼されていますが、こちらも不調に終わっています)。

浅野さんによる攻撃は日に日にエスカレートし、あけび書房・岡林信一代表、著者・辻井さん、帯を書いた鈴木エイトさん、そして黒薮さん、私松岡、これを最近では「5人組」と称して、相次いで訴訟を起こすと宣言されています。まさに訴権の濫用! いやしくも「ジャーナリスト」を自認し、実際に長年ジャーナリズムの現場、研究の場で一筋に歩んで来たみずからの軌跡を否定するような有様です。「ジャーナリスト」は、司法の場ではなく、原則は言論で勝負すべきではないのか!?

皆様、私の言っていることは間違っていますか? そうした浅野さんの異常な言動を、浅野さんの取り巻きの方々はなぜ諫めないのでしょうか? 大いに疑問です。

◆浅野さんに「なぜ取材しないのか」だって!?

浅野さんは、みずからに「取材」しないことについて私を詰られています。普通ならそうでしょうが、今の浅野さは到底取材できる状態ではありません。その理由は、 ──
 1に浅野さんが私に対し異常な敵意を持っていること、2に浅野さんの最近の精神状態、言動の異常性、3に複数の方に関係修復の「仲介」を依頼していることから、「取材」をそのきっかけにしたいという意図が感じられることなどです。お会いするには、まずは出版差し止め(出版禁止)仮処分を取り下げ、本訴も取り止め、さらには私にとって恩人の故・山口正紀さん(浅野さんにとっても恩人のはずですが。文春のセクハラ報道直後、絶望的情況の浅野さんを、浅野さんの自宅に何日も泊まり慰め激励したことを忘れましたか?)に対する生前の数々の暴言、誹謗中傷を反省、謝罪することなどが前提になります。

そんなに、「取材しろ、取材しろ」と言うのなら、わかりました、かつてよくやった「自宅へのアポなし直撃取材」をやらせていただきましょうか? 

◆ちょっとしたコメントにまで針小棒大に非難する異常さ

過日(6月2日)の浅野さんのFBにて、またしても浅野さんによる私への誹謗中傷が記されています。

浅野さんが自分の「自宅住所、電話番号をSNSで晒した」とあけび書房・岡林代表を激しく詰り、三一書房の小番代表もこれに付和雷同 ── どんなことやらと調べたところ、先の浅野さんの沖縄での講演会の案内の「問い合わせ先」に宮川元一さんという方の住所・電話番号などが記され、これに抗議の電話ががんがん掛かってきて迷惑を被った宮川さんは当然浅野さんに抗議しますよね。それを「さくらフィナンシャルニュース」というメディアが報じ、この際、人権と報道・連絡会の連絡先(宮川さんから聞いたのかどなたから聞いたのか)に浅野さんの自宅住所・電話番号を記載し、これを岡林さんがそのままリポストしたわけですが、これをあたかも針小棒大に喧伝してはいませんか? 岡林さんはすぐに消去したそうですが、なんでもかんでも岡林さんのせいにする浅野さんと、これに追従する人たちに、私もささやかに異議を言うためにちょっとコメントした次第です。これも浅野さんらは針小棒大に喧伝、ここまで来ると阿呆としか言いようがありません。

以下に、くだんの人権と報道・連絡会のチラシと私のコメントを再録しておきます。どういう経緯で、浅野さんを代表世話人とする人権と報道・連絡会のチラシに宮川元一さんの住所・電話番号などを掲載するに至ったのか判りませんが、きちんとした連絡先を記載しないので、掲載された宮川さん本人が迷惑を被ったわけですから、この責任は、常識的に言えば、人権と報道・連絡会の代表世話人の浅野さんにあるのではないでしょうか? 浅野さんは被害者意識が強く、全部自分が被害を被ったと言わんばかりに他人のせいにするのはやめるべきでしょう。

私のコメントは、次の通りです。

「Toshiyasu Matsuoka
中尾進さんに非難されている鹿砦社・松岡です。コレ、もともと人権と報道・連絡会の案内に宮川元一氏の住所が連絡先として記載され、宮川氏が迷惑を被り、人権と報道・連絡会と浅野さんに抗議し、それをさくらフィナンシャルニュースが、以前に人権と報道・連絡会の連絡先とされていたのを、変更されたものと気づかず浅野さんの自宅住所を記載し、それを岡林さんがそのままリポストしたにすぎないわけでしょう。浅野さんが代表の人権と報道・連絡会が当初から宮川さんの住所を連絡先に記載しなければよかったわけでしょう? なにか責任を、なんでもかんでも岡林さんが悪いと岡林さんに責任転嫁してはいませんか?」

◆他人の会社の人事にも口を出す浅野さん

同日の浅野さんのFBでは、「『あまりにもエキセントリックな理由』(中川志大編集長)で、昨年4月、業務命令で私(浅野さん)を排除」だって!? 昨年4月発行の『紙の爆弾』で浅野さんが書いた記事に強い抗議が相手側弁護士から抗議があり、浅野さんはこれに対してきちんとした態度を取らず逃げましたよね? 私と中川は相手側弁護士とやり取りし、次号で反論を掲載するというメディアとしての原則的態度で対応しました。浅野さんはいまだに相手側に対応してませんよね? いい加減なことを言わないでいただきたい。『紙の爆弾』は、基本的に別会社の編集・制作で創刊号から中川を編集長に据え、さほど私が口出すことはありませんが、こういう法的な問題や訴訟沙汰になった場合は私の出番となります。

ついでながら申し述べると、山口正紀さんへの浅野さんの誹謗中傷攻撃が増し、その後しばらくして山口さんが無念の死を遂げられました。この時点で、さすがに「浅野を切れ」という声が、従前から浅野さんと付き合いのある方々から私にありました。以前にも述べましたが、それでも私は「中川にも考えがあって浅野さんの原稿を掲載しているので、もうしばらく様子を見てやってください」と浅野さんの寄稿を黙認してきました。本当は、死の直前まで、裁判の準備書面や陳述書の案文をじっくり読まれ、添削、加筆してくれた大恩ある方、そしてこの方に対して誹謗中傷を繰り返す方……そんな私も昨年4月の件では怒り心頭になりました。それを中川が「エキセントリック」と言ったかどうか、彼も記憶にないそうですが、皆様、私の気持ちをお察しください。私が「エキセントリック」なら浅野さんはファナティックといえましょう。山口さんは、弱者にやさしく、温厚な中にも内に激しい権力への怒りを秘められた方でした。山口さんの最期の大仕事は、黒薮さんも書籍にまとめられた滋賀医科大学教授の去就問題(『名医の追放: 滋賀医科大病院事件の記録』緑風出版刊)でした。山口さんは末期がんの身を押して再三現地を訪れ患者さんらと共に闘われました。

さらに同日の浅野さんのFBでは、なんと株主でもなんでもないのに他人の会社の人事にまで口を出しています。

「読者のことを考えず、雑誌を私物化する松岡社長は今すぐ退任し、『紙の爆弾』の中川志大編集長が社長になるべきです。」

鹿砦社の資本金は2400万円、全額私が持っています。この金額を集めるのにどれだけ苦労したか ── 浅野さんは1株も持っていません。株主でもないのに他人の会社の人事に口を出すな! 私が鹿砦社の代表に就いて40年ほどになります。自分で言うのも僭越ですが、人一倍に山あり谷あり、天国も地獄も味わいました。私が今「退任」して会社がやっていけるのであればすぐにでも「退任」しますが、そうもいかないのが会社というものです。浅野さんは会社経営などやったことがないので現実を知らず、簡単に仰いますが、小なりと雖も、人知れず苦労は大変なものです。今回の当事者、一人出版社のあけび書房も、個人企業の辻井さんの会社も、また激しい労働争議を潜り抜けた三一書房も、経営者は日々、資金繰りや運営に苦慮しているはずです。

◆今、出版社同士、また社会運動に関わる者同士、潰し合いをやっている場合ではない!

出版界は従前から構造不況業種で、このかんのコロナ禍で更に不況の深度は深まっています。また、社会運動も、長らく〈冬の時代〉が続いています。

こうした中で、例えば岡林さんが神戸時代から20年余りもやっておられる「市民社会フォーラム」は、リベラル系の市民運動を中心として、新左翼系や共産党離脱組も含め、今では全国の社会運動のセンターの役割を担っている感があります。これに参集する方々も、今回の騒動を注目しています。私の思い込みかもしれませんが、おそらくほとんどがあけび書房と辻井さんを支持していると思われます。いくらなんでも司法権力の手を借りての出版差し止め(出版禁止)などを企てる人を支持する人はいないでしょうから。

尊敬する大口昭彦弁護士が、出版界に今後悪弊になる出版差し止めに手を貸さないことを願います。私たちは、全国の刑務所・少年院を回り500回以上も獄内ライブを行ってきた女性デュオ「Paix2」(ぺぺ)の活動を長年支援してきましたが、大口弁護士が代表弁護士を務められる「救援連絡センター」は、数年前の総会で予定されていた、そのライブをドタキャンし、私は抗議の意味で長年出して来た広告を取り止め、一歩距離を置いてきました。センターの機関紙『救援』に浅野さんは連載を持たれていますが、彼らによって出版差し止めや濫訴がなされたならば、遺憾ながら私たちはさらにもう一歩距離を置かざるをえなくなります。

繰り返しますが、「ジャーナリスト」として自殺行為になり、出版界に悪弊となる出版差し止め(出版禁止)は、仮処分も本訴も直ちに取りやめるべきです。 (2026年6月4日記)

山上徹也公判記録書籍問題 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=137

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2026年3月度のABC部数 新聞部数の減少止まらず――読売は1年で38万部減、「押し紙」問題の構造的課題も浮き彫りに

黒薮哲哉

2026年3月度のABC部数が明らかになった。読売新聞と毎日新聞の下落幅は依然として大きく、この1年間で読売新聞は38万部減、毎日新聞は20万部減となった。販売店関係者によると、残紙の整理や高齢読者の購読中止が主な要因とみられる。

ただし、残紙を減らしても、購読中止が進むことで新たな残紙が発生するため、「押し紙」問題の根本的な解決には至っていない。

中央紙の部数内訳は次の通りである。

朝日新聞:3,100,261(-167,587)
毎日新聞:1,083,632(-202,418)
読売新聞:5,183,600(-380,374)
日経新聞:1,196,749(-128,389)
産経新聞: 750,736(-60,607)

※括弧内は前年同月比の減少部数。

「押し紙」が新聞ジャーナリズムに及ぼす負の影響については、次の記事で詳しく論じられている。

【参考記事】「真村訴訟が暴いた新聞業界の『押し紙』構造――不正な利益は400億円超、公権力によるメディアコントロールの温床に」

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年5月23日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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〝保護〞の名の下に同意なき親子分離 子どもたちが語った「児童相談所」の人権侵害

たかさん

◆千葉中央児相が強制した「婦人科検査」と親子分離

2025年8月6日、千葉県庁の記者会見室で、千葉中央児童相談所による「一時保護」を経験した3人の子どもたち(いずれも少女)が、自ら書いた原稿を手に持ち、報道陣に向かって1行ずつ読み上げていった。「児相と親子の架け橋千葉の会」が主催した会見の様子はユーチューブで観ることができるが、新聞やテレビなど主要メディアがこの証言を報じた形跡は、私が確認した限り見当たらない。

「同意なき親子分離」を経験した3人が共通して訴えたのは、単純な「親を庇いたい」という話ではない。児童相談所による突然の一時保護で、学校にも行けず友だちとも家族とも連絡が絶たれる、何も悪いことをしていないのに人生の重大な決定を他人に勝手に決められる、「子どもの安心・安全」の名の下に子どもの尊厳と未来が削られているという、制度そのものへの深い違和感だった。

まず、それぞれの事例を簡単に整理しておきたい。

①小学1年生のとき、父親に叩かれたことを学校で話した結果、「今日だけお泊まり」と言われて一時保護となり、家族と話せない生活を強いられ、解除条件として「両親の離婚」「父に知られない転居」「ランドセル以外の思い出の品の処分」を求められた。「見ず知らずの大人が表面的なことから勝手に虐待家庭と想像して話を進められた」というのが彼女の目に映る児相の対応で、「使い古しの下着を渡された」「勉強はドリルを渡され、職員から勉強を教えてもらうことはなかった」と、辛い想いを口にした。兄は転校先でいじめに遭い自殺未遂に追い込まれたという。

②小学4年生のとき、ゲームに興じていると、構ってほしがった父親が後ろから抱きつき胸に触れてしまったことを学校で話した。それが「性的虐待」とみなされ、一時保護・父子分離にされた。保護解除後も「父と2人きりにならない」「父に触れない」「必ず腕1本分の距離を空ける」などの条件が課された。彼女は「保護してくれてありがとうと思ったことは1度もない」と言い切った。

③小学6年生のとき、養護教諭への相談をきっかけに「性的虐待の疑い」とされ、「数日お泊まり」と説明されながら約70日の身柄拘束と、産婦人科での検査。「お父さんと暮らしたい」と訴えるも、父との別居・通信制限を一時保護の解除条件とされた。

3人は連名の要望書で、次のようなことを千葉県に求めた。

1 一時保護で子どもたちがどのような扱いを受けているのか国民に正確に知らせ、制度を根本から見直すこと。

2 一時保護所で家族との面会・勉強・自分の服・運動や趣味など人間として当たり前の生活を保障すること。

3 児相職員・親・子どもが「同じ場」で話し合い、子どもの意見を反映できる仕組みをつくること。

どれも「本来なら最初から備わっているべき最低ライン」と言っていい。

本稿では3人のうち、小学6年生のときに千葉中央児童相談所に一時保護された前記③の少女(以下、Aさん)のケースについて詳述する。もはや「相談所」の看板がふさわしいとはいえない現実が、そこにはあった。

◆「相談」と「疑い」がきっかけだった

Aさんが千葉中央児童相談所に一時保護されたのは、2024年4月15日。小学6年生だった。会見で語った保護のきっかけは、こうだ。

Aさんが「お父さんがふざけて胸を触ってくるのが嫌」だと、学校の養護教諭に相談すると、学校から「性的虐待の疑い」として児童相談所に通告がなされた。児相の職員から「数日お泊まりするがいいか?」と聞かれ、「数日ならいいかと思って『わかりました』と答えた」。すると、そのまま車に乗せられ、一時保護所での生活が始まった。

同日に始まった一時保護が解除されたのは6月26日。「数日お泊まり」といわれて連れて行かれたAさんは、実際には2カ月以上、約70日間、家に戻れなかった。児相は最初の一言から、すでに子どもとの信頼関係を裏切っている。Aさんにとって、この制度との出会いは「保護」ではなく「ウソ」として刻まれた。

刑事手続きの世界なら、人の身柄を数日以上拘束するには、勾留請求・裁判官の審査・弁護人の関与という厳格なステップが必要だ。

児相の一時保護は、「数日」という柔らかい言葉を入り口にしながら、現実には裁判官の顔が見えないまま、長期拘束へと姿を変えていく。

◆婦人科検査という「二次被害」

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SNS炎上から法的対立へ、三一書房があけび書房側に謝罪要求

黒薮哲哉

三一書房が、あけび書房の岡林信一社長に対し、5月19日付で内容証明郵便を送付していたことが分かった。内容は、岡林氏が投稿した複数のSNS投稿の削除と謝罪、さらに三一書房が「盗作本」と主張する『石ころの慟哭』(辻井彩子著、あけび書房)の出版中止と市場からの回収作業開始を求めるものである。

既報の通り、この問題は、ジャーナリストで同志社大学元教授、メディア研究者の浅野健一氏が、『石ころの慟哭』の著者である辻井氏に異議を申し立てたことに端を発する。浅野氏は、山上徹也被告の裁判を傍聴し、その内容を扱った書籍を、当初はあけび書房から出版する予定だった。しかし、ゲラ段階で急遽、版元をあけび書房から三一書房へ変更し、『石ころを石礫に』を出版した。

「浅野本」の制作には、辻井氏のほか、別の編集者も関わっていた。

浅野氏が版元を変更した後、辻井氏は自身が収集していたデータを用いて『石ころの慟哭』を執筆し、あけび書房から出版した。これに対し浅野氏は、「辻井本」には内容が盗用されているとして、裁判所に出版差し止めを申し立てた。さらに、フェイスブックなどのSNSで自身の主張を展開し、SNS上では炎上状態となった。

こうした流れの中で、浅野氏は、あけび書房の岡林社長と辻井氏のほか、鹿砦社の松岡利康社長、ジャーナリストの鈴木エイト氏、さらに黒薮に対しても法的責任を追及する考えを表明した。

一方、あけび書房側も、「浅野本」には、辻井氏が提供した原稿の盗用があると主張している。浅野氏は4月16日、自著の出版記念講演の中で、「5月中に裁判を起こす」と公言した。その数日後、「浅野本」の版元である三一書房があけび書房へ内容証明を送付したことで、訴訟への発展はほぼ避けられない情勢となった。内容証明の全文は次の通りである。

◎内容証明郵便の全文 https://31shobo.com/topics/

◆4つの着目点

私は、次の点に着目している。

① 原告と被告の間に、それぞれ盗用はあったのか。
② 辻井氏が制作したデータ原稿の著作者人格権は誰にあるのか。
③ 本を制作する際、浅野しは協力者はどのように扱っていたのか。
④ 浅野氏は大学の時代にも、「盗用」をめぐり大学院生と係争を起こしているが、過去の事例との類似性はあるのか。 

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年5月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

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ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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ロシアとインドの石油・天然ガスの貿易――「約96%が自国通貨で行われている」とロシアのシンクタンクが明かす。米国によるベネズエラとイランへの軍事介入の背景に、ドル建て取引の危機

黒薮哲哉

西側メディアはほとんど報じていないが、石油取引をドル以外の通貨で行う取引が急浮上している。石油の取引は伝統的にドルで行われてきた。この慣行は「ペトロダラー体制」と呼ばれ、1970年代にアメリカとサウジアラビアの間で成立した、安全保障と石油取引に関する合意を背景に形成されたとされる。米国が軍事支援を行う見返りに、石油のドル建て決済を採用するという合意である。

石油は全世界で使用されるうえ、石油によって生まれた利益がドル建てで投資などに回される事情もあり、米国経済に大きな影響を及ぼしてきた。ところが最近、非西側諸国において、ドル以外の通貨による石油取引が徐々に広がっている。

たとえば、ロシアのシンクタンク系メディア「Russian Pivot」は、インドの状況について次のように報告している。石油や液化天然ガス(LNG)の取引の「約96%が自国通貨で行われている」というのだ。重要部分を引用しておこう。

「2026年3月、インドによるロシア産原油の輸入は日量約206万バレルに急増し、前月比でほぼ倍増、過去最高水準に迫った。この増加は、インド全体の原油輸入が減少する中で起きており、中東での供給ショックによる意図的な代替が進んでいることを示している。

インドの原油輸入のほぼ半分が通過するホルムズ海峡を経由する供給の混乱は、ニューデリーに迅速な戦略見直しを迫った。従来日量約100万バレルを供給していたイラクからの供給は途絶し、サウジアラビアやクウェートからの供給も大幅に減少した。インドの精製設備に適合するロシアのウラル原油は、最も効率的な代替として浮上した。

原油以外でも、ロシアからインドへの液化天然ガス(LNG)の直接輸出再開に向けた協議が進んでおり、エネルギー面での相互依存はさらに深まっている。ロイターによれば、最終承認を経て数週間以内に合意が成立する可能性があり、ウクライナ紛争以降初めて直接的なLNG輸入が再開される見通しである。

特筆すべきは、すでにこの貿易の約96%が自国通貨で行われている点であり、ドルに依存しない金融メカニズムへの構造的な移行が進んでいることを示している。」

最近、SNS上には石油取引の決済通貨が、ドル以外に移行しはじめているという情報がかなりあるが、一応の裏付けはある。BRICsが独自の通貨を摸索していることは、西側メディアも報じている。

米国がベネズエラやイランといったロシアや中国に近い産油国に軍事介入した背景にも、これらの国の石油をドル建ての取り引きに留めたいという思惑があった可能性が高い。高市首相が将来的に米国から石油を買うと明言したことも整合する。

ベネズエラとイランへの軍事進攻は、トランプ大統領個人の思想や信条が招いたものではない。米国財界の要望である。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年4月7日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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警察・検察・裁判所、そして法制審 「再審制度見直し」に表れた冤罪構造の深層

足立昌勝(紙の爆弾2026年6月号掲載)

昨年5月30日に開催された法制審議会刑事法(再審関係)部会で行なわれた犯罪被害者へのヒアリングで、静岡県旧清水市こがね味噌一家殺人放火事件(以下、旧清水市事件。本稿では、無実が明らかになった袴田巖さんの名誉を守るため、個人の名を冠した事件名ではなくこう表記する)で死刑が確定するも、その後の再審裁判で無罪が確定した袴田巖さんの姉・ひで子さんが、冤罪被害者をなくすために切実な思いを語っている。

「幸い再審が始まりました。今は、晴れて無罪放免となりました。58年闘ってまいりました。長い、見えない権力との戦いでした。誰といつまで闘うのかまるで見えていない、それは苦しい年月でございました。それでも私は自由に生きてこられました。
巖が釈放されて11年目になります。いまだ後遺症は癒えておりません。まともな会話もできないのです。1人の人間をこんなひどい目に遭わせて、弟は30歳で逮捕され、一生涯を台無しにされました。この間、国は何をしていたのでしょう。
 巖の再審開始のきっかけに証拠開示がありました。死刑判決の確定から30年もかかってしまったのです。もっと早く開示されていれば、巖の苦しみも短くてすんだと思います。もちろん今苦しんでいる皆さんも。やはり、そこにあるものを隠すということはあってはならないのです。ましてや人の命に関わることです。法に不備があるのですから、一刻も早く改めていただきたいと思います。
 村山(浩昭・静岡地裁)裁判長さんのおかげで巖に自由がやってきました。しかし、検察官の抗告により、真の自由を得るまでにはなりません。さらに10年かかりました。もしかしたら拘置所に戻されるかもしれないと、周りは大いに気を病んでおりました。私自身は『再収監できるものならやってみろ、私が代わりに入る。監獄なんて1度も入ったことはないから冥土の土産にちょうどいい』と思って、そのぐらいの覚悟でおりました。
 長い時間でした。巖も衰えました。再審を待たずに亡くなった方、不運にも獄中死してしまった方、そのことなどを考えますと、速やかに再審を行なうべきです。証拠の問題と併せて法の改正が必要です」

◆自民党内からも出た批判 その覚悟を問う

このようなひで子さんの声が通じたのであろうか。

再審制度見直しのための刑事訴訟法改正案について、事前審査を行なった自民党内で、政府原案への批判が続出した。特に、4月6日に行なわれた自民党法務部会と司法制度調査会の合同会議では、弁護士でもある稲田朋美元防衛大臣が、ひで子さんも言及した裁判所の再審開始決定に対する検察の抗告を維持する内容をこう批判した。

「マスコミが退出するまでに私、1言、言わせてもらいたい。私たちが言うことを、何も1ミリも聞かないじゃないですか。抗告の禁止、ここで発言した議員のほとんど全てが抗告禁止じゃないですか。それを、全く無視している」

翌7日には、自民党司法制度調査会の鈴木馨祐会長(前法相)が、法務省幹部らに「これまでの議論を踏まえてどういうことができるか、修正も含めて検討してほしい」と指示したといわれている。

昨年6月国会で、再審議員連盟(えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟)が①証拠開示の規定②検察官の不服申立ての禁止③裁判官の除斥・忌避④再審請求審の期日の指定など事務的な手続きを定める法案を提出していた。しかしこれは廃案となり、日の目を見なかった。

議員連盟には自民党からも多くの議員が参加しているだけに、「このまま黙って法務省案を承認したら、冤罪被害者をはじめとして有権者にどうみられるのか」との意識が働いたのではないか。党内から政府原案への異論が百出したのは、当然の帰結であった。

しかし、法務省は、そんなに単純に落ちる組織ではない。最小限の手直しですませようとするだろう。その時に彼らは、我慢し、矛を収めてしまうのであろうか。

いま、稲田議員らへの評価が高まっているが、彼らの覚悟が問われるのはこれからである。自分たちの主張は、冤罪被害者の人たち、国民の声を反映したものだとの意識があれば、さらに闘わざるをえないはずだ。

◆法制審答申に対する批判

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「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」、キューバのプレンサ・ラティナ紙

黒薮哲哉

イランのメディアが、「出光興産」傘下の大型原油タンカー「IDEMITSU MARU(出光丸)」が、人民元で通行料を支払いホルムズ海峡を通過したと報じた。ホルムズ海峡を通過する条件として人民元決済が求められるのではないかという見方は、以前から指摘されていた。たとえば3月14日付の米CNNは、「イラン、一部石油タンカーのホルムズ海峡通過を認める案検討 人民元での決済が条件」と報じている

米軍によるベネズエラへの侵攻とイランへの空爆の背景には、石油決済をドルから人民元へ移行させる動きを阻止する目的があった――というのが筆者(黒薮)の見解である。しかし、ホルムズ海峡の通行料を人民元とする流れが以前にも増して鮮明になってきたことは、米国がその目的を達成できなかった可能性を示している。米国とイランの停戦交渉で主導権を握っているのは、おそらくイランである。

◆サウジアラビアも人民元へ

実はサウジアラビアでも、石油決済をドルから人民元へ移行する案が浮上し始めている。依然として高いハードルはあるものの、米国にとってはイランでの影響力低下以上に大きな打撃となる可能性がある。

「1974年にサウジアラビアと米国の間で結ばれた『石油の米ドル建て決済と米債券への利益還流(ペトロダラー)』の約50年にわたる協定は、2024年6月に満期を迎え、更新されず実質的に終了したと報じられました。密約とされるため実態は不明ですが、少なくともサウジアラビアは人民元・ユーロ・円・ルピーなど、ドル以外での決済を受け入れる姿勢を示しています。」(マネクリ)

米国とサウジアラビアの間のペトロダラー体制は、1974年に成立したとされる。石油取引をドル建てとすることを条件に、米国がサウジアラビアに軍事支援を行う枠組みである。この協定が満期を迎えた2024年6月以降、ドル以外の通貨を導入する動きが活発化している。ロシアのルーブル、中国の人民元、さらにBRICSが検討する新通貨などが挙げられる。

産油国であるベネズエラとイランへの軍事行動は、こうした状況の中で行われた。米国としては石油のドル決済体制を維持することが重要な目的だったと推測される。

しかし現在、米国にとって最も重要なパートナーの一つであるサウジアラビアが、ドル以外の決済手段の検討を進めている。

謀略論との批判を承知で言えば、米国の空爆に対抗してイランがサウジアラビア国内の米軍基地を攻撃したことを、サウジアラビアはむしろ歓迎したのではないか。

4月29日付のキューバのプレンサ・ラティナは、ドル決済から人民元など他通貨への移行について解説している。世界規模で急速な変化が進んでいると指摘し、記事のタイトルは「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」(※出典)となっている。

◆「一つの時代の終わりか?世界はドルを超えて進む」

静かではあるものの極めて大きな変化が、世界の通貨バランスを再定義している。実際、BRICSを主導役として90カ国以上が国際貿易においてドルを離れつつある。その代わりに、人民元、ルーブル、ルピーが徐々に主流になりつつある。

この戦略的な再編は、単なる技術的調整ではなく、戦後以来アメリカを中心に構築されてきた金融秩序に挑戦するものだ。この動きの根底には、経済的主権を確立しようとする明確な意思と、世界の資金の流れにおけるアメリカの覇権への直接的な挑戦がある。

2025年初頭以降、BRICS加盟国は現地通貨への移行など具体的な行動を通じて「脱ドル化」戦略を強化してきた。この流れは、国際取引における通貨主権を取り戻したいという共通の願いに基づいている。

イラン中央銀行総裁モハンマド・レザ・ファルジンは次のように述べている。「我々はロシアと通貨協定を締結し、米ドルを完全に排除した。現在はルーブルとリヤルのみで取引している。」

同様に、インドとロシアの貿易はルピー決済の採用により130億ドルから270億ドルへと増加した。ブラジルは中国との間でレアルと人民元による直接取引を確立し、中国の決済システムをブラジルの銀行に統合することでこれを支えている。

二国間協定にとどまらず、BRICSは西側のシステムに対抗可能な専用の金融インフラも構築している。この戦略を体現する具体的な仕組みには以下がある:

BRICS Pay:現地通貨による越境決済システムで、すでに50カ国以上がSWIFTを回避可能

独立国家共同体(CIS):BRICSと連携し、越境取引の85%を自国通貨で実施

新開発銀行(NDB):ブラジル(10億4100万レアル)やロシア(6880万ドル)などでインフラを現地通貨建てで融資

ルーブル:ロシア輸出に占める割合が10%から40%以上へ上昇(ウクライナ紛争関連制裁以降)

これらは、脱ドル化が単なる政治的スローガンではなく、具体的なツールと政策判断、そして地域間の連携によって国際経済の仕組みに深く組み込まれていることを示している。

この動きはBRICSの枠を超え、アフリカ、アジア、旧ソ連圏へと広がっている。独立国家共同体(CIS)(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンなど)は、越境取引の85%以上を現地通貨で行っている。

アフリカでも同様の動きが見られる。例えばタンザニアは特定の取引でドルを公式に禁止し、ケニアやナイジェリアも自国通貨決済モデルの導入に向けて進んでいる。ASEANもまた、現地通貨決済の地域的枠組みを積極的に推進している。

この変化が特に顕著なのがエネルギー分野である。サウジアラビアはBRICSに歩調を合わせ、石油販売で人民元を受け入れており、インドもロシアからの輸入をルピーで支払い、ドルを回避している。

ガーナは原油輸入に金を使用することを選択した。これらの動きはしばしば、ドルの政治的利用への対応と解釈される。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は次のように述べている。「ドルは武器として使われている。実際にそうなっているのを我々は目にしている。これは重大な誤りだ。」

この流れに対し、アメリカの対応は迅速だった。ドナルド・トランプは、通貨の代替手段を構築する国々に対して100%の関税を課すと警告した。これらの圧力はすでに政治的影響を及ぼしている。

ブラジルでは、ルラ大統領が今年のBRICS議長国としての議題から共通通貨構想を外した。一方で彼は「一方的主義は国際秩序を損なう。分断が進む中、多国間主義の一貫した擁護こそが唯一の道だ」と述べ、バランスの取れた姿勢を示した。

しかし、この流れはすでに確固たるものとなっているようだ。脱ドル化はもはや抗議ではなく、ドル依存を減らす数々の取り組みによって示されるグローバルな戦略転換となっている。この通貨変革が、経済力の持続的な再均衡をもたらすのか、それとも既に進行している地政学的分断をさらに強めるだけなのかは、今後の焦点となるだろう。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年4月30日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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日本政府「危機感ゼロ」という恐怖 CIA企業パランティアの危険性

昼間たかし(紙の爆弾2026年6月号掲載)

3月初頭、首相官邸のサイトにアップされた一枚の写真が波紋を呼んだ。高市早苗首相が白人男性と並んで笑顔を見せている。その人物こそ、ペイパル(PayPal)共同創業者でフェイスブックの最初の外部投資家として名を馳せた億万長者、ピーター・ティール。

この写真が公開されると、SNSでは専門家や識者から色を失ったようなコメントが相次いだ。「安全保障の観点ですらも不適格」「まじでヤバい。常軌を逸している」「『絶対触っちゃダメ』でお馴染みの、あのパランティア!?」ここまで言葉を選ばない反応を浴びせられるパランティアとは、いったい何なのか。

◆パランティアとは何か

パランティア・テクノロジーズ社はCIA(米中央情報局)である。

こう書くと陰謀論だと思うかもしれない。しかしこれはすでに多くのメディアが報じている事実だ。会社そのものがCIAの資金で設立された。

ティールがパランティアを創業したのは2001年9月11日の同時多発テロ以降、ペイパルの不正検知システムがFBI(米連邦捜査局)から注目されたのがきっかけだ。ティールはこのシステムを転用してテロリストを検知する技術を開発し出資者を募ったが、最初は誰も出資しなかった。顧客が誰なのか、何を売るのかがまったく明確ではなかったからだ。

そこで出資したのが、CIAの投資部門・インキュテル(In-Q-Tel)だ。1999年、CIA長官ジョージ・テネットが設立した準公的ベンチャーファンドで、目的は「米国の諜報機関が技術的優位を保つこと」。約125万ドル(約2.5億円=当時)という金額も驚くが、より重要なのは、「CIAが最初の顧客だった」という事実だ。

設立から数年間、パランティアの顧客はCIAだけだった。CIAアナリストがパランティアのエンジニアとCIA本部でテロリスト監視システムを共同開発した。2006年にリリースした「Palantir Gotham(ゴッサム)」はCIA、FBI、NSA(国家安全保障局)、国防総省が次々と導入。2011年のオサマ・ビンラディン殺害作戦でも使われたとされる。

日本法人は東京・神宮前のオシャレなオフィスビルに入居している。しかしその実態は「CIAの、CIAによる、CIAのための企業」だ。

パランティアの最大の問題点は、諜報機関との関係を超えた倫理観のおかしさだ。2025年8月、米テックメディア「ワイアード(WIRED)」が「パランティアは実際、何をしている企業なのか?」という記事を掲載した。元社員すら「まとまった説明をどうすればいいかは難しい問題です」と語り、別の元社員は「その質問にどう答えればいいか、まだわかりません」と答えた。働いていた人間ですら説明できない会社なのだ。

わかっているのはこうだ。パランティアが米軍に提供している主力製品「Maven Smart System」は、衛星画像・ドローン映像・電波傍受・位置情報をリアルタイムで統合し、AIが攻撃目標を自動選定する。従来は人間2000人が12時間かけて作っていた標的リストを、AIが1分以内に完了する。今年2月末から始まったイラン攻撃では、このシステムが初日だけで1000件以上の標的を選定したとされる。少なくとも13の病院が攻撃され、小学校への攻撃で165人が死亡した。効率的な殺人AIだ。

このシステムは、最初に開発していたグーグルも逃げ出したいわくつきのものだった。2017年、米軍のドローン映像AI分析プロジェクトに参加したグーグル(Google)では社員が倫理的問題を理由に大量退職し、2018年6月に撤退した。グーグルですら「人殺しに使っちゃダメだろ」と判断したものを、パランティアは喜んで引き継いだのである。

パランティアCEOのアレックス・カープはハーバーマスの下で社会理論の博士号を取得した知識人だが、発言は常軌を逸している。2025年2月の業績発表会では「パランティアは必要とあらば、敵を怖がらせ、場合によっては殺す」と明言。2026年3月には、軍事利用を拒否するAI企業アンソロピックを念頭に「政府がテクノロジーを国有化しないと思ってるなら、あんたは知的障害者だ」と公の場で差別発言を繰り返している。

「AI時代の死の商人」――それがパランティアの実情だ。そんな会社のシステムを、日本政府は本気で導入しようとしている。

1月16日、小泉進次郎防衛相がワシントンのパランティア本社を訪問。「AIや無人機の活用が非常に重要なポイントだ」と述べた。現状、富士通などの民間企業を通じてゴッサムを調達する方向で調整が進んでいる。

ゴッサムは、国家が持つあらゆるデータを統合してAIが分析・監視するシステムだ。警察の犯罪記録・税務データ・出入国記録・防衛機密・SNSの投稿履歴――これらを一つのプラットフォームに統合し「誰が誰とつながっているか」「誰が危険人物か」をAIが自動分析する。

マイナンバーカードの危険性が指摘されているが、それらはしょせん「閉じたシステム」である。ゴッサムは次元が違う。誰がどこで何をしているかを即座に検索し、犯罪を行なう〝危険性?まで予測する監視システムなのだ。

◆明確な基本的人権の侵害

こうした行き届いた監視システムに、導入を検討した主要国は、すでに次々と逃げ出している。

2023年2月、ドイツ連邦憲法裁判所は、ハンブルク市警察が導入したパランティアのシステムについて「違憲」との判決を下した。理由は「明確な基本的人権の侵害」だ。問題になったのは犯罪予防を目的としたシステムで、警察の犯罪記録・通話履歴・SNS投稿・位置情報を放り込むだけで犯罪を〝予測する?というものだった。

ところが実際にAIが検知したのは、あり得ない犯罪ネットワークだった。

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報道の自由度ランキングの実像 ――「国境なき記者団」と資金・政治の関係を検証する

黒薮哲哉

国際NGO「国境なき記者団」は、4月30日に2025年度の「報道の自由度ランキング」を発表した。世界180の国と地域を対象に報道の自由度を評価・序列化したものである。日本は66位だった。上位5か国と下位5か国は次の通りである。

■上位5か国
1 ノルウェー
2 エストニア
3 オランダ
4 スウェーデン
5 フィンランド

■下位5か国
176位 イラン
177位 シリア
178位 中国
179位 北朝鮮
180位 エリトリア

◆「国境なき記者団」がどのような団体なのか

ところで、この恒例行事の主催者である「国境なき記者団」がどのような団体なのかという点については、ほとんど報じられていない。「国境なき…」という字面や音律から、ジャーナリズムの模範を提示している団体であるかのような印象がある。しかし、その内実は欧米の政界との距離が近く、見方によっては右派勢力のための世論誘導の機関になっているという指摘もある。

たとえば、2025年1月、トランプ大統領が米国国際開発庁を事実上閉鎖し、メディア向けの2億6800万ドル(約402億円)の予算を凍結した際、国境なき記者団(RSF)は「この決定を強く非難する」とする声明を発表した。その中で、はからずも次のような事実が明らかになった。

「(USAIDによる)援助凍結が発効するとほぼ同時に、米国の援助資金を受けている世界各地の報道機関や報道支援団体が、混乱や不安、先行き不透明感を訴えてRSFに連絡を寄せ始めた。「2023年に同機関(USAID)は6200人のジャーナリストに対する研修と支援に資金を提供し、707の非国家系ニュース媒体を支援し、さらに独立系メディアの強化に取り組むメディア分野の市民社会組織279団体を支援した。」

ホワイトハウスによるメディアへの資金提供の中止を強く批判しているのである。国境なき記者団がUSAIDから資金援助を受けてきた証拠はないが、第2次トランプ政権以前の時期までUSAIDの傘下にあった全米民主主義基金から支援を受けてきたことは、ネット上で確認できる。

NEDのウェブサイトに掲載されている資金提供先に「国境なき記者団」の名前がある。2005年度に3900ドル(約600万円)の資金を受けている。資金の使用目的については、次のような記述がある。(※出典

「エリトリア、ジンバブエ、ソマリア、コートジボワールにおいて、報道の自由を強化し、報道関係者への弾圧を減少させるため、RSFは投獄されたり脅迫を受けたりしているジャーナリストに対し、法的・医療的支援や物資支援を行うほか、報道弾圧の調査や危機的状況への対応に関する研修ワークショップを実施する。また、RSFは各国報告書を作成し、報道の自由の状況を分析するとともに、危険にさらされているジャーナリストへの関心を高め、当局に対して提言を行う。」

ちなみに、出典のリストで明らかなように、NEDは世界中のメディアに資金を提供し、世論形成のインフラを維持している。国境なき記者団もそうした団体の一つであり、実は独立したメディアではない。

なお、NEDの活動については、メディア黒書でも繰り返し取り上げてきた。中央情報局を母体とする団体で、特にメディアに対する介入が顕著に観察できる。「報道の自由度ランキング」なるものも、西側メディアの優位性と非西側メディアの劣勢を浮き彫りにするための一つの道具なのである。

※NED(全米民主主義基金)についてのメディア黒書の全記事

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2026年5月1日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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イラン戦争が示す高市政権「トランプ媚従」の末路

堀茂樹 構成・本誌編集部(紙の爆弾2026年6月号掲載)

2月28日、イランの首都テヘランへの空爆に始まった米国の戦争は、そもそも目的が明確でない。しかし動機は見え透いている。米国は、今日なお自国が世界を仕切る超大国であることを示したいのである。

実は、第二次世界大戦後の米国は、世界各地で戦争を仕掛け、毎度敗退してきた。ただし本土を攻められたことがないため、ベトナム戦争のような明らかな例を除けば、世界の人々は米国が敗北したとは認識してこなかった。

しかし近年、歴史学者エマニュエル・トッドも指摘するとおり、米国はウクライナを介した代理戦争でロシアにはね返され、関税を武器にした経済戦争では中国に力負けした。そして今回、空爆やミサイルによる直接的な戦争をイランに仕掛けたが、戦場が米国本土から遠く離れた中東ということもあり、兵力の不足が隠せなくなってきている。わが国は、この基本的事実を踏まえて、今後の国防戦略を考え直さなければならない。

◆トランプとイランの間の「価値観」の隔絶

これまで米国は、政権転覆工作を含む他国への攻撃に際して、いつも「民主化」を大義名分としてきた。しかし、今回トランプは、「アメリカとイスラエルに対して友好的であればイランに民主化は必要ない」(3月7日)と言い放った。イランの核開発への懸念を語りながら、平和的な協議中にいきなりの騙し討ちでイランの最高指導者らを暗殺した。大義のない戦争、帝国主義的暴力をむき出しにする戦争であることを、米国は隠さなくなった。

こうなると、トランプの「アメリカファースト」は、他国とその国民を犠牲にしてでも米国の利益を図るエゴイズム以外の何物でもない。しかも、追求するのはカネばかり。連発される「ディール」という言葉がその象徴だ。カネ儲けを超える価値を、トランプは持ちあわせていないのではないか。

対照的なのがイラン側の人々で、彼らは少なく見積もっても、個人的な生命を超える価値にセンシブルだ。暗殺された最高指導者ハーメネイー師の最期は、殺される可能性を織り込み済みであったように見える。殉教ということのあり得る社会と、あり得ない社会の間には、途方もない隔絶がある。

ただし、個人を超える価値、生命を超える価値への感覚は、必ずしも宗教の教えに直接依存しているわけではない。宗教によって培われた形而上学的理念が、当該の宗教が下火になったあと、世俗化して人々を導くことがある。たとえば西洋近代の人権尊重は間違いなくキリスト教起源だが、宗教としてのキリスト教から離れ普遍化した。

エマニュエル・トッドの出色の指摘の一つによれば、西洋人一般が今のイランを原理主義的なイスラム教権国家と見做しがちなのは現実を知らないからである。モスクは熱気が溢れているとはいえない状態で、むしろふだんは「空いている」し、また、イラン人女性は非常に高い確率で高等教育を受けており、全員がヒジャブを被っているわけでは全くない。

かつて西洋諸国でキリスト教由来の世俗的価値観が公的なコンセンサスとなり、キリスト教会の権威を私的生活圏に追いやったのと似たプロセスで、実はイランも、1970年代末のイスラム革命にもかかわらず、ではなくむしろ、ほかでもないイスラム革命を契機として、しかもあの革命が打ち出した教義や戒律には反して、俄然近代国家に変貌しつつある、と捉えるべきであろう。

長い文明の推移がそのような途上にある国に、愚かにも西洋は外から力ずくで西洋風の民主制を押しつける。しかも、それは名目にすぎず、真の動機は覇権の誇示と金銭的利益の追求に尽きている。民主制を押しつけられた非西洋国の国内は通常、外からの圧力への対抗の必要に駆られ、一挙に保守化し、強権的な政体へと向かう。それが、2003年のイラク戦争を契機にイスラム国が誕生したのをはじめ、中東地域の多くで見られた経緯である。

ところが、今回イランは、反動に翻弄されるどころか、米国とイスラエルに対して冷静に、強靱に、そして自律的に対処しているように見える。米国とイスラエルは昨年6月に「12日間戦争」を仕掛け、今年2月末にはイランの最高指導者をいきなり暗殺した。そして得意の情報戦を仕掛け、イランによる核兵器製造や、国内のデモにおける4万人もの市民の殺害を吹聴した。しかし、内乱もレジームチェンジ(体制転換)も起こすことができなかった。イラン国民はむしろ団結している。

そこに如実なのは、蓄えられたリアルな戦力の充実に加えて、宗教自体というよりも、宗教をバックボーンとする倫理観の確かさ、個人の生命を超える集団的価値(=祖国)や形而上学的価値(=永遠)への信念の強さであるように思われる。

イランを支えるそんな思想を、トランプと、トランプが戯画的に代表する現代西洋は理解しない。対立は長期化しそうだ。

本誌発売時点の具体的な戦況を予測することはできない。それでも、かなり早い段階で、米国の敗北はすでに確定的であったと考えられる。少なくとも、私がしばしば参照するフランスの複数の独立系メディアは、3月末にはすでに米国の敗北を明白と判断して、分析・解説を行なっていた。

◆「自由」と「民主」のバリエーション

ここで、米国の掲げる「自由民主主義」について確認しておきたい。

民主主義における意思決定の基本は「多数決」、すなわちマジョリティの支配である。しかし「多数の暴力」という言葉があるように、多数で決めたことだからといって、個人の基本的人権を損なうことが許されるわけではない。そこに多数決の限界が考えられている。

一方で、個人の権利擁護を絶対化すると、意思の集約ができず、民主主義は成り立たない。それは自由主義的でリベラルではあるが、もはや民主主義とはいえない。
米国の自由民主主義は、何事につけ、個人の自由を優先的にする。裁判で金を持つ側が有利となるのも当然のことと考えるし、名門大学のグループであるアイビーリーグにも富裕層の子弟は財力で入り込みやすい。なんと学内で、富裕層の学生が、優秀な学生を家庭教師として雇っていることもあると聞く。米国は、個人の権利を中心に据えた新自由主義的な社会といえる。

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