◆疑惑の4点がすべて載った衝撃記事

 

本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号より

本日9月7日発売の月刊『紙の爆弾』(2018年10月号)に掲載されている記事「安倍晋三『下関暴力団スキャンダル』の全貌を暴く」は、安倍首相や自民党にとって「不都合な事実」が満載だ。

いまインターネット上で話題の#ケチって火炎瓶 #安倍とヤクザと火炎瓶 の事件を紹介。そのうえで執筆者のタカノシゲル氏が過去の取材にさかのぼって具体的な人名をあげ、背後にある全体の構造を示しているからだ。

キーワードは4つ。①安倍晋三、②工藤會(を含む暴力団)、③自民党(および同党大物政治家)、④警察、である。

◆#ケチって火炎瓶 “安倍とヤクザと火炎瓶

あらためて安倍首相をめぐる暴力団がらみの事件を整理しよう。1999年4月の下関市長選で、安倍陣営の江島潔候補(現参院議員)を応援するため、建設会社会長の小山佐市氏が、対立候補の古賀敬章氏に対する誹謗中傷ビラを撒いた。選挙妨害である。

そもそもが当時安倍首相の佐伯伸之秘書(故人)から中傷ビラ配布を頼まれたというのが小山氏の主張だ。

佐伯秘書は古賀候補の女性スキャンダルを扱った週刊誌記事を小山氏に見せ、「それで、僕は『こんな記事が出るヤツは国会議員の資格がない』と 小山に言うた」と、スキャンダル記事は見せたが、中傷ビラをまけとは言っていないとインタビューに答えている。

 

続きは本日発売の月刊『紙の爆弾』10月号で!

そして佐伯秘書は絵画購入の代金として300万円を小山氏に支払ったが、それが恐喝だとして小山氏は逮捕。しかし不起訴となる。

このあと、選挙で対立候補を「当選させないための活動」をしたにもかかわらず、見返りがなかった。そのため安倍首相らとも交渉して念書の類の書面を交わした。(この念書が出てきたことで、今回の事件に火がついた)

ところが思い通りに行かなかったため小山氏は、指定暴力団「工藤會」系の高野組・高野基組長に依頼して、2000年6月から8月にかけて、安倍晋三氏宅ら4軒(間違えて攻撃した場所を含めれば5軒)に火炎瓶を投げさせた。

国会議員の自宅や後援会事務所など4か所に火炎瓶が投げられたのだから当然、大騒ぎになり大々的な捜査が行われるはずだ。

しかし報道もされず、当初はだれも逮捕されなかったのである。これは考えられないことだ。安倍氏の筆頭秘書・竹田力氏(故人)は、山口県警刑事部捜査第一課次長(警視)だ。

こうした警察につながる人物が安倍氏の筆頭秘書をつとめていたが、前述の300万円恐喝で逮捕されたが小山氏はすぐに釈放され起訴もされていない。そして連続火炎瓶事件でも、山口県警は大々的に動かなかったという。

事件から3年経った2003年11月、小山氏、高野組長ら複数名が火炎瓶事件で逮捕起訴され、小山氏懲役13年、高野組長懲役20年(服役中)の判決が下ったのだ。

事態が急変したのは、服役していた小山佐市氏が今年2月に出所し、逮捕直後から事件を追っていたフリージャーナリストの山岡俊介氏(アクセスジャーナル主宰、事件の連載記事執筆)と、火炎瓶事件の電子書籍「安倍晋三秘書が放火未遂犯とかわした疑惑の『確認書』」の著者、寺澤有氏に連絡してきたことだ。

2人は急遽下関に飛び、5月13日に5時間にわたり小山氏をインタビューし動画撮影を行った。決定的なのは、それまでに存在はわかっていたが現物が出てこなかった、安倍事務所と小山氏が交わした文書3通の現物を2人が目撃し、動画撮影したことである。

選挙妨害後のトラブル処理のために1999年6月から7月にかけて署名捺印された2通の確認書と1通の願書だ。

それによると1999年7月3日に、安倍首相と小山氏は一対一で面談しているのである。なお、2014年8月にも山岡氏と寺澤氏が筆頭秘書の竹田力氏を取材したさい、竹田氏は、小山氏と安倍首相が1対一で会ったことを認めている。それが、今回文書でも確認されたのだ。

現在、総理大臣を務めている人ぶるが、民主主義の根幹にかかわる選挙妨害に関与し、指定暴力団とつながりの深い人物と直接接触していた事実は重い。

しかも、当初から追及してきた山岡俊介氏が新宿の階段から転落する事故も起きている。過去に山岡氏は、取材執筆活動が引き金となって自宅を放火されたり、脅迫状やカッターナイフを送りつけられた事実があるだけに、私は事故直後に彼のインタビュー記事を書いている。

◆安倍首相の国会答弁「一切の関わりを断ってきた」の重大な意味

本件に関してマスコミは報道を避け、野党も本格的な追及をしない中で、ただ一人山本太郎参議院議員が7月17日の参院内閣委員会で安倍首相に質問した。この中で注目すべきは、安倍首相の次の答弁だ。

「一切の関りを断ってきた中において、発生した事件であるわけでございます」

筆頭秘書である故竹田氏の証言(もちろん音声録音している)に加え、今回現物が明らかになった書面により、安倍首相と小山氏が直接接触していたことは明らかだろう。したがって「一切の関りを断ってきた」というのはまったく通用しない。

だが、「紙の爆弾」10月号のタケナカシゲル氏の記事が衝撃的なのは、さらに深く、安倍首相の「一切の関りを断って」の意味に斬り込んでいるからだ。

《「断ってきた」という言葉に、自民党と工藤會の蜜月が表現されているのだといえよう。たとえば2001年の参院選挙において、福岡選挙区から当選した松山政司議員(現在三期目)は、出陣式を工藤會館(現在、暴対法で閉鎖中で行おうかと溝下秀男工藤會総裁(故人)に冗談を言って、逆にたしなめられていた。これは同じ選挙に比例区として出馬した作家・宮崎学氏の選挙準備の際に、筆者が溝下氏から直接聴いた話である》(記事より)

ここの引用した以外にも、自民党の選挙と工藤会の関係が実名を含めて照会されている。

そしてもうひとつ、警察と暴力団との関りについて。福岡の博多の違法カジノバーの手入れ情報を流して報酬を得た警察官ら10名が逮捕された2000年の事件に触れていることも興味深い。

その違法カジノの経営者は、工藤會の最高幹部だった。

こうしてみると、安倍晋三・自民党・工藤会(ほかの暴力団も)・警察 による枠組みの中で、いま話題とされている#ケチって火炎瓶事件が位置付けられる。
 
このような人物が自民党の総裁選に出馬することは論外だし、総理辞任、議員辞職は当然だ。

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

7日発売!月刊紙の爆弾10月号

◆明治維新の過ちが混迷の原点

安倍政権に牛耳られた日本は、断末魔の様相を呈している。国会内でくりひろげられるウソ、はぐらかし、傲慢な態度。

役人は忖度し、公文書を改ざん=歴史偽造を実行しても甘い処分しか受けていない。一部の金持ちはどんどん肥え太り、貧しい人はより貧しくなる。そのうえ生活保護の削減で、関連する行政サービス(40以上)が低下し、保護受給世帯ばかりかほかの人々の生活も苦しくなる。

完全に日本は分断されている。いったい誰のせいか?
それは「安倍のせいだ」という人が多い。

確かにその通りで、貧困を拡大させ、国の基本法である憲法に明らかに違反する法律(安保法制、秘密保護法、共謀罪など)を次々と制定施行してきたのが安倍政権である。

「個別の問題に取り組むのではなく、安倍政権そのものを打倒しなければならない」

保守的な人まで含めて、この共通認識が定着したのは、安保法制反対運動が起きていた2015年夏頃だろう。

だが、もっと深いところに現在の日本の混迷と危機があるのではないか。それは、明治維新そのものが今日の安倍政権の暴走にみられる日本の危機をもたらせている、ということだ。

 

関良基『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(作品社2016年)

そのことを明示してくれたのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新~テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著・作品社刊)である。

この本が提示することをひと事で言い表すと、こうである。

《江戸時代末期に芽生えた立憲主義・議会制民主主義の夢をテロリストたちがつぶし、彼らが権力を握った。そして維新後に専制政治を打ち立て、第二次大戦の敗戦をも生き延び現在に至り、暴走している》

これを著者は「長州レジーム」と名付ける。つまり、この長州レジームをつぶさないかぎり、国民・住民・市民は安心して寝られない、と筆者は思う。

◆150年ぶりの大チャンス

筆者は、かなり長い期間にわたり、現在の日本社会の問題は、敗戦後の改革が徹底しなかったことに原因があると考えていた。

だから、日本をよりよい方向に改革するには、1945年までさかのぼらなければならない、と。

ところが昨年(2017年)3月、共謀罪に反対する集会の会場で、ある人に出会ったときにハットしたのである。

「もう一回、1945年に立ち返って日本を抜本的に改革しないとダメですよね。72年ぶりの真の政権交代が必要です!」
 
と私がいうと、こんな言葉が返ってきた。

「いや、150年ぶりですよ。政権交代どころか150年ぶりに市民革命の大チャンスがやってきた。世界情勢をみても日本国内を見ても・・。アメリカの支配層も割れている」
 
この「150」という数字を聞いた瞬間、私の頭の中でパチっとスイッチが切り替わったような感覚に襲われた。150年前といえば、明治維新である。

以来、それまで見えなかったものが見え、聞えなかった声が聞こえ、新しい視点や人物、情報などが筆者の視野に入ってきた。

◆歴史から消された巨人・赤松小三郎とは?

その中で出会ったのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著、作品社刊)に他ならない。

一読した筆者は、声も上げられないほどの衝撃を覚えた。

明治維新150年を目前にして数年前から、明治維新を批判的に分析・批評する本が相次いで出版され、「明治維新イコール善という神話」に強い疑念の声が増しているのは事実だろう。

しかし、この本が突出しているのは、全国民(国中之人民)を対象とした普通選挙で選ばれた議員が構成する議会を国権の最高機関と位置付ける構想を著した人物に光を当てたこと。

その人物とは、信州上田藩の藩士・赤松小三郎であり、彼の思想と生涯を丁寧に追い、現代の日本と照らし合わせたのが、この本なのだ。

赤松の建白書類では、明文化はされていないものの、女子の参政権も認めていると考えられる。江戸時代のことだから、世界最先端の思想と言ってまちがいない。

赤松の構想では、国軍(陸軍2万8000人、海軍3000人)を創設する。最初は武士がその任にあたるが、有能な者を育てたうえ志願制度に切り替え、軍人に占める士族出身者の比率を減らしていく。

国軍とは別に民兵制度も提唱しているのが特筆に値する。一般国民はふだんは各自の仕事を行い、居住地域で教官により定期的に軍事訓練を受ける。訓練は男女平等に課せられる。

著者の関氏は「小三郎が女性参政権を認める立場だったと推定する根拠はここにある」と述べている。

◆「維新の志士たち」がテロでつぶした立憲主義の夢

驚くのは、赤松小三郎の先進的な構想を認める人たちがたくさんいたことだ。つまり、道理をわきまえた改革者たちの間では、立憲主義は常識になっていた事実は「重い」。明治維新前の慶応年間に!

こうした動きをテロで葬ったのが、まさに長州テロリストたち。彼らによる「長州レジーム」が2018年の現在も続いていることが日本の最大の危機ではないか。

維新で権力を握った彼らが、どのように専制支配体制を固め、現在の安倍政権に至ったのか。近代日本の出発点とされる明治維新そのものに誤りがあったと思わざるを得ない。

そして現在、安倍政権は、長州レジームを暴力的に強化しようとしている。長州テロリストの末裔たちが安保関連法制、秘密保護法、共謀罪、刑訴法改悪・・・と違憲立法を強行し、最終的には憲法改正で大日本帝国を復活させようともがいている。

いま、道理のある人間、心ある人間がやるべきことは、長州レジームを終わらせることである。

かなり危険なところに日本は追いやられているが、一発逆転するチャンスが来ている。

なぜなら、多くの人々が「おかしい」と心の底、奥深いところで気づき始めているからだ。

こんなことを思わせる本だ。最後に著者の関良基氏の言をひいておこう。

《近代日本の原点は明治維新にあるのではない。
江戸末期に提起された立憲主義にある》

長州レジームから日本を取り戻すための必読書である。

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本書の著者、関良基氏の講演案内

■8月18日(土)第107回草の実アカデミー■
 
長州レジームからの脱却
2018年のいま、
テロリストたちに葬られた立憲主義を実現させる
 
講師 関良基氏(拓殖大学教授)
日時 2018年8月18日(土)
   13:30開場、14:00開演 16:40終了
場所 雑司ヶ谷地域文化創造館 第2会議室
http://www.toshima-mirai.jp/center/e_zoshigaya/
交通 JR山手線徒歩10分 地下鉄副都心線「雑司ヶ谷駅」2番出口直結
資料代 500円
主催 草の実アカデミー


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▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

『紙の爆弾』9月号

閉幕した国会で強行成立させられた「働き方改革関連法案」は、長時間労働が合法化されるため「過労死推進法」とも呼ばれる。まさに経団連にとって都合のいい「働かせ方改革」だ。

そうではなく、労働者の立場から本当の「働き方改革」を現場で実行している2人を紹介する。

その2人とは、今年3月期に日本企業として過去最高の2.4兆円の純利益(アメリカ会計基準)をあげたトヨタ自動車の元社員と現役社員である。

◆トヨタ内に闘う組合「全トヨタ労働組合」(ATU)を結成した若月忠夫氏

 

「全トヨタ労働組合」(全ト・ユニオン=ATU)を結成した若月忠夫氏

1人は、すでに退職している若月忠夫氏(72歳)。

彼は1965年に入社してから、トヨタ自動車元町工場で働き続けてきた。若いころから御用組合の姿勢を変えようと積極的に発言してきたが、ある事件をきっかけに、労働者のための新しい労働組合「全トヨタ労働組合」(全ト・ユニオン=ATU)を創立した。

全ト・ユニオンは、非正規社員、期間従業員、下請け、孫請けなど一切関係なく1人でも加入できる組合だ。07年に定年で退職するまで、若月氏は社内で「働き方改革」を進めてきた。現在も執行委員長として活動している。

トヨタ自動車労働組合は、困っている労働者を救うというより、会社の第二労務部的な役割を果たしてきたと言わざるを得ない。そんなことを改めて痛感したのは、深刻な悩みをかかえたある社員が若月氏に相談してきたときのことだ。

「いまの連続2交代の勤務体制では、妻の健康状態もよくなく面倒を見なければならないので、とてもじゃないが勤められない。オール昼勤務だけの場所に配置換えをしてほしい。なんとかしてくれないか」(相談にきた社員)

そのとき若月氏は、もちろんトヨタ自動車労働組合の組合員であり、しかるべき部署と相談した。にもかかわらず改善されず、相談してきた彼は自宅で首吊り自殺をしてしまった。

「まだ40代の若さでした。彼の命を救ってやれなかったという痛恨の悔やみがあります。しかも、彼の上司は労働組合の役員経験者だった。そういう役員経験者がなぜ彼を救ってやれなかったのか」

当時を振り返って若月氏はこう語った。無念さを抱え、心ある人たちだけで労働者のための新しい組合をつくるしかないと、2006年1月に全ト・ユニオンを結成したのである。

 

現役社員の染谷大介氏

◆自身の労災事故を隠され、目覚めた染谷大介氏

もう1人は、現役社員の染谷大介氏(39歳)だ。この7月に、初めて顔出しで名乗り出た。

25歳で期間従業員として入社し、試験を受けて正社員になり、同社堤工場で働いている。

入社から約10年の2014年8月、作業中にビキッという痛みが右ヒザに走り、作業ができなくなった。部品を乗せた台車を7台も連結して移動させていた最中の出来事だった。

その日は脚を使わない作業をし、翌日病院に行って診断書をもらった。工場内で仕事の作業で負傷したのだから当然、労災保険適用のはずだが、上司は健康保険を使うように指示したのである。

それまで、会社のやることに正面から反対したり労働運動に積極的にかかわることもなかった染谷氏。だが、会社が異常なほどまでに労災適用をさせないようにする行動を見て、徐々に目が覚めていった。

有給休暇を取得して自宅で休養している最中にも、メールや電話で労災をやめて健保を使うようにと、ガンガンと連絡してくる会社。

工場内の詰所に染谷氏を呼んで上司2人が、トヨタのルールに従えと労災保険使用を止めさせようとしたり、別な日には5人の上司が彼を取り囲んで健保使用を強要した。

全ト・ユニオンの若月委員長もこの問題を取り上げて会社にも働きかけ、染谷氏自身も堂々と正論を主張して、労基署にも申告した結果、事故発生から1年あまり経過して染谷氏は労災を勝ち取った。

自分自身で体験した会社の労災隠しを体験し、染谷氏は変わっていったのだ。

 

 

◆雇止め・労災隠し・有給休暇取得阻止

しかし、労災隠しがまた発覚し、昨年4月に労基署から行政指導される事態にいたった。労災隠しは犯罪である。

それからわずか2カ月、昨年6月16日に染谷氏が働く堤工場で、期間従業員が作業中に左クスリ指を複雑骨折する事故が起きた。明らかな労災なのに、寮でケガしたことにし健康保険を使うように上司は指示したと言う。

この情報を受けて、染谷氏は工場内でケガをした当事者に事情を聴いた。

それを受けて全ト・ユニオンが労基署に告発し、会社に対しても詳しい調査を要求。染谷氏も会社に対して詳しい調査と適切な対応をとるように働きかけ、2人は連携していく。

 こうした活動を受け、トヨタも労災を認めざるをえず、8月10日付の「災害情報」という社内資料に、この労災事故の顛末を記録せざるをえなくなったのである。

 染谷氏は現役で働いているだけに様々な情報が入る。有給休暇希望者がホワイトボードに名前を記入するのだが、ボードにあらかじめ斜線を引かれて記入できないようになっていた。これを労基署に申告し、結果的に有給をとれるようになり、同僚たちにも喜ばれたという。

 また、雇用期間を延長を希望していた期間従業員の離職票に、本人が期間延長を望んでいないと虚偽記載した件もとりあげた。雇止めされた本人も動き、離職理由を「自己都合」から「会社都合」に変えさせた。

これにより、雇用保険の給付が90日分から240日分に増えたのだ。

2人のように、大組織の中で名前を名乗り、顔も出して具体的な行動を起こしてきた果、あきらかに事態が好転している。一歩動かなければ、いま紹介した事例は闇から闇へ葬られるはずだった。

改革は、1人、2人の具体的な行動から実現に向かうのだ。そんなことを2人の行動からあらためて考えさせられた。

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』8月号!

昨年6月15日に成立、7月11日スピード施行された、いわゆる「共謀罪」。現在は野党各党による共謀罪廃止法案が提出されたままで審議入りはしていない。

市民的自由を脅かす憲法違反の法律がいくつもある中で、この共謀罪はその最たるものだろう。犯罪が起きていなくても、「計画した」「準備した」つまり「犯意がある」と人の心の中を捜査機関が判定すれば、日本国内のすべての人を罪に陥れることが可能な法律だから、最もたちの悪い法律である。

元公安調査庁調査官の西道弘氏。2016年にイスラムに改宗した(写真は寺澤有さんのツイッターより)

今後も廃止へ向けて世論を高めることが必要だが、共謀罪の廃止を強く訴える一人が、昨年3月まで公安調査庁の調査官だった西道弘氏(58)である。

各種の団体を監視・調査・情報収集をしていた当事者が共謀罪に警鐘を鳴らしていることに重みがあるのではないか。自身の体験から、公権力による市民の監視に警鐘をならし、最近は講演活動もするようになり、公安調査庁の実態を一般市民に伝え始めている。

政党や政治団体、市民団体、労働団体、学生団体など、体制に批判的なグループや人々を監視し弾圧している公安警察に接することは比較的多い。たとえば、集会やデモが行われるときは、参加者を撮影したり監視する姿がよく見られる。また、活動する人を逮捕するなどしているので関心も高い。

一方、公安調査庁は一般の人にはなじみが薄い。

公安調査庁のルーツは、占領時代に共産党などを撮り締まるための団体等規正令に基づく法務省特別審査局。占領終結と同時に団体等規正令を廃止し、代わりに破壊活動防止法(破防法)に基づいて公安調査庁が設立されたのだ。

主要なターゲットは日本共産党であり、今となっては時代遅れの官庁ともいえる。その公安調査庁は現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「我が国・邦人へのテロ脅威に最大限の注意必要」(国際テロリズム要覧2017)と、テロ対策を口実にして予算と人員の拡大を目論んでいる。
 
なんとか組織温存、拡大のために必死のようすがうかがえるのだ。

◆共産党から国際テロ情報まで

1982年、西道弘氏は大学卒業後に公安調査庁に入庁。使命感を持つ一部の職員は別として、ノンポリ系が多かったという。簡単な彼の経歴を示しておく。

1982年入庁 関東局調査第一部第一課 共産党担当部署に配属(ただしこのときは庶務)
1984年 本庁総務部資料課で公開資料による旧ソ連情報分析
1985年 警察大学校国際捜査研修所でロシア語研修
1986年~1994年 本庁調査第二部第二課。外字関係調査(旧ソ連、中国、外国人労働者問題などのとりまとめ)
1995年~1996年(財)中東経済研究所に派遣
1996年~04年 関東局調査第二部第三課⇒第二部門(国際テロ関連調査)実際は在日ムスリムコミュニティ調査。
04年~09年「国際テロ要覧」、「内外情勢の回顧と展望」など原稿執筆。国際テロ関連情報分析業務
09年~11年 関東局国立駐在官室国内担当(共産党、過激派、特異集団「カルト集団」、右派系グループ「ヘイト集団」など)
11年~16年 関東局調査第二部第二・第五部門在勤(主としてイスラムコミュニティ関連調査)
16年7月 イスラームに改宗。
17年3月 辞職

先日西氏に話を聴いたところ、情報を収集するために各種の団体や催し物に参加、そこで「友達」になり、情報提供者や協力者を獲得する作業をしていたという。

印象的な話は、「カネ」である。協力者には謝礼金を払うが、カネ欲しさに悪質な情報を出してくる者が多い。

また、テロなどの危険はないと報告しても上司のウケは悪く、危機を煽り立てる情報を報告すると受けがよい。それは、危険がなければ組織の存在意義がなくなり、予算や人員の拡大ができないからである。

◆1990年代に転換期

西氏が入庁して間もない1980年代から、与党の中からも公安調査庁不要論が浮上してきた。しかし90年代に入り、必死で生き残りを図ろうとする。

1990年に革共同中核派に対する規制を検討したが、それは頓挫した。1997年7月には、オウム真理教教団に対する規制請求を公安審査委員会に提出したものの、97年1月に棄却されている。

なんとかして自分たちの仕事を作ろうと必死だった。

この90年代には、それまでの共産党調査などでは「売れる情報」が取れないということで、破防法には根拠のない「国内公安動向調査」と称して、反戦・人権擁護などを主張する市民団体などを対象とする監視調査してきた。

それから時が経ち、今や特定秘密保護法、拡大盗聴法、共謀罪が施行されている現在は、公安調査庁が生き残りをかけていた1990年代より、はるかに治安管理が強化されている。西氏が懸念するのは、「テロ防止の美名の下に、市民監視が公然と拡大していくこと」である。

彼自身の経験から現代日本に警鐘を鳴らず講演会があるので紹介したい。
 


《講演会》
イスラムに改宗した元公安調査庁調査官が語る
「共産党監視・旧ソ連関係・国際テロ関連情報分析、そして共謀罪時代の日本」
講師:西道弘氏(元公安調査庁調査官)

日時:5月19日(土)13:30開場、14:00開演、16:45終了
場所:雑司が谷地域文化創造館 第2会議室
東京都豊島区雑司が谷3-1-7 千登世橋教育文化センター内 
※会場に電話しないでください。

交通:「副都心線 雑司が谷駅」2番出口直結 「JR山手線 目白駅」より徒歩10分
資料代:500円 主催:草の実アカデミー
ブログ http://kusanomi.cocolog-nifty.com/blog/ 
E-mail kusanomi@notnet.jp  

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

『紙の爆弾』6月号 安倍晋三“6月解散”の目論見/政権交代を目指す「市民革命」への基本戦術

4月14日午後2時半すぎの国会議事堂正門前。10車線の広い道を南北に結ぶ横断歩道に人があふれ、規制しようという警察と小競り合いが始まった。同時に、ガシャーンとあちこちから金属音のようなものが聞こえ始めた。

デモを規制するために警察が設置した金属製の鉄柵が引きずられ、あるいは倒される音だ。柵を乗り越えて人々が車道に出始める。最初の金属音が聞こえて1~2分のうちに車道は人であふれかえった。史上まれに見る政権の腐敗と無責任に対して、市民が怒りを発露した瞬間である。

鉄柵決壊の約15秒後

決壊3分後、議事堂へ向かう人々

4月14日、国政を私物化し、国会で嘘を重ねる安倍政権総辞職をもとめる大集会が国会議事堂前で開催され、約5万人(昼から夜までの延べ人数)が参加した。

集会を主催したのは、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会/未来のための公共/Stand For Truth。午後2時から始まった集会には、3時過ぎ時点の主催者発表で3万人以上が集まった。なお、この日の国会議事堂前集会は、2時から始まった「総がかり」集会、3時30分近くに始まった「未来のための公共」などによる集会、夕方6時からのキャンドルデモ、音楽バンド中心の集会と、4つ集会があった。

森友学園における決裁文書の改ざんが明らかになって以降、この日が最大の集会になった。このほか大阪、仙台、札幌など全国各地で反政府デモが行われた。政党や議員以外の「永田町の外にいる人々」が動き始めている。

嘘つき内閣 今すぐ辞めろ!

◆デモで政権を倒す重要性

森友学園疑惑、加計学園疑惑、自衛隊日報隠蔽、公文書改ざん……。国会は、嘘と隠蔽と開き直りで混乱状態にある。内閣が二つも三つ倒れておかしくない。しかし、かつての派閥の力学やバランスも効かない自民党や公明党が圧倒的多数を占める国会だから、まだ安倍首相は権力の座に居座っていられる。
 
さすがに自民党内でも反安倍やポスト安倍に向けての動きも伝えられている。それらの動きが功を奏してましな政権ができたとしても、これまでの繰り返しであり、日本は変わらない。

そうではなくて、今必要なのは、現在の安倍内閣を一刻も早く終わらせて抜本的な政権交代を実現させ、安倍政権によって奪われた立憲主義・民主主義・市民的自由を奪い返すことだからだ。したがって次の政権交代は、2009年に成立した民主党政権のようなものではなく、自由民権運動以来いまだ実現できない社会を到来させる実質的な市民革命だ。

この見地に立てば、野党共闘だけでは本格政権交代は不可能だろう。野党共闘は必要だが、市民(自覚を持った永田町外の住人)が主導し、自ら政策を打ち出して、立憲野党がその政策と市民を支持する。市民が野党を支持するのではなく逆転させるのだ。その体制が選挙に活かせれば可能性が高まっていく。

そのような情勢を創造するための第一ステップは、市民による街頭行動だ。これが盛り上がらないと、野党も含めた永田町の住人が主導権を持つことになろう。

森友解明&9条改憲NO!

安倍を監獄へ

◆「もうウンザリ」が参加者のキーワード

そんなわけで、デモの現場の雰囲気をしっかり見ておきたいと、集会開始から約10分経った午後2時10分ごろ、私は現場に赴いた。国会議員や有識者のスピーチを遠く聞きながら、人の波をかきわけて周辺を歩き回った。まともに歩けない状態だった。

「安倍を監獄へ」
「モリカケ許さない」
「安倍内閣退陣を」
「安倍ヤメロ」
「嘘つき」
「全部明らかにしてください」
「安倍政権 全員まとめて辞めろ」

この国の膿

さまざまなプラカードが立ち並んでいた。安倍首相の顔写真の上に「この国の膿」としてあるものも。友達どおして参加したひとたちが「もう限界だね」「こんなバカな首相」などと口々に言っているのが、大音量のスピーチの合間に聞こえてくる。

マイクをもった発言者が「一言でいうと、安倍政治を許さない、です」と言ったが、参加者たちの雰囲気は「許さない」というより「うんざり」という表現が合っていた。実際に「うんざり」という言葉を発していた人が何人もいる。

その怒りに輪をかけたのが警察の過剰警備である。石をなげるでもなく棍棒を振り回すわけでもないおとなしい集会にもかかわらず、歩道や車道にバリケード鉄柵を築き、青信号でも法的根拠も示さずに横断歩道を通行させない。

息苦しいほど歩道に詰め込まれ、怒りは募るばかり。何か所でも「道を開けろ」「あたたたちが通行をじゃましている」と警察官に詰め寄る姿が見られた。

昼の集会終了直後の警察バリケード

集会終了後もひとり座り込み

そんなとき、集会の第一部が終わり、若者中心の第二部が始まった直後に「前へ、前へ、前へ、前へ……」という掛け声とともに、人々は車道にあふれ出て、国会周辺が自由な空気に一変したのである。

デモ拡大の恐ろしさをわかっているからこそ権力は過剰に規制するのだ。逆にいえば、市民がやるべきは、集会・デモ・駅頭の街宣など、屋外でのアピール活動で政権交代への社会の空気を醸成することではないだろうか。

そのうえで、遅くとも夏までには市民が重要政策を発表して安倍政権後の未来像を提案。それにもとづいて独自の無所属候補を擁立し、既成野党と協力していく。実は大きなチャンスが訪れているのだ。


◎[参考動画]4・14国会前大行動(UPLAN 三輪祐児さん公開)【動画13分過ぎに鉄柵決壊】

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

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森友学園問題で公文書の改ざんが発覚してから、全国各地で安倍政権総辞職を求めるデモなどの該当活動が活発化し、フェイスブックやツイッターなどのSNSでも、政権を批判する動きが強まっている。

当面は、明日4月14日(土)午後2時から国会議事堂正門前で開催される安倍退陣を求める大集会(戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会など主催)が、改ざん発覚後最大の集会になりそうだ。

◆愚連隊を取り締まる目的だった東京都迷惑防止条例がいまや市民を取り締まる

このような、権力を批判する行為や労働運動・消費者運動・住民運動の動きを封じよという条例が改悪された。3月29日の都議会本会議で採択された東京都迷惑防止条例である。施行は7月1日からだ。

東京都迷惑防止条例は1962年に制定され、繁華街で迷惑行為を重ねる愚連隊などを取り締まる目的だった。それが何度か改正され、たとえば盗撮行為や痴漢行為も規制する内容が現在の条例に盛り込まれている。

「迷惑防止」の規制を強化するのだから「改正」なのではないかと勘違いしている人もいるが、この新迷惑防止条例は、都民・市民にとって迷惑で危険な存在であり、警戒するとともに一日も早く廃止しなければならない。

「改正」ポイントは二つ。「盗撮」と「つきまとい」の防止をさらに強化するというものだ。このような行為を「特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」で行うことを取り締まる。

改正でなく改悪だと訴える人々(2018年3月22日)

◆デモ、街頭演説、ビラまき、SNS発信もすべて規制対象になり得る

いま森友学園問題なので、連日国会周辺で抗議デモが続けられている。集まった人たちは、安倍晋三首相、昭恵夫人、佐川宣寿前国税庁長官、麻生太郎財務大臣など、具体的人物名を挙げて厳しく批判している。SNSも同じような状況だ。

そればかりではない。労働運動で企業責任者を名指しして批判したり、消費者運動がビラやSNSで特定企業を批判する表現も「特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」と判定されたら処罰されるのだ。その判断は100パーセント警察にゆだねられている。

第二次安倍政権が成立して以降、秘密保護法、盗聴法拡大、共謀罪などの強行成立と同じ威力を持つのが今回の条例改悪だ。悪政を追及してただそうと批判する言論表現活動を取り締まる目的が、これらの法律や条例に共通している。

「つきまとい」と「盗撮」行為を『悪意の感情を充足する目的』で取り締まる。悪意の感情などは内面の問題であるのに、警察の恣意的判断にゆだねられてしまう。森友・加計問題で安倍首相らを非難することも『悪意の感情を従属する目的』とされかねない。だから警察の判断で、国会デモに参加する人たちをいつでも逮捕できる可能性があるのだ。

もう一つのポイント、「つきまとい」(みだりにうろつく)ことに関してはどうか。「みだりにうろつく」行為が取り締まられるというのは、記者の張り込み取材が規制対象にできる。森友問題で財務省官僚や加計学園関係者の自宅周辺を張り込むとか、前国税庁長官の佐川宣寿氏の自宅や滞在先をうろつくことも規制される可能性が十分にある。

取材活動はもちろん、労働組合や市民運動が団交や批判の対象者がいる場所に出入りし「うろつく」ことは当然あるだろう。

迷惑防止条例はナチスの手口(2018年3月22日)

◆うかつにスマホで撮影できない

さらに「盗撮」に関する改定で重大な問題もある。都議会の消防・警察委員会で採決された3月22日の夕方、都議会前で抗議行動が行われたのだが、そこで話した渥美昌純氏が気になることを言っていた。

渥美氏は、長年にわたって情報開示請求で得た資料をもとに都政にからむ様々な問題点を指摘してきた人物であり、”都政ウォッチャー”と呼んでいいだろう。

「私は、現行(改定前)条例の盗撮行為の禁止に反対ではありません。現行では、公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室、公共の場、もしくは公共の乗り物、などでカメラを向けたり設置したりすることに「盗撮行為」は限定しているからです。

ところが、今回の改正の問題は二つある。ひとつは取締の対象となる場に「住居」が加えられたこと。住居など私的な空間の最たるところなのに、警察から問題視される恐れがある。 

自宅からネット配信する皆さん、スーツを着て配信しているならともかく、Tシャツやブラウスを着ていたらどうなるか。意図しなくても、ブラのヒモが少し見えていたら、それだけで警察に問題視されかねません。

もうひとつは、公共空間の限定なしの拡大です。公共の場所、公共の乗り物、学校、会社事務室、タクシーその他不特定の者が利用し出入りする場所又は乗り物。不特定多数の者が利用し出入りするのは、道路も公園も該当します。

道路で桜を撮影するためにスマホを向けた、その先に薄着の人がいた。『はい、都条例による取締の対象です』となる危険性もあります」

うかつにスマホで写真や動画撮影もできない。それにしても、このように重大な懸念があるにもかかわらず、たった1時間の審議で委員会採決をして本会議でスピード成立させてしまうとは、都議会議員の存在価値はあるのか。

反対したのは日本共産党の全18名、生活者ネットワーク・山内れい子議員、日本維新の会・やながせ裕文議員、「民進・立憲民主」会派に所属する立憲民主党の西沢けいた議員だの合計21名だった。 共謀罪以上に歯止めがない危険な条例に賛成した全議員は落選運動の対象にすべきだ。

条例が適用されるのは都民だけではない。東京で行わわれるデモには全国各地から人が集まることが多いから、今後濫用されないように監視するとともに、一日も早く廃止もしくは本物の改正が必要だ。

治安維持法東京都版(2018年3月28日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他

3月25日、東京品川区内で「戦争と治安管理に反対するシンポジウム」が開催された。主催は同シンポジウム実行委員会。森友学園事件などで末期的症状を示す安倍自民党政権下で、「治安管理」体制の強化が進んでいる。今回開催されたシンポジウムの内容と参加者に配布された資料を見ると、いま日本で進行しつつある「治安管理」の全体像がうかがえる。

◆一般人を管理・監視することに異様な情熱

「治安管理」とは、平和で安定した社会をつくるために治安をよくすることではなく、権力者にとって都合よく一般人を監視・管理することだ。

当日のシンポジウムは3つの分科会にわかれていた。

・第1分科会「やめろ! 改憲・戦争・大軍拡」提起者 清水昌彦・日本体育大学教授(憲法)
・第2分科会「ぶっとばせ! テロ等共謀罪・緊急事態条項」提起者 永島靖久弁護士(大阪弁護士会)
・第3分科会「差別・貧困―監視・排除型社会を超えて」提起者 池原毅和氏(医療観察法をなくす会、東京第二弁護士会)

この3つだけでも、人々を監視・管理し、自由を奪うことに異様な情熱を示す権力には、あきれ返るばかりだ。緊急事態条項で国民の基本的な人権を大幅に制限し、事実上国会機能を停止させる自民党憲法案はその象徴だ。

とくに第二次安倍政権成立後は、13年12月に成立した特定秘密保護法、15年9月に成立したいわゆる安保法制、16年5月成立の盗聴法拡大と司法取引導入、17年6月成立の「共謀罪」など、市民を弾圧する法律が次々と成立施行されてきた。

そして、この記事を書いている3月26日時点では3月29日の都議会本会議で成立すると見られている東京都迷惑防止条例「改正」がある。「悪意の感情をもって」メールやSNSを発信すると、警察に取り締まられる内容だ。またスマホで撮影しても「悪意ある」とみなされたらいつでも取り締まられる。

名誉棄損は被害者が告訴して初めて捜査が始まる。ところが今回の都条例改定では、被害者が訴えなくても、悪意の感情をもった名誉棄損だと警察が判断すれば逮捕できる。国会周辺で安倍首相を批判する行動も、その対象にされかねない。

なにしろ「悪意の感情」という人間の内面を警察が恣意的に判断できるシロモノだ。国の法律と絡んで、日本の監獄国家が進みそうだ。こんな条例改定案を議会に出すこと事態がまともな神経ではない。

◆人を支配することに快感を得る変態たち

分科会終了後は全体集会となったが、主催者あいさつや数人の問題提起があった後、ジャーナリストの斎藤貴男氏が基調講演を行った。今の治安管理社会を分かりやすく解説しているので、その一部を抜粋して紹介したい。

「森友学園問題で公文書の改ざんが問題化しているが、あらためジョージ・オーウェルの『1984年』を思い出した。ディストピア(ユートピア=理想郷の反対)小説だが、絶え間ない戦争を繰り返し、国内的には独裁を確立している国を舞台としている。主人公は、その独裁国家の真理省で働いており、仕事は過去の新聞を書き換える作業だ。偉大なる指導者ビッグ・ブラザーの過去の発言と現在が違っている場合、過去の新聞での発言を変えてしまう。現在の日本では、森友学園に関する公文書を書き換えているのだから、タチが悪いといえるだろう。
『1984年』では、国民がテレスクリーンで監視され、それは双方向になっている。現在ならスマホと同じ。国民は番号で管理されており、マイナンバー(共通番号)で管理されている現代日本にも通じる。マイナンバーは、奴隷の刻印のようなものだ。
 役所は私たちを番号でとらえている。いったいなぜここまでして国民を管理しなければならないのか。このような監視社会を進める人たちを端的に言えば、人を支配することにエクスタシーを感じる変態である。そう考えるのが一番分かりやすい。
 事細かに人々を管理監視するのは、戦時体制を確立するために必要だからだ。戦争になればほとんどの人は被害を受けるだけでメリットはないが、社会の上層にいる一部の人たちは金儲けができる。嫌がる人を無理やり動かして嫌がるのを楽しむわけだ。
 安倍首相は岸信介の孫で、おじいちゃんが成し遂げられなかった大日本帝国を復活させようとしている、との見方がある。しかし、それは“アメリカの手のひらの上での大日本帝国ごっこ”と言わざるを得ない。なぜなら、アメリカが係わる戦争に日本国民を差し出し、アメリカに代わってアメリカの敵と闘うように仕向けるようにしているからである。
 そのような考えなので、大日本帝国復活と対米従属は矛盾しない。第二次世界大戦後の歴史を見ても、日本は朝鮮戦争では掃海艇を派遣し、実際にひとり戦死している。そのときの責任者が『国際社会の名誉ある一員としての地位を示せた』という旨を述べている。自民党の上位を占める議員たちはその当時の人々の孫にあたるわけで、アメリカ様のおかげで現在の高い地位を得ることができているのだ」(斎藤貴男氏)

基調講演を行うジャーナリストの斎藤貴男氏(2018年3月25日)

◆アメリカ様のためにも日本自身のためにも戦争をしたい

「ただし、日本自身も戦争をしたいと考えている。少子高齢化の進行で国内マーケットが縮小することを財界や支配層は心配している。となれば外需に依存するしかない。その場合、単に製品を輸出するだけでなく、インフラシステムの輸出がカギとなる。たとえば新興国に対し、計画段階からコンサルも含めて係る。仮に首都を建設するなら、その設計・施工・運営と初期か段階から係っていくのである。その中核の一つに原発輸出もある。
 インフラシステムの輸出は第一に資源の確保。ビジネスマンが出ていくと危険も生じるので、第二には在外邦人の安全のために軍隊を使うという発想がでてくる。第二次安倍政権が発足して間もない2013年1月、アルジェリアの天然ガス精製プラントを武装勢力が襲撃して死者を出す事件が起きた。このときにプラント建造に参加していた日本企業の社員を含む約40人が武装勢力に人質にとられた。
 アルジェリアの事件を受けて安倍首相はプロジェクトチームを作ったが、まさに海外へのインフラシステム輸出に備えてのものだった。これは、過剰資本の捌け口としてのインフラシステム輸出であり、新たな帝国主義と言えるだろう。このようなシステムを構築するための改憲ではないのか。そして改憲に反対する勢力は邪魔になる」(斎藤貴男氏)

◆森友問題で政権が弱体化するからこそ改憲を急ぐ

「森友学園がらみの公文書改ざんで政権が揺らぎ、改憲などとても手をつけられないはずだ、という見方がある。しかし、そうとばかりは言えない。政権が長くもたないからこそ、安倍政権のうちにやらなければならないと、躍起になって改憲に向かう恐れがあるのだ。
 先日参加したシンポジウムで、元自衛隊の幹部が2003年の武力攻撃事態法の成立でとっくに日本は戦争ができる国になっていると発言した。まさにその通りで、かろうじて歯止めをかけてきたのが憲法なのである。この状況で自衛隊明記を9条に盛り込めば、本当に戦争ができる国になる。
 見逃せないのは、自民党は憲法21条を変えようとしていること。『集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保証する』の現行の条文に加えて、『前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』と付け足している。
 反体制的な言論は一切認めないということに他ならないだろう。改憲派の中には、現行憲法を“押し付け憲法”と主張する人がいるが、安倍改憲、自民改憲はアメリカに従属する憲法改正でしかない。ナショナリズムを主張する人たちが積極的に自国の属国化をめざすのは、非常にめずらしい」(斎藤貴男氏)

◆マスコミがあぶない。

「今後は、マスコミがどうなるか心配である。この間、政権の意のままの報道が増えてきた。いま森友問題で息を吹き返したかのように見えるがはたしてそうだろうか。ここ何日かで、放送法4条の改定問題が浮上してきた。放送法4条とは、放送局の政治的中立を示したもの(「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」が盛り込まれている)。
 一昨年、TBSの岸井成格氏へのバッシングが強くなり番組のレギュラーコメンテーターから降板する事件があった(『NEWS23』のアンカー降板)。そのときに市民団体と称する人たちが、岸井氏が放送法4条の政治的中立に違反していると攻撃していた。その4条の政治的中立をなくすというのだ。もしそうなったら、おそらくすべてのテレビ局がネトウヨチャンネルになるだろう。政権を厳しくする局などないのではないか。マスコミはナメられているのだ。
 もうひとつ気にかかるのは、新聞と消費税増税。2019年から消費税が増税されるが、2015年12月に食料品とともに新聞が軽減税率の対象に指定された。ずっと新聞業界が働きかけをして自民党側が了承したのである。(新聞に軽減税率を適用する決定がされる前に、新聞社幹部らが安倍首相と会食を重ねており、そうした場で“おねだり”したと見られてもしかたがない)。これで政権を批判できるのだろうか」(斎藤貴男氏)

まったく斎藤氏が講演で指摘したとおりの情けない日本の姿だ。安倍政権、自民党政権がつづけば日本の監獄国家はさらに深刻化するのは間違いない。安倍政権下で日本の民主主義は相当程度破壊されているのだから、安倍首相が退陣しただけではとても回復はできない。

政権交代を早期に実現する以外に道はないのである。今、さまざまな人やグループが政権交代のために動き出している。今後は、そのような積極的な動きも伝えていきたいと思う。

「戦争と治安管理に反対するシンポジウム」の様子(2018年3月25日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

『紙の爆弾』4月号 自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

「最低の下衆野郎」佐川国税庁長官に怒り

◆麻生発言に対抗 納税者一揆第二弾!

3月3日、国税庁前で“納税者一揆”第二弾「悪代官 安倍・麻生・佐川を追放しよう!」と題した国税庁包囲行動とデモが行われ、約1300人が参加した。主催は「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」。同団体の呼びかけをチラシやフェイスブックなどで知った人々が集まった。

安倍晋三首相を熱烈に支持していた人物が運営する学校法人に対し、国有地を破格の価格で売りとばしたのが森友学園事件の本質である。ところが当時責任者だった財務省理財局長の佐川宣寿氏が、破棄したので記録はない、などと国会で虚偽答弁。その人物が徴税機関のトップである国税庁長官に出世したのだ。

これでは、納税者はたまらない。「税金払う気がしない」とあちこちから非難が巻き起こっている。そこで今回の主催と同じ「~市民の会」は2月16日に第1回の国税庁包囲行動を実施した。

これに対し麻生太郎財務大臣が難癖を付けたことも、今回の第二弾につながった。第1回国税庁包囲行動の3日後2月19日、衆議院予算委員会で立憲民主党の山崎誠衆議院議員は「多くの国民による抗議行動を財務大臣としてどう受け取ったか」と追及した。それに対する麻生大臣の答弁はこうだ。

「御党の指導で街宣車が財務省の前でやっておられたという事実は知っている」

また立憲民主党の川内博史衆議院議員は「納税者の抗議行動だ。立憲民主党は参加はしたが主導はしていない」と反論した。

そして麻生大臣は「街宣車まで持っている市民団体は珍しい。少々普通じゃないなとは思った」と発言したのである。

SNSやチラシなどを見て参加した納税者らに対し、「少々普通じゃない」とみなし、立憲民主党が指導したかのような事実でないことを平然と述べたのだ。ちなみに、デモで街宣車が戦闘を走り、道行く人々にアピールするのは普通のことである。

「ウソ、ごまかし、でたらめ ふざけた国会答弁許さない」

「公文書を改ざんする役人って、控えめに言っても〈外道〉だと思う」

◆財務省 森友文書改ざん

午後1時40分、国税庁前には続々と人が集まり、歩道に入りきれず、大通りの反対側にも人があふれた。司会者の女性がまずマイクをとった。

「私は、一般人でまさかこういうところで司会をするとは思わなかった。麻生太郎大臣は、(森友事件がらみで批判する)国民は普通の国民じゃないというのでしょうか。ふざけるな、と言いたい。普通じゃない安倍内閣は総辞職すべき」

前日の3月2日、交渉当時の財務省文書と国会議員らに開示した文書に違いがあり「文書書き換えの疑い」と朝日新聞が報道し、納税者らの怒りに火をつけた。

交渉時の文書とは、2015年から16年にかけて財務省近畿財務局の管財部門が局内の決済を受けるために作成した文書。2枚目以降に交渉経緯や取引内容などが記載されている。

「籠池夫妻の不当勾留 即ヤメロ!!!」と長期拘留批判も

ここには、当時のやりとりを時系列で書いたものや、森友学園の要請にどう対応したかなどが書かれていたのに、国会議員らへの開示文書では、かなりの部分が削除されている。

そして「特例的な内容となる」「本件の特殊性」「学園との提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」などの文言が抜けているという。以上が、記事の概要だ。

財務省は、交渉において鑑定評価、価格提示は行なっていなと主張していた。「学園との提案に応じて鑑定評価を行い」が交渉時の文書に残っているということは、国会答弁は明らかな虚偽になる。

国税庁前には約1300人が集結。場所がなく道路の両側にも集まった

◆生活にあえぐ納税者
 
短時間の包囲行動だったが、何人かがマイクをとって発言した。都内在住の50代の女性が、こう訴えた。

「離婚して障碍者の息子を育て、認知症を患い始めた母をひきとって生活しています。私のアルバイトでの生活です。私が仕事で外出している間、お金がないので母を預けることもできません。

息子が作業所に行き続けることができますように、母が無事でいますように、50代半ばになった私が健康で病気をせずに何とか働きつづけられますように、と祈るしかないのです。薄氷を踏む思いで生活している私たちのような人間がいることを知ってほしい。

頭のいいお役人にはらわたが煮えくり返ります」

貧困や家庭の事情などで十分に食事できない子供たちのための「子ども食堂」運営に携わる女性も登壇した。

ひとり親家庭の子が多く、親の病気で生活保護を受給することになり、児童養護施設に入所させられ親子離れ離れになった例について話をした。また、貧困で休みに家族で外出することもできず、本来なら体験すべきことをできない「体験の不足」も子供の成長に影を投げかけている、と言う。

生活苦にあえぐ人が増えている中で、5年前に切り下げた生活保護基準をさらに下げようという動きがある。これで貧困がさらに拡大することになるだろう。その一方で、安倍首相は時にメディア幹部とともにグルメ三昧。そしてお友達には国民の財産を超低価格で売渡し、税金も投入する。

まさに異常事態が日常になってしまった。
国税庁前での集会が終わると、参加者はデモ行進を始めた。

「安倍のお友達に税金を横流しにするな!」
「ふざけた国会答弁は許さない!」
「佐川を証人喚問せよ!」
「うそつき佐川を罷免しろ!」
「昭恵夫人を喚問だ!」

納税者の怒りの声が銀座の街にとどろいた。文書改ざんとなれば、担当大臣の辞任レベルではなく、内閣総辞職に値する事態だ。

ゲバラと共に「国民なめんな! 納税者一揆」

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

7日(水)発売『紙の爆弾』4月号!自民党総裁選に“波乱”の兆し/前川喜平前文科次官が今治市で発した「警告」/創価学会・本部人事に表れた内部対立他

10日(土)発売『NO NUKES voice』15号 総力特集〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

2017年は様々な事件があったが、私としては「森友学園・加計事件」と「共謀罪の成立・施行」が二大事件だと考えている。

今後も疑獄事件の責任追及と共謀罪廃止へ向けての動きを追っていきたいが、いつ、どのような形で“納税者一揆”が起きるのかが 2018年における私の関心事だ。森友事件に関連してである。

森友事件は、総理大臣夫人の安倍昭恵氏と関わりのあった学校法人に対し、合理的な理由と説明がないままに国有地を8億円以上値引きして払い下げた重大事件である。

しかも近畿財務局の役人と森友学園との価格交渉を示す録音もメディアに公開されており、また値引きの根拠であったはずの「ゴミ」もほとんどなかったことが判明しているのだ。もはや、政府側(財務省側)は、申し開きのできない事態に追い込まれている。

当時財務省理財局長だった佐川宣寿・現国税庁長官が国会で、あらかじめ具体的な金額を出して森友学園と交渉したことはない、と虚偽の答弁をした。また、関連文書も破棄するなど証拠隠しにも関与していると批判が巻き起こっている。

こうした中で、森友学園がらみで市民による刑事告発が多発しているが、佐川国税庁長官を対象とした告発をいくつか挙げてみる。
 
まず、「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」八木啓代代表らが17年5月15日、佐川氏を含む官僚7名を公文書等毀損罪で刑事告発した。1年も経たず、また事案が進行中であるにもかかわらず文書を破棄したことを問題としている。

次いで10月16日、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の醍醐聡東大名誉教授らが、佐川氏を証拠隠滅の疑いで東京地検に告発した。告発内容としては、右の「健全な法治国家のために~」の告発と重なる。

どちらも告発は受理された。

安倍ヤメロ(2017年12月14日)

◆国税庁前で抗議行動、さらなる告発も

森友事件に関して国会で虚偽答弁した人物が、税金を取り扱う国家機関である国税庁のトップに据わった。となれば、刑事告発も起こるだろうし、罷免運動も起きるのは当然だ。

12月14日には、市民団体「森友・加計告発プロジェクト」の呼びかけで、国税庁前で抗議行動があり、寒風吹きすさぶ中、約50人の市民が集まった。

「安倍は辞めろ!」
「佐川も出てこい! 国会で嘘ばかりの佐川!」
とシュプレヒコールが飛び交っていた。

佐川出てこい(2017年12月14日)

都内の自営業者も参加し、毎年年末や確定申告の時期になると大変な思いをしていることを述べ、国税庁の建物に向かい「あなたたちに税金を集める資格ないでしょ!」と怒りをぶちまけた。生活感と説得力のある発言だった。

愛媛県今治市で安倍首相の“腹心の友”加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園獣医学部認可について不正を指摘し続けている黒川敦彦氏も上京し、通行人や国税庁職員に向けて訴えた。

「厚生労働省の調査で約6割の人が生活が苦しいと答えている。普通の人がどれだけ大変かわかっているのだろうか。今本当に困っている人が多い。お金がないと人は死ぬんです。
 佐川国税庁長官は、国有地の8億円値引きについて1回も説明していない。8億円もあれば、何人の国民が救えるのか。
 加計問題や森友問題のようなことを放置していけば、普通の人の生活はどんどん苦しくなっていく」

まったく黒川氏が言うとおりだ。抗議行動をよびかけた「森友・加計後発プロジェクト」は、すでに国家公務員法違反の疑いで安倍昭恵夫人、公職選挙法違反の疑いで安倍晋三首相らを刑事告発しているが、佐川国税庁長官を刑事告発することを検討中である。

黒川氏(2017年12月14日)

◆税務署窓口で「領収書破棄しました」一言運動

納税者からカネ(税金)を徴収する機関のトップが国有財産のたたき売りに関与し、金額をめぐる事前交渉はなかったなどと虚偽答弁をし、関連文書も破棄した。

これでは、税金をまともに払う気など起きない。2月から3月にかけては確定申告の時期だが、とりわけ納税者意識を持たざるをえない自営業者やフリーランスは税に関して不公平感を持つのは当然だ。

書類や領収証の不備などを確定申告の時期に税務署から指摘されることもある。だが、そのときに納税者には一言物申す権利がある。

「領収証は破棄しました」
「契約書も破棄しました」
「パソコンのデータ消滅しました」

日本中の税務署で、このような言葉が飛び交ってもおかしくない。何か職員に言われたら「税金をつかさどる機関のトップたる佐川宣寿・国税庁長官を見習っているだけです」と答えるしかないだろう。むしろ、納税者は直接窓口で抗議するべきではないだろうか。

納税者の強い抗議がないから、安倍首相のお友達に血税が簡単に遣われてしまうのだ。

黒税庁長官(2017年12月14日)

食い逃げ(2017年12月14日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)ほか。林克明twitter 

鹿砦社新書刊行開始!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』(総理大臣研究会編)

本を持つ二本松氏

駐車違反をめぐる警官とのささいな口論から、男性は公務執行妨害で逮捕され19日間の勾留。妻は真実を明らかにするために目撃者探しに奔走する――。突然、「犯罪者」にでっち上げられた夫と無念を晴らそうとする妻が、国家賠償請求訴訟で真実を明らかにするまでの9年1か月のドキュメント。それが、拙著『不当逮捕―築地警察交通取締りの罠』(同時代社)である。

同書が発売開始になったのを機に、当事者である二本松進氏を迎えての講演会を12月16日14時から、東京都豊島区の雑司が谷地域文化創造館第2会議室で開催する。

共謀罪が施行され、警察権限が強大化されるなかで、一般市民が警察相手の国賠訴訟で勝訴した稀な事件の当事者である二本松氏に語ってもらう。この事件を通して、一般市民対権力(国・地方自治体)の構図になる国賠訴訟の実態と問題点を世に問うのが講演会の目的だ。交通取締りをめぐるささいな口論で起きた事件だから、車に乗る人なら「明日は我が身」と思っていただきたい。

◆「女性警察官に暴行し公務執行妨害」という捏造ストーリー

2007年10月11日、新宿で寿司店を経営する二本松進氏は、妻の運転で築地市場に仕入に来て帰ろうとしていた。すると車の前に立っていた髙𣘺眞智子巡査が「法定禁止エリアだ」と一言発した。

ドライバーが運転席に座りエンジンをかけて出発しようとしているのに、警察官は発車をうながすどころか、妨害したのである。築地市場周辺の路上には、仕入関係の車が多数駐車されており、運転手不在で長時間駐車されているのが日常である。いちいち取締をしていたら市場が機能を果たさなくなる。

実は、「法定禁止エリアだから早く移動してください」とか「違反だから切符告知します」と具体的に警察官が取り締まろうとしてのではなく、ただ一言「法定(駐車)禁止エリアだ!」と言っただけなのだ。
 
二本松氏は交通取締だと思い、「運転手も不在で長時間放置されている何台もの車をそのままにして、運転手が座ってエンジンをかけ出発しようとしている車を取り締まるなんておかしくない!?」と口論が始まったのである。

興奮状態に陥った髙𣘺巡査は「暴行を受けています!」と緊急通報してしまった。4~5分には、何台もの警察車両に乗った警察官が現場に駆けつけ、有無を言わさず二本松氏を逮捕。築地警察署に連行して19日間勾留し、起訴猶予処分となって釈放された。

起訴猶予とは、有罪だが起訴して裁判にかける必要はないという意味であり、前科はつかないが「前歴」はつく。

◆嘘のオンパレードのポリス・ストーリー

理不尽な警察官の対応に抗議して口論になっただけで、暴行も公務執行妨害も何も起きていない。しかし築地警察が急遽作成した供述調書はじめとする各種の文書では、二本松氏が車に乗って逃亡を図った、女性警官の胸を7~8回突いて暴行した、ドアで髙𣘺巡査の手を挟み負傷させたなど、完全に虚偽の内容だった。

現行犯人逮捕手続書などを見ると、二本松氏は暴行しただけでなく「あの程度の暴行で大騒ぎして警察は横暴だ! 逮捕できるならやってみろ! ふざけんじゃねえ!」と怒号したことになっている。まるでならず者だ

さらに、車と半開きのドアの間に入った髙𣘺巡査に対し、ドアの外側にいた二本松氏がドアを強く閉めて髙𣘺巡査の右手首を負傷させたなど警察は主張していた。しかしドアの内側に立っていたのは二本松氏だった。

釈放された二本松氏は法律の勉強に励み、2年後の2009年10月29日に東京都(警視庁)と国(検察庁・裁判所)を相手取って彼は国賠訴訟を起こした。2016年3月18日、東京地裁で二本松氏に240万円支払う判決が言い渡され勝訴。原告被告双方が控訴し、事件から9年1か月、2016年11月1日に東京高等裁判所で勝訴判決。この判決は確定している。

◆トカゲの尻尾切判決で警察・検察・裁判所の冤罪づくりはお咎めなし

判決で驚くのは、現場警察官の暴行に関する主張・証言を一切認めなかったこと。つまり最大の焦点であった暴行の有無に関しては、二本松氏側の完勝だったのだ。

しかし、現場警察官だけでは冤罪づくりは不可能であり、築地警察署捜査員、検察官、裁判官の存在がなければあり得ない。だから二本松氏は「トカゲの尻尾切判決」と言う。もっとも事実認定に於いて警察官の主張を全面的に否定した判決には驚いた、というのが筆者の率直な感想である。

当日の講演では、事件現場で何が起きたか詳細に語ってもらい、裁判になってからのポイントに言及してもらう。加えて、警察署、検察、裁判所の問題にも切り込み、国家賠償法そのものの不備や、国賠訴訟で権力側代理人になる「指定代理人」という重大問題についても問題提起する予定である。

■講演会「不当逮捕~築地警察交通取締りの罠」
講師:二本松進氏(寿司店経営者)
日時:12月16日(土)13:30開場、14:00開演、16:45終了
場所:雑司が谷地域文化創造館
京都豊島区雑司が谷3-1-7千登世橋教育文化センター内
資料代:500円
交通:「副都心線 雑司が谷駅」2番出口直結「JR山手線 目白駅」より徒歩10分

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)ほか。林克明twitter 

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