このたび小社では矢谷暢一郎・著『ヤタニ・ケース アメリカに渡ったヴェトナム反戦活動家』を上梓いたしました。

矢谷さんは、尊敬する大学の先輩ですが、学生運動華やかりし時代のリーダーでした。その後、仲間の死、運動の解体、闘病を経、再起を期して夫婦で渡米 ── 70年代も終わりに近づいていました。

しかし、ある日突然に、オランダでの学会からの帰途、ケネディ空港で突然逮捕されます。事件から40年近く経ち、その顛末と総括とは?

矢谷さんは、1年がかりで執筆に取り掛かられました。気持ち溢れ過ぎ、この勢いが筆致に表れています。

ぜひともご一読いただき、忌憚のないご批評、ご意見などお寄せいただければ幸いです。

(松岡利康)

▼著者紹介 矢谷暢一郎(やたに・ちょういちろう)1946年生まれ。島根県隠岐の島出身。1960年代後半、同志社大学在学中、同大学友会委員長、京都府学連委員長としてヴェトナム反戦運動を指揮。1年半の病気療養などのため同大中退。77年渡米、ユタ州立大学で学士号、オレゴン州立大学で修士号、ニューヨーク州立大学で博士号を取得。85年以降、ニューヨーク州立大学等で教鞭を執る。86年、オランダでの学会の帰途、ケネディ空港で突然逮捕、44日間拘留、「ブラック・リスト抹消訴訟」として米国を訴え、いわゆる「ヤタニ・ケース」として全米を人権・反差別の嵐に巻き込んだ。

11月20日発売

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000736
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315312/

筆者は10月16日、日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区、いわゆる呉製鉄所が9月を以て廃止となったことを受け、呉市民の皆様に取材をしました。

今回の取材では様々な世代の方に製鉄所廃止への受け止めや思いを自由に語っていただくことを主眼としています。筆者なりの考え方もありますが、基本的に聞き手に徹することにしています。

呉製鉄所の跡地利用問題ではいろいろな政治家がいろいろな提案をされています。病院船の基地、エネルギー基地、防災拠点……。ただ、やはり、一番大事なのは市民の思いではないのか?そういう考えから、取材に向かいました。

◆製鉄所の跡地利用、現時点では具体的に進む条件なく

写真左が谷本さん、右が筆者

最初に取材に伺ったのは谷本誠一・元市議です。今春の呉市議選では惜敗しましたが現在もあきらめずに政治活動を続けておられます。(写真左が谷本さん、右が筆者)

谷本元市議は、「多くの政治家が提案しているような案の実現は難しいだろう。解体後に更地にしたところで国が買い取ってくれるような話でないと、日本製鉄も乗りづらいのではないか?中央政府の官僚が本気で動くような案がでない会議理、実現は難しいのではないか?」と指摘。

「可能性があるとすれば、市の中心部にある自衛隊が製鉄所の跡地に移動し、自衛隊の跡地を住宅などにする程度だろうが、自衛隊側にメリットがなければ実現は難しい」との見立てでした。

呉市中心部の20代の市民は、「跡地利用はなかなか結論を出すのが難しいのでは?議論を盛り上げるにしても、解体に10年以上あるので、盛り上げのタイミングが難しい。」と指摘。

「跡地利用であるとすれば宇宙産業のようなものだろう。しかし、当面、産業振興策で跡地を当てにするようなやり方は難しいだろう。10年後には自分も年を取っている。待っていられない。産業振興については例えば、地元出身の若い人が、小規模でもいいからネットワークを作り、それを活かした起業を地元に帰ってするとか、そういうことの積み重ねが良いのではないのか?」と、跡地利用については、産業振興への過度の期待を戒めるご意見でした。

いずれにせよ、呉製鉄所跡地を産業振興に直ちに結びつけるような条件はないと感じました。

呉市史を手に筆者に説明される藤川清明さん(右)

◆日本・広島の野球興隆の地・旧呉工廠

呉駅前で印鑑会社を経営されている藤川清明さんは「製鉄所の廃止はショックだし、残念、一方で感慨深い」とのことです。

藤川さんは祖父の住田喜作さんが弟とともに製鉄所の前身の呉工廠水雷部で魚雷製造に携わっておられました。

「日清戦争中の1895年から第二次世界大戦直前の1940年の45年間、職工として勤め上げ、その間、仕事を頑張って海軍から東京での研修、さらには英国への留学もさせてもらった」とのことです。

旧海軍呉工廠は、大まかに言って造船を行う部門と、大砲や魚雷など兵器を作る部門(その中には鉄をつくる部門もあった)があり、喜作さんは兵器をつくる部門で仕事をされ、その場所は空襲で焼けた後、戦後には製鉄所になったからです。

また、戦前の呉工廠ではクラブ活動が盛んだったとのことです。野球部も工廠の各部門に5つもあったそうです。喜作さんが実は、工場内で野球を普及する中心だったとのことです。そして、喜作さんは従業員の子どもさんの間にも少年野球を普及させたとのことです。

タイガースの「代打ワシ」で有名な藤村冨美男。ミスターホークスの名投手・鶴岡一人。また、ジャイアンツで活躍し、引退後は、アンチ読売に燃えてカープやスワローズ、ライオンズの基礎を作った名遊撃手・広岡達朗らを呉は輩出しています。

喜作さんのような存在は、あまり表には出てこなかった歴史ですが、呉市史にそうした喜作さんの活躍が出ているそうです。

◆呉工廠~空襲~製鉄所を知りつくす佐藤康則さん

筆者ら広島瀬戸内新聞取材班にパワポで講義される佐藤康則さん

そして、呉工廠の学徒動員の生存者である佐藤康則さんにもお話を伺うことができました。(以下、同姓の筆者自身との混同を避けるため、康則さんと表記します。)

康則さんに造船所や製鉄所を見下ろすルートでご説明をいただいた後、ご自宅でパワーポイントによるお話を伺いました。

康則さんは、戦前からご家族で呉工廠を見下ろす場所に住んでおられました。呉第二中学校時代に動員され、3年生の時、1945年6月22日の空襲を体験したそうです。

1945年6月22日、海軍呉工廠に米軍のB29が「最初は蚊のような感じ」で現れ(小さな機影とブーンという音)たが、それがだんだん、「エンジンを4つ持った大型のB29」であることがわかったと康則さんは振り返ります。

B29は写真の赤の点線で囲んだ場所をピンポイントで攻撃

B29は右の写真の赤の点線で囲んだ場所をピンポイントで攻撃。このため、工場近くの康則さんの自宅も焼け残ったそうです。

康則さんは「大砲などを作っている部署は破壊しつつ、造船を行う部署は米軍が戦後に使うつもりだったのでは?」と推測しています。

康則さんは防空壕に避難して助かりました。小1時間続いた空襲が終わった後、外へ出てみると、女子挺身隊員が避難していた防空壕が水没してしまい、多数の隊員が溺れてしまいました。教官の指示で、ダメだろうと思いつつも女子挺身隊員らを引き上げて人工呼吸をしたが、もちろん、ほとんど助からなかったそうです。そして遺体は、トラックからはみ出て足が垂れ下がっていたのが印象に残ったそうです。

一方、そのころ、康則さんのお父さんはフィリピンの第103海軍工作所に赴任後、行方不明になりました。

フィリピンを攻め落とした日本軍は米軍基地をそのまま接収して、海軍工作所をつくりました。しかし、1944年12月に米軍の反攻により、逃避を余儀なくされました。だが、康則さんのお父さんは怪我をして山岳地帯でおそらく亡くなったのだろうとのことです。康則さん自身も戦後、何度も遺骨収集に行かれたそうです。

そうしたことから康則さんは、戦後は進学を勧められるも辞退し、英国軍でバイトをしたそうです。とかく、進駐軍と言えば米軍と決めつけがちです。しかし、呉は英国軍の管轄だったのです。康則さんは中学時代に学んだ英語を活かしてイギリス軍で5年間バイトした後、第二種大型免許を取得。日新製鋼に入社し、定年まで勤め上げられました。

退職後もパソコンの職業訓練を受け、その経験を活かし、92歳の現在もご自分でパワーポイントを使ったご講演をされるなど大活躍です。

康則さんには、製鉄所のみならず、旧海軍工廠全体を山の上からご説明いただいております。

戦艦大和も造った造船部門は当時を基本的に残したまま石川島播磨重工業を経由してジャパンマリンユナイテッドの造船所になっています。

戦前・戦中に兵器やその材料の鉄を作っていた区域は6月22日の空襲で完全に破壊されました。そこに1951年、日新製鋼が誘致され、2023年9月まで稼働していました。現在、解体作業が始まっています。

そこで、康則さんはずっと働いておられたわけです。英軍バイト時代を除き、戦中・戦後を通じて同じところで働いておられたわけです。正に生き字引です。康則さん、ありがとうございました。

[左]ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の造船所。[中央]解体作業が始まった日新製鋼跡地。[右]佐藤康則さん(右)と筆者

筆者

この日は取材終了後、呉駅前でれいわ新選組・チーム広島の皆様とともに街宣を行いました。

筆者は外遊中の広島県の湯崎知事について「日本酒やカキの売り込みにフランスに行っているというが、三原産廃処分場から出ている汚染水は川や海へ流れ込む。これを放置していては意味がないのではないか?」と指摘。

また、「最近の湯崎さんは、県民の声を全く聴かないで大型事業を進めている。平川理恵教育長は、非正規の先生の待遇改善などを放置してお友達の企業やNPO、赤木かん子さんらを儲けさせてきた。」

「知事は、新たに大学を造ったが定員割れを起こしている。こんなことなら兵庫県のように既存の県立大学の学費を無料にした方が良かった」と批判。

「知事や教育長が好き放題している広島県政をあなたの手に取りもどすヒロシマ庶民革命を!」などとボルテージを上げました。

一方で「地方の庶民に最も優しい政策を打ち出しているのがれいわ新選組だ。国政では応援している。」と紹介しました。

また、パレスチナ情勢に関して「ハマスの行動は国際人道法に違反しているが根本にはイスラエルによる入植など、これまでのパレスチナへの侵略がある。まずは戦闘を止め、人道危機を回避すること、イスラエルに侵略を止めさせることだ。」

「欧米はイスラエルべったりで、イスラエルのネタニヤフ首相の暴走を加速してしまっているが、日本がこういう時に欧米にブレーキをかけないといけない。」
とボルテージを上げました。

広島瀬戸内新聞は呉製鉄所廃止を受けて呉市民の皆様に取材をさせていただいています。

090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp までご意見や情報をお寄せください。

あらゆる世代のいろいろな方のあらゆる角度からのご意見や情報をお待ちしております。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年11月号

このところテレビで大活躍している知識人らが次々とフェイスブックの広告に登場して、株式投資などを奨励している。たとえばジャーナリストの池上彰氏は、「リタイア層は現在ある資金を減らさずに運用することが最優先です」と呼びかけ、森永卓郎氏は「私は株で十分なお金を稼ぎ、父を最高の老人ホームに送り、そこで残りの人生を過ごしました」と自慢話を披露し、落合陽一氏は、「新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です」と露骨に投資を呼び掛けている。

左から池上彰氏、森永卓郎氏、落合陽一氏

これらの人々による指南は、投資を活性化するという政府の金融政策と完全に一致している。自分の老後資金は、年金よりも自己責任で確保すべきだとする新自由主義の自己責任論の反映にほかならない。

識者を通じて投資がPRされる背景には、社会福祉制度が崩壊に近づいている事情がある。投資に消極的な人は、いずれ行き場を失いかねないという恐怖を喚起して投資に走らせる目的があるようだ。これはわたしに言わせれば、悪質なセールスと同じである。

それをテレビの常連が、ジャーナリストや評論家の肩書で展開しているのである。投資に走らなくても、安心して老後が送れる社会を構築するために自らの職能を活用しようという視点は何も感じられない。日本の社会制度の中に埋没しているのだ。

投資に失敗して、露頭に迷う層が出現する状況は、カジノにのめり込んで自殺に追い込まれる層が現れる状況に類似している。

◆「中国による謀略論」の愚

日本のテレビには、良識のある識者が登場することは根本的にはありえない。福島原発の汚染水問題にしても、真面目な顔で中国の陰謀論を展開する連中が後を絶たない。政治的な意図があって、中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止したのだと。そんなことを評論家の肩書で、真面目な顔をして言っているのだ。

しかし、汚染水の問題を考える際の大前提になるのは、汚染水そのものが人体に及ぼす影響である。放射性物質が海のプランクトンを汚染し、そのプランクトンを魚が食べ、さらにそれが人間の体内に入った場合にリスクがあるのかどうかが、議論の中心にならなくてはいけないのに、汚染水の「安全」を大前提にして、中国謀略論が前面に出ているのだ。

海水をくみ上げて放射性物質を測定するのも、愚の絶頂である。海水ではなく海底の土壌を調査しなければ何の意味もない。

先日、筆者は遺伝子について詳しいある識者と話す機会があった。この人は、原発反対運動に参加しているわけではないが、物事を純粋に評価するので、わたしは客観的な意見を知りたいときに指導を仰ぐ。汚染水については、次のようなコメントを頂いた。

「危険に決まっているでしょう。テレビに出ている人たちは、本当のアホですわ。何も分かっていない。中国が日本の魚を買おうが買うまいが、そんなことは中国の自由でしょう」

◆軍事大国・米国の裏の顔

ウクライナ戦争の報道についても、慶応義塾大学の廣瀬陽子氏らを筆頭にウクライナが善でロシアが悪という構図での評論が主流になっている。しかし、海外では決してそうではない。

むしろ米国主導のNATOによる東方への勢力拡張やウクライナ政府による人権侵害を問題にしているケースが多い。少なくとも非西側メディアはその傾向が強い。

わたしはウクライナの戦地を取材するまでもなく、この戦争は米国による他国への内政干渉の結果である可能性が高いと推測している。次に示すのは、太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカへの軍事介入とクーデターを示した地図である。

太平洋戦争の後における米国によるラテンアメリカ諸国への軍事介入とクーデターの発生年を示した地図

この地図を見るだけで、戦争国家としての米国の性質が理解できる。そこから米国が主導するウクライナ戦争の性質も推測できるのである。

日本のテレビがジャーナリズムとして機能しなくなって久しいが、このところ識者たちが、テレビを通じて国策に全面的に協力する傾向は一層露骨になっている。わたしは、最近、テレビよりもユーチューブの番組の方が相対的にレベルが高いように感じる。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

本年(2023年)3月7日、英国営放送BBCのドキュメント映像『PREDATOR』 が放映されて以降、すでに故人であるジャニー喜多川の「名誉」は地に堕ちた。ギネスブックからも記載を抹消されたという。わが国もこの半年余り日々マスメディアを中心に狂騒状態にあり、ジャニーズに関する報道を見ない日はない。以下、四半世紀にわたりジャニーズ問題に関わってきて、あらためて今思うところを申し述べておきたい。

◆私たちはなぜ、ジャニー喜多川による未成年性虐待とジャニーズ事務所の横暴を追及してきたのか?

1995年、発行予定の書籍『SMAP大研究』が出版差し止めにされて以降、ジャニーズやこの創始者ジャニー喜多川について私たちは告発系、スキャンダル系の出版を続けてきた。『週刊文春』が故ジャニー喜多川による未成年性虐待を追及するまでに実に15点の書籍を刊行し、文春に繋げた。『週刊文春』という、日本を代表する雑誌、その母体の文藝春秋社もまた、芥川賞・直木賞を実質的に主催するほどの日本を代表する出版社だ。告発を始める前に連絡があり、私たちよりももっと大手の雑誌がジャニー喜多川による未成年性虐待を追及することを聞き、内心嬉しかった。それまで私たちが書籍でやってきたことが報われた気がした。

爾来、告発系、スキャンダル系の出版は継続してきていたところ、3年前(2020年)に突然、極秘にしてほしいが英BBCがジャニー喜多川による未成年性虐待告発のドキュメントを制作するので手伝ってほしいという連絡が、BBCの日本のエージェントを務めていた女性から連絡があった。前年ジャニーは亡くなっているし、死人に鞭打ってどうなのか。手伝ってほしいと言われても、私たちは被害者ではなく、私たちの生業は出版社であり、私たちが出版してきた書籍や資料などを送り、また体験から知りえたことをレクチャーするぐらいだった。それでも少しは役立ったのであれば損得なしに嬉しい。謝礼など一切受け取っていないし、また要求もしていない。

私たちが最も精力的に出版していた時期は1990年代の後半だった。孤独な戦いだった。当時、これは「アリが象に立ち向かう」ようなものだ、しかし「アリの一穴」でダムが決壊することもあるのだ、と強がってはいたが、四半世紀を経て、今のような情況になるとは予想だにしなかった。

鹿砦社が刊行してきたジャニーズ問題「告発本」

[右上段]原吾一・著『二丁目のジャニーズ』(3部作)[右下段]平本淳也・著『ジャニーズのすべて』(3部作)[左上段]『ひとりぼっちの旅立ち』『ジャニーズ帝国崩壊』『ジャニーズの欲望』[左中段]『ジャニーズの憂鬱』『ジャニーズの躓き』『ジャニーズ・プロファイリング』[左下段]『ジャニーズ・ゴシップ・ワールド』『ジャニーズ・スキャンダル』『スキャンダルの中のジャニーズ』

しかし、微かながら期待もあった。今話題になり高額な古書価が付いている木山将吾著『SMAPへ ── そして、すべてのジャニーズタレントへ』を出版した2005年、これまでに私たちは、大手パチスロメーカー「アルゼ」(現ユニバーサルエンターテインメント)とこの創業者・岡田和生を告発する書籍を4冊出版し、これが刑事告訴され、また賠償請求3億円もの巨額民事訴訟も起こされた。出版差し止めはなされ、私は逮捕、半年余りも勾留された。結果は懲役1年2カ月(執行猶予4年)の有罪判決、また600万円余の賠償金を課せられた。

その後、舞台は暗転する。ロイター通信が、件のアルゼのフィリピンでのカジノ建設にまつわる政府高官への贈賄容疑を追っているので協力を要請された。ロイターの記者はたびたび本社の在る関西まで足を運んでくれた。これに応え、私は所有してきた資料のコピーを渡し、パチスロ・パチンコ・ゲーム業界の事情をレクチャーした。こうしたことで、件のパチスロメーカーの創業者社長は海外で逮捕され、その前後に社内で実の息子や妻、子飼いの社長らによるクーデターにより、自らが作り育てた会社から追放されるという事態になった。

ちなみに、本件を指揮した神戸地検特別刑事部長・大坪弘道は、のちに大阪地検特捜部長に栄転するが、「厚労省郵便不正事件」に関与し証拠隠滅の科で逮捕され失職している(しばらく無職だったが、大阪弁護士会が入会を許可し今は弁護士をしている。大阪弁護士会の見識を疑う)。

BBCから協力要請があった時、このことが過った。結果はご覧の通りである。──

◆最大の問題はジャニー喜多川が死んでいることだ

異常な未成年性虐待事件で、最も悪いのはジャニー喜多川であることは言うまでもない。しかし、彼はすでに亡くなり、「死人に口なし」といわれるように、今後真偽を見極める際に、大きな障害となるだろう。「被害者」と偽り賠償金を請求してくる輩が出てこないとも限らない。この点で、これまで黙認し放置してきた責任が、ジャニーズ事務所、マスメディア、広告出広企業にもある。

今はジャニーズ事務所ばかりが責め立てられているが、同等にマスメディアや広告出広企業も責められるべきだ。彼らは責任をジャニーズ事務所にばかり押し付けているような感がある。みずからに責任が及ばないように、これでもかこれでもかとジャニーズ事務所を責めていると感じられるが、長年細々とながらジャニー喜多川やジャニーズ事務所を追及してきた私たちには違和感がある。当初は、「おお、やってくれているね」と思っていたが、次第次第に違和感を覚えていった。

◆ジャニーズ事務所の責任

創業者で、亡くなるまで社長を務めた者の性犯罪である。事務所や親族(藤島ジュリー景子)の責任がどこまであるのか、無限なのか有限なのか、判断は難しい。社長を引き継いだジュリーがどこまでジャニーの性犯罪を認識していたのか、私は、ある程度は認識していても、お嬢様であるからして深くは知ろうとしなかったのではないか、と思う。

創業者で社長時代の性犯罪で、これを会社として黙過・黙認していたのだから、一定の責任は当然免れない。だからといって、無限ではない。会社として相当の資本や資産を蓄積してきたのだから、不動産の一つでも売却するなりして、ケチらず100億円ぐらいポンと出して、これで真の被害者へ補償し、残ったならば再発防止の基金にしたらいいだろう。

また、ジュリーの責任を法外に追及する向きもあるが、犯罪者の親族であっても、別人格なので、刑事責任はない。例えば殺人犯の息子であっても、息子に罪はないのと同様だ。

おそらくお嬢様として育ち修羅場の経験がないジュリーの今現在の精神状態は尋常ではないことは想像がつく。それでもわが国を代表するエンターテインメント企業の代表取締役として、ここは真正面からぶつからないといけない。要はジュリーが人間として誠実に対応すべきとしか、言葉の上ではいえない。嘘偽りなく人間として誠実に対応すれば、道は必ず拓けるであろう。

◆マスメディアの責任

周知のようにマスメディアは、この問題について、文春、それ以前の私たち鹿砦社、35万部のヒットを記録した北公次の『光GENJIへ』を出版しパイオニアの「データハウス」、時に告発記事を掲載した『噂の眞相』など告発系、スキャンダル系の書籍を出したり記事を掲載したりし、メディア人であれば100%に近くジャニーズ事務所という「少年愛の館」で、未成年性虐待が行われてきたことぐらい知っていたはずだ。

マスメディア(人)には、これを黙過・黙認し放置してきた責任がある。「知らなかった」とか「責任がない」などとは言わせない。

4時間余りの長時間にわたった9月7日のジャニーズ事務所の記者会見での質疑応答を見たが、気分が悪くなった。マスメディア(の記者)は、時に横柄で、これまでジャニー喜多川の未成年性虐待を黙過・黙認、放置してきた反省がほとんど感じられず違和感ばかりが募った。記者会見としては異例で、4時間という長時間を費やした。ジャニーズ事務所側としては、短時間で打ち切って反感を買うよりも、マスメディアの記者たちに、喋るだけ喋らせ「誠意」を見せようとの作戦だったのだろうか。

下記の画像を見ていただきたい。一つは現在先頭になってジャニーズ追及を行っている朝日新聞社系列の『週刊朝日』(2019年7月26日号)の表紙と、民間企業ではないが法務省の肝入りで制作された映画『少年たち』(製作総指揮・ジャニー喜多川)のフライヤーと推薦のツイッターだが、シュールと言おうか、失笑をさえ禁じ得ない。特に映画『少年たち』を推薦する法務省のツイッターは性犯罪を後押しするようなもので法務省の見解をぜひお聴きしたいものだ。

こうしたジャニー喜多川の性犯罪を、ちょっと調べれば判るものを、調べもせずに安易に持て囃したことこそ厳しく糾弾しなければならないだろう。

[左]現在先頭になってジャニーズ追及を行っている朝日新聞社系列の『週刊朝日』(2019年7月26日号)の表紙。[右]法務省の肝入りで制作された映画『少年たち』(製作総指揮・ジャニー喜多川)のフライヤーと推薦のツイッター

3月7日から9月7日までと、これ以降も、マスメディアによるジャニーズ事務所追及の記事が、どんどん溢れ、3月7日以降、少なくないマスメディアの記者らから問い合わせなどあった。NHKの記者など2人、わざわざ東京から関西まで来てくれ、それはニュースや『クローズアップ現代』で放映された。世代が離れた若い記者たちは、私たち老人とは発想も違い、やる気が感じ取られた。実際に、これまでにない展開が拓けた。しかし、これを「メディア・スクラム」というのかどうか知らないが、どこの社も日々ジャニーズ事務所追及やジャニーズ関連の記事が溢れるとウンザリする。辟易感といおうか違和感といおうか、こうした気持ちはどこから来るのだろうか?
 
◆広告出広企業の責任

これまで主にテレビを中心として、日本を代表する多くの企業がジャニーズタレントを起用してきたが、ここにきてジャニーズ事務所との契約打ち切りを決定したというニュースが続々報じられている。沈みつつある泥船から逸早く逃げ出し、知らぬ存ぜずを決めようとの感がする。嫌な気分になる。

これもおかしな話だ。ジャニー喜多川による未成年性虐待の実態は、ネットですぐ調べられる時代、検索して、かつてのデータハウスや鹿砦社などの書籍を取り寄せて読めば、わけなく判るはずである。大金を投じて広告を制作するのだから、これぐらいはやるべきだったのではないか。

◆告白者/被害者、そして賠償金や利権に蠢く者たち

このかんジャニー喜多川による性被害をカミングアウトする者が続々登場して来ている。賠償金の支払いをジャニーズ事務所が公にした以上、今後も増えるだろう。まずはこの真偽をきちんと審査し決めなければならない。似非も出てくるだろうが、ここは厳しく排除すべきだ。

また、巨額の賠償金が予想され、さらに再発防止のための基金も囁かれる中で、今後これに群がる者が必ず出てくるだろう。先に述べたように、それ相当の賠償金は拠出すべきだが、会社とは離れた組織で厳密に審査し判断すべきだということは言うまでもない。それはすでに、「被害者救済委員会」として開始されているが、下手に「被害者」と称する者と直接交渉すべきではなく、100億円なら100億円と一定の金額をジャニーズ事務所に拠出させ、これから厳密な審査を経て真の被害者個々人に渡すべきだろう。

人を疑うわけではないが、大金の臭いがする所には必ず似非被害者やよからぬ人物が寄ってくるのが常だ。これは断固排さなければならない。

 

鹿砦社特別取材班『暴力・暴言型社会運動の終焉』

ここで懸念するのは、「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる「ジャニーズをこよなく愛する者たち」と称する人たちである。彼ら/彼女らがジャニーズファンではなく、むしろKポップファンで、韓国の慰安婦支援団体の流れを汲み、さらには、いわゆる「しばき隊」に繋がる人たちだということが明らかにされている。私たちは2016年から大阪・北新地で「しばき隊」メンバーによって起こされた「大学院生集団リンチ事件(しばき隊リンチ事件)」の被害者支援と真相究明に関わった。

李信恵ら、この凄惨なリンチ事件の加害者、これに直接・間接的に繋がる人物が複数人、「賛同人」に名を連ねている。被害者支援、真相究明、これに関連する複数の訴訟に昨年末まで実に7年間も関わり、関連書も6冊出している。なので、彼らの素性や背景、繋がりには、それなりに詳しいと自負する(「李信恵」「しばき隊リンチ事件」で検索すれば事件の概要は判るだろう)。

彼らは「当事者の会」にも近づき入れ知恵しているという情報も入ってきているが、これが事実であれば、こういう活動家とは即刻手を切るべきだ。海千山千のプロの活動家にとって、政治運動を知らない者は赤子の手を捻るようなもので、必ず食い物にされる。

おそらく今後、巨額の賠償金や利権のおこぼれにありつこうと、こうした徒輩が蠢くものと思われる。くれぐれも要注意だ(「しばき隊リンチ事件」については、私たちが出版した6冊の本、とりあえず『暴力・暴言型社会運動の終焉』一冊でも読んだら概要は判るだろう)。

◆LGBT関係者はどう考えているのか

本年前半、この件と重なって大きな社会的関心事となったのがLGBT理解増進法制定をめぐる問題だった。「G」とは言うまでもなく「Gay」のことだが、本件はLGBT当事者の犯罪でもある。「性の多様性」でGayが私的に性を謳歌するのはよしとしても、こんな異常な性犯罪を起こしてもらっては、真にLGBT問題を理解するためにも非常に困る。

LGBT理解増進法をめぐり、あれだけ騒いだLGBT当事者はどう考えるのか? LGBT利権団体、活動家、これらと連携する者ら、また、これらから距離を置くLGBT当事者らの率直な意見を聴きたい。私の知る限り、まだまともな意見は出ていないようだが、みずからに都合の悪いことでも、きちんとコミットしないとLGBTについて真の国民的理解は得られないであろう。LGBT当事者が社会的にマイノリティであるにしても、だからといってLGBT当事者の性犯罪が許されるわけではない。ここまで踏み込んでの議論が必要なのではないだろうか。

◆私たちにとってのジャニーズ問題の〈総決算〉

本年3月7日以降、主だったマスメディアの多くが、ジャニー喜多川による未成年性虐待とジャニーズ事務所の横暴についてヒトとカネを使い大掛かりな取材に動き出した。日々、新聞もテレビも、ジャニーズに関する記事やニュースで溢れ返っている。もう私たちの出番でもないだろう。私たちの役割は終え、(ご都合主義ということはあるが)大手メディアに繋げた。3度の出版差し止めにも屈せず、地道にジャニーズ告発の本を出し続けた甲斐があろうというものだ。少しは報われた感がする。

筆者も老境に入り、体力的にも新たな取材に動けなくなった。目の疾患も酷くなって、ちょっとした書類も拡大コピーしないと読めないほどだ。昨年来ほとんど編集実務から離れてきたが、ここは、これまで四半世紀余りにわたるジャニーズに対する告発系、スキャンダル系の出版活動の〈集大成〉の本をまとめることにした。おそらくこれが長く続いたジャニーズ追及の最後の書籍となるだろう。28年、長かったな。

老境にあることで体力的、気力的にも弱っており、加えて重篤な目の疾患などで編集作業にもかなり苦労した。

そうした想いで取り組み、ぎっしり詰め込みA5判、320ページもの大部の本になった。取材には動けなくなったが、今でもこういう本を出せるのはまだ私たちしかないという自負はある。

書名は『ジャニーズ帝国60年の興亡』とした。10月半ばの刊行予定である。

本書では、ジャニーズ事務所が創業者・ジャニー喜多川の未成年性虐待問題で初めて記者会見し公式に謝罪した2023年9月7日までの記述でとどめている。ジャニー喜多川の性犯罪告発は現在進行形で展開中だ。今後、ジャニーズや芸能界がどうなっていくのかわからないが、もうジャニーズというタブーはなくなったのだから、大小問わず出版やメディア、ジャーナリズムに関わる人たちには本書を超えるジャニーズ告発本をどんどん編纂し発行してほしい、と切に願う。(本文中敬称略)

鹿砦社代表 松岡利康

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

公開前より噂が広がっていた森達也監督『福田村事件』の試聴版をようやく観た。当時の朝鮮人関連の事実を扱っていることやキャストの一部などは知っていたが、人物のストーリーが豊かにふくらみ、それによって事件自体のシーンからは大きな衝撃を受ける。ぜひ、ご覧いただきたいので、書評のさなかではあるが、本作に触れたい。※(ネタバレあり)

◆6000余名の朝鮮人の命を奪った関東大震災の大虐殺

わたしは『紙の爆弾』2017年11月号に、「『追悼文見送り』でも隠せない 関東大震災 朝鮮人虐殺の〝真実〟」と題し、「6000余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われた」こと、その背景、暴徒化した自警団、国家にも民衆にも責任があることなどを伝えた。

しかし現在も、このような〝真実〟を認めようとしない言説が多くある。先日も、日本統治下によい印象をもつ韓国の高齢者の発言とされるものがインターネット上のショート動画などで拡散され、大きな問題を受け入れない人々が多くいることに愕然とした。

虐殺の背景には、併合前後に朝鮮各地で起こった暴動、伊藤博文の射殺、困窮して日本国内に流入した朝鮮人に対する過重労働や差別、戦後恐慌、労働・小作争議、社会主義・共産主義運動、三・一独立運動、警察機関や朝鮮総督府の爆破がある。そして、政府や警察による、朝鮮人や社会主義・共産主義者や労働者の団結への警戒があった。いっぽうで、在日朝鮮人は、1911年に2,500人だったのが、23年には8?9万人に達していたようだ。

そのような折、23年9月1日に関東大震災が起こり、「朝鮮人と、彼らと連帯する活動家が放火をした」という噂が流れる。その後、強盗、強姦、殺人、井戸への劇薬の投入、爆弾を持参しての襲来と内容を拡大させていったのだ。そこに自警団が続々と登場し、3,600人超にまでふくれあがった。

©『福田村事件』プロジェクト2023

◆偏見と罪悪感を抱き、天皇制と軍国主義を刷り込まれた人々

デマの元凶として、横浜市や東京の亀戸町(現・江東区)などの地域、軍閥・富豪・警視庁の策謀など、説はさまざま。ただし、内務省は朝鮮人が暴動を起こしたので取り締まれと、各道府県知事宛てに電文を送り、自警団結成を命じる通牒(つうちょう)を送っている。事件後も、国家・軍隊・警察の責任が認められたことはないが、政府はねつ造された暴動の話を集めさせながら、同化政策の差し障りを欧米に知られないために朝鮮人に危害を加えることを控えさせようともした。

また、戒厳令を敷くために、造言を放ったという説もある。朝鮮総督府の政務総監だった水野錬太郎と、内務局長や警察局長を務めた赤池濃は、独立運動を弾圧していたが、彼らが内務省の内部部局で警察部門を所管した警保局長の後藤文夫に戒厳令の施行を進言し、それが2日夕刻に施行されているのだ。作家の吉村昭は、日本人のある種の罪悪感を、虐殺の背景として記す。

朝鮮人に対する偏見と罪悪感、それに加え、官憲などが流した情報は天皇制国家と軍国主義を刷り込まれた人々に信憑性があるものとして受けとめられた。

◆クライマックスにいたるまでの物語と、史実の痛切さ

ここで本作『福田村事件』の話に戻る。まず個人的には千葉県出身・在住者として野田や流山の地名の登場に親しみを感じたものの、農家役の方の農作業の様子を注視し、方言に聞き入ってしまった。地域差はあるだろうと自らに言い聞かせながら先を追っていくと、「不逞鮮人」「ちゃんころ(漢民族)」「穢多」といった俗語や蔑称、差別語が繰り返し発せられていく。そして、「万歳運動(おそらく三・一運動)」にも触れる。

いっぽうでは元軍人をからかう言葉として「軍隊の銀シャリが忘れられませんか」などと口にする登場人物もいる。

本作にはさまざまな人物が登場するが、主人公の夫妻などのほかに、讃岐(香川県)から千葉を訪れた薬売りの一行も比較的、詳細に描かれる。それぞれの人生を垣間見ているうち、関東大震災が起こるのだ。そして作品では、「朝鮮人が火をつけた」「毒を井戸に投げた」などと亀戸署の刑事が触れ回る。それがどんどんふくらみ、みんなが言っていたからと、「土木工事の朝鮮人がおそってきた」「本所が燃えたのは朝鮮人が原因」などと尾ひれがつけられていく。

すると村長に内務省からの「不逞鮮人暴動に関する件」「警戒、適当の方策を講ずる」などという内容の通達が届くのだ。そして自警団が組織され、村人が従う。「鮮人は敵だ」と口々に繰り返す。半信半疑の者もいたし、併合によって「朝鮮人をずっといじめてきた、だからいつやられるか恐怖心があったんだ」と告白する者もいた。

主人公は朝鮮人を見捨てることになった経験をもち、それに罪悪感と後悔を抱いていた。新聞記者の女性もまた、「権力のいうことはすべて正しいのですか」と上司に訴える。だが、戒厳令がしかれ、社会主義者も殺されるのだ。

このあたりでわたしは、県内に取材した際に「千葉県民は文句を言わない」などと耳にしたことや、ハンナ=アーレントの「凡庸な悪」という言葉を思い出していた。

そしてクライマックス。史実の通り、薬売りが朝鮮人と決めつけられ、殺される。朝鮮人かどうかが問われているとき、薬売りの1人の「鮮人やったら殺してもええんか、朝鮮人なら殺してもえんか?!」という言葉が大きなテーマの1つだろう。その発言で、そして殺してもいい「空気」によって、竹槍や銃で殺されてしまう。だが、もちろん彼らは朝鮮人ではない。人間の愚かさを感じざるを得ない瞬間だ。

元軍人の1人は、「今さら何を言ってんだ。警察やお上、お国だっぺ。わしらはお国を、村を守るために戦ってきたんだ」というようなことを叫ぶ。そして、村人は、新聞記者に対し、「おれたちはずっとこの村で生きていかなきゃなんね、だから書かねえでくれ」と言う。だが記者は、「デマだって書かなかったから朝鮮人がいっぱい殺され、この人たちも殺されたんです。だから償わないと」と返す。

この新聞社の罪と責任を、映画監督やジャーナリストとしても森達也氏は伝えたかったのだろう。

結局、薬売りの一行は、お腹の子を入れて10人が殺された。のちにこの福田村事件では8人が逮捕され、懲役3~10年の判決を受けたが、大正天皇死去の恩赦で全員が釈放された。行商団の遺体は利根川に遺棄されたそうだ。

©『福田村事件』プロジェクト2023

◆「人間はどういう生き物なのかを検証し続けること」

映画ライター森直人氏のインタビューで、森達也監督は、「人間はどういう生き物なのか……それを個と集団の相克から検証し続けることは僕のライフワークです」と語っている。また、本作においては、「加害者側と被害者側の両方をしっかり描く」ことを意識していたそうだ。「メディアの問題は絶対入れたいと思っていました」とも言う。「現代の光景と同質に見えるよう」フィクションのよさも生かしているようだ。

個人的には、まず権力の言うことを真に受けてはならないということ。そして、真に受ける1人ひとりは被害者でもあるかもしれないが、それ以上に止められない人間を含めて加害者であることだ。また、被害とその周辺とがおさまろうとも、加害の側は心の底から心をこめて謝罪を繰り返さなければならないし、歴史の真実を伝えていかなければいけないのだということだ。野田市の市長が弔意を示したことを勝手に誇りに思う。追悼文を送らない東京都知事とは異なる。

現在に当てはめても、社会がこのような状態であることの責任はわたしにある。愚かなわたしだが、凡庸な悪に取りつかれぬよう、声を上げ続け、謝罪を続けねばならない。

ぜひ『福田村事件』をご覧いただき、感想を伺いたい。

『福田村事件』
監督:森達也
脚本:佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイほか
企画:荒井晴彦
企画協力:辻野弥生、中川五郎、若林正浩
統括プロデュ―サー:小林三四郎
プロデュ―サー:井上淳一、片嶋一貴
アソシエイトプロデュ―サー:内山太郎、比嘉世津子
音楽:鈴木慶一
【2023年|日本|DCP|5.1ch|137分】(英題:SEPTEMBER1923)
配給:太秦
http://www.fukudamura1923.jp
テアトル新宿、ユーロスペースほか 全国公開中


◎[参考動画]映画『福田村事件』予告編

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。映画評や監督インタビュー多数、パンフレット制作も。フリーランスの労働運動・女性運動を経て現在、資本主義後の農的暮らしを実現すべく、田畑の作業、森林の再生・保全活動、釣りなども手がける。地域活性に結びつくような活動を一部開始、起業も準備中。地元に映画館はないが、有志による上映会などでは、過去と現在の、農村の記録映画をよく観ている。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

デジタル鹿砦社通信の小島卓編集長から、『情況』8月発売号の紹介をしてみてはいかが、というお誘いをいただきました。ありがたくお受けしたいと思います。

過日、『情況』第6期にご注目を、という記事をアップしたことがあります。おかげさまで、第6期『情況』誌は3号をかさね、11月発売号が出れば晴れて「3号雑誌」(勢いよく刊行したものの、3回で休刊)の誹りをまぬがれるわけです。読者の皆さまのご購読、ご支援に感謝いたします。

◆新しい論壇誌のスタイル

 

変革のための総合誌『情況』2023年夏号[第6期3号]【特集】音楽

さて、新左翼系の老舗雑誌と『情況』は呼ばれてきました。しかし、新左翼そのものが衰退、解体している昨今、その存続意義はあるのかという問いが生まれます。
じじつ、新左翼的な記事はほとんどなくなり(かつては、三里塚闘争や安保闘争、狭山闘争などが誌面を埋めた)、唯一果敢に闘われている沖縄反基地闘争(辺野古基地反対運動)も、新左翼特有の実力闘争ではなく、不服従の抗議闘争というのが実態だと思います。

運動誌・理論(学術)誌・オピニオン誌と、3つの性格を併せ持ってきた『情況』ですが、いまも有効なのはおそらく研究者にとっての論文発表の場、なのではないでしょうか。全国の大学図書館に70冊ほど、しかし岩波の『思想』、青土社の『現代思想』には遠く及びません。そして何よりも、学術誌は売れないのです。

もうひとつはオピニオン誌(論壇誌)としての性格で、第5期はここに比重を置いてきました。できればワンテーマこそが、クオリティマガジンとしてのステータスを高めるものになるはずですが、編集部をオープンにした結果、ごった煮の雑誌となったわけです。あれもこれも載せてくれと、ぶ厚い雑誌になりました。

雑誌というものは雑なものの集合体、いろんなファクターを入れた大船ですから、それはそれでいいのですが、いまひとつテーマの掘り下げに苦しんできたのが実態でした。

新しい編集部(第6期・塩野谷編集長)は、ヘンに背伸びをせず(難しいテーマを抱え込まず)、身近なテーマを掘り下げるところに特長があります。創刊号は「宗教」、2号目は「動物」、今回は「音楽」でした。

「音楽」は鹿砦社通信でもたびたび取り上げられていますが、時代性とテーマをその中にふくんでいます。プロテストソングを80人以上のアンケートで実施、特集の記事も20本と多彩なものになっています。政治と音楽(芸術)というテーマそれ自体、メッセージや音楽性の相関、扇動性、快楽といったかなり広い論軸を持っているものです。

その意味で、政治的なテーマや経済論評、政治経済の提言や批評がやや有効性をうしなっている(論壇誌で残存しているのは『文藝春秋』『世界』『中央公論』ほどしかない)現状では、人間にとって切実な「動物=食物」「音楽=日常に接する音」から人間を掘り下げる。これはなかなか良い手法だと思います。次号は「メンタルヘルス」だそうで、やはり切実なテーマだなと思います。

◆鹿砦社の広告について

ところで、『情況』は鹿砦社様の広告を表3(巻末)に定期掲載しています。『週刊金曜日』が当該者(団体)の抗議で、鹿砦社の広告を拒否した契機となった『人権と利権』も掲載しています。当然のことです。ご出稿いただいていることに、あらためて感謝するものです。

明らかに差別や人権侵害を目的とした刊行物でないかぎり、その表現や主張に、結果として差別的な内容・人権侵害的な内容が含まれていたとしても、誌上で批判・反批判をするべきです。そこにこそ、イデオロギー闘争としての「反差別」「人権擁護」が成立すると考えるからです。

したがって、今回の『週刊金曜日』の措置は、ファシストの焚書行為に相当するものと、わたしは考えます。『人権と利権』は運動内部に存在する「利権」を暴き出し、健全な反差別運動の発展をめざす視点から編集されていると、一読してわかるものです。

内容に誤りがあり、あるいは不十分であると考えるならば、批判の論攷を書けば良いのであって、人の眼に触れさせないのは矛盾の隠ぺい、自由な批判を抑圧するものにほかなりません。

『情況』も、昨年の4月刊で「キャンセルカルチャー特集」を組みました。2021年の呉座勇一さん(日本中世史・『応仁の乱』が50万部のベストセラー)のツイッターアカウントをめぐり、女性蔑視とするネット上の論争が起きた件をめぐり、執筆者から「情況の不買運動」を呼びかける論攷も掲載しました。

反差別運動の基本は、現代社会が資本主義の景気循環において相対的過剰人口を生み出し、そこにレイシズムの歴史的ファクター(差別意識)が結合することで、差別を再生産する社会であること。この基本認識があれば、差別を排除するのではなく俎上にあげて、分析・批判することを通じて、差別意識を変革していくことが求められるのです。

差別は個人・組織が起こすものですが、差別社会にこそ原因があることを忘れるならば、差別者のキャンセル、排除によって変革を放棄し、結果的に差別を温存することになります。すなわち『週刊金曜日』の今回の措置(広告拒否)こそが、差別を温存・助長するものにほかならないのです。

◆共産同首都圏委の逃亡

「排除」といえば、本通信でも何度か取り上げてきた、共産同首都圏委のウクライナ帝間戦争論について、8月発売号の「ウクライナ戦争論争」(本誌特別解説班)で結論を書きました。

首都圏委は人づてに聞いたところ「横山と論争をしないことに組織決定した」というのです。「排除」いや「逃亡」です。もう笑うしかありませんが、かれらは書き散らした論旨改ざん(論文不正)、誤読・誤記、引用文献の版元の間違いなど、恥ずかしいばかりの誤報の後始末もしないままなのです。そこでわれわれが彼らに代わって、訂正とお詫びを誌面に書きました(苦笑)。

また、新たな論敵として労働者共産党(元赤軍派の松平直彦氏が代表)の批判も全面展開しています。同世代の元活動家、研究者たちから「メチャメチャ面白い」の連絡をいただいています。

紹介と論軸の提起が長くなりました。今後とも、鹿砦社の出版物とともに『情況』をよろしくお願いいたします。(筆者敬白)

変革のための総合誌『情況』2023年夏号[第6期3号]【特集】音楽

『情況』HP http://jokyo.org/
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0CDJ84P4J/
模索舎 https://mosakusha.com/?p=6153 

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 最寄りの書店でお買い求めください

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
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映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立映画賞(London Independent Film Award)の最優秀外国映画賞を受賞した。作品は、11月18日から東京渋谷のユーロスペースで2週間に渡って再上映される。

麻王監督は、フェイスブックで、「元々、化学物質過敏症というテーマから、制作開始時点でこの映画はヨーロッパ圏の方にも刺さるんじゃないかと考えていたので、この連絡を頂けて嬉しいです」と、コメントを発表した。

映画『[窓]MADO 』

この映画は、デジタル鹿砦社通信でもたびたび取り上げてきた横浜副流煙事件に材を取ったフィクションである。実在する事件と作品との間には、若干の隔たりがあるが、化学物質過敏症をめぐる問題の複雑さをテーマにしているという点では共通している。

事件の発端は、2016年にさかのぼる。横浜市青葉区のマンモス団地で、煙草の副流煙をめぐる隣人トラブルが発生した。

ミュージシャンの藤井将登さんは、同じマンションの上層階に住むA家(夫、妻、娘)の3人から、「あなたの煙草の煙が原因で体調を崩したので禁煙してほしい」と、苦情を言われた。

将登さんは喫煙者だった。1日に2、3本の外国製の煙草を自宅の音楽室で嗜む。しかし、音楽室には防音構造がほどこされ、密封状態になっているので、副流煙が外部へ漏れることはない。

とはいえ、自分に加害者の疑惑がかけられたことに衝撃を受けた。そこで暫くのあいだ禁煙してみた。ところがA家の3人は、なおも同じ苦情を言い続けた。煙草の煙が自宅に入ってくるというのだ。疑いは、煙草を吸わない奥さんと娘さんにも向けられた。将登さんは、A家の苦情にこれ以上は対処しない方針を決めた。副流煙の発生源は自分ではないと確信したからだ。

ところがその後もA家からの苦情は続き、警察まで繰り出す事態となった。2017年になって将登さんは、A家の3人から4518万円の損害賠償を求める裁判を起こされた。裁判が始まると日本禁煙学会の作田学理事長が全面的にA家の支援に乗り出してきた。提訴の根拠になったのも、実は作田医師が交付した「受動喫煙症」の病名を付した診断書だった。

裁判が進むにつれて、恐ろしい事実が浮上してくる。作田医師が作成したA家3人の診断書のうち、娘のものが虚偽診断書であることが分かったのだ。作田医師は、A娘を診察していなかった。診察せずに診断書を交付していたのだ。これは医師法20条違反に該当する。こうした経緯もあり、裁判は将登さんの全面勝訴で終わった。A家の主張は、何ひとつ認められなかったのだ。

麻王監督が映画化したのはこの段階までである。実際、事件を取材してきたわたしも横浜副流煙裁判は、将登さんの勝訴で終わったと思った。拙著『禁煙ファシズム』(鹿砦社)で、わたしが記録したのもこのステージまでだ。

映画『[窓]MADO 』

◆横浜副流煙事件のその後

将登さんの勝訴で裁判が終わった後のことを若干補足しておこう。既に述べたように作田医師がA娘に交付した診断書は虚偽診断書だった。そこで将登さんと妻の敦子さんが中心になって、作田医師を地元の神奈川県警青葉警察署に刑事告発した。青葉警察署は事件を捜査して、作田医師を書類送検した。

しかし横浜地検は、作田医師を不起訴とした。これに対して藤井夫妻らは、検察審査会に審査を申し立てた。検察審査会は、「不起訴不当」の議決を下したが、時効の壁に阻まれて作田医師は起訴を免れた。公式には不起訴処分となった。

その後、藤井夫妻はA家の3人と作田医師に対して、根拠に乏しい不当な裁判を提起されたとして約1000万円の損害賠償を求める裁判を起こした。俗に言う反スラップ裁判である。この裁判の本人尋問の中で、作田医師が藤井敦子さんを指して、喫煙者だと事実摘示する場面もあった。この件についは敦子さんが、別の裁判が起こす公算が強くなっている。

◆ラジカルな市民運動

憎悪が憎悪を誘発するこれら一連の事件の背景には、喫煙者の撲滅といういささか過激な旗をかかげた市民運動の存在がある。「悪魔」に等しい喫煙者を探し出して徹底的に糾弾する方針である。その際に司法制度も利用する。

煙草の煙が人体に有害であることは紛れもない事実であるが、1階の密封された空間で吸った2、3本の煙草が、はたして上階の住民の健康を蝕み、その被害が4518万円にも値するかといえば別問題である。科学的な検討が必要だ。この事件を通して科学を軽視したラジカルな市民運動の実態が浮上する。

日本禁煙学会の作田医師は、「喫煙者の撲滅」という政策目的を先行させてしまい、隣人トラブルに油を注いだのである。映画「Mado」は、日常生活の中に潜む恐怖をみごとにあぶりだしている。日本中の団地で起こり得る事件なのである。


◎《予告編》映画 [窓]MADO

◎映画 [窓]MADO 公式サイト https://mado-movie.jp/

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

◆冷戦時代以来の逆流の中で迎える

78年目の原爆の日は、(核をなくし、戦争を止めることに対する)冷戦時代以来の逆流の中で迎えました。

第一に、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、軍拡競争の気風が世界に広まり、日本の岸田総理も『安倍晋三さんでさえしなかった』軍拡に暴走しています。

第二に、G7広島サミットで、核兵器禁止条約にも核兵器廃絶にも触れず、2000年のNPT再検討会議での核兵器廃絶への明確な約束や、核兵器先制不使用にも触れない「広島ビジョン」が採択されてから最初の原爆の日となりました。また、ゼレンスキー大統領の途中参加で、ほとんどサミットがウクライナ戦争を支援する会議となってしまい、被爆地が戦争支援に悪用されてしまいました。この間、広島市長がパールハーバーとの姉妹協定へ暴走、またサミットを前にして『はだしのゲン』が削除されるなど、アメリカへの忖度ではないかとみられる『事件』が続発しています。

第三に、広島選出の岸田総理が、気候変動対策・GXと称して老朽原発存続を支援する自称・GX法を強行。高浜原発が再稼働されました。さらに、原発維持で核のゴミが増える見通しであることを背景に、中国電力と関西電力が広島からわずか82kmの上関に核のゴミ=死の灰の中間貯蔵施設という名の事実上の永久のゴミ捨て場をつくることを発表しました。

筆者は、8月4日から5日は、原水禁国民会議系の「被爆78周年原水爆禁止世界大会」に参加しました。筆者は、日本共産党を支持していた時期も含めて広島県原水禁の個人会員として一貫して原水禁国民会議系の大会に参加してきました。今年の大会の中で筆者が学習したことをご紹介します。

◆大会に寄せられたメッセージ、立憲・泉さんに脱力

8月4日、開会総会が開催されました。代表や来賓の挨拶、被爆者による被爆証言などが続きます。

開会総会を前に筆者が受付で渡された資料の後ろの方には、各政党を含む各界関係者からのメッセージが寄せられていました。この中でも、立憲民主党の泉健太代表からのお言葉には脱力してしまいました。「『広島ビジョン』を歓迎」という泉代表のお言葉が目に入り、筆者は椅子からずり落ちそうになりました。

広島ビジョンは、冒頭にもご紹介した通り、核兵器廃絶には触れない。西側の核兵器保有は評価する。そういう代物です。そんなものを歓迎とは、どうなっているのか? 泉さんは立憲民主党を滅ぼす気なのか?! がっくりです。

まだ連合の芳野友子会長の方が「『核兵器のない世界』の実現に向けた具体的な道筋は示されず、核抑止を事実上肯定したことは残念でなりません。」と、マシに見えてしまいます。

さらに、れいわ新選組の櫛渕万里共同代表は、「……落胆を通り越して怒りを覚えるものでした。核抑止力を正当化するという、まさに、被爆地、被爆者を冒涜する文言だったからです。」とバッサリと「広島ビジョン」を斬っています。

各政党を含む各界関係者からのメッセージ

◆北東アジア非核地帯で安全保障環境改善し、日本も核兵器禁止条約に

 

8月5日午前中は「平和と核廃絶Ⅰ 世界の核兵器廃絶に向けて」に参加

8月5日の午前中は「平和と核廃絶Ⅰ 世界の核兵器廃絶に向けて」に参加しました。

ピースデポの湯浅一郎さんは、「米ソ冷戦で相互不信の悪循環で核軍拡が進んだ。冷戦が終わると核軍縮が進み冷戦末期と比べると核兵器は7万発から12000発に5分の1になっている。」指摘。「軍事力による安全保障のジレンマ」が典型的に示されている、としました。

「軍事力による安全保障のジレンマ」とは相互に軍拡すれば結果として際限のない軍拡競争を繰り返す悪循環にはまりこむことです。

現在はロシアのウクライナ侵攻がそういう構図を引き起こしています。

一方で、湯浅さんは核兵器禁止条約とNPTという2つのトラックが並走する新たなステージに入った、と希望も示しました。

核兵器禁止条約は核兵器を禁止し非合法化する初の条約です。

そして核兵器禁止条約が始まった今こそ、東北アジア非核地帯条約をと訴えました。

東北アジアには朝鮮半島の分断と中国の海洋進出による米中対立という2つの対立構造があり、日本はこれを「厳しい安全保障環境」だとして核兵器禁止条約に反対している。

しかし、そうであるならば、東北アジア非核地帯をつくることで安全保障環境の改善に踏み出すべきだと湯浅さんは強調します。

北東アジア非核地帯構想は朝鮮戦争集結とともに朝鮮半島と日本に対して米中ロが消極的安全保証(核攻撃をしない)をすることで北東アジアの緊張緩和をしていくことです。

これにより朝鮮半島2国と日本も核兵器禁止条約に入りやすくなります。

◆核放棄が最も早い保有国は英国か?

 

8月5日午後は「被爆78周年原水爆禁止世界大会・国際シンポジウム 核兵器廃絶に向けた道筋を描く」に参加

8月5日午後は、「被爆78周年原水爆禁止世界大会・国際シンポジウム 核兵器廃絶に向けた道筋を描く」に参加しました。

広島市の秋葉前市長は、広島ビジョンに核兵器廃絶も被爆者も核兵器禁止条約もない、と厳しく批判。その上で、そもそも、1945年8月10日に当時の日本政府が原爆投下に抗議したけれども、抗議はその一回だけで、原爆投下の責任者で、東京大空襲で有名なカーチス・ルメイ大将に勲章まで与えてしまう始末で、日本政府にはそもそも核を批判するという発想がないと指摘しました。

イギリスの平和運動CNDは、まず、イギリスが自分から核を手放すことをめざしているそうです。スコットランドが独立(連合王国から離脱)すれば、イギリスの核の主力である潜水艦の基地はスコットランドにあるのでイギリスは核兵器を失います。

一方で、スコットランドの人たちの多くは核を手放すことを望んでいますので、スコットランド独立はイギリスという核保有国が消滅することを意味するそうです。時々ニュースで出てくるスコットランド独立運動というのはこういう意味もあることを確認しました。

韓国の『参与連帯』の方は、G7広島サミットで日韓首脳が韓国人慰霊碑を一緒に参拝して(日本政府がお詫びの姿勢を堅持した)のはよいが、手放しでは歓迎できない、と日米韓の核共同体に「日本による韓国へのお詫び」が使われていることに懸念。

また、そもそも、米韓が軍事演習をストップしていた時期は、朝鮮も核実験やミサイル発射を中断していたということに注目すべき、朝鮮戦争の終戦が大事だ、とおっしゃいました。普段のニュースを見る際も、「北朝鮮怪しからん」一辺倒ではなく、「米韓の威嚇と朝鮮のミサイル発射は裏表だ」ということを押さえておきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

2023年の8月6日。78回目の原爆の日です。この日は、日曜日で、快晴でした。

 

平和記念公園

筆者は、自宅前からバスで広島市中区の平和記念公園近くの終点まで乗車。ただ、疲労しきっていたため乗り過ごして運転手さんにたたき起こされる不覚を取りました。

気を取り直して、平和公園へ向かうと、原爆ドーム前では左派の集会を機動隊が取り囲み、その周りから右派の方々が大声で挑発されているのを拝見しました。左派がうるさいとおっしゃる右派の方々ですが、右派のアジテーションの方が音量は大きかったようにも見えました。右派の弁士は「左派に対抗しなければいけないからだ。」と弁解されていたのが印象に残ります。

◆手荷物検査を経て入場 G7で過剰警備常態化?

原爆ドームの脇を抜けると「自民解体」というプラカードを置いている男性がおられました。

そして、平和記念公園に入り、平和記念式典会場へ向かいました。

2019年以前、すなわちコロナ前に今年から規模を回復させた平和記念式典。しかし、安倍晋三さん暗殺事件、岸田総理暗殺未遂などが相次ぐ中で手荷物検査も行われるようになりました。なるべくなら、人々の不満が高まらないような適切な政治を心掛けていただきたいものですが、現実に襲撃事件が起きている状況があるのも事実です。

とはいえ、G7広島サミットを契機に過剰警備・過剰規制に慣らされてしまうのも怖いものがあります。また、警察車両はわかるのですが、なぜか消防車がたくさん止まっていました。まさか、爆弾テロによる火災にでも備えていたのでしょうか?

[左]「自民解体」というプラカード[中央]多数の消防車が並ぶ[右]「警備・手荷物検査にご協力ください」というプラカード

◆広島市長の平和宣言 核抑止否定は良いが「平和文化」とは?

黙とう後、今年で就任後13回目となる松井一実・広島市長が平和宣言を読み上げました。

松井市長の平和宣言は秋葉忠利前市長時代よりも長いのが特徴です。これは、東京から当初は落下傘的に戻ってこられた松井市長が、被爆者らから意見をつのり、その意見を盛り込むようにしたことがあります。松井市長は初期には311福島原発事故を受けて、エネルギー政策の転換を求めるなど、国に対してガツンと物申す面もありましたが、そういう面は最近、薄れています。

松井市長は、G7広島サミットでの広島ビジョンについて事実関係に触れたうえで、「しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか。」と核抑止論を批判。その上で平和文化の重要性を強調しました。

それはそれでいいのですが、松井市長と言えば、どうしても中央図書館をデパートの上層階に移す計画など、文化をあまり大事にしないイメージがあります。ご自身の市政の足元を見つめなおしていただきたいものです。

◆子どもたちの「平和への誓い」最も拍手大きく

子どもたちの平和への誓い。今年も小学六年生二人が読み上げました。すべてのあいさつの中で最も拍手が大きく、かつ長いのはこの「平和への誓い」です。河井事件や深刻な県内の産業廃棄物問題などを背景に他の挨拶している大人の政治家たちへの広島県民の根強い不信感をも感じました。

◆岸田総理、まったく内容が頭に入ってこない

岸田総理の挨拶。正直、全く内容が頭に入ってきませんでした。周りの人の中には総理の挨拶終了を待たずに立ち上がって帰られる方も数人いらっしゃいました。

筆者は筆者で岸田さんの顔を拝見してついうっかり、「勘弁してくださいよ、増税」と思わず言葉が出てしまいましたが、誰にも咎められませんでした。

◆広島県知事 総理を目の前に核抑止論を厳しく批判は良いが、「本業」を真面目に!

岸田総理を目の前に、「核抑止論者は核抑止論が破綻したとき、全人類の命、地球上のすべての命に対して責任を負えるのか」と問い、「核兵器は存在する限り、人類滅亡の可能性をはらんでいるのがまぎれもない現実。その可能性をゼロにするためには、廃絶しかないのが現実なのです」と強く訴えました。毎回の平和記念式典で核抑止論者は厳しく批判する湯崎知事。それはそれでいいのですが、今年に限っては、筆者は複雑な思いです。

特に三原・本郷町の産業廃棄物処理場問題では、知事が許可した処分場から汚染水が出ています。田んぼに水が引けずに困窮している県民がいますが、県は再稼働を容認し、困っている県民には何もしていません。そんなふうに湯崎知事が「本業」をおろそかにしていると、湯崎知事がおっしゃる正論まで、説得力を持たなくなってしまうのではないか、と懸念されます。

 

「反戦タイガース」を名乗る男性が、「六甲おろし」を「原発下ろし」に変えた替え歌を披露

◆中満国連事務次長 さすがの演説

中満泉・国連事務次長は、事務総長自ら出席された年を除き、ほぼ毎年、近年では平和記念式典に参加されます。核兵器禁止条約にも触れられ、100点満点の演説でした。国際公務員を目指される日本人の多くが実は女性。中満さんはそうした優秀な日本人女性の代表的な方でもあります。

ただ、一方で、日本という国があまりにも若い女性にとっては魅力に欠けるから、国際公務員を目指される方も多いということもあるかと思います。広島自体が若い女性を中心に人口流出が多い中で、筆者は複雑な思いで、中満さんによる演説を聞かせていただいています。

◆中国電力前で汚染水放出・核のゴミ持ち込み・岸田自称GXにNO

その後、筆者は、中国電力前で【8.6ヒロシマ平和へのつどい】主催の集会に合流しました。福島の汚染水海洋放出ノーの訴え。そして、上関に核のゴミ=死の灰の貯蔵施設をつくろうとする中国電力と関西電力の暴挙への怒りの声。そして、岸田政権の自称GXによる、老朽原発再稼働にNOの声。

この日は日曜日でしたが怒りの声が上がりました。そうした中で、「反戦タイガース」を名乗る男性が、「六甲おろし」を「原発下ろし」に変えた替え歌を披露し、一座を和ませました。

◆原爆小頭症をご存じですか?

午後は、8.6ヒロシマ平和の夕べに参加。平尾直政さんのご講演が最も印象に残りました。

平尾さんはきのこ会(原爆小頭症被爆者と家族の会)事務局長、でRCC社員を長年務め、現在は大学院生でもいらっしゃいます。

 

原爆小頭症とは?

原爆小頭症は胎児として近距離被爆した方で、被爆が原因で、知的障害やその他の症状が発生した方です。広島で48人、長崎で15人いらっしゃったそうです。意外に少ないと思われる方もおられるでしょうが、そもそも、近距離でお母さんが被爆した場合、即死してしまう場合が多いので、数としてはこれくらいだそうです。しかし、数が少ないがゆえに、実態が伝わらず、当事者や親御さんが苦しんでこられたのです。被爆二世と勘違いされることもあったそうです。

旧ABCC(現・放射線影響研究所)は、原爆小頭症の存在を把握していたが表沙汰にしてきませんでした。戦後二十年、救いの手が差し伸べられず、成育不良は栄養失調ということにされて原爆症に認定されない状態が続いてきたのです。

そして、1965年に親たちが集まり、きのこ会が発足しました。会の名前には親たちの強い思いがあったそうです。きのこ雲の下で生まれた小さな命だがきのこのように元気に育ってほしい。というものです。

会の目標は
1.原爆症認定。
2.終身補償
3.核兵器廃絶
で、1と2が一定程度実現した現在では、核兵器の廃絶が一番の目標です。

原爆小頭症会員は2023年7月末で11人おられます。(厚労省によると当事者は12人です。一人の未加入の方は個人情報保護法により会としてアクセスできない状況です)

きのこ会をジャーナリスト3人が支えたそうで、その一人は、昭和帝に『原爆についてどう思うか』聞いた中国新聞の秋信記者です。親たちは1966年、分裂した平和運動やマスコミの報道に傷ついていた中で、ジャーナリスト3人が窓口になり「盾」になったものです。

原爆小頭症児には地域の厳しい目が向けられてきました。幼女がいたずらをされそうになった事件があった際には、根拠のないうわさで犯人扱いさたそうです。また、善意で縁談を持ち込んだ人に対して、お断りしたところ、「お宅は贅沢言えないでしょう」と言われて傷つく、ということも起きています。

平尾さんは「原爆投下はアメリカがやった。しかし、原爆小頭症の子供と家族に「冷たいまなざし」を向けたのは悪気のない周囲の人たち-私達だ。」と指摘しました。

ヨシカズさんという男性のケースでは、50歳で人工透析により入院し、そのころ、母親も母親は脳梗塞に倒れ入院。母親の願いは息子と一緒に暮らすことでしたが、ヨシカズさんは1998年に死去。納骨を終えた日に母親も死去し、生前に夢はかないませんでした。

2013年67歳で亡くなった女性の場合、戦後すぐに、母親も兄も出て行ってしまい、家族がバラバラになりました。この女性は瀬戸内海の島で父親と二人くらしで、父親が亡くなってから家がゴミ屋敷状態になっていました。

兄が施設入居を薦めるも島の暮らしになれていたので結局、拒んだそうです。お父さんは生前、娘について「自分より早く死んでほしい。」とこぼしておられたそうです。それは娘の将来を心配してのことで重苦しさが伝わってきます。こういうことを繰り返させないためにも核兵器は廃絶しなければならない。それがきのこ会の今の目標だそうです。

最後に平尾さんは「ローソクはいつか燃え尽きるがほかのローソクに火を移せば燃え続ける。わたしはその別のローソクになりたい」と決意を表明し、大きな拍手を浴びました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年9月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

食料危機と言えば、つい最近までは、戦前の「娘身売り」とか、戦中~戦後すぐの戦況悪化・敗戦に伴うもの、くらいのイメージを持たれていた方も多いのではないでしょうか?

筆者の父親(広島県福山市生まれ)はぎりぎり戦前(対米英戦争開戦前)生まれで、小学生時代くらいまで、結構厳しかったようなことは聞いています。母親(福島県出身)は団塊の世代末期で、そこまで厳しい状況は聞いていませんが、同級生の中にそれなりの割合で厳しい暮らしの家庭もあったと聞いています。

ただ、今の60歳以下の人の圧倒的多数はそうはいっても、日本が栄えていた時代しか経験していないわけです。

食うに困ると言っても、例えばシングルマザーのご家庭、またお父さんの会社がつぶれたとか、「運が悪い人」に限定されていたイメージがあります。いわゆる企業内福祉の恩恵が健在でした。もちろん、当時の仕組みと表裏一体の男尊女卑、性別役割分業固定化の問題は現在にも悪影響を及ぼしており、もちろん決して軽視できませんが、そのころはそれでも「一億総中流」と言われたことをご記憶の方も多いでしょう。

◆1990年代後半から貧困進むもまだ物価低く

雲行きが怪しくなったのは、1990年代半ばくらいからです。まず、1994年頃から女子から就職難に直面したのを筆者も記憶しています。東大さえも、女子の先輩が就職に苦戦する状況を目の当たりにし筆者は「このままでは21世紀には大変なことになる。」と直感したのを記憶しています。

就職氷河期世代が社会人になった1990年代後半、さらには小泉純一郎さんや当時の広島県知事が正規労働者を公務・民間問わず減らしまくった2000年代になると、非正規で生活が苦しいという人たちが筆者の同世代でも多くあらわれるようになりました。それでも、00年代は、物価が非常に安かった上、親がまだそれなりに豊かな人も多く、親に援助してもらいながら、低価格の食料品・消耗品で食いつなぐ、という人も結構おられました。しかし、そうした縁を持たない人の中から「おにぎりが食べたい」と餓死した男性など、貧困問題が深刻化していました。

民主党政権は、貧困の広がりに危機感を持った多くの有権者に支えられ、2007年参院選、2009年衆院選と圧勝し、政権交代を実現しました。ところが、ご承知の通り、すぐに失望を招き、安倍晋三さんに政権を奪還されてしまいます。安倍時代、金融緩和は行われたものの、非正規労働者ばかりを増やす流れにはストップがかからず、また人々の懐を潤す形での財政出動もなかった(ロシアやアメリカ、お友達にはばらまいたが)ため、多くの労働者の賃金は改善しませんでした。

◆低賃金と物価高の併存で危機が一挙に中間層まで

そうこうするうちに、日本経済は、国際的な比較で地盤沈下が進行。このことを背景に円安が進み(短期的には金利差が理由ですが、中長期には日本の地盤沈下が円安を固定化)し、ロシアのウクライナ侵攻も背景に物価上昇は留まるところを知らないのはご承知の通りです。

また、1980年代後半から1990年代前半の円高を背景に「日本は、食料は海外から買えばいい」という甘い考えが広がっていました。食料安全保障が全く顧みられてきませんでした。歴代政権の緊縮財政もその傾向に拍車をかけました。このため、輸入食料価格が上昇したからといって、国内供給がすぐには増えない状況に現在あります。

そして、コロナ禍による多くの御家庭での減収がこの3年ほど深刻になりました。その後も、いわゆる中間層のご家庭でも、収入が伸びていません。正社員でも物価高で実質的な可処分所得が減少する。住宅ローンはそうはいっても固定で払わないといけない。そういう中で、子どもの食事にしわ寄せが行く状況が生じています。

広島市はまだですが、全国の各自治体では給食の無料化がようやく進みつつあります。しかし、夏休みは給食がありません。そこで、子どもたちにとっての食料危機が深刻化しています。もちろん、自治体によっては、学童保育でも宅配弁当を活用するなどして、昼食を提供する動きも出ています。ただし、広島市はまだです。

◆子ども食堂がいよいよ地元でもスタート

1960年代以降ではおそらく最悪ともいえる状況の中、広島市・安佐南区祇園でも「子ども食堂」が7月2日、いよいよスタートしました。

子ども食堂は、2012年頃から広がり始めました。現在では、子どもはもちろん、大人も含む地域の住民に栄養バランスの取れた食事はもちろん、居場所を提供するものとして、いまや全国に広がっています。2022年秋現在で、7731か所あるとされています。

今回スタートしたのは「子ども食堂 キッズ☆庵」。

「シェアリンク広島」が協力し、鉄板焼き居酒屋・じゅげむ(広島市安佐南区祇園2-2-2)で行われました。

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次回は8月5日(土)12時~14時ですが、以降は第一日曜日の12時に開催される予定です。連絡先はシェアリンク広島代表の井原さん(080-4553-4454)。

メニューはお好み焼きです。料金は小学生100円、中・高校生 200円、大人 300円です。

また、シェアリンク広島が毎月第四日曜日に西区大芝集会所で行っている物資提供会とも共通した取り組みも行っています。具体的には、パンやお好み焼きソース、もみじ饅頭の配布なども行っています。子ども向けのゲームコーナーやカラオケ、生活お困り相談コーナーも開設しました。

この日は、シェアリンク広島だけでなく、「じゅげむ」の普段からのお客様もボランティアとして参加されました。正直、宣伝が十分はできていませんでした。それでも、大人も含めて10人以上の方が2時間余りの開催時間中にお見えになりました。カラオケのマイクを握って楽しんでおられるお子さんもおられました。生活お困り相談については本社社主・さとうしゅういちが担当させていただきました。

コロナで閉じこもりがちになった高齢者のことなど、ご相談をいただきました。一人で抱え込まずに、ご相談いただければ、少しでも考えるヒントはご提供できるかもしれません。お気軽にご相談ください。

「じゅげむ」店主の池脇律子さんは「今後、課題も多くある中、ゆっくりとしたペースで、少しでも多くの子供さんを始め、皆さんにお集まり頂ける場としての「きっず庵」を目指して頑張ります」と意気込みを語っておられました。ただし、8月は5日(土)に開催します。


子ども食堂 きっず☆庵
8月5日(土) 12時~14時
場所 鉄板居酒屋 じゅげむ
広島市安佐南区祇園2-2-2(古市橋駅から南へ徒歩5分)
メニュー ミニお好み焼き弁当
小学生 100円 中高校生 200円 大人 300円

駐車場はないので、クルマでご来場の場合はコインパーキングなどをご利用ください。
この他、カラオケ、お困りごと相談があります。お気軽にお立ち寄りください。

また、広島市北部ではフードバンクあいあいねっと様が、食料配布を月二回程度行っております。
こちらでも食料配布と同時にお困りごと相談などをされています。
https://aiainet.org/

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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