2020年3月にルンピニースタジアムで発生した新型コロナウイルスの集団感染に始まったタイ国内のムエタイ界は大打撃を受けてさまざまな形で変貌を遂げてきました。

コロナ禍以前と同様にギャンブルありきのムエタイも復活していますが、”新しい様式のムエタイ”と言われるルンピニースタジアムでのONE Championship(興行名はONE Friday Fight)、ラジャダムナンスタジアムでのラジャダムナン・ワールド・シリーズ(RWS)といった新しいスタイルでのムエタイが毎週開催されて現地では人気上昇中の様相です。

今年5月28日には、ラジャダムナンスタジアムに於いて、現職警察官による総合格闘技ルールでの「COPS COMBAT」が開催され、女性警察官も出場。今やバイクの発表会にも使われ、いろいろなイベントが開催される殿堂スタジアムへ変貌してきました。

5月28日に行われたCOPS COMBATの様子 ©THAI RATH

COPS COMBATの試合、グローブはオープンフィンガーグローブ ©THAI RATH

◆ONEとRWSの人気

ONE Championship(設立当初はONE Fighting Championship)は2011年7月、総合格闘技団体としてシンガポールで設立されていますが、ルンピニースタジアムでのONE Friday Fightは2023年1月10日から始まりました。

ONE Championshipは魅せる演出と競技をバランスよく融合させて来た様子で、極力ワイクルー(試合前の戦いの舞い)を少なくし、試合中の演奏は排除。グローブはMMA(Mixed Martial Arts)と同様のオープンフィンガーグローブ使用となっており、ムエタイルールだけでなく、キックボクシングルールや総合格闘技(MMA)ルールでの試合も同興行内で混合して開催しています。

オープンフィンガーグローブはサイズがS、M、L、XLとあって選手各自が選べます。毎試合新品を使用し、重さ的には4オンス程度と言われます(大きさにより若干ズレがある模様)。

RWSは2022年7月22日より8人トーナメントでスーパーウェルター級、フェザー級、ライト級、ウェルター級で開催され始めました(当初の発表)。

RWSはONEよりは従来のムエタイ様式を残しており、試合前のワイクルーや試合中の戦闘音楽演奏は従来どおりでも、独自のルールを作り上げている部分があり、3回戦制でのラウンドマストシステム、オープンスコア制を採用しています(タイトルマッチは5回戦)。

ONEとRWSのトレードマーク

◆ギャンブルとしてのムエタイ

これらはいずれもタイ国スポーツ局で認可されている本来の正式なムエタイ競技で定められたものではありません。

本来のムエタイは1999年制定のタイの法律で管理されており、ムエタイ競技は5回戦(3分制)は当然で、グローブも打撃技も従来どおりです。スポーツ局が認定するコンバットスポーツ(一対一で戦うコンタクト競技)に関してはカテゴリーが4つに分かれており(以前に取り上げていたら重複する説明かもしれませんが)、

1.ムエタイ競技
2.ボクシング競技
3.アマチュア競技
4.その他の格闘技

以上が定められた分類です。

MMAや本来のムエタイルールとは違う独自のシステムで行われている3回戦制などの試合は、全てカテゴリー4の“その他の格闘技”に一括りにされている状態で、正規ムエタイ競技の公式戦とは違ってしまうのが法律上の解釈です。それでも“ムエタイ”と言ってイベントが開催されているのは、ここが抜け道と言えるような状態に規制が無く、緩く感じさせている要因でしょう。

しかし、細かな競技の規定に対して一般ファンや視聴者にとってはさほど興味は無く、観る側が面白いかどうかが重要で“これもムエタイ、あれもムエタイ”と多様化して来た流れでしょう。

プロモーター主催の正規5回戦制試合は、水曜日と木曜日のラジャダムナンスタジアム、火曜日と金曜日のランシットスタジアム、日曜日のBBTV・7チャンネルスタジアム、土曜日のオムノーイスタジアム、土曜日のヨッカオスタジアム(ジットムアンノンスタジアム)などで開催されており、コロナ禍前と同様にギャンブラーが賭けを行なっています。

ラジャダムナンスタジアム、ルンピニースタジアムなどの歴史あるスタジアムは、標準スタジアム、公式スタジアムと表現されることが多く、標準規定のリング設置、リングドクター常駐や厳格な計量、ボクシング法に基づいた運営と言えるスタジアムで、正式にギャンブル可能な賭博場の政府認可を受けたスタジアムとも言えます(現在ルンピニースタジアムは賭博停止)。

2018年6月17日、緑川創が挑戦したラジャダムナン王座、本来のムエタイである

◆スタジアムの新しい在り方

懸念されることは、ラジャダムナンスタジアムのタイトルマッチでも、RWS興行内で行われるタイトルマッチと通常のプロモーター主催興行で行われるタイトルマッチとでは、同じ5回戦でありながら、RWSではラウンドマストシステムでのオープンスコアでの採点方式で、通常興行では本来のシステム(10対10有り、採点公開無し)で行われておりダブルスタンダードになっています。同じスタジアムの正式タイトルマッチでシステムが違うことについては、採点基準そのものは問題無いものの、どこのマスメディアも問題提起しないことが不思議ではあります。

しかしながら、ONEやRWSのような新型ムエタイでも、ムエタイの名が世界に広まるのはタイ国としては大歓迎の様子で、本来のムエタイも正規のルール、システムで盛り上がっており、伝統格式が完全には崩れていない安堵もあります。生き残るのは元祖ムエタイか、新型ムエタイか、数年では決着は付かない様相のムエタイ界を楽しんでいきましょう。

6月14日のONE Friday Fightポスター

6月14日のONE Friday Fightに出場した日本側の選手4名もポスターに登場しました。
小田魁斗(VERTEX)
COCOZ (TRY HARD)
谷津晴之(新興ムエタイ)
山岸和樹(PCK連闘会)

6月22日のラジャダムナンワールドシリーズトーナメントポスター

6月22日のラジャダムナンワールドシリーズ、ウェルター級トーナメントが行われました。(8人制/ Aブロック4選手、Bブロック4選手)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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無名外国人のメインイベンター起用の意味は?
そのエマニューエル・スキアフィノーはヒザ蹴りでルベン・ブサのアバラ折る衝撃的勝利。
NJKFから出場の嵐はノックアウト完勝で日本人メインイベンターの存在感を示す。
ジョニー・オリベイラは2度ノックダウン奪われ、
反則減点も課せられる苦しい大差判定負け。
アマチュア経験豊富な女子選手の飛躍も目立った。

 

エマニューエルのこのヒザ蹴りでルベン・ブサは肋骨骨折に至った

◎MAGNUM.60 / 7月7日(日)後楽園ホール17:15~20:36
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

(戦績は協会資料を参照し、この日の結果を加えています。ここでは嵐の不戦敗を省きます。)

◆第13試合 65.0kg契約3回戦

エマニューエル・スキアフィノー(アルゼンチン/32歳/ 63.9kg)5戦4勝(3KO)1敗
      VS
ルベン・ブサ(イタリア/19歳/ 63.5kg)13戦10勝3敗
勝者:エマニューエル・スキアフィノー / TKO 1ラウンド 1分54秒
主審:少白竜

パンチと上下の蹴り分けで積極的な両者。エマニューエルの前蹴りからのヒザ蹴りでルベン・ブサが後退。打ち返せず下がったところにエマニューエルは飛びヒザ蹴りを加え、更にヒザ蹴りで一方的になってルベン・ブサはスタンディングダウンを取られた。

続行後、エマニューエルの右ミドルキックの連打で、ルベン・ブサが怯むとレフェリーがストップをかけた。最初のヒザ蹴りでブサは左脇腹を痛めていた様子。試合後は肋骨骨折の疑いが診断されていた。

◆第12試合 78.0kg契約3回戦

マルコ(イタリア/伊原/34歳/ 77.4kg)11戦5勝(1KO)3敗3分
        VS
ヘスス・クアドゥラード(ISKAスペインChamp/23歳/ 76.9kg)12戦11勝1敗
勝者:マルコ / 判定2-0
主審:宮沢誠
副審:少白竜29-29. 勝本30-29. 中山30-28

両者のパンチと蹴りの多彩な攻防は、ヘススの我武者羅な攻めをマルコが凌ぎ、圧力と的確差で優ったマルコが僅差判定勝利。

マルコは試合後、「もっとしっかりパンチの後はキックとコンビネーションをやった方が良かった。そんなキレイなアクションやりたかった。今後もっと強くなりたいです。9月に結婚するので10月の試合は無いですけど、その次の興行ではしっかり試合頑張ります。」と語った。

マルコの右ストレートがヘススにヒット、手数で優っていった

◆第11試合 54.0kg契約3回戦

NJKFバンタム級チャンピオン.嵐(=坂本嵐/キング/19歳/ 53.85kg)
14戦12勝(6KO)2分
      VS
TENKAICHIバンタム級チャンピオン.川端駿太(SHINE沖縄/26歳/ 53.55kg)
10戦4勝5敗1分
勝者:嵐 / KO 1ラウンド 2分23秒 /
主審:椎名利一

嵐の牽制のパンチとローキック。距離感掴んで上下打ち分け、飛びヒザ蹴りも加え、川端駿太の空いたボディーに左フック3発目、完全に効かせてテンカウント。余裕のノックアウト勝利。

嵐のフィニッシュブロー、左フックが川端駿太のボディーに炸裂

◆第10試合 60.0kg契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.ジョニー・オリベイラ(トーエル/46歳/ 59.8kg)
63戦16勝(1KO)29敗18分
        VS
IOCインターコンチネンタル・フェザー級チャンピオン.辰樹(Y’ZD豊見城/29歳/ 59.8kg)
15戦6勝(2KO)6敗3分
勝者:辰樹 / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:少白竜24-30. 宮沢24-30. 中山宏美24-30(第3Rオリベイラに減点1含む)

ジョニー・オリベイラはいつものアグレッシブに攻めるも、第2ラウンド早々に辰樹の左フックでノックダウンを奪われ、リズムが狂った様子。最終第3ラウンドにはホールディングで減点も課せられ、終盤には辰樹の左ストレートでノックダウンを奪われ、距離感を掴めないままの終了。

「離れて相手の距離を潰さないとね。辰樹のパンチ見えなかったというから一発喰らって調子狂ってしまい、距離の掴み間違いでしたね。」とは側近の語り。

辰樹が攻勢を保つ、ジョニー・オリベイラはリズムが狂って作戦失敗

◆第9試合 スーパーフェザー級3回戦

赤平大治(VERTEX/21歳/ 58.7kg)7戦5勝(3KO)1敗1分
      VS
山川敏弘(京都野口/34歳/ 58.5kg)21戦8勝(4KO)11敗2分
勝者:赤平大治 / KO 2ラウンド 1分54秒 /
主審:椎名利一

蹴りからパンチに移った攻防の中、赤平大治の左ロングフックで山川敏弘がノックダウンし、セコンドからタオルが投げられ、ドクターもリングに入ろうとするが、レフェリーはテンカウントまで数えて赤平大治のノックアウト勝利。KO賞も獲得した。

赤平大治の右ストレートヒット、次第に左フックのタイミングに繋げていく

赤平大治の左フックに沈んだ山川敏弘、タオルは入っているがまだカウント中でテンカウントに繋げた

◆第8試合 63.0kg契約3回戦

須貝孔喜(VALLEY/23歳/ 62.8kg)6戦2勝4敗
      VS
平田大輔(平田道場/25歳/ 61.6kg)2戦2勝(1KO)
勝者:平田大輔 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名27-29. 宮沢29-30. 勝本26-29

第1ラウンド、平田大輔の右ストレートでグラついた須貝孔喜。逆に打ち合いに出て平田をグラつかせ、どちらかが倒されるスリルの中、圧していく須貝に対し、的確差で平田が優り、僅差判定勝利となった。激闘を展開した両者に伊原信一代表から敢闘賞が贈られた。

敢闘賞に繋がった打ち合う両者、平田大輔と須貝孔喜

◆第7試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制)

永島梢(K’Bスポーツ/37歳/ 51.7kg)37戦22勝(7KO)13敗2分
      VS
鈴木咲耶(チーム鈴桜/16歳/ 50.45kg)2戦2勝(1KO)
勝者:鈴木咲耶 / TKO 1ラウンド 1分59秒 /
主審:中山宏美

11年ぶりの試合という永島梢だったが、アマチュア90戦、プロ2戦目の高校2年生の鈴木咲耶の首相撲の上手さと蹴りのバランスの良さが優っていた。首相撲からの崩しの際か、倒れた永島梢が左足首辺りを負傷。更に組み合ってからの鈴木咲耶のヒザ蹴りでノックダウンした永島梢は足の負傷で立ち上がれずカウント中のレフェリーストップとなった。

アクシデント勝ちだが、首相撲から勝利を導いた鈴木咲耶の勝者コールと応急処置を受ける永島梢

◆第6試合 女子(ミネルヴァ)51.0kg契約3回戦(2分制)

NADIA(アルゼンチン/ 50.15kg)8戦4勝1敗3分
       VS
ミネルヴァ・スーパーフライ級4位.紗耶香(BLOOM/ 51.7→51.0kg)
15戦5勝(1KO)9敗1分
勝者:NADIA / 判定2-1
主審:宮沢誠
副審:椎名30-28. 中山29-30. 少白竜29-28

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)アトム級(102LBS)3回戦(2分制)

ミネルヴァ・アトム級5位.Marina(健心塾/17歳/ 45.7kg)9戦4勝(1KO)5敗
     VS
aimi-(DANGER/46歳/ 45.6kg)9戦1勝5敗3分
勝者:Marina / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 宮沢30-27. 少白竜30-27

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)ライトフライ級3回戦(2分制)

DJナックルハンマーyokko(team AImerrick/ 48.3kg)4戦4敗
        VS
山崎希恵(クロスポイント吉祥寺/ 48.45kg)1戦1勝(1KO)
勝者:山崎希恵 / KO 2ラウンド 1分16秒 /
主審:宮沢誠

第2ラウンド、山崎希恵の右ハイキック一発がキレイにyokkoのアゴにヒットし、ノックダウンを喫する。マットに膝を着けたままファイティングポーズをとるyokko。立っているつもりだったろうが、そのままカウント9でレフェリーストップされた。厳密に言えばテクニカルノックアウトだが、ほぼテンカウント同様で山崎希恵ノックアウト勝利。

◆第3試合 アマチュア女子 38.0kg契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原越谷/13歳/ 37.2kg)vs瀬川柚子心(小野道場/14歳/ 37.35kg)
勝者:瀬川柚子心 / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

◆第2試合 アマチュア 46.0kg契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/14歳/ 45.35kg)vs庄司翔依斗(拳之会/16歳/ 44.49kg)
勝者:庄司翔依斗 / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

◆本戦第1試合 アマチュア 34.0kg契約2回戦(2分制)

武田竜之介(伊原越谷/10歳/ 33.3kg)vs銀牙(TAKEDA/11歳/ 33.8kg)
勝者:銀牙 /判定0-3 (18-20. 19-20. 18-20)

◆オープニングファイト第2. アマチュア49.0kg契約2回戦(2分制)

原龍之介(伊原越谷/13歳/ 48.2kg)vs竹田奏音(TAKEDA/15歳/ 47.7kg)
勝者:竹田奏音 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

◆オープニングファイト第1. アマチュア33.0kg契約2回戦(2分制)

渋谷剛(伊原越谷/10歳/ 32.0kg)vs平山晴翔(TAKEDA/11歳/ 27.6kg)
勝者:渋谷剛 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

 

勢い付いた嵐のヒザ蹴りヒット、多彩に攻めた

《取材戦記》

この日、両国国技館では井岡一翔のWBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦、フェルナンド・マルティネス戦が行われていました。こちらも気になる興行でした。この日、新日本キックボクシング協会興行と重なっていなかったら行きたかった両国国技館です。

日本のメインイベンター嵐は危なげないノックアウト勝利。対戦相手、TENKAICHIバンタム級チャンピオンの川端駿太を“沖縄のチャンピオン”と表現したとおり、地方発祥のタイトルも増えている現在である。4月のスックワンキントーン・バンタム級チャンピオン桂英慈と引分けた試合から、また必殺ノックアウトが復活した感の嵐は9月15日(日)にホームリングのNJKF興行に出場予定です。宣言している世界制覇までライバルを蹴散らし、どこまで倒し続けられるか。

今回の興行は常連チャンピオン瀬戸口勝也の出場は無く、ジョニー・オリベイラがエース格的存在。しかしメインイベンターは無名の外国勢。日本のメインイベンターは他団体のNJKFから参加の嵐。選手層の薄さが表れる新日本キックボクシング協会。

この数年の流れを見て、やむを得ないという現状ではあるが、前日計量に現れたのは、スペインからやって来たプロモーターのチント・モルディージョ氏。なかなか恰幅良くトークを広げていた。

伊原道場アルゼンチン支部は数年前からディエゴ・ゴンザレス・ラヴォルペ氏が担っているが、今後、両者が新日本キックボクシング協会で伊原代表と、ヨーロッパ、南米、アフリカ等との交流、国際戦を計画しているという話であった。

リング上ではスペイン語によるトーク。通訳で協会スタッフの川久保悠さんが解説していたが、チント氏は更にオープンフィンガーグローブ使用のキックボクシング試合も日本に持ち込みたい意向があるという。そこまではどう進むか分からないが、とにかく話題は尽きない伊原プロモーション。次回興行の10月6日(日)のTITANS NEOS.35からこの戦いは始まる予定です。

挨拶に立ったチント・モルディージョ氏、活発な発言だった。右はディエゴ氏

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
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NKBフライ級タイトルマッチは杉山空が則武知宏を退けて初防衛。
NIIZUMAXは引退試合ながらアクシデントによる負傷判定引分け。

◎冠鷲シリーズVol.3 / 6月29日(土)後楽園ホール17:30~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第12試合 NKBフライ級タイトルマッチ5回戦

選手権者・杉山空(HEAT/2003.1.19静岡県出身/ 50.6kg)
9戦6勝1敗2分
        VS
挑戦者NKBフライ級1位.則武知宏(テツ/1994.12.5岡山県出身/ 50.65kg)
21戦8勝(4KO)9敗4分
勝者:杉山空 / 判定3-0
主審:鈴木義和
副審:加賀見50-48. 前田50-48. 笹谷50-48

初回から様子見の手数と技、両者のローキックからミドルキック中心の牽制から接近戦の首相撲もあったが、距離は蹴り合う距離の小気味いい展開。どちらも主導権支配には至らない中、第3ラウンドから杉山空が蹴り技に圧力を増した印象。

終盤から勢いが増して行き、長丁場を活かした展開。勢い有る接近はバッティングの危険性もあり、ラストラウンドにはそのバッティングが起こるも大事には至らず。

杉山空の右ハイキック、ガードの上からでも強く蹴り込む

アグレッシブに攻めた両者、杉山空の圧力が優った

タイトルを守った杉山はリング上のインタビューで、「もっと上を目指して、今日は弟も出たんですけど勝利して兄弟揃って盛り上げて行くので皆さん宜しくお願いします。」と会場と毎度の静岡からやって来た応援団に対しコメントしていた。

則武知宏は「杉山空は強かったです。悔しいです!」と簡潔なコメントだったが、杉山空のハイキックで左眼を負傷した様子で病院へ直行した。

勝利の杉山空陣営、左端は杉山海瑠

◆第11試合 ライト級3回戦

NKBライト級5位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.05kg)
17戦6勝(4KO)7敗4分
          VS
NIIZUMAX!(クロスポイント吉祥寺/1980.9.20東京都出身/ 60.75kg)
33戦15勝15敗3分
負傷判定引分け 0-0 / テクニカルデジション3ラウンド45秒
主審:笹谷淳
副審:加賀見30-30. 前田30-30. 鈴木30-30

山本太一の派手な技とNIIZUMAXの変則的な戦法で正攻法な展開とはならず。NIIZUMAXが後頭部にヒジを打ち落とす反則も起こし、山本太一は相手を踏み付けたりプロレス技も繰り出すキックボクシングらしくない荒っぽさを見せた。

NIIZUMAXの後ろ蹴り、多彩に変則技を繰り出した

第3ラウンドには浴びせ倒しの中でNIIZUMAXが後頭部をマットに打ち付け、脳震盪を起こし試合続行不可能となった。倒れ行く中、山本が足を掛けていたかが問題となったが、映像では一旦、足が掛かった流れも倒れ行く際は足は掛かっていなかった。裁定も反則とは取らず偶発的アクシデントとして負傷判定となったが差の付かない引分けとなった。

問題の崩しの倒れるシーン、足は外れ、掛かっていないまま倒れた

◆第10試合 60.0kg契約3回戦

NKBフェザー級4位.鎌田政興(ケーアクティブ/1990.5.6香川県出身/ 59.65kg)
20戦9勝(3KO)9敗2分
        VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/ 59.8kg)
10戦6勝(4KO)3敗1分
勝者:鎌田政興 / 判定3-0
主審:加賀見淳
副審:鈴木30-27. 前田30-28. 笹谷30-28

鎌田政興のパンチの前進、パワーが上回る。鈴木は圧されても打ち返す。鎌田は圧倒するに至らずやや攻め倦む様子も大差判定勝利を掴んだ。

鎌田政興がパンチ主体で攻めた

◆第9試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/ 57.1kg)
31戦11勝(4KO)15敗5分
        VS
KATSUHIKO(KAGAYAKI/1975.11.13新潟県出身/ 57.0kg)
7戦2勝(2KO)3敗2分
引分け 0-0
主審:鈴木義和
副審:笹谷30-30. 前田29-29. 加賀見30-30

序盤、攻防は互角ながら半澤信也の前進がやや目立ったが、第3ラウンドにはKATSUHIKOのヒジ打ちで半澤の左頬を切った。差は付かなかったが、半澤が優勢気味だった印象。

◆第8試合 ウェルター級3回戦

ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 66.25kg)
40戦7勝(3KO)30敗3分
        VS
マナチャイ・エイムハイ(TEAM Aimhigh/1995.9.14群馬県出身/ 66.4kg)
9戦2勝7敗
勝者:マナチャイ / 判定0-2
主審:笹谷淳
副審:加賀見29-30. 前田29-30. 鈴木30-30

強いヒットは無いが両者の手数は多く互角の展開が続いたが、第3ラウンドのマナチャイの飛び気味のヒザ蹴りからがインパクトを与えたか僅差ながらマナチャイが勝利。

ちさとは試合後「ポイントを取り切れない攻め切れない感じになってしまうのが良くない点で、そこが課題です。」と振り返ってくれた。

◆第7試合 ライト級3回戦

辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/1984.3.13/東京都出身/ 61.15kg)5戦2勝(1KO)1敗2分
        VS
森野允鶴(渡邉/2001.1.17東京都出身/ 61.05kg)3戦3勝
勝者:森野允鶴 / TKO 3ラウンド1分39秒 /
主審:加賀見淳

パンチと蹴りの互角の攻防から第3ラウンドには森野允鶴のロー(カーフ)キックで辻健太郎がノックダウン。更にローキックでノックダウンし、ノーカウントのレフェリーストップとなった。

TKO勝利の一人、森野允鶴がカーフキックで仕留めた

◆第6試合 ライト級3回戦

中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/ 61.05kg)3戦3勝
       VS
津田宗弥(クロスポイント吉祥寺/1980.1.8神奈川県出身/ 60.8kg)4戦1勝(1KO)3敗
勝者:中山航輔 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:鈴木30-28. 前田30-28. 加賀見30-28

◆第5試合 バンタム級3回戦

杉山海瑠(HEAT/2009.6.5静岡県出身/ 52.65kg)2戦2勝(1KO)
        VS
田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 53.35kg)11戦9敗2分
勝者:杉山海瑠 / 判定3-0
主審:鈴木義和
副審:加賀見30-27. 前田30-27. 笹谷30-29

杉山海瑠が終始手数と圧力で優った展開で内容的にも大差判定勝利。アグレッシブにバックハンドブローを見せるなど、兄の杉山空に似た試合運びでもあった。

兄と同様にアグレッシブな展開を見せた杉山海瑠

◆第4試合 65.0kg契約3回戦

魔娑屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/ 64.75kg)4戦1勝(1KO)3敗
       VS
前田京太郎(渡邉/2005.10.15東京都出身/ 63.95kg)1戦1敗
勝者:魔娑屋 / TKO 2ラウンド1分23秒 /
主審:笹谷淳       

初回に魔娑屋のパンチ連打で前田京太郎がノックダウン。第2ラウンドにはヒザ蹴りでノックダウンし、ノーカウントのレフェリーストップとなった。

TKO勝利の一人、魔裟屋がヒザ蹴りで勝利を導く

◆第3試合 バンタム級3回戦

早川曜平(ケーアクティブ/1994.1.13千葉県出身/ 52.7kg)1戦1敗
       VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 53.3kg)5戦2勝2敗1分
勝者:荒谷壮太 / 判定0-3
主審:加賀見淳
副審:鈴木28-30. 前田28-30. 笹谷27-30

◆第2試合 フェザー級3回戦

橋本悠正(KATANA/1997.4.21福島県出身/ 56.9kg)4戦1勝(1KO)2敗1分
        VS
祥太(Realiser STUDIO/1992.7.5宮崎県出身/ 56.3kg)2戦2敗
勝者:橋本悠正 / TKO 1ラウンド1分49秒 /
主審:笹谷淳

橋本悠正がパンチで攻勢を維持し、コーナーに詰めて連打でノックダウンを奪った後、左フックで倒すとノーカウントのレフェリーストップとなった。

TKO勝利の一人、橋本悠正が左フックで倒した

◆第1試合 フライ級3回戦

緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/ 50.55kg)2戦2勝
      VS
Lil-悠(PIT/2003.6.28千葉県出身/ 50.15kg)2戦2敗
勝者:緒方愁次 / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木30-29. 加賀見30-29. 笹谷30-29

《取材戦記》

興行の注目は杉山兄弟の成長。兄の杉山空は2022年10月29日に王座争奪4人トーナメント初戦で則武知宏と対戦し、偶然のバッティングで右目上のカットと頬骨辺りの骨折の疑いで試合続行不可能となったが負傷判定勝利し、翌年の決勝王座決定戦で龍太郎(真門)に判定勝利し、第8代チャンピオンと成った。今回が初防衛戦で則武知宏との再戦。

弟の杉山海瑠は4月のデビュー戦はKO勝利で、今回は判定ではあったがアグレッシブな勝利。

杉山空の5回戦は様子見から後半勝負に持ち込む長丁場の戦いが見られた。序盤の手数が少ない展開も「何となくいいねえ!」と昔の観衆のオヤジ(正確に言うと町田さん)がヤジ飛ばす掛け声を思い出したが、そんなワクワク感が漂った。

常連出場では中堅クラスではあるが、山本太一、鎌田政興、半澤信也、ちさとの存在感があり、ガツンとインパクト与える技は無いが、常連出場していれば誰が抜きん出て来るかが注目。メジャー級ではない興行の弱さはあるが、毎度の工夫は見られる日本キックボクシング連盟です。

山本太一 vs NIIZUMAXは山本の足がNIIZUMAXの足を掛けて倒したか、掛かっていなかったかが論点だったが、興行終了後に放送したツイキャスの映像を振り返った結果、足は掛かっていなかったと判明。アクシデントが起きた時点では人間の錯覚、思い込みが影響することが語られていた。では足が掛かった、掛かっていないに関わらず、裁定の違いでは結果はTKOか負傷判定か失格かという問題も浮上する。考えるとより難しくなるキックボクシングの在り方でした。

次回興行は7月28日(日)に大阪府豊中市176BOXに於いて、冠鷲シリーズ vol.4を第一部(昼)NKジム、第二部(夕刻)テツジム主催にて開催予定です。

第一部メインイベンターは第15代NKBフェザー級チャンピオン、髙橋聖人(TRIANGLE)が、去年12月に王座戴冠となったJAPAN KICK INNOVATIONライト級チャンピオン、紀州のマルちゃん(武勇会)と対戦。

第二部はメインイベントに、兵庫志門(テツ)とNJKFバンタム級7位、清志(KTF)が対戦。NKB関西 vs NJKF西日本 3対3団体対抗戦として行われます。

8月10日(土)には新潟県の万代島多目的広場大かまに於いて、冠鷲シリーズ vol.5を拳心館主催にて(開場16:30 開始17:30)開催予定です。Hiromi(田村大海)は第6代NKBミドル級チャンピオンの田村聖の実弟で、初のメインイベンター、初のタイ選手との対戦となる今回、兄に追い付き追い越すには負ける訳にはいかない注目の戦いとなります。

日本キックボクシング連盟本興行、冠鷲シリーズ vol.6は10月19日(土)に後楽園ホールに於いて開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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タイトルマッチを控える仁琉丸は担架で運ばれる先行き不安なTKO負け。

その仁琉丸を倒した福岡を主戦場とする大雅は、圧倒の展開から飛びヒザ蹴りで仕留めるインパクトを残した。

前回、旗揚げ興行のトリ、広翔は希羅に攻め倦む判定負け。

新理事に平成の名チャンピオン、土屋ジョー、彩丘亜紗子、熊谷直子が加わる新体制が発表。

◎原点回帰・弐ノ陣 / 6月13日(木)後楽園ホール18:30~20:36
主催:全日本キックボクシング協会 /

(戦績はこの日の結果を含んでいます。出身地、生年月日はデータ不足により不詳です)

◆第8試合 フェザー級 5回戦

全日本スーパーフェザー級3位.仁琉丸(ウルブズスクワッド/56.75kg)
22戦12勝(8KO)10敗
        VS
KING OF STRIKERSフェザー級チャンピオン.大雅(=久保山大雅/MSJ/ 56.65kg)
9戦7勝(5KO)2敗
勝者:大雅 / TKO 1ラウンド2分2秒 / カウント中のレフェリーストップ。
主審:椎名利一

今回はメインイベンターとして富山からやって来た仁琉丸。過去には新日本キックボクシング協会での経歴が主であるが、今回は福岡で活躍する大雅に開始早々から攻められ防戦一方。一気に倒されてしまった。

大雅が圧倒の攻勢、仁琉丸は防戦一方となった

メインイベントが唯一の5回戦だったが、大雅がパンチから距離詰めての首相撲からヒザ蹴り、更にパンチで追い、仁琉丸に反撃のチャンスを与えない右ストレートでグラつかせ、飛びヒザ蹴りを浴びせてTKO勝利に導いた。

勝者の大雅は「チャンスと思ったので、たたみ掛ける感じで自分の戦い方に持って行けたので良かったです。」とコメント。

最後は大雅の飛びヒザ蹴りによる結末となった

福岡のKOSチャンピオンのインパクトが残った大雅、今後も出場が望まれる

◆第7試合 バンタム級3回戦

広翔(稲城/ 53.35 kg)2戦1勝1敗
        VS
希羅(MSJ/ 53.4kg)13戦7勝4敗2分
勝者:希羅 / 判定0-3
主審:和田良覚
副審:竜矢29-30. 勝本剛司28-29. 椎名28-29

広翔はまだ2戦目で、12戦のキャリアある希羅に対して攻めて出れなかったか。初回、パンチと蹴りの様子見から希羅の蹴りの前進で優位に立つも、詰めるパワーが足らず圧倒するには至らない。広翔の右ストレートもチャンスがあったが希羅のリズムを崩せず、僅差ながら希羅の判定勝利。

「希羅は右ミドルを蹴るのが遅いですよ。もっと速く蹴らないと。」という周囲の声もありました。

大雅と同じジム、同じ福岡からやって来た希羅は試合後、「しょぼい試合してしまいました。自分から行かなかったのが反省点です。」と語った。

希羅が上回る経験値でハイキックも効果的に勝利に導いた

圧倒する展開にはならなかったが飛びヒザ蹴りを見せた希羅

◆第6試合 59.0kg契約3回戦

白井嶺虎(バンゲリングベイ/ 58.75kg)5戦3勝2敗
        VS
祐輝(OU-BU/ 59.1→58.9kg)13戦7勝4敗2分
勝者:祐輝 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:竜矢28-30. 和田28-29. 椎名28-29

蹴りから首相撲、時折バックハンドブローと圧力は祐輝にあり。白井嶺虎も劣勢には陥らぬよう前進するが、祐輝の主導権支配は変わらない。

祐輝再三のバックハンドブローはインパクトあるが、的確差に欠けクリーンヒットには至らない。

第3ラウンドは両者失速したが、出せる力は出し切って終了。

祐輝はバックハンドブローを多用しヒットは足りなかったがプレッシャーは与えた

経験値が優った祐輝が攻勢を維持して判定勝利

◆第5試合 スーパーライト級3回戦

勇生(=野竹勇生/ウルブズスクワッド/ 63.1kg)4戦3勝(2KO)1分
        VS
滝口遥輝(中島/ 62.8kg)2戦1敗1分
勝者:勇生 / KO 2ラウンド2分20秒
主審:勝本剛司

初回から様子見からすぐにでも倒しに行く姿勢の両者。パンチと蹴りの激しいぶつかり合いはノックアウトのムードが漂う。第2ラウンドには勇生が接近した際のボディーへヒザ蹴りやヒジ打ちで攻勢を維持すると、パンチで効いたか滝口遥輝が俯いたところへパンチからヒザ蹴りを打ち込みノックダウンを奪うと、そのままテンカウントが数えられた。

パンチと蹴りで効いて俯いてしまった滝口遥輝に襲い掛かる勇生

ヒザ蹴りでKOした勇生、今後に期待が掛かる

◆第4試合 ライト級3回戦

山田旬(アウルスポーツ/ 61.0kg)2戦2勝(1KO)
       VS
宮田裕基(MSJ/ 61.0kg)4戦4敗
勝者:山田旬 / TKO 1ラウンド1分7秒
主審:勝本竜矢       

パンチと蹴りの様子見から山田旬がパンチで追うと怯んだ宮田に左ストレートでノックダウンを奪い、更にパンチ連打で倒すとノーカウントのレフェリーストップとなった。

◆第3試合 56.0kg契約3回戦

中村健甚(稲城/ 55.75kg)2戦1敗1分
       VS
土谷哲星(バンゲリングベイ/ 55.85kg)3戦1勝2敗
勝者:土谷哲星 / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

◆第2試合 フライ級3回戦

横尾空(稲城/ 49.9kg)1戦1勝
       VS
HIROKI(AKIRA-budo school/ 49.7kg)2戦1勝1敗
勝者:横尾空 / 判定3-0 (30-25. 30-26. 30-26)

◆第1試合 51.5kg契約3回戦

ペニコ(MONKEY MAGIC KBS/ 50.9kg)2戦2敗
        VS
小池空(1DEAL/ 51.15kg)1戦1勝
勝者:小池空 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

《取材戦記》

栗芝貴代表の興行総評は、「試合は前回同様に皆が一生懸命で良い試合多くて、ウチ(稲城ジム)の選手含めて協会側の選手が勝ってくれれば良かったんですけど、KOSチャンピオンの大雅選手含めて凄い熱い選手ばかりで興行が盛り上がって良かったです。」

仁琉丸については、「前回のフットワーク見ても凄く良かったから、先日の日曜日に富山のウルブズスクワッドジムまで行って練習風景を見て来たんですけど、仕上がりも良かったんですが、やっぱり勝負となると今日の結果は仕方無いですね。次回の9月6日は予定どおり、瀬川琉と仁琉丸でタイトルマッチやらせます。」と語った。

担架で運ばれた仁琉丸は控室ではしっかり立って会話しており、大きなダメージは避けられた模様。

石川県能登地方出身の勇生は2022年5月に高校生でアマチュア「KNOCK OUT」65kgトーナメントで優勝し、プロに移っているウルブズスクワッドジム所属の選手。出身地も富山県高岡市にあるジムも能登地震の影響も大きかったが、3月16日はNaokiに判定勝利。今回はノックアウト勝利で協会エース格への期待は大きいが、地元の期待を背負っても焦らず経験を積んで頂点を目指して欲しい。

今回の興行では、新体制となった理事が三名紹介されました。土屋ジョー氏、彩丘亜紗子氏、熊谷直子氏がリング上で御挨拶。久々のリング登場となった熊谷直子氏は「選手の皆さんが、このリングで最高に輝けるようにサポートしていきたいです。」と志を語られました。

新体制とはメンバーが入れ替わったことを意味し、パンフレットから消えている名前もありましたが、事情はさておき、原点回帰からプロスポーツとしての確立したキックボクシング競技を目指し、今後もブレずに進みます。

令和の全日本キックボクシング協会、次回プロ興行は9月6日(金)に後楽園ホールに於いて第三弾が開催。メインイベントに全日本スーパーフェザー級王座決定戦が行われます(令和の初代)。その前に同・協会アマチュア大会は7月14日(日)に稲城ジムにて行われます。

新理事に就任した土屋ジョー、彩丘亜紗子、熊谷直子の三名と栗芝貴代表

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

NJKFに初登場のクン・クメール実力発揮。大田拓真は実力上回るも倒し切れない判定勝利。
吉田凛汰朗vs基山幹太は興行MVPとなる激戦を吉田凛汰朗がノックダウン奪って判定勝利。

 

大田拓真のヒジ打ち、切られたら切り返すもインパクトあるが惜しくも切れず

◎NJKF CHALLENGER 2024.3rd

6月2日(日)後楽園ホール17:20~21:30
主催:TAKEDA GYM / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

◆第9試合 58.0㎏契約 5回戦

NJKFフェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身/ 57.9kg)
37戦28勝(8KO)7敗2分
      VS
オウ・テリット(カンボジア/ 58.05→57.9kg)103戦77勝(20KO)21敗5分
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:児島50-47. 少白竜50-48. 中山50-47

初回、オウ・テリットとのパンチと蹴りのオールラウンドな攻防は、大田拓真が手数と的確差でやや優るもオウ・テリットは下がらない。

第2ラウンドには大田拓真がパンチ中心に攻勢を掛けるが、オウ・テリットは攻められても体幹がブレない。アグレッシブな展開は続くが、第3ラウンドにはオウ・テリットが左ヒジ打ちで大田拓真の左瞼をカット。オウ・テリットが勢い増すも大田拓真も応戦。ヒジでも切り返そうとする。

第4ラウンド以降は両者失速した感があるが、ラストラウンド終了まで互角の攻防が続き、試合全般で見れば大田拓真のテクニックが優った流れだが、オウ・テリットを捻じ伏せるには至らない無念さが残った。すでにクンクメールの実力は高いレベルにあることは広く知られているが、NJKFでも荒々しさと迫力が証明された試合だった。

大田拓真が前蹴りで頑丈なオウ・テリットのリズムを崩す

 

激戦を制した大田拓真、次はより倒せる躍進を見せるか

大田拓真は「映像でオウ・テリットはタフなのは分かっていたんですけど、1ラウンドから飛ばして2~3ラウンドで結構詰めたので倒したい気持ちが強くて、効いていた様子で倒しに行こうと何回も攻めても倒せずに自分が疲れちゃって、やっぱり倒し切れるようになりたいですね。タフな選手にも倒し切れるよう頑張ります。」

5回戦については「ちょっとは様子は見ようかとは思ったんですけど、やっぱりメインイベンターなので、そういう訳にもいかないと思って攻めたんですけど、そんな倒しに行く姿勢は良かったかなと思います。」と語った。

やっぱり昨年から続く武田幸三興行でのメインイベンターとしての自覚が強かったのと、3回戦の戦いが身に付いてしまっている感じはありました。

◆第8試合 64.0㎏契約3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/ 63.75kg)25戦12勝(3KO)9敗4分 
      VS
SB日本ライト級2位.基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/2001.12.24兵庫県出身/ 63.85kg)20戦13勝(1KO)7敗 
勝者:吉田凜汰朗 / 判定3-0
主審:椎名利一        
副審:児島29-27. 多賀谷29-28. 中山29-28

蹴りとパンチの攻防から吉田凛汰朗の右ストレートヒットで足が揃ったタイミングの基山幹太があっさりノックダウン。すぐに立ち上がり、ダメージは小さいがやや驚いた表情。その後も蹴りを交えたパンチの打ち合いが繰り広げられ、手数足数減らない両者のアグレッシブな攻防はノックダウンを奪っているポイント差で吉田凛汰朗が判定勝利。

吉田凛汰朗の右ストレートヒットで基山幹太がこの直後ノックダウンする

打ち合いの中、基山幹太の左ストレートヒット、一進一退の攻防が続いた

吉田凜汰朗は「右ストレートはずっと狙っていたんですけど、2ラウンド目は巻き返されましたが、でも集中切らさずに勝つというところでリズムがバッチリ嵌って行きました。基山選手は気持ちが本当に強くて戦っていてもメチャメチャパワーもあって強かったです。また絶対再戦もあると思うので、基山選手がシュートボクシングでチャンピオンに成った時、自分もずっと上に行ってシュートボクシングのリングでも戦いたいと思います。」と語った。

接近戦の中、吉田凛汰朗の一瞬のヒザ蹴りヒット

◆第7試合 ライト級3回戦 

NJKFスーパーフェザー級チャンピオン.龍旺(Bombo Freely)脱水症状により棄権、中止
      
代打出場:テーパプット・シンコウムエタイジム(タイ)
VS
KNOCK OUT-BLACKライト級チャンピオン.久井大夢
(TEAM TAIMU/2005.9.23大阪府出身60.9kg)11戦9勝(3KO)2敗
勝者:久井大夢 / 延長判定1-2
主審:少白竜
副審:椎名29-29(9-10). 多賀谷29-29(9-10). 中山30-29(10-9)

積極的に前に出てパンチと蹴り、後ろ蹴りも見せる久井大夢。テーパプットは組み技とヒザ蹴りで対抗し、まともに貰わない老獪さを見せる。互いのインパクトあるクリーンヒットは無く引分けとなり延長戦。

「テーパプットは同日別興行で2試合こなしての代打出場で、懸かるタイトルも無い試合で延長戦は必要か?」と思わせた。

延長戦は手数増やし、攻めて出た久井大夢と下がるテーパプットはロープを背にするシーンが増えるも組み合った際のヒザ蹴りがあって延長戦は2-1のスプリットデジションで久井大夢が勝利者となった。

テーパプットの内股の腫れは昼興行の傷、久井大夢も果敢に攻める

◆第6試合 61.20㎏契約3回戦(延長1R)

NJKFスーパーフェザー級1位.山浦俊一(新興ムエタイ/ 61.3→61.23→61.19kg)
34戦17勝(3KO)15敗2分
      VS
スックワンキントーン・ライト級チャンピオン.小林司(sports24/ 1997.05.16千葉県出身/ 61.1kg)11戦9勝1敗1分 
勝者:小林司 / 判定0-3
主審:児島真人
副審:椎名27-29. 多賀谷27-29. 少白竜28-29

初回、蹴りとパンチの主導権争いから小林司の長身を活かした強い右ロングフックが山浦俊一の顔面にヒットしグラッと来る山浦俊一。やや攻勢を維持した小林司は第2ラウンドにも右フックで山浦俊一をバランスを崩させるヒットの後、飛びヒザ蹴りやコーナーに詰める流れでパンチ連打でノックダウンを奪った。

しかしここからしぶとくジワジワ前進して来たのは山浦俊一。ラストラウンドはやや巻き返して終了。ノックダウンが勿体無かった。

小林司の右フックが何度かヒットも踏ん張った山浦俊一

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)52.0㎏契約3回戦(2分制)

女子S-1世界ライトフライ級チャンピオン.真美(Team ImmortaL/1990.2.19神奈川県出身/ 51.5kg)21戦16勝(4KO)5敗 
      VS
ノヴ・スレイ・ポヴ(カンボジア)怪我の影響で欠場
代打出場:サーオムアンペット・ポー・ムアンペット(タイ/52.85→52.65kg=650グラムオーバー)計量失格、減点1
勝者:真美 / TKO 1ラウンド 3分7秒
主審:中山宏美

代打出場のサーオムアンペットはミドルキックやヒザ蹴りの上手さは見せたが、真美はその勢いを殺してコーナーに詰めてパンチ連打からヒザ蹴り、更にパンチ連打で第1ラウンド終了と同時にスタンディングダウンを宣せられた。そのままカウント中のレフェリーストップ。この興行唯一の完封TKO勝利。真美の圧勝となった。

欠場のノヴ・スレイ・ポヴは、5月上旬に膝を負傷して1試合のキャンセルがあったが、今回の試合までにも回復しなかった模様。

この日の唯一のノックアウト(TKO)決着となった真美のパンチ連打

◆第4試合 スーパーフライ級3回戦

NJKFフライ級9位.悠(吉仲悠/VALLELY/2003.10.25北海道札幌市出身/ 51.9kg)
11戦4勝(1KO)6敗1分
         VS
柚子貴(京都野口/ 2008.2.3京都市出身 51.85kg)3戦2勝1敗 
勝者:柚子貴 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:児島29-30. 少白竜28-30. 中山29-30

柚子貴のやや上回る攻撃力とヒザ蹴りが目立った攻勢。第2ラウンドにはジャッジ三者とも柚子貴に付ける勢いがあった。悠もアグレッシブに攻めたが巻き返しならず。

◆第3試合 59.0㎏契約3回戦

匠(KING/ 58.65kg) 6戦4勝(2KO)1敗1分 
       VS
脩真(Y’s glow/ 58.9kg)5戦3勝(1KO)2敗
勝者:匠 / 判定3-0 (30-29. 29-28. 30-29)

◆第2試合 56.0㎏契約3回戦

藤井昴(KING/ 55.4kg)3戦2勝(1KO)1分
      VS
井原駿平(ワイルドシーサーゴザ/ 55.65kg)10戦2勝6敗2分 
勝者:藤井昴 / 判定3-0 (30-29. 30-28. 30-28)

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)48.0kg契約3回戦(2分制)

杉田風夏(谷山・小田原道場/ 47.65kg)2戦1勝(1KO)1敗
      VS
堀田優月(闘神塾/ 47.3kg)1戦1勝
勝者:堀田優月 / 判定0-3 (27-30. 28-30. 27-30)

《取材戦記》

予定されていたNJKFウェルター級タイトルマッチはチャンピオンの青木洋輔(大和)が体調不良による欠場で中止。

挑戦者だった1位.小林亜維二は城戸康裕(元・MA日本ミドル級Champ/谷山)とエキシビジョンマッチ2回戦(2分制)を行なった。計量をパスし、NJKF規定でチャンピオンに認定された亜維二は「タイトルマッチという形で試合していないので、チャンピオンとは思っていないし、資格も無いと思っています。なので、次の防衛戦でチャンピオンに相応しい選手になるよう頑張って行きます。」とコメントした。

エキシビジョンマッチについては、「これまでずっと対戦相手ばかりを意識した試合で、今回は周りの観てくれる人を意識して本当に凄く楽しんで出来ました。」
更に「次は防衛戦でチャンピオンの実力証明したいと思います。」と語った。

やはり勝って王座戴冠したい気持ちは強かった。それが防衛戦を強く意識している様子が窺えました。

エキシビジョンマッチを戦った亜維二と城戸康弘

坂上顕二代表は、「今回は土壇場でマッチメイクが幾つか変更になり、サーオムアンペット選手も2日前のオファーで無理に来てくれたのに減量失敗で減点というのも可哀想で、反省しています。大田拓真が無難に勝ってくれて、彼はその時その瞬間やるべきことをやれるから結果が良かったのかなと。吉田凛汰朗選手が良い試合してくれて、セコンドの指示どおり2ラウンドに右ミドルキックを蹴っていれば3ラウンド目で倒せたかもしれないですね。やっぱりパンチを当てる為に蹴りを出していればね。でもメインクラスが充実して皆勝ったので興行として良かったですね。」と語った。

久井大夢と対戦したテーパプット・シンコウムエタイは、同日新宿フェースでのスックワンキントーン興行昼の部(12:00~)で、在日タイ人選手4人制ワンデートーナメント、初戦3回戦判定勝利、決勝戦3回戦を判定負けした後、後楽園ホールへ移動。久井大夢と延長第4ラウンドまで戦い、1日で10ラウンドを戦った。5回戦にしても2試合分。新宿フェースで足に蹴られた傷を負っての出場だった。

真美と対戦したサーオムアンペットも代打出場で、以上の亜維二へのチャンピオン認定、テーパプットの2試合後の代打出場などは、興行的に苦しい裏事情があったとは推測できますが、正規に機能するプロボクシングのコミッション管轄下では認められない事象だったでしょう。ここは公正な競技として、クン・クメールやONEに負けない体制が欲しいところです。

小林亜維二選手は2019年のWBCムエタイジュニアリーグ当時からセンスある戦いで成長してきた選手です。今後、更なる上位王座も勝って獲得してくれることを期待したいものです。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

4月19日、ルンピニースタジアムで行われたONE Championship「ONE Friday Fights 59」に於いて、NJKFフェザー級チャンピオン、大田拓真はコプター・ソー・ソンマイ(タイ)に右ヒジ打ちで第2ラウンドKO勝利。昨年9月に続きONE Championshipでは2連勝となっています。

ONE Championshipはムエタイルール、キックボクシングルール、総合格闘技(MMA)ルール等の試合も行なわれているアジア発祥の総合格闘技の団体です。

カンボジアのクン・クメールは、現地で毎週6~7回の興行数とテレビやSNS配信を行なって人気上昇中。興行の多さから選手の試合間隔も短いという。オウ・テリットは5月5日にカンボジアのKrud Kun Khmer 57㎏級王座戦で判定負けを喫しているという情報。

オウ・テリットが大田拓真と激戦をこなせるほどのレベルの高さが感じられるクン・クメールでした。

クン・クメールは“カンボジアのムエタイ” と訳すのが分かり易いでしょう。ルールはそれぞれ違いはありますが、ラオスでは“ムエラーオ” 、ミャンマーでは“ラウェイ”と言われる競技名となっています。

NJKF次回興行は6月16日(日)に大阪府堺市産業振興センター・イベントホール(開場12:30)でNJKF 2024 west 3rdが開催。
8月4日(日)にはGENスポーツパレスに於いてDUEL.31が開催。
9月14日(日)には後楽園ホールに於いて本興行NJKF CHALLENGER 4thが開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

昼はアマチュアキックボクシング、EXPLOSIONの戦い、夜はプロ興行DUEL.30。

宗方888はパンチと蹴りの前進で古庄洋将を圧し切る判定勝利。

JUN DA LIONはスタミナ切れもノックダウン奪ったポイント勝ち。マリモーは飛びヒザ蹴りでJUN DA LIONを追い詰めた。

◎DUEL.30 / 5月26日(日)GENスポーツパレス19:00~20:43
主催:VALLELY / 認定:NJKF
前日計量は12時よりVALLELYジムにて実施。

◆第6試合 65.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級5位.宗方888(KING/31歳/65.0kg)12戦5勝6敗1分 
   VS
古庄洋将(正心会/31歳/64.7kg)14戦6勝7敗1分 
勝者:宗方888 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜30-29. 椎名30-28. 宮沢30-28

パンチと蹴りの攻防は宗方の勢いが増して行く展開。最後は古庄洋将のヒザ蹴りも目立ったが、宗方が蹴りとパンチで圧し切って第2ラウンドはジャッジ二者、最終第3ラウンドは三者とも10対9での流れで完勝。

宗方888のハイキックで古庄洋将を追い詰める

◆第5試合 65.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級3位.マリモー(KING/39歳/64.75kg)38戦14勝(6KO)23敗1分 
      VS
NJKFウェルター級3位.JUN DA LION(=松本純/E.S.G/37歳/64.35kg)
39戦9勝(1KO)23敗7分 
勝者:JUN DA LION / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜27-28. 椎名27-29. 多賀谷27-28

マリモーは評判どおりのガンガン前に出るアグレッシブな前進を見せるが、JUN DA LIONは長身を利したパンチと上下の蹴りが攻勢を維持。第2ラウンドには右フックがタイミングよくマリモーにヒットしノックダウンを奪った。しかしあまり効いていないマリモーはジワジワ前進。第3ラウンドにはJUN DA LIONが失速。度々スリップダウンするが、スタミナ切れで立ち上がりが遅くなる。ノックダウン扱いされても仕方無い展開で10対8を付けるジャッジが二名。それでも逃げ切った形のJUN DA LIONが僅差判定勝利した。

JUN DA LIONのハイキック、前半は攻勢を維持したが……

マリモーも攻められてもガンガン前に出る体勢

◆第4試合 68.0kg契約3回戦

風成(エス/ 67.5kg)3戦1勝1敗1NC
     VS
兼山宏武(正心会/ 67.55kg)1戦1敗
勝者:風成 / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:中山30-28. 椎名30-27. 多賀谷30-28

初回から風成が蹴りでやや優り、攻勢を強めた第2ラウンド、ヒザ蹴りの圧力が優ったが、兼山宏武のヒジ打ちで眉間辺りを切られた。第3ラウンドは風成がローキックで兼山宏武を追い詰める展開で終始主導権を奪った流れで大差判定。

風成のミドルキック、パワフルな攻めが続いた

 

梅沢遼太郎の右ストレートはノックダウンに繋げていく

◆第3試合 65.0kg契約3回戦

上杉恭平(VALLELY/ 64.65kg)4戦2敗2分
      VS
梅沢遼太郎(白山道場/ 64.4kg)7戦3勝(1KO)1敗3分
勝者:梅沢遼太郎 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

パンチと蹴りの攻防はやや梅沢遼太郎のヒットが目立つ中、徐々に攻勢を強め、第3ラウンドに右ストレートでノックダウンを奪い大差判定勝利となった。

上杉恭平も打ち返すパンチヒットもあったが巻き返すに至らず。

◆第2試合 72.0kg契約3回戦

長岡巧真(VALLELY/ 70.8kg)1戦1敗
      VS
翁長将健(真樹ジムオキナワ/ 72.0kg)4戦2勝(1KO)2敗
勝者:翁長将健 / KO 3ラウンド1分11秒 /

初回に翁長将健が右ストレートでノックダウンを奪いパンチで攻勢を維持するが、長岡巧真も粘って蹴りで距離を保つも、第3ラウンドに翁長が蹴りから再び右ストレートでノックダウンを奪い、カウント中にタオルが投入されるとレフェリーが認め翁長将健のKO勝利となった。

翁長将健が航空便遅延で上京遅れも、KOに繋げる攻勢を維持

◆第1試合 56.0kg契約3回戦

山本龍平(拳粋会宮越道場)1戦1敗
      VS
久住祐翔(白山道場)3戦1勝2敗
勝者:久住祐翔 / 判定0-2 (29-30. 29-29. 29-30)

アグレッシブな攻防ながら初回にやや優勢だった久住祐翔がポイントで逃げ切る形で僅差判定勝利。手数が減らない両者のアグレッシブな展開に第1試合からボルテージが上がった会場内だった。

第1試合からアグレッシブな展開を見せた山本龍平vs久住祐将

 

風成のヒザ蹴りはノックダウンに繋がるような勢いがあったが倒すに至らず

以下2試合は板谷航平、紗彩の練習中の怪我による欠場により中止
・62.5kg契約、須貝孔喜(VALLELY)vs板谷航平(チームゼロス)
・女子(ミネルヴァ)51.0kg契約、松藤麻衣(C吉祥寺)vs紗彩(Dシャカリキ)

《取材戦記》

午前は9時より、NJKFのアマチュア部門、EXPLOSIONが行われました。「WBCムエタイ ジュニアリーグ&EXPLOSION」全国大会代表者決定トーナメントが、小学校低学年(22kg以下)からU15中学生までと、一般男性はヘビー級まで、一般女性枠も設けられています。

小学生レベルも実力向上が見られ、先日、王座獲得祝賀会が開かれた坂本嵐(キング)もEXPLOSION出身でしたが、実行委員長の米田貴志氏に「将来有望な選手はいますか?」と尋ねてみると、アマチュア時代の坂本嵐レベルはザラに居て、特に誰が一番とは言い難いという。昭和や平成初期には考えられないほど、幼少期から鍛えられたテクニシャンが今後プロデビューすることでしょう。

プロ部門では、セミファイナルで対戦したマリモーとJUN DA LIONは、両者とも40戦近いベテラン対決ながら、大きく負け越す戦歴を持つ。あまり注目を浴びる存在ではないが、大きな声援を受けるインパクトある展開を見せた。

 

古庄洋将のヒザ蹴りも効果的にヒット、宗方もパンチを合わせる

メインイベントで勝利した宗方888はリング上で、「自分のリングネーム、皆さん覚えて帰って欲しいんですけど、数字の8三つで“ハチミツ” と言います。覚えて頂けたら凄く嬉しいので宜しくお願い致します。」と勝利での初めてのマイクアピールは何を話せばいいか考えていなかったと言い、名前の紹介で終えた様子。

リングを下りてから勝因については、「セコンドの言うことに従って、それがバッチリ当て嵌まったということですね。パンチに対して古庄選手はヒザ蹴りとかで来る想定と、最初の1ラウンドで打ち合う気が無さそうで蹴る方向でシフトした感じですけど、もっとKO狙ってパンチ出したかったですね。」と語った。

対する古庄洋将は元・J-NETWORKスーパーフェザー級2位という肩書き。現在は不動産会社に勤めるサラリーマン。5年ぶりの試合という。

古庄洋将はリングを下りた後、応援団の声援に感謝と、「このままじゃ終われないので、また頑張るのでお願いします。」という語り掛け。

作戦については、「ヒザ蹴りで倒すはずだったんです。最後にヒザ蹴り出せて宗方選手は効いた様子でしたけど、手が痛くて組みに行く力が足りなかったですね。」と5年ぶりの試合を振り返ってくれました。

NJKF次回興行は次週6月2日に後楽園ホールに於いて「NJKF CHALLENGER 2024.3rd」が開催されます。

今回のメインイベンターはNJKFフェザー級チャンピオン,大田拓真は、4月19日、タイ・ルンピニースタジアムで行われた「ONE Friday Fights 59」に於いて、大田拓真(新興ムエタイ)はコプター・ソー・ソンマイ(タイ)に右ヒジ打ちで2ラウンドKO勝利。35万バーツ(約150万円)を獲得。

6月2日はカンボジア・クンクメールとの対戦。東南アジア競技会(SEA Games)アマチュアボクシングで金メダルも獲得しているオウ・テリットを迎え撃ちます。連続KO勝利に期待が掛かります。

勝利した宗方“ハチ三ッツ” ラウンドガールとツーショット

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

王座戴冠初戦は判定ながら完勝の皆川裕哉。

ビクトリージムにやって来た輸入ムエタイボクサー、プーパカーンも判定で完勝。

ジャパンキックイノベーションから参戦の15歳の裕次郎はベテラン興之介を倒す圧勝。

◎Road to KING2 / 5月19日(日)市原臨海体育館 16:00~19:08
主催:市原ジム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第9試合 57.5kg契約3回戦  

JKAフェザー級チャンピオン.皆川裕哉(KICK BOX/ 57.3kg)26戦14勝(2KO)10敗2分
        VS
JKAバンタム級2位.樹(治政館/ 57.3kg)13戦6勝(3KO)6敗1分
勝者:皆川裕哉 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:勝本29-28. 中山30-28. 西村30-28

開始早々はローキックで様子見も次第にアグレッシブに先手を打って出る皆川裕哉。パンチと蹴りで樹をロープ際やコーナーに詰めてパンチ連打からヒザ蹴りを蹴り込む。チャンピオンの経験値が優るゆとりが感じられる。樹も劣勢になりながらも倒されない意地とアグレッシブな巻き返しを図るが、皆川裕哉は焦り無く攻勢を維持して判定勝利。

皆川裕哉の崩し技、投げられているのは上になっている樹、プロレス技のような派手さ

皆川裕哉
「樹選手は想像どおりのメチャメチャ良い選手でした。対樹選手だったから練習も一生懸命頑張りましたし、気合い入れて練習出来たのでまた一段階強くなれたと思います。樹選手もより強くなっていくでしょうし、僕も強くなっていくので、また防衛戦で対戦もあるかもしれませんが、その時はまた僕が勝ちます!」と笑顔で語った。

皆川裕哉のボディブローがヒット、技の多彩さが目立った


「皆川さんはやっぱり粘り強さはありましたね。対策は前に出ることだったんですけど、やっぱり下がってしまって良くなかったと思います。もう一回、更に体力付けて挑みたいですね。」とリングを下りた直後で、まだ落ち着かない中、涙ながらに語った。

皆川裕哉のミドルキック、フェザー級の洗礼を受ける樹

◆第8試合 スーパーフライ級3回戦

WMC日本フライ級チャンピオン.キリョウ・シリラックムエタイ(シリラック/ 51.9kg)
8戦3勝(2KO)3敗2分
        VS
プーパカーン・ビクトリージム(元・BBTVフライ級2位/タイ/ 52.0kg)
69戦51勝16敗2分
勝者:プーパカーン / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本27-30. 少白竜27-30. 西村27-30

初回から積極的だったプーパカーン。ムエタイテクニックも発揮し、第2ラウンドにはロープ際に追い込んでパンチかヒジか、キリョウからノックダウンを奪う。ラストラウンドはプーパカーンは守りに入ったか、キリョウも攻め倦んで手数減って、レフェリーに「アグレッシブに攻めよ!」と注意を受ける両者だったが、最後は攻め合うもキリョウの逆転は成らず。ビクトリージムにやって来たムエタイテクニシャンは今後も日本選手の壁となりそうな存在である。

プーパカーンがキリョウからノックダウンを奪う。プーパカーンも技が多彩だった

遠い所からでも伸びて来るようなプーパカーンのミドルキック

◆第7試合 ライト級3回戦

JKAライト級1位.興之介(=青木興之介/治政館/ 61.0kg)24戦12勝(4KO)11敗1分
      VS
裕次郎(JKI/拳伸/ 60.7kg)6戦4勝(1KO)1敗1分
勝者:裕次郎 / KO 1ラウンド2分26秒 /
主審:中山宏美

裕次郎は弱冠15歳という情報。興之介は35歳。様子見の蹴りから、裕次郎は先制のパンチでスピーディーに飛びヒザ蹴り、左ストレート、飛びヒザ蹴りで3度のノックダウンを奪ってノックアウト勝利。興之介は何も出来ずに終わった感じ。

二度目のノックダウンとなったの左ストレート、興之介はダメージ深い

◆第6試合 ウェルター級3回戦

JKAウェルター級4位.山内ユウ(ROCK ON/ 66.45kg)9戦4勝(2KO)5敗
        VS
ゾンビ勇伸(JKI・拳伸/64.5kg)37戦13勝(4KO)19敗5分
勝者:山内ユウ / TKO 1ラウンド1分27秒 /
主審:勝本剛司

開始早々はノーガードのゾンビ勇伸に山内ユウの左フックがヒット。更にヒザ蹴りの猛攻。一旦は離れるも山内ユウの右フックでゾンビ勇伸が脚に来てグラつくと追撃を喰らう前にスタンディングダウンを宣せられた。再開後も単発ながら山内ユウに連続で攻められたところでスタンディングのままノーカウントのレフェリーストップ。

山内ユウのパンチですぐ止められたゾンビ勇伸、早めのストップは止むを得ない

◆第5試合 51.0㎏契約3回戦

花澤一成(市原/ 51.0kg)8戦1勝(1KO)5敗2分
      VS
上遠野寧吾(POWER OF DREAM/ 50.9kg)2戦2勝(2KO)
勝者:上遠野寧吾 / TKO 1ラウンド2分59秒 /

上遠野寧吾のハイキック、前蹴りが花澤一成の顔面を襲う。すぐボディブローから右フックでノックダウンを奪った上遠野。更にパンチの打ち合いで花澤は打たれ脆さを突かれたか。右フックで2度目のノックダウンで立ち上がるもカウント中のレフェリーストップ。「まだやれる!」と訴えるも続行は認められず。

花澤一成も闘志はあったが、打たれ過ぎてはストップも止むを得ない

◆第4試合 59.0㎏契約3回戦

隼也JSK(治政館/ 58.95kg)6戦2勝3敗1分
      VS
紫音(JKI/拳伸/ 58.6kg)3戦2勝1敗
勝者:隼也JSK / 判定3-0 (29-27. 29-27. 29-28) 隼也JSKに減点1有

首相撲からのヒザ蹴りは股間ローブローが当たり易い体勢だが、その強いヒットで中断が2度も有っては減点は止むを得ないか。隼也JSKはそれでもテクニックとヒット数で上回り判定勝利。

◆第3試合 ミドル級3回戦  

白井大也(市原/ 72.3kg)3戦1勝(1KO)2分
      VS
西田紘佑(ビクトリー/ 72.4kg)4戦1勝2敗1分
勝者:白井大也 / TKO 2ラウンド2分1秒 /

蹴りと首相撲の攻防の中、ローキック貰った後、膝あたりを捻った形で負傷した西田紘佑。ノックダウンとなってカウント中に陣営からタオルが投げ込まれる棄権をレフェリーが認め、白井大地のノックアウト勝利。

◆第2試合 ライト級3回戦 

菊地拓人(市原/ 60.8kg)4戦2勝2敗
      VS
中山裕登(JKI/花澤/ 59.9kg)1戦1敗
勝者:菊地拓人 / 判定3-0 (29-28. 30-28. 30-28)

 

裕次郎のノックダウン前の飛びヒザ蹴り、この後コーナーで飛びヒザでノックダウンを奪う

◆第1試合 フェザー級3回戦  

西湧輝(市原/ 56.8kg)1戦1敗
       VS
海士(ビクトリー/ 56.85kg)1戦1勝
勝者:海士 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

《取材戦記》

ツイキャスでライブ配信されたRoad to KING2で解説を務めた元・WKBA世界スーパーフェザー級チャンピオン蘇我英樹(市原)氏は、

「ビクトリージムのプーパカーン選手は若くて、日本に来て初めての試合でも技術も凄く見えたので、今後どういう活躍をしていくのかが楽しみなところです。」

「メインイベントの皆川裕哉選手は多彩に結構何でも出来るし、今日は接近戦の首相撲の攻防も強くて技術面上がっていて、まだまだ伸びるといった部分で今後が楽しみです。」

「樹選手はバンタム級から階級上げて、今回フェザー級としての洗礼を受けて、チャンピオンといきなり一発目というのも期待値が凄くあったと思いますけど、フェジカル面でちょっと分が悪かったのかなと見えました。」

と放送直後ながら、よくこんな私(堀田)にしっかり応えてくれるなあと思うほど明るく丁寧に応えてくれました。

 

山内ユウがパンチからヒザ蹴り連打、ゾンビ勇伸は防戦一方

市原臨海体育館での興行は昭和から続く中、コロナ禍後では2回目の興行となりました。昨年は睦雅(ビクトリー)がメインイベンターとしてチュ・ギフン(韓国)にヒジ打ちでTKO勝利。今年は皆川裕哉がしっかりメインイベンターを果たしました。

この会場で蘇我英樹がメインイベンターを務めたのは2016年の引退試合で、大月晴明にぶっ倒された完全燃焼でした。そこから市原ジム所属のメインイベンターが育っていない現状。期待の花澤一成は脆さが出るKO負け。ミドル級の今野顕彰は引退。かつては須田康徳、長浜勇といった名チャンピオンが存在した市原ジム。メインイベンターが育つのはいつになるでしょうか。

今回のメインイベンター皆川裕哉は名門目黒ジムを継承する鴇俊之氏経営のKICKBOXジム所属。チャンピオンはこれからも誕生する期待は出来ますが、目黒ジムのオーラがあるのは皆川裕哉が最後かなあ。2020年1月に目黒藤本ジムも閉鎖され、そんな時代の流れを感じます。

次回ジャパンキックボクシング協会興行は7月28日(日)に後楽園ホールに於いて、KICK Insisr.19が開催予定です。

3月24日に完勝し、7月は世界と名の付くタイトルへの挑戦をアピールしていた瀧澤博人と、同じく3月24日に完勝し、5月3日にはルンピニースタジアムでのONE Friday Fights 61に出場し、パンチ連打でKO勝利した睦雅も出場予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

今興行タイトル「フェザー級の至宝が揃い踏み、甦る老舗の底力」に際し、前回に続いてのメインイベンターは、無くてはならない存在となった瀬戸口勝也。ベテランのガン・エスジムにはテクニックで敗れるも強打は優った。

ジョニー・オリベイラの王座戴冠後の初戦はムエタイテクニシャンに惜敗。

NJKFからやって来たTAKAYUKIと庄司理玖斗ともにインパクトあるTKO勝利。

◎TITANS NEOS.34 / 5月12日(日)後楽園ホール17:15~20:03 
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

(戦績は興行部データより、この日の結果を加えています。第4試合以降はプロ試合。)

◆第12試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 57.85kg)43戦31勝(14KO)9敗3分
        VS
ガン・エスジム(元・ラジャダムナン系フェザー級5位/タイ/ 58.0kg)107戦78勝26敗3分
勝者:ガン・エスジム / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本29-30. 宮沢28-29. 中山28-29

ガンエスジムは2022年9月、馬渡亮太にはヒジ打ち相打ちでKO負けしているが、2022年7月、ジャパンキック協会の睦雅に判定勝利、2023年6月、NJKFスーパーフェザー級の龍旺に判定勝利、2023年8月、NKBライト級の棚橋賢二郎にTKO勝利しているベテランムエタイ戦士。

初回早々は両者ともローキックで牽制、徐々にミドル、前蹴りなど高めの蹴りからパンチの距離に移る。ガンエスジムは重いパンチで牽制。ジャブを幾らか瀬戸口にヒット。瀬戸口勝也も得意の強打でボディーから顔面へ打ち返す。

蹴りはガン・エスジムが優る。ヒジ打ちで斬られた瀬戸口勝也は苦戦

第2ラウンド、瀬戸口はパンチ、ガンエスジムは重いミドルキック、接近した際にガンエスジムは左ヒジ打ちで瀬戸口の眉間をカットし、そのまま組み合ってヒザ蹴りで攻勢を強める。一旦ドクターチェックに移るもすぐ再開。ガンエスジムは余裕が出てきた流れ。

パンチは瀬戸口勝也が優る。しかし凌ぐのが上手いガン・エスジム

第3ラウンド、瀬戸口のパンチを蹴りと首相撲へ導いて凌ぐガンエスジム。瀬戸口はガンエスジムのテクニックに躱されるまま終了。

駆引き勝負はガンエスジムが優った勝利、無念の瀬戸口勝也

◆第11試合 60.0㎏契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ 59.8kg)
62戦16勝(1KO)28敗18分
       VS
ペットボーライ・チュワタナ(タイ/ 59.6kg)129戦86勝38敗5分
勝者:ペットボーライ / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名28-30. 宮沢28-30. 中山29-30

チャンピオンに成ればやって来るムエタイ路線。3月に王座に就いたジョニー・オリベイラも然り。今回の対戦相手はペットボーライ。タイではペッチンチャイというリングネームらしい。文字をカタカナ読みすれば“ペットチンチャイ”。パンチとローキックが強いテクニシャンという情報だった。

ペットボーライのローキック、頑丈なジョニー・オリベイラは崩れない

パワーで優るジョニー・オリベイラのパンチの攻勢

ペットボーライの体幹良いミドルキック。パンチで行きそうなジョニーは重心が前足に掛かるスタイル。テクニックでは敵わずもパンチのパワーで圧し優りたいジョニーと、ムエタイテクニック発揮のペットボーライ。危機感あったジョニーの劣勢感は無く、ペットボーライのテクニックを凌ぎ切った。

ジョニーは「ペットボーライは上手かったです。」と一言。

セコンド陣営の中川卓氏は「ペットボーライはテクニック有りましたけど、大差を付けられることは無いと思っていて、ジョニーはリーチあるのでもっとジャブも出せればいいけど、練習では出るのに試合では力んでしまって出さないから勿体無かったです。離れ際にハイキックも出せればよかったですね。」と語った。

体幹、テクニック優って勝利のペットボーライ、無念のジョニー・オリベイラ

◆第10試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級2位.TAKAYUKI(金子貴幸/K crony/ 57.05kg)
29戦16勝(1KO)12敗1分
        VS
KAZUNORI(元・DEEP KICK 53㎏級3位/REAL/ 56.9kg)40戦14勝26敗
勝者:TAKAYUKI / TKO 3ラウンド46秒
主審:勝本剛司

序盤は互角も次第に的確に隙を見て空いたところを打ち込む金子貴幸のリズムが上回って行き、ローキックでバランス崩させたり、パンチ蹴りでも攻勢を強め、ノックダウンへ繋いだ。KAZUNORIはノックダウンを喫した後、そのままドクターチェックに移り、ヒジ打ちによるカットと見られたが、そのままドクターの勧告を受け入れたレフェリーストップとなった。

TAKAYUKIが組み合ってのヒザ蹴り、徐々にベテランの技で圧倒した

◆第9試合 56.0kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級6位.庄司理玖斗(拳之会/ 55.9kg)12戦8勝(5KO)3敗1分
        VS
玉城慧(真樹ジム沖縄/ 56.35→56.3→55.95kg)9戦5勝4敗
勝者:庄司理玖斗 / TKO 3ラウンド44秒 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

第1ラウンドはアグレッシブに蹴りがヒットしていた玉城慧だが、徐々に庄司が調子を上げ、ヒジとパンチで逆転していくと玉城慧は後退気味。第3ラウンドにはラッシュをかけた庄司がパンチからヒジ打ちを玉城の頭部へ落としてノックダウンを奪った。蹲った玉城はそのまま横たわり、テンカウント間近ではあったが、カウント中のレフェリーストップで庄司理玖斗がTKO勝利した。

庄司理玖斗が多彩な攻めで成長を見せた巻き返しの勝利

◆第8試合 70.0kg契約2回戦 義人欠場につき磯村真言に変更

ヴェジー・チョル(伊原/ 68.9kg)1戦1分
    VS
磯村真言(グラップリングSB名古屋/ 68.95kg)6戦5敗1分
引分け 0-1 (19-19. 19-20. 19-19)

ヴェジーは蹴りが速く、重くヒットするインパクトを与えた初回。磯村真言も対抗し、打ち合い蹴り合って巻き返しに掛かるとヴェジーのパワーがやや失速、磯村が巻き返した第2ラウンドによって、取って取られた採点の0-1ではあるが引分けとなった。

中国出身のヴェジー・チョルとシュートボクシングから出場の磯村真言の意地の攻防

◆第7試合 63.5kg契約2回戦

宇野澤京佑(伊原/ 63.3kg)2戦1勝1敗
    VS
今野龍太(笹羅/ 62.5kg)5戦1勝3敗1分
勝者:宇野澤京佑 / 判定3-0 (20-17. 20-18. 20-17)

パンチの交錯はやや打ち優った宇野澤京佑が判定勝利。

宇野澤京佑がパンチの攻防を優って判定勝利を導いた

◆第6試合 OVER FORTYFIGHT 60.0㎏契約2回戦(2分制)

長友亮二(KING/ 59.5kg)3戦2勝1敗
      VS
伊興田翔(Team lmmortaL/ 59.6kg)3戦3勝(1KO)
勝者:伊興田翔 / TKO 2ラウンド52秒 /

伊興田翔がパンチでラッシュ掛け、長友亮二はスタンディングダウンを奪われるが、更に打たれながらもカウンターの右ストレート数発繰り出し、伊興田翔をグラつかせるも一発のみで、伊興田翔の勢いが優り左ストレートでノックダウンを喫した長友亮二。立ち上がるもしっかりファイティングポーズをとれず、カウント9でレフェリーストップとなった。

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)44.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級11位.UveR∞miyU(T-KIX/ 43.85kg)8戦3勝4敗1分
       VS
友菜(Team lmmortaL/ 44.0kg)6戦1勝3敗2分
引分け 0-1 (29-29. 29-29. 29-30)

◆第4試合 女子(ミネルヴァ)55.0kg契約3回戦(2分制)

三宅美優(拳之会/ 54.2kg)vsMIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 54.05kg)
松田沙和奈欠場、三宅美優に変更
勝者:三宅美優 / KO 1ラウンド1分8秒 / 2ノックダウン
主審:中山宏美

◆第3試合 アマチュア男女混合 37.0㎏契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原越谷/ 36.8kg)vs永井りい(VALLEY/ 36.3kg)
勝者:西田永愛 / 判定2-0 (19-19. 20-19. 20-19)

◆第2試合 アマチュア 43.0㎏契約2回戦(2分制)

西田蓮斗(伊原越谷/ 42.7kg)vs渡部翔太(KING/ 43.0kg)
勝者:西田蓮斗 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-18)

◆第1試合 アマチュア 34.0㎏契約2回戦(2分制)

武田竜之介(伊原越谷/ 33.45kg)vsヨムトュノーイ・ロークパークデーン(タイ/ 33.8kg)
勝者:武田竜之介 / TKO 1ラウンド40秒 / カウント中のレフェリーストップ

《取材戦記》

主力選手が少ない中、どうやって甦っていくかが注目され続ける新日本キックボクシング協会。閑散とした会場の静けさは、キックボクシングが最も低迷していた昭和57年頃の会場のようだった。各選手の応援団の歓声が幾らか騒めく役割を果たしたが、試合によっては歓声よりセコンド陣営の声が響く会場内。

2興行連続でメインイベンターとなった瀬戸口勝也。前回、木下竜輔との王座決定戦を制し、チャンピオンロードを歩むことになったジョニー・オリベイラの二人は今後もメインイベンタークラスとして起用されそうな流れである。

昨年10月、脳腫瘍の大病から復活宣言した江幡塁は、未だ完全復活の目途は立っていないが、仮に復活が叶うならば、新日本キックボクシング協会の「甦る老舗の底力」がより期待出来る存在である。コーチとして指導に当たる現在だが、新たな復活の展開も見えて来そうな江幡塁である(私の予想はすぐ外れるので御容赦ください)。

次回、新日本キックボクシング協会興行は7月7日(日)後楽園ホールに於いてMAGNUM.60が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年6月号

◆NJKFの新エース、嵐とは

嵐(坂本嵐/2005年4月26日、東京都出身)は、今年2月11日にNJKFバンタム級王座決定戦で、甲斐元太郎(理心塾)を第2ラウンドにヒザ蹴りをボディーに炸裂させ倒し切るTKO勝利で王座獲得。興行MVPでNJKF(ニュージャパンキックボクシング連盟)のエース格へ頭角を現した。

チャンピオンとなって最高のチームと並ぶ(2024.2.11)

その評価で4月7日は初のメインイベンターとなったが、前日計量記者会見で語ったのは「そのうち全てのチャンピオンを倒していく。その最初の相手は桂英慈選手になる!」と宣言したが、その桂英慈に主導権を奪えない苦戦の引分け。早速壁にぶち当たった感のある中で、11月のNJKF祭り(総決算)に向けて、今年のエース格は担い続けなければならない。

桂英慈に苦戦の引分け、再戦があれば雪辱したい相手(2024.4.7)

3年前だが16歳の嵐。2戦目、悠戦(2021.6.27)

絆興行での5戦目、玉城海優に2ラウンドKO勝利(2022.4.24)

9戦目、倒れた相手に挑発、KAZUNORIに判定勝利(2023.6.4)

◆凶暴性ある心優しい子

嵐が5歳の時に入門したキングジムでは7人目のチャンピオン誕生となった中、3月17日に江戸川区のタワーホール船堀で嵐のNJKF王座獲得祝賀会が行われました。

嵐は御挨拶で「2月11日にはNJKFバンタム級チャンピオンと成っても全然こんなところで満足していないし、俺はNJKFをトップ団体に連れて行って、必ず最終目標である世界制覇を成し遂げ、キングジムという最高のチームと自分を応援してくれる最高の応援団に必ず日本のトップの景色を見せようと思っているので、御支援応援宜しくお願い致します。」と力強い宣言。

更にステージ上ではお母様に「生まれてから18年、非行に走ったり、格闘技をやりたいと言い出した時に、真剣に向き合って話し合って、見捨てることなくここまで育ててくれて有難う。」と感謝の言葉を述べた。

嵐のお母様は「チャンピオンベルト獲った時もそうなんですけど、想像も出来ないことやってくれるので、いつも胸が熱い想いをさせられています。とても心優しい子なんですけど、キックボクシングをやると決めて、今迄ずっと頑張って来てくれたので、これからも応援宜しくお願い致します。」と息子への想いを語った。

昨年11月12日のNJKF興行のセレモニーでは、今年2月11日興行の東西対決で対戦する甲斐元太郎(理心塾)と対峙し乱闘寸前の罵り合いを起こした。その東西対決の前日計量では「あいつを殺します!」と物騒なアピールをして一人先に退席する悪役っぷりを発揮。しかし試合はクリーンファイトで技量を見せ付け、「チャンピオンは俺を産んだ母!」と母の腰にチャンピオンベルトを巻いた親孝行ぶりを見せたのは、すでに試合レポートで述べたとおりである。

ここまで13戦11勝(5KO)2分……(不戦敗は加えません)

嵐と甲斐元太郎の舌戦(2023.11.12)

 

甲斐元太郎の心臓にヒザ蹴り炸裂(2024.2.11)

◆カオマンガイ嵐としてデビュー?

現・キングジム、羅紗陀会長が語る嵐について、ジムに入った5歳の頃、当時はまだ現役で、コーチでもあった羅紗陀氏に後方からカンチョーしたり、股間を殴って来たりの腕白坊主。でもキックボクシングの才能はピカイチで、同時に学校の成績も良かったが、キックボクシングに専念したいということで勉強しなくなった様子も、何をやるにも意志の強い子だったという。

NJKFで始まったアマチュア大会「EXPLOSION」で嵐は2015年の第一回から出場。大会実行委員長の米田貴志氏は、「この頃からすでに嵐選手は強くて上手いと思っていました。」と語る。

しかしアマチュア時代はトントン拍子で来た訳ではなく、小学校高学年になると、アマチュアのタイトルマッチで連敗喫して、次のタイトルマッチで負けたら辞めるという中、最後の最後でアマチュアのベルト獲った時には、嵐本人やお母さん、周囲の仲間らが皆泣いたという感動も懐かしいという羅紗陀会長。

(2018年2月4日、EXPLOSION第5代37kg級王座。2019年12月15日、第8代50㎏級王座獲得)

そしてプロに上がって試合を重ねていく毎に、キックボクシング、ムエタイ、ボクシング、それを融合したハイブリットな嵐に成長していった。

王座獲得祝賀会で貼られた4月7日興行ポスター、18歳がメインイベンター(2024.3.17)

プロデビューは2021年(令和3年)3月7日、3回戦で判定勝ち。リングネームは名前だけの“嵐”。

向山鉄也名誉会長(前会長)は、「嵐がデビューする前に、リングネームをどうするか、どうしたら名前が売れるかなと、『嵐、お前タイ料理で何が好きだ?』と聞いたら、『カオマンガイ』と言うから「カオマンガイ嵐」にしようと決めてエントリーしたのに、試合当日のプログラム見ると名前が替わっていて、この会長差し置いて連盟に直訴して“嵐”に替えていた」という。

キングジムは向山会長の趣味で、歴代からヘンなリングネームを付けられる慣習があった為、これを回避しようと先回りしたなら、嵐は試合のような相手の作戦を読んで先手を打つ才能を持ったキックボクサーであろう。

◆今後のストーリー

向山鉄也氏は続けて、

「嵐はこれからが本当の勝負で、世界平和? いや、世界制覇か、この最高峰を目指しているということで今、軽量級で世界一になっている奴、それが吉成名高(ムエタイ二大殿堂同時制覇、二階級制覇)。それがめっぽう強い奴なので、これに勝てば嵐の夢も達成出来ると思います。今はまだ早いんですけど、2~3年もすれば名高もバンタム級に上がって来るだろうと思うので、そこで名高との試合を観たいなと思いますね。そこで嵐が勝てば一番ですけど、そこまで行くのにこれから一日一日、本当に血の出るような努力が必要。まあこれから嵐は今からどんどん新たなストーリーが始まっていくので、皆さんもこいつの生き様を最後まで見届けてやって、後楽園ホールに応援に来て頂ければと思います。」

と実現可能ながらも険しい日々となるストーリーを語っていた。

キングジム前会長の向山鉄也氏とツーショット、孫の世代の歳の差(2024.3.17)

先日4月7日の桂英慈戦は格下相手かと思われる中、首相撲が強く、相手の持ち味を殺してしまう上手さがある選手だった。嵐はテクニックや圧倒的な攻撃力があるが、スタミナ的な不安が指摘された。今後はタイトルマッチを含め、ノンタイトル戦でも5回戦が増えて来る可能性も大いにあり、スター性も充分あるので我武者羅に練習して今後に繋げて貰いたいものです。

格闘群雄伝で現役選手を扱うのはプロアマ含め、嵐で二人目でした。現役選手という存在は今後の運命が全く分かりませんが、嵐はここから大きく飛躍すると見据えての御登場でした。

世界制覇にもいろいろな道程がある中、向山鉄也氏が期待する吉成名高戦の実現まで“チャンピオンの終わりなきトーナメント”を現役最後まで見届けたいものです。

祝会で披露したミット蹴りでコーチを圧倒(2024.3.17)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年5月号

ラストファイトと引退式、訣別のリング。

海老原竜二は2021年12月11日に王座決定戦で龍太郎(真門)を左ハイキックで倒し、10月からの4人トーナメントを制しての初戴冠。2022年10月29日、初防衛戦で森井翼(テツ)に敗れ陥落したが、パンチが得意の“生粋の喧嘩屋”の異名を持ってNKBエースの一角を務めて来ました。

有終の美は飾れずも、ラストファイトに相応しい完全燃焼のノックアウト(TKO)負けは清々しい姿であった。

◎冠鷲シリーズ vol.2 / 4月20日(土)後楽園ホール17:30~20:53
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

(戦績はこの日のプログラムを参照し、この日の結果を加えています。石川直樹は絆興行より参照)

◆第12試合 55.0kg契約 5回戦

 

勢い付いて来た石川直樹の飛びヒザ蹴り、更にヒザ蹴りの攻勢は続く

NKBバンタム級1位.海老原竜二(第9代Champ/神武館/1991.3.6埼玉県出身/ 54.9kg)
27戦14勝(6KO)13敗
       VS
石川直樹(元・日本フライ級Champ /Kickful/1986.8.18埼玉県出身/ 54.85kg)
47戦27勝(13KO)10敗10分
勝者:石川直樹 / TKO 3ラウンド 1分46秒
主審:鈴木義和

パンチの海老原竜二とヒザ蹴りの石川直樹。どちらが主導権を握るかが見所の攻防は、両者のローキックと前蹴りでの様子見から、次第に距離が縮まると石川直樹が首相撲から崩し転ばす流れに移っていく。海老原は蹴りからパンチを狙うが、石川はハイキックも使う蹴りでしっかり対応。

第2ラウンドには更に石川直樹の首相撲の展開に移っていくが、組み合うとすぐブレイクが掛かり、組んでジワジワ攻めるヒザ蹴りがやり難い展開に陥った。次第に苛立ち、レフェリーに「ブレイクが早い!」と訴えるも聞き入れられず、それでも至近距離でヒザ蹴りを入れ、素早く組み付いて崩し転ばす技は光った。

ボディーが効いている海老原は転ばされてからの立ち上がりも次第に遅くなり石川の飛びヒザ蹴りでロープ際に追い込まれ、更にヒザ蹴りを受け2度のノックダウンを奪われてしまう。それでも懸命に立ち上がり諦めない姿で逆転を狙う。

第3ラウンドには、石川の伸びあり突き刺す意味を持つヒザ蹴り“テンカオ”が再び海老原のボディーを捕らえると、立ち上がるもファイティングポーズを構えるに至らず、レフェリーストップが掛かった。

海老原竜二の右ミドルキック。持っている技は出し尽くした

首相撲からのヒザ蹴りや転ばしは石川直樹の技、組まれる方は苦しい

 

試合後、引退セレモニーに臨んだ海老原竜二、家族やジム関係者に感謝を述べた

試合後、ボディーのダメージは回復し、グローブとバンテージを外され、無事に引退セレモニーに移り、海老原竜二の挨拶に入った。話すことは何も用意してなかったという中、4分程の熱い語り口。

「引退試合だったんですけど、しょっぱい試合しちゃって、最後、派手に散っちゃって申し訳ないです。」と応援団が居る北側に向かって語り続けた。「16歳の時、親父死んじゃって、オカン一人で育ててくれて、ここまでやって来れたんですけど、ちょっとは親孝行出来たかなと思います。オカン有難う!」

今後、活躍する選手の皆には「やるかやられるかの試合を体現して欲しいと思います。」と想いを告げ、最後は「今迄最高の格闘技人生でした。NKB最高!」と締め括ってテンカウントゴングに送られた。

リングを下りた後は「蹴られてもアバラを折られても勝ちたかったので、もうちょっと打ち合えればと思いましたが、まあ全部出し切ったので悔いは無いです。」と語った後、石川直樹の控室を訪れた。海老原竜二のヒジ打ちも石川直樹の額を掠めており、その互いの狙った技の感想を言い合ったり、石川直樹は「引退試合に選んでくれて有難う。」といった戦った者同士の爽やかさが広がっていた。

◆第11試合 66.7kg契約3回戦

石川直樹に「前回3月31日の絆興行から2週間(実際は20日間)の間隔でしたけど、調子はどうでしたか?」と問うと、「調子は良かったです。脛はちょっと痛かったですけど、試合となれば関係無くて、また2週間程度で試合やれと言われても全然出来ますし、何なら明日にでも出来ます」と意欲的。海老原竜二を倒した、いずれのノックダウンもヒザ蹴りで実力発揮。組み合うとすぐブレイクが掛かることには納得していない様子だった。

NKBウェルター級チャンピオン.CAZ JANJIRA(JANJIRA/1987.9.2東京都出身/ 66.35kg)
43戦20勝(4KO)16敗7分
          VS
テーパプット・新興ムエタイ(元・BBTV 7chスーパーフェザー級Champ/タイ/ 64.8kg)
引分け 0-0
主審:高谷秀幸
副審:加賀見30-30. 前田30-30. 鈴木30-30

ムエタイテクニシャンのテーパプットに対し、蹴られても蹴り返すカズ・ジャンジラ。組み技やヒザ蹴りで優るテーパプットの上手さは発揮されつつ、カズ・ジャンジラはパンチの圧力で優ったが、採点は全く差が付かずの引分け。もう少し振り分けるならば29-29になりそうな展開ではあった。

カズ・ジャンジラも果敢に攻めたテーパプットとの攻防、ムエタイ路線は続くか

最終ラウンドはカズ・ジャンジラがテーパプットを追い込んだパンチヒット

◆第10試合 63.0kg契約3回戦

NJKFライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/1993.12.31茨城県出身/ 62.85kg)
16戦7勝(1KO)8敗1分
        VS
NKBライト級3位.蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 63.0kg)
9戦6勝(3KO)2敗1NC
勝者:蘭賀大介 / 判定0-3
主審:笹谷淳
副審:鈴木28-29. 前田28-30. 高谷28-29

蹴り技で圧力掛けたTAKUYAは組み技でのヒザ蹴りも優った。蘭賀大介はパンチの圧力で優り、下がるTAKUYAを追いかける展開に大振りになりながらもパワフルなパンチで追い続けて判定勝利。

蘭賀は試合後、「勝ったんですけど倒しに行こうとし過ぎて大振りになって、かなり雑になったことが多くなって反省しています。次は6月も出場予定なので頑張ります。」と応えた。

蘭賀大介の右ストレートがTAKUYAにヒット、勢いが増して行った

KO出来ず、マットを叩いて悔しがる蘭賀大介

勝利した蘭賀大介、アグレッシブな試合は好感度上昇中

 

後藤啓太のヒザ蹴りが大月慎也にヒット、新潟から期待のスター誕生

◆第9試合 ウェルター級3回戦

大月慎也(TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/ 66.6kg)23戦9勝(4KO)10敗4分
      VS
後藤啓太(拳心館/1997.8.29新潟県出身/ 66.55kg)4戦4勝(2KO)
勝者:後藤啓太 / 判定0-3
主審:加賀見淳
副審:鈴木27-30. 前田28-30. 笹谷26-30

上背で優る後藤啓太の伸び有る蹴りが大月慎也に圧力を掛け、第2ラウンドには右ミドルキックでロープ際に追い込んで右ストレートヒットからヒザ蹴り連打でグロッギー気味の大月にパンチを浴びせたところでスタンディングダウンを奪った。更に離れてハイキックやミドルキック、組み付けばヒザ蹴りで攻勢を維持し判定勝利した。

◆第8試合 ミドル級3回戦

土屋忍(kunisnipe旭/1986.12.11千葉県出身/ 72.25kg)18戦9勝6敗3分
      VS
夏空(NK/1999.7.24大阪府出身/ 72.45kg)5戦4勝(2KO)1分
引分け 0-1
主審:高谷秀幸
副審:鈴木29-29. 前田29-29. 笹谷28-29

アグレッシブにパンチと蹴りの互角の攻防も、第3ラウンドには疲れ果てたような攻防で最後までせめぎ合った。第2ラウンドは土屋忍がやや優勢。第3ラウンドには夏空がロープに詰めてのパンチ連打が優勢を保った流れで引分け。

◆第7試合 バンタム級3回戦

シャーク・ハタ(秦文也/テツ/1987.10.20大阪府出身/ 52.45kg)10戦4勝4敗2分
      VS
ベンツ飯田(TEAM Aimhigh/1997.4.17群馬県出身/ 53.35kg)16戦3勝(1KO)9敗4分
引分け 1-0
主審:加賀見淳
副審:鈴木29-29. 前田30-29. 高谷30-30

両者の蹴りがアグレッシブな攻防を見せたが、的確な有効打は無く、差が出難い展開で終わった。

◆第6試合 ライト級3回戦

KEIGO(BIG MOOSE/1984.4.10千葉県出身/ 60.75kg)23戦7勝10敗6分
      VS
山本太一(ケーアクティブ/199512.28千葉県出身/ 61.0kg)16戦6勝(4KO)7敗3分
勝者:山本太一 / 判定0-3
主審:笹谷淳
副審:高谷29-30. 前田29-30. 加賀見28-30

両者のアグレッシブな攻防も、やや消極的なKEIGOの動きに対し先手を打つ山本太一の攻勢で判定勝利。

◆第5試合 52.5kg契約3回戦

田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 52.35kg)5戦3敗2分
      VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 52.3kg)4戦1勝2敗1分
勝者:荒谷壮太 / 判定0-3 (27-30. 28-30. 28-30)

◆第4試合 57.50kg契約3回戦

KATSUHIKO(KAGAYAKI/1975.11.13新潟県出身/ 57.3kg)6戦2勝(2KO)3敗1分
      VS
堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 57.1kg)5戦3勝1敗1分
勝者:堀井幸輝 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

◆第3試合 ウェルター級3回戦

健吾(BIG MOOSE/1993.10.10千葉県出身/ 66.35kg)4戦3勝(1KO)1敗
      VS
皓太(TEAM Aimhigh/1997.9.21栃木県出身/ 68.6→68.4kg=1.72kg超/減点3)2戦2敗
勝者:健吾 / KO 2ラウンド 2分56秒

健吾が徹底したヒザ蹴り連打で皓太を倒し3ノックダウンによるノックアウト勝ち。

◆第2試合 バンタム級3回戦

磯貝雅則(STRUGGLE/1986.11.29東京都出身/ 53.35 kg)4戦2勝2敗
      VS
杉山海瑠(HEAT/2009.6.5静岡県出身/ 52.9 kg)1戦1勝(1KO)
勝者:杉山海瑠 / TKO 2ラウンド2分13秒 /

杉山海瑠のヒジ打ちによる磯貝雅則の左目瞼をカット、ドクターのチェックの後、パンチによるものか、負傷箇所の悪化で、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。

◆第1試合 ライト級3回戦

龍志(テツ/1995.12.12大阪府出身/ 60.95kg)5戦2勝3敗
      VS
樋口雄生(ケーアクティブ/1995.4.14東京都出身/ 60.9kg)1戦1敗
勝者:龍志 / 判定3-0 (29-27. 28-27. 29-27)

《取材戦記》

「勝って引退は許さない。引退する奴は負けて行けばいいので、これで良かったです。」と言う興行関係者も居て、華やかさより完膚なきまで倒されて燃え尽きた方が、去り際の感動や格闘技の厳しさが表れるという考え方だろう。過去のテーマでも触れていますが、引退試合(即引退式)も、倒されて現役生活を終える選手は多かった。担架で運ばれるほどのダメージを負ったら引退式どころではなくなりますが、公式戦直後の引退式は感動が強く残るものでしょう。

勝って華々しい引退式は、「まだまだ出来るじゃないか!」と言われるのも仕方無いところで、チャンピオンのまま引退や無敗のまま引退も「惜しい!」と言われることを理想に想う選手はいるかもしれません。

今回の引退セレモニーは海老原竜二の御挨拶とテンカウントゴングだけという簡潔なものでした。セレモニーは終了した後に、家族がリングに上がって花束を贈り記念撮影、ジム関係者が上がって記念撮影とスケジュールに無い自由な振る舞い。これはセレモニーの一環としてやるべきだった。更に渡邊信久代表と興行部担当の竹村哲氏の贈る言葉があれば引退式としてのグレードも上がったでしょう。或いは会場の事情で21時を越えたくなかったのかもしれませんが。

次回、日本キックボクシング連盟「冠鷲シリーズ」は6月29日(土)に後楽園ホールに於いて開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年5月号

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