松岡 きょう私は怒っています! 今年の春に阪神タイガース取材をお願いしたのに、なにも報告がない! 報告がないから記事もない! それで阪神タイガース、セリーグ優勝はおろか、日本一に勝ち上がったじゃないですか! 皆さん何をしていたんですか!

一同 (ブツブツ)

松岡 職務怠慢ですよ。こんなことでは信頼関係が維持できません。

D 社長、たしかに4月9日に取材の指示を受けましたね。それから俺たち「猛虎」のように動きましたよ。今年の阪神優勝は、俺たち「鹿砦社タイガース取材班」の「縁の下の力」がなければ実現しなかったと言ってもいい。

A そのあたりは極秘でしたからね。今年は真っ黒に日焼けしました。

B 大山や佐藤、近本、中野。つまり野手の担当は僕でしたね。あっ! 大山からLINE きた。

C 岡田監督は基本「守りの野球」でしょ。ブルペン含めて投手陣とはかなり懇意にさせてもらいましたよ。

松岡 本当ですか?

D もちろんですよ。だって考えてもみてください。今年の阪神、岡田監督の存在感が圧倒的だったでしょ。その岡田監督をまずおさえに行く。これ、基本でしょ? そこから動き出したわけですよ。

松岡 具体的にはどうやってですか?

A 社長、とぼけないでくださいよ。本社の近くにはタイガースファンにとって夢のような場所がたくさんあるじゃないですか。

B そうそう。社長がシーズン開幕前、岡田監督と会った本社から歩いて20秒の、あのお好み焼き屋さん。

D Bよ、川藤さんが動画で配信したんだからもう店の名前、言ったらいいだろう。


◎[参考動画]【川藤幸三の漢グルメ#1】甲子園球場から徒歩3分!! 40年通い続けたお好み焼き屋をご紹介!!

B そうっすね。「木馬」です。

C 社長が岡田監督と握手したのも「木馬」でしょ。

松岡 そ、そうですが……。

A 「木馬」に張り付いたんですよ。徹底的にね。そしたら来るわ、来るわ。

B お好み焼きは美味しいけど、あの店椅子が小さいでしょ。プロ野球選手やOBは窮屈じゃないのか、って思ってましたけど、平気なんですね。力士も来てたよな、C。

C 来てた、来てた。でも力士は関取じゃないですよ。まだ序二段か三段目とか言ってました。それからスポーツ紙の熱心な記者も結構ね。

D 阪神の選手やOBばかりじゃなく、巨人筆頭にとにかく大物が入れ代わり立ち代わり。驚きましたよ。でね、活かさない手は無いじゃないですか。日本代表が組めるくらいの現役選手陣やコーチ、監督とネットワークを作ったわけですわ。

松岡 それはいいですけど、どうして報告してくれなかったのですか?記事も出ていないし。

D だから言っているじゃないですか。もう俺たち取材どころじゃなくなって「当事者」になったわけです。

松岡 当事者?

A 阪神のセリーグ優勝は子供の頃記憶があるんですけど、日本一の1985年はまだ自分産まれてなかったし。

B そうそう。この中で85年知っているのはDさんだけですよ。

C 「ARE(アレ)」は勿論だけど、それだけじゃない! 日本一を取りに行くって「取材班」で決めたんです。

松岡 (無言)

B セリーグ優勝が決まった9月14日、甲子園ものすごかったですね。

松岡 いやいや、まあな。優勝ゆうて、しらん選手がほとんどやったから。優勝した選手おらへんやろ。俺は何回もしてるけど。おおん。だから、やっぱり、そりゃ、甲子園でね。そりゃ決めなあかんと。思うわ。そりゃそうやろ。お前。おおん。

D きた! 予定通りだ。社長に岡田監督が入ったぞ! A、質問行ってくれ。

A まかせてください。「鹿砦社取材班」が岡田監督に独占インタビューです。岡田監督、38年ぶりの日本一おめでとうございました。

松岡 いやいや。どうも。ありがとうございます。

A シーズン前から期待が高かったですが、日本一は狙っていましたか。

松岡 いやいや。そんなん、急にはね。おおん。セリーグ優勝も正直言って2年はかかるかと思っとった。そんなん、18年も優勝してへんわけやから、簡単に(優勝)はでけへんよ。

A  攻撃のときは岡田監督がみずからサインを出していました。

松岡 いやいや、みずからいうよりも。そんなん作戦は、場面、場面でね。ゆうか、1球ごとに状況変わるわけやろ。今岡(打撃コーチ)に「お前サイン出すか」ゆうて聞いたら、「監督にまかせます」いわれたから。それだけのことよ。おおん。

B おいA、あんまりマニアックな質問するな。鹿砦社はただでも「変わり者」と思われてるんだから。普通で行け、普通で。ジャニーズとかタカラズカのこととか聞くなよ。

A 監督、それにしても見事な投手陣でしたね。

松岡(こと岡田) ううん、投手はね、しっかり頑張ってくれた。まあそこそこいくゆうか、青柳筆頭にね。西、伊藤ゆうね、実績ある投手がおってな。せやけど村上と大竹は予想外やったな、ええ意味でな。おおん。そのへんは安藤(投手コーチ)と久保田(投手コーチ)にまかせとったけど。まあ中継ぎも安定しとったし、信頼してな。ひっくり返される試合はそんなになかったんちゃうかな。やっぱり、守りゆうか、もちろんピッチャー中心やけど、そこがな。わりかしうまくいったわ。

A ここで監督にお好きなパインアメのプレゼントです。

松岡(こと岡田) いらんよ(笑)。いらんゆうたらあかんか。家にようけあんねん。

A リーグ優勝の祝勝会(ビールかけ)、日本一の時もそうですが岡田節がさえました。

松岡(こど岡田) いやいや、それは大学でな。おおん。早稲田で勉強しとるから。鳥谷でもでけるんちゃうか。早稲田やし。しゃべれるれるよ、そんなもん。

A 手前味噌ながら、本社の「デジタル鹿砦社通信」でご登場頂いて以降、主要スポーツ紙は岡田監督のお話を、そのまま掲載するようになりました。

松岡(こと岡田) そんなん知らんやん。どことも同じようにやってるんちゃう。ロクサイシャ?聞いたことないけどな(球団職員が岡田監督に走り寄り何事か耳打ち)。ああ、ちゃうちゃう。鹿砦社な。おおん。まあな、頑張ってるゆうか、なんていうんかな。

A え! 鹿砦社をご存知ではなかった? 監督?

松岡(こと岡田) ちょっと野球とはちゃうけど、甲子園にあるんやな? ワシの記事やろ。おおん。あれは、あれよ。前から解説やっとった時も書いとった新聞はあったな。おおん。いまは忙しいから、そんなもん毎日スポーツ新聞見てへんで。そうなん?知らんかったわ。

A ありがとうございます。岡田節逐語掲載の先鞭は、4月9日の本通信でした。鹿砦社もご存知で。

松岡(こと岡田) おお、おお。あの3階建てのビルな。あそこの1階、むかし、婦人服の店あったところやろ。おお。隣が阪神パークやった。もう若いもんはレオポンとか知らんやろな。

A レオパレスは聞いたことがありますが、レオポンは知りません。ところで岡田監督、どうして「パインアメ」をあれほどお好きなのでしょうか。

松岡≒岡田 いやいや、好きいうより、なんやろな。当たり前なんやな。おおん。考えるときにな、試合中もそうやし、テレビ見てても夢中になったら舐めたいわな。なんでゆわれたら困るやろ。お前。

A こちらがパインアメ製造工場です。滋賀県にあります。

松岡≒岡田 おお。聞いたことあるよ。せやけど、ただの工場やな。

A (Dさん、反応悪いですよ、きょうの岡田監督)

D 馬鹿野郎! お、前の質問が読売テレビやNHK並みに外れてるんだ。核心を聞け! 核心を!

A 岡田監督。ことしの大躍進、最大の理由は何だったのでしょうか。

松岡≒岡田 いやいや、大躍進ゆうて、そんなもんでもあらへんけど。まあね、コロナでやっぱり選手やスタッフも、去年までは制約いうか、あったんでね。甲子園でも今年久しぶりやろ。あんな声援。鹿砦社かて、コロナで経営しんどかったらしいやんか。おおん。ゆうてくれたらな、なんとかでけたかもしれんのに。ちょっと水臭いわな。

A え! そこまで岡田監督は鹿砦社を心配してくださっている?

松岡≒岡田 そりゃそうよ。おおん。甲子園いうたら賑やかな場所やて、来たことない人思うやないか。せやけど、試合なかったら、静かな町やで。おおん。出版社がな、「木馬」の近くにあるゆうのは、なんていうか、大事やな思いますよ。

A ありがとうございます。それにしても岡田監督口調がスポーツ紙、ネットでも踊りましたね。

松岡≒岡田 いやいや、だから、あんまり知らんけど。まあ、「ARE(アレ)」やないけど注目はさえたいうね。それは、ええんかどうか。まあ優勝したからな、よかったんちがうかな。

A ありがとうございました。見事日本一に輝いた阪神タイガース岡田監督を、鹿砦社松岡社長を媒介にお話を伺いました。


◎[参考動画]“50年虎党”その魅力は…渡辺謙さんに聞く 阪神とオリックスW優勝パレード(ANN 2023年11月23日)

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松岡 しばらくご無沙汰していました。皆さんにはこれまで「しばき隊」関係の取材をお願いしていましたが、あの一件は依然動きがあるものの、今年は別のテーマで取材をお願い致します。

A 別のテーマというと、どんな分野でしょうか?社長。

松岡 「2023年の阪神タイガース」を徹底的に取材してください。

一同 え、え、え!

B 社長、鹿砦社は本社が甲子園のスコアボード裏100mくらいの至近にあるのは、そりゃそうですが、阪神戦の甲子園内での取材は「報道パス」がないとは入れませんよ。

C 阪神タイガース、タイガースは関西人なら誰でもファンですが、俺今までスポーツ取材なんてやったことないし、いきなりのことで。できるんですか?

松岡 そこを、なんとかしてくださるのがみなさんの力だと信じています!

D いや、社長、気持ちは分かりますけどね。僕らの立場も考えてくださいよ。虎風荘(阪神の若手が入る寮)も近く尼崎に移転するらしいし、鳴尾浜のグランドも尼崎に移転でしょ。Bが言うように甲子園の取材パスは、うちらレベルの「フリー」じゃ手に入りませんよ。どうすりゃいいんですか?

松岡 その点はご心配なく。

B ということは、既に阪神球団に掛け合って、手配済みいうことでうすか?

松岡 私はそんなちゃちな真似はしません。皆さんには堂々と行ってもらいます。

A だから、具体的にはどうしろと?

松岡 岡田監督とは1月末に顔合わせろ済ませました。だから大丈夫です。

一同 本当ですか!ほんまかいな!?

松岡 本社の近くに、皆さんを時々連れてゆくお好み焼き屋さんがありますね。私があそこで食事を終えて店を出ようとしたときに、ちょうど岡田監督が店に入ってきたんです。

B ほんまの話ですか?

松岡 本当です。岡田監督もあのお好み焼き屋さんは馴染みのようでした。せっかくなので激励の握手をしておきました。

C その時の写真って社長のフェースブックに載ってましたっけ?

B それは貴重やわ。岡田監督と関係ができたんやったら、取材も楽にできるから安心しました。

D やっぱり社長「持ってます」ね。全国広しといえども、昼飯食べに行って、そこで岡田監督にばったり会う出版社の社長はそうはいませんからね。それで、阪神球団にはどうやって連絡すればいいんですか?

松岡 は?

D いや、だから 俺たちが「鹿砦社特別取材班」として「2023年の阪神タイガース」を取材するのに、岡田監督と関係ができた社長のラインから、どうやって阪神球団に接触すればいいか、と聞いているんです。

松岡 それはな、うん。まあな。会った(おうた)んは、会った(おうた)んで間違いないんよ。おお。せやけど、突然やんか。牽制球けえへんはずの時に来よったようなもんやんか。おお。あれよ。食べ終わってな、昼からの仕事、どないしようかなあ。考えるやんか。おお。そないしとったら、急に岡田が現れたんよ。うん。びっくりするやんか。びっくりするわな。写真?ほんなもん撮れるかいな。うん。「今年は頑張って」いうてな。おん。しっかり握手はしといたわ。おん。それ以上どないせい、いうんや。そりゃ無理やろ。あんな場合。おおん。

B 社長、急に岡田監督が入ってますけど、誤魔化さんといてください。写真は撮ってない、いうことですか?

松岡 せやから、言うてるやんか。おおん。そんなもん。急にできへんよ。うん。自分やったらできるか?

B いや、自分やったら、ってそういう問題じゃないです。

C 社長、結局岡田監督と鉢合わせしたのは本当なんですね。

松岡 ほんまよ。おおん。びっくりしたけどな。おおん。

D (小声で)おい、社長から岡田監督が抜けないぞ。

A だったら、社長を媒介して、岡田監督に疑似インタビューから取材はじめましょうか。

D この際、仕方ないな。いまちょっと走って例のお好みや参に確認してきたんだけど、岡田監督が常連なのは間違いないって。

B フリーのフォトジャーナリストにはあんなにきついのに、自分は写真一枚なしということですか?

D もう過去の話しても仕方ないだろ。A、岡田監督への疑似インタビュー早速はじめてくれ。

A わかりました。今シーズンから再び阪神タイガース監督に就任した岡田監督へのインタビュー、松岡社長の体を媒介にして行います。
監督、開幕3連勝おめでとうございます。

松岡 おお、まあ、よかったわな。打線が全員2試合でヒットでたんわよかった。おおん。ゆうてもまだ3試合やから、開幕ダッシュとかは大げさやけどな。

A 作戦面でも岡田采配が光りました。リクエスト要求で判定が覆らないと、すぐにランナーを走らせたり、1ストライクから原口選手を代打に送り、1球目をホームラン。昨年までとの違いが際立ちましたね。

松岡 際立ったというかな。やることやってるだけよ。おおん。そりゃ攻撃は敵が嫌がることするのが、当たり前やん。おおん。まあ、打線は水物やけど打てたんはよかったわ。おおん。

A 抑えの湯浅投手、若干厳しいシーンもありましたが投手陣はこの3連戦いかがでしたか?

松岡 まあ、結果ゼロやから。湯浅は。おおん。悪い時もありますよ。でも結果ゼロはよかったわな。おおん。さすがに、3連投はさせられへんから。今日はキャッチボールもさせへんかったし。青柳も才木もいっぱいいっぱいまでは引っ張ってないし。まあ秋山は御覧の通りで。おおん。

A 次の広島戦に西勇投手や伊藤投手を温存できる投手起用は、先発陣の層の厚さを感じさせます。

松岡 層の厚さいうよりも、個人個人が自分の仕事わかってる、いうかね。自分の役割ちゃんとまっとうしてくれたら結果はついてくるゆうことや。おおん。けど、波はあるよ。誰にでもな。

A 今シーズン阪神ファンは開幕3連勝で、ますます期待が高まります「ARE」を期待していいでしょうか?

松岡 いやいや、まだ3試合やんか。それや、あれよ「ARE」はね、もちろん結果やから。まだそんなもん、意識する時期でもないし。目の前の試合を勝っていくのがな、まあ、それだけよ。おおん。

A 放送席、放送席、以上松岡社長の体を借りて、岡田監督のインタビューでした。

D 上出来じゃないか。

B でも、こんな現場当たらずの取材で記事に出来ます?

C 社長には憑依の体質もモノマネの才能もなかったでしょう。その社長にこれだけ饒舌に喋らせるのは、やっぱり岡田監督の力だと思っていいんじゃないでしょうか。

A 自分で聞いといてなんだけど、複雑です…。

D そうだな。毎回こんな原稿じゃ使えないな…。

松岡 皆さんなにをしょぼくれた顔をしているんですか。今年は阪神タイガース取材をよろしくお願いしますよ。

一同 は、はい。(つづく)

特別取材班付記
社長松岡は、たしかに1月末に岡田監督と出くわしていた。しかし上記に報告した内容は、事実のほか一部「想像」、や「妄想」も混じっていることをご了解いただきたい。順次続報をお伝えする。

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開幕戦の逆転負けから悪夢の9連敗。前半はとてつもなく厳しい闘いの連続でした。開幕以来、3月=0勝6敗(月間借金6)、4月=9勝14敗1分(月間借金5)、5月=11勝13敗(月間借金2)と負け越し続き。最悪時には16も借金があり日本プロ野球史上最悪勝率を記録してしまった時期がありました。

ただ、3月から5月の負けが込んでいた時期、順位は当然セリーグ最下位でしたが、チーム防御率は2点代中盤で6球団中トップという不思議な記録を残していたんですよね。そして完封負け、1点差負けゲームが目に余るのが特徴でした。つまり簡単にいえば「打てなかった」んですね。投手陣は大崩れすることはなくむしろ好調でした。ですから、得点力がもう少し上がりさえすれば前半戦の間に、借金返済とはいかなくても、なんとか最下位を脱出できるのではないか、と結構少なくない解説者たちも予想していました。

そしてわたしは「そんなもんじゃないでしょう」と確信を持っていました。それは自分の目で確かめた5月22日甲子園での対巨人戦での完封勝利です。

プロ入り初完封を4月にあとアウト1つで逃していた、伊藤将司投手がわたしたちの目の前で完璧かつ全く不安を感じさせない完封を飾りました。佐藤、大山両主軸にもタイムリーが生まれ「いやー最高の観戦でしたね」と気分よく帰路についたのを覚えています。シーズン当初の最悪状態からチームが確実に上昇傾向に転じたのは、顧みると5月22日あの日の対巨人戦完封劇からだったといえるかもしれません。

6月に入ると14勝8敗1分 7月は14勝6敗でオールスター前に勝率を5割に戻し、甲子園で迎えたオールスター明けの首位ヤクルトとの3連戦でも2連勝で、ついに今シーズン初の貯金ができました。阪神タイガース以外を見渡すと、今年は序盤の混戦からヤクルトが抜け出し、早くもマジックが点灯する独走を見せています。気が付けば2位に浮上した阪神タイガースより下、3位以下のチームはすべて勝率が5割以下で現在のところヤクルトの独走が、まだ続いています

セ・リーグ順位表(2022年8月1日現在)

でも、ヤクルトは打線の迫力はあるものの、投手陣に疲れが見え始め一時の勢いからは、だいぶ失速しているように思えます。今年も暑い夏ですが、夏場は投手により大きな負担がかかります。ですからどれだけ先発陣が安定しているか、そして中継ぎの層の厚さ、抑えの疲労蓄積回避が夏場はポイントです。阪神タイガースは高校野球が甲子園で行われている間は、甲子園以外に遠征に出るか、京セラドーム大阪で主催ゲームを行います。昔は「死のロード」と呼ばれましたが、名古屋と東京ではドーム球場(エアコン入り)でゲームできるのですから、夏場の一番暑い時期に甲子園を高校生に譲るのは、まんざらマイナスでもないと考えられます。

「阪神タイガースはどうなっているのか」をテーマにに選んだのは正解でした。だって、史上最悪のスタートを切って最下位確定間違いなしと思われ、試合後のインタビューで久々に勝った矢野監督が泣く姿を見せるほどボロボロだった。あの姿からわずか2か月でまさか借金を返済して2位まで上昇するとは、まあ、ファン心理としては「そうあってほしい」と思うことはあっても、現実を信じた人は少数だったと思います。

でも、先ほど触れましたが投手陣の安定が崩れないんですよね。昨年最多勝の青柳はもう11勝(1敗)していますし、前半調子に波があった西勇も抜群の安定感を取り戻しました。2年目の伊藤もすでに7勝を挙げ、復活した才木も無敗で2勝。先発の層が厚いし、若手を中心にした中継ぎも崩れません。抑えに定着した岩崎はすでにセーブを22上げています。

そして、攻撃の活性化は誰の目にも明らかでしょう。ホームランを量産しだした大山、大山に本数は及ばないものの佐藤の存在感は2年目の選手とは思えません。そして見逃せないのは「走れる」選手の活躍が増えてきたことでしょう。中野、近本は昨年から盗塁では実績がありましたが、代走出場が多かった島田のバッティングが好調で2番に定着したことで1番から3番まで、隙あらばヒットが出なくとも盗塁を狙える選手が揃いました。代走には熊谷がいます。7月31日(午前現在)チーム盗塁数は73でセリーグではヤクルトの56を引き離し断然トップです。

さて、このように見てくると阪神が勝てなかった序盤戦から2位に上昇した7月まで、まさにドラマチックな展開だったといえることでしょう。しかし、わたしはまだ波乱はあるのではないかと予想します。これまでは「地獄から奇跡の生還」のドラマを目にしてきたわけですが、開幕戦の不思議な大逆転負けを思い出すにつけ、「いいことばかりが続く保証はない」という教訓を、ファン心理も学んだのではないでしょうか。ことしに限っては「コロナ第7波」の影響が後半戦には出てくるでしょう。現在多数の感染者を出している巨人は対戦をストップしています。試合出来るメンバーを組めないというのが理由だそうですか、振替試合は9月以降に回されるでしょう。ほとんどのチームで「コロナ7波」の感染者が出る中、主力選手が長期間離脱を余儀なくされる状況が生じると、先が読めなくなりますね。

ですからわたしは心の中では「こうなるんじゃないか」との予想を持っていますが、それをお伝えすることは遠慮しておきます。いや、逃げじゃないですよ。本当に「何が起こるかわからない」ことを今年のセリーグは教えてくれているように思えますので、ならば次にはどんなドラマが生まれるのか。ワクワクしながら見守りたいと思ってるんです。だって今日の最高気温35度ですよ。もうこれ以上頭に血を回したら自分でもどうなるか、自信がありませんから。

◎阪神タイガースはどうなってるの? http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=102

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

5月22日阪神タイガース対巨人戦観戦報告の続報です。両チームの先発メンバーが発表されました。コロナ前なら、選手の名前がアナウンスされるたびに歓声が上がっていたものですが、球場内でもしきりに感染防止対策で、大声を控えるように告知がなされたり、ボードを掲げた係員が巡回しているので、先発メンバー紹介には拍手が送られる程度です。

が、意外な場面で球場がざわついきました。審判の紹介で「球審白井」とアナウンスが聞こえた瞬間、「おいおい白井かい!」、「え!」とそこここから声が上がりました。

佐々木投手はご存知、完全試合達成後、あやうく2試合連続完全試合に手が届きかけた、いま最も注目の若手投手です。その佐々木投手にちょっと訳の分からない絡み方をしたのが白井審判でした。ネット上には過去、白井審判の怪しい判定や、猛抗議を受ける動画が多数アップされ、注目度は抜群。その白井審判がよりによって球審だというのですから、波乱も含めてますます期待感が高まります。私の座っている席の近くからも「白井!ええ加減な判定したらあかんぞ!」と大きな声が飛びました。

試合開始直前に神妙な表情で審判団と打ち合わせをする白井審判

爽やかな五月晴れ、宿敵巨人との満員甲子園での対戦、そして裁く球審は、最も注目を浴びる審判白井。いよいよプレーボールです。球場内では700円もする生ビールですが試合進行以上に、最高の観戦コンデションにどんどん進みます。甲子園は風が気持ちいいんですよ。

阪神の先発は前回惜しくも完封勝利を逃した伊藤で、1月以上開いての登板です。伊藤投手は制球が安定して、ストレートの伸びもよく不安のない立ち上がりを見せてくれました。

一方、巨人の先発高橋投手は立ち上がりからコントロールが定まらず、小林捕手とのタイミングがとれていないように感じられました。小林捕手が高橋投手に投げ返すボールが左右にそれる場面も何度も見られたことから、阪神タイガースOBのOさんは「今日のね、高橋はいいことないね。うん。まあ、見ての通りコントロールが安定してないし、マウンドで落ち着きがないよね。おん。おん。これは阪神、ゆっくり見て行ったらいいんですよ。おん。今日ははように捕まえることできるますよ。おん。」と早くも阪神攻撃陣のチャンスを予言していました。

満員の甲子園球場

試合はOさんの予想通り、2回に先頭の陽川が四球で出塁。つづく糸原の打席でフルカウントからまたしても四球。長坂は犠打でランナーを2,3塁に進め、打席にはピッチャーの伊藤ですが、巨人の高橋は伊藤にも四球を出してしまい1死満塁です。高橋はもうこのあたりで限界のように感じましたが、巨人ベンチは動きません。つづく近本がセンター前に安打を放ち阪神タイガーが1点先取です。2番の中野が三振に倒れたあと大山がレフト前にタイムリー。この打球を巨人の外野手が下手くそな守備をしている間に2塁ランナーも帰ってきて3点目。高橋投手はここで降板しました。巨人の投手は戸田です。四番の佐藤は痛烈なファースト直撃ゴロを放ち、これが内野安打で一挙4点をあげました。こういう攻撃が見たかった!高橋の調子が悪かったとはいえ、2回に一挙4得点です。

中押し、ダメ押しが欲しいところですが、いまの阪神タイガースにそこまで求めるのは酷というものでしょうか。

この日は攻守に見どころがありました。目立ったのは近本選手ですね。3安打1打点プラス1盗塁。盗塁は完璧なタイミングで近本選手にとっては通算100個目の節目の盗塁でした。守備でもレフト方向に切れていくライナー性のフライをダイビングキャッチ。

その後も伊藤投手はヒットは打たれるものの要所を締めていよいよ最終回を迎えました。結局9回に出塁は許したものの最後は見事に巨人打線を抑えきり、伊藤投手は完封勝利です。

最後まで躍動感あふれるフォームで完封勝利を達成した伊藤投手

同上

同上

巨人相手に甲子園で完封勝利! いやー阪神タイガース強いじゃないですか。強い。たしかにこの日試合だけ見ればそうなんですが、問題は打てない試合が多すぎることなんです。今日は5月29日です。交流戦の真っ最中です。楽天相手に田中将投手から勝ち星を奪うなど、本格的な上昇ムードを期待したいところですが、5月29日時点で借金が11。そして問題なのは完封負けが12試合もあることでしょう。勝試合でも1点差勝利が多く、楽な展開がないのは、やはり打線が繋がっていないことを意味するのでしょうね。投手陣が大崩れすることは少なく、防護率はセリーグトップの2.77。これで最下位なんですから、逆にいえば「撃ちゃあええんよ」というこですね。

結果的には、優勝を狙うのは無理にしても「まだまだ分からんよ」ということでしょう。最高の観戦日和に気持ち良い浜風を受けて、お昼寝なさっている方の姿みられましたが、それくらい気持ちの良い試合でした。

気持ちよい観戦日和にうたたねをなさる観客の姿も

◎[関連リンク]阪神タイガースはどうなってるの?
〈4〉5.22巨人戦観戦報告[前編]

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
仮名のような名前ながら本名とのウワサ。何事も一流になれないものの、なにをやらしても合格点には達する恵まれた場当たり人生もまもなく50年。言語能力に長けており、数か国語と各地の方言を駆使する。趣味は昼寝。

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現時点の状況からお伝えしましょう。35試合戦った5月6日の時点で完封負け9試合(11勝23敗1分)。この数字が阪神タイガース泥沼状態のすべてをあらわしています。5月6日の中日戦は阪神タイガースにとっては「鬼門」のナゴヤドームじゃなかった「バンテリンドーム」でした。

◆「ネーミングライツ」商法の違和感

ロードで残念に負ける阪神タイガースの凱旋を待つ甲子園球場周辺

話がそれますが「ネーミングライツ」という球場や、施設の名前を「切り売り」する商法。あれはなんだか気持ち悪くないですか?「バンテリンドーム」って聞いて名古屋と結びつく人ってそんなにいるでしょうか? 福岡ドームは「福岡 Yahoo! JAPANドーム」、「福岡 ヤフオク!ドーム」、「福岡PayPayドーム」と名前を変えてきました。

ホークスはチームとしては嫌いじゃないですけど「ペーペードーム」って響きが軽すぎるように感じるのはわたしの偏見でしょうか? 楽天本拠地の本名「宮城球場」もやはり「ネーミングライツ」を採用していますが、こちらはスポンサーの如何を問わず球場名に「宮城」を入れることが契約の条件に含まれます。そのため同球場はこれまで「フルキャストスタジアム宮城」、「日本製紙クリネックススタジアム宮城」、「楽天Koboスタジアム宮城」、「楽天生命パーク宮城」と3年契約を基本に名前が変遷してきました。

まあ、楽天やソフトバンクといった時代の先端企業のやることですから、古い感覚のわたしの世代にはちょっと馴染み切れない部分はあります。そうそう「京セラドーム大阪」も忘れちゃ困ります。京セラって京都の京をつけた会社でしょ。それが大阪ドームの名前になっちゃったのにもなーんかなぁといまだに納得がいきません。

◆タイガースにとって名古屋は相性の悪い球場

「ネーミングライツ」に話題をそらしましたが、問題は「バンテリンドーム」です。どうしてあんなに交通が不便な場所に作ったのか?と完成直後から地元名古屋でも悪評高かったんです。あの場所は球場近くにバスかモノレールかわからない「ゆとりーとライン」(ひらがなと、かたかなを織り交ぜた語感がいかにも名古屋っぽいです)なる交通機関が駅を設置していますが、最寄りの主要駅はJR大曽根です。徒歩で15分はかかりますよ!(怒るところではないか?)甲子園とはえらい違いですわ。

だからなのか、関係ないのか、とにかく阪神タイガースにとって名古屋はめちゃくちゃに相性の悪い球場だということは、阪神タイガースファンならご存知でしょう。2021年までナゴヤドームでの戦績、300試合中106勝187敗です。きのうのゲームについてご紹介する前に、2006年、当時41歳だった山本昌にノーヒットノーランを食らっていることも思い出しておきましょう。130キロも出ないストレートは球場で見ていたら、わたしでもバットに当たりそうなのに、なにをしとんねん!と怒鳴りまくった記憶があります。

そして、試合前から悪い予感がしたのがきのうの試合です。中日は今シーズンは調子は万全とは言えないものの、大黒柱の大野雄、阪神も昨年の最多勝、今年もすでに3勝を挙げている青柳が予告先発でした。当然投手戦が予想されるわけですが、わたしたちの頭にはつい最近、完全試合を達成しただけではなく、危うく2試合連続の完全試合を完成しかけた、怪物・佐々木朗希投手のピッチングとあの驚愕の残像が消えてはいないのです。

甲子園球場周辺

◆阪神苦戦を予想させる警鐘

偶然でしょうがこの日も佐々木投手はソフトバンク戦に先発し、初回からほぼ160キロ超えのストレートでどんどん押していました。結果佐々木投手降板後にロッテは逆転負けを喫しましたが、佐々木投手が槇原投手以来達成した完全試合が、「バンテリンドーム」悲劇と関係はないものの、阪神苦戦を予想させる警鐘ではあったようです。前回も登場していただいた元監督のO氏は、

「名古屋はね、マウンドが固いんよね。うん。ピッチャーがスパイクで掘ろうとしても掘れないんよ。おお。せやからね甲子園なんかとマウンドの感覚が全然違うでしょ。それでやられてまうんやね。おーん。俺が監督やった年かな。あんまり勝てへんから三塁側に土の硬いマウンド造らせたんよ。名古屋のマウンドに合わせるためですよ。そしたらそれから結構勝てるようになったしな。うんうん。けどね、あそこは投手有利な球場やね。東京ドームみたいに上の方で風は吹いてへんからね。せやから中日は長いこと調子よかったでしょ。落合が監督やっとるころとか。ああいう野球やったら名古屋をホームにしてたらそりゃ有利ですよ。うんうん。年間半分は自分とこで試合すんねんからね」

意外に知られていませんでしたがナゴヤドームは、マウンドの硬さに他球団が手こずる原因があったようです。たしかに阪神タイガースだけではなく巨人を除いてセリーグの他の球団はすべてナゴヤドームでは負け越しているそうです。

にしても延長10回まで完全試合をやられるほどに打てないのは、いくら大野投手の出来が良くても阪神ファンは納得しないでしょう。阪神OB会長のKさんに聞きました。

「完全試合がなんぼのもんじゃい!え?仮にやで1対0で負けても、10対9で負けても、負けは負け、勝ちは勝ち。そういうことちゃうんか!たしかにことしのタイガース見とると、まあ、ワシにいわしても、ええことはないわな。これは正直結果に出とるもん。せやけどや、1年、シーズンは何試合あるんやと?いま何試合目ですか、とワシは聞きたいよ。え?まだ35試合じゃないか。あとどんだけ残っとんねん? 108試合やで!そんな時期にあれがどうしたこうした言うて、ごちゃごちゃぬかすな!いうことや。まあワシに言わせればやで。負けたもんはしゃーないやんか。もう終わったことをごちゃごちゃぬかしとったらあかん!今日の試合をどうするのか、な! これからどう戦うのか。これだけ考えとったらええねん。ワシかて生涯で211本ヒット打ってる男や。日本におるときイチローの年間最高安打数より1本多いの、おまえ知っとるか?どーせ将来イチローのような選手が出てくるやろうと。予想して生涯安打を211本にしといたんや。まあ、これはここだけの話やけど。それくらいの余裕をもって、見るもんも見ていかなあかんのちゃうか。細かいことをごちゃごちゃぬかすな、いうことや」

いっぽう数多くの伝説を持つ元名投手Eさんは別の見方です。

「日本ハムが新庄君を監督にすえてね。BIG BOSSだと。色々パフォーマスも含めて今の成績というのは、ある意味仕方がない。1年だけを見ているわけじゃないんだから。栗山監督が大谷君を育てたり、北海道にしっかりとね日本ハム、それも常に優勝争いに加わるチームに育て上げたのは大きな功績だと思いますよね。でも、阪神の場合はちょっと事情が違うんやないかと思いますよ。たしかに去年40セーブを上げたスアレスが抜けたのは大きいですね。これは誰が見てもわかる。けれども先発陣のやりくりはできるはずですよね。青柳君はもちろんだけど、伊藤君というね、去年新人離れした度胸を見せてくれた戦力も加わったんだし、岩崎君も当然。それから実績充分の西君。西君(西勇)の親戚で去年がんばった西君(西純矢)。それから肘を痛めてしまって今シーズンは無理だけど高橋君。もう何年も課題の藤波君。そこに外国人が絡んでくるわけですから、先発中継ぎ、抑えも足らないはずはないと思いますね。そうなるとベンチワークがどう機能しているか。伊藤君が完投・完封まであと一人までいった試合がありましたよね。4月6日の横浜戦。あそこは通常なら当然続投です。あと一人なんだから。だけれども出塁を許した時点で、その試合だけを見るのではなくて今シーズンの先を見る判断は、あったんじゃないか、と思いますよね。結果論といえばそうなるのかもしれないけれども、あそこ岩貞君に変える勇気がベンチにあるかどうか。そのあたりがいまの結果に結びついているんじゃないでしょうかね」

さあ、ゴールデンウィークも終わっていよいよ平常運転に戻ります。阪神タイガースも阪神電車のようにダイヤに遅れることない状態に早く戻ってほしいところです。(つづく)

甲子園球場周辺

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
仮名のような名前ながら本名とのウワサ。何事も一流になれないものの、なにをやらしても合格点には達する恵まれた場当たり人生もまもなく50年。言語能力に長けており、数か国語と各地の方言を駆使する。趣味は昼寝。

おかげさまで創刊200号! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年6月号

みなさんお待たせいたしました! 新連載「阪神タイガースはどうなってるの?」をきょうから担当させていただく、取材班の伊藤です。私はキャリアの長い阪神タイガースファンですが、「阪神タイガースはどうなってるの?」では阪神ファン・アンチ阪神どちらの方にも興味を持ってもらえる企画を目指しています。

甲子園の歓声が聞こえる出版社は、全国広しといえども鹿砦社しかありません。選手や解説者、マスコミ関係者たちが通う飲食店も取材班はよーく知っています。立地を生かしてデイリースポーツでも知らないコアな情報をお伝えしてゆきます! 乞うご期待! そして、有名解説者も名前を伏せて登場を承諾いただいていますので、解説陣にもご注目を!

鹿砦社本社から眺める甲子園球場

◆予想されていた2022年阪神の苦戦

この、デジタル鹿砦社通信は社会問題などを中心に、硬派の記事が多いようです(日曜に掲載が多い堀田春樹さんの格闘技記事を除いて)ね。ロシアのウクライナ侵攻やコロナなど、「阪神タイガースのこと気にしてる場合か?」のお声も聞こえそうですが、とにかく阪神タイガースです!

今年の阪神、開幕から恐ろしいほどの連敗続きでした。4月24日の時点では4勝20敗1分。勝率が0.167、これが先発投手陣の防御率ならうれしいのですが、はっきり言って絶対的最下位でした。昨年ゲーム差なしの悔しい2位(あと1ゲーム勝っていたら優勝)からクライマックスシリーズでの敗戦で、風船がしぼんだ印象を受けたファンも多かったのではないでしょう。

そうなんです。2022年阪神の大不振の原因は昨年後半の戦いからすでに予想はされていました。

昨年FA権を取得した梅野捕手は、去就が注目されていました。というのも、盗塁阻止率リーグトップなのに、打撃の調子は落ちたとはいえ、後半の大事な試合で先発起用がなくなったのは、ファンならご存知でしょう。かわって坂本がマスクをかぶったわけです。

取材班の得た情報では、梅野が去年FA権を行使する可能性は五分五分でした。矢野監督は攻撃型の捕手よりも、守りに徹する捕手を重用するという情報は、関係者の間で有名でしたが、それにしても得点圏打率3割以上、盗塁阻止率セリーグ1位の梅野がFA宣言を控えた時期に、あえて先発を外す起用法には解説者からも疑問の声が上がりました。

甲子園のある西宮市で高校野球名門校出身の現タレント兼解説者は、「去年の後半ね矢野監督、なにを考えてるんやろうというのは正直思ったね。俺が梅ちゃんやったら出てるわな。だってあれだけ数字残して、日本代表にまで選ばれて、オリンピックで金メダルでしょ。優勝かかっている試合で先発外されたら『えっ?おれちゃうの?』やんか。球団の意向か矢野監督の判断かはわかんけど、(阪神を)出たほうがええって、テレビでもラジオでも俺は言うたしね。今年坂本キャプテンやんか。選手会長は大山で。役割がようわからへんねんけど、梅野がやる気を削がれるのはわかるよな。で、矢野監督は梅野と坂本併用を続けてるけど、この成績でしょ。わからんね。なにを考えているんか」

試合開催の日にはごった返す阪神甲子園駅(西口)

捕手は守りのかなめで、配球の主導権を握る存在だけに勝敗への関与も大きいポジションです。かつて阪神タイガースで監督を経験したこともあるO氏は言います。

「キャッチャーには打撃期待してなかったね。うんうん。キャッチャーと、セカンドショートは打たんでもええと。ねえ。守ってくれたらええと、俺は思っとった。まあね、城島とかトリ(鳥谷)とかね、打撃のいい選手は助かりますよ。けどね、基本クリンナップで得点するもんやんか。うんうん。だからね、今年の阪神はね、四番を決めるべきよ。うん。佐藤でええやん。俺やったら絶対そうするな。うん。それから四番の守備位置は固定せなあかんね。佐藤はサードでええやん。キャンプでも見たけど、佐藤のサードはうまいよ。ライトなんかやらせんでええねん。大山は打球処理が引っかかる(ファーストへの投球ミス)ときがあるからな。ファーストでええんよ。そないしたら近本センターで、糸井ライトで、もう一人外国人や調子のいい選手をライトに使えるやんか。それをなんで佐藤をね、2番に持ってきたり、ライト守らすか。わからんよね。」

先発メンバーの打撃成績は昨年に比しても決して数字が悪いわけではありません。でも、O氏が指摘された通り、敗戦続きのためか先発メンバーと打順が固定されず、浮足立っている感はたしかに否めません。

では攻撃面で現状をどう打開すればいいのでしょうか。やはり阪神タイガースで二軍監督の経験もあるK氏に伺いました。

「矢野監督のですね、シーズン前の引退宣言。あれはどうだったんだろうと思いますね。ええ、ええ。選手というのははっきり言いますが、試合に入ったら、コーチなんか見ていません。試合はじまったらサインは見ますが、見ているのは監督だけ。僕もそうでしたし。ええ、ええ。そのいわば大黒柱というか、中心の人が『俺今年でいなくなるよ』と。矢野監督はもちろん選手の奮起を期待して、考えに考え抜いて発言したんでしょう。でもですよ、じゃあ、あの発言を聞いた選手はどうなるかといえば、『今年は絶対落とせないぞ』と感じるのは当然でしょ? これは野球じゃなくてもそうだと思うんですが、僕に言わせると悪い意味でのプレッシャーがかかちゃった。まだ途中ですから、結論めいたことを言うのは早いにしても。いま阪神の選手は、矢野監督の『引退呪縛』といますか、あのプレッシャーから抜け出せていないですよ。矢野監督自身を含めて。ええ、ええ」

と、マイナス材料ばかりうかがった直後、阪神の反撃がはじまりました。5月1日時点では、これまで想像もできなかった破竹の6連勝で、10勝20敗分まで持ち直しています。さて、エース青柳がコロナから復帰して勝利が転がってくるようになったものの、この勢いは本物なのか、それとも開幕当初の不振が本当の姿なのか? 引き続き続報をお伝えしてゆきます。次回をお楽しみに!

甲子園駅を出たところにあるローソン。甲子園ではローソンも「甲子園色」に

▼伊藤太郎(いとう・たろう)
仮名のような名前ながら本名とのウワサ。何事も一流になれないものの、なにをやらしても合格点には達する恵まれた場当たり人生もまもなく50年。言語能力に長けており、数か国語と各地の方言を駆使する。趣味は昼寝。

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